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特表2024-535460(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20240920BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20240920BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
C09J11/02
C09J5/00
C09J133/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519462
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 CN2021121547
(87)【国際公開番号】W WO2023050111
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】スン,チョンヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,チョンジエン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ズオホァ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA081
4J040GA05
4J040HC06
4J040HD24
4J040JA13
4J040JB02
4J040JB05
4J040KA14
4J040KA17
4J040MB09
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物を含んでなる第一パート:並びに少なくとも1の有機遷移金属化合物および少なくとも1のリン含有化合物を含んでなる第二パートを含んでなる(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物であって、第一パートおよび/または第二パートは、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでなる、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物を提供する。本発明はまた、該(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物を用いた第一基材と第二基材の接合方法、並びに該(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物により接合された若しくは該方法によって得られた物品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物を含んでなる第一パート:並びに
少なくとも1の有機遷移金属化合物および少なくとも1のリン含有化合物を含んでなる第二パート
を含んでなる(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物であって、
第一パートおよび/または第二パートは、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでなる、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項2】
アミン-アルデヒド縮合化合物はブチルアルデヒド-アニリン縮合化合物、好ましくはPDHP(3,5-ジエチル-1,2-ジヒドロ-1-フェニル-2-プロピルピリジン)である、請求項1に記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項3】
有機遷移金属化合物は、バナジウムおよび第一銅錯体から選択され、好ましくはバナジウム有機錯体であり、より好ましくはバナジル(IV)-アセチルアセトネートである、請求項1または2に記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項4】
リン含有化合物は、有機リン含有化合物および無機リン含有化合物からなる群から選択され、好ましくは有機リン含有化合物であり、より好ましくはリン酸塩であり、最も好ましくはビス(2-ヒドロキシルエチルメタクリレートホスフェート)および2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステルからなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項5】
一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマーは、単官能(メタ)アクリレートモノマーであり、好ましくは単官能メタクリレートモノマーであり、より好ましくはヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートからなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項6】
アミン-アルデヒド縮合化合物は、第一パートの総重量に基づいて、0.3~3.5重量%、好ましくは0.75~2.5重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項7】
有機遷移金属化合物は、第二パートの総重量に基づいて、0.03~0.4重量%、好ましくは0.075~0.2重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項8】
リン含有化合物は、第二パートの総重量に基づいて、0.2~4重量%、好ましくは0.75~2.5重量%の量で存在する、請求項1~7のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項9】
第一パートおよび/または第二パートは、少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、少なくとも1の強化剤および/または少なくとも1の阻害剤;好ましくは少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、少なくとも1の強化剤および少なくとも1の阻害剤を更に含んでなる、請求項1~8のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項10】
組成物は、過酸化物および/またはアミンを含まない、好ましくは過酸化物およびアミンを含まない、請求項1~9のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項11】
第一パート:第二パートの重量比は、5:1~1:5、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1.5:1~1:1.5である、請求項1~10のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項12】
第一パートの総重量に基づいて、
30.0~90.0重量%の一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、
5~40.0重量%の少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、
5~30.0重量%の少なくとも1の強化剤、
0.05~0.5重量%の少なくとも1の阻害剤、および
0.3~3.5重量%の少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物
を含んでなる第一パート:並びに
第二パートの総重量に基づいて、
30.0~90.0重量%の一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、
5~40.0重量%の少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、
5~30.0重量%の少なくとも1の強化剤、
0.05~0.5重量%の少なくとも1の阻害剤、
0.03~0.4重量%の少なくとも1の有機遷移金属化合物、および
0.2~4重量%の少なくとも1のリン含有化合物
を含んでなる第二パート
を含んでなる、請求項1~11のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物の二パートを混合すること;
接合する基材表面の少なくとも1つに混合した接着剤組成物を適用すること;
接着剤組成物が基材の間に存在するように、接合する基材を合わせること;および
好ましくは熱により、接着剤組成物を硬化すること
を含む、第一基材と第二基材の接合方法。
【請求項14】
第一基材および第二基材は、好ましくはスピーカー部材およびコイルからなる群から選択される、金属、プラスチック、セラミック、ガラスおよびセルロース系材料からなる群から選択される、同じまたは異なる材料である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物により接合された、または請求項13若しくは14に記載の方法によって得られた、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物に関する。具体的には、該(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物を含んでなる第一パート:並びに少なくとも1の有機遷移金属化合物および少なくとも1のリン含有化合物を含んでなる第二パートを含んでなり、第一パートおよび/または第二パートは、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーを更に含む。
【背景技術】
【0002】
酸化還元開始剤である(メタ)アクリレート系構造用接着剤は、様々な産業分野で一般的に使用されている。しかし、従来の(メタ)アクリレート系接着剤組成物では、酸化還元開始剤系は一般的に、有毒および/または不安定な過酸化物、および/または有毒な芳香族/脂肪族アミンを含む。
【0003】
また、(メタ)アクリレート系二液型接着剤のゲル化時間、発熱ピーク温度、発熱ピーク時間および接合強度は、この接着剤を使用する上で重要なパラメーターである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ヒトに優しく、短いゲル化時間および/または発熱ピーク時間、および/または高い発熱ピーク温度および/または接合強度を示す(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物の開発に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の実施形態では、
少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物を含んでなる第一パート:並びに
少なくとも1の有機遷移金属化合物および少なくとも1のリン含有化合物を含んでなる第二パート
を含んでなる(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物であって、
第一パートおよび/または第二パートは、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでなる、
(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物が提供される。
【0006】
本発明の第二の実施形態では、
本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物の二パートを混合すること;
接合する基材表面の少なくとも1つに混合した接着剤組成物を適用すること;
接着剤組成物が基材の間に存在するように、接合する基材を合わせること;および
接着剤組成物を硬化すること
を含む、第一基材と第二基材の接合方法が提供される。
【0007】
本発明の第三の実施形態では、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物により接合された、または本発明の方法によって得られた、物品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
先行技術と比べると、該(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物はヒトに優しく、短いゲル化時間および/または発熱ピーク時間、および/または高い発熱ピーク温度および/または接合強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本記載が、もっぱら例示的な実施形態の説明であって、本発明のより広い実施形態を限定することを意図するものではないことは、当業者には理解されるであろう。このように記載された各実施形態は、明確に反対の記載がない限り、他の実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると記載された特徴は、好ましいまたは有利であると記載された他の特徴と組み合わせることができる。
【0010】
特に記載のない限り、本明細書で使用される場合、全ての重量%値は、対応する成分が存在するパートの総重量に基づく重量%である。
【0011】
特に記載のない限り、本明細書において単数形の「a」、「an」および「the」は、単数形および複数形の両方の語を含む。
【0012】
本明細書で使用される用語「含んでなる」および「含む」は、「包含してなる」、「包含する」または「含有してなる」、「含有する」と同義であり、包含的またはオープンエンドであり、追加の記載されていない部材、要素またはプロセスステップは除外されない。
【0013】
特に指定のない限り、数値の終点の記載は、記載された終点と同様に、それぞれの範囲に含まれる全ての数値および分数を含む。
【0014】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含む、本発明の開示において使用されている全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味を有する。更なる指針として、本発明の教示をよりよく理解するために用語の定義が含まれている。
【0015】
本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」を指す。
本明細書において、用語「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」を指す。
【0016】
本発明によれば、意外なことに、少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物を含んでなる第一パート:並びに少なくとも1の有機遷移金属化合物および少なくとも1のリン含有化合物を含んでなる第二パートを含んでなる(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物であって、第一パートおよび/または第二パートが、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーを更に含んでなる、
(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、ヒトに優しく、短いゲル化時間および/または発熱ピーク時間、および/または高い発熱ピーク温度および/または接合強度を示す。
【0017】
好ましくは、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、過酸化物および/またはアミンを含まず、好ましくは過酸化物およびアミンを含まない。
【0018】
アミン-アルデヒド縮合化合物
本発明において、アミン-アルデヒド縮合化合物は、アルデヒドとアミンの使用比率は問わず、アルデヒドとアミンとの反応により得られるアミン-アルデヒド縮合生成物を意味する。アミン-アルデヒド縮合化合物の説明は、下記米国特許に見ることができる:1,780,334、Burnettら、1930年11月4日発行;1,908,093、Williams、1933年5月9日発行;および2,578,690、Gerhart、1951年12月18日発行。アミン-アルデヒド縮合化合物は、構造用接着剤組成物における還元剤として通常使用されているいずれの化合物でもよい。
【0019】
好ましくは、アミン-アルデヒド縮合化合物は、使用するアミン1モルに対して少なくとも1モルのアルデヒドを含む反応混合物から得られる。より好ましくは、反応混合物は、使用するアミン1モルに対して約1.0~約3.5モルのアルデヒドを含み、最も好ましくは、使用するアミン1モルに対して約1.5~約3.0モルのアルデヒドを含む。
【0020】
アミン-アルデヒド縮合物に使用されるアルデヒドは、芳香族アルデヒド(例えばベンズアルデヒドおよびナフトアルデヒド)および脂肪族アルデヒドからなる群から選択することができ、好ましくは脂肪族アルデヒドである。
【0021】
例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘプタアルデヒド、ヘキサアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、ヒドロシンナムアルデヒドおよび2-フェニルプロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒドを、本明細書に開示した縮合生成物の調製に効果的に使用できる。一般的な目的のために、適用可能なアルデヒドは式:R1CHOで表すことができ、式中、R1は約12個までの炭素原子を含む炭化水素基である。
【0022】
アミン-アルデヒド縮合生成物に使用されるアミンは、第一級アミンでも第二級アミンでもよく、脂肪族アミンおよび芳香族アミンからなる群から選択することができる。
【0023】
例えば、エチルアミン、n-ブチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ヘキシルアミン、t-ブチルアミン等の第一級脂肪族アミンが好都合に使用できる。また、アニリン、p-トルイジン、o-またはp-ナフタルアミン、キシリデン、ベンジルアミンまたはp-ベンジルアニリンのような第一級芳香族アミンを使用することができる。本明細書に開示した縮合生成物の調製に使用するアミンとしては第一級アミンが好ましいが、脂肪族または芳香族の第二級アミンも使用できる。許容される第二級アミンの典型例は、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジフェニルアミン、N-フェニルベンジルアミンおよびN-アリルアニリンである。一般的な目的のために、適用可能なアミンは式:R2R3NHで表すことができ、式中、R2は約14個までの炭素原子を含む炭化水素基であり、R3は水素またはR2である。
【0024】
本明細書の開示において有用なアミン-アルデヒド縮合化合物の典型例は、ホルムアルデヒド-p-ベンジルアニリン;アセトアルデヒド-ベンジルアミン;クロトンアルデヒド-ブチルアミン;シンナムアルデヒド-アニリン;シンナムアルデヒド-ブチルアミン;2-フェニルプロピオンアルデヒド-ブチルアミン;ブチルアルデヒド-ブチルアミン;ブチルアルデヒド-アニリン;ヒドロシンナムアルデヒド-ブチルアミン;ナフトアルデヒド-o-トルイジン;およびヘプタアルデヒド-N-アリルアニリンである。好ましくは、アミン-アルデヒド縮合化合物は、ブチルアルデヒド-アニリン縮合化合物、好ましくはPDHP(3,5-ジエチル-1,2-ジヒドロ-1-フェニル-2-プロピルピリジン)である。
【0025】
そのようなアミン-アルデヒド縮合化合物の市販品は、Reilly Industries, Inc.(インディアナ州インディアナポリス)のREILLY PDHPTMである。REILLY PDHPTMは混合物であって、活性成分は、化学式:C15H25Nおよび下記構造:
を有するn-フェニル-2-プロピル-3,5-ジエチル-1,2-ジヒドロピリジンであると考えられる。
【0026】
好ましくは、アミン-アルデヒド縮合化合物の含有量は、第一パートの総重量に基づいて0.3~3.5重量%である。より好ましくは、アミン-アルデヒド縮合化合物の含有量は、第一パートの総重量に基づいて0.75~2.0重量%である。前記含有量が3.5重量%より高いと、接合強度が低下する傾向にある。前記含有量が0.3重量%より低いと、硬化速度が低くなる傾向にあり、接合特性が低下する傾向にある。
【0027】
有機遷移金属化合物
本発明において、有機遷移金属化合物は、遷移金属を含有する任意の有機化合物を意味する。遷移金属は、元素周期表のIB族、IIIA族、IIIB族、IVA族、VA族、VI族、VII族、VIIA族の金属である。有利な遷移金属には、銅、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデンおよびバナジウムが包含される。好ましくは、遷移金属は、銅およびバナジウムから選択される。
【0028】
有機遷移金属化合物には、酸化物、塩、有機金属キレートおよび錯体が包含される。適当な有機塩には、例えばメトキシドおよびエトキシド等のアルコキシド、並びにアセテート、ヘキソエート、オクトエート、エチルヘキサノエートおよびナフテネート等のカルボキシレートが包含される。他の適切な遷移金属錯体には、アセチルアセトネートおよびヘキサフルオロアセチルアセトネートが包含される。好ましくは、有機遷移金属化合物は、
アセチルアセトネートおよびヘキサフルオロアセチルアセトネートから選択される。
【0029】
好ましい実施形態において、有機遷移金属化合物は、銅錯体化合物およびバナジウム錯体化合物から選択される。より好ましくは、有機遷移金属化合物はバナジウム錯体化合物である。
【0030】
銅錯体化合物は、好ましくは、銅錯体化合物中の銅原子に配位結合しており、下記一般式(1):
[式中、*は、銅錯体化合物中の銅原子の配位座を表し、R1およびR2は、同じまたは異なっており、独立して、任意に置換されていてよい一価炭化水素基を表す]
によって表される有機リガンドを少なくとも1つ含む。好ましくは、R1およびR2は、任意に置換されていてよいC1~C20アルキル基、アルケニル基またはアルコキシル基である。より好ましくは、R1およびR2は、任意に置換されていてよいC1~C8アルキル基、アルケニル基またはアルコキシル基である。
【0031】
市販されている銅錯体化合物の例は、例えば、Sinopharmの銅(II)アセチルアセトネートである。
【0032】
バナジウム錯体化合物は、好ましくは、バナジウム錯体化合物中のバナジウム原子に配位結合しており、下記一般式(2):
[式中、*は、バナジウム錯体化合物中のバナジウム原子の配位座を表し、R3およびR4は、同じまたは異なっており、独立して、任意に置換されていてよい一価炭化水素基を表す]
によって表される有機リガンドを少なくとも1つ含む。好ましくは、R3およびR4は、任意に置換されていてよいC1~C20アルキル基、アルケニル基またはアルコキシル基である。より好ましくは、R3およびR4は、任意に置換されていてよいC1~C8アルキル基、アルケニル基またはアルコキシル基である。
【0033】
市販のバナジウム錯体化合物の例は、例えば、Sinopharmからのバナジル(IV)アセチルアセトネートおよびバナジウム(III)アセチルアセトネートである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、有機遷移金属化合物は、バナジル(IV)-アセチルアセトネートである。
【0035】
好ましくは、有機遷移金属化合物の含有量は、第二パートの総重量に基づいて0.03~0.4重量%である。より好ましくは、有機遷移金属化合物の含有量は、第二パートの総重量に基づいて0.075~0.2重量%である。前記含有量が0.4重量%より高いと、硬化率が低下する傾向にある。このことは低い発熱ピーク温度に対応し、未反応成分が残留して低い結合特性を招く。前記含有量が0.03重量%より低いと、硬化速度が低下する傾向にある。
【0036】
リン含有化合物
本発明において、リン含有化合物は、構造用接着剤系において促進剤として使用されるのに適した任意のリン含有化合物を意味する。好ましくは、リン含有化合物は、リン酸、並びにホスフィン酸、ホスホン酸およびリン酸の有機誘導体からなる群から選択され、前記有機誘導体は、(好ましくは末端に位置する)少なくとも1個の官能基の存在によって特徴付けられる有機基を少なくとも1個有する。そのような有機誘導体は、飽和または不飽和であってよく、好ましくは、少なくとも1個のオレフィン性不飽和単位の存在により特徴付けられる有機基を少なくとも1個有し得る。より具体的には、そのようなリン含有化合物は、下記式:
[式中、各Rは同じまたは異なり、各Rは独立して、炭素-リン結合を介してリン原子に直接結合した二価有機基であり、前記二価基は、二価非置換有機基、並びにハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、1~8個、好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル基、および少なくとも1つの芳香族核を含む少なくとも1つの部位を有するアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する二価有機基からなる群から選択され;各Xは同じまたは異なり、各Xは、独立して、水素、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、ハロゲンおよび
からなる群から選択される官能基である];
[式中、RおよびXは、先に説明した通りであり;R1は水素または-R2-X(ここで、R2は、炭素-酸素結合を介して酸素基に直接結合した二価有機基であり、前記二価基R2は、二価非置換有機基、並びにハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、1~8個、好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル基、および少なくとも1個の芳香族核を含む少なくとも1つの部位を有するアリール基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する二価有機基からなる群から選択され、Xは先に説明した通りである)である];および
[式中、R1は、先に説明した通りである]
を有する。
【0037】
リン含有の一般に好ましい群は、式:
[式中、R3は、水素、ハロゲン、1~8個、好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル基、およびCH2=CH-からなる群から選択され;R4は、水素、1~8個、好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル基、および1~8個、好ましくは1~4個の炭素原子を含むハロアルキル基からなる群から選択され;Aは、-R5O-および
(ここで、R5は、1~9個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式アルキレン基であり;R6は、1~7個、好ましくは2~4個の炭素原子を有するアルキレン基であり;nは、2~10の整数であり、mは1~2、好ましくは1である)からなる群から選択される]
を有する。
【0038】
複数の式I~IVにおいて、二価有機基RおよびR2は、化合物構造を有し得る。即ち、該基は、-O-、-S-、-COO-、-NH-、-NHCOO-および
を含むか、または-O-、-S-、-COO-、-NH-、-NHCOO-および
によって互いに分離された、少なくとも1個の、または少なくとも2個の一連の、非置換または置換炭化水素基を含み得る。ここで、R7は、2~7個、好ましくは2~4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、pは2~10の整数である。好ましくは、該二価基は、任意の非繰り返し単位において、1~22個、好ましくは1~9個の炭素原子の直鎖または環を有するアルキレン基である。化合物構造を有する二価基が、そのような直鎖または環を2以上有することは理解されるであろう。該二価基は、飽和または不飽和;脂肪族、脂環式または芳香族であってよく;化合物構造は、その混合物を含み得;一般に、炭素原子の各鎖または各環に1~約22個の炭素原子を有する。
【0039】
複数の式I~IIIにおいて、典型的なX-R-およびX-R2-基には、限定されるものではないが、低級アルケニル、シクロヘキセニル、ヒドロキシル-低級アルケニル、ハロ-低級アルケニル、カルボキシ-低級アルケニル、低級アルキル、アミノ-低級アルキル、ヒドロキシル-低級アルキル、メルカプト-低級アルキル、アルコキシ-低級アルキル、ハロ-低級アルキル、ジ-ホスホノメチル-アミノ-低級アルキル、フェニル-ヒドロキシ-ホスホノメチル、アミノフェニル-ヒドロキシ-ホスホノメチル、ハロフェニル-ヒドロキシ-ホスホノメチル、フェニル-アミノ-ホスホノメチル、ハロフェニル-アミノ-ホスホノメチル、ヒドロキシル-ホスホノメチル、低級アルキル-ヒドロキシ-ホスホノメチル、ハロ-低級アルキル-ヒドロキシ-ホスホノメチルおよびアミノ-低級アルキル-ヒドロキシ-ホスホノメチルが包含され;用語「低級」は、1~8個、好ましくは1~4個の炭素原子を含む基を意味する。
【0040】
ビニル不飽和を有するリン含有化合物が、アリル不飽和を有するそのような化合物よりも好ましく、ビニルまたはアリル、特にビニルの不飽和を1単位有するホスフィン酸、ホスホン酸およびリン酸のモノエステルが本発明において好ましい。典型的なリン含有化合物には、限定されるものではないが、リン酸;2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート;ビス-(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート;2-アクリロイルオキシエチルホスフェート;ビス-(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート;メチル-(2-メタクリロイルオキシメチル)ホスフェート;エチルメタクリロイルオキシエチルホスフェート;メチルアクリロイルオキシエチルホスフェート;エチルアクリロイルオキシエチルホスフェート;式IV[式中、R3は水素またはメチルであり、R4はプロピル、イソブチル、エチルヘキシル、ハロプロピル、ハロイソブチルまたはハロエチルヘキシルである]で示される化合物;ビニルホスホン酸;シクロヘキセン-3-ホスホン酸;α-ヒドロキシブテン-2-ホスホン酸;1-ヒドロキシ-1-フェニルメタン-1,1-ジホスホン酸;1-ヒドロキシ-1-メチル-1-1-ジホスホン酸;1-アミノ-1-フェニル-1,1-ジホスホン酸;3-アミノ-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジホスホン酸;アミノ-トリス(メチレンホスホン酸);γ-アミノ-プロピルホスホン酸;γ-グリシドキシプロピルホスホン酸;リン酸-モノ-2-アミノエチルエステル;アリルホスホン酸;アリルホスフィン酸;β-メタクリロイルオキシエチルホスフィン酸;ジアリルホスホン酸;ビス(β-メタクリロイルオキシエチル)ホスフィン酸およびアリルメタクリロイルオキシエチルホスフィン酸が包含される。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、リン含有化合物は、有機リン含有化合物および無機リン含有化合物からなる群から選択され、好ましくは有機リン含有化合物である。
【0042】
本発明のより好ましい実施形態では、リン含有化合物は、リン酸塩であり、好ましくは、ビス(2-ヒドロキシルエチルメタクリレートホスフェート)および2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステルからなる群から選択される。
【0043】
リン含有化合物の含有量は、第二パートの総重量に基づいて0.2~4重量%である。好ましくは、リン含有化合物の含有量は、第二パートの総重量に基づいて0.75~2.5重量%である。前記含有量が4重量%より高いと、硬化速度が低下する傾向にあり、結合特性が低下する傾向にある。前記含有量が0.2重量%より低いと、硬化率が低下する傾向にあり、これは低い発熱ピーク温度に対応する。また、結合特性も低くなる傾向にある。
【0044】
一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマー
本発明では、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーを含む。少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマーは、接着剤組成物の第一パーおよび/または第二パートに含まれる。
【0045】
本発明において、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマーは、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む重合可能な(メタ)アクリレートエステルモノマーを意味する。本発明の接着剤組成物に使用するための一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む重合可能な(メタ)アクリレートエステルモノマーは、混合によりモノマー材料の均一な混合物を形成できる、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む1以上の重合可能な(メタ)アクリレートエステルモノマーを含み得る。使用できる、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む重合可能な(メタ)アクリレートエステルモノマーには、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む一官能、二官能および多官能アクリレートおよびメタクリレート並びにそれらの混合物が包含され、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含むメタクリレートが一般に好ましい。一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む適当な(メタ)アクリレートには、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む公知のモノ-(メタ)アクリレートエステル、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが包含される。好ましくは、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートからなる群から選択され、より好ましくはヒドロキシプロピルメタクリレートである。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマーは、下記一般式:
[式中、R’は、エチレン、プロピレンまたはイソプロピレン基である]
を有し得る。
【0047】
(メタ)アクリル樹脂
本発明では、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂を含み得る。少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂は、接着剤組成物の第一パートおよび/または第二パートに含まれ得る。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂は、任意に非(メタ)アクリルモノマーを組み合わせてよい、1以上の(メタ)アクリルモノマーの重合によって得ることができる。例示的な(メタ)アクリルオリゴマーには、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート/n-ブチルアクリレート/エチルアクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、およびそれらの組み合わせが包含される。
【0049】
市販の(メタ)アクリル樹脂の例は、例えば、Sartomerから入手可能なCN 959、DYMAXから入手可能なBR-202 DYMA、DYMAXから入手可能なBR-571MB、およびHenkelから入手可能なSS-194である。
【0050】
強化剤
本発明では、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、少なくとも1の強化剤を含んでよい。少なくとも1の強化剤は、接着剤組成物の第一パートおよび/または第二パートに含まれ得る。
【0051】
強化剤は、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物において通常使用される任意の強化剤であってよい。いくつかの有用な強化剤の例には、エラストマーゴム;エラストマーポリマー;液状エラストマー;ポリエステル;アクリルゴム;ブタジエン/アクリロニトリルゴム;ブナゴム;ポリイソブチレン;ポリイソプレン;天然ゴム;スチレン/ブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴム;ポリウレタンポリマー;エチレン/酢酸ビニルポリマー;フッ素化ゴム;イソプレン-アクリロニトリルポリマー;クロロスルホン化ポリエチレン;ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;ブロック共重合体;コア-シェルゴム粒子、およびそれらの混合物が包含される。好ましくは、強化剤はゴム強化剤である。
【0052】
市販の強化剤の例は、ZEONから入手可能なNipol 1072 CGXである。
【0053】
阻害剤
本発明では、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、少なくとも1の阻害剤を含み得る。少なくとも1の阻害剤は、接着剤組成物の第一パートおよび/または第二パートに含まれ得る。
【0054】
(メタ)アクリレート系接着剤組成物の貯蔵安定性を向上できる阻害剤は、当技術分野で知られている任意の一般的な酸重合阻害剤およびフリーラジカル阻害剤であり得る。そのような阻害剤の例には、限定されるものではないが、二酸化硫黄、氷酢酸、ヒドロキノン、2-メチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、t-ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール等が包含される。
【0055】
市販の阻害剤の例は、例えば、Sinopharmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)および4-メトキシフェノール(MeHQ)である。
【0056】
任意の添加剤
本発明において、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、上記したものの他に1以上の添加剤を更に含んでよい。具体的には、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物に使用され得る該添加剤は、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物の効果に悪影響を及ぼさない限り、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物において通常使用されている任意の添加剤である。該添加剤の例には、限定されるものではないが、架橋剤、補強剤、充填剤、顔料、増粘剤、溶剤、およびそれらの混合物が包含される。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は:
一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、
少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、
少なくとも1の強化剤、
少なくとも1の阻害剤、および
少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物
を含んでなる第一パート;並びに
一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、
少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、
少なくとも1の強化剤、
少なくとも1の阻害剤、
少なくとも1の有機遷移金属化合物、および
少なくとも1のリン含有化合物
を含んでなる第二パート
を含んでなる。
【0058】
より好ましい実施形態では、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は:
第一パートの総重量に基づいて、
30.0~90.0重量%、好ましくは40.0~80.0重量%、より好ましくは55.0~75.0重量%の一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、
5~40.0重量%、好ましくは10.0~30.0重量%、より好ましくは15.0~25.0重量%の少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、
5~30.0重量%、好ましくは5.0~20.0重量%、より好ましくは9重量%~15重量%の少なくとも1の強化剤、
0.05~0.5重量%、好ましくは0.075~0.2重量%の少なくとも1の阻害剤、および
0.3~3.5重量%、好ましくは0.75~2.0重量%の少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物
を含んでなる第一パート;並びに
第二パートの総重量に基づいて、
30.0~90.0重量%、好ましくは40.0~80.0重量%、より好ましくは55.0~75.0重量%の一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、
5~40.0重量%、好ましくは10.0~30.0重量%、より好ましくは15.0~25.0重量%の少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、
5~30.0重量%、好ましくは5.0~20.0重量%、より好ましくは9重量%~15重量%の少なくとも1の強化剤、
0.05~0.5重量%、好ましくは0.075~0.2重量%の少なくとも1の阻害剤、
0.03~0.4重量%、好ましくは0.075~0.2重量%の少なくとも1の有機遷移金属化合物、および
0.2~4重量%、好ましくは0.75~2.5重量%の少なくとも1のリン含有化合物
を含んでなる第二パート
を含んでなる。
【0059】
当技術分野で知られているように、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物における第一パートおよび第二パートは、別個に調製され、使用まで貯蔵される。第一パート:第二パートの重量比は、5:1~1:5、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1.5:1~1:1.5、最も好ましくは1.2:1~1:1.2である。更に好ましい実施形態では、第一パート:第二パートの重量比は、1:1:1~1:1.1、より好ましくは1:1.05~1.05:1である。
【0060】
本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、下記工程:
a)少なくとも1のアミン-アルデヒド縮合化合物を供給する工程;
b)任意に、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、および/または少なくとも1の強化剤、および/または少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、および/または少なくとも1の阻害剤、および/または他の任意の添加剤を添加し、全成分を均一に混合して第一パートを得る工程;
c)少なくとも1の有機遷移金属化合物と少なくとも1のリン含有化合物とを混合する工程;並びに
d)任意に、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む少なくとも1の(メタ)アクリレートモノマー、および/または少なくとも1の強化剤、および/または少なくとも1の(メタ)アクリル樹脂、および/または少なくとも1の阻害剤、および/または他の任意の添加剤を添加し、全成分を均一に混合して第二パートを得る工程
により調製され得る。
【0061】
第一パートおよび第二パートは、混合装置の別々のチャンバーに別々に貯蔵され得、(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物の使用前に混合しなければならない。本発明の接着剤組成物は、周囲温度(即ち25℃±2℃)で良好に硬化できる。また、高い硬化温度により、(メタ)アクリレート系二液型接着剤の接合強度は向上する。
【0062】
本発明において、加熱は、(メタ)アクリレート系二液型接着剤の硬化に使用できる任意のデバイスにより、特に、標準的なオーブン/チャンバー、または試験片を所定の温度に浸漬するための温度制御システムを備えたその他の装置により実施できる。本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物は、室温で硬化すると金属基材に対する高い接合強度を示し、高温で硬化すると顕著に向上した接合強度を示す。好ましくは、高温は80℃~130℃である。より好ましくは、高温は100℃~110℃である。前記高温が80℃より低いと、接合強度の顕著な向上は見られず、同等の接合強度向上の効果を得るためにはより長い時間を要する。前記高温が130℃より高いと、接合強度は、高温エージングの影響により低下する傾向がある。
【0063】
本発明の方法の好ましい実施形態において、第一基材および第二基材は、好ましくはスピーカー部材およびコイルからなる群から選択される、金属、プラスチック、セラミック、ガラスおよびセルロース系材料からなる群から選択される、同じまたは異なる材料である。
【0064】
また、本発明は、本発明の(メタ)アクリレート系二液型接着剤組成物により接合された、または本発明の方法によって得られた、物品を提供する。
【実施例
【0065】
実施例
以下の実施例を参照して、本発明を更に詳細に説明し、例示する。実施例は、当業者が本発明をよりよく理解し、実施するのを助けることが意図されているが、本発明の範囲を制限することは意図されていない。実施例中の全ての量は、特に記載のない限りグラム単位での重量に基づく。
【0066】
材料
下記材料を実施例で用いた。
【0067】
二液型接着剤組成物の調製
以下の表に記載した量で第一パートの全材料を混合して第一パートを得、以下の表に記載した量で第二パートの全材料を混合して第二パートを得、その後、使用前に第一パートと第二パートを混合することにより、実施例(Ex)の二液型接着剤組成物を調製した。
【0068】
試験方法
実施例の二液型接着剤組成物の特性を、下記のように測定した。
【0069】
発熱ピーク温度および発熱ピーク時間
25℃±2℃および50±5%RHの制御された雰囲気中で、試験を実施した。サンプルは試験前に25℃で安定させた。1:1 Sulzer mixpacミキサーを用いて、二液型接着剤組成物の第一パートと第二パートを一緒に混合した。二液型接着剤組成物の混合物の様々な滞留時間における発熱温度は、熱電対によって自動的に記録した。二液型接着剤組成物の発熱ピーク温度は、反応する熱硬化性樹脂のゲル化時間および発熱ピーク温度に関するASTM D2471標準試験法に従って測定した。詳細な手順は、下記手順のように少し変更した:
(a)1:1 Sulzer mixpacミキサーにスタティックミキサーを取り付けずに、少量の二液型接着剤組成物を押し出し、第一パートと第二パートが1:1 Sulzer mixpacミキサーの両側から確実に分注されるようにした;
(b)100mL容の使い捨てプラスチックビーカーを断熱容器に入れた;
(c)1:1 Sulzer mixpacミキサーに適合するスタティックミキサーを1:1 Sulzer mixpacミキサーに取り付け、15gの二液型接着剤組成物の混合物をビーカーに押し出した;
(d)熱電対のプローブをビーカーの中心に直ちに挿入し、1秒間隔で時間に対する温度出力を記録するように熱電対をプログラムした;
(e)温度がピーク値に達し、その後約10℃に低下した後、ビーカーからプローブを取り出した。
二液型接着剤組成物の適当な発熱ピーク時間は、2000秒以下でなければならない。
【0070】
ゲル化時間
二液型接着剤組成物のゲル化時間は、混合した接着剤組成物の粘度が明らに上昇して分注が困難になるとき、「発熱ピーク温度および発熱ピーク時間」の試験における発熱温度が30℃に達する時間により測定した。
【0071】
ラップ-せん断強度
二液型接着剤組成物のラップ-せん断強度は、引張荷重によるシングル-ラップ-ジョイント接着結合金属試験片の見かけせん断強度(金属-金属)に関するASTM D1002標準試験法に従って測定した。
室温(即ち25℃)で24時間硬化した後の軟鋼基材上二液型接着剤組成物の適当なラップ-せん断強度は、1N/mmより高くなければならず、室温で24時間硬化した後に100℃で3時間硬化した後の軟鋼基材上二液型接着剤組成物の適当なラップ-せん断強度は、5N/mmより高くなければならない。
二液型接着剤組成物の試験結果もまた、下記表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の実施例1および2によって説明されている通り、一分子当たり少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、短いゲル化時間および発熱ピーク時間並びに高い発熱ピーク温度を示した。このことは、迅速な硬化速度および高い硬化率にそれぞれ対応し、好ましい。また、本発明の二液型接着剤組成物は、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方で良好な接合強度を示した。
【0074】
一方、実施例3および4によって説明されている通り、(メタ)アクリレートモノマーがヒドロキシル基を含まない場合、二液型接着剤組成物は、短いゲル化時間および発熱ピーク時間並びに高い発熱温度を示さず、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方での良好な接合強度も示さなかった。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示されている通り、種々の(メタ)アクリル樹脂を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、短いゲル化時間および発熱ピーク時間並びに高い発熱ピーク温度を示した。このことは、迅速な硬化速度および高い硬化率にそれぞれ対応し、好ましい。また、本発明の二液型接着剤組成物は、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方で良好な接合強度を示した。更に、表2の試験結果は、高温で硬化した本発明の二液型接着剤組成物が、室温で硬化した場合よりはるかに高い接合強度を示したことを示した。
【0077】
【表3】
【0078】
表3に示されている通り、アミン-アルデヒド縮合化合物を用いることにより、特に第一パートの総重量に基づいて0.3~3.5重量%のアミン-アルデヒド縮合化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、短い発熱ピーク時間を示した。このことは迅速な硬化速度に対応し、好ましい。本発明の二液型接着剤組成物はまた、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方で良好な接合強度を示した。更に、実施例9に示されている通り、第一パートの総重量に基づいて0.75~2重量%のアミン-アルデヒド縮合化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、より短い発熱ピーク時間、並びに24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方でのより良好な接合強度を示した。
【0079】
【表4】
【0080】
表4に示されている通り、有機遷移金属化合物を用いることにより、特に第二パートの総重量に基づいて0.03~0.4重量%の有機遷移金属化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方で良好な接合強度を示した。また、実施例12により示されている通り、第二パートの総重量に基づいて0.075~0.2重量%の有機遷移金属化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方でより良好な接合強度を示した。
【0081】
【表5】
【0082】
表5に示されている通り、リン含有化合物を用いることにより、特に第二パートの総重量に基づいて0.2~4重量%のリン含有化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、短い発熱ピーク時間、並びに24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方での良好な接合強度を示した。また、実施例17に示されている通り、第二パートの総重量に基づいて0.075~2.5重量%のリン含有化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、より短い発熱ピーク時間、並びに24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方でのより良好な接合強度を示した。
【0083】
【表6】
【0084】
表6に示されている通り、有機遷移金属化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方で良好な接合強度を示した。また、実施例21および22によって示されている通り、バナジウムおよび第一銅錯体、特にバナジウム有機錯体、より好ましくはバナジル(IV)-アセチルアセトネートを用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方でより良好な接合強度を示した。
【0085】
【表7】
【0086】
表7の実施例26に対する実施例23~25によって説明されている通り、リン含有化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、より短い発熱ピーク時間、並びに24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方でのより良好な接合強度を示した。また、実施例26に対する実施例23~24に示されている通り、有機リン含有化合物を用いることにより、特にホスホン酸塩を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、より短い発熱ピーク時間、並びに24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方でのより良好な接合強度を示した。
【0087】
【表8】
【0088】
表8の実施例27によって説明されている通り、アミン-アルデヒド縮合化合物を用いることにより、本発明の二液型接着剤組成物は、短いゲル化時間および発熱ピーク時間並びに高い発熱ピーク温度を示した。このことは、迅速な硬化速度および高い硬化率にそれぞれ対応し、好ましい。本発明の二液型接着剤組成物はまた、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方で良好な接合強度を示した。
【0089】
一方、実施例28~32によって説明されている通り、アミン-アルデヒド縮合化合物を他の還元剤に置き換えると、二液型接着剤組成物は、短いゲル化時間および発熱ピーク時間並びに高い発熱温度も、24HRTCおよび24HRTC+100℃3時間の両方での良好な接合強度も示さなかった。
【国際調査報告】