(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ネオペンチルグリコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/141 20060101AFI20240920BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20240920BHJP
C07C 47/19 20060101ALI20240920BHJP
C07C 45/74 20060101ALI20240920BHJP
C07C 45/80 20060101ALI20240920BHJP
C07C 45/82 20060101ALI20240920BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C07C29/141
C07C31/20 Z
C07C47/19
C07C45/74
C07C45/80
C07C45/82
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520796
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2023013046
(87)【国際公開番号】W WO2024053935
(87)【国際公開日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0114479
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0111947
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン キュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】バエク、ギ ス
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ナ ロ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC45
4H006AD11
4H006AD16
4H006BA69
4H006BA83
4H006BB14
4H006BD33
4H006BD35
4H006BD36
4H006BD52
4H006BD53
4H006BD84
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、アルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るステップと、前記第1反応生成物を抽出剤と接触させ、蒸留して、抽出液および抽残液を得るステップと、前記抽残液を鹸化反応器に供給して、触媒に還元させるステップと、前記抽出液および前記触媒をアルドール精製塔に供給し、蒸留して、上部排出ストリームと下部排出ストリームとに分離するステップと、前記アルドール精製塔の下部排出ストリームを水添反応器に供給して、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、前記第2反応生成物からネオペンチルグリコールを取得するステップとを含むネオペンチルグリコールの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルデヒドをアルドール反応器でアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るステップと、
前記第1反応生成物をアルドール抽出塔に供給し、抽出剤と接触させて、ヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液および触媒塩を含む抽残液を得るステップと、
前記抽残液を鹸化反応器に供給し、前記触媒塩を触媒に還元させるステップと、
前記抽出液と前記触媒を含む鹸化反応器排出ストリームをアルドール精製塔に供給し、蒸留して、ヒドロキシピバルデヒドを含む前記アルドール精製塔の下部排出ストリームと、未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含む前記アルドール精製塔の上部排出ストリームを得るステップと、
前記アルドール精製塔の前記下部排出ストリームを水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、
前記第2反応生成物からネオペンチルグリコールを取得するステップとを含む、ネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項2】
前記鹸化反応器排出ストリームを触媒回収塔に供給して触媒を含むストリームを分離した後、前記触媒を含むストリームを前記アルドール精製塔に供給するステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項3】
前記アルドール精製塔の前記上部排出ストリームを前記アルドール反応器に循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項4】
前記アルドール精製塔の前記上部排出ストリームを原料回収塔に供給し、蒸留して、
前記未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含む前記原料回収塔の上部排出ストリームを前記アルドール反応器に循環させるステップをさらに含む、請求項3に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項5】
前記第2反応生成物は、触媒、ネオペンチルグリコール、抽出剤およびヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)を含み、
前記第2反応生成物から前記ネオペンチルグリコールを取得するステップは、
前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製塔に供給して、触媒および抽出剤を含むストリームを抽出剤回収塔に供給し、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステルを含むストリームをヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル精製塔に供給し、ネオペンチルグリコールを含むストリームからネオペンチルグリコールを取得するステップと、
前記ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル精製塔で前記ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステルウル含むストリームを蒸留して、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステルを取得するステップとをさらに含んで行われる、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項6】
前記抽出剤回収塔の上部分画から触媒を回収し、前記アルドール精製塔に供給させるステップと、
前記抽出剤回収塔の下部分画から抽出剤を回収し、前記アルドール抽出塔に供給させるステップとを含む、請求項5に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項7】
前記ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル精製塔の上部排出ストリームからネオペンチルグリコールを回収し、ネオペンチルグリコール精製塔に還流させるステップを含む、請求項5に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項8】
前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項9】
前記抽出剤は、2-エチルヘキサノール(2-EthylHexanol;2-EH)を含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項10】
前記ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステルは、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル精製塔の最上部から下部側へ50~80%の高さの側部から取得する、請求項5に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月8日付けの韓国特許出願第10-2022-0114479号および2023年8月25日付けの韓国特許出願第10-2023-0111947号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高純度のネオペンチルグリコールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ネオペンチルグリコールは、一般的に、触媒の存在下で、イソブチルデヒドおよびホルムアルデヒドをアルドール縮合反応させてヒドロキシピバルデヒドを形成し、前記ヒドロキシピバルデヒド(hydroxypivaldehyde)に対して水添反応を行って製造することができる。
【0004】
しかし、アルドール縮合反応過程で発生するカニッツァーロ(Cannizzaro)副反応からギ酸が生成され、前記ギ酸によって触媒が触媒塩に変化し、前記触媒塩は、水相の形態で従来廃水処理されていた。また、前記アルドール縮合反応過程の他の副反応であるティシチェンコ(Tishchenko)反応により生成されるヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HydroxyPivalic acid-Neopentylglycol Ester;HPNE)は、ネオペンチルグリコールを精製する過程で高沸点副生成物とともに全量廃棄されていた。しかし、前記ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)は、それ自体で高付加価値製品であり、これを回収し、活用する必要があった。
【0005】
すなわち、廃棄される触媒塩およびHPNEによって環境的汚染の問題を引き起こし、投入された触媒が触媒塩に生成されて廃棄されるだけ、新たな触媒を投入し続けなければならない過程で、生産コストが増加する問題があった。
【0006】
したがって、このように廃棄される触媒およびHPNEを回収し、環境にやさしいとともに、エネルギーコストを減少させることができる工程が導入されなければならない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、高純度のネオペンチルグリコールを高い回収率で取得することができ、且つ全体的な工程において、環境にやさしく、エネルギーコストをさらに節減することができるネオペンチルグリコールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルデヒドをアルドール反応器でアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るステップと、前記第1反応生成物をアルドール抽出塔に供給し、抽出剤と接触させて、ヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液および触媒塩を含む抽残液を得るステップと、前記抽残液を鹸化反応器に供給し、前記触媒塩を触媒に還元させるステップと、前記抽出液と前記触媒を含む鹸化反応器排出ストリームをアルドール精製塔に供給し、蒸留して、ヒドロキシピバルデヒドを含む下部排出ストリームと、未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含む上部排出ストリームを得るステップと、前記アルドール精製塔の下部排出ストリームを水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、前記第2反応生成物からネオペンチルグリコールを取得するステップとを含むネオペンチルグリコールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のネオペンチルグリコールの製造方法によると、アルドール縮合反応の後に生成された触媒塩を鹸化反応により触媒に還元し、前記触媒を精製および回収することにより、アルドール縮合反応の触媒を効率的に再使用することができる。これにより、ネオペンチルグリコールを経済的に製造することができ、且つ、環境汚染を低減することができる。
【0010】
さらに、本発明は、ネオペンチルグリコールを取得するためのアルドール縮合反応の副生成物として生成されるヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)を回収し、これを有用な高付加価値製品として取得することができ、一つの工程により二つの製品を取得することができる効果がある。これにより、ネオペンチルグリコールを製造するための生産コストが節減され、全体的な工程の経済性が改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法を示す工程フローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法を示す工程フローチャートである。
【
図3】本発明の比較例1によるネオペンチルグリコールの製造方法を示す工程フローチャートである。
【
図4】本発明の比較例2によるネオペンチルグリコールの製造方法を示す工程フローチャートである。
【
図5】本発明の比較例3によるネオペンチルグリコールの製造方法を示す工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0013】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内に流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内に流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合を排除するものではない。
【0014】
一方、本発明において、抽出塔、精製塔、蒸留塔、および回収塔などの装置において、前記装置の「下部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方へ95%~100%の高さの地点を意味し、具体的には、最下端(塔底)を意味し得る。同様に、前記装置の「上部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方へ0%~5%の高さの地点を意味し、具体的には、最上部(塔頂)を意味し得る。
【0015】
一方、本発明において、抽出塔、精製塔、蒸留塔、および回収塔などの装置において、前記装置の運転温度とは、特に断りのない限り、前記装置の下部温度を示すことができる。同様に、前記装置の運転圧力とは、特に断りのない限り、前記装置の上部圧力を示すことができる。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明を
図1を参照してさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態によると、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルデヒドをアルドール反応器10でアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るステップと、前記第1反応生成物をアルドール抽出塔100に供給し、抽出剤と接触させて、ヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液および触媒塩を含む抽残液を得るステップと、前記抽残液を鹸化反応器20に供給し、前記触媒塩を触媒に還元させるステップと、前記抽出液と前記触媒を含む鹸化反応器排出ストリーム21をアルドール精製塔200に供給し、蒸留して、ヒドロキシピバルデヒドを含む下部排出ストリーム220と未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含む上部排出ストリーム210を取得するステップと、前記アルドール精製塔の下部排出ストリーム220を水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコール(NeoPentylGlycol;NPG)を含む第2反応生成物を得るステップと、前記第2反応生成物からネオペンチルグリコールを取得するステップとを含むネオペンチルグリコールの製造方法が提供される。
【0018】
まず、本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルデヒドをアルドール反応器10でアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るステップを含むことができる。
【0019】
前記アルドール縮合反応は、アルドール反応器10で、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド(Formaldehyde;FA)水溶液とイソブチルデヒド(Isobutylaldehyde;IBAL)を反応させて行うことができる。具体的には、ホルムアルデヒド水溶液およびIBALを含む混合液をフィードストリーム1としてアルドール反応器10に供給し、前記アルドール反応器10内で、触媒の存在下で、アルドール縮合反応をさせて、ヒドロキシピバルデヒド(Hydroxypivaldehyde;HPA)を含む第1反応生成物を得ることができる。
【0020】
ここで、前記ホルムアルデヒド水溶液は、ホルマリンを使用することができ、ここで、前記ホルムアルデヒドは、濃度35~45重量%のものを使用することが、廃水低減の面で効果が良いことができる。このようなホルムアルデヒド水溶液は、全体のホルムアルデヒド水溶液重量に対して、40~64重量%、より具体的には45~55重量%の水を含むことができ、ホルムアルデヒドの重合を防止するために、メタノールを含むことができる。この場合、全体のホルムアルデヒド水溶液の重量に対して、前記メタノールの含量は、0.1~15重量%、より具体的には0.1~5重量%であることができる。前記メタノールの含量が0.1重量%未満である場合、ホルムアルデヒド水溶液内のメタノールの含量が足りず、縮合反応が繰り返される重縮合反応が発生する恐れがある。前記メタノールの含量が15重量%を超える場合、ホルムアルデヒド水溶液内のメタノールの含量が高くなってホルムアルデヒドの濃度が過剰に低くなり得る。
【0021】
ここで、前記触媒は、アミン系化合物であることができる。具体的には、トリアルキルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンのような第三級アミン化合物が適することができる。より具体的には、前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含むことができる。本発明では、TEAが、アルドール縮合反応において効率が最も優れることから、触媒として使用されることができる。
【0022】
前記アルドール反応器10において、アルドール縮合反応温度は、70℃~100℃であることができる。前記アルドール縮合反応温度が70℃未満である場合、温度が低くてアルドール縮合反応がスムーズでない可能性があるため、高い転化率でHPAを含む第1反応生成物を取得することが困難であり得る。前記アルドール縮合反応温度が100℃を超える場合、アルドール縮合反応中に副生成物の生成が加速化することができる。
【0023】
前記アルドール反応器10での滞留時間は、0.1時間~3時間であることができる。前記滞留時間が0.1時間未満である場合、アルドール縮合反応の進行に伴うHPA取得量が減少し得、前記滞留時間が3時間を超える場合、長時間行われることによってエネルギー効率が低下し、副生成物が過剰に生成され得る。
【0024】
本発明のアルドール反応器10で述べた条件下で、アルドール縮合反応が行われ、HPAが生成されることができる。ここで、前記アルドール縮合反応で発生するカニッツァーロ(Cannizzaro)副反応によってギ酸が生成され、前記ギ酸が触媒であるTEAと反応して、TEA塩、すなわち、触媒塩が生成され得る。また、前記アルドール縮合反応の他の副反応であるティシチェンコ(Tishchenko)反応により、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HydroxyPivalic acid-Neopentylglycol Ester;HPNE)が生成され得る。従来、前記HPNEを副生成物として取り扱って廃棄することが一般的であったが、本発明の一実施形態によると、HPNEを分離して、これを価値のある原料として活用することができる。
【0025】
結果、アルドール反応器10から排出されるストリーム2には、HPA、触媒塩およびHPNEが、第1反応生成物として含まれることができる。
【0026】
次いで、本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記第1反応生成物をアルドール抽出塔100に供給し、抽出剤と接触させて、HPAを含む抽出液および触媒塩を含む抽残液を得るステップを含むことができる。
【0027】
具体的には、アルドール反応器10で生成されたHPAを含む第1反応生成物をアルドール反応器排出ストリーム2としてアルドール抽出塔100に供給することができる。前記アルドール抽出塔100では、アルドール反応器排出ストリーム2を介して供給された前記第1反応生成物を抽出剤と接触させて、HPAと抽出剤を含む有機相の抽出液および触媒塩を含む液相の抽残液を得ることができる。ここで、前記触媒塩は、水に解離された状態で存在することができ、前記水は、ギ酸水溶液から由来することができる。
【0028】
ここで、前記抽出剤は、脂肪族アルコール(aliphatic alcohols)であることができ、好ましくは、2-エチルヘキサノール(2-EthylHexanol;2-EH)を含むことができる。第1反応生成物に含まれたHPAは、前記2-EHに対して可溶性であることから、後述する液-液接触方式による抽出装置である本発明のアルドール抽出塔100において好ましく使用されることができる。
【0029】
前記アルドール抽出塔100は、液-液接触方式による抽出装置が用いられることができる。例えば、前記抽出装置は、Karr typeの往復プレートカラム(Karr type reciprocating plate column)、回転-円板型カラム(rotary-disk contactor)、Scheibelカラム、噴霧抽出塔(spray extraction column)、充填抽出塔(packed extraction column)、パルス充填カラム(pulsed packed column)のような抽出装置であることができる。
【0030】
また、前記アルドール抽出塔100は、アルドール反応器排出ストリーム2に含まれた多量の水を抽残液として分離することにより、後述するアルドール精製塔200での蒸留において使用されるエネルギーを節減することができる。ここで、前記水は、ホルムアルデヒド水溶液に含まれた水であることができる。
【0031】
前記アルドール抽出塔100の運転温度は、40℃~90℃であることができる。前記運転温度が40℃未満である場合、第1反応生成物が蒸留されず、前記第1反応生成物に含まれたHPAが硬化し得る。前記運転温度が90℃を超える場合、アルドール抽出塔100に流入された第1反応生成物を有機相と液相とに相分離することが困難であり得る。
【0032】
一方、本発明の一実施形態によると、前記抽出液は、アルドール抽出塔の抽出液ストリーム110としてアルドール精製塔200に供給されることができる。前記抽出液は、HPAおよび抽出剤の他にも、未反応IBALおよび触媒を含むことができる。ここで、前記未反応IBALは、アルドール反応器10で行われるアルドール縮合反応時に未反応のIBALであることができる。一方、前記抽残液は、アルドール抽出塔の抽残液ストリーム120として鹸化反応器20に供給されることができる。
【0033】
具体的には、前記抽残液に含まれた触媒塩は、鹸化反応器20において鹸化反応によって触媒に還元することができる。前記触媒塩は、上述のとおり、アルドール縮合反応による副反応によって形成されることができる。
【0034】
前記鹸化反応は、別に投入される水酸化ナトリウム(NaOH)のような無機強塩基と触媒塩の反応により行われることができ、これにより、還元された触媒を効率的に再使用することができる。例えば、アルドール縮合反応の触媒としてTEAを使用した場合、下記反応式1により、TEAの塩がTEAに還元することができる。
【0035】
[反応式1]
TEA-Salt+NaOH→TEA+Na-Salt
【0036】
一方、前記鹸化反応器20において鹸化反応の温度は、50℃以上、55℃以上または60℃以上および90℃以下、95℃以下または100℃以下であることができる。前記鹸化反応温度が50℃未満である場合、温度が低くて、鹸化反応がスムーズに行われないこともあるため、触媒への転化率が低くなり得る。前記鹸化反応温度が100℃を超える場合、鹸化反応中に副生成物が過剰に生成され得る。
【0037】
一方、前記触媒塩が鹸化反応を経て触媒に還元されず触媒塩の状態で、後続工程、例えば、後述する水添反応器30に供給される場合、水添反応器30で行われる水添反応に悪影響を及ぼし得る。したがって、その前に触媒塩を触媒に還元して除去し、前記還元した触媒を精製および回収する必要がある。具体的には、水添反応器30内で、水添反応のための条件下で、前記触媒塩は、水添反応に必要な水添反応触媒の役割を妨害し、様々な副反応を引き起こすため、結局、水添反応の転化率を低下させ得る。
【0038】
したがって、鹸化反応器20内で、触媒塩を触媒に還元し、前記触媒を後述するアルドール精製塔200で精製した後、回収することにより、触媒塩の水添反応器30への導入を防止して、上述の様々な副作用を最小化することができる。
【0039】
なお、前記鹸化反応器20内で触媒塩を触媒に還元することにより、前記触媒を効率的に再使用することができ、これにより、工程のコスト競争力を確保することができる。さらに、触媒塩を還元せず廃棄する場合に発生し得る環境的汚染の問題を解決することができる。
【0040】
このように還元された触媒、例えば、TEAを含む鹸化反応器排出ストリーム21は、次いで、前記アルドール精製塔200に供給されることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記鹸化反応器排出ストリーム21を触媒回収塔700に供給して、触媒を含むストリームを分離した後、前記触媒を含むストリームをアルドール精製塔200に供給するステップをさらに含むことができる。
【0042】
より具体的には、前記鹸化反応器排出ストリーム21を前記アルドール精製塔200に供給する前に、触媒回収塔700に供給することができる。前記触媒回収塔700では、触媒を含む鹸化反応器排出ストリーム21を蒸留して、還元された触媒を含む上部分画と、水と副生成物を含む下部分画とに分離することができる。
【0043】
前記触媒回収塔700の上部分画は、触媒回収塔の上部排出ストリーム710として前記アルドール精製塔200に供給されることができる。一方、前記触媒回収塔700の下部分画は、触媒回収塔の下部排出ストリーム720として排出されることができる。このように、前記触媒回収塔700で水と副生成物を分離することにより、還元された触媒を回収することができる。このように、前記触媒回収塔700で多量の水および副生成物を除去し、還元された触媒を回収し、アルドール精製塔200に供給することにより、前記アルドール精製塔200において水を蒸留するために使用されるエネルギーの量を著しく低減することができる。
【0044】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記抽出液と前記触媒を含む鹸化反応器排出ストリーム21を前記アルドール精製塔200に供給し、蒸留して、ヒドロキシピバルデヒドを含むアルドール精製塔の下部排出ストリーム220と未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含むアルドール精製塔の上部排出ストリーム210を得るステップを含むことができる。
【0045】
ここで、前記触媒を含む鹸化反応器排出ストリーム21は、鹸化反応器から排出されたストリームであり、前記触媒は、鹸化反応器で行われる鹸化反応によって触媒塩が還元された触媒であることができる。前記鹸化反応器排出ストリーム21は、上述のように、触媒回収塔700を経て水と副生成物が除去され、前記アルドール精製塔200に供給されることができる。
【0046】
具体的には、前記アルドール精製塔200では、前記アルドール精製塔200に供給された供給物を蒸留して、HPAおよび抽出剤を含むアルドール精製塔の下部排出ストリーム220と未反応IBALおよび触媒を含むアルドール精製塔の上部排出ストリーム210を取得することができる。前記アルドール精製塔200に供給された供給物は、前記抽出液および触媒回収塔の上部排出ストリーム710に加え、後述する抽出剤回収塔の上部排出ストリーム510をさらに含むことができる。
【0047】
一方、前記アルドール精製塔200の運転温度は、40℃以上、45℃以上、50℃以上または55℃以上および85℃以下、90℃以下、95℃以下または100℃以下であることができる。
【0048】
また、前記アルドール精製塔200の運転圧力は、300torr(40.0kPa)以上、350torr(46.7kPa)以上、400torr(53.3kPa)以上または450torr(60.0kPa)以上および600torr(80.0kPa)以下、650torr(86.7kPa)以下、700torr(93.3kPa)以下または760torr(101kPa)以下であることができる。前記範囲内の温度および圧力でアルドール精製塔200を運転することにより、蒸留がスムーズに行われて、相対的に低沸点物質であるTEAと相対的に高沸点物質であるHPAとの分離が容易に行われることができる。
【0049】
本発明によると、前記触媒に対して、アルドール精製塔200で精製過程を経ることにより、より高い純度の触媒を回収することができ、これをアルドール縮合反応で再使用することができる。これにより、従来、還元された触媒に対して別の精製工程を経ることなくアルドール反応器10に供給する場合に比べて、アルドール縮合反応の効率が向上することができ、副反応による副生成物の生成を最小化することができる。また、還元された触媒に対して、別の精製工程を経ることにより、前記アルドール精製塔200に供給される液相、例えば、水の量が減少して、前記アルドール精製塔200で使用されるエネルギーの量が減少することができる。
【0050】
なお、アルドール縮合反応で未反応のIBALは、アルドール抽出塔100の抽出液として分離され、前記分離された抽出液がアルドール精製塔200に供給されることができることは、上述のとおりであり、アルドール精製塔200で精製された未反応IBALは、前記触媒とともに、アルドール精製塔200の上部分画として分離されることができる。前記アルドール精製塔200の上部分画は、アルドール精製塔の上部排出ストリーム210を介して前記アルドール反応器10に循環させることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記未反応IBALおよび触媒を含むアルドール精製塔200の上部分画をアルドール精製塔の上部排出ストリーム210を介して原料回収塔600に供給することができる。前記原料回収塔600では、前記未反応IBALおよび触媒を含むアルドール精製塔の上部排出ストリーム210を蒸留して、前記未反応IBALおよび触媒を含む上部分画と、不純物である水と副生成物を含む下部分画とに分離することができる。
【0052】
前記原料回収塔600の上部分画は、原料回収塔の上部排出ストリーム610として前記アルドール反応器10に循環させることができる。一方、前記原料回収塔600の下部分画は、原料回収塔の下部排出ストリーム620として排出されることができる。このように、前記原料回収塔600で前記未反応IBALおよび触媒を再度不純物と分離することにより、アルドール反応器10でアルドール縮合反応の原料として再使用するのに適切であることができる。なお、前記アルドール反応器10で使用される触媒およびIBALをリサイクルすることになり、新たに投入される原料の量を低減することができ、工程中に使用される生産コストを節減することができる。
【0053】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、アルドール精製塔の下部排出ストリーム220を水添反応器30に供給し、水添反応させて、NPGを含む第2反応生成物を得るステップを含むことができる。ここで、前記アルドール精製塔の下部排出ストリーム220は、HPAおよび抽出剤を含むことができる。
【0054】
一方、前記水添反応器30で水添反応が行われることができ、前記水添反応は、水添反応触媒の存在下で、前記水添反応器30にさらに投入された水素とHPAの反応により行われることができる。
【0055】
前記水添反応は、100~1500psig(pounds per square inch gauge Pressure)(0.69~10.3MPaG)の水素圧力および反応温度100℃~200℃で行われることができる。また、前記水添反応の触媒としては、銅系触媒またはニッケル触媒が使用されることができる。前記銅系触媒としては、一例として、CuO/BaO/SiO触媒であることができ、前記CuO/BaO/SiO触媒は、(CuO)x(BaO)y(SiO)z(x、y、zは、重量%であり、x:y:z=10~50:0~10:40~90、10~50:1~10:40~89 または29~50:1~10:40~70)である触媒であることができる。前記xとyの和は、好ましくは、x、yおよびzの総和(100重量%)に対して、20~50(重量%)、または30~50(重量%)であり、この範囲内で、水添反応触媒の性能に優れ、寿命が長い効果がある。一方、前記ニッケル触媒は、HPA重量に対して、2~10重量%であることができる。
【0056】
上述のように、アルドール縮合反応により形成される触媒塩、例えば、TEA塩が前記水添反応に流入される場合、様々な副反応を引き起こして、前記水添反応の転化率を低下させる可能性がある。したがって、本発明の鹸化反応器20によって転換されたTEAをアルドール精製塔200で精製および回収することにより、水添反応器30内の水添反応の転化率を向上させることができる。すなわち、水添反応の触媒に対して被毒現象を引き起こすTEA塩、すなわち、触媒毒の流入量が減量することで、水添反応が活性化することができる。
【0057】
このように、水添反応器30内で水添反応が行われて、HPAが水素と反応すると、NPGが生成されることができる。したがって、触媒、抽出剤、HPNEおよび前記NPGを含む第2反応生成物を取得することができる。ここで、前記HPNEは、アルドール反応器10でアルドール縮合反応の副生成物として生成されることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記第2反応生成物からNPGを取得するステップを含むことができる。
【0059】
具体的には、前記第2反応生成物は、触媒、ネオペンチルグリコール、抽出剤およびヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)を含むことができ、前記第2反応生成物から前記ネオペンチルグリコールを取得するステップは、前記第2反応生成物をNPG精製塔300に供給して、触媒および抽出剤を含むストリームを抽出剤回収塔500に供給し、HPNEを含むストリームをHPNE精製塔400に供給し、NPGを含むストリームからNPGを取得するステップと、前記HPNE精製塔400で前記HPNEを含むストリームを蒸留して、HPNEを取得するステップとを含んで行われることができる。
【0060】
具体的には、前記第2反応生成物は、水添反応器排出ストリーム31として、ネオペンチルグリコール(NPG)精製塔300に供給されることができる。ここで、前記NPG精製塔300は、1機または2機以上の精製塔であることができる。
【0061】
先ず、前記NPG精製塔300が1機の精製塔である場合、前記1機の精製塔の上部から抽出剤と触媒が、下部からHPNEが、側部からNPGが、それぞれ分離されることができる。例えば、前記NPG精製塔300は、一つの分離壁型蒸留塔であることができる。一方、NPG精製塔300が2機以上の精製塔である場合、触媒を上部に分離する1機以上のNPG精製塔と、前記抽出剤を上部に分離する1機以上のNPG精製塔を介して行われることができる。前記2機以上のNPG精製塔の下部には、HPNEまたはNPGを含むストリームが分離されて排出されることができる。すなわち、前記1機または2機以上のNPG精製塔300により、第2反応生成物を触媒と抽出剤、HPNE、およびNPGに分離することができる。これにより、高純度の前記NPGを取得することができる。
【0062】
一方、前記NPG精製塔300が1機の精製塔である場合、ネオペンチルグリコールは、前記ネオペンチルグリコール精製塔300の最上部から下部側へ40%~80%の高さの側部から取得することができる。
【0063】
一方、前記NPG精製塔300の運転温度は、80℃以上、100℃以上、120℃以上または140℃以上および185℃以下、190℃以下、195℃以下または200℃以下であることができる。また、前記NPG精製塔300の運転圧力は、40torr(5.3kPa)以上、90torr(12.0kPa)以上、120torr(16.0kPa)以上または140torr(18.7kPa)以上および300torr(40.0kPa)以下、400torr(53.3kPa)以下、500torr以下(66.7kPa)または600torr(80.0kPa)以下であることができる。前記温度および圧力範囲内でNPG精製塔300を運転することにより、上述のように、抽出剤と触媒、NPG、およびHPNEの分離が容易であることができる。したがって、本発明で取得しようとするNPGが含まれたストリーム330内に存在する副生成物の含量を低下させることができ、高純度のNPGを取得することができる。
【0064】
一方、アルドール縮合反応の副反応によって生成された前記HPNEは、水添反応器30において、一部はNPGに還元し、残りはHPNEとして残っていることになり、前記HPNEがNPG精製塔300に流入されてNPG取得率を低下させることができる。したがって、前記HPNEを後述するHPNE精製塔400に供給することにより、NPGをさらに取得するだけでなく、それ自体で高付加価値製品である前記HPNEを別に回収して活用することができる。すなわち、前記HPNEは、他の重質の副生成物、例えば、水添反応の副生成物であるトリメチルペンタンジオール(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;TMPD)とは区別して製品化されることができる。
【0065】
一方、本発明の一実施形態によると、触媒および抽出剤を含むストリーム310を抽出剤回収塔500に供給することができる。前記抽出剤回収塔500において触媒を含む上部分画と、抽出剤を含む下部分画とに分離することができる。
【0066】
ここで、前記触媒は、上述のアルドール抽出塔100およびアルドール精製塔200で分離されていない一部の少量の触媒であることができ、前記抽出剤回収塔500で前記触媒を分離し、アルドール精製塔200に供給することにより、系内の触媒、例えば、TEAが回収されることができる。
【0067】
一方、抽出剤を含む抽出剤精製塔500の下部分画は、抽出剤精製塔の下部排出ストリーム520としてアルドール抽出塔100に供給され、これより、抽出剤、例えば、2-EHが分離および回収されてまた再使用されることができる。
【0068】
前記抽出剤回収塔500の運転温度は、30℃以上、35℃以上または40℃以上および165℃以下、170℃以下または180℃以下であることができる。また、前記抽出剤回収塔500の運転圧力は、100torr(13.3kPa)以上、110torr(14.7kPa)以上または130torr(17.3kPa)以上および380torr(50.7kPa)以下、400torr(53.3kPa)以下または450torr(60.0kPa)以下であることができる。前記温度および圧力範囲内で抽出剤回収塔500を運転することにより、触媒および抽出剤の分離がスムーズに行われることができる。
【0069】
一方、本発明において、前記HPNEを含むストリーム320をHPNE精製塔400に供給することができる。前記HPNE精製塔400において前記HPNEを含むストリーム320を蒸留して、NPG、HPNE、および高沸点副生成物(heavies)に分離することができる。前記分離した高沸点副生成物は、HPNE下部排出ストリーム420として排出されることができる。
【0070】
また、HPNE精製塔の側部排出ストリーム430から前記分離されたHPNEを取得することができる。上述のように取得したHPNEを回収して様々な方面に活用することができ、例えば、高付加価値製品として、ポリエステルの合成およびコーティングの主原料として使用されることができる。このように、前記HPNEは、他の工程において原料として使用されることができ、本発明によるHPNE精製塔400により、原料活用の面で、経済性が向上することができる。
【0071】
前記HPNEは、HPNE精製塔の最上部から下部側へ50~80%の高さの側部から取得することができる。具体的には、前記範囲内の高さの側部からHPNEを取得することにより、HPNE精製塔の側部排出ストリーム430内のHPNEの含量が高いことができ、これよりHPNEを取得するのに好ましい。一方、前記範囲内の高さを逸脱する側部からHPNEを取得する場合には、前記側部が前記範囲内の高さに属する場合に比べて、HPNE精製塔の側部排出ストリーム430内のNPGの含量が高くなるか、高沸点副生成物の含量が高くなることができる。
【0072】
一方、HPNE精製塔の運転温度は、100℃以上、110℃以上または120℃以上および230℃以下、240℃以下または250℃以下であることができる。また、前記HPNE精製塔の運転圧力は、40torr(5.3kPa)以上、45torr(6.0kPa)以上または50torr(6.7kPa)以上および150torr(20.0kPa)以下、160torr(21.3kPa)以下または170torr(22.7kPa)以下であることができる。前記温度および圧力範囲内で、HPNE精製塔400を運転することにより、HPNEおよびNPGの分離がスムーズに行われて、本発明で取得しようとするNPGをさらに取得することができ、高付加価値商品として、HPNEも取得することができる。
【0073】
本発明のネオペンチルグリコールの製造方法は、前記HPNE精製塔の上部排出ストリーム410からNPGを回収し、NPG精製塔300に還流するステップをさらに含むことができる。すなわち、前記NPG精製塔300で回収されず排出されたNPGをHPNE精製塔400の上部から回収することができ(410)、HPNE精製塔400を備えていない従来のNPGの製造方法に比べて、NPGの回収率をより高めることができる。
【0074】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0075】
実施例
実施例1
図1に図示されている工程の流れにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0076】
具体的には、触媒(トリエチルアミン;TEA)の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルデヒドをアルドール反応器10でアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒド(HPA)を含む第1反応生成物を得た。ここで、前記アルドール縮合反応は、85℃の温度下で行った。
【0077】
前記第1反応生成物をアルドール抽出塔100に供給し、抽出剤(2-エチルヘキサノール;2-EH)と接触させて、ヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液および触媒塩を含む抽残液を得た。
【0078】
前記抽残液を、抽残液ストリーム120として、鹸化反応器20に供給し、前記触媒塩を水酸化ナトリウム(NaOH)と反応させて触媒に還元し、前記還元された触媒を含む鹸化反応器排出ストリーム21を触媒回収塔700に供給した。ここで、前記鹸化反応器で行われる鹸化反応を83℃の温度で行った。
【0079】
前記触媒回収塔700で鹸化反応器排出ストリーム21を蒸留し、水および副生成物を除去し、前記水および副生成物が除去された触媒を含むストリームを得た。前記水および副生成物が除去された触媒を含むストリームを触媒回収塔の上部排出ストリーム710としてアルドール精製塔200に供給した。
【0080】
前記触媒回収塔の上部排出ストリーム710と上述の抽出液を含む抽出液ストリーム110をアルドール精製塔200に供給し、蒸留して、HPAを含む下部排出ストリーム220と未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含む上部排出ストリーム210を得た。前記アルドール精製塔200の運転圧力は207torr(27.6kPa)であり、運転温度は87℃であった。一方、前記未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含む上部排出ストリーム210を原料回収塔600に供給した。
【0081】
前記原料回収塔600で行われる蒸留により、水および副生成物を含む不純物を除去し、前記不純物が除去された未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含むストリームを得た。前記不純物が除去された未反応イソブチルデヒドおよび触媒を含むストリームを原料回収塔の上部排出ストリーム610としてアルドール反応器10に供給した。
【0082】
一方、前記アルドール精製塔の下部排出ストリーム220を水添反応器30に供給し、水添反応させて、NPGを含む第2反応生成物を得た。ここで、前記水添反応は、160℃の温度で行われた。
【0083】
前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製塔300に供給し、触媒および抽出剤を含むNPG精製塔の上部排出ストリーム310およびHPNEを含むNPG精製塔の下部排出ストリーム320を取得し、NPGを含むNPG精製塔の側部排出ストリーム330からNPGを取得した。前記NPG精製塔の側部排出ストリーム330は、NPG精製塔300の最上部から下部側へ20~70%の高さの側部から排出された。ここで、前記ネオペンチルグリコール精製塔の運転圧力は154torr(20.5kPa)であり、運転温度は168℃であった。
【0084】
前記NPG精製塔の上部排出ストリーム310を抽出剤回収塔500に供給し、蒸留して、触媒を含む抽出剤回収塔の上部排出ストリーム510をアルドール精製塔200に供給し、抽出剤を含む抽出剤回収塔の下部排出ストリーム520は、アルドール抽出塔100に供給した。
【0085】
ここで、前記アルドール精製塔200で使用されたエネルギーを測定し、これを比較例1のアルドール精製塔で使用されたエネルギーを基準に換算したときに、前記アルドール精製塔のエネルギー使用率が86.20%であることを確認した。
【0086】
実施例2
図2に図示されている工程の流れにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0087】
実施例2は、実施例1に対し、HPNE精製塔400をさらに備え、NPG精製塔の下部排出ストリーム320を前記HPNE精製塔400に供給した以外は、実施例1と同じ工程の流れでNPGを製造した。
【0088】
具体的には、HPNEを含むNPG精製塔の下部排出ストリーム320を前記HPNE精製塔400に供給し、精製して、NPGを含むHPNE精製塔の上部排出ストリーム410をNPG精製塔300に還流し、高沸点副生成物を含むHPNE精製塔の下部排出ストリーム420を系外に排出した。なお、HPNEを含むHPNE精製塔側部排出ストリーム430からHPNEを別に取得した。
【0089】
比較例
比較例1
図3に図示されている工程の流れにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0090】
比較例1は鹸化反応器を備えておらず、アルドール抽出塔の下部排出ストリーム120を系外に排出し、NPG精製塔の下部排出ストリーム320をHPNE精製塔ではなく、高沸点副生成物分離塔800に供給した以外は、実施例1と同じ工程の流れでNPGを製造した。
【0091】
具体的には、前記NPG精製塔の下部排出ストリーム320を高沸点副生成物分離塔800に供給し、蒸留して、NPGを含む上部排出ストリーム810および高沸点副生成物およびHPNEを含む下部排出ストリーム820を得た。ここで、前記HPNEは、別に取得せず、前記高沸点副生成物分離塔の上部排出ストリーム810は、NPG精製塔300に循環させた。
【0092】
ここで、前記アルドール精製塔200で使用されたエネルギーを測定し、これを100%基準とした。
【0093】
比較例2
図4に図示されている工程フローチャートにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0094】
比較例2は、鹸化反応器排出ストリーム21を触媒回収塔を経ることなくアルドール反応器10に供給し、アルドール精製塔の上部排出ストリーム210を原料回収塔を経ることなくアルドール反応器10に供給した以外は、実施例2と同じ工程の流れでNPGを製造した。
【0095】
比較例3
図5に図示されている工程フローチャートにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0096】
比較例3は、触媒回収塔の上部排出ストリーム710をアルドール精製塔に供給することなく、凝縮させて、アルドール反応器10に供給した以外は、実施例2と同じ工程の流れでNPGを製造した。
【0097】
下記表1において、実施例および比較例のFresh TEA供給率、TEA損失率およびアルドール精製塔のエネルギー使用率は、それぞれ、比較例1を100%基準に換算して示した。具体的には、前記Fresh TEA供給率は、比較例1の工程内において新たに供給されたTEAの重量に対する各実施例および比較例の工程内の新たに供給されたTEAの重量を百分率で示したものである。一方、前記TEA損失率は、鹸化反応器を介してTEAに還元されていないTEA塩の量を比較例1を基準に示したものである。一方、前記アルドール精製塔のエネルギー使用率は、比較例1のアルドール精製塔で使用されたエネルギーの量に対する各実施例および比較例のアルドール精製塔で使用されたエネルギーの量を百分率で示したものである。
【0098】
【0099】
表1を参照すると、前記実施例は、新たな触媒(fresh TEA)供給率とアルドール精製塔のエネルギー使用率が良好であることを確認することができた。前記実施例2は、HPNE精製塔を備えていないことから、HPNE製品をさらに取得することができないことを確認することができた。
【0100】
一方、比較例1は、鹸化反応器を備えていないことから、アルドール抽出塔の下部排出ストリーム内に存在する触媒塩を触媒に還元して再使用することができないため、新たなTEAの供給量とTEA損失量が最も高いことを確認することができた。また、HPNE精製塔の代わりに高沸点副生成物分離塔を備えることにより、HPNE製品をさらに取得することができなかった。なお、アルドール精製塔のエネルギー使用率が実施例に比べて高いことを確認することができた。
【0101】
一方、比較例2は、鹸化反応器排出ストリームを触媒回収塔を経ることなく、アルドール反応器に供給した場合であり、アルドール精製塔のエネルギー使用率が最も高いことを確認することができた。これは、前記鹸化反応器排出ストリーム内の水の含量が非常に高いことから、これをアルドール反応器に直接供給する場合、アルドール精製塔に流入される水の量も増加し、水を蒸留するために、前記アルドール精製塔でのエネルギー使用量が増加することができた。
【0102】
一方、比較例3は、触媒回収塔の上部排出ストリームをアルドール精製塔ではなく、アルドール反応器に供給する場合であり、アルドール精製塔のエネルギー使用率が、実施例および比較例1に比べて高いことを確認することができた。具体的には、前記触媒回収塔の上部排出ストリームは、気相であり、これをアルドール反応器に供給するためには、気相の触媒回収塔の上部排出ストリームを液相に凝縮して前記アルドール反応器に供給する必要があった。このように、液相に凝縮した触媒回収塔の上部排出ストリームをアルドール反応器に供給する場合、これは、前記アルドール反応器でのアルドール縮合反応の後、アルドール精製塔に流入されることができ、結局、前記アルドール精製塔でのエネルギー使用量を増加させることができた。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
表1を参照すると、前記実施例は、新たな触媒(fresh TEA)供給率とアルドール精製塔のエネルギー使用率が良好であることを確認することができた。前記実施例2は、HPNE精製塔を備えていることから、HPNE製品をさらに取得することができることを確認することができた。
【国際調査報告】