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特表2024-535529ネオペンチルグリコールの廃水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ネオペンチルグリコールの廃水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/80 20060101AFI20240920BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20240920BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20240920BHJP
   C07C 47/19 20060101ALI20240920BHJP
   C07C 45/74 20060101ALI20240920BHJP
   C07C 45/80 20060101ALI20240920BHJP
   C07C 45/82 20060101ALI20240920BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C31/20 Z
C07C29/141
C07C47/19
C07C45/74
C07C45/80
C07C45/82
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520948
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2023013051
(87)【国際公開番号】W WO2024053938
(87)【国際公開日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0114489
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0112002
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン キュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ミン ウーク
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC45
4H006AD11
4H006AD16
4H006BA69
4H006BA83
4H006BB14
4H006BD33
4H006BD36
4H006BD52
4H006BD53
4H006BD84
4H006BE20
4H006FG29
4H039CA60
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、アルドール精製工程、ネオペンチルグリコール精製工程および抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程で触媒を含む廃水を回収して、揮発性有機化合物分離塔に供給するステップと、前記揮発性有機化合物分離塔で触媒を含む上部排出ストリームおよび前記触媒が除去された廃水を含む下部排出ストリームを得るステップと、前記下部排出ストリームを廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップとを含むネオペンチルグリコールの廃水処理方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドがアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るアルドール反応工程と、
前記第1反応生成物を抽出剤と接触させて、触媒塩を含む抽残液およびヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液を得るアルドール抽出工程と、
前記抽出液を蒸留して、触媒を含む廃水、未反応イソブチルアルデヒドと触媒、およびヒドロキシピバルデヒドに分離するアルドール精製工程と、
前記アルドール精製工程で分離したヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得る水添反応工程と、
前記第2反応生成物を蒸留して、抽出剤と触媒、触媒を含む廃水、およびネオペンチルグリコールに分離して、前記分離した抽出剤と触媒を抽出剤回収工程が行われる抽出剤回収塔に供給して、触媒を含む廃水を分離し、前記分離したネオペンチルグリコールは取得するネオペンチルグリコール精製工程とを含み、
前記アルドール精製工程、前記ネオペンチルグリコール精製工程および前記抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程から触媒を含む廃水を回収して、揮発性有機化合物分離塔に供給するステップと、
前記揮発性有機化合物分離塔で前記触媒を含む廃水を蒸留して、触媒を含む上部排出ストリームおよび前記触媒が除去された廃水を含む下部排出ストリームを得るステップと、
前記揮発性有機化合物分離塔の前記下部排出ストリームを廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップとを含む、ネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項2】
前記揮発性有機化合物分離塔の前記上部排出ストリームを前記アルドール精製工程に循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項3】
前記アルドール精製工程は、
前記分離した未反応イソブチルアルデヒドおよび触媒を前記アルドール反応工程に循環させる工程である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項4】
前記アルドール抽出工程で得られた抽残液を鹸化反応させて、触媒塩を触媒に還元させる鹸化反応工程をさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項5】
前記鹸化反応工程で還元された触媒を蒸留して廃水および触媒を分離し、前記分離した触媒を前記アルドール精製工程に循環させる触媒回収工程をさらに含む、請求項4に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項6】
前記触媒回収工程から分離した廃水を揮発性有機化合物分離塔に供給するステップをさらに含む、請求項5に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項7】
前記抽出剤回収工程は、
前記ネオペンチルグリコール精製工程から分離した触媒と抽出剤を触媒回収塔に供給し、触媒を含む廃水、触媒、および抽出剤を分離して、前記触媒を前記アルドール精製工程に導入させ、前記抽出剤を前記アルドール抽出工程に導入させる工程である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項8】
前記ネオペンチルグリコール精製工程は、前記第2反応生成物からヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)をさらに分離する工程であり、
前記ネオペンチルグリコール精製工程から分離したヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)を含むストリームを蒸留して、微量のネオペンチルグリコールを前記ネオペンチルグリコール精製工程に循環させ、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステルを取得するヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル精製工程をさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項9】
前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項10】
前記抽出剤は、2-エチルヘキサノール(2-EthylHexanol;2-EH)を含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項11】
前記揮発性有機化合物分離塔の前記下部排出ストリーム内の触媒の含量は、5.0重量%以下である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項12】
前記揮発性有機化合物分離塔の前記下部排出ストリームを蒸発器に供給し、汚泥を除去して、前記汚泥が除去された前記蒸発器の上部分画を前記廃水処理システムに供給するステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月8日付けの韓国特許出願第10-2022-0114489号および2023年8月25日付けの韓国特許出願第10-2023-0112002号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ネオペンチルグリコールの廃水処理方法に関し、より詳細には、ネオペンチルグリコールの製造過程中に発生する廃水を処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ネオペンチルグリコールは、一般的に、触媒の存在下で、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒドをアルドール縮合反応させてヒドロキシピバルデヒドを形成し、前記ヒドロキシピバルデヒド(hydroxypivaldehyde)に対して水添反応を行って製造することができる。
【0004】
しかし、前記ホルムアルデヒドは、反応性および流動性を確保するために、水溶液相態で使用されるため、多量の水を含んでいる。したがって、前記ホルムアルデヒド水溶液に含まれた水は、アルドール縮合反応の後、廃水として処理されていた。前記廃水には、アルドール精製工程で分離されていない触媒が流入されており、前記触媒がアミン基を含んでいることから窒素酸化物(NOx)の発生の原因になっていた。
【0005】
すなわち、前記廃水を処理する際、環境的汚染の問題を引き起こし、投入された触媒が廃水に流入されて廃棄されるだけ、新たな触媒を投入し続けなければならない過程で生産コストが増加する問題があった。
【0006】
したがって、このように廃棄される廃水から触媒を回収し、再使用して、環境にやさしいとともに経済性をより改善することができる工程が導入されなければならない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、ネオペンチルグリコールをより多く取得することができ、且つ全体的な工程において、環境にやさしく、経済性をさらに改善することができるネオペンチルグリコールの廃水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドがアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るアルドール反応工程と、前記第1反応生成物を抽出剤と接触させて、触媒塩を含む抽残液およびヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液を得るアルドール抽出工程と、前記抽出液を蒸留して、触媒を含む廃水、未反応イソブチルアルデヒドと触媒、およびヒドロキシピバルデヒドに分離するアルドール精製工程と、前記アルドール精製工程で分離したヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得る水添反応工程と、前記第2反応生成物を蒸留して、抽出剤と触媒、触媒を含む廃水、およびネオペンチルグリコールに分離して、前記分離した抽出剤および触媒は抽出剤回収工程が行われる抽出剤回収塔に供給して、触媒を含む廃水を分離し、前記分離したネオペンチルグリコールは取得するネオペンチルグリコール精製工程とを含み、前記アルドール精製工程、ネオペンチルグリコール精製工程および抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程から触媒を含む廃水を回収して、揮発性有機化合物分離塔に供給するステップと、前記揮発性有機化合物分離塔で前記触媒を含む廃水を蒸留して、触媒を含む上部排出ストリームおよび前記触媒が除去された廃水を含む下部排出ストリームを得るステップと、前記揮発性有機化合物分離塔の下部排出ストリームを廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップとを含むネオペンチルグリコールの廃水処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のネオペンチルグリコールの廃水処理方法によると、触媒を含む廃水を揮発性有機化合物分離塔に供給して蒸留することにより、前記触媒を分離することができる。このように触媒が分離された廃水を後段の廃水処理システムに供給することにより、窒素酸化物(NOx)の生成を著しく低減することができ、環境汚染を低減することができる。
【0010】
なお、前記揮発性有機化合物分離塔で分離された触媒をアルドール精製工程に循環させて、前記触媒をアルドール反応工程での原料として再使用することができる。これにより、ネオペンチルグリコールを製造するための生産コストが節減され、全体的な工程の経済性が改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造工程中に発生する廃水の処理方法を示す工程図である。
図2】本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法を示す工程フローチャートである。
図3】本発明の比較例によるネオペンチルグリコールの製造工程中に発生する廃水の処理方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0013】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内に流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内に流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0014】
一方、本発明において、分離塔、抽出塔、精製塔、蒸留塔または蒸留カラム、および回収塔等の装置において、前記装置の「下部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方へ95%~100%の高さの地点を意味し、具体的には最下端(塔底)を意味し得る。同様に、前記装置の「上部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方へ0%~5%の高さの地点を意味し、具体的には最上部(塔頂)を意味し得る。
【0015】
一方、本発明において、分離塔、抽出塔、精製塔、蒸留塔、および回収塔などの装置において、前記装置の運転温度とは、特に断りのない限り、前記装置の下部温度を示すことができる。同様に、前記装置の運転圧力とは、特に断りのない限り、前記装置の上部圧力を示すことができる。
【0016】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0017】
本発明の一実施形態によると、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドがアルドール縮合反応してヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るアルドール反応工程と、前記第1反応生成物を抽出剤と接触させて、触媒塩を含む抽残液およびヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液を得るアルドール抽出工程と、前記抽出液を蒸留して、触媒を含む廃水、未反応イソブチルアルデヒドと触媒、およびヒドロキシピバルデヒドを分離するアルドール精製工程と、前記アルドール精製工程で分離したヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得る水添反応工程と、前記第2反応生成物を蒸留して、抽出剤と触媒、触媒を含む廃水、およびネオペンチルグリコールに分離し、前記分離した抽出剤および触媒は抽出剤回収工程が行われる抽出剤回収塔に供給して、触媒を含む廃水を分離し、前記分離したネオペンチルグリコールは取得するネオペンチルグリコール精製工程とを含み、前記アルドール精製工程、ネオペンチルグリコール精製工程および抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程から触媒を含む廃水を回収して、揮発性有機化合物分離塔に供給するステップと、前記揮発性有機化合物分離塔で前記触媒を含む廃水を蒸留して、触媒を含む上部排出ストリームおよび前記触媒が除去された廃水を含む下部排出ストリームを得るステップと、前記揮発性有機化合物分離塔の下部排出ストリームを廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップとを含むネオペンチルグリコールの廃水処理方法が提供される。
【0018】
より具体的には、図2を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド(Formaldehyde;FA)水溶液とイソブチルアルデヒド(Isobutylaldehyde;IBAL)がアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒド(Hydroxypivaldehyde;HPA)を含む第1反応生成物を得るアルドール反応工程50を含むことができる。
【0020】
具体的には、前記アルドール反応工程50は、前記アルドール縮合反応が行われるアルドール反応器で行われることができ、前記ホルムアルデヒドは、反応性および流動性を確保するために水溶液相態で使用されることから、多量の水を含むことができる。このようなホルムアルデヒド水溶液は、全体のホルムアルデヒド水溶液の重量に対して、40~64重量%、より具体的には45~55重量%の水を含むことができる。また、ホルムアルデヒドの重合を防止するために、メタノールをさらに含むことができる。この場合、全体のホルムアルデヒド水溶液の重量に対して、前記メタノールの含量は、0.1~15重量%、より具体的には0.1~5重量%であることができる。
【0021】
ここで、前記ホルムアルデヒド水溶液は、ホルマリンを使用することができ、ここで、前記ホルムアルデヒドは、濃度35~45重量%のものを使用することが、廃水低減の面で効果が良いことができる。
【0022】
また、前記触媒は、アミン系化合物であることができる。具体的には、トリアルキルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンのような第三級アミン化合物が適することができる。より具体的には、前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含むことができる。本発明では、TEAが、アルドール縮合反応において効率が最も優れ、触媒として使用されることができる。
【0023】
具体的には、前記アルドール反応工程50で行われるアルドール縮合反応において、アルドール縮合反応の温度は、70℃~100℃であることができ、前記アルドール縮合反応時間は、0.1時間~3時間であることができる。このようなアルドール縮合反応の条件内で、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とIBALのアルドール縮合反応が行われて、触媒塩およびHPAが生成されることができる。
【0024】
ここで、前記触媒塩は、アルドール縮合反応で発生するカニッツァーロ(Cannizzaro)副反応から生成されたギ酸が触媒と反応して生成されることができる。
【0025】
また、前記アルドール縮合反応のさらに他の副反応であるティシチェンコ(Tishchenko)反応により、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HydroxyPivalic acid-Neopentylglycol Ester;HPNE)が生成されることができる。
【0026】
したがって、アルドール反応工程50では、前記触媒塩、HPNEおよびHPAを含む第1反応生成物を得ることができ、前記第1反応生成物は、アルドール抽出工程150が行われるアルドール抽出塔に供給されることができる。
【0027】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記第1反応生成物を抽出剤と接触させて、触媒塩を含む抽残液およびヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液を得るアルドール抽出工程150を含むことができる。
【0028】
具体的には、前記アルドール抽出工程150では、前記触媒塩、HPNEおよびHPAを含む第1反応生成物を抽出剤と接触させて、未反応IBAL、抽出剤およびHPAを含む有機相の抽出液と触媒塩を含む液相の抽残液を得ることができる。ここで、前記未反応IBALは、アルドール反応工程50でアルドール縮合反応されていないIBALであることができる。前記抽出液は、アルドール精製工程200が行われるアルドール精製塔に供給されることができ、前記抽残液は、鹸化反応工程60が行われる鹸化反応器に供給されることができる。
【0029】
ここで、前記抽出剤は、脂肪族アルコール(aliphatic alcohols)であることができ、好ましくは、2-エチルヘキサノール(2-EthylHexanol;2-EH)を含むことができる。第1反応生成物に含まれたHPAは、前記2-EHに対して可溶性であることから、液-液接触方式による抽出装置を使用するアルドール抽出工程150において好ましく使用されることができる。
【0030】
一方、前記アルドール抽出工程150が行われる一つまたは二つ以上のアルドール抽出塔の運転温度は、40℃~90℃であることができる。前記範囲内の温度でアルドール抽出塔が運転されることにより、有機相と液相に相分離することが容易になることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記アルドール抽出工程150で得られた抽残液を鹸化反応させて、触媒塩を触媒に還元させる鹸化反応工程60を含むことができる。
【0032】
前記鹸化反応工程60が行われる鹸化反応器では、触媒塩を含む抽出液を鹸化反応させて、前記触媒塩を触媒に還元させることができる。前記鹸化反応器で行われる鹸化反応は、別に投入される水酸化ナトリウム(NaOH)のような無機強塩基と前記触媒塩の反応により行われることができ、これにより、還元された触媒を効率的に再使用することができる。
【0033】
前記還元された触媒は、触媒回収工程700を経ることができ、前記触媒回収工程700は、触媒回収塔で前記還元された触媒を蒸留して触媒および廃水を分離し、前記分離した触媒をアルドール精製工程200に循環させることができる。
【0034】
一方、前記分離した触媒をアルドール反応工程50が行われるアルドール反応器に供給する場合、前記アルドール反応工程50で副反応が過剰に発生して、副生成物である高沸点の窒素化合物が多量生成される可能性があり、これは、後述する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds;VOC)分離塔に流入されて、窒素酸化物(NOx)の増加の原因になり得る。したがって、前記分離した触媒をアルドール反応工程50が行われるアルドール反応器にすぐ供給せず、アルドール精製工程200に循環させることにより、前記アルドール反応工程50での副反応をより減少させて副生成物の生成を低減し、これにより、NOxの発生をより最小化することができる。さらに、前記分離した触媒を前記アルドール精製工程200が行われるアルドール精製塔で精製することができ、より高純度の触媒として再使用することができる。
【0035】
一方、本発明は、前記触媒回収工程700から分離した廃水をVOC分離塔に供給するステップをさらに含むことができる。これにより、前記触媒回収工程700で分離されていない一部の触媒が前記分離した廃水に含まれる場合、前記VOC分離塔で前記分離した廃水に含まれた一部の触媒を回収することができる。
【0036】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記抽出液を蒸留して、触媒を含む廃水、未反応イソブチルアルデヒドと触媒、およびヒドロキシピバルデヒドを分離するアルドール精製工程200を含むことができる。
【0037】
具体的には、前記アルドール精製工程200は、前記触媒回収工程700から回収された触媒およびアルドール抽出工程150から分離した抽出液を蒸留して、触媒を含む廃水、未反応IBALと触媒、およびHPAと抽出剤に分離させる工程であることができる。ここで、前記アルドール精製工程200で蒸留させようとする蒸留物は、前記触媒回収工程700から回収した触媒およびアルドール抽出工程150から分離した抽出液の他にも、後述する抽出剤回収工程500から分離した触媒および揮発性有機化合物分離塔の上部排出ストリームをさらに含むことができる。
【0038】
より具体的には、前記アルドール精製工程200は、2機以上のカラムによって行われることができる。前記2機以上のカラムのうち1機以上は、アルドール精製塔を含むことができ、残りの1機以上は、廃水分離塔を含むことができる。
【0039】
先ず、前記アルドール精製塔が1機のアルドール精製塔により行われる場合、前記1機のアルドール精製塔の上部から未反応IBALと触媒が、下部からHPAと抽出剤が分離されることができる。一方、アルドール精製塔が2機以上のアルドール精製塔で行われる場合、未反応IBALを上部に分離する1機以上のアルドール精製塔と前記触媒を上部に分離する1機以上のアルドール精製塔を介して行われることができる。前記2機以上のアルドール精製塔の下部には、HPAまたは抽出剤を含むストリームが分離されて排出されることができる。なお、前記1機または2機以上のアルドール精製塔で上部に分離される未反応IBALおよび/または触媒が水とともに分離されることができる。
【0040】
一方、前記1機以上の廃水分離塔は、廃水(水)を前記未反応IBAL、触媒、HPAおよび抽出剤と分離する機能を行うことができる。したがって、前記廃水分離塔に供給されるストリームは、1機以上のアルドール精製塔で分離した水を含むストリームであることができる。さらには、前記廃水分離塔から回収した前記廃水は、後述する廃水タンク10に供給することができる。ここで、前記廃水タンク10に供給される廃水は、廃水分離塔で分離されていない少量の触媒および未反応IBALを含むことができる。
【0041】
本発明によると、前記アルドール精製工程200は、アルドール精製工程200で分離した未反応IBALと触媒をアルドール反応工程50に循環させることができる。これにより、前記アルドール反応工程50で使用される触媒およびIBALをリサイクルするようになり、新たに投入される原料の量を低減することができ、工程中に使用される生産コストを節減することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記アルドール精製工程200で分離したヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得る水添反応工程70を含むことができる。
【0043】
前記水添反応工程70では、前記アルドール精製工程200で分離したHPAと別に投入された水素の水添反応が行われて、NPGを含む第2反応生成物を取得することができる。ここで、前記水添反応は、100~1500psig(pounds per square inch gauge Pressure)(0.69~10.3MPaG)の水素圧力および反応温度100℃~200℃で行われることができる。
【0044】
また、前記水添反応は、水添反応触媒の存在下で行われることができる。前記水添反応触媒としては、ニッケル触媒または銅系触媒が使用されることができる。前記ニッケル触媒は、HPA重量に対して2~10重量%であることができる。前記銅系触媒としては、一例として、CuO/BaO/SiO触媒であることができ、前記CuO/BaO/SiO触媒は、(CuO)x(BaO)y(SiO)z(x、y、zは、重量%であり、x:y:z=10~50:0~10:40~90、10~50:1~10:40~89 または29~50:1~10:40~70)である触媒であることができる。前記xとyの和は、好ましくは、x、yおよびzの総和(100重量%)に対して、20~50(重量%)、または30~50(重量%)であり、この範囲内で、水添反応触媒の性能に優れ、寿命が長い効果がある。
【0045】
このように、水素とHPAの水添反応が行われると、NPGが生成されることができる。したがって、前記水添反応工程70で、触媒、抽出剤、前記NPGおよびHPNEを含む第2反応生成物を取得することができる。ここで、前記HPNEは、アルドール反応工程50において、アルドール縮合反応の副生成物として生成されることができる。次いで、前記第2反応生成物のNPG精製工程300を介して所望の生成物であるネオペンチルグリコールを取得することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記第2反応生成物を蒸留して、抽出剤と触媒、触媒を含む廃水、およびネオペンチルグリコールに分離し、前記分離した抽出剤および触媒を抽出剤回収工程500が行われる抽出剤回収塔に供給して、触媒を含む廃水を分離し、前記分離したネオペンチルグリコールは取得するネオペンチルグリコール精製工程300を含むことができる。
【0047】
具体的には、前記NPG精製工程300は、前記第2反応生成物を蒸留して、触媒を含む廃水、抽出剤と触媒、およびNPGに分離する工程であることができる。前記分離した抽出剤と触媒は、後述する抽出剤回収工程500に導入させることができ、前記NPGは、目的とする生成物として、前記NPG精製工程300で取得することができる。
【0048】
これに加え、前記NPG精製工程300は、前記第2反応生成物からHPNEをさらに分離することができ、前記HPNEを含むストリームをヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)精製工程に導入させることができる。
【0049】
一方、前記NPG精製工程300は、アルドール精製工程200のように2機以上のカラムにより行われることができる。前記2機以上のカラムのうち1機以上は、NPG精製塔を含むことができ、残りの1機以上は、廃水分離塔を含むことができる。
【0050】
先ず、前記NPG精製塔が1機のNPG精製塔によって行われる場合、前記1機のNPG精製塔の上部から抽出剤と触媒が、下部からHPNEが、側部からNPGがそれぞれ分離されることができる。一方、NPG精製塔が2機以上のNPG精製塔で行われる場合、抽出剤を上部に分離する1機以上のNPG精製塔と触媒を上部に分離する1機以上のNPG精製塔を介して行われることができる。前記2機以上のNPG精製塔の下部には、HPNEまたはNPGを含むストリームが分離されて排出されることができる。なお、前記触媒、抽出剤、HPNEおよびNPGとは別に、水を含むストリーム、すなわち、廃水ストリームが1機または2機以上のNPG精製塔で分離されることができる。
【0051】
一方、前記1機以上の廃水分離塔は、廃水を前記触媒、抽出剤、HPNEおよびNPGと分離する機能を行うことができる。したがって、前記廃水分離塔に供給されるストリームは、1機以上のNPG精製塔で分離した廃水ストリームであることができる。さらには、前記廃水分離塔は、このように分離した廃水を後述する廃水タンク10に供給することができる。ここで、前記廃水は、NPG精製塔で分離されていない触媒を含むことができる。
【0052】
一方、本発明の前記抽出剤回収工程500は、前記ネオペンチルグリコール精製工程300から分離した触媒および抽出剤を触媒回収塔に供給し、触媒を含む廃水、触媒、および抽出剤を分離して、前記触媒をアルドール精製工程200に導入させ、前記抽出剤をアルドール抽出工程150に導入させる工程であることができる。ここで、前記触媒は、上述のアルドール抽出工程150およびアルドール精製工程200で分離されていない一部の少量の触媒であることができる。一方、前記抽出剤をアルドール抽出工程150に循環させることにより、前記抽出剤、例えば、2-EHは回収されて前記アルドール抽出工程150で再使用されることができる。
【0053】
より具体的には、前記抽出剤回収工程500は、カラム、すなわち、抽出剤回収塔により行われることができる。前記抽出剤回収塔の上部から触媒が、下部から抽出剤がそれぞれ分離されることができる。なお、前記触媒および抽出剤とは別に水を含むストリーム、すなわち、廃水ストリームが抽出剤回収塔で分離されることができる。さらに、前記抽出剤回収塔で分離した廃水ストリームは、後述する廃水タンク10に供給されることができる。ここで、前記廃水は、少量の触媒を含むことができる。
【0054】
一方、本発明の一実施形態による、前記HPNE精製工程400では、NPG精製工程300から分離したHPNEを含むストリームを蒸留して、微量のNPGおよびHPNEを分離させることができる。次いで、前記分離した微量のNPGは、NPG精製工程300に還流することができ、前記HPNEは、別に取得することができる。
【0055】
ここで、前記微量のNPGは、NPG精製工程で生成物として回収されず、HPNEとともに分離されたものであり、前記HPNE精製工程400からNPGをさらに回収することができ、NPGの回収率をより高めることができる。なお、別に取得した前記HPNEは、様々な方面に活用することができ、例えば、高付加価値製品として、ポリエステルの合成およびコーティングの主原料として使用されることができる。このように、他の工程で原料として使用されることができ、HPNE精製工程400によって原料活用の面で経済性が向上することができる。
【0056】
以下、本発明の一実施形態によって、図1を参照してより詳細に説明する。
【0057】
本発明の一実施形態によるNPGの廃水処理方法は、前記アルドール精製工程、ネオペンチルグリコール精製工程および抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程から触媒を含む廃水を回収して、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds;VOC)分離塔に供給するステップと、前記VOC分離塔で触媒を含む上部分画および前記触媒が除去された廃水を含む下部分画を得るステップと、前記下部分画を廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップとを含むことができる。
【0058】
先ず、本発明の一実施形態によるNPGの廃水処理方法は、前記アルドール精製工程、ネオペンチルグリコール精製工程および抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程から触媒を含む廃水を回収して、VOC分離塔100に供給するステップを含むことができる。
【0059】
具体的には、前記アルドール精製工程、NPG精製工程および抽出剤回収工程、総3個の工程のうち一つ以上の工程で行われる1機以上のカラムで分離される廃水を廃水タンク10に導入させることができる。これに加え、前記触媒回収工程から分離した廃水も前記廃水タンク10に導入させることができる。
【0060】
このように、多数の工程で分離した廃水を廃水タンク10に供給して、廃水タンク排出ストリーム11としてVOC分離塔100に供給することができる。ここで、前記廃水はアルドール反応工程50で使用されるホルムアルデヒド水溶液に含まれた水から由来することができる。これに加え、前記廃水は、アルドール精製工程で分離されていない触媒および未反応IBALを含むことができる。
【0061】
一方、上述のように、本発明での前記触媒としては、例えば、TEAが使用されることができ、前記TEAは、アミン基を含んでいることから窒素酸化物(NOx)の発生の原因になり得る。このようなNOxは、環境的な面において有害であり得るため、前記TEAを分離してNOxの生成を減少させる必要がある。したがって、本発明では、VOC分離塔100を介して触媒の分離を行うことができ、前記VOC分離塔100から分離した触媒を回収して再使用することができる。
【0062】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記VOC分離塔で前記触媒を含む廃水を蒸留して、触媒を含む上部排出ストリームおよび前記触媒が除去された廃水を含む下部排出ストリームを得るステップを含むことができる。
【0063】
前記VOC分離塔100で廃水タンク排出ストリーム11を蒸留させて、触媒が含まれた上部分画および前記触媒が除去された廃水を含む下部分画に分離させることができる。これにより、上述のように、NOxの生成を促進させる本発明の触媒であるTEAを分離させることにより、前記VOC分離塔の下部分画に含まれたアミン成分が調節されて、NOxの生成を低減することができる。
【0064】
一方、前記VOC分離塔100の運転温度は、50℃以上、60℃以上または70℃以上および160℃以下、180℃以下または200℃以下であることができる。また、前記VOC分離塔100の運転圧力は、0.68kg/cm2(66.7kPa)以上、1.50kg/cm2(147kPa)以上または2.00kg/cm2(196kPa)以上および4.00kg/cm2(392kPa)以下、4.50kg/cm2(441kPa)以下または5.00kg/cm2(490kPa)以下であることができる。
【0065】
前記VOC分離塔100の上部分画は、VOC分離塔の上部排出ストリーム120を介してアルドール精製工程に循環させることができる。前記VOC分離塔100の上部分画は、触媒および未反応IBALを含んでおり、前記触媒および未反応IBALは、前記アルドール精製工程に循環することで再使用されることができる。このように、前記触媒を回収および再使用することにより、NOxの生成を減少させて、環境にやさしいとともに工程のコスト競争力を確保することができる。
【0066】
一方、前記触媒が分離した廃水を含む前記VOC分離塔100の下部分画は、VOC分離塔の下部排出ストリーム110を介して蒸発器(evaporator)20に供給されることができる。
【0067】
本発明の一実施形態によると、前記VOC分離塔の下部排出ストリーム110内の触媒の含量は、5.0重量%以下であることができ、より具体的には4.0重量%以下または3.0重量%以下であることができる。前記範囲内に触媒を含むことにより、後述する廃水処理システム30に導入されるストリーム内のアミン成分が減少して、前記廃水処理システム30でのNOxの生成が低下し得る。
【0068】
本発明の一実施形態によると、前記VOC分離塔の下部排出ストリームを蒸発器20に供給し、汚泥を除去して、前記汚泥が除去された前記蒸発器の上部分画を前記廃水処理システム30に供給することができる。
【0069】
前記蒸発器20で触媒が分離された廃水を含むVOC分離塔の下部排出ストリーム110を蒸発させて、汚泥を含む蒸発器の下部分画および前記汚泥が除去された気相成分を含む蒸発器の上部分画に分離することができる。前記蒸発器の下部分画は、蒸発器の下部排出ストリーム21を介して汚泥乾燥機(sludge dryer)40に供給されることができ、前記蒸発器の上部分画は、蒸発器の上部排出ストリーム22を介して廃水処理システム30に供給されることができる。
【0070】
一方、前記汚泥乾燥機(sludge dryer)40では、前記蒸発器の下部排出ストリーム21に含まれた汚泥を乾燥して廃棄物として処理するか、燃焼して、工程のエネルギー源として使用することができる。
【0071】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの廃水処理方法は、前記VOC分離塔の下部排出ストリームを廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップを含むことができる。
【0072】
具体的には、前記廃水処理システム30は、蒸発器20を経たVOC分離塔の下部排出ストリーム、すなわち、蒸発器の上部排出ストリーム22を廃水処理して、廃ガスを含む廃ガス排出ストリーム32および廃水を含む廃水排出ストリーム31を得ることができる。ここで、前記廃ガスは、アミン基が除去された状態のガスであることができる。
【0073】
より具体的には、前記廃水処理システムは、水に存在する有機物を処理するための工程を行うシステムとして、前記廃水処理システムを行うために、蓄熱焼却炉(Regeneration Thermal Oxidizer、RTO)およびDeNOxシステムなどを使用することができる。
【0074】
前記蓄熱焼却炉は、有機物を含有する気相成分を焼却した後、焼却するときに発生する熱を、表面積が広く、半永久に使用できるセラミック(Ceramic)充填材を介して回収して、焼却炉の運転費用を著しく下げることができる設備であり、焼却炉の運転にかかる費用が少なく、設置面積を最小化することができる。また、蓄熱焼却炉の処理効率は99%以上と非常に高く、二次汚染要因が少ないという利点がある。
【0075】
一方、前記DeNOxシステムは、選択的触媒還元法(Selective Catalytic Reduction;SCR)により窒素酸化物を除去するシステムであり、前記選択的触媒還元法(SCR)は、工程中に生成された窒素酸化物を含む気相成分を還元剤(アンモニアまたは尿素;UREA)とともに触媒層を通過させて窒素と水蒸気に分解し、大気に排出させることができる。
【0076】
上述のように、VOC回収塔を介して、触媒、例えば、TEAを先に除去して、前記廃水処理システムに流入されるTEAを除去することにより、廃水処理システムで生成されるNOxの量を減少させて、環境にやさしくNPGを製造することができる。また、VOC回収塔で分離および回収された触媒をアルドール精製工程に循環させて精製することにより、前記精製された触媒は、アルドール反応工程50での再使用に適する状態になることができる。
【0077】
さらに他の一例として、前記VOC分離塔は、分離壁型蒸留塔であることができる。前記VOC分離塔として分離壁型蒸留塔(Dividing wall column;DWC)を使用する場合、後段の蒸発器および廃水処理システムが別に必要ではないため、工程の単純化が可能であり、効率的に工程を管理することができる。また、熱統合によるエネルギー消費を節減することができる。
【0078】
より具体的には、前記分離壁型蒸留塔は、蒸留塔に分離壁を備えた形態であり、前記分離壁によって設けられた空間が2個に分けられるため、2つの蒸留塔が一つに統合されたような機能を行うことができる。したがって、上部分画としては触媒および未反応IBAL、下部分画としては汚泥、そして側部分画としては廃水を分離することができる。
【0079】
前記汚泥を含むVOC分離塔の下部分画は、VOC分離塔の下部排出ストリームを介して汚泥乾燥機に供給されて乾燥することができ、前記廃水を含むVOC分離塔100の側部分画は、VOC分離塔の側部排出ストリーム130を介して排出されることができる。
【0080】
また、触媒および未反応IBALを含むVOC分離塔の上部分画は、VOC分離塔の上部排出ストリームとして、上述のように、アルドール精製工程に循環させることができる。前記触媒は、前記アルドール精製工程で精製および回収されることができ、回収された前記触媒は、アルドール反応工程50に循環して、アルドール縮合反応の原料として再使用されることができる。
【0081】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0082】
実施例
実施例1
図1に図示されている工程図にしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の廃水処理工程をシミュレーションした。
【0083】
アルドール反応器で、触媒(トリエチルアミン;TEA)の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドをアルドール縮合反応させて、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得た。(アルドール反応工程)
【0084】
前記第1反応生成物を抽出剤(2-エチルヘキサノール;2-EH)と接触させて、触媒塩を含む抽残液、ヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液および触媒を含む廃水を得た。(アルドール抽出工程)
【0085】
前記抽残液を鹸化反応させて、触媒塩を触媒に還元させ、還元された触媒を得た。(鹸化反応工程)前記還元された触媒を触媒回収塔で蒸留して、触媒を含む廃水および触媒を分離し、前記触媒を回収した。(触媒回収工程)
【0086】
前記触媒回収工程から分離した触媒およびアルドール抽出工程から得た抽出液をアルドール精製工程が行われるアルドール精製塔で蒸留し、未反応イソブチルアルデヒドと触媒、触媒を含む廃水およびヒドロキシピバルデヒドに分離した。前記分離した未反応イソブチルアルデヒドと触媒をアルドール反応工程に循環させた。(アルドール精製工程)
【0087】
一方、前記アルドール精製工程から分離したヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得た。(水添反応工程)
【0088】
前記第2反応生成物を蒸留して、触媒を含む廃水、抽出剤と触媒、ネオペンチルグリコールおよびヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)を分離し、前記ネオペンチルグリコールを生成物として取得した。(NPG精製工程)
【0089】
前記NPG精製工程から分離した抽出剤と触媒は、抽出剤回収工程を経て触媒を含む廃水、抽出剤、および触媒をそれぞれ分離した。前記抽出剤回収工程から分離した抽出剤は、アルドール抽出工程に循環させ、前記抽出剤回収工程から分離した触媒は、アルドール精製工程に循環させた。
【0090】
一方、前記NPG精製工程から分離したHPNEを含むストリームをHPNE精製工程に循環させ、NPGおよびHPNEに分離した。前記HPNE精製工程から分離したNPGは、NPG精製工程に循環させ、前記HPNEは、別に取得した。
【0091】
前記触媒回収工程、アルドール精製工程、ネオペンチルグリコール精製工程および抽出剤回収工程から触媒を含む廃水を回収し、廃水タンク10に導入させた。
【0092】
前記廃水タンク10に導入された前記触媒を含む廃水は、廃水タンク排出ストリーム11として揮発性有機化合物(VOC)分離塔100に供給した。前記VOC分離塔100で触媒を含む上部分画および前記触媒が除去された廃水を含む下部分画を分離した。ここで、前記VOC分離塔100の運転温度は110℃であり、運転圧力は1.1kg/cm2(108kPa)であった。
【0093】
前記触媒を含む上部分画は、VOC分離塔の上部排出ストリーム120を介してアルドール精製工程に循環させ、前記触媒が除去された廃水を含む下部分画は、VOC分離塔の下部排出ストリーム110を介して蒸発器(evaporator)20に供給した。
【0094】
前記蒸発器20で前記VOC分離塔の下部排出ストリーム110を蒸発させて、汚泥を含む蒸発器の下部分画および前記汚泥が分離した気相成分を含む蒸発器の上部分画を分離した。前記汚泥を含む蒸発器の下部分画は、蒸発器の下部排出ストリーム21として汚泥乾燥機(sludge dryer)40に供給し、前記汚泥が分離した気相成分を含む蒸発器の上部分画は、蒸発器の上部排出ストリーム22として廃水処理システム30に供給した。
【0095】
前記廃水処理システム30では、前記蒸発器の上部排出ストリーム22を廃水処理して廃ガスおよび廃水に分離し、廃ガス排出ストリーム32を介して前記廃ガスを排出させ、廃水排出ストリーム31を介して前記廃水を排出させた。
【0096】
実施例2
実施例2は、触媒回収工程から分離した触媒をアルドール精製工程ではなく、アルドール反応工程が行われるアルドール反応器に循環させた以外は、実施例1と同じ工程の流れでNPGの廃水を処理した。
【0097】
比較例
比較例1
図3に図示されている工程図にしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の廃水処理工程をシミュレーションした。
【0098】
比較例1は、VOC分離塔を備えず、廃水タンク排出ストリーム11を蒸発器20に供給した以外は、実施例1と同じ工程の流れでNPGを製造した。
【0099】
下記表1において、実施例および比較例のフィードストリーム内のTEAの含量、廃水処理システム内のTEAの含量およびNOxの発生量を示した。
【0100】
具体的には、前記廃水処理システム内のTEAの含量は、廃水処理システムに供給されるストリーム(蒸発器の上部排出ストリーム)の全重量に対する前記廃水処理システムに供給されるストリーム内のTEAの重量比を意味し得る。
【0101】
一方、前記NOxの発生量は、廃水処理システムの廃ガス排出ストリーム32の全重量に対する前記廃ガス排出ストリーム32に含まれた窒素酸化物(NOx)の分率を示すものである。
【0102】
【表1】
【0103】
表1を参照すると、実施例は、比較例1に比べてNOxの発生が低減したことを確認することができた。一方、比較例1は、実施例に比べてVOC分離塔を備えていないことから、NOxの発生が最も高いことを確認することができた。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドがアルドール縮合反応して、ヒドロキシピバルデヒドを含む第1反応生成物を得るアルドール反応工程と、
前記第1反応生成物を抽出剤と接触させて、触媒塩を含む抽残液およびヒドロキシピバルデヒドを含む抽出液を得るアルドール抽出工程と、
前記抽出液を蒸留して、触媒を含む廃水、未反応イソブチルアルデヒドと触媒、およびヒドロキシピバルデヒドに分離するアルドール精製工程と、
前記アルドール精製工程で分離したヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得る水添反応工程と、
前記第2反応生成物を蒸留して、抽出剤と触媒、触媒を含む廃水、およびネオペンチルグリコールに分離して、前記分離した抽出剤と触媒を抽出剤回収工程が行われる抽出剤回収塔に供給して、触媒を含む廃水を分離し、前記分離したネオペンチルグリコールは取得するネオペンチルグリコール精製工程とを含み、
前記アルドール精製工程、前記ネオペンチルグリコール精製工程および前記抽出剤回収工程のうち一つ以上の工程から触媒を含む廃水を回収して、揮発性有機化合物分離塔に供給するステップと、
前記揮発性有機化合物分離塔で前記触媒を含む廃水を蒸留して、触媒を含む上部排出ストリームおよび前記触媒が除去された廃水を含む下部排出ストリームを得るステップと、
前記揮発性有機化合物分離塔の前記下部排出ストリームを廃水処理システムに供給して、廃水を処理するステップとを含む、ネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項2】
前記揮発性有機化合物分離塔の前記上部排出ストリームを前記アルドール精製工程に循環させるステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項3】
前記アルドール精製工程は、
前記分離した未反応イソブチルアルデヒドおよび触媒を前記アルドール反応工程に循環させる工程である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項4】
前記アルドール抽出工程で得られた抽残液を鹸化反応させて、触媒塩を触媒に還元させる鹸化反応工程をさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項5】
前記鹸化反応工程で還元された触媒を蒸留して廃水および触媒を分離し、前記分離した触媒を前記アルドール精製工程に循環させる触媒回収工程をさらに含む、請求項4に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項6】
前記触媒回収工程から分離した廃水を揮発性有機化合物分離塔に供給するステップをさらに含む、請求項5に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項7】
前記抽出剤回収工程は、
前記ネオペンチルグリコール精製工程から分離した触媒と抽出剤を抽出剤回収塔に供給し、触媒を含む廃水、触媒、および抽出剤を分離して、前記触媒を前記アルドール精製工程に導入させ、前記抽出剤を前記アルドール抽出工程に導入させる工程である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項8】
前記ネオペンチルグリコール精製工程は、前記第2反応生成物からヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)をさらに分離する工程であり、
前記ネオペンチルグリコール精製工程から分離したヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HPNE)を含むストリームを蒸留して、微量のネオペンチルグリコールを前記ネオペンチルグリコール精製工程に循環させ、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステルを取得するヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル精製工程をさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項9】
前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項10】
前記抽出剤は、2-エチルヘキサノール(2-EthylHexanol;2-EH)を含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項11】
前記揮発性有機化合物分離塔の前記下部排出ストリーム内の触媒の含量は、5.0重量%以下である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【請求項12】
前記揮発性有機化合物分離塔の前記下部排出ストリームを蒸発器に供給し、汚泥を除去して、前記汚泥が除去された前記蒸発器の上部分画を前記廃水処理システムに供給するステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの廃水処理方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
先ず、前記アルドール精製塔が1機のアルドール精製塔である場合、前記1機のアルドール精製塔の上部から未反応IBALと触媒が、下部からHPAと抽出剤が分離されることができる。一方、アルドール精製塔が2機以上のアルドール精製塔でる場合、未反応IBALを上部に分離する1機以上のアルドール精製塔と前記触媒を上部に分離する1機以上のアルドール精製塔を介して行われることができる。前記2機以上のアルドール精製塔の下部には、HPAまたは抽出剤を含むストリームが分離されて排出されることができる。なお、前記1機または2機以上のアルドール精製塔で上部に分離される未反応IBALおよび/または触媒が水とともに分離されることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
先ず、前記NPG精製塔が1機のNPG精製塔である場合、前記1機のNPG精製塔の上部から抽出剤と触媒が、下部からHPNEが、側部からNPGがそれぞれ分離されることができる。一方、NPG精製塔が2機以上のNPG精製塔でる場合、抽出剤を上部に分離する1機以上のNPG精製塔と触媒を上部に分離する1機以上のNPG精製塔を介して行われることができる。前記2機以上のNPG精製塔の下部には、HPNEまたはNPGを含むストリームが分離されて排出されることができる。なお、前記触媒、抽出剤、HPNEおよびNPGとは別に、水を含むストリーム、すなわち、廃水ストリームが1機または2機以上のNPG精製塔で分離されることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
一方、本発明の前記抽出剤回収工程500は、前記ネオペンチルグリコール精製工程300から分離した触媒および抽出剤を抽出剤回収塔に供給し、触媒を含む廃水、触媒、および抽出剤を分離して、前記触媒をアルドール精製工程200に導入させ、前記抽出剤をアルドール抽出工程150に導入させる工程であることができる。ここで、前記触媒は、上述のアルドール抽出工程150およびアルドール精製工程200で分離されていない一部の少量の触媒であることができる。一方、前記抽出剤をアルドール抽出工程150に循環させることにより、前記抽出剤、例えば、2-EHは回収されて前記アルドール抽出工程150で再使用されることができる。
【国際調査報告】