(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】内部支持構造を含む強化されたRF LINACコイルインダクタ
(51)【国際特許分類】
H05H 9/00 20060101AFI20240925BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20240925BHJP
H05H 7/18 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H05H9/00 F
H01J37/317 Z
H05H7/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516575
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 US2022040771
(87)【国際公開番号】W WO2023043567
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, チャールズ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ, アーロン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, ポール ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブラニク, デーヴィット
【テーマコード(参考)】
2G085
5C101
【Fターム(参考)】
2G085AA03
2G085BA06
2G085BA07
2G085BE02
5C101AA25
5C101EE28
5C101EE63
5C101EE72
5C101FF02
(57)【要約】
LINACで使用されるコイルインダクタが開示される。コイルインダクタは1つ以上のチューブを含み、各チューブが、チューブを強化するための内部支持構造を含む。チューブを支えることで振動量が下がり、コイルを自身の固有振動数で共振させることが可能となる。幾つかの実施形態において、内部支持構造が1つ以上の内壁を含む。上記内壁を使用して、冷却剤がチューブを流過するのを可能にする複数の流体チャネルを形成することができる。エンドキャップが、供給流体チャネルと戻り流体チャネルとの間の流体連通を可能とするために、チューブの第2の末端に配置されうる。1つ以上のチューブの第1の末端が、冷却剤が流過するための供給ポート及び戻りポートを含むマニホールドに接続されうる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形加速器(LINAC)内で使用するための共振コイルであって、
第1の末端、第2の末端、及び螺旋形状の区分を有するチューブを含み、
前記チューブの内部が、前記チューブに構造的支持を提供するための1つ以上の内壁を含む、共振コイル。
【請求項2】
前記チューブの外側が銅でメッキされている、請求項1に記載の共振コイル。
【請求項3】
前記1つ以上の内壁が、前記チューブの前記内部を複数の流体チャネルに分ける、請求項1に記載の共振コイル。
【請求項4】
前記チューブの前記第1の末端に取り付けられており、供給ポート及び戻りポートを有するマニホールドをさらに含む、請求項3に記載の共振コイル。
【請求項5】
前記マニホールドは、前記供給ポートが、供給流体チャネルと呼ばれる前記複数の流体チャネルのうちの1つ以上と連通し、前記戻りポートが、戻り流体チャネルと呼ばれる前記複数の流体チャネルのうちの別の1つ以上と連通するように、構成されている、請求項4に記載の共振コイル。
【請求項6】
前記供給流体チャネルと前記戻り流体チャネルとの間の流体連通を可能とするための、前記チューブの前記第2の末端に配置されたエンドキャップをさらに含む、請求項5に記載の共振コイル。
【請求項7】
前記チューブの前記内部が、前記複数の流体チャネルから物理的に隔離された中央導管をさらに含む、請求項6に記載の共振コイル。
【請求項8】
前記第2の末端の近傍の、前記中央導管内に配置されたセンサをさらに含む、請求項7に記載の共振コイル。
【請求項9】
前記第2の末端の近傍の前記エンドキャップに取り付けられており、前記中央導管を通って前記マニホールドに至るテンションワイヤをさらに含む、請求項7に記載の共振コイル。
【請求項10】
イオン注入システムであって、
イオン源と、
質量分析計と、
バンチャと、
LINACであって、
複数の加速電極、
複数のキャビティであって、各キャビティが、励磁コイル、及び請求項1に記載の共振コイルを含み、前記共振コイルの第2の末端が、前記複数の加速電極のうちの1つと連通する、複数のキャビティ、及び
それぞれの励磁コイルと各々が連通する複数のRF発生器
を含む、LINACと、
を備えた、イオン注入システム。
【請求項11】
線形加速器(LINAC)内で使用するための共振コイルであって、
第1の末端、第2の末端、及び螺旋形状の区分を有する第1のチューブと、
第1の末端、第2の末端、及び螺旋形状の区分を有する第2のチューブと、
を備え、
前記第1のチューブの内部及び前記第2のチューブの内部がそれぞれ、前記第1のチューブ及び前記第2のチューブに構造的支持を提供するための1つ以上の内壁を含み、
前記共振コイルが、
マニホールドであって、前記第1のチューブの前記第1の末端と前記第2のチューブの前記第1の末端とがマニホールドで収束する、マニホールド
をさらに備える、共振コイル。
【請求項12】
前記第1のチューブの前記螺旋形状の区分と前記第2のチューブの前記螺旋形状の区分が同心円上にある、請求項11に記載の共振コイル。
【請求項13】
前記1つ以上の内壁が、前記第1のチューブの前記内部及び前記第2のチューブの前記内部を複数の流体チャネルに分ける、請求項11に記載の共振コイル。
【請求項14】
前記マニホールドは、供給ポートが、供給流体チャネルと呼ばれる前記複数の流体チャネルのうちの1つ以上と連通し、戻りポートが、戻り流体チャネルと呼ばれる前記複数の流体チャネルのうちの別の1つ以上と連通するように、構成されている、請求項13に記載の共振コイル。
【請求項15】
前記供給流体チャネルと前記戻り流体チャネルとの間の流体連通を可能とするための、前記第1のチューブの前記第2の末端と前記第2のチューブの前記第2の末端に配置されたエンドキャップをさらに含む、請求項14に記載の共振コイル。
【請求項16】
前記第1のチューブの前記内部が、前記複数の流体チャネルから物理的に隔離された中央導管をさらに含む、請求項15に記載の共振コイル。
【請求項17】
前記第1のチューブの前記第2の末端の近傍の、前記中央導管内に配置されたセンサをさらに含む、請求項16に記載の共振コイル。
【請求項18】
前記第1のチューブの前記第2の末端の近傍の前記エンドキャップに取り付けられており、前記中央導管を通って前記マニホールドに至るテンションワイヤをさらに含む、請求項16に記載の共振コイル。
【請求項19】
イオン注入システムであって、
イオン源と、
質量分析計と、
バンチャと、
LINACであって、
複数の加速電極、
複数のキャビティであって、各キャビティが、励磁コイル、及び請求項11に記載の共振コイルを含み、前記第1のチューブの前記第2の末端、及び前記第2のチューブの前記第2の末端がそれぞれ、前記複数の加速電極のうちの1つと連通する、複数のキャビティ、及び
それぞれの励磁コイルと各々が連通する複数のRF発生器
を含む、LINACと、
を備えた、イオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年9月20日に出願された米国特許出願第17/479,313号の優先権を主張し、その開示内容は、参照により全体が本明細書で援用される。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、内部支持構造を有するコイルに関し、より詳細には、LINACで使用するためのコイルに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスの製造には、複数の別個の複雑なプロセスが含まれる。上記プロセスの幾つかでは、イオンがワークピースに向かって加速させられる。上記のイオンは、様々なやり方で加速させることができる。例えば、電界が、正電荷を帯びたイオンを引き寄せて加速させるために一般的に使われる。
【0004】
特定の実施形態において、上記のイオンを加速させるために線形加速器(又はLINAC(linear accelerator))を使用することができる。特定の実施形態において、LINACは、複数のRFキャビティを含み、当該RFキャビティのそれぞれが、通過するイオンをさらに加速させる役割を果たす。LINACは、RFキャビティのそれぞれが、そのそれぞれの共振周波数でエネルギー供給されているときに最適に動作しうる。
【0005】
このエネルギーは通常、巻回されてインダクタを形成するコイルによって提供される。上記インダクタは、LINACが必要とする高電圧を提供する。上記のコイルは通常中空であり、発生したエネルギーにより非常に熱くなりうる。従って、幾つかの実施形態では、テフロンスリーブをコイルに挿入して、冷却流体がコイルを流過できるようにする。このことでコイルは冷却されるが、他の問題が発生する虞がある。例えば、テフロンスリーブは構造的支持を提供しない。従って、コイルは振動しやすくなりうる。コイル間の間隔によって、キャパシタンス及びインダクタンスが決定されることが知られている。振動は上記間隔を変える傾向にあり、その結果、コイルの固有振動数が変化しうる。例えば、固有振動数は、1/(2π√LC)により与えられる。従って、LとCとの比が変わると、必然的にコイルの固有振動数が変わる。通常の動作では、RF生成器が一定の周波数で電力を供給しており、振動がコイル内に導入された場合には、コイルの固有周波数が先の数式で表されるようにシフトする。このことが起きると、RF生成器はここで、共振コイルの最適な周波数とは異なる周波数で電力を供給し、コイルの誘起電圧、システムのQ、効率が全て下がる。この場合、ビーム電流及び最終エネルギーが、要求されているものよりも小さくなる虞がある。
【0006】
従って、LINAC内で使用されるコイルに構造的支持を提供できるシステムがあれば有利であろう。さらに、このシステムが簡単に製造されれば有利であろう。
【発明の概要】
【0007】
LINACで使用するためのコイルインダクタが開示される。コイルインダクタは1つ以上のチューブを含み、各チューブが、チューブを強化するための内部支持構造を含む。チューブを支えることで振動量を減らし、コイルを自身の固有振動数で共振させることができる。幾つかの実施形態において、内部支持構造が1つ以上の内壁を含む。上記内壁を使用して、冷却剤がチューブを流過するのを可能にする複数の流体チャネルを形成することができる。エンドキャップが、供給流体チャネルと戻り流体チャネルとの間の流体連通を可能とするために、チューブの第2の末端に配置されうる。1つ以上のチューブの第1の末端が、冷却剤が流過するための供給ポート及び戻りポートを含むマニホールドに接続されうる。
【0008】
一実施形態に従って、線形加速器(LINAC)内で使用するための共振コイルが開示される。共振コイルが、第1の末端、第2の末端、及び螺旋形状の区分を有するチューブを含み、チューブの内部が、チューブに構造的支持を提供するための1つ以上の内壁を含む。幾つかの実施形態において、チューブの外側が銅でメッキされている。特定の実施形態において、1つ以上の内壁が、チューブの内部を複数の流体チャネルに分ける。幾つかの実施形態において、マニホールドが、チューブの第1の末端に取り付けられており、供給ポート及び戻りポートを有する。特定の実施形態において、マニホールドは、供給ポートが、供給流体チャネルと呼ばれる複数の流体チャネルのうちの1つ以上と連通し、戻りポートが、戻り流体チャネルと呼ばれる複数の流体チャネルのうちの別の1つ以上と連通するように、構成されている。幾つかの実施形態において、エンドキャップが、供給流体チャネルと戻り流体チャネルとの間の流体連通を可能とするために、チューブの第2の末端に配置されている。特定の実施形態において、チューブの内部は、複数の流体チャネルから物理的に隔離された中央導管をさらに備える。幾つかの実施形態において、センサが、第2の末端の近傍の、中央導管の内部に配置されている。幾つかの実施形態において、テンションワイヤが、第2の末端の近傍のエンドキャップに取り付けられており、中央導管を通ってマニホールドに至る。
【0009】
他の実施形態に従って、イオン注入システムが開示される。イオン注入システムが、イオン源と、質量分析計と、バンチャと、LINACであって、複数の加速電極、複数のキャビティであって、各キャビティが、励磁コイル、先に記載の共振コイルを含み、共振コイルの第2の末端が、複数の加速電極のうちの1つと連通する、複数のキャビティ、及びそれぞれの励磁コイルと各々が連通する複数のRF発生器を含む、LINACと、を備える。
【0010】
他の実施形態に従って、線形加速器(LINAC)内で使用するための共振コイルが開示される。共振コイルが、第1の末端、第2の末端、及び螺旋形状の区分を有する第1のチューブと、第1の末端、第2の末端、及び螺旋形状の区分を有する第2のチューブと、を備え、第1のチューブの内部及び第2のチューブの内部がそれぞれ、第1のチューブ及び第2のチューブに構造的支持を提供するための1つ以上の内壁を含み、共振コイルが、マニホールドであって、第1のチューブの第1の末端と第2のチューブの第1の末端とがマニホールドで収束する、マニホールドをさらに備える。幾つかの実施形態において、第1のチューブの螺旋形状の区分と第2のチューブの螺旋形状の区分が同心円上にある。幾つかの実施形態において、1つ以上の内壁が、第1のチューブの内部及び第2のチューブの内部を複数の流体チャネルに分ける。幾つか実施形態において、マニホールドは、供給ポートが、供給流体チャネルと呼ばれる複数の流体チャネルのうちの1つ以上と連通し、戻りポートが、戻り流体チャネルと呼ばれる複数の流体チャネルのうちの別の1つ以上と連通するように、構成されている。幾つかの実施形態において、エンドキャップが、供給流体チャネルと戻り流体チャネルとの間の流体連通を可能とするために、第1のチューブの第2の末端と第2のチューブの第2の末端とに配置されている。特定の実施形態において、第1のチューブの内部は、複数の流体チャネルから物理的に隔離された中央導管をさらに備える。幾つかの実施形態において、センサが、第1のチューブの第2の末端の近傍の、中央導管の内部に配置されている。幾つかの実施形態において、テンションワイヤが、第1のチューブの第2の末端の近傍のエンドキャップに取り付けられており、中央導管を通ってマニホールドに至る。
【0011】
他の実施形態に従って、イオン注入システムが開示される。イオン注入システムが、イオン源と、質量分析計と、バンチャと、LINACであって、複数の加速電極、複数のキャビティであって、各キャビティが、励磁コイル、及び先に記載の共振コイルを含み、第1のチューブの第2の末端、及び第2のチューブの第2の末端がそれぞれ、複数の加速電極のうちの1つと連通する、複数のキャビティ、及びそれぞれの励磁コイルと各々が連通する複数のRF発生器を含む、LINACと、を備える。
【0012】
本開示をより良く理解するために、添付の図面が参照され、添付の図面は参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る、線形加速器(LINAC)を利用したイオン注入システムのブロック図を示す。
【
図2A-B】
図1の実施形態に係る共振コイルの2つの図を示す。
【
図3A】一実施形態に係る
図2の共振コイルの断面を示す。
【
図3B】他の実施形態に係る
図2の共振コイルの断面を示す。
【
図5A-B】一実施形態に係るエンドキャップの様々な図を示す。
【
図6】他の実施形態に係る、LINACを利用したイオン注入システムのブロック図を示す。
【
図7A-B】
図6の実施形態に係る共振コイルの2つの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
線形加速器(LINAC)は、ワークピースに向かってイオンを加速させるために使用されうる。
図1は、イオン注入システム1を示す。イオン注入システム1は、イオン源10を含む。イオン源10は、間接加熱陰極(IHC:indirectly heated cathode)源、バーナス(Bernas)源、容量結合プラズマ源、誘導結合プラズマ源、又は他の適切な装置といった(ただし、これらに限定されない)、任意の適切なイオン源でありうる。イオン源10は開口を有し、当該開口を介して、イオンがイオン源10から抽出されうる。上記イオンは、抽出開口の近傍の、イオン源10の外側に配置された1つ以上の電極に負電圧を印加することにより、イオン源10から抽出されうる。
【0015】
その後、イオンは質量分析計30に入ることができ、この質量分析計30は、特定の質量電荷比を有するイオンが通過することを可能にする磁石でありうる。上記質量分析計30を使用して、所望のイオンのみより分けられる。その後、線形加速器40に入るのが所望のイオンである。
【0016】
所望のイオンは、次いでバンチャ20に入り、バンチャ20は、一緒に移動するイオン群又はイオンバンチ(束、bunch)を形成する。バンチャ20は、複数のドリフトチューブを含むことができ、ドリフトチューブの少なくとも1つに、交流電圧が供給されうる。他のドリフトチューブの1つ以上が接地されうる。交流電圧が供給されるドリフトチューブは、イオンビームを加速させ当該イオンビームを操作して別個のバンチにする役割を果たす。
【0017】
線形加速器40は、1つ以上のキャビティ41を含む。各キャビティ41は、励磁コイル45により形成された電磁場によって励磁されうる共振コイル42を含む。励磁コイル45は、それぞれの共振コイル42とともにキャビティ41内に配置されている。励磁コイル45には、RF信号でありうる励磁電圧が印加されうる。励磁電圧は、それぞれのRF生成器44によって供給されうる。各励磁コイル45は、単一の共振周波数に調整されている。換言すれば、各励磁コイル45に印加される励磁電圧は、他の励磁コイル45に供給される励磁電圧から独立していることができる。各励磁電圧は、好適に、自身のそれぞれのキャビティ41の共振周波数で変調される。励磁電圧の大きさ及び位相は、RF発生器44と通信するコントローラ90により決定され、変更されうる。キャビティ41内に共振コイル42を配置することで、励磁電圧の大きさを増大させること又は振幅は同じに保ちつつ、位相をずらすことができる。
【0018】
励磁コイル45に励磁電圧が印加されると、共振コイル42で電圧が誘起される。励磁電圧は、13.56MHzと27MHzの間の周波数を有するRF電圧でありうる。さらに、上記電圧の振幅は、9kVと170kVの間とすることができる。その結果、各キャビティ41内の共振コイル42が正弦波電圧によって駆動される。各共振コイル42は、2つの加速電極43と電気的に連通しうる。2つの加速電極43は、正弦波電圧の互いに逆の位相によって駆動されうる。換言すれば、2つの加速電極43は、共振コイル42の両端の電圧によって駆動される。イオンは、各加速電極43内の開口を通過する。
【0019】
特定の加速電極43へのバンチの進入は、当該バンチが加速電極43に近づくにつれて加速電極43の電位がマイナスになるが、当該バンチが加速電極43を通過するにつれてプラスに切り替わるように、速さが定められる。このように、バンチは、加速電極43に入るときには加速され、加速電極43を出ていくときには反発される。この結果、バンチが加速される。このプロセスは、線形加速器40の加速電極43ごとに繰り返される。各加速電極は、イオンの加速度を増大させ、かつ測定されうる。
【0020】
バンチは、線形加速器40を出た後で、ワークピース50に注入される。
【0021】
当然のことながら、イオン注入システム1は、リボンビームを生成するための静電スキャナ、四重極要素、ビームを加速又は減速させるための追加の電極、他の要素といった、他の構成要素を含みうる。
【0022】
コントローラ90は、システムを制御するために使用することができる。コントローラ90は、処理ユニット91及びメモリデバイス92を含みうる。処理ユニット91は、マイクロプロセッサ、信号プロセッサ、カスタマイズされたFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は他の適切なユニットでありうる。上記メモリデバイス92は、フラッシュROM、電気的に消去可能なROM、又は他の適切なデバイスといった、不揮発性メモリでありうる。他の実施形態において、メモリデバイス92は、RAM又はDRAMといった揮発性メモリでありうる。メモリデバイス92は、コントローラ90が線形加速器40を制御することを可能とする命令を含む。
【0023】
代表的な共振コイル42が、
図2A~
図2Bに示されている。
図2Aは透視図であり、
図2Bは、共振コイル42をキャビティ41内に取り付けた状態を示している。共振コイル42は、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン、又は他の金属といった材料で構成されうる。特定の実施形態において、共振コイル42の断面が円形でありうる。先に記載したように、共振コイル42は、2つの加速電極43に接続される2つの末端を含む。
【0024】
共振コイル42は、第1のチューブ100及び第2のチューブ110を含みうる。第1のチューブ100の第1の末端101と、第2のチューブ110の第1の末端111とは、マニホールド120で収束する。第1のチューブ100の第2の末端102と、第2のチューブ110の第2の末端112とは、2つの露出した先端を形成している。
【0025】
第1のチューブ100及び第2のチューブ110はそれぞれ、螺旋形状の区分105を含む。螺旋形状の区分105は、1つ以上のループを含みうる。例えば、各螺旋形状の区分105内に1~2.5個のループが存在しうるが、他の数も可能である。さらに、第1のチューブ100の螺旋形状の区分105と第2のチューブ110の螺旋形状の区分115とは、インダクタを形成するよう互いに重なり合っている。換言すれば、螺旋形状の区分は、中心を有する1つ以上のループを含み、2つの螺旋形状の区分のループが同心円上にある。
【0026】
当然のことながら、共振コイル42は、他の形状及び形態であってよい。
【0027】
マニホールド120は、第1のチューブ100及び第2のチューブ110を保持するために使用されており、さらに、供給流体チャネル及び戻り流体チャネルを形成するために使用されるチャネルも含む。
図4Aは、マニホールド120の上部の透視図であり、
図4Bは、線A-A’に沿って切ったマニホールド120の断面図である。
図4Cは、マニホールド120の底部の透視図である。
【0028】
一実施形態において、マニホールド120が2つのポート、即ち、供給ポート121及び戻りポート122を有する。
図4Cで最も良く分かるように、マニホールドは、供給ポート121から、第1のチューブ100内の流体チャネルの一部及び第2のチューブ110内の流体チャネルの一部へと、流体を導くための第1の内部接合部123を含む。同様に、
図4Aで最も良く分かるように、マニホールド120は、第1のチューブ100内及び第2のチューブ110内の残りの流体チャネルを、戻りポート122へと導くための第2の内部接合部124を含む。他の実施形態において、マニホールド120が、2つの供給ポート121と2つの戻りポート122を含むことができ、これにより、内部接合部は使用されない。
【0029】
図3Aは、一実施形態に係る共振コイル42の代表的な断面を示す。共振コイル42の内部は、複数の異なる流体チャネル150に分けられている。流体チャネル150は、以下で詳述するように、チューブの全長にわたって互いに物理的に隔てられることができ、かつ、第2の末端でのみ互いに接続することができる。特定の実施形態において、流体チャネル150の数は偶数であり、これにより、マニホールド120から冷却剤を供給する流体チャネル150(供給流体チャネルと称する)と、その冷却剤をマニホールド120へと戻す流体チャネル150(戻り流体チャネルと称する)と、が同数存在する。これらの流体チャネル150は、1つ以上の内壁140を有する内部構造によって形成され、1つ以上の内壁140は、共振コイル42の内径109の1の部分から内径109の他の部分まで延在する。特定の実施形態において、内壁140が、共振コイル42の断面を画定する円の中心141を通る。さらに、特定の実施形態において、内壁140は真っすぐであり、これにより、各内壁140が円の直径となる。
【0030】
他の実施形態において、流体チャネル150の数は奇数であってよい。同実施形態では、内壁140は円の半径とすることができ、内径109の1の部分から円の中心141まで延在する。この場合、各内壁140は、円の中心141で他の内壁140と繋がることができる。例えば、同じ大きさの流体チャネルが奇数存在する場合に、各内壁140は、内径109から円の中心141まで延在し、そこで他の内壁140と繋がる。
【0031】
さらに別の実施形態において、内壁140は、円の中心141を通らなくてよい。例えば、上記円は、複数の平行な内壁によって別々の流体チャネルに分けられうる。
【0032】
一例として、
図3Aは、内径109の1の部分から、円の中心141を通って内径109の第2の部分に至る2つの内壁140によって画定された偶数の流体チャネル150が存在する断面を示す。さらに、本実施形態では、全ての流体チャネル150が同じ断面積を有するように、内壁140が等間隔で離間している。
【0033】
特定の実施形態において、全ての供給流体チャネルの断面積の和が、全ての戻り流体チャネルの断面積の和と等しくなりうる。幾つかの実施形態では、供給流体チャネルの総断面積が、戻り流体チャネルの総断面積よりもわずかに大きくなりうる。
【0034】
全ての実施形態において、上記の内壁140は、共振コイル42と同じ材料で作製され、かつ同時に製造される。例えば、一実施形態において、共振コイル42が、
図3Aに示すパターンで押し出し成形されうる。他の実施形態において、共振コイル42はAM(additive manufacturing、積層造形)法を用いて製造することができ、ここで、内壁140は同時に作製される。このようにして、内壁140は、共振コイル42のための構造的支持を提供し、あらゆる振動を減衰させる役割を果たす。
【0035】
共振コイル42のチューブは外径及び内径を有し、各内壁140が厚みを有しうる。内壁140の厚さは、内径の関数とすることができる。換言すれば、内径が大きくなるにつれて、構造的な剛性を維持するために内壁を厚くすることが有利となりうる。特定の実施形態において、共振コイル42の内径は0.75~1.25インチの間でありうる。本構成では、内壁の厚さは、0.05~0.050インチとすることができる。当然のことながら、他の寸法も可能である。
【0036】
図3Bは、他の実施形態に係る共振コイル42のチューブの断面を示す。本実施形態では、共振コイル42内に中央導管160が存在する。特定の実施形態において、この中央導管160は内径109に接触しない。中央導管160は、他の流体チャネル150から物理的に離れている。
図3Bに示すような幾つかの実施形態では、中央導管160は、共振コイル42の中心141の周りの、内壁140同士がぶつかる領域内に形成されている。
【0037】
上記の中央導管160は、様々な機能のために使用することができる。他の流体チャネルとは異なって、中央導管は、冷却剤が中央導管160を流過しないように隔離されうる。一実施形態において、センサ161が、第1のチューブ100の第2の末端102及び/若しくは第2のチューブ110の第2の末端112に、又はそれらの近傍に配置されうる。このセンサ161は、温度センサ、電圧センサ、又は他の種類のセンサでありうる。上記センサ161の電気接続は、中央導管160を通ってマニホールド120に至りうる。一旦マニホールド120の外に出ると、上記電気接続は、センサ161が監視しているパラメータを測定するための適切な回路又は装置に接続されうる。
【0038】
他の実施形態において、中央導管160内にテンションワイヤ(tensioning wire)が配設されうる。このテンションワイヤを使用して、共振コイル42の剛性を増減させることができる。例えば、テンションワイヤの1の端は、第2の末端102のエンドキャップ170に取り付けることができ、テンションワイヤの他の端には、マニホールド120でアクセス可能とすることができる。マニホールド120のテンションワイヤの末端を引っ張ることで、共振コイル42の剛性が高めることができる。
【0039】
図3Aに示すような特定の実施形態では、共振コイル42が4つの流体チャネルを有する。供給流体チャネルは互いに隣接して配置されており、戻り流体チャネルも同様である。
【0040】
さらに、
図5A~
図5Bに示されるように、エンドキャップ170が、第1のチューブ100の第2の末端102と第2のチューブ110の第2の末端112とに配置されうる。
図5Aは透視図を示し、
図5Bは断面図を示している。エンドキャップ170は、共振コイル42内での供給流体チャネルと戻り流体チャネルとの間の連通を可能にするよう構成されている。特定の実施形態において、エンドキャップ170は、1つの供給流体チャネルが1つの戻り流体チャネルと連通するように構成されている。他の実施形態において、1:1の関係が存在しないこともある。
【0041】
エンドキャップ170を使用することで、供給流体チャネルを介して共振コイル42に入った冷却剤が、第2の末端102及び第2の末端112において戻り流体チャネルに入ることができる。
図3Bに示すような特定の実施形態において、エンドキャップ170は、中央導管160が流体チャネル150から物理的に分離された状態にあるように、設計されうる。例えば、中央導管160を隔離するために、エンドキャップ170付近のチューブの末端にプラグを取り付けることができる。
【0042】
稼働時には、グリコール、水、又はこれらの流体の組み合わせといった流体が冷却剤として使用されうる。冷却剤は、マニホールド120内の供給ポート121を介して共振コイル42に入り、供給流体チャネルを通って、第1のチューブ100の第2の末端102、及び第2のチューブ110の第2の末端112に達する。この時点で、エンドキャップ170の構成に因り、冷却剤は戻り流体チャネルに入って、マニホールド120上の戻りポート122へと戻される。
【0043】
前述したように、本明細書に記載の共振コイル42は、幾つかのやり方で製造することができる。一実施形態において、本明細書に記載の内壁140を有するチューブは、最大20フィートの長さなどで押し出される。このチューブは、押し出されたときは真っすぐな状態である。その後、誘導ベンダを使用して、螺旋形状の区分105を作ることができる。誘導ベンダは誘導加熱器を使用して、金属を可鍛性がある状態にする。共振コイル42の具体的な形状は、当該技術分野でよく知られたこのようなやり方で作られうる。チューブが適切に成形された後で、静電めっきプロセスを使用して、チューブの外側に銅をコーティングすることができる。その後で、成形されメッキされたチューブをマニホールド120に取り付けることができる。さらに、エンドキャップ170が、第1のチューブ100の第2の末端102と第2のチューブ110の第2の末端112とに配置されうる。
【0044】
代替的に、共振コイル42のチューブが、AM法を用いて製造されうる。本実施形態では、チューブをその最終形状にプリントすることができ、これにより、誘導加熱曲げ(inductive bending)が使用されない。ここでも、静電めっきプロセスを使用して、チューブの外側に銅をコーティングすることができる。その後で、成形されメッキされたチューブをマニホールド120に取り付けることができる。さらに、エンドキャップ170が、当該エンドキャップ170がアセンブリの一部となるように、チューブの残りの部分と同時にAM法を用いて作製されうる。
【0045】
本明細書に記載の内部構造は、他の実施形態でも利用することができる。
図6は、他の実施形態に係るイオン注入システム601を示す。
図1にも登場する構成要素には同一の参照番号が付されており、再度の説明は行われない。本実施形態では、各共振コイル642が、1つの加速電極43と電気的に連通するだけである。従って、
図2Aの共振コイル42とは異なって、本実施形態では、共振コイル642が、露出した先端を1つだけ有する。具体的には、
図2の共振コイルとは異なって、共振コイル642は、第1のチューブ700のみ含む。
【0046】
図7A~
図7Bに示すように、第1のチューブ700の第1の末端701が、マニホールド120に収束しうる。第1のチューブ700の第2の末端702は、露出した先端を形成する。
【0047】
第1のチューブ700は、螺旋形状の区分705を含む。第1のチューブ700の螺旋形状の区分705がインダクタを形成する。先に記載したように、螺旋形状の区分705は、1~2.5個のループを有しうるが、他の数も可能である。
【0048】
さらに、先に記載したように、エンドキャップを第2の末端702に配置することができ、供給流体チャネルを流過する流体が戻り流体チャネルに入って第1の末端701へと戻ることが可能となる。
図4Aで示したものと同様のマニホールド120を使用して、供給ポート及び戻りポート、並びに、あらゆる電気接続のためのインタフェースを提供することができる。特定の実施形態において、マニホールド120は、
図4A~
図4Cに示すものと同じでありうるが、幾つかの出口は塞がれている。他の実施形態において、内部接合部を含まない別のマニホールドが使用されうる。
【0049】
さらに、第1のチューブ700は、
図3A又は
図3Bに示すような断面を有しうる。先に記載したように、断面が
図3Bに示すようなものである場合には、センサ又はテンションワイヤが中央導管160に挿入されうる。
【0050】
本システムは多くの利点がある。第1に、内壁140が、共振コイル42のための構造的支持を提供する。先に説明したように、振動はインダクタンスとキャパシタンスとの比を変える傾向にあり、これにより、共振コイル42の固有振動数が変化する。RF発生器44は、共振コイル42の固有周波数でRF電圧を供給するように調整されている。固有振動数がずれるような振動の場合には、エネルギー伝達の効率が下がり、その結果性能が低下する。さらに、流体チャネルによって、チューブを通る冷却剤の効率的な循環が可能となる。さらに、中央導管によって、センサ又はテンションワイヤを含むというオプションが可能になる。
【0051】
本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されない。実際には、本明細書に記載されたものに加えた、本開示の他の様々な実施形態及び本開示への変更が、当業者には先の明細書の記載及び添付の図面から明らかとなろう。従って、このような他の実施形態及び変形例が、本開示の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本開示は、本明細書では、特定の目的のための特定の環境における特定の実施形態の文脈において記載されてきたが、その有用性がこれらに限定されず、本開示が、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実現されうることが、当業者には分かるであろう。これに対応して、以下に記載の特許請求の範囲は、本明細書に記載される本開示の完全な幅及び思想に鑑みて解釈されるべきである。
【国際調査報告】