(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】封止フィルム
(51)【国際特許分類】
H10K 50/842 20230101AFI20240925BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20240925BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20240925BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
H10K50/842 141
H10K50/84 846
H10K50/842 423
H10K71/00
H10K50/844
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518494
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 KR2022019412
(87)【国際公開番号】W WO2023101489
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0170472
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ボム・ドゥ・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ソル・リュ
(72)【発明者】
【氏名】クァン・フイ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ファン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】イェルン・ソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・イン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ソン・カン
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC23
3K107CC43
3K107EE44
3K107EE45
3K107EE49
3K107EE53
3K107FF01
3K107FF03
3K107FF14
3K107GG06
3K107GG28
3K107GG37
(57)【要約】
本出願は、封止フィルム、その製造方法、これを含む有機電子装置およびこれを用いた有機電子装置の製造方法に関し、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を遮断できる構造の形成が可能であり、有機電子装置の長期信頼性を確保することができる封止フィルムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止組成物の硬化物である封止層を含み、
前記封止組成物は、封止樹脂および水分吸着剤を含み、
前記封止層は、単層であり、かつ厚さ方向によって水分吸着剤の濃度が異なる第1領域、第2領域および第3領域を含む封止フィルム。
【請求項2】
第1領域、第2領域および第3領域を順に含む、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項3】
第2領域は、第1領域および第3領域より水分吸着剤含有量がさらに多い、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項4】
前記封止層内厚さ方向による水分吸着剤の分布に対するガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)において、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布(σ値)が2以下である、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項5】
封止組成物は、無溶剤タイプである、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項6】
メタル粘着力が4,000gf/in以上である、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項7】
封止樹脂は、オレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項8】
封止樹脂は、封止材内で10重量%以上含まれる、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項9】
水分吸着剤は、化学反応性吸着剤である、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項10】
水分吸着剤は、封止樹脂100重量部に対して90重量部以上で含まれる、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項11】
封止組成物は、粘着付与剤をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項12】
粘着付与剤は、封止樹脂100重量部に対して15~200重量部の範囲内に含まれる、請求項11に記載の封止フィルム。
【請求項13】
封止組成物は、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項14】
活性エネルギー線重合性化合物は、封止樹脂100重量部に対して0.5~10重量部の範囲内に含まれる、請求項13に記載の封止フィルム。
【請求項15】
封止組成物は、ラジカル開始剤をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項16】
前記封止層は、下記一般式1で測定したゲル含有量が60%以上である、請求項1に記載の封止フィルム:
[一般式1]
ゲル含有量(%)=A/B×100
前記一般式1において、Bは、前記封止層サンプルの質量であり、Aは、前記サンプルを60℃にてトルエンで24時間浸漬後、200メッシュの網でろ過させ、前記網を通過しない前記封止層の不溶解分の乾燥質量を示す。
【請求項17】
前記封止組成物は、170℃および50s
-1せん断速度で測定した粘度が1,000~2,000Pa・sの範囲内である、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項18】
封止層は、押出品である、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項19】
メタル層をさらに含む、請求項1に記載の封止フィルム。
【請求項20】
封止組成物を押出して封止層を製造する段階を含む請求項1に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項21】
封止組成物は、封止樹脂および水分吸着剤を単一段階で混合して製造する、請求項20に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項22】
前記封止組成物を製造する段階は、50℃以上の温度および5bar以上の圧力で行われる、請求項20に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項23】
前記押出して封止層を製造する段階は、5bar以上の圧力で行われる、請求項20に記載の封止フィルムの製造方法。
【請求項24】
基板;基板上に形成された有機電子素子;および前記有機電子素子の全面を封止する請求項1に記載の封止フィルムを含む有機電子装置。
【請求項25】
上部に有機電子素子が形成された基板に請求項1に記載の封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用する段階を含む有機電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、封止フィルム、その製造方法、これを含む有機電子装置および前記有機電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子装置(OED;organic electronic device)は、正孔および電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む装置を意味し、その例としては、光電池装置(photovoltaic device)、整流器(rectifier)、トランスミッター(transmitter)および有機発光ダイオード(OLED;organic light emitting diode)などが挙げられる。
【0003】
前記有機電子装置のうち有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)は、従来の光源に比べて、電力消費量が少なく、応答速度が速く、表示装置または照明の薄型化に有利である。また、OLEDは、空間活用性に優れていて、各種携帯用機器、モニター、ノートパソコンおよびテレビのような様々な分野において適用されることが期待されている。
【0004】
OLEDの商用化および用途拡大において、最も主要な問題点は、耐久性の問題である。OLEDに含まれた有機材料および金属電極などは、水分などの外部的要因によって非常に容易に酸化する。したがって、水分遮断性が最大化した封止フィルムが要求される。
【0005】
特に、OLED封止材は、優れた水分遮断性を確保するためには、水分遮断性を有する層を必須構成として含まなければならず、前記水分遮断性を有する層は、上部および/または下部構成要素との優れた接着特性を必要とする。水分遮断性を有する層と接着性を有する層を別々に製作した後、それぞれの層を互いに付着して一体に結合する方法を考慮することもできるが、前記方法によれば、要求される機能の確保のために多数の層を製作する必要があるので、コストアップ、工程の複雑化、および薄型化効率の低下などの問題を誘発することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を遮断できる構造の形成が可能であり、過酷な環境でも耐久信頼性を維持できる封止フィルムを提供する。本出願による封止フィルムは、単層だけで、水分遮断性および粘着性を良好に発揮することができるので、本出願による封止フィルムを適用した素子は、薄型化を維持することができる。
【0007】
本出願の技術的課題は、以上で言及した技術的課題に制限されず、言及されていない他の技術的課題は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な実施例を有していてもよいところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細に説明しようとする。しかしながら、これは、本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物~代替物を含むものと理解すべきである。
層、領域または基板のような要素が他の構成要素「上(on)」に存在すると言及されるとき、これは、直接的に他の要素上に存在したり、またはそれらの間に中間要素が存在することもできることが理解できる。
【0009】
本出願において使用した用語は、ただ特定の実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、門脈上明白に相異に意味しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解すべきである。
【0010】
別途の定義がない限り、技術的または科学的な用語を含んでここで使用されるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有している。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の門脈上有する意味と一致する意味を有するものと解すべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味と解されない。
【0011】
本出願は、封止フィルムに関する。前記封止フィルムは、例えば、OLED等のような有機電子装置を封止またはカプセル化することに適用することができる。
本明細書において、用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔および電子を用いて電荷の交流を発生する有機材料層を含む構造を有する物品または装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッターおよび有機発光ダイオード(OLED)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。本出願の1つの例示において、前記有機電子装置は、OLEDであってもよい。
【0012】
OLED封止材は、優れた水分遮断性を確保するためには、水分遮断性を有する層を必須構成として含まなければならず、前記水分遮断性を有する層は、上部および/または下部構成要素との優れた接着特性を必要とする。水分遮断性を有する層と接着性を有する層などを別々に製作した後、それぞれの層を互いに付着して一体に結合する方法を考慮することもできるが、前記方法によれば、要求される機能の確保のために多数の層を製作する必要があるので、コストアップ、工程の複雑化、および薄型化効率の低下などの問題を誘発することができる。したがって、このような問題を解決するために、本出願は、単層だけで優れた水分遮断性および粘着性を発揮できる封止フィルムを提供することができる。
【0013】
例示的な封止フィルムは、封止組成物の硬化物である封止層を含んでもよいし、封止組成物は、封止樹脂および水分吸着剤を含んでもよいし、封止層は、単層であり、かつ封止層内厚さ(深さ)方向による水分吸着剤の分布に対するガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)において、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布(σ値)が2以下であってもよい。
【0014】
一例として、水分吸着剤の厚さ分布に対するガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)において、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布(σ値)が1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、0.15以下、または0.1以下であってもよく、下限値は、大きく制限されないが、0.001以上であってもよい。
【0015】
ここで、ガウス曲線フィッティングは、封止層の厚さに対する関数を示すものであり、下記の式1で示された通りである。
【0016】
【0017】
式1中、Aおよびbは、水分吸着剤の絶対量関連定数であり、
【数2】
は、水分吸着剤の厚さ方向に対する平均位置であり、σは、水分吸着剤の厚さ方向に対する位置分布である。
【0018】
水分吸着剤の厚さ分布に対するガウス曲線フィッティングにおけるσ値が上記のように特定の範囲を満たすことによって、厚さ方向に封止フィルムの中央部に該当する領域に水分吸着剤を高含有量で含んでもよいし、これによって、水分吸着性に優れながらも、これと同時に粘着特性をも改善することができる。
すなわち、前記封止層は、厚さ方向によって水分吸着剤の濃度が異なる第1領域、第2領域および第3領域を含んでもよいし、封止層は、単層であり、複数個の層を有する積層構造ではないが、水分吸着剤の濃度によって単層を任意に領域で区別することができる。一例として、単層の封止層を成す第1領域、第2領域および第3領域は、水分吸着剤の含有量が異なっていてもよい。この際、水分吸着剤の含有量による領域区別と関連して、各領域の界面で水分吸着剤の含有量は、連続して変化することができるので、各領域における界面が必ず明確に区分される必要はない。
【0019】
1つの例示において、第2領域は、第1領域および第3領域に比べて、水分吸着剤を高含有量で含んでもよい。すなわち、第2領域は、第1領域および第2領域より水分吸着剤含有量がさらに多い領域であってもよい。この際、第1領域と第2領域は、水分吸着剤含有量が第2領域より低含有量であれば十分であり、第1領域と第2領域の水分吸着剤含有量は、同じか異なっていてもよい。
【0020】
図1は、単層の封止層を水分吸着剤の含有量によって領域を区別して示す図であり、
図1を参照すると、水分吸着剤が高含有量領域である第2領域22は、水分吸着剤低濃度領域である第1領域21と第3領域23との間に介在していてもよい。言い換えれば、水分吸着剤が低含有量領域である第1領域21および第3領域23は、それぞれ、封止層11の最上部または最下部を成して上面または下面に位置し、封止層の上部または下部に接する他の構成要素と直接的に接していてよい。
すなわち、本発明によれば、封止層に含まれた水分吸着剤は、粒子状に封止層内に均一に分布していない状態で存在していてもよい。ここで、分布は、粒子が空間を充填する方式に関するものであり、分散とは区別される概念である。均一に分布した状態は、封止層または封止フィルムのいずれの部分にも同一または実質的に同じ密度で水分吸着剤が存在し、粒子同士ができるだけ遠く離れていて、空間内に均一に充填している状態を意味する。
【0021】
なお、有機電子素子に接する封止層に水分吸着剤が均一に分布した状態で過剰に含まれる場合、最上部および/または最下部を成す封止層の上面および下面にも水分吸着剤が過剰に存在し、この場合、封止層の接着性能が非常に低下し、有機電子素子の耐久性および信頼性が低下する問題が発生することがある。
【0022】
したがって、従来、封止フィルムとして少なくとも2以上の封止層を含む多層構造を用いた。すなわち、多層構造の封止フィルムが有機電子素子上に適用されるとき、有機電子素子に向かう第1封止層には、水分吸着剤を含まないか、または含んでいても少量で含み、有機電子素子に向かう面と反対面に位置する第2封止層に水分吸着剤を多量含有するように設計することによって、有機電子素子に接する第1封止層から接着性を確保し、第2封止層から水分バリア性を確保した。
しかしながら、本出願による封止層は、単層であり、かつ封止層の厚さ(深さ)方向に中央部に水分吸着剤を高濃度で含有し、封止層の両表面には、水分吸着剤を低濃度で含有し、水分吸着剤が特定の分布状態を示すことによって、本出願は、別途の粘着剤層や接着剤層がなくても、適正レベル以上の優れた接着性を示しながらも、これと同時に、優れたバリア性を有する封止フィルムを提供することができる。
【0023】
1つの例示において、封止層のメタル粘着力が4,000gf/in以上、4,200gf/in以上、4,400gf/in以上、4,600gf/in以上、4,800gf/in以上、5,000gf/in以上、5,100gf/in以上、5,200gf/in以上、5,300gf/in以上、5,400gf/in以上、または5,500gf/in以上であってもよい。上限は、大きく制限されないが、10,000gf/in以下または8,000gf/in以下であってもよい。すなわち、本出願による封止層は、前述したように、厚さ方向によって水分吸着剤の含有量が異なっており、封止層の上面または下面には、水分吸着剤が低含有量領域である第1領域または第3領域に位置することにより、本出願の封止層は、優れたメタル粘着力を有することができる。前記メタル粘着力は、後述するように、封止層上に追加できるメタル層に対する粘着力であり、22±5℃の温度および50±10%の恒温恒湿室で30分間放置した封止フィルムを引張機(TA,Texture Analyser)に固定させ、Tension Modeで25℃の温度および5mm/minの引張速度で測定したものであってもよい。
【0024】
1つの例示において、上記から製造された封止層は、下記一般式1で測定したゲル含有量が60%以上であってもよい。
【0025】
[一般式1]
ゲル含有量(%)=A/B×100
【0026】
前記一般式1において、Bは、前記封止層サンプルの質量であり、Aは、前記サンプルを60℃にてトルエンで24時間浸漬後、200メッシュの網でろ過させ、前記網を通過しない前記封止層の不溶解分の乾燥質量を示す。本明細書において単位メッシュは、ASTM基準の単位であってもよい。前記封止層サンプルの質量Bは、1gにして測定することができる。前記ゲル含有量は、例えば、63%以上、65%以上、67%以上、70%以上、72%以上、75%以上または78%以上であってもよく、上限は、例えば、99%以下、95%以下、93%以下、89%以下、86%以下、84%以下、82%以下または80%以下であってもよい。本出願は、ゲル含有量を調節することによって、水分遮断性およびストレス吸収性だけでなく、硬化物性に優れた封止フィルムを提供することができる。
【0027】
また、本出願による封止層は、酸価(Acid value)が1以下であってもよい。前記酸価は、例えば、0.9以下、0.8以下または0.7以下であってもよく、下限は、特に限定されないが、0.1以上であってもよい。従来から問題になった水分遮断性および有機電子素子のダークスポットの発生と輝点の発生とは異なって、最近では、有機電子素子から発生するホワイトスポットがパネル不良の主な原因となっている。本出願は、前記ホワイトスポットが発生するメカニズムが封止組成物内に存在する有機酸によることを確認し、封止層の酸価と共に、封止層マトリックスの架橋程度を前記ゲル含有量で調節することによって、ホワイトスポットの発生を効果的に抑制することができた。具体例において、前記有機酸は、イオン形態で有機電子素子に到達し、前記素子上に一部形成され得るクラックでしきい電圧をシフトさせることによってホワイトスポットを発生させていた。このような技術的な問題は、前記有機電子素子の全面を封止する封止層の酸価とゲル含有量を調節することによって防止することができる。
【0028】
さらに、本出願による封止層は、可視光線領域に対して優れた光透過率を有することができる。1つの例示において、本出願の封止用組成物は、硬化後にJIS K7105規格による80%以上の光透過率を示すことができる。例えば、前記封止用組成物は、可視光線領域に対して85%以上、90%以上、92%以上または93%以上の光透過率を有していてもよい。本出願の封止層は、優れた光透過率と共に、低いヘイズを示すことができる。1つの例示において、前記封止組成物は、硬化後にJIS K7105の規格によって測定したヘイズが5%以下、4%以下、3%以下または1%以下であってもよい。前記光学特性は、UV-Vis Spectrometerを用いて550nmで測定したものであってもよい。
【0029】
また、1つの例示において、前記有機電子素子封止層の硬化後、色度計を用いてASTM D 1003規格で測定した黄色度(△YI,yellow index)値が1以下であってもよく、その下限は、大きく制限されないが、-2以上であってもよい。
【0030】
1つの例示において、前記封止層は、Purge & Trap sampler(JAI JTD-505III-GC/MSD system(Agilent 7890B/5977A)測定装置を用いて、100℃で60分間パージトラップ(Purge and Trap)を実施した後、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いて総アウトガス量を測定したとき、測定されたアウトガス量は、400ppm未満であってもよく、詳しくは、300ppm以下、200ppm以下、100ppm以下、90ppm以下、80ppm以下、70ppm以下、50ppm以下、30ppm以下、20ppm以下または10ppm以下であってもよい。すなわち、本発明による封止層は、後述する組成を含むことによって、封止層から発生するアウトガス量が極めて少ないため、前記封止層が適用される有機電子素子は、優れた信頼性を有することができる。
【0031】
一具体例において、前記封止層は、厚さが30μm以上500μm以下であってもよい。本出願の封止層は、厚さが30μm以上、33μm以上、35μm以上、40μm以上、43μm以上、45μm以上、47μm以上、50μm以上、52μm以上、55μm以上、57μm以上、または60μm以上であってもよく、上限は、特に限定されないが、500μm以下、400μm以下、300μm以下、250μm以下、または200μm以下であってもよい。本出願は、封止層の厚さを従来と比較して厚くしながらも、ゲル含有量を目的のレベルで具現して、水分遮断性を最大化することができ、また、高温など過酷な環境でパネル反りが発生する場合、ストレスを吸収し、信頼性の高い有機電子装置を提供することができる。従来、封止フィルムを一定厚さ以上でコートした後、UVを照射して形成したが、UVがフィルム内部まで浸透せず、硬化物性が顕著に低下する問題があり、また、溶剤がフィルムの内部に残ることになり、一部揮発しない溶剤および未硬化物質が有機電子素子に損傷をあたえる問題があった。特に、本出願の封止組成物は、有機電子素子の全面をシールし、有機電子素子の一面と直接的に接触できるが、前記封止組成物に後述するように別途の分散剤を含まないながらも、後述する組成の無溶剤タイプを用いることによって、有機電子素子の信頼性をさらに向上させることができ、また、一定厚さ以上でも向上した硬化率を示すことによって、水分遮断性およびストレス吸収だけでなく、優れた硬化物性を具現することができる。
【0032】
また、1つの例示において、本出願の封止層は、単層であってもよいが、これに限定されず、少なくとも2以上の封止層を含む多層構造であってもよい。前記2以上の封止層を含む場合、前記封止層は、前記有機電子素子の封止時に素子に向かう第1封止層および前記第1封止層の前記素子に向かう面とは反対面に位置する第2封止層を含んでもよい。一具体例において、封止フィルムは、少なくとも2以上の封止層を含み、前記封止層は、封止時に有機電子素子に向かう第1封止層および前記有機電子素子に向かわない第2封止層を含んでもよい。また、2以上の層が封止層を構成する場合、前記封止層の各層の組成は、同じか異なっていてもよい。1つの例示において、前記封止層は、封止樹脂および/または水分吸着剤を含んでもよいし、前記封止層は、粘着剤層または接着剤層であってもよい。一例として、封止フィルムが有機電子素子上に適用されるとき、有機電子素子に向かう封止層である第1封止層は、水分吸着剤を含まないか、含んでいても、全体水分吸着剤の重量を基準として5重量%以下の少量で含んでもよいし、後述するような多量の水分吸着剤は、第2封止層に含まれてもよい。
【0033】
一具体例において、本出願の封止フィルム1は、
図2に示されたように、封止層11および基材層12を含んでもよい。前記封止フィルムは、基板上に形成された有機電子素子の全面をシールすることができる。
【0034】
1つの例示において、本出願の封止組成物は、封止樹脂を含んでもよい。前記封止樹脂は、架橋可能な樹脂または硬化性樹脂であってもよく、具体例において、オレフィン系樹脂を含んでもよい。
【0035】
1つの例示において、前記封止組成物は、無溶剤タイプであってもよい。本明細書において、無溶剤タイプは、溶剤を含まないか、溶剤を全体組成物内で0.1wt%以下または0.01wt%以下で含む場合を意味する。すなわち、前記封止組成物は、固形分を99wt%以上、99.9wt%以上または100wt%で含むものであり、本出願は、別途の溶剤なく、固形分99wt%以上または100wt%の原料だけで製膜可能な封止フィルムを提供する。
【0036】
1つの例示において、前記封止樹脂は、ガラス転移温度が0℃未満、-10℃未満または-30℃未満、-50℃未満または-60℃未満であってもよい。下限は、特に限定されず、-150℃以上であってもよい。前記でガラス転移温度とは、硬化後のガラス転移温度であってもよい。
【0037】
本出願の一具体例において、前記封止樹脂は、オレフィン系樹脂であってもよい。1つの例示において、オレフィン系樹脂は、ブチレン単量体の単独重合体;ブチレン単量体と重合可能な他の単量体を共重合した共重合体;ブチレン単量体を用いた反応性オリゴマー;またはこれらの混合物であってもよい。前記ブチレン単量体は、例えば、1-ブテン、2-ブテンまたはイソブチレンを含んでもよい。一例示において、前記オレフィン系樹脂は、イソブチレン単量体を重合単位で含んでもよい。
【0038】
前記ブチレン単量体あるいは誘導体と重合可能な他の単量体は、例えば、イソプレン、スチレンまたはブタジエンなどを含んでもよい。前記共重合体を使用することによって、工程性および架橋度のような物性を維持することができ、有機電子装置への適用時に、粘着剤の耐熱性を確保することができる。
【0039】
また、ブチレン単量体を用いた反応性オリゴマーは、反応性官能基を有するブチレン重合体を含んでもよい。前記オリゴマーは、重量平均分子量500~5000g/molの範囲を有していてもよい。また、前記ブチレン重合体は、反応性官能基を有する他の重合体と結合していてもよい。前記他の重合体は、アルキル(メタ)アクリレートであってもよいが、これに限定されるものではない。前記反応性官能基は、ヒドロキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基または窒素含有基であってもよい。また、前記反応性オリゴマーと前記他の重合体は、多官能性架橋剤により架橋されていてもよく、前記多官能性架橋剤は、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン架橋剤および金属キレート架橋剤からなるグループの中から選ばれた1つ以上であってもよい。
【0040】
1つの例示において、本出願の封止樹脂は、ジエンと1つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物の共重合体を含んでもよい。ここで、オレフィン系化合物は、ブチレンなどを含んでもよいし、ジエンは、前記オレフィン系化合物と重合可能な単量体であってもよく、例えば、イソプレンまたはブタジエンなどを含んでもよい。例えば、1つの炭素-炭素二重結合を含むオレフィン系化合物およびジエンの共重合体は、ブチルゴムであってもよい。
【0041】
封止層において前記樹脂またはエラストマー成分は、粘着剤組成物がフィルム形状に成形が可能な程度の重量平均分子量(Mw:Weight Average Molecular Weight)を有することができる。例えば、前記樹脂またはエラストマーは、約10万~200万g/mol、12万~150万g/mol、15万~100万g/mol、20万~70万g/mol、23万~60万g/mol、25万~50万g/molまたは30万~47万g/mol程度の重量平均分子量を有していてもよい。本明細書において用語重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味し、別途の規定がない限り、単位は、g/molである。ただし、前記言及された重量平均分子量を前記樹脂またはエラストマー成分が必ず有しなければならないわけではない。例えば、樹脂またはエラストマー成分の分子量がフィルムを形成するほどのレベルにならない場合には、別途のバインダー樹脂が粘着剤組成物に配合されてもよい。
【0042】
1つの例示において、前記封止樹脂は、封止層内で10重量%以上、13重量%以上、15重量%以上、17重量%以上、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、23重量%以上または24重量%以上含まれてもよく、その上限は、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下または30重量%以下であってもよい。前記封止樹脂は、水分遮断性は良好であるが、耐熱耐久性が劣る短所があるので、本出願は、前記封止樹脂の含有量を調節することによって、樹脂が有する水分遮断性能を十分に具現しながらも、高温高湿での耐熱耐久性を一緒に維持することができる。
【0043】
1つの例示において、封止フィルムは、水分吸着剤を含んでもよい。本明細書において用語「水分吸着剤(moisture absorbent)」は、例えば、後述する封止フィルムに浸透した水分や湿気との化学的反応を通じて上記を除去できる化学反応性吸着剤を意味し得る。
【0044】
1つの例示において、前記水分吸着剤は、表面に有機酸が存在しなくてもよい。一般的に、水分吸着剤は、組成物内に良好に分散するように分散剤で表面処理を施すことができ、この場合、水分吸着剤の表面に有機酸が存在する。このような有機酸は、素子と直接当接する封止層内で素子に向かって浸透するので、OLEDパネルのホワイトスポット不良を発生させる。本出願は、水分吸着剤が分散剤を含まないか、有機酸を含まないことによって、封止組成物全体の信頼性を向上させて、OLEDパネル不良を防止する。
【0045】
上記で使用できる水分吸着剤としては、例えば、金属酸化物、硫酸塩または有機金属酸化物などが挙げられる。具体的には、前記硫酸塩の例としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸ニッケルなどが挙げられ、前記有機金属酸化物の例としては、アルミニウムオキシドオクチレートなどが挙げられる。前記金属酸化物の具体的な例としては、五酸化リン(P2O5)、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)または酸化マグネシウム(MgO)等が挙げられ、金属塩の例としては、硫酸リチウム(Li2SO4)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸カルシウム(CaSO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硫酸コバルト(CoSO4)、硫酸ガリウム(Ga2(SO4)3)、硫酸チタン(Ti(SO4)2)または硫酸ニッケル(NiSO4)等のような硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、塩化イットリウム(YCl3)、塩化銅(CuCl2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化タンタル(TaF5)、フッ化ニオブ(NbF5)、臭化リチウム(LiBr)、臭化カルシウム(CaBr2)、臭化セシウム(CeBr3)、臭化セレニウム(SeBr4)、臭化バナジウム(VBr3)、臭化マグネシウム(MgBr2)、ヨウ化バリウム(BaI2)またはヨウ化マグネシウム(MgI2)等のような金属ハロゲン化物;または過塩素酸バリウム(Ba(ClO4)2)または過塩素酸マグネシウム(Mg(ClO4)2)等のような金属塩素酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。封止層に含まれ得る水分吸着剤としては、前述のような構成のうち1種を使用することもでき、2種以上を使用することもできる。1つの例示において、水分吸着剤として2種以上を使用する場合、焼成ドロマイト(calcined dolomite)等を使用することができる。
【0046】
このような水分吸着剤は、用途によって適切なサイズに制御することができる。1つの例示において、水分吸着剤の平均粒径を100~15000nm、500nm~10000nm、800nm~8000nm、1μm~7μm、2μm~5μmまたは2.5μm~4.5μmに制御することができる。前記範囲のサイズを有する水分吸着剤は、水分との反応速度があまり速くないため、保管が容易であり、封止しようとする素子に損傷を与えない。本明細書において、粒径は、別途の規定がない限り、平均粒径を意味し得、D50粒度分析器で公知の方法で測定したものであってもよい。
【0047】
水分吸着剤の含有量は、特に制限されず、目的とする遮断特性を考慮して適宜選択することができる。前記水分吸着剤は、封止樹脂100重量部に対して110重量部以上で含まれてもよく、一例として、113~800重量部、115~750重量部、117~700重量部、120~650重量部、123~600重量部、125~550重量部、127~500重量部、130~470重量部、133~450重量部、135~430重量部、137~400重量部、140~370重量部、143~350重量部、145~330重量部、147~300重量部、150~270重量部、153~250重量部または155~240重量部の範囲内に含まれてもよい。すなわち、本出願による封止フィルムは、水分吸着剤を従来より多量で含みながらも、封止層内他の組成と優れた相溶性を示すことができ、これと同時に、水分吸着剤に対する別途の分散剤なくとも、優れた分散性を示し、優れた水分遮断効果を具現することができる。
【0048】
1つの例示において、封止フィルムは、粘着付与剤をさらに含んでもよい。前記粘着付与剤は、例えば、軟化点が70℃以上の化合物であってもよく、具体例において、75℃以上、78℃以上、83℃以上、85℃以上、90℃以上または95℃以上であってもよく、その上限は、特に制限されないが、150℃以下、145℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下または125℃であってもよい。前記粘着付与剤は、分子構造内に環状構造を有する化合物であってもよく、前記環状構造は、炭素数が5~15の範囲内であってもよい。前記炭素数は、例えば、6~14、7~13または8~12の範囲内であってもよい。前記環状構造は、単環式化合物であってもよいが、これに限定されず、二環式または三環式化合物であってもよい。前記粘着付与剤は、また、オレフィン系重合体であってもよく、前記重合体は、単独重合体または共重合体であってもよい。また、本出願の粘着付与剤は、水素添加化合物であってもよい。前記水素添加化合物は、部分的にまたは完全に水素化した化合物であってもよい。このような粘着付与剤は、封止フィルム内で他の成分と相溶性が良いながらも、水分遮断性に優れ、外部応力緩和特性を有することができる。粘着付与剤の具体的な例としては、水素化したテルペン系樹脂、水素化したエステル系樹脂または水素化したジシクロペンタジエン系樹脂などが挙げられる。前記粘着付与剤の重量平均分子量は、約200~5,000g/mol、300~4,000g/mol、400~3,000g/molまたは500~2,000g/molの範囲内であってもよい。前記粘着付与剤の含有量は、必要に応じて適宜調節することができる。例えば、粘着付与剤の含有量は、封止樹脂100重量部対比15重量部~200重量部、20~190重量部、25重量部~180重量部または30重量部~150重量部の割合で含まれてもよい。本出願は、前記の特定の粘着付与剤を使用することによって、水分遮断性に優れながらも、外部応力緩和特性を有する封止フィルムを提供することができる。
【0049】
本出願の封止フィルムは、封止層が輝点防止剤を含んでもよい。前記輝点防止剤は、密度汎関数理論(Density Functional Theory)により計算された、アウトガスに対する吸着エネルギーが0eV以下であってもよい。前記吸着エネルギーの下限値は、特に限定されないが、-20eVであってもよい。前記アウトガスの種類は、特に制限されないが、酸素、H原子、H2分子および/またはNH3を含んでもよい。本出願は、封止フィルムが前記輝点防止剤を含むことによって、有機電子装置から発生するアウトガスによる輝点を防止することができる。
【0050】
本出願の具体例において、輝点防止剤と輝点原因原子または分子間の吸着エネルギーを密度汎関数理論(density functional theory)ベースの電子構造計算を用いて計算することができる。前記計算は、当業界における公知の方法で行うことができる。例えば、本出願は、結晶型構造を有する輝点防止剤の最密充填面が表面に現れる2次元slab構造を作った後、構造最適化を進め、この真空状態の表面上に輝点原因分子が吸着した構造に対する構造最適化を進めた後、この2つのシステムの全エネルギー(total energy)の差に輝点原因分子の全エネルギーを抜いた値を吸着エネルギーと定義した。それぞれのシステムに対する全エネルギー計算のために、電子-電子間の相互作用をシミュレートするexchange-correlationでGGA(generalized gradient approximation)系列の関数であるrevised-PBE関数を使用し、電子kinetic energyのcutoffは、500eVを使用し、逆格子空間(reciprocal space)の原点に該当するgamma pointのみを含ませて計算した。各システムの原子構造を最適化するために、conjugate gradient法を使用し、原子間の力が0.01eV/Å以下となるまで繰り返し計算を行った。一連の計算は、常用コードであるVASPを通じて行われた。
【0051】
輝点防止剤の素材は、前記封止フィルムが有機電子装置に適用され、有機電子装置のパネルで輝点を防止する効果を有する物質であれば、その素材は制限されない。例えば、輝点防止剤は、有機電子素子の電極上に蒸着される酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素の無機蒸着層で発生するアウトガスであり、例えば、酸素、H2ガス、アンモニア(NH3)ガス、H+、NH2+、NHR2またはNH2Rのように例示される物質を吸着できる物質であってもよい。前記で、Rは、有機基であってもよく、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などが例示されるが、これに限定されない。
【0052】
1つの例示において、輝点防止剤の素材は、前記吸着エネルギー値を満たす限り、制限されず、金属または非金属であってもよい。前記輝点防止剤は、例えば、Li、Ni、Ti、Rb、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、In、Pt、Pd、Fe、Cr、Siまたはその配合物を含んでもよいし、前記素材の酸化物または窒化物を含んでもよいし、前記素材の合金を含んでもよい。1つの例示において、輝点防止剤は、ニッケル粒子、酸化ニッケル粒子、窒化チタン、鉄-チタンのチタン系合金粒子、鉄-マンガンのマンガン系合金粒子、マグネシウム-ニッケルのマグネシウム系合金粒子、希土類系合金粒子、カーボンナノチューブ、グラファイト、アルミノホスフェート分子篩粒子またはメゾシリカ粒子を含んでもよい。前記輝点防止剤は、封止樹脂100重量部に対して3~150重量部、6~143重量部、8~131重量部、9~123重量部、10~116重量部、10重量部~95重量部、10重量部~50重量部、または10重量部~35重量部で含まれてもよい。本出願は、前記含有量の範囲で、フィルムの接着力および耐久性を向上させ、有機電子装置の輝点防止を具現することができる。また、前記輝点防止剤の粒径は、10nm~30μm、50nm~21μm、105nm~18μm、110nm~12μm、120nm~9μm、140nm~4μm、150nm~2μm、180nm~900nm、230nm~700nmまたは270nm~400nmの範囲内であってもよい。前記粒径は、D50粒度分析によるものであってもよい。本出願は、前記の輝点防止剤を含むことによって、有機電子装置内で発生する水素を効率的に吸着しながらも、封止フィルムの水分遮断性および耐久信頼性を共に具現することができる。
【0053】
また、1つの例示において、本出願の封止層は、封止樹脂と相溶性が高く、前記封止樹脂と共に、特定の架橋構造を形成できる活性エネルギー線重合性化合物を含んでもよい。
例えば、本出願の封止層は、封止樹脂と共に、活性エネルギー線の照射によって重合され得る多官能性の活性エネルギー線重合性化合物を含んでもよい。前記活性エネルギー線重合性化合物は、例えば、活性エネルギー線の照射による重合反応に参加できる官能基、例えば、アクリロイル基またはメタクリロイル基等のようなエチレン性不飽和二重結合を含む官能基、エポキシ基またはオキセタン基などの官能基を2つ以上含む化合物を意味し得る。
【0054】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、多官能性アクリレート(MFA;Multifunctional acrylate)を使用することができる。
また、前記活性エネルギー線重合性化合物は、封止樹脂100重量部に対して0.5重量部~10重量部、0.7重量部~9重量部、1重量部~8重量部、1.3重量部~7重量部または1.5重量部~6重量部で含まれてもよい。本出願は、前記範囲内で、高温高湿など過酷な条件でも耐久信頼性に優れた封止フィルムを提供する。
【0055】
前記活性エネルギー線の照射によって重合できる多官能性の活性エネルギー線重合性化合物は、制限なく使用することができる。例えば、前記化合物は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(HDDA)、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオール(dodecanediol)ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)ジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(TMPTA)またはこれらの混合物を含んでもよい。
【0056】
多官能性の活性エネルギー線重合性化合物としては、例えば、分子量が100以上1,000g/mol未満であり、官能基を2個以上含む化合物を使用することができる。前記多官能性の活性エネルギー線重合性化合物に含まれる環構造は、炭素環式構造または複素環式構造;または単環式または多環式構造のいずれでもよい。
【0057】
本出願の具体例において、封止層は、ラジカル開始剤をさらに含んでもよい。ラジカル開始剤は、光開始剤または熱開始剤であってもよい。光開始剤の具体的な種類は、硬化速度および黄変可能性などを考慮して適宜選択することができる。例えば、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系またはホスフィンオキシド系光開始剤などを使用することができ、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン(thioxanthone)、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタル、アセトフェノンジメチルケタル、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]および2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシドなどを使用することができる。
【0058】
ラジカル開始剤は、活性エネルギー線重合性化合物100重量部に対して0.2重量部~20重量部、0.5~18重量部、1~15重量部、または2重量部~13重量部の割合で含まれてもよい。これを通じて、活性エネルギー線重合性化合物の反応を効果的に誘導し、また、硬化後に残存成分により封止層組成物の物性が悪化するのを防止することができる。
【0059】
封止層には、前述のような構成の他にも、用途および後述する封止フィルムの製造工程によって多様な添加剤を含んでもよい。例えば、封止層は、硬化性物質、架橋剤またはフィラーなどを目的とする物性によって適正範囲の含有量で含んでもよい。
【0060】
1つの例示において、前記封止組成物は、170℃および50s-1せん断速度で測定した粘度が1,000~2,000Pa・sの範囲内であってもよく、一例として、粘度の下限は、1,100Pa・s以上、1,200Pa・s以上、1,300Pa・s以上、1,400Pa・s以上または1,500Pa・s以上であってもよい。これに限定されるものではないが、粘度は、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)で測定した値であってもよい。このように前記封止組成物は、高粘度の液相にもかかわらず、本出願は、前述するように押出工程を通じて水分吸着剤が封止組成物内均一な分散性を示すことができる。
【0061】
本出願の具体例において、封止フィルムは、前記封止層上に形成されたメタル層をさらに含んでもよい。本出願のメタル層は、20W/m・K以上、50W/m・K以上、60W/m・K以上、70W/m・K以上、80W/m・K以上、90W/m・K以上、100W/m・K以上、110W/m・K以上、120W/m・K以上、130W/m・K以上、140W/m・K以上、150W/m・K以上、200W/m・K以上または210W/m・K以上の熱伝導度を有していてもよい。前記熱伝導度の上限は、特に限定されず、800W/m・K以下であってもよい。このように高い熱伝導度を有することによって、メタル層接合工程時に接合界面で発生した熱をさらに迅速に放出させることができる。また、高い熱伝導度は、有機電子装置の動作中に蓄積される熱を迅速に外部に放出させ、これによって、有機電子装置の温度をさらに低く維持させることができ、クラックおよび欠陥発生が減少する。前記熱伝導度は、15~30℃の温度範囲のいずれか1つの温度で測定したものであってもよい。
【0062】
本明細書において用語「熱伝導度」とは、物質が伝導により熱を伝達できる能力を示す程度であり、単位は、W/m・Kで示すことができる。前記単位は、同じ温度と距離で物質が熱伝達する程度を示すものであり、距離の単位(メートル)と温度の単位(カルビン)に対する熱の単位(ワット)を意味する。
【0063】
本出願の具体例において、前記封止フィルムのメタル層は、透明であってもよく、不透明であってもよい。前記メタル層の厚さは、3μm~200μm、10μm~100μm、20μm~90μm、30μm~80μmまたは40μm~75μmの範囲内であってもよい。本出願は、前記メタル層の厚さを制御することによって、放熱効果が十分に具現され、薄膜の封止フィルムを提供することができる。前記メタル層は、薄膜のメタルホイル(Metal foil)または高分子基材層にメタルが蒸着されていてもよい。前記メタル層は、前述した熱伝導度を満たし、金属を含む素材であれば、特に制限されない。メタル層は、金属、酸化金属、窒化金属、炭化金属、オキシ窒化金属、オキシホウ化金属、およびその配合物のうちいずれか1つを含んでもよい。例えば、メタル層は、1つの金属に1以上の金属元素または非金属元素が添加された合金を含んでもよいし、例えば、ステンレススチール(SUS)を含んでもよい。また、1つの例示において、メタル層は、鉄、クロム、銅、アルミニウムニッケル、酸化鉄、酸化クロム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化スズインジウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、およびそれらの配合物を含んでもよい。メタル層は、電解、圧延、加熱蒸発、電子ビーム蒸発、スパッタリング、反応性スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着または電子サイクロトロン共鳴ソースプラズマ化学気相蒸着手段により蒸着してもよい。本出願の一実施例において、メタル層は、反応性スパッタリングにより蒸着してもよい。
【0064】
封止フィルムは、基材フィルムまたは離型フィルム(以下、「第1フィルム」とも称する)をさらに含み、前記封止層が前記基材または離型フィルム上に形成されている構造を有していてもよい。前記構造は、また、前記メタル層上に形成された基材フィルム、保護フィルムまたは離型フィルム(以下、「第2フィルム」とも称する)をさらに含んでもよい。
【0065】
本出願において使用できる前記第1フィルムの具体的な種類は、特に限定されない。本出願では、前記第1フィルムとして、例えば、この分野における一般的な高分子フィルムを使用することができる。本出願では、例えば、前記基材または離型フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリテトラフルオルエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムまたはポリイミドフィルムなどを使用することができる。また、本出願の前記基材フィルムまたは離型フィルムの一面または両面には、適切な離型処理が施されていてもよい。基材フィルムの離型処理に使用される離型剤の例としては、アルキド系、シリコン系、フッ素系、不飽和エステル系、ポリオレフィン系またはワックス系などを使用することができ、これらのうち耐熱性の観点から、アルキド系、シリコン系またはフッ素系離型剤を使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0066】
本出願において前記のような基材フィルムまたは離型フィルム(第1フィルム)の厚さは、特に限定されず、適用される用途に応じて適宜選択することができる。例えば、本出願において前記第1フィルムの厚さは、10μm~500μm、好ましくは、20μm~200μm程度であってもよい。前記厚さが10μm未満であれば、製造過程で基材フィルムの変形が容易に発生する恐れがあり、500μmを超過すれば、経済性が劣る。
【0067】
本出願の具体例において、前記封止フィルムの封止層は、押出品であってもよい。1つの例示において、前記封止層は、前述した無溶剤タイプの封止組成物を押出して形成されたものであってもよい。押出物または押出品は、封止組成物が押出された製品を意味し、本出願は、押出させてフィルムまたはシート状の封止フィルムを製造することができる。本出願は、無溶剤タイプで従来のフィルムと比較して水分吸着剤を多量含むフィルムを提供する。このようなフィルムは、押出を通じて提供することができる。
【0068】
本出願は、封止フィルムの製造方法に関する。
本出願の具体例において、封止フィルムの製造方法は、封止樹脂および水分吸着剤を単一段階で混合し、無溶剤タイプの封止組成物を製造する段階を含んでもよい。ここで、封止樹脂および水分吸着剤を単一段階で混合するというのは、封止樹脂と水分吸着剤が同時に投入されたり、他の1つが投与された直後または少なくとも5分や、3分以内または100秒以内に連続的に投入されて配合されることを意味する。すなわち、溶剤などを用いて水分吸着剤を溶解させて別途の混合物を製造し、前記水分吸着剤が溶解した混合物を樹脂または樹脂が溶解した溶液と混合してシール材組成物を製造する工程とは区別される。
【0069】
OLED用封止フィルムの主要な核心課題のうち1つは、水分遮断性を最大化し、長期信頼性を確保することにある。水分遮断性を確保するためには、封止フィルムは、封止フィルムに浸透した水分や湿気を除去できる水分吸着剤を必須的に含まなければならない。特に、水分遮断性を最大化するために、水分吸着剤は、組成物内で十分に分散しなければならない。ここで、分散は、粒子が集まって塊を作るなど凝集しておらず、均一に散らばっている状態を意味するものであり、分散がうまくいけば、粒子1つ1つが離れている状態であってもよい。
【0070】
従来、封止組成物を製造するためには、封止樹脂を溶剤に溶解して溶剤タイプの樹脂溶液を製造し、分散剤を用いて水分吸着剤を溶剤に分散させた混合物を前記樹脂溶液に投入することによって、樹脂と水分吸着剤を配合したコーティング液を形成する方式を採択して、コーティング液を形成するのに2段階以上の工程が要求された。すなわち、水分吸着剤の分散性を高めるために、有機酸などの別途の分散剤を用いなければならなかったが、前記コーティング液の高粘性特性によって別途の分散剤を用いても、水分吸着剤の分散性を向上させるのに限界があった。さらに、溶剤を用いて混合物を形成する場合、その後、溶剤乾燥工程を行うといっても、溶剤がフィルムの内部に残ることになり、一部揮発しない溶剤に起因して有機電子素子に損傷をあたえる問題が発生した。したがって、本出願は、封止樹脂と水分吸着剤を単一段階で混合して無溶剤タイプの封止組成物を用いながらも、後述するように押出を通じて封止層を製造することによって、水分吸着剤の分散性が最大化され、かつ長期信頼性を効果的に確保可能な有機電子素子を提供することができる。
【0071】
1つの例示において、前記封止組成物を製造する段階は、高温条件下で行われ得、一例として、50℃以上の温度および5bar以上の圧力で行われ得る。前記温度は、樹脂の融点より高くてもよいが、一例として、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、110℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上または150℃以上であってもよく、温度の上限は、封止組成物内に投入された成分が熱分解されない温度に適宜調節することができるが、一例として、200℃以下または180℃以下であってもよい。また、前記圧力は、7bar以上、10bar以上、13bar以上、15bar以上、17bar以上または20bar以上であってもよく、圧力の上限は、目的によって適宜調節することができるが、一例として、30bar以下であってもよい。これに限定されるものではないが、一例として、封止組成物を製造する段階は、ニーダー(kneader)またはバンバリー(banbury)などの混練器に投入されて混練されるものであってもよく、前記50℃以上の温度および5bar以上の圧力は、混練器内部の温度または圧力であってもよい。本出願は、上記のように特定の温度以上で封止組成物製造段階を行うことにより、封止組成物内成分が溶融混練され、水分吸着剤の分散性がさらに向上し、組成物内成分間の相溶性に優れていて、押出工程に対する作業性にも優れている。
【0072】
一具体例において、本出願による封止フィルムの製造方法は、前記封止組成物製造段階で製造された封止組成物を押出器に移送してコンパウンドし、90℃以上の温度で押出して封止層を製造する段階を含んでもよい。
【0073】
前記封止層を製造する段階での押出温度は、押出器内部温度または成形温度を意味し得る。ここで、押出器内部温度は、混練器から押出器に移送した封止組成物が押出器内のスクリューにより吐出部方向に移動しながらブレンドされる区間での温度を意味し得る。また、成形温度は、押出器の吐出部に装着された成形部の温度を称するものであり、一例として、Tダイの温度を意味し得る。成形温度は、成形部によってフィルム形態で吐出および成形される区間での温度を意味し得る。
すなわち、本発明による封止組成物は、一次にニーダーで混練し、水分吸着剤を均一に分散させて押出器に移送し、押出器内部に装着されたスクリューにより二次に混練し、水分吸着剤の分散度がさらに向上することができる。
【0074】
これに限定されるものではないが、一例として、押出器は、一軸押出器または二軸押出器であってもよいが、優れた生産性と均一性を有する二軸押出器が好ましい。また、二軸押出器内スクリューの種類や回転方向などは、投入される成分によって適宜選択することができる。
【0075】
1つの例示において、押出して封止層を製造する温度は、100℃以上、110℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上、150℃以上、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、175℃以上または180℃以上であってもよく、温度の上限は、封止組成物内に投入された成分が熱分解されない温度で適宜調節することができるが、一例として、200℃以下または180℃以下であってもよい。一例として、押出器内部温度は、140℃以上であってもよく、成形温度は、150℃以上であってもよい。また、一例として、押出器内部温度と成形温度の差は、50℃または30℃以内であってもよい。本出願は、押出器内部温度が前記範囲を満たすことによって、封止組成物内に水分吸着剤が均一に分散することができ、成形温度が前記範囲に制御することによって、フィルムの特性を改善することができる。
【0076】
1つの例示において、押出して封止層を製造する段階は、5bar以上の高圧で行い、封止組成物の粘度を後述する範囲に制御することができ、これによって、水分吸着剤の分散性をさらに向上させることができる。これに限定されるものではないが、一例として、前記押出段階での圧力は、6bar以上、7bar以上、10bar以上、11bar以上、12bar以上、13bar以上、14bar以上、15bar以上、16bar以上、17bar以上、18bar以上または20bar以上であってもよく、圧力の上限は、前記目的によって適宜調節することができるが、一例として、30bar以下であってもよい。
【0077】
1つの例示において、押出器のスクリューの回転速度は、100~400rpm、150~350rpm、170~320rpm、200~300rmpまたは230~270rpmの範囲内であってもよい。本出願は、押出器内スクリュー回転による強力なせん断力を用いて無溶剤タイプでも封止組成物内に水分吸着剤が均一に分散することができる。
【0078】
また、前記製造方法は、例えば、押出された封止層に対して電子線またはUV照射を進める硬化段階をさらに含んでもよい。電子線またはUV照射は、公知の方法で行うことができる。
【0079】
本出願は、また、有機電子装置に関する。
有機電子装置は、
図3に示されたように、基板31;前記基板31上に形成された有機電子素子32;および前記有機電子素子32を封止する前述した製造方法により製造した封止フィルム33を含んでもよい。前記封止フィルムは、封止層33を含んでもよいし、更にメタル層34を含むこともできる。この場合、封止層33およびメタル層34が一体に含まれた封止フィルムが前記有機電子素子32を封止することができる。封止フィルムがメタル層を含む場合、有機電子装置は、基板31;有機電子素子32;封止層33;およびメタル層34を順に含んでもよい。
【0080】
一例として、前記封止フィルムは、基板上に形成された有機電子素子の全面、例えば、上部および側面を全部封止していてもよい。前記封止フィルムは、粘着剤組成物または接着剤組成物を架橋または硬化した状態で含有する封止層を含んでもよい。また、前記封止層が基板上に形成された有機電子素子の全面に接触するようにシールして、有機電子装置を形成してもよい。
【0081】
本出願の具体例において、有機電子素子は、一対の電極、少なくとも発光層を含む有機層およびパッシベーション膜を含んでもよい。具体的には、前記有機電子素子は、第1電極層、前記第1電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機層および前記有機層上に形成される第2電極層を含み、前記第2電極層上に電極および有機層を保護するパッシベーション膜を含んでもよい。前記第1電極層は、透明電極層または反射電極層であってもよく、第2電極層も、透明電極層または反射電極層であってもよい。より具体的には、前記有機電子素子は、基板上に形成された透明電極層、前記透明電極層上に形成され、少なくとも発光層を含む有機層および前記有機層上に形成される反射電極層を含んでもよい。
【0082】
上記で有機電子素子は、例えば、有機発光素子であってもよい。
【0083】
前記パッシベーション膜は、無機膜と有機膜を含んでもよい。一具体例において、前記無機膜は、Al、Zr、Ti、Hf、Ta、In、Sn、ZnおよびSiからなる群から選ばれた1つ以上の金属酸化物または窒化物であってもよい。前記無機膜の厚さは、0.01μm~50μmまたは0.1μm~20μmまたは1μm~10μmであってもよい。1つの例示において、本出願の無機膜は、ドーパントが含まれていない無機物であるか、またはドーパントが含まれた無機物であってもよい。ドープされ得る前記ドーパントは、Ga、Si、Ge、Al、Sn、Ge、B、In、Tl、Sc、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiからなる群から選ばれた1種以上の元素または前記元素の酸化物であってもよいが、これらに限定されない。前記有機膜は、発光層を含まないという点から、前述した少なくとも発光層を含む有機層とは区別され、エポキシ化合物を含む有機蒸着層であってもよい。
【0084】
前記無機膜または有機膜は、化学気相蒸着(CVD,chemical vapor deposition)により形成され得る。例えば、前記無機膜は、シリコンニトリド(SiNx)を使用することができる。1つの例示において、前記無機膜として使用されるシリコンニトリド(SiNx)を0.01μm~50μmの厚さで蒸着することができる。1つの例示において、前記有機膜の厚さは、2μm~20μm、2.5μm~15μm、2.8μm~9μmの範囲内であってもよい。
【0085】
本出願は、また、有機電子装置の製造方法を提供する。前記製造方法は、上部に有機電子素子が形成された基板に前記製造方法から得られた封止フィルムが前記有機電子素子をカバーするように適用する段階を含んでもよい。また、前記製造方法は、前記封止フィルムを硬化する段階を含んでもよい。前記封止フィルムの硬化段階は、封止層の硬化を意味し得、前記封止フィルムが有機電子素子をカバーする前または後に進行することができる。
【0086】
本明細書において用語「硬化」とは、加熱またはUV照射工程などを経て本発明の粘着剤組成物が架橋構造を形成し、粘着剤の形態で製造することを意味し得る。または、接着剤組成物が接着剤として固化および付着されることを意味し得る。
【0087】
具体的には、基板に用いられるガラスまたは高分子フィルム上に真空蒸着またはスパッタリングなどの方法で電極を形成し、前記電極上に、例えば、正孔輸送層、発光層および電子輸送層などで構成される発光性有機材料の層を形成した後、その上部に電極層をさらに形成し、有機電子素子を形成することができる。次に、前記工程を経た基板の有機電子素子の全面を、前記封止フィルムの封止層が覆うように位置させる。
【発明の効果】
【0088】
本出願は、外部から有機電子装置に流入する水分または酸素を遮断できる構造の形成が可能で、有機電子装置の長期信頼性が確保されることができる封止フィルムを提供する。
【0089】
しかしながら、本発明の効果は、以上に言及した効果に制限されず、言及されていない他の効果は、下記の記載から当業者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】
図1は、本出願の1つの例示による封止層を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本出願の1つの例示による有機電子装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1によるガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)によるグラフを示す図である。
【
図5】
図5は、実施例2によるガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)によるグラフを示す図である。
【
図6】
図6は、実施例3によるガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)によるグラフを示す図である。
【
図7】
図7は、比較例1によるガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)によるグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、本発明による実施例および本発明によらない比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって制限されるものではない。
【0092】
実施例1
ブチルゴム樹脂(Mw:410,000g/mol、ガラス転移温度:-65℃)100重量部、粘着付与樹脂(SU525、軟化点:125℃、コーロン社)100重量部、多官能性アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ミウォン社)3重量部、光開始剤(Irgacure 651,Ciba)1重量部およびCaO200重量部を150℃および20barに設定された加圧ニーダー(Kneader)に投入した後、30分間溶融混練し、170℃および50s-1せん断速度で1500Pa・s粘度の封止組成物を製造した。
前記封止組成物を温度180℃およびスクリュー回転速度250rpmに設定された二軸押出器(SM Platek社のTEK30)に移送してコンパウンドし、前記二軸押出器に装着されたTダイを用いて160℃の温度、および20barの圧力で押出して、厚さ50μmのフィルム形状の封止層を製造した。前記封止層に1.5J/cm2紫外線を照射し、封止フィルムを製造した。
【0093】
実施例2
Tダイの温度を170℃に設定したことを除いて、実施例1と同じ方法でフィルムを製造した。
【0094】
実施例3
Tダイの温度を180℃に設定したことを除いて、実施例1と同じ方法でフィルムを製造した。
【0095】
実施例4
封止組成物において粘着付与剤としてEASTman社のKristalex F115(軟化点:115℃)を含むことを除いて、実施例1と同じ方法でフィルムを製造した。
【0096】
比較例1
Tダイの温度を150℃に設定したことを除いて、実施例1と同じ方法でフィルムを製造した。
【0097】
比較例2
ブチルゴム樹脂(Mw:410,000g/mol)100重量部、粘着付与樹脂(SU525, 軟化点 :125℃、コーロン社)100重量部、多官能性アクリレート(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ミウォン社)3重量部、光開始剤(Irgacure 651,Ciba)1重量部およびCaO200重量部をトルエン600重量部に配合し、十分に混合し、固形分40wt%の溶液を製造した。
前記溶液を離型PETにコートし、120℃オーブンで乾燥した後、1.5J/cm2紫外線を照射して、封止フィルムを製造した。
【0098】
比較例3
水分吸着剤の含有量を80重量部で含むことを除いて、実施例1と同じ方法で封止層を製造した。
【0099】
実験例1:ガウス曲線フィッティングにおけるσ
ガウス曲線フィッティングは、封止層の厚さ(深さ)方向による水分吸着剤の分布に対するものであり、x軸は、封止層の厚さであり、f(x)関数は、下記式1の通りである。
【0100】
【0101】
ここで、Aおよびbは、水分吸着剤の絶対量関連定数であり、
【数4】
は、水分吸着剤の厚さ(深さ)方向に対する平均位置であり、σは、水分吸着剤の厚さ(深さ)方向に対する位置分布である。
【0102】
図4~
図7は、それぞれ、実施例1、実施例2、実施例3および比較例1によるガウス曲線フィッティング(Gaussian curve fitting)によるグラフを示す図である。
【0103】
実験例2:ゲル含有量の測定
実施例および比較例の封止フィルムを50mm×50mmのサイズに試験片を製造し、それぞれの封止フィルム試験片に対して、0.3~0.4gの封止フィルム(初期重量:A)を採取し、封止フィルムを60℃でトルエン70gに3時間浸漬させた。その後、200メッシュ金網(金網の重量:M)でゲル部分をろ過した後、125℃オーブンで1時間乾燥した。ゲルと金網を合わせた重量(G)を測定した後、網を通過しない封止フィルムの不溶解分の乾燥質量(B=G-M)を用いて下記一般式1によってゲル含有量(単位:%)を計算した。
【0104】
[一般式1]
ゲル含有量(単位:%)=(B/A)×100
【0105】
前記一般式1で、Aは、封止フィルム試験片の初期質量を示し、Bは、封止フィルム試験片を60℃でトルエン70gに3時間浸漬後、200メッシュ(pore size 200μm)の網でろ過させ、前記網を通過しない封止フィルムの不溶解分の乾燥質量を示す。
【0106】
実験例3:膨潤指数の測定
実施例または比較例による一定量の封止フィルムをそれぞれボトル(bottle)に入れ、トルエンを充填し、24時間保管し、sol-gel状態の溶液を得た。その後、200メッシュ(pore size 200μm)を用いてsol-gel溶液から分離した直後、gel試料の重量(X)を測定した。得られたgel試料を80℃オーブンで12時間乾燥し、乾燥した直後のgel試料の重量(Y)を測定した。前記値を用いて下記の一般式2によって膨潤指数を計算した。
【0107】
[一般式2]
膨潤指数=sol-gel溶液から分離した直後のgel試料の重量(X)/乾燥した直後のgel試料の重量(Y)
【0108】
実験例4:貯蔵弾性率の測定
実施例または比較例による封止フィルムをそれぞれ厚さ600μmでラミネートして試験片を得、前記試験片にてARES(Advanced Rheometric Expansion System,TA社製ARES-G2)のTemp Sweepモードで平行板(parallel plate)を用いて測定した。具体的には、30~100℃の温度範囲で前記試験片に0.1%変形率(strain)で15.0rad/sの変形を加えた後に測定した貯蔵弾性率のうち、温度50℃における値を示した。
【0109】
実験例5:透湿距離
実施例および比較例の封止フィルム30mm×60mmをそれぞれ85℃の温度および85%の相対湿度の恒温恒湿チャンバーで895時間放置した後、水分が浸透した距離を顕微鏡で測定した。
【0110】
実験例6:メタル粘着力
サイズが200mm×220mmのCu面に実施例および比較例による封止フィルムをそれぞれ75℃の条件で熱ラミネートし、25mmに切断した後、Cu面に2Kgローラー(Roller)を用いてさらにラミネートして、試験片を準備した。前記試験片を22±5℃の温度および50±10%の恒温恒湿室で30分間放置した後、前記試験片を引張機(TA,Texture Analyser)に固定させ、Tension Modeで25℃の温度および5mm/minの引張速度で測定した。
【0111】
下記表1は、実施例および比較例で製造した封止フィルムについて前記実験例による結果を整理したものである。
【0112】
【符号の説明】
【0113】
1 封止フィルム
11 封止層
12 基材層
21、23 第1領域または第3領域
22 第2領域
3 有機電子装置
31 基板
32 有機電子素子
33 封止層
34 メタル層
【国際調査報告】