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特表2024-535979有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置
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  • 特表-有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置 図1
  • 特表-有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/844 20230101AFI20240927BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240927BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240927BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240927BHJP
   C08F 226/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H10K50/844
H10K59/10
G09F9/30 349Z
G09F9/30 309
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 Z
C08F226/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502036
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 KR2022006979
(87)【国際公開番号】W WO2023042992
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0124391
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0048677
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ミョン スク
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ソン リョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,ジ ヒュン
【テーマコード(参考)】
3K107
4H017
4J100
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC16
3K107CC23
3K107CC45
3K107EE49
3K107FF03
3K107FF14
3K107GG08
4H017AA04
4H017AB01
4H017AB17
4H017AC10
4H017AD02
4H017AE05
4J100AB03R
4J100AB04R
4J100AB07R
4J100AL05Q
4J100AQ21P
4J100BC44R
4J100BC54P
4J100BC75P
4J100CA03
4J100CA05
4J100CA23
4J100FA03
4J100JA43
5C094AA31
5C094AA43
5C094BA27
5C094DA07
5C094FB01
5C094JA20
(57)【要約】
アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、化学式4の光硬化性モノマー、および光開始剤を含み、重量基準で前記アリル系光硬化性モノマーと前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーの合計は、下記化学式4の光硬化性モノマーよりも大きいものである、有機発光素子封止用組成物およびそれにより形成された有機層を含む有機発光素子表示装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、下記化学式4の光硬化性モノマー、および光開始剤を含み、重量基準で前記アリル系光硬化性モノマーと前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーの合計は、下記化学式4の光硬化性モノマーよりも大きいものである、有機発光素子封止用組成物:
【化1】

(前記化学式4で、
は、水素またはメチル基、
、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖型または分岐鎖型の置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基で、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、末端にエポキシ基、ウレタン基、アルコキシ基の一つを有してもよい)。
【請求項2】
前記(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、下記化学式1、下記化学式2の1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物:
【化2】

(前記化学式1で、
、R、Rは、それぞれ、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基またはグリシジル基で、
、R、Rの一つ以上は、アリル基またはメタアリル基である)。
【化3】

(前記化学式2で、
は、アリル基またはメタアリル基、
とRは、互いに連結されて、置換または非置換の、窒素含有環型構造を形成する)。
【請求項3】
前記(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、トリアリルイソシアヌレート、1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート、ジアリルn-プロピルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレートの1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、単官能(メタ)アクリレートのものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、置換または非置換の、直鎖型または分岐鎖型の炭素数1~炭素数30のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートを含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項6】
前記化学式4の光硬化性モノマーは、フェニルスチレン、tert-ブチルスチレン、アルファ-メチルスチレンの1種以上を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項7】
前記組成物は、前記(メタ)アリル系光硬化性モノマー40重量部~90重量部、前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー5重量部~55重量部、前記化学式4の光硬化性モノマー5重量部~35重量部、および前記(メタ)アリル系光硬化性モノマー、前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、および前記化学式4の光硬化性モノマーの合計100重量部に対して、前記光開始剤0.01重量部~15重量部を含むものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項8】
前記組成物は、無溶剤タイプのものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項9】
前記組成物は、25±2℃における粘度が7cps~100cpsのものである、請求項1に記載の有機発光素子封止用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含むものである、有機発光素子表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置に関する。より詳しくは、本発明は、硬化後のプラズマエッチング率が低く、誘電率(dielectric constant,permitivity,ε)も低い有機層を具現することができ、インクジェットのジェッティング性にも優れた、有機発光素子封止用組成物およびそれにより製造された有機層を含む有機発光素子表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、外部の水分、酸素等が浸透すると、損傷し易くなり、機能が失われて信頼性が下がり得る。よって、有機発光素子は、有機発光素子封止用組成物で形成される有機層に加え、無機層を含む封止層(有機層と無機層の積層体)によって封止される必要がある。
【0003】
有機層は、有機発光素子封止用組成物を所定の厚さで塗布した後、硬化させて形成することができる。有機発光素子封止用組成物を塗布する方法として、近年ではインクジェット(ink jet)方法が考慮されている。インクジェット方法は、有機発光素子封止用組成物をノズルに入れた後、所定の温度および滴下速度で滴下する方法である。
【0004】
一方、有機発光素子表示装置において、有機発光素子には封止層以外にも各種ディスプレイ素子が上部、下部にそれぞれ追加積層される。ところが、前記ディスプレイ素子から出る各種電気、静電気または電磁波は、有機発光素子に影響を及ぼすことになる。これらディスプレイ素子から出る各種電気、静電気または電磁波によって、有機発光素子は誤作動を起こしたり、或いは機能が相殺し得る。よって、有機発光素子を封止する基本的な機能を備えつつ、誘電率が低く有機発光素子に追加素子が積層されても影響を最小化する必要がある。
【0005】
既に誘電率を下げる方法が知られている。しかし、大部分が半導体素子に適用されるものであり、有機発光素子封止に適合するようにインクジェットコーティング、OLEDパネル製作工程である低温光硬化等の工程には適合しない。
【0006】
本発明の背景技術は、韓国公開特許第10-2016-0150255号等に記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、プラズマエッチング率と誘電率が低い有機層を具現する有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、インクジェットのジェッティング性に優れ、表面が均一な有機層を具現する有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、化学蒸気蒸着(CVD)による反復的な無機層の形成にも、有機層のシワの発生を最小化することにより、信頼性に優れた有機層を形成できる有機発光素子封止用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点は、有機発光素子封止用組成物である。
【0011】
有機発光素子封止用組成物は、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、下記化学式4の光硬化性モノマー、および光開始剤を含み、重量基準で前記(メタ)アリル系光硬化性モノマーと前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーの合計は、下記化学式4の光硬化性モノマーよりも大きい:
【0012】
【化1】
【0013】
(前記化学式4で、
は、水素またはメチル基、
、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖型または分岐鎖型の置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、或いは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基で、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、末端にエポキシ基、ウレタン基、アルコキシ基の一つを有してもよい)。
【0014】
本発明の有機発光素子表示装置は、本発明の有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、プラズマエッチング率と誘電率が低い有機層を具現する有機発光素子封止用組成物を提供する。
【0016】
本発明は、インクジェットのジェッティング性に優れ、表面が均一な有機層を具現する有機発光素子封止用組成物を提供する。
【0017】
本発明は、CVDによる反復的な無機層の形成にもかかわらず有機層のシワの発生を最小化することにより、信頼性に優れた有機層を形成することができる有機発光素子封止用組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明にかかる一実施例の有機発光表示装置の断面図である。
図2図2は、本発明にかかる別の実施例の有機発光表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[発明を実施するための最善の形態]
添付の図面を参考して、実施例によって本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明を詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0020】
図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて同一または類似する構成要素については、同じ図面符号を付けた。図面において各構成要素の長さ、大きさは、本発明を説明するためのものであり、本発明が図面に記載の各構成要素の長さ、大きさに制限されるのではない。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アリル」はアリルおよび/またはメタアリルを意味し得る。
【0022】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味し得る。
【0023】
本明細書において、「置換された」は、別途の定義がない限り、本発明の官能基の一つ以上の水素原子が、ハロゲン(F,Cl,BrまたはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、イミノ基(=NH,=NR,Rは、炭素数1~10のアルキル基である)、アミノ基(-NH,-NH(R’),-N(R”)(R”’),R’,R”,R”’は、それぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジンまたはヒドラゾン基、カルボキシ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のヘテロアリール基、または炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基で置換されることを意味し得る。
【0024】
本明細書の数値範囲の記載時、「X~Y」は、X以上Y以下(X≦そして≦Y)を意味する。
【0025】
本発明の一実施例の有機発光素子封止用組成物(以下、「組成物」とも言う)は、プラズマエッチング率が低いと共に誘電率も低い有機層を具現することができる。
【0026】
一具体例において、本発明の組成物は、硬化後に下記数式1のプラズマによる有機層のエッチング率が6.5%以下、具体的には0%~6.5%の有機層を具現することができる。前記範囲で、有機層上に無機層を形成する際に有機層が損傷しなくなることにより、有機発光素子の寿命を延ばすことができる:
【0027】
【数1】
【0028】
(前記数式1で、
T1は、前記組成物をシリコン(Si)ウエハ上に蒸着および100mW/cmで20秒間UV照射して光硬化させて得た有機層の初期厚さ(T1,単位:μm)
T2は、上記有機層に、ICP power:2500W,RE power:300W,DCbias:200V,Ar flow:50sccm,ethching time:1min,pressure:10mtorrの条件で誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma)を処理した後の有機層の厚さ(T2,単位:μm))。
【0029】
前記有機層の厚さ(又は高さ)は、FE-SEM(Hitachi High Technologies Corporation社)によって測定できるが、これに制限されるのではない。
【0030】
一具体例において、本発明の組成物は、硬化後の誘電率が3.2以下、具体的には1.5~3.2、より具体的には2~3.15になり得る。前記範囲で、外部の静電気または電気によって影響を受けず、有機発光素子の性能をうまく具現することができる。特に、本発明の組成物は、下記で詳述する無機層と交互に積層される有機層を形成する。このような交互積層構造において、低い誘電率を確保しつつ、耐プラズマ性を同時に有する有機層を形成するために、本発明の組成物は、硬化後の誘電率が3.2以下になるようにした。
【0031】
本発明の組成物は、インクジェットのジェッティング性に優れて表面が均一な有機層を形成することができる。インクジェット方法は、有機発光素子封止用組成物をノズルに入れた後、所定の温度および滴下速度で滴下する方法である。
【0032】
本発明の組成物は、反復する無機層の蒸着によってもシワの発生を最小化することにより、信頼性に優れた有機層を形成することができる。一般に、有機発光素子封止層は有機層と無機層が反復的に形成されることにより、有機発光素子封止の役割を行うことができる。無機層は、特に制限されないが、化学蒸気蒸着(CVD)によって形成することができる。本発明は、CVDによる反復的な無機層の形成にもかかわらず有機層のシワの発生を最小化することにより、信頼性に優れた有機層を形成できる有機発光素子封止用組成物を提供する。そのために、有機層は鉛筆硬度が3H以上、例えば3H~6Hになり得る。
【0033】
本発明の組成物は、(メタ)アリル系光硬化性モノマー(A)、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー(B)、化学式4の光硬化性モノマー(C)および光開始剤(D)を含む。重量基準で、前記(メタ)アリル系光硬化性モノマー(A)と前記(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー(B)の合計は、化学式4の光硬化性モノマー(C)よりも大きい。
【0034】
本発明の組成物は、含量(A)+(B)>(C)の関係になることにより、無溶剤型組成物であっても、組成物のインクジェットのジェッティング性に優れ得る。前記の関係になることにより、組成物中の一部の成分、特に(C)成分が(A)と(B)内でうまく溶解し得る。インクジェットのジェッティング性が良くない場合は、組成物をインクジェットジェッティングさせると、組成物の液滴の状態が球形から完全に広がらず有機層をうまく形成できない。また、前記の関係を満たすことにより、プラズマエッチング率と誘電率が低く、強度に優れた有機層を容易に具現することができる。
【0035】
一具体例において、(C)に対する(A)+(B)の比は2~10、具体的には、2,2.5,3,3.5,4,4.5,5,5.5,6,6.5,7,7.5,8,8.5,9,9.5,10、例えば2~9になり得る。前記範囲で、本発明の効果を容易に具現することができる。
【0036】
以下、本発明の一実施例の組成物中の各成分について詳しく説明する。
【0037】
(メタ)アリル系光硬化性モノマー
(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、1個以上、好ましくは1個~3個の(メタ)アリル基を有することにより、下記で詳述する光開始剤によって硬化されることで有機層を形成することができる。
【0038】
(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、窒素含有環型構造を有し得る。窒素含有環型構造を有する(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、下記で説明する化学式4の光硬化性モノマーと組合せると、誘電率が著しく低く、プラズマエッチング率も低い有機層を形成する助けになり得る。
【0039】
窒素含有環型構造は、1個以上の窒素および炭素で形成される脂環族の環型構造を含み得る。一具体例において、前記環型構造は、環型構造を形成する炭素個数が3~10で、単一環または複素環の、脂環族環型構造を含み得る。好ましくは、前記環型構造は2個以上、例えば2個~3個のカルボニル基(-C=O-)を有することにより、本発明の効果の具現がより容易になり得る。
【0040】
一具体例において、窒素含有環型構造は、イソシアヌレート基、ピペリジン基、ピペリジンオン基、ピペリジンジオン基、ピロリジン基、ピロリジンジオン基、ピリジン基、インドール基、少なくとも一部が水素化されたインドール基、インドールジオン基、少なくとも一部が水素化されたイソインドールジオン基、ピリジンジオン基、ピロールジオン基の1種以上を含み得る。好ましくは、窒素含有環型構造は、イソシアヌレート基になり得る。
【0041】
一具体例において、(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、下記化学式1、下記化学式2の1種以上を含み得る:
【0042】
【化2】
【0043】
(前記化学式1で、
、R、Rは、それぞれ、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基またはグリシジル基で、
、R、Rの一つ以上は、アリル基またはメタアリル基である)。
【0044】
【化3】
【0045】
(前記化学式2で、
は、アリル基またはメタアリル基、
は、窒素含有環型官能基、
は、アリル基、メタアリル基、水素、置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数3~10のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数6~10のアリール基、置換または非置換の炭素数7~10のアリールアルキル基あるいはグリシジル基で、又は、
とRは、互いに連結されて、置換または非置換の、窒素含有環型官能基を形成する)。
【0046】
前記化学式2で、RまたはRとRが互いに連結されて形成された窒素含有環型官能基は、ピペリジン基、ピペリジンオン基(特に制限されないが、下記化学式2-1)、ピペリジンジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-2)、ピロリジン基、ピロリジンジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-3)、ピリジン基(特に制限されないが、下記化学式2-10)、インドール基、少なくとも一部が水素化されたインドール基、インドールジオン基、少なくとも一部が水素化されたイソインドールジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-4、下記化学式2-5、化学式2-8または化学式2-9)、ピリジンジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-6)、ピロールジオン基(特に制限されないが、下記化学式2-7)の一つ以上になり得る:
【0047】
【化4】
【0048】
【化5】
【0049】
(前記化学式2-1~化学式2-10で、*は化学式2のRとの連結部位である)
好ましくは、(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、下記化学式3-1~化学式3-11の1種以上を含み得る:
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
(メタ)アリル系光硬化性モノマーは、(A)、(B)および(C)の合計(A)+(B)+(C)100重量部中、40重量部~90重量部、具体的には、40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80,81,82,83,84,85,86,87,88,89,90重量部、
例えば40重量部~80重量部で含まれ得る。前記範囲で、組成物で形成された有機層の誘電率が低くなり、プラズマエッチング率の改善の助けとなり得る。
【0053】
(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー
(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、(メタ)アクリレート基を有することにより、下記で詳述する光開始剤によって硬化されることにより有機層を形成することができる。
【0054】
(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、アクリレート基またはメタクリレート基を1個有する、単官能(メタ)アクリレートになり得る。アクリレート基またはメタクリレート基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートは、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、化学式4の光硬化性モノマーと組合せる際、光開始剤によって硬化すると、有機層が過度にハードタイプになることにより、クラックが発生しやすくなる問題点と、フレキシブル機器の適用に適さないという短所が生じ得る。また、ハードタイプの有機層は、クラックが生じながら無機層を一緒に損傷させて寿命を短縮させ得るという問題点もある。
【0055】
組成物中、アクリレート基またはメタクリレート基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートの含量は、(A)、(B)および(C)の合計(A)+(B)+(C)100重量部中、0重量部~1重量部、好ましくは0重量部になり得る。
【0056】
(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、置換または非置換の、直鎖型または分岐鎖型の炭素数1~炭素数30のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートになり得る。ここで「炭素数」は、(メタ)アクリレート基における炭素を除いたものであり、エステル基の酸素(O)に結合したアルキル基の炭素数である。
【0057】
好ましくは、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、置換または非置換の、直鎖型または分岐鎖型の炭素数10~炭素数30、より好ましくは炭素数12~25のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートになり得る。
【0058】
このような長鎖のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、本発明の(メタ)アリル系光硬化性モノマーおよび化学式4のモノマーと組合せると、有機層上に無機層形成時に有機層が損傷しないことにより、有機発光素子の寿命を延ばすことができる効果をさらに具現することができる。
【0059】
より好ましくは、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、非置換または炭素数1~20のアルキル基で置換された、直鎖型または分岐鎖型の炭素数10~炭素数30、さらに好ましくは、炭素数12~25のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートになり得る。
【0060】
例えば、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、2-プロペノン酸2-デシルテトラデシルエステル、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ドデシル置換のテトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレートの1種以上を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0061】
(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーは、(A)、(B)および(C)の合計(A)+(B)+(C)100重量部中、5重量部~55重量部、具体的には、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51,52,53,54,55重量部、例えば10重量部~50重量部で含まれ得る。前記範囲で、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、化学式4の光硬化性モノマーと組合せると、光開始剤によって硬化して有機層を形成することができ、有機層が過度にハードタイプになることを防ぐことができる。
【0062】
化学式4の光硬化性モノマー
化学式4の光硬化性モノマーは、ビニル基を有することにより、下記で詳述する光開始剤によって硬化されることで有機層を形成することができる。
【0063】
【化8】
【0064】
(前記化学式4で、
は、水素またはメチル基、
,R,R,R,Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖型または分岐鎖型の置換または非置換の炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基で、R,R,R,R,Rは、それぞれ独立して、末端にエポキシ基、ウレタン基、アルコキシ基の一つを有してもよい)。
【0065】
前記化学式4中「エポキシ基」は、
【0066】
【化9】
【0067】
等になり得る。
【0068】
前記化学式4中「ウレタン基」は、*-R-(NH)-(C=O)-OR’または*-NH-(C=O)-OR’(*は元素に対する連結部位、R,R’はそれぞれ独立して置換または非置換の炭素数1~12のアルキル基、或いは置換または非置換の炭素数6~18のアリール基)になり得る。
【0069】
前記化学式4中「アルコキシ基」は、炭素数1~10のアルコキシ基になり得る。
【0070】
化学式4の光硬化性モノマーは、芳香族基、特にベンゼン基を有することにより、(メタ)アリル系光硬化性モノマーと組合せると誘電率が著しく低くなり、プラズマエッチング率も低い有機層を形成する助けとなり得る。本発明者は、(メタ)アリル系光硬化性モノマーと化学式4の光硬化性モノマーを一緒に使用することにより、有機層とプラズマエッチング率が著しく低い有機層を具現することができ、このとき、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーを一緒に含むが、含量(A)+(B)>(C)の関係を満たすことにより、硬化率も高く、インクジェットのジェッティング性も優れることを確認した。
【0071】
例えば、化学式4の光硬化性モノマーは、4-フェニルスチレン等を含むフェニルスチレン、4-tert-ブチルスチレン等を含むtert-ブチルスチレン、アルファ-メチルスチレン、の1種以上を含み得る。
【0072】
一具体例において、化学式4の光硬化性モノマーは、沸点が90℃~150℃、具体的には、90℃,95℃,100℃,105℃,110℃,115℃,120℃,125℃,130℃,135℃,140℃,145℃,150℃,例えば90℃~95℃、融点が-50℃~-10℃、具体的には、-50℃,-45℃,-40℃,-35℃,-30℃,-25℃,-20℃,-15℃,-10℃、例えば-40℃~-20℃になり得る。前記範囲で、室温で液状になり、粘度が低い組成物を提供することにより、本発明の組成物を無溶剤型に製造してもインクジェットのジェッティング性に問題が生じなくなり得る。前記の沸点および融点は、それぞれ当業者に知られている通常の方法で測定できる。
【0073】
化学式4の光硬化性モノマーは、(A)、(B)および(C)の合計(A)+(B)+(C)100重量部中、5重量部~35重量部、具体的には、5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35重量部、例えば10重量部~30重量部で含まれ得る。前記範囲で、(メタ)アリル系光硬化性モノマーと組合せると、誘電率が著しく低く、プラズマエッチング率も低い有機層を形成する助けとなり得、組成物の粘度が低くインクジェットのジェッティング性も優れたものとなり得る。
【0074】
(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、前記化学式4の光硬化性モノマーの合計は、前記組成物中の光硬化性モノマー全100重量部中、95重量部以上、例えば98重量部~100重量部、例えば100重量部で含まれ得る。
【0075】
光開始剤
光開始剤は、光硬化性反応を行うことのできる通常の光ラジカル開始剤、光酸発生剤の1種以上を制限なく含むことができる。
【0076】
光ラジカル開始剤は、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、リン系、オキシム系またはこれらの混合物を含むことができる。
【0077】
光ラジカル開始剤は、最大吸収波長が360nm~400nmを有するリン系開始剤を含むことができる。前記リン系開始剤を使用する場合、本発明の組成物で長波長のUV(例:300nm~400nm)でより良い開始性能が表れ得る。リン系開始剤としては、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィナート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィナート、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)メトキシフェニルホスフィナート、ビスアシルホスフィンオキシド、メチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、またはこれらの混合物になり得る。例えば、開始剤は単独または2種以上混合して含まれ得る。前記「最大吸収波長」は、当業者に知られている通常の方法で測定されたり、製品カタログを参考して得た値になり得る。
【0078】
光ラジカル開始剤は、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、および化学式4の光硬化性モノマーの合計100重量部に対して、0.01重量部~10重量部、具体的には、0.01,0.05,0.1,0.5,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10重量部、例えば1重量部~5重量部で含まれ得る。前記範囲で、組成物の硬化率が高くなり、残量の開始剤が残って光透過率が低くなることを防ぐことができる。
【0079】
光酸発生剤は、光を受ける場合、陽イオン種を発生して陽イオン重合性化合物の硬化反応を開始させる化合物として、光を吸収する陽イオン部と酸の発生源となる陰イオン部を含み得る。
【0080】
光酸発生剤は、スルホネート系、スルホニウム系、ジアゾニウム塩系、 ヨードニウム塩系、スルホニウム塩系、ホスホニウム塩系、セレニウム塩系、オキソニウム塩系、アンモニウム塩系、ブロム塩系化合物の1種以上を含み得る。例えば、光酸発生剤は、N-ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、チオ-p-フェニレンビス(4,4’-ジメチルジフェニルスルホニウム)ビステトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4-ヒドロキシフェニル)メチルベンジルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニルスルホニウム]ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロフォスフェート、4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]フェニル-2-チオキサントニルスルホニウムフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの1種以上を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0081】
好ましくは、光酸発生剤は、N-ヒドロキシナフタルイミドトリフルオロメタンスルホネート、チオ-p-フェニレンビス(4,4’-ジメチルジフェニルスルホニウム)ビステトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの1種以上を含み得る。
【0082】
光酸発生剤は、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーおよび化学式4の光硬化性モノマーの合計100重量部に対して0.01重量部~5重量部、具体的には、0.01,0.05,0.1,0.5,1,2,3,4,5重量部、例えば0.01重量部~1重量部で含まれ得る。前記範囲で、硬化率が高く、残量が残って有機層の光透過率が低くなることを防ぐことができる。
【0083】
光開始剤は、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマーおよび化学式4の光硬化性モノマーの合計100重量部に対して、0.01重量部~15重量部、好ましくは1重量部~5重量部で含まれ得る。前記範囲で、組成物の硬化率が高くなり、残量の開始剤が残って光透過率が低くなることを防ぐことができる。
【0084】
本発明の組成物は、(メタ)アリル系光硬化性モノマー、(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー、化学式4の光硬化性モノマーおよび光開始剤を混合して形成することができる。例えば、本発明の組成物は、溶剤を含まない無溶剤タイプに形成することができる。無溶剤タイプは、有機層形成後にアウトガスの発生量を下げることができて有機発光素子に対する影響を最小化することができる。
【0085】
本発明の組成物は、光硬化型組成物として、UV波長で10mW/cm~500mW/cmで1秒~50秒間UV照射によって光硬化されることにより、封止層を形成することができる。
【0086】
本発明の組成物は、当業者に知られている通常の添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤等を含み得るが、これに制限されるのではない。
【0087】
本発明の組成物は、25±2℃(23℃~27℃)で粘度が7cps~100cps、好ましくは7cps~60cps、より好ましくは7cps~50cpsになり得る。前記範囲で、封止用組成物のインクジェットのジェッティング性を改善する助けとなり得る。
【0088】
本発明の組成物は、有機発光素子を封止する際に使用できる。具体的には、前記組成物は、無機層と有機層が順に形成される封止構造で有機層を形成することができる。
【0089】
本発明の組成物は、装置用部材、特に、ディスプレイ装置用部材として周辺環境の気体または液体、例えば大気中の酸素および/または水分および/または水蒸気と電子製品に加工する際に使用された化学物質の透過によって分解されたり、不良となり得る装置用部材の封止用途としても使用できる。例えば、装置用部材は、照明装置、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザー、電気変色装置、光変色装置、マイクロ電子機械システム、太陽電池、集積回路、電荷結合装置、発光重合体等になり得るが、これに制限されるのではない。
【0090】
本発明の有機発光素子表示装置は、本発明の一実施例の有機発光素子封止用組成物で形成された有機層を含み得る。具体的には、有機発光素子表示装置は、有機発光素子、および有機発光素子の上に形成され、無機層と有機層を含む障壁スタックを含み、有機層は、本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物で形成することができる。その結果、有機発光素子表示装置の信頼性が良くなり得る。
【0091】
以下、図1を参考して本発明の一実施例の有機発光素子表示装置を説明する。図1は、本発明の一実施例の有機発光素子表示装置の断面図である。
【0092】
図1を参照すると、有機発光素子表示装置100は、基板10、基板10の上に形成された有機発光素子20、および有機発光素子20の上に形成され、無機層31と有機層32を含む障壁スタック30を含み、無機層31は有機発光素子20と接触する状態からなっており、有機層32は本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物で形成できる。
【0093】
基板10は、有機発光素子が形成され得る基板であれば特に制限されない。例えば、透明ガラス、プラスチックシート、シリコンまたは金属基板等のような物質からなり得る。
【0094】
有機発光素子20は、有機発光素子表示装置で通常使用されるものであり、図1で示してはいないが、第1電極、第2電極、第1電極と第2電極間に形成された有機発光膜を含み、有機発光膜は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層が順に積層されたものになり得るが、これに制限されるのではない。
【0095】
障壁スタック30は、有機層と無機層を含み、有機層と無機層は、それぞれ層を構成する成分が互いに異なり、それぞれ有機発光素子封止機能を具現することができる。
【0096】
無機層は、有機層と成分が相違することにより、有機層の効果を補完することができる。例えば、無機層は、金属、非金属、金属間の化合物または合金、非金属間の化合物または合金、金属または非金属の酸化物、金属または非金属のフッ化物、金属または非金属の窒化物、金属または非金属の炭化物、金属または非金属の酸素窒化物、金属または非金属のホウ化物、金属または非金属の酸素ホウ化物、金属または非金属のシリサイド、またはこれらの混合物になり得る。金属または非金属は、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、セレニウム(Se)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、遷移金属、ランタン族金属、等になり得るが、これに制限されるのではない。具体的には、無機層は、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸素窒化物(SiOxNy)、ZnSe、ZnO、Sb、Al等を含むAlOx、In、SnOになり得る。
【0097】
無機層は、プラズマ工程、真空工程、例えば、スパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴-プラズマ蒸気蒸着およびその組合せで蒸着され得る。
【0098】
有機層は、無機層と交互に蒸着する際、無機層の平滑化特性を確保し、無機層の欠陥がまた別の無機層に伝播されることを防ぐことができる。
【0099】
有機層は、本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物のコーティング、蒸着、硬化等の組合せによって形成され得る。例えば、有機発光素子封止用組成物を1μm~50μmの厚さにコーティングし、10mW/cm~500mW/cmで1秒~50秒間UV照射して硬化させることができる。
【0100】
障壁スタックは、有機層と無機層を含むが、有機層と無機層の総個数は制限されない。有機層と無機層の総個数は、酸素および/または水分および/または水蒸気および/または化学物質に対する透過抵抗性のレベルによって変更できる。例えば、有機層と無機層の総個数は10層以下、例えば2~7層になり得、具体的には、無機層/有機層/無機層/有機層/無機層/有機層/無機層の順に7層に形成することができる。
【0101】
障壁スタックで有機層と無機層は、交互に蒸着することができる。これは上述の組成物が有する物性によって生成された有機層に対する効果のためである。これによって、有機層と無機層は、装置に対する封止効果を補完または強化することができる。
【0102】
以下、図2を参考して本発明の別の実施例の有機発光素子表示装置を説明する。図2は、本発明の別の実施例の有機発光素子表示装置の断面図である。
【0103】
図2を参照すると、有機発光素子表示装置200は、基板10、基板10の上に形成された有機発光素子20、および有機発光素子20の上に形成され、無機層31と有機層32を含む障壁スタック30を含み、無機層31は有機発光素子20が収容された内部空間40を封止し、有機層32は本発明の実施例の有機発光素子封止用組成物で形成できる。無機層が有機発光素子と接触しない点を除いては、本発明の一実施例の有機発光素子表示装置と実質的に同一である。
【0104】
[発明の実施のための形態]
以下、本発明の好ましい実施例によって本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
実施例と比較例で使用した成分の具体的な仕様は次の通りである。
【0105】
(A)(メタ)アリル系光硬化性モノマー
(A1)トリアリルイソシアヌレート(Aldrich社)
(A2)1,3-ジアリル-5-グリシジルイソシアヌレート(Shikoku社)
(A3)ジアリルn-プロピルイソシアヌレート(TCI社)
(A4)トリメタアリルイソシアヌレート(Aldrich社)
(B)(メタ)アクリレート系光硬化性モノマー
(B1)2-プロペノン酸2-デシルテトラデシルエステル(Light acrylate,DTD-A,Kyoeisha chemical)
(B2)ドデシルメタアクリレート(Sartomer社)
(C)化学式4の光硬化性モノマー
(C1)4-タートブチルスチレン(TCI社)
(C2)4-ビニルビフェニル(4-フェニルスチレン,TCI社)
(D)光開始剤
(D1)リン系開始剤(Irgacure TPO-L,BASF社)
(D2)光酸発生剤(N-hydroxynaphthalimide trifluoromethanesulfonate,H1136,ミウォン商事) 。
【0106】
実施例1
(A2)50重量部、(B1)30重量部、(C1)20重量部、(D1)4重量部、(D2)0.1重量部を125mlの褐色ポリプロピレンの瓶に入れ、シェーカーを用いて3時間室温で混合して封止用組成物を製造した。
【0107】
実施例2~実施例5と比較例1~比較例4
実施例1で各成分の含量を下記表1(単位:重量部)のように変更したことを除いては、実施例1と同じ方法で封止用組成物を製造した。下記表1で「-」は、該当成分が含有されていないことを意味する。
【0108】
実施例と比較例で製造した組成物について下記物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0109】
(1)粘度(単位:cps):実施例と比較例の封止用組成物に対して、24.8℃で粘度測定器LV DV-II Pro(Brookfield社)を用いてスピンドル番号(No.spindle)40で測定した。
【0110】
(2)誘電率(単位なし):実施例と比較例の封止用組成物をクロム(Cr)板の上に所定の厚さで塗布し、100mW/cmで10秒間UV照射して光硬化させることにより、厚さ8μmの塗膜を形成した。前記塗膜の上にアルミニウム電極(誘電率測定のための電極)を蒸着した後、インピーダンス測定器(RDMS-200)で200kHzおよび25℃で誘電率を測定した。
【0111】
(3)インクジェットのジェッティング性:実施例と比較例の封止用組成物16pL(ピコリットル)を、滴下速度2.5~4.5μm/sec、インクジェットヘッド温度25~50℃でインクジェットをジェッティングさせた。インクジェットをジェッティングさせた際、dropの形態が正確な球形の場合はOK、球形ではない場合はNGで評価した。
【0112】
(4)鉛筆硬度:ガラス基板の上に実施例および比較例の封止用組成物をコーティングし、100mW/cmで10秒間UV照射して光硬化させて、有機層試片を得る。有機層試片に対して鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度の測定時、電動式鉛筆硬度テスト機(CT-PC2)と鉛筆は、Mitsubishi社の6B~9Hの鉛筆を使用した。試片に対する鉛筆の荷重は500g、鉛筆の引っ掻き角度は45°、鉛筆を引っ掻く速度は48mm/minで行った。5回評価して1回以上スクラッチが発生したら鉛筆硬度の下の段階の鉛筆を用いて測定し、5回評価時に5回全てにスクラッチがなかった時の最大鉛筆硬度値である。
【0113】
(5)プラズマエッチング率(単位:%):実施例および比較例の封止用組成物を、シリコン(Si)ウエハ上に蒸着、および100mW/cmで20秒間UV照射して光硬化させて有機層を形成した。光硬化させて得た有機層の初期厚さ(T1,単位:μm)を測定した。ICP power:2500W,RE power:300W,DC bias:200V,Ar flow:50sccm,ethching time:1min,pressure:10mtorrの条件で、有機層にICP CVD(BMR Technology社)を用いて誘導結合プラズマを処理した後、有機層の厚さ(T2,単位:μm)を測定した。下記数式1によってプラズマによる有機層のエッチング率を計算した。前記有機層の厚さは、FE-SEM(Hitachi High Technologies Corporation社)によって測定した。数式1の値が低いほど耐プラズマ性に優れるものである。
【0114】
【数2】
【0115】
【表1】
【0116】
*前記表1で「--」は、組成物が硬化不可であったり、組成物中の一部の成分が溶解されず該当物性を評価できなかったことを意味する。
【0117】
前記表1のように、本発明の有機発光素子封止用組成物は、プラズマエッチング率と誘電率が低く、鉛筆硬度に優れた有機層を具現し、インクジェットのジェッティング性に優れた。
【0118】
一方、本発明の組成物構成を満たさない比較例の組成物は、本発明の全ての効果を得ることができなかった。
【0119】
本発明の単純な変形あるいは変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
図1
図2
【国際調査報告】