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  • 特表-アクリル酸の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アクリル酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/42 20060101AFI20240927BHJP
   C07C 51/347 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 57/055 20060101ALI20240927BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07C51/42
C07C51/347
C07C57/055 A
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510502
(86)(22)【出願日】2023-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2023006789
(87)【国際公開番号】W WO2024058340
(87)【国際公開日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0115926
(32)【優先日】2022-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ギル・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ミ・キュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】デ・ヨン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ビン・ジュン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC13
4H006AD11
4H006AD12
4H006BA02
4H006BA36
4H006BC10
4H006BC11
4H006BD33
4H006BD52
4H006BS10
4H039CA19
4H039CL25
(57)【要約】
本発明は、乳酸水溶液を反応器に供給し、脱水反応させて、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を取得するステップと、前記反応生成物を第1冷却塔に供給して、アクリル酸および乳酸を含む下部分画と、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含む上部分画とに分離するステップと、前記第1冷却塔の上部分画を第2冷却塔に供給して、アクリル酸および水を含む下部分画を得るステップと、前記第2冷却塔の下部分画を抽出塔に供給して、アクリル酸および抽出溶媒を含む抽出液を得るステップと、前記第1冷却塔の下部分画と前記抽出液を共沸蒸留塔に供給して、アクリル酸と乳酸を含む下部分画を得るステップと、前記共沸蒸留塔の下部分画をアクリル酸回収塔に供給して、アクリル酸を取得するステップとを含むアクリル酸の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸水溶液を反応器に供給し、脱水反応させて、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を取得するステップと、
前記反応生成物を第1冷却塔に供給して、アクリル酸および乳酸を含む下部分画と、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含む上部分画とに分離するステップと、
前記第1冷却塔の上部分画を第2冷却塔に供給して、アクリル酸および水を含む下部分画を得るステップと、
前記第2冷却塔の下部分画を抽出塔に供給して、アクリル酸および抽出溶媒を含む抽出液を得るステップと、
前記第1冷却塔の下部分画と前記抽出液を共沸蒸留塔に供給して、アクリル酸と乳酸を含む下部分画を得るステップと、
前記共沸蒸留塔の下部分画をアクリル酸回収塔に供給して、アクリル酸を取得するステップとを含む、アクリル酸の製造方法。
【請求項2】
前記第1冷却塔の運転温度は110℃~140℃であり、運転圧力は1kg/cm~20kg/cmである、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項3】
前記第1冷却塔から排出された上部分画に含まれた乳酸の含量は、2重量%以下である、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項4】
前記反応生成物に含まれた乳酸の質量流量に対する前記第1冷却塔から排出された下部分画に含まれた乳酸の質量流量の比率は、95重量%~99重量%である、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項5】
第1冷却塔から排出された下部分画に含まれたアクリル酸の含量に対する水の含量の比は、2.5~4.0である、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項6】
第2冷却塔の上部に軽質ガス成分を分離する、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項7】
前記第2冷却塔の運転温度は60℃~140℃であり、運転圧力は1kg/cm~20kg/cmである、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項8】
前記アクリル酸回収塔の下部に乳酸を分離し、上部にアクリル酸を分離する、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項9】
前記アクリル酸回収塔の下部に分離された乳酸を反応器に循環させる、請求項8に記載のアクリル酸の製造方法。
【請求項10】
前記共沸蒸留塔の上部分画を層分離機に供給して水と抽出溶媒を分離し、分離した抽出溶媒は、抽出塔および共沸蒸留塔の一つ以上に循環させる、請求項1に記載のアクリル酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月14日付けの韓国特許出願第10-2022-0115926号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、アクリル酸の製造方法に関し、より詳細には、乳酸の脱水反応によりアクリル酸を製造するにあたり、乳酸とアクリル酸の損失を低減し、且つ副生成物を効果的に除去する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリル酸は、繊維、粘着剤、塗料、繊維加工、皮革、建築用材料などに使用される重合体原料として用いられ、その需要は拡大している。また、前記アクリル酸は、吸水性樹脂の原料としても使用され、紙おむつ、生理用ナプキンなどの吸水物品、農園芸用保水剤および工業用止水材など、工業的に多く用いられている。
【0004】
従来のアクリル酸の製造方法は、プロピレンを空気酸化する方法が一般的であるが、この方法は、プロピレンを気相接触酸化反応によってアクロレインに変換し、これを気相接触酸化反応させてアクリル酸を製造する方法であり、副生成物として酢酸が生成される。これは、アクリル酸との分離が難しいという問題がある。また、前記プロピレンを用いたアクリル酸の製造方法は、化石資源である原油を精製して得られたプロピレンを原料とし、最近の原油価格の高騰や地球温暖化などの問題を考慮すると、原料費や環境汚染の面で問題がある。
【0005】
これに対して、炭素中立のバイオマス原料からアクリル酸を製造する方法に関する研究が行われている。例えば、乳酸(Lactic Acid、LA)の気相脱水反応によりアクリル酸(Acrylic Acid、AA)を製造する方法がある。この方法は、一般的に、300℃以上の高温および触媒の存在下で、乳酸の分子内の脱水反応によりアクリル酸を製造する方法である。前記乳酸の脱水反応によりアクリル酸を含む反応生成物が生成され、転化率に応じて、前記反応生成物内には未反応乳酸が含まれる。前記反応生成物内に未反応乳酸が含まれている場合には、分離工程で回収したときに工程の経済性を向上させることができる。しかし、前記乳酸は、高濃度および高温でオリゴマー化反応が迅速に行われ、これを回収することが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、乳酸の脱水反応により、アクリル酸の製造によって生成される反応生成物から乳酸とアクリル酸を効果的に分離することで、乳酸とアクリル酸の損失を最小化することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、乳酸水溶液を反応器に供給し、脱水反応させて、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を取得するステップと、前記反応生成物を第1冷却塔に供給して、アクリル酸および乳酸を含む下部分画と、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含む上部分画とに分離するステップと、前記第1冷却塔の上部分画を第2冷却塔に供給して、アクリル酸および水を含む下部分画を得るステップと、前記第2冷却塔の下部分画を抽出塔に供給して、アクリル酸および抽出溶媒を含む抽出液を得るステップと、前記第1冷却塔の下部分画と前記抽出液を共沸蒸留塔に供給して、アクリル酸と乳酸を含む下部分画を得るステップと、前記共沸蒸留塔の下部分画をアクリル酸回収塔に供給して、アクリル酸を取得するステップとを含むアクリル酸の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアクリル酸の製造方法によると、反応生成物を蒸留する前に二機の冷却塔を用いることで、アクリル酸の精製にかかるエネルギーコストを削減し、且つ高純度のアクリル酸を得ることができる。
【0009】
また、第1冷却塔で反応生成物に含まれた乳酸を最大含量で凝縮して分離することで、第1冷却塔での乳酸の損失を防止することができる。特に、第1冷却塔で凝縮された乳酸とアクリル酸を先に分離し、これをアクリル酸の精製のための共沸蒸留塔に供給することで、アクリル酸の損失を減少するだけでなく、高純度のアクリル酸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態でアクリル酸の製造方法による工程フローチャートである。
図2】本発明と対比される比較例のアクリル酸の製造方法による工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の説明および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常のもしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0012】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0013】
一方、本発明において、冷却塔、抽出塔、蒸留塔などの装置において、前記装置の「下部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方に95%~100%の高さの地点を意味し、具体的には、最下端(塔底)を意味し得る。同様に、前記装置の「上部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方に0%~5%の高さの地点を意味し、具体的には、最上部(塔頂)を意味し得る。
【0014】
また、特に断りのない限り、本発明において、冷却塔の運転温度は、冷却塔の下部の運転温度を意味し、冷却塔の運転圧力は、冷却塔の上部の運転圧力を意味し得る。
【0015】
以下、図1などを参照して、本発明の実施態様に含まれることができる各工程について説明する。
【0016】
本発明の一実施形態によるアクリル酸の製造方法は、乳酸水溶液を反応器に供給し、脱水反応させて、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を取得するステップと、前記反応生成物を第1冷却塔に供給して、アクリル酸および乳酸を含む下部分画と、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含む上部分画とに分離するステップと、前記第1冷却塔の上部分画を第2冷却塔に供給して、アクリル酸および水を含む下部分画を得るステップと、前記第2冷却塔の下部分画を抽出塔に供給して、アクリル酸および抽出溶媒を含む抽出液を得るステップと、前記第1冷却塔の下部分画と前記抽出液を共沸蒸留塔に供給して、アクリル酸と乳酸を含む下部分画を得るステップと、前記共沸蒸留塔の下部分画をアクリル酸回収塔に供給して、アクリル酸を取得するステップとを含むことができる。
【0017】
先ず、本発明の一実施形態によるアクリル酸の製造方法は、乳酸水溶液を反応器に供給し、脱水反応させて、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を取得するステップを含むことができる。
【0018】
具体的には、従来のアクリル酸の製造方法は、プロピレンを空気酸化する方法が一般的であるが、この方法は、プロピレンを気相接触酸化反応によってアクロレインに変換し、これを気相接触酸化反応させてアクリル酸を製造する方法であり、副生成物として酢酸が生成され、これは、アクリル酸との分離が難しい問題がある。また、前記プロピレンを用いたアクリル酸の製造方法は、化石資源である原油を精製して得られたプロピレンを原料とし、最近の原油価格の高騰や地球温暖化などの問題を考慮すると、原料費や環境汚染の面で問題がある。
【0019】
従来のアクリル酸の製造方法の問題を解決するために、炭素中立のバイオマス原料からアクリル酸を製造する方法に関する研究が行われている。例えば、乳酸(Lactic Acid、LA)の気相脱水反応によりアクリル酸(Acrylic Acid、AA)を製造する方法がある。この方法は、一般的に、高温および触媒の存在下で乳酸の分子内の脱水反応によりアクリル酸を製造する方法である。前記乳酸の脱水反応によりアクリル酸を含む反応生成物が生成され、この際、転化率に応じて前記反応生成物内には未反応乳酸が含まれる。前記反応生成物内に未反応乳酸が含まれている場合には、分離工程で回収したときに工程の経済性を向上させることができる。しかし、前記乳酸は、高濃度および高温でオリゴマー化反応が迅速に行われ、これを回収することが困難であった。
【0020】
これに対し、本発明では、従来の問題を解決するために、乳酸の脱水反応により製造されたアクリル酸を含む反応生成物から、蒸留工程の前に、乳酸を先に分離することで、高濃度の乳酸が高温にさらされる時間を短縮して乳酸のオリゴマー化を防止することで、未反応乳酸の回収率を向上させるだけでなく、未反応乳酸の回収時に発生し得るアクリル酸の損失を最小化することができる方法を提供する。
【0021】
すなわち、第1冷却塔の過冷却運転により、乳酸を全量凝縮して分離するが、この場合、乳酸とともに凝縮されることができるアクリル酸を効率的に分離および精製することで、乳酸とアクリル酸の損失なく高純度の乳酸とアクリル酸をそれぞれ回収または取得することができる方法を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態によると、先ず、反応器に乳酸水溶液を供給し、脱水反応させて、アクリル酸を含む反応生成物を製造することができる。ここで、前記脱水反応は、触媒の存在下で気相反応で行われることができる。例えば、前記乳酸水溶液の乳酸の濃度は、10重量%以上、20重量%以上または30重量%以上および40重量%以下、50重量%以下、60重量%以下または70重量%以下であることができる。前記乳酸は、高濃度で存在する場合、平衡反応によって二量体、三量体などのオリゴマーが形成され、前記範囲の濃度の水溶液形態で使用することができる。
【0023】
前記反応器は、通常の乳酸の脱水反応が可能な反応器を含むことができ、前記反応器は、触媒が充填された反応管を含むことができ、前記反応管に原料である乳酸水溶液の揮発成分を含む反応ガスを通過させながら気相接触反応によって乳酸を脱水させてアクリル酸を生成することができる。前記反応ガスは、乳酸以外に、濃度の調整のための水蒸気、窒素および空気のいずれか一つ以上の希釈ガスをさらに含むことができる。
【0024】
前記反応器の運転条件は、通常の乳酸の脱水反応条件下で行われることができる。ここで、前記反応器の運転温度は、反応器の温度の制御のために使用される熱媒体などの設定温度を意味し得る。
【0025】
前記乳酸の脱水反応に使用される触媒は、例えば、硫酸塩系触媒、リン酸塩系触媒および硝酸塩系触媒からなる群から選択される1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記硫酸塩は、NaSO、KSO、CaSOおよびAl(SOを含むことができ、前記リン酸塩は、NaPO、NaHPO、NaHPO、KPO、KHPO、KHPO、CaHPO、Ca(PO、AlPO、CaHおよびCaを含むことができ、前記硝酸塩は、NaNO、KNOおよびCa(NOを含むことができる。また、前記触媒は、担持体に担持されることができる。前記担持体は、例えば、珪藻土、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、炭化物およびゼオライトからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0026】
前記乳酸の脱水反応により製造される反応生成物は、目的とする生成物であるアクリル酸の他に、水(HO)、軽質ガス成分および乳酸を含むことができる。ここで、前記乳酸は、乳酸の脱水反応の未反応乳酸であることができる。
【0027】
前記乳酸の脱水反応によりアクリル酸を製造する方法は、従来のプロピレンを空気酸化する方法に比べて原料競争力を確保することができ、環境汚染の問題を解消することができるが、乳酸の転化率が低く、副生成物が多様に生成されてアクリル酸の収率が低い。したがって、経済性を向上させるための工程の開発が必要である。これに対して、本発明は、アクリル酸の損失なく高純度のアクリル酸を取得できることは言うまでもなく、未反応乳酸の回収率を高めるだけでなく、全体的な設備費およびエネルギーコストを削減して経済性を向上させるための方法を提供することができる。
【0028】
本発明の一実施形態によるアクリル酸の製造方法は、前記反応生成物を第1冷却塔10に供給して、アクリル酸および乳酸を含む下部分画と、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含む上部分画とに分離するステップを含むことができる。
【0029】
具体的には、前記反応生成物を含む反応器排出ストリーム1は、気相ストリームであり、反応器排出ストリーム1が前記第1冷却塔10に供給されて冷却されることができる。すなわち、前記第1冷却塔10に供給された気相の反応生成物のうち比較的沸点が高い乳酸は冷却されることで凝縮されて液相の凝縮物を形成することができる。
【0030】
すなわち、前記反応生成物に含まれた未反応乳酸を冷却によって予め分離することで、乳酸が高温にさらされることによる変形、例えば、オリゴマー化を防止して乳酸の回収率を高めることができ、回収された乳酸をまたアクリル酸の製造のための脱水反応の原料として効率的に再使用することができる。
【0031】
ここで、乳酸を損失なく分離するためには、前記第1冷却塔10の運転条件の制御が重要である。すなわち、第1冷却塔10の運転条件が乳酸の過量冷却である場合、例えば、同じ圧力で冷却温度を過剰に下げる場合には、乳酸を全量回収することはできるが、乳酸とともにアクリル酸も一部凝縮され得るため、第1冷却塔の下部にアクリル酸の損失がもたらされ得る。逆に、第1冷却塔10の運転条件が乳酸の少量冷却である場合、例えば、同じ圧力で冷却温度を過剰に上げる場合には、アクリル酸の凝縮を防止することができ、アクリル酸の損失を防止することはできるが、一部の乳酸が凝縮されない可能性があり、前記第1冷却塔10の上部に乳酸の損失がもたらされ得る。
【0032】
本発明は、第1冷却塔10を反応生成物に含まれた乳酸ができるだけ多い量で凝縮されるように、乳酸の過量冷却条件で運転することで、乳酸とアクリル酸を第1冷却塔10の下部分画として分離することができる。これにより、乳酸の未凝縮による前記第1冷却塔10の上部への乳酸の損失を防止することができる。一方、第1冷却塔10の下部分画に含まれたアクリル酸は、後述する共沸蒸留塔200およびアクリル酸回収塔400で回収されることで、アクリル酸の損失も防止することができる。したがって、アクリル酸と乳酸の損失(loss)を最小化し、且つ高純度のアクリル酸と乳酸を取得および回収することができ、製品の品質と経済性を向上させることができる。
【0033】
このために、前記第1冷却塔10の運転温度は、110℃以上、140℃以下であることができ、より具体的には、120℃以上、140℃以下であることができる。前記温度範囲で乳酸を全量凝縮することができ、乳酸の損失を最小化することができる。また、後述するアクリル酸回収塔でアクリル酸が高純度で分離されるほどにアクリル酸が凝縮されることができる。
【0034】
また、前記第1冷却塔10の運転圧力は、1kg/cm以上、1.5kg/cm以上または2kg/cm以上、および20kg/cm以下、10kg/cm以下または5kg/cm以下であることができる。前記圧力が高い場合に、体積流量を減少させて冷却塔の装置コストを低減することができるが、冷却塔の運転温度が高くなるため、乳酸およびアクリル酸の二量体が生成される可能性があり、二量体が生成されない適切な運転圧力の設定が必要である。
【0035】
前記範囲内の運転温度および運転圧力で前記第1冷却塔10の運転条件を制御することで、前記第1冷却塔10の下部排出ストリームと上部排出ストリームの組成を制御することができ、これにより、前記第2冷却塔20の下部から排出されるアクリル酸水溶液ストリームの組成の制御を容易に行うことができる。
【0036】
このような観点で、前記第1冷却塔10から排出された上部分画には、乳酸が含まれないことができ、含まれても、前記乳酸の含量は、2重量%以下、具体的には1重量%以下含まれることができる。
【0037】
一方、前記第1冷却塔10から排出された上部分画に含まれるアクリル酸の含量は、前記第1冷却塔10に導入されたアクリル酸に対して、80重量%以下、または60重量%以下、または40重量%以下、および10重量%以上、または20重量%以上、または30重量%以上含まれることができる。
【0038】
また、前記第1冷却塔10では、反応生成物に含まれた乳酸ができるだけ多い量が凝縮されて分離されることが好ましい。具体的には、前記反応生成物に含まれた乳酸の質量流量に対する前記第1冷却塔10から排出される下部分画に含まれた乳酸の質量流量の比率は、95重量%~99重量%であることができる。すなわち、反応生成物に含まれた乳酸は、前記第1冷却塔10でほぼ全量が凝縮されて分離されることができる。したがって、本発明において、乳酸の過量冷却条件とは、反応生成物に含まれた乳酸の質量流量に対する第1冷却塔10から排出される下部分画に含まれた乳酸の質量流量の比率が、前記のような範囲を満たす冷却条件を意味し得る。一方、分離した乳酸は、アクリル酸とともに、後述する共沸蒸留塔200で蒸留されて水と分離された後、アクリル酸回収塔400で乳酸とアクリル酸に分離されることができる。
【0039】
前記第1冷却塔10は、乳酸の過量冷却条件で運転するため、前記第1冷却塔10の上部分画は、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含むことができる。ここで、前記軽質ガス成分は、水より沸点が低い成分であり、具体的には、希釈ガスの他にも一酸化炭素、二酸化炭素、およびアセトアルデヒドを含むことができる。
【0040】
次いで、前記第1冷却塔10の上部分画は、前記第1冷却塔の上部排出ストリーム12として第2冷却塔20に供給されることができる。一方、アクリル酸および乳酸を含む第1冷却塔10の下部分画は、前記第1冷却塔の下部排出ストリーム11として排出され、これは、前記共沸蒸留塔200に供給されることができる。
【0041】
第2冷却塔20に供給された前記第1冷却塔10の上部排出ストリーム12は、さらに冷却されることで、アクリル酸および水を含む下部分画と軽質ガス成分を含む上部分画とに分離されることができる。
【0042】
前記第2冷却塔20の運転温度は、60℃以上、80℃以上または100℃以上、および140℃以下、130℃以下または120℃以下であることができ、運転圧力は、1kg/cm以上、1.5kg/cm以上または2kg/cm以上、および20kg/cm以下、10kg/cm以下または5kg/cm以下であることができる。前記範囲内の運転温度および運転圧力で前記第2冷却塔20の運転条件を制御することで、前記第2冷却塔20の上部排出ストリーム22として分離される軽質ガス成分の組成を制御して、アクリル酸の損失を最小化し、且つ希釈ガスとアセトアルデヒドを含む軽質ガス成分を系外に除去することができる。
【0043】
従来、アクリル酸の製造方法において、冷却塔が使用されても、これは、気相の反応生成物をアクリル酸の精製工程への導入に適するように冷却することであって、物質の分離のために冷却することではなかった。冷却によって物質を分離する場合、所望の純度の物質を回収し難いためである。しかし、本発明は、冷却塔の冷却量を制御して、冷却される成分の量を調節し、本来の目的である反応生成物の冷却以外にも、物質の分離という効果も同時に得ることができる。
【0044】
一方、前記第2冷却塔20の下部分画は、第2冷却塔の下部排出ストリーム21を介して排出され、抽出塔100に供給されることができる。前記第2冷却塔の下部排出ストリーム21には、前記第1冷却塔10で凝縮されていないアクリル酸が含まれていてもよい。前記抽出塔100で行われる抽出工程によりアクリル酸および抽出溶媒を含む抽出液を得るステップが行われることができる。
【0045】
具体的には、前記抽出塔100は、多くのエネルギーを使用することなく、第2冷却塔の下部排出ストリーム21に含まれたほとんどの水を除去し、これを共沸蒸留塔200に供給することで、後述する共沸蒸留塔200で共沸蒸留に使用されるエネルギーを削減できるようにする。このような面で、前記抽出塔100での抽出は、抽出溶媒と前記抽出塔供給ストリームを液-液接触方式によって接触させることが、全工程のエネルギー効率向上の面で好ましい。
【0046】
ここで、前記抽出溶媒は、水と共沸をなすことができ、アクリル酸とは共沸をなさないが、十分に抽出することができる炭化水素類の溶媒であることができ、また、10~120℃の沸点を有することが抽出工程上有利である。具体的には、前記抽出溶媒は、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、n-ヘプタン(n-heptane)、シクロヘプタン(cycloheptane)、シクロヘプテン(cycloheptene)、1-ヘプテン(1-heptene)、エチル-ベンゼン(ethyl-benzene)、メチル-シクロヘキサン(methyl-cyclohexane)、n-ブチルアセテート(n-butyl acetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、イソブチルアクリレート(isobutyl acrylate)、n-プロピルアセテート(n-propyl acetate)、イソプロピルアセテート(isopropyl acetate)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、2-メチル-1-ヘプテン(2-methyl-1-heptene)、6-メチル-1-ヘプテン(6-methyl-1-heptene)、4-メチル-1-ヘプテン(4-methyl-1-heptene)、2-エチル-1-ヘキセン(2-ethyl-1-hexene)、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、2-メチル-1-ヘキセン(2-methyl-1-hexene)、2,3-ジメチルペンタン(2,3-dimethylpentane)、5-メチル-1-ヘキセン(5-methyl-1-hexene)およびイソプロピル-ブチル-エーテル(isopropyl-butyl-ether)からなる群から選択される1種以上の溶媒であることができる。
【0047】
また、前記抽出塔100は、液-液接触方式による抽出装置が用いられることができる。非制限的な例としては、前記抽出装置は、Karr typeの往復プレートカラム(Karr reciprocating plate column)、回転-円板型カラム(rotary-disk contactor)、Scheibelカラム、Kuhniカラム、噴霧抽出塔(spray extraction tower)、充填抽出塔(packed extraction tower)、パルス充填カラム(pulsed packed column)、混合-沈降機(mixer-settler)のバンク、ミキサーおよび遠心分離機(centrifugal counter current extractor)などであることができる。
【0048】
このような方法で、抽出溶媒およびアクリル酸を含む抽出液(extract)が得られ、前記抽出液は、抽出塔の上部排出ストリーム102として前記共沸蒸留塔200に供給されることができる。また、前記抽出工程により、水は、抽残液(raffinate)として回収されることができる。回収された抽残液は、抽出塔の下部排出ストリーム101として排出されることができる。このように前記抽出工程で水が回収されることにより、後述する蒸留工程の運転負担を低減し、エネルギー消費量を大幅に下げることができる。
【0049】
次いで、本発明の一実施形態によると、前記アクリル酸および乳酸を含む第1冷却塔の下部排出ストリーム11は、共沸蒸留塔200に供給されることができる。前記第1冷却塔の下部排出ストリーム11に含まれたアクリル酸の含量に対する水の含量の比は、2.5~4.0であることができる。このような第1冷却塔の下部排出ストリーム11を、例えば、抽出塔100に供給する場合、前記抽出工程により、水とともに乳酸が排出されて乳酸の損失がもたらされるか、水とともに排出された乳酸を分離するための別の装置およびこれに伴うエネルギーが必要である。したがって、本発明では、前記第1冷却塔の下部排出ストリーム11を前記抽出塔で分離した抽出液とともに共沸蒸留塔200に供給することで、アクリル酸を取得する過程で、乳酸とアクリル酸の損失を最小化することができる。また、前記第1冷却塔10が乳酸の過量冷却条件で運転されることにより、全量または過量凝縮された乳酸とともにアクリル酸が排出されても、アクリル酸回収塔400でアクリル酸と乳酸が互いに分離されることができ、アクリル酸の損失を最小化することができる。
【0050】
一方、本発明の一実施形態によると、前記第1冷却塔の下部排出ストリーム11と前記抽出塔の上部排出ストリーム102は、共沸蒸留塔200に供給され、これらのストリームに対する蒸留工程が行われることができる。前記共沸蒸留塔200に供給されるストリームに対する共沸蒸留塔200内での蒸留工程は、共沸蒸留によって水および抽出溶媒を含む上部分画とアクリル酸と乳酸を含む下部分画を分離する工程であることができる。
【0051】
本発明によると、共沸蒸留塔200での蒸留は、共沸溶媒の存在下で行われることが工程上有利である。ここで、前記共沸溶媒は、水と共沸することができ、アクリル酸とは共沸しない疎水性溶媒であり、前記物性を満たす炭化水素系溶媒が制限なく適用されることができる。また、前記共沸溶媒は、アクリル酸より沸点が低いことができ、好ましくは10~120℃の沸点を有することができる。
【0052】
本発明によると、前記物性を満たす共沸溶媒は、ベンゼン(benzene)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、n-ヘプタン(n-heptane)、シクロヘプタン(cycloheptane)、シクロヘプテン(cycloheptene)、1-ヘプテン(1-heptene)、エチル-ベンゼン(ethyl-benzene)、メチル-シクロヘキサン(methyl-cyclohexane)、n-ブチルアセテート(n-butyl acetate)、イソブチルアセテート(isobutyl acetate)、イソブチルアクリレート(isobutyl acrylate)、n-プロピルアセテート(n-propyl acetate)、イソプロピルアセテート(isopropyl acetate)、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)、2-メチル-1-ヘプテン(2-methyl-1-heptene)、6-メチル-1-ヘプテン(6-methyl-1-heptene)、4-メチル-1-ヘプテン(4-methyl-1-heptene)、2-エチル-1-ヘキセン(2-ethyl-1-hexene)、エチルシクロペンタン(ethylcyclopentane)、2-メチル-1-ヘキセン(2-methyl-1-hexene)、2,3-ジメチルペンタン(2,3-dimethylpentane)、5-メチル-1-ヘキセン(5-methyl-1-hexene)およびイソプロピル-ブチル-エーテル(isopropyl-butyl-ether)からなる群から選択される1種以上の溶媒であることができる。
【0053】
また、前記共沸溶媒は、抽出塔100に適用される抽出溶媒と同一または異なっていてもよい。ただし、連続工程による生産効率などを考慮して、前記共沸溶媒は、抽出溶媒と同一であることが好ましい。このように、共沸溶媒と抽出溶媒として同じ化合物が使用される場合、共沸蒸留塔200で蒸留され回収された共沸溶媒の少なくとも一部は、抽出塔100に供給されて、抽出溶媒の一部として使用されることができる。
【0054】
前記のような共沸蒸留塔200に共沸溶媒が投入されると、アクリル酸および水の共沸が行われる。それによって、水と共沸蒸留に使用された共沸溶媒がともに共沸して、共沸蒸留塔200の上部分画として回収されることができる。そして、共沸蒸留塔200の下部には、アクリル酸と乳酸を含む下部分画が回収されることができる。
【0055】
このように回収された共沸蒸留塔の上部分画は、共沸蒸留塔の上部排出ストリーム202を介して層分離機に供給されることができる。層分離機は、液-液層分離機であって、互いに混合されない流体を密度差により重力または遠心力などを用いて分離するための装置であり、相対的に軽い液体は層分離機の上部に、相対的に重い液体は層分離機の下部に分離することができる。具体的には、層分離機に供給された共沸蒸留塔の上部排出ストリーム202は、共沸溶媒を含む有機層と水を含む水層に分離することができる。
【0056】
また、層分離機で分離された前記有機層は、層分離機の排出ストリームとして排出され、共沸溶媒または抽出溶媒を含む前記層分離機の排出ストリームは、抽出塔および共沸蒸留塔の一つ以上に循環し、共沸溶媒または抽出溶媒として再使用されることができる。
【0057】
一方、アクリル酸と乳酸を含む共沸蒸留塔200の下部分画は、共沸蒸留塔の下部排出ストリーム201として、アクリル酸回収塔400に供給されることができる。前記アクリル酸回収塔400で行われる蒸留により、アクリル酸回収塔400の下部排出ストリーム401には乳酸が分離され、上部排出ストリーム402にはアクリル酸が分離されることができる。前記アクリル酸回収塔400の下部に分離された乳酸が、反応器に循環し、脱水反応の原料として再使用されることができる。
【0058】
以上、本発明によるアクリル酸の製造方法について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示している工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明によるアクリル酸の製造方法を実施するために適宜応用されて用いられることができる。
【0059】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白であり、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0060】
実施例
実施例1
図1に図示されている工程フローチャートにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、アクリル酸製造工程をシミュレーションした。
【0061】
具体的には、反応器に、30重量%の乳酸水溶液と、希釈ガスとして窒素(N)を供給して、脱水反応により、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を製造した。
【0062】
前記反応生成物を含む反応器排出ストリームを第1冷却塔10に供給した。前記第1冷却塔10で反応生成物を冷却および凝縮し、アクリル酸および乳酸を含む第1冷却塔の下部排出ストリーム11と、アクリル酸、水および軽質ガス成分を含む第1冷却塔の上部排出ストリーム12とに分離した。ここで、前記第1冷却塔10の下部運転温度を120℃に、上部運転圧力を1.9kg/cmに制御した。
【0063】
次いで、第1冷却塔の下部排出ストリーム11は、共沸蒸留塔200に導入させた。一方、第1冷却塔の上部排出ストリーム12を第2冷却塔20に供給して冷却および凝縮することで、水およびアクリル酸を含む第2冷却塔の下部排出ストリーム21と、窒素を含む軽質ガス成分を第2冷却塔の上部排出ストリーム22とに分離した。ここで、前記第2冷却塔20の下部運転温度を107℃に、上部運転圧力を1.3kg/cmに制御した。
【0064】
一方、第2冷却塔の下部排出ストリーム21を抽出塔100に供給し、前記抽出塔100では、抽出溶媒としてトルエンを使用してアクリル酸を溶解した後、アクリル酸と抽出溶媒を含む抽出液を前記抽出塔100の上部排出ストリーム102に分離して前記共沸蒸留塔200に供給し、水を含む前記抽出塔100の下部排出ストリーム101は系外に排出した。
【0065】
また、第1冷却塔10の下部排出ストリームおよび抽出塔100の上部排出ストリーム102が供給された共沸蒸留塔200で蒸留を行い、乳酸とアクリル酸を含む下部排出ストリーム201を取得し、これをアクリル酸回収塔400に供給した。一方、共沸蒸留塔200の上部には、水と抽出溶媒を含むストリーム202を排出した。次いで、水と抽出溶媒を含むストリーム202を層分離機に供給して水と抽出溶媒を分離した後、水は系外に排出し、抽出溶媒は抽出塔100と共沸蒸留塔200とに分けて循環させた。
【0066】
一方、アクリル酸回収塔400で蒸留を行い、下部には乳酸を取得し、上部にはアクリル酸を取得した。
【0067】
ここで、図1の各ストリーム内の成分別の流量(kg/hr)と組成(wt%)を下記表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
前記表1および図1から、1a番のストリームを介して第1冷却塔10に導入されたアクリル酸と乳酸の質量流量と、アクリル酸回収塔400の上部および下部(8a番及び9a番のストリーム)に取得されるアクリル酸と乳酸の質量流量を比較した結果、乳酸の回収率は97%であり、アクリル酸の回収率は99.2%に達することを確認することができた。
【0070】
実施例2
図1に図示されている工程フローチャートにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、アクリル酸製造工程をシミュレーションした。
【0071】
具体的には、実施例1に対して、反応器に40重量%の乳酸水溶液を供給した以外は、実施例1と同じ方法で実施した。
【0072】
ここで、図1の各ストリーム内の成分別の流量(kg/hr)と組成(wt%)を下記表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
前記表2および図1から、1a番のストリームを介して第1冷却塔10に導入されたアクリル酸と乳酸の質量流量と、アクリル酸回収塔400の上部および下部(8a番及び9a番のストリーム)に取得されるアクリル酸と乳酸の質量流量を比較した結果、乳酸の回収率は97.6%であり、アクリル酸の回収率は97.7%に達することを確認することができた。
【0075】
比較例
比較例1
図2に図示されている工程フローチャートにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、アクリル酸製造工程をシミュレーションした。
【0076】
比較例1は一機の冷却塔10を使用して軽質ガス成分を分離し、アクリル酸および乳酸を含む冷却塔10の下部排出ストリームの一部を抽出塔100に供給し、残りを共沸蒸留塔200に導入して、実施例1と同じアクリル酸回収率を実現した例である。
【0077】
比較例1で実施例1と同様の乳酸水溶液を使用して反応生成物を製造した。具体的には、反応器に、30重量%の乳酸水溶液と、希釈ガスとして窒素(N)を供給して、脱水反応により、乳酸、水、軽質ガス成分およびアクリル酸を含む反応生成物を製造した。
【0078】
前記反応生成物を冷却塔10に供給して、上部に窒素などの軽質ガス成分を分離し、下部には乳酸、アクリル酸および水を含むストリームを分離した。ここで、前記第1冷却塔10の下部運転温度を108℃に、上部運転圧力を1.3kg/cmに制御した。
【0079】
前記冷却塔10の下部排出ストリームの質量流量の半分は抽出塔100に供給し、残りの半分を共沸蒸留塔200に供給した。
【0080】
一方、前記抽出塔100では、抽出溶媒としてトルエンを使用してアクリル酸を溶解した後、アクリル酸と抽出溶媒を含む抽出液を前記抽出塔100の上部排出ストリームに分離し、前記共沸蒸留塔200に供給した。次いで、共沸蒸留塔200で蒸留を行って、乳酸およびアクリル酸を含む下部排出ストリームと水と抽出溶媒を含む上部排出ストリームを分離した。一方、乳酸とアクリル酸を含む共沸蒸留塔200の下部排出ストリームをアクリル酸回収塔400に供給し、アクリル酸回収塔400で蒸留を行って、下部には乳酸を取得し、上部にはアクリル酸を取得した。
【0081】
比較例1(図2)の各ストリーム内の成分別の流量(kg/hr)と組成(wt%)を下記表3に示した。
【0082】
【表3】
【0083】
前記表3および図2から、1b番のストリームを介して導入された乳酸の質量流量(600kg/hr)と7b番のストリームを介して回収される乳酸の質量流量(351kg/hr)を比較した結果、乳酸の回収率は58.5%であることを確認することができる。
【0084】
比較例2
図2に図示されている工程フローチャートにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、アクリル酸製造工程をシミュレーションした。
【0085】
具体的には、比較例1に対して、反応器に40重量%の乳酸水溶液を供給した以外は、比較例1と同じ方法で実施するが、実施例1と同じアクリル酸回収率(97.7%)を実現した例である。
【0086】
比較例2(図2)の各ストリーム内の成分別の流量(kg/hr)と組成(wt%)を下記表4に示した。
【0087】
【表4】
【0088】
前記表4および図2から、1b番のストリームを介して導入された乳酸の質量流量(2000kg/hr)と7b番のストリームを介して回収される乳酸の質量流量(1229kg/hr)を比較した結果、乳酸の回収率は61.5%であることを確認することができる。
図1
図2
【国際調査報告】