IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソイテックの特許一覧

特表2024-536118多結晶SiCからなるキャリア基板上に単結晶SiCからなる機能層を備えている複合構造体及び前記構造体を製造するためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】多結晶SiCからなるキャリア基板上に単結晶SiCからなる機能層を備えている複合構造体及び前記構造体を製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20240927BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20240927BHJP
   C30B 33/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/20
H01L21/265 Q
C30B29/36 A
C30B33/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519070
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 FR2022051765
(87)【国際公開番号】W WO2023057699
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2110493
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ゴーダン, グウェルタズ
(72)【発明者】
【氏名】マルヴィル, クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】オドゥール, シドワン
(72)【発明者】
【氏名】イオヌット, ラドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ビアード, ヒューゴ
【テーマコード(参考)】
4G077
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BE08
4G077FF07
4G077HA12
5F152LL03
5F152LL04
5F152LL07
5F152LN27
5F152LN28
5F152LP01
5F152LP07
5F152MM02
5F152MM04
5F152NN05
5F152NN22
5F152NN29
5F152NP02
5F152NP23
5F152NQ02
(57)【要約】
本発明は、多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層を備えている複合構造体を製造するためのプロセスであって、a)表側の平面内で0.5μmよりも大きい平均サイズのグレインを含んでいる多結晶炭化ケイ素からなる初期基板を用意するステップと、b)キャリア基板を形成するために、初期基板に多結晶炭化ケイ素からなる表面層を形成するステップであり、表面層が500nmよりも小さい平均サイズのグレインから作られ、50nm~50μmの厚さを有している、ステップと、c)1nm RMSよりも小さい粗さを得るために、キャリア基板の表面層の自由表面を調整するステップと、d)分子接合に基づいて、キャリア基板へ機能層を移転するステップを含む、プロセスに関する。本発明は、多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板、及び単結晶炭化ケイ素からなる機能層を備えている複合構造体にさらに関する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板(20)に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層(10)を備えている複合構造体(100)を製造するためのプロセスであって、
a)表側を有しており、前記表側の平面内で0.5μmよりも大きい平均サイズのグレインを含んでいる、多結晶炭化ケイ素からなる初期基板(21)を用意するステップと、
b)前記キャリア基板(20)を形成するために、前記初期基板(21)に多結晶炭化ケイ素からなる表面層(22)を形成するステップであり、前記表面層(22)が500nmよりも小さい平均サイズのグレインから作られ、50nmと50μmとの間を含む厚さを有している、表面層(22)を形成するステップと、
c)1nm RMSよりも小さい粗さを得るために、前記キャリア基板(20)の前記表面層(22)の自由表面を調整するステップと、
d)分子接合に基づいて、前記キャリア基板(20)へ前記機能層(10)を移転するステップであり、前記表面層(22)が前記機能層(10)と前記初期基板(21)との間に位置している、前記機能層(10)を移転するステップと、
を含む、製造するためのプロセス。
【請求項2】
ステップa)が、1100℃と1500℃との間を含む温度で、化学気相堆積技術を使用して実行される、請求項1に記載の製造するためのプロセス。
【請求項3】
ステップa)が、シンタリング技術を使用して又は物理気相堆積技術を使用して実行される、請求項1に記載の製造するためのプロセス。
【請求項4】
ステップb)が、多結晶炭化ケイ素からなる層を堆積することを含み、1100℃以下、又はそれどころか1000℃以下の温度で化学気相堆積技術を使用して実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造するためのプロセス。
【請求項5】
ステップb)が、ステップa)と同じ、機器のアイテムで、前記初期基板を大気雰囲気へ戻さずにステップa)に続いて実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造するためのプロセス。
【請求項6】
ステップb)が、初期基板(21)に非晶質炭化ケイ素からなる層を堆積することと、多結晶炭化ケイ素からなる前記表面層(22)を形成するために、再結晶化アニールを実行することとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造するためのプロセス。
【請求項7】
ステップb)で形成された前記表面層(22)が、1E18/cmと1E21/cmとの間を含むドーパント濃度を有している、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造するためのプロセス。
【請求項8】
ステップc)が、前記表面層(22)を構成する前記グレインの前記平均サイズの1倍と10倍との間を含む量の除去を伴う前記表面層(22)の化学機械研磨を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造するためのプロセス。
【請求項9】
ステップd)が、次のステップ、即ち、
d1)ドナー基板(1)を用意するステップと、
d2)前記ドナー基板(1)の表側で移転しようとする前記機能層(10)を画成する埋め込まれた脆弱平面(11)を形成するために、前記ドナー基板(1)へ軽元素種を導入するステップと、
d3)分子接合により、前記キャリア基板(20)へ前記ドナー基板(1)の前記表側を接合するステップと、
d4)前記埋め込まれた脆弱平面(11)に沿って剥離して、前記キャリア基板(20)への前記機能層(10)の移転をもたらすステップと、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造するためのプロセス。
【請求項10】
前記ステップd2)の前又は後に、前記ドナー基板(1)の前記表側に、前記表面層(22)と同じ性質の第2の表面層を形成するステップを含む、請求項9に記載の製造するためのプロセス。
【請求項11】
ステップd)が、接合するステップd3)の前に、前記キャリア基板(20)の前記表面層(22)に及び/又は前記ドナー基板(1)の前記表側に金属からなる又はシリコンからなる追加の膜を堆積することを含む、請求項9又は10に記載の製造するためのプロセス。
【請求項12】
多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板(20)であって、
炭化ケイ素グレインを含む初期基板(21)であり、前記グレインが0.5μmよりも大きい平均サイズを有している、初期基板(21)と、
平均サイズが500nmよりも小さい炭化ケイ素グレインを含み、50nmと50μmとの間を含む厚さを有している、前記初期基板(21)の表側に少なくとも設置された表面層(22)と、
を備える、キャリア基板(20)。
【請求項13】
前記表面層(22)の自由表面が、1nm RMSよりも小さい粗さ、及び0.5μmのしきい値で反射型暗視野顕微鏡により測定されたとき1欠陥/cm未満を有している、請求項12に記載のキャリア基板(20)。
【請求項14】
前記表面層(22)の前記厚さが、200nmと5μmとの間に含まれる、請求項12又は13に記載のキャリア基板(20)。
【請求項15】
前記表面層(22)が、1E18/cmと1E21/cmとの間に含まれるドーパント濃度を有している、請求項12~14のいずれか一項に記載のキャリア基板(20)。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項に記載のキャリア基板(20)と、
表面層(22)に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層(10)と、
を備える、複合構造体(100)。
【請求項17】
前記機能層(10)上に又は中に少なくとも1つのパワーデバイスをさらに備える、複合構造体(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエレクトロニクス部品用の半導体の分野に関する。特に、多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層を備えた複合構造体及び前記構造体を製造するためのプロセスに関する。本発明はまた、多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板にも関する。
【背景技術】
【0002】
SiCは、特に電気車両などの電子機器の用途の成長する分野の必要性を満足させるため革新的なパワーデバイスを製造するためにますます広く使用されている。
【0003】
単結晶炭化ケイ素に基づくパワーデバイス及び一体型電源システムは、従来型のシリコン等価物よりもはるかに高いパワー密度を管理することが可能であり、より小さなサイズの活性領域を用いてそうすることが可能である。SiC上のパワーデバイスの寸法をさらに制限するために、横型部品よりも縦型部品を製造することが有利なはずである。これを行うために、SiC構造体の表側に設置された電極と裏側に設置された電極との間の縦方向の電気伝導が前記構造体により可能にされなければならない。
【0004】
それにも拘らず、マイクロエレクトロニクス産業用に向けられた単結晶SiC基板は、高価なままであり大きなサイズで供給することが難しい。安価な単結晶(c-SiC)又は多結晶(p-SiC)キャリア基板上に単結晶SiC(c-SiC)からなる薄い層(薄層)を典型的には含む複合構造体を作製するために薄層移転解決手法を採用することがそれゆえ有利である。1つのよく知られた薄層移転解決手法は、軽いイオンを注入することそして貼り合わせ界面における直接貼り合わせにより接合することに基づくスマートカット(Smart Cut)(登録商標)プロセスである。貼り合わせ界面は、最も低い可能な抵抗率、好ましくは1mohm.cmよりも低い、又はそれどころか0.1mohm.cmよりも低い抵抗率を持たなければならない。
【0005】
多くの先行技術の解決手法は、接合しようとする表面に堆積した金属層に基づく導体-導体貼り合わせを使用することを提案している。例えば、Letertreによる刊行物(「Silicon carbide and related materials」、Material Science Forum-389~393巻、2002年4月)又は米国特許第7208392号という文書は、タングステンシリサイド(WSi2)に基づく導電性中間層を形成するためにタングステンの層及びシリコンの層の堆積を記載している。この手法の1つの欠点は、最初に堆積した材料に対するシリサイドの収縮のために、この中間層内でのボイドの形成から生じることがあり、特に、これは、表面半導体層及び可能性としてその全体の半導体構造体の品質に影響を及ぼすことがある。加えて、このタイプの中間層を用いると、非常に良い縦方向の電気伝導を要求するいくつかの用途により必要とされるレベルまで貼り合わせ界面の抵抗率を下げることが難しい。
【0006】
機能層及びキャリア基板のSiC表面同士を直接接合させることも想像できるが、これは特に、多結晶キャリア基板が関わり合いを持つときには、困難なままであり、問題はその時には、要求されている貼り合わせ界面品質(低い欠陥密度、高い貼り合わせエネルギー、非常に低い抵抗率)で、直接貼り合わせにより単結晶機能層をどのように移転するかである。G.Chichignoud他(「Processing of poly-SiC substrate with large grains for wafer bonding」-Materials Science Forum、527~529巻、ページ71~74(2006年))は、パワーマイクロエレクトロニク用途に好都合な熱的及び電気的特性並びに直接貼り合わせに匹敵する物理的特性(表面粗さ、湾曲)を有する多結晶SiCキャリア基板へ単結晶SiC層を移転することを提案している。SiC多結晶のグレインは、サイズが大きく(典型的にはサイズで1cmよりも大きく)なるように選択され、接合する前の表面を調整するために行われる化学機械研磨は、5nmよりも小さい平均粗さが得られることを可能にする。
【0007】
EP3441506という文書は、直接貼り合わせを介してc-SiC半導体層が移転され得るp-SiCキャリア基板を提供している。前記キャリア基板は、10μmの程度の平均サイズのグレインを有しており、キャリア基板の厚さにより割り算したキャリア基板の表側と裏側との間のグレインサイズの0.43%以下の変動の程度を示し、後者の特徴は、キャリア基板内の残留ストレス、それゆえにキャリア基板の湾曲を制限することを可能にする。1nmよりも小さい平均粗さが、c-SiCからなる層に接合しようとするキャリア基板の表面で実現される。
【0008】
上記の2つの文書に提案されたものなどのp-SiCからなるキャリア基板を用いると、出願人は、グレイン間領域の異常な除去又は表面グレインのすべて若しくは一部の引き抜きのために残留する起伏(リセス又はバンプ)をそれにも拘らず観察しており、これは、貼り合わせ界面の品質(貼り合わせ欠陥)、それゆえに得られる複合構造体の総合的な性能に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、前述の欠点のうちのすべて又は一部を克服することを狙って、先行技術の解決手法に代わるものを提供する。本発明は、多結晶SiCからなるキャリア基板へ移転された単結晶SiCからなる機能層を備えている複合構造体を製造するためのプロセスに関し、本発明は、前記キャリア基板及び得られる複合構造体にも関する。
【0010】
本発明は、多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層を備えている複合構造体を製造するためのプロセスであって、
a)表側を有しており、前記表側の平面内で0.5μmよりも大きい平均サイズのグレインを含んでいる、多結晶炭化ケイ素からなる初期基板を用意するステップと、
b)前記キャリア基板を形成するために前記初期基板に多結晶炭化ケイ素からなる表面層を形成するステップであり、前記表面層が500nmよりも小さい平均サイズのグレインから作られており、50nmと50μmとの間を含む厚さを有している、表面層を形成するステップと、
c)1nm RMSよりも小さい粗さを得るために、前記キャリア基板の前記表面層の自由表面を調整するステップと、
d)分子接合に基づいて、前記キャリア基板へ前記機能層を移転するステップであり、前記表面層が前記機能層と前記初期基板との間に位置している、前記機能層を移転するステップと
を含む、プロセスに関する。
【0011】
個別に又は任意の技術的に実行可能な組み合わせで適用可能である発明の他の有利であり非限定的な特徴によれば、
ステップa)が、1100℃と1500℃との間を含む温度で、化学気相堆積技術を使用して実行され、
ステップa)が、シンタリング技術を使用して又は物理気相堆積技術を使用して実行され、
ステップb)が、多結晶炭化ケイ素からなる層を堆積することを含み、1100℃以下、又はそれどころか1000℃以下の温度で化学気相堆積技術を使用して実行され、
ステップb)が、ステップa)と同じ、機器のアイテムで、前記初期基板を大気雰囲気へ戻さずにステップa)に続いて実行され、
ステップb)が、多結晶炭化ケイ素からなる前記表面層を形成するために、初期基板に非晶質炭化ケイ素からなる層を堆積することと、再結晶化アニールを実行することとを含み、
ステップb)で形成された前記表面層が、1E18/cmと1E21/cmとの間を含むドーパント濃度を有しており、
ステップc)が、前記表面層を作っている前記グレインの前記平均サイズの1倍と10倍との間を含む量の除去を伴う前記表面層の化学機械研磨を含み、
ステップd)が、次のステップ、
d1)ドナー基板を用意するステップと、
d2)前記ドナー基板の表側で移転しようとする前記機能層を画成する埋め込まれた脆弱平面を形成するために、ドナー基板へと軽元素種を導入するステップと、
d3)分子接合により、前記キャリア基板に前記ドナー基板の前記表側を接合するステップと、
d4)前記埋め込まれた脆弱平面に沿って剥離し、前記キャリア基板への前記機能層の移転をもたらすステップと
を含み、
前記製造するプロセスが、前記ステップd2)の前又は後に、前記ドナー基板の前記表側に、前記表面層と同じ性質の第2の表面層を形成することを含み、
ステップd)が、接合するステップd3)の前に、前記キャリア基板の前記表面層に及び/又は前記ドナー基板の前記表側に金属又はシリコンからなる追加の膜を堆積することを含む。
【0012】
本発明は、多結晶炭化ケイ素からなるキャリア基板であって、
炭化ケイ素グレインを含む初期基板であり、前記グレインが0.5μmよりも大きい平均サイズを有している、初期基板と、
平均サイズが500nmよりも小さい炭化ケイ素グレインを含み、50nmと50μmとの間を含む厚さを有している、前記初期基板の表側に少なくとも設置された表面層と
を備えるキャリア基板にも関する。
【0013】
個別に又は任意の技術的に実行可能な組み合わせで適用可能である発明の他の有利であり非限定的な特徴によれば、
前記表面層の自由表面が、1nm RMSよりも小さい粗さ、及び0.5μmのしきい値で反射型暗視野顕微鏡により測定されたとき1欠陥/cm未満を有しており、
前記表面層の厚さが、200nmと5μmとの間に含まれ、
前記表面層が、1E18/cmと1E21/cmとの間を含むドーパント濃度を有している。
【0014】
最後に、本発明は、複合構造体であって、
上に述べたようなキャリア基板と、
表面層に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層と
を備える、複合構造体に関する。
【0015】
複合構造体は、前記機能層上に又は中に少なくとも1つのパワーデバイスをさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
発明の他の特徴及び利点は、添付した図を参照して発明の下記の詳細な説明を読むと明らかになるだろう。
図1】発明による製造プロセスを使用して作製した複合構造体を示す図である。
図2a】発明による製造プロセスのステップを示す図である。
図2b】発明による製造プロセスのステップを示す図である。
図2c】発明による製造プロセスのステップを示す図である。
図2d】発明による製造プロセスのステップを示す図である。
図3a】発明による製造プロセスの1つの好ましい実施形態のステップを示す図である。
図3b】発明による製造プロセスの1つの好ましい実施形態のステップを示す図である。
図3c】発明による製造プロセスの1つの好ましい実施形態のステップを示す図である。
図3d】発明による製造プロセスの1つの好ましい実施形態のステップを示す図である。
【0017】
複数の図中の同じ参照符号は、同じタイプの要素に対して使用されてもよい。図は、読みやすさのために、等尺には描かれていない模式的な表示である。特に、z-軸に沿った層の厚さは、x-軸及びy-軸に沿った横方向の寸法に対して等尺ではなく;互いに対する層同士の相対的な厚さは、図では必ずしも尊重される必要がない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、キャリア基板20に設置された単結晶炭化ケイ素(「c-SiC」が単結晶炭化ケイ素を呼ぶために下記では使用されるだろう)からなる機能層10を備えている複合構造体100(図1)を製造するためのプロセスに関する。キャリア基板20は、多結晶炭化ケイ素(「p-SiC」が多結晶SiCを呼ぶために使用されるだろう)からなる。複合構造体100の機能層10上の及び/又は中のマイクロエレクトロニクス部品の作製に関して、c-SiCからなる機能層10の自由側に関してシリコン面になることが通常望ましいことが留意されるだろう。
【0019】
プロセスは、多結晶炭化ケイ素からなる初期基板21を用意するステップa)を最初に含み、上記基板は、その機械的特性をキャリア基板20に与えるものである(図2a)。言い換えると、初期基板21は、キャリア基板20の厚さの大部分を表す。表側21aと裏側21bとを有しており、200μmと800μmとの間を典型的に含む厚さのものである直径100mm又は150mm、又はそれどころか200mmのウェハの形態を好ましくは取る。
【0020】
多結晶初期基板21は、4H、6H及び/又は3C炭化ケイ素のグレインを含む。グレインは、表側21aの平面内で、0.5μmよりも大きく、1μmと10μmとの間を典型的には含む平均サイズを有する。グレイン境界により画成されたグレインのサイズは、表側21aの平面内の前記グレインの最大寸法に対応する。グレインの平均サイズは、表側21aの平面内の様々なグレインのサイズの平均により規定される。50nmよりも典型的には小さい非常に小さなサイズのグレインは、測定の不確実性を制限するために測定から好ましくは除外されている。従来型の走査電子顕微鏡(SEM)により又は電子後方散乱回折(EBSD)を含め得られた画像上のグレインの寸法又はグレイン境界同士の間の距離の測定に基づくことが可能である。X線結晶構造解析法を使用することも想像できる。
【0021】
大きな寸法のp-SiCのグレインは、良い熱伝導率に有利であり、初期基板21に関してそれゆえに好ましい。標的とする用途(縦型電子部品)に関して、200W/m/Kよりも高く、そして好ましくは250W/m/Kよりも高い熱伝導率、及び10mohm.cmよりも低く、そして好ましくは5mohm.cmよりも低い抵抗率が、キャリア基板20から期待され;このような電気的及び熱的特性が、初期基板21に対してそれゆえ選択される。初期基板21は、1E18/cmと1E21/cmとの間を含み、1E19/cmと1E20/cmとの間を典型的には含むドーパント濃度を好ましくは有している。p型及びn型ドーパントが想像されるとしても、複合構造体100に作製されるだろう電子デバイスに関して、n型ドーパント、例えば窒素ドーパントを採用することが通常である。
【0022】
ステップa)は、シンタリング、物理気相堆積(PVD)又はそれどころか化学気相堆積(CVD)などの知られている先行技術の技術を使用して実行されてもよい。シンタリングされた基板は、その比較的限られたコストのために有利である。CVD技術が大きな直径の高品質p-SiC基板を得られることを可能にすることで、CVD技術は有利であり;堆積は、1100℃と1500℃との間を含む温度で好ましくは実行される。
【0023】
出願人は、初期基板の表側21aへ機能層を移転することを目指して、上に述べたものなどの初期基板21の表面を調整するための処置の多くの試みを実行した。初期基板21の表側の典型的な初期RMS粗さは、作製技術及び供給者により適用される平滑化処理に依存して、(20μm×20μmのスキャンで原子間力顕微法(AFM)により測定されるように)数ナノメートルから数ミクロンまで変わることがある。優れた品質の直接分子結合を保証し、それゆえ優れた品質の移転された機能層を保証するために、(1nm RMS未満、さらには0.5nm RMS未満である必要がある)この粗さを減少させるために化学機械研磨が必要とされる。
【0024】
SiCはその硬さのために研磨することが難しい材料であることが知られている。出願人は、p-SiCからなる表面を研磨することが局所的にグレイン又はグレインのセグメントを引き抜き、研磨した表面にボイド及び他の欠陥を残すことをさらに観察している。非常に局所的に、粗さが必要な値に研磨後に達することがあるとしても、基板の規模ではボイド及び他の表面欠陥の密度は高いままである。
【0025】
欠陥密度を含むこの問題に対処するために、発明による製造プロセスは、初期基板21上に、キャリア基板20から期待される熱的及び電気的特性を著しく劣化させずに、高い品質の分子結合のために適した表面を調整することを可能にするために、特定のモフォロジの多結晶炭化ケイ素からなる表面層22を形成するステップb)を含む(図2b)。形成されたキャリア基板20は、初期基板21及び表面層22を含み、そして表側22a(表面層22の自由な側)及び裏側21b(初期基板21の裏側)を有している。
【0026】
表面層22と同じ性質の層が、特に初期基板21の湾曲に影響を与えることを避けるために、初期基板21の裏側21bにも任意選択で堆積されてもよいことが留意されるだろう(図示せず)。
【0027】
表面層22は、先行する研磨ステップなしに、初期基板21の表側21aに形成され;初期基板21の粗さは、ステップb)の堆積のときに、それゆえに10nmと3000nm RMSとの間を典型的に含む。
【0028】
50nmと50μmとの間を含み、そして100nmと5μmとの間を典型的に含む表面層22の厚さは、初期基板21の粗さに応じて調節される。約15nm RMSの前記基板21の粗さに対して、表面層22の厚さは、200nmと500nmとの間で好ましくは選択される。
【0029】
表面層22は、4H、6H及び/又は3C炭化ケイ素のグレインから構成される。これらのグレインは、500nmよりも小さい、又はそれどころか100nmよりも小さい、そして10nmと100nmとの間を典型的に含む平均サイズを有する。グレイン境界により画成されたグレインのサイズは、表面層22の自由表面の平面内の前記グレインの最大寸法に対応する。グレインの平均サイズは、前記平面内の様々なグレインのサイズの平均により規定される。
【0030】
p-SiC表面層22は、1E18/cmと1E21/cmとの間を含み、1E19/cmと1E20/cmとの間を典型的に含む、p型又はn型ドーパント濃度を好ましくは有する。表面層22のドーピング型及びレベルは、それぞれ初期基板21のものと同一であるか高くなるように一般に選択される。
【0031】
第1の実施形態によれば、ステップb)は、表面層22を形成するために多結晶の形態の炭化ケイ素を堆積することを含む。
【0032】
前記堆積が、特に低圧(LPCVD)でそして1100℃以下で、又はそれどころか1000℃以下の温度で、化学気相堆積技術を使用して実行されることが有利である。堆積温度を低下させることによって、表面拡散が減少し、核形成サイトの数を増加させ、これが非常に小さなp-SiCグレインの形成を促進させる。表面層22の厚さが一般に小さいままである(典型的には5μmよりも小さい)ので、グレインの平均サイズは、500nmよりも小さく、又はそれどころか100nmよりも小さく容易に保たれ得る。
【0033】
前駆物質は、好ましくは1よりも大きいC/Si比を有するメチルシラン、ジメチルジクロロシラン、又はそれどころかジクロロシラン及びi-ブタンから選択されてもよい。
【0034】
当然のことながら、他の温度がp-SiC堆積のために実行されてもよく、前述のグレインサイズが尊重されることが実現され、例えば1400℃よりも低い温度である。
【0035】
ステップb)がステップa)の終わりに初期基板21に実行されるように説明されてきているけれども、ステップa)と同じ堆積技術を用いそして機器の同じアイテムで、ステップa)に続いて初期基板21を大気雰囲気へ戻さずに実行されることが想像される。
【0036】
第2の実施形態によれば、ステップb)は、表面層22を形成するために、非晶質の形態で炭化ケイ素を堆積すること、次いで、多結晶の形態へと再結晶化させるアニールを実行することを含む。
【0037】
非晶質SiCは、化学気相堆積(例えば、プラズマ化学気相堆積(PECVD)若しくは直接液体注入化学気相堆積(DLI-CVD))技術を使用して、物理気相堆積技術を使用して、又は任意の他の知られている技術を使用して堆積されてもよい。再結晶化アニールは次いで、典型的には900℃よりも高く、そして好ましくは1100℃以上で、1200℃よりも又はそれどころか1400℃よりも高い温度で実行される。このアニールは、500nmよりも小さい、又はそれどころか100nmよりも小さく、10nmと100nmとの間を典型的には含む平均サイズを有する4H、6H及び/又は3C炭化ケイ素のグレインから構成される表面層22を得るために実行される。
【0038】
プロセスの一般的な説明に戻って、後半は次いで、1nm RMS以下の、有利には0.5nm RMS以下の粗さを得るために表面層22の自由表面22aを調整するステップc)を含む(図2c)。
【0039】
ステップc)は、様々な方法で、
化学的平滑化(ドライ又はウェットエッチング)により、
表面層22の表面を平滑にしやすい温度範囲及び雰囲気での熱処理により、
従来の炭化ケイ素研磨プロセスを使用する化学機械研磨により、
又はそれどころか機械研磨(微細グラインディング)により
実行されてもよい。
【0040】
後半の選択肢を参照して、表面層22のp-SiCグレインのナノスケールサイズが、1μm程度のものである化学機械研磨技術の典型的な平坦化長さよりもはるかに小さいことが好ましい。
【0041】
ステップc)が、表面層22の化学機械研磨に基づくときには、初期基板21の粗さ及び表面層22の堆積された厚さに依存して、表面層22のグレインの平均サイズの1倍と10倍との間を含む量を除去することを典型的には伴う。
【0042】
ステップc)は、数10ナノメートル~数10ミクロンの範囲にわたる空間波長範囲で得られるように、1nm RMS以下、好ましくは0.5nm RMS以下、例えば、約0.1nm~0.5nm RMSの粗さを可能にする。平滑化の後で、従来の洗浄(ブラシスクラビングを可能性として用いる化学洗浄)が、キャリア基板20に適用される。得られた欠陥密度レベルは、0.5μmのしきい値で、反射型暗視野顕微鏡により測定されたとき、10欠陥/cmよりも少ない、好ましくは1欠陥/cm未満で非常に低い。
【0043】
プロセスは、分子接合に基づいて、単結晶炭化ケイ素からなる機能層10をキャリア基板20へ移転するステップd)を最後に含み、表面層22はその時には機能層10と初期基板21との間に位置する(図2d)。
【0044】
第2の表面層が、分子接合に先立って、キャリア基板20に貼り合わせられるものである機能層10の側に形成されてもよいことが注目されるだろう。これは、同じ性質の複数の層(表面層22及び第2の表面層)、すなわち、p-SiCナノグレインからなる複数の層が接合されるという利点を有し;このような構成は、直接貼り合わせの品質が向上されることを可能にする。
【0045】
層を移転する様々な方法が、本分野では知られており、これらの方法は、ここでは余すところなく説明されないだろう。
【0046】
1つの好ましい実施形態によれば、プロセスのステップd)は、スマートカット(登録商標)プロセスの原理にしたがって軽元素種を注入することを含む。
【0047】
第1のステップd1)では、機能層10が得られるだろう単結晶炭化ケイ素からなるドナー基板1が用意される(図3a)。ドナー基板1は、(キャリア基板20の直径と同一である)100mm又は150mm又はそれどころか200mmの直径で、300μmと800μmとの間を典型的には含む厚さのウェハの形態を優先的に取る。ドナー基板は、表側1a及び裏側1bを有する。表側1aの表面粗さは、20μm×20μmスキャンでの原子間力顕微法(AFM)により測定されるように、1nm RMSよりも小さい、又はそれどころか0.5nm RMSよりも小さくなるように有利には選択される。複合構造体100の機能層10に対して自由シリコン面を得るように、ドナー基板1の表側1aが、炭素面を有するように選択されるだろう。ドナー基板1は、4H又は6Hポリタイプのものであってもよく、そして複合構造体100の機能層10上に及び/又は中に作製される構成要素の必要条件に応じてn型又はp型ドーピングを有してもよい。
【0048】
第2のステップd2)は、ドナー基板1の表側で移転しようとする機能層10を画成する埋め込まれた脆弱平面11を形成するためにドナー基板1へと軽元素種を導入することに対応する(図3b)。
【0049】
軽元素種は、優先的に水素、ヘリウム又はこれら2つのイオン種の同時注入であり、機能層10の目標とする厚さと一致する与えられた深さまでドナー基板1へと注入される。これらの軽元素種は、与えられた深さの付近に、ドナー基板1の自由表面1aに平行な、すなわち、図では平面(x,y)に平行な薄い層として分散されたマイクロキャビティを形成するだろう。この薄い層は、簡略化のために、埋め込まれた脆弱平面11と呼ばれる。
【0050】
軽元素種の注入のエネルギーは、与えられた深さまで達するように選択される。例えば、水素イオンは、約100nm~1500nmの厚さを有する機能層10を画成するために、10keVと250keVとの間を含むエネルギーで、516/cmと117/cmとの間を含むドーズで注入されるだろう。保護層が、イオン注入ステップに先立って、ドナー基板1の表側1aにおそらく堆積されるだろうことが留意されるだろう。この保護層は、例えば、シリコン酸化物又はシリコン窒化物などの材料から作られてもよい。保護層は、次のステップに先立って除去される。
【0051】
任意選択で、上に述べられたように、(表面層22と同じ性質の)第2の表面層が、軽元素種を導入する第2のステップd2)の前又は後に、ドナー基板1の表側1aに形成されてもよい。この第2の表面層は、ステップb)及びc)の前述の条件下でおそらく形成されそして調整されるだろう。
【0052】
第2の表面層がステップd2)の前に形成されるケースでは、軽元素種の注入エネルギー(及びおそらくドーズ)は、軽元素種がこの追加の層を通過するように調節されるだろう。第2の表面層がステップd2)の後で形成されるケースでは、ブリスタリングサーマルバジェットよりも小さいサーマルバジェットでこの第2の表面層を形成するように注意が払われるだろう、前記ブリスタリングサーマルバジェットは、埋め込まれた脆弱平面11内のマイクロキャビティの成長及び過剰な加圧の結果としてドナー基板1の表面の気泡の発現に対応する。
【0053】
移転するステップd)は、貼り合わせ界面3に沿って分子接合により、ドナー基板1の表側1aをキャリア基板20の表側22aに接合する第3のステップd3)を次いで含む(図3c)。
【0054】
それ自体よく知られているように、直接分子接合は、結合が接合される表面同士の間の原子スケールで形成するので接着剤を必要としない。いくつかのタイプの分子接合があり、それらは、温度、圧力若しくは雰囲気の点で又は表面が接触される前に行われる処理の点でそれらの条件で特に異なる。言及は、接合しようとする表面の先行するプラズマ活性化有り又は無しでの室温における貼り合わせ、原子拡散接合法(ADB)、表面活性化接合法(SAB)、等に行われてもよい。
【0055】
接合するステップd3)は、接合しようとする側1a、22aが接触される前に、貼り合わせ界面3の品質(低欠陥密度、高接着エネルギー)をおそらく高める化学洗浄(例えば、RCA洗浄)及び(例えば、酸素若しくは窒素プラズマによる)表面活性化又は他の表面調整(ブラシスクラビングなど)の従来のシーケンスを含んでもよい。
【0056】
(表面層22の表面調整のために)キャリア基板20の表側22aの低い欠陥密度及び粗さレベルは、高品質貼り合わせ界面3を得ることに関して特に有利である。ドナー基板1がキャリア基板20の表面層22と同じ性質の第2の表面層をさらに備えているケースでは、直接貼り合わせの品質は、同じ多結晶の性質又はそれどころか同じポリタイプ、好ましくは3Cの2つの表面が接合されるという理由で、さらに向上されることがある。
【0057】
任意選択で、ステップd)は、接合するステップd3)の前に、表面層22の調整された表側22aに及び/又はドナー基板1の表側に金属又は非晶質若しくは多結晶シリコンからなる追加の膜を堆積することを含む。金属は、タングステン、ニッケル、チタン、等からおそらく選択されるだろう。表面層22の自由な側22aの表面粗さが非常に小さいので、この追加の膜の厚さは、限定されることが有利であり、典型的には数ナノメートルと数10ナノメートルの間に限定される。その目的は、(特に1100℃よりも低い中間温度で)ボンディングエネルギーを本質的に増加させることであり、この増加は、2つの直接的に接合したSiC表面のケースよりも低い温度での共有結合の形成のためであり、この追加の膜のもう1つの利点は、貼り合わせ界面3の縦方向の電気伝導を向上させることであり得る。
【0058】
最後に、第4のステップd4)は、埋め込まれた脆弱平面11に沿った剥離を含み、剥離がキャリア基板20への機能層10の移転をもたらす(図3d)。
【0059】
埋め込まれた脆弱平面11に沿った剥離は、800℃と1200℃との間を含む温度で熱処理を適用することにより通常実行される。このような熱処理は、キャビティ及びマイクロクラックを埋め込まれた脆弱平面11内で発達させ、割れが前記脆弱平面11に沿って伝搬するまで、ガス状の形態で存在する軽元素種によりキャビティを加圧させる。代わりに、又は共同して、機械的ストレスが、剥離に導く割れを伝搬させるため又は機械的伝搬を助長させるために、貼り合わせた組み立て品に、特に埋め込まれた脆弱平面11に加えられてもよい。この剥離の終わりに、一方では、キャリア基板20と単結晶SiCからなる移転された機能層10とを含む半導体構造体100、他方では、ドナー基板の残余部1’が得られる。機能層10のドーピングのレベル及び型は、ドナー基板1の特性の選択により定められる又は半導体層のドーピングのための知られている技術によって後に調節されてもよい。
【0060】
機能層20の自由表面10aは、剥離後は通常粗い。例えば、5nmと100nm RMSとの間を含む粗さを有する(AFM、20μm×20μmスキャン)。洗浄及び/又は平滑化ステップが、良い表面仕上げ(典型的には、20μm×20μmAFMスキャンで2~3オングストロームRMSよりも小さい粗さ)を取り戻すために適用されてもよい。特に、これらのステップは、機能層10の自由表面を平滑化するための化学機械処理を含んでもよい。50nmと300nmとの間を含む大きさの除去量が、前記層10の表面仕上げを効果的に取り戻すことを可能にする。前記ステップは、1300℃と1800℃との間を含む温度での少なくとも1つの熱処理もさらに含んでもよい。そのような熱処理が、機能層10から残留する軽元素種を取り除くため及び機能層10の結晶格子の再配列を促進させるために適用される。熱処理は、貼り合わせ界面3を強くすることをさらに可能にする。この温度範囲での熱処理は、表面層22の(及び存在する場合には、第2の表面層の)グレインのサイズの増加もまた引き起こすことがあり、これは複合構造体100の熱伝導特性を向上させる有利な方法である。
【0061】
最後に、移転するステップd)は、新しい複合構造体100用のドナー基板1として再使用する観点でドナー基板の残材1’を再調整するステップを含んでもよいことが注目されるだろう。複合構造体100に適用された処理に類似の機械的及び/又は化学的処理が、残りの基板1’の表側1’aに適用されてもよい。再調整するステップは、化学機械研磨、グラインディング、及び/又はドライ若しくはウェット化学エッチングにより残りの基板1’の端部及び/又はその裏側1’bの1つ又は複数の処理もまた含んでもよい。
【0062】
本発明は、上に詳細に説明した製造プロセス(図2b)のステップa)及びb)で作製されたキャリア基板20にも関し、前記キャリア基板は、
炭化ケイ素グレインを含む初期基板21であって、前記グレインが0.5μmよりも大きい平均サイズを有している、初期基板21と、
初期基板21の少なくとも表側に設置された表面層22であって、平均サイズが500nmよりも小さく、好ましくは100nmよりも小さい炭化ケイ素グレインを含み、50nmと50μmとの間、好ましくは100nmと5μmとの間、又はそれどころか200nmと500nmとの間を含む厚さを有している、表面層22と
を含む。
【0063】
製造プロセスを参照して述べたように、表面層22と同じ性質の層が、初期基板21の裏側及び端部にさらに存在していてもよく、前記基板21が包み込まれることを可能にし、低品質の初期基板(例えば、シンタリングされた基板)が、キャリア基板20のコストを制限するためにこのように選択されてもよい。
【0064】
製造プロセスのステップc)(図2c)の後で、キャリア基板20の表面層の自由表面22aは、1nm RMSよりも小さい、又はそれどころか0.5nm RMS以下の粗さ、及び0.5μmのしきい値で反射型暗視野顕微鏡により測定されたとき、10欠陥/cmよりも少ない、又はそれどころか1欠陥/cm未満を有している。これらの特性は、キャリア基板20を、単結晶炭化ケイ素(又は第2の表面層が存在するときにはp-SiC)からなる機能層10とナノグレインp-SiC表側22aとの間の分子接合のステップの実施のために特にふさわしくする。
【0065】
最後に、本発明は、前述した製造プロセスで作製された複合構造体100に関し、前記複合構造体は、
上に述べたようなキャリア基板20と、
表面層22に設置された単結晶炭化ケイ素からなる機能層10と
を備える。
【0066】
このような複合構造体100は、機能層10の品質を向上させるため又は前記層10上に及び/若しくは中に構成要素を製造するために適用されがちである非常に高温の熱処理にきわめて強健である。
【0067】
発明による複合構造体100は、例えば、ショットキーダイオード、MOSFET、等などの1つ(又は複数の)高電圧マイクロエレクトニック部品(複数可)の生産のために特に適している。より一般的に、複合構造体100は、優れた縦方向電気伝導及び得られる良い熱伝導率を可能にし、そして高品質c-SiC機能層を提供するので、パワーマイクロエレクトロニクス用途の必要条件を満足する。
【0068】
当然のことながら、本発明は、説明した例及び実施形態に限定されず、実施形態の変形形態が、特許請求の範囲により規定されるような発明の範囲から逸脱することなく採用されてもよい。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
【国際調査報告】