(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ガスの高純度送達を有する吸着剤型貯蔵容器および送達容器、ならびに関連する方法
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F17C11/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519438
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022044731
(87)【国際公開番号】W WO2023055691
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バイル, オレグ
(72)【発明者】
【氏名】デプレ, ジョー アール.
(72)【発明者】
【氏名】スターム, エド エー.
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB16
3E172BA01
3E172BC06
3E172BC08
3E172EA02
3E172EB02
3E172FA04
3E172FA10
(57)【要約】
試薬ガスが熱分解炭素吸着粒子と吸着関係で保持されている貯蔵容器から高純度試薬ガスを貯蔵および選択的に分注するための貯蔵分注システムおよび関連する方法が説明される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着された試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムであって、前記システムが、
ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を含む内部を含む高圧貯蔵容器と、
前記吸着剤粒子に吸着された試薬ガスと
を含み、
前記内部の圧力が1500トール未満である、貯蔵システム。
【請求項2】
前記吸着媒体が、1~10ミリメートルの範囲内の平均粒径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項3】
前記吸着媒体が、20オングストローム未満の平均孔径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項1または2に記載の貯蔵システム。
【請求項4】
前記吸着剤が、0.55~0.95グラム/立方センチメートルの範囲内のかさ密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項5】
前記吸着剤が、0.85~1.15グラム/立方センチメートルの範囲内の粒子密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項6】
前記貯蔵システムが、前記容器から前記試薬ガスを分注することができ、前記分注された試薬ガスがH
2、CO、CO
2、N
2、CH
4、およびH
2O、ならびにそれらの組み合わせから選択される不純物の総量を150ppm(体積基準、ppmv)未満含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項7】
前記貯蔵容器が、少なくとも2リットルの内部容積を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項8】
前記吸着された試薬ガスが、メタン(CH
4)、アセチレン(C
2H
2)、アンモニア(NH
3)、シラン(SiH
4)、ゲルマン(GeH
4)、ジホスフェン(P
2H
4)、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)、ジボラン(B
2H
6)、スチビン(SbH
3)、硫化水素(H
2S)、セレン化水素(H
2Se)、テルル化水素(H
2Te)、ジゲルマン(Ge
2H
6)、ジアセチレン(C
4H
2)、四フッ化ゲルマニウム(GeF
4)、五フッ化リン(PF
5)、五フッ化ヒ素(AsF
5)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、五フッ化アンチモン(SbF
5)、三フッ化ホウ素(BF
3)、四フッ化ホウ素(B
2F
4)、およびこれらの試薬ガスのすべての同位体を含む、請求項7に記載の貯蔵システム。
【請求項9】
前記吸着された試薬ガスがゲルマンである、請求項7に記載の貯蔵システム。
【請求項10】
前記容器が、少なくとも90%の濃度で前記試薬ガスを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項11】
前記貯蔵容器が、760トール以下の内圧を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項12】
前記貯蔵容器が、760トール以下の内圧を有し、
前記貯蔵容器が、前記試薬ガスを少なくとも90%の濃度で含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項13】
前記貯蔵容器が、
1nm未満の粗さ(Ra)を有する研磨された側壁表面と、
溶接されていない側壁および底部と、
少なくとも10リットルの容積と
を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の貯蔵システムから吸着された試薬ガスを分注する方法であって、前記吸着された試薬ガスが、メタン(CH
4)、アセチレン(C
2H
2)、アンモニア(NH
3)、シラン(SiH
4)、ゲルマン(GeH
4)、ジホスフェン(P
2H
4)、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)、ジボラン(B
2H
6)、スチビン(SbH
3)、硫化水素(H
2S)、セレン化水素(H
2Se)、テルル化水素(H
2Te)、ジゲルマン(Ge
2H
6)、ジアセチレン(C
4H
2)、四フッ化ゲルマニウム(GeF
4)、五フッ化リン(PF
5)、五フッ化ヒ素(AsF
5)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、五フッ化アンチモン(SbF
5)、三フッ化ホウ素(BF
3)、四フッ化ホウ素(B
2F
4)、およびこれらの試薬ガスのすべての同位体を含む、方法。
【請求項15】
前記吸着された試薬ガスがゲルマンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の貯蔵システムから吸着された試薬ガスを分注する方法。
【請求項16】
前記容器から前記ゲルマンを少なくとも90%の濃度で分注することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記容器から前記試薬ガスを分注することを含み、前記分注された試薬ガスがH
2、CO、CO
2、N
2、CH
4、およびH
2O、ならびにそれらの組み合わせから選択される不純物の総量を150ppm(体積基準、ppmv)未満含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の貯蔵システムから吸着された試薬ガスを分注する方法。
【請求項18】
吸着された試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムであって、前記システムが、
1nm未満の粗さ(Ra)を有する研磨された側壁表面、
溶接されていない側壁および底部、ならびに
少なくとも10リットルの容積
を備える、高圧貯蔵容器と、
ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子と
を含む、システム。
【請求項19】
前記吸着媒体が、1~10ミリメートルの範囲内の平均粒径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項18に記載の貯蔵システム。
【請求項20】
前記吸着媒体が、20オングストローム未満の孔径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項18または19に記載の貯蔵システム。
【請求項21】
前記吸着剤が、0.55~0.95グラム/立方センチメートルの範囲内のかさ密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項22】
前記吸着剤が、0.85~1.15グラム/立方センチメートルの範囲内の粒子密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の貯蔵システム。
【請求項23】
炭素吸着剤粒子を調製する方法であって、前記方法が、
合成ポリマー炭素前駆体樹脂粒子を形成することと、
不活性雰囲気中で前記前駆体樹脂粒子を熱分解して、ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を製造することと、
前記熱分解炭素吸着剤粒子を高圧貯蔵容器に配置しつつ、前記粒子および前記容器を不活性ガス雰囲気中に収容することと、
前記容器内の前記熱分解炭素吸着剤粒子を高温および減圧に曝して、前記粒子および前記容器に吸着された大気汚染物質を除去することと、
前記容器に前記試薬ガスを充填することと
を含む、方法。
【請求項24】
前記容器が、
1nm未満の粗さ(Ra)を有する研磨された側壁表面と、
溶接されていない側壁および底部と、
少なくとも10リットルの容積と
を備える高圧貯蔵容器である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記吸着媒体が、1~10ミリメートルの範囲内の平均粒径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記吸着媒体が、20オングストローム未満の平均孔径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記吸着剤が、0.55~0.95グラム/立方センチメートルの範囲内のかさ密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記吸着剤が、0.85~1.15グラム/立方センチメートルの範囲内の粒子密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の説明は、試薬ガスが固体吸着媒体に吸着関係で保持されている貯蔵容器から高純度試薬ガスを貯蔵および選択的に分注するための貯蔵分注システムおよび関連する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原料ガス(「試薬ガス」と呼ばれることもある)は、様々な産業および産業用途で使用されている。産業用途のいくつかの例には、とりわけ、イオン注入、エピタキシャル成長、プラズマエッチング、反応性イオンエッチング、メタライゼーション、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、プラズマ堆積、フォトリソグラフィー、洗浄、およびドーピングなど、半導体材料またはマイクロ電子デバイスの処理に使用されるものが含まれ、これらの使用は、とりわけ、半導体、マイクロ電子、光起電力、ならびにフラットパネルディスプレイデバイスおよび製品の製造方法に含まれる。
【0003】
半導体材料およびデバイスの製造ならびに様々な他の工業プロセスおよび用途において、高純度の試薬ガスの信頼性の高い供給源が継続的に必要とされている。試薬ガスの例としては、とりわけ、シラン、ゲルマン(GeH4)、アンモニア、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、ジボラン、スチビン、硫化水素、セレン化水素、テルル化水素、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、フッ素)化合物が挙げられる。これらのガスの多くは、試薬ガスの毒性に起因する、試薬ガスの固有の不安定性に起因する、またはその両方に起因する、高レベルの注意および多くの安全予防措置を伴って貯蔵、輸送、取り扱い、および使用されなければならない。
【0004】
試薬ガスの安全な貯蔵を高めるための1つの有用な技術は、固体吸着剤材料に吸着された状態の試薬ガスを貯蔵することである。いくつかの貯蔵システム(本明細書では「吸着剤ベースの」貯蔵システムと呼ばれる)は、貯蔵容器内の固体吸着剤材料に吸着されている試薬ガスを収容する貯蔵容器を含む。吸着された試薬ガスは、コンテナ内に凝縮形態またはガス状形態でも存在する試薬ガスの量と平衡状態で容器内に収容され得る。有利には、容器は、試薬ガスを高度に濃縮された形態で収容することができ、すなわち、容器は、貯蔵された試薬ガスと共に含まれる場合もある他のタイプの安定化ガスまたは希釈ガスなしで、100%の試薬ガスを収容し得る。具体的には、高圧コンテナ内に試薬ガスを貯蔵する、吸着剤を含まない高圧貯蔵システムでは、しばしばまたは典型的には、貯蔵された試薬ガスを水素、ヘリウム、窒素などの不活性ガスと組み合わせて、試薬ガスを希釈する。希釈されたガスは、より安定しており、爆発または火災を起こしにくく、有毒性が低い。
【0005】
吸着剤型貯蔵システムの別の利点は、容器が破損した場合に試薬ガスが容器内部から逃げる傾向がないように、有用に大量の試薬ガスを低圧、例えば準大気圧で容器内に貯蔵する能力である。
【0006】
商業的使用のために、原料ガスは、高純度の形態で送達されなければならず、製造システムにおけるガスの効率的な使用のためにガスの信頼できる供給を提供する包装形態で利用可能でなければならない。使用のためのシステムを調製するときに吸着剤ベースの貯蔵システム内に含まれる不純物の量を一般に低減するための様々な処理ステップおよび技術が記載されている。国際公開第2017/079550号を参照されたい。
【0007】
現在の市販の吸着剤型貯蔵システムは、容器からの選択的送達のために多くの種類の高純度試薬ガスを貯蔵、輸送、取り扱い、および送達するために使用されている。これらの貯蔵システムは、窒素(N2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、および水蒸気(H2O)の総量として測定される、1万ppmv(体積基準の百万分率)未満の量の大気不純物(窒素(N2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、水蒸気(H2O))などの比較的低レベルの不純物を含む試薬ガスを送達することができる。いくつかの試薬ガスでは、これらの大気不純物の総量は5,000ppmvと低くてもよく、他の試薬ガスでは、その量は500ppmvと低くてもよい。しかし、ますます低レベルの不純物を含有する試薬ガスを送達する、改善された吸着剤型貯蔵システムが依然として必要とされている。
【0008】
吸着剤型貯蔵および送達システムを調製する現在および以前の市販の方法に基づいて、これらの製品の供給業者は、500ppmvをはるかに下回る全大気不純物のレベルを含む、著しく低いレベルの大気不純物を達成する市販の貯蔵システムを処理および組み立てる方法および技術を開発していない(「全大気不純物」は、窒素(N2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、および水蒸気(H2O)の総量(合計)として測定される)。さらに、市販製品は、大量に貯蔵された特定の種類の試薬ガス(例えば、ゲルマン、ホスフィン、アルシン)を濃縮形態で(非希釈で、体積基準で90または99%を超える送達濃度で)大量(体積基準)の試薬ガス、またはより高い流量の試薬ガスを使用する商業プロセスに供給するための、大容量(例えば、10または20リットルを超える)吸着剤型貯蔵システムを含まない。
【発明の概要】
【0009】
現在、多くの重要な試薬ガスが、準大気圧で試薬ガスを収容する吸着剤型貯蔵システムで市販されているが、小容量のコンテナである。例示的な製品は、モノリシック(非粒子)ブロック形態の吸着剤を含有する低圧容器を含み、この容器は比較的小さい総内容積を有する。「低圧」容器は、加圧形態のガスを収容するために使用されるようには設計されておらず、溶接シリンダ構造を必要とし、特別な運輸省(DOT)許可がある場合にのみ使用されなければならない。容器内部は、10リットル未満、例えば8リットル未満の容積を有する。これらの製品は小容量のフォーマットを有し、送達される試薬ガスのより高い使用率またはより高い流量を必要とするために試薬ガスのより大きな供給量(より大きな貯蔵容量)を必要とする用途にはあまり適していない。
【0010】
増加した容積を有し、比較的高い流量かつ非希釈高濃縮形態で(例えば、不活性希釈ガスと組み合わされず)、より大量の試薬ガスを送達することができ、試薬ガスが、試薬ガスの商業的な貯蔵、輸送および使用を可能にする高純度および安全性の特徴も有する、吸着された試薬ガスを貯蔵および送達システムが必要とされている。
【0011】
一態様において、本発明は、吸着された試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムに関する。システムは、ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を含む内部を含む高圧貯蔵容器と、吸着剤粒子に吸着された試薬ガスとを含み、内部の圧力は1500トール未満である。
【0012】
別の態様において、本発明は、吸着された試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムに関する。このシステムは、1ナノメートル未満の粗さ(Ra)を有する研磨された側壁表面、溶接されていない側壁および底部、ならびに少なくとも10リットルの容積を備える高圧貯蔵容器と、容器に含まれるナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子とを含む。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、高圧容器内で炭素吸着粒子を調製する方法に関する。本方法は、合成ポリマー炭素前駆体樹脂粒子を形成することと、不活性雰囲気中で前駆体樹脂粒子を熱分解して、ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を製造することと、熱分解炭素吸着剤粒子を高圧貯蔵容器に配置しつつ、粒子および容器を不活性ガス雰囲気中に収容することと、容器内の熱分解炭素吸着剤粒子を高温および減圧に曝すことと、容器に試薬ガスを充填することとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、高圧容器から試薬ガスを選択的に分注するために、高圧容器内に収容されたナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子上に試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムに関する。使用時に、高圧容器は、比較的低い圧力で、吸着剤、吸着された試薬ガス、および低レベルの不純物を収容する。容器は、比較的低圧であっても貯蔵された試薬ガスを大量に収容するために、比較的大きな容積を有する。大容量容器は、試薬ガスを使用するプロセスまたは装置に、非希釈形態の試薬ガスの大容量および大容量流量を分注することができる。
【0015】
有利には、吸着された試薬ガスを貯蔵および送達するためにナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子と共に使用される高圧大容量貯蔵容器は、試薬ガスが貯蔵容器内に高圧で貯蔵されていなくても、高い貯蔵容量および高い送達容量を可能にする。記載された例示的なシステムに基づいて、高純度炭素源(例えば、高純度合成炭化水素樹脂)の熱分解によって調製される高純度ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を使用することによって、また、調製および組み立て中に、不純物への曝露を制御または最小化し、吸着された試薬ガスによる炭素吸着剤の表面化学的活性を制御または最小化する、吸着剤粒子、容器および試薬ガスを処理する方法を使用することによって、貯蔵された試薬ガスを貯蔵後に高純度レベルで容器から送達することができる。
【0016】
このシステムは、様々な試薬ガスのいずれかを容器内の吸着剤上に貯蔵し、吸着剤から選択的に脱着し、流体分注条件下で容器から分注(送達)することを可能にする貯蔵および分注システムとして有用である。例示的なシステムは、吸着剤、試薬ガス、および容器と、大気不純物などの不純物との接触を低減もしくは回避する材料および処理ステップ、またはそのような不純物をシステムから除去するステップから調製される。好ましいシステムでは、分注されるときに試薬ガス中に存在することができる不純物のレベルは非常に低い。好ましいシステムは、送達された試薬ガスが比較的少量の大気不純物、例えば、個別に窒素(N2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、および水蒸気(H2O)のうちの1以上の少量、および一緒に測定されるこれらの不純物の低い総量(合計)を含有する状態で、容器から試薬ガスを個別に分注することができる。
【0017】
有用な貯蔵容器は、高圧で試薬ガスを収容するように設計された容器であり得る。一般に、本明細書で「高圧容器」または「高圧コンテナ」または「高圧シリンダ」と呼ばれる容器は、高圧、例えば500ポンド/平方インチ(psi)を超える圧力で、ガス状内容物、または液体とガス状内容物との組み合わせを貯蔵および輸送するように設計および定格された貯蔵容器である。記載されているようなシステムまたは方法において「高圧容器」を使用する理由は、大きな(大容量)貯蔵容器に大量の試薬ガスを貯蔵および輸送するときの安全レベルを高めるためである。容器は、少なくとも500psiなどの高圧のガスを収容するために使用するように設計されているが、システムおよび方法は、高圧であるとは見なされず大気圧または準大気圧と同じくらい低くてもよい圧力で試薬ガスを貯蔵するために使用されてもよい。
【0018】
高圧容器の例には、高圧容器として定義され、米国運輸省(DOT)、労働安全衛生協会(OSHA)、圧縮ガス協会(CGA)、またはこれらのうちの2つ以上によって輸送における使用に関して規制されている容器が含まれる。例えば、DOT仕様3E、3AAおよび3AAXを参照されたい。本明細書に従って有用である高圧容器は、望ましくは、少なくとも150psi(ゲージ)または500psi(ゲージ)の「サービス容量」を有するDOT3E、DOT3AAまたはDOT3AAXの要件を満たすことができる(49C.F.R.section178.37「Specification 3AA and 3AAX seamless steel cylinders」を参照)。しかし、本明細書に従って使用するための容器は、記載されているように容器が有用であるためのそれらの要件のすべてを必ずしも満たす必要はなく、すべてのDOT要件を満たさない高圧容器も、本明細書に従って使用するのに依然として有効であり得る。
【0019】
高圧容器は、典型的には金属シリンダであり、円筒形の側壁と、平坦またはドーム状であり得る底部と、側壁の上部をカラーに接続する、徐々に直径が小さくなる上側湾曲肩部とを含み、カラーは、シリンダ内の内部空間を囲むように弁を受け入れるように適合されたシリンダの上部開口部を含む。典型的な高圧シリンダは、継ぎ目のない金属シリンダであり、これは、単一の連続的な(「継ぎ目のない」)金属片で作られた側壁および底部を含む金属シリンダを意味し、2つの別々に準備された金属片を継ぎ目またはラップで(例えば溶接、ろう付けなどの方法によって)接続することを含まないステップによって製造される。
【0020】
例となる高圧容器は、既知の方法によって準備され、いくつかの例示的な方法は、「プレート延伸法」、「ブローボトル法」、および「ホットビレットピアス法」と呼ばれ、その各々は、継ぎ目のない円筒構造を有する高強度金属シリンダ、特にシリンダ底部に接続するシリンダ側壁の位置に継ぎ目(例えば、溶接部)を含まないシリンダを形成する。完成した容器は、別々に準備された部品の2つの縁部間の接触によって形成される継ぎ目を含まないため、容器を準備する方法は、2つの部品をそれらの縁部で溶接またはろう付けするステップによって2つの部品を2つの部品の縁部に沿って互いに接合するステップを必要としない。
【0021】
本明細書に記載の使用のために、好ましくは、他の吸着剤型貯蔵システムと比較して、非常に高い純度で容器から分注される高い貯蔵容積(試薬ガスの高い貯蔵容量)および高い流量の試薬ガスを提供するために、記載のシステムの貯蔵容器は、典型的な低圧吸着剤型貯蔵システムの容積よりも大きいサイズの内部容積を有することができる。
【0022】
多くの吸着剤型貯蔵システムは、8リットル未満、例えば5リットル未満の容積を有する非高圧(または「低圧」)貯蔵容器を使用する。このような低圧(小容量)吸着剤型貯蔵システム容器の例は、モノリシック形態の吸着剤を含有し、例えば、容器は、1または数個のモノリシックブロックの吸着剤を含有する。これらのシステムは、容器の部品を互いに溶接して容器構造内に溶接継ぎ目を形成することによって準備された「低圧」金属コンテナ内に低い圧力(通常は大気圧未満)でモノリシック吸着剤に吸着された試薬ガスを貯蔵する。モノリシック吸着剤は従来の非溶接容器の上部開口部を通ることができないため、溶接された容器はモノリシック吸着剤の使用に適合する。
【0023】
対照的に、本明細書に記載の例示的な高圧容器は、溶接構造を含まず(2つの金属片を溶接または接合するステップによって形成される継ぎ目を含まず)、少なくとも2リットル、少なくとも5リットルまたは少なくとも10リットル、例えば20、30、40または50リットル以上の内部容積を有することができる。
【0024】
上述のように吸着剤および試薬ガスを収容する容器内の不純物の存在を低減する方法としても好ましいものとして、高圧容器(例えば、鋼製シームレス容器)は、研磨されていない内面と比較して、より小さい表面積および吸着された不純物を保持する可能性が低い研磨された内面を有することができる。記載されているような容器の有用なまたは好ましい内部は、容器の内部表面積の内部表面の大部分、好ましくはすべて、または実質的にすべてにわたって1ミクロン未満の表面粗さ(Ra)を有することができる。
【0025】
高圧容器は、典型的には、鋼またはアルミニウムなどの高強度金属で作られ、例としては、高強度クロム-モリブデン鋼および高強度炭素鋼が挙げられる。
【0026】
高圧容器は、典型的には、非高圧使用に格付けされた容器(「低圧コンテナ」)よりも大きい厚さを有する側壁および底部で作られる。高圧容器の側壁厚さの例は、少なくとも5ミリメートルであってもよい。
【0027】
したがって、記載される好ましいシステムは、試薬ガスを貯蔵および輸送するための吸着剤を収容する高圧容器を含む。吸着剤は、炭素源をペレット化および熱分解(任意の有用なステップによって、任意の順序で)して、ペレット化された炭素吸着剤を製造することによって形成された、高純度熱分解炭素のペレット化形態である。炭素源は、ポリアクリロニトリル(PAN)、スルホン化ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノール、ポリフルフリルアルコール(PFA)などの合成炭化水素樹脂、またはデンプン、コールタールピッチ、微結晶性セルロース、もしくはマルトデキストリンなどの天然に存在する炭化水素源であってもよい。このタイプの吸着剤は、本明細書では「熱分解炭素吸着剤粒子」、「ペレット化炭素吸着剤」、または時には単に「吸着剤」と略して呼ばれることがある。好ましい炭素源は、塩素(Cl2)汚染の量が少ない合成炭化水素樹脂であり得る。有用または好ましい合成炭化水素樹脂(例えば、PVDC)は、XRF(X線蛍光)またはPIXE(プロトン励起X線放出)によって120ppm(質量)未満のレベルなど、50ppm(質量)未満の残留塩素レベルの不純物として塩素を含有し得る。
【0028】
炭素源から熱分解炭素を形成する例示的な方法は、米国特許第6,132,492号およびPCT特許公開WO2017/079550に記載されており、これらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0029】
本明細書のシステムまたは方法で使用される吸着剤は、非モノリシック(すなわち、ペレット化された、または「ペレット」または「粒子」)熱分解炭素吸着剤である。吸着剤は、炭素源を熱分解するステップによって調製されるので、「熱分解」炭素吸着剤と呼ばれる。
【0030】
吸着剤は非モノリシックであり、これは、吸着剤が「粒子」(別名「ペレット」)の形態であることを意味し、これらの用語は吸着剤材料の技術分野で知られており使用されている。これと一致して、「モノリシック」吸着剤は、容器内に収容された非常に大きな数(「多数」)の小さな(例えば、センチメートルまたはミリメートルスケール)粒子またはペレットの集合体とは対照的に、貯蔵容器内に収容された1~数個の比較的大きな寸法のブロック型ピースの形態の吸着剤材料を指す。モノリシック吸着剤は、ブロック、レンガ、3次元ディスク(「パック」)の形態であり得、これらは、一般にセンチメートル以上のスケールの寸法を有し、サイズおよび形状のために、典型的な高圧の継ぎ目のない非溶接貯蔵容器の上部開口部を通過するには大きすぎる特徴を有する容器、ブールなどの中に積み重ねられる場合がある。
【0031】
比較すると、ペレット化された吸着剤は、ビーズ、粒子、顆粒、ペレットなどと呼ばれる形状を有する多数の個々の別個の吸着剤片の形態であると理解され、典型的な寸法(例えば、平均直径での粒径)は、1センチメートル未満、例えば0.5センチメートル未満のスケールである。
【0032】
多数の吸着剤粒子を含む容器では、容器内部の空間は、粒子と、粒子間に位置し、粒子の体積によって占められていない内部の一部(体積)を指す「空隙空間」とを含む(空隙空間は、容器に含まれる粒子の上の、容器の上部空間の量を指す容器の「ヘッドスペース」を含まない)。容器内の空隙空間は、容器内に含まれる粒子間に存在し、かつ粒子の表面間に相互接続された経路のネットワークを形成する空間であり、その中にガスが存在し得るかまたは流れ得る。吸着剤粒子を収容する容器内の空隙空間の量は、吸着剤粒子の寸法、形状、および充填密度に応じて変化する。
【0033】
モノリシック吸着剤が高圧容器の上部開口部を通過しないのに対して、多数の粒子またはペレットの集合体形態である非モノリシック吸着剤粒子は、(弁が上部開口部に固定される前に)粒子が高圧容器の上部開口部を容易に通過することができるため、高圧容器での使用に特に効果的であり得る。粒子の集合体は、効果的に流体的であり得、粒子を導管(パイプまたはストロー)に注ぐ、吹き込む、流す、強制的に流すことができ、あるいは吸着剤の個々の粒子の寸法よりも実質的に大きい開口サイズ(直径)を有する高圧貯蔵容器の上部開口部を通過させることができる。
【0034】
熱分解炭素吸着剤粒子は、試薬ガスを貯蔵および送達する(吸着および選択的に脱着する)ための吸着剤として使用するための有用または有利な性能を提供する特性を示すように形成、取り扱い、および処理することができる。一般に、これらの特性は、高純度(非常に低レベルの不純物)を含むと共に、吸着剤が、高圧容器の上部開口部を通して容器内部に容易に添加されることを可能にし、粒子間の空隙空間(空隙体積)が許容できるほど小さく、比較的高い密度(例えば、かさ密度)で容器内に収容されることを可能し、また選択的脱着によって容器からの送達のために脱着され得る大量の試薬ガスを(貯蔵容器内の準大気圧などの低圧であっても)吸着することを可能にする、複合効果を有する物理的特性を有する。
【0035】
記載されたシステムおよび方法では、高圧容器の高圧定格によって提供される追加の安全度を伴って、大量(体積基準)の試薬ガスを収容するために大容量の高圧容器が使用される。高純度のペレット化された熱分解炭素吸着剤と組み合わせて比較的大きな容積の高圧容器を使用すると、記載された方法およびシステムは、大量の試薬ガスを貯蔵および輸送することができ(すなわち、高い貯蔵容量を示す)、大容量の非常に高純度(送達時)の試薬ガスを高流量で送達することができる。
【0036】
熱分解炭素吸着剤粒子の1つの有用な物理的特性として、吸着剤は、貯蔵容器の上部開口部を容易に通過するサイズを有し、容器内に高密度(粒子間の空隙を含むように測定して高い充填密度)で、例えば、粒子間に存在する空隙空間が望ましくは少ない粒子として形成することができる。
【0037】
吸着剤の有用な粒子は、0.5~20ミリメートル、例えば1~15または1~10ミリメートル(mm)の範囲内の平均サイズを有することができる。吸着剤粒子の集合体の平均粒径は、粒子の集合体からの粒子のランダムな選択、およびマイクロメーターの使用によるサイズ(例えば、直径)の測定を含む、標準的な技術によって測定することができる。
【0038】
有用または好ましい粒子はまた、平均サイズと組み合わせて、比較的高い充填密度および比較的低い空隙空間を生成する形状を有することができる。例示的な形状は、丸みを帯びた形状であり、実質的に丸みを帯びた、実質的に球形、もしくは円筒形の粒子、または他の高密度の充填物もしくは「空間充填」の形態もしくは形状、例えば空間充填多面体を含む。粒子が高圧コンテナ内に収容される場合の吸着剤粒子間の好ましい量の空隙空間(容器内のヘッドスペースを含まない)の例は、50%未満、例えば40、30、または25%未満であり得る。
【0039】
有用または好ましい熱分解炭素吸着剤粒子は、貯蔵容器内に含まれる場合、少なくとも0.55または0.60グラム/立方センチメートル、例えば少なくとも0.65グラム/立方センチメートル、例えば0.60~0.75グラム/立方センチメートル、0.6~0.85グラム/立方センチメートル、0.65~0.95グラム/立方センチメートル、または0.60~0.95グラム/立方センチメートルの範囲内のかさ密度を有することができる(「かさ密度」または「充填密度」は、限定された体積内の粒子のサンプル体積の密度(体積当たりの質量)を含むように測定された密度であり、体積は粒子間の空隙空間を含む)。この密度を達成するために、粒子を一緒に沈降させるか、またはコンテナの底部に対して軽く圧縮もしくは圧密することができ、例えば、粒子の上から粒子に圧力をかけて叩く(「tapped down」)、またはコンテナを固体表面上に落下させるかまたは打つことによって容器の底部に対して粒子の減速を引き起こすことによって、または別の技術によって、減速する粒子の重量(力)が容器の底部に向かって粒子を圧縮するようにすることができる。
【0040】
熱分解炭素吸着剤粒子はまた、比較的高い粒子密度を有する粒子として形成することができ、これは単一の粒子の密度を意味し、粒子間の空隙空間を含まない(かさ密度測定と同様)。例示的な吸着剤粒子の粒子密度は、少なくとも0.8グラム/立方センチメートル、好ましくは少なくとも1.0グラム/立方センチメートルまたは少なくとも1.1グラム/立方センチメートルとすることができ、例えば、0.85~1.15グラム/立方センチメートルまたは1.05~1.15グラム/立方センチメートルの範囲である。
【0041】
熱分解炭素吸着剤粒子は、粒子の固体熱分解炭素間に延びる細孔の相互接続されたネットワークを含む、多孔質の粒子として形成することができる。細孔は、任意の有用な細孔径を有し、これは、吸着剤粒子を収容する容器の貯蔵容量、および熱分解炭素吸着剤上に吸着状態で貯蔵され、次いで脱着され、試薬ガスとして送達される試薬ガスの純度に関して、吸着剤の所望の性能を可能にする任意の細孔径を意味する。
【0042】
炭素吸着剤材料の細孔径は、粒子の平均細孔径に基づいて一般的な範囲に分類される。50ナノメートル(nm)を超える平均孔径を有する粒子は、典型的には、マクロ多孔質と呼ばれる。2~50ナノメートル(nm)の範囲内の平均孔径を有する粒子は、典型的にはメソ多孔質粒子と呼ばれる。2ナノメートル未満の平均孔径を有する粒子は、典型的にはミクロ多孔質と呼ばれる。これらの用語は、IUPAC用語によって定義される。
【0043】
「ナノ多孔質」という用語は、吸着剤材料の技術分野において標準的な意味を有さない。本明細書では、「ナノ多孔質」という用語は、5ナノメートル(50オングストローム)未満の平均孔径を有する粒子を説明するために使用される。有用または好ましい炭素吸着剤粒子は「ナノ多孔質」であり得、これは、粒子が50オングストローム未満、または40未満、30未満、20オングストローム未満、または10オングストローム未満の平均孔径を有することを意味する。特に好ましい吸着剤粒子は、10または20オングストローム未満、例えば3~9オングストローム、3~15オングストローム、5~8オングストローム、または5~12オングストロームの範囲内の平均孔径を有することができる。細孔径は、プローブ分子ポロシメトリーなどの既知の技術によって測定することができ、最適な細孔径は、吸着される試薬ガスおよび送達中の所望の脱着速度の関数とすることができる。
【0044】
吸着剤粒子の別の特性は、多孔性または「細孔容積」であり、これは、ペレットの全体積に対する細孔によって占められる単一の吸着剤ペレットの量(吸着剤の質量当たりの百分率または容積単位)である。例示的な吸着剤粒子は、少なくとも0.35立方センチメートル/グラム、好ましくは少なくとも0.40立方センチメートル/グラム、最も好ましくは0.50立方センチメートル/グラムを超える多孔度を有することができる。
【0045】
熱分解炭素吸着剤粒子の特定の物理的特徴、例えば、平均細孔径、細孔容積(「多孔度」)、および細孔径分布は、熱分解ステップで粒子を調製するために使用されるプロセスまたは材料の特徴によって影響または制御され得る。これらの特徴には、粒子を調製するために使用される炭素源、溶媒または一過性細孔形成剤の存在、および炭素を熱分解して熱分解炭素粒子を形成するステップ中に使用される条件、または蒸気もしくはCO2による物理的酸化活性化などの熱分解後の修飾技術の使用が含まれる。
【0046】
有用な熱分解方法は、600℃を超える温度、無酸素雰囲気で数時間行うことができる。熱分解は、不活性条件下、高温でポリマー炭素源の分解を引き起こすプロセスである。不活性条件は、酸化的燃焼のリスクを最小限に抑えるために、アルゴンもしくは窒素などの希ガス、または不活性ガスと還元ガスとの組み合わせによる、真空または不活性ガスの被覆を含むことができる。不活性ガスカバーは、炉の加圧または炉の連続パージ流として送達することができる。ポリマー源材料を高純度炭素に完全に分解するためには、高温で数時間が必要な場合がある。得られる炭素内に所望の細孔径分布をもたらす原料ポリマーの分解を制御するために、分解がいつ発生し、ガス種が発生するかを理解し、分解速度およびガス発生を制御することが必要である。ポリマー源から活性炭素を調製する技術分野で実施されているものは、熱分解プロセスに関与するこれらの因子を理解している。所望の炭素多孔性特性を達成することは、反復プロセスであってもよく、異なる炉またはシステムで異なっていてもよい。
【0047】
有用または好ましい炭素吸着剤は、記載されているようなシステムの吸着剤として容器に入れられる前に実質的に純粋であるタイプおよび特性のものであり得る。1つの尺度として、有効な炭素吸着剤粒子の純度は、炭素の灰分に関して特徴付けられ得る。有用なまたは好ましい炭素吸着剤は、標準試験、例えば、ASTM D2866-83またはASTM D2866.99によって測定されるように、0.01重量パーセント以下の灰分を含有し得る。炭素純度は、プロトン励起X線放出技術(PIXE)によって測定して、好ましくは少なくとも99.99%であり得る。
【0048】
非常に高レベルの純度を有する熱分解炭素吸着剤粒子を含む上述のような貯蔵システムを調製し組み立てるために、貯蔵容器の調製中に、吸着剤、容器、および試薬ガスが大気ガスに曝されたり、大気ガスを汚染したりするのを防ぐために、様々なステップまたは技術が使用される。有用なステップは不純物の量を減少させ、不純物は、容器および吸着剤を調製するときに容器および吸着剤内に存在し、試薬ガスを容器および吸着剤に添加するときに試薬ガス内に存在し、最終的には貯蔵期間後に試薬ガスが貯蔵容器から送達されるときに試薬ガス内に存在する。
【0049】
例示的なプロセスは、熱分解炭素から作製された高純度のペレット化されたナノ多孔質吸着剤の粒子(「ペレット」と呼ばれることもある)を調製することと、容器の開口部に吸着剤粒子を通過させることによって、熱分解炭素吸着剤粒子を高圧貯蔵容器の内部に配置することと、容器内部の吸着剤を高温および減圧に曝して、調製、取り扱い、および容器内への配置中に多孔質吸着剤粒子上または多孔質吸着剤粒子内に吸着された可能性がある微量の大気不純物を脱着および除去することとを含む。
【0050】
熱分解炭素吸着剤粒子の様々な他の任意選択の処理は、試薬ガスが貯蔵後に容器から排出されるときに容器内および試薬内に存在する大気不純物の量を減少させるために、試薬ガスを吸着剤が充填されたコンテナに添加する前にその場で(容器内で)行われてもよい。
【0051】
例えば、有用な任意選択のステップは、貯蔵される特定の試薬ガスと反応し得る活性表面部位の熱分解炭素吸着剤粒子を化学的に不動態化することであり得る。そのような処理の詳細は、使用される特定の吸着剤、ならびに容器および吸着剤から吸着、貯蔵、輸送、および分注される試薬ガスの特定の種類に依存する。そのような処理は、ルイス酸または塩基部位を中和するための物理的または化学的手段を含み得る。
【0052】
さらに一般的には、容器内部の吸着剤を高温および減圧に曝した後、または吸着剤含有容器の任意の追加のまたは代替のその場での処理後に、試薬ガスを容器内部に添加して、試薬ガスを吸着剤に吸着させ、貯蔵および容器からの選択的送達(排出)のために容器内に収容させるかまたはそれを可能にすることができる。試薬ガスは、超大気圧または準大気圧などの任意の圧力で容器内に添加および収容されてもよい。安全性を高めるために、試薬ガスは、5、3、または2気圧以下、または1気圧未満の圧力で収容することができる。
【0053】
試薬ガスは、容器内に有用な期間にわたって貯蔵することができ、使用のために容器から選択的に分注する(排出され、送達される)ことができ、分注された試薬ガスは、例えば、CO、CO2,N2,CH4,水素(H2),およびH2Oならびにそれらの組み合わせから選択される不純物の総量を150ppm(体積基準)未満含み、例えば、分注された試薬ガスは、50、25、15、または10ppmv未満であるこれらの不純物の総量を含むことができる。
【0054】
あるいは、またはさらに、排出される試薬ガスは、CO、CO2,N2,CH4,水素(H2),およびH2O、ならびにそれらの組み合わせから選択される個々の不純物の1以上のそれぞれを個別に少量含むことができる。例えば、分注された試薬ガスは、25、20、15、10、または5ppmv未満のこれらの不純物のいずれかを含んでもよい。代替的または追加的に、分注された試薬ガスは、それぞれ個別に測定された25、20、15、10、または5ppmv未満の2つ以上の異なる成分、例えば、個別に測定された25、20、15、10、または5ppmv未満のCO、CO2,N2,CH4,水素(H2),およびH2Oの2つ以上の組み合わせを含んでもよい。追加的または代替的に、有用または好ましい分注試薬ガスは、120ppm未満の塩素(Cl2)、好ましくは50ppm未満の塩素を含有することができる。
【0055】
記載されたシステムの具体例は、記載されたシステムに貯蔵されたゲルマン(GeH4)の安定性のレベルの増加であり、炭素吸着剤は、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などの高純度合成ポリマー樹脂に由来する。この種の炭素源に由来する吸着剤粒子は、ガス状ゲルマン分子を物理的に吸着し、吸着状態で未反応のゲルマンを吸着剤上に貯蔵することができ、貯蔵中のゲルマンの分解レベルが低い。ゲルマンは本質的に不安定である。加圧された金属シリンダ内に貯蔵されると、純粋な非安定化ゲルマンはある程度分解して不純物を生成し、ゲルマンがゲルマニウム金属および水素ガスに分解するにつれてシリンダ圧力を増加させる。この分解反応は自己触媒的であり得、おそらく危険なほどであり得る。化学的相互作用なしに適切な吸着剤(すなわち、炭素)の細孔内に吸着されると、ゲルマン分子は安定化され、壊滅的な分解、爆燃、または爆轟を防止することができる。他の低純度または高反応性の吸着剤では、貯蔵容器内に収容された吸着剤と接触している吸着されたゲルマンが変性して、貯蔵コンテナ内で水素ガスを形成する可能性があり、これは容器のヘッドスペースに集まり、貯蔵容器内のガス圧を増加させる。
【0056】
例示的なシステムでは、ゲルマンが塩化物(PVDC)などの高純度合成炭化水素樹脂由来の炭素吸着剤に室温(例えば、20~25℃)で高温(例えば、65℃)で貯蔵されると、容器内で生成される水素の量が十分に制御される。特定の例では、ゲルマンを2.2リットル容器内の高純度PVDC由来の炭素吸着剤に65℃で6時間貯蔵すると、容器のヘッドスペース中の水素の量は3%以下または2%以下増加し得る。
【0057】
従来、吸着剤型貯蔵システムに含まれる試薬ガスの純度は、貯蔵のために最初に容器に添加される試薬ガスの純度、すなわち容器内に貯蔵するために試薬ガスが貯蔵容器に装入される前の試薬ガスの純度に関して測定、監視、および説明されてきた。しかしながら、貯蔵容器、吸着剤、ならびにそれらの調製および組み立ての種類によっては、この純度の尺度は、輸送、取り扱いおよび貯蔵の後に容器から最終的に送達される試薬ガスの純度を表すものではない場合がある。
【0058】
熱分解炭素吸着剤粒子の調製方法および取り扱い方法は、熱分解炭素吸着剤粒子を含む吸着剤型貯蔵システム内に存在する不純物(特に、但し排他的ではないが、大気不純物)の量を、試薬ガスを吸着剤型貯蔵システムに供給するために使用されるシステムおよび機器において制御し、最終的に、吸着剤型貯蔵システム内に貯蔵され、そこから送達される試薬ガス中の不純物を低減するために有効である。記載される方法によれば、吸着剤含有容器に貯蔵された試薬ガスの純度は、試薬ガスが容器から送達(分注、排出)されるときに測定される場合に改善される。
【0059】
本明細書によれば、吸着剤型貯蔵システムの構成要素の調製、取り扱い、および組み立てに使用することができるステップおよび技術は、貯蔵システムの構成要素から大気不純物を除去するか、または窒素(N2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、および水蒸気(H2O)などの大気ガス(「大気不純物」)への貯蔵システムの構成要素(特に吸着剤)の曝露を低減または防止するように行われる。有用な技術は、貯蔵容器(吸着剤を含む)、貯蔵容器に試薬ガスを添加するためのシステム、またはその両方に存在するこれらの大気不純物の量を低減して、試薬ガスが貯蔵容器に貯蔵され、最終的に貯蔵容器から分注されるときに試薬ガス中に存在するこれらの大気不純物の量を望ましく低減することができる。
【0060】
貯蔵された試薬ガスの使用者は、貯蔵容器の構成要素(例えば、吸着剤または容器)の一部として貯蔵容器に導入され得る、または容器もしくは容器の構成要素の組み立て、充填、もしくは取り扱い中に導入され得る、より低レベルの大気不純物を含む、ますます高レベルの試薬ガスを必要とし続ける。さらにより具体的には、試薬ガスの特定の用途では、より高い総容積の試薬ガス、より高い流量の試薬ガス、またはその両方をプロセスに送達するために、単一の貯蔵容器内で貯蔵および輸送されるガスのより大きな容積が望まれる。特定の使用はまた、ガスが希釈されないこと、すなわち、安全性を向上させるために貯蔵中に試薬ガスに意図的に添加され混合される水素、ヘリウム、窒素などの不活性ガスまたは希釈ガスの添加量を含まないことを必要とする。多くの現在の処理方法に好ましいガスは、好ましくは、任意のタイプの不活性ガスまたは希釈ガスの非存在下で、高純度および高濃度で送達され得る、すなわち、80、90、95、99、または本質的に100%の試薬ガスとして、非常に低レベルの不純物で送達され得る。
【0061】
記載の貯蔵システムは、比較的大きな内部容積(例えば、少なくとも10リットル)を有し、容器の内部にナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を含む高圧容器を含む。熱分解炭素吸着剤粒子は、貯蔵容器に試薬ガスを収容し、貯蔵し、送達するのに有効である。試薬ガスは吸着剤に吸着され、容器内部のガスとして存在し、試薬ガスの一部は吸着剤に吸着され、別の部分は吸着部分と平衡状態にあるガス状形態、または凝縮およびガス状形態である。試薬ガスは、最初に、容器内の所望の初期貯蔵圧力に基づいて、吸着剤に対して所望の(例えば、最大)容量の試薬ガスまで容器に装入することができ、これは準大気圧(760トール未満)または超大気圧であってもよい(初期貯蔵圧力は、初期量の試薬ガスの平衡後の充填ステップの「使用圧力」または「目標圧力」と呼ばれる)。試薬ガスは、貯蔵のために吸着剤に吸着され、吸着された試薬ガスと平衡状態でガス状または凝縮形態で存在する。その後、容器内部の吸着剤および吸着された試薬ガスを分注条件に曝すことによって、使用のために容器からガスを選択的に送達(分注)することができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「分注条件」は、吸着剤を有する容器に保持された試薬ガスを脱着させるのに有効な1つ以上の条件を意味し、その結果、試薬ガスは、試薬ガスが吸着された吸着剤から分離され、その結果、分離された試薬ガスは、使用のために吸着剤および容器から分注される。有用な分注条件は、試薬ガスを脱着させて吸着剤から放出させる温度および圧力の条件、例えば、試薬ガスの熱媒介脱着を行うために吸着剤(および吸着剤を収容する容器)を加熱すること、試薬ガスの圧力媒介脱着を行うために吸着剤を減圧状態に曝すこと、これらの組み合わせ、ならびに他の有効条件を含み得る。
【0063】
容器の内部の圧力(初期「使用」圧力)は、約760トール(絶対)未満を意味する準大気圧であってもよく、超大気圧であってもよい。準大気圧貯蔵のために、容器の貯蔵中または試薬ガスを貯蔵および分注するための容器の使用中に、容器の内部の圧力は、760トール未満、例えば700,600,400,200,100、50、20トール未満、またはさらに低い圧力であってもよい。
【0064】
記載された容器および方法は、吸着部分と凝縮またはガス状部分との間の平衡状態で、記載されたように貯蔵され得る任意の試薬ガスを貯蔵、取り扱い、および送達するのに有用であり得る。説明したような高圧容器は、危険(例えば、爆発性またはその他の不安定)、有毒、有害、可燃性、発火性、または他の危険な比較的大量の試薬ガスを貯蔵するのに特に望ましい場合がある。記載された容器および方法が特に有用であり得る試薬ガスの実例としては、以下の非限定的な例が挙げられる:メタン(CH4)、アセチレン(C2H2)、アンモニア(NH3)、シラン(SiH4)、ゲルマン(GeH4)、ジホスフェン(P2H4)、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、ジボラン(B2H6)、スチビン(SbH3)、硫化水素(H2S)、セレン化水素(H2Se)、テルル化水素(H2Te)、ジゲルマン(Ge2H6)、ジアセチレン(C4H2)。これらの化合物のそれぞれについて、すべての同位体が企図される。
【0065】
本明細書によれば、試薬ガスの貯蔵および送達中に容器、吸着剤、および試薬ガス中に存在する大気不純物の量を低減するために、吸着剤に対して、容器に対して、または貯蔵システムの組み立て中に(容器に試薬ガスを充填するステップを含む)、1つ以上の様々なステップを実行することができる。
【0066】
容器内の試薬ガスの典型的な貯蔵期間の後、試薬ガスが容器内に貯蔵され、容器から送達されるにつれて、減少した量の大気不純物が試薬ガス中に存在する。吸着剤および試薬ガスが収容された容器を含む記載のシステムの典型的な貯蔵期間(周囲温度、25℃)は、数週間(例えば、1、2、6、または8週間)または数ヶ月(例えば、3、6、9、または12ヶ月)の期間であってもよく、その間およびその後、有用または好ましいシステムは、例えば代替の貯蔵システムと比較して、記載の比較的低レベルの大気不純物を含む試薬ガスを送達することができる。
【0067】
貯蔵システム内の不純物、特に吸着剤に含まれる不純物の存在を低減するための1つの技術として、熱分解炭素吸着剤粒子は、熱分解炭素吸着剤粒子に含まれる不純物の量を低減する熱分解ステップによって調製され得る。
【0068】
吸着剤粒子は、炭素源、例えば、高純度合成PVDCコポリマーまたはホモポリマーなどの合成ポリマー炭素前駆体樹脂の粒子を形成することによって形成される。
【0069】
粒子は、炭素源の粒子を適切な熱分解条件に曝すことによって、熱分解ステップによって処理される。所望または有用であるように、条件は、周囲の開始温度から所望の高温熱分解温度まで、例えば600℃~1000℃の温度範囲で温度を上昇させることを含む漸進的な様式で行われる。熱分解処理ステップの時間量は、所望に応じて、任意の有効時間、例えば1~7日の範囲内の総時間、またはそれより長い時間であってもよい。熱分解ステップを実施することができる雰囲気は、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、および水分を含まない不活性雰囲気とすることができる。例示的な雰囲気は、窒素、アルゴン、およびフォーミングガス(窒素中5%の水素の混合物)を含む。熱分解ステップの間、粒子は、石英もしくはグラファイトトレイまたは石英回転管などの非汚染収容構造によって支持されるか、またはその中に含まれてもよい。
【0070】
吸着剤粒子が熱分解によって形成された後、大気不純物のレベルが低減された貯蔵システムを調製する有用な方法は、吸着剤粒子が貯蔵容器に配置され(例えば、熱分解後)、試薬ガスが貯蔵容器の内部に添加される前およびそのときに、吸着剤が大気ガスに曝されるのを防ぐように熱分解炭素吸着剤粒子を取り扱うための、ステップおよび技術を含むことができる。
【0071】
熱分解炭素吸着剤粒子の大気不純物への曝露を低減または防止するための一例として、形成後および熱分解吸着剤を貯蔵容器に入れる前に、熱分解ステップの直後に熱分解吸着剤粒子を貯蔵容器に入れてもよい。熱分解された吸着剤は、乾燥した不活性(例えば、窒素またはアルゴン雰囲気)のパージされた封じ込めシステム内に直接充填することによって、周囲環境に曝されることなく、高圧貯蔵容器に直接包装または装填することができる。熱分解された吸着粒子は、制御された雰囲気(例えば乾燥窒素、場合により周囲環境を冷却して大気中の水分含有量を減少させる)内にある間に、周囲雰囲気(すなわち、空気)に曝されることなく、熱分解ステップ後短時間、例えば熱分解ステップ終了後30分以内に、高圧容器に装填されてもよい。吸着剤の吸着能力は高温で低下するため、吸着剤媒体は、40℃~65℃の高温で、場合により乾燥した低酸素(例えば、1、0.5、または0.1体積パーセント未満の酸素を含有する)環境(例えば、濃縮窒素)内で、短時間(例えば、30分、20分、または10分未満)で熱分解ステップから貯蔵容器に移され得る。
【0072】
このようなステップの単一の例によれば、合成ポリマー炭素前駆体樹脂から形成された粒子は、熱分解炉内で熱分解ステップに供されて、熱分解炭素吸着剤粒子を形成することができる。熱分解された吸着剤粒子は、排出場所で熱分解炉から排出され、排出場所で高圧貯蔵容器内に直接配置されてもよく、例えば、本明細書に記載の高圧ガス貯蔵分注容器の内部に送達されてもよい。これらのステップは、熱分解炉を収容するエンクロージャを含む製造設備で実行することができる。エンクロージャは、熱分解炉の排出場所に吸着剤充填ステーションをさらに収容(封入)することができ、吸着剤充填ステーションは、熱分解炭素吸着剤粒子を貯蔵容器内に直接配置するように構成される。熱分解炭素吸着剤粒子は、濃縮された不活性雰囲気下(例えば、少なくとも99または99.9%(体積基準)の窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノンおよびクリプトンのうちの1つ以上を含む)、または水素、硫化水素、もしくは他の適切なガス、または不活性ガスと還元ガスとの組み合わせの還元雰囲気下で容器に配置することができる。
【0073】
特に高圧貯蔵容器の材料に含まれるような貯蔵システム内の大気不純物の存在をさらに低減するために、容器内部は、容器の使用中に容器内部における大気不純物の存在を低減する材料および処理ステップを使用して調製することができる。貯蔵システムの容器または他の構成要素(例えば弁)は、貯蔵容器の内部への不純物の導入を低減するように選択または処理することができる金属、金属合金、被覆金属、プラスチック、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの材料で作製されてもよい。研磨された滑らかで低い表面粗さの表面、例えば容器壁は、容器内部に含まれる試薬ガスとの反応性が低く、その周囲からのガスまたは水分の吸着が少なくなる可能性があり、したがって、上述のように貯蔵容器の内面として好ましい場合がある。高度に研磨された(表面粗さが低い)またはコーティングされた金属または高性能プラスチックは、特に保存された試薬ガスとしてのハロゲン化物ガスとの相互作用および不純物を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0074】
あるいは、またはそれに加えて、特に容器の材料に含まれるような貯蔵システム中の大気不純物の存在をさらに低減するために、吸着剤を添加する前に、(任意の材料の)容器を加熱および任意の減圧ステップに曝して、容器の材料内に含まれ得る、例えば容器の材料内、例えば容器の側壁および底部内、または容器もしくは弁などの貯蔵システムの他の構成要素内に微量に吸着される不純物の量を低減することができる。容器またはシステムの他の構成要素は、金属、金属合金、被覆金属、研磨金属、プラスチック、ポリマー、またはそれらの組み合わせなどの材料で作製されてもよい。これらの材料のいずれも、水分、別の大気不純物、または有機揮発性材料などの非常に少量または微量の吸着不純物を含み得る。
【0075】
吸着剤が容器内部に添加され収容される前に容器を洗浄、乾燥、不動態化、パージ、または加熱するステップは、容器が吸着剤を収容していない間に、容器または貯蔵システムの他の構成要素を、例えば高温、減圧、化学的または物理的機構などにより、材料に含まれ得る不純物を放出(脱気)するか、そうでなければ材料から除去するであろう任意の適切な状態に曝すことによって実行することができる。これらのステップの1つ以上は、任意の吸着剤を容器の内部に添加する前に実施されてもよい。
【0076】
最も清浄で最も新鮮で最も滑らかな金属表面でさえ、典型的には、金属酸化物の薄い表面層を有し、金属酸化物層は、その後試薬ガスが容器に添加されたときに反応し得る大気不純物および水分を吸い上げるための吸着剤として作用することができる。したがって、容器の調製における任意のステップは、洗浄された容器の化学的不動態化を含むことができる。単一の例として、四フッ化ゲルマニウム(GeF4)、五フッ化リン(PF5)、五フッ化ヒ素(AsF5)、四フッ化ケイ素(SiF4)、五フッ化アンチモン(SbF5)、三フッ化ホウ素(BF3)、四フッ化ホウ素(B2F4)、または他の反応性フッ化物試薬ガスなどの反応性フッ化物試薬ガスの封じ込めを目的とする容器は、吸着剤の装填前に有利に不動態化を受けることができる。例えば、乾燥不活性ガス(すなわち、窒素またはアルゴン)中のフッ素(F2)ガスの希釈混合物を用いて、目標充填圧力より高く、優先的には1000トールより高く、おそらく5~10%のフッ素(体積基準)の混合物範囲で、容器を加圧し、5時間を超えるような期間圧力を保持する。このようなフッ素曝露および処理は、容器の内壁上の金属酸化物の薄い表面層を、貯蔵されるフッ化物ガスとの反応性が低く、吸着された微量の大気汚染物質で試薬ガスを汚染しにくい、高密度のフッ化物層に変換することができる。
【0077】
容器またはシステムの材料から吸着された不純物を除去するために、任意の減圧で容器を加熱するステップは、容器またはシステムの材料が熱的に安定している温度を含む有用な温度および圧力で、任意の効果的な方法で実行することができる。容器または貯蔵システムに使用される特定の材料は、他の材料よりも安定性が低く、加熱ステップ中に使用される温度は、特定の材料が安定したままであり、劣化しない温度である。加熱ステップは、周囲の開始温度から、貯蔵、輸送、および使用中に容器が遭遇するであろう温度よりも高い所望の高温までの温度上昇を含む漸進的な方法で、例えば110℃~300℃の温度範囲で行うことができ、加熱ステップは、所望かつ効果的に、8~40時間の様々な範囲の時間にわたって行うことができる。好ましい加熱ステップはまた、真空雰囲気中で、例えば650トール未満の圧力、例えば3トール未満、または1×10-4トール未満、または1×10-5トール未満の圧力で行われてもよい。
【0078】
高温に保持されている間、容器は、代替的にまたは追加的に、排気圧力と1000トールのヘリウム、窒素、またはアルゴンなどの乾燥不活性パージガスの雰囲気との間で繰り返し循環されてもよい。
【0079】
特に吸着剤に含まれるような、貯蔵システム内の大気不純物の存在を低減するための別の具体的な技術として、吸着剤を貯蔵容器内に配置した後、吸着剤を加熱および減圧ステップ(「脱気ステップ」)に供して、吸着剤中に存在する不純物の量を低減することができる。このステップは、吸着された試薬ガス純度または吸着剤容量に有害な影響を及ぼし得る物理吸着種およびいくつかの化学吸着種を除去する。
【0080】
吸着剤および吸着剤を含む容器を、容器内に吸着剤を配置した後に吸着剤に含まれ得る大気不純物の量を除去する任意の適切な加熱および圧力条件に曝すことによって、吸着剤または容器に過度の有害な熱的影響を生じさせることなく、容器に含まれる吸着剤に対して加熱ステップを行うことができる。加熱ステップは、吸着剤および容器内部に試薬ガスを添加する前に行われる。
【0081】
容器内の吸着剤を加熱して大気不純物を除去するステップは、吸着剤が熱的に安定している温度を含む、任意の効果的な方法ならびに有用な温度および圧力で実行することができる。加熱ステップは、場合により、周囲の開始温度から所望の高温までの温度上昇を含む漸進的な方法で、例えば110℃~300℃の温度範囲で行うことができ、加熱ステップは、所望かつ効果的に、8~40時間またはそれ以上の様々な範囲の時間にわたって行うことができる。好ましい加熱ステップは、真空雰囲気中で、例えば5トール未満の圧力、例えば1×10-5または1×10-6トール未満の圧力で行われてもよい。
【0082】
記載される方法はまた、吸着剤が容器内に配置された後に吸着剤を化学的に不動態化するステップを含んでもよい。化学的不動態化ステップは、吸着剤粒子の表面部位をガス(不動態化ガス)の形態の化学物質に曝して、残留吸着不純物(例えば、大気不純物)を除去するか、または吸着剤上の活性表面部位を中和もしくは不活性化するステップを含み得る。不動態化ステップの不動態化ガスの量および種類ならびに吸着剤への不動態化ガスの曝露の条件および時間は、吸着剤の種類ならびに吸着剤への吸着によって貯蔵される試薬ガスの種類に依存し得る。
【0083】
単一の例として、熱分解炭素吸着剤粒子を化学的に不動態化するステップは、容器内に貯蔵するための後続の充填ステップにおいて容器内に装入される同じ試薬ガスである試薬ガスに吸着剤を曝すことによって、吸着剤を含む高圧容器内で実行されてもよい。すなわち、容器内に貯蔵される試薬ガスは、吸着剤を不動態化するステップにおいて不動態化ガスとして使用される。吸着剤は、容器内に試薬ガスを貯蔵する目的で容器に同じ試薬ガスを装入する前に、吸着剤上の活性表面部位と反応してそれらの部位を不活性化することによって、吸着剤を化学的に不動態化する任意の圧力および任意の時間で試薬ガスに曝露され得る。場合により、吸着剤は、不活性ガスとの混合物中で2、5、または10%(体積基準)の濃度に希釈され、1,000、2,000、または5,000トールに加圧されるなど、不活性の非反応性ガス中で、高圧であるが低濃度の不動態化ガスとして試薬ガスに曝露されてもよい。
【0084】
例えば、化学的不動態化ステップでは、吸着剤は、比較的低い圧力、例えば760トール未満の圧力、例えば1、2、5、または10トール、最大50、100、200、または500トールの範囲内の圧力で試薬ガスに曝されてもよい。吸着剤を不動態化ガスに曝す時間は、任意の有用な時間、例えば15~2500分、例えば60~1000分の範囲内の時間であり得る。不動態化ステップは、周囲温度で、または高温、例えば60~300℃、例えば85~250℃の範囲内の温度で実施されてもよい。吸着剤を不動態化ガスに所望の時間曝した後、不動態化ガスは、減圧、例えば3トール未満の圧力、例えば1×10-5または1×10-6トール未満の圧力に曝すことによって吸着剤から除去される。
【0085】
吸着剤を調製し、吸着剤を貯蔵容器の内部に配置する所望のステップの後、吸着剤が曝されるかまたは含有する大気不純物の量を低減または最小化するために吸着剤を上述のように処理しながら、容器を所望の圧力まで試薬ガスで充填(「装填」または「装入」)することができ、試薬ガスは容器の内部に導入され、吸着剤に吸着される。
【0086】
容器内に存在するようになる、すなわち試薬ガスを容器に装入するステップ中に容器または試薬ガスに添加され得る、大気不純物の量を低減または制御するために、充填(装入)ステップ中に容器および吸着剤に対して様々なステップを実行することができ、特定の充填装置を充填ステップ中に使用することができる。これらには、一般に、可能な限り最高の純度の試薬ガスの使用、または貯蔵容器への導入前の試薬ガスの精製;機器(特に内部空間)が大気ガスまたは複数の試薬ガスに曝されることを低減するように処理、取り扱いおよび使用される充填機器の使用;容器への試薬ガスの添加中または添加後のいずれかに、充填機器および容器から大気不純物を除去するのに有効であり得る充填プロセスのステップ;のうちのいずれか1つ以上が含まれ、これらのいずれかは、単独でまたはこれらの2つ以上の組み合わせで有用であり得る。
【0087】
例示的な方法では、試薬ガスは、貯蔵容器の使用圧力(別名「目標圧力」または「最終充填圧力」)を超える量で最初に受容容器に添加され、受容容器内に保持されてもよい(「目標圧力」または「最終充填圧力」は、ガスを貯蔵、輸送、および使用のために容器から選択的に放出するために容器を使用するための試薬ガスの量を容器が含む場合の容器の初期圧力を指す)。最初に試薬ガスを容器に添加するとき、試薬ガスを添加して、使用圧力よりも大きい容器内部の内圧(「初期充填圧力」)を生成することができる。この初期充填圧力は、試薬ガスで充填されたときに容器の貯蔵、輸送、および使用中に容器内部が遭遇する最大圧力、またはその圧力より低く使用圧力より高い圧力であると予想される圧力であり得る。準大気圧の試薬ガスを収容するように設計された容器の場合、説明したように過剰量の試薬ガスが添加された容器の内圧の例は、少なくとも760、1000、または1200トールの圧力であり得る。例えば、650トールの目標圧力(最終充填圧力)で、容器は最初に700~1000トールの範囲、例えば760トール超または800トール超に充填され、目標の650トールにポンプで戻す前に平衡化することができる。
【0088】
別の方法で測定すると、説明したように、過剰量の試薬ガスが添加された(試薬ガスの準大気圧貯蔵用に設計された)容器の内部充填圧力の例は、目標圧力(「使用圧力」)よりも少なくとも10、20、または50%高い圧力であり得る。例えば、使用中に容器が760トールの圧力の試薬ガスを含む場合(「使用圧力」とは、試薬ガスの貯蔵、輸送および選択的送達のために容器が試薬ガスで満たされているときの容器の圧力を意味する)、容器をこの初期充填ステップで過剰の試薬ガスで充填して、760トールの「使用圧力」よりも10、20、または50%大きい内圧、すなわちそれぞれ836トール、912トール、または1,140トールの内圧を達成することができる。
【0089】
過剰量の試薬ガスを添加した後、容器を平衡させ、これは、吸着剤に吸着された試薬ガスの量と、容器のヘッドスペース容積内にガスとして存在するガス状試薬ガスの量とが、熱力学的平衡になることを意味する。過剰量の試薬ガスを添加した後、容器は、平衡を達成するのに十分な時間にわたって保持され(例えば、一定温度で)、ヘッドスペース内にガスとして含まれるガス状試薬ガスは、吸着剤からヘッドスペースのガス状試薬ガスに移動したある量の大気不純物を潜在的に含む。次いで、ヘッドスペース内の試薬ガスは、不純物を除去し、容器をより低い試薬ガス含有量およびより低い圧力にするために、例えば、容器内の試薬ガスを輸送および貯蔵する目的で意図されるような試薬ガス含有量および初期圧力、例えば「目標圧力」または「使用圧力」にするために、含有された不純物と共に、容器から放出することができる。
【0090】
過剰量の試薬ガスを添加した後に記載された平衡に達するのに必要な時間量は、吸着剤の種類、試薬ガスの種類、容器の総容積および容器内のヘッドスペースの容積に対する吸着剤の量、容器に添加される試薬ガスの量、ならびに容器内部の圧力などの要因に応じて異なり得る。試薬ガスを記載された過剰圧力まで添加し、ある量の試薬ガスを不純物と共に放出した後の例示的な時間量は、30分~1000時間、例えば1時間~500時間、例えば2時間~100時間の範囲内の時間量であり得る。
【0091】
以下は、試薬ガスを貯蔵するための高圧容器で使用するための吸着剤粒子を調製する例示的な方法の一連の調製および取り扱いステップである。
【0092】
1-PVDCコポリマーまたはホモポリマーなどの高純度合成吸着剤粒子を、貯蔵容器内で高い粒子密度および高いかさ密度を示す粒子、ペレットまたは錠剤にプレスする。
【0093】
2-不活性ガスパージ条件下ですべての非炭素副産物を除去するように設計されたレシピで、石英もしくはグラファイトトレイまたは石英回転管などの汚染されていない収容部を使用して、不活性雰囲気炉内で粒子を熱分解する。
【0094】
3-高度に吸着した炭素生成物を大気曝露または他の汚染手段から保護する方法で、熱分解粒子を炉から除去する。
【0095】
4-高度に研磨された、またはコーティングされた清浄な高圧(HP)シリンダを準備する。シリンダの準備には、グリース溶媒、錆などを除去するためのシリンダシェル洗浄;金属を用いたシリンダシェルの回転または圧延、粗さを平滑化し、内面の薄層を除去するためのセラミックショットを含むシリンダシェルの機械研磨または機械化学研磨;さらに洗浄した後、水蒸気を使用して炭素吸着剤を装填し、続いて高温で乾燥させ、清浄な不活性ガスでパージすること;および吸着剤を装填する直前の任意の不動態化が含まれ得る。
【0096】
5-大気曝露または他の汚染源を最小限に抑える方法で、洗浄、処理、および乾燥させたシリンダに高純度炭素粒子を装填する。例示的な技術は、10ppm超、好ましくは1ppm未満の測定可能なガス状水および/または酸素レベルを含まない雰囲気下で炭素吸着剤粒子を装填するように適合された無空気チャンバに、シリンダ入口を接続すること;低水および低酸素条件下で容器入口を通して容器に炭素吸着剤粒子を装填すること;および空気の進入を防止しながら容器入口に弁を設置することを含み得る。
【0097】
6-HPシリンダに弁を付けた後に、漏れ試験、排気、乾燥不活性パージガスによる可能なサイクルパージ、および高温で高真空レベルへの脱気を行うことができる。脱気ステップは、吸着された試薬ガス(例えば、GeH4)の純度またはGeH4などの試薬ガスの炭素容量に悪影響を及ぼし得る物理吸着種およびいくつかの化学吸着種を、装填された炭素吸着剤粒子から除去する。
【0098】
7-少量の犠牲試薬ガス(例えば、GeH4)を吸着し、数時間加熱して、犠牲試薬ガス(例えば、GeH4)を、試薬ガス(例えば、GeH4)を分解し、それらを不活性化することができる部位と反応させ、続いて冷却し、不動態化反応のガス状生成物を排出することによって、貯蔵中に吸着試薬ガス(例えば、GeH4)の高純度を維持するために容器内の炭素を不動態化する。
【0099】
8-容器および吸着剤をサイクルパージし、次いで高純度ガスマニホールドを使用して容器(完全に脱気された吸着剤を含む)に試薬ガス(例えば、不動態化ステップで使用されるのと同じ試薬ガス)を充填する。サイクルパージとは、吸着物に吸着されることになる試薬ガスと相互作用する可能性がある吸着した大気ガス種を除去するのに十分なサイクル数および十分な温度で、ヘリウム、窒素、またはアルゴンなどの不活性パージガスで高真空および圧力(例えば、1バールまで)を印加する交互サイクルを指す。
【0100】
任意選択的に、充填された容器は、シリンダヘッドスペース内の不純物のレベルを低減するように設計された最終用途ツールでの「始動」手順を用いて、純度をさらに維持するために、制御された貯蔵および輸送条件を使用して取り扱われ得る。そのようなステップの例は、輸送および倉庫保管中の温度制御:ツールの設置および使用前の周囲条件へのシリンダ安定化;ならびにツールへ送達するために吸着試薬ガスを抽出する前にシリンダヘッドスペースの「気相」を通気するステップを含み得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着された試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムであって、前記システムが、
ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を含む内部を含む高圧貯蔵容器と、
前記吸着剤粒子に吸着された試薬ガスと
を含み、
前記内部の圧力が1500トール未満である、貯蔵システム。
【請求項2】
前記吸着媒体が、1~10ミリメートルの範囲内の平均粒径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項1に記載の貯蔵システム。
【請求項3】
前記吸着媒体が、20オングストローム未満の平均孔径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
1に記載の貯蔵システム。
【請求項4】
前記吸着剤が、0.55~0.95グラム/立方センチメートルの範囲内のかさ密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
1に記載の貯蔵システム。
【請求項5】
前記吸着剤が、0.85~1.15グラム/立方センチメートルの範囲内の粒子密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
1に記載の貯蔵システム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の貯蔵システムから吸着された試薬ガスを分注する方法であって、前記吸着された試薬ガスが、メタン(CH
4)、アセチレン(C
2H
2)、アンモニア(NH
3)、シラン(SiH
4)、ゲルマン(GeH
4)、ジホスフェン(P
2H
4)、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)、ジボラン(B
2H
6)、スチビン(SbH
3)、硫化水素(H
2S)、セレン化水素(H
2Se)、テルル化水素(H
2Te)、ジゲルマン(Ge
2H
6)、ジアセチレン(C
4H
2)、四フッ化ゲルマニウム(GeF
4)、五フッ化リン(PF
5)、五フッ化ヒ素(AsF
5)、四フッ化ケイ素(SiF
4)、五フッ化アンチモン(SbF
5)、三フッ化ホウ素(BF
3)、四フッ化ホウ素(B
2F
4)、およびこれらの試薬ガスのすべての同位体を含む、方法。
【請求項7】
前記容器から前記試薬ガスを分注することを含み、前記分注された試薬ガスがH
2、CO、CO
2、N
2、CH
4、およびH
2O、ならびにそれらの組み合わせから選択される不純物の総量を150ppm(体積基準、ppmv)未満含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の貯蔵システムから吸着された試薬ガスを分注する方法。
【請求項8】
吸着された試薬ガスを貯蔵するための貯蔵システムであって、前記システムが、
1nm未満の粗さ(Ra)を有する研磨された側壁表面、
溶接されていない側壁および底部、ならびに
少なくとも10リットルの容積
を備える、高圧貯蔵容器と、
ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子と
を含む、システム。
【請求項9】
前記吸着媒体が、1~10ミリメートルの範囲内の平均粒径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
8に記載の貯蔵システム。
【請求項10】
前記吸着媒体が、20オングストローム未満の孔径を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
8に記載の貯蔵システム。
【請求項11】
前記吸着剤が、0.55~0.95グラム/立方センチメートルの範囲内のかさ密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
8に記載の貯蔵システム。
【請求項12】
前記吸着剤が、0.85~1.15グラム/立方センチメートルの範囲内の粒子密度を有する熱分解されたポリ塩化ビニリデン粒子を含む、請求項
8に記載の貯蔵システム。
【請求項13】
炭素吸着剤粒子を調製する方法であって、前記方法が、
合成ポリマー炭素前駆体樹脂粒子を形成することと、
不活性雰囲気中で前記前駆体樹脂粒子を熱分解して、ナノ多孔質熱分解炭素吸着剤粒子を製造することと、
前記熱分解炭素吸着剤粒子を高圧貯蔵容器に配置しつつ、前記粒子および前記容器を不活性ガス雰囲気中に収容することと、
前記容器内の前記熱分解炭素吸着剤粒子を高温および減圧に曝して、前記粒子および前記容器に吸着された大気汚染物質を除去することと、
前記容器に前記試薬ガスを充填することと
を含む、方法。
【国際調査報告】