(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法、およびそれによって製造した正極バインダーまたは正極絶縁液を含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240927BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M50/591 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520040
(86)(22)【出願日】2023-04-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 KR2023004535
(87)【国際公開番号】W WO2023195744
(87)【国際公開日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041892
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0044083
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヒ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ブン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジョ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ドユン・キム
【テーマコード(参考)】
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H043AA19
5H043BA19
5H043GA22
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA02
5H050DA11
5H050EA28
5H050GA02
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明の目的は、水系コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体ラテックス(latex)の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えば、N-メチル-ピロリドン)に置換することにより、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを遂行できるリチウム二次電池用絶縁層組成物を提供することにある
本発明は、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を追加し、加温および減圧してコンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換する段階を備えることを特徴とするリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法、および製造した正極バインダーまたは正極絶縁液を含むリチウム二次電池に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散コンジュゲートジエンラテックスに非水系有機溶媒を追加し、加温および減圧する段階を備えることを特徴とする、
リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項2】
前記加温および減圧する段階でコンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水は非水系有機溶媒に置換されることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項3】
前記コンジュゲートジエンラテックス粒子は、分散溶媒が非水系有機溶媒に置換された後も粒子形状を維持することを特徴とする、
請求項2に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項4】
前記段階は、40℃~100℃の温度に加温する工程であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項5】
前記段階は、200torr未満の圧力に減圧する工程であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項6】
前記段階は1時間~20時間の間に進行されることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項7】
前記段階は、40℃~100℃の温度に加温し、1時間~20時間の間に200torr未満に減圧する工程であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項8】
前記段階は、圧力、温度および時間が下記の関係式1を満たす工程であることを特徴とする、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
[関係式1]
y(最低圧力、torr)/x(温度、K)
17.4 * 10
44/z(時間、h)
0.5<8
【請求項9】
前記コンジュゲートジエンラテックスは、(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体と、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーと、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーと、からなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーの重合体を含む、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項10】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであり、
前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される2種以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体、またはこれらの重合体が部分的にエポキシ化もしくは臭素化された重合体またはこれらの混合物である、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項11】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メタクリロキシエチルエチレン尿素、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項12】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項13】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項14】
前記不飽和カルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項15】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項16】
前記コンジュゲートジエンラテックスは、全重量を基準にして前記(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体25~45重量%、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー50~70重量%、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%の重合体を含む、
請求項9に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項17】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法。
【請求項18】
前記コンジュゲートジエンラテックスはスチレン-ブタジエンラテックスであり、
前記非水系有機溶媒はNMP(N-メチル-ピロリドン)である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法 。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の製造方法に従って製造した、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体と、分散溶媒として非水系有機溶媒と、を含む、
リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液。
【請求項20】
平均粒径が50nm以上~500nm以下であるコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体粒子が独立した相として存在する、
請求項19に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液。
【請求項21】
前記コンジュゲートジエン共重合体はスチレン-ブタジエン共重合体であり、
前記非水系有機溶媒はNMP(N-メチル-ピロリドン)である、
請求項19に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液。
【請求項22】
水分含有量が10,000ppm以下である、
請求項19に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液。
【請求項23】
請求項19に記載のリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を備える、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法、およびそれによって製造した正極バインダーまたは正極絶縁液を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、それに応じて多様なニーズに応えることができる電池に関する多くの研究が行われている。
【0003】
代表的には、電池の形状面では薄い厚さで携帯電話などの製品に適用されうる角型電池やパウチ型電池に対する需要が高く、材料面ではエネルギー密度、放電電圧、安全性に優れたリチウムコバルトポリマー(重合体)電池などのリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0004】
このような二次電池の主な研究課題の1つは安全性を向上させることである。電池の安全性関連事故の主な原因は、正極と負極との間の短絡による異常な高温状態の到達に起因する。すなわち、正常な状況では、正極と負極との間にセパレーターが位置して電気的絶縁を維持しているが、電池が過充電または過放電されたり、電極材料の樹枝状成長(dendritic growth)または異物によって内部短絡されたり、釘やねじなどの鋭い物体によって貫通されたり、外力によって無理な変形を受けたりするなどの異常な乱用状況においては、従来のセパレーターだけでは限界を見せることになる。
【0005】
一般に、セパレーターはポリオレフィン樹脂からなる微細多孔膜が主に用いられているが、その耐熱温度が120~160℃程度で耐熱性が不十分である。したがって、内部短絡が発生すると、短絡反応熱によってセパレーターが収縮して短絡部が拡大され、より大きくかつ多くの反応熱が発生する熱暴走(thermal runaway)状態に至るという問題があった。したがって、セル変形、外部衝撃または正極と負極の物理的短絡の可能性を低減するための多様な方法が研究されてきた。
【0006】
例えば、電池を完成した状態で電極組立体が移動することにより、電極タブ(tab)が電極組立体の上端に接触されて短絡が発生することを防止するために、集電体の上端に隣接する電極タブ上に所定の大きさで絶縁テープを貼り付ける方法がある。しかしながら、このような絶縁テープの巻き取り作業は非常に煩雑であり、集電体の上端から下方にわずかに延長された長さまで絶縁テープを巻き取る場合には、そのような部位が電極組立体の厚さの増加を引き起こす可能性がある。さらに、電極タブの折り曲げのとき、緩みやすい問題がある。
【0007】
また、正極のタブ部分に非水系バインダー(PVDFなど)や水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)で絶縁層を形成する方法がある。しかしながら、非水系バインダー(PVDFなど)を使用する場合、湿潤接着力が低下し、電極のオーバーレイ領域にリチウムイオンの移動を防ぐことができず、容量が発現する問題があった。特に、電極のオーバーレイ領域において容量が発現するとき、リチウムイオンが析出されることがあり、これは電池セルの安定性の低下をもたらすことができる。また、水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)バインダーを使用する場合、正極合剤層用スラリーと同時にコーティングするときに、正極バインダーとして使用する有機系バインダーであるPVDFのゲル化、および水分による副反応に起因する電池性能の低下が生じ、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーの同時コーティングが不可能であるという問題がある。
【0008】
したがって、柔軟性、絶縁特性、耐電解液特性を同時に満足しながら、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーとの同時コーティングが可能となる絶縁液開発に対する必要性が高いのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1586530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、水系コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体ラテックス(latex)の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えば、N-メチル-ピロリドン)に置換することにより、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを遂行できるリチウム二次電池用絶縁層組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明のもう一つの目的は、前述した製造方法に従って製造されるリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を提供することにある。
【0012】
また、本発明のもう一つの目的は、前述したリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的および利点は、下記の発明の詳細な説明および特許請求の範囲によってより明確に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した技術的課題を達成するために、本発明は、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を加え、加温および減圧する段階を備えることを特徴とするリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記製造方法により製造したバインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体および分散溶媒として非水系有機溶媒を含む、リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、コンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えばN-メチル-ピロリドン)に置換することにより、リチウム二次電池においてセパレーター収縮および電極折り畳みなどの不良発生時に、正極と負極の物理的短絡を防止できるリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を提供することができる。
【0018】
本発明による効果は、以上で例として示された内容によって限定されず、より多様な効果が本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】正極合剤層用スラリーと、それぞれの実施例1~実施例6、比較例1~比較例2および比較例4~比較例5で製造した絶縁コーティング層用スラリーと、がオーバーレイされるように、ドクターブレードを用いて集電体に同時に塗布した後、塗布直後と1分経過後を比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明を詳しく説明する。
【0021】
本明細書において使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、別の意味で定義されていない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解される意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明らかにかつ特別に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0022】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)として理解されなければならない。
【0023】
本明細書において、「好ましい」および「好ましく」は、所定の環境下で所定の利点を提供することができる本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ環境または異なる環境下では、他の実施形態がまた好ましい可能性がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態に対する言及は、他の実施形態が有用ではないことを意味せず、本発明の範囲から他の実施形態を排除しようとするのではない。
【0024】
本発明において、「絶縁コーティング層」とは、電極集電体の無地部のうち少なくとも一部から電極合剤層の少なくとも一部まで塗布および乾燥して形成される絶縁部材を意味する。
【0025】
<リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法>
【0026】
本発明は、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を追加し、加温および減圧する段階を含むことを特徴とするリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液の製造方法を提供する。
【0027】
前記加温および減圧する段階において、コンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水は、非水系有機溶媒に置換される。
【0028】
前記段階は、40℃~100℃の温度に加温する段階であり得る。好ましくは、60℃~95℃の温度に加温することができるが、これに限定されない。
【0029】
前記段階は、200torr未満の圧力に減圧する段階であり得る。好ましくは、60Torr以下の圧力に減圧することができるが、これに限定されない。
【0030】
前記段階において、減圧は1時間~20時間の間に進行され得る。
【0031】
本発明の一実施例において、前記段階は、40℃~100℃の温度に加温し、1時間~20時間の間に200torr未満に減圧する段階であり得る。
【0032】
実験結果で40℃~100℃の温度で200torr以上に減圧した場合、減圧を20時間の長時間進行しても最終水分含有量は10,000ppmを超えており、10torrに減圧したものの、温度が40℃未満の場合も20時間のうちに減圧しても水分含有量が10,000ppmを超えることを確認した。
【0033】
コンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換した後も、コンジュゲートジエンラテックス粒子は粒子形状を維持する。粒子形状の維持の可否は、粒径測定により確認することができる。粒子の大きさ(サイズ)は、DLS粒度分析器、レーザー回折粒度分析器または電子透過顕微鏡で確認されうるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の一実施形態では、前記段階は、圧力、温度および時間が下記の相関関係を満たす段階であり得る。
【0035】
[関係式1]
【0036】
y(最低圧力、torr)/x(温度、K)17.4*1044<z(時間、h)0.5<8
【0037】
置換工程中の圧力、温度および時間の関係が関係式1を満たしていない場合、最終水分含有量は10,000ppmを超えることができる。
【0038】
前記条件でコンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換する場合、水分含有量が10,000ppm以下となり、正極バインダーまたは絶縁液として使用されて優れた効果を示すことができる。
【0039】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー、並びに(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマーの重合体を含み得る。
【0040】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであり得る。
【0041】
前記共役ジエン系重合体は、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、およびピペリレンからなるグループから選択される2つ以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体、またはこれらの重合体が部分的にエポキシ化もしくは臭素化された重合体またはこれらの混合物であり得る。
【0042】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メチルメタクリレート、メタクリロキシエチルエチレン尿素、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0043】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0044】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0045】
前記不飽和カルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得るが、これらに限定されない。
【0046】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得るが、これらに限定されない。
【0047】
好ましくは、前記コンジュゲートジエンラテックスは、スチレン-ブタジエンラテックスであり得るが、これに限定されない。
【0048】
前記コンジュゲートジエン共重合体粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法などにより行われ得る。共重合体粒子を製造するためのモノマーの混合物は、重合開始剤、架橋剤、カップリング剤、緩衝液(buffer solution)、分子量調節剤、乳化剤などの他の成分を1つまたは2つ以上含み得る。具体的には、前記共重合体粒子は、乳化重合法により製造されることがあり、この場合、前記共重合体粒子の平均粒径は、乳化剤の量によって調節されてもよく、一般に乳化剤の量が増加するほど粒子のサイズは小さくなり、乳化剤の量が減少するほど粒子のサイズは大きくなる傾向を示す。所望の粒子のサイズ、反応時間、反応安定性などを考慮して、乳化剤使用量を調節して所望の平均粒径を実現することができる。重合温度および重合時間は、重合方法、重合開始剤の種類などに応じて適切に決定されることがあり、例えば、重合温度は10℃~150℃であり得るし、重合時間は1~20時間であり得る。
【0049】
前記重合開始剤としては、無機または有機過酸化物が用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを含む水溶性開始剤と、クメンハイドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどを含む油溶性開始剤とを使用することができる。また、前記重合開始剤と共に過酸化物の開始反応を促進させるために活性化剤をさらに含むことができ、前記活性化剤としてはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第1鉄およびデキストロースからなるグループから1種以上選択されるものであり得る。
【0050】
前記架橋剤は、バインダーの架橋を促進させる物質として、例えば、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylene tetramine)、ジエチルアミノプロピルアミン(diethylamino propylamine)、キシレンジアミン(xylene diamine)、イソホロンジアミンなどのアミン類、ドデシルスクシニックアンヒドリド(dodecyl succinic anhydride)、フタリックアンヒドリド(phthalic anhydride)などの酸無水物、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、フェノール樹脂、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが使用され、グラフト剤はアリールメタクリレート(AMA)、トリアリールイソシアヌレート(TAIC)、トリアリールアミン(TAA)、ジアリールアミン(DAA)などが使用される。
【0051】
前記カップリング剤は、活物質とバインダーとの間の接着力を増加させるための物質であって、2つ以上の機能性基を有することを特徴とし、1つの機能性基は、シリコン、スズまたは黒鉛系活物質表面のヒドロキシル基やカルボキシ基と反応して化学的結合を形成し、他の機能性基は、本発明によるナノ複合体との反応を通じて化学結合を形成する材料であれば特に限定されるものではない。例えば、トリエトキシシルプロピルテトラスルフィド(triethoxysilylpropyl tetrasulfide)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(mercaptopropyl triethoxysilane)、アミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyl triethoxysilane)、クロロプロピルトリエトキシシラン(chloropropyl triethoxysilane)、ビニルトリエトキシシラン(vinyltriethoxysilane)、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(methacryloxypropyl triethoxysilane)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(glycidoxypropyl triethoxysilane)、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(isocyanatopropyl triethoxysilane)、シアナートプロピルトリエトキシシラン(cyanatopropyl triethoxysilane)などのシラン系カップリング剤が使用され得る。
【0052】
前記バッファー(緩衝剤)は、例えば、NaHCO3、Na2CO3、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaOHおよびNH4OHからなるグループから選択される1つであり得る。
【0053】
前記分子量調節剤としては、例えば、メルカプタン類またはテルピノレン、ジペンテン、t-テルピエンなどのテルフィン類やクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。
【0054】
前記乳化剤は、親水性(hydrophilic)基と疎水性(hydrophobic)基を同時に有する物質である。1つの具体的な例では、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなるグループから選択される少なくとも1つであり得る。
【0055】
非イオン性乳化剤をアニオン乳化剤と共に使用すると、粒子サイズおよび分布制御に役立ち、イオン性乳化剤の静電気的安定化に加えて、高分子粒子のファンデルワールス力によるコロイド状のさらなる安定化を提供することができる。非イオン性乳化剤を単独で使用することは多くないが、これはアニオン性乳化剤よりも安定性の低い粒子が生成されるからである。
【0056】
アニオン性乳化剤は、ホスフェート系、カルボキシレート系、スルフェート系、コハク酸塩系、スルホサクシネート系、スルホネート系およびジスルホネート系からなるグループから選択されるものであり得る。例えば、ナトリウムアルキル硫酸塩、ナトリウムポリオキシエチレン硫酸塩、ナトリウムラウリルエーテル硫酸塩、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(Sodium polyoxyethylene lauryl ether sulfate)、ナトリウムラウリル硫酸塩(Sodium lauryl sulfate)、ナトリウムアルキルスルホネート、ナトリウムアルキルエーテルスルホネート、ナトリウムアルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムリニアアルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムアルファオレフィンスルホネート、ナトリウムアルコールポリオキシエチレンエーテルスルホネート、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(Sodium dioctyl sulfosuccinate)、ナトリウムパーフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムパーフルオロブタンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(Alkyl diphenyloxide disulfonate)、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(Sodium dioctyl sulfosuccinate、DOSS)、ナトリウムアルキル-アリールホスフェート、アルキルエーテルホステートおよびナトリウムラウオリルサルコシネートからなるグループから選択されるものであり得る。ただし、これらに限定されるものではなく、公知のアニオン性乳化剤は全て本発明の内容に含まれ得る。
【0057】
前記非イオン性乳化剤は、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型などであり得る。例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノール-Aエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルなどであり得る。ただし、これらに限定されるものではなく、公知の非イオン性乳化剤を全て本発明の内容に含まれ得る。
【0058】
前記コンジュゲートジエンラテックスは、全重量を基準に、前記(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体20~45重量%、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー50~70重量%、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%の重合体を含み得る。前記乳化剤、緩衝剤(バッファ)、架橋剤などの他の成分は、任意に0.1~10重量%の範囲内に含まれてもよい。
【0059】
一方、前記コンジュゲートジエンラテックス粒子の平均粒径は、50nm500nm以下であり得る。ここで、平均粒径が50nm未満の場合または500nmを超える場合、分散安定性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0060】
一方、本発明による組成物でコンジュゲートジエンラテックス粒子は、独立した相として存在するとき、接着力の向上効果が改善されるため、前記粒子間凝集(agglomeration)が起こらないようにすることが非常に重要である。したがって、本発明の組成物は、粒子を分散させるための分散溶媒を含む。本発明では、分散溶媒として非水系有機溶媒を使用する。
【0061】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上であり得る。
【0062】
好ましくは、非水系有機溶媒としてN-メチル-ピロリドン(NMP)を使用することができるが、これに限定されない。
【0063】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物の水分含有量は、10,000ppm以下で、好ましくは5,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下であり得、前記範囲のとき、電極合剤層と分離されてコーティングされることがあり、電極の物性低下は発生しない。
【0064】
<リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液>
【0065】
本発明のもう一つの一例は、前記製造方法に従って製造した、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体、および分散溶媒として非水系有機溶媒を含む、リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を提供する。
【0066】
本発明によるリチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液は、平均粒径が50nm以上500nm以下であるコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体粒子が独立した相として存在する。
【0067】
本発明の一実施例では、前記コンジュゲートジエン共重合体はスチレン-ブタジエン共重合体であり、前記非水系有機溶媒はNMP(N-メチル-ピロリドン)であり得る。
【0068】
本発明の一実施例では、リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液は、水分含有量が10,000ppm以下であり得る。
【0069】
<リチウム二次電池>
【0070】
本発明のもう一つの一例は、前記リチウム二次電池用正極バインダーまたは正極絶縁液を含むリチウム二次電池である。
【0071】
前記リチウム二次電池は、一般に、電極の他にも、分離膜(セパレーター)およびリチウム塩含有非水電解質をさらに含む。
【0072】
分離膜は正極と負極との間に介在し、高いイオン透過性と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜の気孔径は一般に0.01~10μmであり、厚さは一般に5~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系重合体、ガラス繊維またはポリエチレンなどでできているシートや不織布などが使用される。電解質として重合体などの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0073】
前記リチウム含有非水系電解液は、非水系電解液とリチウム塩からなる。
【0074】
前記非水系電解液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非量子性有機溶媒が使用され得る。
【0075】
前記リチウム塩は、前記非水系電解液に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが用いられる。
【0076】
場合によっては、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されることもある。
【0077】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステル重合体、ポリアジテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0078】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化合物、硫酸塩などが使用され得る。
【0079】
また、非水系電解液には充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることもある。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むこともでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含むこともでき、FEC(Fluoro-Ethylene carbonate)、PRS(Propenesultone)などをさらに含み得る。
【0080】
本発明による二次電池は、小型装置の電源として使用される電池セルに用いられているだけではなく、中・大型装置の電源として使用される多数の電池セルを含む中・大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられる。
【0081】
前記中・大型の装置の好ましい例は、電池モータによって動力を受けて動くパワーツールと、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気自動車と、電気自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車と、電気ゴルフカート(electric golf cart)と、エネルギーストレージシステム(Energy Storage System)などと、が挙げられるものの、これらに限定されるものではない。
【0082】
以下では、本発明を実施例によって詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例として示すものだけであり、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0083】
[実施例1]
【0084】
55nm粒径のスチレン-ブタジエンシードラテックス5重量部を反応器に入れて80℃まで昇温させた後、モノマーとして1,3-ブタジエン38g、スチレン59g、アクリル酸3g、バッファ(buffer)としてNaHCO30.5g、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート1g、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン1g、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを4時間反応器に投与し、さらに4時間80℃を維持しながら反応させて固形分50%スチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。このとき、水酸化ナトリウムを使用してpHを中性(7)に調節した。重合後、Submicron particle sizer(Nicomp TM 380)を用いて共重合体粒子のサイズを分析したところ、重合された共重合体粒子の平均粒径は150nmであった。
【0085】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)600gを加えてから混合し、90℃まで昇温させた後、8時間のうちに60torrに減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換し、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。このとき、最終水分含有量が10,000ppm以下であり、固形分は7.8%となるようにした。加温減圧装置によって残留する水を気化させ、気化した水はクーリング装置を介して液体状態でレシーバー反応器に集められる。このとき、水と同時に余分なNMPも共に気化するようになり、最終固形分含有量に合わせるためにさらにNMPを投入して調節する。
【0086】
[実施例2]
【0087】
90℃まで昇温させた後、4時間のうち15torrに減圧したことを除いては、実施例1と同じ方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0088】
[実施例3]
【0089】
80℃まで昇温させた後、8時間のうち10torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0090】
[実施例4]
【0091】
70℃まで昇温させた後、15時間のうち10torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0092】
[実施例5]
【0093】
100℃まで昇温させた後、20時間のうち180torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0094】
[実施例6]
【0095】
NMPを600g投入し、50℃まで昇温された後、12時間10torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0096】
[比較例1]
【0097】
NMPを600g投入し、95℃まで昇温させた後、20時間のうち200torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0098】
[比較例2]
【0099】
70℃まで昇温させた後、15時間のうち60torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0100】
[比較例3]
【0101】
110℃まで昇温させた後、8時間のうち10torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0102】
[比較例4]
【0103】
NMPを600g投入し、39℃まで昇温させた後、20時間のうち10torrに減圧したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0104】
実施例1~実施例4および比較例1~比較例4の温度、時間、圧力、固形分条件を下記の表1にまとめた。
【0105】
[比較例5]分散溶媒置換を行わないスチレンブタジエンラテックスを含む組成物の製造
【0106】
分散溶媒置換を行わないスチレンブタジエンラテックスを含む組成物と比較するために、実施例1において製造したスチレンブタジエンラテックスを、溶媒置換を別途に行わない状態で、カルボキシメチルセルロースと9:1の重量比で混合して組成物を製造した。カルボキシメチルセルロースは、増粘剤として溶媒置換を別に行わないスチレンブタジエンラテックスのコーティング性を向上させるために使用される。
【0107】
【0108】
前記実施例1~実施例6および比較例1~比較例4において製造したNMPに分散された、スチレンブタジエン共重合体を含む組成物に対して粘度および水分含有量の評価を行った。
【0109】
[実験例1]粘度
【0110】
前記実施例1~6および比較例1~4で製造したNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物に対して粘度を測定した。粘度測定は、25℃の温度でブルックフィールド(Brookfield)社のLV型粘度計の63番スピンドルを用いて12rpmで回してから1分後に測定した。粘度が測定範囲から外れた場合、rpm値を下げて測定し、その結果を下記の表2に示した。下記の表2において、粘度は固形分7.8%の粘度を意味する。
【0111】
[実験例2]水分含有量
【0112】
前記実施例1~6および比較例1~4において製造した組成物に対して、860KF Thermoprep(オーブン)が連結されたMetrohm(メトローム)社の899Coulometerを用いてオーブンの温度を220℃に合わせ、0.1~0.4gの試料を秤量して水分含有量を測定した。その測定結果を下記の表2に示した。
【0113】
[実験例3]粒径測定
【0114】
DLS粒度分析器でナイコム社のN3000装置を用いて、前記実施例1~実施例6および比較例1~比較例4において製造した組成物の粒度を測定し、その結果を下記の表2に示した。実施例1~実施例6、および比較例1~比較例4において製造したNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物をNMPを用いて0.12±0.02wt%に希釈した後、DLS機器にNMPの viscosity(粘度)とRefractive index(屈折率)を入力してから測定した。NMP溶媒の散乱のため絶対粒径の測定は難しいが、粒度の相対的比較は可能であった。
【0115】
【0116】
[実験例4]水分影響評価
【0117】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2Mn0.2O2 96重量部、バインダーとしてPVdF 2重量部、導電材としてカーボンブラック 2重量部を秤量し、N―メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極合剤層用スラリーを製造した。
【0118】
そして、前記正極合剤層用スラリーと、それぞれの実施例1~実施例6、並びに比較例1および比較例5で製造したスチレンブタジエン共重合体を含む組成物である絶縁コーティング層用スラリーとが、オーバーレイされるようにドクターブレードを用いて集電体に同時に塗布した後、塗布直後と1分経過後を比較した。比較例3の場合、ゲル形成(gelation)が生じ、コーティングが不可能であった。ここで、ゲル形成は、組成物の粘度が過度に増加して流動性が落ちることから一定の厚さでコーティングができない状態を意味する。
【0119】
塗布直後と塗布後1分後を比較した結果、
図1に示したように実施例1~実施例4で製造した絶縁コーティング層用スラリーの場合、塗布直後と塗布後1分後ともにオーバーレイ部分の浸透なしに最初のコーティングされた状態を維持したが、水分含有量が10000ppm以上である比較例1~比較例5で製造した絶縁コーティング層用スラリーの場合、塗布後1分後に電極スラリーが絶縁層側に浸透してコーティング境界を確実に維持できないようになった。溶媒置換していない比較例5の絶縁コーティング層用スラリーの場合、塗布直後から正極スラリーと絶縁液が接する境界が水分により凝集されることを確認しており、これによって同時コーティングが不可能であることが確認できた。
【0120】
前記表2に示したように、比較例3のように110℃以上で溶媒をNMPに置換した場合、ゲル形成(Gelation)が生じた。110℃以上の高温では、減圧レベルに関係なく、スチレンブタジエン共重合体粒子の安定性が減少し、互いに凝集してゲルが形成されることが確認できる。
【0121】
ゲルが形成される場合、粒子の安定性が欠けて互いに凝集されることで平均粒径を測定して確認することができ、実施例1~4で製造した組成物の平均粒径より、比較例3で製造した組成物の平均粒径が大幅に増加することが確認できる。粒子同士が凝集するようになるとコーティング性が低下し、最終的にゲルが形成されると流動性がなく、コーティングが不可能であるため絶縁液として使用できない。
【0122】
比較例1のように、200torr以上に減圧した場合、20時間の長時間減圧を行っても最終水分含有量は10,000ppmを超えた。比較例4のように、10torrに減圧したが、温度が40℃未満の場合も20時間減圧しても水分含有量が10,000ppmを超えた。また、置換工程中の温度が40℃~100℃以下であり、減圧圧力が200torr未満であっても、比較例2のように圧力、温度および時間の関係が関係式1を満たさない場合、工程上、期待する水分含有量以下を満たすことができない。
【国際調査報告】