(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】シャロートレンチアイソレーションのための化学機械平坦化研磨
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20240927BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520719
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022077064
(87)【国際公開番号】W WO2023059999
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ホンチュン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ ピー.ムレラ
(72)【発明者】
【氏名】シアオポー シー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ディー.ローズ
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA03
5F057AA28
5F057BA18
5F057BB15
5F057BB19
5F057BB37
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA29
(57)【要約】
本発明は、抑制されたポリSi除去速度に加えて、異なるpH条件での高くまた調整可能な酸化物:SiN及び酸化物:ポリSi除去選択性、並びに低酸化物トレンチディッシングを提供する、シャロートレンチアイソレーション(STI)化学機械平坦化(CMP)研磨組成物、方法、及びシステムを開示する。研磨組成物は、焼成セリアなどの研磨粒子と、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の化学添加剤と、を含む。添加剤は、(1)D-マンノース、L-マンノース、リビトール(D-リビトール)、キシリトール、meso-エリスリトール、D-ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、フルクトース、ソルビタン、スクロース、D-リボース、イノシトール、及びグルコースなどの化学物質;(2)ポリアクリル酸又はポリアクリレート及びそのアンモニウム塩、カリウム塩若しくはナトリウム塩、並びに(3)膜選択性調整及び酸化物トレンチディッシング低減添加剤として異なる分子量分布を有するポリエチレングリコール(PEG)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学機械研磨組成物であって
研磨粒子;
(1)分子構造中に少なくとも2つ以上、4つ以上、又は6つ以上のヒドロキシル官能基を含有する有機ポリマー;(2)カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はその塩;及び(3)ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレングリコール(PEG)を含有するコポリマーからなる群から選択される、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる化学添加剤;
溶媒;
任意選択で、
殺生物剤;及び
pH調節剤
を含み、
前記組成物が、2~12、3~10、又は4~9のpHを有する、化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記研磨粒子が、無機酸化物粒子、金属酸化物被覆無機酸化物粒子、有機ポリマー粒子、金属酸化物被覆有機ポリマー粒子、表面改質無機酸化物粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項3】
前記研磨粒子が、焼成セリア、コロイダルシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア粒子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される無機酸化物粒子である、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、脱イオン(DI)水、蒸留水、及びアルコール溶媒からなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項5】
分子構造中に少なくとも2つ以上、4つ以上、又は6つ以上のヒドロキシル官能基を含有する前記有機ポリマーが、
【化1】
[式中、
nは、2~5000、3~12、又は4~7から選択され;
R
1、R
2、R
3、及びR
4は、同じであるか又は異なっていてよく、それらの各々が、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、1つ以上のヒドロキシル基を有する有機基、置換された有機スルホン酸、置換された有機スルホン酸塩、置換された有機カルボン酸、置換された有機カルボン酸塩、有機カルボキシルエステル、有機アミン基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;それらのうち少なくとも2つ以上、好ましくは4つが水素原子である]
の一般分子構造を有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項6】
R
1、R
2、R
3、及びR
4が全て水素である、請求項5に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項7】
分子構造中に少なくとも2つ以上、4つ以上、又は6つ以上のヒドロキシル官能基を含有する前記有機ポリマーが、D-マンノース、L-マンノース、リビトール(D-リビトール)、キシリトール、meso-エリスリトール、D-ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、フルクトース、ソルビタン、スクロース、D-リボース、イノシトール、グルコース、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項8】
前記カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はその塩が、
【化2】
[式中、
Rは、H、並びにアンモニウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンからなる群から選択されるイオンからなる群から選択され;
nは、(1)14~13889;14~139の範囲、若しくは14~70の範囲の;又は、(2)1,000~1,000,000;1,000~10,000;若しくは1,000~5000の範囲の分子量を与える、繰り返しモノマー単位の数を表す]
の一般分子構造を有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はその塩が、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリアクリレートカリウム塩、ポリアクリレートナトリウム塩、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項10】
前記ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレングリコール(PEG)を含有するコポリマーが、
【化3】
[式中、nは、(1)4~22727である;又は(2)200~1,000,000の範囲の分子量を与える]
の一般分子構造を含む、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項11】
(1)分子構造中に少なくとも2つ以上、4つ以上、又は6つ以上のヒドロキシル官能基を含有する前記有機ポリマーが、0.001重量%~2.0重量%、0.025重量%~1.0重量%、又は0.05重量%~0.5重量%の範囲の濃度を有し;
(2)前記カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はその塩が、0.001重量%~2.0重量%、0.005重量%~1.0重量%、又は0.01重量%~0.5重量%の範囲の濃度を有し;
(3)前記ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレングリコール(PEG)を含有するコポリマーが、0.0001重量%~1.0重量%、0.00025重量%~0.5重量%、0.0005重量%~0.1重量%、又は0.00075重量%~0.05重量%の範囲の濃度を有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項12】
前記組成物が、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン又は2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの活性成分を有する、0.0001重量%~0.05重量%、0.0005重量%~0.025重量%、又は0.001重量%~0.01重量%の前記殺生物剤を更に含む、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項13】
前記組成物が、0重量%~1重量%、0.01重量%~0.5重量%、若しくは0.1重量%~0.25重量%の前記pH調節剤を含み、前記pH調節剤は、酸性pH条件のためには、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、その他の無機酸、若しくは有機酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、又は、アルカリ性pH条件のためには、水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機水酸化第四級アンモニウム化合物、有機アミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項14】
前記組成物が、少なくとも3種の化学添加剤を含み、前記化学添加剤が、(1)D-マンノース、L-マンノース、リビトール(D-リビトール)、キシリトール、meso-エリスリトール、D-ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、フルクトース、ソルビタン、スクロース、D-リボース、イノシトール、グルコース、及びそれらの組み合わせ;(2)ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリアクリレートカリウム塩、ポリアクリレートナトリウム塩、及びそれらの組み合わせ;並びに(3)ポリエチレングリコール;
からなる群から選択され、前記化学機械研磨組成物が、3~10、又は4~9のpHを有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項15】
前記組成物が、D-ソルビトール、ポリアクリレートアンモニウム塩、ポリエチレングリコールを含み、前記化学機械研磨組成物が、3~10、又は4~9のpHを有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項16】
酸化ケイ素膜を含む少なくとも1つの表面を有する半導体基板を化学機械研磨(CMP)する方法であって、
前記半導体基板を提供する工程;
研磨パッドを提供する工程;
請求項1~15のいずれか一項に記載の化学機械的研磨(CMP)組成物を提供する工程;
前記半導体基板の酸化ケイ素膜を含む前記少なくとも1つの表面を、前記研磨パッド及び前記化学機械研磨組成物と接触させる工程;並びに
酸化ケイ素膜を含む前記少なくとも1つの表面を研磨する工程、
を含む、方法。
【請求項17】
前記酸化ケイ素膜が、化学蒸着(CVD)酸化ケイ素膜、プラズマ強化CVD(PECVD)酸化ケイ素膜、高密度堆積CVD(HDP)酸化ケイ素膜、及びスピンオン酸化ケイ素膜からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記半導体基板が、窒化ケイ素、ポリSi、又は窒化ケイ素とポリSiとの組み合わせを含む第2の表面を更に含み、前記第2の表面が酸化ケイ素膜を含む前記少なくとも1つの表面と同時に研磨される場合、SiO
2:ポリSiの除去選択性は、40より大きく、好ましくは50より大きく、より好ましくは100より大きく、SiO
2:SiNの除去選択性は、30より大きく、好ましくは60より大きく、より好ましくは70より大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
酸化ケイ素膜を含む少なくとも1つの表面を有する半導体基板を化学機械研磨(CMP)するためのシステムであって、
a.前記半導体基板;
b.請求項1~15のいずれか一項に記載の化学機械的研磨(CMP)組成物;
c.研磨パッド;
を含み、酸化ケイ素膜を含む前記少なくとも1つの表面が、前記研磨パッド及び前記化学機械研磨組成物と接触している、システム。
【請求項20】
前記酸化ケイ素膜が、化学蒸着(CVD)酸化ケイ素膜、プラズマ強化CVD(PECVD)酸化ケイ素膜、高密度堆積CVD(HDP)酸化ケイ素膜、及びスピンオン酸化ケイ素膜からなる群から選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記半導体基板が、窒化ケイ素、ポリSi、又は窒化ケイ素とポリSiとの組み合わせを含む第2の表面を更に含み、前記第2の表面が酸化ケイ素膜を含む前記少なくとも1つの表面と同時に研磨される場合、SiO
2:ポリSiの除去選択性は、40より大きく、好ましくは50より大きく、より好ましくは100より大きく、SiO
2:SiNの除去選択性は、30より大きく、好ましくは60より大きく、より好ましくは70より大きい、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月5日に提出された米国特許仮出願第63/252,425号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、シャロートレンチアイソレーション(Shallow Trench Isolation、STI)プロセスのための化学機械平坦化(CMP)に関する。
【0003】
マイクロエレクトロニクスデバイスの製造において、関与する重要な工程は、研磨工程、とりわけ選択された材料の回収及び/又は構造体の平坦化を目的とした化学機械研磨のための表面の研磨工程である。
【0004】
例えば、SiN層は、SiO2層の下に堆積されて、研磨停止層として働く。このような研磨停止の役割は、シャロートレンチアイソレーション(STI)構造体において特に重要である。選択性は、酸化物研磨速度の、窒化物研磨速度に対する比として特徴的に表現される。1つの例は、窒化ケイ素(SiN)と比較した場合の二酸化ケイ素(SiO2)の増加した研磨選択性の比である。
【0005】
パターニングされたSTI構造体の全体的な平坦化において、酸化物トレンチディッシングを低減することは、検討されるべき重要な要素である。トレンチ酸化物の損失の低下は、隣接するトランジスタ間の電流の漏洩を防止する。ダイにわたっての(ダイにおける)不均一なトレンチ酸化物の損失は、トランジスタ性能及びデバイス製造の製造量に影響を与える。重大なトレンチ酸化物の損失(高い酸化物トレンチディッシング)は、デバイスの欠陥を引き起こす、トランジスタの不健全な分離(アイソレーション)を引き起こす。したがって、STI CMP研磨組成物において、酸化物トレンチディッシングを低減させることによって、トレンチ酸化物の損失を低減することは重要である。
【0006】
米国特許第6,491,943号は、セリア又はチタニア粒子である研磨粒子と、シャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用途に使用されるα-アミノ酸と、を含有する研磨組成物を開示している。報告された実施例は、酸化物及びSiN除去速度並びに酸化物:SiN選択性のみを列挙しており、列挙された実施例のいずれにおいてもディッシングデータは全くなかった。
【0007】
米国特許第8,409,990号は、シャロートレンチアイソレーション(STI)研磨用途に使用される、研磨剤としてのセリア粒子と、化学添加剤としてのバニリン酸又はプロリン又はイソプロピルアルコールと、を使用する研磨組成物を開示している。報告された実施例は、酸化物除去速度のみを列挙しており、列挙された実施例のいずれにおいてもSiN除去速度及びディッシングデータは全くなかった。
【0008】
米国特許出願公開第20130248756(A1)号は、研磨剤としてのセリア粒子と、両親媒性非イオン性界面活性剤と、から構成される研磨であって、両親媒性非イオン性界面活性剤が、水溶性直鎖状ポリオキシアルキレンブロックポリマー、水溶性分岐状ポリオキシアルキレンブロックコポリマー、水分散性直鎖状ポリオキシアルキレンブロックポリマー、及び水分散性分岐状ポリオキシアルキレンブロックコポリマーからなる群から選択される、研磨を開示している。報告された実施例では、酸化物:ポリ-Siの高い選択性が列挙されているが、概して、報告されたSiN除去速度は依然として300Å/分より高く、列挙された実施例のいずれにおいてもディッシングデータは全くない。
【0009】
米国特許第6,616,514号は、化学機械研磨によって、物品の表面から、窒化ケイ素に対して優先的に、第1の物質を除去する際に使用のための化学機械研磨スラリーを開示している。その発明による化学機械研磨スラリーは、研磨剤と、水性媒体と、プロトンを解離しない有機ポリオールと、を含み、上記有機ポリオールは、水性媒体中で解離可能ではない少なくとも3つのヒドロキシル基を有する化合物、又は水性媒体中で解離可能ではない少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのモノマーから形成されたポリマーを含む。
【0010】
米国特許出願公開第20160160083(A1)号は、STI CMP用途のための、研磨剤としてのセリア粒子と、添加剤としてのカルボン酸若しくはリン酸官能基を有するアニオン性ポリマーとを使用する、又は添加剤としてのいくつかのポリヒドロキシ有機化合物を使用する、研磨組成物を教示している。報告された実施例では、酸化物、SiN、ポリSiの除去速度及びそれらに関連する選択性が報告されているが、列挙された実施例のいずれにおいても、ディッシングデータは全く報告されていない。
【0011】
米国特許出願公開第20190093051(A1)号は、セリアと、カルボキシル基若しくはその塩を有するポリマー添加剤又は多価ヒドロキシ化合物と、を含む研磨用組成物で研磨した後に得られる研磨済研磨対象物を表面処理するための表面処理組成物を教示している。報告された実施例では、酸化物、SiN、ポリSiの除去速度及びそれらの関連する選択性は報告されておらず、列挙された実施例のいずれにおいても、ディッシングデータは全く報告されていない。
【0012】
しかしながら、それらの以前に開示されたシャロートレンチアイソレーション(STI)研磨組成物は、酸化物トレンチディッシングの低減の重要性に対処するものではなかった。
【0013】
上述のことから、組成物に関する技術分野において、STI化学機械研磨(CMP)プロセスにおいて、二酸化ケイ素の高い除去速度並びに二酸化ケイ素対窒化ケイ素での高い選択性に加えて、酸化物トレンチディッシングの低減及びオーバーポリッシングウィンドウの安定性の改善をもたらすことができる、化学機械研磨の組成物、方法及びシステムが依然として必要とされていることはすぐにわかる。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、シャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための化学機械研磨(CMP)組成物を提供することによって、その必要性を満たすものである。本組成物は、酸性、中性及びアルカリ性pH条件において、酸化物トレンチディッシング低減添加剤として3種の化学添加剤を導入することによって、酸化物トレンチディッシングの低減、ひいてはオーバーポリッシングウィンドウの安定性の改善をもたらす。
【0015】
本開示のシャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための化学機械研磨(CMP)組成物は、無機酸化物粒子と、酸化物トレンチディッシング低減添加剤として好適な化学添加剤と、を使用する固有の組み合わせを有する。
【0016】
より具体的には、本発明は、ポリSi除去速度を抑えながらSiNを抑制し、それによって酸化物トレンチディッシングの低減をもたらしながら、酸化物:SiN又は酸化物:ポリSiの望ましい高い除去選択性を提供するための3つの異なる化学添加剤の組み合わせを使用する、STI CMP組成物を提供する。
【0017】
一態様では、STI CMP研磨組成物であって:
研磨粒子;
少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる化学添加剤;
溶媒;並びに
任意選択で、
殺生物剤;及び
pH調節剤
を含み、
組成物が、2~12、好ましくは3~10、より好ましくは4~9のpHを有する、STI CMP研磨組成物が提供される。
【0018】
研磨粒子としては、無機酸化物粒子、金属酸化物被覆無機酸化物粒子、有機ポリマー粒子、金属酸化物被覆有機ポリマー粒子、表面改質無機酸化物粒子、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
無機酸化物粒子としては、セリア、焼成セリア、コロイダルシリカ、高純度コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルセリア、アルミナ、チタニア、及びジルコニア粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
焼成セリア粒子の例は、粉砕プロセスから製造された焼成セリア粒子である。
【0021】
金属酸化物被覆無機酸化物粒子としては、セリア被覆無機酸化物粒子、例えば、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア、及び任意の他のセリア被覆無機酸化物粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
有機ポリマー粒子としては、ポリスチレン粒子、ポリウレタン粒子、ポリアクリレート粒子、及び任意の他の有機ポリマー粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
金属酸化物被覆有機ポリマー粒子としては、セリア被覆有機ポリマー粒子、及びジルコニア被覆有機ポリマー粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
表面改質無機酸化物粒子には、SiO2-R-NH2、及び-SiO-R-SO3M[式中、Rは、例えば、(CH2)n基(nは、1~12の範囲を有する)であってもよく、Mは、例えば、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであってもよい]が含まれるが、これらに限定されない。このような表面化学改質シリカ粒子の例としては、扶桑化学工業製のFuso PL-2Cが挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
無機酸化物粒子の粒子径は、10nm~500nmの範囲であり、好ましい粒子径は20nm~300nmの範囲であり、より好ましい粒子径は50nm~250nmの範囲である。
【0026】
好ましい研磨粒子は、焼成セリアである。
【0027】
溶媒としては、脱イオン(DI)水、蒸留水、及びアルコール溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
組み合わせにおける少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる化学添加剤は、一緒に作用して、酸化物トレンチディッシングを低減し、ポリSi除去速度を抑制し、それによって、酸化物対ポリSiの除去選択性を向上させる。
【0029】
第1の種類の化学添加剤としては、分子構造中に少なくとも2つ以上、好ましくは4つ以上、より好ましくは6つ以上のヒドロキシル官能基を含有する有機ポリマーが挙げられる。第1の種類の化学添加剤は、酸化物トレンチディッシング低減剤として機能する。
【0030】
これらの化学添加剤のいくつかは、以下に列挙するような一般分子構造を有する:
【化1】
【0031】
nは2~5000から選択され、好ましいnは3~12であり、より好ましいnは4~7である。
【0032】
R1、R2、R3、及びR4は、同じ又は異なる、原子又は官能基であり得る。
【0033】
それらは、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、1つ以上のヒドロキシル基を有する有機基、置換された有機スルホン酸、置換された有機スルホン酸塩、置換された有機カルボン酸、置換された有機カルボン酸塩、有機カルボキシルエステル、有機アミン基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得;それらのうち少なくとも2つ以上、好ましくは4つが水素原子である。
【0034】
R
1、R
2、R
3、及びR
4が全て水素原子である場合、化学添加剤は複数のヒドロキシル官能基を有する。このような化学添加剤のいくつかの例の分子構造を以下に列挙する:
【化2】
【0035】
好ましい第1の種類の化学添加剤としては、D-マンノース、L-マンノース、リビトール(D-リビトール)、キシリトール、meso-エリスリトール、D-ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、フルクトース、ソルビタン、スクロース、D-リボース、及びイノシトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
STI CMPスラリーは、0.001重量%~2.0重量%、0.025重量%~1.0重量%、又は0.05重量%~0.5重量%の範囲の濃度で第1の種類の化学添加剤を含有する。
【0037】
第2の種類の化学添加剤は、カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はそれらの塩である。
【0038】
第2の種類の化学添加剤は、酸化物トレンチディッシング低減剤として機能する。
【0039】
カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はそれらの塩としては、以下に列挙するような一般分子構造を有するポリアクリレート、ポリアクリル酸、及びそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない:
【化3】
【0040】
Rは、Hを含むがこれに限定されず、イオンは、アンモニウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンを含むがこれに限定されない。nは、モノマー繰り返し単位の数を表し、14~13889、14~139、又は14~70の範囲であり得る。又は、このnの数は、1,000~1,000,000、1,000~10,000、若しくは1,000~5000の範囲の有機ポリマーの分子量を与える。
【0041】
STI CMPスラリーは、0.001重量%~2.0重量%、0.005重量%~1.0重量%、又は0.01重量%~0.5重量%の範囲の濃度で第2の種類の化学添加剤を含有する。
【0042】
第3の種類の化学添加剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、又はPEGを含有するコポリマーである。ポリSi除去速度抑制剤としては、主にポリエチレングリコール(PEG)が用いられる。
【0043】
PEGの一般構造を以下に列挙する:
【化4】
モノマー繰り返し単位の数nは4~22727の範囲であり、これは200~1,000,000の範囲の分子量を有するPEG分子に相当する。
【0044】
STI CMPスラリーは、0.0001重量%~1.0重量%、0.00025重量%~0.5重量%、0.0005重量%~0.1重量%、又は0.00075重量%~0.05重量%の範囲の濃度で第3の種類の化学添加剤を含有する。
【0045】
別の態様では、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて上記の化学機械研磨(CMP)組成物を使用して、二酸化ケイ素を含む、少なくとも1つの表面を有する基板を化学機械研磨(CMP)する方法が提供される。
【0046】
別の態様では、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて上記の化学機械研磨(CMP)組成物を使用して、二酸化ケイ素を含む、少なくとも1つの表面を有する基板を化学機械研磨(CMP)するシステムが提供される。
【0047】
研磨された酸化物膜は、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、高密度堆積CVD(HDP)、又はスピンオン酸化物膜であり得る。
【0048】
上記で開示される基板は、ポリSi、窒化ケイ素、又はポリSi及び窒化ケイ素の両方を含有する少なくとも1つの表面を更に含み得る。SiO2:ポリSiの除去選択性は、10より大きく、好ましくは20より大きく、より好ましくは30より大きい。SiO2:SiNの除去選択性は、10より大きく、好ましくは20より大きく、より好ましくは30より大きい。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、シャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための化学機械研磨(CMP)組成物に関する。
【0050】
パターニングされたSTI構造体の全体的な平坦化において、酸化物トレンチディッシングを低減することは、検討されるべき重要な要素である。トレンチ酸化物の損失の低下は、隣接するトランジスタ間の電流の漏洩を防止する。ダイにわたっての(ダイにおける)不均一なトレンチ酸化物の損失は、トランジスタ性能及びデバイス製造の製造量に影響を与える。重大なトレンチ酸化物の損失(高い酸化物トレンチディッシング)は、デバイスの欠陥を引き起こす、トランジスタの不健全な分離(アイソレーション)を引き起こす。したがって、STI CMP研磨組成物において、酸化物トレンチディッシングを低減させることによって、トレンチ酸化物の損失を低減することは重要である。
【0051】
より具体的には、本発明は、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる種類の化学添加剤を使用して、酸化物除去速度を調整し、SiN及びポリSi除去速度を抑制して、高い酸化物:SiN及び高い酸化物:ポリSi選択性を提供する一方で、酸化物トレンチディッシングの低減及びオーバーポリッシングウィンドウの安定性の改善をもたらす、シャロートレンチアイソレーション(STI)CMP用途のための化学機械研磨(CMP)組成物に関する。
【0052】
一態様では、STI CMP研磨組成物であって:
研磨粒子;
少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる化学添加剤;
溶媒;並びに
任意選択で、
殺生物剤;及び
pH調節剤
を含み、
組成物が、2~12、好ましくは3~10、より好ましくは4~9のpHを有する、STI CMP研磨組成物が提供される。
【0053】
研磨粒子としては、無機酸化物粒子、金属酸化物被覆無機酸化物粒子、有機ポリマー粒子、金属酸化物被覆有機ポリマー粒子、表面改質無機酸化物粒子、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
無機酸化物粒子としては、セリア、焼成セリア、コロイダルシリカ、高純度コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルセリア、アルミナ、チタニア、及びジルコニア粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
焼成セリア粒子の例は、粉砕プロセスから製造された焼成セリア粒子である。
【0056】
金属酸化物被覆無機酸化物粒子としては、セリア被覆無機酸化物粒子、例えば、セリア被覆コロイダルシリカ、セリア被覆高純度コロイダルシリカ、セリア被覆アルミナ、セリア被覆チタニア、セリア被覆ジルコニア、及び任意の他のセリア被覆無機酸化物粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
有機ポリマー粒子としては、ポリスチレン粒子、ポリウレタン粒子、ポリアクリレート粒子、及び任意の他の有機ポリマー粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
金属酸化物被覆有機ポリマー粒子としては、セリア被覆有機ポリマー粒子、及びジルコニア被覆有機ポリマー粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
表面改質無機酸化物粒子には、SiO2-R-NH2、及び-SiO-R-SO3M[式中、Rは、例えば、(CH2)n基(nは、1~12の範囲を有する)であってもよく、Mは、例えば、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムであってもよい]が含まれるが、これらに限定されない。このような表面化学改質シリカ粒子の例としては、扶桑化学工業製のFuso PL-2Cが挙げられるが、これに限定されない。
【0060】
無機酸化物粒子の粒子径は、10nm~500nmの範囲であり、好ましい粒子径は20nm~300nmの範囲であり、より好ましい粒子径は50nm~250nmの範囲である。
【0061】
好ましい研磨粒子は、焼成セリアである。
【0062】
これらの研磨粒子の濃度は、0.01重量%~20重量%の範囲であり、好ましい濃度は0.05重量%~10重量%の範囲であり、より好ましい濃度は0.1重量%~5重量%の範囲である。
【0063】
溶媒としては、脱イオン(DI)水、蒸留水、及びアルコール溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
好ましい溶媒はDI水である。
【0065】
STI CMPスラリーは、0.0001重量%~0.05重量%、好ましくは0.0005重量%~0.025重量%、より好ましくは0.001重量%~0.01重量%の殺生物剤を含有し得る。
【0066】
殺生物剤としては、Dupont/Dow Chemical Co.製のKathon(商標)、Kathon(商標)CG/ICP II、Dupont/Dow Chemical Co.製のBioban又はNeolone M10が挙げられるが、これらに限定されない。それらは、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び/又は2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの活性成分を有する。
【0067】
STI CMPスラリーは、pH調節剤を含有してもよい。
【0068】
酸性又は塩基性pH調節剤を使用して、STI研磨組成物を最適化されたpH値に調節することができる。
【0069】
酸性pH調節剤としては、硝酸、塩酸、硫酸、リン酸、他の無機酸又は有機酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
塩基性pH調節剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、有機水酸化第四級アンモニウム化合物、有機アミン、及びpHをよりアルカリ性の方向に調節するのに使用することができる他の化学試薬などが挙げられる。
【0071】
STI CMPスラリーは、0重量%~1重量%、好ましくは0.01重量%~0.5重量%、より好ましくは0.1重量%~0.25重量%のpH調節剤を含有する。
【0072】
組み合わせにおける少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる化学添加剤は、一緒に作用して、高い酸化膜除去速度を達成し、ポリSi及びSiN除去速度を抑制し、高くまた調整可能な酸化物:SiN及び酸化物:ポリSi選択性を達成し、より重要なことには、顕著に酸化物トレンチディッシングを低減し、オーバーポリッシングウィンドウの安定性を改善するという利点を提供する。
【0073】
第1の種類の化学添加剤としては、分子構造中に少なくとも2つ以上、好ましくは4つ以上、より好ましくは6つ以上のヒドロキシル官能基を含有する有機ポリマーが挙げられる。第1の種類の化学添加剤は、酸化物トレンチディッシング低減剤として機能する。
【0074】
第1の種類の化学添加剤のいくつかは、以下に列挙するような一般分子構造を有する:
【化5】
【0075】
nは2~5000から選択され、好ましいnは3~12であり、より好ましいnは4~7である。
【0076】
R1、R2、R3、及びR4は、同一又は異なる、原子又は官能基であり得る。
【0077】
それらは、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、1つ以上のヒドロキシル基を有する有機基、置換された有機スルホン酸、置換された有機スルホン酸塩、置換された有機カルボン酸、置換された有機カルボン酸塩、有機カルボキシルエステル、有機アミン基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得;それらのうち少なくとも2つ以上、好ましくは4つが水素原子である。
【0078】
R
1、R
2、R
3、及びR
4が全て水素原子である場合、化学添加剤は複数のヒドロキシル官能基を有する。このような化学添加剤のいくつかの例の分子構造を以下に列挙する:
【化6】
【0079】
好ましい第1の種類の化学添加剤としては、D-マンノース、L-マンノース、リビトール(D-リビトール)、キシリトール、meso-エリスリトール、D-ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、イジトール、マルチトール、フルクトース、ソルビタン、スクロース、D-リボース、及びイノシトールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
STI CMPスラリーは、0.001重量%~2.0重量%、0.025重量%~1.0重量%、又は0.05重量%~0.5重量%の範囲の濃度で第1の種類の化学添加剤を含有する。
【0081】
第2の種類の化学添加剤は、カルボン酸基を含有する有機ポリマー又はそれらの塩である。第2の種類の化学添加剤は、酸化物トレンチディッシング低減剤として機能する。
【0082】
カルボン酸基を含有する有機ポリマー又は塩としては、以下に列挙するような一般分子構造を有するポリアクリル酸、ポリアクリレート、及びそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない:
【化7】
【0083】
Rは、Hを含むがこれに限定されず、イオンは、アンモニウムイオン、カリウムイオン、及びナトリウムイオンを含むがこれらに限定されない。
【0084】
nは、モノマー繰り返し単位の数を表し、14~13889、14~139、又は14~70の範囲であり得る。又は、このnの数は、1,000~1,000,000、1,000~10,000、若しくは1,000~5000の範囲の有機ポリマーの分子量を与える。
【0085】
STI CMPスラリーは、0.001重量%~2.0重量%、0.005重量%~1.0重量%、又は0.01重量%~0.5重量%の範囲の濃度で第2の種類の化学添加剤を含有する。
【0086】
第3の種類の化学添加剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、又はPEGを含有するコポリマーである。
【0087】
ポリSi除去速度抑制剤としては、主にポリエチレングリコール(PEG)が用いられる。
【0088】
PEGの一般構造を以下に列挙する:
【化8】
モノマー繰り返し単位の数nは4~22727の範囲であり、これは200~1,000,000の範囲の分子量を有するPEG分子に相当する。
【0089】
STI CMPスラリーは、0.0001重量%~1.0重量%、0.00025重量%~0.5重量%、0.0005重量%~0.1重量%、又は0.00075重量%~0.05重量%の範囲の濃度で第3の種類の化学添加剤を含有する。
【0090】
別の態様では、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて上記の化学機械研磨(CMP)組成物を使用して、二酸化ケイ素を含む、少なくとも1つの表面を有する基板を化学機械研磨(CMP)する方法が提供される。
【0091】
別の態様では、シャロートレンチアイソレーション(STI)プロセスにおいて上記の化学機械研磨(CMP)組成物を使用して、二酸化ケイ素を含む、少なくとも1つの表面を有する基板を化学機械研磨(CMP)するシステムが提供される。
【0092】
研磨された酸化物膜は、化学蒸着(CVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、高密度堆積CVD(HDP)、又はスピンオン酸化物膜であり得る。
【0093】
上記で開示される基板は、ポリSi、窒化ケイ素、又はポリSi及び窒化ケイ素の両方を含有する少なくとも1つの表面を更に含み得る。SiO2:ポリSiの除去選択性は、40より大きく、好ましくは90より大きく、より好ましくは200より大きい。SiO2:SiNの除去選択性は、10より大きく、好ましくは20より大きく、より好ましくは50より大きい。
【0094】
本発明を更に説明するために、以下の非限定的な実施例を示す。
【0095】
CMPの手法
以下に示す実施例では、以下に示す手順及び実験条件を用いて、CMP実験を行った。
【0096】
用語集
構成要素
焼成セリア:約200ナノメートル(nm)の粒子径を有する研磨剤として使用され;このような焼成セリア粒子は、約20ナノメートル(nm)~500ナノメートル(nm)の範囲の粒子径を有することができる。
【0097】
焼成セリア粒子(様々な粒子径を有する)は、日本のBJC Inc.によって供給された。
【0098】
化学添加剤、例えばマルチトール、D-フルクトース、ズルシトール、D-ソルビトール、ポリアクリル酸、又はポリアクリレート若しくはその塩、ポリ(エチレングリコール)、及び他の化学原料は、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)によって供給された。
【0099】
TEOS:テトラエチルオルトシリケート
【0100】
研磨パッド:研磨パッド、IC1010、及びその他のパッドは、CMPの際に使用し、DOW,Inc.によって供給された。
パラメータ
全般
Å又はA:オングストローム-長さの単位
BP:背圧、psi単位
CMP:化学機械的平坦化=化学機械的研磨
CS:キャリア速度
DF:ダウンフォース:CMP中に加えられる圧力、単位:psi
min:分
mL:ミリリットル
mV:ミリボルト
psi:ポンド/平方インチ
PS:研磨ツールのプラテン回転速度、単位:rpm(毎分回転数)
Sf:スラリー流量、mL/分
重量%:(列挙された構成要素の)重量百分率
TEOS:SiN選択性:(TEOSの除去速度)/(SiNの除去速度)
TEOS:ポリSi選択性:(TEOSの除去速度)/(ポリSiの除去速度)
HDP:高密度プラズマで堆積したTEOS
TEOS又はHDP除去速度:所与のダウン圧力で測定されたTEOS又はHDP除去速度。CMPツールのダウン圧力は、以下に列挙する実施例において3.1psiであった。
SiN除去速度:所与のダウン圧力で測定されたSiN除去速度。CMPツールのダウン圧力は、列挙する実施例において3.1psiであった。
ポリSi除去速度:所与のダウン圧力で測定されたSiN除去速度。CMPツールのダウン圧力は、列挙する実施例において3.1psiであった。
【0101】
測定
膜は、Creative Design Engineering,Inc(20565 Alves Dr.,Cupertino,CA,95014)製のResMap CDE,モデル168を使用して測定した。ResMapツールは、4点プローブのシート抵抗ツールである。膜について、5mmエッジエクスクルージョンで49点の直径スキャンを行った。
【0102】
CMPツール
使用したCMPツールは、Applied Materials(3050 Boweres Avenue,Santa Clara,California,95054)製の200mm Mirra又は300mm Reflexionである。DOW,Inc(451 Bellevue Rd.,Newark,DE 19713)によって供給されたIC1000パッドは、ブランケット及びパターン付きウエハの検討のために、プラテン1上で使用された。
【0103】
IC1010パッド又は他のパッドは、18分間パッドを調整することによって慣らした。コンディショナーのダウンフォースは7ポンドであった。ツールの設定及びパッドの慣らしを確認するために、2つのタングステンモニタ及び2つのTEOSモニタを、基準(ベースライン)条件で、Versum Materials Inc.によって供給されたVersum(登録商標)STI2305スラリーで研磨した。
【0104】
ウエハ
研磨実験は、PECVD SiN(又はSiN)、LPCVD SiN;PECVD TEOS(又はTEOS)、及びHDP TEOS(又はHDP)ウエハを用いて行った。これらのブランケットウエハは、Silicon Valley Microelectronics(2985 Kifer Rd.,Santa Clara,CA 95051)から購入した。
【0105】
研磨実験
ブランケットウエハの検討では、酸化物ブランケットウエハ、及びSiNブランケットウエハを基準条件で研磨した。
【0106】
ツール基準条件は、テーブル速度;93rpm、ヘッド速度;87rpm、膜圧力;3.1psi、管内圧力;3.1psi、保持リング圧力;5.1psi、スラリー流量;200mL/分であった。
【0107】
スラリーは、SWK Associates,Inc.(2920 Scott Blvd.Santa Clara,CA 95054)により供給された、パターン付きウエハ(MIT864)上の研磨実験に使用された。これらのウエハは、Veeco VX300プロファイラー/AFM装置で測定した。酸化膜ディッシングの測定には、3種類の異なる大きさのピッチ構造体を使用した。ウエハは、中心、中間部、及び端のダイ位置で測定された。
【0108】
STI CMP研磨組成物から得られたTEOS:SiN選択性:(TEOSの除去速度)/(SiNの除去速度)は、調整可能であった。
【0109】
STI CMP研磨組成物から得られたTEOS:ポリSi選択性:(TEOSの除去速度)/(ポリSiの除去速度)は、調整可能であった。
【0110】
焼成セリアは、粉砕プロセスから調製されており、BAIKOWSKI JAPAN CO.,LTDから購入した。焼成セリア粒子は、動的光散乱(DLS)によって測定された約100nmのMPSを有する。
【0111】
3000~18000の範囲の分子量を有するポリアクリレートアンモニウム塩は、日本の花王ケミカルから購入した。
【0112】
1,000~8000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)は、Sigma Aldrich of Merck KGaAから購入した。
【0113】
他の全ての試薬及び溶媒は、最高の商用グレードのものをSigma-Aldrich(Merck KGaA)から購入し、特に明記しない限り、受領したままの状態で使用した。
【0114】
実施例1
以下の実施例において、0.5重量%の焼成セリア、0.0001重量%~0.05重量%の範囲の殺生物剤、及び脱イオン水を含む研磨組成物を、pH5.35で標準(ref.)として調製した。
【0115】
表1に示すように、異なる量の異なる添加剤をRef.に添加することによって、実施研磨組成物を調製した。3000~18000の範囲の分子量を有するポリアクリレートアンモニウム塩(PAA塩)を、第2の種類の化学添加剤として使用した。
【0116】
酸性pH条件及びアルカリ性pH条件に使用したpH調節剤は、それぞれ硝酸及び水酸化アンモニウムであった。全ての実施例のpHは5.35であった。
【0117】
研磨組成物は、TEOS、HDP、SiN、及びポリSiバンケット(banket)ウエハを研磨するために使用された。膜除去速度(RR)並びにTEOS:SiN及びTEOS:ポリSiの除去速度(RR)選択性を表1に列挙した。
【表1】
【0118】
表1に示される結果のように、3種の異なる種類の化学添加剤(PAA、D-ソルビトール、及びPEG)の全て及び研磨剤として焼成セリアを含有する実施例研磨組成物は、化学添加剤を含有しない組成物、1種の種類の化学添加剤を含有する組成物、又は更には2種の種類の化学添加剤を含有する組成物と比較して、ポリSi除去速度が有意に抑制され、TEOS:ポリSi RR選択性が有意に向上した。
【0119】
ディッシング試験は、異なるサイズの酸化物トレンチに対して同じ組成物を用いて行った。結果を表2に列挙した。
【0120】
表2に示される酸化物トレンチディッシングの結果のように、実施例研磨組成物は、200×200μmのフィーチャでは低い酸化物トレンチディッシングを提供しながら、100×100μmのフィーチャでは最も低い酸化物トレンチディッシングを提供した。
【0121】
異なるサイズの酸化物トレンチに対するディッシング速度を表3に列挙した。
【0122】
表3に示される酸化物トレンチディッシング速度の結果のように、研磨剤としての焼成セリア及び3種の異なる種類の化学添加剤を使用する研磨組成物は、100×100μmフィーチャでは低い酸化物トレンチディッシングを提供しながら、200×200μmのフィーチャでは最も低い酸化物トレンチディッシング速度を提供した。
【表2】
【表3】
【0123】
pH 5.35でのP200トレンチ、P200 SiN損失速度(Å/秒)、及びP200トレンチ/ブランケット比に対する、研磨剤として焼成セリアを有する研磨組成物中に3種の異なる種類の化学添加剤を使用する効果を試験した(表4)。
【表4】
【0124】
表4に示される結果のように、実施例研磨組成物は、低いトレンチ損失速度及び窒化物損失速度を提供しながら、最も低いP200トレンチ/ブランケット比を提供した。低いトレンチ損失速度及び窒化物損失速度は、典型的には、低酸化物トレンチディッシングを示す。低いトレンチ対ブランケット比はまた、低酸化物トレンチディッシングを示す。これらは、表2及び表3に示される結果と一致する。
【0125】
実施例2
以下の実施例において、0.5重量%の焼成セリア、0.0001重量%~0.05重量%の範囲の殺生物剤、及び脱イオン水を含む研磨組成物を、pH6.74で標準1(Ref.1)として調製した。
【0126】
研磨組成物は、TEOS、HDP、SiN、及びポリSiブランケットウエハを研磨するために使用された。膜除去速度並びにTEOS:SiN及びTEOS:ポリSiに対する選択性を測定した。結果を表5に列挙した。
【表5】
【0127】
表5に示される結果のように、実施例研磨組成物は、pH6.74における化学添加剤を含有しない組成物、1種又は2種の化学添加剤を含有する組成物と比較して、TEOS:SiN及びTEOS:ポリSiの両方について最も高い選択性を提供した。
【0128】
ディッシング試験は、異なるサイズの酸化物トレンチに対して行った。結果を表6に列挙した。
【表6】
【0129】
表6に示されるように、実施例研磨組成物は、pH6.74において、化学添加剤を含有しない組成物、1種又は2種の化学添加剤を含有する組成物と比較して、最も低いトレンチディッシングを提供した。
【0130】
異なるサイズの酸化物トレンチディッシング速度に対する、pH 6.74で研磨剤として焼成セリアを有する研磨組成物中に3種の異なる種類の化学添加剤を使用する効果を試験した。結果を表7に列挙した。
【表7】
【0131】
表7に示される酸化物トレンチディッシングの結果のように、実施例研磨組成物は、pH6.74において、100×100μm及び200×200μmの両方のフィーチャ上で最も低い酸化物トレンチディッシング速度を提供した。
【0132】
pH 6.74でのP200トレンチ、P200 SiN損失速度(Å/秒)、及びP200トレンチ/ブランケット比に対する、研磨剤として焼成セリアを有する研磨組成物中に3種の異なる種類の化学添加剤を使用する効果を試験した。結果を表8に列挙した。
【表8】
【0133】
表8に示される結果のように、最も低いP200トレンチ/ブランケット比及びP200トレンチ損失速度は、pH6.74で、研磨剤としての焼成セリア及び3種の異なる種類の化学添加剤を使用した実施例研磨組成物で得られた。
【0134】
実施例1及び2に示される試験結果のように、焼成セリア及び少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の異なる種類の化学添加剤を含有するSTI CMP研磨組成物(実施例研磨組成物)は、抑制されたSiN及びポリSi及びSiN除去速度、向上したTEOS:SiN及びTEOS:ポリSi選択性を提供する一方で、低酸化物トレンチディッシングを提供した。
【0135】
実施例3
実施例3では、0.5重量%の焼成セリア、0.0001重量%~0.05重量%の範囲の殺生物剤、0.025重量%の第1の種類の化学添加剤PAA塩、0.15重量%の第2の種類の化学添加剤D-ソルビトール、0.00125重量%の第3の種類の化学添加剤ポリエチレングリコール(PEG)、及び脱イオン水を含む実施研磨組成物を調製し、異なるpH条件で試験した。
【0136】
膜除去速度(RR)並びにTEOS:PECVD SiN及びTEOS:LPCVD SiNの除去速度(RR)選択性に対するpH条件の効果を表9に列挙した。
【表9】
【0137】
表9に示される結果のように、5.35のpHから開始して、実施例研磨組成物は、21及び32という高TEOS:SiN選択性を提供し、99(pH7.5)及び139(pH9)付近でピークに達した。したがって、高TEOS:SiN選択性は、試験したpH範囲に及んだ。
【0138】
ディッシング試験は、異なるサイズの酸化物トレンチに対して異なるpH条件で行われた。結果を表10に列挙した。
【0139】
表10に示されるように、実施例研磨組成物は、5.35~8.5のpH範囲で100μm及び200μmのフィーチャでの低酸化物トレンチディッシングを提供した。
【0140】
pH条件が9.0である場合、100μm及び200μmの両方のフィーチャは、はるかに悪い酸化物トレンチディッシングを有するが、表2に示されるように、pH5.35でのRef.研磨組成物からの酸化物トレンチディッシングよりも依然として低い。
【表10】
【0141】
異なるサイズの酸化物トレンチフィーチャでのディッシング速度に対するpH条件の効果を表11に列挙した。
【表11】
【0142】
表11に示されるように、実施例研磨組成物は、5.35~8.5のpH範囲で100μm及び200μmのフィーチャでの低酸化物トレンチディッシング速度を維持した。pH条件が9.0である場合、100μm及び200μmフィーチャの両方が、はるかに高い酸化物トレンチディッシング速度を有するが、表3に示されるように、pH5.35でのRef.研磨組成物からの結果よりもはるかに低い。
【0143】
P200トレンチ、P200 SiN損失速度(Å/秒)、及びP200トレンチ/ブランケット比に対するpH条件の効果を試験した。結果を表12に列挙した。
【表12】
【0144】
表12に示される結果のように、実施例研磨組成物は、5.35~8.5のpH範囲において、低いP200トレンチ損失速度、低いP200 SiN損失速度及び低いP200トレンチ/ブランケット比を維持した。pH条件が9.0である場合、はるかに高いP200トレンチ損失速度、P200 SiN損失速度及びP200トレンチ/ブランケット比が得られたが、表4に示されるように、pH5.35でのRef.研磨組成物からの結果よりも依然として低かった。
【0145】
pH試験結果は、実施例研磨組成物を使用することが、5.35~8.5の広いpH範囲で、望ましい酸化物膜除去速度、低酸化物トレンチディッシング、低トレンチディッシング速度、及び低SiN損失速度を提供することを示した。
【0146】
実施例4
本実施例において、研磨組成物Ref.3は、0.5重量%の焼成セリア、0.0001重量%~0.05重量%の範囲の殺生物剤、0.025重量%の第1の種類の化学添加剤PAA塩、0.15重量%の第2の種類の化学添加剤D-ソルビトール、0.00125重量%の第3の種類の化学添加剤ポリエチレングリコール(PEG)、脱イオン水、及び6.74のpHを用いて調製された。
【0147】
PAA塩及びポリエチレングリコール(PEG)の濃度を、Ref.3から変更した。
【0148】
表13に示すように、Ref.4は、Ref.3に基づいてPAA塩を0.025重量%から0.075重量%に増加させることによって得られ;Ref.5は、Ref.4に基づいて更にPEGを0.00125重量%から0.0025重量%に増加させることによって得られ;Ref.6は、Ref.5に基づいてPEGを0.0025重量%から0.005重量%に更に増加させることによって得られ、Ref.7は、Ref.6に基づいてPAA塩を0.075重量%から0.1重量%に更に増加させることによって得られた。
【0149】
膜除去速度(RR)並びにTEOS:SiN及びTEOS:ポリSiの除去速度(RR)選択性に対する第1及び第3の種類の化学添加剤の濃度効果を表13に列挙した。
【表13】
【0150】
表13に示される結果のように、PAA塩及びPEGの試験された濃度範囲内で、研磨組成物は、表5に示すような、3種の化学添加剤を使用しない研磨組成物(Ref.1)と比較して、一貫して、抑制されたポリSi RR、及びTEOS:SiN及びTEOS:ポリ-Siの高い選択性を提供した。
【0151】
ディッシング試験は、異なるサイズの酸化物トレンチフィーチャで行った。結果を表14に列挙した。
【表14】
【0152】
表14に示される結果のように、PAA塩及びPEGの試験された濃度範囲内で、研磨組成物は、表6に示されるような、3種の化学添加剤を使用しない研磨組成物(Ref.1)と比較して、一貫して低いトレンチディッシングを提供した。
【0153】
異なるサイズの酸化物トレンチフィーチャでのディッシング速度を試験し、結果を表15に示した。
【表15】
【0154】
表15に示されるトレンチディッシング速度結果のように、PAA塩及びPEGの試験された濃度範囲内で、研磨組成物は、表7に示されるような、3種の化学添加剤を使用しない研磨組成物(Ref.1)と比較して、一貫して低いディッシング速度を提供した。
【0155】
実施例を含む上に列挙された本発明の実施形態は、本発明から作製することのできる多数の実施形態の例示である。プロセスの多数の他の構成が使用されてもよく、プロセスにおいて使用される材料は、具体的に開示されたもの以外の多数の材料から選択されてもよいことが企図される。
【国際調査報告】