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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置用のペリクル膜
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/62 20120101AFI20240927BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F1/62
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522232
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022077941
(87)【国際公開番号】W WO2023066685
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21204216.2
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ドンメズ ノヤン,インシ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ワード,ティース,ウーター
(72)【発明者】
【氏名】レイニンク,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ゴール,ティム,ウィレム,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】クライン,アレクサンダー,ルードウィク
(72)【発明者】
【氏名】ハウエリング,ゾマー,シルベスター
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーミューレン,ポール,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ギースバーズ,アドリアヌス,ヨハネス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】クルートウィック,ヨハン,ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルジェルス,ランベルタス,イドリス,ヨハネス,カタリーナ
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BC33
2H195BC34
2H195CA20
2H197BA23
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA23
2H197HA03
(57)【要約】
シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含むペリクル膜であって、0.3以上の放射率を有するペリクル膜が提供される。また、ペリクル膜を製造する方法、ペリクルアセンブリ、及びそのようなペリクル膜又はペリクルアセンブリを備えるリソグラフィ装置が提供される。また、リソグラフィ装置又は方法における、そのようなペリクル膜、ペリクルアセンブリ、又はリソグラフィ装置の使用が記載されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含むペリクル膜であって、0.3以上の放射率を有する、ペリクル膜。
【請求項2】
90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、又は95%以上の透過率を有する、請求項1に記載のペリクル膜。
【請求項3】
最高およそ5原子%の量の窒素を含む、請求項1又は請求項2に記載のペリクル膜。
【請求項4】
前記金属シリサイド結晶は、30nm以下の直径を有し、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、30nm以下の直径を有するシリコン結晶を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項5】
前記金属シリサイド結晶は、前記ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされ、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、前記ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされたシリコン結晶を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項6】
前記金属シリサイド結晶の前記集団の少なくとも一部は、前記ペリクル膜の厚さにわたり、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、前記ペリクル膜の厚さにわたるシリコン結晶を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項7】
多層膜である、請求項1~6のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項8】
前記ペリクル膜は、シリコンモリブデン合金を含む1つ以上の層間に、シリコン系マトリックス中に前記金属シリサイド結晶の前記集団を含む層を含む、請求項7に記載のペリクル膜。
【請求項9】
前記金属シリサイド結晶は、モリブデンシリサイド結晶である、請求項1~8のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項10】
前記シリコン系マトリックスは、p-Si、ポリSi、又はSiNを含み、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、シリコン結晶を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項11】
前記シリコン系マトリックスは、ドープされ、任意選択的に、前記シリコン系マトリックスは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上でドープされる、請求項1~10のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項12】
ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの前記1つ以上は、1015cm-3~1021cm-3程度の濃度で存在する、請求項11に記載のペリクル膜。
【請求項13】
前記ペリクル膜は、約10原子%~約30原子%のモリブデン、任意選択的に約15原子%~約25原子%のモリブデン、任意選択的に約20原子%のモリブデンを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項14】
前記ペリクル膜は、約90原子%~約65原子%のシリコン、任意選択的に約85原子%~約70原子%のシリコン、任意選択的に約75原子%のシリコンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項15】
前記ペリクル膜の厚さは、約10nm~約100nmである、請求項1~14のいずれか一項に記載のペリクル膜。
【請求項16】
ペリクル膜を製造する方法であって、
a)アニーリング温度で動作するアニーリング炉から膜を取り出し、前記膜を周囲温度にさらして前記膜を急激に冷却することによって前記膜を急冷すること、
b)前記膜を、30秒以下の間、アニーリング温度まで加熱すること、
c)前記膜を堆積する間、前記膜をイオンと衝突させること、
d)アニーリングの前にキャッピング層を前記膜の上に設けること、
e)およそ500℃以上の温度の膜をおよそ100℃以下の温度の表面の上に置いて結晶化を誘起すること、又は
f)ガラス遷移温度を超えるまで非晶質膜の一方の側面を加熱して、前記非晶質膜の反対の側面から結晶化を誘発すること、
から選択された少なくとも1つの工程を含む、方法。
【請求項17】
アニーリングが、およそ30分以下、およそ20分以下、およそ15分以下、およそ10分以下、又はおよそ5分以下にわたって行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アニーリングが、約600℃~約900℃、任意選択的に約600℃~約800℃、又は任意選択的に約650℃~約700℃のアニーリング温度で行われる、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アニーリングは、およそ750℃以下、任意選択的におよそ700℃以下、任意選択的におよそ650℃以下、又は任意選択的におよそ600℃以下の温度で行われる、請求項16又は請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記アニーリングは、最長10時間、最長9時間、最長8時間、又はおよそ1時間~およそ8時間の期間にわたって行われる、請求項16のa)及びc)~f)、請求項18、又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ペリクル膜をドープすることを含み、任意選択的に、前記ドーパントは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上である、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ドーパントは、1015cm-3~1021cm-3程度の濃度で存在する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~15のいずれか一項に記載のペリクル膜を備えるペリクルアセンブリ、又は請求項16~22のいずれか一項に記載の方法により製造されたペリクルアセンブリ。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか一項に記載のペリクル膜、又は請求項23に記載のペリクルアセンブリ、を備えるリソグラフィ装置。
【請求項25】
リソグラフィ装置又は方法における、請求項1~24のいずれか一項にペリクル膜、ペリクルアセンブリ、リソグラフィ装置、又は方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001] 本出願は、2021年10月22日に出願された欧州特許出願第21204216.2号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0001] 本発明は、リソグラフィ装置用のペリクル膜、リソグラフィ装置用のアセンブリ、ペリクル膜の製造方法、及びリソグラフィ装置又は方法におけるペリクル膜の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上に付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造において使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上に、パターニングデバイス(例えば、マスク)からのパターンを投影し得る。
【0004】
[0003] パターンを基板上に投影するためにリソグラフィ装置によって使用される放射の波長が、その基板上に形成することができるフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を用いるリソグラフィ装置を使用して、(例えば193nmの波長を有する電磁放射を用い得る)従来のリソグラフィ装置と比較して小さなフィーチャを、基板上に形成することができる。
【0005】
[0004] リソグラフィ装置は、パターニングデバイス(例えば、マスク又はレチクル)を含む。像を基板上に形成するために、放射はパターニングデバイスを通って提供される、又はパターニングデバイスから反射される。浮遊微小粒子及び他の形態の汚染物質からパターニングデバイスを保護するために、ペリクルとも呼ばれる膜アセンブリが提供され得る。パターニングデバイスの表面上の汚染物質は、基板上に製造欠陥を引き起こすことがある。
【0006】
[0005] ペリクルは、パターニングデバイス以外の光学コンポーネントを保護するために設けられることもある。ペリクルは、互いに封止されたリソグラフィ装置の領域間にリソグラフィ放射用の通路を設けるために使用されることもある。ペリクルは、スペクトル純度フィルタなどのフィルタとして、又はリソグラフィ装置の動的ガスロックの一部として、使用されることもある。
【0007】
[0006] マスクアセンブリは、パターニングデバイス(例えば、マスク)を粒子汚染物質から保護するペリクルを含み得る。ペリクルは、ペリクルフレームによって支持されて、ペリクルアセンブリを形成し得る。ペリクルは、例えば、ペリクルの縁領域をフレームに接着又は他の方法で取り付けることによって、フレームに取り付けられ得る。フレームは、パターニングデバイスに対して恒久的に又は着脱可能に取り付けられ得る。
【0008】
[0007] EUV放射ビームの光路内にペリクルが存在することにより、ペリクルが高いEUV透過率を有することが必要になる。EUV透過率が高いと、ペリクルを通る入射放射の割合がより大きくなる。更に、ペリクルによって吸収されるEUV放射の量が減少すると、ペリクルの動作温度が低下し得る。透過率は、少なくとも部分的にペリクルの厚さに依存するので、可能な限り薄くありながらも、リソグラフィ装置内の時として厳しくなる環境に十分に耐えられるように確実な強度を維持したペリクルを提供することが望ましい。
【0009】
[0008] したがって、リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置の過酷な環境に耐えることができるペリクルを提供することが望ましい。特に、従来よりも高い電力に耐えることができるペリクルを提供することが望ましい。
【0010】
[0009] 本出願は、一般に、リソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置の文脈でのペリクルに言及しているが、本発明は、ペリクル及びリソグラフィ装置のみに限定されるものではなく、本発明の主題は、他の任意の好適な装置又は状況において使用できることを理解されたい。
【0011】
[00010] 例えば、本発明の方法は、スペクトル純度フィルタに同様に適用され得る。プラズマを使用してEUV放射を生成するものなど、一部のEUV放射源は、所望の「帯域内」EUV放射だけでなく、望ましくない(帯域外)放射も放出する。この帯域外放射は、深UV(DUV)放射範囲(100~400nm)において最も顕著である。更に、一部のEUV放射源、例えばレーザ生成プラズマEUV放射源の場合、通常10.6ミクロンであるレーザからの放射は、著しい帯域外放射を引き起こす。
【0012】
[00011] リソグラフィ装置では、いくつかの理由によりスペクトル純度が求められる。一つの理由は、レジストは放射の帯域外波長に敏感であり、したがって、レジストがそのような帯域外放射に露光される場合、レジストに付与されるパターンの画質が低下し得るためである。更に、帯域外放射の赤外放射、例えば、一部のレーザ生成プラズマ放射源における10.6ミクロンの放射は、リソグラフィ装置内のパターニングデバイス、基板、及び光学部品の望ましくない不要な加熱作用をもたらす。そのような加熱作用は、上記の要素の損傷、それらの寿命の低下、及び/又はレジストコートされた基板上に投影され付与されるパターンの欠損や歪みにつながるおそれがある。
【0013】
[00012] 典型的なスペクトル純度フィルタは、例えば、モリブデンなどの反射性金属でコーティングされたシリコン基礎構造(例えば、開口を備えた、シリコン格子又は他の部材)から形成され得る。使用時に、典型的なスペクトル純度フィルタは、例えば、入射赤外及びEUV放射からの高い熱負荷にさらされることがある。この熱負荷により、スペクトル純度フィルタの温度が800℃を超える場合がある。この高い熱負荷の下では、反射性モリブデンコーティングと、その下にあるシリコン支持構造との間の線膨張係数の違いに起因して、コーティングが剥離することがある。シリコン基礎構造の剥離及び劣化は水素の存在により加速され、この水素は、リソグラフィ装置の特定の部分にデブリ(例えば、粒子などのデブリ)が出入りするのを抑制するためにスペクトル純度フィルタが使用される環境において、ガスとして使用されることが多い。このように、スペクトル純度フィルタはペリクルとして使用することができ、逆の場合も同様である。したがって、本出願における「ペリクル」への言及は、「スペクトル純度フィルタ」への言及でもある。本出願では、主にペリクルへの言及が行われるが、全ての特徴は、スペクトル純度フィルタにも同様に当てはまる。
【0014】
[00013] 本発明は、上記で特定した問題のうちの少なくともいくつかへの対処を試みて考案されたものである。
【発明の概要】
【0015】
[00014] 本発明の第1の態様によれば、シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含むペリクル膜であって、0.3以上の放射率を有する、ペリクル膜が提供される。シリコン系マトリックスは、シリコン結晶を含み得る。
【0016】
[00015] ペリクル膜の放射率は、ペリクル膜がリソグラフィ装置内で動作する温度に関連する。ペリクル膜は、より低い温度で動作することが望ましく、したがって、より高い放射率が求められる。その代わりに、又はそれに加えて、より高い放射率によっても、リソグラフィ装置はより高い放射源パワーで動作することが可能になる。というのも、ペリクル膜は、ペリクル膜の放射率の上昇に起因する放射源パワーの増加にも関わらず、好適な温度で動作することが引き続き可能であるからである。
【0017】
[00016] 放射率は、0.33以上、0.35以上、0.37以上、又は0.4以上であり得る。
【0018】
[00017] ペリクル膜は、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、又は95%以上の透過率を有し得る。ペリクル膜は、EUV放射を吸収する原子を含まないので、又はEUV放射を吸収する原子を低いレベルでのみ含むので、ペリクル膜の透過率を高くすることができる。ペリクル膜の放射率に起因して、膜の動作温度を低くすることができ、及び/又は、ペリクルをより高い放射源パワーで使用することができる。一般に、透過率の上昇は放射率の低下につながり、逆の場合も同様である。本発明により、良好な放射率と共に良好な透過率が提供される。
【0019】
[00018] ペリクル膜は、最高およそ5原子%の量の窒素を含み得る。窒素は、最高およそ4原子%、最高およそ3原子%、最高およそ2原子%、又は最高およそ1原子%の量で存在し得る。
【0020】
[00019] 5原子%以下などの低い窒素濃度であっても、より低い抵抗率(より高い放射率)につながることが分かっている。これは、ひいては、同じ放射源パワーでのリソグラフィ装置内のより低い動作温度につながり、又は、より高い放射源パワーの使用を可能にする。
【0021】
[00020] 金属シリサイド結晶及び/又はシリコン結晶は、30nm以下の直径を有し得る。
【0022】
[00021] 結晶の直径は、走査電子顕微鏡の像を介して判定することができる。直径は、個別の結晶の最大寸法として測定され得る。金属シリサイド結晶は、28nm以下又は25nm以下の直径を有し得る。金属シリサイド結晶及び/又はシリコン結晶のうちの90%を超える、95%を超える、98%を超える、又は99%を超える割合の結晶が、30nm以下、28nm以下、又は25nm以下の直径を有することが好ましい。
【0023】
[00022] シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶を含むペリクル膜は、通常、窒化モリブデンシリサイドを含むペリクル膜と比較して低い放射率を有する。シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶を含むペリクル膜は、通常、窒化モリブデンシリサイドを含むペリクル膜と比較して高い透過率を含むものの、この高い透過率は、動作温度に関して、放射率の低下を補償しない。そのため、同じ放射源パワーにおいて、シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶を含むペリクル膜は、より高い動作温度を有する。これは、より高い温度がより速い化学反応、ひいてはより速い劣化と関連するという点で不利である。これは、高放射率を有する金属シリサイド結晶と区別される低放射率シリコン結晶又は非晶質シリコンに起因すると考えられている。加えて、窒化モリブデンシリサイド複合材料のペリクルと比較すると、窒化モリブデンシリサイド複合材料におけるモリブデンシリサイド結晶間の距離が10nm未満である場合、シリコンマトリックス中の金属シリサイド結晶を含むペリクル膜において、モリブデンシリサイド結晶間の距離はより長くなり、それに加えて、金属シリサイド結晶自体も大きくなる。そのため、結晶サイズを小さくすることによって、ペリクル膜の化学組成を変化させる必要なく、向上した放射率が提供されることが分かっている。そのため、本発明により、ペリクル膜の化学組成を必ずしも変化させずに、向上した放射率を有するペリクル膜が提供される。これは、より小さく、かつより混合された粒子が最終的なペリクル中で形成され、ひいては向上した放射率が提供されるようにペリクル膜の結晶構造に影響を与えることによって、達成される。
【0024】
[00023] 金属シリサイド結晶及び/又はシリコン結晶は、ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされ得る。
【0025】
[00024] 膜中の結晶サイズは、放射率に関して重要である。したがって、膜の寸法性は、より小さい結晶を形成するために利用することができる。ペリクル膜は薄く、例えば、40nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、又は12nm以下である。そのため、表面に対して垂直に結晶を設けることによって、結晶サイズを制限し、複数の平行な結晶「ピラー」を設けることが可能である。これは、膜の放射率を向上させるように機能する。
【0026】
[00025] 金属シリサイド結晶及び/又はシリコン結晶の集団の少なくとも一部は、膜の厚さにわたって存在し得る。そのため、結晶の長さは、ペリクル膜の厚さと同一であり得る。
【0027】
[00026] ペリクル膜は、多層膜であり得る。多層膜は、異なる化学的特性又は物理的特性を有する積み重ねた層が存在する膜である。ペリクル膜は、シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含む層を含んでよく、このシリコン系マトリックスは、任意選択的に、シリコンモリブデン合金を含む1つ以上の層間に配置されたシリコン結晶を含む。
【0028】
[00027] 金属シリサイド結晶は、モリブデンシリサイド結晶であり得る。モリブデンシリサイドは、リソグラフィ装置内での使用に好適であり、かつ、所与の放射源パワーでのより低い動作温度及び/又はより高い放射源パワーに耐える能力につながる高い放射率を有する。
【0029】
[00028] シリコンマトリックスは、p-Si又はSiNを含み得る。p-Siは、十分に理解されるように、リソグラフィ装置用のペリクル膜において使用され、かつEUV放射に対する高い放射率を有する。
【0030】
[00029] シリコン系マトリックスは、ドープされ得る。シリコン系マトリックスは低い放射率を有するので、放射率を上げるためにドープされ得る。シリコン系マトリックスは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上でドープされ得る。金属シリサイド結晶、好ましくは、モリブデンシリサイド結晶は、ペリクル膜全体の放射率を制限する非導電性のシリコン結晶によって結晶間で互いに分離される。ドープを行うことによって、シリコン結晶の導電性が高まり、したがって放射率が上昇する。加えて、窒化シリコンマトリックスではなくシリコン系マトリックスを含むペリクル膜は、より低い強度を有することが分かっている。科学理論によって制約されることを望まないとすると、上記のことに対する1つの理由は、窒化シリコンマトリックスのHFエッチングに対するより高い耐性に起因する考え方である。ドープを行うことによって、膜のエッチング耐性が高まり、それによって不用意なオーバーエッチングによる膜の強度への悪影響が限定される。
【0031】
[00030] ホウ素、リン、及び/又はイットリウムというドーパントは、1015cm-3~1021cm-3程度の濃度で存在し得る。純粋なp-Si膜は、シリコンをおよそ1021cm-3の濃度のホウ素でドープすることによって、強度の点で2.7GPaから3.7GPaまで向上することが可能である。そのため、本ペリクル膜をドープすることによって機械強度が高まる。同様に、ホウ素でドープを行うことによって、純粋なp-Siの放射率が0.02から0.06まで高まり、したがって、膜の全体的な放射率が高まる。
【0032】
[00031] ペリクル膜は、約10原子%~約30原子%のモリブデン、任意選択的に約15原子%~約25原子%のモリブデン、又は任意選択的に約20原子%のモリブデンを含み得る。
【0033】
[00032] ペリクル膜は、約90原子%~約70原子%のシリコン、任意選択的に約90原子%~約65原子%のシリコン、任意選択的に約85原子%~約70原子%のシリコン、又は任意選択的に約75原子%のシリコンを含み得る。
【0034】
[00033] そのため、ペリクル膜は、約10原子%~約30原子%のモリブデン、約90原子%~約65原子%のシリコン、及び約0原子%~約5原子%の窒素を含み得る。少量の機能しない不純物が存在し得ることは明らかである。加えて、本明細書で言及した濃度のドーパントが提供され得る。
【0035】
[00034] 膜の厚さは、およそ10nm~およそ100nmであり得る。膜の厚さは、およそ12nm、およそ15nm、およそ20nm、およそ25nm、およそ30nm、およそ40nm、およそ50nm、およそ60nm、およそ70nm、およそ80nm、又はおよそ90nmであり得る。
【0036】
[00035] 本発明の第2の態様によれば、ペリクル膜の製造方法が提供される。この方法は、a)アニーリング温度で動作するアニーリング炉から膜を取り出し、この膜を周囲温度にさらして急速に冷却することによって膜を急冷すること、b)1時間未満の期間にわたって膜をアニーリングすること、c)膜を堆積する間、膜をイオンと衝突させること、d)アニーリングの前にキャッピング層を膜の上に設けること、e)およそ500℃以上の温度の膜をおよそ100℃以下の温度の表面の上に置いて結晶化を誘起すること、又はf)ガラス遷移温度を超えるまで非晶質膜の一方の側面を加熱して、前記非晶質膜の反対の側面から結晶化を誘発すること、から選択された少なくとも1つの工程を含み得る。
【0037】
[00036] 膜は、シリコンマトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含んでよく、任意選択的にシリコン結晶を含む。膜は、本発明の第1の態様に係る膜であり得る。そのため、方法は、シリコンマトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含む膜、任意選択的にシリコン結晶を含む膜、を設けることを含み得る。その代わりに、方法は、非晶質シリコン素材中に非晶質金属シリサイド領域を含む膜を設けることを含み得る。本発明の第2の態様の文脈でのペリクルへの言及は、リソグラフィ装置での使用に好適な、少なくとも部分的に非晶質であり、かつ結晶膜や半結晶膜に転換される膜への言及も含むことを理解されたい。したがって、本発明の第2の態様の文脈での膜は、最終的なペリクル膜の前駆膜であり得る。本発明の第2の態様において言及される膜は、本明細書に記載の方法によって最終ペリクル膜に転換される。膜が本発明の第2の態様の方法に従って処理されると、この膜は、リソグラフィ装置での使用に好適となる。膜の化学組成は、本発明の第2の態様の方法に係る処理の間に変化しない、又は効果的に変化しないので、膜の組成は、本発明の第1の態様に関して記載のとおりの任意のものであり得る。
【0038】
[00037] 本発明の第2の態様の方法により、0.3以上の望ましい放射率を有するペリクル膜が提供される。これは、多数の方法によって達成することができる。
【0039】
[00038] あらかじめ、アニーリングがおよそ900℃の温度で8時間にわたって行われ、その後、炉の電源を消し、ウェーハを1.5~2時間にわたって炉の中に留めた。この長いアニーリング処理は、動作中、ペリクル膜に対する変化を防止することが意図されており、膜内での大きい粒子の形成をもたらす。炉から膜を取り出すことによって膜を急速に冷却し、室温に到達させることにより、膜は、900℃で存在する微細構造を保持することができ、結晶サイズが大きくなることが回避されることが分かっている。ひいては、これは、化学組成を変化させることなく膜の良好な放射率につながる。
【0040】
[00039] また、迅速に、特に、30秒以下、25秒以下、20秒以下、15秒以下、10秒以下、又は5秒以下の間、膜をアニーリング温度、例えばおよそ90℃まで加熱し、1分~10分の期間にわたってアニーリングを行い、その後に膜を冷却させることによっても、粒子の広範囲の成長が防止されることが分かっている。
【0041】
[00040] 堆積の間にペリクル膜が形成される基板に、例えば、Kr又はArの高エネルギーイオンなどを衝突させることによって、核生成機構及び膜の最終的な微細構造を変化させることができる。これにより、結晶成長の方向性を制御することが可能になる。
【0042】
[00041] アニーリングの前にキャッピング層を膜上に設けることによっても、膜の微細構造に影響を与えることができる。例えば、アニーリングの前に膜をTEOS層で覆うことにより、粒子が成長し始めるためのより不均質な核生成部位を設ける。
【0043】
[00042] 微細構造は、その内部の結晶の方向性を有する成長を制御することによっても制御することができる。加熱された膜をより低温の表面上に置くことによって、結晶化を誘発することができる。同様に、ある期間にわたって、ガラス遷移温度を超えるまで、例えば、ガラス遷移温度を超えるおよそ5℃、およそ10℃、およそ15℃、又はおよそ20℃まで非晶質の試料を加熱することにより、より低温の底面からの結晶化を開始させることができる。
【0044】
[00043] これらの方法が互いに両立しない場合、又は互いを排除する場合を除いて、必要に応じて方法の各々を組み合わせることで、0.3以上の所望の放射率を有する膜を実現する所望の微細構造を有するペリクル膜を提供することができる。
【0045】
[00044] アニーリングは、およそ30分以下、およそ20分以下、およそ15分以下、およそ10分以下、又はおよそ5分以下にわたって行われ得る。
【0046】
[00045] アニーリングは、約600℃から約900℃、任意選択的に約600℃から約800℃、又は任意選択的に約650℃から約700℃のアニーリング温度で行われ得る。アニーリングは、およそ750℃以下、任意選択的におよそ700℃以下、任意選択的におよそ650℃以下、又は任意選択的におよそ600℃以下の温度で行われる。
【0047】
[00046] アニーリングは、最長10時間、最長9時間、最長8時間、又はおよそ1時間~およそ8時間の期間にわたって行われ得る。
【0048】
[00047] 本方法は、ペリクル膜をドープする工程を含んでよく、任意選択的に、ドーパントは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上である。ドーパントは、1015cm-3~1021cm-3程度の濃度で存在し得る。
【0049】
[00048] 本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に係るペリクル膜を備えるペリクルアセンブリ、又は本発明の第2の態様の方法により製造されたペリクルアセンブリが提供される。
【0050】
[00049] 本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様に係るペリクル膜、又は本発明の第3の態様に係るペリクルアセンブリ、を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0051】
[00050] 本発明の第5の態様によれば、リソグラフィ装置又は方法における、本発明の第1の態様~第4の態様のいずれかに係るペリクル膜、ペリクルアセンブリ、リソグラフィ装置、又は方法の使用が提供される。
【0052】
[00051] 1つの実施形態に関して記載された特徴が、別の実施形態に関して記載された任意の特徴と組み合わせられ得ること、また、全てのそのような組み合わせが本発明書において明確に考慮され、かつ開示されることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
[00052] 本発明のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の概略図を参照して以下に説明する。これらの図面において同じ参照符号は対応する部分を示す。
【0054】
図1】[00053] 図1は、本発明の実施形態に係るリソグラフィ装置を示す。
図2】[00054] 図2は、シリコン結晶とモリブデンシリサイド結晶との間の相分離を示す、本発明の第1の態様に係る破損膜のSEM像である。
図3】[00055] 図3は、異なる厚さを有し、かつ異なるアニーリング温度で作成された膜の微細構造を示すSEM像のアレイである。
図4】[00056] 図4は、動作温度を、600Wで動作するEUV透過率と比較するグラフである。
【0055】
[00057] 本発明の特徴及び利点は、これらの図面と併せて以下に記載される詳細な説明からより明らかになるであろう。図面において、同じ参照記号は、全体を通じて対応する要素を特定する。図面において、同じ参照番号は、基本的に、同一の、機能的に同様な、及び/又は構造的に同様な要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
[00058] 図1は、本発明に係るペリクル15(膜アセンブリとも呼ばれる)を含むリソグラフィシステムを示している。リソグラフィシステムは、放射源SOとリソグラフィ装置LAとを備える。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームBを生成するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成されたサポート構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTと、を備える。照明システムILは、パターニングデバイスMAに入射する前に放射ビームBを調整するように構成される。投影システムは、(現在マスクMAによってパターンが形成されている)放射ビームBを基板W上に投影するように構成される。基板Wは、すでに形成されたパターンを含み得る。この場合、リソグラフィ装置は、パターン付き放射ビームBを、基板W上にすでに形成されたパターンと位置合わせする。この実施形態において、ペリクル15は、放射の経路内に示されており、パターニングデバイスMAを保護している。ペリクル15は、任意の所要の位置に置かれてよく、リソグラフィ装置内のミラーのいずれかを保護するために使用されてよいことが明らかである。
【0057】
[00059] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSは全て、外部環境から隔離することができるように構築及び配置され得る。大気圧(例えば、水素)未満の圧力の気体が、放射源SO内に供給され得る。真空が、照明システムIL及び/又は投影システムPS内に供給され得る。大気圧より十分に低い圧力の少量の気体(例えば、水素)が、照明システムIL及び/又は投影システムPS内に供給され得る。
【0058】
[00060] 図1に示す放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれ得るタイプのものである。レーザ(例えば、COレーザであり得る)が、レーザビームを介して、燃料エミッタから供給されるスズ(Sn)などの燃料内にエネルギーを堆積するように配置される。スズは以降の説明において言及されるが、あらゆる好適な燃料が使用され得る。燃料は、例えば液体の形態をとることがあり、また、例えば、金属又は合金であり得る。燃料エミッタは、スズを、例えば液滴の形態で、軌跡に沿ってプラズマ形成領域に向けて誘導するように構成されたノズルを備え得る。レーザビームは、プラズマ形成領域においてスズに入射する。スズ内へのレーザエネルギーの堆積によって、プラズマ形成領域においてプラズマが作り出される。EUV放射を含む放射が、このプラズマのイオンの脱励起及び再結合中にプラズマから放出される。
【0059】
[00061] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ(より一般的に、法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)によって集光及び集束される。このコレクタは、EUV放射(例えば、13.5nmなどの所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置された多層構造を有し得る。コレクタは、2つの楕円焦点を有する楕円構成を有し得る。後述のとおり、第1の焦点はプラズマ形成領域に位置し、第2の焦点は中間焦点に存在し得る。
【0060】
[00062] レーザは、放射源SOと別々にされ得る。この場合、レーザビームは、レーザから放射源SOへ、例えば、適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダを含むビームデリバリシステム(図示せず)、及び/又は他の光学系を使って送られ得る。レーザ及び放射源SOは、まとめて放射システムと呼ばれ得る。
【0061】
[00063] コレクタによって反射された放射は、放射ビームBを形成する。放射ビームBは、点に集束してプラズマ形成領域の像を形成し、この像は、照明システムILに対する仮想放射源として機能する。放射ビームBが集束する点は、中間焦点と呼ばれ得る。放射源SOは、中間焦点が放射源の閉鎖構造の開口部に、又は、開口部の付近に位置付けられるように配置される。
【0062】
[00064] 放射ビームBは、放射源SOから照明システムIL内に進み、照明システムILは、放射ビームを調整するように構成される。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含み得る。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、放射ビームBに所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームBは、照明システムILから進み、サポート構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは、放射ビームBを反射し、放射ビームBにパターン形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、又は、それらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含み得る。
【0063】
[00065] パターニングデバイスMAからの反射に続いて、パターン付き放射ビームBは、投影システムPSに入る。投影システムは、基板テーブルWTによって保持された基板W上に放射ビームBを投影するように構成された複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは、縮小係数を放射ビームに適用してよく、それによりパターニングデバイスMA上の対応するフィーチャより小さいフィーチャを有する像を形成する。例えば4という縮小係数が適用され得る。投影システムPSは図1において2つのミラー13、14を有するが、投影システムは、任意の数のミラー(例えば、6つのミラー)を含み得る。
【0064】
[00066] 図1に示す放射源SOは、図示されていない構成要素を含み得る。例えば、スペクトルフィルタが、放射源内に設けられ得る。スペクトルフィルタは、EUV放射に対して実質的に透過性を有し得る一方で、赤外放射などの他の波長の放射に対して実質的に遮断性を有し得る。
【0065】
[00067] 一実施形態では、膜アセンブリ15は、EUVリソグラフィ用のパターニングデバイスMAのためのペリクルである。本発明の膜アセンブリ15は、動的ガスロック、又はペリクル、又は別の目的のために使用することができる。一実施形態では、膜アセンブリ15は、0.3以上の放射率を有する少なくとも1つの膜層から形成された膜を含む。EUV透過の最大化及び結像性能への影響の最小化を確実にするために、膜は、その縁においてのみ支持されることが好ましい。
【0066】
[00068] パターニングデバイスMAが保護されていない状態になっている場合、汚染物質により、パターニングデバイスMAを洗浄する又は廃棄することが必要になる場合がある。パターニングデバイスMAを洗浄すると貴重な製造時間が中断され、パターニングデバイスMAを廃棄すると費用がかさむ。パターニングデバイスMAを交換すると、やはり貴重な製造時間が中断される。
【0067】
[00069] 図2は、本発明の第1の態様に係る破損ペリクル膜の走査電子顕微鏡(SEM)像を示している。シリコン結晶及びモリブデンシリサイド結晶が見られる。本発明によれば、ペリクル膜の微細構造を制御することによって、良好な放射率及び高いEUV透過率を有するペリクル膜を得ることができる。例えば、放射率は、0.3以上であり得る。透過率は、90%以上、又は92%以上であり得る。EUVリソグラフィ装置において使用される場合、高い放射率及び高いEUV透過率の組み合わせが望ましい。
【0068】
[00070] 図3は、異なる温度でアニーリングされており、かつ異なる厚さを有する、異なるペリクル膜の各種のSEM像を含む。結晶サイズは、アニーリング温度と共に大きくなる。そのため、より小さい結晶が望ましい場合、より低いアニーリング温度が採用され得る。全ての他の条件が一定にされ、厚さ及びアニーリング時間のみが変更された。
【0069】
[00071] 図4は、窒素(最高およそ5原子%)を含む本発明の膜と比較してはるかに多量の窒素(最高およそ20原子%)を含む、窒化モリブデンシリサイド複合材料のペリクル膜に対する、本発明に係る3つの膜(シリコンマトリックス中にモリブデンシリサイドを含むため、いわゆるMoSiSi)の動作温度と、EUV透過率を比較している。本発明の膜は、より高いEUV透過率を有しながらも同程度の温度で動作することが分かる。17.5%、20%、22.5%への言及は、様々な試料におけるモリブデンの原子比率を指す。
【0070】
[00072] そのため、本発明は、他のペリクル膜と比較して同程度又は高い透過率を有するものの、リソグラフィ装置、特にEUV装置内で動作することを可能にする少なくとも0.3の放射率を有するペリクル膜を提供する。本明細書に記載の方法は、そのような膜を形成することができる複数の方法を提供する。
【0071】
[00073] 以上、本発明の具体的な実施形態を説明してきたが、本発明は、上述の態様以外の態様で実施できることが明らかである。
【0072】
[00074] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含むペリクル膜であって、0.3以上の放射率を有する、ペリクル膜。
【請求項2】
90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、又は95%以上の透過率を有する、請求項1に記載のペリクル膜。
【請求項3】
最高およそ5原子%の量の窒素を含む、請求項1又はに記載のペリクル膜。
【請求項4】
前記金属シリサイド結晶は、30nm以下の直径を有し、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、30nm以下の直径を有するシリコン結晶を含む、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項5】
前記金属シリサイド結晶は、前記ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされ、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、前記ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされたシリコン結晶を含む、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項6】
前記金属シリサイド結晶の前記集団の少なくとも一部は、前記ペリクル膜の厚さにわたり、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、前記ペリクル膜の厚さにわたるシリコン結晶を含む、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項7】
多層膜である、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項8】
前記ペリクル膜は、シリコンモリブデン合金を含む1つ以上の層間に、シリコン系マトリックス中に前記金属シリサイド結晶の前記集団を含む層を含む、請求項7に記載のペリクル膜。
【請求項9】
前記金属シリサイド結晶は、モリブデンシリサイド結晶である、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項10】
前記シリコン系マトリックスは、p-Si、ポリSi、又はSiNを含み、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、シリコン結晶を含む、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項11】
前記シリコン系マトリックスは、ドープされ、任意選択的に、前記シリコン系マトリックスは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上でドープされる、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項12】
ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの前記1つ以上は、1015cm-3~1021cm-3程度の濃度で存在する、請求項11に記載のペリクル膜。
【請求項13】
前記ペリクル膜は、約10原子%~約30原子%のモリブデン、任意選択的に約15原子%~約25原子%のモリブデン、任意選択的に約20原子%のモリブデンを含む、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項14】
前記ペリクル膜は、約90原子%~約65原子%のシリコン、任意選択的に約85原子%~約70原子%のシリコン、任意選択的に約75原子%のシリコンを含む、請求項1又は2に記載のペリクル膜。
【請求項15】
ペリクル膜を製造する方法であって、
a)アニーリング温度で動作するアニーリング炉から膜を取り出し、前記膜を周囲温度にさらして前記膜を急激に冷却することによって前記膜を急冷すること、
b)前記膜を、30秒以下の間、アニーリング温度まで加熱すること、
c)前記膜を堆積する間、前記膜をイオンと衝突させること、
d)アニーリングの前にキャッピング層を前記膜の上に設けること、
e)およそ500℃以上の温度の膜をおよそ100℃以下の温度の表面の上に置いて結晶化を誘起すること、又は
f)ガラス遷移温度を超えるまで非晶質膜の一方の側面を加熱して、前記非晶質膜の反対の側面から結晶化を誘発すること、
から選択された少なくとも1つの工程を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
[00074] 上記の説明は、制限ではなく例示を意図したものである。したがって、当業者には明らかなように、添付の特許請求の範囲及び条項を逸脱することなく本記載の発明に変更を加えてもよい。
[条項1]
シリコン系マトリックス中に金属シリサイド結晶の集団を含むペリクル膜であって、0.3以上の放射率を有する、ペリクル膜。
[条項2]
90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、又は95%以上の透過率を有する、条項1に記載のペリクル膜。
[条項3]
最高およそ5原子%の量の窒素を含む、条項1又は条項2に記載のペリクル膜。
[条項4]
前記金属シリサイド結晶は、30nm以下の直径を有し、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、30nm以下の直径を有するシリコン結晶を含む、条項1~3のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項5]
前記金属シリサイド結晶は、前記ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされ、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、前記ペリクル膜の表面に対して実質的に垂直に位置合わせされたシリコン結晶を含む、条項1~4のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項6]
前記金属シリサイド結晶の前記集団の少なくとも一部は、前記ペリクル膜の厚さにわたり、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、前記ペリクル膜の厚さにわたるシリコン結晶を含む、条項1~5のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項7]
多層膜である、条項1~6のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項8]
前記ペリクル膜は、シリコンモリブデン合金を含む1つ以上の層間に、シリコン系マトリックス中に前記金属シリサイド結晶の前記集団を含む層を含む、条項7に記載のペリクル膜。
[条項9]
前記金属シリサイド結晶は、モリブデンシリサイド結晶である、条項1~8のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項10]
前記シリコン系マトリックスは、p-Si、ポリSi、又はSiNを含み、及び/又は、前記シリコン系マトリックスは、シリコン結晶を含む、条項1~9のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項11]
前記シリコン系マトリックスは、ドープされ、任意選択的に、前記シリコン系マトリックスは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上でドープされる、条項1~10のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項12]
ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの前記1つ以上は、10 15 cm -3 ~10 21 cm -3 程度の濃度で存在する、条項11に記載のペリクル膜。
[条項13]
前記ペリクル膜は、約10原子%~約30原子%のモリブデン、任意選択的に約15原子%~約25原子%のモリブデン、任意選択的に約20原子%のモリブデンを含む、条項1~12のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項14]
前記ペリクル膜は、約90原子%~約65原子%のシリコン、任意選択的に約85原子%~約70原子%のシリコン、任意選択的に約75原子%のシリコンを含む、条項1~13のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項15]
前記ペリクル膜の厚さは、約10nm~約100nmである、条項1~14のいずれか一項に記載のペリクル膜。
[条項16]
ペリクル膜を製造する方法であって、
a)アニーリング温度で動作するアニーリング炉から膜を取り出し、前記膜を周囲温度にさらして前記膜を急激に冷却することによって前記膜を急冷すること、
b)前記膜を、30秒以下の間、アニーリング温度まで加熱すること、
c)前記膜を堆積する間、前記膜をイオンと衝突させること、
d)アニーリングの前にキャッピング層を前記膜の上に設けること、
e)およそ500℃以上の温度の膜をおよそ100℃以下の温度の表面の上に置いて結晶化を誘起すること、又は
f)ガラス遷移温度を超えるまで非晶質膜の一方の側面を加熱して、前記非晶質膜の反対の側面から結晶化を誘発すること、
から選択された少なくとも1つの工程を含む、方法。
[条項17]
アニーリングが、およそ30分以下、およそ20分以下、およそ15分以下、およそ10分以下、又はおよそ5分以下にわたって行われる、条項16に記載の方法。
[条項18]
アニーリングが、約600℃~約900℃、任意選択的に約600℃~約800℃、又は任意選択的に約650℃~約700℃のアニーリング温度で行われる、条項16又は条項17に記載の方法。
[条項19]
前記アニーリングは、およそ750℃以下、任意選択的におよそ700℃以下、任意選択的におよそ650℃以下、又は任意選択的におよそ600℃以下の温度で行われる、条項16又は条項17に記載の方法。
[条項20]
前記アニーリングは、最長10時間、最長9時間、最長8時間、又はおよそ1時間~およそ8時間の期間にわたって行われる、条項16のa)及びc)~f)、条項18、又は条項19に記載の方法。
[条項21]
前記ペリクル膜をドープすることを含み、任意選択的に、前記ドーパントは、ホウ素、リン、及びイットリウムのうちの1つ以上である、条項16~20のいずれか一項に記載の方法。
[条項22]
前記ドーパントは、10 15 cm -3 ~10 21 cm -3 程度の濃度で存在する、条項21に記載の方法。
[条項23]
条項1~15のいずれか一項に記載のペリクル膜を備えるペリクルアセンブリ、又は条項16~22のいずれか一項に記載の方法により製造されたペリクルアセンブリ。
[条項24]
条項1~15のいずれか一項に記載のペリクル膜、又は条項23に記載のペリクルアセンブリ、を備えるリソグラフィ装置。
[条項25]
リソグラフィ装置又は方法における、条項1~24のいずれか一項にペリクル膜、ペリクルアセンブリ、リソグラフィ装置、又は方法の使用。
【国際調査報告】