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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240927BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20240927BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
G03F1/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522595
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022077938
(87)【国際公開番号】W WO2023066683
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21204036.4
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22162403.4
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】デ フリース,ゴッセ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ドンデルス,シュールト,ニコラース,ランベルタス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,フランシスクス,ヨハネス,ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】クルガノワ,エフゲニア
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,アブラハム,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,タイズ,ヤン,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデンブランド,ボルカー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルムーレン,ポール,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ルティフイス,ベルナルドス,アントニウス,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ハム,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン リプジグ,ジェロエン,ペトラス,ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
【Fターム(参考)】
2H195BC31
2H195CA20
2H197BA23
2H197CA10
2H197DA09
2H197DB23
2H197GA01
2H197GA23
2H197HA03
(57)【要約】
リソグラフィ装置が、照明システムと、支持構造と、基板テーブルと、投影システムと加熱システムとを備える。照明システムは、放射ビームを調整するように構成される。支持構造は、照明システムにより調整された放射ビームを受けるためのレチクル-ペリクルアセンブリを支持するように構築される。基板テーブルは基板を支持するように構築される。投影システムは、レチクル-ペリクルアセンブリから放射ビームを受け、それを基板に投影するように構成される。加熱システムは、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能である。レチクル-ペリクルアセンブリを使用する方法が、基板上にパターン像を形成するためにレチクル-ペリクルアセンブリを放射ビームで照明すること、及び別個の熱源を使用してレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱することを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記照明システムにより調整された前記放射ビームを受けるためのレチクル-ペリクルアセンブリを支持するように構築された支持構造と、
基板を支持するように構築された基板テーブルと、
前記レチクル-ペリクルアセンブリから前記放射ビームを受け、前記放射ビームを前記基板に投影するように構成された投影システムと
を備えたリソグラフィ装置であって、
前記リソグラフィ装置が更に、
前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能な加熱システムを備えるリソグラフィ装置。
【請求項2】
目標温度分布を達成するために、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように前記加熱システムを制御するように動作可能なコントローラを更に備えた、請求項1のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリの前記照明システムからの放射への曝露中に、前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成される、請求項1又は請求項2のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記最低温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、請求項3のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記最低温度が800K以上である、請求項3のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項1から5のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームに通すために、前記照明システムにより調整された前記放射ビームに対して前記支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を更に備え、前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項1から6のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記加熱システムがまた、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項7のリソグラフィ装置。
【請求項9】
前記加熱システムが、前記加熱システム及び前記照明システムから受けた前記放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成するように、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように構成される、請求項1から8のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記加熱システムが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱するように構成される、請求項1から9のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記加熱システムが、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルに放射を誘導するように動作可能な放射源を備える、請求項1から10のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項12】
前記放射源が、電磁放射を前記ペリクルに誘導するように動作可能である、請求項11のリソグラフィ装置。
【請求項13】
前記放射源が、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの前記ペリクルに入射するように電子を誘導するように動作可能である、請求項11又は請求項12のリソグラフィ装置。
【請求項14】
前記放射源が電子銃を備える、請求項13のリソグラフィ装置。
【請求項15】
電子源から電子ビームを受け、前記サポートによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの表面に前記電子ビームを分配するように構成された電子光学系を更に備えた、請求項13又は請求項14のリソグラフィ装置。
【請求項16】
前記放射源により放出された放射を、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの異なる部分の範囲に誘導することができるように、前記放射源及び前記支持構造のうちの少なくとも一方を移動させるように動作可能な加熱スキャン機構を更に備えた、請求項11から15のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項17】
前記加熱システムが、前記支持構造によって支持されているときのペリクル-レチクルアセンブリの前記ペリクルに電流を供給するように構成される、請求項1から16のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項18】
前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの異なる部分に接触するように動作可能な複数の電極と、前記複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電圧を供給するように構成された電源とを備える、請求項17のリソグラフィ装置。
【請求項19】
前記加熱システムが、
電極と、
前記電極と前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分との間に電圧を印加するように動作可能な電圧源と
を備える、請求項1から18のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項20】
前記加熱システムが更に、
前記電極を加熱するように動作可能なヒータを備える、請求項19のリソグラフィ装置。
【請求項21】
前記コントローラが、前記電圧源により印加された前記電圧を制御するように動作可能である、請求項2に直接的又は間接的に従属する場合の請求項19又は請求項20のリソグラフィ装置。
【請求項22】
前記加熱システムが、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを周期的に加熱するように動作可能である、請求項1又は請求項2のリソグラフィ装置。
【請求項23】
前記加熱システムが、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルにパルス加熱を行うように動作可能である、請求項1又は請求項2のリソグラフィ装置。
【請求項24】
前記加熱システムのデューティサイクルが0.1以下であり、前記デューティサイクルが、前記加熱システムが前記ペリクルに加熱を行う時間の部分の、前記加熱システムが前記ペリクルに加熱を行わない時間の部分に対する比率である、請求項22又は請求項23のリソグラフィ装置。
【請求項25】
前記リソグラフィ装置が、前記基板テーブルにより支持される基板の複数の異なるターゲット領域上に、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのレチクルの像を形成するように動作可能であり、
前記加熱システムが、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される前記ペリクルの各部を加熱するように動作可能である、請求項22から24のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項26】
前記加熱システムが、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される前記ペリクルの各部を加熱するように動作可能である、請求項25のリソグラフィ装置。
【請求項27】
前記加熱システムが、前記基板の1つのターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することと、前記基板の次のターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することとの間の時間に前記ペリクルを加熱するように動作可能である、請求項25又は請求項26のリソグラフィ装置。
【請求項28】
前記加熱システムが、1つの基板の露光と後続の基板の露光との間に、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱するように動作可能である、請求項22から27のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項29】
前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱するように構成される、請求項22から28のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項30】
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームに通すために、前記照明システムにより調整された前記放射ビームに対して前記支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を更に備え、前記加熱システムが、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリが前記放射ビームに通されるときに、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱するように構成される、請求項22から29のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項31】
前記加熱システムが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱するように構成される、請求項22から30のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項32】
前記加熱システムが、使用時に前記照明システムにより調整された前記放射ビームを受けない前記ペリクルの一部分を加熱するように構成される、請求項22から31のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項33】
前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成される、請求項22から24のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項34】
前記最低温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、請求項33のリソグラフィ装置。
【請求項35】
前記最低温度が700℃以上である、請求項33又は請求項34のリソグラフィ装置。
【請求項36】
前記支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブルの前記ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定するように動作可能な温度センサを更に備えた、請求項1から35のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項37】
前記温度センサが、前記支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブルの前記ペリクルの少なくとも一部分の温度プロファイルを決定するように動作可能である、請求項36のリソグラフィ装置。
【請求項38】
前記加熱システムが、決定した前記ペリクルの少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに応じて、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱するように動作可能である、請求項36又は請求項37のリソグラフィ装置。
【請求項39】
前記支持構造によって支持されているときの前記ペリクル-レチクルアセンブリの前記ペリクルの近傍に水素を供給するように動作可能な水素供給部を更に備えた、請求項1から38のいずれか一項のリソグラフィ装置。
【請求項40】
レチクル-ペリクルアセンブリを使用する方法であって、
放射ビームの断面にパターンを付与するために前記レチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームで照明し、基板上に前記レチクルの像を形成すること、及び
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することを含む方法。
【請求項41】
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルが目標温度分布を達成する、請求項40の方法。
【請求項42】
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分が最低温度より高く維持される、請求項40又は請求項41の方法。
【請求項43】
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルの温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルになるように十分に高くなる、請求項40から42のいずれか一項の方法。
【請求項44】
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルの温度が800K以上になる、請求項40から43のいずれか一項の方法。
【請求項45】
前記放射ビームによる前記レチクル-ペリクルアセンブリの照明中に、前記レチクル-ペリクルアセンブリが、前記放射ビームに通され、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている少なくとも一部分が、前記別個の熱源を使用して加熱される、請求項40から44のいずれか一項の方法。
【請求項46】
前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている前記部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分が、前記別個の熱源を使用して加熱される、請求項40から45のいずれか一項の方法。
【請求項47】
前記別個の熱源を使用した前記ペリクルの前記加熱によって、前記別個の熱源及び前記放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成する、請求項40から46のいずれか一項の方法。
【請求項48】
実質的に前記ペリクルの膜全体が前記別個の熱源を使用して加熱される、請求項40から47のいずれか一項の方法。
【請求項49】
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、放射を前記ペリクルに誘導することを含む、請求項40から48のいずれか一項の方法。
【請求項50】
放射を前記ペリクルに誘導することによって前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、前記放射を前記ペリクルにスキャンすることを含む、請求項40から49のいずれか一項の方法。
【請求項51】
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、前記ペリクルに電流を供給することを含む、請求項40から50のいずれか一項の方法。
【請求項52】
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、
前記ペリクルの少なくとも一部分に正の電圧を印加すること、及び
前記ペリクルの近傍に電極から電子を放出すること
を含む、請求項40から51のいずれか一項の方法。
【請求項53】
前記ペリクルの近傍に前記電極から電子を放出することが、前記電極を加熱することを含む、請求項52の方法。
【請求項54】
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することが、前記別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを周期的に加熱することを含む、請求項40又は請求項41の方法。
【請求項55】
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルにパルス加熱を行うことを含む、請求項40又は請求項41の方法。
【請求項56】
前記ペリクルの前記加熱のデューティサイクルが0.1以下であり、前記デューティサイクルが、前記ペリクルに加熱が行われる時間の部分の、前記ペリクルに加熱が行われない時間の部分に対する比率である、請求項54又は請求項55の方法。
【請求項57】
前記レチクルの像が、前記基板の複数の異なるターゲット領域上に形成され、
前記ペリクルの加熱される各部が、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される、請求項54から56のいずれか一項の方法。
【請求項58】
前記ペリクルの加熱される各部が、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される、請求項57の方法。
【請求項59】
前記ペリクルが、前記基板の1つのターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することと、前記基板の次のターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することとの間の時間に加熱される、請求項57又は請求項58の方法。
【請求項60】
前記ペリクルが、1つの基板の露光と後続の基板の露光との間に加熱される、請求項54から59のいずれか一項の方法。
【請求項61】
前記ペリクルを加熱することが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱することを含む、請求項54から60のいずれか一項の方法。
【請求項62】
前記レチクルの前記像が、スキャン露光中に前記基板上に形成され、前記ペリクルを加熱することが、前記スキャン露光中に前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱することを含む、請求項54から61のいずれか一項の方法。
【請求項63】
前記ペリクルを加熱することが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱することを含む、請求項54から62のいずれか一項の方法。
【請求項64】
前記ペリクルを加熱することが、使用時に前記ペリクルの前記放射ビームにより照明されない部分を加熱することを含む、請求項54から63のいずれか一項の方法。
【請求項65】
前記ペリクルを加熱することが、前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持することを含む、請求項54から64のいずれか一項の方法。
【請求項66】
前記最低温度が前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、請求項65の方法。
【請求項67】
前記最低温度が700℃以上である、請求項65又は請求項66の方法。
【請求項68】
前記ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定することを更に含む、請求項40から67のいずれか一項の方法。
【請求項69】
前記ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定することが、前記ペリクルの少なくとも一部分の温度プロファイルを決定することを含む、請求項68の方法。
【請求項70】
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱するステップが、決定した前記ペリクルの少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに依存する、請求項68又は請求項69の方法。
【請求項71】
前記方法が、請求項1から39のいずれか一項に記載の装置を使用して実行される、請求項40から70のいずれか一項の方法。
【請求項72】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、前記ペリクルがカーボンナノチューブから形成された基板を備え、前記基板が更に少なくとも1つの添加剤を含むペリクル。
【請求項73】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記基板上に分布させた複数の触媒原子を含む、請求項72のペリクル。
【請求項74】
前記少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度が0.1~2%程度である、請求項72又は請求項73のペリクル。
【請求項75】
前記少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類が、それを超えると前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる閾値温度が900K未満になるようなものである、請求項72から74のいずれか一項のペリクル。
【請求項76】
前記少なくとも1つの添加剤が遷移金属を含む、請求項72から75のいずれか一項のペリクル。
【請求項77】
前記少なくとも1つの添加剤が、モリブデン、クロム、ニッケル、銅及び/又は鉄を含む、請求項72から76のいずれか一項のペリクル。
【請求項78】
前記少なくとも1つの添加剤がホウ素を含む、請求項72から77のいずれか一項のペリクル。
【請求項79】
前記少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度が15原子%程度である、請求項78のペリクル。
【請求項80】
前記少なくとも1つの添加剤が非晶質炭素を含む、請求項44から51のいずれか一項のペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] この出願は、2021年10月21日に出願された欧州出願21204036.4及び2022年3月16日に出願された欧州出願22162403.4の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、極端紫外線(EUV)リソグラフィ装置内で使用するためのレチクル-ペリクルアセンブリを処理又は使用するための装置及び関連方法に関する。本発明は、レチクル-ペリクルアセンブリを処理するための装置及び方法での使用に特に適し得るペリクルにも関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)でのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板にパターンを投影するためリソグラフィ装置が用いる放射の波長は、その基板上に形成することができるフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内の波長を有する電磁放射であるEUV放射を用いたリソグラフィ装置を使用すると、従来のリソグラフィ装置(例えば193nmの波長の電磁放射を使用できる)よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置において放射ビームにパターンを与えるのに使用されるパターニングデバイス(例えば、マスク)は、マスクアセンブリの一部を構成することがある。マスクアセンブリは、パターニングデバイスを粒子汚染から保護するペリクルを備えることがある。ペリクルは、ペリクルフレームによって支持されることがある。
【0006】
[0006] 従来技術に関連する1つ以上の問題を回避又は軽減する装置を提供することが望ましい場合がある。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 本開示の第1の態様によれば、放射ビームを調整するように構成された照明システムと、照明システムにより調整された放射ビームを受けるためのレチクル-ペリクルアセンブリを支持するように構築された支持構造と、基板を支持するように構築された基板テーブルと、レチクル-ペリクルアセンブリから放射ビームを受け、放射ビームを基板に投影するように構成された投影システムとを備えたリソグラフィ装置であって、リソグラフィ装置が更に、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能な加熱システムを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0008】
[0008] 第1の態様によるリソグラフィ装置は、これより考察するように有利である。
【0009】
[0009] レチクルが照明システムから受けた放射ビームの断面にパターンを付与してパターン付き放射ビームを形成するように構成されることが理解されるであろう。投影システムは、基板上にレチクルの(回折限界)像を形成する。レチクル上に汚れがあると、一般に基板上に形成される像が変化し、印刷エラーが発生することになる。
【0010】
[00010] リソグラフィ装置は、極端紫外線(EUV)リソグラフィ装置である場合がある。レチクルの粒子汚染を回避するために、ペリクルとして知られている薄い膜を使用してレチクルを保護することが知られている。ペリクルはレチクルの前に配置され、粒子がレチクルに付着するのを防ぐ。ペリクルは、投影システムによって鮮明に結像されないように配置され、したがって、ペリクル上の粒子は結像プロセスを妨げない。EUVリソグラフィ装置においてペリクル膜として使用される1つの特に有望な材料はカーボンナノチューブ(CNT)の織物であり、(98%超の)非常に高いEUV透過率及び非常に優れた機械的安定性をもたらす可能性がある。しかしながら、通常、リソグラフィ装置内には低圧の水素ガスが供給され、(露光中に)EUV放射の存在下で水素プラズマを生じる。この水素イオンと水素プラズマからの水素フリーラジカルは、CNTから形成されたペリクルをエッチングし、ペリクルの潜在的な寿命を制限し、CNTペリクルの商業的実装を妨げる可能性があることがわかっている。
【0011】
[00011] 本発明の発明者らは、水素イオン及びフリーラジカルによる炭素のエッチングが温度に依存することに気付いた。具体的には、本発明者らは、(a)炭素エッチング速度が低温でゼロではないこと、(b)炭素エッチング速度が、それを超えると炭素エッチングが無視できるレベルに留まる閾値温度で無視できるレベルに低下すること、及び(c)EUVリソグラフィスキャナ内のペリクルが通常、各サイクル中に炭素エッチング速度が無視できない温度をサンプリングする温度範囲を循環することになることに気付いた。例えば、EUVリソグラフィスキャナでは、動作中にEUV放射ビームがペリクル上を前後にスキャンするため、永続的な温度変動が発生する。たとえスキャン露光中の一部の時間であっても、ペリクルの温度が、炭素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度を下回ると、ペリクルは急速に劣化することになる。様々な要因に応じて、閾値温度を下回る温度で炭素エッチング速度のピークが存在する場合がある。炭素エッチング速度のピークが存在する場合、そのピークは、例えば600K~800Kの温度にある場合がある。更に、変動によってペリクルの温度が繰り返しこのピークを越えることがあり、劣化が促進し、CNTペリクルの寿命が短くなる。レチクルの露光中のペリクルの温度が十分に高い温度に維持される場合は、劣化速度を低いレベルに維持することができ、ペリクルの寿命は劇的に延びる。以下で更に説明するように、ペリクルの温度をそれを超えて維持することが望ましい値は、様々な要因に依存することがある。ペリクルを閾値温度よりも高く維持することが望ましい場合があるが、閾値温度に近いがそれよりわずかに低い温度にペリクルを維持することによっても、ペリクルの劣化速度を大幅に遅らせ得ることが理解されるであろう。更に、これも以下で更に説明するように、閾値温度の値はまた様々な要因に依存することがある。例えば、ペリクルの温度を永続的に600超、より好ましくは700K超、又はより好ましくは800K超に維持することが望ましい場合がある。ペリクルの温度を適切な温度に維持することによって、劣化速度を少なくとも一桁減じることができ、ペリクルの寿命が劇的に延びることが予想される。
【0012】
[00012] 有利には、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように構成された加熱システムを提供することによって、第1の態様によるリソグラフィ装置は、ペリクル、又はペリクルの水素プラズマに隣接する少なくともいずれかの部分の温度を安全な温度(例えば、カーボンエッチング速度が無視できるレベルである閾値温度を上回る)に維持し得ることを保証することができる。加熱システムが、照明システムからの放射ビームにより行われる加熱に加えて、ペリクルに熱を供給するための機構を提供することが理解されるであろう。
【0013】
[00013] リソグラフィ装置は更に、目標温度分布を達成するために、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように加熱システムを制御するように動作可能なコントローラを備えることがある。
【0014】
[00014] 支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリの照明システムからの放射への曝露中に、加熱システムは、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成されることがある。
【0015】
[00015] 最低温度は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度以上である場合がある。リソグラフィ装置内のペリクルの水素エッチング速度が、例えば、ペリクルを形成する材料、ペリクルに入射する水素イオンフラックス、ペリクルに入射するイオンのエネルギー分布などの多くの要因に依存することが理解されるであろう。
【0016】
[00016] 当業者によって理解されるように、リソグラフィ装置内では、水素プラズマは(基板の露光に使用される)EUV放射によって形成される。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分は、ペリクルの照明システムからEUV放射を受ける部分を含むことがある。更に、プラズマが周囲の領域に広がり得ることが理解されるであろう。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分は、ペリクルの照明システムからEUV放射を受けている部分の中心にあるが、それよりわずかに大きいペリクルの一部分を含むことがある。
【0017】
[00017] 例えば一部の実施形態では、リソグラフィ装置には、CNTから形成されたペリクルが設けられることがある。
【0018】
[00018] 水素イオンと炭素材料との相互作用は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2つの公開された論文、(1)J.Roth、C.Garcia-Rosales、「Analytic description of the chemical erosion of graphite by hydrogen ions」、Nucl.Fusion 1996、36/12、1647-1659、及び(2)J.Roth、C.Garcia-Rosales、「Corrigendum-Analytic description of the chemical erosion of graphite by hydrogen ions」、Nucl.Fusion 1997、37、897に定量的に説明されている。この水素イオンと炭素材料との相互作用の定量的記述は、Roth-Garcia-Rosales(RGR)モデルと呼ばれることがある。RGRモデルは、例えばイオンエネルギーが1~30eVを形成するなど、リソグラフィ装置内で遭遇する典型的な水素イオンエネルギーの温度の関数として炭素材料のエッチング収率を予測するのに使用される可能性がある。EUVリソグラフィ装置内では、ペリクルに入射する一般的な水素イオンフラックスは、1・1019-2・s-1程度である場合がある。EUVリソグラフィ装置内では、ペリクルに入射する一般的な水素イオンフラックスは、1・1019-2・s-1の数桁の範囲内(例えば、1018-2・s-1から1020-2・s-1)にある場合がある。
【0019】
[00019] これらの典型的な周囲条件では、純粋にCNTから形成されたペリクルの場合、ペリクルの水素エッチング速度は約1050Kの温度で無視できるレベルに低下することが予想される。ただし、異なる条件下では、異なる最低温度が望ましい場合があることが当業者によって理解されるであろう。
【0020】
[00020] 最低温度は、ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である場合がある。
【0021】
[00021] 最低温度は600K以上である場合がある。
【0022】
[00022] 最低温度は700K以上である場合がある。
【0023】
[00023] 最低温度は800K以上である場合がある。
【0024】
[00024] 最低温度は900K以上である場合がある。
【0025】
[00025] 最低温度は1000K以上である場合がある。
【0026】
[00026] 上で説明したように、これは、純粋にCNTから形成されたペリクルにとって有益な場合があり、ペリクルに入射する水素イオンフラックスが存在し、1・1019-2・s-1程度である場合があり、水素イオンエネルギーは1~30eV程度である。
【0027】
[00027] より好ましくは、最低温度は1050K以上である場合がある。一部の実施形態では、最低温度は1100K以上である場合がある。
【0028】
[00028] 本発明者らは、高温での水素エッチング速度の無視できるレベルへの低下が、所定の温度でのsp3炭素のsp2炭素への変換によって支配されることに更に気付いた。更に、グラフェンやCNTなどのsp2炭素構造を形成する際にも同様のプロセスが起こり、炭素の温度が上昇してsp2炭素構造が形成されるsp2炭素への変換が行われる。グラフェンを成長させるためのそのようなプロセスには、例えば、化学蒸着(CVD)及びプラズマ励起化学蒸着(PE-CVD)が含まれる。更に、sp3炭素源からのグラフェンの成長は、単一原子触媒の存在下で300℃(573K)という低い温度で開始され得ることが知られている。つまり、sp3炭素のsp2炭素への変換は、単一原子触媒の存在下においてこの温度で開始される可能性がある。ペリクルのエッチングフリー動作温度範囲を下げることは、ペリクルの環境への熱負荷を軽減するため有益である。また、ペリクルに供給する熱が少なくて済むことを意味し、システムがこの熱を供給するのを容易にすることがある。
【0029】
[00029] したがって、本発明の発明者らは、CNTから形成されたペリクルに、sp3炭素をsp2炭素に変換するための触媒として作用し得る濃度の添加剤を供給すべきであることを提案する。その結果、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度を、純粋なCNTペリクルのおよそ1050Kから、例えば573K程度に下げることができると予想される。実際の閾値温度は添加剤の材料及び濃度に依存することになることが当業者によって理解されるであろう。
【0030】
[00030] 例えばモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)などの遷移金属原子をCNTペリクルに添加することが提案される。更に、本発明の発明者らは、そのような触媒原子の比較的低い濃度、例えば炭素原子に関して0.1~1%程度で十分であり得ると予想する。そのような濃度は、EUV放射のペリクル透過に大きな影響を与えないと予想される。
【0031】
[00031] 加熱システムは、ペリクルの現在放射ビームを受けている部分を取り囲むペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成されることがある。
【0032】
[00032] ペリクルの現在放射ビームを受けている部分を取り囲むペリクルの部分を加熱することは特に有益である場合がある。なぜなら、水素プラズマはペリクルの上記の部分に広がることがあるが、ペリクルのその部分は放射ビームから熱を受けていない(むしろ、この熱を放射し急速に冷却することになる)ためである。
【0033】
[00033] リソグラフィ装置は更に、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを放射ビームに通すために、照明システムにより調整された放射ビームに対して支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を備えることがある。加熱システムは、ペリクルの現在放射ビームを受けている少なくとも一部分を加熱するように構成されることがある。
【0034】
[00034] つまり、基板の露光はスキャン露光として実行される。対応するスキャン機構が、投影システムから受けた放射ビームで基板テーブル(及びそれにより支持される任意の基板)を同期スキャンするように配置されることが理解されるであろう。
【0035】
[00035] 当業者によって理解されるように、リソグラフィ装置内では、水素プラズマは(基板の露光に使用される)EUV放射によって形成される。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分は、ペリクルの照明システムからEUV放射を受ける部分を含むことがある。
【0036】
[00036] レチクル及び/又はペリクルの平面に投影される放射ビームは、露光スリット又はスリットと呼ばれ得る細長い放射の帯を形成することがある。
【0037】
[00037] 既存のリソグラフィ装置では、照明システム及び/又は投影システムからスリットに向かう視線が存在する場合があるため、スリット内のペリクルを加熱することは有利である場合がある。これにより、加熱システムがペリクルを加熱するために電磁放射をペリクルに照射することが可能になることがある。
【0038】
[00038] 加熱システムは、ペリクルの現在放射ビームを受けている部分を取り囲むペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成されることがある。
【0039】
[00039] プラズマが周囲の領域に広がり得ることが更に理解されるであろう。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分は、ペリクルの照明システムからEUV放射を受けている部分の中心にあるが、それよりわずかに大きい部分を含むことがある。
【0040】
[00040] 加熱システムは、加熱システム及び照明システムから受けた放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成するように、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように構成されることがある。
【0041】
[00041] 例えば、加熱システムは、ペリクル全体が所望の温度又は温度範囲(例えば1050Kを超える)に維持されるように構成されることがある。
【0042】
[00042] 加熱システムは、実質的にペリクルの膜全体を加熱するように構成されることがある。
【0043】
[00043] スリットの領域のみを加熱する潜在的な問題は、スリットのすぐ外側のエッチングの抑制が不十分なことである場合がある。水素イオンフラックスは放射スリットの外側のペリクル位置で急速に減少することになるが、まだいくらかのイオンフラックスが残っていることとペリクル温度が不十分であることの組み合わせにより、ペリクルの寿命にマイナスの影響を及ぼすエッチングがもたらされることになる場合がある。
【0044】
[00044] 加熱システムは、支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルに放射を誘導するように動作可能な放射源を備えることがある。
【0045】
[00045] 放射源は、電磁放射をペリクルに誘導するように動作可能である場合がある。
【0046】
[00046] 放射源は、支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルのペリクルに入射するように電子を誘導するように動作可能である場合がある。
【0047】
[00047] 放射源は電子銃を備えることがある。
【0048】
[00048] リソグラフィ装置は更に、電子源から電子ビームを受け、サポートによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの表面に電子ビームを分配するように構成された電子光学系を備えることがある。
【0049】
[00049] リソグラフィ装置は更に、放射源により放出された放射を、支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの異なる部分の範囲に誘導することができるように、放射源及び支持構造のうちの少なくとも一方を移動させるように動作可能な加熱スキャン機構を備えることがある。
【0050】
[00050] 加熱スキャン機構が、(a)(支持構造の移動による)ペリクルの移動、及び(b)ペリクルに対する放射の移動(支持構造に対して静的か動的か)の両方を考慮するように動作可能であり得ることが理解されるであろう。
【0051】
[00051] 加熱システムは、支持構造によって支持されているときのペリクル-レチクルアセンブリのペリクルに電流を供給するように構成されることがある。
【0052】
[00052] つまり、加熱システムは、ジュール加熱又は電気加熱を使用してペリクルを加熱するように構成されることがある。そのような実施形態は、ペリクル自体の電気抵抗率を利用してペリクルを加熱する。
【0053】
[00053] 加熱システムは、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの異なる部分に接触するように動作可能な複数の電極と、複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電圧を供給するように構成された電源とを備えることがある。
【0054】
[00054] 例えば、2つのストリップ状電極がペリクルの2つの対向する面に沿って設けられることがあり、電圧が2つの電極間に供給されることがある。そのような構成により、電流がペリクルの対向面の一方から他方へ2つの電極間を(ほぼ垂直に)流れることになる。
【0055】
[00055] より多くの電極とこれらの電極における適切な電圧レベルを使用することによって、より複雑な加熱プロファイルを適用することができる。原則として有益な熱プロファイルを得るために、電圧を時間的に変調することも考えられる。
【0056】
[00056] 加熱システムは、電極と、電極と支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分との間に電圧を印加するように動作可能な電圧源とを備えることがある。
【0057】
[00057] 有利には、そのような構成はペリクルの熱イオン加熱を可能にする。使用時に、電圧源は、電極がカソードとして作用することができ、ペリクルの少なくとも一部分がアノードとして作用することができるようなものである場合がある。そのような構成によって、カソードにより放出される電子がペリクルの少なくとも一部分に向けられる。電子は、ペリクルの(正に帯電した)少なくとも一部分に引き寄せられ、リソグラフィ装置の他の部分には引き寄せられない。したがって、そのような熱イオン加熱の1つの利点は、リソグラフィ装置の他の部分の加熱が全くないか又は最小になるように加熱が標的化されることである。そのような熱イオン加熱のもう1つの利点は、高い熱伝達を達成できることである。
【0058】
[00058] 一部の実施形態では、電圧源は、電極と支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル全体との間に電圧を印加するように動作可能である場合がある。例えば、ペリクルは連続した導電層を含むことがあり、電圧源は導電層に電圧を印加するように構成されることがある。他の実施形態では、電圧源は、電極と支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの複数の部分のうちの1つとの間に電圧を印加するように動作可能である場合がある。例えば、ペリクルは、複数の分離した導電部を含む破断した導電層を含むことがあり、電圧源は、複数の導電部のうちの1つ以上に電圧を印加するように構成されることがある。
【0059】
[00059] 加熱システムは更に、電極を加熱するように動作可能なヒータを備えることがある。
【0060】
[00060] 使用時に、ヒータは、電極内の電子の熱エネルギーが電極を形成する材料の仕事関数を超えるように、電極の温度を適切な温度に維持するように動作可能である場合がある。
【0061】
[00061] コントローラを備える実施形態では、コントローラは、電圧源により印加された電圧を制御するように動作可能である場合がある。
【0062】
[00062] 一部の実施形態では、加熱システムは、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを周期的に加熱するように動作可能である場合がある。
【0063】
[00063] 一部の実施形態では、加熱システムは、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルにパルス加熱を行うように動作可能である場合がある。
【0064】
[00064] これまで考察したように、一部のペリクル、特にカーボンナノチューブ(CNT)から形成されたペリクルは、リソグラフィ装置LA内での水素プラズマエッチングの影響を受けやすい。それを超えるとCNTペリクル19の水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が存在すると予想される。この温度閾値は多くの要因に依存するが、700℃程度である場合がある。したがって、このエッチングプロセスは、CNTペリクル19を700℃超に連続的に加熱することによって強く抑制される可能性がある。
【0065】
[00065] そのような周期的な加熱又はパルス加熱により、ペリクルの周期的に変化する温度プロファイル又はパルス温度プロファイルがもたらされることになることが理解されるであろう。しかしながら、本発明者らは、ペリクルが閾値レベルを超えて加熱され、加熱が解除されると、エッチング速度が無視できるレベルから上昇するまでに時間遅延が存在することに気付いた。十分な温度に加熱するとペリクルからの水素の脱離が起こり、水素エッチング速度が無視できるレベルに低下すると考えられる。更に、加熱後にペリクル表面に水素が補充されるまでにはゼロ以外の時間がかかるため、加熱を解除した後のエッチング速度の上昇には時間遅延があると考えられる。
【0066】
[00066] 有利には、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを周期的にのみ加熱することによって、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルにパルス加熱を行うことによって、加熱システムにより供給されるパワーは、例えばペリクルが連続的に加熱される構成に比べて大幅に低減される。これにより、支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの近傍に設けられた加熱システムからの追加の加熱負荷が軽減される。そして、これにより加熱システムに必要な電力量及び熱負荷を吸収するのに必要な冷却容量の大きさが削減される。また、レチクルの歪みを引き起こし、リソグラフィ装置の結像性能に影響を与え得るレチクルへの追加の熱負荷(例えば、そのような熱負荷はオーバーレイの一因となることがある)も軽減される。
【0067】
[00067] 更に、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを周期的にのみ加熱することによって、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルにパルス加熱を行うことによって、加熱システムは、リソグラフィ装置における露光と露光の間に動作することがある。例えば、加熱システムは、単一基板の異なるターゲット領域(又はダイ)の露光と露光の間に、あるいは異なる基板の露光と露光の間にも動作することがある。そして、露光と露光の間の加熱を可能にすることによって、加熱システムは、基板の露光中にペリクルを加熱することが望ましい構成とは異なる場所に位置することがある。有利には、これにより、例えば支持構造が非露光位置又は場所にあるときにペリクルを加熱し得る場所に加熱システムを収容するためのより大きな空間が存在することがあるため、加熱システムのリソグラフィ装置への統合が容易になることがある。
【0068】
[00068] 一般に、加熱パルスの持続時間は、ペリクルを所望の温度(例えば、それを超えるとペリクルの水素エッチングを無視できる閾値温度を超える)に加熱するのに十分な長さである場合がある。例えば、加熱パルスの持続時間は、0.1msから100ms、より好ましくは1から10msの範囲に及ぶ可能性がある。ペリクルを所望の温度に加熱するのに必要な時間が、ペリクルを加熱している間の加熱システムの出力に依存することになることが理解されるであろう。一部の実施形態では、加熱パルスの持続時間は1ms程度である場合がある。
【0069】
[00069] 一般に、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、最初のパルスからの加熱の後にペリクルの表面に水素が補充されないように十分に短い場合がある。ここでも、最初のパルスからの加熱の後にペリクルの表面に水素が補充されるのに必要な時間が、ペリクルの近傍の状態に依存することになることが理解されるであろう。高出力リソグラフィ装置におけるラジカルフラックスの変動を考慮すると、加熱パルス間に必要とされ得る時間が、2つのダイ(後方及び前方)からウェーハ露光全体に及び得ることが判明している。加熱パルス間の時間の観点では、これは50msから20秒、より好ましくは100msから10秒の範囲にある。一部の実施形態では、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、100ms程度である場合がある。
【0070】
[00070] EUVリソグラフィ装置内では、非常に短い時間だけ周期的な加熱又はパルス加熱を行うことによって、水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持できると考えられる。したがって、一部の実施形態では、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱システムにより行われる加熱は、これより考察するように比較的低いデューティサイクルのパルス加熱を含む。
【0071】
[00071] 加熱システムのデューティサイクルは0.1以下である場合がある。デューティサイクルは、加熱システムがペリクルに加熱を行う時間の部分の、加熱システムがペリクルに加熱を行わない時間の部分に対する比率である場合がある。
【0072】
[00072] 有利には、そのような構成は、ペリクルが連続的に加熱される構成と比べて、加熱システムにより供給される出力の量を10分の1に減らすことになる。0.1以下の加熱システムのデューティサイクルは、EUVリソグラフィ装置内の状態が最悪のシナリオであっても、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するのに十分であると考えられる。
【0073】
[00073] しかしながら、実際には、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するには、更に小さいデューティサイクルで十分であると考えられる。例えば、一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは0.01以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは10-3以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは10-4以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは10-5以下である場合がある。
【0074】
[00074] リソグラフィ装置は、基板テーブルにより支持される基板の複数の異なるターゲット領域上に、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのレチクルの像を形成するように動作可能である場合がある。そのような実施形態では、加熱システムは、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。
【0075】
[00075] 一部の実施形態では、nは1より大きい場合がある。また、加熱システムは、ペリクル領域の一部が他のペリクル領域よりもプラズマ劣化を受けやすい場合があるため、ペリクルの各部を垂直方向(x方向)に対してスキャン方向(y方向)に別々に加熱するように動作可能である場合がある。
【0076】
[00076] n個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱することのみによって、加熱システムは、基板の露光中にペリクルが連続的に加熱される構成とは異なる場所に位置することがある。有利には、これにより、例えば支持構造が非露光位置又は場所にあるときにペリクルを加熱し得る場所に加熱システムを収容するためのより大きな空間が存在することがあるため、加熱システムのリソグラフィ装置への統合が容易になる。
【0077】
[00077] スキャンリソグラフィ装置では、基板の1つのターゲット領域の露光中に、支持基板は、照明システムにより調整された放射ビームの経路を通って(放射ビームの一方の側の)第1の端部位置から(放射ビームの他方の側の)第2の端部位置へ移動(又はスキャン)される。一般に、基板の次のターゲット領域の露光のために、支持基板は放射ビームの経路を通って第2の端部位置から第1の端部位置に戻される。放射ビームに曝露されているときにペリクルへの視線を確保することは困難である。しかしながら、支持構造が第1又は第2の端部位置の一方に配置される場合には、通常、ペリクルに加熱を行うためのより大きな空間が存在する。
【0078】
[00078] 加熱システムは、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。
【0079】
[00079] 4個のすべてのダイの露光後にペリクルを加熱することは、EUVリソグラフィ装置内の状態が最悪のシナリオであっても、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するのに十分であると考えられる。
【0080】
[00080] しかしながら、実際には、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するには、加熱頻度を低くすることで十分になると考えられる。例えば、一部の実施形態では、加熱システムは、10個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムは、100個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムは、1000個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。
【0081】
[00081] 加熱システムは、基板の1つのターゲット領域上にレチクルの像を形成することと、基板の次のターゲット領域上にレチクルの像を形成することとの間の時間にペリクルを加熱するように動作可能である場合がある。
【0082】
[00082] 加熱システムは、1つの基板の露光と後続の基板の露光との間に、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能である場合がある。
【0083】
[00083] 加熱システムは、ペリクルの現在放射ビームを受けていない部分を加熱するように構成されることがある。
【0084】
[00084] リソグラフィ装置は更に、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを放射ビームに通すために、照明システムにより調整された放射ビームに対して支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を備えることがあり、加熱システムは、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリが放射ビームに通されるときに、ペリクルの現在放射ビームを受けていない部分を加熱するように構成されることがある。
【0085】
[00085] そのような実施形態では、加熱システムは、EUV放射ビームによってレチクルをスキャンする支持構造の移動を利用して、加熱ビームによってペリクルもスキャンする。
【0086】
[00086] 加熱システムは、実質的にペリクルの膜全体を加熱するように構成されることがある。
【0087】
[00087] 代替的に一部の実施形態では、加熱システムは、使用時に照明システムにより調整された放射ビームを受けないペリクルの部分を加熱するように構成されることがある。
【0088】
[00088] EUVからの周期的な加熱は、ペリクルの使用時に照明システムにより調整された放射ビームを受ける部分の水素エッチングを抑制するのに十分である場合がある。したがって、一部の実施形態では、加熱システムは、ペリクルの使用時に照明システムにより調整された放射ビームを受けない部分のみを加熱することがある。
【0089】
[00089] 加熱システムは、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成されることがある。最低温度は、ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である場合がある。最低温度は700℃以上である場合がある。最低温度は750℃以上である場合がある。最低温度は800℃以上である場合がある。
【0090】
[00090] リソグラフィ装置は更に、支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブルのペリクルの少なくとも一部分の温度を決定するように動作可能な温度センサを備えることがある。
【0091】
[00091] 温度センサは、支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブルのペリクルの少なくとも一部分の温度プロファイルを決定するように動作可能である場合がある。
【0092】
[00092] 加熱システムは、決定したペリクルの少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに応じて、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能である場合がある。
【0093】
[00093] つまり、加熱システム及び温度センサはフィードバックループの一部を構成することがある。
【0094】
[00094] リソグラフィ装置は更に、支持構造によって支持されているときのペリクル-レチクルアセンブリのペリクルの近傍に水素を供給するように動作可能な水素供給部を備えることがある。
【0095】
[00095] 本開示の第2の態様によれば、レチクル-ペリクルアセンブリを使用する方法であって、レチクル-ペリクルアセンブリを放射ビームで照明して放射ビームの断面にパターンを付与し、基板上にレチクルの像を形成すること、及び別個の熱源を使用してレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱することを含む方法が提供される。
【0096】
[00096] これより考察するように、第2の態様による方法は有利である。
【0097】
[00097] この方法がEUVリソグラフィプロセスの一部を構成し得ることは理解されるであろう。更に、レチクル-ペリクルアセンブリが放射ビームで照明されるときに、放射の一部分がペリクルによって吸収され、ペリクルを加熱することになることが理解されるであろう。有利には、別個の熱源を使用してペリクルを加熱することによって、第2の態様による方法は、ペリクルの温度、又はペリクルの使用時に水素プラズマに隣接する少なくともいずれかの部分の温度を、炭素エッチング速度が無視できるレベルにある安全な温度に維持できることを保証することができる。
【0098】
[00098] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルが目標温度分布を達成することがある。
【0099】
[00099] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの少なくとも一部分が最低温度より高く維持されることがある。
【0100】
[000100] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルの温度が、ペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルになるように十分に高くなることがある。
【0101】
[000101] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルの温度が600K以上になることがある。
【0102】
[000102] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルの温度が700K以上になることがある。
【0103】
[000103] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルの温度が800K以上になることがある。
【0104】
[000104] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルの温度が900K以上になることがある。
【0105】
[000105] 別個の熱源を使用したレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱によって、ペリクルの温度が1000K以上になることがある。
【0106】
[000106] より好ましくは、ペリクルの温度は1050K以上である場合がある。一部の実施形態では、ペリクルの温度は1100K以上である場合がある。
【0107】
[000107] 放射ビームによるレチクル-ペリクルアセンブリの照明中に、レチクル-ペリクルアセンブリは、放射ビームに通されることがあり、ペリクルの現在放射ビームを受けている少なくとも一部分は、別個の熱源を使用して加熱されることがある。
【0108】
[000108] ペリクルの現在放射ビームを受けている部分を取り囲むペリクルの少なくとも一部分は、別個の熱源を使用して加熱されることがある。
【0109】
[000109] 別個の熱源を使用したペリクルの加熱によって、別個の熱源及び放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成することがある。
【0110】
[000110] 実質的にペリクルの膜全体が別個の熱源を使用して加熱されることがある。
【0111】
[000111] 別個の熱源を使用したペリクルの加熱は、放射をペリクルに誘導することを含むことがある。
【0112】
[000112] 例えば、放射は電磁放射及び/又は電子を含むことがある。
【0113】
[000113] 放射をペリクルに誘導することによって別個の熱源を使用してペリクルを加熱することは、放射をペリクルにスキャンすることを含むことがある。
【0114】
[000114] 別個の熱源を使用したペリクルの加熱は、ペリクルに電流を供給することを含むことがある。
【0115】
[000115] 別個の熱源を使用してペリクルを加熱することは、ペリクルの少なくとも一部分に正の電圧を印加すること、及びペリクルの近傍の電極から電子を放出することを含むことがある。
【0116】
[000116] つまり、別個の熱源を使用したペリクルの加熱は、ペリクルの熱イオン加熱を使用して達成される。ペリクルの少なくとも一部分に正の電圧を印加することは、ペリクルの少なくとも一部分と電極との間に電圧を印加することによって達成されることがある。そのような構成により、電極はカソードとして作用し、ペリクルの少なくとも一部分はアノードとして作用することができる。そのような構成では、電極により放出される電子はペリクルの少なくとも一部分に向けられる。電子は、ペリクルの(正に帯電した)少なくとも一部分に引き寄せられ、リソグラフィ装置の他の部分には引き寄せられない。したがって、そのような熱イオン加熱の1つの利点は、リソグラフィ装置の他の部分の加熱が全くないか又は最小になるように加熱が標的化されることである。そのような熱イオン加熱のもう1つの利点は、高い熱伝達を達成できることである。
【0117】
[000117] ペリクルの近傍に電極から電子を放出することは、電極を加熱することを含むことがある。
【0118】
[000118] 例えば電極の加熱は、電極の温度によって、電極内の電子の熱エネルギーが電極を形成する材料の仕事関数を超えることになることを保証することがある。
【0119】
[000119] 別個の熱源を使用してレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱することは、別個の熱源を使用してレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを周期的に加熱することを含むことがある。
【0120】
[000120] 別個の熱源を使用してレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱することは、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルにパルス加熱を行うことを含むことがある。
【0121】
[000121] これまで考察したように、一部のペリクル、特にカーボンナノチューブ(CNT)から形成されたペリクルは、リソグラフィ装置LA内での水素プラズマエッチングの影響を受けやすい。それを超えるとCNTペリクル19の水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が存在すると予想される。この温度閾値は多くの要因に依存するが、700℃程度である場合がある。したがって、このエッチングプロセスは、CNTペリクル19を700℃超に連続的に加熱することによって強く抑制される可能性がある。
【0122】
[000122] そのような周期的な加熱又はパルス加熱により、ペリクルの周期的に変化する温度プロファイル又はパルス温度プロファイルがもたらされることになることが理解されるであろう。しかしながら、本発明者らは、ペリクルが一旦閾値レベルを超えて加熱され、加熱が解除されると、エッチング速度が無視できるレベルから上昇するまでに時間遅延が存在することに気付いた。十分な温度に加熱するとペリクルからの水素の脱離が起こり、水素エッチング速度が無視できるレベルに低下すると考えられる。更に、加熱後にペリクル表面に水素が補充されるまでにはゼロ以外の時間がかかるため、加熱を解除した後のエッチング速度の上昇には時間遅延があると考えられる。
【0123】
[000123] 有利には、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを周期的にのみ加熱することによって、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルにパルス加熱を行うことによって、加熱システムにより供給される出力は、例えばペリクルが連続的に加熱される構成に比べて大幅に低減される。これにより、支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの近傍に設けられた加熱システムからの追加の加熱負荷が軽減される。そして、これにより加熱システムに必要な電力量及び熱負荷を吸収するのに必要な冷却容量の大きさが削減される。また、レチクルの歪みを引き起こし、リソグラフィ装置の結像性能に影響を与え得るレチクルへの追加の熱負荷(例えば、そのような熱負荷はオーバーレイの一因となることがある)も軽減される。
【0124】
[000124] 更に、レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを周期的にのみ加熱することによって、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルにパルス加熱を行うことによって、加熱システムは、リソグラフィ装置における露光と露光の間に動作することがある。例えば、加熱システムは、単一基板の異なるターゲット領域(又はダイ)の露光と露光の間に、あるいは異なる基板の露光と露光の間にも動作することがある。そして、露光と露光の間の加熱を可能にすることによって、加熱システムは、基板の露光中にペリクルを加熱することが望ましい構成とは異なる場所に位置することがある。有利には、これにより、例えば支持構造が非露光位置又は場所にあるときにペリクルを加熱し得る場所に加熱システムを収容するためのより大きな空間が存在することがあるため、加熱システムのリソグラフィ装置への統合が容易になることがある。
【0125】
[000125] 一般に、加熱パルスの持続時間は、ペリクルを所望の温度(例えば、それを超えるとペリクルの水素エッチングを無視できる閾値温度を超える)に加熱するのに十分な長さである場合がある。例えば、加熱パルスの持続時間は、0.1msから100ms、より好ましくは1から10msの範囲に及ぶ可能性がある。ペリクルを所望の温度に加熱するのに必要な時間が、ペリクルを加熱している間の加熱システムの出力に依存することになることが理解されるであろう。一部の実施形態では、加熱パルスの持続時間は1ms程度である場合がある。
【0126】
[000126] 一般に、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、最初のパルスからの加熱の後にペリクルの表面に水素が補充されないように十分に短い場合がある。ここでも、最初のパルスからの加熱の後にペリクルの表面に水素が補充されるのに必要な時間が、ペリクルの近傍の状態に依存することになることが理解されるであろう。高出力リソグラフィ装置におけるラジカルフラックスの変動を考慮すると、加熱パルス間に必要とされ得る時間は、2つのダイ(後方及び前方)からウェーハ露光全体に及び得ることが判明している。加熱パルス間の時間の観点では、これは50msから20秒、より好ましくは100msから10秒の範囲にある。一部の実施形態では、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、100ms程度である場合がある。
【0127】
[000127] EUVリソグラフィ装置内では、非常に短い時間だけ周期的な加熱又はパルス加熱を行うことによって、水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持できると考えられる。したがって、一部の実施形態では、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの加熱システムにより行われる加熱は、これより考察するように比較的低いデューティサイクルのパルス加熱を含む。
【0128】
[000128] ペリクルの加熱のデューティサイクルは0.1以下である場合がある。デューティサイクルは、ペリクルに加熱が行われる時間の部分の、ペリクルに加熱が行われない時間の部分に対する比率である場合がある。
【0129】
[000129] 有利には、そのような構成は、ペリクルが連続的に加熱される構成と比べて、加熱システムにより供給される出力の量を10分の1に減らすことになる。0.1以下の加熱システムのデューティサイクルは、EUVリソグラフィ装置内の状態が最悪のシナリオであっても、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するのに十分であると考えられる。
【0130】
[000130] しかしながら、実際には、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するには、更に小さいデューティサイクルで十分であると考えられる。例えば、一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは0.01以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは10-3以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは10-4以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムのデューティサイクルは10-5以下である場合がある。
【0131】
[000131] 一部の実施形態では、レチクルの像は、基板の複数の異なるターゲット領域上に形成されることがある。そのような実施形態では、ペリクルの加熱される各部は、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されることがある。
【0132】
[000132] 一部の実施形態では、nは1より大きい場合がある。
【0133】
[000133] n個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱することのみによって、加熱システムは、基板の露光中にペリクルが連続的に加熱される構成とは異なる場所に位置することがある。有利には、これにより、例えば支持構造が非露光位置又は場所にあるときにペリクルを加熱し得る場所に加熱システムを収容するためのより大きな空間が存在することがあるため、加熱システムのリソグラフィ装置への統合が容易になる。
【0134】
[000134] スキャンリソグラフィ装置では、基板の1つのターゲット領域の露光中に、支持基板は、照明システムにより調整された放射ビームの経路を通って(放射ビームの一方の側の)第1の端部位置から(放射ビームの他方の側の)第2の端部位置へ移動(又はスキャン)される。一般に、基板の次のターゲット領域の露光のために、支持基板は放射ビームの経路を通って第2の端部位置から第1の端部位置に戻される。放射ビームに曝露されているときにペリクルへの視線を確保することは困難である。しかしながら、支持構造が第1又は第2の端部位置の一方に配置される場合には、通常、ペリクルに加熱を行うためのより大きな空間が存在する。
【0135】
[000135] ペリクルの加熱される各部は、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されることがある。
【0136】
[000136] 4個のすべてのダイの露光後にペリクルを加熱することは、EUVリソグラフィ装置内の状態が最悪のシナリオであっても、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するのに十分であると考えられる。
【0137】
[000137] しかしながら、実際には、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するには、加熱頻度を低くすることで十分になると考えられる。例えば、一部の実施形態では、加熱システムは、10個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムは、100個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、加熱システムは、1000個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能である場合がある。
【0138】
[000138] ペリクルは、基板の1つのターゲット領域上にレチクルの像を形成することと、基板の次のターゲット領域上にレチクルの像を形成することとの間の時間に加熱されることがある。
【0139】
[000139] ペリクルは、1つの基板の露光と後続の基板の露光との間に加熱されることがある。
【0140】
[000140] ペリクルを加熱することは、ペリクルの現在放射ビームを受けていない一部分を加熱することを含むことがある。
【0141】
[000141] レチクルの像は、スキャン露光中に基板上に形成されることがあり、ペリクルを加熱することは、そのスキャン露光中に、ペリクルの現在放射ビームを受けていない部分を加熱することを含むことがある。そのような実施形態では、加熱システムは、EUV放射ビームによってレチクルをスキャンする支持構造の移動を利用して、加熱ビームによってペリクルもスキャンする。
【0142】
[000142] ペリクルを加熱することは、実質的にペリクルの膜全体を加熱することを含むことがある。
【0143】
[000143] 代替的に、ペリクルを加熱することは、使用時にペリクルの放射ビームにより照明されない部分を加熱することを含むことがある。
【0144】
[000144] EUVからの周期的な加熱は、ペリクルの使用時に照明システムにより調整された放射ビームを受ける部分の水素エッチングを抑制するのに十分である場合がある。したがって、一部の実施形態では、加熱システムは、ペリクルの使用時に照明システムにより調整された放射ビームを受けない部分のみを加熱することがある。
【0145】
[000145] ペリクルを加熱することは、ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持することを含むことがある。
【0146】
[000146] 最低温度は、ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である場合がある。最低温度は700℃以上である場合がある。最低温度は750℃以上である場合がある。最低温度は800℃以上である場合がある。
【0147】
[000147] 方法は更に、ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定することを含むことがある。
【0148】
[000148] ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定することは、ペリクルの少なくとも一部分の温度プロファイルを決定することを含むことがある。
【0149】
[000149] 別個の熱源を使用してペリクルを加熱するステップは、決定したペリクルの少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに依存する場合がある。
【0150】
[000150] 方法は、本開示の第1の態様による装置を使用して実行されることがある。
【0151】
[000151] 本開示の第3の態様によれば、リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、カーボンナノチューブから形成された基板を備え、基板が更に少なくとも1つの添加剤を含むペリクルが提供される。
【0152】
[000152] 少なくとも1つの添加剤は、基板上に分布させた複数の触媒原子を含むことがある。
【0153】
[000153] 少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度は、0.1~2%程度である場合がある。例えば、少なくとも1つの不純物の炭素原子に対する濃度は、0.1~1%程度である場合がある。そのような添加剤の濃度は、ペリクルのEUV透過率を著しく低下させないと予想される。例えば、モリブデン原子の濃度が1%の場合、ペリクルのEUV透過率は0.1%未満低下すると推定される。同様に、ニッケル原子の濃度が1%の場合、ペリクルのEUV透過率は0.5%未満低下すると推定される。
【0154】
[000154] 少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できる閾値温度が900K未満になるようなものである場合がある。
【0155】
[000155] 一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が800K未満になるようなものである。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が700K未満になるようなものである。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が600K未満になるようなものである。
【0156】
[000156] 少なくとも1つの添加剤は遷移金属を含むことがある。
【0157】
[000157] 少なくとも1つの添加剤は、モリブデン、クロム、ニッケル、銅及び/又は鉄を含むことがある。
【0158】
[000158] 少なくとも1つの添加剤はホウ素を含むことがある。
【0159】
[000159] 少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度は、15原子%程度である場合がある。
【0160】
[000160] 少なくとも1つの添加剤は非晶質炭素を含むことがある。
【0161】
[000161] 上述した、又は以下の説明で参照される1つ以上の態様又は特徴が、1つ以上の他の態様又は特徴と組み合わせられ得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0162】
[000162] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0163】
図1】リソグラフィ装置及び放射源を備えるリソグラフィシステムの概略図である。
図2A】第1の端部位置に配置された、図1に示した支持構造及びパターニングデバイスの概略平面図である。
図2B】第2の端部位置に配置された、図1に示した支持構造及びパターニングデバイスの概略平面図である。
図3A図1のリソグラフィ装置の支持構造上のパターニングデバイス及びレチクルマスキングブレードの第1の断面の概略図である。
図3B図1のリソグラフィ装置の支持構造上のパターニングデバイス及びレチクルマスキングブレードの第2の断面の概略図である。
図4】第1の構成における図1のリソグラフィ装置のyマスキングブレード及びxマスキングブレード(点線)を示す平面図である。
図5】4つの異なるイオンエネルギー、すなわち5eV、10eV、20eV及び30eVの1.5・1019-2・s-1の水素イオンフラックスについての炭素の水素エッチングの予想エッチング速度を温度の関数として、同様にsp3炭素濃度を温度の関数として示す。
図6図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第1の例示的な実施形態の概略図である。
図7図6に示した加熱システムの変形例の概略図である。
図8図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの別の例示的な実施形態の概略図である。
図9】ペリクルの熱イオン加熱(破線)及び放射加熱(点線)の加熱力の推定を放射体の温度の関数として示すグラフである。
図10】一旦加熱が解除される、水素エッチングが無視できるようになる温度に加熱する期間の後の時間の関数としての水素エッチング速度の概略的な定性的グラフである。
図11】第1の端部位置に配置された図1に示した支持構造及びパターニングデバイスの概略平面図であり、支持構造が第1の端部位置に配置されるときにスリット領域に最も近いパターニングデバイスの一部分も示す。
図12A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第1の実施形態の概略図である。
図12B】ペリクル及び図12Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテンの概略平面図である。
図13A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第2の実施形態の概略図である。
図13B】ペリクル及び図13Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテンの概略平面図である。
図14A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第3の実施形態の概略図である。
図14B】ペリクル及び図14Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテン、並びにその実施形態のビームバンプの概略平面図である。
図15A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第4の実施形態の概略図である。
図15B】ペリクル及び図15Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテン、並びにその実施形態のビームバンプ及びミラーの概略平面図である。
図16A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第5の実施形態の概略図である。
図16B】ペリクル及び図16Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテンの概略平面図である。
図17A】単一の放射源が放射カーテン全体を生成するように動作可能な、x-z平面における配置を示す。
図17B】複数の放射源がそれぞれ放射カーテンの一部分を生成するように動作可能な、x-z平面における配置を示す。
図18A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第6の実施形態の概略図である。
図18B】ペリクル及び図18Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテンの概略平面図である。
図19A】基板の露光中にペリクルをスキャンする放射カーテンを生成するために放射源を使用して基板のn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクルの各部を加熱するように動作可能な、図1に示したリソグラフィ装置の加熱システムの第7の実施形態の概略図である。
図19B】ペリクル及び図19Aに示した加熱システムの実施形態により生成された放射カーテンの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0164】
[000163] 図1はリソグラフィシステムを示している。リソグラフィシステムは、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備える。放射源SOは、極端紫外線(EUV)放射ビームBを生成するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えば、レチクル又はマスク)を備えるレチクルアセンブリ15を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを備える。照明システムILは、パターニングデバイスMAに入射する前に放射ビームBを調整するように構成される。投影システムは、放射ビームB(今やパターニングデバイスMAによりパターン付与されている)を基板Wに投影するように構成される。基板Wは先に形成されたパターンを含むことがある。この場合、リソグラフィ装置は、パターン付き放射ビームBを先に基板W上に形成されたパターンと位置合わせする。
【0165】
[000164] 放射源SO、照明システムIL、及び投影システムPSはすべて、外部環境から隔離できるように構築及び配置されることがある。大気圧より低い圧力のガス(例えば、水素)が放射源SO内に供給されることがある。照明システムIL及び/又は投影システムPS内に真空が設けられることがある。大気圧よりかなり低い圧力の少量のガス(例えば、水素)が、照明システムIL及び/又は投影システムPS内に供給されることがある。
【0166】
[000165] 図1に示す放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源と呼ばれ得るタイプである。例えばCO2レーザであり得るレーザ1が、レーザビーム2を介して、燃料放出器3から与えられるスズ(Sn)などの燃料にエネルギーを付与するように構成される。以下の説明ではスズに言及するが、任意の適切な燃料が使用されることがある。燃料は、例えば液体の形態である場合や、例えば金属又は合金である場合がある。燃料放出器3は、例えば小滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4に向かう軌道に沿って誘導するように構成されたノズルを備えることがある。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4でスズに入射する。レーザエネルギーのスズへの付与は、プラズマ形成領域4においてプラズマ7を生成する。プラズマのイオンの脱励起及び再結合の間にプラズマ7からEUV放射を含む放射が放出される。
【0167】
[000166] EUV放射は、近法線入射放射コレクタ5(より一般的に法線入射放射コレクタと呼ばれることがある)によって収集及び集束される。コレクタ5は、EUV放射(例えば13.5nmなどの所望の波長を有するEUV放射)を反射するように構成される多層構造を有することがある。コレクタ5は、2つの楕円焦点を有する楕円構成を有することがある。以下で考察するように、第1の焦点がプラズマ形成領域4にある場合があり、第2の焦点が中間焦点6にある場合がある。
【0168】
[000167] レーザ生成プラズマ(LPP)源の他の実施形態では、コレクタ5は、EUV放射をかすめ入射角で受け、EUV放射を中間焦点に集束させるように構成される、いわゆる斜入射型コレクタである場合がある。斜入射型コレクタは、例えば複数の斜入射リフレクタを備えた入れ子型コレクタである場合がある。斜入射リフレクタは、光軸を中心として軸対称に配置されることがある。
【0169】
[000168] 放射源SOは、1つ以上の汚染トラップ(図示せず)を備えることがある。例えば汚染トラップが、プラズマ形成領域4と放射コレクタ5との間に位置することがある。汚染トラップは、例えば回転フォイルトラップであるか、又は他の任意の適切な形態の汚染トラップである場合がある。
【0170】
[000169] レーザ1は放射源SOから分離されることがある。この場合、レーザビーム2は、例えば適切な誘導ミラー及び/若しくはビームエキスパンダ、並びに/又は他の光学系を備えたビームデリバリシステム(図示せず)を用いて、レーザ1から放射源SOに渡されることがある。レーザ1及び放射源SOは、併せて放射システムと見なされることがある。
【0171】
[000170] コレクタ5により反射される放射は放射ビームBを形成する。放射ビームBは点6で集束されてプラズマ形成領域4の像を形成し、これは照明システムILのための仮想放射源として作用する。放射ビームBが集束される点6は、中間焦点と呼ばれることがある。放射源SOは、中間焦点6が放射源SOの閉鎖構造9の開口部8に又はその近くに位置するように配置される。
【0172】
[000171] 放射ビームBは、放射源SOから放射ビームを調整するように構成される照明システムILに入る。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を備えることがある。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は連携して、放射ビームBに所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームBは、照明システムILから移動し、支持構造MTにより保持されたレチクルアセンブリ15に入射する。レチクルアセンブリ15は、パターニングデバイスMA及びペリクル19を備える。ペリクルは、ペリクルフレーム17を介してパターニングデバイスMAに取り付けられる。レチクルアセンブリ15は、レチクル-ペリクルアセンブリ15と呼ばれることがある。パターニングデバイスMAは放射ビームBを反射しこれにパターンを付与する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて、又はその代わりに他のミラー又はデバイスを備えることがある。
【0173】
[000172] パターニングデバイスMAからの反射に続き、パターン付き放射ビームBは投影システムPSに進入する。投影システムは、基板テーブルWTにより保持された基板Wに放射ビームBを投影するように構成される複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは、ある縮小係数を放射ビームに適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さなフィーチャを有する像を形成することがある。例えば、4という縮小係数が適用されることがある。図1では投影システムPSは2つのミラー13、14を有しているが、投影システムPSは任意の数のミラー(例えば6つのミラー)を備えることがある。
【0174】
[000173] リソグラフィ装置は、例えばスキャンモードで使用されることがある。スキャンモードでは、支持構造(例えばマスクテーブル)MT及び基板テーブルWTを同期的にスキャンしながら、放射ビームに付与されたパターンを基板Wに投影する(すなわち動的露光)。基板テーブルWTの支持構造(例えばマスクテーブル)MTに対する速度及び方向は、投影システムPSの縮小及び像反転特性によって決定されることがある。基板Wに入射するパターン付き放射ビームは放射の帯域を含むことがある。放射の帯域は露光スリットと呼ばれることがある。スキャン露光中、基板テーブルWT及び支持構造MTの移動によって、露光スリットが基板Wの露光フィールド上を進むことがある。
【0175】
[000174] 図1に示す放射源SO及び/又はリソグラフィ装置は、図示されていないコンポーネントを備えることがある。例えば、放射源SO内にスペクトルフィルタが設けられることがある。スペクトルフィルタは、EUV放射に対して実質的に透過性であるが、赤外線放射のような他の波長の放射を実質的に遮断することがある。
【0176】
[000175] リソグラフィシステムの他の実施形態では、放射源SOは他の形態をとることもある。例えば代替的な実施形態では、放射源SOは1つ以上の自由電子レーザを備えることがある。1つ以上の自由電子レーザは、1つ以上のリソグラフィ装置に供給され得るEUV放射を放出するように構成されることがある。
【0177】
[000176] 以上で簡単に説明したように、レチクルアセンブリ15は、パターニングデバイスMAに隣接して設けられるペリクル19を備える。ペリクル19は、放射ビームBが照明システムILからパターニングデバイスMAに近付くときと、パターニングデバイスMAによって反射されて投影システムPSに向かうときの両方でペリクル19を通過するように、放射ビームBの経路に設けられる。ペリクル19は、EUV放射を実質的に通す(ただし、少量のEUV放射を吸収することになる)薄膜又は膜を含む。本明細書において、EUV透過ペリクル又はEUV放射を実質的に通す膜とは、ペリクル19がEUV放射の少なくとも65%、EUV放射の好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を透過することを意味する。ペリクル19は、パターニングデバイスMAを粒子汚染から保護する役割を果たす。
【0178】
[000177] リソグラフィ装置LA内部でクリーンな環境を維持する努力がなされることがあるが、リソグラフィ装置LA内部に依然として粒子が存在することがある。ペリクル19がなければ、粒子がパターニングデバイスMA上に付着されることがある。パターニングデバイスMA上の粒子は、放射ビームBに付与されるパターン、ひいては基板Wに転写されるパターンに悪影響を及ぼす恐れがある。ペリクル19は、有利にはパターニングデバイスMA上に粒子が付着されるのを防止するために、パターニングデバイスMAとリソグラフィ装置LA内の環境との間にバリアを提供する。
【0179】
[000178] ペリクル19は、パターニングデバイスMAから、ペリクル19の表面に入射する粒子がリソグラフィ装置LAのフィールド面内に存在しない十分な距離に位置決めされる。このペリクル19とパターニングデバイスMAとの間の間隔は、ペリクル19の表面上の粒子が基板W上に結像される放射ビームBにパターンを付与する程度を抑える役割を果たす。粒子が放射ビームB内に存在しても、その位置が放射ビームBのフィールド面内でない(例えば、パターニングデバイスMAの表面でない)場合、その粒子の像が基板Wの表面で焦点が合わないことが理解されるであろう。他に考慮すべき事項が存在しないならば、ペリクル19をパターニングデバイスMAからかなり離れた距離に位置決めすることが望ましい場合がある。しかしながら実際は、他のコンポーネントが存在するため、リソグラフィ装置LA内でペリクルを収容するのに利用可能な空間は限られている。一部の実施形態では、ペリクル19とパターニングデバイスMAとの間の間隔は、例えば約1mm~10mm、例えば1mm~5mm、例えば2mm~2.5mmである場合がある。
【0180】
[000179] ペリクルは境界部及び膜を含むことがある。ペリクルの境界部は中空で概ね矩形である場合があり、膜は境界部によって囲まれていることがある。当技術分野で知られているように、ペリクルは1つ以上の薄い材料層を概ね矩形のシリコン基板上に堆積させることによって形成されることがある。シリコン基板は、ペリクルのこの構築段階の間1つ以上の薄層を支持する。層の所望の又は目標厚さ及び組成が一旦適用されると、シリコン基板の中央部がエッチングによって除去される(これはバックエッチングと呼ばれることがある)。矩形のシリコン基板の周辺部はエッチングされない(代替的には中央部よりエッチングの程度が少ない)。この周辺部は最終ペリクルの境界部を形成する一方、1つ以上の薄層はペリクルの(境界部によって境される)膜を形成する。ペリクルの境界部はシリコンから形成されることがある。
【0181】
[000180] そのようなペリクルは、より剛性の高いペリクルフレームからのある程度のサポートを必要とすることがある。ペリクルフレームは2つの機能を提供することがある。第1に、ペリクルフレームはペリクルを支持することがあり、またペリクル膜をぴんと張ることがある。第2に、ペリクルフレームは、ペリクルのパターニングデバイス(レチクル)との接続を促進することがある。1つの既知の構成では、ペリクルフレームは、ペリクルの境界部に接着される概ね矩形の本体部及びこの本体の側部に接着されるチタン取付機構を備えることがある。パターニングデバイス(レチクル)には中間固定部材(スタッドとして知られている)が固定されている。パターニングデバイス(レチクル)上の中間固定部材(スタッド)は、ペリクルフレームの取付部材と係合する(例えば解放可能に係合する)ことがある。
【0182】
[000181] 本開示の一部の実施形態によるリソグラフィ装置LAは、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19に熱22を供給するように動作可能な加熱システム20を更に備える。リソグラフィ装置LAは、これより考察するように有利である。
【0183】
[000182] EUVリソグラフィ装置においてペリクル19膜として使用するための特に有望な材料の1つは、(98%超の)非常に高いEUV透過率と非常に良好な機械的安定性を提供し得るカーボンナノチューブ(CNT)の織物である。しかしながら、通常、リソグラフィ装置LA内には低圧の水素ガスが供給され、(基板Wの露光中)EUV放射Bの存在下で水素プラズマを生じる。この水素イオンと水素プラズマからの水素フリーラジカルは、CNTから形成されたペリクル19をエッチングし、ペリクル19の潜在的な寿命を制限し、CNTペリクルの商業的実装を妨げる可能性があることがわかっている。
【0184】
[000183] 本発明の発明者らは、水素イオン及びフリーラジカルによる炭素のエッチングが温度に依存することに気付いた。具体的には、本発明者らは、(a)炭素エッチング速度が低温でゼロではないこと、(b)炭素エッチング速度が、それを超えると炭素エッチングが無視できるレベルに留まる閾値温度で無視できるレベルに低下すること、及び(c)EUVリソグラフィスキャナ内のペリクル19が通常、各サイクル中に炭素エッチング速度が無視できない温度をサンプリングする温度範囲を循環することになることに気付いた。例えば、EUVリソグラフィスキャナでは、動作中にEUV放射ビームがペリクル19上を前後にスキャンするため、永続的な温度変動が発生する。たとえスキャン露光中の一部の時間であっても、ペリクル19の温度が炭素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度を下回ると、ペリクルは急速に劣化することになる。様々な要因に応じて、閾値温度を下回る温度で炭素エッチング速度のピークが存在する場合がある。炭素エッチング速度のピークが存在する場合、そのピークは、例えば600K~800Kの温度にある場合がある。更に、変動によってペリクルの温度が繰り返しこのピークを越えることがあり、劣化が促進し、CNTペリクル19の寿命が短くなる。レチクルの露光中のペリクルの温度が十分に高い温度に維持される場合は、劣化速度を低いレベルに維持することができ、ペリクルの寿命は劇的に延びる。以下で更に説明するように、ペリクルの温度をそれを超えて維持することが望ましい値は、様々な要因に依存することがある。ペリクルを閾値温度よりも高い温度に維持することが望ましい場合があるが、閾値温度に近いがそれよりわずかに低い温度を上回る温度にペリクルを維持することによっても、ペリクルの劣化速度を大幅に遅らせ得ることが理解されるであろう。更に、これも以下で更に説明するように、閾値温度の値はまた様々な要因に依存することがある。例えば、ペリクルの温度を永続的に600超、より好ましくは700K超、又はより好ましくは800K超に維持することが望ましい場合がある。ペリクルの温度を適切な温度に維持することによって、劣化速度を少なくとも一桁減じることができ、ペリクルの寿命が劇的に延びることが予想される。
【0185】
[000184] 有利には、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクルを加熱するように構成された加熱システム20を提供することによって、リソグラフィ装置LAは、ペリクル19、又はペリクル19の水素プラズマに隣接する少なくともいずれかの部分の温度を、カーボンエッチング速度を許容できる安全な温度に維持し得ることを保証することができる。例えば安全な温度は、カーボンエッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値を上回ることがある。加熱システム20が、照明システムILからの放射ビームBにより行われる加熱に加えて、ペリクル19に熱22を供給するための機構を提供することが理解されるであろう。
【0186】
[000185] 更に、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクルを加熱するように構成された加熱システム20を提供することによって、リソグラフィ装置LAは、ペリクル19の温度のより良好な制御を可能にする可能性があり、ペリクルの熱サイクル及びそのような熱サイクルに関連する問題の低減をもたらすことがある。
【0187】
[000186] 加熱システム20が図1に非常に概略的に示されていること、及び実際には加熱システム20が任意の適切な形態をとり得ることが理解されるであろう。リソグラフィ装置の変更を最小限に抑えて既存のリソグラフィ装置に追加できる加熱システム20を提供することが特に望ましい場合がある。つまり、既存のリソグラフィ装置は、本開示の少なくとも一部の実施形態にいくつかの設計上の制約を与えることがある。したがって、図2Aから図4を参照して、例示的なタイプのリソグラフィ装置のいくつかの特徴、特に支持構造MTに近いいくつかの特徴及びコンポーネントについてこれより説明する。
【0188】
[000187] 支持構造MTは、図2A及び2Bを参照してこれより考察するように、単一の動的スキャン露光でレチクル-ペリクルアセンブリ15のパターニングデバイスMAのより大きな領域を露光するために、スキャン方向に移動可能である場合がある。図2A及び2Bは、2つの異なる位置における支持構造MT及びレチクル-ペリクルアセンブリ15の概略平面図を示している。
【0189】
[000188] 支持構造MTは、領域24内に移動可能に取り付けられる。具体的には、支持構造MTは、第1の端部位置(図2Aに示す)と第2の端部位置(図2Bに示す)との間で、矢印26で示すようにスキャン方向に移動可能である。
【0190】
[000189] 別段の記載がない限り、本明細書全体を通じて、以下のデカルト座標のセットが使用されることになる。スキャン方向はy方向と表示される。同様に支持構造MTの平面内にあり、スキャン方向に垂直な方向は非スキャン方向と呼ばれ、x方向と表示される。支持構造MTの平面に垂直な方向は、z方向と表示される。
【0191】
[000190] リソグラフィ装置LAは、少なくとも第1の端部位置と第2の端部位置との間でスキャン方向に支持構造MTを移動させるように動作可能なスキャンモジュールを備えると考えられることがある。例えば、スキャンモジュールは、支持構造MTが移動可能に取り付けられると考えられ得る支持フレーム(領域24により概略的に示される)に対してスキャン方向に支持構造MTを移動させるように動作可能である場合がある。
【0192】
[000191] レチクル-ペリクルアセンブリ15は、中央部15aと、中央部15aを取り囲む周辺部15bとを備えると考えられることがある。中央部15aは、像形成部と呼ばれることがあり、レチクルMAの放射ビームBにパターン付与する部分及びペリクル19の膜と一致することがある。周辺部15bは、ペリクル19の境界部分及びペリクル19のフレームと一致することがある。
【0193】
[000192] 第1の位置と第2の位置との間の支持構造MTの移動は、レチクル-ペリクルアセンブリ15の中央部15aが配置され得るすべての領域により画定された支持構造MTの拡張された第1の部分領域28を画定する。つまり、支持構造MTの拡張された第1の部分領域28は、レチクル-ペリクルアセンブリ15の中央部15aを第1の端部位置(図2Aに示す)から第2の端部位置(図2Bに示す)に移動させることによって画定される領域である。
【0194】
[000193] リソグラフィ装置LAには、図3A図3B、及び図4を参照してこれより説明するように、照明される基板W上のフィールドの範囲を画定する4つのレチクルマスキングブレードが設けられる。照明システムILは、支持構造MT上に配置されるときにパターニングデバイスMAのある領域を照明するように動作可能である。この領域は、照明システムILのスリットと呼ばれることがあり、放射を受け得るパターニングデバイスのほぼ矩形の領域を画定する4つのレチクルマスキングブレードによって少なくとも部分的に画定される。ほぼ矩形の領域の、x方向と呼ばれ得る第1の方向の範囲は、一対のxマスキングブレード32、34によって画定される。ほぼ矩形の領域の、y方向と呼ばれ得る第2の方向の範囲は、一対のyマスキングブレード36、38によって画定される。
【0195】
[000194] マスキングブレード32、34、36、38のそれぞれは、支持構造MT上のパターニングデバイスの平面に近いが、わずかに外側に配置される。xマスキングブレード32、34は第1の平面40に配置され、yマスキングブレード36、38は第2の平面42に配置される。
【0196】
[000195] マスキングブレード32、34、36、38のそれぞれは、放射を受け得るパターニングデバイスMAの平面内に矩形のフィールド領域44の一端を画定する。実際には、照明システムILは、矩形のフィールド領域44の一部のみを照明することがある。図4に示すように、照明システムILは、(yマスキングブレード36、38の位置に応じて)矩形のフィールド領域44の一部と一致し得る湾曲したスリット領域46を照明するように構成されることがある。
【0197】
[000196] 湾曲スリット領域46は、照明システムIL内の光学系によって部分的に画定されることがある。また、湾曲スリット領域46は、湾曲スリット領域46の湾曲縁部の一方又は両方に沿って設けられた複数の独立可動物体によって部分的に画定されることがある。複数の独立可動物体は、フィンガと呼ばれることがある。複数の独立可動物体は、異なるx位置に設けられることがあり、可動物体のそれぞれと照明システムILにより生成される放射ビームBとの重なりを制御するためにy方向に移動可能である場合がある。可動部材のy位置を制御することにより、湾曲スリット領域46の湾曲縁部の一方又は両方の形状(又は少なくとも強度分布)を制御することがある。可動部材は、非スキャン方向(すなわち、x方向)の異なる位置で放射ビームBにより提供される放射ドーズ量の変化を最小限に抑えるのに使用されることがある。更に、湾曲したスリット領域46は、物理的開口、例えば投影システムPSの入口開口によって部分的に画定されることがある。
【0198】
[000197] マスキングブレード32、34、36、38のそれぞれは、放射ビームの経路内に配置されない退避位置と、照明システムILによりパターニングデバイスMAに投影される放射ビームを少なくとも部分的に遮断する挿入位置との間で独立して移動可能である場合がある。マスキングブレード32、34、36、38を放射ビームの経路内に移動させることによって、放射ビームBを(x方向及び/又はy方向に)切り取り、したがって放射ビームBを受けるフィールド領域44の範囲を制限することができる。
【0199】
[000198] x方向はリソグラフィ装置LAの非スキャン方向に対応し、y方向はリソグラフィ装置LAのスキャン方向に対応する。パターニングデバイスMAは、単一の動的スキャン露光でパターニングデバイスMAのより大きな領域を露光するために、(ここでも矢印26によって示すように)フィールド領域44を通ってy方向に移動可能である。
【0200】
[000199] 基板Wのターゲット領域の動的露光中に、ターゲット領域は基板Wの平面内の露光領域を通して移動される。露光領域は、パターニングデバイスMAの露光領域44が投影システムPSによって投影される基板Wの一部分である。基板Wのターゲット領域が露光領域に移動するとき、ターゲット領域のみが放射を受ける(すなわち、ターゲット領域の外側の基板のどの部分も露光されない)ように第1のマスキングブレード36、38は移動する。スキャン露光の開始時に、yマスキングブレード36、38の一方が放射ビームBの経路に配置され、基板Wのどの部分も放射を受けないようにシャッタとして機能する。スキャン露光の終了時に、他方のyマスキングブレード36、38が放射ビームBの経路に配置され、基板Wのどの部分も放射を受けないようにシャッタとして機能する。
【0201】
[000200] 放射ビームBの光線は、マスキングブレード32、34、36、38のそれぞれに隣接して示される。スリット領域46内の各点が、ある範囲の角度からの放射で照明されることが理解されるであろう。例えば、スリット領域46内の各点は、円錐状の放射を受けることがある。マスキングブレード32、34、36、38のそれぞれに隣接して示される放射ビームBの光線は、パターニングデバイスMAが受ける放射の平均方向を示す。マスキングブレード32、34、36、38のそれぞれに隣接して示される放射ビームBの光線は、主光線と呼ばれることがある。図3A及び3Bから分かるように、この実施形態では、x-z平面に投影されるとき、放射の主光線は通常、パターニングデバイスMAに垂直に入射するが、y-z平面に投影されるとき、放射の主光線は通常はパターニングデバイスMAに角度48で入射する。
【0202】
[000201] リソグラフィ装置LAは更にガスノズル50を備えることがあり、ガスノズル50は、ガス流52を支持構造MTに隣接して導くように配置されることがある。特に、ガスノズル50によって支持構造MTに隣接して供給されるガス流52は、パターニングデバイスMAの表面にほぼ平行である場合があり、直交流と呼ばれることがある。ガスノズル50は、xマスキングブレード32、34とほぼ同じ平面(第1の平面40)に配置されることがある。ガスノズルは、ガス流52がスキャン方向にほぼ平行になり、xマスキングブレード32、34間を流れるようにスキャン方向を向くことがある。ガスノズル50は、支持構造MTに隣接してガス流を供給するように動作可能なガス供給モジュールの一部を構成すると考えられることがある。
【0203】
[000202] ガスノズル50は、支持構造MTによって支持されているときのペリクル-レチクルアセンブリ15のペリクル19の近傍に水素を供給するように動作可能な水素供給部の一部を構成することがある。
【0204】
[000203] 図4は、正のz方向(すなわち、図3Bの上方)に見た第2の平面42におけるyマスキングブレード36、38の平面図を示している。xマスキングブレード32、34及びガスノズル(第1の平面40に配置される)の位置が点線で示されている。図4において、4つのマスキングブレード32、34、36、38は、ほぼ矩形のフィールド領域44を画定するように配置され、スリット領域46は、このほぼ矩形のフィールド領域44内に配置されている。これは、ターゲット領域(例えば、基板W上のダイ)の中央部の露光中の4つのマスキングブレード32、34、36、38の典型的な構成である場合がある。上で説明したように、フィールド領域44のサイズを制御するために、xマスキングブレード32、34のそれぞれはx方向に移動するように動作可能であり、yマスキングブレード36、38のそれぞれはy方向に移動するように動作可能である。yマスキングブレード36、38は、フィールド領域44の同じ側から作動できるように構成される。これを達成するために、yマスキングブレード36、38は、(実質的に同じ平面42内にあるが)yマスキングブレード36、38のそれぞれに、同じ方向(図4の負のy方向)に延びる1つ以上の支持部が設けられるように形作られる。
【0205】
[000204] マスキングブレード32、34、36、38及びガスノズル50は、共通のマスキングブレードアセンブリサポート(図示せず)上に取り付けられることがある。マスキングブレード32、34、36、38が、そのようなサポートに対して移動できるように、そのようなサポート上に移動可能に取り付けられ得ることが理解されるであろう。ガスノズルは、そのようなサポート上に静的に取り付けられることがある。
【0206】
[000205] リソグラフィ装置LAは更に、目標温度分布を達成するために、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を加熱するように加熱システム20を制御するように動作可能なコントローラ30を備えることがある。
【0207】
[000206] リソグラフィ装置LAは更に、支持構造MTにより支持されたペリクル-レチクルアセンブル15のペリクル19の少なくとも一部分の温度を決定するように動作可能な温度センサ31を備えることがある。温度センサ31は、支持構造MTにより支持されたペリクル-レチクルアセンブル15のペリクル19の少なくとも一部分の温度プロファイルを決定するように動作可能である場合がある。加熱システム20は、決定したペリクル19の少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに応じて、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を加熱するように動作可能である場合がある。つまり、加熱システム20及び温度センサ31は、(例えば、コントローラ30を介して)フィードバックループの一部を構成することがある。
【0208】
[000207] リソグラフィ装置LAは、支持構造MAにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15を照明システムILからの放射Bに露光している間、加熱システム20が、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成されるように構成されることがある。
【0209】
[000208] 最低温度は、それを超えるとペリクル19の水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度である場合がある。リソグラフィ装置LA内のペリクル19の水素エッチング速度が、例えば、ペリクル19を形成する材料、ペリクル19に入射する水素イオンフラックス、ペリクル19に入射するイオンのエネルギー分布などの多くの要因に依存することが理解されるであろう。
【0210】
[000209] 当業者には理解されるように、リソグラフィ装置内では、水素プラズマは(基板Wの露光に使用される)EUV放射Bによって形成される。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分は、ペリクルの照明システムILからEUV放射を受ける部分を含むことがある。例えば、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分は、スリット領域46を含むことがある(図4参照)。更に、プラズマが周囲の領域に広がり得ることが理解されるであろう。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分は、ペリクルのスリット領域46内にあり照明システムILからEUV放射を受けている部分の中心にあるが、それよりわずかに大きいペリクル19の一部分を含むことがある。
【0211】
[000210] 一部の実施形態では、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分は、ペリクル19のマスキングブレード32、34、36、38により画定される矩形のフィールド領域44内の部分を含むことがある。
【0212】
[000211] 一部の実施形態では、リソグラフィ装置LAには、CNTから形成されるペリクル19が設けられることがある。
【0213】
[000212] 水素イオンと炭素材料との相互作用は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2つの公開された論文、(1)J.Roth、C.Garcia-Rosales、「Analytic description of the chemical erosion of graphite by hydrogen ions」、Nucl.Fusion 1996、36/12、1647-1659、及び(2)J.Roth、C.Garcia-Rosales、「Corrigendum-Analytic description of the chemical erosion of graphite by hydrogen ions」、Nucl.Fusion 1997、37、897に定量的に説明されている。この水素イオンと炭素材料との相互作用の定量的記述は、Roth-Garcia-Rosales(RGR)モデルと呼ばれることがある。RGRモデルは、例えばイオンエネルギーが1~30eVを形成するなど、リソグラフィ装置内で遭遇する典型的な水素イオンエネルギーの温度の関数として炭素材料のエッチング収率を予測するのに使用される可能性がある。EUVリソグラフィ装置内では、ペリクルに入射する一般的な水素イオンフラックスは、1・1019-2・s-1程度である場合がある。EUVリソグラフィ装置内では、ペリクルに入射する一般的な水素イオンフラックスは、1・1019-2・s-1の数桁の範囲内(例えば、1018-2・s-1から1020-2・s-1)にある場合がある。
【0214】
[000213] 図5は、4つの異なるイオンエネルギー、すなわち5eV、10eV、20eV及び30eVの1.5・1019-2・s-1の水素イオンフラックスについての炭素の水素エッチングの予想エッチング速度を温度の関数として示している。図5はまた、sp3炭素濃度を温度の関数として示している。図5から、リソグラフィ装置LA内のこれらの典型的な周囲条件では、純粋にCNTから形成されたペリクルの場合、ペリクルの水素エッチング速度は約1050Kの温度で無視できるレベルに低下することが予想されることがわかる。しかしながら、当業者であれば、異なる条件下では異なる最低温度が望ましい場合があることを理解するであろう。
【0215】
[000214] 一部の実施形態では、最低温度は、それを超えるとペリクル19の水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する温度である。一部の実施形態では、最低温度は1000K以上である場合がある。上で説明したように、これは純粋にCNTから形成されたペリクルにとって有益であり、ペリクルに入射する水素イオンフラックスは1・1019-2・s-1程度である場合があり、水素イオンエネルギーは1~30eV程度である。より好ましくは、最低温度は1050K以上である場合がある。一部の実施形態では、最低温度は1100K以上である場合がある。
【0216】
[000215] そのような高温、例えば1100Kのペリクルが、そのエネルギーの一部を周囲に放射することになる。レチクルMAに向かって放射される熱は、原則としてレチクルMAを更に加熱することがあるが、これは望ましくない。したがって、レチクルMAに対するこの追加の熱負荷を推定して、それが許容できるか否かを評価することが有用である。1100Kの温度では熱が放射されることになるため、プランクの放射公式、すなわち次の公式を使用して推定することができる。
【0217】
【数1】
【0218】
ここで、pはパワー密度、εはペリクルの放射率、σはシュテファン・ボルツマン定数(5.67×l0-8W・K-4・m-2)、Tはペリクルの温度、Tはレチクルの温度である。CNTペリクルは、放射率ε=0.1の灰色体放射体として機能すると予想される(かなり低い数値であるが、現在の実験用CNTペリクルが0.02~0.09の放射率値を示しているため、依然として最悪の状況を表している)。これをT=1100K及びT=300Kとともに使用し、p=0.8W・cm-2を得る。レチクルMAは、ペリクルから放出される赤外線(IR)放射の反射率が高く、このIR放射の約90%を反射すると予想される。これは、0.08・cm-2のパワー密度がレチクルMAによって吸収されると予想されることを意味する。これをEUV放射からレチクルにかかる予想熱負荷と比較すると、現在のEUV放射源パワーで1100Kであるペリクルは、レチクルにおける熱負荷を約1~2%だけ増加させることになると推定される。将来的に、EUV放射源のパワーが高くなると、相対的なペリクル寄与は更に小さくなるであろう。したがって、この追加の熱負荷は許容可能である。
【0219】
[000216] 本発明者らは、高温での水素エッチング速度の無視できるレベルへの低下が、所定の温度でのsp3炭素のsp2炭素への変換によって支配されること(図5参照)に更に気付いた。更に、グラフェンやCNTなどのsp2炭素構造を形成する際にも同様のプロセスが起こり、炭素の温度が上昇してsp2炭素構造が形成されるsp2炭素への変換が行われる。グラフェンを成長させるためのそのようなプロセスには、例えば、化学蒸着(CVD)及びプラズマ励起化学蒸着(PE-CVD)が含まれる。更に、sp3炭素源からのグラフェンの成長は、単一原子触媒の存在下で300℃(573K)という低い温度で開始され得ることが知られている。つまり、sp3炭素のsp2炭素への変換は、単一原子触媒の存在下においてこの温度で開始される可能性がある。ペリクル19のエッチングフリー動作温度範囲を下げることは、ペリクル19の環境への熱負荷を軽減するため有益である。また、加熱システム20がペリクル19に供給する熱が少なくて済むことを意味し、システムがこの熱を供給するのを容易にすることがある。
【0220】
[000217] したがって、本発明の発明者らは、CNTから形成されたペリクル19に、sp3炭素をsp2炭素に変換するための触媒として作用し得る濃度の添加剤を供給すべきであることを提案する。その結果、それを超えるとペリクル19の水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度を、純粋なCNTペリクルのおよそ1050Kから、例えば573K程度に下げることができると予想される。実際の閾値温度は添加剤の材料及び濃度に依存することになることが当業者によって理解されるであろう。
【0221】
[000218] 例えばモリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)などの遷移金属原子をCNTペリクル19に添加することが提案されている。更に、本発明の発明者らは、そのような触媒原子の比較的低い濃度、例えば炭素原子に関して0.1~1%程度で十分であり得ると予想する。そのような濃度は、EUV放射のペリクル19の透過に大きな影響を与えないと予想される。
【0222】
[000219] 付加的に又は代替的に、ホウ素(B)を約15%の原子百分率でCNTペリクル19に添加することが提案される。
【0223】
[000220] 付加的に又は代替的に、CNTペリクル19に非晶質炭素を添加することが提案される。
【0224】
[000221] 加熱システム20は、加熱システム20及び照明システムから受けた放射ビームBからの複合熱負荷が目標温度分布を達成するように、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を加熱するように構成されることがある。例えば、加熱システムは、ペリクル全体が所望の温度又は温度範囲(例えば、1050Kを超える)に維持されるように構成されることがある。代替的に、より選択的な局所的な加熱が適用されることもある。
【0225】
[000222] 支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19に熱22を供給するように動作可能な加熱システム20の第1の実施形態を、図6を参照してこれより説明する。
【0226】
[000223] リソグラフィ装置LAは、上述したように、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15を放射ビームBに通すために、照明システムILにより調整された放射ビームBに対して支持構造MTを移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を備えたスキャンリソグラフィ装置である。つまり、基板Wの露光はスキャン露光として実行される。対応するスキャン機構が、投影システムPSから受けた放射ビームBで基板テーブルWT(及びそれにより支持される任意の基板W)を同期スキャンするように配置されることが理解されるであろう。
【0227】
[000224] 加熱システム20は、少なくともペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56と、ペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56に隣接するペリクル19の部分54とを加熱するように構成されている。このアプローチでは、ペリクル19のEUV放射Bに曝露される部分、したがって、水素イオンフラックスが最大でエッチングプロセスがペリクル19に最も損傷を与え得るペリクル19の部分が、水素イオンによるエッチングを防ぐために適切な温度に維持される可能性がある。
【0228】
[000225] 当業者には理解されるように、リソグラフィ装置LA内では、水素プラズマは(基板Wの露光に使用される)EUV放射Bによって形成される。したがって、いつでも、照明システムILからEUV放射Bを受けるレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル19の少なくとも一部分は、最低温度より高く維持されることがある。
【0229】
[000226] 既存のリソグラフィ装置では、照明システムIL及び/又は投影システムPSからスリット46に向かう視線が存在する場合があるため、スリット46の近傍でペリクル19を加熱することが有利である場合がある。これにより、加熱システム20がペリクル19を加熱するために放射60をペリクル19に照射することが可能になることがある。
【0230】
[000227] 図6に示す例示的な実施形態では、加熱システム20は、2つの放射源20a、20bを備え、それぞれが支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19に放射60a、60bを導くように動作可能である。放射60a、60bは、電磁放射又は電子ビームを含むことがある。
【0231】
[000228] 上で説明したように、リソグラフィ装置LAには、湾曲したスリット領域46を画定するために、EUV放射ビームB内に延在し、放射ビームBを効果的にクリップし得る様々な物体が存在する。これらの物体には、フィンガ、物理的開口及びマスキングブレード32、34、36、38が含まれることがある。照明システムILとペリクルとの間に配置されるすべてのそのような物体は、図6のボックス58によって概略的に表される。これらの物体58はまた、加熱システム20の視線を制限することになる。したがって、2つの放射源20a、20bは、それにより放出される放射60a、60bが、そのようなビームクリッピング物体58の位置でEUV放射ビームBと空間的に重なるように配置されるべきである。更に、これらの物体58は異なるz位置に配置されることがあるため、2つの放射源20a、20bは、それにより放出される放射60a、60bがz位置の拡張範囲にわたってEUV放射ビームBと空間的に重なるように配置されるべきである。
【0232】
[000229] 加熱システム20が、放射ビームBの(スキャン方向の)各側に1つずつ、2つの放射源20a、20bを備えるのはこの理由による。
[000230]
【0233】
[000231] 図6から分かるように、この実施形態では、加熱システム20は、少なくともペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56を取り囲むペリクル19の部分54を加熱するように構成されている。プラズマがそのような周囲領域54に広がり得ることが理解されるであろう。したがって、いつでも、最低温度より高く維持されるレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分は、ペリクル19の照明システムILからEUV放射Bを受けている部分56の中心にあるが、それよりわずかに大きいペリクル19の部分54、56を含むことがある。
【0234】
[000232] 放射60a、60bの波長の選択は、ペリクル19が放射60a、60bのかなりの部分を吸収し、できるだけ少ない放射60a、60bを(レチクルMAに)透過させるようなものである場合がある。例えば、放射60a、60bは赤外線放射を含むことがある。加熱システムの放射源20a、20bは、EUV放射ビームBの外側にあるが、比較的小さな入射角でペリクル19に入射するように位置決めされることがある。入射角は、一部の実施形態では、例えば約0~20°の範囲にある場合がある。一部の実施形態では、放射60a、60bを生成する放射源20a、20bは、リソグラフィ装置LAの外側に位置決めされ、任意の適切な光学経路(例えば、光ファイバを含む)を使用してペリクル19に向けられる可能性がある。
【0235】
[000233] 加熱システム20の第1の実施形態では、加熱システム20は、ペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56に、ペリクルの隣接部分54よりも少ない熱を供給するように構成されることがある。これにより、EUV熱負荷がペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56に与えられるにもかかわらず、ペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56とペリクルの隣接部分54の両方にわたってほぼ均一な温度を達成できる可能性がある。
【0236】
[000234] 加熱システム20の第1の実施形態の変形例を、図7を参照してこれより説明する。図7に示す加熱システム20は、この変形例では加熱システム20がペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56に隣接するペリクルの部分54を加熱するように構成されている点を除いて、図6に示す加熱システム20とほぼ同一である。この実施形態では、放射60a、60bは、ペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56に誘導されていない。このような変形例は、EUV放射ビームBが、ペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分56を所望の最低温度に維持するのに十分な熱を供給する状況に使用されることがある。
【0237】
[000235] 第2の例示的な実施形態では、加熱システム20は、これより考察するように、実質的にペリクル19の膜全体を加熱するように構成されることがある。
【0238】
[000236] スリット46の領域内のペリクル19のみを加熱することの潜在的な問題は、スリット46のすぐ外側のエッチングの抑制が不十分なことである場合がある。水素イオンフラックスは放射スリット46の外側のペリクル位置で急速に減少することになるが、ある程度のイオンフラックスがまだ残っていることとペリクル温度が不十分であることの組み合わせにより、ペリクル19の寿命にマイナスの影響を与えるエッチングが生じることになる場合がある。
【0239】
[000237] この第2の実施形態は、依然として放射源を使用して実施されることがある。しかしながら、加熱システム20の技術的実現は、ペリクル19全体へのアクセスが小さなかすめ入射角の下でペリクル19の側面を介してのみ達成できるためより複雑になる。それにもかかわらず、支持構造MTの近傍に放射源を設けるか、光ファイバを使用してリソグラフィ装置の外部の放射源からペリクルに放射を供給する、同様のレーザ光駆動加熱方式が想定される可能性がある。
【0240】
[000238] 固定された加熱プロファイルを使用して、均一なペリクル19の温度を達成することができる。例えば、スリット46内にあるペリクル19の領域は、ペリクル19の他のエリアよりも加熱システム20から受ける放射が少ない場合がある。実質的にペリクル19の膜全体にわたって均一なペリクル19の温度を達成することには、熱サイクルによるペリクル19の機械的疲労の潜在的な問題を解決するという利点がある。リソグラフィ装置内のスペースの制約によって、加熱システム20からの放射はかすめ入射角でペリクルに供給されることがある。そのようなかすめ入射角ではペリクル19の反射率が増加するため、これにより放射の吸収が低下することになる。このことの第1の結果は、電磁放射源の場合に、加熱システム20の放射源が、図6に示し上述した実施形態で使用される放射源よりも多くの電力を必要とすることがあることである。このことの第2の結果は、レチクルMAに透過される放射が少なくなり、加熱システム20により与えられるレチクルMAへの追加の熱負荷が有利に低減されることである。
【0241】
[000239] 電子ビームに対するペリクル19の反射率は、かすめ入射角での電磁放射に対するペリクル19の反射率よりも低い。したがって、加熱システム20から熱22を供給するために電子ビームを使用することには、同様のかすめ入射角で電磁放射源よりも比較的多くの熱22をペリクル19に供給するという利点がある。更に、電子ビームの適切な電子エネルギーを選択することによって、電子ビームからペリクル19を通ってレチクルMAへの電子の透過を無視できるレベルに低減することができる(その結果、加熱システム20からのレチクルMAへの追加の熱負荷が全くないか、又は極めて少ない)。
【0242】
[000240] 実質的にペリクル19の膜全体を加熱するためには、支持構造MTの移動があってもそうすることができるだけ照射野が十分に大きくなければならないことが理解されるであろう。つまり、照射野は、拡張された第1の部分領域28(図2A及び2B参照)と一致することがある。この移動に対応することで照射面積が実質的に2倍になり、支持構造MTの加熱が行われることになる。
【0243】
[000241] 一部の実施形態は更に、放射源20により放出される放射を、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の異なる部分の範囲に誘導することができるように、放射源20及び支持構造MTの少なくとも一方を移動させるように動作可能な加熱スキャン機構を備えることがある。加熱スキャン機構が、(a)(支持構造MTの移動による)ペリクル19の移動、及び(b)ペリクル19に対する放射22の移動(支持構造MTに対して静的か動的か)の両方を考慮するように動作可能であり得ることが理解されるであろう。
【0244】
[000242] 例えば、ガルバノミラーのシステムを使用して、加熱システム20によってペリクル19に送達される電磁放射の方向を制御することができる。同様に、電子光学系(例えば、磁石)を使用して、加熱システム20によってペリクル19に送達される電子ビームの方向を制御することができる。そのようなシステムは、光強度又は電子流を変調することによって、より良い柔軟性を提供する。すなわち、そのような加熱スキャン機構を使用して、ペリクル19のあらゆる部分が最適化された量の熱負荷を受けて特定の温度プロファイルを生成する可能性がある。
【0245】
[000243] 加熱システム20の第3の例示的な実施形態は、支持構造MTによって支持されているときのペリクル-レチクルアセンブリ15のペリクル19を介して電流を供給するように構成される。つまり、この第3の実施形態では、加熱システム20は、ジュール加熱又は電気加熱を使用してペリクル19を加熱するように構成されることがある。そのような実施形態は、ペリクル19自体の電気抵抗率を利用してペリクル19を加熱する。
【0246】
[000244] 加熱システムは、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の異なる部分に接触するように動作可能な複数の電極と、複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電圧を供給するように構成された電源とを備えることがある。
【0247】
[000245] 例えば、2つのストリップ状電極がペリクル19の2つの対向する面に沿って設けられることがあり、電圧が2つの電極間に供給されることがある。そのような構成により、電流がペリクルの対向面の一方から他方へ2つの電極間を(概ね又はほぼ垂直に)流れることになる。
【0248】
[000246] より多くの電極とこれらの電極における適切な電圧レベルを使用することによって、より複雑な加熱プロファイルを適用することができる。原則として有益な熱プロファイルを得るために、電圧を時間的に変調することも考えられる。
【0249】
[000247] 支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19に熱22を供給するように動作可能な加熱システム20の別の実施形態を、図8を参照してこれより説明する。
【0250】
[000248] リソグラフィ装置LAは、上述したように、支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15を放射ビームBに通すために、照明システムILにより調整された放射ビームBに対して支持構造MTを(図8の矢印61が示すように)移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を備えたスキャンリソグラフィ装置である場合がある。つまり、基板Wの露光はスキャン露光として実行されることがある。対応するスキャン機構が、投影システムPSから受けた放射ビームBで基板テーブルWT(及びそれにより支持される任意の基板W)を同期スキャンするように配置されることが理解されるであろう。
【0251】
[000249] 加熱システム20は、電極62と電圧源64とを備える。電圧源64は、電極62と、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル19との間に電圧を印加するように動作可能である。
【0252】
[000250] 加熱システム20は更に、電極62をこれに熱68を供給することによって加熱するように動作可能なヒータ66を備えることがある。使用時に、ヒータ66は、電極62内の電子の熱エネルギーが電極62を形成する材料の仕事関数を超えるように、電極62の温度を適切な温度に維持するように動作可能である。
【0253】
[000251] 有利には、図8に示す構成はペリクル19の熱イオン加熱を可能にする。使用時に、電圧源64は、電極62がカソードとして作用することができ、ペリクル19がアノードとして作用することができるようなものである場合がある。そのような構成によって、カソードにより放出される電子70がペリクル19に向けられる。電子70は、(正に帯電した)ペリクル19に引き寄せられ、リソグラフィ装置LAの他の部分には引き寄せられない。したがって、そのような熱イオン加熱の1つの利点は、リソグラフィ装置LAの他の部分の加熱が全くないか又は最小になるように加熱が標的化されることである。そのような熱イオン加熱のもう1つの利点は、高い熱伝達を達成できることである。
【0254】
[000252] 一部の実施形態では、電圧源64は、例えばコントローラ30(図1参照)から制御信号72を受信することがある。電極62と、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル19との間に電圧源64により印加される電圧は、制御信号72に依存することがある。
【0255】
[000253] 図8に示す例示的な実施形態では、電圧源64は、電極62と支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル19全体との間に電圧を印加するように動作可能である。例えば、ペリクル19は連続した導電層を含むことがあり、電圧源は導電層に電圧を印加するように構成されることがある。したがって、この実施形態では、加熱システム20は、実質的にペリクル19の膜全体を加熱するように構成される。
【0256】
[000254] 他の一部の実施形態では、電圧源64が、電極62と支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル19の複数の部分のうちの1つとの間に電圧を印加するように動作可能であり得ることが理解されるであろう。例えば、ペリクルは、複数の分離した導電部を含む破断した導電層を含むことがあり、電圧源64は、複数の導電部のうちの1つ以上に電圧を印加するように構成されることがある。そのような代替実施形態は、加熱システム20が、ペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分、及び任意選択でペリクル19の現在放射ビームBを受けている部分に隣接するペリクル19の部分を、図6及び図7を参照して上述した実施形態と同様の方法で加熱できるようにすることがある。この手法では、ペリクル19のEUV放射Bに曝露される部分、したがって水素イオンフラックスが最も大きく、エッチングプロセスがペリクル19に最も損傷を与え得るペリクル19の部分を、水素イオンによるエッチングを防ぐために適切な温度に維持することができる。
【0257】
[000255] 更に、電圧源64が、電極62と支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクル19の複数の部分のうちの1つとの間に電圧を印加するように動作可能であるそのような代替実施形態では、異なる加熱プロファイルを達成するために、ペリクル19の異なる部分に異なる電圧を印加することがある。
【0258】
[000256] 図8には単一の電極として概略的に示しているが、実際には、電極62が2つ以上の電極を含み得ることが理解されるであろう。一部の実施形態では、支持構造MTの移動を考慮して、使用中のペリクル19の位置範囲を通じてペリクル19の効率的な加熱を促進するために、複数の電極が使用されることがある。
【0259】
[000257] 図9は、ペリクル19の熱イオン加熱(破線)及び放射加熱(点線)の加熱力の推定を放射体の温度の関数として示すグラフである。図9から、放射体温度が高い場合、熱イオン加熱の方が放射加熱よりも効率的であることがわかる。具体的には、約800Kを超える高いラジエータ温度では、熱イオン加熱の方が放射加熱よりも効率的になることが予想される。
【0260】
[000258] これまで考察したように、ペリクル19は、(98%超の)非常に高いEUV透過率及び非常に優れた機械的安定性をもたらし得るカーボンナノチューブ(CNT)の織物から形成された膜を含む。しかしながら、CNTから形成されたそのようなペリクル19は、リソグラフィ装置LA内での水素プラズマエッチングの影響を受けやすい。これまでも考察したように、それを超えるとCNTペリクル19の水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が存在することが予想される。この温度閾値は多くの要因に依存するが、700℃程度である場合がある。したがって、このエッチングプロセスは、CNTペリクル19を700℃超に連続的に加熱することによって強く抑制される可能性がある。これにより、CNTペリクル19の潜在的な寿命を大幅に延長することができ、CNTペリクルが実行可能な選択肢となる。例えば、CNTペリクル19の潜在的な寿命は、10,000~20,000枚を超えるシリコンウェーハWの露光に延長され得ることが予想される。
【0261】
[000259] そのようなCNTペリクル19のエッチングを抑制するために提案される補助加熱には、いくつかの潜在的な問題がある。第1に、上記のように支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15の近傍で利用可能な加熱システム20が設けられ得る空間は限られている。第2に、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15の近傍に設けられ得る加熱システム20からの追加の加熱負荷を限られた冷却量で最小限に抑えることが一般に望ましい。レチクルMAへの追加の熱負荷は、レチクルの歪みを引き起こす可能性があり、リソグラフィ装置LAの結像性能に影響を与えることがある。例えば、そのような熱負荷はオーバーレイに影響を与えることがある。ペリクル19の膜全体を500~1000℃の範囲の温度で連続的に加熱するのに使用される電力は、10W以上、例えば10~500Wの範囲、より好ましくは50~200W程度である場合がある。更に、この電力のかなりの部分がレチクルMA又は他の周辺コンポーネントに供給されることがある。また、ペリクル19の膜全体が連続的に加熱されるときに、スリット領域46内の膜の部分が重複して加熱されて、レチクル-ペリクルアセンブリ15の近傍に不必要な熱負荷が生じることがある。
【0262】
[000260] 本開示の一部の実施形態では、加熱システム20は、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的に加熱するように動作可能である。本開示の一部の実施形態では、加熱システム20は、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うように動作可能である。特に、本開示の一部の実施形態は、ペリクル19の低デューティサイクルパルス(フラッシュ)加熱を使用して、エッチング速度抑制によってCNTペリクル寿命の向上を達成する。
【0263】
[000261] そのような周期的な加熱又はパルス加熱により、ペリクル19の周期的に変化する温度プロファイル又はパルス温度プロファイルがもたらされることになることが理解されるであろう。しかしながら、本発明者らは、ペリクル19が一旦閾値レベルを超えて加熱され、加熱が解除されると、エッチング速度が無視できるレベルから上昇するまでに時間遅延が存在することに気付いた。水素エッチングが無視できるレベルになる温度に加熱した後に、一旦加熱を解除すると、概ね図10に定性的に示すように水素エッチング速度が時間の経過とともに変化することがわかった。
【0264】
[000262] 十分な温度に加熱するとペリクル19からの水素の脱離が起こり、水素エッチング速度が無視できるレベルに低下すると考えられる。更に、加熱後にペリクル19の表面に水素が補充されるまでにはゼロ以外の時間がかかるため、加熱を解除した後のエッチング速度の上昇には時間遅延Δtがあると考えられる。この水素補充速度は、リソグラフィ装置LA内のペリクル19の膜への水素ラジカルフラックスに比例することがある。加熱を解除してからの時間が増加するにつれて、最終的にエッチング速度は室温のペリクル19の一般的な値に上昇する。
【0265】
[000263] 有利には、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的にのみ加熱することによって、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うことによって、加熱システム20により供給される出力は、例えばペリクル19が連続的に加熱される構成に比べて大幅に低減される。これにより、支持構造MTによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリ15の近傍に設けられた加熱システム20からの追加の加熱負荷が軽減される。そして、これにより加熱システム20に必要な電力量及び熱負荷を吸収するのに必要な冷却容量の大きさが削減される。また、レチクルMAの歪みを引き起こし、リソグラフィ装置LAの結像性能に影響を与え得るレチクルMAへの追加の熱負荷(例えば、そのような熱負荷はオーバーレイの一因となることがある)も軽減される。
【0266】
[000264] 更に、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的にのみ加熱することによって、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うことによって、加熱システム20は、リソグラフィ装置LAにおける露光と露光の間に動作することがある。例えば、加熱システム20は、単一基板Wの異なるターゲット領域(又はダイ)の露光と露光の間に、あるいは異なる基板Wの露光と露光の間にも動作することがある。そして、露光と露光の間の加熱を可能にすることによって、加熱システム20は、基板Wの露光中にペリクル19を加熱することが望ましい構成とは異なる場所に位置することがある。有利には、これにより、例えば支持構造WTが非露光位置又は場所にあるときにペリクル19を加熱し得る場所に加熱システム20を収容するためのより大きな空間が存在することがあるため、加熱システム20のリソグラフィ装置LAへの統合が容易になることがある。
【0267】
[000265] 一般に、加熱パルスの持続時間は、ペリクル19を所望の温度(例えば、それを超えるとペリクルの水素エッチングを無視できる閾値温度を超える)に加熱するのに十分な長さである場合がある。例えば、ペリクル19を700℃以上程度の温度又は800℃程度の温度に加熱することが望ましい場合がある。ペリクル19を所望の温度に加熱するのに必要な時間が、ペリクル19を加熱している間の加熱システム20の出力に依存することになることが理解されるであろう。例えば、加熱パルスの持続時間は、0.1msから100ms、より好ましくは1から10msの範囲に及ぶ可能性がある。一部の実施形態では、加熱パルスの持続時間は1ms程度である場合がある。
【0268】
[000266] 一般に、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、最初のパルスからの加熱の後にペリクル19の表面に水素が補充されないように十分に短い場合がある。言い換えれば、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、加熱の解除後のエッチング速度の増加における時間遅延Δtよりも短い場合がある(図10参照)。ここでも、最初のパルスからの加熱の後にペリクル19の表面に水素が補充されるのに必要な時間が、ペリクル19の近傍の状態に依存することになることが理解されるであろう。これまで説明したように、この水素補充速度は、リソグラフィ装置LA内のペリクル19の膜への水素ラジカルフラックスに比例することがある。高出力リソグラフィ装置におけるラジカルフラックスの変動を考慮すると、加熱パルス間に必要とされ得る時間は、2つのダイ(後方及び前方)からウェーハ露光全体に及び得ることが判明している。加熱パルス間の時間の観点では、これは50msから20秒、より好ましくは100msから10秒の範囲にある。一部の実施形態では、2つの連続する加熱パルスの間の時間周期は、100ms程度である場合がある。
【0269】
[000267] EUVリソグラフィ装置LA内では、非常に短い時間だけ周期的な加熱又はパルス加熱を行うことによって、CNTペリクル19の水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持できると考えられる。したがって、一部の実施形態では、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の加熱システム20により行われる加熱は、これより考察するように比較的低いデューティサイクルのパルス加熱を含む。
【0270】
[000268] 以下では、加熱システム20の加熱デューティサイクルが、(a)加熱システムがペリクルに加熱を行う時間の部分の、(b)加熱システムがペリクルに加熱を行わない時間の部分に対する比率を意味することを意図している。一部の実施形態では、加熱システム20のデューティサイクルは0.1以下である。有利には、そのような構成は、ペリクルが連続的に加熱される構成と比べて、加熱システム20により供給される出力の量を10分の1に減らすことになる。以前のシミュレーションでは、ペリクルを700℃を超える温度に連続的に加熱すると、オーバーレイに0.2nm程度の影響が生じると予想され得ることが示されているが、この影響は、レチクルMAをより大きく冷却することによって(例えば、レチクルMAに使用される水の温度を下げることによって)軽減されることがある。0.1以下の加熱デューティサイクルでペリクル19を周期的に加熱することにより、熱負荷が10分の1に減少すると、オーバーレイへの影響が少なくとも10分の1に減少することになり、レチクルMAに対して追加の冷却を行う必要性をなくすことがある。実際、以下で説明するように、加熱デューティサイクルを更に小さくすることも可能である場合があり、これによりオーバーレイへの影響が実質的に無視できるものになることがある。
【0271】
[000269] 0.1以下の加熱システム20のデューティサイクルは、EUVリソグラフィ装置LA内の状態が最悪のシナリオであっても、ペリクルの水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するのに十分であると考えられる。
【0272】
[000270] しかしながら、実際には、ペリクル19の水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するには、更に小さいデューティサイクルで十分になると考えられる。例えば、一部の実施形態では、加熱システム20のデューティサイクルは0.01以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システム20のデューティサイクルは10-3以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システム20のデューティサイクルは10-4以下である場合がある。一部の実施形態では、加熱システム20のデューティサイクルは10-5以下である場合がある。
【0273】
[000271] 基板Wの複数のターゲット領域のスキャン露光中に、ペリクル19のスリット領域46(図4参照)を通過する部分は、EUV放射ビームB(図1参照)によって周期的に加熱されることになる。基板Wの各ターゲット領域(単一のダイであり得る)が露光される(すなわち、レチクルMAの像がそのターゲット領域上に形成される)とき、レチクル-ペリクルアセンブリ15の中央部15a(図2A及び2B参照)からのペリクルの各部は、EUV放射ビームBから加熱パルスを受けることになる。中間焦点6(図1参照)におけるEUV放射ビームBの出力が600Wであり、標準的なレチクルスキャン速度を有するリソグラフィ装置の場合、レチクル-ペリクルアセンブリ15の中央部15aからのペリクルの各部は、(EUV放射ビームBからの)1~10msの加熱の加熱サイクルと、その後の10msから100msの範囲の冷たい時間とを経験することになると推定される。つまり、レチクル-ペリクルアセンブリ15の中央部15aからのペリクル19の部分は、約0.04の加熱デューティサイクルを受けることが予想される。したがって、EUV放射ビームBが各ターゲット領域又はダイの露光中にペリクルを十分に高い温度(例えば少なくとも700℃の温度)に加熱する限り、EUV放射ビームBからの周期的な加熱は、ペリクル19の露出部(すなわち、レチクル-ペリクルアセンブリ15の中央部15aからのペリクルの部分)における水素エッチングを抑制するのに十分であると予想される。
【0274】
[000272] したがって、600W超のEUV出力の放射源SOを有するEUVリソグラフィ装置LAでは、ペリクル19の露出部における水素エッチングを抑制するには、EUV吸収によるペリクル19の加熱だけで十分であることが予想される。しかしながら、水素プラズマは同様に、ペリクル19のEUV放射ビームBの外側にある他の部分に隣接して存在するため、ペリクル19の寿命を制限するエッチング率が高い領域が存在することがある。
【0275】
[000273] したがって、一部の実施形態では、加熱システム20は、使用時に照明システムILにより調整された放射ビームBを受けないペリクル19の部分を加熱するように構成される。つまり、加熱システム20は、レチクル-ペリクルアセンブリ15の周辺部15bからのペリクル19の一部分を加熱するように構成されることがある。他の実施形態では、加熱システム20は、実質的にペリクル19の膜全体を加熱するように構成されることがある。
【0276】
[000274] 一般に、加熱システム20がレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的にのみ加熱するように、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うことによって構成される実施形態では、加熱システム20は、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19の少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成される。最低温度は、ペリクル19の水素エッチング速度が無視できる温度である場合がある。例えば、最低温度は700℃以上である場合がある。他の実施形態では、最低温度は750℃以上である場合がある。他の実施形態では、最低温度は800℃以上である場合がある。
【0277】
[000275] CNTペリクル19の水素エッチングを抑制するのに十分であると予想される比較的低い加熱デューティサイクルは多くの結果をもたらす。
【0278】
[000276] 第1に、加熱システム20が、ペリクル19の現在放射ビームBを受けていない部分を加熱するように構成されることを可能にする。特に、加熱システム20が、ペリクル19の現在放射ビームBを受けていない部分のみを加熱するように構成されることを可能にする。支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15を放射ビームBに通すために、照明システムILにより調整された放射ビームBに対して支持構造MTを移動させるように動作可能なスキャン機構を有するスキャンリソグラフィ装置において、ペリクル19の現在放射ビームBを受けていない部分を加熱するように構成された加熱システム20は、加熱システムが、図2A及び2Bに示す2つの端部位置のうちの一方に配置されるときにペリクル19に熱を供給することを可能にすることがある。
【0279】
[000277] 第2に、リソグラフィ装置LAが、支持構造MTにより支持されたレチクル-ペリクルアセンブリ15のレチクルMAの像を、基板テーブルWTにより支持された基板Wの複数の異なるターゲット領域(例えば、ダイ)上に形成するように動作可能な実施形態について、加熱システム20は、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、nは1より大きい場合がある。n個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱することのみによって、加熱システム20は、ペリクル19が基板Wの露光中に連続的に加熱される構成とは異なる場所に位置することがある。例えば、スキャンリソグラフィ装置LAでは、基板Wの1つのターゲット領域の露光中に、支持基板MTは、照明システムILにより調整された放射ビームBの経路を通して第1の端部位置(図2A参照)から第2の端部位置(図2B参照)に移動(又はスキャン)される。一般に、基板Wの次のターゲット領域の露光のために、支持基板MTは放射ビームBの経路を通って第2の端部位置から第1の端部位置に戻される。ペリクル19が(図2A及び2Bに示す位置の間で)放射ビームBに曝露されているときにペリクル19への視線を確保することは困難である。しかしながら、支持構造が第1又は第2の端部位置(すなわち、図2A又は図2B)の一方に配置される場合には、通常、ペリクル19に加熱を行うためのより大きな空間が存在する。有利には、n個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱することのみによって、加熱システム20は、ペリクル19が第1又は第2の端部位置(すなわち、図2A又は図2B)の一方にあるときにペリクル19(又はその一部分)を加熱するように構成される可能性がある。これにより、例えばペリクル19の現在EUV放射に曝露されていない部分を加熱し得る場所に加熱システム20を収容するためのより大きな空間が存在することがあるため、加熱システム20のリソグラフィ装置LAへの統合が容易になる。
【0280】
[000278] 一部の実施形態では、加熱システム20は、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である場合がある。4個のすべてのダイの露光後にペリクル19を加熱することは、EUVリソグラフィ装置LA内の状態が最悪のシナリオであっても、ペリクル19の水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するのに十分であると考えられる。しかしながら、実際には、ペリクル19の水素エッチングを許容可能なレベル又は無視できるレベルに維持するには、加熱頻度を低くすることで十分になると考えられる。例えば、一部の実施形態では、加熱システム20は、10個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、加熱システム20は、100個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である場合がある。一部の実施形態では、加熱システム20は、1000個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である場合がある。
【0281】
[000279] 加熱システム20が、基板Wのn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である一部の実施形態では、加熱システム20は、基板Wの1つのターゲット領域上にレチクルMAの像を形成することと、基板Wの次のターゲット領域上にレチクルMAの像を形成することとの間の時間に加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である場合がある。例えば、ペリクル19の加熱することが望ましいすべての部分は、レチクル-ペリクルアセンブリ15が図2A及び2Bに概略的に示す2つの端部位置の一方に配置されるときに加熱されることがある。代替的に、図11から図19Bを参照して以下で考察するように、加熱システム20が基板Wのn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能である他の一部の実施形態では、加熱システム20は、EUV放射ビームBによってレチクルをスキャンする支持構造の移動を利用して、加熱ビームによってペリクル19もスキャンすることがある。
【0282】
[000280] 一部の実施形態では、CNTペリクル19の水素エッチングの十分な抑制を確実にするのに必要とされる加熱デューティサイクルは、加熱システム20が1つの基板Wの露光と後続の基板Wの露光との間にペリクル19を加熱するように動作可能であるほど十分に低い場合がある。これは、リソグラフィ装置のスループットに影響を与えることなく達成されることがある。
【0283】
[000281] レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的に加熱するのに適した、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うのに適した加熱システム20の一部の実施形態を、図11から図19Bを参照してこれより考察する。
【0284】
[000282] 一般に、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的に加熱するのに適した、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うのに適した加熱システム20が、スリット領域46及びフィールド領域44(図4参照)の外側のペリクルに加熱を行うように構成される可能性がある。加熱システム20は、支持構造MTが(図2Aに示す)第1の端部位置及び/又は(図2Bに示す)第2の端部位置に配置されるときに、ペリクル19の少なくとも一部を加熱するように構成されることがある。特に、支持構造MTが第1又は第2の端部位置の一方に配置されるときに、加熱システム20は、図11を参照してこれより考察するように、レチクル-ペリクルアセンブリ15のスリット領域46に最も近い部分を加熱するように動作可能である。図11は、図2Aに示す第1の端部位置に配置された支持構造MT及びパターニングデバイスMAの同じ概略平面図を示している。一部の実施形態における加熱システム20は、支持構造MTが第1の端部位置に配置されるときに、レチクル-ペリクルアセンブリ15のスリット領域46に最も近い部分80を加熱するように構成される。そのような構成により、第1の端部位置から第2の端部位置への支持構造MTの通常のスキャン動作中に、レチクル-ペリクルアセンブリ15全体は加熱システム20によって加熱される可能性がある。
【0285】
[000283] 一般に、加熱システム20が、レチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を周期的に加熱するように、及び/又はレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19にパルス加熱を行うように構成される実施形態では、加熱システムは1つ以上の放射源を備える。放射源は通常、電磁放射源である。放射源は、光源と呼ばれることがある。適切な放射源には、(i)発光ダイオード(LED)、及び(ii)レーザ(例えば、垂直共振器面発光レーザ、VCSEL)が含まれる。有利には、LEDとレーザの両方は非常に小さな体積で構築される可能性がある。
【0286】
[000284] レーザを使用して、吸収率を高め、出力を制限できるような視射角でペリクル19を加熱することができる。これはまた、レチクルMAに供給される出力を、ひいてはレチクルMAの望ましくない変形を制限する。LEDはより多くの発散光を放射するため、LEDを使用する実施形態を使用して、比較的短い距離からペリクル19を加熱することがある。一方、適切なビーム誘導装置(例えば光ファイバ、ミラーなど)を使用すれば、LEDからの光を非ゼロ角度でペリクル19に誘導することができる。
【0287】
[000285] 一部の実施形態では、加熱システム20は更に、ペリクル19により反射される加熱システム20からの光を吸収するように構成されたヒートシンクを備えることがある。有利には、これにより、環境内の重要な要素(レチクルMAなど)の加熱が回避される可能性がある。熱は吸収層又は構造に捕捉された後に吸収され、水流によって除去される可能性がある。
【0288】
[000286] 一般に、ヒータ(光源)及びヒートシンクは、ペリクルとの視線を可能にする(そして好ましくは、支持構造MTが第1の端部位置に配置されるときに(図11参照)、レチクル-ペリクルアセンブリ15のスリット領域46に最も近い部分80との視線を可能にする)任意のコンポーネント上に配置される可能性がある。そのような実施形態の加熱システム20の各部を支持し得る適切なコンポーネントには、(a)レチクル-ペリクルアセンブリ15をフィンガシステムから保護するように構成されるシールド、(b)xマスキングブレード32、34(図3及び図4参照)、(c)レチクル-ペリクルアセンブリ15の近くにガス流を供給するように構成されたガスノズル50(図4参照)、及び/又は(d)レチクル-ペリクルアセンブリ15の近くに水素流を誘導するように構成されるスポイラが含まれる。一般に、加熱システム20の光源は、放射をペリクル19に、ペリクル19に対して概ね垂直に又はかすめ入射角で誘導するように構成される可能性がある(ただし、xマスキングブレード32、34は基板Wの露光中は開いているため、xマスキングブレード32、34上に配置されるとき、光源は一般に放射をかすめ入射角でペリクルに誘導することになる)。
【0289】
[000287] 図12Aから図19Bはすべて、基板Wのn個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱されるペリクル19の各部を加熱するように動作可能な加熱システム20の実施形態を概略的に示している。各実施形態において、加熱システム20は、EUV放射ビームBによってレチクルをスキャンする支持構造MTの移動を利用して、加熱ビームによってペリクル19もスキャンする。各実施形態において、リソグラフィ装置LAは、上記のように、支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブリ15を放射ビームBに通すために照明システムILにより調整された放射ビームBに対して(図12Aから図19Bの矢印82で示すように)支持構造MTを移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を備えたスキャンリソグラフィ装置である。つまり、基板Wの露光は、スキャン露光として実行されることがある。対応するスキャン機構が、投影システムPSから受けた放射ビームBで基板テーブルWT(及びそれにより支持される任意の基板W)を同期スキャンするように配置されることが理解されるであろう。
【0290】
[000288] 図12A及び12Bに示す実施形態は放射源84を含む。放射源84は、1つ以上のLED及び/又は1つ以上のレーザを備えることがある。放射源84は、ペリクルに放射カーテン86を投影するように動作可能である。放射源84が、支持構造MTが第1の端部位置に配置されるとき(図11参照)に、レチクル-ペリクルアセンブリ15のスリット領域46に最も近い部分80に放射を投影するように動作可能である場合があることが理解されるであろう。放射源84は単一の放射源を含むことがある。代替的に、放射源84は、(例えば、非スキャン方向に分離された)複数の放射源を含むことがある。放射源84は、放射カーテン86がペリクル19に概ね垂直に入射するように放射カーテン86をペリクル19に誘導するように動作可能である。
【0291】
[000289] 放射源84は、紫外線(例えば200~400nmの吸収ピーク領域の波長を有する)又は赤外線(例えば1μm~20μm、好ましくは1~10μmの波長を有する)に典型的な波長を有する放射を出力するように動作可能である場合がある。スキャン方向(図のy方向)における放射カーテン86の所望の範囲は、支持構造MTのスキャン速度に依存する場合がある。
【0292】
[000290] ペリクル19を800℃など500~1000Cの範囲の温度に加熱することが望ましい場合がある。これを3msで達成するには、放射カーテン86のパワー密度は5~30kW/m、より好ましくは7.5~25kW/mである場合がある。ペリクル19全体を加熱するには、非スキャン方向(図のx方向)の広がりが11cmのペリクルの場合、総加熱力は8W程度である場合がある。ただし、上で説明したように、一部の実施形態では、レチクル-ペリクルアセンブリ15の周辺部15bのみを加熱する必要がある場合がある。レチクル-ペリクルアセンブリ15の周辺部15bのみ、例えば、レチクル-ペリクルアセンブリ15の外側10mmのみが加熱される場合、総加熱力は1.4W程度である場合がある。
【0293】
[000291] 図13A及び図13Bに示す実施形態は、図13A及び図13Bでは、源84が、放射カーテン86がかすめ入射角でペリクル19に入射するように、スキャン方向(すなわち、y方向)の成分を有する放射の方向で放射カーテン86をペリクル19に誘導するように動作可能であることを除いて、図12A及び12Bに示した実施形態と同じである。
【0294】
[000292] 図14A及び図14Bに示す実施形態は、図14A及び図14Bに示す実施形態が更にビームダンプ88を備えることを除いて、図13A及び図13Bに示される実施形態と同じである。ビームダンプ88は、放射90のレチクル-ペリクルアセンブリ15により反射される少なくとも一部分を吸収するように構成される。ビームダンプ88のペリクル19への投影も図14Bに示されている。
【0295】
[000293] 図15A及び図15Bに示す実施形態は、図15A及び図15Bに示す実施形態が更に、ビームダンプ88及びミラー92を備えることを除いて、図13A及び図13Bに示した実施形態と同じである。ミラー92は、放射90のレチクル-ペリクルアセンブリ15により反射された少なくとも一部分を反射して、反射ビーム94としてレチクル-ペリクルアセンブリ15に戻すように構成される。ビームダンプ88は、反射ビーム94のレチクル-ペリクルアセンブリ15により反射される少なくとも一部分96を吸収するように構成される。ビームダンプ88及びミラー92のペリクル19への投影も図15Bに示されている。
【0296】
[000294] 図16A及び図16Bに示す実施形態は、図16A及び図16Bでは、源84が、放射カーテン86がかすめ入射角でペリクル19に入射するように、非スキャン方向(すなわち、x方向)の成分を有する放射の方向で放射カーテン86をペリクル19に誘導するように動作可能であることを除いて、図12A及び12Bに示した実施形態と同じである。
【0297】
[000295] 図16A及び図16Bに示す実施形態は単一の放射源84を示すが、そのような実施形態は、代替的に複数の放射源を備えることもある。図17Aは、単一の放射源84が放射カーテン86全体を生成するように動作可能なx-z平面における配置を示している。図17Bは、複数の放射源84a~84eがそれぞれ放射カーテン86の一部分86a~86eを生成するように動作可能なx-z平面における配置を示している。
【0298】
[000296] 図18A及び図18Bに示す実施形態は、図18A及び図18Bでは、源84が、それぞれが放射カーテン86がかすめ入射角でペリクル19に入射するように、非スキャン方向(すなわち、x方向)の成分を有する放射の方向で放射カーテン86の一部分86a~86fをペリクル19に誘導するように動作可能な6個の個別の放射源86a~86fを含むことを除いて、図16A及び図16Bに示した実施形態と同じである。
【0299】
[000297] 図19A及び図19Bに示す実施形態は、図19A及び図19Bでは、個別の放射源のうちの3個86a~86cがペリクル19の一方の側に配置され、個別の放射源のうちの他の3個86d~86fが、ペリクル19の他方の側に配置されることを除いて、図18A及び図18Bに示した実施形態と同じである。
【0300】
[000298] 一実施形態では、加熱システム20は、EUV放射ビームBを使用してペリクル19を加熱するように動作可能である。この場合、xマスキングブレード32、34及びyマスキングブレード36、38は、完全に開いて露光フィールド領域44(図4参照)を拡張する。これは、(基板Wの不要な露光を防ぐために)投影システムPSの下に基板Wがない場合又はEUV放射が投影システムPSによって(例えば、投影システムPSの動的ガスロックのシャッタを使用して)停止されている場合にのみ行われる可能性がある。(EUV放射を使用する)この加熱方法は、CNTペリクル19のサイクル間の所要時間が1枚の基板Wの露光時間よりも長い場合に効果的である可能性がある。この場合、ペリクル19は、連続する基板Wの露光の間に露光される可能性がある。
【0301】
[000299] 本開示の一部の実施形態は、レチクル-ペリクルアセンブリ15を使用する方法に関する。この方法は、レチクル-ペリクルアセンブリ15を放射ビームBで、放射ビームの断面にパターンを付与するために照明し、基板W上にレチクルMAの像を形成すること、及び別個の熱源を使用してレチクル-ペリクルアセンブリ15のペリクル19を加熱することを含むことがある。別個の熱源は、上記の加熱システム20である場合がある。
【0302】
[000300] 本開示の一部の実施形態は、リソグラフィ装置LAで使用するためのペリクル19であって、カーボンナノチューブから形成された基板を含み、基板が更に少なくとも1つの添加剤を含むペリクル19に関する。
【0303】
[000301] 少なくとも1つの添加剤は、基板上に分布させた複数の触媒原子を含むことがある。
【0304】
[000302] 少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が900K未満となるようなものである場合がある。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が800K未満となるようなものである。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が700K未満となるようなものである。一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類は、それを超えるとペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルに低下する閾値温度が600K未満となるようなものである。
【0305】
[000303] 一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤は遷移金属を含むことがある。例えば、少なくとも1つの添加剤は、モリブデン、クロム、ニッケル、銅及び/又は鉄を含むことがある。少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度は0.1~2%程度である。例えば、少なくとも1つの不純物の炭素原子に対する濃度は、0.1~1%程度である場合がある。そのような添加剤の濃度は、ペリクルのEUV透過率を著しく低下させないと予想される。例えば、モリブデン原子の濃度が1%の場合、ペリクルのEUV透過率は0.1%未満低下することになると推定される。同様に、ニッケル原子の濃度が1%の場合、ペリクルのEUV透過率は0.5%未満低下することになると推定される。
【0306】
[000304] 付加的に又は代替的に、一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤はホウ素を含むことがある。例えば、ホウ素の炭素原子に対する濃度は、15原子%程度(すなわち、約15%の原子百分率)である場合がある。
【0307】
[000305] 付加的に又は代替的に、一部の実施形態では、少なくとも1つの添加剤は非晶質炭素を含むことがある。
【0308】
[000306] この文書におけるマスク又はレチクルへの言及は、パターニングデバイスへの言及として解釈されることがあり(マスク又はレチクルはパターニングデバイスの一例である)、これらの用語は同じ意味で使用されることがある。特に、マスクアセンブリという用語は、レチクルアセンブリ及びパターニングデバイスアセンブリと同義である。
【0309】
[000307] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0310】
[000308] 用語「EUV放射」は、4~20nmの範囲内、例えば13~14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると考えられることがある。EUV放射は、10nm未満、例えば6.7nm又は6.8nmなどの4~10nmの範囲内の波長を有することがある。
【0311】
[000309] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0312】
[000310] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記照明システムにより調整された前記放射ビームを受けるためのレチクル-ペリクルアセンブリを支持するように構築された支持構造と、
基板を支持するように構築された基板テーブルと、
前記レチクル-ペリクルアセンブリから前記放射ビームを受け、前記放射ビームを前記基板に投影するように構成された投影システムと
を備えたリソグラフィ装置であって、
前記リソグラフィ装置が更に、
前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能な加熱システムを備えるリソグラフィ装置。
【請求項2】
目標温度分布を達成するために、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように前記加熱システムを制御するように動作可能なコントローラを更に備えた、請求項1のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリの前記照明システムからの放射への曝露中に、前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成される、請求項1又はのリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記最低温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、請求項3のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記最低温度が800K以上である、請求項3のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項1又は2のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームに通すために、前記照明システムにより調整された前記放射ビームに対して前記支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を更に備え、前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項1又は2のリソグラフィ装置。
【請求項8】
前記加熱システムがまた、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、請求項7のリソグラフィ装置。
【請求項9】
前記加熱システムが、前記加熱システム及び前記照明システムから受けた前記放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成するように、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように構成される、請求項1又は2のリソグラフィ装置。
【請求項10】
前記加熱システムが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱するように構成される、請求項1又は2のリソグラフィ装置。
【請求項11】
前記加熱システムが、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルに放射を誘導するように動作可能な放射源を備える、請求項1又は2のリソグラフィ装置。
【請求項12】
レチクル-ペリクルアセンブリを使用する方法であって、
放射ビームの断面にパターンを付与するために前記レチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームで照明し、基板上に前記レチクルの像を形成すること、及び
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することを含む方法。
【請求項13】
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルが目標温度分布を達成する、請求項12の方法。
【請求項14】
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、前記ペリクルがカーボンナノチューブから形成された基板を備え、前記基板が更に少なくとも1つの添加剤を含むペリクル。
【請求項15】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記基板上に分布させた複数の触媒原子を含む、請求項14のペリクル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0312
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0312】
[000310] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲及び条項から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
[条項1]
放射ビームを調整するように構成された照明システムと、
前記照明システムにより調整された前記放射ビームを受けるためのレチクル-ペリクルアセンブリを支持するように構築された支持構造と、
基板を支持するように構築された基板テーブルと、
前記レチクル-ペリクルアセンブリから前記放射ビームを受け、前記放射ビームを前記基板に投影するように構成された投影システムと
を備えたリソグラフィ装置であって、
前記リソグラフィ装置が更に、
前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように動作可能な加熱システムを備えるリソグラフィ装置。
[条項2]
目標温度分布を達成するために、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように前記加熱システムを制御するように動作可能なコントローラを更に備えた、条項1のリソグラフィ装置。
[条項3]
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリの前記照明システムからの放射への曝露中に、前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成される、条項1又は条項2のリソグラフィ装置。
[条項4]
前記最低温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、条項3のリソグラフィ装置。
[条項5]
前記最低温度が800K以上である、条項3のリソグラフィ装置。
[条項6]
前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、条項1から5のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項7]
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームに通すために、前記照明システムにより調整された前記放射ビームに対して前記支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を更に備え、前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている少なくとも一部分を加熱するように構成される、条項1から6のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項8]
前記加熱システムがまた、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分を加熱するように構成される、条項7のリソグラフィ装置。
[条項9]
前記加熱システムが、前記加熱システム及び前記照明システムから受けた前記放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成するように、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのペリクルを加熱するように構成される、条項1から8のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項10]
前記加熱システムが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱するように構成される、条項1から9のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項11]
前記加熱システムが、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルに放射を誘導するように動作可能な放射源を備える、条項1から10のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項12]
前記放射源が、電磁放射を前記ペリクルに誘導するように動作可能である、条項11のリソグラフィ装置。
[条項13]
前記放射源が、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの前記ペリクルに入射するように電子を誘導するように動作可能である、条項11又は条項12のリソグラフィ装置。
[条項14]
前記放射源が電子銃を備える、条項13のリソグラフィ装置。
[条項15]
電子源から電子ビームを受け、前記サポートによって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの表面に前記電子ビームを分配するように構成された電子光学系を更に備えた、条項13又は条項14のリソグラフィ装置。
[条項16]
前記放射源により放出された放射を、前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリのペリクルの異なる部分の範囲に誘導することができるように、前記放射源及び前記支持構造のうちの少なくとも一方を移動させるように動作可能な加熱スキャン機構を更に備えた、条項11から15のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項17]
前記加熱システムが、前記支持構造によって支持されているときのペリクル-レチクルアセンブリの前記ペリクルに電流を供給するように構成される、条項1から16のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項18]
前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの異なる部分に接触するように動作可能な複数の電極と、前記複数の電極のうちの少なくとも2つの間に電圧を供給するように構成された電源とを備える、条項17のリソグラフィ装置。
[条項19]
前記加熱システムが、
電極と、
前記電極と前記支持構造によって支持されているときのレチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分との間に電圧を印加するように動作可能な電圧源と
を備える、条項1から18のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項20]
前記加熱システムが更に、
前記電極を加熱するように動作可能なヒータを備える、条項19のリソグラフィ装置。
[条項21]
前記コントローラが、前記電圧源により印加された前記電圧を制御するように動作可能である、条項2に直接的又は間接的に従属する場合の条項19又は条項20のリソグラフィ装置。
[条項22]
前記加熱システムが、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを周期的に加熱するように動作可能である、条項1又は条項2のリソグラフィ装置。
[条項23]
前記加熱システムが、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルにパルス加熱を行うように動作可能である、条項1又は条項2のリソグラフィ装置。
[条項24]
前記加熱システムのデューティサイクルが0.1以下であり、前記デューティサイクルが、前記加熱システムが前記ペリクルに加熱を行う時間の部分の、前記加熱システムが前記ペリクルに加熱を行わない時間の部分に対する比率である、条項22又は条項23のリソグラフィ装置。
[条項25]
前記リソグラフィ装置が、前記基板テーブルにより支持される基板の複数の異なるターゲット領域上に、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリのレチクルの像を形成するように動作可能であり、
前記加熱システムが、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される前記ペリクルの各部を加熱するように動作可能である、条項22から24のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項26]
前記加熱システムが、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される前記ペリクルの各部を加熱するように動作可能である、条項25のリソグラフィ装置。
[条項27]
前記加熱システムが、前記基板の1つのターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することと、前記基板の次のターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することとの間の時間に前記ペリクルを加熱するように動作可能である、条項25又は条項26のリソグラフィ装置。
[条項28]
前記加熱システムが、1つの基板の露光と後続の基板の露光との間に、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱するように動作可能である、条項22から27のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項29]
前記加熱システムが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱するように構成される、条項22から28のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項30]
前記支持構造により支持されたレチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームに通すために、前記照明システムにより調整された前記放射ビームに対して前記支持構造を移動させるように動作可能な支持構造スキャン機構を更に備え、前記加熱システムが、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリが前記放射ビームに通されるときに、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱するように構成される、条項22から29のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項31]
前記加熱システムが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱するように構成される、条項22から30のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項32]
前記加熱システムが、使用時に前記照明システムにより調整された前記放射ビームを受けない前記ペリクルの一部分を加熱するように構成される、条項22から31のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項33]
前記加熱システムが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持するように構成される、条項22から24のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項34]
前記最低温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、条項33のリソグラフィ装置。
[条項35]
前記最低温度が700℃以上である、条項33又は条項34のリソグラフィ装置。
[条項36]
前記支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブルの前記ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定するように動作可能な温度センサを更に備えた、条項1から35のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項37]
前記温度センサが、前記支持構造により支持されたペリクル-レチクルアセンブルの前記ペリクルの少なくとも一部分の温度プロファイルを決定するように動作可能である、条項36のリソグラフィ装置。
[条項38]
前記加熱システムが、決定した前記ペリクルの少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに応じて、前記支持構造により支持された前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱するように動作可能である、条項36又は条項37のリソグラフィ装置。
[条項39]
前記支持構造によって支持されているときの前記ペリクル-レチクルアセンブリの前記ペリクルの近傍に水素を供給するように動作可能な水素供給部を更に備えた、条項1から38のいずれか一項のリソグラフィ装置。
[条項40]
レチクル-ペリクルアセンブリを使用する方法であって、
放射ビームの断面にパターンを付与するために前記レチクル-ペリクルアセンブリを前記放射ビームで照明し、基板上に前記レチクルの像を形成すること、及び
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することを含む方法。
[条項41]
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルが目標温度分布を達成する、条項40の方法。
[条項42]
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの少なくとも一部分が最低温度より高く維持される、条項40又は条項41の方法。
[条項43]
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルの温度が、前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できるレベルになるように十分に高くなる、条項40から42のいずれか一項の方法。
[条項44]
別個の熱源を使用した前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルの前記加熱によって、前記ペリクルの温度が800K以上になる、条項40から43のいずれか一項の方法。
[条項45]
前記放射ビームによる前記レチクル-ペリクルアセンブリの照明中に、前記レチクル-ペリクルアセンブリが、前記放射ビームに通され、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている少なくとも一部分が、前記別個の熱源を使用して加熱される、条項40から44のいずれか一項の方法。
[条項46]
前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けている前記部分を取り囲む前記ペリクルの少なくとも一部分が、前記別個の熱源を使用して加熱される、条項40から45のいずれか一項の方法。
[条項47]
前記別個の熱源を使用した前記ペリクルの前記加熱によって、前記別個の熱源及び前記放射ビームからの複合熱負荷が目標温度分布を達成する、条項40から46のいずれか一項の方法。
[条項48]
実質的に前記ペリクルの膜全体が前記別個の熱源を使用して加熱される、条項40から47のいずれか一項の方法。
[条項49]
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、放射を前記ペリクルに誘導することを含む、条項40から48のいずれか一項の方法。
[条項50]
放射を前記ペリクルに誘導することによって前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、前記放射を前記ペリクルにスキャンすることを含む、条項40から49のいずれか一項の方法。
[条項51]
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、前記ペリクルに電流を供給することを含む、条項40から50のいずれか一項の方法。
[条項52]
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱することが、
前記ペリクルの少なくとも一部分に正の電圧を印加すること、及び
前記ペリクルの近傍に電極から電子を放出すること
を含む、条項40から51のいずれか一項の方法。
[条項53]
前記ペリクルの近傍に前記電極から電子を放出することが、前記電極を加熱することを含む、条項52の方法。
[条項54]
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することが、前記別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを周期的に加熱することを含む、条項40又は条項41の方法。
[条項55]
別個の熱源を使用して前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルを加熱することが、前記レチクル-ペリクルアセンブリの前記ペリクルにパルス加熱を行うことを含む、条項40又は条項41の方法。
[条項56]
前記ペリクルの前記加熱のデューティサイクルが0.1以下であり、前記デューティサイクルが、前記ペリクルに加熱が行われる時間の部分の、前記ペリクルに加熱が行われない時間の部分に対する比率である、条項54又は条項55の方法。
[条項57]
前記レチクルの像が、前記基板の複数の異なるターゲット領域上に形成され、
前記ペリクルの加熱される各部が、n個(nは整数である)のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される、条項54から56のいずれか一項の方法。
[条項58]
前記ペリクルの加熱される各部が、4個のすべてのターゲット領域の露光ごとに1回加熱される、条項57の方法。
[条項59]
前記ペリクルが、前記基板の1つのターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することと、前記基板の次のターゲット領域上に前記レチクルの像を形成することとの間の時間に加熱される、条項57又は条項58の方法。
[条項60]
前記ペリクルが、1つの基板の露光と後続の基板の露光との間に加熱される、条項54から59のいずれか一項の方法。
[条項61]
前記ペリクルを加熱することが、前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱することを含む、条項54から60のいずれか一項の方法。
[条項62]
前記レチクルの前記像が、スキャン露光中に前記基板上に形成され、前記ペリクルを加熱することが、前記スキャン露光中に前記ペリクルの現在前記放射ビームを受けていない部分を加熱することを含む、条項54から61のいずれか一項の方法。
[条項63]
前記ペリクルを加熱することが、実質的に前記ペリクルの膜全体を加熱することを含む、条項54から62のいずれか一項の方法。
[条項64]
前記ペリクルを加熱することが、使用時に前記ペリクルの前記放射ビームにより照明されない部分を加熱することを含む、条項54から63のいずれか一項の方法。
[条項65]
前記ペリクルを加熱することが、前記ペリクルの少なくとも一部分を最低温度より高く維持することを含む、条項54から64のいずれか一項の方法。
[条項66]
前記最低温度が前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる温度である、条項65の方法。
[条項67]
前記最低温度が700℃以上である、条項65又は条項66の方法。
[条項68]
前記ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定することを更に含む、条項40から67のいずれか一項の方法。
[条項69]
前記ペリクルの少なくとも一部分の温度を決定することが、前記ペリクルの少なくとも一部分の温度プロファイルを決定することを含む、条項68の方法。
[条項70]
前記別個の熱源を使用して前記ペリクルを加熱するステップが、決定した前記ペリクルの少なくとも一部分の温度又は温度プロファイルに依存する、条項68又は条項69の方法。
[条項71]
前記方法が、条項1から39のいずれか一項に記載の装置を使用して実行される、条項40から70のいずれか一項の方法。
[条項72]
リソグラフィ装置で使用するためのペリクルであって、前記ペリクルがカーボンナノチューブから形成された基板を備え、前記基板が更に少なくとも1つの添加剤を含むペリクル。
[条項73]
前記少なくとも1つの添加剤が、前記基板上に分布させた複数の触媒原子を含む、条項72のペリクル。
[条項74]
前記少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度が0.1~2%程度である、条項72又は条項73のペリクル。
[条項75]
前記少なくとも1つの添加剤の濃度及び種類が、それを超えると前記ペリクルの水素エッチング速度が無視できる閾値温度が900K未満になるようなものである、条項72から74のいずれか一項のペリクル。
[条項76]
前記少なくとも1つの添加剤が遷移金属を含む、条項72から75のいずれか一項のペリクル。
[条項77]
前記少なくとも1つの添加剤が、モリブデン、クロム、ニッケル、銅及び/又は鉄を含む、条項72から76のいずれか一項のペリクル。
[条項78]
前記少なくとも1つの添加剤がホウ素を含む、条項72から77のいずれか一項のペリクル。
[条項79]
前記少なくとも1つの添加剤の炭素原子に対する濃度が15原子%程度である、条項78のペリクル。
[条項80]
前記少なくとも1つの添加剤が非晶質炭素を含む、条項44から51のいずれか一項のペリクル。
【国際調査報告】