(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20241001BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20241001BHJP
C08K 5/52 20060101ALI20241001BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241001BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K5/5313
C08K5/52
C08K3/013
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580882
(86)(22)【出願日】2023-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2023009651
(87)【国際公開番号】W WO2024058384
(87)【国際公開日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】10-2022-0117051
(32)【優先日】2022-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0087762
(32)【優先日】2023-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、チ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ウォン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】クォン、テ-フン
(72)【発明者】
【氏名】パク、チェ-チャン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF071
4J002DJ016
4J002DL006
4J002EU188
4J002EW028
4J002EW137
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD070
4J002FD130
4J002FD137
4J002FD138
4J002FD200
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、ハロゲン系難燃剤を含むポリエステル樹脂複合素材に相応するか、またはそれ以上のレベルで機械的強度と難燃性との優れた物性バランスが提供され、流動性が優れるので加工性に優れ、特に自動車電装部品の素材として適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤を含み、
下記数式1を満たすことを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[数式1]
7.76≦a/b≦45
(前記数式1において、aは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をISO 527に従って測定した引張強度(MPa)であり、bは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を265℃で2.16kgの荷重に対してISO 1133に従って測定した流動指数(g/10min)である。)
【請求項2】
前記シリカ含有強化剤は、前記強化剤中にシリカを50重量%以上含む、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリブチレンテレフタレートの含量をcとし、前記シリカ含有強化剤の含量をdとするとき、0.5d≦c≦2dの相関関係を満たす、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して15~65重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%に対して15~65重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリブチレンテレフタレートは、ASTM D2857に準拠して測定された固有粘度(η)が0.5~1.25dl/gである、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリカ含有強化剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して10~50重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記シリカ含有強化剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%に対して10~50重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項7】
前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して5~35重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%に対して5~35重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項8】
前記メラミンポリホスフェートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記メラミンポリホスフェートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物はメラミンシアヌレートを含み、このメラミンシアヌレートを、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートの合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含むか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記加工性改善剤及び耐熱性添加剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートに加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項10】
前記樹脂組成物は加工性改善剤を含み、前記加工性改善剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤を合わせた合計100重量%に対して0.001~3重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂組成物は耐熱性添加剤を含み、前記耐熱性添加剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%に対して0.001~3重量%の範囲内で含まれる、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項12】
ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤を含んで混練及び押出するステップを含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が、下記数式1を満たす、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
[数式1]
7.76≦a/b≦45
(前記数式1において、aは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をISO 527に従って測定した引張強度(MPa)であり、bは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を265℃で2.16kgの荷重に対してISO 1133に従って測定した流動指数(g/10min)である。)
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項14】
前記成形品は自動車電装部品である、請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年09月16日付の韓国特許出願第10-2022-0117051号及びこれに基づいて2023年07月06日付で再出願された韓国特許出願第10-2023-0087762号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、ハロゲン系難燃剤を含まないながらも、機械的物性と難燃性の物性バランスに優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
軽量化及び製造原価の節減のために、自動車分野では部品の素材をプラスチックで代替しようとする研究が活発に進められている。
【0004】
プラスチックの中でもポリエステル樹脂が、自動車部品の素材として広く使用されており、アルミニウムやスチールを代替することができる可能性を有していると評価されている。そのため、自動車用部品の素材として、ポリエステル樹脂の中でもポリブチレンテレフタレート樹脂が、高剛性及び耐熱性などに優れるので、これを様々な自動車部品に適用する研究が活発に進められている。
【0005】
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂を電装部品、特にコネクタ部品の素材として適用するためには、非ハロゲン系難燃剤を含めた難燃複合素材への開発が必要である。
【0006】
ポリブチレンテレフタレート樹脂複合素材に使用される非ハロゲン系難燃剤としては、主に金属塩リン系難燃剤が使用されているが、ハロゲン系難燃剤を使用した場合と比較して同じ程度の機械的剛性及び難燃性を実現することが難しいため、非ハロゲン系難燃剤を含みながらも機械的剛性及び難燃性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物などの開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2011-0072828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、自動車部品の素材に適したレベルの機械的強度と難燃性の物性バランスを実現したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法を提供することである。
【0009】
また、本発明は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から製造される成形品を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、I)ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤(補強剤)を含み、下記数式1を満たすことを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【0012】
[数式1]
7.76≦a/b≦45
(前記数式1において、aは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をISO 527で測定した引張強度(MPa)であり、bは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を265℃で2.16kgの荷重に対してISO 1133を用いて測定した流動指数(g/10min)である。)
【0013】
II)前記I)において、前記シリカ含有強化剤は、前記強化剤中にシリカを50重量%以上、具体例として50~70重量%含むことができ、好ましくは50~65重量%含むことができ、より好ましくは50~60重量%含むことができる。
【0014】
III)前記I)又はII)において、前記ポリブチレンテレフタレートの含量をcとし、前記シリカ含有強化剤の含量をdとするとき、0.5d≦c≦2dの相関関係を満たすことができる。
【0015】
ここで、含量は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%を基準とする重量%を意味することができ、必要であれば、メラミンシアヌレート、ポリエチレン、加工性改善剤及び耐熱性添加剤から選択された1種以上をさらに含んで合計100重量%を基準とする重量%を意味する。
【0016】
IV)前記I)~III)において、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して15~65重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に15~65重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。
【0017】
V)前記I)~IV)において、前記ポリブチレンテレフタレートは、ASTM D2857に準拠して測定した固有粘度(η)が0.5~1.25dl/gであってもよい。
【0018】
VI)前記I)~V)において、前記シリカ含有強化剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して10~50重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記シリカ含有強化剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に10~50重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。
【0019】
VII)前記I)~VI)において、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して5~35重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に5~35重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。
【0020】
VIII)前記I)~VII)において、前記メラミンポリホスフェートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記メラミンポリホスフェートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に0.1~10重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。
【0021】
IX)前記I)~VIII)において、前記樹脂組成物はメラミンシアヌレートを含み、このメラミンシアヌレートを、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートの合計100重量%に対して0.1~10重量%の範囲内で含むか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートに加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に0.1~10重量%の範囲内で含むもの;であってもよい。
【0022】
X)前記I)~IX)において、前記樹脂組成物は加工性改善剤を含み、これを、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤を合わせた合計100重量%中に0.001~3重量%の範囲内で含むものであってもよい。
【0023】
XI)前記I)~X)において、前記樹脂組成物は耐熱性添加剤を含み、これを、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に0.001~3重量%の範囲内で含むものであってもよい。
【0024】
また、本発明は、XII)ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤を含んで混練及び押出するステップを含み、下記数式1を満たすことを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0025】
[数式1]
7.76≦a/b≦45
(前記数式1において、aは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物をISO 527で測定した引張強度(MPa)であり、bは、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を265℃で2.16kgの荷重に対してISO 1133を用いて測定した流動指数(g/10min)である。)
【0026】
また、本発明は、XIII)前述したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を含む。
【0027】
XIV)前記XIII)において、前記成形品は自動車電装部品であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ハロゲン系難燃剤を含むポリエステル樹脂複合素材に相応するか、またはそれ以上のレベルで機械的強度と難燃性との優れた物性バランスが提供され、流動性が優れるので加工性に優れ、特に自動車電装部品の素材として提供され得る。
【0029】
すなわち、本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物で製造された成形品は、引張強度などの機械的物性と難燃性との間の高いレベルの物性バランスが実現される効果がある。
【0030】
したがって、本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びこれから製造された成形品は、これを必要とする自動車部品分野に広く適用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0032】
本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0033】
本発明者らは、非ハロゲン系難燃剤を構成する種類及び含量を調節することで、自動車部品の素材に適したレベルの機械的強度と難燃性の物性バランスを実現できることを確認し、本発明を完成するようになった。
【0034】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤を含む。
【0035】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ISO 527で測定した引張強度(MPa)をaとし、265℃で2.16kgの荷重に対してISO 1133を用いて測定した流動指数(g/10min)をbとするとき、a/bが、一例として7.76~45、具体的には7.76~40、好ましくは7.77~40の範囲を満たすことができる。上述した範囲を満たす場合、剛性、難燃性及び加工性の物性バランスを提供することができる。
【0036】
本発明の一実施例において、前記aは、130以上、または130~165であってもよく、前記bは、4~20、または4~18であってもよい。
【0037】
以下、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を各成分別に詳細に説明する。
【0038】
<ポリブチレンテレフタレート>
本発明の一実施例において、前記ポリブチレンテレフタレートとして、1,4-ブタンジオールと、テレフタル酸又はジメチルテレフタレートとを直接エステル化反応させるか、またはエステル交換反応させて縮重合したポリブチレンテレフタレートが使用されてもよい。
【0039】
本発明の一実施例において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の衝撃強度を高めるために、前記ポリブチレンテレフタレートとして、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリアミドなどのような衝撃改善化合物と共重合した共重合体、または前記ポリブチレンテレフタレートとして、前記衝撃改善化合物と混合した変性ポリブチレンテレフタレートが使用されてもよい。
【0040】
本発明の一実施例において、ASTM D2857に準拠して測定したポリブチレンテレフタレートの固有粘度ηは、一例として0.5~1.25dl/g、好ましくは0.5~1.2dl/g、より好ましくは0.52~1dl/gであってもよい。前記ポリブチレンテレフタレートの固有粘度が前記範囲を満たす場合、機械的特性と成形性との物性バランスに優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を確保することができる。
【0041】
本発明の一実施例において、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して、15~65重量%、25~58重量%、好ましくは40~58重量%、より好ましくは40~55重量%、より一層好ましくは45~55重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に15~65重量%、25~58重量%、好ましくは40~58重量%、より好ましくは40~55重量%、より一層好ましくは45~55重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。前記ポリブチレンテレフタレートが前記範囲で含まれる場合、加工性、比重、機械的特性の物性バランスに優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することができる。
【0042】
<強化剤>
本発明の一実施例において、前記強化剤は、一例としてガラス繊維であってもよく、前記強化剤は、他の無機質繊維と共に使用されてもよい。
【0043】
このとき、前記無機質繊維は、一例として、炭素繊維、玄武岩繊維、及びケナフ又は大麻などの天然繊維から選択された1つ以上であってもよい。
【0044】
本発明の一実施例において、前記強化剤の断面は、円形、長方形、楕円形、亜鈴形、菱形などの形状を有することができ、平均直径が8~20μm、または10~15μmであり、平均長さが2~6mm、または2~4mmであってもよい。
【0045】
このとき、前記強化剤の平均直径及び平均長さは、この技術分野で通常用いられる方法により測定することができる。例えば、当該強化剤を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で観察し、これから10~30個のストランドの平均直径及び平均長さをそれぞれ測定することができる。
【0046】
前記強化剤は、繊維の製造時または後処理工程時にサイジング剤(sizing compositions)によって処理され得るが、当該サイジング剤としては、加工改善剤、カップリング剤、界面活性剤などがある。
【0047】
前記加工改善剤は、主に良好なストランドを形成するために使用され、前記カップリング剤は、強化剤とポリブチレンテレフタレート樹脂との間の良好な接着を可能にするもので、ポリブチレンテレフタレート樹脂及び強化剤の種類を考慮して適宜選択して使用する場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に優れた物性を付与することができる。
【0048】
前記カップリング剤の使用方法としては、強化剤に直接処理する方法、有機マトリックスに添加する方法などがあり、カップリング剤の性能を十分に発揮するためには、その含量を適宜選択しなければならない。
【0049】
前記カップリング剤の例としては、アミン系、アクリル系、及びγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4-エポキシエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン系がある。
【0050】
特に、本記載の強化剤は、シリカを含有することが、剛性及び機械的物性を提供できるので好ましい。
【0051】
前記シリカは、強化剤中に、一例として50重量%以上、具体例として50~70重量%、好ましくは50~65重量%、より好ましくは50~60重量%含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、優れた剛性と機械的物性のバランスを提供することができる。
【0052】
具体的には、下記の実施例及び比較例から確認されるように、シリカが適切でない含量、例えば48重量%である強化剤を代替投入した場合、難燃度は優れていたが、引張強度と流動指数が不良であるため、物性バランスを提供できないことが確認できた(比較例4参照)。
【0053】
本発明において、強化剤中のシリカの含量は、XRF(X-Ray Fluorescence spectrometry:X線蛍光分析)を用いて測定又は確認することができる。
【0054】
本発明の一実施例において、前記シリカ含有強化剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して10~50重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~50重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記シリカ含有強化剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に10~50重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~50重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。
【0055】
<非ハロゲン系難燃剤>
本発明に係る非ハロゲン系難燃剤は、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩とメラミンポリホスフェートを含むことができ、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を押出・射出加工する途中に難燃効果を提供するだけでなく、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の長時間保管時にも難燃効果を十分に提供することができる。
【0056】
前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、高分子の表面にチャー(char)を形成して組成物の難燃性を向上させることができる。
【0057】
本発明の一実施例において、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩として、市販の製品が使用されてもよい。
【0058】
前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、一例として、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して5~35重量%、10~30重量%、具体例として10~25重量%、好ましくは10~20重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に5~35重量%、10~30重量%、具体例として10~25重量%、好ましくは10~20重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。上述した範囲を満たす場合、高分子の表面にチャーを形成して組成物の難燃性を向上させることができる。
【0059】
前記メラミンポリホスフェートは、前述したジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩と同時に使用される場合、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩と共に、高分子の表面にチャーを形成して、燃焼から保護する効果を向上させることができる。
【0060】
本発明の一実施例において、前記メラミンポリホスフェートとして、市販の製品が使用されてもよい。
【0061】
前記メラミンポリホスフェートは、一例として、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤の合計100重量%に対して0.1~10重量%、具体例として0.1~5重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~4重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、前記メラミンポリホスフェートは、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.1~10重量%、具体例として0.1~5重量%、好ましくは1~5重量%、より好ましくは2~4重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。上述した範囲を満たす場合、高分子の表面にチャーを十分に形成して、組成物の難燃性を向上させることができる。
【0062】
本発明の一実施例によれば、メラミンシアヌレートを含むことができ、この場合、不活性気体を発生させて難燃性を向上させることができる。
【0063】
前記メラミンシアヌレートは、一例として、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートの合計100重量%に対して0.1~10重量%、具体例として0.1~4.5重量%、好ましくは0.1~3.5重量%、より好ましくは1~3.5重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は加工性改善剤及び耐熱性添加剤を含み、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートに加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.1~10重量%、具体例として0.1~4.5重量%、好ましくは0.1~3.5重量%、より好ましくは1~3.5重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。
【0064】
<加工性改善剤>
本発明に係る加工性改善剤はオレフィン系ワックスであってもよく、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に優れた離型性及び射出性を維持できるようにする役割を提供する。
【0065】
前記オレフィン系ワックスは、溶融粘度が低い重合体であって、滑り性及び可塑性を有する油質相の固体であり得、一例として、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスから選択される1種以上であってもよく、市販の製品を使用してもよい。
【0066】
一例として、前記加工性改善剤は、ポリエチレンを使用することができ、具体例として、ドロップポイント(drop point)が100~120℃であり、融点(mp)が95~115℃であり、密度(23℃)が0.9~1.0g/cm3であり、絶対粘度(120℃)が350~450mm2/sであるポリエチレンを使用することができる。このような場合、離型性及び射出性を効果的に提供することができる。
【0067】
本記載において、ドロップポイントは、ASTM D566、KS M 2033に従う実験方法によって、滑剤が温度上昇により液状に変化する最低温度として示されるものであって、より具体的には、直径100mmの規定されたカップ(cup)に試料を入れ、前記規定された条件で加熱して、グリースが滴下するときの温度を測定して示すことができる。
【0068】
本記載において、融点は、TA社で製造した示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter 2920)を用いて測定することができる。具体的な測定例として、融点は、DSCを温度0℃で平衡に達するようにした後、1分当たり20℃ずつ増加させて180℃まで上げた後、1分当たり20℃ずつ減少させて-60℃まで下げた後、1分当たり10℃ずつ増加させて180℃まで温度を増加させる方法により測定することができる。ここで、融点は、二番目の温度が上昇する間、吸熱曲線の頂点領域を取って得られる。
【0069】
本記載において、密度は、一例として、ASTM D1505の測定法に従って測定することができる。
【0070】
本記載において、絶対粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)社の絶対粘度計を用いて測定することができる。具体的な測定例として、絶対粘度は、ブルックフィールド社の絶対粘度計LVT230を用いてASTM D1986-14の方法により測定することができる。
【0071】
具体例として、前記加工性改善剤は、ドロップポイントが105~115℃であり、融点(mp)が100~110℃であり、密度(23℃)が0.95~1.0g/cm3であり、絶対粘度(120℃)が380~420mm2/sであるポリエチレンを使用することができる。
【0072】
具体例として、前記加工性改善剤は、ドロップポイントが108~112℃であり、融点(mp)が102~106℃であり、密度(23℃)が0.95~0.98g/cm3であり、絶対粘度(120℃)が400~420mm2/sであるポリエチレンワックスを使用することができる。
【0073】
本発明の一実施例において、前記加工性改善剤として、市販の製品が使用されてもよい。例えば、LC102Nなどの製品を使用することができる。
【0074】
本発明の一実施例において、前記加工性改善剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及び加工性改善剤の合計100重量%に対して、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.01~1重量%の範囲内で含まれるか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物はメラミンシアヌレートを含み、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、ポリエチレン、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートに加工性改善剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.01~1重量%の範囲内で含まれるもの;であってもよい。上述した範囲を満たす場合、優れた離型性及び射出性を十分に提供することができる。
【0075】
具体的な例として、前記樹脂組成物はポリエチレンを含み、このポリエチレンを、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びポリエチレンの合計100重量%に対して、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.01~1重量%内で含むか;または、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物はポリエチレン、メラミンシアヌレート、及び耐熱性添加剤を含み、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、ポリエチレン、及びシリカ含有強化剤にポリエチレン、メラミンシアヌレート及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~3重量%、より好ましくは0.01~3重量%、最も好ましくは0.01~1重量%内で含むもの;であってもよい。
【0076】
<耐熱性添加剤>
本発明に係る耐熱性添加剤は、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に押出・射出加工の途中に高温で酸化防止効果を提供することができる。
【0077】
前記耐熱性添加剤は、一例として、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物及びホスホナイト系化合物から2種以上選択されてもよい。
【0078】
前記ヒンダードフェノール系化合物として、市販の製品が使用されてもよい。
【0079】
前記ヒンダードフェノール系化合物の例としては、オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)プロピオネート(Octadecyl-3-(4-hydroxy-3,5-di-tert-butylphenyl)propionate)、テトラビス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(Tetrabis[methylene-3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate]methane)、1,3,5-トリ-メチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(1,3,5-Tri-methyl-2,4,6-tris(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxybenzyl)benzene)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Pentaerythritol tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)などがあり、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを使用することが好ましい。
【0080】
前記ホスファイト系化合物として、トリフェニルホスファイト(Triphenyl phosphite)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(Tris(nonyl phenyl)phosphite)、トリイソデシルホスファイト(Triisodecyl phosphite)、ジフェニル-イソオクチル-ホスファイト(diphenyl-isooctyl-phosphite)、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Bis(2,6-di-tert-butyl-4-methylphenyl)pentaerythritol diphosphite)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Tris(2,4-di-tert-butylphenyl)phosphite)などが使用され、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが使用されることが好ましい。
【0081】
前記ホスホナイト系化合物として、下記化学式1で表される化合物が使用されてもよい。
【0082】
【0083】
前記化学式1において、R1又はR2は、それぞれ独立して、アルキル、アリール、アルキルアリール、具体例として、C1-C30アルキル、C6-C30アリールまたはアルキルアリールであり、Arは、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルなどのようなアリール基である。
【0084】
他の例として、前記耐熱性添加剤は、下記化学式2で表される化合物と化学式3で表される化合物とを混合したものを使用することができる。
【0085】
下記化学式2で表される化合物と化学式3で表される化合物とが混合された場合、密度が、一例として530g/l以上、具体例として530~630g/lであることが、高温で酸化防止効果を提供するのに好ましい。
【0086】
ここで、密度は、この技術分野で通常測定される方式及び装備を用いて測定された値であり得る。
【0087】
本発明の一実施例において、市販の製品が使用されてもよい。例えば、B-225などの製品を使用することができる。
【0088】
【0089】
【0090】
本発明の一実施例において、前記耐熱性添加剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤に耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~2重量%、より好ましくは0.01~2重量%、より一層好ましくは0.1~2重量%の範囲内で含まれてもよい。上述した範囲を満たす場合、高温加工時に熱安定性を提供することができる。
【0091】
前記耐熱性添加剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤及びメラミンシアヌレートに耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~2重量%、より好ましくは0.01~2重量%、より一層好ましくは0.1~2重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0092】
前記耐熱性添加剤は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤、メラミンシアヌレート及びポリエチレンに耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に、一例として0.001~3重量%、好ましくは0.05~2重量%、より好ましくは0.01~2重量%、より一層好ましくは0.1~2重量%の範囲内で含まれてもよい。
【0093】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物>
本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤を含み、前記ポリブチレンテレフタレートの含量をcとし、前記シリカ含有強化剤の含量をdとするとき、0.5d≦c≦2dの相関関係、具体的にはd≦c≦2dの相関関係、好ましくは1.3d≦c≦1.8dの相関関係を満たすことができる。上述した範囲を満たす場合、剛性及び機械的物性と難燃性との優れた物性バランスを提供することができる。
【0094】
本記載で使用する用語「含量」は、他に特定しない限り、重量%の単位を指すことができる。具体的には、cとdの含量は、それぞれ、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、シリカ含有強化剤、加工性改善剤及び耐熱性添加剤を合わせた合計100重量%中に含まれる重量%であり得る。
【0095】
ここで、cは、一例として35~58の整数、好ましくは40~58の整数、より好ましくは40~55の整数、より一層好ましくは45~50の整数であってもよい。上述した範囲を満たす場合、剛性及び機械的物性と難燃性との優れた物性バランスを提供することができる。
【0096】
また、前記dは、一例として10~50の整数、好ましくは15~50の整数、より好ましくは20~50の整数であってもよい。上述した範囲を満たす場合、剛性及び機械的物性と難燃性との優れた物性バランスを提供することができる。
【0097】
本発明の一実施例において、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート15~65重量%;シリカ含有強化剤10~50重量%;ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩5~35重量%;メラミンポリホスフェート0.1~10重量%;メラミンシアヌレート0~10重量%;耐熱性添加剤0.001~3重量%;及び加工性改善剤0.001~3重量%を含むものであってもよい。
【0098】
他の例として、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート35~58重量%;シリカ含有強化剤15~50重量%;ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩10~25重量%;メラミンポリホスフェート0.1~5重量%;メラミンシアヌレート0~4.5重量%;耐熱性添加剤0.001~3重量%;及び加工性改善剤0.001~3重量%を含むものであってもよい。
【0099】
他の例として、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート40~58重量%;シリカ含有強化剤20~50重量%;ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩10~20重量%;メラミンポリホスフェート1~5重量%;メラミンシアヌレート0.1~10重量%;耐熱性添加剤0.05~2重量%;及び加工性改善剤0.05~3重量%を含むことができる。上述した範囲を満たす場合、剛性及び機械的物性と難燃性との優れた物性バランスを提供することができる。
【0100】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、一例として、UV安定剤、顔料及び着色剤から選択された1種以上の添加剤を、一例として、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100重量部を基準として、それぞれ0.01~5重量部で含むことができ、好ましくは0.5~2重量部、より好ましくは1~2重量部で含むことができる。前記範囲内で、樹脂組成物の物性に影響を与えないと共に、添加剤本来の特性が発現されるという効果がある。
【0101】
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法>
本発明に係るポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、当業界に公知された方法により製造され得る。例えば、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、各構成成分とその他の添加剤との混合物を押出機内で溶融押出する方法によってペレット状に製造され得、前記ペレットは、射出及び押出成形品に用いられ得る。
【0102】
本発明の一実施例において、前記ペレットは、240~280℃の温度で押出され、射出時の金型の温度は80~120℃の範囲を有することが好ましい。前記金型の温度が80℃未満である場合、外観特性が低下することがあり、120℃を超える場合、ペレットが金型にくっついてしまい、離型性が低下し、冷却速度が増加することがある。
【0103】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は、一例として、ポリブチレンテレフタレート、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩、メラミンポリホスフェート、及びシリカ含有強化剤を含んで混練及び押出するステップを含むことができ、必要に応じて、前述したメラミンシアヌレートを含むことができる。
【0104】
前記混練及び押出するステップにおいて、押出機のスクリュー回転数は、一例として150~330rpm、150~300rpm、または200~250rpmであってもよい。上述した範囲を満たしながら、値が低いほど、剛性及び加工性が改善され得る。
【0105】
前記押出機に投入する前記ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の時間当たりの移送量(F/R)は、70kg/hr以下、好ましくは60kg/hr以下、より好ましくは50kg/hr以下、より一層好ましくは45~55kg/hrであることを特徴とし、この場合、剛性及び加工性、比重の物性バランスを実現することができる。
【0106】
<成形品>
本発明の他の実施例によれば、前述したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物で製造された成形品を提供する。
【0107】
前記成形品は、一例として自動車電装部品であってもよい。
【0108】
前記成形品は、具体例として自動車コネクタであってもよい。
【0109】
前記成形品は、ISO 527に準拠して測定した引張強度が130MPa以上、または135~165MPaであってもよい。
【0110】
前記成形品は、ISO 1133に準拠して、265℃で2.16kgの荷重下で測定した流動指数が4~20g/10min、または4~18g/minであってもよい。
【0111】
前記成形品は、UL 94に準拠して測定した0.8mmの試験片に対する難燃度(Burning time/5個)が50秒以下であってもよい。
【0112】
本記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0113】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定するものではない。
【0114】
[実施例]
本発明の一実施例において、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造に使用される各構成成分は、次の通りである。
(A)ポリブチレンテレフタレート(PBT:固有粘度0.5~1dl/g)
(B)シリカ含有強化剤:平均直径が10μmであり、平均長さが3mmであるガラス繊維
(B-1)ガラス繊維1:シリカを55重量%含む
(B-2)ガラス繊維2:シリカを48重量%含む
(C)ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩
(D)メラミンポリホスフェート
(E)メラミンシアヌレート
(F)芳香族ホスフェート:製品名PX200
(G)耐熱性添加剤:製品名B-225
(H)加工性改善剤:ドロップポイント(drop point)が110℃であり、融点(mp)が104℃であり、密度(23℃)が0.97g/cm3であり、絶対粘度(120℃)が410mm2/sであるポリエチレン
(I)ドロップ防止剤:テフロン(製品名JF-4A)
【0115】
<実施例1~3及び比較例1~6>
前記各構成成分を下記の表1に記載された含量で混合した。製造された組成物に対して下記のような方法で物性を測定し、下記の表1に示した。
【0116】
*流動指数(g/10min):ISO 1133に準拠して測定した。
【0117】
その次に、前記混合物を50kg/hrで供給し、押出機のスクリュー回転数は250rpmを適用した。このとき、スクリューの直径が45mmである二軸押出機を用いて250℃の温度で押出し、この押出物をペレット状に製造した。
【0118】
製造されたペレットを100℃で4時間以上乾燥させた後、80℃の温度で射出して、2.5mm×50mm×90mmのサイズの試験片を製造した。製造された試験片に対して下記のような方法で物性を測定し、下記の表1に示した。
【0119】
*引張強度(Mpa):ISO 527に準拠して測定した。
【0120】
*難燃度(Burning time/5ea):0.8mmの試験片を作製し、UL 94に準拠して、試験片5個が燃焼する総所要時間(sec)を測定した。V-0等級である場合にOKと表記すると共に、所要時間を併記し、V-0等級に達しない場合にはNGと表記した。
【0121】
*引張強度の値をaとし、流動指数の値をbとするとき、a/bの計算値を下記の表1に共に示した。
【0122】
【0123】
前記表1から分かるように、本発明に係る構成を全て含む実施例1~3は、流動指数が4~18g/10分であり、引張強度が135~160MPa、難燃度V-0で、かつ燃焼する総所要時間が13.9~34秒の範囲内であって、剛性、加工性、難燃度の物性バランスが確認できた。このとき、a/bの計算値は7.77~40であって、適切な範囲内であることが確認された。
【0124】
反面、芳香族ホスフェート及びテフロンを共に使用した比較例1の場合、引張強度及び流動指数が低下することが確認できた。この場合、a/bの計算値も7.76に達しない値を示すことが分かる。
【0125】
引張強度が不良であり、流動指数は測定できなかったことが確認され、a/bの計算値も計算できなかった。
【0126】
また、ジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩を単独で投入し、メラミンポリホスフェートとメラミンシアヌレートを投入していない比較例2の場合、引張強度及び流動指数が低下したことが確認できた。
【0127】
また、前記実施例1の組成においてジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩の含量を減らした分だけポリブチレンテレフタレートを追加で投入した比較例3の場合、引張強度及び流動指数は優れていたが、難燃度が測定不可と確認された。
【0128】
また、前記実施例2の組成において、シリカ含量が適切な範囲に達しない強化剤を代替投入した比較例4の場合、難燃度は優れていたが、引張強度及び流動指数が不良であることが確認できた。この場合、a/bの計算値も7.76未満の値を示すことが分かる。
【0129】
また、前記実施例2の組成において強化剤の含量を減らした分だけポリブチレンテレフタレートを追加で投入した比較例5の場合、流動指数は優れていたが、引張強度及び難燃度が不良であることが確認できた。この場合、a/bの計算値も7.76未満の値を示すことが分かる。
【0130】
また、前記実施例2の組成においてジエチルホスフィン酸のアルミニウム塩の含量とメラミンシアヌレートの含量を変えて投入した比較例6の場合、難燃度が不良であることが確認できた。この場合、a/bの計算値も7.76未満の値を示すことが分かる。
【0131】
結論的に、本発明に開示されたポリブチレンテレフタレートにシリカ含有強化剤を使用して補強すると共に、特定の組成の難燃成分及び耐熱成分などを含むことによって、加工性、比重、剛性及び難燃度の間の物性バランスを実現して、ハロゲン系難燃剤を含むポリエステル樹脂複合素材の代替素材として自動車部品分野に使用するのに適切であることが確認できた。
【国際調査報告】