(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】強力で選択的なGIP受容体アゴニストとしての新規のペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/575 20060101AFI20241001BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241001BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241001BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241001BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241001BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241001BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20241001BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20241001BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K14/575 ZNA
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P9/12
A61P3/04
A61P1/08
A61P19/10
A61K38/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514511
(86)(22)【出願日】2022-09-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022074607
(87)【国際公開番号】W WO2023031455
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ベーム
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・エヴァース
(72)【発明者】
【氏名】ダーク・グレツキー
(72)【発明者】
【氏名】ティム・クレックナー
(72)【発明者】
【氏名】アニッシュ・コンカー
(72)【発明者】
【氏名】ツィユー・リー
(72)【発明者】
【氏名】カトリン・ローレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニア・プファイファー-マレク
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ワーグナー
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA19
4C084BA31
4C084DB01
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA421
4C084ZA422
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA711
4C084ZA712
4C084ZA971
4C084ZA972
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC351
4C084ZC352
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA18
4H045CA40
4H045DA30
4H045EA20
4H045FA34
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、ペプチド選択的GIP受容体アゴニスト、及びその医療的使用に関し、例えば、糖尿病及び肥満、高血糖を含むメタボリックシンドロームの障害の処置、並びに吐き気及び嘔吐を伴う障害の処置における医療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-X18-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R
2 I
(式中、
R
1は、H又はC
1~C
4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、アミノ酸残基Leuを表しているか、又はLysであり、ここで、-NH
2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、又は
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
で官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile、Gln、及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X18は、アミノ酸残基Hisを表しているか、又はLysであり、ここで、-NH
2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、又は
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
で官能化されており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、Glu、及びLysから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、Gly、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しているか、又はX30がLysである場合には、X31は、Pro-Ser-Ser-Aib-Lys-Ala-Pro-Pro-Pro-Lysであり、
R
2は、NH
2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
式中、
X14が、官能化されたLysである場合には、X18は、Hisであり、
X14が、Leuである場合には、X18は、官能化されたLysであり;
ここで、化合物
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R
2は除外される、
化合物、又はその塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載の式II
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-X22-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-X30-Gly-R
2 II
(式中、
R
1は、H又はC
1~C
4-アルキルであり、
X6は、Phe及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysを表しており、ここで、-NH
2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、及び
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
から選択される基で官能化されており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
R
2は、NH
2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物。
【請求項3】
請求項1に記載の式III
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-His-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R
2 III
(式中、
R
1は、H又はC
1~C
4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH
2側鎖基は、{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、Glu、及びLysから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しているか、又はX30がLysである場合には、X31は、Pro-Ser-Ser-Aib-Lys-Ala-Pro-Pro-Pro-Lysであり、
R
2は、NH
2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
ここで、化合物
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R
2は除外される、
化合物、又はその塩若しくは溶媒和物。
【請求項4】
請求項1に記載の式IV
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-Leu-X15-X16-X17-X18-Gln-Aib-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-X31-R
2 IV
(式中、
R
1は、H又はC
1~C
4-アルキルであり、
X15は、Asp及びGluから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Gln及びIleから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X18は、Lysであり、ここで、-NH
2側鎖基は、-{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X31は、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、及びPro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しており、
R
2は、NH
2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載の式III
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-His-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R
2 III
(式中、
R
1は、H又はC
1~C
4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH
2側鎖基は、{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、及びGluから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、アミノ酸残基Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Serを表しており、
R
2は、NH
2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
ここで、化合物
R
1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R
2は除外される、
化合物、又はその塩若しくは溶媒和物。
【請求項6】
配列番号4~38の化合物から選択される請求項1に記載の化合物、及びその塩又は溶媒和物。
【請求項7】
配列番号4~18の化合物から選択される請求項1に記載の化合物、及びその塩又は溶媒和物。
【請求項8】
配列番号19~35の化合物から選択される請求項1に記載の化合物、及びその塩又は溶媒和物。
【請求項9】
配列番号36~38の化合物から選択される請求項1に記載の化合物、及びその塩又は溶媒和物。
【請求項10】
ヒト医療での使用のための請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
少なくとも1種の薬学的に許容される単体と共に、医薬組成物中に活性剤として存在する請求項10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
耐糖能障害、インスリン抵抗性、前糖尿病、空腹時グルコース増加、高血糖、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、冠動脈心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中、又はこれらの個々の疾患成分の任意の組み合わせの処置のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
食欲、摂食、及びカロリー摂取の制御、体重増加の予防、体重減少の促進、過剰体重の減少、並びに病的肥満を含む肥満の全体的処置のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
骨粗鬆症の処置又は予防のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
吐き気及び嘔吐の処置又は予防のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
糖尿病及び肥満の同時処置のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
患者の血糖値を減少させるための及び/又はHbA1cレベルを低下させるための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
患者の体重を減少させるための、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
医薬品としての使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物、又はこれらのいずれかの生理学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、糖尿病及び肥満、高血糖等のメタボリックシンドロームの障害の処置、並びに吐き気及び嘔吐に関連する障害の処置での、選択的なGIP受容体アゴニストである新規のペプチド性化合物、及びその医学的使用に関する。本発明の化合物は、エキセンディン-4から構造的に導かれており、m-クレゾール又はフェノールの様な抗菌保存料の存在下でも生理的条件で高い溶解性及び安定性を示し、これにより、他の抗糖尿病化合物との組み合わせに特に適している。このエキセンディン-4ペプチド類似体は、他のGPCRに対する優れた選択性、好ましい物理化学的特性、薬物動態特性の改善、及び関連する動物モデルにおける有益なインビボ効果と共に、GIP受容体に対する高いインビトロ効力を示す。
【背景技術】
【0002】
GIP及びGLP-1は、経口ブドウ糖負荷に対するインスリン反応の70%超を占めるインクレチン効果の主な原因となる2種の腸内分泌細胞由来ホルモンである(Baggio et al.,Gastroenterology 2007,132,2131)。
【0003】
GIP(グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド)はまた、hGIP又はhGIP(1-42)とも称されており、摂食後に腸管K細胞から放出される42個のアミノ酸のペプチドである。
【0004】
GIPのアミノ酸配列は、配列番号1で示される。
H2N-YAEGTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQ-OH
【0005】
GIP及びその類似体は、ベータ細胞からのグルコース依存性インスリン分泌を引き起こし、そのため、低血糖のリスクを伴うことなくグルコースが調節される。GIPは、膵島への直接的な効果の結果として糖調節効果を示す(Taminato et al.,Diabetes 1977,26,480;Adrian et al.,Diabetologia 1978,14,413;Lupi et al.,Regul Pept 2010,165,129)。加えて、正常なヒト及び糖尿病のヒトにおいて、GIP類似体は、アルファ細胞からのグルカゴン分泌を引き起こす(Chia et al.,Diabetes 2009,58,1342;Christensen et al.,Diabetes 2011,60,3103)。この効果により、低血糖を自覚していない糖尿病対象の低血糖リスクをさらに最小限に抑える可能性がある。GIPペプチドはまた、前臨床モデルにおいて、骨及び神経保護に有益な効果をもたらすことが示されており、この効果は、ヒトに置き換えられた場合には、高齢の糖尿病対象にとって有用であり得る(Ding et al.,J Bone Miner Res 2008,23,536;Verma et al.,Expert Opin Ther Targets 2018,22,615;Christensen et al.,J Clin Endocrinol Metab 2018,103,288)。加えて、前臨床データは、GIPは制吐効果を有し得、且つ前臨床動物モデルにおいて吐き気及び嘔吐を誘発するメカニズム(例えば、PYY)により引き起こされる嘔吐を予防し得ることを示す(米国特許出願公開第2018/0298070号明細書)。
【0006】
GLP-1(グルカゴン様ペプチド1)は、腸内上皮内分泌L細胞中で産生される30個のアミノ酸のペプチドである。
【0007】
GLP-1(7-36)のアミノ酸配列は、配列番号2で示される。
H2N-HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR-NH2
【0008】
Holst(Physiol.Rev.2007,87,1409)及びMeier(Nat.Rev.Endocrinol.2012,8,728)は、GLP-1受容体アゴニストが、空腹時及び食後の血糖値(FPG及びPPG)を減少させることにより、2型糖尿病(T2DM)の患者の血糖コントロールを改善することを示す。
【0009】
エキセンディン-4(配列番号3)は、アメリカドクトカゲ(Gila monster)(ヘロデルマ・サスペクタム(Heloderma suspectum))の唾液腺により産生される39個のアミノ酸のペプチドである。エキセンディン-4は、GLP-1受容体の活性化因子であるが、GIP受容体の活性化は非常に低く、グルカゴン受容体を活性化しないことが示されている(Finan et al.,Sci.Transl.Med.2013,5(209),151)。
【0010】
エキセンディン-4のアミノ酸配列は、配列番号3で示される。
H2N-HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS-NH2
【0011】
エキセンディン-4は、GLP-1(GLP-1(7-36)アミド:配列番号2)で観察される糖調節作用の多くを共有する。臨床試験及び非臨床試験により、エキセンディン-4は、いくつかの有益な抗糖尿病特性(例えば、インスリン合成及び分泌のグルコース依存性増強、グルカゴン分泌のグルコース依存性抑制、胃内容排出の遅延、摂食量及び体重の減少、並びにベータ細胞の質量及びベータ細胞機能のマーカーの増加を有していることが示されている。
【0012】
これらの効果は、糖尿病患者だけでなく、肥満に悩む患者にも有益であり得る。肥満の患者は、糖尿病、高血圧、高脂血症、心血管疾患、及び筋骨格疾患に罹るリスクが高い。
【0013】
GLP-1、グルカゴン、及びオキシントモジュリンと比較して、エキセンディン-4は、溶液中及び生理的条件下での溶解性及び安定性(例えば、DPP4又はNEP等の酵素による分解に対する酵素安定性)等の有益な物理化学的特性を有しており、その結果、インビトロでの作用の持続時間が長くなる。
【0014】
それにもかかわらず、エキセンディン-4はまた、14位でのメチオニン酸化(Hargrove et al.,Regul.Pept.2007,141,113)及び28位でのアスパラギンの脱アミド化及び異性化(国際公開第2004/035623A2号パンフレット)に起因して、化学的に不安定であることも示されている。従って、安定性は、14位でのメチオニンの置換、並びにアスパルチミド形成による分解を受けやすいことが知られている配列(特に、28位及び29位でのAsp-Gly又はAsn-Gly)の回避により改善される可能性がある。
【0015】
GLP-1受容体及びGIP受容体の共活性化
例えば、1つの調製物中でGLP-1の作用及びGIPの作用を組み合わせることによるGLP-1受容体及びGIP受容体の二重活性化により、市販のGLP-1アゴニストであるリラグルチドと比較して、T2DM及び肥満のマウスにおいて血糖値の大幅な減少、インスリン分泌の増加、及び体重の減少を伴う治療原理が得られ(例えば、Gault et al.,Clin Sci(Lond)2011,121,107)、この効果は、ヒトに置き換えられた場合には、肥満又は代謝障害の処置にとって有用であり得ることが説明されている。天然のGLP-1及びGIPは、同時注入後のヒトにおいて、相加的に相互作用することが証明されており、GLP-1単独と比較してインスリン分泌促進効果が大幅に増加している(Nauck et al.,J.Clin.Endocrinol.Metab.1993,76,912)。
【0016】
Finan et al.(Sci.Transl.Med.2013,5,151)、Frias et al.(Cell Metab.2017,26,343)、Portron et al(Diabetes Obes.Metab.2017,19,1446)、及びCoskun et al.(Mol.Metab.2018,18,3)は、1つの分子中でGLP-1の作用及びGIPの作用を組み合わせることによるGLP-1受容体及びGIP受容体の二重アゴニストを説明しており、LY3298176(Tirzepatide)が、臨床試験で研究された(Coskun et al.)。これは、数ある中でもGIP受容体を介したインスリン分泌の増加に起因する、抗糖尿病作用、体重減少、及び純粋なGLP-1アゴニストよりも優れた顕著な血糖降下効果を伴う治療原理につながる。
【0017】
エキセンディン-4の類似体として設計されており且つ脂肪酸側鎖で置換されている、GLP-1受容体及びGIP受容体の二重ペプチドアゴニストが、国際公開第2014/096145A1号パンフレット、同第2014/096150A1号パンフレット、同第2014/096149A1号パンフレット、及び同第2014/096148A1号パンフレット、;並びに国際公開第2011/119657A1号パンフレット、同第2016/111971A1号パンフレット、同第2016/131893A1号パンフレット、及び同第2020/023386A1号パンフレットで説明されている。エキセンディン-4に基づいており且つ遺伝子コードされていないアミノ酸により安定化されているGLP-1及びGIP受容体アゴニストもまた、国際公開第2015/086730A1号パンフレット、同第2015/086729A1号パンフレット、及び同第2015/086728A1号パンフレットで説明されている。
【0018】
特異的GIP受容体アゴニスト
GIP受容体アゴニストは、前臨床モデルにおいて、GLP-1類似体と共投与されると、血糖コントロール及び体重減少への選択的GLP-1Rアゴニストの有効性を増強する。GIP受容体及びGLP-1受容体の活性化の理想的な比率を特定可能にするために、例えば、患者の体重減少に対して最大限の効果を達成するために、及び各GPCR受容体アゴニストの理想的な用量で患者を処置するために、GIP受容体を選択的に活性化する化合物が必要とされている。
【0019】
GIP受容体に対する親和性が高く、且つGIP受容体に対するアゴニスト活性が高いが、GLP-1受容体に対する親和性が低下している、有益な物理化学的特性及び半減期の延長も有するペプチドを見出す試みがなされている。GIP自体は、水溶液中で凝集及び細動を起こしやすく、2分という非常に短い半減期を有する(Meier et al.,Diabetes 2004,53,654)。
【0020】
遺伝子コードされていないアミノ酸及び/又は脂質側鎖置換により安定化されている特異的GIP受容体アゴニストが、Tatarkiewicz et al.,Diabetes Obes.Metab.2014,16,75で説明されている。特異的な脂質側鎖置換を介して活性プロファイルが延長されたGIP受容体アゴニスト、及び治療薬としてのその使用が、国際公開第2012/055770号パンフレット及び同第2018/181864号パンフレットで説明されており、天然のヒトGIP配列に基づくGIP受容体アゴニストが、例えば国際公開第2019/211451号パンフレット等の特許出願で開示されている。エキセンディン-4配列に基づくGIP受容体アゴニスト、及びその潜在的な医療用途が、Piotr A.Mroz et al.,Molecular Metabolism,vol 20,2018,51-62、及び国際公開第2016/066744A2号パンフレット等の特許出願で開示されている。
【0021】
しかしながら、GLP-1受容体とは対照的にGIP受容体への結合における高い選択性は、これらのペプチドで達成されているとは開示されていない。GIP受容体の非常に高い活性化を達成するためには、高用量のGIPペプチドを投与しなければならない。高用量では、GLP-1受容体に対する結合親和性が低下していない場合には、GLP-1受容体へのこのペプチドの拮抗効果を排除し得ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そのため、溶解性が高く、溶液中で安定であり、且つインビボでの半減期が長い、高度に選択的な高いGIP受容体選択的ペプチドアゴニストが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明のペプチドが、GLP-1受容体と比較してGIP受容体に対する高い結合選択性を有しており、GIP受容体を選択的に活性化し、且つ良好な物理化学的特性(例えば、m-クレゾール又はフェノールの様な抗菌保存料の非存在下及び存在下において、水溶液中で高度に溶解性であり、並びに化学的に及び物理的に安定である)を有することを発見している。さらに、本発明のペプチドは、グルコース低下活性を有しており、且つインビボでの半減期が長い。
【0024】
第1の態様では、本発明のペプチドは、高い親和性でGIP受容体に結合する。さらなる態様では、本発明のペプチドは、少なくとも90倍の分割(split)で、GLP-1受容体と比べてGIP受容体に選択的に結合する。
【0025】
さらなる態様では、本発明のペプチドは、GIP受容体を活性化している。さらなる態様では、本発明のペプチドは、少なくとも1000倍の分割で、GLP-1受容体と比べてGIP受容体を活性化している。
【0026】
同様に、本発明のペプチドは、インビボでの薬物動態プロファイルが改善されている。
【0027】
同様に、本発明のペプチドは、水溶液中での物理的及び/又は化学的安定性が改善されている。
【0028】
同様に、本発明のペプチドは、単独で、又はGLP-1受容体アゴニストと組み合わせて、インビボで活性である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、及び他の適応症の処置における治療薬としてのペプチド化合物の使用に関連する問題は、そのインビボでの半減期が限られていることである。従って、ペプチド配列は、プロテアーゼに対する安定性を増強するために、遺伝子コードされていないアミノ酸の導入により安定化されており、及び/又はアルブミンとしての血漿タンパク質との相互作用を可能にして血漿中での滞留時間を延長するために、脂肪酸側鎖で置換されており、及び/又は循環中での活性化合物の持続レベルを可能にするためにデポー製剤で投与される。
【0030】
従って、新規の治療用分子の開発では、薬学的特性が改善されている(特に、プロテアーゼに対する安定性が増加している、及び/又は化学的な若しくは物理的な安定性が増加している、及び/又はインビボでの半減期が延長されている、及び/又はインビボでの効力/有効性が増加している)バリアントが必要とされている。
【0031】
追加の血糖降下療法(特に、フェノール系保存料の存在下でも好ましい物理化学的特性を示す治療薬による血糖降下療法)も必要とされている。
【0032】
同様に、GLP-1ベースの治療の共通の胃腸副作用(即ち、吐き気及び嘔吐)を回避するか又は軽減し、それにより忍容性が改善されている強力な血糖降下効果が達成される、血糖降下治療も、依然として必要とされている。
【0033】
上記で引用されている先行技術は、生理的pHで製剤化されるGIP受容体のペプチドアゴニストを開示している。本発明者らは、驚くべきことに、本発明の化合物が、フェノール系保存料の存在下でも好ましい物理化学的特性(例えば、GIP受容体に対する高い活性、GLP-1受容体と比較する高い選択性、半減期の延長、及び良好なインビボ活性と組み合わせて、高い溶解性、並びに良好な化学的及び物理的安定性)を示すことを発見した。
【0034】
天然のエキセンディン-4は、純粋なGLP-1受容体アゴニストであり、グルカゴン受容体に対する活性がなく、GIP受容体に対する活性が非常に低い。本発明の化合物は、天然のエキセンディン-4の構造に基づいているが、配列番号3と比較して、典型的には17又は26箇所の位置で異なっており、最小で14箇所の位置で異なっており、最大で28箇所の位置で異なっている。これらの差違は、GIP受容体でのアゴニスト活性の増強に寄与し、GLP-1受容体に対する親和性を低下させ、GLP-1受容体でのアゴニスト活性を消失させる。
【0035】
本発明の化合物の特徴的な構造モチーフは、下記である:1位でのTyr、2位でのAib、7位でのIle、10位でのLeu又はHol、12位でのIle、13位でのAib、15位でのAsp又はGlu、16位でのArg又はGlu、17位でのIle、Aib、又はGln、19位でのGln、20位でのGlu又はAib、27位でのLeu又はTba、28位でのAla、及び29位でのGln。
【0036】
他の置換の中でも、14位でのメチオニン又は18位でのAlaは、側鎖中に-NH2基を有するアミノ酸に置き換えられており、親油性残基(例えば、リンカーと組み合わされた脂肪酸)でさらに置換されている。これら2箇所の位置の内の1箇所での親油性残基の配置により、(実施例9で説明されているアルブミンの存在下又は非存在下で検出されるGIPRアゴニズムで見られるように)高いGIPRアゴニスト活性、良好な物理化学的特性、及びアルブミンに対する高い親和性を有するペプチドが得られる。1位でのTyr、2位でのAib、7位でのIle、12位でのIle、13位でのAib、19位でのGln、20位でのGlu又はAib、並びに27位でのLeu又はTba、28位でのAla、及び29位でのGlnによる、1、2、7、12、13、19、20、21位、並びに27、28、及び29位でのエキセンディン-4アミノ酸のさらなる置き換えにより、GLP-1受容体でのアゴニスト活性がない、GIP受容体での活性が高いペプチドが得られる。
【0037】
一般に、高いGIP受容体アゴニスト活性は、天然ヒトGIPホルモン(配列番号1)の連続ストレッチ(例えば、10~13位でのTyr-Ser-Ile-Ala、及び16~19位でのLys-Ile-His-Gln)を組み込むことによりペプチド実体に導入される これにより、物理的安定性が劣るペプチドが生成され、ThT結合アッセイ(方法で説明されている)でフィブリル化が引き起こされる可能性がある。驚くべきことに、10、13、16、20、及び21位で天然GIPホルモン由来のアミノ酸を含まない本発明のペプチドは、それぞれの実施例で示すようにフェノール系保存料の存在下でも非常に高いGIP受容体アゴニズム及び好ましい溶解性、並びに化学的及び物理的安定性を有するペプチドであることを発見した。
【0038】
特に、Iva、Abu等の分枝アミノ酸及び/若しくは脂肪族アミノ酸による6位のPheの置換、並びに/又はMph等の分枝アミノ酸で22位のPheを置き換えることにより、上記で説明した構造モチーフ(1位でのTyr、2位でのAib、7位でのIle、10位でのLeu又はHol、12位でのIle、13位でのAib、15位でのAsp又はGlu、16位でのArg又はGlu、17位でのIle、Aib、又はGln、19位でのGln、20位でのGlu又はAib、27位でのLeu又はTba、28位でのAla、及び29位でのGln)と共に、驚くべきことに、(方法-1000を超える分割GLP-1対GIPで説明されている結合アッセイで示すように)GIP受容体に対して非常に高い親和性を有しており且つGLP-1受容体に対して非常に低い親和性を有するペプチドが得られる。
【0039】
従って、本発明は、GIP受容体アゴニスト活性のみを有する新規のエキセンディン-4由来ペプチドを提供する。本発明のペプチドは、フェノール系抗菌保存料の存在下でも、生理的pH値(例えばpH7.4)で高い化学的安定性、溶解性、及び物理的安定性を示す。さらに提供されるのは、特許請求されているペプチドの医療的使用である。
【0040】
本発明は、式I
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-X18-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R2 I
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、アミノ酸残基Leuを表しているか、又はLysであり、ここで、-NH2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、又は
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
で官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile、Gln、及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X18は、アミノ酸残基Hisを表しているか、又はLysであり、ここで、-NH2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、又は
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
で官能化されており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、Glu、及びLysから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、Gly、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しているか、又はX30がLysである場合には、X31は、Pro-Ser-Ser-Aib-Lys-Ala-Pro-Pro-Pro-Lysであり、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
式中、
X14が官能化Lysである場合には、X18は、Hisであり、
X14がLeuである場合には、X18は、官能化Lysであり;
ここで、化合物
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His-Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R2は除外される、
化合物、又はその塩若しくは溶媒和物
に関する。
【0041】
選択されたLys側鎖リンカー基は、17-カルボキシ-ヘプタデカノイル及び19-カルボキシノナデカノイルから選択される親油性部分に共役したガンマ-グルタミン酸(gGlu)、グリシン(Gly)、N-メチル-グリシン(N-MeGly)、及び8-アミノ-3,6-ジオキサ-オクタン酸(AEEA)基から選択される1、2、又は3個のアミノ酸リンカー基を含む。
【0042】
本発明の化合物は、GIP活性を有する。この用語は、GIP受容体に結合して、インスリン分泌促進作用、又は当該技術分野で既知の他の生理学的効果を生じるシグナル伝達経路を開始する能力を指す。
例えば、本発明の化合物を、本明細書の実施例9~11で示されている方法及び結果で説明されているアッセイを使用して、GIP受容体親和性又は活性に関して試験し得る。
【0043】
本発明の化合物は、方法で説明されているアッセイシステム(HEK細胞アゴニズム)において細胞内cAMP形成を刺激可能であるという観察により決定した場合に、選択的GIP受容体アゴニストである。
【0044】
別の実施形態によれば、本発明の化合物(特に、14又は18位でのリシンが親油性残基でさらに置換されている)は、アルブミンなしでの実施例9で説明されているそれぞれのアッセイシステム-HEK細胞アゴニズムにおいて、GIP受容体での10pM(即ち、EC50≦10pM)、より好ましくは5pM(即ち、EC50≦5pM)、より好ましくは1pM(即ち、EC50≦1.0pM)、さらにより好ましくは0.36pM(即ち、EC50≦0.36pM)の、アルブミンなしでの実施例の9の方法を使用して決定した活性を少なくとも示す。
【0045】
さらに、本発明の化合物は、方法で説明されているアッセイシステムにおいてヒト脂肪細胞中での細胞内cAMP形成を刺激可能であるという観察により決定した場合に、GIP受容体アゴニストである。
【0046】
別の実施形態によれば、本発明の化合物(特に、14又は18位でのリシンが親油性残基でさらに置換されている)は、実施例10で説明されているそれぞれのアッセイシステム-ヒト脂肪細胞アゴニズムにおいて、GIP受容体での10nM(即ち、EC50≦10nM)、より好ましくは8nM(即ち、EC50≦8.0nM)、より好ましくは4.6nM(即ち、EC50≦4.6nM)、さらにより好ましくは2nM(即ち、EC50≦2.0nM)の、実施例10の方法を使用して決定した活性を少なくとも示す。
【0047】
さらなる態様では、本発明の化合物は、ヒトGLP-1受容体と比べてヒトGIP受容体の活性化において選択的である。
【0048】
別の実施形態によれば、本発明の化合物(特に、14又は18位でのリシンが親油性残基でさらに置換されている)は、実施例9で説明されているそれぞれのアッセイシステム-HEK細胞アゴニズムにおいて、100pM超(即ち、EC50>100pM)、より好ましくは1000pM超(即ち、EC50>1000pM)、より好ましくは5000pM(即ち、EC50>5000pM)、さらにより好ましくは10000pM(即ち、EC50>10000pM)の、アルブミンなしで実施例9の方法を使用して決定した場合のEC50で、GLP-1受容体での活性を示さないか、又は弱い活性を示す。
【0049】
本発明の化合物は、方法で説明されているアッセイシステムにおいてGIP受容体から[125I]-GIPを置き換え可能であるという観察により決定した場合に、GIP受容体に結合する。
【0050】
本発明の化合物は、10nM以下(即ち、IC50≦10nM)、より好ましくは8nM以下(即ち、IC50≦8.0nM)、より好ましくは5nM以下(即ち、IC50≦5.0nM)、より好ましくは3.13nM以下(即ち、IC50≦3.13nM)、さらにより好ましくは1nM以下(即ち、IC50≦1.0nM)のIC50で、実施例11の方法を使用して決定した場合に、hGIP受容体に結合する。
【0051】
さらに、本発明の化合物は、方法で説明されているアッセイ系において、GLP-1受容体から[125I]GLP-1を置き換え得るという観察により決定した場合に、GLP-1受容体にわずかに結合する。
【0052】
本発明の化合物は、10nM超のIC50(即ち、IC50>10nM)、より好ましくは50nM超のIC50(即ち、IC50>50nM)、さらにより好ましくは100nM超のIC50(即ち、IC50>100nM)で、実施例11の方法を使用して決定した場合にhGLP-1受容体に弱く結合する。
【0053】
さらなる態様では、本発明の化合物は、ヒトGLP-1受容体よりもヒトGIP受容体に選択的に結合する。
【0054】
「活性」という用語は、本明細書で使用される場合、好ましくは、ヒトGIP受容体又はヒトGLP-1受容体を活性化する化合物の能力を指しており、特に、GIP受容体を選択的に活性してGLP-1受容体を活性化しない能力を指す。より好ましくは、「活性」という用途は、本明細書で使用される場合、細胞内cAMP形成を刺激する化合物の能力を指す。「相対活性」という用語は、本明細書で使用される場合、別の受容体アゴニスト又は別の受容体と比較して、ある特定に比率である受容体を活性化する化合物の能力を指すと理解されている。(例えば、cAMPレベルを測定することによる)アゴニストによる受容体の活性化は、本明細書(例えば、実施例)で説明されているように決定される。時には、「活性」の代わりに、「効力」又は「インビトロ効力」という用語にも言及され得る。従って、「効力」は、細胞ベースのアッセイにおけるGLP-1又はGIPの受容体を活性化する化合物の能力の尺度である。数値的には、効力は、濃度反応実験において反応の最大半量増加(例えば、細胞内cAMPの形成)を誘導する化合物の有効濃度のことである「EC50値」又は「EC50値」として表される。
【0055】
さらに特定の実施形態では、本発明の誘導体は、ヒトGLP-1受容体よりもGIP受容体を選択的に活性化し得る。「選択的に」という用語は、GLP-1受容体を超えるGIP受容体の活性化に関連して使用される場合には、例えば方法で説明されている受容体機能の効力アッセイにおいてインビボで測定され、EC50値で比較される場合に、GLP-1受容体よりもGIP受容体への少なくとも10倍(例えば、少なくとも50倍、少なくとも500倍、又は少なくとも1000倍)の良好な効力を示す誘導体を指す。
【0056】
本発明の化合物は、好ましくは、アルブミンなしでの実施例9の方法を使用して決定したhGIP受容体に対するEC50が10pM以下であり、好ましくは5pM以下であり、より好ましくは1pM以下であり、さらにより好ましくは0.36pM以下であり、且つhGLP-1受容体に対するEC50が100pM以上であり、好ましくは1000pM以上であり、より好ましくは5000pM以上であり、さらにより好ましくは10000pM以上である。hGLP-1受容体及びhGIP受容体に対するEC50は、本明細書の方法で説明されているように決定され得、実施例9で説明されている結果を得るために使用される。
【0057】
式Iの化合物は、GIP受容体では高い活性を示すが、GLP-1受容体では活性を示さない。GIP受容体での高い活性は、血糖コントロール及び体重減少に対する有効性の増強、及び胃腸障害の様なGLP-1関連副作用の可能性の減少が意図されている。
【0058】
「結合する」という用語は、本明細書で使用される場合、好ましくは、ヒトGIP受容体又はヒトGLP-1受容体に結合する化合物の能力を指しており、特に、GIP受容体に選択的に結合する能力を指している。時には、「結合する」の代わりに「親和性」という用語も言及され得る。より好ましくは、「結合する」という用語は、本明細書で使用される場合、結合アッセイにおいてそれぞれの受容体から放射能標識化合物(例えば、方法で説明されており且つ実施例で示されているGIP受容体からの[125I]GIP)を置き換える化合物の能力を指している。数値的には、結合するは、用量反応実験において受容体から放射能標識化合物の半分を置き換える化合物の有効濃度のことである「IC50値」として表される。
【0059】
本発明の化合物は、好ましくはhGIP受容体に対するIC50が10nM以下であり、好ましくは8nM以下であり、より好ましくは5nM以下であり、より好ましくは3.13nM以下であり、さらにより好ましくは1nM以下であり、且つhGLP-1受容体に対するIC50が10nM以上であり、好ましくは50nM以上であり、より好ましくは100nM以上である。hGLP-1受容体及びhGIP受容体に対するIC50は、本明細書の方法で説明されているように、且つ実施例11で説明されている結果を得るために使用されるように決定され得る。
【0060】
一実施形態では、本発明の化合物は、生理的pH値(例えば、pH6~8の生理的範囲、特に、25℃でpH7.0又はpH7.4)で高い溶解性を有しており、別の実施形態では少なくとも1mg/mlの溶解性を有しており、別の実施形態では少なくとも5mg/mlの溶解性を有しており、特定の実施形態では少なくとも10mg/mlの溶解性を有している。
【0061】
一実施形態では、本発明の化合物は、フェノール又はm-クレゾールの様な抗菌保存料の存在下での生理的pH値(例えば、pH6~8の生理的範囲、特に25℃でpH7.0又はpH7.4)で高い溶解性を有しており、別の実施形態では少なくとも1mg/mlの溶解性を有しており、別の実施形態では少なくとも5mg/mlの溶解性を有しており、特定の実施形態では少なくとも10mg/mlの溶解性を有している。
【0062】
さらに、本発明の化合物は、溶液中で保存された場合に、好ましくは、高い化学的安定性を有する。安定性を決定するための好ましいアッセイ条件は、pH7~8の生理的範囲(特にpH7.4)での溶液中における25℃又は40℃での28日にわたる保存である。本発明の化合物の安定性は、方法で説明されているクロマトグラフィー分析により決定される。好ましくは、pH7.4での溶液中における40℃での28日後に、純度損失は、15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらにより好ましくは8%以下である。
【0063】
さらに、本発明の化合物は、フェノール又はm-クレゾールの様な抗菌保存料の存在下で溶液中に保存された場合に、好ましくは、高い化学的安定性を有する。安定性を決定するための好ましいアッセイ条件は、pH7~8の生理的範囲(特にpH7.4)での溶液中における25℃又は40℃での28日わたる保存である。本発明の化合物の安定性は、方法で説明されているクロマトグラフィー分析により決定される。好ましくは、pH7.4での溶液中における40℃での28日後に、純度損失は、15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、さらにより好ましくは8%以下である。
【0064】
さらに、本発明の化合物は、溶液中で保存された場合に、好ましくは、高い物理的安定性を有する。安定性を決定するための好ましいアッセイ条件は、pH7~8の生理的範囲(特にpH7.4)での溶液中における25℃又は40℃での28日わたる保存である。
【0065】
一実施形態では、本発明の化合物は、方法で説明されているThTアッセイによりアッセイした場合に、5時間にわたる、より好ましくは10時間にわたる、より好ましくは20時間にわたる、より好ましくは30時間にわたる、より好ましくは40時間にわたる、さらにより好ましくは45時間にわたる、37℃での、例えば、pH7~8の生理的範囲(特に、pH7.4)における、3mg/mlの濃度での蛍光プローブとしてのチオフラビンTによる蛍光強度の増加を示さない。
【0066】
一実施形態では、本発明の化合物は、方法で説明されているThTアッセイによりアッセイした場合に、5時間にわたる、より好ましくは10時間にわたる、より好ましくは20時間にわたる、より好ましくは30時間にわたる、より好ましくは40時間にわたる、さらにより好ましくは45時間にわたる、37℃での、例えば、pH7~8の生理的範囲(特に、pH7.4)における、フェノール又はm-クレゾールの様な抗菌保存料の存在下での、3mg/mlの濃度での蛍光プローブとしてのチオフラビンTによる蛍光強度の増加を示さない。
【0067】
一実施形態では、本発明の化合物は、中性エンドペプチダーゼ(NEP)及びジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)による開裂に対してより耐性を示しており、その結果、天然GIP又はエキセンディン-4と比較した場合に、インビボでの半減期及び作用時間が長くなる。
【0068】
一実施形態では、本発明の化合物は、ヒトアルブミンに強く結合し、その結果、天然ヒトGIPと比較した場合に、インビボでの半減期及び作用時間が長くなる。
【0069】
本発明の化合物の薬物動態特性を、薬物動態(PK)試験においてインビボで決定し得る。そのような試験を行なって、医薬品化合物が体内でどのように吸収され、分布し、そして排泄されるかを評価し、且つこれらのプロセスが経時的に体内での化合物の濃度にどのような影響を及ぼすかを評価する。医薬品開発の発見及び前臨床段階では、マウス、ラット、サル、イヌ、又はブタ等の動物モデルを使用して、この特性評価を実施し得る。これらのモデルのいずれかを使用して、本発明の誘導体の薬物動態特性を試験し得る。そのような試験では、動物に、典型的には、薬物の単回用量を関連製剤の静脈内(i.v.)又は皮下(s.c.)で投与する。投与後の所定の時点で血液サンプルを採取し、サンプルを、関連の定量アッセイにより薬物の濃度に関して分析する。この測定値に基づいて、試験の化合物の時間-血漿濃度プロファイルをプロットし、データのいわゆるノンコンパートメント薬物動態解析を実施する。
【0070】
一実施形態では、薬物動態特性を、例えば、本明細書の実施例12で説明されているように、i.v.投与後及びs.c.投与後のミニブタにおけるインビボでの終末相半減期(T1/2)として決定し得る。
特定の実施形態では、ミニブタにおける終末相半減期は、少なくとも24時間であり、好ましくは少なくとも40時間であり、さらにより好ましくは少なくとも60時間である。
【0071】
一実施形態では、薬物動態特性を、i.v.投与後及びs.c.投与後のカニクイザルにおけるインビボでの終末相半減期(T1/2)として決定し得る。
特定の実施形態では、サルにおける終末相半減期は、少なくとも24時間であり、好ましくは少なくとも40時間であり、さらにより好ましくは少なくとも50時間である。
【0072】
一実施形態では、本発明の化合物は、単独で、又はGLP-1受容体アゴニストとの組み合わせで、インビボで活性である。
【0073】
例えば、C57Bl/6マウスにおいて本明細書の実施例13及び14で説明されているように、耐糖能への本発明の化合物の効果を、経口又は腹腔内(i.p.)耐糖能試験(oGTT又はipGTT)を実施することにより、マウスのインビボ実験で決定し得る。この試験を、半絶食動物への経口又はi.p.でのグルコース負荷の投与、及びその後の血糖測定により実施する。
マウスモデル(例えば、DIOマウス)を使用して、体重、摂食量、及び耐糖能への効果も評価し得る。
【0074】
一実施形態では、本発明の化合物は、ペプチド(即ち、カルボキサミド結合)で連結された31又は39個のアミノカルボン酸(特に、α-アミノカルボン酸)の直鎖配列であるペプチド部分を含む。
【0075】
一実施形態は、式II
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-X22-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-X30-Gly-R2 II
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X6は、Phe及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、及び
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
から選択される基で官能化されており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であるか;
又は式III
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-His-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R2 III
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、Glu、及びLysから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しているか、又はX30がLysである場合には、X31は、Pro-Ser-Ser-Aib-Lys-Ala-Pro-Pro-Pro-Lysであり、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であるか;
又は式IV
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-Leu-X15-X16-X17-X18-Gln-Aib-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-X31-R2 IV
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X15は、Asp及びGluから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Gln及びIleから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X18は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、-{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X31は、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、及びPro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しており、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
ここで、化合物
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R2は除外される。
【0076】
本発明の一実施形態は、式II
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-X22-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-X30-Gly-R2 II
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X6は、Phe及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、
{AEEA}2-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-gGlu-C20OH、
{AEEA}3-gGlu-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C18OH、
{AEEA}2-{gGlu}2-C20OH、
{Gly}3-gGlu-C18OH、及び
{N-MeGly}3-gGlu-C18OH
から選択される基で官能化されており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0077】
本発明の一実施形態は、式III
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-His-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R2 III
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、Glu、及びLysから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しているか、又はX30がLysである場合には、X31は、Pro-Ser-Ser-Aib-Lys-Ala-Pro-Pro-Pro-Lysであり、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
ここで、化合物
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R2は除外される。
【0078】
本発明の一実施形態は、式IV
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-Leu-X15-X16-X17-X18-Gln-Aib-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-X31-R2 IV
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X15は、Asp及びGluから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Gln及びIleから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X18は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、-{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X31は、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、及びPro-Ser-Ser-Gly-Glu-Pro-Pro-Pro-Serから選択されるアミノ酸残基を表しており、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0079】
式Iの化合物の一実施形態では、R1は、Hである。
式IIの化合物の一実施形態では、R1は、Hである。
式IIIの化合物の一実施形態では、R1は、Hである。
式IVの化合物の一実施形態では、R1は、Hである。
【0080】
式Iの化合物の一実施形態では、R2は、NH2である。
式IIの化合物の一実施形態では、R2は、NH2である。
式IIIの化合物の一実施形態では、R2は、NH2である。
式IVの化合物の一実施形態では、R2は、NH2である。
【0081】
式Iの化合物の一実施形態では、R2は、OHである。
式IIの化合物の一実施形態では、R2は、OHである。
式IIIの化合物の一実施形態では、R2は、OHである。
式IVの化合物の一実施形態では、R2は、OHである。
【0082】
さらなる実施形態は、式III
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-X6-Ile-Ser-Asp-X10-Ser-Ile-Aib-X14-X15-X16-X17-His-Gln-X20-Glu-X22-Ile-X24-Trp-X26-X27-Ala-Gln-X30-X31-R2 III
(式中、
R1は、H又はC1~C4-アルキルであり、
X6は、Phe、Iva、Abu、及びMvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X10は、Leu及びHolから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X14は、Lysであり、ここで、-NH2側鎖基は、{AEEA}2-gGlu-C18OHで官能化されており、
X15は、Glu及びAspから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X16は、Glu及びArgから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X17は、Ile及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X20は、Glu及びAibから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X22は、Phe及びMphから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X24は、Glu及びGlnから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X26は、Leu及びIvaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X27は、Leu及びTbaから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X30は、Gly、Arg、及びGluから選択されるアミノ酸残基を表しており、
X31は、アミノ酸残基Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Serを表しており、
R2は、NH2又はOHである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物であり;
ここで、化合物
R1-HN-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Leu-Ser-Ile-Aib-X14-Asp-Arg-Ile-His Gln-X20-Glu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Leu-Ala-Gln-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-R2は除外される、
化合物、又はその塩若しくは溶媒和物に関する。
【0083】
14又は18位でのLys側鎖基の具体例は、下記の表1で列挙されており、下記から選択される:
[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル-/N-(17-カルボキシ-1-オキソヘプタデシル)-L-γ-グルタミル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル、
[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル-/N-(19-カルボキシ-1-オキソノナデシル)-L-γ-グルタミル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]アセチル-、
[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル-、
[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ブタノイル]アミノ]得オキシ]-エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル-、
[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(19-カルボキシノナデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]ブタノイル]アミノ]エトキシ]-エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル-、
[2-[[2-[[2-[[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイル-アミノ)ブタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]-、
[2-[メチル-[2-[メチル-[2-[メチル-[(4S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシ-ヘプタデカノイルアミノ)ブタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]。
【0084】
さらに好ましいのは、立体異性体であり、特に、これらの基の鏡像異性体(S-鏡像異性体又はR-鏡像異性体のいずれか)である。
表1中の「R」という用語は、ペプチド骨格でのLysのイプシロンアミノ基での付着部位を意味することが意図されている。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表1Aは、使用される非天然アミノ酸の定義を示す。
【0089】
【0090】
本発明の一実施形態は、式II
(式中、
X20は、Gluである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0091】
本発明の一実施形態は、式II
(式中、
X20は、Aibである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0092】
本発明の一実施形態は、式II
(式中、
X6は、Ivaである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0093】
本発明の一実施形態は、式II
(式中、
X6は、Pheである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0094】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X6は、Iva、Abu、又はMvaである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0095】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X6は、Pheである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0096】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X20は、Aibである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0097】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X20は、Gluである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0098】
本発明の一実施形態は、式II
(式中、
X22は、Mphである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0099】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X22は、Mphである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0100】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X15は、Glu20であり、
X16は、Glu又はArgである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0101】
本発明の一実施形態は、式II
(式中、
X30は、Glu又はArgである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0102】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X30は、Glu又はArgである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0103】
本発明の一実施形態は、式III
(式中、
X10は、Holである)
の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物である。
【0104】
式Iの化合物の具体例は、配列番号4~18の化合物、及びこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0105】
式Iの化合物の具体例は、配列番号19~35の化合物、及びこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0106】
式Iの化合物の具体例は、配列番号36~38の化合物、及びこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0107】
式Iの化合物の具体例は、配列番号19、及び21~35の化合物、並びにこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0108】
式Iの化合物の具体例は、配列番号4~14の化合物、及びこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0109】
式Iの化合物の具体例は、配列番号15~18の化合物、及びこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0110】
式Iの化合物の具体例は、配列番号19、21、22、及び27~35の化合物、並びにこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0111】
式Iの化合物の具体例は、配列番号20、及び23~26の化合物、並びにこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0112】
式Iの化合物の具体例は、配列番号15~18、20、及び23~26の化合物、並びにこれらの塩若しくは溶媒和物である。
【0113】
式Iの化合物の具体例は、配列番号6の化合物、及びその塩若しくは溶媒和物である。
【0114】
式Iの化合物の具体例は、配列番号12の化合物、及びその塩若しくは溶媒和物である。
【0115】
式Iの化合物の具体例は、配列番号19の化合物、及びその塩若しくは溶媒和物である。
【0116】
式Iの化合物の具体例は、配列番号20の化合物、及びその塩若しくは溶媒和物である。
【0117】
式Iの化合物の具体例は、配列番号36の化合物、及びその塩若しくは溶媒和物である。
【0118】
さらなる実施形態は、式Iの化合物に関し、
このペプチド性化合物は、HEK細胞アゴニストアッセイにおいて、GIP受容体でのヒトGIPの活性を少なくとも有する。
【0119】
さらなる実施形態は、式Iの化合物に関し、
このペプチド性化合物は、HEK細胞アゴニストアッセイにおいて、GLP-1受容体で、GLP-1(7-36)-アミドの活性と比較して10%未満の活性を示す。
【0120】
さらなる実施形態は、式Iの化合物に関し、
このペプチド性化合物は、ヒト脂肪細胞アゴニストアッセイにおいて、GIP受容体でのヒトGIPの活性を少なくとも有する。
【0121】
さらなる実施形態は、式Iの化合物に関し、
このペプチド性化合物は、HEK細胞結合アッセイにおいて、hGIP受容体に対するヒトGIPの結合親和性を少なくとも有する。
【0122】
さらなる態様では、本発明は、担体との混合物で、本明細書で説明されている本発明の化合物、又はその塩若しくは溶媒和物を含む組成物に関する。
【0123】
本発明はまた、医薬品としての使用(特に、本明細書で説明されている状態の処置)のための本発明の化合物の使用にも関する。
【0124】
本発明はまた、組成物であって、薬学的に許容される組成物であり、担体は、薬学的に許容される担体である、組成物にも関する。
【0125】
本発明のペプチド性化合物
アミノ酸は、本明細書では、その名称により称されているか、その一般に既知の3文字記号により称されているか、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨されている1文字記号により称されている。従って、本発明のアミノ酸配列は、天然に存在するアミノ酸の従来の1文字コード及び3文字コード、並びにα-アミノイソ酪酸に関するAib等の他のアミノ酸の一般に認められた3文字コードを含む。
【0126】
本発明のペプチド性化合物は、ペプチド(即ち、カルボキサミド結合)により連結されたアミノカルボン酸の直鎖骨格を含む。好ましくは、このアミノカルボン酸は、別途指示されない限り、例えばD-アラニン(d-Ala又はdla)として、α-アミノカルボン酸であり、より好ましくは、L-α-アミノカルボン酸である。このペプチド化合物は、好ましくは、39個のアミノカルボン酸の骨格配列を含む。
【0127】
本発明のペプチド性化合物は、官能化アミノ酸を含み得、例えば、N-メチル化アミノ酸(例えば、N-Me-L-チロシン(N-MeTyr))を含み得る。
【0128】
ペプチド部分(式I、II、及びIII)内のアミノ酸は、従来のN末端からC末端への方向で、1~39に連続的に番号付けられていると考えられ得る。ペプチド部分内の「位置」への言及は、天然のエキセンディン-4内及び他の分子内の位置への言及と同様に、適切に構成されるべきであり、例えば、エキセンディン-4内では、1位にHisが存在しており、2位にGlyが存在しており、・・・14位にMetが存在しており、・・・且つ39位にSerが存在している。
【0129】
ペプチド合成
当業者は、ペプチドを調製するための様々な異なる方法を知っている。これらの方法として、合成アプローチ及び組換え遺伝子発現が挙げられるが、これらに限定されない。そのため、ペプチドを調製する1つの方法は、溶液中での又は固体支持体上での合成、並びにそれに続く単離及び精製である。ペプチドを調製する別の方法は、ペプチドをコードするDNA配列が導入されている宿主細胞中での遺伝子発現である。或いは、この遺伝子発現を、細胞系を利用することなく達成し得る。上記で説明されている方法をまた、任意の方法で組み合わせ得る。
【0130】
本発明の化合物を調製するための好ましい方法は、適切な樹脂上での固相合成である。固相ペプチド合成は、十分に確立された方法論である(例えば、Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.,1984;E.Atherton and R.C.Sheppard,Solid Phase Peptide Synthesis.A Practical Approach,Oxford-IRL Press,New York,1989を参照されたい)。固相合成は、N末端が保護されたアミノ酸のカルボキシ末端を、開裂可能なリンカーを有する不活性固体支持体に付着させることにより開始される。この固体支持体は、最初のアミノ酸のカップリングを可能にする任意のポリマーであり得、例えば、カルボキシ基(若しくはRink樹脂の場合はカルボキサミド)の樹脂への結合が酸に敏感な(Fmoc戦略が使用される場合)、トリチル樹脂、クロロトリチル樹脂、Wang樹脂、又はRink樹脂であり得る。ポリマー支持体は、ペプチド合成中にα-アミノ基を脱保護するために使用される条件下で安定でなければならない。
【0131】
N末端が保護された最初のアミノ酸を固体支持体に共役させた後、このアミノ酸のα-アミノ保護基を除去する。次いで、残余の保護されたアミノ酸を、適切なアミドカップリング試薬(例えば、BOP、HBTU、HATU、又はDIC/HOBt/HOAt(BOP、HBTU、及びHATUは、第3級アミン塩基と共に使用される))を使用して、ペプチド配列により表される順に、次々に共役させるか、又は予め形成されたジペプチド、トリペプチド、若しくはテトラペプチドと共役させるか、又は修飾された側鎖を有するアミノ酸構成要素(例えば、N-アルファ-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)-N-イプシロン-(N-アルファ’-パルミトイル-L-グルタミン酸アルファ’-t-ブチルエステル)-L-リシン)と共役させる。或いは、遊離したN末端を、アミノ酸以外の基(例えば、カルボン酸等)で官能化させ得る。
【0132】
通常、アミノ酸の反応性側鎖基は、適切な保護基で保護されている。この保護基は、所望のペプチドが組立てられた後に除去される。この保護基は、同一条件下での樹脂からの所望の生成物の開裂と同時に除去される。保護基及び保護基の導入手順は、Protective Groups in Organic Synthesis,3d ed.,Greene,T.W.and Wuts,P.G.M.,Wiley & Sons(New York:1999)で見出され得る。
【0133】
場合によっては、他の側鎖保護基は無傷のままで選択的に除去され得る側鎖保護基を有することが望ましい可能性がある。この場合には、遊離した官能基が選択的に官能化され得る。例えば、リシンを、非常に求核性の塩基(例えば、DMF(ジメチルホルムアミド)中の4%ヒドラジン)に対して不安定なivDde([1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル)保護基で保護し得る(S.R.Chhabra et al.,Tetrahedron Lett.39,(1998),1603)。そのため、N末端アミノ基及び全ての側鎖官能基が、酸に不安定な保護基で保護されている場合には、DMF中の4%ヒドラジンを使用してivDde基を選択的に除去し得、次いで、対応する遊離アミノ基を、例えばアシル化により、さらに修飾し得る。
【0134】
例えば、リシンを、ジクロロメタン中の非常に弱い酸(例えば、酢酸)及びトリフルオロエタノール)に対して不安定なMmt[(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル]保護基(G.M.Dubowchik et al.,Tetrahedron Lett.1997,38(30),5257)で保護し得る。そのため、N末端アミノ基及び全ての側鎖官能基が、強酸にのみ不安定な保護基で保護されている場合には、酢酸及びトリフルオロエタノールのジクロロメタン中の混合物(1:2:7)を使用してMmt基を選択的に除去し得、次いで、対応する遊離アミノ基を、例えばアシル化により、さらに修飾し得る。
【0135】
或いは、リシンを、保護されたアミノ酸と共役させ得、次いで、このアミノ酸のアミノ基を脱保護させ得、得られた別の遊離アミノ基を、アシル化させ得るか、又はさらなるアミノ酸に付着させ得る。或いは、側鎖(表1で説明されている)を、カップリングパートナーとして、予め官能基されている構成要素(例えば、N-アルファ-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)-N-イプシロン-(N-アルファ’-パルミトイル-L-グルタミン酸アルファ’-t-ブチルエステル)-L-リシン、又はFmoc-L-Lys[{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu]-OH[=(2S)-6-[[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-アミノ)ヘキサン酸(CAS登録番号1662688-20-1)])を使用するペプチド合成中に、リシンと共に導入し得る。
【0136】
最後に、樹脂からペプチドを開裂させる。このことを、Kingのカクテルを使用して達成し得るか(D.S.King,C.G.Fields,G.B.Fields,Int.J.Peptide Protein Res. 36,1990,255-266)、又は当業者に既知の同様の開裂カクテルを使用して達成し得る。例えば、EDTを、DODTに置き換え得るか、又はTIS、水、及びTFAの混合物を使用し得る。次いで、原料を、必要に応じてクロマトグラフィー(例えば、分取RP-HPLC)により精製し得る。
【0137】
効力
本明細書で使用される場合、「効力」又は「インビトロ効力」という用語は、細胞ベースのアッセイにおける、化合物のGLP-1、GIP、又はグルカゴンの受容体を活性化する能力の尺度である。数値的には、効力は、用量反応実験において反応の最大半量増加(例えば、細胞内cAMPの形成)を誘導する化合物の有効濃度のことである「EC50値」として表される。
【0138】
治療的使用
ペプチド性インクレチンホルモンGLP-1及びGIPは、食物に反応して腸内分泌細胞により分泌され、食事刺激性インスリン分泌の最大70%を占める。GIPの受容体は、末梢組織(例えば、膵島、脂肪組織、胃、小腸、心臓、骨、肺、腎臓、精巣、副腎皮質、下垂体、内皮細胞、気管、脾臓、胸腺、甲状腺、及び脳)で広く発現されている。インクレチンホルモンとしての生物学的機能と一致して、ヒトでは、脾臓β細胞がGIPの受容体を最も多く発現している。
T2DMの患者ではGIP受容体媒介性シグナル伝達が損なわれる可能性があるといういくつかの臨床上での証拠があるが、GIP作用の障害は、可逆的であることが分かっており、糖尿病状態の改善によって回復される可能性がある。注目すべきことに、GIPによるインスリン分泌の促進は、厳密にグルコース依存性であり、そのため、低血糖のリスクが低いフェイルセーフメカニズムが確保されている。
【0139】
脾臓ベータ細胞レベルでは、GIPは、グルコース感受性、新生、増殖、プロインスリンの転写、及び肥大を促進し、且つ抗アポトーシスも促進することが分かっている。
【0140】
膵臓を超えた末梢組織でのさらなるGIP作用は、骨形成の増加及び骨吸収の減少、並びに骨粗鬆症、及びアルツハイマー病の様な認知障害の処置に有益である可能性がある神経保護効果を含む。
【0141】
GLP-1及びGIPは抗糖尿病効果が知られており、GLP-1は食物摂取抑制効果が知られていることから、これら2種のホルモンの活性を組み合わせることにより、メタボリックシンドローム(特に、その構成要素である糖尿病及び肥満)の処置のための強力な薬物を得ることができると考えられる。GLP-1及びGIP受容体の両方を刺激することにより、相加的な又は相乗的な抗糖尿病効果を得ることが期待される。
【0142】
そのため、適切なアゴニスト単独で、又はGLP-1Rアゴニストに加えて適切なアゴニストで、GIP受容体を標的にすることにより、糖尿病等の代謝障害の処置に魅力的なアプローチが提供される。
【0143】
従って、本発明の化合物を、耐糖能障害、インスリン抵抗性、前糖尿病、空腹時グルコース増加(高血糖)、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、冠状動脈心疾患、末梢動脈疾患、脳卒中、又はこれらの個々の疾患成分の任意の組み合わせの処置に使用し得る。
【0144】
加えて、本発明の化合物を、食欲、摂食、及びカロリー摂取のコントロール、体重増加の予防、体重減少の促進、過剰体重の減少、並びに病的肥満等の肥満の全体的な処置に使用し得る。
【0145】
本発明の化合物はGIP受容体のアゴニストであり、糖尿病及び肥満の同時処置を可能にすることにより、メタボリックシンドロームを標的とする臨床上の必要性に対処するための治療的有用性を提供し得る。
【0146】
本発明の化合物で処置される可能性があるさらなる疾患状態及び健康状態は、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、及び肥満誘発性睡眠時無呼吸である。
【0147】
これら状態全ては、肥満と直接的に又は間接的に関連している可能性があるが、本発明の化合物の効果は、その全体又は一部が体重に対する効果を媒介し得るか、又は体重とは無関係であり得る。
【0148】
本発明の化合物は、(同一の医薬製剤の一部として、又は別個の製剤として)GLP-1受容体アゴニストと組み合わせて投与される場合には、血糖コントロールの改善及び体重の減少に特に有効であり得る。
【0149】
さらに、処置される疾患は、アルツハイマー病若しくはパーキンソン病等の神経変性疾患、又は上記で説明されている他の変性疾患であり得る。
【0150】
本発明の化合物をまた、糖尿病関連の骨粗鬆症、又は骨折のリスクの増加等の骨粗鬆症に関連する疾患、障害、又は状態の内のいずれかの処置及び/又は予防にも使用し得る(N.B.Khazai et al,Current Opinion in Endocrinology,Diabetes and Obesity 2009,16(6),435)。
【0151】
一実施形態では、本化合物は、高血糖、2型糖尿病、及び/又は肥満の処置又は予防で有用である。
【0152】
本発明の化合物は、患者の血糖値を低下させる能力、及び/又はHbA1cレベルを低下させる能力を有する。本発明の化合物のこれらの活性を、当業者に既知の動物モデルで評価し得、本明細書の方法及び実施例で説明されている。
【0153】
本発明の化合物は、患者の体重を減少させる能力を有し得る。本発明の化合物のこの活性を、当業者に既知の動物モデルで評価し得る。
【0154】
本発明の化合物は、脂肪肝、好ましくは、非アルコール性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置又は予防で有用であり得る。本発明の化合物のこの活性を、当業者に既知の動物モデルで評価し得る。
【0155】
本発明の化合物は、患者の吐き気を軽減して嘔吐を回避する能力を有し得る。本発明の化合物のこの活性を、当業者に既知の動物モデルで評価し得る。
【0156】
「処置する(treat)」又は「処置する(treating)」は、疾患若しくは障害を除去するために;対象の疾患若しくは障害を抑止するか若しくは遅延させるために;対象の新たな疾患若しくは障害の発症を阻害するか若しくは遅延させるために;現在若しくは過去に疾患若しくは障害を患っている対象の症状及び/若しくは再発の頻度若しくは重症度を低下させるために;並びに/又は対象の寿命を延長させる(即ち、増加させる)ために、化合物若しくは組成物、又は化合物若しくは組成物の組み合わせを対象に投与することを意味している。特に、「疾患又は障害の処置(treating)/処置(treatment)」という用語は、疾患若しくは障害、又はこれらの症状の治癒、持続期間の短縮、寛解、進行又は悪化の遅延又は阻害を含む。
【0157】
「予防する(prevent)」又は「予防する(preventing)」は、対象の疾患又は障害の発症を阻害するか又は遅延させるために、化合物若しくは組成物、又は化合物若しくは組成物の組み合わせを対象に投与することを特に意味している。
【0158】
「対象」という用語は、本発明によれば、処置対象を意味しており、特に、疾患対象(「患者」とも称される)を意味しており、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、又は他の動物、特に、哺乳類(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ)、又は齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット、及びハムスター)を意味している。一実施形態では、対象/患者は、ヒトである。
【0159】
式Iの化合物は、炭水化物及び/又は脂質の代謝の障害に起因する、関連する、及び/又は伴う疾患又は障害の処置又は予防に特に適しており、例えば、高血糖、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病、肥満、及びメタボリックシンドロームの処置又は予防に特に適している。さらに、本発明の化合物は、変性疾患(特に、神経変性疾患)の処置又は予防に適し得る。さらに、本発明の化合物は、吐き気若しくは嘔吐を伴う疾患の処置若しくは予防に有用であり得るか、又は吐き気若しくは嘔吐の制吐剤として有用であり得る。
【0160】
説明されている化合物は、特に、体重増加の予防又は体重減少の促進において用途が見出される。「予防する」は、処置されない場合と比較した場合に、阻害又は軽減を意味しており、必ずしも障害の完全な停止を意味するものではない。
【0161】
体重に対するこの効果とは独立して、本発明の化合物は、循環コレステロールレベルに対して有益な効果を有し得、脂質レベル(特に、LDL)、並びにHDLレベルを改善(例えば、HDL/LDL比の増加)し得る。
【0162】
そのため、本発明の化合物を、過剰な体重により引き起こされるか又はこれを特徴とする任意の状態の直接的又は間接的な治療(例えば、肥満、病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発性睡眠時無呼吸の処置及び/又は予防)に使用し得る。本発明の化合物をまた、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化、冠状動脈性心疾患、又は脳卒中の処置及び予防にも使用し得る。これらの状態におけるこの化合物の効果は、体重への影響の結果の場合であり得るか、又はこれに関連し得るか、又はこれらに独立し得る。
【0163】
医療用途として、2型糖尿病の疾患進行の遅延又は予防、メタボリックシンドロームの処置、肥満の処置又は過体重の予防、食物摂取量の減少、体重の減少、耐糖能障害(IGT)から2型糖尿病への進行の遅延;2型糖尿病からインスリン必要性糖尿病及び脂肪肝への進行の遅延が挙げられる。
【0164】
「疾患又は障害」という用語は、あらゆる病的な又は不健康な状態を指しており、特に、肥満、過体重、メタボリックシンドローム、糖尿病、高血糖、脂質異常症、及び/又はアテローム性動脈硬化を指す。
【0165】
「メタボリックシンドローム」という用語は、下記の病状の内の少なくとも3つのクラスター化として定義され得る:腹部(中心性)肥満(例えば、欧州男性の場合には94cm超の腹囲、欧州女性の場合には80cm超の腹囲と定義され、他の群の場合には民族固有の値である)、血圧上昇(例:130/85mmHg以上)、空腹時血漿グルコースの上昇(例えば、少なくとも100mg/dL)、高い血清トリグリセリド(例えば、少なくとも150mg/dL)、及び低い高密度リポタンパク質(HDL)レベル(例えば、男性の場合には40mg/dL未満、女性の場合には50mg/dL未満)。
【0166】
肥満は、健康及び平均余命に悪影響を及ぼす場合がある程度まで過剰な体脂肪が蓄積した病状であり、成人及び子供でその有病率が増加していることから、現代世界では予防可能な主な死因の1つとなっている。肥満は、心臓病、2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、ある特定の種類の癌、及び変形性関節症等の様々な他の疾患の可能性を高め、且つ最も一般的には、過剰な食物摂取、エネルギー消費の減少、及び遺伝的感受性の組み合わせにより引き起こされる。
【0167】
ヒト(成人)対象に関しては、肥満は、30kg/m2以上の肥満指数(BMI)(BMI>30kg/m2)と定義され得る。BMIは、成人での過体重及び肥満を分類するために一般的に使用されている、身長に対する体重の単純な指標である。BMIは、人の体重(キログラム)を彼/彼女の身長(メートル)の2乗で除算したもの(kg/m2)と定義される。
【0168】
「過体重」という用語は、体脂肪の量が最適な健康状態と比べて高い病状を指す。ヒト(成人)対象に関しては、肥満は、25kg/m2以上の肥満指数(BMI)(例えば、25kg/m2<BMI<30kg/m2)と定義され得る。
【0169】
糖尿病(Diabetes mellitus)(単に糖尿病(diabetes)と呼ばれることも多い)は、体内で十分なインスリンが生成されないことから、又は生成されたインスリンに細胞が反応しないことから、血糖値が高くなる代謝性疾患の一群である。最も一般的なタイプの糖尿病は、下記である:(1)体内でインスリンが生成されない1型糖尿病、(2)体内でインスリンが適切に使用されず、併せてインスリン欠乏が経時的に増加する2型糖尿病(T2DM)、及び(3)女性が妊娠に起因して糖尿病を発症する妊娠糖尿病。糖尿病の全ての形態が、長期合併症のリスクを高め、この合併症は、典型的には、何年も経ってから発症する。この長期合併症のほとんどは、血管の損傷に基づいており、太い血管のアテローム性動脈硬化から生じる「大血管」疾患と、細い血管の損傷から生じる「細小血管」疾患という2つのカテゴリーに分けられ得る。大血管疾患状態の例は、虚血性心疾患、心筋梗塞、脳卒中、及び末梢血管疾患である。細小血管疾患の例は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、及び糖尿病性神経障害である。
【0170】
糖尿病の現在のWHO診断基準は、下記の通りである:空腹時血漿グルコース15≧7.0mmol/l(126mg/dL)、又は2時間血漿グルコース≧11.1mmol/l(200mg/dL)。
【0171】
「高血糖」という用語は、血液中での糖(グルコース)の過剰(例えば、11.1mmol/l(200mg/dl)超)を指す。
【0172】
「低血糖」という用語は、正常値(例えば、3.9mmol/L(70mg/dL))未満の血糖値を指す。
【0173】
「脂質異常症」という用語は、リポタンパク質の過剰産生(「高脂血症」)又は欠乏(「低脂血症」)等のリポタンパク質代謝の障害を指す。脂質異常症は、血液中の総コレステロール、低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール、及び/又はトリグリセリドの濃度の上昇、並びに/又は高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度の低下として現れ得る。
【0174】
「アテローム性動脈硬化」は、大きい及び中程度のサイズの動脈の内膜中におけるプラークと呼ばれる不規則に分布した脂肪沈着を特徴とする血管疾患であり、動脈内腔の狭窄を引き起こして線維化及び石灰化を進行させる場合がある。病変は、通常は限局性であり、緩やかに且つ断続的に進行する。時折、プラークの破裂が生じて血流の障害が生じ、その結果、この障害から遠位の組織が死に至ることがある。閉塞の分布及び重症度により異なるが、ほとんどの臨床症状の主な原因は、血流の制限である。
【0175】
式Iの化合物は、「嘔吐」又は「吐き気」の抑制剤として特に好適である。
【0176】
式Iの化合物は、嘔吐又は吐き気が、下記の(1)~(6)から選択される1つ又は複数の状態又は原因により引き起こされる、処置又は予防に特に好適である:
(1)疾患、例えば、胃不全麻痺、胃腸運動低下、腹膜炎、腹部腫瘍、便秘、胃腸管閉塞、周期性嘔吐症候群、慢性の原因不明の吐き気及び嘔吐、急性及び慢性の膵炎、高カリウム血症、脳浮腫、頭蓋内病変、代謝障害、感染により引き起こされる胃炎、術後疾患、心筋梗塞、偏頭痛、頭蓋内圧亢進、及び頭蓋内圧低下(例えば、高山病);
(2)薬物、例えば、(i)アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、クロランブシル、ストレプトゾシン、ダカルバジン、イホスファミド、テモゾロミド、ブスルファン、ベンダムスチン、及びメイファイアン)、細胞傷害性抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、マイトマイシン-C、ブレオマイシン、エピルビシン、アクチノマイシン D、アムルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、及びピラルビシン)、代謝拮抗薬(例えば、シタラビン、メトトレキサート、S-フルオロウラシ、エノシタビン、及びシオファラビン)、ビンカアルカロイド(例えば、エトポシド、ビンブラスチン、及びビンクリスチン)、他の化学療法剤、例えば、シスプラチン、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アザシチジン、イリノテカン、インターフェロンu、インターロイキン-2、オキサリプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、及びミリプラチン;(ii)オピオイド鎮痛薬(例えば、モルヒネ);(iii)ドーパミン受容体D1D2アゴニスト(例えば、アポモルヒネ);(iv)大麻悪阻症候群を含む大麻及びカンナビノイド製品;
(3)放射線宿酔、又は癌を処置するために使用される胸部、腹部等の放射線治療;
(4)毒物又は毒素;
(5)妊娠悪阻を含む妊娠;並びに
(6)前庭障害、例えば、乗り物酔い又は目まい。
【0177】
加えて、本発明の化合物を、慢性の原因不明の吐き気及び嘔吐の予防/治療薬として使用し得る。嘔吐又は吐き気はまた、胃の内容物を口から吐き出したいという差し迫った不快な感覚(例えば、むかつき及び悪心)も含み、且つ自律神経症状(例えば、顔面蒼白、冷や汗、唾液分泌、頻脈、及び下痢)を伴う場合もある。嘔吐はまた、急性嘔吐、遷延性嘔吐、及び予期性嘔吐も含む。
【0178】
医薬組成物
さらなる態様では、本発明は、担体との混合物で本発明の化合物を含む組成物に関する。好ましい実施形態では、この組成物は、薬学的に許容される組成物であり、この担体は、薬学的許容される担体である。本発明の化合物は、塩(例えば、薬学的に許容される塩)又は溶媒和物(例えば、水和物)の形態であり得る。さらなる態様では、本発明は、医療処置(特に、ヒト医療)の方法での使用のための組成物に関する。
【0179】
「医薬組成物」という用語は、混合された場合に適合性があり且つ投与され得る成分を含む混合物を示す。医薬組成物は、1種又は複数種の医薬品を含み得る。加えて、医薬組成物は、担体、緩衝剤、酸性化剤、アルカリ化剤、溶媒、アジュバント、等張化剤、エモリエント、増量剤、保存料、物理的及び化学的な安定剤、例えば、界面活性剤、抗酸化剤、並びに他の成分を、これらが活性成分と見なされるか不活性成分と見なされるかにかかわらず含み得る。医薬組成物の調製での当業者へのガイダンスを、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,(20th ed.)ed.A.R.Gennaro A.R.,2000,Lippencott Williams & Wilkins及びR.C.Rowe et al.(Ed),Handbook of Pharmaceutical Excipients,PhP,May 2013 updateに見出し得る。
【0180】
本発明のエキセンディン-4ペプチド誘導体、又はその塩は、医薬組成物の一部として、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と共に投与される。
【0181】
「薬学的に許容される担体」は、投与される物質の治療特性を保持しつつ生理学的に許容される(例えば、生理学的に許容されるpH)担体である。標準的な許容される医薬担体及びその製剤は、当業者に既知であり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,(20th ed.)ed.A.R.Gennaro A.R.,2000,Lippencott Williams & Wilkins及びR.C.Rowe et al.(Ed),Handbook of Pharmaceutical excipients,PhP,May 2013 updateで説明されている。生理学的に許容される担体の一例は、生理食塩水である。
【0182】
一実施形態では、担体は、緩衝剤(例えば、クエン酸塩/クエン酸、酢酸塩/酢酸、リン酸塩/リン酸)、酸性化剤(例えば、塩酸)、アルカリ化剤(例えば、水酸化ナトリウム)、保存料(例えば、フェノール、m-クレゾール、ベンジル型アルコール)、共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール400)、等張化剤(例えば、マンニトール、グリセロール、塩化ナトリウム、プロピレングリコール)、安定剤(例えば、界面活性剤、酸化防止剤、アミノ酸)の群から選択される。
【0183】
使用される濃度は、生理学的に許容される範囲である。
【0184】
許容される医薬担体又は希釈剤として、経口、直腸、経鼻、又は非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮)投与に適した製剤で使用されるものが挙げられる。本発明の化合物を、典型的には、非経口投与する。
【0185】
「薬学的に許容される塩」という用語は、哺乳類での使用に安全であり且つ有効な本発明の化合物の塩を意味しており、例えば、酢酸塩、塩化物塩、又はナトリウム塩を意味する。
【0186】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物又はその塩と、溶媒分子(例えば、有機溶媒分子)及び/又は水との複合体を意味する。
【0187】
医薬組成物では、エキセンディン-4誘導体は、単量体形態又はオリゴマー形態であり得る。
【0188】
ある化合物の「治療上有効な量」という用語は、非毒性であるが所望の効果をもたらすのに十分な量の化合物を指す。所望の生物学的効果を達成するのに必要な式Iの化合物の量は、多くの要因(例えば、選択される具体的な化合物、意図される用途、投与様式、及び患者の臨床状態)によって決まる。任意の個々の場合における適切な「有効な」量は、日常的な実験を使用して当業者により決定され得る。例えば、式Iの化合物の「治療上有効な量」は、約0.01~100mg/用量であり、好ましくは1~30mg/用量である。
【0189】
本発明の医薬組成物は、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、又は静脈内)、直腸、局所、及び経口(例えば、舌下)投与に適したものであるが、最適な投与様式は、それぞれの場合に、処置される状態の性質及び重症度、並びにそれぞれの場合で使用される式Iの化合物の性質によって決まる。一実施形態では、適用は、非経口であり、例えば、皮下である。
【0190】
非経口適用の場合には、投与間での微生物及び細菌の増殖を阻害するために、対応する製剤が少なくとも1つの抗菌保存料を含むことが好ましい可能性がある。非経口適用の場合には、複数回用量デバイスを使用する場合に投与間での微生物及び細菌の増殖を抑制するために、対応する製剤が少なくとも1種の抗菌保存料を含むことが必須となるだろう。好ましい保存料は、ベンジル型アルコール、又はフェノール若しくはm-クレゾールのようなフェノール化合物である。これらの成分は、製剤中の溶解性及び安定性を低下させるペプチド及びタンパク質の凝集を誘発し得ることが説明されている(Bis et al.,Int.J.Pharm.2014,472,356;Kamerzell,Adv.Drug Deliv.Rev.2011,63,1118)。
【0191】
投与単位、パッケージ、(ペン)デバイス、及び投与
本発明の化合物を、好適な医薬組成物での使用のために調製し得る。この好適な医薬組成物は、1つ又は複数の投与単位の形態であり得る。
【0192】
この組成物を、本発明の化合物と担体(1種又は複数種の追加の成分からなり得る)とを接触させる工程を含む任意の好適な薬学的方法により調製し得る。投与単位は、例えば、カプセル、錠剤、糖衣錠、顆粒小袋、滴剤、溶液、懸濁液、凍結乾燥物、及び粉末であり得、これらのそれぞれは、本発明の化合物の規定量を含む。
【0193】
本発明の化合物の上述した投与単位又は本発明の医薬組成物(投与単位)のそれぞれは、輸送及び保存を容易にするためにパッケージで提供され得る。投与単位は、標準的な単回投与用又は複数回投与用の包装に入っており、この包装の形態、材質、及び形状は、調製される単位の種類によって決まる。
【0194】
いくつかの実施形態では、本発明は、立体異性体形態のいずれかの式(I)の化合物、又はその生理学的に許容される塩若しくは溶媒和物と、本明細書で説明されている方法のための化合物の使用に関する一連の説明書とを含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、このキットは、1種又は複数種の不活性の担体及び/又は希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、このキットは、1種又は複数種の他の薬理学的に活性な化合物(例えば、本明細書で説明されているもの)をさらに含む。
【0195】
ある特定の実施形態では、投与単位は、例えば、シリンジ、注射ペン、又は自己注射器と共に、適用するためのデバイスと共に提供され得る。そのようなデバイスは、医薬組成物とは別個に提供されてもよいし、医薬組成物が予め充填されていてもよい。
【0196】
「ペン型注射デバイス」(簡単に「注射ペン」と称されることが多い)は、典型的には、筆記用の万年筆に似た細長い形状を有する注射デバイスである。そのようなペンは、通常、管状の断面を有するが、三角形、長方形、若しくは正方形等の様々な断面、又はこれらの幾何学的形状の周辺のあらゆるバリエーションを容易に有することが可能である。一般に、ペン型注射デバイスは、下記の3つの主要な要素を含む:ハウジング又はホルダ内に収容されていることが多いカートリッジを含むカートリッジセクション;このカートリッジセクションの一端に接続されたニードルアセンブリ;及びこのカートリッジセクションの他端に接続された投与セクション。カートリッジ(「アンプル」とも称されることが多い)は、典型的には、薬物が充填されたリザーバー、カートリッジリザーバーの一端に位置する可動式のゴム型栓又はストッパー、及び他端(多くの場合には、くびれた端)に位置する貫通可能なゴム製シールを有する上部を含む。ゴム製シールを所定の位置で保持するために、典型的には、圧着された環状金属バンドが使用される。カートリッジハウジングは、典型的には、プラスチック製であり得るが、カートリッジリザーバーは、歴史的に、ガラス製である。
【0197】
併用療法
式Iの化合物は、治療上有効な薬剤を追加することなく、ヒト処置に適している。しかしながら、他の実施形態では、この化合物は、「併用療法」で説明されているように、少なくとも1種の追加の治療上活性な薬剤と共に使用され得る。
【0198】
GIP受容体のアゴニストである本発明の化合物は、他の薬理学的に活性な化合物(例えば、Rote Liste 2017で述べられている全ての薬物、例えば、Rote Liste 2016、第12章で述べられている全ての抗糖尿病剤、Rote Liste 2017、第6章で述べられている全ての体重減少剤又は食欲抑制剤、Rote Liste 2017、第58章で述べられている全ての脂質低下剤、Rote Liste 2017、第17章で述べられている全ての降圧剤及び腎保護剤、並びにRote Liste 2017、第36章で述べられている全ての利尿剤)と広く組み合わされ得る。
【0199】
この活性成分の組み合わせを、特に、作用の相乗的な改善に使用し得る。これらを、患者への活性成分の別々の投与により適用し得るか、又は複数種の活性成分が1つの医薬調製物中に存在している併用製品の形態で適用し得る。本発明の化合物及び他の薬学的に活性な成分の量、並びに相対的な投与タイミングは、所望の複合治療効果を達成するために選択される。この組み合わせの投与は、(1)全ての薬学的に活性な成分を含む単一医薬組成物;又は(2)各々が薬学的に活性な成分の内の少なくとも1つを含む別々の医薬組成物にて同時であり得る。或いは、この組み合わせを、一方の処置剤が最初に投与され且つ他方の処置剤が2番目に投与されるか又はその逆である逐次的な方法で、別々に投与し得る。活性成分を、これらの活性成分の別々の投与により投与する場合には、このことを、同時に又は連続的に行ない得る。
【0200】
そのような組み合わせに好適な他の活性物質として、特に、例えば、1種若しくは複数種の活性物質の治療効果を、述べられた適応症の1つに関して増強するもの、及び/又は1種若しくは複数種の活性物質の投与量を減少させることを可能にするものが挙げられる。
【0201】
下記で述べる活性成分のほとんどは、USP Dictionary of USAN and International Drug Names,US Pharmacopeia,Rockville 2014で開示されている。
【0202】
組み合わせに好適な治療薬として、例えば、下記が挙げられる。抗糖尿病剤、例えば:
インスリン、及びインスリン誘導体、例えば:インスリングラルギン(例えば、Lantus(登録商標))、100U/ml超の濃縮インスリングラルギン、例えば、270~330U/mlのインスリングラルギン、又は300U/mlのインスリングラルギン(例えば、Toujeo(登録商標))、インスリングルリジン(例えば、Apidra(登録商標))、インスリンデテミル(例えば、Levemir(登録商標))、インスリンリスプロ(例えば、Humalog(登録商標)、Liprolog(登録商標))、インスリンデグルデク(例えば、DegludecPlus(登録商標)、IdegLira(NN9068))、インスリンアスパルト及びアスパルト製剤(例えば、NovoLog(登録商標))、基礎インスリン及び類似体(例えば、LY2605541、LY2963016、NN1436)、PEG化インスリンリスプロ(例えば、LY-275585)、長期作用インスリン(例えば、NN1436、Insumera(PE0139)、AB-101、AB-102、Sensulin LLC)、中間型インスリン(例えば、Humulin(登録商標)N、Novolin(登録商標)N)、即効性及び短時間作用インスリン(例えば、Humulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)R、Linjeta(登録商標)(VIAject(登録商標))、PH20インスリン、NN1218、HinsBet(登録商標)、混合型インスリン、SuliXen(登録商標)、NN1045、インスリンプラスSymlin(登録商標)、PE-0139、ACP-002ヒドロゲルインスリン、及び経口、吸入、経皮、及び頬側、又は舌下インスリン(例えば、Exubera(登録商標)、Nasulin(登録商標)、Afrezza(登録商標)、インスリントレゴピル、TPM-02インスリン、Capsulin(登録商標)、Oral-lyn(登録商標)、Cobalamin(登録商標)、経口インスリン、ORMD-0801、Oshadi経口インスリン、NN1953、NN1954、NN1956、VIAtab(登録商標))。二官能性リンカーによりアルブミン又は別のタンパク質に結合しているインスリン誘導体も好適である。
GLP-1、GLP-1類似体、及びGLP-1受容体アゴニスト、例えば:リキシセナチド(例えば、Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(例えば、エキセンディン-4、rExendin-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、エキセナチドNexP)、リラグルチド(例えば、Victoza(登録商標))、セマグルチド(例えば、Ozempic(登録商標))、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド(例えば、Trulicity(登録商標))、ACP-003、CJC-1134-PC、GSK-2374697、PB-1023、TTP-054、エフペグレナチド(HM-11260C)、CM-3、GLP-1 Eligen、AB-201、ORMD-0901、NN9924、NN9926、NN9927、Nodexen、Viador-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、ZP-3022、CAM-2036、DA-3091、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTEN(VRS-859)、エキセナチド-XTEN+Glucagon-XTEN(VRS-859+AMX-808)、及びポリマー結合GLP-1、並びにGLP-1類似体。
二重GLP-1/グルカゴン受容体アゴニスト、例えば、BHM-034、OAP-189(PF-05212389、TKS-1225)、ペガパモデュチド(TT-401/402)、ZP2929、JNJ64565111(HM12525A、LAPS-HMOXM25)、MOD-6030、NN9277、LY-3305677、MEDI-0382、MK8521、BI456906、VPD-107、H&D-001A、PB-718、SAR425899、又は国際公開第2014/056872号パンフレットで開示されている化合物。
二重GLP-1/GIPアゴニスト、例えば、RG-7685(MAR-701)、RG-7697(MAR-709、NN9709)、BHM081、BHM089、BHM098、LBT-6030、ZP-I-70)、TAK-094、SAR438335、Tirzepatide(LY3298176)、又は国際公開第2014/096145号パンフレット、同第2014/096148号パンフレット、同第2014/096149号パンフレット、同第2014/096150号パンフレット、及び同第2020/023386号パンフレットで開示されている化合物。
三重GLP-1/グルカゴン/GIP受容体アゴニスト(例えば、Tri-agonist 1706(NN9423)、HM15211)。
二重GLP-1Rアゴニスト/プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン型9(例えば、MEDI-4166)。
二重GLP-1/GLP-2受容体アゴニスト(例えば、ZP-GG-72)。
二重GLP-1/ガストリンアゴニスト(例えば、ZP-3022)。
【0203】
他の好適な組み合わせパートナーは、下記である:
さらなる消化管ペプチド、例えば、ペプチドYY3-36(PYY3-36)又はその類似体、及び膵臓ポリペプチド(PP)又はその類似体(例えば、PYY1562(NN9747/NN9748))。
カルシトニン及びカルシトニン類似体、アミリン及びアミリン類似体(例えば、プラムリンチド、Symlin(登録商標))、二重カルシトニン及びアミリン受容体アゴニスト、例えば、Salmon Calcitonin(例えば、Miacalcic(登録商標))、ダバリンチド(davalintide)(AC2307)、ミミリン、AM833(NN9838)、KBP-042、KBP-088、及びKBP-089、ZP-4982/ZP-5461、エルカトニン。
グルカゴン様ペプチド2(GLP-2)、GLP-2類似体、及びGLP-2受容体アゴニスト、例えば、テデュグルチド(例えば、Gattex(登録商標))、エルシグルチド(elsiglutide)、グレパグルチド(glepaglutide)、FE-203799、HM15910。
グルカゴン受容体アゴニスト(例えば、G530S(NN9030)、ダシグルカゴン(dasiglucagon)、HM15136、SAR438544、DIO-901、AMX-808)又はアンタゴニスト、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体アゴニスト(例えば、ZP-I-98、AC163794)又はアンタゴニスト(例えば、GIP(3-30)NH2)、グレリンアンタゴニスト又は逆アゴニスト、キセニン及びその類似体。
ヒト線維芽細胞増殖因子21(FGF21)及び誘導体又は類似体、例えば、LY2405319及びNN9499、又はFGF21の他のバリアント。
ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-4)阻害剤、例えば:
アログリプチン(例えば、Nesina(登録商標)、Kazano(登録商標))、リナグリプチン(例えば、Ondero(登録商標)、Trajenta(登録商標)、Tradjenta(登録商標)、Trayenta(登録商標))、サキサグリプチン(例えば、Onglyza(登録商標)、Komboglyze XR(登録商標))、シタグリプチン(例えば、Januvia(登録商標)、Xelevia(登録商標)、Tesavel(登録商標)、Janumet(登録商標)、Velmetia(登録商標)、Juvisync(登録商標)、Janumet XR(登録商標))、アナグリプチン、テネリグリプチン(例えば、Tenelia(登録商標))、トレラグリプチン、ビルダグリプチン(例えば、Galvus(登録商標)、Galvumet(登録商標))、ゲミグリプチン(gemigliptin)、オマリグリプチン、エボグリプチン(evogliptin)、デュトグリプチン(dutogliptin)、DA-1229、MK-3102、KM-223、KRP-104、PBL-1427、Pinoxacin塩酸塩、及びAri-2243。
ナトリウム依存性グルコース輸送体2(SGLT-2)阻害剤、例えば:カナグリフロジン(例えば、Invokana(登録商標))、ダパグリフロジン(例えば、Forxiga(登録商標))、レモグリフロジン(Remogliflozin)、セルグリフロジン(Sergliflozin)、エンパグリフロジン(例えば、Jardiance(登録商標))、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、エルツグリホジン(Ertuglifozin)/PF-04971729、RO-4998452、ベキサグリフロジン(Bexagliflozin)(EGT-0001442)、SBM-TFC-039、ヘナグリフロジン(Henagliflozin)(SHR3824)、ジャナリフロジン(Janagliflozin)、チアナグリフロジン(Tianagliflozin)、AST1935、JRP493、HEC-44616。
SGLT-1及びSGLT-2の二重阻害剤(例えば、ソタグリフロジン(sotagliflozin)、LX-4211、LIK066)、SGLT-1阻害剤(例えば、LX-2761、ミザグリフロジン(Mizagliflozin)(KGA-3235))、又は抗肥満薬(例えば、回腸胆汁酸転移(IBAT)阻害剤(例えば、GSK-1614235及びGSK-2330672)との組み合わせでのSGLT-1阻害剤。
ビグアナイド(例えば、メトホルミン、ブホルミン、フェンホルミン)。
チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、リボグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン)、グリタゾン類似体(例えば、ロベグリタゾン)。
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR-)(アルファ、ガンマ、又はアルファ/ガンマ)アゴニスト又はモジュレータ(例えば、サログリタザル(例えば、Lipaglyn(登録商標))、GFT-505)、又はPPARガンマ部分アゴニスト(例えば、Int-131)。
スルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリメピリド(例えば、Amaryl(登録商標))、グリピジド)、ッメグリチニデス(例えば、ナテグリニド、レパグリニド、ミチグリニド)。
アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール、ボグリボース)。
GPR119アゴニスト(例えば、GSK-1292263、PSN-821、MBX-2982、APD-597、ARRY-981、ZYG-19、DS-8500、HM-47000、YH-Chem1、YH18421、DA-1241)。
GPR40アゴニスト(例えば、TUG-424、P-1736、P-11187、JTT-851、GW9508、CNX-011-67、AM-1638、AM-5262)。
GPR120アゴニスト及びGPR142アゴニスト。
全身性又は低吸収性のTGR5(GPBAR1=Gタンパク質が共役した胆汁酸受容体1)アゴニスト(例えば、INT-777、XL-475、SB756050)。
糖尿病免疫治療薬、例えば:経口C-Cケモカイン受容体2型(CCR-2)アンタゴニスト(例えば、CCX-140、JNJ-41443532)、インターロイキン1ベータ(IL-1β)アンタゴニスト(例えば、AC-201)、又は経口モノクローナル抗体(MoA)(例えば、メタロザミド、VVP808、PAZ-320、P-1736、PF-05175157、PF-04937319)。
メタボリックシンドローム及び糖尿病の処置のための抗炎症剤、例えば、核因子カッパB阻害剤(例えば、Triolex(登録商標))。
アデノシン一リン酸活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)刺激剤、例えば:イメグリミン(PXL-008)、Debio-0930(MT-63-78)、R-118。
11-ベーターヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1の阻害剤(11-ベータ-HSD-1)(例えば、LY2523199、BMS770767、RG-4929、BMS816336、AZD-8329、HSD-016、BI-135585)。
グルコキナーゼの活性化剤(例えば、PF-04991532、TTP-399(GK1-399)、GKM-001(ADV-1002401)、ARRY-403(AMG-151)、TAK-329、TMG-123、ZYGK1)。
ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ(DGAT)の阻害剤(例えば、プラジガスタット(pradigastat)(LCQ-908))、プロテインチロシンホスファターゼ1の阻害剤(例えば、トロダスケミン(trodusquemine))、グルコース-6-ホスファターゼの阻害剤、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼの阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼの阻害剤、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼの阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼの阻害剤。
グルコーストランスポーター-4のモジュレータ、ソマトスタチン受容体3アゴニスト(例えば、MK-4256)。
【0204】
1種又は複数種の脂質低下剤も、組み合わせパートナーとして適しており、例えば:3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイム-A-レダクターゼ(HMG-CoA-レダクターゼ)阻害剤、例えば、シンバスタチン(例えば、Zocor(登録商標)、Inegy(登録商標)、Simcor(登録商標))、アトルバスタチン(例えば、Sortis(登録商標)、Caduet(登録商標))、ロスバスタチン(例えば、Crestor(登録商標))、プラバスタチン(例えば、Lipostat(登録商標)、Selipran(登録商標))、フラバスタチン(例えば、Lescol(登録商標))、ピタバスタチン(例えば、Livazo(登録商標)、Livalo(登録商標))、ロバスタチン(例えば、Mevacor(登録商標)、Advicor(登録商標))、メバスタチン(例えば、Compactin(登録商標))、リバスタチン、セリバスタチン(例えば、Lipobay(登録商標))、フィブラート、例えば、ベザフィブラート(例えば、Cedur(登録商標)抑制剤)、シプロフィブラート(例えば、Hyperlipen(登録商標))、フェノフィブラート(例えば、Antara(登録商標)、Lipofen(登録商標)、Lipanthyl(登録商標))、ゲムフィブロジル(例えば、Lopid(登録商標)、Gevilon(登録商標))、エトフィブラート、シンフィブラート、ロニフィブラート、クリノフィブラート、ペマフィブラート、クロフィブラート、クロフィブリド、ニコチン酸及びその誘導体(例えば、ナイアシン、例えば、ナイアシンの徐放製剤)、ニコチン酸受容体1アゴニスト(例えば、GSK-256073)、PPAR-デルタアゴニスト、アセチル-CoA-アセチルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤(例えば、アバシミブ(avasimibe))、コレステロール吸収阻害剤(例えば、エゼチミブ、Ezetrol(登録商標)、Zetia(登録商標)、Liptruzet(登録商標)、Vytorin(登録商標)、S-556971)、胆汁酸結合物質(例えば、コレスチラミン、コレセベラム)、回腸胆汁酸輸送(IBAT)阻害剤(例えば、GSK-2330672、LUM-002)、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)阻害剤(例えば、ロミタピド(AEGR-733)、SLx-4090、グラノタピド(granotapide))、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)のモジュレータ(例えば、アリロクマブ(例えば、Praluent(登録商標))、エボロクマブ(例えば、Repatha(登録商標))、LGT-209、PF-04950615、MPSK3169A、LY3015014、ALD-306、ALN-PCS、BMS-962476、SPC5001、ISIS-394814、1B20、LGT-210、1D05、BMS-PCSK9Rx-2、SX-PCK9、RG7652)、LDL受容体上方制御剤、例えば、肝臓選択甲状腺ホルモン受容体ベータアゴニスト(例えば、エプロチローム(KB-2115)、MB07811、ソベチロム(QRX-431)、VIA-3196、ZYT1)、HDL上昇化合物、例えば:コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤(例えば、アナセトラピブ(MK0859)、ダルセトラピブ、エバセトラピブ、JTT-302、DRL-17822、TA-8995、R-1658、LY-2484595、DS-1442)、又は二重CETP/PCSK9阻害剤(例えば、K-312)、ATP結合カセット(ABC1)制御剤、脂質代謝モジュレータ(例えば、BMS-823778、TAP-301、DRL-21994、DRL-21995)、ホスホリパーゼA2(PLA2)阻害剤(例えば、ダラプラディブ、Tyrisa(登録商標)、バレスプラディブ、リラプラディブ)、ApoA-Iエンハンサ(例えば、RVX-208、CER-001、MDCO-216、CSL-112)、コレステロール合成阻害剤(例えば、ETC-1002)、脂質代謝モジュレータ(例えば、BMS-823778、TAP-301、DRL-21994、DRL-21995)、並びにオメガ-3脂肪酸及びその誘導体(例えば、イコサペンタエチル(AMR101)、Epanova(登録商標)、Lovaza(登録商標)、Vascepa(登録商標)、AKR-063、NKPL-66、PRC-4016、CAT-2003)。
HDL上昇化合物、例えば:CETP阻害剤(例えば、トルセトラピブ、アナセトラピド、ダルセトラピド、エバセトラピド、JTT-302、DRL-17822、TA-8995)、又はABC1制御剤。
【0205】
他の好適な組み合わせパートナーは、肥満の処置用の1種又は複数種の活性物質であり、例えば:
ブロモクリプチン(例えば、Cycloset(登録商標)、Parlodel(登録商標))、フェンテルミン及びフェンテルミン製剤又は組み合わせ(例えば、Adipex-P、イオナミン、Qsymia(登録商標))、ベンズフェタミン(例えば、Didrex(登録商標))、ジエチルプロピオン(例えば、Tenuate(登録商標))、フェンジメトラジン(例えば、Adipost(登録商標)、Bontril(登録商標))、ブプロピオン及び組み合わせ(例えば、Zyban(登録商標)、Wellbutrin XL(登録商標)、Contrave(登録商標)、Empatic(登録商標))、シブトラミン(例えば、Reductil(登録商標)、Meridia(登録商標))、トピラマート(例えば、Topamax(登録商標))、ゾニサミド(例えば、Zonegran(登録商標))、テソフェンシン、オピオイドアンタゴニスト、例えば、ナルトレキソン(例えば、Naltrexin(登録商標)、ナルトレキソン、及びブプロピオン)、カンナビノイド受容体1(CB1)アンタゴニスト(例えば、TM-38837)、メラニン凝集ホルモン(MCH-1)アンタゴニスト(例えば、BMS-830216、ALB-127158(a))、MC4受容体アンタゴニスト及び部分アゴニスト(例えば、AZD-2820、RM-493)、神経ペプチドY5(NPY5)又はNPY2アンタゴニスト(例えば、ベルネペリト、S-234462)、NPY4アゴニスト(例えば、PP-1420)、ベータ-3-アドレナリン受容体アゴニスト、レプチン又はレプチン模倣物、5-ヒドロキシトリプタミン2c(5HT2c)受容体のアゴニスト(例えば、ロルカセリン、Belviq(登録商標))、プラムリンチド/メトレレプチン、リパーゼ阻害剤、例えば、セチリスタット(例えば、Cametor(登録商標))、オルリスタット(例えば、Xenical(登録商標)、Calobalin(登録商標))、血管新生阻害剤(例えば、ALS-L1023)、ベタヒスチジン及びヒスタミンH3アンタゴニスト(例えば、HPP-404)、AgRP(アグーチ関連タンパク質)阻害剤(例えば、TTP-435)、セロトニン再取込み阻害剤、例えば、フルオキセチン(例えば、Fluctine(登録商標))、デュロキセチン(例えば、Cymbalta(登録商標))、二重又は三重モノアミン取込み阻害剤(ドーパミン、ノルエピネフリン、及びセロトニン再取込み)、例えば、セルトラリン(例えば、Zoloft(登録商標))、テソフェンシン(tesofensine)、メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)阻害剤(例えば、ベロラニブ(beloranib))、並びに線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)の産生に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、ISIS-FGFR4Rx)、又はプロヒビチン標的化ペプチド-1(例えば、Adipotide(登録商標))。
【0206】
他の好適な組み合わせパートナーは、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む脂肪肝疾患の処置用の1種又は複数の活性物質であり、例えば:
インスリン増感剤(例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、他のPPARモジュレータ(例えば、エラフィブラノル、サログリチタザル、IVA-337)、FXRアゴニスト(例えば、オベチコール酸(INT-747)、GS-9674、LJN-452、EDP-305)、FGF19類似体(例えば、NGM-282)、FGF21類似体(PF-05231023)、GLP-1類似体(例えば、リラグルチド)、SCD1阻害剤(例えば、アラムコル(aramchol))、抗炎症化合物(例えば、CCR2/CCR5アンタゴニストセニクリビロク(cenicriviroc)、ペンタミジンVLX-103)、酸化ストレスを軽減する化合物(例えば、ASK1阻害剤GS-4997、VAP-1阻害剤PXS-4728A)、カスパーゼ阻害剤(例えば、エムリカサン)、LOXL2阻害剤(例えば、シムツズマブ)、ガレクチン-3タンパク質阻害剤(例えば、GR-MD-02)。
【0207】
さらに、高血圧、慢性心不全、又はアテローム性動脈硬化に影響を及ぼす薬物との組み合わせ、例えば:一酸化窒素供与体、AT1アンタゴニスト又はアンジオテンシンII(AT2)受容体アンタゴニスト、例えば、テルミサルタン(例えば、Kinzal(登録商標)、Micardis(登録商標))、カンデサルタン(例えば、Atacand(登録商標)、Blopress(登録商標))、バルサルタン(例えば、Diovan(登録商標)、Co-Diovan(登録商標))、ロサルタン(例えば、Cosaar(登録商標))、エプロサルタン(例えば、Teveten(登録商標))、イルベサルタン(例えば、Aprovel(登録商標)、CoAprovel(登録商標))、オルメサルタン(例えば、Votum(登録商標)、Olmetec(登録商標))、タソサルタン、アジルサルタン(例えば、Edarbi(登録商標))、二重アンジオテンシン受容体ブロッカー(二重ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ACE-2活性化剤、レニン阻害剤、プロレニン阻害剤、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤、エンドセリン受容体(ET1/ETA)ブロッカー、エンドセリンアンタゴニスト、利尿剤、アルドステロンアンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害剤、アルファ-ブロッカー、アルファ-2アドレナリン受容体のアンタゴニスト、ベータ-ブロッカー、混合型アルファ/ベータブロッカー、カルシウムアンタゴニスト、カルシウムチャネルブロッカー(CCB)、カルシウムチャネルブロッカージルチアゼムの経鼻製剤(例えば、CP-404)、二重ミネラルコルチコイド/CCB、中枢作用性降圧薬、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、アミノペプチダーゼ-A阻害剤、バソペプチド阻害剤、二重バソペプチド阻害剤、例えば、ネプリライシン-ACE阻害剤又はネプリライシン-ECE阻害剤、二重作用性AT受容体-ネプリライシン阻害剤、二重AT1/ETAアンタゴニスト、糖化最終産(AGE)ブレーカー、組換えレナラーゼ、血圧ワクチン、例えば、抗RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン-系)ワクチン、AT1又はAT2ワクチン、高血圧薬理ゲノミクスに基づく薬物、例えば、抗高血圧反応を伴う遺伝的多型のモジュレータ、血小板凝集阻害剤、及び他のもの、又はこれらの組み合わせとの組み合わせが好適である。
【0208】
別の態様では、本発明は、GIP受容体への結合及びその活性の調整による影響を受ける可能性がある疾患又は状態の処置又は予防に好適な医薬品を調製するための、組み合わせパートナーとしての上述した活性物質の内の少なくとも1種と組み合わされた本発明に係る化合物又はその生理学的に許容される塩の使用に関する。これは、好ましくは、メタボリックシンドロームに関連する疾患であり、特に、上記で列挙された疾患又は状態の内の1つであり、最も特に、糖尿病若しくは肥満又はこれらの合併症である。
【0209】
1種又は複数種の活性物質との組み合わせでの本発明に係る化合物又はその生理学的に許容される塩の使用を、同時に、別々に、又は逐次的に行ない得る。
【0210】
別の活性物質との組み合わせでの本発明に係る化合物又はその生理学的に許容される塩の使用を、同時に、又は時差的に行ない得るが、特に、わずかな期間で行ない得る。これらを同時に投与する場合には、2種の活性物質を一緒に患者に投与する。
【0211】
その結果として、別の態様では、本発明は、本発明に係る化合物又はそのような化合物の生理学的に許容される塩と、組み合わせパートナーとして上述した活性物質の内の少なくとも1種とを、任意選択的に1種又は複数種の不活性な担体及び/又は希釈剤と共に含む医薬品に関する。
【0212】
本発明に係る化合物又はその生理学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及びこれと組み合わされる追加の活性物質は、両方とも、1つの製剤(例えば、錠剤、カプセル、又は溶液)中に一緒に存在していてもよいし、2つの同一の又は異なる製剤(例えば、いわゆるキット・オブ・パーツ)中に別々に存在していてもよい。
【0213】
本発明の別の主題は、式Iの化合物、並びにその塩及び溶媒和物の調製プロセスであり、この調製プロセスによりこの化合物を得ることができ、この調製プロセスを下記に例示する。
【0214】
方法
用いられる略語は、下記の通りである。
AA アミノ酸
Abu (2S)-2-アミノブタン酸
AEEA (2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)アセチル
ACN アセトニトリル
Aib アルファ-アミノ-イソ酪酸,2-メチルアラン
AUC 曲線下面積
cAMP 環状アデノシン一リン酸
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
BOP (ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート
BSA ウシ血清アルブミン
BW 体重
tBu 第三級ブチル
CV カラム体積
dAla d-Ala,D-Ala,D-アラニン
Dab (S)-2,4-ジアミノ酪酸
Dap (S)-2,3-ジアミノプロピオン酸
DCM ジクロロメタン
Dde 1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)-エチル
ivDde 1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)-3-メチル-ブチル
DIC N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド
DIO 食餌誘導性肥満
DIPEA N,N-ジイソプロピルエチルアミン
dl デシリットル
DLS 動的光散乱
DMEM ダルベッコ改変イーグル培地
DMF ジメチルホルムアミド
DMS ジメチルスルフィド
DODT 3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール
DPBS ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水
EDT エタンジチオール
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EGTA エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸
eq 当量
FA ギ酸
FBS ウシ胎児血清
FI 蛍光強度
Fmoc フルオレニルメチルオキシカルボニル
g グラム
GIP グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
GIPR GIP受容体
GLP-1 グルカゴン様ペプチド1
GLP-1R GLP-1受容体
gGlu ガンマ-グルタミン酸(γE,γGlu)
h 時間
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HBSS ハンクス平衡塩溶液
HBTU 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチル-ウロニウム ヘキサフルオロホスフェート
HEPES 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸
HOAt 1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
Hol ホモ-L-ロイシン
HOSu N-ヒドロキシスクシンイミド
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
HSA ヒト血清アルブミン
HTRF 均一時間分解蛍光
IBMX 3-イソブチル-1-メチルキサンチン
i.p. 腹腔内
ipGTT 腹腔内耐糖能試験
i.v. 静脈内
Iva イソバリン
kg キログラム
l リットル
LC/MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
M モル濃度
MBHA 4-メチルベンズヒドリルアミン
min 分
ml ミリリットル
mm ミリメートル
μm マイクロメートル
mM ミリモル濃度
mmol ミリモル
Mmt モノメトキシ-トリチル
Mph α-メチル-L-フェニルアラニン,(2S)-2-アミノ-2-メチル-3-フェニル-プロパン酸
Mva α-メチル-L-バリン
n.a. 該当なし
n.d. 不検出
nM ナノモル濃度
nm ナノメートル
nmol ナノモル
μmol マイクロモル
NMP N-メチル ピロリドン
Palm パルミトイル
Pbf 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルホニル
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PEG ポリエチレングリコール
PK 薬物動態
pM ピコモル濃度
RCF 相対遠心加速度
Rh ストーク半径
RP-HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
rpm 毎分回転数
s.c. 皮下
SD 標準偏差
sec 秒
SEM 平均値の標準誤差
Stea ステアリル
Tba tert-ブチルアラニン,(2S)-2-アミノ-4,4-ジメチル-ペンタン酸
TFA トリフルオロ酢酸
TFE トリフルオロエタノール
ThT チオフラビンT
TIS/TIPS トリイソプロピルシラン
Trt トリチル/トリフェニメチル
TSTU N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウム テトラフルオロボレート
UHPLC 超高速液体クロマトグラフィー/超高圧液体クロマトグラフィー
UV 紫外線
v 体積
【0215】
ペプチド性化合物の概括的合成
材料
様々なRink-Amide樹脂(例えば、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセトアミド-ノルロイシルメチル樹脂、Merck Biosciences;4-[(2,4-ジメトキシフェニル)(Fmoc-アミノ)メチル]フェノキシアセトアミドメチル樹脂,Agilent Technologies)を、0.2~0.7mmol/gの範囲での負荷量で、ペプチドアミドの合成に使用した。或いは、様々な事前負荷Wang樹脂(例えば、((S)-(9H-フルオレン-9-イル)メチル(1-(tert-ブトキシ)-3-オキソプロパン-2-イル)カルバメート樹脂、Fmoc-Ser(tBu)-Wang樹脂、Bachem)を、0.2~0.7mmol/gの範囲での負荷量で、ペプチドアミド酸の合成に使用した。
【0216】
Fmoc保護天然アミノ酸を、例えば、Protein Technologies Inc、Senn Chemicals、Merck Biosciences、Novabiochem、Iris Biotech、Bachem、Chem-Impex International、又はMATRIX Innovationから購入した。合成全体を通して、下記の標準的なアミノ酸を使用した:Fmoc-L-Ala-OH、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-L-Asn(Trt)-OH、Fmoc-L-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-L-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Gln(Trt)-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-L-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Ile-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-Met-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-Pro-OH、Fmoc-L-Ser(tBu)-OH、Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-L-Val-OH。
【0217】
加えて、下記の特別なアミノ酸を、上記と同一の供給業者から購入した:Fmoc-L-Abu-OH、Fmoc-Aib-OH、Fmoc-L-Hol-OH、Fmoc-Iva-OH、Fmoc-L-Lys(ivDde)-OH、Fmoc-L-Lys(Dde)-OH、Fmoc-L-Lys(Mmt)-OH、Fmoc-N-Me-Gly-OH、Fmoc-L-Mph-OH、Fmoc-L-Mva-OH、Fmoc-L-Tba-OH、Boc-N-Me-L-Tyr(tBu)-OH、及びBoc-L-Tyr(tBu)-OH。
【0218】
さらに、構成要素N-アルファ-(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)-N-イプシロン-(N-アルファ’-パルミトイル-L-グルタミン酸アルファ’-t-ブチルエステル)-L-リシン、(2S)-6-[[2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]-2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-アミノ)ヘキサン酸(Fmoc-L-Lys[{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu]-OH)、Fmoc-AEEA-OH([2-[2-(Fmoc-アミノ)エトキシ]エトキシ]酢酸、CAS番号166108-71-0)、Fmoc-AEEA-AEEA-OH([2-(2-(Fmoc-アミノ)エトキシ)エトキシ]酢酸、CAS番号560088-89-3)、Fmoc-L-Ile-Aib-OH、及びBoc-L-Tyr-Aib-OHを適用し得る。これらの構成要素を、商業的供給源から入手したか、又は例えば中国特許第104356224号明細書等で説明されている段階的合成若しくは固相合成により、個別に合成した。
【0219】
さらに、側鎖構成要素
HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu(2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(18-tert-ブトキシ-18-オキソ-アセタデカノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]酢酸;
(S)-22-(tert-ブトキシカルボニル)-10,19,24-トリオキソ-3,6,12,15-テトラオキサ-9,18,23-トリアザヘンテトラコンタン-1,41-二酸;CAS番号1118767-16-0)、
HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C20OtBu(2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(20-tert-ブトキシ-20-オキソ-エイコサノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]酢酸;CAS番号1188328-37-1)、
HO-{AEEA}2-{gGlu(OtBu)}2-C18OtBu(2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]酢酸)、
HO-{AEEA}2-{gGlu(OtBu)}2-C20OtBu(2-[2-[2-[[2-[2-[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(20-tert-ブトキシ-20-オキソ-エイコサノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]酢酸)、
HO-{Gly}3-gGlu(OtBu)-C18OtBu(2-[[2-[[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]アミノ]アセチル]アミノ]アセチル]アミノ]酢酸)、及び
HO-{N-MeGly}3-gGlu(OtBu)-C18OtBu(2-[[2-[[2-[[(4S)-5-tert-ブトキシ-4-[(18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカノイル)アミノ]-5-オキソ-ペンタノイル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]アセチル]-メチル-アミノ]酢酸)
が適用されている。これらの構成要素を、商業的供給源(例えば、Chengdu Pukang)から入手したか、又は例えば、国際公開第09022006号パンフレット、同第09115469号パンフレット、若しくは同第15028966号パンフレットで類似的に説明されている段階的合成若しくは固相合成により、個別に合成した。
【0220】
固相ペプチド合成を、標準的なFmoc化学、及びHBTU/DIPEA又はHATU/DIPEA活性化を使用して、例えば、Prelude Peptide Synthesizer(Mesa Laboratories/Gyros Protein Technologies)、又は同様の自動合成機で実施した。溶媒としてDMFを使用した。
【0221】
脱保護:2回×2.5分にわたる20%ピペリジン/DMF。
洗浄:7回×DMF。
カップリング2:2回×20分にわたる、DMF中の5:10 200mM AA/500mM HBTU/2M DIPEA。Asp-Val、Val-Pro、Ile-Leu、及びGln-Ileの場合には、2回×40分。洗浄:5回×DMF。
全ての標準的カップリングに、HBTU/DIPEA活性化を使用した。
下記のカップリングに、HATU/DIPEA活性化を使用した:Ile-Aib、Aib-Lys[{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu]、Lys[{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu]-Asp、Gln-Aib、Leu-Leu。HATUカップリングを、一般には2回×40分にわたり、時には2回×1時間にわたり、且つ最大12時間まで、反応させたままにした。
【0222】
Lys側鎖が修飾されていた場合には、対応する位置で、Fmoc-L-Lys(ivDde)-OH、Fmoc-L-Lys(Dde)-OH、又はFmoc-L-Lys(Mmt)-OHを使用した。合成の完了後、DMF中の4%ヒドラジン水和物を使用して、修正された文献手順(S.R.Chhabra et al.,Tetrahedron Lett.,1998,39,1603)に従ってivDde基を除去した。Mmt基を、RTで15分にわたり、AcOH/TFE/DCM(1/2/7)による処置を繰り返して除去し、次いで、樹脂を、DCM、DCM中の5%DIPEA、及びDCM/DMF中の5%DIPEAで繰り返し洗浄した。下記のアシル化を、所望の酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルで樹脂を処理することにより実行したか、又は遊離酸を、HBTU/DIPEA、HATU/DIPEA、HATU/HOAt/DIPEA、若しくはHOBt/DICの様なカップリング試薬と共に使用することにより実行した。
【0223】
アシル側鎖の段階的付着、例えば、ペプチドへの{AEEA}2-gGlu-C18OH)の付着:
リシンのイプシロンアミノ基からのMmt-基の脱保護を、それぞれ15分にわたり、ジクロロメタン(1:2:7)中の酢酸及びトリフルオロエタノールの混合物3回×30mlで実行した。樹脂を、DCM(3×)、DCM中の5%DIPEA(3×)、DCM(2×)、及びDMF(2×)で洗浄した。次いで、樹脂を、HATU(3eq)、HOAt(3eq)、及びDIPEA(4eq)で予め活性化した、DMF中の2-[2-[2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)エトキシ]エトキシ]酢酸(1eq)の溶液で、24時間にわたり処理した。生成物を、DMF、ジクロロメタン、エーテルで洗浄し、乾燥させた。ピペリジン(DMF中に20%)によるFmoc保護基の開裂後、上記の手順を繰り返して、2-[2-[2-[[2-[2-[2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]酢酸アミド誘導体を得た。Fmoc保護基を開裂させ、樹脂を、HATU(3eq)、HOAt(3eq)、及びDIPEA(4eq)で予め活性化した、DMF中の(4S)-5-tert-ブトキシ-4-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-5-オキソ-ペンタン酸(1eq)の溶液で一晩処理した。樹脂を、上記のように洗浄した。Fmoc保護基を開裂させ、生成物を、HATU(3eq)、HOAt(3eq)、及びDIPEA(4eq)で予め活性化した、DMF中の18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカン酸(1eq)の溶液で処理した。樹脂を、上記のように洗浄した。
【0224】
自動合成機で合成されたペプチドを、82.5%TFA、5%フェノール、5%水、5%チオアニソール、及び2.5%EDTからなるKingの開裂カクテルで樹脂から開裂させたか、又は82.5%TFA、5%フェノール、5%水、5%チオアニソール、及び2.5%DODTからなる改良型開裂カクテルで樹脂から開裂させた。次いで、粗ペプチドを、ジエチル又はジイソプロピルエーテルで沈殿させ、遠心分離し、凍結乾燥させた。ペプチドを、分析HPLCで分析し、ESI質量分析でチェックした。粗ペプチドを、従来の分取RP-HPLC精製手順で精製した。
【0225】
或いは、ペプチドを、手動合成手順で合成した。
【0226】
固相合成(手動合成手順)
乾燥したRinkアミドMBHA樹脂0.3g(0.5~0.8mmol/g)を、ポリプロピレンフィルタを備えたポリエチレン容器に入れた。樹脂を、1時間にわたりDCM(15ml)で膨潤させ、1時間にわたりDMF(15ml)で膨潤させた。樹脂上のFmoc基を、5分及び15分にわたり、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液で2回処理することにより、脱保護した。樹脂を、DMF/DCM/DMFで洗浄した(それぞれ6/6/6回)。固体支持体からのFmocの除去の確認に、Kaiser試験(定量法)を使用した。乾燥DMF中のC末端Fmoc-アミノ酸(樹脂負荷に対応する5当量過剰)を、脱保護樹脂に添加し、DMF中の5当量過剰のDIC及びHOBTにより、次のFmoc-アミノ酸のカップリングを開始させた。反応混合物中の各反応物の濃度は、約0.4Mであった。この混合物を、2時間にわたり室温でローター上にて回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(それぞれ6/6/6回)。カップリングの完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は、陰性であった(樹脂に着色なし)。最初のアミノ酸付着の後、樹脂中の未反応アミノ基(存在する場合)を、配列の欠失を回避するために、20分にわたり無水酢酸/ピリジン/DCM(1/8/8)を使用してキャップした。キャッピング後、樹脂を、DCM/DMF/DCM/DMF(それぞれ6/6/6/6回)で洗浄した。C末端アミノ酸が付着したペプチジル樹脂上のFmoc基を、5分及び15分にわたり20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液で2回処理することにより、脱保護した。樹脂を、DMF/DCM/DMF(それぞれ6/6/6回)で洗浄した。Fmoc脱保護の完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は、陽性であった。
【0227】
RinkアミドMBHA樹脂上の標的配列の残余のアミノ酸を、DMF中の樹脂負荷量に対応する5当量過剰を使用するFmoc AA/DIC/HOBt法を使用して、順次カップリングさせた。反応混合物中のそれぞれの反応物の濃度は、約0.4Mであった。この混合物を、2時間にわたり室温でローター上にて回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(それぞれ6/6/6回)。各カップリング工程及びFmoc脱保護工程の後、Kaiser試験を実行して、反応の完全性を確認した。
【0228】
直鎖配列の完了後、分枝点又は修飾点として使用したリシンのε-アミノ基(Ddeで保護されている)を、15分×2回にわたり、DMF中の2.5%ヒドラジン水和物を使用して脱保護し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(それぞれ6/6/6回)。グルタミン酸のγ-カルボキシル末端を、DMF中においてDIC/HOBt法でFmoc-Glu(OH)-OtBu(樹脂負荷に対して5当量過剰)を使用して、Lysのε-アミノ基に付着させた。この混合物を、2時間にわたり室温でローター上にて回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(それぞれ6/6/6回、それぞれ30ml)。グルタミン酸上のFmoc基を、5分及び15分にわたり、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液(それぞれ25ml)で2回処理することにより、脱保護した。樹脂を、DMF/DCM/DMF(それぞれ6/6/6回)で洗浄した。Fmoc脱保護の完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は、陽性であった。
【0229】
側鎖分岐が、もう1つのγ-グルタミン酸も含む場合には、2つ目のFmoc-Glu(OH)-OtBuを、DMF中でのDIC/HOBt法(樹脂負荷に対して5当量過剰)によるγ-グルタミン酸の遊離アミノ基への付着に使用した。この混合物を、2時間にわたり室温でローター上にて回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(それぞれ6/6/6回、それぞれ30ml)。γ-グルタミン酸上のFmoc基を、5分及び15分にわたり、20%(v/v)ピペリジン/DMF溶液(25ml)で2回処理することにより、脱保護した。樹脂を、DMF/DCM/DMF(それぞれ6/6/6回)で洗浄した。Fmoc脱保護の完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は、陽性であった。
【0230】
18-[[(1S)-1-カルボキシ-4-[2-[2-[2-[2-[2-(カルボキシメトキシ)エトキシ]エチルアミノ]-2-オキソ-エトキシ]エトキシ]エチルアミノ]-4-オキソ-ブチル]アミノ]-18-オキソ-オクタデカン酸のペプチドへの付着(段階的合成):
リシンのイプシロンアミノ基からのMmt-基の脱保護を、酢酸及びトリフルオロエタノール(ジクロロメタン中、1:2:7)3回×30mlで実行した。次いで、樹脂を、TSTU(3eq)、DIPEA(3eq)、及びN-ヒドロキシ-ベゾトリアゾール(3eq)で予め活性化した、DMF中の2-[2-[2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)エトキシ]エトキシ]酢酸(1eq)の溶液で24時間にわたり処理した。生成物を、DMF、ジクロロメタン、エーテルで洗浄し、乾燥させた。ピペリジン(DMF中に20%)によるFmoc保護基の開裂後、上記の手順を繰り返して、2-[2-[2-[[2-[2-[2-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)エトキシ]エトキシ]アセチル]アミノ]エトキシ]エトキシ]酢酸アミド誘導体を得た。Fmoc保護基を開裂させ、樹脂を、TSTU(3eq)、DIPEA(3eq)、及びN-ヒドロキシ-ベゾトリアゾール(3eq)で予め活性化した、DMF中の(4S)-5-tert-ブトキシ-4-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-5-オキソ-ペンタン酸(1eq)の溶液で一晩処理した。樹脂を、上記のように洗浄した。Fmoc保護基を開裂させ、生成物を、TSTU(3eq)、DIPEA(3eq)、及びN-ヒドロキシ-ベゾトリアゾール(3eq)で予め活性化した、DMF中の18-tert-ブトキシ-18-オキソ-オクタデカン酸(1eq)の溶液で処理した。樹脂からの最終ペプチド開裂で、t-ブチルエステルを開裂させた。
【0231】
樹脂からのペプチドの最終開裂(手動合成手順)
手動合成で合成したペプチド樹脂を、DCM(6回×10ml)、MeOH(6回×10ml)、及びエーテル(6回×10ml)で洗浄し、一晩真空デシケーター中で乾燥させた。3~4時間にわたり室温にて試薬カクテル(92%TFA、2%チオアニソール、2%フェノール、2%水、及び2%TIPS)でペプチド-樹脂を処理することにより、固体支持体からペプチドを開裂させた。開裂混合物を、ろ過により集め、樹脂を、TFA(2ml)及びDCM(2回×5ml)で洗浄した。過剰なTFA及びDCMを窒素下で少量まで濃縮し、残留物に少量のDCM(5~10ml)を添加し、窒素下で蒸発させた。このプロセスを3~4回繰り返して、揮発性不純物のほとんどを除去した。残留物を0℃まで冷却し、無水エーテルを添加してペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離し、上清のエーテルを除去し、ペプチドに新たなエーテルを添加して再度遠心分離した。粗サンプルを、分取HPLCで精製して凍結乾燥させた。ペプチドの同一性を、LCMSで確認した。
【0232】
加えて、リシン側鎖の導入のための別の経路を使用し、側鎖がペプチド合成でのカップリングパートナーとしてのリシンに既に付着している(例えば、Fmoc-L-Lys[{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu]-OH)、予め官能化した構成要素を適用する。アミノ基を有するペプチド樹脂0.67mmolを、ジメチルホルムアミド20mlで洗浄する。Fmoc-L-Lys[{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu]-OH 2.93gを、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物310mg及びジイソプロピルカルボジイミド0.32mlと一緒に、ジメチルホルムアミド20mlに溶解させる。5分間の撹拌後、この溶液を樹脂に添加する。この樹脂を、20時間にわたり撹拌し、次いで、ジメチルホルムアミド20mlで3回洗浄する。少量の樹脂サンプルを採取し、Kaiser試験及びChloranil試験に供する(E.Kaiser,R.L.Colescott,C.D.Bossinger,P.I.Cook,Anal.Biochem.1970,34,595-598;Chloranil-Test:T.Vojkovsky,Peptide Research 1995,8,236-237)。この手順により、選択的脱保護工程、及び非常に高度な合成中間体への側鎖構成要素の選択的付着が不要となる。
【0233】
分析HPLC/UHPLC
方法A:214nmでの検出
カラム:50℃でのWaters ACQUITY UPLC(登録商標)CSH(商標)C18 1.7μm(150×2.1mm)
溶媒:H2O+0.05%TFA:ACN+0.045%TFA(流量0.5ml/分)
勾配:80:20(0分)→80:20(3分)→25:75(23分)→5:95(23.5分)→5:95(26.5分)→80:20(27分)→80:20(33分)
任意選択的に、質量分析器による:LCT Premier、エレクトロスプレー陽イオンモード
【0234】
方法B:214nmでの検出
カラム:50℃でのWaters ACQUITY UPLC(登録商標)CSH(商標)C18 1.7μm(150×2.1mm)
溶媒:H2O+0.05%TFA:ACN+0.035%TFA(流量0.5ml/分)
勾配:80:20(0分)→80:20(3分)→25:75(23分)→2:98(23.5分)→2:98(30.5分)→80:20(31分)→80:20(37分)
質量分析器:Agilent 6230 Accurate-Mass TOF、又はAgilent 6550 iFunnel Q-TOF;両方とも、Dual Agilent Jet Stream ESIイオン源を備えている。
【0235】
方法C:214nmでの検出
カラム:70℃でのWaters ACQUITY UPLC(登録商標)CSH(商標)C18 1.7μm(150×2.1mm)
溶媒:H2O+0.05%TFA:ACN+0.035%TFA(流量0.5ml/分)
勾配:63:37(0分)→63:37(3分)→45:55(23分)→2:98(23.5分)→2:98(30.5分)→63:37(31分)→63:37(38分)
質量分析器:Agilent 6230 Accurate-Mass TOF、Agilent Jet Stream ESI
【0236】
概括的な分取HPLC精製手順
粗ペプチドを、Akta Purifier System、Jasco semiprep HPLC System、Agilent 1100 HPLCシステム、又は同様のHPLCシステムで精製した。精製する粗ペプチドの量に応じて、サイズ及び流速が異なる分取RP-C18-HPLCカラムを使用し、例えば、下記のカラムを使用している: Waters XSelect CSH C18 OBD Prep 5μm 30×250mm、Waters SunFire C18 OBD Prep 5μm 30×250mm、Waters SunFire C18 OBD Prep 5μm 50×150mm、及びPhenomenex Luna Prep C18 5μm 21.2×250mm。溶離液として、アセトニトリル(B)、及び水+0.1%TFA(A)又は水+0.1%FA(A)を用いた。生成物含有画分を集めて凍結乾燥させて、典型的にはTFA塩として精製生成物を得た。
【0237】
或いは、ペプチドを、下記の手順により、酢酸塩として単離し得る:ペプチドを、水に溶解させて、この溶液をNaHCO3でpH7.05に調整したか、又は酢酸に溶解させた(透明な溶液となるようにACNを添加した)。次いで、溶解した化合物を、RP Kinetex 21.2×250mm(Column Volume CV 88ml、5μm、C18、100A、Akta avant 25)で精製した。このカラムを、溶媒A(3×CV)で平衡化し、化合物を注入し、次いで、3CVにて溶媒A(95%)及び溶媒B(5%)の混合物で洗浄した。次いで、勾配溶媒A:B(95:5)~A:B(20:80)を、15CVで流した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
カラム:Kinetex AXIA 5μm C18 21.2×250mm
溶媒:A(H2O+0.5%酢酸):B(ACN+H2O+0.5%酢酸)(流量7ml/分)
勾配:95:5(0分)→95:5(37分)→20:80(180分)→0:100(6分)
【0238】
溶解性評価
ペプチドバッチの溶解性測定の前に、UHPLC/MSで純度を決定した。
【0239】
溶解性試験のために、目標濃度は、10mg 純粋化合物/mlであった。従って、固体サンプルからの溶液を、事前に決定した純度%に基づいて、10mg/ml 化合物の濃度にて下記の緩衝系で調製した:
溶解性緩衝系A)100mM リン酸緩衝液pH7.4
溶解性緩衝系B)8mM リン酸緩衝液pH7.4、14mg/ml プロピレングリコール、5.5mg/ml フェノール
溶解性緩衝液系C)100mM リン酸緩衝液pH7.4、2.7mg/ml m-クレゾール
【0240】
1時間の穏やかな撹拌、及び2500RCF(相対遠心加速度)での15分間の遠心分離後に得られた上清からの5℃での一晩(24時間)の保存の後に、UHPLC-UVを実施した。
【0241】
溶解性を、1:10に希釈した緩衝サンプル2μl注入のUVピーク面積と、濃度既知の参照ペプチドの標準曲線との比較により決定した。サンプル及び参照ペプチドの様々なUV吸光係数を、様々なアミノ酸配列に基づいて算出し、濃度算出で考慮した。
【0242】
使用した分析方法は、分析UHPLC方法Aであった。
【0243】
化学的安定性評価
化学的安定性測定の前に、UHPLC/MSでペプチドバッチの純度を決定した。目標濃度は、300μM 純粋化合物であった。固体サンプルからの溶液を、事前に決定した純度%に基づいて、約300μM 化合物の濃度にて下記の緩衝系で調製した:
化学的安定性緩衝系A)20mM リン酸緩衝液pH7.4、
化学的安定性緩衝系B)8mM リン酸緩衝液pH7.4、14mg/ml プロピレングリコール、5.5mg/ml フェノール
化学的安定性緩衝系C)100mM リン酸緩衝液pH7.4、2.7mg/ml m-クレゾール
【0244】
調製した溶液を、0.22μM孔径に通してろ過し、層流条件下で、滅菌ガラス容器に充填した。
【0245】
ガラス容器を、5及び40℃で28日にわたり保存した。この後、サンプルを、2500RCFで15分にわたり遠心分離した。次いで、希釈していない上清1.5μlを、UHPLC-UVで分析した。
【0246】
化学的安定性を、式:
[(5℃で28日間後の純度)-(40℃で28日間後の純度)]/(5℃で28日間後の純度)]*100%
により算出された相対的な純度損失により評価した。
【0247】
純度を、
[(ペプチドのピーク面積)/(総ピーク面積)]*100%
として算出した。
【0248】
使用した分析方法は、分析UHPLC方法B又はCであった。
【0249】
物理的安定性の評価のための動的光散乱(DLS)
単色でコヒーレントな光線(レーザー)を使用して、液体サンプルを照射する。動的光散乱(DLS)は、ブラウン運動をする粒子(1nm≦半径≦1μm)からの散乱光を測定する。この運動は、粒子と溶媒分子との衝突により誘発され、これら自体が、その熱エネルギーに起因して移動している。粒子の拡散運動により、散乱光の時間揺らぎが生じる(R.Pecora,Dynamic Light Scattering:Applications of Photon Correlation Spectroscopy,Plenum Press,1985)。
【0250】
散乱光の強度揺らぎを記録し、自己相関関数に変換する。自己相関曲線を指数関数に当てはめることにより、溶液中の粒子の拡散係数Dを導き出し得る。次いで、拡散係数を使用して、球状粒子を仮定したストークス-アインシュタイン方程式により流体力学的半径Rh(又は見かけ上のストークス半径)を算出する。この算出は、ISO 13321及びISO 22412(International Standard ISO13321 Methods for Determination of Particle Size Distribution Part 8:Photon Correlation Spectroscopy, International Organisation for Standardisation(ISO)1996;International Standard ISO22412 Particle Size Analysis-Dynamic Light Scattering, International Organisation for Standardisation,2008)で定義されている。
【0251】
多分散サンプルの場合には、自己相関関数は、それぞれの種に対応する指数関数的減衰の合計である。次いで、散乱光の時間揺らぎを使用して、粒子画分又は粒子ファミリのサイズ分布プロファイルを決定し得る。一次結果は、粒径の関数としての散乱光の強度分布である。この強度分布は、当然のことながら、各粒子画分又は粒子ファミリの散乱強度に従って重み付けされる。生体物質又はポリマーの場合には、粒子散乱強度は、分子量の2乗に比例する。そのため、少量の凝集体/集塊物又は存在若しくはより大きな粒子種が、強度分布を支配する可能性がある。しかしながら、この分布は、サンプル中の大きな物質の存在に関する高感度検出器として使用され得る。
【0252】
DLS技術により、固有のピークの広がりを有する分布が得られる。多分散性指数Pd%は、粒子サイズ分布の幅の尺度であり、ISO13321及びISO22412[International Standard ISO13321 Methods for Determination of Particle Size Distribution Part 8:Photon Correlation Spectroscopy,International Organisation for Standardisation(ISO)1996;International Standard ISO22412 Particle Size Analysis - Dynamic Light Scattering,International Organisation for Standardisation(ISO)2008]で説明されている標準的な方法により算出される。
【0253】
固体サンプルの溶液を、事前に決定した純度%に基づいて、300μM 化合物という目標濃度にて下記の緩衝系(下記を参照されたい)で調製した。
DLS緩衝系A)20mM リン酸緩衝液pH7.4
DLS緩衝系B)8mM リン酸緩衝液pH7.4、14mg/ml プロピレングリコール、5.5mg/ml フェノール
DLS緩衝系C)100mM リン酸緩衝液pH7.4、2.7mg/ml m-クレゾール
【0254】
溶液を、0.22μm孔径に通してろ過し、層流条件下で、滅菌ガラス容器に充填した。全てのペプチド溶液に関して、見かけ上の流体力学半径(Rh)、対応する散乱強度(I)、及び質量寄与(M)を、高品質の測定値のみを平均化する散乱光の強度分布から、3~6回の反復の平均として決定した。これらのパラメータの相対標準偏差(RSD)を、同数の反復から算出した。
【0255】
DLS測定を、DynaPro Plate Reader II(Wyatt Technology,Santa Barbara,CA,US)により、且つ下記の黒色、低容量、及び無処理プレートの内の1つを使用して実施した:底が透明なポリスチレン384アッセイプレート(Corning,NY US)、又は底が透明なシクロオレフィンポリマー(COP)384アッセイプレート(Aurora,MT,US)、又は底が透明なポリスチレン384アッセイプレート(Greiner Bio-One,Germany)。データを、Wyatt Technologから提供されるDynamicsソフトウェアで処理した。粒度分布のパラメータを、DynaLSアルゴリズムを使用する非負制約最小二乗(non-negatively constrained least squares)(NNLS)法で決定した。測定値を、158°の角度で830nmレーザー光源により25℃にて得た。
【0256】
物理的安定性の評価のためのThTアッセイ
ペプチド溶液の低い物理的安定性により、アミロイド原線維が形成され得、このアミロイド原線維は、サンプル中での秩序だった糸状の高分子構造として観察され、これにより、最終的にはゲルが形成され得る。チオフラビンT(ThT)は、ミスフォールドしたタンパク質凝集体の存在を可視化して定量するために広く使用されている[Biancalana et al.,Biochim.Biophys.Acta 2010,1804(7),1405]。チオフラビンTが、アミロイド凝集体中の原線維等の原線維に結合すると、色素が、明瞭な蛍光シグネチャを示す[Naiki et al.,Anal.Biochem.1989,177,244;LeVine et al.,Methods.Enzymol.1999,309,274]。原繊維形成の時間経過は、S字曲線の特徴的な形に従うことが多く、下記の3つの領域に分けられ得る:ラグ期、高速成長期、及びプラトー期。
【0257】
典型的な原繊維形成プロセスは、原繊維化する部分的に折り畳まれたペプチドの量が検出されるほど有意に十分ではないラグ期から始まる。
ラグ時間は、核の臨界質量が作られる時間に対応する。その後、劇的な伸長期が続き、原繊維濃度が急速に増加する。
【0258】
調査を、Fluoroskan Ascent FL又はFluoroskan Ascent内において37℃で振盪することによりストレス条件下で実行して、細動傾向を決定した。
Fluoroskan Ascent(FL)での試験の場合には、サンプル200μlを、96ウェルマイクロタイタープレートPS(平底、Greiner Fluotrac No.655076)に入れた。プレートを、Scotch Tape(Qiagen)で密封した。960rpmでの10秒間の振盪、及び37℃での50秒間の休息期間の連続サイクルにより、サンプルにストレスを与えた。20分毎に蛍光強度を測定することにより、動態をモニタリングした。
【0259】
ペプチドを、3mg/mlの最終濃度まで、緩衝系で希釈した。ペプチド溶液2mlに、H2O中の10.1mM ThT溶液20μlを添加して、100μM ThTの最終濃度を得た。各サンプルに関して、8回の反復を試験した。
ThT緩衝系A)100mM リン酸緩衝液pH7.4
ThT緩衝系B)100mM リン酸緩衝液pH7.4、2.7mg/ml m-クレゾール
【0260】
GLP-1及びGIP受容体有効性に関するインビトロ細胞アッセイ(受容体を過剰発現するHEK-293細胞株)
ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体又はグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体での化合物のアゴニズムを、それぞれヒトGLP-1受容体又はGIP受容体を安定して発現する組換えPSC-HEK-293細胞株のcAMP反応を測定する機能的アッセイにより決定した。
【0261】
細胞を、37℃に保ったT-175培養フラスコ中において、培地(DMEM/10%FBS)中でコンフルエンス近くまで増殖させ、1,000万~5,000万個の細胞/mlの濃度で、10%DMSOを含む細胞培養培地が入った2mlバイアルに集めた。各バイアルに、細胞1.8mlを入れた。バイアルを、イソプロパノール中において-80℃まで緩やかに凍結し、次いで液体窒素中に移して保存した。
【0262】
この使用前に、凍結細胞を、37℃で急速に解凍し、細胞緩衝液(1×HBSS;20mM HEPES+0.1%BSA、又は実施例の条件/表で示されている場合には0.1%HSA)20mlで洗浄した(900rpmで5分間)。細胞を、アッセイ緩衝液(細胞緩衝液+2mM IBMX)に再懸濁させ、100万個の細胞/mlの細胞密度に調整した。
【0263】
cAMP生成の測定のために、384ウェルプレートに、細胞5μl(最終5000個の細胞/ウェル)及び試験化合物5μlを入れ、続いて室温で30分にわたりインキュベートした。
【0264】
生成されたcAMPを、HTRF(均一時間分解蛍光)に基づくCisbio Corp.のキットを使用して決定した。cAMPアッセイを、製造業者の指示(Cisbio)に従って実施した。
【0265】
溶解緩衝液(キット成分)で希釈したHTRF試薬の添加後、このプレートを、1時間にわたりインキュベートし、続いて665/620nmでの蛍光比を測定した。最大反応の50%活性化を引き起こす濃度(EC50)を決定することにより、アゴニストのインビトロ効力を定量した。
【0266】
GIP受容体有効性に関するインビトロ細胞アッセイ(脂肪細胞)
加えて、ヒトGIP受容体を内因的に発現するヒト脂肪細胞のcAMP反応を測定する機能的アッセイにより、化合物のGIPRアゴニストを決定した。
【0267】
このため、1バイアルのヒト前駆脂肪細胞(約106個の細胞:Lonza)を、T-75細胞培養皿中で解凍した。細胞を、Promo CellのPreadipocyte Growth Medium with Supplement Mix中において、37℃、5%CO2、95%湿度で培養した。
【0268】
3日後、細胞を、PBS及びトリプシン1.5mlで洗浄し、4分にわたりインキュベートし、次いで、培地に再懸濁させ、300rcf RTで10分にわたり遠心分離し、再度再懸濁させ、4つのT-75細胞培養皿に分配した。再度、細胞を、37℃、5%CO2、95%湿度で培養した。
【0269】
5日後、細胞を、PBS及びトリプシン1.5mlで洗浄し、4分にわたりインキュベートし、次いで培地に再懸濁させ、300rcf RTで10分にわたり遠心分離し、再度再懸濁させ、それぞれ分化培地15mlが入ったT-75皿(皿毎に2.5×106個の細胞)に入れた。
【0270】
この分化培地は、下記の組成を有していた:DMEM(Gibco)、Ham’s F10(Gibco)、15mM HEPES(Gibco)、3%FCS(PAA)、33μM ビオチン(Sigma-Aldrich)、17μM パントテン酸塩(Sigma-Aldrich)、0.1μM ヒトインスリン(Sigma-Aldrich)、1μM デキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、0.1μM PPARガンマアゴニスト(#R2408、Sigma-Aldrich)、0.6×Anti-Anti(#15240、ThermoFisher)、200μM IBMX(AppliChem)、及び0.01μM L-チロキシン(Sigma-Aldrich)。
【0271】
分化の6日後、1つのウェル当たり5000個の細胞を、96ウェルプレート(Corning(登録商標)の#CLS3694、Sigma-Aldrich)に分注した。cAMMP生成の測定のために、96ウェルプレートの各ウェルに試験化合物25μLを入れ、続いて室温で30分にわたりインキュベートした。
【0272】
試験化合物刺激後に生成されたcAMPを、HTRF(均一時間分解蛍光)に基づいてCisbio Corp.のキットを使用して決定した。cAMPアッセイを、製造業者の指示(Cisbio)に従って実施した。
【0273】
細胞のcAMP含有量を、HTRF(均一時間分解蛍光)に基づいてCisbio Corp.のキットを使用して決定した。
【0274】
溶解緩衝液(キット成分)で希釈したHTRF試薬の添加後、このプレートを、1時間にわたりインキュベートし、続いて665/620nmでの蛍光比を測定した。
【0275】
最大反応の50%活性化を引き起こす濃度(EC50)を決定することにより、アゴニストのインビトロ効力を定量した。
【0276】
ヒトGIP及びヒトGLP-1受容体への結合に関するインビトロアッセイ
(1)GIPR又はGLP-1Rを過剰発現するHEK-293細胞からの膜の調製
GIPR又はGLP-1Rを組換えにより過剰発現するHEK-293細胞を、50%コンフルエンシーまで増殖させ、温めた1×PBS(Gibco)で洗浄し、HEPES/EDTA緩衝液(100mM HEPES pH7.5、5mM EDTA)で剥離した。細胞を、4℃及び3000×gでの遠心分離により回収し、ペレットを、さらに処理するまで-80℃で保存した。
【0277】
氷上で解凍させた後、ペレットを、HEPES/EDTA緩衝液に再懸濁させ、Ultra-Turray T25を使用して、1分にわたり氷上でホモジナイズした。その後の超音波処理の後、1000×g及び4℃での遠心分離により、細胞破片を除去した。次いで、上清を、30分にわたり真空下で100000×g及び4℃にて超遠心分離した。ペレットを、HEPES/EDTA/NaCl緩衝液(20mM HEPES、1mM EDTA、150mM NaCl;緩衝液10mlに、1つのComplete Mini Protease阻害剤カクテルを添加した)に再懸濁させ、BCAタンパク質アッセイによりタンパク質含有量を決定した。
【0278】
(2)ヒトGIPR又はGLP-1Rに対する試験化合物の結合活性の測定
GIPR又はGLP-1Rに対する結合活性の測定のために、100pMの最終濃度でのそれぞれ[125I]GIP又は[125I]GLP-1(PerkinElmer)、及び10種類の濃度の試験化合物を、アッセイ緩衝液[50mM HEPES(pH7.4、WAKO)、5mM EGTA(WAKO)、5mM MgCI2(WAKO)、及び0.005%Tween20(BioRad)]中において、GLP-1R又はGIPRを発現するHEK-293細胞膜(1μg/タンパク質のウェル)でコーティングされたPVT-WGA SPAビーズ(0.125mg/ウェル;Perkin-Elmer)と混合し、2時間にわたり室温でインキュベートした。それぞれ1及び2μM 非標識コールド参照リガンドの非存在下(全結合)及び存在下(非特異的結合)における[125I]標識ホットリガンド(GIP、GLP-1)結合の量の間での差違として、特異的結合を算出した。
【0279】
マウス、ラット、サル、及びブタでのエキセンディン-4誘導体の薬物動態評価
化合物を、好適な緩衝系(例えば、用量、種、及び投与量に応じて0.05、0.1、0.5、又は1mg/mlの濃度でのPBS緩衝液pH7.4又はDPBS溶液)で投与した。
【0280】
マウス
雌C57Bl/6マウスに、0.25mg/kg、0.5mg/kg、又は1mg/kgを静脈内(i.v.)投与したか、又は皮下(s.c.)投与した。マウスを屠殺し、i.v.投与から0.08、0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、及び48時間後に、並びにs.c.投与から0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、及び48時間後に、それぞれ血液サンプルを採取した。血漿サンプルを、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)により、タンパク質沈殿後に分析した。ノンコンパートメントモデル及び線形台形内挿算出を使用するPhoenix-WinNonlin 8.1を使用して、PKパラメータ及び半減期を算出した。
【0281】
ラット
雄SDラットに、0.25mg/kg、0.5mg/kg、又は1mg/kgを静脈内(i.v.)投与したか、又は皮下(s.c.)投与した。i.v.投与から0.08、0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、及び48時間後に、並びにs.c.投与から0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、及び48時間後に、それぞれ血液サンプルを採取した。血漿サンプルを、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)により、タンパク質沈殿後に分析した。ノンコンパートメントモデル及び線形台形内挿算出を使用するPhoenix-WinNonlin 8.1を使用して、PKパラメータ及び半減期を算出した。
【0282】
サル
雄カニクイザルに、0.1mg/kgを静脈内(i.v.)投与したか、又は皮下(s.c.)投与した。i.v.投与から0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、48、及び72時間後に、並びにs.c.投与から0.5、1、2、4、8、24、48、72、及び96時間後に、それぞれ血液サンプルを採取した。血漿サンプルを、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)により、タンパク質沈殿後に分析した。ノンコンパートメントモデル及び線形台形内挿算出を使用するPhoenix-WinNonlin 8.1を使用して、PKパラメータ及び半減期を算出した。
【0283】
ミニブタ
雌Goettingenミニブタに、0.05mg/kgを静脈内(i.v.)投与したか、又は0.1mg/kgを皮下(s.c.)投与した。i.v.投与から0時間、並びに0.083、0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、48、56、72、80、及び96時間後に、並びにs.c.投与から0時間、並びに0.25、0.5、1、2、4、8、24、32、48、56、72、80、及び96時間後に、それぞれ血液サンプルを採取した。血漿サンプルを、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)により、タンパク質沈殿後に分析した。ノンコンパートメントモデル及び線形台形内挿算出を使用するPhoenix-WinNonlin 8.1を使用して、PKパラメータ及び半減期を算出した。
【0284】
健康な雄C57Bl/6マウスの腹腔内(i.p.)耐糖能試験(ipGTT)における血糖への皮下(s.c.)処理後の急性効果
健康で血糖正常の雄C57Bl/6NCrlマウスを、Charles River Laboratories Deutschland GmbH,97633 Sulzfeld,Germanyに、9~10週齢、体重(BW)約24~26gで注文した。マウスを、グループ化して飼育して出荷し(1つのケージ当たりN=4)、1週間にわたり順化させ、試験全体を通してグループ化して飼育したままであった。マウスを、12時間の明暗サイクル(明期AM06:00~PM06:00)、平均室温22±2℃、及び相対平均湿度55±10%を含む動物施設条件下で飼育した。全ての動物に、試験開始前に飼料(Ssniff R/M-H食餌)及び水に自由にアクセスさせた。試験開始時に、マウスは、10~11週齢であった。
【0285】
この試験の主要目的は、マウスipGTT設定における化合物により誘発される血糖可動域の低下及び耐糖能の改善を調べることであり、従って、主要パラメータには、血糖値、デルタ血糖値(i.p.グルコースチャレンジ直前の時点、t=0時間に対して正規化されている)、及びそれぞれの算出された曲線下面積(AUC)値が含まれていた。この試験を、6群による急性単回投与試験として実施し、雄動物を、1群当たり7~8匹のマウスの群に無作為に分けた。GIPRアゴニストの用量依存的な薬力学的血糖降下有効性を、3~100nmol/kgの用量範囲のi.p.グルコース負荷の6時間前のs.c.注射により分析し、ビヒクル群、及び10nmol/kgの用量でのセマグルチド陽性コントルールと比較した。
【0286】
より詳細には、マウスに一晩給餌し、翌朝、食餌を除去したが水へのアクセスを自由にした実験室に移した。採血(5μl)を、t=0時間の時点でi.p.投与するBW 1kg当たりグルコース1gのグルコースボーラスの-6.5、-0.5、0、0.17、0.5、1、1.5、2、及び3時間前後に実施した。t=0.17時間の時点で、血漿インスリン分析のために、血液60~80μlから追加のK-EDTA血漿サンプルを採取した。尾の先端から採血した。GIPRアゴニスト及びセマグルチドを、2.3%グリセロール及び0.01%ポリソルベート20(ビヒクル)を含む10mM リン酸緩衝液pH7.4に溶解させ、5ml/kgの注入量を使用して、グルコース負荷の6時間前(t=0時間)にs.c.処置を実施した。滅菌ろ過したビヒクル溶液を使用して、実験前に注射溶液を新たに調製した。
血糖を、酵素的に決定した(Gluco-quant(登録商標)Glucose/HKキット、Roche/Hitachi 912)。血漿インスリンを、Meso Scale Discoveryのマウス/ラットインスリンサンドイッチ免疫測定キットを使用して決定した。
【0287】
データ収集及び統計解析
全データを、Microsoft Excelを使用して収集した。いずれのデータも、オンラインで収集したものではなかった。結果を、平均±平均の標準誤差(SEM)で表す。主要な試験パラメータとして、血糖、ベースライン(t=0時間の時点)が減算されたデルタ血糖、及びそれぞれの算出された曲線下面積(AUC)値を決定した。それぞれのAUCデータを、t=0時間~t=2時間の期間にわたり、台形公式を使用して算出した。
【0288】
皮下化合物又はビヒクル処理後のipGTT血糖可動域データ応答の統計解析を、血糖生データの算出されたAUC値、及びベースラインが減算されたデルタ血糖データの算出されたAUC値に実施した。第1の工程では、Leveneの検定を使用して、群間の分散の均等に関して検定した。Leveneの検定が有意であった(p≦0.05)場合には、ANOVA解析を実行する前に、算出されたAUCデータのランク変換を適用して分散を安定させた。Leveneの検定が有意ではなかった(p>0.05)場合は、事前にランク変換を行なうことなくANOVAを実行した。第2の工程では、因子処理の一元ANOVA解析、及びそれに続くビヒクル群とのDunnettの多重比較決定を使用して、統計的差違を検定した。全ての解析を、インターフェースソフトウェアEverSt@t V6.1によりLinux下でSAS(バージョン9.4)を使用して実施した。
【実施例】
【0289】
本発明を、下記の実施例によりさらに示す。
【0290】
実施例1:配列番号6の合成
方法で説明されている固相合成を、Novabiochem Rink-Amide樹脂(4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセトアミド-ノルレウシルアミノメチル樹脂)、100~200メッシュ、0.35mmol/gの負荷量で実行した。自動型Fmoc合成戦略を、アミノ酸配列に応じてHBTU/DIPEA活性化又はHATU/DIPEA活性化と共に適用した。固相合成プロトコルでは、14位でFmoc-Lys(Mmt)-OHを使用し、1位でBoc-Tyr(tBu)-OHを使用した。方法で説明されているように、樹脂上のペプチドからMmt基を開裂させた。その後、塩基としてDIPEAを用い、且つカップリング試薬としてHATU/HOAtを用いて、遊離したアミノ基に、HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu(CAS番号1118767-16-0)をカップリングさせた。ペプチドを、Kingのカクテルにより樹脂から開裂させた(D.S.King,C.G.Fields,G.B.Fields,Int.J.Peptide Protein Res. 1990,36,255-266)。
【0291】
粗生成物を、アセトニトリル/水勾配(両緩衝剤とも0.1%TFAを含む)を使用して、Watersカラム(Waters SunFire C18 OBD Prep 5μm 50×150mm)による分取HPLCにより精製した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
【0292】
精製されたペプチドを、LCMS(方法B)により分析した。保持時間12.72分のピーク下で見出される質量シグナルの逆重畳積分により、ペプチド質量4333.36が明らかになり、これは、期待値4333.32と一致している。
【0293】
実施例2:配列番号19の合成
方法で説明されている固相合成を、Novabiochem Rink-Amide樹脂(4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセトアミド-ノルレウシルアミノメチル樹脂)、100~200メッシュ、0.35mmol/gの負荷量で実行した。自動型Fmoc合成戦略を、アミノ酸配列に応じてHBTU/DIPEA活性化又はHATU/DIPEA活性化と共に適用した。固相合成プロトコルでは、14位でFmoc-Lys(Mmt)-OHを使用し、1位でBoc-Tyr(tBu)-OHを使用した。方法で説明されているように、樹脂上のペプチドからMmt基を開裂させた。その後、塩基としてDIPEAを用い、且つカップリング試薬としてHATU/HOAtを用いて、遊離したアミノ基に、HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu(CAS番号1118767-16-0)をカップリングさせた。ペプチドを、Kingのカクテルにより樹脂から開裂させた(D.S.King,C.G.Fields,G.B.Fields,Int.J.Peptide Protein Res. 1990,36,255-266)。
【0294】
粗生成物を、アセトニトリル/水勾配(水は0.1%TFAを含む)を使用して、Watersカラム(Waters SunFire C18 OBD Prep 5μm 50×150mm)による分取HPLCにより精製した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
【0295】
その後、ペプチドを、酢酸(50mM、pH2.7)及びACN(15:2)に溶解させ、アセトニトリル/水勾配(両緩衝剤とも0.5%酢酸を含む)を使用して、分取HPLC(Akta avant 25a、Column:RP Kinetex 21.2×250mm、体積CV 88ml、5μm、C18、100A)により精製した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
精製されたペプチドを、LCMS(方法B)により分析した。保持時間14.96分のピーク下で見出される質量シグナルの逆重畳積分により、ペプチド質量4941.54が明らかになり、これは、期待値4941.55と一致している。
【0296】
実施例3:配列番号28の合成
方法で説明されている固相合成を、Fmoc-Ser(tBu)-Wang樹脂((S)-(9H-フルオレン-9-イル)メチル(1-(tert-ブトキシ)-3-オキソプロパン-2-イル)カルバメート樹脂)、100~200メッシュ、0.42mmol/gの負荷量で実行した。自動型Fmoc合成戦略を、アミノ酸配列に応じてHBTU/DIPEA活性化又はHATU/DIPEA活性化と共に適用した。固相合成プロトコルでは、14位でFmoc-Lys(Mmt)-OHを使用し、1位でBoc-Tyr(tBu)-OHを使用した。方法で説明されているように、樹脂上のペプチドからMmt基を開裂させた。その後、塩基としてDIPEAを用い、且つカップリング試薬としてHATU/HOAtを用いて、遊離したアミノ基に、HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu(CAS番号1118767-16-0)をカップリングさせた。ペプチドを、Kingのカクテルにより樹脂から開裂させた(D.S.King,C.G.Fields,G.B.Fields,Int.J.Peptide Protein Res. 1990,36,255-266)。
【0297】
粗生成物を、最初に、アセトニトリル/水勾配(水は0.1%TFAを含む)を使用して、Watersカラム(Waters Xselect CSH Prep C18 5μm 30×250mm)による分取HPLCにより精製し、その後、アセトニトリル/水勾配(水は0.1%ギ酸を含む)を使用して、Watersカラム(Waters Xselect CSH Prep C18 5μm 30×250mm)による分取HPLCにより精製した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
精製されたペプチドを、LCMS(方法B)により分析した。保持時間12.24分のピーク下で見出される質量シグナルの逆重畳積分により、ペプチド質量5071.61が明らかになり、これは、期待値5071.58と一致している。
【0298】
実施例4:配列番号25の合成
方法で説明されている固相合成を、Novabiochem Rink-Amide樹脂(4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセトアミド-ノルレウシルアミノメチル樹脂)、100~200メッシュ、0.36mmol/gの負荷量で実行した。自動型Fmoc合成戦略を、アミノ酸配列に応じてHBTU/DIPEA活性化又はHATU/DIPEA活性化と共に適用した。固相合成プロトコルでは、14位でFmoc-Lys(Mmt)-OHを使用し、1位でBoc-Tyr(tBu)-OHを使用した。方法で説明されているように、樹脂上のペプチドからMmt基を開裂させた。その後、塩基としてDIPEAを用い、且つカップリング試薬としてHATU/HOAtを用いて、遊離したアミノ基に、HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu(CAS番号1118767-16-0)をカップリングさせた。ペプチドを、Kingのカクテルにより樹脂から開裂させた(D.S.King,C.G.Fields,G.B.Fields,Int.J.Peptide Protein Res.1990,36,255-266)。
【0299】
粗生成物を、アセトニトリル/水勾配(水は0.1%TFAを含む)を使用して、Watersカラム(Waters Xselect CSH Prep C18 5μm 30×250mm)による分取HPLCにより精製した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
【0300】
精製されたペプチドを、LCMS(方法B)により分析した。保持時間11.80分のピーク下で見出される質量シグナルの逆重畳積分により、ペプチド質量4936.52が明らかになり、これは、期待値4936.56と一致している。
【0301】
実施例5:配列番号36の合成
方法で説明されている固相合成を、Novabiochem Rink-Amide樹脂(4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノメチル)-フェノキシアセトアミド-ノルレウシルアミノメチル樹脂)、100~200メッシュ、0.36mmol/gの負荷量で実行した。自動型Fmoc合成戦略を、アミノ酸配列に応じてHBTU/DIPEA活性化又はHATU/DIPEA活性化と共に適用した。固相合成プロトコルでは、18位でFmoc-Lys(Mmt)-OHを使用し、1位でBoc-Tyr(tBu)-OHを使用した。方法で説明されているように、樹脂上のペプチドからMmt基を開裂させた。その後、塩基としてDIPEAを用い、且つカップリング試薬としてHATU/HOAtを用いて、遊離したアミノ基に、HO-{AEEA}2-gGlu(OtBu)-C18OtBu(CAS番号1118767-16-0)をカップリングさせた。ペプチドを、Kingのカクテルにより樹脂から開裂させた(D.S.King,C.G.Fields,G.B.Fields,Int.J.Peptide Protein Res.1990,36,255-266)。
【0302】
粗生成物を、アセトニトリル/水勾配(水は0.1%TFAを含む)を使用して、Watersカラム(Waters Xselect CSH Prep C18 5μm 30×250mm)による分取HPLCにより精製した。精製されたペプチドを、集めて凍結乾燥させた。
【0303】
精製されたペプチドを、LCMS(方法B)により分析した。保持時間16.95分のピーク下で見出される質量シグナルの逆重畳積分により、ペプチド質量4932.56が明らかになり、これは、期待値4932.55と一致している。
【0304】
同様の方法で、表2で列挙されている他のペプチドを合成してキャラクタライズした。
【0305】
【0306】
【0307】
実施例6:化学的安定性
ペプチドサンプルを、化学的安定性緩衝系A又はBで調製し、安定性を、方法で説明されているように評価した。結果を、表3及び表4に示す。
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
実施例7:溶解性
ペプチドサンプルを、溶解性緩衝系A又はCで調製し、溶解性を、方法で説明されているように評価した。結果を、表5及び表6に示す。
【0312】
【0313】
【0314】
【0315】
【0316】
実施例8:ThTアッセイで評価した安定性
ペプチドサンプルのチオフラビンT(ThT)アッセイにおけるラグタイム(時間)を、方法で説明されているThT緩衝系Aで決定した。結果を、表7に示す。
【0317】
【0318】
【0319】
実施例9:ヒトGLP-1及びGIP受容体のインビトロデータ(受容体を過剰発現するHEK-293細胞株)
ヒトGIP受容体(hGIPR)又はヒトGLP-1受容体(hGLP-1 R)を発現する細胞を、0.1%BSA、0.1%HSAの存在下で、又はアルブミンなし(0%HSA)なしで、方法で説明されているように、斬増濃度で、列挙された化合物に曝露し、生成されたcAMPを測定することにより、ヒトGLP-1又はGIP受容体でのペプチド性化合物の効力を決定した。
【0320】
結果を、表8に示す。
【0321】
【0322】
【0323】
実施例10:ヒトGIP受容体(ヒト脂肪細胞)のインビトロデータ
ヒトGIP受容体(ヒト脂肪細胞)を発現する細胞を、方法で説明されているように、斬増濃度で、列挙された化合物に曝露し、生成されたcAMPを測定することにより、ヒトGIP受容体でのペプチド性化合物の効力を決定した。
【0324】
結果を、表9に示す。
【0325】
【0326】
【0327】
実施例11:ヒトGLP-1及びGIP受容体のインビトロ親和性データ(結合アッセイ)
ヒトGIP受容体及びヒトGLP-1受容体に対するペプチド性化合物の親和性を、方法で説明されているように決定した。
【0328】
結果を、表10に示す。
【0329】
【0330】
【0331】
実施例12:薬物動態試験
薬物動態プロファイルを、方法で説明されているように決定した。算出されたT1/2及びCmax値を、表11~13に示す。
【0332】
【0333】
【0334】
【0335】
実施例13:C57Bl/6マウスでのipGTT中における血糖可動域及び耐糖能への配列番号6の皮下処置の急性効果
雄のC57Bl/6NCrlマウスに一晩給餌し、翌朝、飼料を取り除いたが水は自由に飲めるようにした。6群のマウス(各群N=8のマウス)を、ビヒクル、GIPRアゴニスト配列番号6の漸増用量(3、10、30、若しくは100nmol/kg)、又は陽性コントロールとしての10nmol/kg セマグルチドの皮下注射により、1回処置した。適用量は、5ml/kgであり、用量を、午前中に取得した各個体の最新の体重記録に応じて調整した。投与を、06:30~07:00AMで開始して完了した。投与の6時間後に、マウスに、グルコース溶液の腹腔内ボーラス注射によりチャレンジし、GIPRアゴニストの血糖降下及び耐糖能改善に対する用量依存的な薬力学的効果を、ビヒクル群及びセマグルチド陽性コントロールと比較して分析した。
【0336】
ビヒクル群と比較した場合には、GIPRアゴニスト配列番号6による単回用量処置は、AUC分析データ若しくは生の血糖濃度で観察された減少により示されるように(10nmol/kg用量の場合にはp<0.0001、表14を参照されたい)、又はベースライン補正血糖濃度値での増分性AUCi分析(30nmol/kg用量の場合にはp=0.0015、表15を参照されたい)により示されるように、10~30nmol/kgの範囲の最小有効用量でのi.p.グルコース負荷後にC57Bl/6NCrlマウスにおいてi.p.耐糖能の有意で用量依存的な改善を誘導した。
【0337】
【0338】
【0339】
実施例14:C57Bl/6マウスでのipGTT中における血糖可動域及び耐糖能への配列番号35の皮下処置の急性効果
雄のC57Bl/6NCrlマウスに一晩給餌し、翌朝、飼料を取り除いたが水は自由に飲めるようにした。6群のマウス(各群N=8のマウス)を、ビヒクル、GIPRアゴニスト配列番号35の漸増用量(3、10、30、若しくは100nmol/kg)、又は陽性コントロールとしての10nmol/kg セマグルチドの皮下注射により、1回処置した。適用量は、5ml/kgであり、用量を、午前中に取得した各個体の最新の体重記録に応じて調整した。投与を、06:30~07:00AMで開始して完了した。投与の6時間後に、マウスに、グルコース溶液の腹腔内ボーラス注射によりチャレンジし、GIPRアゴニストの血糖降下及び耐糖能改善に対する用量依存的な薬力学的効果を、ビヒクル群及びセマグルチド陽性コントロールと比較して分析した。
【0340】
ビヒクル群と比較した場合には、GIPRアゴニスト配列番号35による単回用量処置は、AUC分析データ若しくは生の血糖濃度で観察された減少により示されるように(10nmol/kg用量の場合にはp=0.0001、表16を参照されたい)、又はベースライン補正血糖濃度値での増分性AUCi分析(30nmol/kg用量の場合にはp=0.0025、表17を参照されたい)により示されるように、10~30nmol/kgの範囲の最小有効用量でのi.p.グルコース負荷後にC57Bl/6NCrlマウスにおいてi.p.耐糖能の有意で用量依存的な改善を誘導した。
【0341】
【0342】
【0343】
【0344】
【0345】
【配列表】
【国際調査報告】