(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】コンパクトな低角度イオンビーム抽出アセンブリおよび処理装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/08 20060101AFI20241001BHJP
H01J 27/16 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01J37/08
H01J27/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522284
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022041682
(87)【国際公開番号】W WO2023064048
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレス, ジェイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ベサメ, ソロモン ベランゲディ
(72)【発明者】
【氏名】アングリン, ケヴィン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ロックウェル, タイラー
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA31
5C101BB08
5C101DD03
5C101DD23
5C101DD25
5C101DD38
5C101EE45
5C101FF15
5C101FF57
5C101FF59
(57)【要約】
抽出アセンブリは、第1の方向に直角な第2の方向に沿って延びるアパーチャ高さを有する、第1の方向に沿って伸長された抽出アパーチャを有する、プラズマチャンバの側面に沿って配置するための抽出プレートを含み得る。抽出プレートは、第1の平面内にある、抽出アパーチャに沿った内面を画定する。ビームブロッカーが抽出アパーチャの上に配置され、第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有する。したがって、ビームブロッカーは、抽出アパーチャの第1の縁部に沿った第1の抽出スリットと、抽出アパーチャの第2の縁部に沿った第2の抽出スリットとを画定するように、第1の縁部に沿って抽出プレートと第1の重複距離だけ重複し、第2の縁部に沿って抽出プレートと第2の重複距離だけ重複する。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマチャンバの側面に沿って配置される抽出プレートであって、前記抽出プレートが、第1の方向に直角な第2の方向に沿って延びる抽出アパーチャ高さを有する、前記第1の方向に沿って伸長された抽出アパーチャを有し、前記抽出プレートが、第1の平面内にある、前記抽出アパーチャに沿った内面を画定する、抽出プレートと、
前記抽出アパーチャの上に配置され、前記抽出プレートの内側に向かって、前記第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有するビームブロッカーと
を備える、抽出アセンブリであって、
前記ビームブロッカーが、前記抽出アパーチャの第1の縁部に沿った第1の抽出スリットと、前記抽出アパーチャの第2の縁部に沿った第2の抽出スリットとを画定するように、前記第1の縁部に沿って前記抽出プレートと第1の重複距離だけ重複し、前記第2の縁部に沿って前記抽出プレートと第2の重複距離だけ重複する、抽出アセンブリ。
【請求項2】
前記抽出プレートおよび前記ビームブロッカーが誘電体材料を含む、請求項1に記載の抽出アセンブリ。
【請求項3】
前記第1の平面および前記第2の平面が前記第1の抽出スリットおよび前記第2の抽出スリットのための抽出スリット幅を画定し、前記抽出スリット幅が、前記第1の平面および前記第2の平面への垂線に沿った、前記第1の平面と前記第2の平面との間の分離距離である、請求項1に記載の抽出アセンブリ。
【請求項4】
前記第1の重複距離および前記第2の重複距離が前記抽出スリット幅の10%~100%に等しい、請求項3に記載の抽出アセンブリ。
【請求項5】
前記抽出スリット幅が前記抽出アパーチャ高さの5%~40%に等しい、請求項4に記載の抽出アセンブリ。
【請求項6】
前記ビームブロッカーが、前記ビームブロッカーの第1の端部に沿って配置された第1のリッジと、前記ビームブロッカーの第2の端部に沿って配置された第2のリッジとを備える、請求項1に記載の抽出アセンブリ。
【請求項7】
シムアセンブリをさらに備え、前記シムアセンブリが、前記抽出プレートと前記第1のリッジとの間に配置された第1のセットを含み、前記抽出プレートと前記第2のリッジとの間に配置された第2のセットをさらに含む、請求項6に記載の抽出アセンブリ。
【請求項8】
前記抽出プレートおよび前記ビームブロッカーが、前記第1の抽出スリットから第1のイオンビームレットを抽出し、前記第2の抽出スリットから第2のイオンビームレットを抽出するように相互動作可能であり、前記第1のイオンビームレットおよび前記第2のイオンビームレットが10度未満のビーム角度広がりを生成する、請求項1に記載の抽出アセンブリ。
【請求項9】
前記第1の抽出スリットからの前記第1のイオンビームレットおよび前記第2のイオンビームレットが前記第1の平面および前記第2の平面への垂線に対して20度未満のビーム平均角を画定する、請求項8に記載の抽出アセンブリ。
【請求項10】
プラズマを格納するためのプラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバの側面に沿って構成された抽出プレートであって、前記抽出プレートが、第1の方向に直角な第2の方向に沿って延びる抽出アパーチャ高さを有する、前記第1の方向に沿って伸長された抽出アパーチャを有し、前記抽出プレートが、第1の平面内にある、前記抽出アパーチャに沿った内面を画定する、抽出プレートと、
前記抽出アパーチャの上に配置され、前記抽出プレートの内側に向かって、前記第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有するビームブロッカーと
を備える、処理装置であって、
前記ビームブロッカーが、前記抽出アパーチャの第1の縁部に沿った第1の抽出スリットと、前記抽出アパーチャの第2の縁部に沿った第2の抽出スリットとを画定するように、前記第1の縁部に沿って前記抽出プレートと第1の重複距離だけ重複し、前記第2の縁部に沿って前記抽出プレートと第2の重複距離だけ重複する、処理装置。
【請求項11】
前記抽出プレートおよび前記ビームブロッカーが誘電体材料を含む、請求項10に記載の処理装置。
【請求項12】
前記第1の平面および前記第2の平面が前記第1の抽出スリットおよび前記第2の抽出スリットのための抽出スリット幅を画定し、前記抽出スリット幅が、前記第1の平面および前記第2の平面への垂線に沿った、前記第1の平面と前記第2の平面との間の分離距離である、請求項10に記載の処理装置。
【請求項13】
前記第1の重複距離および前記第2の重複距離が前記抽出スリット幅の10%~100%に等しい、請求項12に記載の処理装置。
【請求項14】
前記抽出スリット幅が前記抽出アパーチャ高さの5%~40%に等しい、請求項12に記載の処理装置。
【請求項15】
前記ビームブロッカーが、前記ビームブロッカーの第1の端部に沿って配置された第1のリッジと、前記ビームブロッカーの第2の端部に沿って配置された第2のリッジとを備える、請求項10に記載の処理装置。
【請求項16】
シムアセンブリをさらに備え、前記シムアセンブリが、前記抽出プレートと前記第1のリッジとの間に配置された第1のセットを含み、前記抽出プレートと前記第2のリッジとの間に配置された第2のセットをさらに含む、請求項15に記載の処理装置。
【請求項17】
前記抽出プレートおよび前記ビームブロッカーが、前記第1の抽出スリットから第1のイオンビームレットを抽出し、前記第2の抽出スリットから第2のイオンビームレットを抽出するように相互動作可能であり、前記第1のイオンビームレットおよび前記第2のイオンビームレットが10度未満のビーム角度広がりを生成する、請求項10に記載の処理装置。
【請求項18】
前記第1の抽出スリットからの前記第1のイオンビームレットおよび前記第2のイオンビームレットが前記第1の平面および前記第2の平面への垂線に対して20度未満のビーム平均角を画定する、請求項17に記載の処理装置。
【請求項19】
プラズマを格納するためのプラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバに隣接して配置された抽出アセンブリであって、
前記プラズマチャンバの側面に沿って構成された抽出プレートであって、前記抽出プレートが、第1の方向に直角な第2の方向に沿って延びるアパーチャ高さを有する、前記第1の方向に沿って伸長された抽出アパーチャを有し、前記抽出プレートが、第1の平面内にある、前記抽出アパーチャに沿った内面を画定する、抽出プレートと、
前記抽出アパーチャの上に配置され、前記抽出プレートの内側に向かって、前記第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有するビームブロッカーと、
前記ビームブロッカーを前記抽出プレートに可逆的に連結する結合アセンブリと
を備える、抽出アセンブリと
を備える、コンパクトな角度付きイオンビーム装置であって、
前記結合アセンブリが、前記第2の方向に沿った、前記抽出プレートと前記ビームブロッカーとの間の重複距離を調整し、前記抽出アセンブリのスリット幅を調整するように構成され、前記スリット幅が、前記第1の平面および前記第2の平面に直角な第3の方向に沿った、前記抽出プレートと前記ビームブロッカーとの間の距離を含む、コンパクトな角度付きイオンビーム装置。
【請求項20】
前記ビームブロッカーが、
前記ビームブロッカーの第1の端部に沿って配置された第1のリッジ、および前記ビームブロッカーの第2の端部に沿って配置された第2のリッジと、
シムアセンブリであって、前記シムアセンブリが、前記抽出プレートと前記第1のリッジとの間に配置された第1のセットを含み、前記抽出プレートと前記第2のリッジとの間に配置された第2のセットをさらに含む、シムアセンブリと
を備える、請求項19に記載のコンパクトな角度付きイオンビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月15日に出願された、「COMPACT LOW ANGLE ION BEAM EXTRACTION ASSEMBLY AND PROCESSING APPARATUS」という名称の、米国非仮出願第17/502,777号の一部継続出願であり、それの優先権を主張する、2021年10月17日に出願された「COMPACT LOW ANGLE ION BEAM EXTRACTION ASSEMBLY AND PROCESSING APPARATUS」という名称の米国非仮特許出願第17/503,334号の優先権を主張し、参照によりそれの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本実施形態は、プラズマ処理装置に関し、より詳細には、低角度イオンビーム抽出光学系に関する。
【背景技術】
【0003】
基板をイオンで処理するために使用される従来の装置としては、ビームラインイオン注入機とプラズマ浸漬イオン注入ツールとがある。どちらも、様々なエネルギーの範囲にわたってイオンを注入するのに適している。ビームラインイオン注入機では、ソースからイオンが抽出され、質量分析され、次いで基板表面に運ばれる。プラズマ浸漬イオン注入装置では、同じチャンバ中に基板が配置され、プラズマはプラズマに隣接して生成される。基板はプラズマに対して負電位に設定され、基板の前のプラズマシース(sheath)を横切るイオンは、基板の主面への法線または垂線に対して0入射角で基板上に入射する。最近、コンパクトな構成で基板処理のための角度付きイオンビームを与える新しい処理装置が開発された。イオンは、プラズマに近接して置かれた抽出プレート中に配置された特殊な幾何形状のアパーチャを通して抽出される。イオンは、基板の主面への法線でない入射角を与えるようにして抽出される。そのような装置は、主面への法線に沿って延びる側壁を有する構造の処理のためになど、非平面状の表面の処理を容易にする。
【0004】
コンパクトな角度付きイオンビーム装置の1つのタイプは、プラズマチャンバ中に収容されたプラズマからイオンビームを抽出するために、プラズマチャンバに隣接する抽出アパーチャを採用する。デバイス構造を均一に処理するために、抽出アパーチャの中央にビームブロッカー部材が配置され得、ビームブロッカー部材は、トレンチの対向する側壁など、デバイス構造の対向する表面が1回の処理で露光され得るように、基板に対して対向する角度で向けられた(基板の主面上の法線に対して対称な)角度付きイオンビームレットのペアを作成する。
【0005】
しばしば、抽出アパーチャは細長い形状を有し、したがって、おそらく数ミリメートル~数センチメートルの高さと、最高数百mmの幅とを有するリボンイオンビームのペアが抽出される。イオンビームが、処理されるべき基板(たとえば、300mmSiウエハ)よりも広い場合、抽出アパーチャの伸長方向に直角な方向に抽出アパーチャの前で基板を走査することによって、基板の全体が2つの対称イオンビームレットに露光され得る。
【0006】
ビームブロッカーの存在は角度付きイオンビームの作成を容易にするが、抽出アパーチャを通して抽出されるビーム電流はビームブロッカーの存在によって減少する。ビーム電流のこの減少は、プラズマチャンバの側面に沿って複数の抽出アパーチャを設け、対称的なイオンビームレットのペアを複数同時に生成することで対処され得る。しかしながら、プラズマがプラズマチャンバ内で均一でないと、プラズマチャンバに沿って異なる位置に配置された異なる抽出アパーチャから抽出されたイオンビームは互いに異なり得る。したがって、異なる抽出アパーチャに露光される基板の異なる領域は、異なる入射角など、異なる特性を有する異なるイオンビームで処理される可能性がある。
【0007】
角度付きイオンを使用して基板を処理する際のもう一つの問題は、入射角の制御である。角度付きイオンビームは平均角によって特徴づけられ得るが、角度付きイオンビームは、「角度広がり」と呼ばれることがある入射角の分布を伴って生成される。いくつかの適用例では、比較的広い角度広がりにわたる基板の処理は許容できる。他の適用例では、平均入射角が比較的低い場合を含めて、比較的狭い角度広がりが要求され得る。現在では、上記の要件を満たすための抽出装置はない。これらおよび他の考慮事項に関して、本開示が提供される。
【発明の概要】
【0008】
本概要は、発明の詳細な説明で後述する概念の一部を簡略化して紹介するものである。本概要は、クレームされる主題の主要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、クレームされる主題の範囲を決定する際に助けになることを意図したものでもない。
【0009】
一実施形態では、プラズマチャンバの側面に沿って配置するための抽出プレートであって、第1の方向に沿って細長く、アパーチャ高さを有し、第1の方向に対して直角な第2の方向に沿って延びた抽出アパーチャを有する、抽出プレートを備える、抽出アセンブリが提供される。抽出プレートは、第1の平面内にある、抽出アパーチャに沿った内面を画定する。ビームブロッカーが抽出アパーチャの上に配置され、抽出プレートの内側に向かって、第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有する。したがって、ビームブロッカーは、抽出アパーチャの第1の縁部に沿った第1の抽出スリットと、抽出アパーチャの第2の縁部に沿った第2の抽出スリットとを画定するように、第1の縁部に沿って抽出プレートと第1の重複距離だけ重複し、第2の縁部に沿って抽出プレートと第2の重複距離だけ重複する。
【0010】
別の実施形態では、処理装置は、プラズマを格納するためのプラズマチャンバと、プラズマチャンバの側面に沿って構成された抽出プレートであって、抽出プレートは、第1の方向に沿って細長く、アパーチャ高さを有する第1の方向に直角な第2の方向に沿って延びた抽出アパーチャを有する、抽出プレートとを含み得る。抽出プレートは、第1の平面内にある、抽出アパーチャに沿った内面を画定し得る。処理装置は、抽出アパーチャの上に配置され、抽出プレートの内側に向かって、第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有するビームブロッカーをさらに含み得る。したがって、ビームブロッカーは、抽出アパーチャの第1の縁部に沿った第1の抽出スリットと、抽出アパーチャの第2の縁部に沿った第2の抽出スリットとを画定するように、第1の縁部に沿って抽出プレートと第1の重複距離だけ重複し、第2の縁部に沿って抽出プレートと第2の重複距離だけ重複し得る。
【0011】
さらなる実施形態では、プラズマを格納するためのプラズマチャンバと、プラズマチャンバに隣接して配置され、プラズマチャンバの側面に沿って構成された抽出プレートを備える抽出アセンブリとを備える、コンパクトな角度付きイオンビーム装置が提供される。抽出プレートは、第1の方向に直角な第2の方向に沿って延びるアパーチャ高さを有する、第1の方向に沿って伸長された抽出アパーチャを含み得、抽出プレートは、第1の平面内にある、抽出アパーチャに沿った内面を画定する。本装置は、抽出アパーチャの上に配置され、抽出プレートの内側に向かって、第1の平面とは異なる第2の平面内に配置された外面を有するビームブロッカーを含み得る。本装置は、ビームブロッカーを抽出プレートに可逆的に連結する結合アセンブリをさらに含み得、結合アセンブリは、第2の方向に沿った、抽出プレートとビームブロッカーとの間の重複距離を調整し、抽出アセンブリのスリット幅を調整するように構成され、スリット幅が、第1の平面および第2の平面に直角な第3の方向に沿った、抽出プレートとビームブロッカーとの間の距離を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1B】例示的な抽出アセンブリの拡大図を示す図である。
【
図1C】本開示の実施形態による、抽出アセンブリに対する基板および基板ホルダーの幾何形状を示す正面図である。
【
図1D】本開示の実施形態による、抽出アセンブリの詳細を示す図である。
【
図2A-2C】本開示の実施形態の3つの異なる変形例についての静電等電位線(electrostatic equipotential line)およびイオン軌道のシミュレーションを提示する図である。
【
図3A】
図2A~
図2Cに示された実施形態の3つの異なる変形例についての放射率(emissivity)曲線および角度分布を提示する図である。
【
図3B】
図2A~
図2Cに示された実施形態の3つの異なる変形例についての放射率(emissivity)曲線および角度分布を提示する図である。
【
図3C-3E】本開示の異なる実施形態による、ビームブロッカーと抽出プレートとの間の重複の異なる値についてのビーム角度の関数としての電流測定結果を示す図である。
【
図4A】基板を処理するための装置の一実装形態を示す図である。
【
図4B】うまく調整されたビームイオン角度分布(IAD)の一例を提示する図である。
【
図4C】
図4Bに示されているものと同じ平均角を有する、あまりうまく調整されていないビームを示す図である。
【
図5A】本開示の追加の実施形態による、抽出アセンブリを示す図である。
【
図6A-6C】本開示の実施形態による、抽出アセンブリの3つの異なる構成を示す図である。
【
図6D-6F】本開示の実施形態による、抽出アセンブリの3つの異なる構成を示す図である。
【
図6G】抽出プレート-ビームブロッカーアセンブリの背面図と正面図とを示す図である。
【
図7A-7D】本開示の実施形態の4つの異なる変形例についての静電等電位線およびイオン軌道のシミュレーションを提示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、いくつかの実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本実施形態について以下でより十分に説明する。本開示の主題は、ただし、多くの異なる形態で実施され得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が周到で完全になり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように与えられる。図面において、全体にわたって同様の番号は同様の要素を指す。
【0014】
本明細書で説明する実施形態は、ビームブロッカー-抽出プレートアセンブリから構成されたイオン光学系配置を使用して基板に向けられるイオンの角度分布を制御するための装置、システム、および方法を提供する。特に、本実施形態は、制御された低い入射角および小さい「角度広がり」でプラズマからイオンビームを生成するための新規の抽出システムを提供する。本明細書で「入射角」への言及は、基板への垂線など、基準方向に対するイオンビーム中のイオンの平均入射角を指し得るが、「角度広がり」という用語は、平均角を中心とした入射角の分布または範囲の幅を指し得る。
【0015】
以下で詳述するように、イオンビームの入射角が、プラズマチャンバ内のプラズマを処理される基板に対する通常の(垂直な)見通し線から遮断するための抽出システムを用いて逆説的に制御される、新規のイオンビーム装置が開示される。結果として、抽出されるイオンビームのビーム電流が低減され得、それには、狭い角度広がりを有する低角度イオンビームが生成され得るという、以前に実現されていない利点が得られる。高アスペクト比デバイス構造のプラズマ処理の場合は、提供する装置、システム、および方法は、他の表面に影響を及ぼすことなしに、これらの構造の、側壁など、ターゲットにされた表面を適切に処理し得るイオンビームを有するという利点が得られる。
【0016】
図1Aは、本開示の実施形態による装置100の実施形態を示す。
図1Bは例示的な抽出アセンブリの拡大図を示す。装置100はプラズマチャンバ1を含み、そのチャンバ中では、RF電源5と、整合ネットワーク6と、RFアンテナ4とによって誘導結合プラズマ(ICP)が生成される。プラズマチャンバ1は、マニホルド2と動作ガスライン3とを通してガス種を受け取り得る。角度付きイオンビームを生成するために、ビームブロッカー7と抽出プレート8とを含む抽出アセンブリが与えられる。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ1ならびにビームブロッカー7および抽出プレート8は誘電体材料(たとえば、アルミナ、石英、窒化アルミニウム)から形成され得る。
【0017】
プラズマチャンバ1に隣接してプロセスチャンバ20が配置される。プラズマチャンバ1を接地電位に保ち、バイアス源12を使用して、プロセスチャンバ20中に配置された基板10と基板ホルダー11とに負バイアスを印加することによって、プラズマチャンバから陽イオンが抽出され得る。ウエハへのイオン入射角が(基板の主面(x-y平面)への垂線(z軸)に対して)0である、知られているプラズマ処理ツールとは異なり、本実施形態では、イオンのビームレットが0でない入射角で基板10の表面に当たる。たとえば、様々な非限定的な実施形態では、これらの0でない入射角は、-α~+αにおいて約0度で対称に配置され得る。これらの角の大きさはプラズマ密度および抽出電圧(基板上に印加される負バイアス電圧)の関数である。
【0018】
いくつかの実施形態では、ガス流16を生成するためにガスシャワーヘッド15に連結された追加のガス注入ライン14が与えられ得る。基板10に様々なタイプの動きを与えるために、上下運動ステージ17と回転運動ステージ18とが設けられ得る。
【0019】
抽出プレート8は抽出アパーチャ22を画定し、ビームブロッカー7は、第1の抽出スリット24と第2の抽出スリット26とを画定するように抽出アパーチャ22に近接して配置される。第1のプラズマメニスカスおよび第2のプラズマメニスカスがプラズマメニスカス13として示されており、これらのメニスカスは第1の抽出スリット24および第2の抽出スリット26という2つの抽出スリットの各々において形成される(
図1B参照)。第1の抽出スリット24および第2の抽出スリット26を通して、2つの別個のビームレットとして示されているイオンビーム9が抽出される。処理中、基板10は、上下運動ステージ17によって2つの抽出スリットの前で(y軸に沿って)上および下に走査され得る。
図1Cに示されているように、抽出アパーチャ22、ビームブロッカー7、したがって、第1の抽出スリット24および第2の抽出スリット26は、基板10の幅の全体を越えて延びるように、x方向に沿って伸長され得る。このようにして、y軸に沿った走査中に基板10の基板表面の全体がイオンビーム9に露光され得る。所与の走査速度に対して、走査の数は、必要とされるイオン用量と利用可能なイオンビーム電流とに基づいて決定される。
【0020】
説明の目的で、基板の走査速度が10cm/sであり、基板ロケーションにおけるy軸に沿ったイオンビーム高さが30mmである場合、イオン衝撃を受ける任意の基板表面が費やす時間は300ミリ秒である。イオンビーム9が、40kHzのパルス周波数および50%のデューティサイクルでパルスイオンビームとして抽出される場合、基板表面は、抽出アパーチャの前を通過している間に約6,000サイクルのイオン衝撃にさらされる。これらの条件の下では、基板の処理歩留まり(たとえば、エッチング速度)は、イオンエネルギー、イオン束、入射角、およびイオンビーム9によって処理されるべき材料の性質の複合関数であり得る。回転運動ステージ18の使用、全360°にわたって0.1°の増分でのウエハ回転が可能になることで、高いプロセス均一性が、実現できる。
【0021】
次に
図1Dを見ると、本開示の実施形態による抽出アセンブリ30のさらなる詳細が示されている。この実施形態では、抽出プレート8は、図示のように、抽出アパーチャ22を有する電気絶縁性の誘電体材料として与えられる。抽出アパーチャ22は、図示のデカルト座標系におけるx方向を意味する第1の方向に沿って伸長され得る。抽出アパーチャ22は、第1の方向に直角な(つまりy方向に沿った)、第2の方向に沿って延びる、H
EPとして示されているアパーチャ高さによって特徴づけられる。抽出プレート8は、第1の平面P1内にある、抽出アパーチャ22に沿った内面40を画定する。ビームブロッカー7は、抽出プレート8の内側に向かって、第1の平面P1とは異なるがそれに並行な第2の平面P2内に配置された外面42を有する。
【0022】
図1Dにさらに示されているように、ビームブロッカー7は、H
BLとして示されているビームブロッカー高さによって特徴づけられ、また、抽出アパーチャ22の第1の縁部44に沿って抽出プレート8と第1の重複距離O1だけ重複し、抽出アパーチャ22の第2の縁部46に沿って抽出プレート8と第2の重複距離O2だけ重複するように構成される。これらの重複距離によって、抽出アセンブリ30のプラズマ側PLと抽出アセンブリの基板側SUとの間に垂直(Z軸に沿った)見通し線がない。この構成は、プラズマからの十分なビーム電流の抽出を容易にするように抽出アパーチャの中央にビームブロッカーが設けられた、知られている抽出アセンブリの構成とは異なる。しかしながら、本発明者らは、以下で説明するように、
図1Dの構成が特殊なビーム特性を与え得ることを発見した。
【0023】
図1A~
図1Dのアーキテクチャの効果を示すために、
図2A~
図2Cは、本開示の実施形態の3つの異なる変形例についての静電等電位線およびイオン軌道のシミュレーションを提示する。特に、図示のシミュレーションでは、ビームブロッカー7は、以下の寸法、すなわち、z方向に沿った5mmの厚さと、高さh
BLとをもつ矩形断面を有する。ビームブロッカーは、(図の平面に直角な)x方向に沿って450mm延び得る。ビームブロッカー7には抽出プレート8が隣接しており、その構成要素はまた、プラズマチャンバ200の壁のうちの1つを形成する。抽出プレート8は、x方向に沿って420mm延びる矩形アパーチャを有し、y軸に沿った高さh
EPを有する。説明の目的で、
図2Aでは、ビームブロッカー7と抽出プレート8とは、等しい高さh
BL=h
EPを有し、ビームブロッカー7が抽出アパーチャ22と完全に重複するような様態で整合させられる。ビームブロッカー7の外面42は抽出プレート8の内面40から4mm引っ込んでいるので、ブロッカー-抽出プレートアセンブリは、2つの同等のスリット(13b)を形成し、それらのスリットを通して(イオンビーム9として示されている)ビームレットが抽出される。ビームブロッカー7および抽出プレート8は誘電体材料から製造され(このシミュレーションではアルミナが使用された)、その材料は、これらの部材の大部分を形成し、実際的な実装形態では、所与のプラズマチャンバ中の過酷な化学反応環境に耐えられるように薄い保護フィルム(同じく誘電体)で被覆され得る。
【0024】
静電的な観点から、ビームブロッカー7および抽出プレート8の誘電体材料は電界線に対して透過的であり、その透過性は、電界線が抽出プレート8を貫通し、プラズマチャンバ200中のプラズマ中に突出することを意味する。スリット13bを通って出現するイオンの軌道の特性は、抽出アセンブリの右側に対する、プラズマと真空との間の境界を形成するプラズマメニスカスの形状とロケーションとによって規定される。メニスカス形成は、その圧力がプラズマをスリット13bの外側に押そうとする「プラズマ圧力」と、その圧力がプラズマをスリット13bの内側に押そうとする「静電圧力」との間の平衡の結果である。これらの2つの拮抗作用は、前者についてはプラズマ密度によって、後者については静電界によって定量化される。数学的には、この条件はプラズマシース縁部におけるボーム(Bohm)電流間の平衡
j
Bohm=en
sv
Bohm (1)
として表され、ここでeは素電荷を表し、n
sはシース縁部におけるプラズマ密度(n
s=0.61n
0、n
0はバルクプラズマ密度)であり、v
Bohm=(k
BT
e/m
i)
1/2はボーム速度であり、k
B、T
e、およびm
iは、それぞれボルツマン定数、電子温度、およびイオン質量を指す。チャイルド-ラングミュア(Child-Langmuir)空間電荷制限電流は
によって与えられ、ε
0は自由空間の誘電率であり、V
eは抽出電圧であり、zは抽出間隙長さ(スリットとウエハの距離)である。
【0025】
これらの条件の下で、y方向に沿った抽出プレート高さh
EPに対する(y方向に沿った)ビームブロッカー高さh
BLが高くなると、プラズマメニスカスは、プラズマの内側により深く移動し、より凹形になる。ビームブロッカー7と抽出プレートとの相対的な重複は
図2A~
図2CにパラメータΔyとして表されている。Δyに対する0mm~1mm~2mmというそれぞれの値の間の、
図2Aと
図2Bと
図2Cとの間の推移が示されているように、抽出されるビーム電流は、メニスカスがプラズマの内側に後退するにつれて実質的に低減され、プラズマチャンバ200とプロセスチャンバ204との間には垂直見通し線がない。さらに、基板10の主面(x-y)への垂線(z軸)に対するビーム平均入射角はわずかに増加する。
【0026】
特に、ビームブロッカー7と抽出プレート8との重複が作成されるこの幾何形状の変化の副次的影響は、以下で詳述するように、ビーム角度広がりが著しく減少することである。言い換えれば、イオンビーム9を形成するビームレットのイオン軌道は入射角のはるかに狭い範囲にわたって基板10上に入射する。
【0027】
図3Aおよび
図3Bは、動作範囲の中間において、V
e=1kV、z
gap=10mm(
図2C参照)、およびP=600Wを意味する、プラズマチャンバ(イオン源)についてのイオン源「平均」動作パラメータを使用した、
図2A~
図2Cに示されている3つの幾何形状についての放射率曲線のOPERAモデリングの結果を示す。
図3Aは、Δyが図示のように変動する、3つの異なるイオン抽出幾何形状についての、基板上の位置に応じた平均入射角をプロットしている。平均角は、2つの異なるビームレット(そのビームレットは一緒にイオンビーム9を画定する)が垂線(z軸)に対して正または負のいずれかの入射角を画定するように、z軸(0度)に対して絶対値でプロットされる。イオン衝撃が発生する約4mmと約12mm(+または-)との間の位置では、ビームブロッカー7と抽出プレート8との重複Δyが2mmであるときに、Δyに対して0mmのビームブロッカー7と抽出プレート8との重複に対して2~3度の平均入射角だけ増加するなど、平均角はわずかに高くなる。
【0028】
図3Bは、Δyが図示のように変動する、同じ3つの異なるイオン抽出幾何形状についての、平均角に応じた電流密度をプロットしている。
図3Aの場合と同様に、結果は、0度(z軸)の周りに対称に配置された、2つの異なるビームレットの影響を反映する。図示のように、ビーム電流は、Δy=0mmに対して、重複が1mmまたは2mmである場合よりも広範囲の角度にわたって分散される。より定量的には、ビーム角度広がり(BAS)は、Δyが0mmから2mmに増加するにつれて10°から6°に減少する。
【0029】
図3A~
図3Bの結果に加えて、
図3C、
図3Dおよび
図3Eは、Δyの値が0mm、1mm、または2mmである場合のビーム角度の関数としての電流測定の結果を示す(抽出幾何形状の概略描写が図の左側に示されている)。
図3C、
図3Dおよび
図3Eに示されている実験結果は、20sccm/10sccmの比率のAr/CF
4の混合物をプラズマチャンバ中に流し、2.25kVのバイアスで所与の抽出アセンブリを通してイオンビームを抽出することによって生成されるプラズマに基づく。これらの実験における抽出プレートと基板との間の距離(z間隙)は30mmで一定に保持した。y軸に沿った抽出アパーチャ高さはこれらの実験では30mmで一定であった。したがって、30mm~32mm~34mmの異なるビームブロッカー高さを選択することによってΔyの異なる値を設定した。ビームブロッカーは、Δyの値が(ビームブロッカー高さ-抽出アパーチャ高さ)/2として決定されるように、これらの例では抽出アパーチャの上に対称に配置されることに留意されたい。したがって、34mmのビームブロッカーと30mmの抽出アパーチャとの組合せは2mmのΔyの値をもたらす。
【0030】
グラフに示されているように、2mmのΔy値におけるビーム角度広がり(
図3E)は、0mmのΔy値におけるビーム角度広がり(
図3C)よりも実質的に狭い。より定量的には、ビーム角度広がり(BAS)は0mmのΔyにおける13.4°からΔy=2mmにおける9.4°に減少するが、平均ビーム角は13.6°から17.7°に増加する。また、Δyの値が0mmである場合について
図3Cに示された、5度未満の極めて低い角度に向かう有意なイオン電流のテール部は、Δy=2mmである場合にはなくなっている。
【0031】
これらの差の有意性は以下で
図4A~
図4Cに対して強調される。
図4Aを見ると、基板10を処理するための装置100の一実装形態が示されている。この例では、イオンビーム9は、基板に対する2つのビームレットとして、z軸に対して+αまたは-αの平均角を有する軌道に向けられる。基板10は、側壁SWLを有するパターン特徴を含む。したがって、イオンビーム9は、側壁SWLを含むこれらの特徴の様々な部分に影響を及ぼし得る。アレイとして構成されたとき、これらの特徴はまた、側壁SWLと底面Bとを有するトレンチを画定する。αの大きさと、これらのトレンチのアスペクト比とに応じて、イオンビーム9は底面Bに影響を及ぼすこともあり、及ぼさないこともある。
【0032】
y方向に沿ってトレンチ伸長部を生成するために角度付きイオンビームが使用される例では、イオンビーム9は、トレンチの側壁SWLのエッチングを実行するように設計される。トレンチ特徴を有するいくつかのデバイス構造では、アスペクト比は約4.5:1以上にもなり得る。4.5:1のアスペクト比の例を使用すると、この幾何形状は約13°の受容ビーム角を画定し、このことは、側壁SWLの下側部分はトレンチ特徴の上部(たとえば、ハードマスク)によって陰にされるので、13°よりも高い入射角を有するイオンビームは側壁SWLに十分な影響を及ぼさないことを意味する。したがって、これらの適用例では、高アスペクト比のトレンチの側壁をエッチングするために比較的低い入射角が要求される。さらに、垂直壁(SWL)のエッチングは底面Bの凹みなしに実行されるべきである。これらの二重の目標を達成するためには、低ビーム角度広がりを有する、うまく調整された低角度イオンビームが要求される。
図4Bは、図示の所与のトレンチ特徴についての上記の要件を満たすための、うまく調整されたビームイオン角度分布(IAD)の例を提示する(明快のために、2つの対称ビームレットの一方だけがスケッチされている)。イオンビームレットの平均角は、Δαのビーム角度広がりとともに、αとして示されている。この場合、イオン束は、イオンが側壁SWLに上から下まで当たるように、角度のある範囲にわたって入射するが、下面Bには入射しない。したがって、特徴の上部は耐エッチング材料(ハードマスク)から製造されるので、エッチングは側壁SWLに沿って行われるが、底面Bに沿ったエッチングは行われない。
【0033】
反対に、
図4Cは、(Δβとして示されている)より広い角度広がりとともに、(この場合もαとして示されている)同じ平均角を有する、あまりうまく調整されていないビームを示す。(影付き部分に示されている)所与の最小角を下回る軌道を有するイオンを表すIADの部分はトレンチの下面Bに到達するが、最大角を上回る軌道を有するイオンも同様に、上面の過度のエッチングを引き起こす傾向がある。したがって、上記の例は、入射角における小さい偏差が、不要な領域に当たることによって基板処理プロセスに悪影響を及ぼし得る、低い平均入射角の場合を含む、狭いイオン角度分布を与えることの有用性を証明する。
【0034】
図5Aは、本開示の追加の実施形態による抽出アセンブリ300を示す。抽出プレート8に加えて、抽出アセンブリ300は、抽出プレート8にビームブロッカーを結合するために使用される結合アセンブリ310を含み、ビームブロッカーは概してビームブロッカー7として示されている。結合アセンブリ310は取付けピン302とスクリーニングワッシャ304とを含み、これらの構成要素は、ビームブロッカー7を抽出プレート8に連結するために使用される。以下の
図6A~
図6Cに関して詳述するように、結合アセンブリ310は、抽出プレート8に対する、したがって抽出アパーチャ22に対するビームブロッカー7の配置に関するフレキシビリティを与える。
図5Bの詳細図に示されているように、このフレキシビリティにより、重複Δy、ならびに、スリット幅またはswとして示されている抽出スリット24、26の大きさの独立した調整が可能になる。
【0035】
次に
図6A~
図6Cを見ると、抽出アセンブリ300の3つの異なる構成が示されている。特に、主要なセクションがx-z平面に沿っている斜視断面図が示されている。特に、x-z平面の図は、
図6Gの上面図に表されているように、ビームブロッカー-抽出プレートアセンブリの中間にある、抽出アパーチャ22の端部部分Eの近くに位置するセクションA-A’に沿っている。
図6D~
図6Fでは、y-z平面に沿って示され、
図6GのセクションC-C’に表されている、それぞれの
図6A~
図6Cに対応する、抽出アパーチャ22の領域中に抽出プレート8およびビームブロッカーの断面がある。
【0036】
図6Aに示されているように、結合アセンブリ310は、スクリーニングワッシャ304および取付けピン302、ならびにロックワッシャ308を含む。
図6Aの構成では、ビームブロッカー307として示されているビームブロッカー7の変形例が与えられる。ビームブロッカー307はリッジ309を含み、そのリッジは第1のリッジと見なされ得る。同様に、(x方向に沿った)ビームブロッカー307の反対の端部において、ビームブロッカー307上に第2のリッジが配置され得る。結合アセンブリ310はシム(shim)アセンブリ306をさらに含み、そのアセンブリは1つまたは複数のスペーサまたはシムを含み得る。
図6Aに示されているように、リッジ309と抽出プレート8との間にはシムアセンブリ306の1つのシムが配置される。抽出プレート8とリッジ309との間の1つまたは複数のシムまたはスペーサの配置は、
図6Dに示されているように、ビームブロッカー307の外面42と抽出プレート8の内面40との間の距離またはswを変更することを容易にする。
図6Dの一例では、抽出アパーチャ22は、30mmのy軸に沿った高さを有し得るが、ビームブロッカー307は32mmの高さを有し、それにより、抽出アパーチャ22の各縁部に沿った、ビームブロッカー307と抽出プレート8との1mmの対称な重複が可能になる。シムアセンブリ306のスペーサが1mmの厚さを有する一実施形態では、swとして示されている抽出スリット24Aの得られたスリット幅は3.17mmであり得る。
【0037】
図6Bに示されているように、結合アセンブリ310は、この場合ビームブロッカー317として示されている、ビームブロッカー7の別の変形例を抽出プレート8に連結するために使用され得る。ビームブロッカー317はまた、リッジ319を含み、そのリッジは第1のリッジと見なされ得る。同様に、(x方向に沿った)ビームブロッカー317の反対の端部において、ビームブロッカー317上に第2のリッジが配置され得る。結合アセンブリ310はシムアセンブリ316をさらに含み、そのアセンブリは、リッジ319と抽出プレート8との間に配置された2つのスペーサを含む。
【0038】
抽出プレート8とリッジ319との間の2つのシムまたはスペーサの配置は、
図6Eに示されているように、ビームブロッカー317の外面42と抽出プレート8の内面40との間のスリット幅距離またはswをさらに増加させることを容易にする。
図6Eの一例では、抽出アパーチャ22は、30mmのy軸に沿った高さを有し得るが、ビームブロッカー317は34mmの高さを有し、それにより、抽出アパーチャ22の各縁部に沿った、ビームブロッカー317と抽出プレート8との2mmの対称な重複が可能になる。シムアセンブリ306のスペーサが1mmの厚さを有する一実施形態では、抽出スリット24Bの得られたswは4.09mmであり得る。
【0039】
図6Cに示されているように、結合アセンブリ310は、この場合ビームブロッカー327として示されている、ビームブロッカー7の別の変形例を抽出プレート8に連結するために使用され得る。ビームブロッカー327はまた、リッジ329を含み、そのリッジは第1のリッジと見なされ得る。同様に、(x方向に沿った)ビームブロッカー317の反対の端部において、ビームブロッカー327上に第2のリッジが配置され得る。結合アセンブリ310はシムアセンブリ326をさらに含み、そのアセンブリは、ビームブロッカー327と抽出プレート8との間に配置された2つのスペーサを含む。この例では、リッジ329は、リッジ329が、抽出プレート8から離れて、ビームブロッカー327の上面に配置されているという点で、「リバース」リッジである。したがって、ビームブロッカー327の外面42は、
図6Fに示されているように、抽出プレート8の内面40からさらに離れて離間している。
【0040】
図6Fの一例では、抽出アパーチャ22は、30mmのy軸に沿った高さを有し得るが、ビームブロッカー327は34mmの高さを有し、それにより、抽出アパーチャ22の各縁部に沿った、ビームブロッカー327と抽出プレート8との2mmの対称な重複が可能になる。シムアセンブリ306のスペーサが1mmの厚さを有する一実施形態では、抽出スリット24Bの得られたswは5.77mmであり得る。Δyおよびswの上記の例は例にすぎず、任意の好適な追加の組合せが結合アセンブリ310によって容易に与えられ得る。さらに、これらの例は、様々な実施形態によれば、mm寸法を単位として与えられるが、重複Δyは抽出アパーチャのスリット幅を単位として表され得、すなわち、抽出スリット幅(sw)に対する抽出アパーチャの両方の縁部上の重複の比率は約0.1~1.0になり得る。
【0041】
したがって、結合アセンブリ310は、ビームブロッカーと抽出プレートとの間の重複(Δy)の度合い、ならびにz方向に沿ったビームブロッカーと抽出プレートとの間のスリット幅または間隙を変更するフレキシブルなやり方を与える。このフレキシビリティの利点について
図7A~
図7Dに関してさらに説明する。
【0042】
図2A~
図2Cのシミュレーションと同様に、
図7A~
図7Dは、本開示の実施形態の4つの異なる変形例についての静電等電位線およびイオン軌道のシミュレーションを提示する。特に、これらの図に示されているモデリングの結果は、Δy=1mmおよびΔy=2mmの値をもたらす2つの異なるビームブロッカー高さと、sw=4mmおよびsw=6mmの2つの異なるスリット幅の場合のイオンビームの形状とを示す。これらのシミュレーションの結果は、ビームブロッカー高さが高くなるとビーム電流が少なくなることを示す。この結果は予想外ではない。なぜなら、前記のように、抽出アセンブリの知られた構成では、ビームブロッカーはプラズマから十分なビーム電流が取り出されるように、抽出プレートと重複しない。同じくこれらの図に示されているように、スリット幅が広くなると、ウエハ上のビームフットプリントが広くなり、暗黙的にビーム電流が大きくなる。したがって、結合アセンブリ310は、ビームブロッカーとシムアセンブリとの異なる構成を抽出プレートに容易に結合することによって、ビーム角度広がりを狭くするために、ビームブロッカーと抽出プレートとの重複を独立して調整し、また所与の重複に対して抽出可能なビーム電流を増加または減少させるために、スリット幅を独立して調整する能力を促進する。
【0043】
表Iに見られ得るように、高さΔy=2mmの場合に、6mmのスリット幅に対する抽出されるイオンビーム電流は3.88mAのビーム電流を与え、その値は、Δy=0mmである4mmのスリット幅に対するビーム電流の値よりも17.5%大きい。
【0044】
本開示によれば、様々な実施形態は以下の利点を与え得る。第1の利点として、本実施形態は、ホールのターゲットにされた表面を適切にエッチングするために、低い入射角および狭い角度広がりが要求される、高アスペクト比のホールをエッチングすることが可能であるという利点を与える。第2の利点として、本開示の実施形態は、狭い角度広がりを有するイオンビームに対してビーム電流の許容できるレベルを維持するために、抽出プレートとビームブロッカーとの間の重複の量から独立した、抽出されるビーム電流の容易な調整可能性を与える。
【0045】
本開示は、本明細書で説明した特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書で説明したものに加えて、本開示の他の様々な実施形態および本開示への改変が上記の説明および添付の図面から当業者には明らかになろう。したがって、そのような他の実施形態および改変は本開示の範囲内に入ることが意図されている。さらに、本開示については、特定の目的のための特定の環境における特定の実施形態のコンテキストにおいて本明細書で説明したが、それの有用性はそれらに限定されないこと、および本開示は任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実施され得ることを、当業者は認識するであろう。したがって、以下に記載する特許請求の範囲は、本明細書で説明した本開示の全範囲および趣旨に鑑みて解釈されるべきである。
【国際調査報告】