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特表2024-536963物理学ベースモデルをセットアップするためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】物理学ベースモデルをセットアップするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20241003BHJP
【FI】
G06N99/00 180
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578777
(86)(22)【出願日】2022-10-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022046136
(87)【国際公開番号】W WO2023064194
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/254,178
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/959,712
(32)【優先日】2022-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユアール チャド
(72)【発明者】
【氏名】パンネールチェルバム プレムクマル
(72)【発明者】
【氏名】パーシー ガイ
(72)【発明者】
【氏名】アガルワル アンクール エイ
(57)【要約】
物理学ベースモデルをセットアップするためのシステムおよび方法が提供される。1つのシステムは、1つ以上のコンピュータサブシステムによって実行され、半導体製作関連プロセス、および、複数のフェーズにおいて物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、複数のフェーズのそれぞれにおいて物理学ベースモデルのパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされる、セットアップ構成要素を表現した物理学ベースモデルを含む、1つ以上の構成要素を含む。セットアップ構成要素の構成は、複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた物理学ベースモデルのパラメータの全てのサブセットに基づいて、複数のフェーズのうちの少なくとも2つの間で変更される。セットアップ構成要素は、複数の情報源および目的関数を使用したカスケード型モデルのセットアップまたは校正のためにベイズ最適化技法を実施し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたシステムであって、
1つ以上のコンピュータサブシステムと、
前記1つ以上のコンピュータサブシステムによって実行される1つ以上の構成要素であって、前記1つ以上の構成要素が、半導体製作関連プロセスを表現した前記物理学ベースモデル、およびセットアップ構成要素を備え、前記セットアップ構成要素が、
前記物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる前記物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較すること、および前記結果と前記基準データとの差に応じて出力を生成することを行うように構成された目的関数、
前記目的関数の近似として構成され、前記1つ以上のパラメータの前記異なる値に応じて前記目的関数によって生成された前記出力にフィットされた代理関数、ならびに
前記代理関数に基づいて、前記物理学ベースモデルのための前記1つ以上のパラメータの追加の値を選択するように構成された獲得関数
を含み、
前記セットアップ構成要素が、複数のフェーズにおいて前記物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、前記複数のフェーズのそれぞれにおいて、前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされ、
前記セットアップ構成要素の構成が、前記複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全ての前記サブセットに基づいて、前記複数のフェーズのうちの前記少なくとも2つの間で変更される、
1つ以上の構成要素と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記セットアップ構成要素が、前記複数のフェーズがカスケード型最適化フェーズであるベイズ最適化技法を実施するようにさらに構成されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズの前記それぞれが、前記複数のフェーズのうちの以前に実施されたいずれかによって生成された出力に基づいて実施されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される前記目的関数が、前記複数のフェーズのうちの少なくとも別のフェーズにおいて異なる目的関数で置き換えられることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記セットアップ構成要素への入力が、複数の情報源を含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの1つにおいて前記獲得関数によって選択された前記追加の値が、前記複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの値として前記目的関数によって使用されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記目的関数が、前記複数のフェーズの前記それぞれにおいて一定であることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズの前記それぞれにおいて前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全ての前記サブセットのみをセットアップすることが、前記目的関数を最大化する、前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全ての前記サブセットの最適値がわかるまで、前記選択された追加の値を前記目的関数に入力することを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの1つにおいてフィットされた前記代理関数が、前記複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて利用されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの1つにおいて前記物理学ベースモデルによって生成された前記結果が、前記複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて前記目的関数に入力され、前記複数のフェーズのうちの前記1つおよび前記複数のフェーズのうちの前記その後の1つにおける前記基準データの少なくとも1つの重みが異なることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される前記獲得関数が、前記複数のフェーズのうちの少なくとも別のフェーズにおいて異なる獲得関数で置き換えられることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される前記基準データが、前記複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて異なる基準データで置き換えられることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記基準データおよび前記異なる基準データが、前記物理学ベースモデルの異なる計算複雑性を生じることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項12に記載のシステムであって、前記基準データが、前記異なる基準データより前記物理学ベースモデルにとって計算効率のよいソースであることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、前記代理関数が、パラメータ空間における前記1つ以上のパラメータの前記異なる値のロケーションに予測目的関数値の上限を提供することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの前記少なくとも1つで使用される前記目的関数および前記代理関数が、前記複数のフェーズのうちの前記その後の1つにおいて異なる目的関数および異なる代理関数でそれぞれ置き換えられることを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、前記複数のフェーズのうちの前記少なくとも1つのうちの1つ以上で使用される前記獲得関数が、前記複数のフェーズのうちの前記その後の1つにおいて異なる獲得関数で置き換えられ、前記異なる獲得関数が、前記追加の値を選択するために前記代理関数および前記異なる代理関数をサンプリングすることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムであって、前記目的関数が、機械学習モデルとしてさらに構成されることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムであって、前記代理関数が、機械学習モデルとしてさらに構成されることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムであって、前記半導体製作関連プロセスが、リソグラフィプロセスであることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項1に記載のシステムであって、前記半導体製作関連プロセスが、エッチングプロセスであることを特徴とするシステム。
【請求項22】
物理学ベースモデルをセットアップするためのコンピュータ実装方法を実施するための1つ以上のコンピュータシステム上で実行可能なプログラム命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ実装方法が、
前記物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる半導体製作関連プロセスを表現した前記物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較すること、および目的関数を用いて前記結果と前記基準データとの差に応じて出力を生成することと、
前記目的関数の近似として構成された代理関数を、前記1つ以上のパラメータの前記異なる値に応じて前記目的関数によって生成された前記出力にフィットさせることと、
獲得関数を用いて前記代理関数に基づいて前記物理学ベースモデルのための前記1つ以上のパラメータの追加の値を選択することであって、前記目的関数、前記代理関数、および前記獲得関数が、セットアップ構成要素に含まれ、前記セットアップ構成要素および前記物理学ベースモデルが、前記1つ以上のコンピュータシステムによって実行される1つ以上の構成要素に含まれる、選択することと
を含み、
前記セットアップ構成要素が、複数のフェーズにおいて前記物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、前記複数のフェーズのそれぞれにおいて、前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされ、
前記セットアップ構成要素の構成が、前記複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全ての前記サブセットに基づいて、前記複数のフェーズのうちの前記少なくとも2つの間で変更される
ことを特徴とする非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項23】
物理学ベースモデルをセットアップするためのコンピュータ実装方法であって、
前記物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる半導体製作関連プロセスを表現した前記物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較するステップ、および目的関数を用いて前記結果と前記基準データとの差に応じて出力を生成するステップと、
前記目的関数の近似として構成された代理関数を、前記1つ以上のパラメータの前記異なる値に応じて前記目的関数によって生成された前記出力にフィットさせるステップと、
獲得関数を用いて前記代理関数に基づいて前記物理学ベースモデルのための前記1つ以上のパラメータの追加の値を選択するステップであって、前記目的関数、前記代理関数、および前記獲得関数が、セットアップ構成要素に含まれ、前記セットアップ構成要素および前記物理学ベースモデルが、1つ以上のコンピュータシステムによって実行される1つ以上の構成要素に含まれる、ステップと
を含み、
前記セットアップ構成要素が、複数のフェーズにおいて前記物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、前記複数のフェーズのそれぞれにおいて、前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされ、
前記セットアップ構成要素の構成が、前記複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた前記物理学ベースモデルの前記1つ以上のパラメータの全ての前記サブセットに基づいて、前記複数のフェーズのうちの前記少なくとも2つの間で変更される
ことを特徴とするコンピュータ実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、物理学ベースモデルをセットアップするためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の説明および例は、それらが本セクションに含まれるという理由で従来技術であると自認されるわけではない。
【0003】
ロジックデバイスおよびメモリデバイスなどの半導体デバイスの製作は、典型的には、様々な特徴および複数レベルの半導体デバイスを形成するために、多くの半導体製作プロセスを使用して半導体ウエハなどの基板を加工することを含む。例えば、リソグラフィは、半導体ウエハ上に配置されたレジストにレチクルから模様を転写することを伴う半導体製作プロセスである。半導体製作プロセスのさらなる例は、化学機械研磨(CMP)、エッチング、堆積、およびイオン注入を含むが、これらに限定されない。複数の半導体デバイスが単一の半導体ウエハ上に配置されて製作され、次いで、個々の半導体デバイスに分離されることがある。
【0004】
実験による半導体製作プロセスの最適化の費用および難しさが原因で、プロセスをセットアップおよび最適化する実験作業を置き換えることが可能なプロセスの物理モデルを作成するために、多くの努力が行われてきた。理論上、物理モデルは、実験を介して異なるプロセスパラメータ値を評価しようとすることより多くの異なるプロセスパラメータ値を速くかつ安く評価することができる。
【0005】
本明細書に記載のモデルの観点から、「物理モデル」または「物理学ベースモデル」は、シミュレートすることを目的とする物理プロセスに基づいたおよび表現した、フォワードシミュレーションモデルとして定義される。これらの物理モデルは、モデル化データを基準データにフィットさせることによって典型的にセットされた変更可能なパラメータを有してもよいが、モデル自体は、物理プロセスをどのようにシミュレートするかについて「学習」しない。言い換えれば、本明細書に記載の物理モデルまたは物理学ベースモデルは、機械学習モデルでも深層学習モデルでもない。
【0006】
正確にセットアップされると、物理モデルは、半導体製作プロセスのセットアップおよび最適化において極めて価値あるものになり得る。しかし、物理モデルをセットアップする作業は、容易というにはほど遠く、製作プロセスのセットアップおよび最適化において物理モデルの実装を阻止するおそれがある。例えば、実験のうまくデザインされたセットを使用して、適切な基準データが獲得または生成されなければならず、物理モデルをセットアップするために、適切な最適化手順が識別および使用されなければならない。
【0007】
現在使用されているモデル校正技法は、固定された目的関数を用いた単一ステップ最適化に依存する傾向がある。このような技法は、典型的には、基準データを正確に反映するように物理モデルが適切に校正されることが可能になる前に、段階的に改善して複数回繰り返されなければならない。
【0008】
したがって、現在使用されているモデル校正技法には、いくつかの短所がある。例えば、単一ステップ最適化は、モデルと基準データとの間のマッチを正確かつ一意に定義する目的関数を要求する。このような関数を構築することは、常に可能なわけではない。別の例では、現在の方法を用いた複数の最適化実行が要求される場合、最適化アルゴリズムは、以前の最適化の結果から利益を得ない。さらなる例では、2次元(2D)および3次元(3D)シミュレーションは、比較的長い計算時間を要求する。現在の最適化技法を用いると、目的関数に含まれる全てのシミュレーションスケールが、ロックステップで行われなければならない。この要件は、最適化技法を最も遅い情報源のように遅くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0370797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上述の短所のうちの1つ以上がない、物理学ベースモデルをセットアップするためのシステムおよび方法を開発することが有利になるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
様々な実施形態の以下の説明は、いかなる形であっても、添付の特許請求の範囲の主題を限定するような意味にとられるべきではない。
【0012】
1つの実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたシステムに関する。システムは、1つ以上のコンピュータサブシステムと、1つ以上のコンピュータサブシステムによって実行される1つ以上の構成要素とを含む。1つ以上の構成要素は、半導体製作関連プロセスを表現した物理学ベースモデル、およびセットアップ構成要素を含む。セットアップ構成要素は、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較すること、および結果と基準データとの差に応じて出力を生成することを行うように構成された目的関数を含む。セットアップ構成要素は、目的関数の近似として構成され、1つ以上のパラメータの異なる値に応じて目的関数によって生成された出力にフィットされた、代理関数をさらに含む。セットアップ構成要素は、代理関数に基づいて、物理学ベースモデルのための1つ以上のパラメータの追加の値を選択するように構成された獲得関数をさらに含む。セットアップ構成要素は、複数のフェーズにおいて物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、複数のフェーズのそれぞれにおいて、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされる。セットアップ構成要素の構成は、複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットに基づいて、複数のフェーズのうちの少なくとも2つの間で変更される。システムは、本明細書に記載のようにさらに構成されてもよい。
【0013】
別の実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするためのコンピュータ実装方法に関する。方法は、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる半導体製作関連プロセスを表現した物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較すること、および目的関数を用いて結果と基準データとの差に応じて出力を生成することを含む。方法は、目的関数の近似として構成された代理関数を、1つ以上のパラメータの異なる値に応じて目的関数によって生成された出力にフィットさせることをさらに含む。さらに、方法は、獲得関数を用いて代理関数に基づいて、物理学ベースモデルのための1つ以上のパラメータの追加の値を選択することを含む。目的関数、代理関数、および獲得関数は、セットアップ構成要素に含まれる。セットアップ構成要素および物理学ベースモデルは、1つ以上のコンピュータシステムによって実行される1つ以上の構成要素に含まれる。セットアップ構成要素は、複数のフェーズにおいて物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、複数のフェーズのそれぞれにおいて、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされる。セットアップ構成要素の構成は、複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットに基づいて、複数のフェーズのうちの少なくとも2つの間で変更される。
【0014】
方法のステップのそれぞれは、本明細書にさらに記載されているようにさらに実施されてもよい。方法は、本明細書に記載の他のいずれかの方法の他のいずれかのステップを含んでもよい。方法は、本明細書に記載のシステムのいずれかによって実施されてもよい。
【0015】
別の実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするためのコンピュータ実装方法を実施するための1つ以上のコンピュータシステム上で実行可能なプログラム命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体に関する。コンピュータ実装方法は、上述の方法のステップを含む。コンピュータ可読媒体は、本明細書に記載のようにさらに構成されてもよい。コンピュータ実装方法のステップは、本明細書にさらに記載されているように実施されてもよい。さらに、プログラム命令が実行可能なコンピュータ実装方法は、本明細書に記載の他のいずれかの方法の他のいずれかのステップを含んでもよい。
【0016】
本発明のさらなる利点は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明の恩恵により、および添付の図面を参照すると、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたシステムの1つの実施形態を例示したブロック図である。
図2】物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたセットアップ構成要素の実施形態を例示したブロック図である。
図3】物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたセットアップ構成要素の実施形態を例示したブロック図である。
図4】物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたセットアップ構成要素の実施形態を例示したブロック図である。
図5】物理学ベースモデルをセットアップするために本明細書に記載の実施形態によって使用され得るターゲットの基準データの1つの例を例示した概略図である。
図6】カスケード型最適化ワークフローの1つの例を例示した概略図である。
図7】本明細書に記載のコンピュータ実装方法をコンピュータシステムに実施させるためのプログラム命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体の1つの実施形態を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な変形および代替形式の影響を受けやすいが、その特定の実施形態が、図面に例として示されており、本明細書で詳細に説明される。図面は、一定の比率でないこともある。しかし、図面およびその詳細な説明は、本発明を開示の特定の形式に限定することを意図するものではなく、それどころか、意図は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような、本発明の精神および範囲に属する全ての変形物、同等物、および代替物をカバーすることであることを理解されたい。
【0019】
ここから図面に移るが、図は一定の比率で描かれていないことに留意されたい。特に、図の要素のうちの一部のスケールは、要素の特性を強調するために大いに誇張されている。図は、同じスケールに描かれていないことにも留意されたい。同様に構成されることがある2つ以上の図に示された要素は、同じ参照番号を使用して指示されている。別途本明細書で指摘のない限り、記載および図示の要素のいずれかが、任意の適切な市販の要素を含むこともある。
【0020】
一般に、本明細書に記載の実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするように構成されている。本明細書に記載の一部の実施形態は、複数の情報源および目的関数を使用したカスケード型モデルの校正のために構成される。この実施形態は、基準データを正確に反映するために、半導体加工業界におけるエッチングおよびリソグラフィなどのプロセスの第1原理計算モデルの校正のために使用されてもよい。
【0021】
「物理学ベースモデルをセットアップすること」は、この用語が本明細書で使用されるように、パラメータ選択プロセスが実施される理由に関わらず、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータを選択することとして定義される。例えば、物理学ベースモデルをセットアップすることは、使用のためにまだリリースされたことがない新しい物理学ベースモデルをセットアップすることを含んでもよい。したがって、本明細書に記載の実施形態は、新しい物理学ベースモデルの初期セットアップを生成または実施するために使用されてもよく、新しい物理学ベースモデルは、古いプロセスのための新しいモデル、または新しいプロセスのための新しいモデルであることが可能である。物理学ベースモデルをセットアップすることは、校正または最適化のために行われることがあるような、以前にセットアップされた物理学ベースモデルを変形させることをさらに含んでもよい。このような校正または最適化は、物理学ベースモデルが表現するプロセスの意図的または非意図的な変更を含むがこれらに限定されない、いくつかの理由で実施されてもよい。意図的な変更は、例えば、1つの材料を別の材料と置き換えるとき、または特徴の限界寸法の変更が有利になるときなど、例えば、製造されるデバイスを変更するためのプロセスが変更されたときを含んでもよい。非意図的な変更は、1つの例では、プロセスがどのように実施されるかについての予測外の変動があるときを含んでもよく、これは、このようなプロセスを表現した物理学ベースモデルへのアップデートを有利にする。
【0022】
超小型電子機器製作中のエッチングおよびリソグラフィプロセスに対する制約は、スケーリング要件により絶えず増加している。特徴サイズが小さくなるにつれて、伝統的な実験計画法(DOE)ベースのプロセス最適化の能力は不十分になる。物理学ベースの第1原理モデリングは、高まる需要を現在の技法より効率的に満たす能力を、プロセスエンジニアに提供する。効果的であるために、第1原理モデルは、モデル化されたプロセスの基準データにマッチするように校正されなければならない。この校正プロセスは、モデルの複雑性、および内部モデルパラメータ用の直接測定技法の欠如により、この分野における物理学ベースモデルの使用に対する重大な障害になるおそれがある。超小型電子機器製作業界におけるこのような物理学ベースモデルの利用の成功を実現するために、斬新な最適化技法が要求される。
【0023】
本明細書に記載の実施形態は、いくつかの(つまり2つ以上の)カスケード型最適化フェーズを含むベイズ最適化(BO:Bayesian optimization)技法を利用して最適化を実施するための方法を提供する。1つの実施形態では、複数のフェーズのそれぞれが、複数のフェーズのうちの以前に実施されたいずれかによって生成された出力に基づいて実施される。例えば、本明細書にさらに記載されているように、このカスケード型最適化技法は、全ての以前のフェーズからの最適化フェーズ毎の予備知識を使用してもよい。カスケード型最適化技法は、さらに、各最適化フェーズ中に異なる目的関数の使用を可能にする。さらなる実施形態では、セットアップ構成要素への入力は、複数の情報源を含む。例えば、本明細書にさらに記載されているように、カスケード型最適化技法は、各最適化ステップにおける比較的長いシミュレーションの数を低減させるために、かなり迅速なシミュレーションの使用を可能にするような方式で、複数の情報源の使用を可能にする。
【0024】
1つの実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするように構成されたシステムに関する。このようなシステムの1つの実施形態が図1に示されている。システムは、1つ以上のコンピュータサブシステム102、および、1つ以上のコンピュータサブシステムによって実行される1つ以上の構成要素104を含む。1つ以上の構成要素は、本明細書にさらに記載されているように構成されてもよく、当技術で知られた任意の適切な様式で、1つ以上のコンピュータサブシステムによって実行されてもよい。
【0025】
コンピュータサブシステムは、さらに、本明細書ではコンピュータシステムと呼ばれることもある。本明細書に記載のコンピュータサブシステムまたはシステムのそれぞれは、パーソナルコンピュータシステム、画像コンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、ネットワーク機器、インターネット家電、または他のデバイスを含む、様々な形式でよい。一般に、用語「コンピュータシステム」は、1つ以上のプロセッサを有する任意のデバイスを包含するように広く定義されてもよく、メモリ媒体からの命令を実行する。コンピュータサブシステムまたはシステムは、並列プロセッサなど、当技術で知られた任意の適切なプロセッサをさらに含んでもよい。さらに、コンピュータサブシステムまたはシステムは、スタンドアロンまたはネットワーク化ツールとして、高速処理およびソフトウェアを伴うコンピュータプラットフォームを含んでもよい。
【0026】
システムが2つ以上のコンピュータサブシステムを含む場合、コンピュータサブシステム間で画像、データ、情報、命令等が送られることが可能であるように、異なるコンピュータサブシステムが互いに連結されてもよい。例えば、1つのコンピュータサブシステムが、任意の適切な伝送媒体によって別のコンピュータサブシステムに連結されてもよく、伝送媒体は、当技術で知られた任意の適切な有線および/またはワイヤレス伝送媒体を含んでもよい。また、このようなコンピュータサブシステムのうちの2つ以上が、共有コンピュータ可読ストレージ媒体(図示せず)によって、効果的に連結されてもよい。
【0027】
1つ以上のコンピュータサブシステムによって実行される1つ以上の構成要素は、半導体製作関連プロセスを表現した物理学ベースモデル106を含む。1つの実施形態では、半導体製作関連プロセスは、リソグラフィプロセスである。別の実施形態では、半導体製作関連プロセスは、エッチングプロセスである。リソグラフィプロセスおよびエッチングプロセスは、当技術で知られた任意のリソグラフィおよびエッチングプロセスをそれぞれ含んでもよい。さらに、半導体製作関連プロセスは、化学機械研磨(CMP)、堆積、イオン注入などを含む当技術で知られた他のいずれかの半導体製作プロセスを含んでもよい。
【0028】
しかし、本明細書に記載のような「半導体製作関連プロセス」は、プロセスが実施される物理標本への変更を引き起こす上述のものなどのプロセスに限定されない。例えば、用語「半導体製作関連プロセス」は、標本に対する、半導体デバイスの製作に関係のある任意のプロセスとして、本明細書で定義される。プロセスが実施される物理標本への変更を直接的に引き起こさないようなプロセスは、半導体デバイスデザインプロセスである。このプロセスは、半導体デザインの物理学、および、製作のために使用される半導体デバイスの物理学に、デザインがどのように影響するかに根ざしたプロセスなので、物理学ベースモデルによって表現可能である。
【0029】
プロセスが実施される物理標本への変更をこれ自体としては典型的に直接引き起こさないような別のプロセスは、半導体製作プロセス前、中、および/または後に実施される品質制御タイププロセスである。このようなプロセスは、このようなプロセスのために使用されるツールの物理学、および、このようなツールがどのように相互作用し、検査される標本についての情報を生成するかについての物理学にさらに根ざした、検査プロセス、計量プロセス、および欠陥検査プロセスを含む。例えば、このようなプロセスのための物理学ベースモデルは、標本用のツールによって生成された画像、測定値などに、品質制御ツールの異なるパラメータがどのように影響するかについて、シミュレートしてもよい。
【0030】
上述の半導体製作関連プロセスに加えて、品質制御により関係があるが、物理標本自体に影響し得る他のプロセスも、物理学ベースモデルによって表現可能である。例えば、修理プロセスは、半導体製作プロセスにおいて常に使用されないこともあるが、標本への変更が必要なとき、このようなプロセスは、製作プロセスステップにおける一部の失敗または限界収益性(marginality)による標本の1つ以上の物理的または化学的態様を訂正または精密にするために使用されることがある。このようなプロセスは、標本から不必要な材料を全体的または局所的に除去し、これにより標本自体への変更を引き起こすために使用されることがある、クリーニングタイププロセスをさらに含む。
【0031】
次いで上述から分かるように、「半導体製作関連プロセス」は、これ自体が、物理標本を変更してもしなくてもよく、物理標本は、半導体デバイスがその上に形成されている標本、または、デバイスのこのような形成に関与する別の標本でもよい。例えば、一部の実施形態では、標本はウエハである。ウエハは、半導体技術において知られる任意のウエハを含んでもよい。さらに、本明細書に記載の実施形態は、レチクル、フラットパネル、パーソナルコンピュータ(PC)基板、および他の半導体標本などの標本のために使用されてもよい。このように、「半導体製作関連プロセス」は、この用語が本明細書で使用されるとき、このプロセスに関与する物理学に基づいて表現可能な、標本上での半導体デバイスの製作に関与するまたは関係のある任意のプロセスとしてさらに定義可能である。
【0032】
1つ以上の構成要素は、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較すること、および結果と基準データとの差に応じて出力を生成することを行うように構成された目的関数を含むセットアップ構成要素108をさらに含む。例えば、図2に示されているように、セットアップ構成要素は、目的関数200を含んでもよい。一般に、目的関数は物理モデルを使用して超小型電子機器製作ステップの結果を予測し、これらの結果を実験によって取得された結果と比較する。これらの結果の差つまり誤差は、目的関数の出力に逆相関している。この目的関数は、最適化中に最大化されることが予想されるが、評価することは時間の浪費であることが多い。目的関数は、当技術で知られた任意の適切な形式またはフォーマットを有してもよい。
【0033】
本明細書に記載の実施形態で使用される基準データは、本明細書に記載の実施形態によって生成されてもされなくてもよい。例えば、本明細書に記載の実施形態は、本明細書に記載の半導体製作関連プロセスのうちの1つ以上を実施するように構成された半導体製作関連ツール(図示せず)を含んでもよい。実施形態は、このツールを使用して、実験の適切にデザインされたセットを1つ以上の標本に対して実施することによって、基準データを生成してもよい。例えば、プロセスは、1つ以上のプロセスパラメータの値が異なる1つ以上の標本に対して実施されてもよく、その後、プロセスが実施された標本の検査が実施され、検査の結果が、物理標本の特性についてのいくつかの情報になる。このような実験は、フォーカス-エクスポーズマトリックス(FEM)およびプロセスウィンドウクオリフィケーション(PWQ)プロセスなど、様々な異なる方式で実施されてもよく、これらのプロセスは、当技術で知られた任意の適切な様式で実施されてもよい。
【0034】
他の例では、本明細書に記載の実施形態は、基準データを生成しなくてもよく、基準データを生成した別のシステムもしくは方法(図示せず)から、または、別のシステムもしくは方法によって基準データが格納された本明細書にさらに記載のもののうちの1つなどのストレージ媒体から、基準データを単に獲得してもよい。本明細書に記載の実施形態は、当技術で知られた任意の適切な様式で、このような基準データを獲得してもよい。
【0035】
セットアップ構成要素は、目的関数の近似として構成され、1つ以上のパラメータの異なる値に応じて目的関数によって生成された出力にフィットされた、代理関数をさらに含む。図2に示されているように、セットアップ構成要素は、代理関数202を含んでもよい。代理関数は、目的関数を評価した結果を予測可能であるが評価がずっと速い関数である。代理関数は、最適化中に目的関数によって生成されたデータに漸進的にフィットさせ、その結果、より多くの提供済みの目的関数データを用いた予測が良くなる。代理関数は、当技術で知られた任意の適切な形式またはフォーマットを有してもよい。
【0036】
セットアップ構成要素は、代理関数に基づいて、物理学ベースモデルのための1つ以上のパラメータの追加の値を選択するように構成された獲得関数をさらに含む。図2に示されているように、セットアップ構成要素は、獲得関数204を含んでもよい。別の実施形態では、複数のフェーズのうちの1つにおいて獲得関数によって選択された追加の値が、複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値として目的関数によって使用される。例えば、獲得関数は代理関数を使用して、パラメータ空間における最も有益なポイントについての最善の推測を決定し、次の目的関数を評価する。このように、BO技法は、代理関数への多くの(または少なくとも1つ以上の)コールを使用して、より複雑な目的関数へのコールの数を最小化することができる。獲得関数は、当技術で知られた任意の適切な形式またはフォーマットを有してもよい。獲得関数によって選択された追加の値は、セットアッププロセスにおける次のステップもしくはフェーズにおいて、または、セットアッププロセスのどのステップもしくはフェーズをセットアップ構成要素が実施しているかに応じた物理学ベースモデルの最終値として、使用されてもよい。
【0037】
セットアップ構成要素は、複数のフェーズにおいて物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、複数のフェーズのそれぞれにおいて、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされる。例えば、フェーズ1において、パラメータサブセット1がセットアップされてもよく、フェーズ2において、パラメータサブセット2がセットアップされる、などである。これらのパラメータサブセットのうちの1つ以上の間にいくつかの重複がある場合もあるが(例えば、パラメータ1が2つ以上のパラメータサブセット内にある)、パラメータサブセットのどれも、理想的に正確に同じものであるはずはない。1つ以上のパラメータを「セットアップすること」は、1つ以上のパラメータの元の設定への変形になることもならないこともある。例えば、セットアップ構成要素は、パラメータのうちの1つのための元の設定がこのパラメータにとって最善の設定であると決定してもよい。しかし、一般に、セットアップ構成要素は、これらのパラメータのための設定が、本明細書に記載のBO技法を介して、モデルデータの少なくとも一部分が基準データに本質的にフィットすることがわかるまで、サブセット内のパラメータを変形することによって1つ以上のパラメータを「セットアップ」してもよい。1つのフェーズで「セットアップ」されたパラメータは、後のフェーズでセットアップされるサブセットに含まれる場合、後のフェーズで変えられてもよい。このような例では、前のフェーズは、粗いセットアップフェーズであると考えられてもよく、後のフェーズは、一種の細かいセットアップフェーズまたは前のセットアップパラメータの細かい調整であると考えられてもよい。
【0038】
この概念をさらに例示するために、超小型電子機器製作プロセスを表すようにN個の内部パラメータが展開された物理モデルを考える。実験は、校正用に使用するための基準データのセットを生成するように行われてもよい。目的関数は、モデル予測と基準データとの差を表すように構築される。最適化プロセスは、カスケードフェーズに分割される。一部の実施形態では、目的関数は、複数のフェーズのそれぞれにおいて一定である。例えば、各フェーズ中、物理モデルの内部パラメータのサブセットのみが最適化の一部として変形され、その一方で、目的関数は、一定の状態にされてもよい。さらなる実施形態では、複数のフェーズのそれぞれにおいて、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみをセットアップすることは、目的関数を最大化する、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットの最適値がわかるまで、選択された追加の値を目的関数に入力することを含む。例えば、最適化フェーズは、目的関数(基準データとモデルデータとの差)を最大化する、内部パラメータの現在のサブセットの最適値がわかるまで続いてもよい。さらなる実施形態では、複数のフェーズのうちの1つにおいてフィットされた代理関数が、複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて利用される。このように、各フェーズの後、フィットされた代理関数は、次のフェーズによって直接的に利用されてもよい。次のフェーズで1つのフェーズからの代理関数を使用すると、以前のフェーズから得られた予備知識から、各フェーズが利益を得ることになる。
【0039】
1つの実施形態では、セットアップ構成要素は、複数のフェーズがカスケード型最適化フェーズであるBO技法を実施するように構成される。BO技法は、目的関数、代理関数、および獲得関数という3つの構成要素から構成される。これらの関数は、本明細書にさらに記載されているように構成されてもよい。さらに、BO技法は、これら3つの構成要素のそれぞれ(または1つもしくは複数)のうちの2つ以上から構成されてもよい。
【0040】
セットアップ構成要素の構成は、複数のフェーズのうちの少なくとも2つにおいてセットアップされた物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットに基づいて、複数のフェーズのうちの少なくとも2つの間で変更される。例えば、セットアップ構成要素およびその成分構成要素(constituent component)は、このフェーズで取り組まれるパラメータのサブセットにとって最も適するように各構成要素を指定することを可能にするような方式でフェーズ毎に構成されるのが好ましい。セットアップ構成要素の構成は、様々な異なる方式で変更されてもよい。例えば、ユーザ、1つ以上のコンピュータサブシステム、セットアップ構成要素自体、または別の方法もしくはシステムは、複数のフェーズのうちの2つ(またはそれ以上)の間でセットアップ構成要素の構成を変更してもよい。2つのフェーズ間でセットアップ構成要素の構成を変更することは、セットアップ構成要素のいずれか1つもしくは複数のパラメータまたはその成分のうちの1つ以上を変更すること、(例えば、1つの関数を異なる関数とスワップアウトすることによって)関数自体のうちのいずれか1つ以上を変更すること、セットアップ構成要素への入力を変更すること、変形すること、または置き換えること、および/あるいは、物理学ベースモデルのパラメータがどのようにセットアップされるかに影響するセットアップ構成要素の他のいずれかの態様を変更することを含んでもよい。このように、2つのセットアップフェーズの間で、その成分構成要素のいずれかを含むセットアップ構成要素の一部の態様が変更されてもよく、セットアップ構成要素の他の態様は同じままでもよい。複数のセットアップフェーズのうちの1つ以上の間のセットアップ構成要素の構成の変更は、本明細書に記載の実施形態の重要な新しい特徴であり、なぜなら、本明細書にさらに記載されているように、この能力は、以前のフェーズによって得られた予備知識をこれが有利なときに保持および利用すること、および、セットアップされているパラメータにセットアップ構成要素を適合させることを可能にするからである。セットアップ構成要素の構成の変更は、本明細書に記載のようにさらに実施されてもよい。
【0041】
さらなる実施形態では、複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される目的関数は、複数のフェーズのうちの少なくとも別のフェーズにおいて異なる目的関数で置き換えられる。例えば、上述のカスケード型最適化フェーズは、上述のように、しかし、フェーズのそれぞれ(または1つもしくは複数)に対して異なる目的関数を利用して、実施されてもよい。この場合、フェーズ毎の目的関数は、このフェーズ中に最適化される内部モデルパラメータのサブセットに対して比較的強いレスポンスを有するような方式で構築されてもよい。
【0042】
別の実施形態では、複数のフェーズのうちの1つにおいて物理学ベースモデルによって生成された結果は、複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて目的関数に入力され、複数のフェーズのうちの1つ、および複数のフェーズのうちのその後の1つにおける基準データの少なくとも1つの重みが異なる。図3は、一般化された目的関数を有するBOの1つの実施形態を示している。図3に示されているように、本実施形態における事前のシミュレーション結果の使用を可能にするために、目的関数300が、フィットされた基準データ304、生成されたモデルデータ306、および基準データ毎の重み302のセットという、いくつかの構成要素に分けられる。代理関数308および獲得関数310は、本明細書にさらに記載されているように構成されてもよい。本実施形態では、以前の最適化フェーズからの代理関数を維持する代わりに、各フェーズから生成された全てのモデルデータが維持されてもよい。各最適化フェーズの始めに、以前に生成された全てのモデルデータが、以前のフェーズとは異なる重みを使用して基準データと比較される。以前に生成されたモデルデータのこの保持および使用により、目的関数は最適化フェーズ毎に変化し、これにより、以前のシミュレーション結果を使用して代理関数に知らせることを依然として可能にしながら、このフェーズで最適化されたパラメータのサブセットに目的関数を合わせることができる。
【0043】
1つの実施形態では、複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される獲得関数は、複数のフェーズのうちの少なくとも別のフェーズにおいて異なる獲得関数で置き換えられる。例えば、実施形態は、カスケード型最適化フェーズを使用して、最適化フェーズのそれぞれ(または1つもしくは複数)に対して異なる獲得関数を利用することを可能にしてもよい。使用される獲得関数は、局所最小値に収束させることに対して、パラメータ空間を探査するために最適化の傾向のバランスをとることによって、最適化の結論に対して比較的強い効果を有する。異なる獲得関数を可能にすることは、この最適化ステージの特定の要件のために各フェーズを調整することを可能にする。
【0044】
一部の実施形態では、複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される基準データは、複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて異なる基準データで置き換えられる。例えば、実施形態は、本明細書に記載のカスケード型最適化フェーズを使用してもよいが、1つ以上のフェーズの目的関数に複数の情報源を含めてもよい。1つのこのような実施形態では、基準データおよび異なる基準データは、物理学ベースモデルの異なる計算複雑性を生じる。このコンテキストでは、異なる情報源は、典型的には、モデルの異なる計算複雑性を生じる基準データの異なるソースである。例えば、1次元(1D)、2次元(2D)、および3次元(3D)基準データが、実質的に異なる計算時間をモデルに要求することが可能であり、したがって、異なる情報源として扱われてもよい。別のこのような実施形態では、基準データは、異なる基準データより物理学ベースモデルにとって計算効率のよいソースである。複数の情報源が存在するとき、最も計算効率のよいソースが最初に実行されることが好ましい。
【0045】
一部の実施形態では、代理関数は、パラメータ空間における1つ以上のパラメータの異なる値のロケーションに予測目的関数値の上限を提供するように構成される。より迅速な情報源の結果は、パラメータ空間におけるこのロケーションに予測目的関数値の上限を提供するような方式で代理関数をフィットさせるために使用可能である。この場合、目的関数は、全目的値の正の一定分量に各情報源が寄与するように構築されるべきである。したがって、情報源のうちの1つが、比較的低い目的値になる場合、このロケーションにおける、より計算的に厳しい情報源を評価するための目的はない。言い換えれば、比較的「低い」目的値があるとき、これは、この情報源と、テストされているパラメータとの組合せの誤差が、比較的大きいことを意味する。したがって、このロケーションにおいて、より計算的に厳しい情報源を評価することは、これらのパラメータ値がおそらく(または間違いなく)「良く」ないことがわかるので、ほとんど道理にかなわず、したがって、評価するべき次のパラメータを得るためにパラメータ空間の異なるエリアに移動することがより良い。評価のために選択された次のパラメータは、同じ情報源または次の情報源を用いて評価されてもよい。言い換えれば、より迅速なモデルが評価され、調査されているパラメータが「悪い」こと(パラメータが比較的低い目的値を有すること)がわかった場合、より遅いモデルが評価された場合に結果がさらに悪くなるはずであることが決定されることが可能である。したがって、より遅いモデルを実行する理由はない。
【0046】
別の実施形態は、以前に記載された方式とは異なる方式で複数の情報源を使用する。本実施形態では、計算複雑性の異なるスケールでの基準データの異なるソースが、ネストされた最適化パターンで使用される。別の実施形態では、複数のフェーズのうちの少なくとも1つで使用される目的関数および代理関数は、複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて異なる目的関数および異なる代理関数でそれぞれ置き換えられる。例えば、上述の各情報源は、独自の独立した目的および代理関数を使用してもよい。本実施形態では、情報源の計算が速いほど、より遅い情報源の内部にネストされる。
【0047】
さらなる実施形態では、複数のフェーズのうちの少なくとも1つのうちの1つ以上で使用される獲得関数は、複数のフェーズのうちのその後の1つにおいて異なる獲得関数で置き換えられ、異なる獲得関数が、追加の値を選択するために代理関数および異なる代理関数をサンプリングする。例えば、情報源(または2つ以上の情報源)毎に異なる獲得関数があってもよいが、獲得関数は、全体として情報源毎に独立していない。i番目の獲得関数は、i番目の目的関数ための次のサンプルポイントを決定するために全ての(または少なくとも1つ以上の)情報源<=iから代理関数をサンプリングする。獲得関数は、比較的低い目的値を有することが知られているより速い情報源からのポイントが、より遅い情報源によって探索される可能性が低くなるように、情報源のバランスをとる。この意思決定は、パラメータ空間における別のロケーションでより良いパラメータが見つかることを期待して、比較的低い目的値を有するパラメータが放棄される上述の意思決定に似ている。しかし、迅速なモデルからの情報を組み込む場所では、つまり、上述の実施形態の目的関数または本実施形態の獲得関数では、この状況は異なる。両方のケースにおいて、結果は似ており、より遅いモデルは、「悪い」ことが既に知られているパラメータのために実行されない。
【0048】
図4は、マルチスケールのネスト型BOの1つの実施形態を示している。カスケード型BO技法の第1のフェーズは、獲得関数1(400)、目的関数1(402)、および代理関数1(404)を使用し、これらは、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成され、第1の情報源(図4に図示せず)を使用してBOを実施してもよい。
【0049】
カスケード型BO技法の第2のフェーズは、獲得関数2(406)、目的関数2(408)、代理関数2(410)、および場合によっては代理関数1(404)を使用し、これらは、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成され、第1の情報源とは異なる第2の情報源(図4に図示せず)を使用してBOを実施してもよい。例えば、第2の情報源には、第1の情報源より多くの、物理学ベースモデルにとっての計算複雑性がある場合がある。言い換えれば、第2の情報源は、第1の情報源より、計算するには計算的に厳しくかつ遅い場合がある。第1のフェーズと違って、第2のフェーズでは、獲得関数2への入力は、代理関数1および2の出力を含んでもよい。
【0050】
カスケード型BO技法の最後かつ場合によっては第3のフェーズは、獲得関数N(412)、目的関数N(414)、代理関数N(416)、ならびにオプションとして、代理関数1(404)および/または代理関数2(410)を使用し、これらは、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成され、第1および第2の情報源とは異なる第3の情報源(図4に図示せず)を使用してBOを実施してもよい。例えば、第3の情報源には、第1および第2の情報源より多くの、物理学ベースモデルにとっての計算複雑性がある場合がある。言い換えれば、第3の情報源は、第1および第2の情報源より、計算するには計算的に厳しくかつ遅い場合がある。第1および第2のフェーズと違って、最後かつ場合によっては第3のフェーズでは、獲得関数Nへの入力は、代理関数1、2、…Nの出力を含んでもよい。このように、第1のフェーズを除くフェーズの全てにおいて、獲得関数は、全ての情報源(つまり、全ての事前のフェーズ)から代理関数をサンプリングしてもよい。したがって、獲得関数1、2、…Nのそれぞれは異なる情報源毎に異なってもよいが、獲得関数は、全体として情報源毎に独立していない。
【0051】
本明細書に記載の実施形態は、任意の適切な様式で組み合わせ可能である。いずれかまたは全ての最適化フェーズが、異なる目的関数および/または複数の情報源を含むことができる。一部の実施形態では、目的関数が、機械学習(ML:machine learning)モデルとして構成される。別の実施形態では、代理関数が、MLモデルとして構成される。例えば、目的関数は、実施形態のいずれかにおいて上述の最適化手順の過程の始めにまたはその中で、MLモデルで置き換え可能である。同様に、代理関数は、さらに、MLモデルによって置き換え可能である。本明細書に記載の目的関数および代理関数は、当技術で知られた任意の適切なML構成およびアーキテクチャを有することが可能である。
【0052】
本明細書に記載の実施形態には、物理学ベースモデルをセットアップするために現在使用されている他の方法およびシステムを超える、いくつかの重要な利点がある。例えば、本明細書に記載の実施形態は、複数の情報源の最適化を可能にし、これは、計算をより効率的かつ速いものにする。さらに、本明細書に記載の履歴を有するカスケード型最適化は、類似の全最適化結果を実現するために、より少ない全シミュレーション実行を要求する。さらに、異なる最適化フェーズのために異なる目的関数を利用すると、全目的関数における比較的低い感受性を有することがあるパラメータの最適化が良くなる。
【0053】
超小型電子機器製作における特徴の限界寸法(CD)の継続的な収縮を可能にするプロセスを開発するという難題は大きくなりつつある。これらの難題は、さらに、比較的大きいスケールで製造可能な最適化されたプロセスを開発する時間だけでなく、プロセスに関連付けられた研究および開発コストも大きくなりつつある。本明細書に記載の実施形態は、物理モデリングの能力を活用して、ユーザが開発時間を減少させ、研究および開発コストを低減させるのを助けることが可能な、より高いレベルの詳細を捕らえる際の、解決までの時間(time-to-solution)を早める。これらの技法が効果的であるように、基礎をなす物理モデルの、顧客基準データへの正確な校正が不可欠である。さらに、本明細書に記載の実施形態は、以前に可能であったものより洗練され複雑な計算モデルを校正することを可能にする。
【0054】
上述の利点および本明細書に記載の他の利点は、本明細書に記載の実施形態のいくつかの重要な新しい特徴によって提供される。1つのこのような特徴は、マルチフェーズ最適化において事前の結果を使用する能力を含む。さらに、本明細書に記載の実施形態は、事前の結果を使用して新しい代理関数に知らせることを可能にするために、最適化のフェーズ毎に目的関数を再評価するように形作られてもよい。さらに、本明細書に記載の実施形態は、複数の情報源を利用して、パラメータ空間におけるポイント毎に目的関数を評価するために使用される計算リソースを低減させるように構成可能である。
【0055】
以下の例は、本明細書に記載の実施形態の一部の理解を促進し深めるために本明細書に記載されている。これらの例は、これらの例が本セクションに含まれるという理由で、本セクションに続く特許請求の範囲に記載のような本発明の精神および範囲を限定することを意図するものではない。
【0056】
提案されるワークフローの例において実施されてもよいいくつかのステップがここから説明される。ステップ1において、本明細書に記載の実施形態または別の方法もしくはシステムは、プラズマエッチング環境における異なる材料マスクを使用したターゲット材料のエッチングについての基準データのセットにマッチするように、エッチングプロセスの物理モデルを生成してもよい。この例として、基準データは、関与する2つの材料のブランケットエッチングレート(1Dデータ)、および円筒形エッチング特徴の側壁エッチングプロフィール(3Dデータ)という、2つの情報源を含む。側壁エッチングプロフィール内には、マスクプロフィール、特徴エッチング深度、およびターゲット材料「ボウイング(bowing)」(あるエッチング深度におけるエッチング特徴の拡大)という、プロセス最適化に関心のある3つの主な特徴がある。これらの特徴は、特徴高さ502と限界寸法504との関数として、図5に概略的に示されている。この例では、基準データ500は、マスクプロフィール506、ボウイングプロフィール508、およびプロフィールエッチング深度510を含む。
【0057】
ステップ2において、コンピュータサブシステム、構成要素、および/またはセットアップ構成要素は、最適化プロセスをフェーズに分割してもよい。この場合、最適化は、図6に示された4つのフェーズに分割される。第1のフェーズは、この目的において強く表現していることが予想される内部モデルパラメータのみを調整することによって正しい特徴エッチング深度を取得することをターゲットにしており、目的関数は、プロセスのこの特徴を表す基準データの非ゼロの重みしか含まない。例えば、図6に示されているように、フェーズ1の後(604)、モデルデータ602(図6に例示されたフェーズの全てにおいて点線で示されている)、および基準データ600(図6に例示されたフェーズの全てにおいて実線で示されている)は、プロフィールエッチング深度510によって図5に示された特徴高さの一番下で収束する。図6に示されているように、フェーズ1の後、プロフィールエッチング深度の近く以外では、基準データの他の全ての部分において、基準データとモデルデータとの著しい差が明らかである。
【0058】
第2のフェーズは、マスクプロフィールの最適化をターゲットにしており、この目標に焦点を合わせるように内部パラメータおよび目的関数の項が選ばれている。図6に示されているように、フェーズ2(606)の後、モデルデータおよび基準データは、図5に示された基準データのマスクプロフィール506のセクションにおいて収束する。図6に示されているように、フェーズ2の後、モデルデータおよび基準データは、(これらがフェーズ1の後に行われた以上に)プロフィールエッチング深度の近くでいくぶん異なり、これらは、以下のフェーズにおいて矯正可能である。第3のフェーズは同様に、特徴ボウイングをターゲットにしている。図6に示されているように、フェーズ3(608)の後、モデルデータおよび基準データは、図5に示された基準データのボウイングプロフィール508のセクションにおいて完全に収束する。第4かつ最後のフェーズは、可能な内部モデルパラメータおよび目的項全てを含む。図6に示されているように、フェーズ4(610)の後、モデルデータは、基準データの全てのデータポイントにおいて基準データをおおむね概算している。このフェーズの始めの代理関数は、以前のフェーズからのデータ全てに既にフィットされているので、最適化は、同じ目的関数を使用した単一ステップ最適化よりずっと成功している。
【0059】
ステップ3において、コンピュータサブシステム、構成要素、および/またはセットアップ構成要素は、目的関数を別個の情報源に分割してもよい。この場合、1D(ブランケットエッチングレート)および3D(エッチングプロフィール)データは、別個の情報源として扱われる。1D情報源は、目的関数の評価を早めるために4つの最適化フェーズのそれぞれで使用されてもよい。最適化ループにおける目的関数へのコール毎に、ブランケットエッチングレートが最初にシミュレートされてもよい。この計算は、(数秒のオーダーで)実質的に速い。ブランケットエッチングレートが、十分に高い目的値を生み出すのに十分基準値に接近している場合、3Dシミュレーションが実行されることになる。次いで、目的関数の完全な値は、パラメータ空間におけるこのポイントで代理関数をフィットさせるために使用される。ブランケットエッチングレートが、基準データに比較的接近しておらず、目的値が大幅に低くなる場合、この値は、パラメータ空間のこのロケーションにおいて、代理関数に上限を提供するために使用される。次いで、獲得関数がコールされ、以前のポイントにおける3Dデータを実行せずに、新しい代理関数が次のサンプリングポイントを見つけることになる。
【0060】
一部の実施形態では、コンピュータサブシステムは、セットアップ済み物理学ベースモデルについての情報を格納するように構成される。コンピュータサブシステムは、レシピに情報を格納するように、または、セットアップ済み物理学ベースモデルが使用されることになるプロセス用のレシピを生成することによって、構成されてもよい。「レシピ」は、この用語が本明細書で使用されるとき、一般に、セットアップ済み物理学ベースモデルによって実施されるシミュレーションを含むプロセスを実施するためのツールによって使用可能な命令のセットとして定義可能である。このように、レシピを生成することは、プロセスがどのように実施されるべきかについての情報を生成することを含んでもよく、したがって情報は、このプロセスを実施するための命令を生成するために使用可能である。コンピュータサブシステムによって格納されたセットアップ済み物理学ベースモデルについての情報は、セットアップ済み物理学ベースモデルを識別および/または使用するために使用可能な任意の情報(例えば、ファイル名、および情報が格納された場所など)を含んでもよい(また、ファイルは、モデルパラメータ値など、セットアップ済み物理学ベースモデルについての情報を含んでもよい)。
【0061】
コンピュータサブシステムは、セットアップ済み物理学ベースモデルについての情報を任意の適切なコンピュータ可読ストレージ媒体に格納するように構成されてもよい。情報は、本明細書に記載の結果および/またはデータのいずれかと共に格納されてもよく、当技術で知られた任意の様式で格納されてもよい。ストレージ媒体は、本明細書に記載のいずれかのストレージ媒体、または当技術で知られた他のいずれかの適切なストレージ媒体を含んでもよい。情報が格納された後、情報は、ストレージ媒体の中でアクセス可能であり、本明細書に記載の方法またはシステム実施形態のいずれかによって使用され、ユーザに表示するためにフォーマットされ、別のソフトウェアモジュール、方法、またはシステムなどによって使用されることが可能である。例えば、本明細書に記載の実施形態は、上述のようなレシピを生成してもよい。次いで、このレシピは、セットアップ済み物理学ベースモデルによって実施されるシミュレーションを含むプロセスを実施するために、システムもしくは方法(または別のシステムもしくは方法)によって格納および使用されてもよい。
【0062】
セットアップ済み物理学ベースモデルによって生成された結果および情報は、本明細書に記載の実施形態ならびに/または他のシステムおよび方法によって、様々な様式で使用されてもよい。このような機能は、フィードバックまたはフィードフォワード様式で標本に対して実施されたまたは実施されることになる、製作プロセスまたはステップなどのプロセスを変えることを含むがこれらに限定されない。プロセスへの変更は、プロセスの1つ以上のパラメータへの任意の適切な変更を含んでもよい。本明細書に記載のコンピュータサブシステムは、当技術で知られた任意の適切な様式で、このような変更を決定してもよい。
【0063】
次いで、これらの変更は、コンピュータサブシステムおよび半導体製作システムがアクセス可能な半導体製作システム(図示せず)またはストレージ媒体(図示せず)に送られることが可能である。半導体製作システムは、本明細書に記載のシステム実施形態の一部であってもなくてもよい。例えば、本明細書に記載のコンピュータサブシステムは、例えば、収納容器、電源など、1つ以上の共通要素を介して、半導体製作システムに連結されてもよい。半導体製作システムは、リソグラフィツール、エッチングツール、化学機械研磨(CMP)ツール、堆積ツールなど、当技術で知られた任意の半導体製作システムを含んでもよい。さらに、半導体製作関連システムは、電子デザイン自動化(EDA)ツール、検査ツール、計量ツール、欠陥検査ツール、デバイス修理ツールなど、本明細書に記載の異なるプロセスのためのシステムでもよい。このようなツールおよびシステムは、当技術で知られた任意のこのようなツールおよびシステムを含んでもよい。
【0064】
上述のシステムのそれぞれの実施形態のそれぞれは、1つの単一の実施形態に一緒に組み合わされてもよい。
【0065】
別の実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするためのコンピュータ実装方法に関する。方法は、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの値が異なる半導体製作関連プロセスを表現した物理学ベースモデルによって生成された結果を基準データと比較すること、および目的関数を用いて結果と基準データとの差に応じて出力を生成することを含む。方法は、目的関数の近似として構成された代理関数を、1つ以上のパラメータの異なる値に応じて目的関数によって生成された出力にフィットさせることをさらに含む。さらに、方法は、獲得関数を用いて代理関数に基づいて、物理学ベースモデルのための1つ以上のパラメータの追加の値を選択することを含む。目的関数、代理関数、および獲得関数は、セットアップ構成要素に含まれる。セットアップ構成要素および物理学ベースモデルは、1つ以上のコンピュータシステムによって実行される1つ以上の構成要素に含まれる。セットアップ構成要素は、複数のフェーズにおいて物理学ベースモデルをセットアップするように構成され、複数のフェーズのそれぞれにおいて、物理学ベースモデルの1つ以上のパラメータの全てのサブセットのみがセットアップされる。
【0066】
方法のステップのそれぞれは、本明細書にさらに記載されているように実施されてもよい。方法は、本明細書に記載のシステム、コンピュータシステム、および/または構成要素によって実施可能な他のいずれかのステップをさらに含んでもよい。コンピュータシステムは、例えばコンピュータサブシステム102など、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成されてもよい。さらに、1つ以上の構成要素が、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成されてもよい。方法は、本明細書に記載のシステム実施形態のいずれかによって実施されてもよい。
【0067】
さらなる実施形態は、物理学ベースモデルをセットアップするためのコンピュータ実装方法を実施するための1つ以上のコンピュータシステム上で実行可能なプログラム命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体に関する。1つのこのような実施形態が図7に示されている。特に、図7に示されているように、非一時的コンピュータ可読媒体700は、コンピュータシステム704上で実行可能なプログラム命令702を含む。コンピュータ実装方法は、本明細書に記載のいずれかの方法のいずれかのステップを含んでもよい。
【0068】
本明細書に記載のものなどの方法を実装するプログラム命令702は、コンピュータ可読媒体700に格納されてもよい。コンピュータ可読媒体は、磁気または光ディスク、磁気テープ、または、当技術で知られた他のいずれかの適切な非一時的コンピュータ可読媒体などの、ストレージ媒体でもよい。
【0069】
プログラム命令は、特に、手続きベース技法、構成要素ベース技法、および/またはオブジェクト指向技法を含む、様々な方式のいずれかで実装されてもよい。例えば、プログラム命令は、ActiveXコントロール、C++オブジェクト、JavaBeans、Microsoft Foundation Class(「MFC」)、SSE(Streaming SIMD Extension)、または他の技術もしくは方法を使用して、要望通りに実装されてもよい。
【0070】
コンピュータシステム704は、本明細書に記載の実施形態のいずれかに従って構成されてもよい。
【0071】
本発明の様々な態様のさらなる変更形態および代替実施形態が、本説明の観点から当業者には明らかであろう。例えば、物理学ベースモデルをセットアップするためのシステムおよび方法が提供される。したがって、本説明は、例証としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する全体的な様式を当業者に教示するためのものである。本明細書に図示および記載の本発明の形式は、現在好ましい実施形態としてとられるべきであることを理解されたい。本発明の本説明の利益を得た後、当業者には全てが明らかなように、要素および材料が、本明細書に例示および記載のものの代わりに用いられてもよく、パーツおよびプロセスが逆転されてもよく、本発明の特定の特徴が独立して利用されてもよい。以下の特許請求の範囲に記載のような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の要素の変更が行われてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】