IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特表2024-537077ハロゲン不含難燃剤を含む連続気泡メラミン樹脂フォーム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ハロゲン不含難燃剤を含む連続気泡メラミン樹脂フォーム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20241003BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20241003BHJP
   C08K 5/53 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J9/04 103
C08J9/04 CEZ
C08L61/28
C08K5/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519692
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022076916
(87)【国際公開番号】W WO2023052389
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】21200402.2
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ケーニッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ヴァート
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA63
4F074AD09
4F074AD16
4F074AG10
4F074AH04
4F074BA34
4F074BA39
4F074BB10
4F074BC02
4F074BC04
4F074CC04Y
4F074CC22W
4F074CC28Z
4F074CC55Y
4F074DA02
4F074DA13
4F074DA32
4J002CC181
4J002CH022
4J002EA018
4J002EB028
4J002EB068
4J002EC028
4J002ED037
4J002EV187
4J002EV247
4J002EW126
4J002EW136
4J002EW146
4J002FD136
4J002FD312
4J002FD317
4J002FD328
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤を含むメラミン樹脂フォーム、水性混合物Mをマイクロ波放射を使用して加熱および発泡させることを含むメラミン樹脂フォームの製造方法であって、前記混合物Mが少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの発泡剤を含む、前記方法、並びに遮音および/または断熱のための前記メラミン樹脂フォームの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤を含む、連続気泡構造を有する連続気泡メラミン樹脂フォーム。
【請求項2】
前記メラミン樹脂フォームが、DIN ISO 4590に準拠して測定される連続気泡含有率50%超を有する、請求項1に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項3】
前記メラミン樹脂フォームの密度が5~15kg/m3の範囲である、請求項1または2に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項4】
前記メラミン樹脂フォームが75~99質量%の硬化メラミン樹脂を含む、請求項1から3までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、ビス(ポリオキシエチレン)メチルホスホネート、ビス(3-ヒドロキシプロピル)イソブチルホスフィン、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネートから選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項6】
前記ハロゲン不含難燃剤が、メラミン樹脂フォームに対して0.5~40質量%の総量で存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の連続気泡メラミン樹脂フォームの製造方法であって、マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱および発泡させることを含み、前記混合物Mは、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの発泡剤を含む、前記方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物と反応できる官能基を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、官能基として2~3つのヒドロキシル基を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、ビス(ポリオキシエチレン)メチルホスホネート、ビス(3-ヒドロキシプロピル)イソブチルホスフィン、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネートから選択される、請求項7から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物Mが、50~90質量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、10~50質量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤との混合物を含む界面活性剤混合物を含み、前記の質量パーセントは各々界面活性剤混合物の総質量に対する、請求項7から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ギ酸が硬化剤として使用される、請求項7から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ペンタンが発泡剤として使用される、請求項7から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
以下の段階:
a) 少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの液体のハロゲン不含難燃剤、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの発泡剤からの水性混合物Mを形成する段階、
b) 前記水性混合物Mを、マイクロ波放射を使用して加熱および発泡させて、メラミン樹脂フォームを製造する段階、および
c) 段階b)において得られたメラミン樹脂フォームを、120~300℃の温度で任意に熱処理する段階
を含む、請求項7から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
遮音および/または断熱のための、請求項1から6までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォームの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択されるハロゲン不含難燃剤を含む連続気泡構造を有するメラミン樹脂フォーム、そのようなメラミン樹脂の製造方法、および遮音および/または断熱のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する先行技術
欧州特許出願公開第1146070号明細書(EP1146070 A2)は、改善された耐火特性を有し、セル骨格の表面が、難燃剤としてのリン酸のアンモニウム塩、特にオルトリン酸アンモニウムおよびポリリン酸アンモニウムで被覆されている、連続気泡メラミン樹脂に関する。難燃剤のコーティングを有するメラミン樹脂フォームはより高いホルムアルデヒド放出を示すことが多い。
【0003】
中国特許出願公開第107987466号明細書(CN107987466 A)は、発泡助剤としての石油エーテルおよびジフェニルメタンジイソシアネート、加硫ゴム、セルオープナー、および難燃剤としてのホスフェートの組み合わせを使用することによる、メラミンホルムアルデヒドフォームの製造を開示している。好ましくは、難燃剤はトリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2、3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2、3-ジブロモプロピル)ホスフェート、クレジル-ジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、または(2-エチルヘキシル)-ジフェニルホスフェートである。
【0004】
中国特許出願公開第107903579号明細書(CN107903579 A)は、良好な防火および難燃特性、引張強さおよび遮音特性を有する加熱圧縮されたメラミン樹脂フォームを開示している。その製造方法は、メラミンホルムアルデヒド樹脂を得る段階、発泡剤、界面活性剤、難燃剤、セル開放剤、および硬化剤を連続して添加する段階、混合する段階、均質に攪拌する段階、マイクロ波発泡炉内に入れて発泡させる段階、次いでフォームを切断する段階、加熱プレス圧縮を行う段階を含む。
【0005】
国際公開第2017/125414号(WO2017/125414)は、高い多孔度、低い密度、および充分に高い機械的安定性を有すると共に、イソシアネートに対して反応性の少なくとも1つの官能基を有するリン化合物をゲル形成組成物に添加することによる、良好な難燃性を有するポリウレタンエアロゲルを開示している。
【0006】
欧州特許出願公開第1142939号明細書(EP1142939 A2)は、ハロゲン不含の水発泡難燃性硬質ポリウレタンフォーム、およびその製造方法、および難燃剤としてのオキソアルキル化アルキルホスホン酸の使用に関する。
【0007】
米国特許出願公開第2011-023057号明細書(US2011-023057)は、24~95質量%のスチレンポリマー、および1~65質量%の硬化変性または発泡アミノプラスチック樹脂、および0.1~20質量%の難燃剤としての有機リン化合物を含む発泡粒子を含む難燃剤組成物に関する。得られる複合フォームの密度は35~50g/lの範囲である。
【0008】
難燃剤は一般に、樹脂と発泡剤との混合物に、発泡前に添加されるか、またはフォームの製造後にコーティングとして施与される。固体の難燃剤をメラミン-ホルムアルデヒドプレポリマー混合物に添加することは、発泡の間のセルの形成およびセルの開口を妨げることが多く、低い機械的性能またはフォームの崩壊をもたらす。噴霧または浸漬による固体の難燃剤のフォームへの含浸は、さらなる含浸段階および懸濁液の調製が必要になる。懸濁液の安定性、カレンダー加工および乾燥は、厚いフォームの試料では難しいことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1146070号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第107987466号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第107903579号明細書
【特許文献4】国際公開第2017/125414号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1142939号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2011-023057号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、充分な機械的安定性、低い密度、および低いホルムアルデヒド放出を有する、ハロゲン不含の難燃性の連続気泡メラミン樹脂フォームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択されるハロゲン不含難燃剤を含む連続気泡構造を有するメラミン樹脂フォーム、および連続気泡構造を有するメラミン樹脂フォームの製造方法であって、マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱および発泡させることを含み、前記混合物Mはメラミン樹脂フォーム粒子、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つの液体のハロゲン不含難燃剤、および少なくとも1つの発泡剤を含む、前記方法を提供する。
【0012】
本発明によるメラミン樹脂フォームは、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤を含む。少なくとも1つとは、1つのハロゲン不含難燃剤、または2つ以上のハロゲン不含難燃剤の混合物を意味する。好ましくはメラミン樹脂フォームはハロゲン不含であり、ハロゲン化された難燃剤または他のハロゲン化された添加剤を含有しない。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤はメラミン樹脂に化学的に結合している。ハロゲン不含難燃剤の以下の特性は、メラミン樹脂に化学的に結合する前の特性に関する。液体とは、前記ハロゲン不含難燃剤が、メラミン樹脂に化学的に結合する前に周囲条件(25℃、101.325kPa)で液体であることを意味する。好ましくは、粘度はブルックフィールド粘度計を用いて25℃で特定して100~700mPa・秒の範囲である。好ましくは、ヒドロキシル価は二重のカールフィッシャー滴定によって特定して400~500mg KOH/gの範囲である。好ましくは、ハロゲン不含難燃剤のリン含有率は酸化溶解後に測光により特定して10~13%(w/w)の範囲である。
【0014】
好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は、液体のホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネート化合物である。液体とは、前記有機リン化合物が、メラミン樹脂フォーム中に組み込まれる前に周囲条件(25℃、101.325kPa)で液体であることを意味する。より好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は、液体のホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネート、および+2~+4の酸化状態のリンである。より好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は以下の構造I~IVから選択される:
【化1】
前記式中、
R1、R2およびR3は同一または異なり、
R1、R2は直鎖または分枝鎖のC1~C6-アルキル、直鎖または分枝鎖のC1~C6-ヒドロキシアルキルであり、
R3は直鎖または分枝鎖のC1~C6-アルキル、直鎖または分枝鎖のC1~C6-ヒドロキシアルキル、ビス(C1~C6-ヒドロキシアルキル)アミノC1~C6-アルキルである。
【0015】
R1、R2およびR3はエーテル基によって橋かけされ得る。
【0016】
好ましくは、R1、R2およびR3は、
R1、R2がメチル、エチル、プロピル、イソブチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、
ポリオキシエチレン、ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルであり、
R3がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチルである。
【0017】
最も好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、ビス(ポリオキシエチレン)メチルホスホネート、ビス(3-ヒドロキシプロピル)イソブチルホスフィン、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネートから選択される。
【0018】
ハロゲン不含難燃剤は好ましくは、メラミン樹脂フォームに対して0.5~40質量%の総量、より好ましくは2.5~25質量%の総量、最も好ましくは5~20質量%の総量で存在する。
【0019】
好ましくは、連続気泡メラミン樹脂フォームは75~99質量%、より好ましくは80~95質量%の硬化メラミン樹脂を含む。最も好ましくは、連続気泡メラミン樹脂は本質的に80~95質量%の硬化メラミン樹脂と、5~20質量%のハロゲン不含難燃剤とからなる。
【0020】
メラミン樹脂フォームは好ましくは連続気泡構造、およびDIN ISO 4590に準拠して測定される連続気泡含有率50%超、好ましくは95%以上、最も好ましくは98~100%を有する。
【0021】
好ましくは、メラミン樹脂フォームの密度は5~15kg/m3、より好ましくは6~12kg/m3の範囲である。
【0022】
好ましくは、連続気泡メラミン樹脂フォームのショア硬さ000は、ASTM D 2240に準拠して測定して35~75Nの範囲である。
【0023】
好ましくは、連続気泡メラミン樹脂のホルムアルデヒド放出は、EN 14184に準拠して測定して、試料のフォームのkgあたり5~15mgのFAの範囲である。
【0024】
メラミンフォームは国際公開第2009/021963号(WO2009/021963)内に記載されるように製造され得る。本発明によるメラミン樹脂フォームは好ましくは、マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱および発泡させることを含む方法であって、前記混合物Mは、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの液体のハロゲン不含難燃剤、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの発泡剤を含む、前記方法によって製造される。メラミン樹脂フォームは120~300℃の温度で熱処理され得る。
【0025】
メラミン樹脂への結合を達成するために、本発明による方法において使用される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は、メラミン樹脂またはメラミン樹脂前駆体に対して反応性である。好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物と反応できる官能基を有する。好ましくは、少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤はヒドロキシル基を官能基として、最も好ましくは分子あたり2または3つの官能基として有する。前記方法において使用される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤は好ましくは上述の特性を有し、且つメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に対して0.5~40質量%の総量、より好ましくは5~20質量%の総量で使用される。
【0026】
メラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物は別々に調製されてもよいし、またはメラミンとホルムアルデヒドとの2つの成分の市販の予備縮合物が使用されてもよい。好ましくは、メラミン対ホルムアルデヒドのモル比1:5~1:1.3、より好ましくは1:3.5~1:1.5を有するメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物が使用される。好ましくは、数平均分子量Mnは200g/モル~1000g/モルの範囲である。未変性のメラミン/ホルムアルデヒド予備縮合物が好ましい。
【0027】
アニオン性、カチオン性、非イオン性の界面活性剤、およびそれらの混合物を分散剤/乳化剤として使用できる。
【0028】
有用なアニオン性界面活性剤は、例えばジフェニレンオキシドスルホネート、アルカンおよびアルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、脂肪アルコール硫酸塩、エーテル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル、アシルアミノアルカンスルホネート、アシルイセチオネート、アルキルエーテルカルボキシレート、N-アシルサルコシネート、アルキルおよびアルキルエーテルホスフェートを含む。有用な非イオン性界面活性剤は、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー、アミンオキシド、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンエステルおよびアルキルポリグリコシドを含む。有用なカチオン性乳化剤は、例えばアルキルトリアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩およびアルキルピリジニウム塩を含む。
【0029】
分散剤/乳化剤を、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に対して0.2質量%~5質量%の量で添加できる。
【0030】
好ましくは、前記混合物Mは、50~90質量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、10~50質量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤との混合物を含む界面活性剤混合物を含み、前記の質量パーセントは各々界面活性剤混合物の総質量に対する。
【0031】
硬化剤として、メラミン樹脂のさらなる縮合を触媒する酸性化合物を使用することが可能である。それらの硬化剤の量は一般に、全て予備縮合物に対して、0.01質量%~20質量%の範囲、好ましくは0.05質量%~5質量%の範囲である。有用な酸性化合物は、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トルエンスルホン酸、アミド硫酸、酸無水物、およびそれらの混合物からなる群から選択される有機および無機酸を含む。好ましくはギ酸が硬化剤として使用される。
【0032】
前記混合物は少なくとも1つの発泡剤をさらに含む。有用な物理的発泡剤は、例えば炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、ハロゲン化された、より具体的には塩素化および/またはフッ素化された炭化水素、例えば塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノールまたはイソプロパノール、エーテル、ケトンおよびエステル、例えばギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチルまたは酢酸エチルを液体の形態で、または空気、窒素、または二酸化炭素をガスとして含む。
【0033】
混合物中の発泡剤の量は一般に、フォームのために所望の密度に依存する。好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に関する量は、フォームの密度が5~15kg/m3、より好ましくは6~12kg/m3である量で選択される。発泡剤は好ましくは、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物に対して0.5質量%~60質量%、好ましくは1質量%~40質量%、およびより好ましくは1.5質量%~30質量%の量で混合物中に存在する。沸点0~80℃を有する物理的発泡剤を添加することが好ましい。最も好ましくはペンタンが発泡剤として使用される。
【0034】
予備縮合物は一般に、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物の懸濁液を加熱して発泡材料を得ることによって発泡される。
【0035】
エネルギーの導入は好ましくは電磁放射を介して、例えば高周波放射を介して、使用された混合物のkgあたり5~400kW、好ましくは5~200kW、およびより好ましくは9~120kWで、0.2~100GHz、好ましくは0.5~10GHzの周波数範囲で実現され得る。マグネトロンは有用な誘電放射源であり、1つのマグネトロンを使用してもよいし、または2つ以上のマグネトロンを同時に使用してもよい。
【0036】
製造された発泡材料は最終的に乾燥され、残留水および発泡剤がフォームから除去され得る。乾燥は好ましくは乾燥オーブン内、40~200℃、特に好ましくは100~150℃の範囲の温度で、一定の質量になるまで行われる。記載された方法により、発泡材料のブロックまたはスラブが提供され、それを任意の所望の形状のサイズに切断することができる。
【0037】
好ましくは前記方法は、好ましくは生産プラントからのメラミン樹脂フォームからの、所望の仕様外の特性を有して製造されたメラミン樹脂フォームのスクラップをリサイクルするために使用される。本発明についてのさらなる対象は、メラミン樹脂フォームのリサイクル方法であって、以下の段階:
a) 少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、少なくとも1つの液体の難燃剤、および少なくとも1つの発泡剤からの水性混合物Mを形成する段階、
b) 前記水性混合物Mを、マイクロ波放射を使用して加熱および発泡させて、メラミン樹脂フォームを製造する段階、および
c) 段階b)において得られたメラミン樹脂フォームを、120~300℃の温度で任意に熱処理する段階
を含む、前記方法である。
【0038】
本発明による方法によって製造されたメラミン樹脂フォームを、以下の方法によって後処理することができる:
1. より高い密度、より良好な耐久性および洗浄挙動を有するフォームを得るための熱圧縮、
2. より低い吸水を有するフォームを得るための疎水化処理、および
3. 火事の場合のFST特性(炎、煙、毒性)をさらに改善するための、難燃剤での任意の含浸。
【0039】
メラミン-ホルムアルデヒド樹脂に基づく、異方性の機械的特性を有する弾性の圧縮発泡材料の製造方法であって、柔らかい未硬化のメラミン-ホルムアルデヒド発泡材料を圧縮し、得られた発泡材料を硬化および乾燥する段階を含む前記方法は、国際公開第2011/134778号(WO2011/134778)内に記載されている。
【0040】
フルオロカーボン樹脂および/またはシリコン樹脂での含浸による疎水化処理、および難燃性物質、例えばケイ酸塩、ホウ酸塩、水酸化物またはリン酸塩によるさらなる含浸は、国際公開第2007/023118号(WO2007/023118)内に記載されるように達成され得る。
【0041】
メラミン樹脂またはメラミン樹脂前駆体に対して反応性である少なくとも1つの液体のハロゲン不含難燃剤の使用によって、火事の場合の高いチャー形成を有するメラミン樹脂フォームを製造できる。本発明によるメラミン樹脂フォームは意外なことに、低いホルムアルデヒド放出を有する。それらを遮音および/または断熱のために使用できる。
【実施例
【0042】
以下で実施例を参照して本発明をより詳細且つ具体的に説明するが、本発明を限定することは意図されていない。
【0043】
測定方法
ラム圧値[N]:
メラミン樹脂フォームの機械的品質を評価するためのラム圧測定を全て以下のように行った。直径8mmおよび高さ10cmを有する円筒形のラムを、直径11cmおよび高さ5cmを有する円筒形の試料中に発泡方向に90%の角度で、試料が裂けるまで押し込んだ。引裂力[N](以下でラム圧値とも称する)はフォームの品質についての情報を提供する。
【0044】
ショア硬さ:
測定をASTM D 2240に準拠して行った。低密度のフォームを測定するために、000のスケールを使用した(球の直径2.4mm、スプリング力1.111N)。
【0045】
ホルムアルデヒド測定
ホルムアルデヒド放出測定をEN14184に準拠して実施した。結果を試料のkgあたりのmg FAによって示す。
【0046】
チャー形成
ISO 5660-1に準拠して難燃性試験後にコーンカロリーメーター法によってチャー形成を測定した。チャー残留物は、初期の質量から質量損失を引いた差として質量パーセントで計算した。チャー残留物が多いほど、難燃効果は良好である。以下の試験アセンブリが使用される:
熱流束: 50kW/m2
公称ダクト流量: 24l/秒
サンプリング間隔: 2秒
分離: 25mm
試料厚: 50mm
試料寸法: 100×100mm
【0047】
使用材料:
MF 平均分子量(数平均)M350g/molを有し、メラミン:ホルムアルデヒドのモル比1:3を有するメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物であって、メラミン以外にさらなる熱硬化性形成剤を含まず、且つホルムアルデヒド以外にさらなるアルデヒドを含まず、且つ亜硫酸基不含であるもの。
T1 C12/C14-硫酸アルキル、ナトリウム塩。
T2 直鎖の飽和C16/C18-脂肪アルコールから製造されたアルキルポリエチレングリコールエーテル。
【0048】
難燃剤:
【表1】
【0049】
例1~4:
実験室におけるメラミン樹脂フォームの製造: 100gの噴霧乾燥されたメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物(モル比1:3)を40gの水中に溶解し、次いで1.5gのC12/C14-アルキルスルホン酸ナトリウムおよび3gのギ酸ナトリウムを添加した。その後、難燃剤FR1~FR4を、表3に示す量で前記混合物に添加し、その水性混合物を60秒間攪拌した。後に、17.8gのペンタンを発泡剤として、および3.1gのギ酸をt0で混合物に添加する。混合物を30分間攪拌し、引き続きプロピレンの型に移して発泡させる。発泡はマイクロ波エネルギーによって支援される。発泡の完了後、フォームを離型して、オーブン内で、100℃で6時間乾燥させる。
【0050】
例1~4のメラミン樹脂フォームは意外にも低いホルムアルデヒド(FA)放出、およびFR5およびFR6を用いた比較例C1およびC2に比してより良好な機械的特性を示す。充分な保護炭素層を構築するために、チャー形成は5%以上の高さであるべきである。
【0051】
比較例:
FR5: ポリリン酸アンモニウム (Exolit 422、Clariant)
FR6: 水酸化アルミニウム(Apyral、Nabaltec)
【表2-1】
【0052】
【表2-2】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
75~99質量%の硬化メラミン樹脂と、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤を含む、連続気泡構造および5~15kg/m 3 の範囲の密度を有する連続気泡メラミン樹脂フォーム。
【請求項2】
前記メラミン樹脂フォームが、DIN ISO 4590に準拠して測定される連続気泡含有率50%超を有する、請求項1に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項3】
前記メラミン樹脂フォームの密度が12kg/m3の範囲である、請求項1または2に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項4】
前記メラミン樹脂フォームのショア硬さ000が、ASTM D 2240に準拠して測定して35~75Nの範囲である、請求項1から3までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、ビス(ポリオキシエチレン)メチルホスホネート、ビス(3-ヒドロキシプロピル)イソブチルホスフィン、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネートから選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項6】
前記ハロゲン不含難燃剤が、メラミン樹脂フォームに対して2.525質量%の総量で存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項7】
前記メラミン樹脂フォームが、本質的に80~95質量%の硬化メラミン樹脂と、5~20質量%のハロゲン不含難燃剤とからなる、請求項1から6までのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォーム。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の連続気泡メラミン樹脂フォームの製造方法であって、マイクロ波放射を使用して水性混合物Mを加熱および発泡させることを含み、前記混合物Mは、少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、ホスフィンオキシド、ホスフィネートまたはホスホネートから選択される少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの発泡剤を含む、前記方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、メラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物と反応できる官能基を有する、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、官能基として2~3つのヒドロキシル基を有する、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのハロゲン不含難燃剤が、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、ビス(ポリオキシエチレン)メチルホスホネート、ビス(3-ヒドロキシプロピル)イソブチルホスフィン、ジエチルビス(ヒドロキシエチル)アミノメチルホスホネートから選択される、請求項から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物Mが、50~90質量%の少なくとも1つのアニオン性界面活性剤と、10~50質量%の少なくとも1つの非イオン性界面活性剤との混合物を含む界面活性剤混合物を含み、前記の質量パーセントは各々界面活性剤混合物の総質量に対する、請求項から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ギ酸が硬化剤として使用される、請求項から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ペンタンが発泡剤として使用される、請求項から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
以下の段階:
a) 少なくとも1つのメラミン-ホルムアルデヒド予備縮合物、少なくとも1つの液体のハロゲン不含難燃剤、少なくとも1つの硬化剤、少なくとも1つの界面活性剤、および少なくとも1つの発泡剤からの水性混合物Mを形成する段階、
b) 前記水性混合物Mを、マイクロ波放射を使用して加熱および発泡させて、メラミン樹脂フォームを製造する段階、および
c) 段階b)において得られたメラミン樹脂フォームを、120~300℃の温度で任意に熱処理する段階
を含む、請求項から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
遮音および/または断熱のための、請求項1からまでのいずれか1項に記載のメラミン樹脂フォームの使用。
【国際調査報告】