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特表2024-537096がんの治療のための代替的なPD1-IL7vイムノコンジュゲート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】がんの治療のための代替的なPD1-IL7vイムノコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241003BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241003BHJP
   C07K 14/54 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/24 20060101ALI20241003BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241003BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20241003BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C07K14/54
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/62 Z
A61K47/68
A61K47/65
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K39/395 U
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519981
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022078327
(87)【国際公開番号】W WO2023062048
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202552.2
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥリニ, グレタ
(72)【発明者】
【氏名】フライモサー-グルントショーバー, アン
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラウナー, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】メスナー, エッケハルト
(72)【発明者】
【氏名】ニコリーニ, バレリア
(72)【発明者】
【氏名】シュレンブルク, シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ウマーニャ, パブロ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、概して、がんの治療における使用のためのイムノコンジュゲート、特に、変異型インターロイキン7ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートに関する。さらに、本発明は、そのようなイムノコンジュゲートの使用、及び前記イムノコンジュゲートを投与することを含むがんの治療方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療における使用のためのイムノコンジュゲートであって、イムノコンジュゲートが、(i)変異型IL-7ポリペプチド及び(ii)抗体を含み、抗体が、PD1に結合し、配列番号1によるVHドメイン及び配列番号2によるVLドメインを含み、変異型IL-7ポリペプチドが、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換が、配列番号14を含むインターロイキン-7ポリペプチドと比較してIL-7Rαに対する変異型インターロイキン-7ポリペプチドの結合親和性を低下させる、使用のためのイムノコンジュゲート。
【請求項2】
がんの治療のための医薬の製造におけるイムノコンジュゲートの使用であって、イムノコンジュゲートが、(i)変異型IL-7ポリペプチド及び(ii)抗体を含み、抗体が、PD1に結合し、配列番号1によるVHドメイン及び配列番号2によるVLドメインを含み、変異型IL-7ポリペプチドが、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換が、配列番号14を含むインターロイキン-7ポリペプチドと比較してIL-7Rαに対する変異型インターロイキン-7ポリペプチドの結合親和性を低下させる、使用。
【請求項3】
治療的有効量のイムノコンジュゲートを個体に投与することを含む、前記個体におけるがんを治療する方法であって、イムノコンジュゲートが、(i)変異型IL-7ポリペプチド及び(ii)抗体を含み、抗体が、PD1に結合し、配列番号1によるVHドメイン及び配列番号2によるVLドメインを含み、変異型IL-7ポリペプチドが、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換が、配列番号14を含むインターロイキン-7ポリペプチドと比較してIL-7Rαに対する変異型インターロイキン-7ポリペプチドの結合親和性を低下させる、方法。
【請求項4】
配列番号14によるヒトIL-7のG85位のアミノ酸置換がG85Eである、請求項1に記載の使用のためのイムノコンジュゲート、請求項2に記載の使用、又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
変異型インターロイキン-7ポリペプチドが、K81位にアミノ酸置換をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項6】
変異型インターロイキン-7ポリペプチドが、アミノ酸置換K81Eを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項7】
イムノコンジュゲートが、最大1つの変異型IL-7ポリペプチドを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項8】
抗体が、第1のサブユニットと第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項9】
Fcドメインが、IgGクラス、特にIgG1サブクラスのFcドメインである、請求項8に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項10】
FcドメインがヒトFcドメインである、請求項8又は9に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項11】
抗体が、IgGクラス、特にIgG1サブクラスの免疫グロブリンである、請求項8から10のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項12】
Fcドメインが、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項13】
Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に位置決め可能な突起が生成され、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の突起が位置決め可能である空洞が生成される、請求項8から12のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項14】
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられており(Y407V)、任意選択的に366位のスレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項8から13のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項15】
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられている(S354C)か又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられており(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に349位のチロシン残基がシステイン残基により置き換えられている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項8から14のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項16】
変異型IL-7ポリペプチドが、そのアミノ末端アミノ酸で、任意選択的にリンカーペプチドを通じて、Fcドメインのサブユニットのうちの1つの、特にFcドメインの第1のサブユニットの、カルボキシ末端アミノ酸に融合している、請求項8から15のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項17】
リンカーペプチドが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項16に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項18】
Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体への結合、及び/又はエフェクター機能、特に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む、請求項8から17のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項19】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、L234、L235、及びP329(Kabat EUインデックス番号付け)からなる群より選択される1つ又は複数の位置におけるものである、請求項18に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項20】
Fcドメインの各サブユニットが、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む、請求項8から19のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【請求項21】
配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号24及び配列番号25からなる群より選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、がんの治療における使用のためのイムノコンジュゲート、特に、変異型インターロイキン-7ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートに関する。さらに、本発明は、そのようなイムノコンジュゲートの使用、及び前記イムノコンジュゲートを投与することを含むがんの治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-7(IL-7)は、主にリンパ系組織中の間質細胞によって分泌されるサイトカインである。IL-7は、例えば、多能性造血幹細胞のリンパ芽球への分化を刺激することによって、リンパ球の成熟に関与する。IL-7は、T細胞の発生及び生存、並びに成熟T細胞の恒常性に不可欠である。IL-7が不足すると、未熟な免疫細胞の停止が引き起こされる(Lin J.et al.(2017),Anticancer Res.37(3):963-967)。
【0003】
IL-7は、IL-7 Rアルファ鎖(IL-7Rα、CD127)と共通ガンマ鎖(γc、CD132、IL-2Rγ)とから構成されるIL-7受容体に結合し、インターロイキンIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21と相互作用する(Rochman Y.et al.,(2009)Nat Rev Immunol.9:480-490)。γcはほとんどの造血細胞によって発現されるのに対して、IL-7Rαはリンパ系統の細胞によってほぼ排他的に発現される(Mazzucchelli R.and Durum S.K.(2007)Nat Rev Immunol.7(2):144-54)。IL-7Rαは、ナイーブ細胞からエフェクター細胞への分化とともにT細胞の表面上にみられるが、その発現は最終分化T細胞上で低下し、制御性T細胞の表面には実質的に存在しない。IL-7Rα mRNA及びタンパク質の発現レベルはIL-2によって負に制御されるため、IL-2Rα(CD25)を発現する最近活性化されたT細胞ではIL-7Rαが下方制御され(Xue H.H,et al.2002,PNAS.99(21):13759-64)、このメカニズムは、最近感作刺激されたT細胞のIL-2媒介の迅速なクローン増殖を確実にする一方、IL-7の役割はすべてのT細胞クローンを均等に維持することである。IL-7Rαはまた、PD-1遮断に応答するがん患者の腫瘍において見出される、CD8 T細胞、TCF-1+PD-1+幹様CD8 T細胞の新たに特徴づけられた前駆体集団についても最近報告された(Hudson et al.,2019,Immunity 51,1043-1058;Im et al.,PNAS,vol.117,no.8,4292-4299;Siddiqui et al.,2019,Immunity 50,195-211;Held et al.,Sci.,Transl.Med.11;eaay6863(2019);Vodnala and Restifo,Nature,Vol 576,19/26 December 2019)。今日まで、幹様CD8 T細胞に対するIL-7の効果に関する科学的説明はないが、チェックポイント阻害剤に応答する患者の数を増加させるために、IL-7を使用して腫瘍反応性T細胞のこの集団を増殖させ得た。
【0004】
IL-7、IL-7Rα及びγcは、JAK/STAT(ヤヌスキナーゼ(JAK)-シグナル伝達及び転写活性化因子(STAT))経路並びにPI3K/Akt(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ、プロテインキナーゼB(AKT))シグナル伝達カスケードを介してシグナル伝達する三成分複合体を形成し、B細胞及びT細胞の発達及び恒常性をもたらすNiu N.and Qin X.(2013)Cell Mol Immunol.10(3):187-189,Jacobs et al.,(2010),J Immunol.184(7):3461-3469)。
【0005】
IL-7は、25kDaの4ヘリックスバンドル、単量体タンパク質である。ヘリックス長は13から22アミノ酸までに及び、これはインターロイキンに結合する他の一般的なガンマ鎖(γc、CD132、IL-2Rγ)のヘリックス長と同様である。しかしながら、IL-7は、IL-7/IL-7Rα相互作用を安定化させることが示されたAヘリックスにおいて独特のターンモチーフを示す(McElroy,C.A.et al.,(2009)Structure 17:54-65)。Aヘリックスは受容体鎖IL-7Rα及びγcの両者と相互作用するが、Cヘリックスは主にIL-7Rαと相互作用し、Dヘリックスはγc鎖と相互作用する(PDB:3DI2及びPDB:2ERJに基づく配列及び構造アラインメント)。異種性を減少させる及び/又は親和性/効力を減少させる修飾を有するバリアントIL-7は、国際公開第2020/127377 A1号及び同第2020/236655 A1号に記載されている。
【0006】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1又はCD279)は、受容体のCD28ファミリーの阻害メンバーであり、これには、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAも含まれる。PD-1は、細胞表面受容体であり、活性化B細胞、T細胞、及び骨髄細胞上で発現される(Okazaki et al(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82;Bennett et al.(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1の構造は、1つの免疫グロブリン可変様細胞外ドメインと、免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)及び免疫受容体チロシンベースのスイッチモチーフ(ITSM)を含有する細胞質ドメインとからなる単量体1型膜貫通タンパク質である。PD-1に対する2つのリガンドであるPD-L1及びPD-L2が同定されており、これらはPD-1への結合時にT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freeman et al(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carter etal(2002)Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1及びPD-L2は両方とも、PD-1に結合するが、他のCD28ファミリーメンバーには結合しないB7ホモログである。PD-1に対する1つのリガンドであるPD-L1は、さまざまなヒトのがんにおいて豊富に存在する(Dong et al(2002)Nat.Med 8:787-9)。PD-1とPD-L1との間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介増殖の減少をもたらし、がん細胞による免疫回避を可能にする(Dong et al.(2003)J.MoI.Med.81:281-7;Blank et al.(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307-314;Konishi et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所相互作用を阻害することによって逆転させることができ、PD-1とPD-L2の相互作用も同様にブロックされると、効果は相加的である(Iwai et al.(2002)Proc.Nat 7.Acad.Scl USA 99:12293-7;Brown et al.(2003)J.Immunol.170:1257-66)。
【0007】
PD-1に結合する抗体は、例えば国際公開第2017/055443号に記載されている。承認されている治療用PD-1抗体には、ペムブロリズマブとニボルマブがある。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、PD-1に結合する抗体への変異型IL-7ポリペプチドの抱合を介して、免疫療法のための有利な特性を有するIL-7の変異体形態を、腫瘍細胞ではなく細胞傷害性Tリンパ球などの免疫エフェクター細胞に直接標的化する新規なアプローチを提供する。これは、PD-1発現免疫サブセット、特に腫瘍反応性T細胞、例えばCD8+PD1+TCF+T細胞サブセット及びそれらの子孫へのIL-7変異体のシス送達をもたらす。
【0009】
本発明で使用されるIL-7の変異体は、サイトカイン免疫療法に関連する問題、特にVLSの誘導によって引き起こされる毒性、AICDの誘導によって引き起こされる腫瘍耐性、及びTreg細胞の活性化によって引き起こされる免疫抑制を克服するように設計されてきた。上記の腫瘍標的化からの腫瘍の回避を避けることに加えて、免疫エフェクター細胞へのIL-7変異体の標的化は、CTLよりもTreg上のPD-1及びIL-7Rα発現レベルが低いため、免疫抑制Treg細胞よりも腫瘍特異的CTLの優先的活性化をさらに増加させ得る。PD-1に結合する抗体を使用することにより、PD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用によって誘導されるT細胞活性の抑制がさらに逆転され得、したがって免疫応答がさらに増強され得る。
【0010】
本発明は、がんの治療における使用のためのイムノコンジュゲートを提供し、ここで、イムノコンジュゲートは、(i)変異型IL-7ポリペプチド及び(ii)抗体を含み、抗体は、PD1に結合し、配列番号1によるVHドメイン及び配列番号2によるVLドメインを含み、変異型IL-7ポリペプチドは、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換は、配列番号14を含むインターロイキン-7ポリペプチドと比較してIL-7Rαに対する変異型インターロイキン-7ポリペプチドの結合親和性を低下させる。
【0011】
さらに、本発明は、がんの治療のための医薬の製造におけるイムノコンジュゲートの使用を提供し、ここで、イムノコンジュゲートは、(i)変異型IL-7ポリペプチド及び(ii)抗体を含み、抗体は、PD1に結合し、配列番号1によるVHドメイン及び配列番号2によるVLドメインを含み、変異型IL-7ポリペプチドは、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換は、配列番号14を含むインターロイキン-7ポリペプチドと比較してIL-7Rαに対する変異型インターロイキン-7ポリペプチドの結合親和性を低下させる。
【0012】
さらに、本発明は、治療的有効量のイムノコンジュゲートを個体に投与することを含む、個体におけるがんを治療する方法を提供し、ここで、イムノコンジュゲートは、(i)変異型IL-7ポリペプチド及び(ii)抗体を含み、抗体は、PD1に結合し、配列番号1によるVHドメイン及び配列番号2によるVLドメインを含み、変異型IL-7ポリペプチドは、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含み、アミノ酸置換は、配列番号14を含むインターロイキン-7ポリペプチドと比較してIL-7Rαに対する変異型インターロイキン-7ポリペプチドの結合親和性を低下させる。
【0013】
一態様では、配列番号14によるヒトIL-7のG85位におけるアミノ酸置換は、G85Eである。
【0014】
さらなる態様では、変異型インターロイキン-7ポリペプチドは、K81位にアミノ酸置換をさらに含む。一態様では、変異型インターロイキン-7ポリペプチドは、アミノ酸置換K81Eを含む。
【0015】
一態様では、イムノコンジュゲートは、最大1つの変異型IL-7ポリペプチドを含む。
【0016】
一態様では、抗体は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。一態様では、Fcドメインは、IgGクラス、特に、IgG1サブクラスのFcドメインである。さらなる態様では、FcドメインはヒトFcドメインである。一態様では、抗体はIgGクラス、特にIgG1サブクラス免疫グロブリンである。
【0017】
別の態様では、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む。一態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置決め可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置決め可能である。別の態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基はトリプトファン残基で置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基はバリン残基で置き換えられ(Y407V)、任意に366位のスレオニン残基はセリン残基で置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基はアラニン残基で置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。またさらなる実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいてさらに、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられる(S354C)か、又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられ(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいてさらに、349位のチロシン残基がシステイン残基で置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0018】
一態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、Fcドメインのサブユニットの1つ、特に、Fcの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸に、場合によってはリンカーペプチドを介して、融合する。一態様では、リンカーペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0019】
別の態様では、Fcドメインは、Fc受容体、特に、Fcγ受容体に対する結合及び/又はエフェクター機能、特に抗体依存性細胞傷害(ADCC)を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。別の態様では、前記1つ又は複数のアミノ酸置換は、L234、L235及びP329(Kabat EUインデックス番号付け)からなる群より選択される1つ又は複数の位置にある。一態様では、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む。
【0020】
一態様では、本発明による、使用のためのイムノコンジュゲート、使用、又は方法は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号24及び配列番号25からなる群より選択される配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】2つのFabドメイン(可変ドメイン、定常ドメイン)、ヘテロ二量体Fcドメイン、及びFcドメインのC末端に融合された変異型IL-7ポリペプチドを含むIgG-IL-7イムノコンジュゲートフォーマットの概略図。
図2】PD1(alt)-IL7 VAR21及びPD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21と比較した、PD1(alt)-IL7wtで処理した場合の共培養したPD1を予め遮断されたCD4 T細胞及びPD1 CD4 T細胞におけるIL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)。IL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)を、曝露12分後の共培養したPD1(実線)及びPD-1を予め遮断された(点線)CD4 T細胞におけるSTAT5-Pの頻度として示した。3名のドナーの平均±SEM。
図3】PD1(alt)-IL7 VAR21及びPD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21と比較した、参照分子5~8で処理した場合の共培養したPD1を予め遮断されたCD4 T細胞及びPD1 CD4 T細胞におけるIL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)。IL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)を、曝露12分後の共培養したPD1(実線)及びPD-1を予め遮断された(点線)CD4 T細胞におけるSTAT5-Pの頻度として示した。3名のドナーの平均±SEM。
図4】PD1(alt)-IL7 VAR21及びPD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21と比較した、参照分子9及び10で処理した場合の共培養したPD1を予め遮断されたCD4 T細胞及びPD1 CD4 T細胞におけるIL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)。IL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)を、曝露12分後の共培養したPD1(実線)及びPD-1を予め遮断された(点線)CD4 T細胞におけるSTAT5-Pの頻度として示した。3名のドナーの平均±SEM。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本明細書に開示されるイムノコンジュゲートは、本明細書に記載される使用及び方法において特に有用であり得る。
【0023】
以下で別途定義されない限り、本明細書では、当該技術分野で一般的に使用される用語を使用する。
【0024】
本明細書で使用される用語「アミノ酸変異」は、アミノ酸置換、欠失、挿入及び修飾を包含することを意味する。最終構築物が所望の特徴、例えばIL-7Rα及び/又はIL-2Rγへの結合が減少する限り、置換、欠失、挿入及び修飾のいかなる組み合わせも最終構築物に到達させ得る。アミノ酸配列の欠失及び挿入には、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の欠失、並びにアミノ酸の挿入が含まれる。末端欠失の例は、完全長ヒトIL-7の1位における残基の欠失である。好ましいアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、IL-7ポリペプチドの結合特徴を変える目的のために、非保存的アミノ酸置換(すなわち、1つのアミノ酸を、構造特性及び/又は化学特性が異なる別のアミノ酸と置き換えること)が特に好ましい。好ましいアミノ酸置換は、疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸によって置き換えることを含む。アミノ酸置換には、天然に存在しないアミノ酸による、又は20の標準アミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)の天然に存在するアミノ酸誘導体による置き換えが含まれる。アミノ酸変異は、当該技術分野でよく知られている遺伝学的方法又は化学的方法を用いて生じさせることができる。遺伝学的方法には、部位特異的変異誘発、PCR、遺伝子合成等が含まれ得る。遺伝子工学以外の方法、例えば化学修飾によるアミノ酸の側鎖基を変化させる方法も有用であり得ると考えられる。
【0025】
「親和性」は、分子の単一の結合部位(例えば、受容体)と、その結合パートナー(例えば、リガンド)との間の非共有結合的相互作用の合計強度を指す。別途指示がない限り、本明細書で使用される「結合親和性」は、結合対(例えば、抗原結合部分と抗原、又は受容体とそのリガンド)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、概して、解離定数(K)によって表すことができ、それは解離速度定数と会合速度定数(それぞれkoff及びkon)の比である。したがって、速度定数の比が同じである限り、同等の親和性が異なる速度定数を含み得る。親和性は、ここに記載のものを含む当該技術分野で既知の確立された方法により測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0026】
IL-7は、IL-7Rアルファ鎖(本明細書では、IL-7Rアルファ、IL-7Rα、IL7Rα、IL-7a、IL7Ra又はCD127とも呼ばれる)並びに共通ガンマ鎖(本明細書では、γc、CD132、IL-2Rガンマ、IL-2Rg、IL2Rg、IL-2Rγ又はIL2Rγとも呼ばれる)で構成されるIL-7受容体に結合し、これはインターロイキンIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21と相互作用する(Rochman Y.et al.,(2009)Nat Rev Immunol.9:480-490)。
【0027】
IL-7受容体に対する変異型又は野生型IL-7ポリペプチドの親和性は、BIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な機器及び組み換え発現(例えば、Shanafelt et al.,Nature Biotechnol 18,1197-1202(2000))を参照)によって得られ得る受容体サブユニットを使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)によって、国際公開第2012/107417号に記載されている方法に従って測定され得る。あるいは、IL-7受容体に対するIL-7変異体の結合親和性は、受容体の1つ又は他のそのような形態を発現することが公知の細胞株を用いて評価され得る。結合親和性を測定するための具体的で説明的な例示的実施態様を、以下に記載する。
【0028】
本明細書で使用される「インターロイキン-7」又は「IL-7」という用語は、別途指示がない限り、哺乳動物、例えば霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えばマウス及びラット)を含む、任意の脊椎動物源由来の任意の天然IL7を指す。この用語は、未処理のIL-7と、細胞におけるプロセシングから生じるIL-7の任意の形態を包含する。この用語は、IL-7の天然に存在するバリアント、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。例示的なヒトIL-7のアミノ酸配列は配列番号14に示される。
【0029】
本明細書で使用される「IL-7変異体」又は「変異型IL-7ポリペプチド」という用語は、完全長IL-7、IL-7の切断型、及びIL-7が融合又は化学的コンジュゲーション等によって別の分子に連結した形態を含む、IL-7分子の様々な形態のあらゆる変異形態を包含することを意図している。「完全長」は、IL-7に関して使用される場合、成熟した天然の長さのIL-7分子を意味することを意図している。例えば、完全長ヒトIL-7は、配列番号14によるポリペチド配列を有する分子を指す。様々な形態のIL-7変異体は、IL-7とIL7Rアルファ及び/又はIL2Rガンマとの相互作用に影響を及ぼす少なくとも1つのアミノ酸変異を有することを特徴とする。この変異は、その位置に通常位置する野生型アミノ酸残基の置換、欠失、トランケーション又は修飾を含み得る。アミノ酸置換によって得られる変異体が好ましい。別途指示がない限り、IL-7変異体は、本明細書中では、変異型IL-7ペプチド配列、変異型IL-7ポリペプチド、変異型IL-7タンパク質、変異型IL-7類似体又はIL-7バリアントと称される場合がある。
【0030】
IL-7の様々な形態の命名は、本明細書では、配列番号14に示される配列に対して行われる。同じ変異を示すために、本明細書では様々な名称が使用され得る。例えば、位置15のバリンからアラニンへの変異は、15A、A15、A15、V15A、又はVal15Alaとして示され得る。
【0031】
本明細書で使用される「ヒトIL-7分子」とは、配列番号14のヒトIL-7配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%又は少なくとも約96%同一であるアミノ酸配列を含むIL-7分子を意味する。特に、配列同一性は、少なくとも約95%、より詳しくは、少なくとも約96%である。特定の実施態様では、ヒトIL-7分子は、完全長IL-7分子である。
【0032】
本明細書で使用されるIL-7の「野生型」形態は、野生型形態が、変異型IL-7ポリペプチドの各アミノ酸位置に野生型アミノ酸を有する以外は、変異型IL-7ポリペプチドと同じIL-7の形態である。例えば、IL-7変異体が完全長IL-7である(すなわちIL-7が、任意の他の分子に融合又はコンジュゲートしていない)場合、この変異体の野生型形態は完全長天然IL-7である。IL-7変異体が、IL-7とIL-7の下流(例えば、抗体鎖)をコードする別のポリペプチドとの融合である場合、このIL-7異性体の野生型形態は、同じ下流のポリペプチドに融合した、野生型アミノ酸配列を有するIL-7である。さらに、IL-7変異体が、IL-7の切断型(IL-7のトランケートされていない部分の中の変異した形態又は修飾された形態)である場合、このIL-7変異体の野生型形態は、同様に、野生型配列を有するトランケートされたIL-7である。IL-7受容体結合親和性、IL-7受容体結合又は様々な形態のIL-7変異体の生物学的活性を対応する野生型形態のIL-7と比較する目的で、野生型という用語は、天然に存在する天然のIL-7と比較してIL-7受容体結合に影響を及ぼさない1つ又は複数のアミノ酸変異を含むIL-7の形態を包含する。本発明による特定の実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドと比較される野生型IL-7ポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸配列を含む。
【0033】
「制御性T細胞」又は「Treg細胞」とは、末梢寛容と呼ばれる、他のT細胞の応答を抑制し得る特殊なタイプのCD4T細胞を意味する。Treg細胞は、IL-2受容体のα-サブユニット(CD25)の発現上昇、IL-7Rα(CD127)及び転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の低値又は非存在を特徴とし(Sakaguchi,Annu Rev Immunol 22,531-62(2004))、腫瘍によって発現されるものを含む抗原に対する末梢自己寛容の誘導及び維持において重要な役割を果たす。本明細書で使用される場合、「エフェクター細胞」という用語は、生存及び/又は恒常性がIL-7によって影響されるリンパ球の集団を指す。エフェクター細胞には、メモリーCD4+及びCD8+細胞、並びに腫瘍反応性幹様T細胞を含む最近プライミングされたT細胞が含まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「PD1」、「ヒトPD1」、「PD-1」又は「ヒトPD-1」(プログラムされた細胞死タンパク質1、又はプログラムされた死1(Programmed Death 1)としても知られる)は、ヒトタンパク質PD1(配列番号7、シグナル配列を含まないタンパク質)/(配列番号8、シグナル配列を含むタンパク質)を指す。UniProtエントリー番号Q15116(バージョン156)も参照。本明細書で使用される場合、「PD-1に結合する」、「PD-1に特異的に結合する」、「PD-1に結合する」又は「抗PD-1抗体」とは、PD-1、特に細胞表面に発現するPD-1ポリペプチドに十分な親和性で結合できる抗体を指し、その抗体がPD-1を標的とする診断剤及び/又は治療剤として有用であることを指す。一実施態様では、無関係な非PD-1タンパク質に対する抗PD-1抗体の結合度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又はフローサイトメトリー(FACS)によって、又はBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサシステムを用いた表面プラズモン共鳴アッセイによって測定する場合、PD-1に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の実施態様では、PD-1に結合する抗体は、ヒトPD-1への結合についての結合親和性のKD値が、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下又は0.001nM以下(例えば10-8M以下、例えば10-8Mから10-13M、例えば10-9から10-13M)である。結合親和性のKD値は、ヒトPD-1の細胞外ドメイン(ECD)(PD-1-ECD、配列番号13を参照)を抗原として用いた表面プラズモン共鳴アッセイで決定され得る。
【0035】
「特異的結合」とは、結合が抗原に対して選択的であり、望ましくない相互作用又は非特異的相互作用と区別できることを意味する。抗体が特定の抗原(例えば、PD-1)に結合する能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又は当業者によく知られている他の技術、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore装置で分析される)(Liljeblad et al.,Glyco J 17,323-329(2000))及び従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))のいずれかによって測定され得る。一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体の、無関係なタンパク質に対する結合度は、例えばSPRによって測定される抗原に対する抗体の結合の約10%未満である。本明細書に記載されるような使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、PD-1に特異的に結合する。
【0036】
本明細書で使用される用語「ポリペプチド」は、アミノ結合(ペプチド結合としても知られる)により直鎖状に連結した単量体(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の鎖を指すのであって、特定の長さの生成物を指すのではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の鎖を指すのに使用される他のいかなる用語も「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらのいずれの用語の代わりに、又はそれらと互換的に使用されてもよい。用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことも意図されており、このような生成物には、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、又は天然に存在しないアミノ酸による修飾が含まれる。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源から誘導されてもよく、又は組み換え技術によって生成されてもよいが、指定の核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成によるものを含め、任意の様式で生成され得る。ポリペプチドは、規定の三次元構造を有することができるが、そのような構造を必ずしも有するものではない。規定の三次元構造を有するポリペプチドは、折りたたまれていると称され、規定の三次元構造を有さずに多数の異なる立体配座を採用することのできるポリペプチドは、折りたたまれていないと称される。
【0037】
「単離された」ポリペプチド若しくはバリアント又はその誘導体は、その自然の環境にないポリペプチドを意図している。特定のレベルの精製は、必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その天然又は自然の環境から取り出すことができる。宿主細胞に発現される組み換え生成されたポリペプチド及びタンパク質は、任意の適切な技術によって、分離されるか、断片化されるか、又は部分的に若しくは実質的に精製された天然ポリペプチド又は組み換えポリペプチドと同様に、本発明の目的のために単離されると考えられる。
【0038】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するために、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入した後に、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、Clustal W,Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを得るのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。ただし、本明細書において、アミノ酸配列同一性%値は、BLOSUM50比較マトリックスを備えたFASTAパッケージバージョン36.3.8c以降のggsearchプログラムを使用して生成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.Pearson and D.J.Lipman(1988),「Improved Tools for Biological Sequence Analysis」,PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson(1996)「Effective protein sequence comparison」Meth.Enzymol.266:227- 258;及びPearson et.al.(1997)Genomics 46:24-36によって記載されており、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml.から公的に入手可能である。又は、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公的なサーバーを使用し、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;オープン:-10;ext:-2;Ktup=2)を用い、ローカルではなくグローバルのアラインメントを確実に行い、配列を比較することができる。アミノ酸同一性パーセントは、出力アラインメントヘッダ中に与えられる。
【0039】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単離された核酸分子又はコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来のRNA、又はプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合又は従来の結合以外の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)中に見出されるもの)を含んでいてもよい。「核酸分子」という用語は、任意の1つ又は複数の核酸セグメント、例えば、ポリヌクレオチド中に存在するDNA又はRNA断片を指す。
【0040】
「単離された」核酸分子又はポリヌクレオチドは、その天然環境から取り除かれた核酸分子、DNA又はRNAを意図している。例えば、ベクターにおいて含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的のために単離されていると考えられる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞内に維持されている組換えポリヌクレオチド、又は溶液中の(部分的に又は実質的に)精製されたポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド分子を通常含む細胞に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、そのポリヌクレオチド分子は、染色体外に、又は天然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。単離されたRNA分子は、本発明による使用のためのポリペプチドのin vivo又はin vitroRNA転写物、並びに陽性及び陰性の鎖形態、及び二本鎖形態を含む。単離されたポリヌクレオチド又は核酸は、合成により生成されたそのような分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、又は転写ターミネーター等の調節エレメントであってもよく、又は調節エレメントを含んでいてもよい。
【0041】
「[例えば、本発明のイムノコンジュゲート]をコードする単離されたポリヌクレオチド(又は核酸)」は、抗体重鎖及び軽鎖並びに/又はIL-7ポリペプチド(又はその断片)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド分子を指し、単一のベクター又は別個のベクターにおけるそのような1つ又は複数のポリヌクレオチド分子と、宿主細胞の1つ又は複数の位置に存在するそのような1つ又は複数の核酸分子とを含む。
【0042】
「発現カセット」という用語は、標的細胞内の特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて、組み換え又は合成により生成されたポリヌクレオチドを指す。組み換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、プラスチドDNA、ウイルス又は核酸断片中に取り込まれ得る。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、配列の中でも特に、転写される核酸配列とプロモーターとを含む。発現カセットは、本発明による使用のためのイムノコンジュゲート又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0043】
「ベクター」又は「発現ベクター」という用語は、細胞内でそれが作用可能に会合される特定の遺伝子の発現を導入及び誘導するために使用されるDNA分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造物としてのベクターと、ベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターとを含む。発現ベクターは、発現カセットを含み得る。発現ベクターによって、安定したmRNAの多量の転写が可能となる。発現ベクターが細胞内部に入ると、遺伝子によってコードされるリボ核酸分子又はタンパク質が、細胞転写及び/又は翻訳機構により産生される。発現ベクターは、本発明による使用のためのイムノコンジュゲート又はその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含み得る。
【0044】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」という用語は互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は、核酸の含有量が親細胞と完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明のイムノコンジュゲートを生成するために使用され得る任意の種類の細胞系である。宿主細胞には、培養細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、HEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞などの哺乳動物培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が含まれるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物若しくは動物組織内に含まれる細胞も含まれる。
【0045】
本明細書での「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含む。
【0046】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、例えば、天然に存在する突然変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、あり得るバリアント抗体(そのようなバリアントは通常微量で存在する)を除いて、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な手法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのこのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書中に記載される。
【0047】
「単離された」抗体は、その自然環境の構成要素から分離された(すなわち、その天然環境にはない)ものである。特定のレベルの精製は、必要とされない。例えば、単離された抗体は、その天然環境又は自然環境から除去することができる。宿主細胞内で発現する組み換え産生された抗体は、任意の適切な技術によって、分離され、画分化され、又は部分的に若しくは実質的に精製された、天然又は組み換え抗体と同様に、本発明の目的のために単離されると考えられる。このように、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、単離される。いくつかの実施態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換若しくは逆相HPLC)法によって決定して、純度が95%又は99%より大きくなるまで精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えばFlatman et al.,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照のこと。
【0048】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書では互換的に使用されて、天然抗体構造と実質的に類似した構造を有する抗体を指す。
【0049】
「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子である。抗体断片の例には、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SHは、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えばscFv)、及び単一ドメイン抗体が含まれる。抗体断片の総説については、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照のこと。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5571894号及び同第5587458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivo半減期が長くなったFab及びF(ab’)断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照のこと。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA 90,6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al.,Nat Med 9,129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。所定の実施態様において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照)。抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による産生を含め、様々な技術によって作製され得る。
【0050】
「免疫グロブリン分子」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している2つの軽鎖及び2つの重鎖から構成される約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は可変重鎖ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)を有し、それに続いて、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VL)を有し、それに続いて軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインを有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類のうちの1つに割り当てることができ、そのうちのいくつかはサブタイプ、例えばγ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)にさらに分類することできる。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうちの1つに割り当てられてもよい。免疫グロブリンは、本質的に、免疫グロブリンのヒンジ領域を介して結合された2つのFab分子とFcドメインからなる。
【0051】
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原の一部又は全部に特異的に結合するとともに抗原の一部又は全部に相補的であるエリアを含む、抗体の部分を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域ともいう)によって提供されてもよい。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。
【0052】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page91(2007)を参照されたい。抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分である。可変領域配列に関して本明細書で使用される「Kabat番号付け」は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に従って番号付けされる。
【0053】
本明細書で使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載される、本明細書では「Kabatによる番号付け」又は「Kabat番号付け」と呼ばれるKabat番号付けシステムに従って番号付けされる。具体的には、Kabat番号付けシステム(Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th ed.,Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)の647~660頁を参照)を、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723頁を参照)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用し、この場合には、「Kabat EUインデックスによる番号付け」と言及することによって本明細書でさらに明確にしている。
【0054】
「超可変領域」又は「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列において超可変性であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、及び/又は構造的に所定のループ(「超可変ループ」)を形成し、及び/又は抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般的に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)及びVLに3つ(L1、L2、L3)の、6つのHVRを含む。本発明の例示的なHVRとして、以下のものが挙げられる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)に存在する抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996));及び
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0055】
別途指示がない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上掲のKabat et al.に従って番号付けされている。
【0056】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は、概して、VH(又はVL)に次の順序で現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0057】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、HVR(例えばCDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト抗体に対応し、FRの全て又は実質的に全てが、ヒト抗体に対応する。このような可変ドメインを、本明細書では「ヒト化可変領域」と呼ぶ。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。いくつかの実施態様では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復するか又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を遂げた抗体を指す。本発明に包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、特にC1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合に関して、本発明による特性を生み出すために定常領域が元の抗体の定常領域からさらに修飾又は変更されたものである。
【0058】
「ヒト抗体」は、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体の、又はヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、あるいは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。特定の実施態様では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物、例えば、マウス、ラット又はウサギに由来する。特定の実施態様では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株に由来する。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片もまた、本発明のヒト抗体又はヒト抗体断片であると考えられる。
【0059】
抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、抗体又は免疫グロブリンの重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgAに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0060】
本明細書の「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界は、わずかに変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシ末端まで伸長するよう定義されている。しかしながら、宿主細胞によって産生された抗体は、重鎖のC末端から1つ又は複数、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後切断を受けることがある。したがって、完全長重鎖をコードする特異的な核酸分子の発現により、宿主細胞によって生産される抗体は、完全長重鎖を含むことも、完全長重鎖の切断されたバリアント(本明細書では「切断バリアント重鎖」とも呼ぶ)を含み得る。これは、重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447、Kabat EUインデックスによる番号付け)である場合に当てはまる。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)とリジン(K447)は、存在してもしなくてもよい。Fcドメイン(又は本明細書に定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、別途指示がない場合には、本明細書では、C末端グリシン-リジンジペプチドを含まずに示される。本発明の一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる本明細書で明記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、さらなるC末端グリシン-リシンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本発明の一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる本明細書で明記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、さらなるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。本発明による使用のための組成物、例えば、本明細書に記載の薬学的組成物は、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの集合を含む。イムノコンジュゲートの集合は、完全長重鎖を有する分子と、切断されたバリアント重鎖を有する分子とを含み得る。イムノコンジュゲートの集合は、完全長重鎖を有する分子と、切断されたバリアント重鎖を有する分子との混合物からなっていてもよく、イムノコンジュゲートの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%は、切断されたバリアント重鎖を有する。本発明の一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの集合を含む組成物は、さらなるC末端グリシン-リシンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、本明細書で明記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含むイムノコンジュゲートを含む。本発明の一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの集合を含む組成物は、さらなるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む、本明細書で明記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含むイムノコンジュゲートを含む。本発明の一実施態様では、そのような組成物は、本明細書で明記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子と、さらなるC末端グリシン残基(G446、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む本明細書で明記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子と、さらなるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む本明細書で特定されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子とで構成される本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの集合を含む。本明細書に別途明記されない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991(上記も参照)に記載されている、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う。本明細書で使用される場合のFcドメインの「サブユニット」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定な自己会合が可能な、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
【0061】
「Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾」は、Fcドメインサブユニットを含むポリペプチドと同一のポリペプチドとの会合によるホモ二量体の形成を低減又は防止する、ペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後修飾である。本明細書で使用される会合を促進する修飾は、会合することが望ましい2つのFcドメインサブユニット(すなわちFcドメインの第1及び第2のサブユニット)の各々に対して行われる別々の修飾を特に含み、この修飾は2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するために互いに対して相補的である。例えば、会合を促進する修飾は、これらFcドメインサブユニットの一方又は両方の構造又は電荷を、それらの会合がそれぞれ立体的に又は静電的に望ましいものになるように変化させる。したがって、(ヘテロ)二量体化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間に起こり、これらは、サブユニットの各々に融合したさらなる構成成分(例えば抗原結合部分)が同じでないという意味で同一ではない可能性がある。いくつかの実施態様では、会合を促進する修飾は、Fcドメイン内のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。特定の実施態様では、会合を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれにおける別々のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。
【0062】
「エフェクター機能」という用語は、抗体に言及して使用される場合、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクター機能の例としては:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);抗体依存性細胞貪食(ADCP);サイトカイン分泌;抗原提示細胞によるイムノコンジュゲート媒介抗原取り込み;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞の活性化が含まれる。
【0063】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による、抗体でコーティングされた標的細胞の溶解につながる免疫機構である。標的細胞は、通常Fc領域に対するN末端であるタンパク質部分を介して、Fc領域を含む抗体又はその誘導体が特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される場合、用語「ADCCの低下」は、上で定義したADCCの機構により、標的細胞を取り囲む培地中の所定の抗体濃度で、所定の時間内に溶解される標的細胞の数の減少、及び/又はADCCの機構により、所定の時間内に所定の数の標的細胞の溶解を達成するために必要な、標的細胞を取り囲む培地中の抗体濃度の上昇のいずれかとして定義される。ADCCの低下は、同じ標準的な産生、精製、製剤化及び保存方法(これらは当業者には既知である)を用いて、同じタイプの宿主細胞によって産生されたが操作されたことがない同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。例えば、ADCCを低下させるアミノ酸置換をFcドメインに含む抗体によって媒介されるADCCの低下は、このアミノ酸置換をFcドメインに含まない同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。ADCCを測定するための適切なアッセイは、当該技術分野でよく知られている(例えば、国際公開第2006/082515号又は同第2012/130831号参照)。
【0064】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインの係合に続いて、受容体保有細胞を刺激してエフェクター機能を実行するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が含まれる。
【0065】
本明細書において使用される「操作する、操作された、操作」という用語は、ペプチド骨格のいずれかの操作、又は天然に存在するポリペプチド若しくは組み換えポリペプチド若しくはその断片の翻訳後修飾を含むと考慮される。操作には、アミノ酸配列の修飾、グリコシル化パターンの修飾又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾と、これらの手法の組み合わせとが含まれる。
【0066】
「結合の低下」、例えば、Fc受容体又はCD25に対する結合の低下は、例えばSPRによって測定される場合、それぞれの相互作用についての親和性の低下を指す。明確にするために、この用語には、親和性をゼロ(又は分析方法の検出限界未満)に減少させること、すなわち相互作用の完全な消失も含まれる。逆に、「結合の増加」とは、それぞれの相互作用に対する結合親和性の増加を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「イムノコンジュゲート」という用語は、少なくとも1つのIL-7分子と少なくとも1つの抗体とを含むポリペプチド分子を指す。IL-7分子は、様々な相互作用によって、本明細書に記載の様々な構成で、抗体に接続し得る。特定の実施態様では、IL-7分子は、ペプチドリンカーを介して抗体に融合する。本発明による使用のための特定のイムノコンジュゲートは、1つ又は複数のリンカー配列によって結合された、1つのIL-7分子及び抗体から本質的になる。
【0068】
「融合した」とは、構成要素(例えば、抗体及びIL-7分子)が、ペプチド結合によって直接的に、又は1つ又は複数のペプチドリンカーを介して、結合されることを意味する。
【0069】
本明細書で使用される場合、Fcドメインサブユニット等に関する「第1」及び「第2」という用語は、それぞれの種類の部分が複数存在する場合に、区別するのが簡便なように使用される。これらの用語の使用は、明示的に述べられていない限り、イムノコンジュゲートの特定の順序又は配向を付与することを意図しない。
【0070】
「有効量」の薬剤は、それが投与される細胞又は組織の生理的変化をもたらすために必要な量である。
【0071】
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な投薬量及び期間において有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、例えば、疾患の副作用を除去し、減少させ、遅延させ、最小限にし、又は防止する。
【0072】
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、齧歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。特に、個体又は対象は、ヒトである。
【0073】
「薬学的組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物活性を有効にするような形態の調製物であって、組成物が投与される対象にとって許容できない毒性を有する追加成分を含まない調製物を指す。
【0074】
「薬学的に許容される担体」は、活性成分以外の、薬学的組成物中の成分であって、対象にとって毒性でない成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、添加物、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」(及びその文法的な変化形、例えば、「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」)は、治療される個体において疾患の本来の経過を変えようとする試行における臨床的介入を指し、予防のために又は臨床病理の経過の間に実施することができる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移の予防、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様では、本発明のイムノコンジュゲートは、疾患の発症を遅延させるか、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0076】
実施態様の詳細な説明
変異型IL-7ポリペプチド
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートのIL-7バリアントは、免疫療法に有利な特性を有する。
【0077】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの変異型インターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドは、IL-7受容体のα-サブユニット及び/又はIL-2Rγサブユニットに対する変異型IL-7ポリペプチドの親和性を低下させる少なくとも1つのアミノ酸変異を含む。
【0078】
IL-7Rα及び/又はIL-2Rγに対する親和性が減少したヒトIL-7(hIL-7)の変異体は、例えば、アミノ酸位置81若しくは85又はこれらの組み合わせ(ヒトIL-7配列、配列番号14に対する番号付け)でのアミノ酸置換によって生成され得る。例示的なアミノ酸置換には、K81E及びG85Eが含まれる。一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの変異型インターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドは、配列番号14によるヒトIL-7のG85位にアミノ酸置換を含む。一実施態様では、前記変異型インターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドは、配列番号14によるアミノ酸置換G85Eを含む。さらなる実施態様では、使用のためのイムノコンジュゲートの前記変異型インターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドは、配列番号14によるヒトIL-7のK81及びG85位にアミノ酸置換を含む。一実施態様では、前記変異型インターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドは、配列番号14によるアミノ酸置換K81E及びG85Eを含む。
【0079】
変異型インターロイキン-7(IL-7)ポリペプチドは、好ましくはアミノ酸位置93及び118のうちの1つ又はそれらの組み合わせにおいて、ポリペプチドの相同性を改善する少なくとも1つのアミノ酸変異を含み得る。例示的なアミノ酸置換には、T93A及びS118Aが含まれる。
【0080】
本発明のいくつかの実施態様では、変異型インターロイキン-7ポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。本発明のいくつかの実施態様では、変異型インターロイキン-7ポリペプチドは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。これらの変異体は、野生型形態のIL-7変異体と比較して、インターロイキン7受容体に対する親和性の実質的な低下を示している。
【0081】
本明細書に開示されるIL-7変異体の他の特徴としては、PD1-IL-7イムノコンジュゲート中では主にトランスで(近接した細胞上で)送達される野生型IL-7と比較して、PD-1発現CD4 T細胞上のシスで(同じ細胞上で)IL-7のPD-1媒介送達を可能にするために、IL-7Rαに対して親和性が低下していることが挙げられる。
【0082】
特定の実施態様では、前記アミノ酸変異は、IL-Rα及び/又はIL-2Rγに対する変異型IL-7ポリペプチドの親和性を、少なくとも5分の1、具体的には少なくとも10分の1、より具体的には少なくとも25分の1まで低下させる。
【0083】
IL-7のN-グリコシル化の除去と組み合わせたIL-7Rα及び/又はIL-2Rγに対するIL-7の親和性の低下は、特性が改善されたIL-7タンパク質をもたらす。例えば、N-グリコシル化部位を除去すると、変異型IL-7ポリペプチドがCHO細胞又はHEK細胞などの哺乳動物細胞において発現される場合、より均一な産物をもたらす。IL-7のN-グリコシル化部位の除去は、ヒトIL-7の残基72、93又は118に相当する位置におけるアミノ酸変異によって達成され得る。
【0084】
具体的な実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの変異型IL-7ポリペプチドは、Tリンパ球細胞の増殖、プライミングされたTリンパ球細胞のエフェクター機能、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞の増殖、活性化B細胞の分化、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖、NK細胞の分化、活性化T細胞又はNK細胞によるサイトカイン分泌、及びNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞傷害性からなる群より選択される細胞応答のうちの1つ又は複数をさらに誘発することができる。
【0085】
一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの変異型IL-7ポリペプチドは、対応する野生型IL-2配列、例えば、配列番号14のヒトIL-7配列と比較して、12以下、11以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、又は5以下のアミノ酸変異を含む。特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートの変異型IL-7ポリペプチドは、対応する野生型IL-7配列、例えば、配列番号14のヒトIL-7配列と比較して、5以下のアミノ酸変異を含む。
【0086】
イムノコンジュゲート
本明細書に記載のイムノコンジュゲートは、IL-分子及び抗体を含む。このようなイムノコンジュゲートは、IL-7を例えば腫瘍微小環境に直接的に標的化することによって、IL-7治療の有効性を顕著に高める。本発明によれば、イムノコンジュゲートに含まれる抗体は、全抗体若しくは免疫グロブリン、又は抗原特異的な結合親和性等の生物学的機能を有するこれらの一部若しくはバリアントであり得る。
【0087】
イムノコンジュゲート治療の一般的な利益は、容易に明らかである。例えば、イムノコンジュゲートに含まれる抗体は、腫瘍特異的なエピトープを認識し、腫瘍部位に対するイムノコンジュゲート分子の標的化をもたらす。したがって、高濃度のIL-7が腫瘍微小環境に送達され得、それによって、コンジュゲートされていないIL-7で必要とされるよりもかなり少ない用量のイムノコンジュゲートを用い、本明細書に述べた様々な免疫エフェクター細胞の活性化及び増殖が引き起こされる。しかしながら、IL-7イムノコンジュゲートのこの特徴は、IL-7分子の潜在的な副作用を再び悪化させる場合がある。血流中のIL-7イムノコンジュゲートの血中半減期が、コンジュゲートされていないIL-7と比較して、顕著に長いため、IL-7又は融合タンパク質部分の他の部分が、血管系内に通常存在する成分を活性化する可能性が高まる。同じ問題を、Fc又はアルブミン等の別の部分に融合したIL-7を含む他の融合タンパク質にも適用し、血中のIL-7の半減期を長くする。したがって、野生型形態のIL-7と比較して毒性が低下した本明細書に記載の変異型IL-7ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートが特に有利である。
【0088】
本明細書で上述したように、腫瘍細胞ではなく、免疫エフェクター細胞に対してIL-7を直接的に標的化することは、IL-7免疫療法にとって有利であり得る。
【0089】
したがって、本発明は、がんの治療における使用のための、本明細書で上述したような変異型IL-7ポリペプチド、及びPD-1に結合する抗体を提供する。一実施態様では、前記変異型IL-7ポリペプチドと抗体とが融合タンパク質を形成し、すなわち、変異型IL-7ポリペプチドは抗体とペプチド結合を共有する。いくつかの実施態様では、抗体は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。具体的な実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、Fcドメインのサブユニットのうちの1つのカルボキシ末端アミノ酸に、場合によってはリンカーペプチドを介して、融合する。いくつかの実施態様では、抗体は完全長抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は免疫グロブリン分子、具体的にはIgGクラスの免疫グロブリン分子、より具体的にはIgGサブクラスの免疫グロブリン分子である。このような一実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖のうちの1つと、アミノ末端ペプチド結合を共有している。ある特定の実施態様では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施態様では、抗体は、Fab分子又はscFv分子である。一実施態様では、抗体はFab分子である。別の実施態様では、抗体はscFv分子である。イムノコンジュゲートはまた、複数の抗体を含み得る。複数の抗体、例えば第1の抗体及び第2の抗体が、イムノコンジュゲートに含まれる場合、各抗体は、様々な形態の抗体及び抗体断片から独立して選択され得る。例えば、第1の抗体はFab分子であってもよく、第2の抗体はscFv分子であってもよい。具体的な実施態様では、前記第1の抗体及び前記第2の抗体のそれぞれはscFv分子であるか、又は前記第1の抗体及び前記第2の抗体のそれぞれはFab分子である。特定の実施態様では、前記第1の抗体及び前記第2の抗体のそれぞれは、Fab分子である。一実施態様では、前記第1の抗体及び前記第2の抗体のそれぞれはPD-1に結合する。
【0090】
イムノコンジュゲートフォーマット
例示的なイムノコンジュゲートフォーマットは、PCT国際公開第2011/020783号に記載されており、その文献全体が参照により本明細書に援用される。これらのイムノコンジュゲートは、少なくとも2つの抗体を含む。したがって、一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、本明細書に記載の変異型IL-7ポリペプチドと、少なくとも第1の抗体及び第2の抗体とを含む。特定の実施態様では、前記第1の抗体及び前記第2の抗体は、Fv分子、特にscFv分子とFab分子とからなる群より独立して選択される。特定の実施態様では、当該変異型IL-7ポリペプチドは、当該第1の抗体と、アミノ末端ペプチド結合又はカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、当該第2の抗体は、(i)変異型IL-7ポリペプチド又は(ii)第1の抗体と、アミノ末端ペプチド結合又はカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、1つ又は複数のリンカー配列によって結合する、変異型IL-7ポリペプチドと、第1の抗体及び第2の抗体、特にFab分子とから本質的になる。そのようなフォーマットは、それらが標的抗原(PD-1)に高い親和性で結合するが、IL-7受容体への単量体結合のみを提供し、したがって、標的部位以外の場所で免疫細胞を有するIL-7受容体へのイムノコンジュゲートの標的化を回避するという利点を有する。特定の実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、第1の抗体、特に第1のFab分子と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の抗体、特に第2のFab分子と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施態様では、第1の抗体、特に第1のFab分子は、変異型IL-7ポリペプチドと、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の抗体、特に第2のFab分子と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施態様では、第1の抗体、特に第1のFab分子は、第1の変異型IL-7ポリペプチドと、アミノ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の抗体、特に第2のFab分子と、カルボキシ末端ペプチドを共有する。特定の実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、第1の重鎖可変領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の重鎖可変領域と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、第1の軽鎖可変領域と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の軽鎖可変領域と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施態様では、第1の重鎖又は軽鎖可変領域は、カルボキシ末端ペプチド結合によって、変異型IL-7ポリペプチドに結合し、さらに、アミノ末端ペプチド結合によって、第2の重鎖又は軽鎖可変領域に結合する。別の実施態様では、第1の重鎖又は軽鎖可変領域は、アミノ末端ペプチド結合によって、変異型IL-7ポリペプチドに結合し、さらに、カルボキシ末端ペプチド結合によって、第2の重鎖又は軽鎖可変領域に結合する。一実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、第1のFab重鎖又は軽鎖と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2のFab重鎖又は軽鎖と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施態様では、第1のFab重鎖又は軽鎖は、変異型IL-7ポリペプチドと、カルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2のFab 重鎖又は軽鎖と、アミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施態様では、第1のFab重鎖又は軽鎖は、変異型IL-7ポリペプチドと、アミノ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2のFab重鎖又は軽鎖と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する。一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、1つ又は複数のscFV分子とアミノ末端ペプチド結合を共有するとともに、1つ又は複数のscFV分子と、カルボキシ末端ペプチド結合を共有する、変異型IL-7ポリペプチドを含む。
【0091】
しかしながら、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートための特に好適なフォーマットは、抗体として免疫グロブリン分子を含む。このようなイムノコンジュゲートフォーマットは、国際公開第2012/146628号に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0092】
したがって、特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、本明細書に記載の変異型IL-7ポリペプチドと、PD-1に結合する免疫グロブリン分子、特にIgG分子、より具体的にはIgG分子とを含む。一実施態様では、イムノコンジュゲートは、最大1つの変異型IL-7ポリペプチドを含む。一実施態様では、免疫グロブリン分子は、ヒトである。一実施態様では、免疫グロブリン分子は、ヒト定常領域、例えば、ヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含む。一実施態様では、免疫グロブリンは、ヒトFcドメイン、特に、ヒトIgGFcドメインを含む。一実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、免疫グロブリン分子と、アミノ末端ペプチド結合又はカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。一実施態様では、イムノコンジュゲートは、変異型IL-7ポリペプチドと、1つ又は複数のリンカー配列によって結合された免疫グロブリン分子、特にIgG分子、より具体的にはIgG分子とから本質的になる。特定の実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、免疫グロブリン重鎖のうちの1つのカルボキシ末端アミノ酸に、場合によってはリンカーペプチドを介して、融合する。
【0093】
変異型IL-7ポリペプチドは、抗体に直接的に、又は1つ又は複数のアミノ酸、典型的には、約2~20アミノ酸を含むリンカーペプチドを介して、融合され得る。リンカーペプチドは当該技術分野で知られており、本明細書に記載される。適切な非免疫原性リンカーペプチドとしては、例えば、(GS)、(SG、(GS)又はG(SGリンカーペプチドが挙げられる。「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4の整数である。一実施態様では、リンカーペプチドは、少なくとも5アミノ酸長を有し、一実施態様では、5~100アミノ酸長、さらなる実施態様では、10~50アミノ酸長を有する。特定の実施態様では、リンカーペプチドは、15アミノ酸長を有する。一実施態様では、リンカーペプチドは、(GxS)又は(GxS)であり、G=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5又は6、m=0、1、2又は3)、又は(x=4、n=2、3、4又は5、m=0、1、2又は3)であり、一実施態様では、x=4、n=2又は3、さらなる実施態様では、x=4、n=3、さらなる実施態様ではx=4、n=2、及びm=4である。特定の実施態様では、リンカーペプチドは、(GS)(配列番号5)である。一実施態様では、リンカーペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列を有する(又はそれからなる)。配列番号6のアミノ酸配列を含む代替的なリンカーペプチドが使用されてもよい。
【0094】
特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、変異型IL-7分子と、PD-1に結合する免疫グロブリン分子、特にIgGサブクラス免疫グロブリン分子とを含み、変異型IL-7分子は、そのアミノ末端アミノ酸において、配列番号5のリンカーペプチドを介して免疫グロブリン重鎖の一方のカルボキシ末端アミノ酸に融合されている。
【0095】
特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、変異型IL-7分子とPD-1に結合する抗体とを含み、抗体は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインを含み、変異型IL-7分子は、そのアミノ末端アミノ酸において、配列番号5のリンカーペプチドを介してFcドメインのサブユニットの一方のカルボキシ末端アミノ酸に融合されている。
【0096】
PD-1抗体
本発明のイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、PD-1、特にヒトPD-1に結合し、PD-1が発現される標的部位、特に、PD-1を発現する、例えば腫瘍に関連するT細胞に、変異型IL-7ポリペプチドを誘導し得る。
【0097】
本明細書によるがんの治療、使用、又は方法のためのイムノコンジュゲートにおいて使用され得る適切なPD-1抗体は、治療用PD-1抗体の、例えばペンブロリズマブ又はニボルマブの、VHドメイン及びVLドメインを含む。
【0098】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、2つ以上の抗体を含んでもよく、これらは同じ抗原又は異なる抗原に結合し得る。しかしながら、特定の実施態様では、これらの抗体のそれぞれPD-1に結合する。一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、単一特異性的である。特定の実施態様では、前記イムノコンジュゲートは、単一の単一特異性抗体、特に単一特異性免疫グロブリン分子を含む。
【0099】
抗体は、PD-1、特にヒトPD-1への特異的結合を保持する任意の種類の抗体又はその断片であり得る。抗体断片としては、Fv分子、scFv分子、Fab分子及びF(ab’)分子が挙げられるが、これらに限定されない。しかしながら、特定の実施態様では、抗体は完全長抗体である。いくつかの実施態様では、抗体は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。いくつかの実施態様では、抗体は免疫グロブリン、特にIgGクラス、より具体的にはIgGサブクラス免疫グロブリンである。
【0100】
いくつかの実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0101】
いくつかの実施態様では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0102】
特定の実施態様では、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0103】
いくつかの実施態様において、抗体はヒト化抗体である。一実施態様では、抗体は、ヒト定常領域を含む免疫グロブリン分子、特にヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含むIgGクラス免疫グロブリン分子である。ヒト定常ドメインの例示的配列は、配列番号10及び11(それぞれヒトカッパ及びラムダのCLドメイン)、並びに配列番号12(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)に示されている。いくつかの実施態様では、抗体は、配列番号10又は配列番号11のアミノ酸配列、特に配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施態様では、抗体は、配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域は、本明細書に記載のFcドメインにアミノ酸変異を含み得る。
【0104】
Fcドメイン
特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。抗体のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、二量体であり、それぞれのサブユニットは、CH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一実施態様では、本発明のイムノコンジュゲートは、最大1つのFcドメインを含む。
【0105】
一実施態様では、イムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインは、IgG Fcドメインである。特定の実施態様では、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。別の実施態様では、Fcドメインは、IgG Fcドメインである。さらに特定の実施態様では、Fcドメインは、S228位(Kabat EUインデックス番号付け)にアミノ酸置換を、特にアミノ酸置換S228Pを含む、IgG Fcドメインである。このアミノ酸置換は、IgG抗体のin vivoでのFabアーム交換を減少させる(Stubenrauch et al.,Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照)。さらに特定の実施態様では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。またさらに特定の実施態様では、Fcドメインは、ヒトIgG Fcドメインである。ヒトIgG Fc領域の例示的配列は、配列番号9に示されている。
【0106】
ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合した変異型IL-7ポリペプチド、特に単一の(最大1つの)変異型IL-7ポリペプチドを含み、したがって、Fcドメインの2つのサブユニットは、典型的には、2つの同一でないポリペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組み換え同時発現及びその後の二量化によって、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組み換え産生におけるイムノコンジュゲートの収率及び純度を改善するため、抗体のFcドメインに、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することが有利である。
【0107】
したがって、特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も長いタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一実施態様では、前記修飾は、FcドメインのCH3ドメインの中にある。
【0108】
ヘテロ二量体化を強化するために、FcドメインのCH3ドメイン中の修飾に複数の手法が存在し、それらは例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012058768号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号に十分に記載されている。典型的には、そのような手法のすべてにおいて、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインの両方は、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)がそれ自体ともはやホモ二量体化することがなく、相補的に操作された他のCH3ドメインとヘテロ二量体化することができるように、(よって第1及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量体化し、二つの第1のCH3ドメイン又は二つの第2のCH3ドメインの間にホモ二量体が形成されないように)相補的に操作される。
【0109】
具体的な実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する当該修飾は、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの1つに「ノブ」修飾と、Fcドメインの2つのサブユニットの他の1つに「ホール」修飾とを含む。
【0110】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進するとともにホモ二量体形成を妨害するように、空洞内に位置決めされ得る。突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。突起と同一又は同様の大きさの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はスレオニン)と置き換えることによって、第2のポリペプチドの界面に作成される。
【0111】
したがって、特定の実施態様では、イムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内で位置決め可能な第1のサブユニットのCH3ドメイン内に突起を生成し、また、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中で、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置決め可能である。
【0112】
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)からなる群より選択される。
【0113】
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)及びバリン(V)からなる群より選択される。
【0114】
突起及び空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を改変することによって、例えば、部位特異的変異導入法によって、又はペプチド合成によって作製され得る。
【0115】
特定の実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、位置366のスレオニン残基が、トリプトファン残基と置き換えられており(T366W)、Fcドメイン(「ホール」サブユニット)の第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、位置407のチロシン残基が、バリン残基と置き換えられている(Y407V)。一実施態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、さらに、位置366のスレオニン残基が、セリン残基と置き換えられており(T366S)、位置368のロイシン残基が、アラニン残基と置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0116】
またさらなる実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、さらに、位置354のセリン残基が、システイン残基と置き換えられている(S354C)か、又は位置356のグルタミン酸残基が、システイン残基と置き換えられており(E356C)(特に、位置354のセリン残基がシステイン残基と置き換えられており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、さらに、位置349のチロシン残基が、システイン残基と置き換えられている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。これら2つのシステイン残基の導入により、Fcドメインの2つのサブユニット間にジスルフィド架橋が形成され、さらに二量体を安定させる(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
【0117】
特定の実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0118】
いくつかの実施態様では、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換H435R及びY436F(Kabat EUインデックスによる番号付け)をさらに含む。
【0119】
特定の実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」修飾を含む)に(場合によってはリンカーペプチドを介して)融合している。理論によって束縛されることを望まないが、Fcドメインのノブを含有するサブユニットへの変異型IL-7ポリペプチドの融合は、2つの変異型IL-7ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートの生成を(さらに)最小化する(2つのノブを含有するポリペプチドの立体的な衝突)。
【0120】
ヘテロ二量体化を強化するCH3修飾のための他の技術が本発明による代替例として考慮され、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、国際公開第2013/096291号に記載されている。
【0121】
一実施態様では、欧州特許第1870459号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。この手法は、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置における反対の電荷を有する荷電アミノ酸の導入に基づく。本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体の1つの好ましい実施態様は、アミノ酸変異R409D;(Fcドメインの)2つのCH3ドメインの1つにおけるK370E、及びアミノ酸変異D399K;FcドメインのCH3ドメインの他の1つにおけるE357K(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。
【0122】
別の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異T366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異T366S、L368A、Y407Vを含み、さらに、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異R409D;K370Eを、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異D399K;E357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0123】
別の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異S354C、T366Wを、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含むか、又は前記抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異Y349C、T366Wを、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを含み、さらに、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異R409D、K370Eを、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸変異D399K、E357Kを含む(全てKabat EUインデックスによる番号付け)。
【0124】
一実施態様では、国際公開第2013/157953号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Dを含む(KabatEUインデックスによる番号付け)。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、さらなるアミノ酸変異L351Kを含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368E(好ましくはL368E)(Kabat EUインデックスによる番号付け)から選択されるアミノ酸変異をさらに含む。
【0125】
一実施態様では、国際公開第2012/058768号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390又はK392に、例えば、(a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、(b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、(c)S400E、S400D、S400R又はS400K、(d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、(e)N390R、N390K又はN390D、(f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eから選択される、さらなるアミノ酸変異を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366V、K409Fを含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる実施態様では、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異K392E、T411E、D399R及びS400Rをさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0126】
一実施態様では、国際公開第2011/143545号に記載されるヘテロ二量化手法が代わりに使用され、例えば、368及び409(KabatのEUインデックスによる番号付け)からなる群より選択される位置にアミノ酸修飾を有する。
【0127】
一実施態様では、上述のノブ・イントゥ・ホール技術をやはり使用する、国際公開第2011/090762号に記載のヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異Y407Aを含む。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407T(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0128】
一実施態様では、イムノコンジュゲートに含まれる抗体又はそのFcドメインは、IgGサブクラスであり、国際公開第2010/129304号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。
【0129】
代替的な一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾は、例えば、国際公開第2009/089004号に記載されているような静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般的に、この方法は、2つのFcドメインサブユニットの界面に、ホモ二量体形成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量化が静電的に望ましいように、帯電したアミノ酸残基による1つ又は複数のアミノ酸残基の置き換えを含む。そのような一実施態様では、第1のCH3ドメインは、K392又はN392の負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK392D又はN392D)によるアミノ酸置換を含み、第2のCH3ドメインは、D399、E356、D356又はE357の正に帯電したアミノ酸によるアミノ酸置換(例えば、リジン(K)又はアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K又はE357K、より好ましくはD399K及びE356K)を含む。さらなる実施態様では、第1のCH3ドメインは、K409又はR409の負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、好ましくはK409D又はR409D)によるアミノ酸置換を含む。さらなる一実施態様では、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸(例えばグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))によるK439及び/又はK370のアミノ酸置換を、さらに又は代替的に含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
【0130】
なおさらなる実施態様では、国際公開第2007/147901号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用する。一実施態様では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異K253E、D282K及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異D239K、E240K及びK292Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0131】
さらに別の実施態様では、国際公開第2007/110205号に記載されるヘテロ二量体化手法を代わりに使用してもよい。
【0132】
一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399K(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。
【0133】
Fc受容体の結合及び/又はエフェクター機能を低下させるFcドメイン修飾
Fcドメインは、イムノコンジュゲートに、標的組織における良好な蓄積に寄与する長い血清半減期及び望ましい組織血液分布比を含む望ましい薬物動態特性を付与する。しかしながら、同時に、好ましい抗原担持細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞への、イムノコンジュゲートの望ましくない標的化をもたらすことがある。さらに、Fc受容体シグナル伝達経路の共活性化がサイトカイン放出につながる場合があり、これが、IL-7ポリペプチド及びイムノコンジュゲートの長い半減期と組み合わさって、サイトカイン受容体の過剰な活性化及び全身投与時の重篤な副作用をもたらす。したがって、特定の実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインは、天然のIgG Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性の低下及び/エフェクター機能の低下を示す。このような一実施態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む抗体)は、天然のIgG Fcドメイン(又は天然のIgG Fcドメインを含む抗体)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の、Fc受容体に対する結合親和性を示し、且つ/又は天然のIgG Fcドメイン(又は天然のIgG Fcドメインを含む抗体)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一実施態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む抗体)は、Fc受容体に実質的に結合しない、且つ/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の実施態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一実施態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一実施態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的には、ヒトFcγRIIIaである。一実施態様では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ又は複数である。特定の実施態様では、エフェクター機能はADCCである。一実施態様では、Fcドメインは、天然のIgG Fcドメインと比較して実質的に同様の、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性を示す。FcRnに対する実質的に同様の結合親和性は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む抗体)が、天然のIgG Fcドメイン(又は天然IgG Fcドメインを含む抗体)の約70%超、特に約80%超、さらには特に約90%超のFcRnに対する結合親和性を示すときに達成される。
【0134】
特定の実施態様では、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を有するように操作される。特定の実施態様では、イムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させる1つ又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに同じ1つ又は複数のアミノ酸変異が存在する。一実施態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を低下させる。一実施態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1又は少なくとも10分の1低下させる。Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を低下させる、複数のアミノ酸変異が存在する実施態様では、これらのアミノ酸変異の組み合わせは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を少なくとも10分の1、少なくとも20分の1又はさらには少なくとも50分の1低下させ得る。一実施態様では、操作されたFcドメインを含む抗体は、操作されていないFcドメインを含む抗体と比較して、20%未満、特に10%未満、より詳しくは5%未満の結合親和性をFc受容体に示す。特定の実施態様では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。いくつかの実施態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。いくつかの実施態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的には、ヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体のそれぞれへの結合は低下する。いくつかの実施態様では、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性も低下する。一実施態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は低下しない。FcRnに対する実質的に同様の結合、すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む抗体)が、Fcドメインの操作されていない形態(又は前記Fcドメインの操作されていない形態を含む抗体)の約70%超の、FcRnに対する結合親和性を示すときに達成される。Fcドメイン又は本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、このような親和性の約80%超、さらには約90%超を示し得る。特定の実施態様では、イムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、エフェクター機能が低下するように操作される。エフェクター機能の低下には、限定されないが、補体依存性細胞傷害(CDC)の低下、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低下、NK細胞に対する結合の低下、マクロファージに対する結合の低下、単球に対する結合の低下、多形核細胞に対する結合の低下、アポトーシスを誘導する直接的なシグナル伝達の低下、標的結合抗体の架橋の低下、樹状細胞成熟の低下、又はT細胞プライミングの低下のうちの1つ又は複数を含み得る。一実施態様では、エフェクター機能の低下は、CDCの低下、ADCCの低下、ADCPの低下及びサイトカイン分泌の低下の群から選択される1つ又は複数である。特定の実施態様では、エフェクター機能の低下は、ADCCの低下である。一実施態様では、ADCCの低下は、操作されていないFcドメイン(又は操作されていないFcドメインを含む抗体)により誘導されるADCCの20%未満である。
【0135】
一実施態様では、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクター機能を低下させるアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。一実施態様では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施態様では、Fcドメインは、L234、L235及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。いくつかの実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235Aを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような一実施態様では、Fcドメインは、IgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。一実施態様では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施態様では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329G(Kabat EUインデックスによる番号付け)である。一実施態様では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施態様では、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施態様では、Fcドメインは、位置P329、L234及びL235にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329Gを含む(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)。具体的には、特定の実施態様では、Fcドメインのそれぞれのサブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含み、すなわち、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットそれぞれにおいて、位置234のロイシン残基が、アラニン残基と置き換えられ(L234A)、位置235のロイシン残基が、アラニン残基と置き換えられ(L235A)、位置329のプロリン残基が、グリシン残基と置き換えられている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような一実施態様では、Fcドメインは、IgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、その全体が参照により本明細書に援用されるPCT国際公開第2012/130831号に記載されているように、ヒトIgG FcドメインのFcγ受容体(同様に、補体)結合をほとんど完全に消滅させる。国際公開第2012/130831号には、このような変異体Fcドメインを調製する方法及びその特性、例えばFc受容体結合又はエフェクター機能を決定するための方法も記載されている。
【0136】
IgG抗体は、IgG抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及びエフェクター機能の低下を示す。したがって、いくつかの実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに含まれる抗体のFcドメインは、IgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。一実施態様では、IgG Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。Fc受容体に対するその結合親和性及び/又はそのエフェクター機能をさらに低下させるために、一実施態様では、IgGFcドメインは、位置L235にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施態様では、IgGFcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、具体的には、アミノ酸置換P329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の実施態様では、IgGFcドメインは、位置S228、L235及びP329にアミノ酸置換を含み、具体的には、アミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなIgG Fcドメイン変異体及びこれらのFcγ受容体結合特性は、PCT国際公開第2012/130831号に記載されており、その全体は参照により本明細書に援用される。
【0137】
特定の実施態様では、天然のIgGFcドメインと比較してFc受容体に対する結合親和性の低下及び/又はエフェクター機能の低下を示すFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgGFcドメイン、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgGFcドメインである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0138】
特定の実施態様では、FcドメインのN-グリコシル化は除去されている。このような一実施態様では、Fcドメインは、位置N297にアミノ酸変異、具体的には、アスパラギンをアラニンに置き換えるアミノ酸置換(N297A)又はアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換(N297D)を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0139】
本明細書上記及びPCT国際公開第2012/130831号に記載されているFcドメインに加えて、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能が低下したFcドメインには、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有するものも含まれる(米国特許第6,737,056号)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなFc変異体には、アラニンへの残基265及び297の置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含め、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7332581号)。
【0140】
変異型Fcドメインは、当該技術分野でよく知られている遺伝学的又は化学的方法を使用して、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製され得る。遺伝的方法には、コード化DNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等が含まれ得る。正確なヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって確認することができる。
【0141】
Fc受容体への結合は、例えば、ELISAによって又は標準的な機器、例えばBIAcore機器(GE Healthcare)及び例えば組換え発現により得られ得るFc受容体を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって、容易に決定することができる。あるいは、Fc受容体に対するFcドメイン又はFcドメインを含む抗体の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を使用して評価され得る。
【0142】
Fcドメイン、又はFcドメインを含む抗体のエフェクター機能は、当該技術分野で既知の方法により測定され得る。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al.Proc Natl Acad Sci USA 83,7059-7063(1986)及びHellstrom et al.,Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al.,J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA)、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価され得る。
【0143】
いくつかの実施態様では、補体成分に対するFcドメインの結合、具体的にはC1qに対する結合が低下する。したがって、Fcドメインが低下したエフェクター機能を有するように操作されているいくつかの実施態様では、前記エフェクター機能の低下はCDCの低下を含む。C1q結合アッセイを実施して、Fcドメイン又はFcドメインを含む抗体がC1qに結合し得、したがってCDC活性を有するかどうかを決定し得る。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,and Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。
【0144】
FcRn結合、及びin vivoでのクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野で既知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);国際公開第2013/120929号を参照)。
【0145】
本発明の上の態様のいずれかによる一実施態様では、抗体は、第1のサブユニット及び第2のサブユニットで構成されるヒトIgG Fcドメインを含む、IgGクラスの免疫グロブリンであり、ここで、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、位置366のスレオニン残基は、トリプトファン残基と置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、位置407のチロシン残基は、バリン残基と置き換えられており(Y407V)、任意選択的に、位置366のスレオニン残基は、セリン残基と置き換えられており(T366S)、位置368のロイシン残基は、アラニン残基と置き換えられており(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、さらに、Fcドメインのそれぞれのサブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む。この実施態様では、変異型IL-7ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、配列番号5のリンカーペプチドを介し、Fcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸に融合され得る。
【0146】
一態様では、本発明は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号24の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含む、がんの治療における使用のためのイムノコンジュゲートを提供する。
【0147】
一態様では、本発明は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号25の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含む、がんの治療における使用のためのイムノコンジュゲートを提供する。
【0148】
一態様では、本発明は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号24の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含む、がんの治療のための医薬の製造におけるイムノコンジュゲートの使用を提供する。
【0149】
一態様では、本発明は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号25の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含む、がんの治療のための医薬の製造におけるイムノコンジュゲートの使用を提供する。
【0150】
一態様では、本発明は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号24の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含むイムノコンジュゲートの有効量を個体に投与することを含む、前記個体におけるがんを治療する方法を提供する。
【0151】
一態様では、本発明は、配列番号17の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号19の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、配列番号25の配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを含むイムノコンジュゲートの有効量を個体に投与することを含む、前記個体におけるがんを治療する方法を提供する。
【0152】
組み換え法
本発明で有用な変異型IL-7ポリペプチドは、当該技術分野でよく知られている遺伝的方法又は化学的方法を用い、欠失、置換、挿入又は修飾によって調製され得る。遺伝的方法には、コード化DNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等が含まれ得る。正確なヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって確認することができる。天然のヒトIL-7の配列を配列番号14に示す。置換又は挿入は、天然アミノ酸残基及び非天然アミノ酸残基を含み得る。アミノ酸修飾は、例えば、グリコシル化部位の付加又は炭水化物の接続等といった化学修飾のよく知られている方法を含む。
【0153】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、例えば、固体状態ペプチド合成(例えば、Merrifield固相合成)又は組み換え産生によって得られてもよい。組み換え産生について、イムノコンジュゲート(断片)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド、例えば、上述のものは、さらなるクローニング及び/又は宿主細胞での発現のために、単離され、1つ又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、従来の手順を使用して容易に単離及び配列決定され得る。一実施態様では、本発明による使用のためのポリヌクレオチドの1つ又は複数を含むベクター、好ましくは発現ベクターが提供される。当業者によく知られている方法を使用し、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に、イムノコンジュゲート(断片)のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、in vitro組み換えDNA技術、合成技術及びin vivo組み換え/遺伝子組み換えが含まれる。例えば、the techniques described in Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989);and Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y(1989)に記載される技術を参照されたい。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であり得、又は核酸断片であり得る。発現ベクターは、イムノコンジュゲート(断片)をコードするポリヌクレオチド(すなわちコード領域)が、プロモーター及び/又は他の転写要素若しくは翻訳制御要素と共に作用可能に会合してクローン化される発現カセットを含む。ここで使用される「コード領域」は、アミノ酸中に翻訳されたコドンからなる核酸の一部分である。「停止コドン」(TAG、TGA又はTAA)は、アミノ酸中に翻訳されないが、存在する場合はコード領域の一部であると考えられる。但し、あらゆる隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’未翻訳領域等は、コード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中、例えば単一のベクター上に、又は別々のポリヌクレオチドコンストラクト中、例えば別の(異なる)ベクター上に存在し得る。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよいし、2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば、本発明のベクターは、タンパク質分解性切断を介して翻訳後又は翻訳と同時に最終タンパク質に分離される1つ又は複数のポリペプチドをコードしてもよい。これに加え、ベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、異種コード領域をコードし、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド、又はそのバリアント若しくは誘導体に融合されてもよく、又はされなくてもよい。異種コード領域には、限定されないが、分泌シグナルペプチド又は異種機能性ドメイン等の特殊な要素又はモチーフが含まれる。作用可能な会合とは、ポリペプチドなどの遺伝子産物のコード領域が、遺伝子産物の発現を調節配列の影響下又は制御下に置くように、1つ又は複数の調節配列と会合している場合である。2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域とそれに会合するプロモーター等)は、プロモーター機能の誘導により、所望の遺伝子産物をコードするmRNAが転写される場合、及び2つのDNA断片間の結合の性質が、遺伝子産物の発現を指示する発現調節配列の能力を妨げないか、又はDNAテンプレートの転写能力を妨げない場合、「作用可能に会合」している。したがって、プロモーターが、ポリペプチドをコードする核酸の転写を行うことができた場合、プロモーター領域は、ポリペプチドをコードする核酸と作用可能に会合していると思われる。プロモーターは、所定の細胞においてのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーター以外の他の転写調節要素、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルをポリヌクレオチドと作用可能に会合させて、細胞特異的転写を指示することができる。適切なプロモーター及び他の転写調節領域がここに開示されている。様々な転写調節領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及びエンハンサーセグメント(例えばイントロン-Aと合わさった最初期プロモーター)、サルウイルス40(例えば初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルスなど)が含まれる。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβグロビン等の脊椎動物遺伝子由来のもの、並びに真核細胞における遺伝子発現を制御できる他の配列が含まれる。さらなる適切な転写制御領域には、組織特異的プロモーター及びエンハンサー、並びに誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリン類を誘導可能なプロモーター)が含まれる。同様に、様々な翻訳制御要素が当業者に知られている。これらには、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終止コドン、及びウイルス系由来の要素(特に、CITE配列とも呼ばれる内部リボソーム侵入部位又はIRES)が含まれる。発現カセットはまた、複製起点、及び/又はレトロウイルスの長い末端反復(LTR)若しくはアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)等の染色体組み込み要素等の他の特徴を含み得る。
【0154】
ポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、ポリヌクレオチドによってコードされているポリペプチドの分泌を誘導する分泌ペプチド又はシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と会合し得る。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗い小胞体にわたる成長中のタンパク質鎖の輸送が開始されると成熟タンパク質から切断される、シグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが、通常、ポリペプチドのN末端に融合されたシグナルペプチドを有し、これが、翻訳されたポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌形態又は「成熟」形態を生成することを認識している。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド又はその機能的誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換され得る。
【0155】
後の精製を容易にするために使用可能な短いタンパク質配列(例えば、ヒスチジンタグ)又はイムノコンジュゲートを標識するのに役立つ短いタンパク質配列をコードするDNAは、ポリヌクレオチドをコードするイムノコンジュゲート(断片)の末端に、又は末端の中に含まれていてもよい。
【0156】
さらなる実施態様では、本発明による使用のための1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、ポリヌクレオチド及びベクターそれぞれに関連してここに記載される特徴のいずれかを、単独で又は組み合わせて組み込むことができる。このような一実施態様では、宿主細胞は、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む1つ又は複数のベクターを含む(例えば、形質転換されるか又はトランスフェクトされる)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明のイムノコンジュゲート又はその断片を生成するように操作され得る任意の種類の細胞系を指す。イムノコンジュゲートを複製し、その発現を補助するのに適した宿主細胞は、当該技術分野でよく知られている。このような細胞は、必要に応じて、特定の発現ベクターを用いてトランスフェクトされるか又は形質導入されてもよく、大規模発酵機に播種するために大量のベクターを含む細胞を成長させて、臨床用途に十分な量のイムノコンジュゲートを得ることができる。適切な宿主細胞は、原核微生物、例えば大腸菌、又は様々な真核細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞等を含む。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要でないとき、細菌中で生成され得る。発現の後、ポリペプチドは可溶性画分において細菌細胞のペーストから単離することができ、さらに精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、菌類や酵母菌株を含むポリペプチドをコードするベクターのための適切なクローニング宿主又は発現宿主であり、そのグリコシル化経路は「ヒト化」されており、部分的に又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有するポリペプチドの生成をもたらす。Gerngross,Nat Biotech 22,1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株が同定されており、これを昆虫細胞と組み合わせて使用することができ、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用され得る。植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、第7,125,978号、及び第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を生成するためのPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照されたい。脊椎動物細胞も、宿主として使用される。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児腎臓株(例えば、Graham et al.,J Gen Virol 36,59(1977)に記載される293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol Reprod 23,243-251(1980)に記載されるTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad Sci 383,44-68(1982)に記載される)、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、dhfr CHO細胞(Urlaub et al.,Proc Natl Acad Sci USA 77,4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;並びにYO、NS0、P3X63、及びSp2/0等の骨髄腫細胞株を含む。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の総説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),p.255-268(2003)を参照のこと。宿主細胞には、培養細胞、例えばいくつか挙げると、哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が含まれ、さらにはトランスジェニック動物、トランスジェニック植物又は培養植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞も含まれる。
【0157】
これらの系で外来遺伝子を発現させるための標準的な技術が、当該技術分野で知られている。抗体の重鎖又は軽鎖のいずれかに融合した変異型IL-7ポリペプチドを発現する細胞は、発現した変異型IL-7の融合産物が重鎖と軽鎖の両方を含む抗体であるように、抗体鎖の他方も発現するように操作され得る。
【0158】
一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートを産生する方法が提供され、この方法は、本明細書に提供されるように、イムノコンジュゲートの発現に適した条件下で、イムノコンジュゲートをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に、宿主細胞(又は宿主細胞培地)からイムノコンジュゲートを回収することとを含む。
【0159】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートでは、変異型IL-7ポリペプチドは、抗体に遺伝的に融合されていてもよく、又は抗体に化学的にコンジュゲートされていてもよい。抗体に対するIL-7ポリペプチドの遺伝的融合は、IL-7配列がポリペプチドに直接的に融合されるか又はリンカー配列を介して間接的に融合されるように、設計され得る。リンカーの組成及び長さは、当該技術分野でよく知られている方法に従って決定することができ、有効性について試験することができる。特定のリンカーペプチドは、本明細書に記載される。融合の個々の構成成分を分離するための切断部位を組み込むために、追加の配列、例えばエンドペプチダーゼ認識配列を必要に応じて含めることもできる。これに加え、IL-7融合タンパク質は、当該技術分野でよく知られているように、ポリペプチド合成方法(例えば、Merrifield固相合成)を用い、化学的に合成されてもよい。変異型IL-7ポリペプチドは、よく知られている化学的コンジュゲート方法を用い、他の分子(例えば抗体)に化学的にコンジュゲートされてもよい。二官能架橋試薬(例えば、当該技術分野でよく知られているホモ官能性及びヘテロ官能性架橋試薬)がこの目的で使用され得る。使用する架橋試薬の種類は、IL-7にカップリングする分子の性質に依存し、当業者なら容易に特定し得る。代替的に又は追加的に、変異型IL-7及び/又はコンジュゲートされることを意図した分子は、これも当該技術分野で知られるように、これらの2つが別個の反応でコンジュゲートされ得るように化学的に誘導体化されてもよい。
【0160】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、抗体を含む。抗体を産生するための方法は、当該技術分野でよく知られている(例えば、Harlow and Lane、「Antibodies,a laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照されたい)。天然には存在しない抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することができ、(例えば米国特許第4186567号に記載のように)組み換え的に産生することができ、又は例えば可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって得ることができる(例えばMcCaffertyの米国特許第5969108号を参照)。イムノコンジュゲート、抗体、及びそれらを産生するための方法も、例えば、PCT出願国際公開第2011/020783号、同第2012/107417号、及び同第2012/146628号に詳述されており、これらの文献のそれぞれは、参照により本明細書に援用される。
【0161】
任意の動物種の抗体が、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートに使用され得る。本発明において有用な非限定的な抗体は、マウス、霊長類、又はヒト起源のものであり得る。イムノコンジュゲートがヒトへの使用を意図したものである場合、抗体の定常領域がヒト由来であるキメラ形態の抗体を使用してもよい。抗体のヒト化形態又は完全なヒト形態は、当該技術分野でよく知られている方法に従って調製することもできる(例えば、Winterに対する米国特許第5,565,332号を参照されたい)。ヒト化は、限定されないが、(a)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を保持するために重要なもの)を保持しつつ、又は保持せずに、非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRをヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域上にグラフトすること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用にとって重要な残基)のみをヒトフレームワーク及び定常領域上にグラフトすること、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってヒト様切片でそれらを「クローキング」することを含め、様々な方法によって達成されてもよい。ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えばAlmagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)にて総説されており、さらに、例えばRiechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号及び同第7087409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフティングを記述)、Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング」を記述)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記述)、並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを記述)に記載されている。ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、限定されないが、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えばSims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えばCarter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒトの生殖細胞系フレームワーク領域(例えばAlmagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えばBaca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)が含まれる。
【0162】
ヒト抗体は、当該技術分野で知られる様々な技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は一般的にvan Dijk and van de Winkel,Curr Opin Pharmacol.5,368-74(2001)及びLonberg,Curr Opin Immunol 20,450-459(2008)に記載されている。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製され得る。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に置き変わるか、又は染色体外に存在するか若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有する。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照のこと。また、例えばXENOMOUSETM技術を記載している米国特許第6075181号及び同第6150584号、HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5770429号、K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7041870号、及びVelociMouse(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。このような動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに修飾され得る。
【0163】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体もLi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法には、例えば米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマについて記載)に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0164】
ヒト抗体はまた、本明細書に記載されるように、ヒト抗体ライブラリーからの単離によって生成されてもよい。
【0165】
本発明に有用な抗体は、所望の活性を有する抗体に関するコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離されてもよい。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための方法は、例えば、Lerner et al.によるNature Reviews 16:498-508(2016)で総説されている。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作成し、所望の結合特性を有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするための様々な方法が当該技術分野で知られている。このような方法は、例えば、Frenzel et al.のmAbs 8:1177-1194(2016);Bazan et al.のHuman Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828(2012)及びZhao et al.のCritical Reviews in Biotechnology 36:276-289(2016)、並びにHoogenboom et al.のMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)及びMarks and BradburyのMethods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)で総説されている。
【0166】
特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングされ、ファージライブラリー内でランダムに組み換えられ、その後、Winter et al.,Annual Review of Immunology 12:433-455(1994)に記載のように、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、一般的には、単鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片として、抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブなレパートリーをクローン化し(例えば、ヒトから)て、Griffiths et al.のEMBO Journal 12:725-734(1993)に記載されるように、免疫化することなく、非自己抗原及び自己抗原の広範囲に対する単一の抗体源を得ることができる。最終的に、ナイーブなライブラリーはまた、Hoogenboom and WinterのJournal of Molecular Biology 227:381-388(1992)で説明されるように、再整列していないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングすること、及びランダム配列を含有するPCRプライマーを用いて、高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitro再整列を達成することによって、合成によって作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、同第7,985,840号、同第7,785,903号及び同第8,679,490号、並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2007/0117126号、同第2007/0237764号及び同第2007/0292936号。所望の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための当該技術分野で知られている方法のさらなる例には、リボソーム及びmRNAディスプレイ、並びに細菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞又は酵母細胞における抗体ディスプレイ及び選択のための方法が含まれる。酵母表面ディスプレイのための方法は、例えば、Scholler et al.のMethods in Molecular Biology 503:135-56(2012)及びCherf et al.のMethods in Molecular biology 1319:155-175(2015)、並びにZhao et al.のMethods in Molecular Biology 889:73-84(2012)で総説されている。リボソームディスプレイのための方法は、例えば、He et al.のNucleic Acids Research 25:5132-5134(1997)及びHanes et al.のPNAS 94:4937-4942(1997)に記載されている。
【0167】
本発明における使用のためのイムノコンジュゲートのさらなる化学修飾が望ましい場合がある。例えば、免疫原性及び半減期の問題は、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)等の実質的に直鎖のポリマーへのコンジュゲーションによって改善され得る(例えば、国際公開第87/00056号を参照)。
【0168】
本明細書で記載するように調製されるイムノコンジュゲートは、例えば、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーなどの当該技術分野で既知の技術によって精製され得る。特定のタンパク質を精製するのに使用される実際の条件は、部分的には、正味電荷、疎水性、親水性などの要因に依拠し、当業者には明らかであろう。アフィニティクロマトグラフィー精製の場合、イムノコンジュゲートが結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原を使用することができる。例えば、変異型IL-7ポリペプチドと特異的に結合する抗体を用いてもよい。本発明のイムノコンジュゲートのアフィニティクロマトグラフィー精製の場合、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスを使用してもよい。例えば、連続的なプロテインA又はGアフィニティクロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、実施例に記載されるようにイムノコンジュゲートを本質的に単離することができる。イムノコンジュゲートの純度は、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー等の任意の様々なよく知られている分析方法によって決定することができる。
【0169】
組成物、製剤、及び投与経路
さらなる態様では、本発明は、例えば以下の治療方法のいずれかにおける使用のための、本明細書に記載される使用のためのイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物を提供する。一実施態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される使用のためのイムノコンジュゲートのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施態様では、薬学的組成物は、本明細書で提供される使用のためのイムノコンジュゲートのいずれかと、少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、以下に記載するもの)とを含む。
【0170】
さらに提供されるのは、in vivoでの投与に適した形態で本発明による使用のためのイムノコンジュゲートを産生する方法であって、(a)イムノコンジュゲートを得ることと、(b)イムノコンジュゲートと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを配合して、それによりイムノコンジュゲートの調製物をin vivoでの投与のために配合することを含む、方法である。
【0171】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解又は分散した、治療的有効量のイムノコンジュゲートを含む。「薬学的に許容される又は薬理学的に許容される」という語句は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して一般に無毒である、すなわち、例えばヒトなどの動物に必要に応じて投与されたとき、副作用、アレルギー反応又は他の有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。イムノコンジュゲートと、任意選択的に追加の有効成分とを含む薬学的組成物の調製は、本明細書に参照により援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990に例示されるように、本開示の観点から当業者には既知であることになる。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与について、調製物は、FDA Office of Biological Standards又は他の国の対応する当局によって要求される無菌状態、発熱性、一般的な安全性及び純度基準を満たすべきであることが理解されよう。好ましい組成物は、凍結乾燥製剤又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、当業者に既知であるように、あらゆる溶媒、バッファー、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存料(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、抗酸化剤、タンパク質、薬物、薬物安定剤、ポリマー、ゲル、結合剤、添加物、分解剤、潤滑剤、甘味料、香料、染料、それらの類似物質及び組み合わせが含まれる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.Mack Printing Company,1990,pp.1289-1329を参照(参照により本明細書に援用される))。従来の担体が活性成分と不適合でない限り、治療組成物又は薬学的組成物におけるその使用が企図される。
【0172】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲート(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、鼻内を含む任意の適切な手段によって投与されてもよく、必要に応じて、局所治療では、病変内投与によって投与されてもよい。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期か又は長期かに部分的に依存して、任意の好適な経路、例えば、静脈内又は皮下注射等の注射により行うことができる。
【0173】
非経口組成物には、注射による投与、例えば、皮下、皮内、病変内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内又は腹腔内注射用に設計されたものが含まれる。注射の場合、本発明のイムノコンジュゲートは、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩水バッファーといった生理学的に適合するバッファー中で配合され得る。溶液は、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの調合剤を含んでもよい。あるいは、イムノコンジュゲートは、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質を含まない水での構成用に、粉末形態であってもよい。滅菌注射可能溶液は、必要な場合には以下に列挙する様々な他の成分と共に、本発明のイムノコンジュゲートを必要な量で、適切な溶媒に組み込むことによって調製される。滅菌は、例えば滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成され得る。通常、分散体は、様々な滅菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液、懸濁液又は乳化物を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した液体媒体から有効成分及び任意の追加の所望の成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。必要に応じて、液体媒体を適切に緩衝し、注射前にまず、その液体希釈剤を十分な生理食塩水又はグルコースで等張にする必要がある。組成物は、製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌といった微生物の汚染作用から保護されなければならない。エンドトキシンの汚染は、安全なレベルで、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満で最小限に維持されるべきであることが理解される。薬学的に許容される適切な担体には、限定されないが、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のようなバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又ははリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる化合物、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、デキストラン等を含んでいてもよい。任意選択的に、懸濁液は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含み得る。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液としても調製され得る。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル(ethyl cleat)若しくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。
【0174】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル(例えばそれぞれ、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)(poly-(methylmethacylate))マイクロカプセル)に、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入することができる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed.Mack Printing Company,1990)に開示されている。徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセル等の成型物品の形態である。特定の実施態様では、注射可能組成物の持続的な吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせトいった、吸収を遅らせる薬剤の組成物における使用によってもたらされ得る。
【0175】
先述の組成物に加えて、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、デポー調製物として配合され得る。そのような徐放性配合物は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)又は筋肉内注射によって投与され得る。したがって、例えば、イムノコンジュゲートは、適切なポリマー材料若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルションとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として配合されてもよい。
【0176】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。薬学的組成物は、1つ又は複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、添加物又はタンパク質を医薬として使用可能な調製物へと加工するのを容易にする補助剤を用い、従来のように配合されてもよい。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。
【0177】
イムノコンジュゲートは、遊離酸又は遊離塩基、中性又は塩形態で組成物に配合されてもよい。薬学的に許容される塩は、遊離酸又は塩基の生物学的活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離アミノ基で形成されるもの、又は有機酸で形成されるもの、例えば、塩酸若しくはリン酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、若しくはマンデル酸等の有機酸が含まれる。また、遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム若しくは水酸化第二鉄等の無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン若しくはプロカイン等の有機塩基に由来し得る。薬学的塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
【0178】
治療方法
本明細書で提供されるイムノコンジュゲートは、治療方法及び使用に使用され得る。イムノコンジュゲートは、例えば、がんの治療において、免疫療法剤として使用され得る。
【0179】
本発明による治療方法における使用の場合、イムノコンジュゲートは、適正医療規範に則って、配合、調薬、及び投与される。これに関連して考慮すべき要因には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療施術者に知られている他の要因が含まれる。
【0180】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、宿主の免疫系の刺激が有益である疾患状態、特に、細胞免疫応答の増強が望ましい状態の治療において特に有用であり得る。これらは、宿主免疫応答が不十分であるか又は不足している病状を含み得る。イムノコンジュゲートが投与され得る疾患状態は、例えば、細胞免疫応答が、特定の免疫にとって重大な機構となる腫瘍又は感染を含む。本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、そのまま投与されてもよく、又は任意の適切な薬学的組成物中で投与されてもよい。
【0181】
さらなる態様では、本発明は、個体において疾患を治療するための方法を提供する。一実施態様では、この方法は、このような疾患を有する個体に、治療的有効量のイムノコンジュゲートを投与することを含む。一実施態様では、イムノコンジュゲートを薬学的に許容される形態で含む組成物が、前記個体に投与される。一部の実施態様では、治療される疾患は、増殖性疾患である。特定の実施態様では、疾患はがんである。一部の実施態様では、方法は、個体に対して治療的有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、治療される疾患ががんである場合は抗がん剤を投与することをさらに含む。さらなる態様では、本発明は、個体に有効量のイムノコンジュゲートを投与して、免疫系を刺激することを含む、個体における免疫系を刺激するための方法を提供する。上記の実施態様のいずれかによる「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであり得る。上記実施態様のいずれかによる「免疫系の刺激」は、免疫機能の一般的な増加、T細胞機能の増加、B細胞機能の増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現の増加、T細胞応答性の増加、及びナチュラルキラー細胞活性又はリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性の増加等のうちの任意の1つ又は複数を含み得る。
【0182】
一部の実施態様では、治療される疾患は、増殖性障害、特にがんである。がんの非限定的な例には、膀胱がん、脳がん、頭頸部がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨がん、及び腎臓がんが含まれる。本発明のイムノコンジュゲートを使用して治療され得る他の細胞増殖性障害としては、限定されないが、腹部、骨、乳房、消化系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、脳下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部領域及び泌尿生殖器系に位置する新生物が挙げられる。前がん状態又は病変及びがん転移も含まれる。一部の実施態様では、がんは、腎臓がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、前立腺がん及び膀胱がんからなる群より選択される。当業者は、多くの場合に、イムノコンジュゲートが、治癒をもたらすわけではないが部分的な利益のみを与える場合があることを容易に認識する。いくつかの実施態様では、何らかの利益を有する生理的変化も治療的に有益であると考慮される。したがって、いくつかの実施態様では、生理学的変化をもたらすイムノコンジュゲートの量は、「有効量」又は「治療的有効量」と考えられる。治療を必要とする対象、患者、又は個体は、典型的には哺乳動物であり、具体的にはヒトである。
【0183】
いくつかの実施態様では、有効量のイムノコンジュゲートが細胞に投与される。他の実施態様では、治療的有効量の本発明のイムノコンジュゲートが、疾患の治療のために個体に投与される。
【0184】
疾患の予防又は治療に関し、本発明のイムノコンジュゲートの適切な投薬量(単独で使用される場合、又は1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、分子の種類(例えば、Fcドメインを含むか否か)、疾患の重症度及び経過、イムノコンジュゲートが予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前又は現在の治療介入、患者の病歴及びイムノコンジュゲートに対する応答、並びに主治医の判断によって変わることになる。いずれにせよ、投与を担当する施術者は、組成物中の1つ又は複数の有効成分の濃度及び個々の対象に対する1つ又は複数の適切な用量を決定する。本明細書では、単回投与又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むがこれらに限定されない様々な投薬スケジュールが企図される。
【0185】
イムノコンジュゲートは、一度に、又は一連の治療にわたって、患者に適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、約1μg/kgから15mg/kg(例えば、0.1mg/kgから10mg/kg)のイムノコンジュゲートが、例えば、1回又は複数回の別個の投与によるか又は連続的な注入によるかにかかわらず、患者への投与のための初回の候補投用量となり得る。典型的な1日の投薬量は、上記の要因に応じて、約1μg/kgから100mg/kgの範囲であり得る。数日以上にわたる反復投与に関しては、病状に応じて、治療は一般に疾患症状の所望の抑制が起こるまで継続されるものとする。イムノコンジュゲートの1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kgから約10mg/kgの範囲となり得る。他の非限定的な例では、投与量はまた、1回の投与につき、体重1kgあたり約1マイクログラム、体重1kgあたり約5マイクログラム、体重1kgあたり約10マイクログラム、体重1kgあたり約50マイクログラム、体重1kgあたり約100マイクログラム、体重1kgあたり約200マイクログラム、体重1kgあたり約350マイクログラム、体重1kgあたり約500マイクログラム、体重1kgあたり約1ミリグラム、体重1kgあたり約5ミリグラム、体重1kgあたり約10ミリグラム、体重1kgあたり約50ミリグラム、体重1kgあたり約100ミリグラム、体重1kgあたり約200ミリグラム、体重1kgあたり約350ミリグラム、体重1kgあたり約500ミリグラム、体重1kgあたり約1000mg以上、及びそこから導出可能な任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙される数から導出可能な範囲の非限定的な例では、体重1kgあたり約5mgから体重1kgあたり約100mg、体重1kgあたり約5マイクログラムから体重1kgあたり約500ミリグラム等が、上記の数に基づいて投与され得る。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kg又は10mg/kg(又はこれらの任意の組み合わせ)のうちの1つ又は複数の用量が患者に投与され得る。このような用量は、断続的に、例えば、毎週又は3週間ごとに(例えば、患者が、約2回から約20回、又は例えば約6回のイムノコンジュゲートの投薬を受けるように)投与されてもよい。初回の高負荷用量の後、1回又は複数回の低用量が投与され得る。しかしながら、他の投薬レジメンも有用であり得る。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
【0186】
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、通常、意図した目的を達成するのに効果的な量で使用されることになる。疾患状態を治療又は予防するための使用の場合、イムノコンジュゲート又はその薬学的組成物が、治療的有効量で投与されるか又は適用される。治療的有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0187】
全身投与の場合、治療的に有効な用量は、in vitroアッセイ、例えば細胞培養アッセイから最初に推定することができる。その後、細胞培養で決定したIC50を含む循環濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて用量は製剤化され得る。このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0188】
また、初回投薬量は、当該技術分野でよく知られている技術を使用して、in vivoデータから、例えば、動物モデルから推定され得る。当業者は、動物データに基づきヒトへの投与を容易に最適化することができるであろう。
【0189】
投薬量及び投薬間隔は、治療効果を維持するのに十分なイムノコンジュゲートの血漿レベルを提供するように、個別に調整され得る。注射による投与のための通常の患者投薬量は、約0.1から50mg/kg/日、典型的には約0.5から1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿レベルは、複数用量を各日投与することによって達成され得る。血漿中のレベルは、例えば、HPLCによって測定され得る。
【0190】
局所投与又は選択的な取り込みの場合には、イムノコンジュゲートの効果的な局所濃度は、血漿濃度と関係がない場合がある。当業者は、過度の実験を行うことなく、治療的に有効な局所投薬量を最適化することができるであろう。
【0191】
本明細書に記載のイムノコンジュゲートの治療に有効な用量は、通常、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療利益を与える。イムノコンジュゲートの毒性及び治療有効性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。細胞培養アッセイ及び動物研究を使用して、LD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%で治療的に有効な用量)を決定することができる。毒性効果と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療指数を示すイムノコンジュゲートが好ましい。一実施態様では、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイ及び動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用に適した投薬量の範囲を製剤化するために使用できる。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんど又はまったくないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、様々な要因、例えば、用いられる投薬形態、利用される投与経路、対象の状態等に応じて、この範囲内で変動し得る。正確な配合、投与経路及び投薬量は、患者の状態の観点から、個々の医師によって選択され得る。(例えば、その全体が参照により本明細書に援用されるFingl et al.,1975,In:The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ch.1,p.1を参照のこと)。
【0192】
イムノコンジュゲートで治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全等によって、どのように、いつ投与を中止するか、中断するか、又は調整するかを知っている。逆に、主治医は、臨床反応が適切でない場合、治療をより高いレベルに調整することも知っている(毒性を除いて)。対象となる障害の管理における投与用量の大きさは、治療される状態の重症度、及び投与経路等によって変わる。状態の重症度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価方法によって評価され得る。さらに、用量及びおそらく投与頻度も、個々の患者の年齢、体重、及び応答に応じて変動するであろう。
【0193】
本明細書に記載の変異型IL-7ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートの最大治療用量は、野生型IL-7を含むイムノコンジュゲートに使用するものから増加してもよい。
【0194】
他の薬剤及び治療
本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、治療において、1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、イムノコンジュゲートは、少なくとも1つの追加の治療剤と共投与されてもよい。「治療剤」という用語は、そのような治療を必要とする個体の症状又は疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療される特定の適応症に適した任意の有効成分、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含み得る。一部の実施態様では、追加の治療剤は、免疫調節剤、細胞分裂阻害剤、細胞接着阻害剤、細胞傷害性剤、細胞アポトーシスの活性化因子、又はアポトーシス誘導因子に対する細胞の感受性を高める薬剤である。特定の実施態様では、追加の治療剤は、抗がん剤、例えば微小管破壊剤、抗代謝剤、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化因子、又は抗血管新生剤である。
【0195】
そのような他の薬剤は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用されるイムノコンジュゲートの量、障害又は治療の種類、及び上述の他の要因に依存する。イムノコンジュゲートは、通常、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、若しくは経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
【0196】
上記のこのような併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が、同じ又は別個の組成物に含まれる場合)、及び別個の投与を包含し、この場合、本発明のイムノコンジュゲートの投与は、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与前、投与と同時、及び/又は投与後に行われてもよい。また、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートは、放射線療法と組み合わせて使用され得る。
【0197】
製造品
本発明の別の態様では、上記の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造品が提供される。製造品は、容器と、容器に貼られているか又は付随しているラベル又は添付文書とを備える。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、注射器、IV溶液バッグ等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成され得る。容器は、それだけで、又は状態を治療、予防及び/又は診断するために有効な別の組成物との組み合わせで、組成物を保持し、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿通可能なストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明のイムノコンジュゲートである。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状を治療するために使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)中に組成物が入っており、組成物が、本発明による使用のためのイムノコンジュゲートを含む、第1の容器と、(b)中に組成物が入っており、組成物が、さらなる細胞毒性剤又はその他の治療剤を含む、第2の容器とを含み得る。本発明のこの実施態様における製造品は、特定の症状を治療するために上記組成物が使用可能であることを示す添付文書をさらに含み得る。代替的に又は追加的に、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器をさらに含み得る。本製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料をさらに備えてもよい。
【0198】
【実施例
【0199】
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施され得ることが理解される。
【0200】
本発明によるイムノコンジュゲートの例示的なフォーマットを図1で概略図として示す。IgG-IL7イムノコンジュゲートは、2つのFabドメイン(可変ドメイン、定常ドメイン)、ヘテロ二量体Fcドメイン、及びFcドメインのC末端に融合した変異型IL-7ポリペプチドを含む。IgG-IL7イムノコンジュゲートは、配列番号32、配列番号33及び配列番号34によるアミノ酸配列のポリペプチドで構成されている。
【0201】
例示的なフォーマットに提供された配列は、IL-7野生型配列を有するイムノコンジュゲートに関連している。しかしながら、本明細書に開示されるような任意の変異型IL-7ポリペプチドは、野生型IL-7の代わりに前記フォーマットに組み込まれてもよい。
【0202】
実施例1
実施例1.1 PD1抗体IL7v融合タンパク質の産生及び分析
表1に記載される抗体IL7バリアント融合コンストラクトを、CHO細胞中で産生させた。プロテインAアフィニティクロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーによってタンパク質を精製した。最終生成物の分析は、単量体含有量の決定(分析用サイズ排除クロマトグラフィーによる)及びメインピークのパーセンテージ(非還元キャピラリーSDS電気泳動:CE-SDSによって決定)からなる。参照分子6は、国際公開第2020/127377 A1号に開示されるようなIL7部分を含む。参照分子9及び10は、国際公開第2020/236655 A1号に開示されるようなIL7部分を含む。それらは、PD-1抗体のN末端に融合した1つのIL7部分を含む、本明細書に開示される他の融合コンストラクトと同じフォーマットである(図1)。PD1(alt)-IL7wt、PD1(alt)-IL7 VAR21及びPD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21は、配列番号1の配列によるVHドメインと、配列番号2の配列によるVLドメインとを有するPD1結合剤を含む。PD1-IL7wt及び参照分子5~10は、配列番号3の配列によるVHドメインと、配列番号4の配列によるVLドメインとを有するPD1結合剤を含む。
【0203】
【0204】
クローニング。全ての遺伝子の発現は、ヒトCMVプロモーターの制御下にある。
【0205】
CHO K1細胞におけるIgG様タンパク質の製造。本明細書に記載されている抗体を、WuXi Biologicsによって、同社独自のベクター系と従来の(非PCRベースの)クローニング技術を使用して、懸濁適応CHO K1細胞を使用して、調製した。生産のために、WuXi Biologicsは市販の既知組成培地を使用し、トランスフェクション後の細胞を次の条件下で培養した:36.5℃+6% 二酸化炭素。
【0206】
遠心分離及びその後の濾過(0.2μmフィルタ)により上清を回収し、標準的な方法により、回収した上清からタンパク質を精製した。
【0207】
力価決定(PA-HPLC)。上清中のFc含有コンストラクトの定量を、UV検出器を備えたAgilent HPLC SystemでプロテインA-HPLCにより実施した。上清をPOROS 20 A(Applied Biosystems)に注入する。280nmの溶出ピーク面積を積分し、同じランで分析した標準物質による検量線を用いて濃度に変換する。
【0208】
IgG様タンパク質の精製。標準的なプロトコルを参照して、フィルタにかけた細胞培養上清からタンパク質を精製した。簡潔には、Fc含有タンパク質を、プロテインA-アフィニティクロマトグラフィーによって細胞培養上清から精製した。溶出に続いて、直ちにサンプルのpHを中和した。遠心分離(Millipore Amicon(登録商標)ULTRA-15;Art.Nr.:UFC903096)によりタンパク質を濃縮し、凝集したタンパク質を、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH 6.0のサイズ排除クロマトグラフィー(Akta Pure & HiLoad 26/600 Superdex 200;どちらも以前はGE Healthcareとして知られていたCytivaによる)により、単量体タンパク質から分離した。
【0209】
IgG様タンパク質の分析。Pace,et al.,Protein Science,1995,4,2411-1423によるアミノ酸配列に基づき計算した質量減衰係数を用いて、280nmにおける吸収を測定することにより(以前はDropsense 16として知られていたLittle Lunatic;Unchained labs)、精製したタンパク質の濃度を測定した。LabChipGXII(Perkin Elmer)を使用して、還元剤の存在下及び非存在下にて、CE-SDSにより、タンパク質の純度及び分子量を分析した。分析用サイズ排除カラム(TSKgel G3000 SW XL)を用いて、25℃でのHPLCクロマトグラフィーにより、凝集体含有量の決定を実施した。
【0210】
【0211】
【0212】
結果。精製されたPD1-IL7バリアントコンストラクトを、プロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。精製された材料の品質分析から、分析用サイズ排除クロマトグラフィー分析により単量体含有量が93%超であること(表2)、非還元キャピラリー電気泳動によりメイン生成物ピークが95%と99%の間であることが明らかになった(表3)。結論として、すべてのPD1-IL7バリアントが良好な品質で産生された。
【0213】
実施例1.2 さらなるPD1-IL7v融合タンパク質(参照分子5、7及び8)の産生及び分析
表4に記載される抗体IL7バリアント融合コンストラクトを、CHO細胞中で産生させた。プロテインAアフィニティクロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーによってタンパク質を精製した。最終生成物の分析は、単量体含有量の決定(分析用サイズ排除クロマトグラフィーによる)及びメインピークのパーセンテージ(非還元キャピラリーSDS電気泳動:CE-SDSによって決定)からなる。参照分子5、7及び8は、国際公開第2020/127377 A1号に開示されるようなIL7部分を含む。それらは、PD-1抗体のN末端に融合した1つのIL7部分を含む、本明細書に開示される他の融合コンストラクトと同じフォーマットである(図1)。参照分子5、7及び8は、配列番号3の配列によるVHドメインと、配列番号4の配列によるVLドメインとを有するPD1結合剤を含む。
【0214】
【0215】
クローニング。対応するcDNAを、従来の(非PCRベースの)クローニング技術を使用してevitriaのベクター系にクローニングした。evitriaベクタープラスミドを遺伝子合成した。プラスミドDNAを、陰イオン交換クロマトグラフィーに基づく低エンドトキシン条件下で調製した。DNA濃度は、波長260 nmでの吸収を測定することによって決定した。配列の正確性は、サンガー配列決定(プラスミド1つ当たり2つの配列決定反応による)により検証した。
【0216】
CHO細胞におけるIgG様タンパク質の産生。本明細書に記載される抗体IL7融合コンストラクトを、Evitria社により、同社独自のベクター系と従来の(非PCRベースの)クローニング技術を使用し、懸濁適応CHO K1細胞(もともとATCCから譲り受け、Evitria社で懸濁培養液中での無血清培養に適応させたもの)を用いて産生させた。産生にあたっては、Evitria社は、独自の動物成分非含有無血清培地(eviGrow及びeviMake2)と独自のトランスフェクション試薬(eviFect)を用いた。遠心分離及びその後の濾過(0.2μmフィルター)により、上清を回収した。
【0217】
IgG様タンパク質の精製。標準的なプロトコルを参照して、フィルタにかけた細胞培養上清からタンパク質を精製した。簡潔には、プロテインA-アフィニティクロマトグラフィー(平衡化バッファー:20mMクエン酸ナトリウム、20mMリン酸ナトリウム、pH7.5;溶出バッファー:20mM クエン酸ナトリウム、pH 3.0)によって細胞培養上清からFc含有タンパク質を精製した。pH3.0で溶出を達成し、続いて直ちにサンプルのpHを中和した。遠心分離(Millipore Amicon(登録商標)ULTRA-15;Art.Nr.:UFC903096)によりタンパク質を濃縮し、凝集したタンパク質を、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH 6.0のサイズ排除クロマトグラフィーにより、単量体タンパク質から分離した。
【0218】
IgG様タンパク質の分析。Pace,et al.,Protein Science,1995,4,2411-1423に従ったアミノ酸配列に基づき計算した質量減衰係数を用いて、280nmにおける吸収を測定することにより、精製したタンパク質の濃度を測定した。LabChipGXII又はLabChip GX Touch(Perkin Elmer)を使用して、還元剤の存在下及び非存在下で、CE-SDSによりタンパク質の純度及び分子量を分析した。凝集物含有量の決定を、ランニング緩衝液(200mM KHPO、250mM KCl pH6.2、0.02%NaN)中で平衡化した分析用サイズ排除カラム(TSKgel G3000 SW XL又はUP-SW3000)を使用して、25℃でHPLCクロマトグラフィーにより実施した。
【0219】
【0220】
【0221】
結果。精製されたPD1-IL7バリアントコンストラクトを、プロテインA及びサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。参照分子7をCE-SDS分析の前にPNGaseFで脱グリコシル化して、均一なピークを得た。精製された材料の品質分析から、分析用サイズ排除クロマトグラフィー分析により単量体含有量が94%超であること(表5)、非還元キャピラリー電気泳動によりメイン生成物ピークが91%と99%の間であることが明らかになった(表6)。結論として、すべてのPD1-IL7バリアントが良好な品質で産生された。
【0222】
実施例2
実施例2.ヒトIL7受容体に対するPD1-IL7バリアントの親和性決定
【0223】
SPR実験はBiacore 8Kで実施し、HBS-EP+1mg/ml BSAをランニングバッファーとして用いた。抗P329G Fc特異性抗体(Roche内部)を、C1チップ(Cytiva)上にアミンカップリングにより直接固定化した。PD1-IL7コンストラクトを5nMで140秒間捕捉した。2.34から300nMのヒトIL7Ra-IL2Rg-Fcヘテロ二量体からの2倍連続希釈系列3つを、30μl/分で240秒間リガンド上に通過させ、会合相を記録した。解離相を、800秒間モニターし、サンプル溶液からランニングバッファーへ切り替えることによってトリガーした。チップ表面を、10mM グリシン、pH2を60秒間で2回注入することにより、各サイクル後に再生した。参照フローセル(固定化された抗P329G Fc特異性IgGのみを含有)で得られた応答を差し引くことにより、全体の屈折率の差を補正した。Biacore評価ソフトウェア(Cytiva)を使用して、1:1ラングミュア結合へのフィッティングによって、動態速度定数から親和性定数を導出した。
【0224】
以下のPD1-IL7バリアントを、IL7受容体への結合について分析した(表8)。
【0225】
【0226】
結果。PD1(alt)-IL7バリアント及び参照分子を、ヒトIL7受容体への結合について比較した(表9)。IL7受容体に対するIL7バリアントの親和性を、ヒトFcに融合した共通のIL2受容体ガンマ鎖及びIL7受容体アルファ鎖の細胞外ドメインの組み換えヘテロ二量体を用いて決定した。
【0227】
IL7バリアントVAR21(G85E)及びVAR18/VAR21(K81E、G85E)はいずれも、野生型IL7に比べてヒトIL7受容体に対する親和性の低下を示した。IL7単一変異体PD1(alt)-IL7 VAR21は、ヒトIL7受容体に約6nMの親和性で結合し、二重変異体PD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21は、20倍低い約130nMの親和性で結合する。
【0228】
参照分子5、8及び9は、ヒトIL7受容体に対してより高い親和性(約0.6から0.9nM)を有し、参照分子6及び10は、PD1(alt)-IL7-VAR21(G85E)に近く、親和性はそれぞれ10nMと5nMである。参照分子7はこの条件下ではほとんど結合せず、不活性であると考えられる。
【0229】
結論。PD1(alt)-IL7 VAR21(G85E)及びPD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21(K81E、G85E)のIL7に導入された変異体は、野生型IL7と比較してヒトIL7受容体に対する親和性を低下させ、二重変異体は単一変異体と比較して20倍低い親和性を有する。
【0230】
実施例3.1 漸増用量のPD1(alt)-IL7バリアントで処理された場合の活性化されたPD-1及びPD-1 CD4 T細胞でのIL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)
この実験では、分子PD1(alt)-IL7VAR21及び分子PD1(alt)-IL7VAR18/VAR21のシス標的化及びSTAT-5Pシグナル伝達の効力をPD1(alt)-IL7wtと比較した。
【0231】
この目的のために、IL7Rシグナル伝達を、前述のように単離、活性化、共培養したPD1及びPD1(抗PD1前処理)CD4 T細胞を漸増濃度の免疫標的サイトカインに曝露させた後に測定した。
【0232】
図2のデータは、PD-1及びPD-1を予め遮断されたCD4 T細胞でのPD1(alt)-IL7 VAR21、PD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21及びPD1(alt)-IL7wtの効力の違いを示している。
【0233】
PD1 CD4 T細胞で測定された効力は、PD1依存性及び独立性のIL-7送達の組み合わせを反映している。対照的に、PD1を予め遮断されたCD4 T細胞での効力測定は、PD1結合部位がすべてPD-1結合を防止するために占有されているため、PD1独立的なIL-7の送達を表している。
【0234】
表10では、各PD1(alt)-IL7v分子のシス活性、PD1依存性及び独立性の IL-7の送達の関連を、PD-1を予め遮断された細胞のEC50をPD1T細胞のEC50で割ることにより計算した。これにより、細胞が同じレベルのIL-7Ra/共通ガンマ鎖を発現している場合、PD1(alt)-IL7コンストラクトのそれぞれについて、PD1依存性のIL-7の送達の強度を測定することができる。
【0235】
【0236】
PD1(alt)-IL7バリアントは、PD1(alt)-IL7wtと比較した場合にPD-1T細胞での効力減少を示すが、PD-1T細胞での活性の低下もさらに顕著であり、PD1(alt)-VAR18/VAR21は実質的に不活性である。
【0237】
実施例3.2 漸増用量のPD1-IL7バリアントで処理された場合の活性化されたPD-1及びPD-1 CD4 T細胞でのIL-7Rシグナル伝達(STAT5-P)
この実験では、配列番号3及び4を有する遮断PD1結合剤に変異型IL-7を融合することによって生成された参照分子5~10のシス標的化及びSTAT-5Pシグナル伝達における効力を、分子PD1(alt)-IL7 VAR21及びPD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21と比較した。
【0238】
この目的のために、IL7Rシグナル伝達を、前述のように単離、活性化、共培養したPD1及びPD1(抗PD1前処理)CD4 T細胞を漸増濃度の免疫標的サイトカインに曝露させた後に測定した。
【0239】
CD4 T細胞をCD4ビーズ(130-045-101、Miltenyi)を用いて健康なドナーPBMCから選別し、1μg/mlのプレート結合抗CD3(一晩プレコート、クローンOKT3、#317315、BioLegend)及び1μg/mlの可溶性抗CD28(クローンCD 28.2、#302923、BioLegend)抗体の存在下で3日間活性化して、PD-1発現を誘導した。3日後、細胞を回収し、数回洗浄して内因性IL-2を除去した。その後、細胞を2つの群に分け、そのうちの1つを飽和濃度の抗PD1抗体(社内分子、10μg/ml)と共に室温で30分間インキュベートした。
【0240】
過剰な非結合抗PD-1抗体を除去するための数回の洗浄工程の後、抗PD1前処理細胞及び未処理細胞(50μl、4*10細胞/ml)をV底プレートに播種し、その後、漸増濃度の処理抗体(50μl、1:10希釈工程、最高濃度66nM)で37℃で12分間処理した。リン酸化状態を保存するために、等量のPhosphoflow Fix Buffer I(100μl、557870、BD)を、様々なコンストラクトとの12分間のインキュベーションの直後に添加した。その後、細胞を37℃でさらに30分間インキュベートした後、Phosphoflow PermBuffer III(558050、BD)を用いて80℃で一晩透過処理した。翌日、そのリン酸化形態のSTAT-5を、抗STAT-5P抗体(47/Stat5(pY694)クローン、562076、BD)を使用することによって4℃で30分間染色した。
【0241】
細胞を、FACS BD-LSR Fortessa(BD Bioscience)で取得した。FlowJo(V10)を用いてSTAT-5Pの頻度を測定し、GraphPad Prismを用いてプロットした。
【0242】
図3及び4のデータは、PD-1及びPD-1を予め遮断されたCD4 T細胞でのPD1(alt)-IL7 VAR21、PD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21及び参照分子の効力の違いを示している。
【0243】
PD1 CD4 T細胞で測定された効力は、PD1依存性及び独立性のIL-7送達の組み合わせを反映している。対照的に、PD1を予め遮断されたCD4 T細胞での効力測定は、PD1結合部位がすべてPD-1結合を防止するために占有されているため、PD1独立的なIL-7の送達を表している。
【0244】
表11では、各PD1-IL7v分子のシス活性、PD1依存性及び独立性の IL-7の送達の関連を、PD-1を予め遮断された細胞のEC50をPD1T細胞のEC50で割ることにより計算した。これにより、細胞が同じレベルのIL-7Ra/共通ガンマ鎖を発現している場合、PD1-IL7コンストラクトのそれぞれについて、PD1依存性のIL-7の送達の強度を測定することができる。
【0245】
【0246】
参照分子5と参照分子9はPD1(alt)-IL7 VAR21と同程度の効力を示すが、両参照分子はPD-1T細胞に対しても活性を示し、その活性はPD-1T細胞に対するよりも2倍及び2.5倍低いだけであり、これはIL-7バリアントのPD-1の独立的な送達を示しており、その一方、PD1(alt)-IL7 VAR21は、PD-1T細胞でおよそ160倍低い活性を有する。
【0247】
参照分子6と参照分子10は、PD-1T細胞と比較して、PD-1T細胞に対してそれぞれ32倍及び20倍の活性低下を示し、PD-1を介したIL-7Rアゴニズムのシス送達を支持したが、両分子とも、PD1(alt)-IL7 VAR21よりも12倍及び23倍の効力低下を示した(表11、図3及び4)。
【0248】
PD1(alt)-IL7 VAR18/VAR21は、PD1(alt)-IL7 VAR21よりも効力が低く、最大活性も低下しているが、PD-1T細胞では実質的に不活性であり、PD-1による強力なシス媒介送達を実証している(図3及び4並びに表11)。
【0249】
前述の発明は明確な理解のために例示及び実施例によってある程度詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に援用される。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】