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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電極活物質の製造、及び電極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241003BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241003BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241003BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241003BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M4/36 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024522262
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022077697
(87)【国際公開番号】W WO2023061826
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202107.5
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クルツァールス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー,ハイノ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴァルト,フェリクス フロリアン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
電極活物質の製造方法であって、前記方法が、以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物を提供する工程であって、TMが、遷移金属であり、ニッケルと、任意にコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含み、ニッケルの含有量がTMに対して少なくとも80モル%である、工程と、
(b)前記TMの(オキシ)水酸化物を、TMに対して75~85モル%のリチウム源、及び少なくとも1種のMg又はAlの化合物と混合する工程と、
(c)得られた混合物を400~700℃の範囲の温度で処理して、粉末を得る工程と、
(d)工程(c)からの粉末を、リチウム源、少なくとも1種のMg又はAlの化合物、及びNb、Ta、W、Ti又はZrの少なくとも1種の化合物と混合する工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~800℃の範囲の温度で熱処理する工程と
を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物を提供する工程であって、TMが、遷移金属であり、ニッケルと、任意にコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含み、ニッケルの含有量がTMに対して少なくとも80モル%である、工程と、
(b)前記TMの(オキシ)水酸化物を、TMに対して75~85モル%のリチウム源、及び少なくとも1種のMg又はAlの化合物と混合する工程と、
(c)得られた混合物を400~700℃の範囲の温度で処理して、粉末を得る工程と、
(d)工程(c)からの粉末を、リチウム源及びMの少なくとも1種の化合物と混合する工程であって、MがNb、Ta、W、Ti又はZrから選択される工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~800℃の範囲の温度で熱処理する工程と
を含む、電極活物質の製造方法。
【請求項2】
工程(e)から得られた材料にホウ素又はコバルトの化合物を添加し、その後熱処理する工程(f)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において、(オキシ)水酸化物がCo及びMnの両方を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
TMは、一般式(I)、
(NiaCobMnc) (I)
(式中、aは、0.85~0.99の範囲であり、
bは、0、又は0.01~0.14の範囲であり、
cは、0、又は0.01~0.15の範囲であり、
a+b+c=1である)
に対応する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)の熱処理が工程(c)よりも低い温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
工程(e)が少なくとも80体積%の酸素の雰囲気下で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)における温度が工程(e)における温度よりも高い、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
一般式Li1+x y1(M y2TM)1-x-y1による粒子状電極活物質であって、TMが、遷移金属であり、ニッケルと、任意にコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含み、ニッケルの含有量がTMに対して少なくとも80モル%であり、xが0~0.05の範囲であり、MがMg、Al及びそれらの組み合わせから選択され、MがNb、Ta、W、Ti又はZr、及びそれらの少なくとも2種の組み合わせから選択され、y1が0.005~0.05の範囲であり、y2が0.0025~0.02の範囲であり、前記物質が、50~350nmの範囲の平均一次粒径、0.5~1.1の範囲のスパン、及び2~20μmの範囲の二次粒子の平均粒径(D50)を有する、粒子状電極活物質。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により得られる電極活物質。
【請求項10】
(A)少なくとも1つの、請求項8又は9に記載の粒子状電極活物質、
(B)導電状態の炭素、及び
(C)バインダー、
を含む、カソード。
【請求項11】
(A)80~98質量%の粒子状電極活物質、
(B)1~17質量%の炭素、及び
(C)1~10質量%のバインダー
を含む、請求項10に記載のカソード。
【請求項12】
少なくとも1つの、請求項10に記載のカソードを含む、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極活物質の製造方法に関し、ここで、前記方法が、以下の工程:
(a)TMの(オキシ)水酸化物を提供する工程であって、TMが、遷移金属であり、ニッケルと、任意にコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含み、ニッケルの含有量がTMに対して少なくとも80モル%である、工程と、
(b)前記TMの(オキシ)水酸化物を、TMに対して75~85モル%のリチウム源、及び少なくとも1種のMg又はAlの化合物と混合する工程と、
(c)得られた混合物を400~700℃の範囲の温度で処理して、粉末を得る工程と、
(d)工程(c)からの粉末を、リチウム源及びMの少なくとも1種の化合物と混合する工程であって、MがNb、Ta、W、Ti又はZrから選択される工程と、
(e)工程(d)から得られた混合物を、550~800℃の範囲の温度で熱処理する工程と
を含む。
【背景技術】
【0002】
リチウム化した遷移金属酸化物は、現在、リチウムイオン電池の電極活物質として使用されている。充電密度、比エネルギーなどの特性だけでなく、リチウムイオン電池の寿命又は適用性に悪影響を及ぼすサイクル寿命の低下及び容量損失などの別の特性も向上させるために、過去数年間にわたって広範な研究開発が行われてきた。製造方法を改善するために、さらなる努力が行われている。
【0003】
現今議論されている多くの電極活物質は、リチウム化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物(「NCM材料」)又はリチウム化ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物(「NCA材料」)のタイプのものである。
【0004】
リチウムイオン電池のためのカソード材料の典型的な製造方法において、まず、遷移金属を炭酸塩、酸化物として、又は好ましくは塩基性であってもなくてもよい水酸化物として共沈させることにより、いわゆる前駆体を形成する。次に、この前駆体を、リチウム化合物、例えばLiOH、LiO又は特にLiCO(これらに限定されるものではない)と混合して、高温で焼成(か焼)する。リチウム塩(単数又は複数)は、水和物(単数又は複数)として、又は脱水形態で使用することができる。一般に前駆体の熱処理又は加熱処理とも称される焼成又はか焼は通常、600~1000℃の範囲の温度で行われる。熱処理中に固相反応が起こり、電極活物質が形成される。水酸化物又は炭酸塩が前駆体として使用される場合、水又は二酸化炭素の除去に続いて固相反応が行われる。熱処理はオーブン又はキルンの加熱ゾーンで行われる。
【0005】
カソード活物質の容量を向上させるために、ニッケルの含有量を可能な限り高くすることが提案されている。しかしながら、LiNiOのような材料では、サイクル寿命が短く、ガス発生が顕著で、サイクル中に内部抵抗が大きく上昇することが確認されており、実用化には大きな課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を克服したカソード活物質を提供することであり、そのようなカソード活物質の製造する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、以下で本発明の方法又は(本)発明による方法とも呼ばれる、冒頭で定義された方法が見出された。本発明の方法は、以下で工程(a)、工程(b)などとも呼ばれる複数の工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
工程(a)~(e)については、以下で詳しく説明する。
【0009】
工程(a)では、TMの粒子状(オキシ)水酸化物が提供され、ここで、TMが、遷移金属であり、ニッケルと、任意にコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含み、ニッケルの含有量が、TMに対して少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%、より好ましくは少なくとも98モル%である。
【0010】
本発明の一実施態様において、前記TMの(オキシ)水酸化物は、水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)及びオキシ水酸化ニッケル(以下で、一緒に酸化ニッケル/水酸化ニッケルとも呼ばれる)から選択される。本発明の文脈において、オキシ水酸化ニッケルという用語は、化学量論的なNiOOHに限定されず、酸化物及び水酸化物の対イオンのみを有し、前記水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルの全金属含有量に対して、Mn又はMgなどの金属の不純物の最大個別含有量が2質量%であるニッケルの化合物も含む。好ましくは、水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルは、前記水酸化ニッケル、酸化ニッケル(II)又はオキシ水酸化ニッケルの全金属含有量に対して、2質量%の最大合計不純物含有量を有する。
【0011】
工程(a)で提供されるTMの(オキシ)水酸化物は、2~20μm、好ましくは4~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は、一次粒子からの凝集体から構成されてもよく、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0012】
好ましい酸化ニッケル/水酸化ニッケルは、新たに沈殿した水酸化ニッケルである。
【0013】
本発明の一実施態様において、TMは、一般式(I)に対応する、
(NiaCobMnc) (I)
(式中、aは、0.85~0.99、好ましくは0.90~0.98の範囲であり、
bは、0、又は0.01~0.14、好ましくは0.01~0.05の範囲であり、
cは、0、又は0.01~0.15、好ましくは0.01~0.09の範囲であり、
a+b+c=1である)。
【0014】
本発明の一実施態様において、工程(a)で提供される酸化ニッケル/水酸化ニッケルは、50~1000ppm、好ましくは100~400ppmの範囲の残留水分含有量を有する。残留水分含有量は、カールフィッシャー滴定によって決定することができる。
【0015】
工程(b)では、前記酸化ニッケル/水酸化ニッケルは、水又は有機溶媒などの溶媒の不存在下で、75~85モル%のリチウム源及び少なくとも1種のAl又はMgの化合物と混合される。
【0016】
好適なMgの化合物は、Mg(OH)、MgO、Mg(NO、及びシュウ酸塩、例えばMgCである。
【0017】
好適なAlの化合物は、硝酸塩、酸化物、水酸化物及びオキシ水酸化物、例えばAl、Al(OH)、AlOOH、Al(SO、KAl(SO、及びAl(NO、Alのアルカノラート、例えばAl(CO)(これに限定されない)、Al-トリスイソプロポキシド、及び少なくとも2つのカチオンの混合塩、例えばアルミニウムマグネシウムイソプロポキシドである。
【0018】
さらに、リチウム源が添加される。
【0019】
リチウム源の例としては、それぞれ水を含まない又は水和物としての、LiO、LiOH、及びLiCO、該当する場合、例えばLiOH・HOが挙げられる。
【0020】
リチウム源及びTMの(オキシ)水酸化物の量は、LiとTMのモル比が3:4~85:100の範囲であるように選択される。
【0021】
Al又はMgの化合物の量は、好ましくは、TMに対して、0.1~2.0モル%、好ましくは1.0~1.5モル%に対応する。MgとAlの両方が添加される実施態様では、ドーパントの総量はMgとAlの合計に対応する。
【0022】
前記リチウム源は、好ましくは、例えば、3~10μm、好ましくは5~9μmの範囲の平均直径(D50)を有する粒子状である。
【0023】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、5~85℃、好ましくは10~60℃の範囲の温度で行われる。
【0024】
本発明の一実施態様において、工程(b)は常圧で行われる。しかし、高圧で、例えば常圧より10ミリバール~10バール高い圧力で、又は吸引しながら、例えば常圧より50~250ミリバール低い圧力で、好ましくは常圧より100~200ミリバール低い圧力で、工程(b)を行うことが好ましい。
【0025】
例えば、工程(b)は、例えば、フィルター装置の上方に位置するため、容易に排出することができる容器内で行うことができる。そのような容器は工程(a)からの酸化ニッケル/水酸化ニッケルで充填され、続いてリチウム源及びMg又はAlの化合物が導入されてもよい。他の実施態様において、そのような容器はリチウム源及びMg又はAlの化合物で充填され、続いて工程(a)からの酸化ニッケル/水酸化ニッケルが導入される。他の実施態様において、工程(a)からの酸化ニッケル/水酸化ニッケルとMg又はAlの化合物及びリチウム源は同時に導入される。
【0026】
酸化ニッケル/水酸化ニッケルと、Mg又はAlの化合物及びリチウム源との混合は、1分~3時間、好ましくは5分~1時間、さらにより好ましくは5分~30分かけて行われる。
【0027】
工程(b)は、混合操作、例えば、振とうによって、又は特に攪拌又は剪断によってサポートされてもよい。以下を参照されたい。
【0028】
工程(b)を行うための好適な装置の例としては、高剪断ミキサー、タンブラーミキサー、プラウシェアミキサー、自由落下ミキサーが挙げられる。
【0029】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、室温から200℃、好ましくは20~50℃の範囲の温度で行われる。
【0030】
工程(b)から粉末状の混合物が得られる。
【0031】
工程(c)は工程(b)からの前記混合物を熱処理に供することを含む。工程(c)の例は、400~700℃、好ましくは500~600℃の範囲の温度での熱処理である。「熱的処理」及び「熱処理」という用語は、本発明の文脈において互換的に使用される。
【0032】
本発明の一実施態様において、工程(b)は、0.1~10℃/分の加熱速度で400~700℃に加熱される。
【0033】
本発明の一実施態様において、400~700℃、好ましくは500~600℃の所望の温度に到達する前に、温度を上昇させる。例えば、まず工程(c)から得られた混合物を350~400℃に加熱し、その後10分~2時間の時間一定に保持し、その後500℃~700℃まで昇温し、その後500~700℃で10分~4時間保持する。
【0034】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、ローラーハースキルン、プッシャーキルン又はロータリーキルン、又は前記の少なくとも2つの組み合わせで行われる。ロータリーキルンは、そこで製造される材料の均質化が非常に良好であるという利点を有する。ローラーハースキルン及びプッシャーキルンでは、異なる工程に関する異なる反応条件を非常に容易に設定することができる。実験室規模の実験では、箱型炉、管状炉、及び分割管状炉も使用可能である。
【0035】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、酸素含有雰囲気、例えば窒素-空気混合物、希ガス-酸素混合物、空気、酸素又は酸素富化空気中で行われる。好ましい実施態様において、工程(c)における雰囲気は、空気、酸素及び酸素富化空気から選択される。酸素富化空気は、例えば、体積比50:50の空気と酸素の混合物であってよい。他の選択肢としては、体積比1:2の空気と酸素の混合物、体積比1:3の空気と酸素の混合物、体積比2:1の空気と酸素の混合物、及び体積比3:1の空気と酸素の混合物が挙げられる。
【0036】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、ガス流、例えば空気、酸素及び酸素富化空気の流れの下で行われる。そのようなガス流は強制ガス流とも呼ばれる。そのようなガス流は、工程(b)からの混合物1kg当たり、0.5~15m/hの範囲の比流量を有することができる。体積は、通常の条件下(298ケルビン及び1気圧)で決定される。前記ガス流は、水及び二酸化炭素のようなガス状分解生成物の除去に有用である。
【0037】
本発明の一実施態様において、工程(c)は、30分~24時間の範囲の持続時間を有する。1時間~10時間が好ましい。400℃を超える温度での時間は、加熱及び保持がカウントされるが、この文脈では冷却時間は無視される。
【0038】
工程(c)から粉末が得られる。前記粉末は、所望により、工程(d)の前に脱凝集されてもよい。
【0039】
工程(d)では、工程(c)からが得られる粉末が、リチウム源及びMの少なくとも1種の化合物と混合され、ここで、MがNb、Ta、W、Ti又はZrから選択される。
【0040】
リチウム源及びAlとMgの化合物の好適な例は上記で開示されている。
【0041】
好適なMの化合物は、Ti、Zr、W、Mo及びNbの酸化物、(オキシ)水酸化物及び硝酸塩、例えばTiO、Ti、TiO(OH)、ZrO、Zr(OH)、TiO(NO、Ti(NO、ニオブ酸、Nb、Ta、WO、LiWO、LiMoO及びMoOである。Mの化合物のさらなる例は、それ自体又は水和物として、例えばメタタングステン酸アンモニウム(水和物)、オルトモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、ニオブ酸シュウ酸アンモニウム、炭酸アンモニウムジルコニウム(IV)であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の一実施態様において、Al又はMgの化合物(単数又は複数)の、TMに対する総モル量は、0.1~2モル%、好ましくは1~1.5モル%の範囲である。
【0043】
本発明の一実施態様において、Mの化合物(単数又は複数)の、TMに対する総モル量は、0.2~1モル%、好ましくは0.25~0.5モル%の範囲である。
【0044】
本発明の一実施態様において、工程(b)及び(d)で使用されるリチウム源の量は、(Li+Mg)を(TM+Al+M)で除したモル比が0.99~1.05、好ましくは1.0~1.03の範囲となるように選択される。Liの量は、工程(b)及び工程(d)からの量を意味する。Al又はMgの量はゼロであってもよい。
【0045】
したがって、工程(d)におけるリチウム源の量は、TMに対して、約15~30モル%の範囲であることができる。
【0046】
上記以外の装置及び混合パラメータについては、工程(b)と同様の装置及び混合パラメータを適用することができる。
【0047】
工程(d)から混合物が得られる。工程(e)では、工程(b)から得られた混合物は、550~800℃、好ましくは700~750℃の範囲の温度で熱処理される。好ましくは、工程(e)の温度は、工程(c)より、例えば少なくとも50℃又は少なくとも100℃高い。
【0048】
本発明の一実施態様において、工程(e)の持続時間は1時間~24時間の範囲である。2時間~12時間が好ましい。
【0049】
上記以外の装置及びプロセスパラメータについては、工程(c)と同様の装置及びプロセスパラメータを適用することができる。
【0050】
リチウムイオン電池のカソード活物質として最適な材料が得られる。
【0051】
本発明の一実施態様において、本発明の材料を水で処理し、続いて乾燥させることが可能である。本発明の別の実施態様において、例えば、酸化物又は水酸化物、例えばコバルト又はアルミナの化合物又はホウ酸と混合し、続いて150~400℃で熱処理することによって、本発明の材料の粒子を少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。本発明の別の実施態様において、原子層堆積法、例えばトリメチルアルミニウムと水分を交互に処理することによって、本発明の材料の粒子を少なくとも部分的にコーティングすることが可能である。
【0052】
本発明の一実施態様において、本発明の方法は、工程(e)から得られた材料にホウ素又はコバルトの化合物を添加し、その後、例えば1~5時間熱処理(ホウ素化合物の後処理の場合は150~400℃で、コバルト化合物の後処理の場合は500~700℃で)する工程(f)を含む。好適なホウ素の化合物は、LiBO、B及びB(OH)である。好適なコバルトの化合物は、CoO、Co、Co、Co(NO、CoOOH、及びCo(OH)である。
【0053】
本発明のさらなる態様は、以下で本発明のカソード活物質又は本発明の電極活物質とも呼ばれる、カソード活物質に関する。本発明のカソード活物質は、一般式Li1+x y1(M y2TM)1-x-y1による粒子状材料であり、ここで、TMが、遷移金属であり、ニッケルと、任意にコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1つとを含み、ニッケルの含有量がTMに対して少なくとも80モル%であり、xが0~0.05の範囲であり、MがMg、Al及びそれらの組み合わせから選択され、MがNb、Ta、W、Ti又はZr、及びそれらの少なくとも2種の組み合わせから選択され、y1が0.005~0.05の範囲であり、y2が0.0025~0.02の範囲であり、前記材料が、50~350nmの範囲の平均一次粒径、及び0.5~1.1の範囲のスパンを有する。スパンはSEM画像の評価によって決定され、一次粒子を指す。本発明のカソード活物質は、有利には本発明の方法に従って製造される。
【0054】
ホウ酸又はコバルト化合物によるコーティングが行われた実施態様では、上記の式は本発明のカソード活物質のコアを指す。
【0055】
本発明の一実施態様において、本発明のカソード活物質は、2~20μm、好ましくは4~16μmの範囲の平均粒径(D50)を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0056】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1つの本発明の材料を含む電極である。これらは特にリチウムイオン電池に有用である。本発明による少なくとも1つの電極を含むリチウムイオン電池は、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示し、良好な安全挙動を示す。
【0057】
本発明の一実施態様において、本発明のカソードは、
(A)少なくとも1つの、上記の本発明の材料、
(B)導電状態の炭素、及び
(C)バインダー、
(D)集電器
を含有する。
【0058】
本発明の好ましい実施態様において、本発明のカソードは、(A)、(B)及び(C)の合計に基づいて、
(A)80~98質量%の本発明の材料、
(B)1~17質量%の炭素、
(C)1~10質量%のバインダー
を含有する。
【0059】
本発明によるカソードは、簡潔に炭素(B)とも呼ばれる、導電性修飾の炭素を含有する。炭素(B)は、すす、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェン、及びグラファイトから選択することができる。炭素(B)は、本発明による電極材料の調製中にそのまま添加することができる。
【0060】
本発明による電極は、さらなる構成要素を含むことができる。それらは、集電器(D)、例えばアルミホイル(これに限定していない)を含むことができる。それらは、以下でバインダー(C)とも呼ばれるバインダー材料(C)をさらに含んでいる。集電器(D)については、ここでは、これ以上説明しない。
【0061】
好適なバインダー(C)は、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわち、ホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン(共)重合、触媒(共)重合又はフリーラジカル(共)重合により得ることができる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適する。ポリイソプレン及びポリアクリレートはさらに適している。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0062】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0063】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばα-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びまたイソブテン、ビニル芳香族のもの、例えばスチレン、及びまた(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びまたマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸を含むエチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPE又はLDPEであり得る。
【0064】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばエチレン、及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックポリプロピレン又は本質的にイソタクチックポリプロピレンである。
【0065】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0066】
別の好ましいバインダー(C)は、ポリブタジエンである。
【0067】
他の好適なバインダー(C)は、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0068】
本発明の一実施態様において、バインダー(C)は、50,000g/molから、1,000,000g/molまで、好ましくは500,000g/molまでの範囲の平均分子量Mを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0069】
バインダー(C)は、架橋された又は架橋されていない(コ)ポリマーであり得る。
【0070】
本発明の特に好ましい実施態様において、バインダー(C)は、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、1個の分子当たり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは1個の分子当たり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1つの(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例としては、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0071】
好適なバインダー(C)は、特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特にポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0072】
本発明の電極は、成分(a)、成分(b)及び炭素(c)の合計に対して3~10質量%のバインダー(単数又は複数)(d)を含んでもよい。
【0073】
本発明のさらなる態様は、
(1)本発明のカソード活物質(A)、炭素(B)及びバインダー(C)を含む少なくとも1つのカソード、
(2)少なくとも1つのアノード、及び
(3)少なくとも1種の電解質
を含有する電池である。
【0074】
カソード(1)の実施態様は、すでに上記で詳細に記載されている。
【0075】
アノード(2)は、少なくとも1種のアノード活物質、例えばカーボン(グラファイト)、TiO、酸化リチウムチタン、シリコン又はスズを含有してもよい。アノード(2)は、集電器、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0076】
電解質(3)は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでもよい。
【0077】
電解質(3)のための非水性溶媒は、室温で液体又は固体であり得、好ましくは、ポリマー、環状又は非環状エーテル、環状及び非環状アセタール、及び環状又は非環状有機カーボネートから選択される。
【0078】
好適なポリマーの例は、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C~C-アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールである。ここでは、ポリエチレングリコールは、20モル%以下の1種以上のC~C-アルキレングリコールを含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、2個のメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0079】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、少なくとも400g/molであり得る。
【0080】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量Mは、最大5000000g/mol、好ましくは最大2000000g/molであり得る。
【0081】
好適な非環状エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、1,2-ジメトキシエタンが好ましい。
【0082】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0083】
好適な非環状アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0084】
好適な環状アセタールの例は、1,3-ジオキサン、及び特に1,3-ジオキソランである。
【0085】
好適な非環状有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0086】
好適な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)の化合物である
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なることができ、水素及びC~C-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選択され、好ましくは、R及びRの両方ともがtert-ブチルであることはない)。
【0087】
特に好ましい実施態様において、Rはメチルであり、R及びRはそれぞれ水素であるか、又はR、R及びRはそれぞれ水素である。
【0088】
別の好ましい環状有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0089】
【化2】
【0090】
好ましくは、溶媒又は複数の溶媒は、水を含まない状態で、すなわち、例えば、カールフィッシャー滴定によって決定することができる1ppm~0.1質量%の範囲の含水量で使用される。
【0091】
電解質(3)は、少なくとも1種の電解質塩をさらに含む。好適な電解質塩は、特にリチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiC(C2n+1SO、リチウムイミド、例えばLiN(C2n+1SO(式中、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SOF)、LiSiF、LiSbF、LiAlCl、及び一般式(C2n+1SOYLiの塩である
(式中、Yが酸素及び硫黄から選択される場合、t=1であり、
Yが窒素及びリンから選択される場合、t=2であり、
Yが炭素及びケイ素から選択される場合、t=3である)。
【0092】
好ましい電解質塩は、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiPF、LiBF、LiClOから選択され、LiPF及びLiN(CFSOが特に好ましい。
【0093】
本発明の好ましい実施態様において、電解質(3)は、少なくとも1種の難燃剤を含有する。有用な難燃剤は、トリアルキルホスフェート(前記アルキルは異なるか又は同一である)、トリアリールホスフェート、アルキルジアルキルホスホネート、及びハロゲン化トリアルキルホスフェートから選択されてもよい。好ましいのは、トリ-C~C-アルキルホスフェート(前記C~C-アルキルは異なるか又は同一である)、トリベンジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、C~C-アルキルジ-C~C-アルキルホスホネート、及びフッ素化トリ-C~C-アルキルホスフェートである。
【0094】
好ましい実施態様において、電解質(3)は、トリメチルホスフェート、CH-P(O)(OCH、トリフェニルホスフェート、及びトリス-(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスフェートから選択される少なくとも1種の難燃剤を含む。
【0095】
電解質(3)は、電解質の総量に基づいて、1~10質量%の難燃剤を含有してもよい。
【0096】
本発明の実施態様において、本発明による電池は、それによって電極が機械的に分離される1つ以上のセパレータ(4)を含む。好適なセパレータ(4)は、金属リチウムに対して反応しないポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータ(4)のための特に好適な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成の多孔性ポリエチレン及びフィルム形成の多孔性ポリプロピレンである。
【0097】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンから構成されるセパレータ(4)は、35~45%の範囲の多孔率を有することができる。好適な細孔径は、例えば30~500nmの範囲である。
【0098】
本発明の別の実施態様において、セパレータ(4)は、無機粒子で充填したPET不織布から選択することができる。このようなセパレータは40~55%の範囲の多孔率を有し得る。好適な細孔径は、例えば80~750nmの範囲である。
【0099】
本発明による電池は、任意の形状、例えば、立方体、又は円筒形ディスクの形状を有することができるハウジングをさらに含むことができる。一変形態様において、ポーチとして構成された金属ホイルをハウジングとして使用する。
【0100】
本発明による電池は、特に高温(45℃以上、例えば最高60℃)で、特に容量損失に関して、非常に良好な放電及びサイクル挙動を示す。
【0101】
本発明による電池は、互いに組み合わされている、例えば直列に接続するか、又は並列に接続することができる2つ以上の電気化学セルを含むことができる。直列接続が好ましい。本発明による電池において、少なくとも1つの電気化学セルは少なくとも1つの本発明によるカソードを含有する。好ましくは、本発明による電気化学セルにおいて、電気化学セルの大部分は本発明によるカソードを含有する。さらにより好ましくは、本発明による電池において、すべての電気化学セルは本発明によるカソードを含有する。
【0102】
本発明はさらに、本発明による電池を機器、特にモバイル機器に使用する方法を提供する。モバイル機器の例は、車両、例えば自動車、自転車、航空機、又は水上乗り物、例えばボート又は船である。モバイル機器の他の例は、手動で動くもの、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は例えば建築部門における電動手工具、特にドリル、バッテリー式ドライバー又はバッテリー式ステープラーである。
【0103】
実施例により、本発明をさらに説明する。
【実施例
【0104】
平均粒径(D50)は動的光散乱法(「DLS」)により決定した。特に明記されていない限り、パーセンテージは質量%である。「rpm」:毎分回転数。
【0105】
LiOH・HOはRockwood Lithiumから購入した。Mg(OH)はSigma Aldrichから、AlはSasolから、Zr(OH)はLuxfer Mel Technologiesから、WOはAvantamaから、TiOはHombikatから購入した。
【0106】
ミキサーとしては、ブレンダー(Kinematica)を使用した。
【0107】
I.塩基性カソード活物質LiNiOの製造
I.1 前駆体の製造
工程(a.1):硫酸ニッケル水溶液(1.65mol/kgの溶液)と25質量%のNaOH水溶液を組み合わせ、アンモニアを錯化剤として使用することにより、球状のNi(OH)前駆体を得た。pH値を12.6に設定した。新たに沈殿したNi(OH)を水で洗浄し、ふるいにかけて、120℃で12時間乾燥させた。得られたNi(OH)(「p-CAM.1」)は、10μmの平均粒径D50を有した。
【0108】
II.本発明のカソード活物質、及び比較用カソード活物質の製造
II.1 C-CAM.1の製造
工程(b.1):50gの量のp-CAM.1を、22.80gのLiOH・HO、0.32gのMg(OH)、0.15gのAl、及び0.25gのZr(OH)と混合した。
【0109】
工程(c.1):得られた混合物をアルミナるつぼに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、600℃で1時間、次いで700℃で6時間加熱し、最初の昇温速度は10℃/分、2回目の昇温速度は3℃/分であった。前記熱処理は、実験室炉(Linn High Therm)で行った。C-CAM.1が得られた。C-CAM.1を冷却速度10℃/分で120℃まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。
【0110】
工程(d)も(e)も行わなかった。
【0111】
その後、得られたC-CAM.1をメッシュサイズ32μmでふるいにかけて、1.0モル%のMg、0.55モル%のAl、0.24モル%のZr、及びモル比(Li+Mg)/(Ni+Al+Zr)=1.01を有するC-CAM.1を得た。
【0112】
II.2 CAM.2の製造
工程(b.2):50gの量のP-CAM.1を、17.67gのLiOH・HO、0.25gのMg(OH)及び0.15gのAlと混合した。
【0113】
工程(c.2):得られた混合物をロータリーキルンの一部である金属バルブに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、10℃/分-1の加熱速度で、600℃まで1時間加熱した。回転速度は20rpmであった。中間体が得られた。得られた中間体を10℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。組成は、63質量%のNi、0.13質量%のAl、0.19質量%のMg及び5.8質量%のLiであった。
【0114】
工程(d.2):ブレンダーを使用して、15gの工程(c.2)からの中間体を1.70gのLiOH・HO及び0.07gのZr(OH)と混合した。混合物を得た。
【0115】
工程(e.2):工程(d.2)からの混合物をアルミナるつぼに注ぎ、実験室炉で酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度で、700℃まで6時間加熱した。得られたCAM.2を、10℃/分-1の冷却速度で、120℃まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。
【0116】
その後、CAM.2をメッシュサイズ32μmでふるいにかけて、0.74モル%のMg、0.49モル%のAl、0.25モル%のZr、及びモル比(Li+Mg)/(Ni+Al+Zr)=1.01を有するCAM.2を得た。一次粒子のスパンは、SEM画像の評価により0.5~1.1の範囲であった。
【0117】
II.3 CAM.3の製造
工程(b.3):50gの量のP-CAM.1を、17.67gのLiOH・HO、0.25gのMg(OH)及び0.15gのAlと混合した。
【0118】
工程(c.3):得られた混合物をロータリーキルンの一部である金属バルブに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、10℃/分-1の加熱速度で、600℃まで1時間加熱した。回転速度は20rpmであった。中間体が得られた。得られた中間体を10℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。組成は、63質量%のNi、0.13質量%のAl、0.19質量%のMg及び5.8質量%のLiであった。
【0119】
工程(d.3):ブレンダーを使用して、15gの工程(c.2)からの中間体を1.70gのLiOH・HO及び0.03gのTiOと混合した。混合物を得た。
【0120】
工程(e.3):工程(d.3)からの混合物をアルミナるつぼに注ぎ、実験室炉で酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度で、700℃まで6時間加熱した。得られたCAM.3を、10℃/分-1の冷却速度で、120℃まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。
【0121】
その後、CAM.3をメッシュサイズ32μmでふるいにかけて、0.74モル%のMg、0.49モル%のAl、0.24モル%のTi、及びモル比(Li+Mg)/(Ni+Al+Ti)=1.03を有するCAM.3を得た。一次粒子のスパンは、SEM画像の評価により0.5~1.1の範囲であった。
【0122】
II.4 CAM.4の製造
工程(b.4):50gの量のP-CAM.1を、17.67gのLiOH・HO、0.25gのMg(OH)及び0.15gのAlと混合した。
【0123】
工程(c.4):得られた混合物をロータリーキルンの一部である金属バルブに注ぎ、酸素雰囲気下(10回交換/時間)、10℃/分-1の加熱速度で、600℃まで1時間加熱した。回転速度は20rpmであった。中間体が得られた。得られた中間体を10℃/分の冷却速度で室温まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。組成は、63質量%のNi、0.13質量%のAl、0.19質量%のMg及び5.8質量%のLiであった。
【0124】
工程(d.4):ブレンダーを使用して、15gの工程(c.4)からの中間体を1.70gのLiOH・HO及び0.09gのWOと混合した。混合物を得た。
【0125】
工程(e.4):工程(d.4)からの混合物をアルミナるつぼに注ぎ、実験室炉で酸素雰囲気下(10回交換/時間)、3℃/分の加熱速度で、700℃まで6時間加熱した。得られたCAM.4を、10℃/分-1の冷却速度で、120℃まで冷却し、さらなる処理のために乾燥室に移した。
【0126】
その後、CAM.4をメッシュサイズ32μmでふるいにかけて、0.74モル%のMg、0.47モル%のAl、0.22モル%のW、及びモル比(Li+Mg)/(Ni+Al+W)=1.03を有するCAM.4を得た。一次粒子のスパンは、SEM画像の評価により0.5~1.1の範囲であった。
【0127】
III.電気化学試験
III.1 カソードの製造、一般的なプロトコル:
電極の製造:電極は、94%のそれぞれのCAM又はC-CAM.1、3%のカーボンブラック(Super C65)、及び3%のバインダー(ポリビニリデンフルオリド、Solef 5130)を含有した。全固形分61%のスラリーをN-メチル-2-ピロリドンで混合し(遊星型ミキサー、24分、2,000rpm)、ボックス型コーターでアルミホイルテープ上にキャストした。電極テープを真空中120℃で16時間乾燥し、カレンダー加工した後、直径14mmの円形電極を打ち抜き、質量を測定し、真空下120℃で12時間乾燥し、その後、Arを充填したグローブボックスに入れた。平均担持量:8mg/cm、電極密度:3g/cm
【0128】
III.2 コインセルの製造
アルゴン充填グローブボックス内でコイン型電気化学セルを組み立てた。アノード:0.58mm厚のLiホイルを、ガラス繊維セパレータ(Whatman GF/D)によってカソードから分離した。質量比3:7のエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)中の95μlの1MのLiPFを電解質として使用した。組み立て後、自動圧着機でセルを圧着して閉じた。その後、セルを恒温槽に移し、バッテリーサイクラー(Series4000、MACCOR)に接続した。
【0129】
III.3 コインセルの試験
試験はすべて25℃で行った。セルは、Maccor 4000バッテリーサイクラーを用いて、室温3.0~4.3Vの間で、ある放電工程で初期放電容量の70%に達するまで、以下のCレートを適用して定電流的にサイクルした。
【0130】
試験プロトコルは、C/10での2サイクルから始まて、初期形成部分と速度試験部分から構成した。すべてのサイクルにおいて、電圧ウィンドウを3.0~4.3Vに設定した。初期1Cレートとして、200mA g-1を想定した。その後のすべてのサイクルにおいて、充電は、C/2及び4.3Vで30分間、又は電流がC/100を下回るまでCCCVに設定した。セルをC/5で5サイクル放電した後、段階的に放電レートを上げた(C/10、C/5、C/2、1C、2C、3C)。その後、1Cレートを1C放電の容量に適合させた。レート試験及びC/5放電サイクルの後、さらに2回のC/10放電サイクルと50回の1C放電サイクルを行った。その後、C/10放電サイクルを測定した。
【0131】
【表1】
【国際調査報告】