(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリウレタン粉末および該粉末から形成された3D成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20241003BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241003BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241003BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241003BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20241003BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J3/12 A CFF
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B29C64/153
B29C64/314
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522511
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2022077930
(87)【国際公開番号】W WO2023061871
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/124151
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】カイ,チー チョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ チョン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヤン ション
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ピン ラン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA53
4F070AB26
4F070DA41
4F070DC07
4F070DC08
4F070DC11
4F070DC14
4F213AA31
4F213AB11
4F213AB12
4F213AB17
4F213AC04
4F213AH20
4F213AH59
4F213AH66
4F213AH67
4F213AH70
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
(57)【要約】
本開示は、膨張TPUに由来する熱可塑性ポリウレタン(TPU)粉末および/またはその成形部品に関するものであり、該粉末の平均粒子径D50が1mm以下であり、そしてそれらから形成された3D成形体、および3D成形体を形成する方法に関する。本発明のTPU粉末は、低密度、高反発弾性および良好な機械的特性を有する3D製品を調製するために使用することができ、本発明のTPU粉末は広範な供給源に由来することができ、そして本発明のTPU粉末および3D製品は容易に再利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径D50が1mm以下である、膨張TPUおよび/またはその成形部品に由来する熱可塑性ポリウレタン(TPU)粉末。
【請求項2】
平均粒子径D50が1μm~1mmの範囲である、請求項1に記載のTPU粉末。
【請求項3】
平均粒子径D50が5~800μm、好ましくは10~500μmの範囲である、請求項1または2に記載のTPU粉末。
【請求項4】
嵩密度が1g/cm
3以下、好ましくは0.8g/cm
3以下、または0.6g/cm
3以下である、請求項1または2に記載のTPU粉末。
【請求項5】
膨張TPUペレットまたはその成形部品または残余の膨張TPUまたは再生された膨張TPU、またはそれらの混合物に由来する、請求項1または2に記載のTPU粉末。
【請求項6】
請求項1または2に記載のTPU粉末を製造するための、膨張TPUおよび/またはその成形部品の使用方法。
【請求項7】
膨張TPUおよび/またはその成形部品を微粒化することを含む、請求項1または2に記載のTPU粉末を調製する方法。
【請求項8】
請求項1に記載のTPU粉末と、好ましくは充填剤、流動化剤および顔料から選択される少なくとも1つの補助剤とを含む粉末組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のTPU粉末、または請求項8に記載の粉末組成物の、3D成形体を調製するための使用方法。
【請求項10】
請求項1に記載のTPU粉末または請求項8に記載の組成物を使用することを含む、3D成形体を調製するための方法。
【請求項11】
以下の工程、
a) 請求項1に記載のTPU粉末または請求項8に記載の組成物を成形混合物に添加する工程、および
b) 粉末を選択的に結合させることによって成形品を製造する工程
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)において製造された成形体が、粉末の一部を別の粉末の一部の上に選択的に結合させることによって3次元物体を層ごとに構築するプロセスにより製造される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
選択的に結合させることが、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、又はマイクロ波プロセスを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載のTPU粉末または請求項8に記載の組成物から形成された3D成形体。
【請求項15】
ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋およびシールが含まれる、請求項14に記載の3D成形体。
【請求項16】
密度が1g/cm
3以下、好ましくは0.95g/cm
3以下、より好ましくは0.9g/cm
3以下である、請求項14に記載の3D成形体。
【請求項17】
ASTM D2632による反発弾性が少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも42%である、請求項14に記載の3D成形体。
【請求項18】
ISO527-21/A15 2012による破断伸びが、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも100%または少なくとも120%である、請求項14に記載の3D成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン粉末、該粉末から形成された3D成形体、および3D成形体の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂粉末を用いた3D印刷技術、例えば選択的レーザー焼結(SLS)、マルチジェットフュージョン(MJF)、および選択的加熱焼結(SHS)は、ラピッドプロトタイピングおよびラピッド製造プロセスに使用されている。熱可塑性ポリウレタン粉末は3D印刷可能な材料の一種であり、履物、プロテクターおよび消費者向け用途に広く使用されている。軽量の3D印刷部品を得るためには、3D印刷部品をプロトタイピングから最終用途の部品に拡大することが、特に自動車産業および履物産業において必要である。しかし、密度が低く、反発弾性に優れ、且つ機械的特性が良好な3D印刷部品を得ることは困難である。従って、3D印刷プロセスを成功させるために、低密度、高反発性および優れた性能を備えた材料種類の開発が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、膨張TPU由来の熱可塑性ポリウレタン(TPU)粉末および/またはその成形部品を提供することであり、本発明のTPU粉末は、低密度および高反発弾性を有する3D製品を調製するために使用することができる。
【0004】
本発明の別の目的は、本発明のTPU粉末と少なくとも1つの補助剤とを含む粉末組成物を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、本発明のTPU粉末を使用することを含む、3D成形体を調製するための方法を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、本発明のTPU粉末から形成された3D成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、上記の目的は以下の実施形態によって達成できることが見出された:
1.膨張TPUおよび/またはその成形部品に由来する熱可塑性ポリウレタン(TPU)粉末であって、その平均粒子径D50が1mm以下である熱可塑性ポリウレタン(TPU)粉末。
【0008】
2.該TPU粉末の平均粒子径D50が1μm~1mmの範囲である、項目1に記載のTPU粉末。
【0009】
3.該TPU粉末の平均粒子径D50が5~800μm、好ましくは10~500μmの範囲である、項目1または2に記載のTPU粉末。
【0010】
4.該TPU粉末の嵩密度が1g/cm3以下、好ましくは0.8g/cm3以下、または0.6g/cm3以下である、項目1から3のいずれかに記載のTPU粉末。
【0011】
5.該TPU粉末が、膨張TPUペレットまたはその成形部品または残余の膨張TPUまたは再生された膨張TPU、またはそれらの混合物に由来する、項目1から4のいずれかに記載のTPU粉末。
【0012】
6.項目1から5のいずれかに記載のTPU粉末を製造するための、膨張TPUおよび/またはその成形部品の使用方法。
【0013】
7.膨張TPUおよび/またはその成形部品を微粒化することを含む、項目1から5のいずれかに記載のTPU粉末を調製する方法。
【0014】
8.項目1から5のいずれかに記載のTPU粉末と、好ましくは充填剤、流動化剤および顔料から選択される少なくとも1つの補助剤とを含む粉末組成物。
【0015】
9.項目1から5のいずれか1つに記載のTPU粉末、または項目8に記載の粉末組成物の、3D成形体を調製するための使用方法。
【0016】
10.項目1から5のいずれかに記載のTPU粉末または項目8に記載の組成物を使用することを含む、3D成形体を調製するための方法。
【0017】
11.項目10に記載の方法であって、以下の工程、
a) 項目1から5のいずれかに記載のTPU粉末または項目8に記載の組成物を成形混合物に添加する工程、および
b) 粉末を選択的に結合させることによって成形品を製造する工程
を含む方法。
【0018】
12. 項目11に記載の方法であって、工程b)において製造された成形体が、粉末の一部を別の粉末の一部の上に選択的に結合させることによって3次元物体を層ごとに構築するプロセスにより製造される、方法。
【0019】
13. 項目11又は12に記載の方法であって、選択的に結合させることが、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、又はマイクロ波プロセスを含む方法。
【0020】
14.項目1から5のいずれかに記載のTPU粉末または項目8に記載の組成物から形成された3D成形体。
【0021】
15.項目14に記載の3D成形体であって、該3D成形体に、ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋およびシールが含まれる、3D成形体。
【0022】
16.項目14または15のいずれかに記載の3D成形体であって、その密度が1g/cm3以下、好ましくは0.95g/cm3以下、より好ましくは0.9g/cm3以下である、3D成形体。
【0023】
17.項目14から16のいずれかに記載の3D成形体であって、ASTM D2632によるその反発弾性が、少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも42%である、3D成形体。
【0024】
18.項目14から17のいずれかに記載の3D成形体であって、ISO527-21/A15 2012によるその破断伸びが、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも100%または少なくとも120%である、3D成形体。
【0025】
本発明のTPU粉末は、低密度、高反発弾性および良好な機械的特性を有する3D製品を調製するために使用することができ、そして本発明のTPU粉末は、広範な供給源、特に再生されたおよび残余の膨張TPUから得ることができ、そして本発明のTPU粉末および3D製品は容易に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】
図2は、残余の膨張TPU成形部品の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
未定義の冠詞「a」、「an」、「the」は、当該冠詞に続く用語で指定される1つ以上の種を意味する。
【0028】
本開示の文脈では、ある特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができる。
【0029】
本発明の一態様は、膨張TPUに由来する熱可塑性ポリウレタン(TPU)粉末に関するものであり、該粉末の平均粒子径D50は1mm以下である。
【0030】
TPU粉末
本発明によれば、TPU粉末の平均粒子径D50は、1μm~1mm、例えば1μm、5μm、10μm、20μm、50μm、80μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μmまたは1mm、好ましくは1~800μm、5~600μm、10~500μm、10~400μm、10~250μm、または20~800μm、20~600μm、20~400μm、20~250μm、または30~800μm、30~600μm、30~400μm、30~250μm、または40~800μm、40~600μm、40~400μm、40~250μm、または50~800μm、50~600μm、50~400μm、または50~250μmの範囲とすることができる。
【0031】
平均粒子径D50は、ISO13320-1に従って試験することができる。
【0032】
一実施形態では、TPU粉末の嵩密度は1g/cm3以下であり、例えば0.01g/cm3、0.05g/cm3、0.1g/cm3、0.15g/cm3、0.2g/cm3、0.3g/cm3、0.4g/cm3、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3、0.8g/cm3、0.9g/cm3、または1g/cm3、好ましくは0.8g/cm3以下、または0.6g/cm3以下、または0.5g/cm3以下である。一実施形態では、TPU粉末の嵩密度は、0.01g/cm3~1g/cm3、0.05g/cm3~0.9g/cm3、0.05g/cm3~0.7g/cm3、0.05g/cm3~0.65g/cm3、または0.1g/cm3~0.6g/cm3の範囲とすることができる。
【0033】
TPU粉末の嵩密度は、ISO1068に従って試験することができる。
【0034】
本発明によれば、TPU粉末は、膨張TPUおよび/またはその成形部品に由来する。膨張TPUおよびその成形部品は、広範な供給源を有することができる。例えば、これらは膨張TPUペレット(例えば微小球)、膨張TPUの成形部品(例えば膨張TPUペレットの成形部品)、残余の膨張TPU、再生された膨張TPU、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0035】
一実施形態によれば、本発明のTPU粉末は、膨張TPUおよび/またはその成形部品、例えば、膨張TPUペレット(例えば、微小球)、残余の膨張TPU、再生された膨張TPU、膨張TPUの成形部品、またはそれらの混合物に由来し、特にこれらを微粒化(例えば、粉砕)することによって製造される。
【0036】
TPUおよびその製造方法はよく知られている。例として、TPUは、(a)イソシアネートと、(b)イソシアネートに対して反応性であり、且つ500~10000のモル質量を有する化合物と、必要に応じて(c)50~499のモル質量を有する鎖延長剤との、必要に応じて(d)触媒および/または(e)従来の助剤および/または従来の添加剤の存在下における、反応を介して製造することができる。
【0037】
成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性である化合物、(c)鎖延長剤は、個々にまたは集合的に形成成分と呼ばれる。触媒および/または慣用の助剤および/または添加剤を含む形成成分は、出発物質とも呼ばれる。
【0038】
本発明によれば、TPUが少なくとも0.1×106g/モル、好ましくは少なくとも0.4×106g/モル、特に0.6×106g/モルを超える質量平均分子量を有するTPUを調製することが好ましい。TPUの質量平均分子量の上限は、一般に、加工性および所望の特性スペクトルによって決定される。TPUの数平均分子量は、好ましくは0.8×106g/モル以下である。TPUおよび形成成分(a)および(b)について上に示した平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0039】
有機イソシアネート(a)として、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネート、より好ましくはトリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレンおよび/またはオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、パラフェニレン2,4-ジイソシアネート(PPDI)、テトラメチレンキシレン2,4-ジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-および2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート、(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン1,2-ジイソシアネートおよび/またはフェニレンジイソシアネートの使用が好ましい。
【0040】
イソシアネートであるジフェニルメタン2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)およびジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-および2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)、特に好ましくはジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)の使用が好ましい。
【0041】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)として、500g/モル~8×103g/モル、好ましくは0.7×103g/モル~6.0×103g/モル、特に0.8×103g/モル~4.0×103g/モルの範囲の分子量を有するものが好ましい。
【0042】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)は、統計平均で少なくとも1.8個および3.0個以下のツェレヴィチノフ活性水素原子を有し、この数はイソシアネートに対して反応性である化合物(b)の官能価とも称され、1つの分子について計算した分子のイソシアネート反応性基の理論モル量が得られる。官能価は、好ましくは1.8~2.6の範囲、より好ましくは1.9~2.2の範囲、および特に2である。
【0043】
イソシアネートに対して反応性である化合物は、実質的に直鎖状であり、イソシアネートに対して反応性である1つの物質、または様々な物質の混合物であり、そしてこの混合物は前述の要件を満たす。
【0044】
これらの長鎖化合物は、ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量に対して、1当量モル%~80当量モル%のモル割合で使用される。
【0045】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基またはカルボキシル基から選択される反応性基を有する。ヒドロキシル基が好ましい。イソシアネートに対して反応性である化合物(b)は、特に好ましくは、ポリエステルオール、ポリエーテルオールおよびポリカーボネートジオールからなる群から選択され、これらは用語「ポリオール」で要約される。
【0046】
ポリエステルジオール、好ましくはポリカプロラクトン、および/またはポリエーテルポリオール、好ましくはポリエーテルジオール、より好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドをベースとするもの、好ましくはポリプロピレングリコールも好ましい。1つの特に好ましいポリエーテルは、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、特にポリエーテルオールである。
【0047】
特に好ましくは、以下の群:アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸またはそれらの混合物および1,2-エタンジオールと1,4-ブタンジオールとの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸またはそれらの混合物および1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸またはそれらの混合物および3-メチルペンタン-1,5-ジオールおよび/またはポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン、PTHF)をベースとするポリエステルから選択されるポリオールである。
【0048】
アジピン酸および1,2-エタンジオールと1,4-ブタンジオールとの混合物をベースとするコポリエステル、またはアジピン酸および1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールをベースとするコポリエステル、またはアジピン酸およびポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフランPTHF)またはそれらの混合物をベースとするポリエステルを使用することが特に好ましい。
【0049】
アジピン酸およびポリテトラメチレングリコール(PTHF)またはそれらの混合物をベースとするポリエステルをポリオールとして使用することが非常に特に好ましい。
【0050】
好ましい実施形態では、鎖延長剤(c)が使用され、これらは好ましくは、50g/モル~499g/モルの分子量を有し、そして好ましくは官能基とも称される2個のイソシアネート反応性基を有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物である。
【0051】
鎖延長剤(c)は、好ましくは、1,2-エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメタノールシクロヘキサンおよびネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1つの鎖延長剤である。1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される鎖延長剤が特に好適である。
【0052】
非常に特に好ましい鎖延長剤は、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよびエタンジオールである。
【0053】
好ましい実施態様では、形成成分と共に触媒(d)を使用する。これらは特に、イソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)のヒドロキシル基と、使用される場合には鎖延長剤(c)との間の反応を促進する触媒である。好ましい触媒は、第3級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。別の好ましい実施態様では、触媒は有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトナート、スズ化合物、好ましくはカルボン酸のもの、特に好ましくはスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレートまたはジアルキルスズ塩、より好ましくはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、またはカルボン酸のビスマス塩、好ましくはビスマスデカノエートである。
【0054】
特に好ましい触媒は、スズジオクトエート、ビスマスデカノエート、チタン酸エステルである。触媒(d)は、好ましくは、イソシアネート反応性化合物(b)100質量部当たり0.0001~0.1質量部、0.001~0.05質量部の量で使用する。
触媒(d)とは別に、従来の助剤(e)を形成成分(a)~(c)に添加することもできる。例として、界面活性物質、充填剤、難燃剤、核剤、酸化阻害剤、潤滑剤および離型助剤、染料および顔料、任意に安定剤、好ましくは加水分解、光、熱または変色に対する安定剤、無機および/または有機充填剤および/または可塑剤が挙げられる。
【0055】
一実施形態では、TPUを発泡剤と接触させる。
【0056】
原則として、膨張TPUペレットは、懸濁液または押出プロセスを介して直接または間接的に、膨張性TPUペレットと、蒸気または熱風を用いた圧力予備発泡機での発泡によって製造することができる。
【0057】
懸濁プロセスでは、ペレット形態のTPUを水、懸濁剤、発泡剤と共に密閉反応器内でペレットの軟化点よりも高温に加熱する。これにより、ポリマーペレットは発泡剤によって含浸される。すると高温の懸濁液を冷却することが可能となって粒子が発泡剤を含んで固化し、反応器が減圧される。このようにして得られた発泡剤を含む(膨張性)ペレットは、加熱により発泡して膨張ペレットが得られる。別の方法として、冷却せずに高温の懸濁液を突然減圧することも可能であり(爆発-膨張プロセス)、この場合、発泡剤を含む軟化したペレットは直ちに発泡して膨張ペレットが得られる。
【0058】
押出プロセスでは、TPUを押出機内で溶融させながら、押出機に導入される発泡剤と混合する。発泡剤を含む混合物を押出し、TPUペレットが発泡(膨張)しないような圧力と温度の条件下でペレット化する。この目的のために使用される方法の例は、2バールを超える水圧で操作される水中ペレット化である。これにより、発泡剤を含む膨張性ペレットが得られ、これをその後の加熱により発泡させて膨張ペレットを得る。あるいは、混合物を大気圧で押出し、ペレット化することもできる。このプロセスでは、溶融押出物は発泡し、そしてペレット化によって得られる製品は膨張ペレットである。
【0059】
TPUは、市販のペレット、粉末、顆粒、または他の任意の形態で使用することができる。ペレットを使用することが有利である。好適な形態の例は、好ましい平均直径が0.2~10mm、特に0.5~5mmであるペレットとして知られているものである。これらの主に円筒形または円形のペレットは、TPUおよび必要に応じて他の添加剤の押出、押出機からの排出、必要に応じて冷却、およびペレット化を介して製造される。円筒形ペレットの場合、長さは好ましくは0.2~10mm、特に0.5~5mmである。ペレットはラメラ形状を有することもできる。発泡剤を含む熱可塑性ポリウレタンの平均直径は、好ましくは0.2~10mmである。
【0060】
使用されるプロセスの機能として、好ましい発泡剤は、適切であれば変えることができる。懸濁プロセスの場合、使用される発泡剤は、好ましくは有機液体または無機ガス、またはそれらの混合物を含む。使用することができる液体はハロゲン化炭化水素を含むが、飽和脂肪族炭化水素、特に3~8個の炭素原子を有するものが好ましい。好適な無機ガスは、窒素、空気、アンモニア、または二酸化炭素である。
【0061】
押出プロセスを介した製造において、使用される発泡剤は、好ましくは、沸点が大気圧1013ミリバールで-25~150℃、特に-10~125℃である揮発性有機化合物を含む。炭化水素(好ましくはハロゲンを含まない)が好適であり、特にC4~10-アルカン、例えばブタンの異性体、ペンタンの異性体、ヘキサンの異性体、ヘプタンの異性体、およびオクタンの異性体、特に好ましくはsec-ペンタンである。他の好適な発泡剤は、より嵩高い化合物、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテルおよび有機カーボネートである。
【0062】
ハロゲン化炭化水素を使用することも可能であるが、発泡剤は好ましくはハロゲンを含まない。しかし、発泡剤混合物中の非常に小さい割合のハロゲン含有発泡剤を排除するものではない。無論、前述の発泡剤の混合物を使用することも可能である。
【0063】
発泡剤の量は、使用するTPU100質量部に対して、好ましくは0.1~40質量部、特に0.5~35質量部、および特に好ましくは1~30質量部である。
【0064】
膨張性TPUペレットが得られた場合、これを既知の方法で発泡させて膨張TPUペレットを得ることができる。発泡は一般に、従来の発泡装置で、例えば、熱風または過熱蒸気を用いて、圧力予備発泡機として既知の、例えば、通常は膨張性ポリスチレン(EPS)の処理に使用される種類のもので、膨張性ペレットを加熱することによって行われる。ペレットが軟化する温度(軟化範囲)、特に好ましくは100~140℃の温度で、ペレットを発泡させることが好ましい。
【0065】
膨張TPUペレットの嵩密度は、10~600g/l、および好ましくは15~300g/lとすることができる。
【0066】
膨張TPUペレットの平均直径は、通常0.2~20mm、好ましくは0.5~15mm、および特に1~12mmの範囲である。非球状、例えば細長いまたは円筒形のペレットの場合、直径は最長寸法を意味する。
【0067】
本発明によるTPU粉末は、膨張TPUペレットおよび/またはその成形部品を微粒化することによって得ることができる。
【0068】
一実施形態では、膨張TPUは、再生された膨張TPU、残余の膨張TPU、膨張TPUの成形部品、またはそれらの混合物である。
【0069】
再生された膨張TPUは、形状化された物品、例えばソールとすることができる。再生された膨張TPUを微粒化して、本発明によるTPU粉末を得ることができる。微粒化する前に、再生された膨張TPUを洗浄および/または異物から分離することができる。
【0070】
本発明のTPU粉末により、低密度、高反発弾性、好ましくは良好な機械的特性、特に破断伸びを有する3D成形体を(例えば3D印刷によって)調製することが可能となる。3D成形体の密度、反発弾性および機械的特性の詳細は、本発明の3D成形体について以下に記載する通りである。
【0071】
組成物
本発明の一態様は、本発明によるTPU粉末および少なくとも1つの補助剤を含む粉末組成物に関する。補助剤は、充填剤、流動化剤および顔料から選択することができる。
【0072】
流動化剤は、シリカ、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイダルシリカ、疎水性/親水性シリカおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0073】
本発明の流動化剤は、5nm~200μmのメジアン粒子径を有する。流動化剤の好ましいメジアン粒子径は10nm~150μm、特に好ましくは100nm~100μmである。
【0074】
流動化剤は、20~600m2/gの比表面積を有する。流動化剤は、好ましくは、40~550m2/g、特に好ましくは60~500m2/g、およびより好ましくは60~450m2/gの比表面積を有する。
【0075】
組成物中の流動化剤の量は、組成物の総質量に対して、0~5質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.01~2質量%、0.05~5質量%、0.05~3質量%、0.05~2質量%、0.1~5質量%、0.1~3質量%、または0.1~2質量%とすることができる。
【0076】
充填剤の例として、ガラス微小球、ガラス繊維および炭素繊維を挙げることができる。
【0077】
他の補助剤として、好ましい例は、表面活性物質、核剤、潤滑ワックス、染料、触媒、UV吸収剤および安定剤、例えば酸化、加水分解、光、熱または変色に対する安定剤を挙げることができる。加水分解阻害剤として、オリゴマーおよび/またはポリマーの脂肪族または芳香族カルボジイミドが好ましい。本発明の3D印刷物体を老化および有害な環境影響に対して安定化させるために、好ましい実施形態では、安定剤が系に添加される。
【0078】
本発明の組成物が使用中に熱酸化損傷に暴露される場合、好ましい実施形態では、酸化防止剤を添加する。フェノール酸化防止剤が好ましい。フェノール酸化防止剤、例えばBASF SE社からのIrganox(登録商標)1010が、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed.,Hanser Publishers,Munich、2001年、第98~107頁、第116および第121頁に示されている。
【0079】
本発明の組成物がUV光に暴露される場合、好ましくはUV吸収剤で該組成物を追加的に安定化させる。UV吸収剤は一般に、高エネルギーのUV光を吸収してエネルギーを散逸させる分子として知られている。産業界で用いられている慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジンおよびベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed,Hanser Publishers,Munich、2001年、第116~122頁に見出される。
【0080】
上記の助剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えば、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed,Hanser Publishers,Munich、2001年に見出される。
【0081】
少なくとも1つの助剤の総量は、組成物の総質量に対して、0~60質量%、好ましくは0~40質量%、0~20質量%、0~10質量%、0~5質量%、または0.01~60質量%、0.05~40質量%、0.1~20質量%の範囲とすることができる。
【0082】
3D成形体を調製するための方法
さらなる態様において、本発明は、本発明によるTPU粉末または本発明による組成物を使用することを含む、3D成形体を調製するための方法に関する。
【0083】
一実施形態において、該方法は、
a)本発明のTPU粉末または本発明の組成物を成形混合物に添加する工程、および
b)粉末を選択的に結合させることにより、成形体を製造する工程
を含む。
【0084】
一実施形態において、工程b)において製造された成形体は、粉末の一部を別の粉末の一部の上に選択的に結合させることによって3次元物体を層ごとに構築するプロセスにより製造される。好ましい実施形態において、選択的に結合させることは、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、またはマイクロ波プロセスを含む。
【0085】
本発明によれば、選択的に結合させることは、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、またはマイクロ波プロセスを含み、特に3D印刷による。
【0086】
工程(b)が完了した後、成形品を余剰の粉末から分離して最終的な3D成形体を得ることができる。
【0087】
本発明によれば、余剰の粉末は、そのまま印刷に再利用することができる。
【0088】
3D成形体
さらなる態様において、本発明は、本発明のTPU粉末、または本発明の組成物から形成された3D成形体に関する。
一実施形態によれば、3D成形体には、ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋およびシールが含まれる。
【0089】
本発明の3D成形体は、低密度、高反発弾性を有し、そして好ましくは良好な機械的特性、特に破断伸びを有する。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明の3D成形体の密度は、1g/cm3以下、例えば、0.95g/cm3、0.9g/cm3、0.85g/cm3、0.8g/cm3、0.78g/cm3、0.76g/cm3、0.74g/cm3、0.72g/cm3、0.70g/cm3、0.68g/cm3、0.66g/cm3、0.64g/cm3、0.62g/cm3、0.6g/cm3、0.58g/cm3、0.56g/cm3または0.55g/cm3、好ましくは、本発明の3D成形体の密度は0.95g/cm3以下、0.9g/cm3以下、0.8g/cm3以下、0.78g/cm3、0.76g/cm3以下、0.74g/cm3以下、または0.72g/cm3以下である。好ましくは、本発明の3D成形体の密度は0.1~1g/cm3、0.1~0.9g/cm3、0.1~0.8g/cm3、0.2~0.8g/cm3、0.3~0.8g/cm3、0.4~0.8g/cm3、0.5~0.8g/cm3、0.6~0.78g/cm3、または0.62~0.76g/cm3の範囲である。
【0091】
密度はASTM D792に従って試験することができる。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明の3D成形体のASTM D2632による反発弾性は、少なくとも35%、例えば36%、38%、40%、42%、45%、48%、50%、52%、55%、58%、60%、62%、または65%、70%、または80%、好ましくは少なくとも38%、少なくとも40%、少なくとも42%、少なくとも45%、少なくとも48%である。好ましい実施形態では、本発明の3D成形体の反発弾性は、35%~80%、35%~70%、35%~65%、38%~62%、40%~60%、または42%~60%の範囲である。
【0093】
好ましい実施形態では、本発明の3D成形体のISO527-21/A15 2012による破断伸びは、少なくとも50%、好ましくは80%、例えば100%、120%、140%、150%、180%、200%、220%、250%、280%、300%、400%、500%または600%、好ましくは少なくとも100%、または少なくとも120%である。好ましい実施形態では、本発明の3D成形体の破断伸びは、50%~600%、80%~600%、80%~550%、100%~550%の範囲である。
【0094】
好ましい実施形態において、本発明の3D成形体のASTM D2240-15による硬度(ショアA)は、A40~A72、例えばA44、A46、A48、A50、A52、A55、A60、A65、A68、A70またはA72、好ましくはA44~A72である。
【0095】
本発明の3D成形体のISO527-21/A15 2012による引張強度は、1MPa以上、例えば1.2MPa、1.3MPa、1.4MPa、1.5MPa、1.8MPa、2.0MPa、2.2MPa、2.5MPa、2.8MPa、3.0MPa、3.2MPa、3.5MPa、4MPa、4.5MPa、5MPa、6MPa、7MPa、8MPa、9MPa、10MPa、12MPa、または15MPaである。好ましい実施形態では、本発明の3D成形体の引張強度は、1~15MPa、または1.2~12MPaの範囲である。
【実施例】
【0096】
材料
-熱可塑性ポリウレタン粉末(TPU-1):BASF社の膨張TPU130Uペレットを粉砕して調製(BASF社市販品:Infinergy X1125-130U、ペレットの嵩密度は0.12~0.14g/cm3、平均ペレット質量は26mgおよび平均孔径は130μmであった)、粉末の平均粒子径D50は160μm、粉末の嵩密度は0.18g/cm3であった。TPU-1粉末は、-196℃、粉砕速度100m/s(線速度)で極低温粉砕し、必要な大きさにふるいをかけて調製した。
【0097】
-熱可塑性ポリウレタン粉末(TPU-2):Infinergy32-100U10(Infinergy32-100U10のペレットの嵩密度は0.085~0.135g/cm
3、および平均ペレット質量は32mgであった)により調製した膨張TPU成形部品(
図2に示す)の残余を粉砕して調製した。粉末の平均粒子径D50は160μm、および粉末の嵩密度は0.23g/cm
3であった。粉砕手順はTPU-1粉末のものと同様であった。
【0098】
-熱可塑性ポリウレタン粉末(TPU-3):BASF社の膨張TPU130Uペレットを粉砕して調製した(BASF社市販品:Infinergy X1125-130U、ペレットの嵩密度は0.12~0.14g/cm3、ペレットの平均質量は26mg、平均孔径は130μmであった)、粉末の平均粒子径D50は80μm、粉末の嵩密度は0.25g/cm3であった。粉砕手順はTPU-1粉末のものと同様であった。
【0099】
-TPU88A:BASF社の3D印刷用Ultrasint TPU88A粉末。TPU粉末は、TPUペレットを粉砕して調製した。TPU88Aの嵩密度:0.6g/cm3、TPU88Aの平均粒子径D50:80μm。
【0100】
-流動化剤:Wacker社のHDKN20非晶質シリカ(BET:175~225m2/g)、Cabot社ENERSIL2030フュームドシリカ(BET:175~225m2/g)。
【0101】
方法
-あらゆるサンプルは、Farsoon HT251SLS3Dプリンターで印刷した。
-引張強度および破断伸びを、6mm/分の速度(ISO527-21/A15 2012に準拠)で、ZwickZ050により測定した。
-反発弾性はASTM D2632に従って試験した。
-硬度はASTM D2240-15に準拠し、ASKER DUROMETER(タイプA)を用いて判定した。
-密度はASTM D792に従って調査した。
-粉末の平均粒子径D50は、ISO13320-1に従って、Beckerman Coulter LS13 320 Lase Diffraction Particle Size Analyzeerで試験した。
-TPU粉末の嵩密度はISO1068に従って試験した。
【0102】
実施例A、B、C、D、Eおよび比較例1
表1に示す実施例Aおよび比較例1の粉末をそのまま使用した。実施例B、C、DおよびEの粉末組成物は、表1に示す成分の粉末をブレンドして調製した。ブレンド実験は、Dongguan Huanxin Machinery Co.,Ltd社のHTS-5高速ミキサーで行った。各成分は、表1に示す質量パーセントに従って加重した。粉末を1400rpmで60秒間混合して粉末組成物を得、各組成物の総質量は5000gであった。
【0103】
【0104】
実施例2-3D印刷
実施例A、B、C、D、Eおよび比較例1の粉末または粉末組成物は、Farsoon社製造のHT251選択的レーザー焼結3Dプリンターで印刷した。典型的な印刷プロセスでは、粉末または粉末組成物をプリンターの供給チャンバーに装填した。すべての印刷プロセスについて、印刷パラメータは、異なる種類の粉末およびそれらの印刷プロセス中の割れまたは反り現象に応じて調整する必要があった。詳細な印刷パラメータを表2に示す。
【0105】
後処理プロセス:印刷プロセスが完了して印刷物体が冷却された後、ビルドチャンバーをプリンターから取り外して洗浄ステーションに移し、印刷物体を余剰の粉末から分離して、最終的な3D印刷物体を得た。
【0106】
【0107】
実施例Cの粉末組成物から調製した印刷サンプルの写真を
図1に示す。
【0108】
印刷サンプルの引張強度、破断伸び、硬度、反発弾性および密度を表3にまとめた。
【0109】
【0110】
膨張TPUの粉末をベースとする印刷サンプルまたはその成形部品(実施例A、B、C、DおよびE)は、TPUからの粉末をベースとする印刷サンプル(比較例1)のものと比較して、顕著な低密度および高反発弾性を示した。
【国際調査報告】