(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-10
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー粉末、その調製方法及び3D成形品の調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20241003BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20241003BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241003BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241003BHJP
【FI】
C08J3/12 A CER
C08J3/12 CEZ
B29C64/153
B33Y70/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522514
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022077929
(87)【国際公開番号】W WO2023061870
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/124152
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ チョン
(72)【発明者】
【氏名】カイ,チー チョン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヤン ション
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ピン ラン
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070AA53
4F070AA54
4F070AB08
4F070AB09
4F070AB16
4F070DA46
4F070DC07
4F070DC08
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4F070DC14
4F213AA45
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL23
4F213WL26
4F213WL43
4F213WL76
(57)【要約】
本開示は、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末であって、TPE粉末の平均粒径D50が10μm~1mmの範囲であり、TPE粉末の平均球形度AA及び平均球形度Bの少なくとも一方が0.6以下である、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末;TPE粉末を調製する方法;及び3D成形品を調製する方法に関する。本発明による粉末及び方法は、低い密度、高い反発弾性及び良好な機械的特性を有する3D成形品、特に、異なる特性を有する複数の領域を含む3D成形品を調製することを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(TPE)粉末であって、TPE粉末の平均粒径D50が10μm~1mmの範囲であり、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方が0.6以下であり、
球形度A=粉末の体積相当球体の表面積/粉末の表面積であり、
球形度B=粉末の体積相当球体の半径/粉末の外接球体の半径である、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末。
【請求項2】
TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方が、0.6~0.05、好ましくは0.55~0.08、又は0.5~0.1の範囲である、請求項1に記載のTPE粉末。
【請求項3】
前記TPE粉末の平均粒径D50が、20~800μm、好ましくは30~600μmの範囲である、請求項1又は2に記載のTPE粉末。
【請求項4】
前記TPE粉末の嵩密度が、0.15~0.45g/cm
3、好ましくは0.18~0.35g/cm
3、より好ましくは0.18~0.3g/cm
3の範囲である、請求項1又は2に記載のTPE粉末。
【請求項5】
TPEが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性コポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリスチレンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性バルカネート、熱可塑性ポリオレフィン、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1又は2に記載のTPE粉末。
【請求項6】
発泡したTPE材料を粉砕することを含む、請求項1又は2に記載のTPE粉末を調製する方法。
【請求項7】
粉砕中の前記発泡したTPE材料の温度が、TPE材料のT
gより少なくとも20℃低い、好ましくは少なくとも40℃低い、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記発泡したTPE材料が、粉砕前又は粉砕中に液体窒素で処理される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記発泡したTPE材料が、20~800μm、好ましくは30~600μmの範囲の平均孔径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載のTPE粉末と、好ましくはフィラー、流動化剤、強化添加剤及び顔料から選択される少なくとも1種の助剤とを含む、粉末組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の粉末組成物の製造方法であって、発泡したTPE材料の粉砕前、粉砕中、及び/又は粉砕後に、好ましくはフィラー、流動化剤、強化添加剤及び顔料から選択される少なくとも1種の助剤を添加することを含む、方法。
【請求項12】
レイヤーバイレイヤープロセスによる3D成形品を調製する方法であって、請求項1に記載のTPE粉末、又は請求項10に記載の、又は請求項11で調製される粉末組成物を選択的に結合することを含む、方法。
【請求項13】
前記3D成形品が、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、nが2以上である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特性が、密度、ショアA硬度、反発弾性及びそれらの組み合わせから選択されるか、又は密度、ヤング率、引張強度、破断伸び、反発弾性、ショアA硬度及びそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記3D成形品が、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、それらのうちの2個の領域が、以下の条件:
(i)前記2個の領域の密度が、少なくとも0.05g/cm
3、好ましくは少なくとも0.1g/cm
3、より好ましくは少なくとも0.15g/cm
3、特に少なくとも0.2g/cm
3異なること;
(ii)前記2個の領域の反発弾性が、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、特に少なくとも3%異なること;
(iii)前記2個の領域間のショアA硬度の差が、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、特に少なくとも30であること
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
選択的に結合することが、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、又はマイクロ波プロセスを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの異なる特性を有する前記n個の領域が、プロセスパラメータ、好ましくは印刷パラメータを調整することによって形成され、より好ましくは、前記印刷パラメータが、レーザー出力密度、スキャン数、印刷温度、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記n個の領域が異なる密度を有し、印刷パラメータが以下の条件:
(iv)より高い密度を有する領域を形成するためのレーザー出力密度が、より低い密度を有する領域を形成するためのレーザー出力密度よりも高いこと
を満たし、
及び/又は
前記n個の領域が異なる反発弾性を有し、印刷パラメータが以下の条件:
(v)より高い反発弾性を有する領域を形成するためのレーザー出力密度が、より低い反発弾性を有する領域を形成するためのレーザー出力密度よりも高いこと
を満たす、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの異なる特性を有する前記n個の領域が、同じ材料から形成される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載のTPE粉末、又は請求項10に記載の粉末組成物から、又は請求項12に記載の方法により、得ることができる、3D成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末、TPE粉末の調製方法、及び3D成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性粉末を用いた3D印刷技術、例えば選択的レーザー焼結(SLS)、マルチジェット融合(MJF)、選択的熱焼結(SHS)は、ラピッドプロトタイピング及びラピッドマニュファクチャリングプロセスに使用されてきた。熱可塑性粉末は、履物、プロテクター、及び消費者向け用途に広く使用されている3D印刷可能な材料の一種である。一般的には、印刷プロセスは1回の印刷で1種類の材料を印刷する。そのため、複数の材料又は複数の性能を有する3D物体を製造することは難しい。さらに、3D印刷部品を最終用途の部品のプロトタイピングからに拡大するためには、特に自動車産業及び履物産業において、より低密度の3D印刷部品を得ることが必要である。しかしながら、3D印刷プロセスによって印刷した部品の密度を調整し、低くすることは難しい。そのため、異なる特性を有する3D印刷物体を調製するための材料及び方法を開発することが強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の1つの目的は、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末を提供することであり、ここで、本発明のTPE粉末を使用することにより、低密度で高い反発弾性を有する3D成形品、及び異なる特性を有する複数の領域を含む3D成形品を製造することができる。
【0004】
本発明の別の目的は、本発明のTPE粉末を調製する方法を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、本発明のTPE粉末及び少なくとも1種の助剤を含む粉末組成物を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、本発明の粉末組成物を調製する方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、本発明のTPE粉末又は粉末組成物を使用することを含む、3D成形品を調製する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、本発明のTPE粉末又は粉末組成物から、又は本発明の方法によって得られる3D成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、上記の目的は以下の実施形態によって達成できることが判明した。
【0010】
1.熱可塑性エラストマー(TPE)粉末であって、TPE粉末の平均粒径D50が10μm~1mmの範囲であり、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方が0.6以下であり、
球形度A=粉末の体積相当球体の表面積/粉末の表面積であり、
球形度B=粉末の体積相当球体の半径/粉末の外接球体の半径である、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末。
【0011】
2.TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方が、0.55以下、好ましくは0.5以下である、項目1に記載のTPE粉末。
【0012】
3.TPE粉末の平均球形度Aが0.55以下、好ましくは0.5以下、及び/又はTPE粉末の平均球形度Bが0.5以下、好ましくは0.4以下である、項目1又は2に記載のTPE粉末。
【0013】
4.TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方が、0.6~0.05、好ましくは0.55~0.08、又は0.5~0.1の範囲である、項目1から3のいずれか一項に記載のTPE粉末。
【0014】
5.TPE粉末の平均粒径D50が、20~800μm、好ましくは30~600μmの範囲である、項目1から4のいずれか一項に記載のTPE粉末。
【0015】
6.TPE粉末の嵩密度が、0.15~0.45g/cm3の範囲、好ましくは0.18~0.35g/cm3の範囲、より好ましくは0.18~0.3g/cm3の範囲である、項目1から5のいずれか一項に記載のTPE粉末。
【0016】
7.TPEが、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性コポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリスチレンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性バルカネート(vulcanate)、熱可塑性ポリオレフィン、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、及びこれらの組み合わせから選択される、項目1から6のいずれか一項に記載のTPE粉末。
【0017】
8.発泡したTPE材料を粉砕することを含む、項目1から7のいずれか一項に記載のTPE粉末を調製する方法。
【0018】
9.粉砕中の発泡したTPE材料の温度が、TPE材料のTgより少なくとも20℃低い、好ましくは少なくとも40℃低い、項目8に記載の方法。
【0019】
10.発泡したTPE材料が、粉砕前又は粉砕中に液体窒素で処理される、項目8又は9に記載の方法。
【0020】
11.発泡したTPE材料の平均孔径が、20~800μm、好ましくは30~600μmの範囲である、項目8から10のいずれか一項に記載の方法。
【0021】
12.項目1から7のいずれか一項に定義されるTPE粉末と、好ましくはフィラー、流動化剤、強化添加剤及び顔料から選択される少なくとも1種の助剤とを含む、粉末組成物。
【0022】
13.発泡したTPE材料の粉砕前、粉砕中、及び/又は粉砕後に、好ましくはフィラー、流動化剤、強化添加剤及び顔料から選択される少なくとも1種の助剤を添加することを含む、項目12に記載の粉末組成物を調製する方法。
【0023】
14.レイヤーバイレイヤープロセスによる3D成形品を調製する方法であって、項目1から7のいずれか一項に定義されるTPE粉末、又は項目12に定義されるか、又は項目13で調製される粉末組成物を選択的に結合することを含む、方法。
【0024】
15.前記3D成形品が、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、nが2以上である、項目14に記載の方法。
【0025】
16.前記特性が、密度、ショアA硬度、反発弾性及びそれらの組み合わせから選択されるか、又は密度、ヤング率、引張強度、破断伸び、反発弾性、ショアA硬度及びそれらの組み合わせから選択される、項目15に記載の方法。
【0026】
17.前記3D成形品が、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、それらのうちの2個の領域が、以下の条件:
(i)前記2個の領域の密度が、少なくとも0.05g/cm3、好ましくは少なくとも0.1g/cm3、より好ましくは少なくとも0.15g/cm3、特に少なくとも0.2g/cm3異なること;
(ii)前記2個の領域の反発弾性が、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、特に少なくとも3%異なること;
(iii)前記2個の領域間のショアA硬度の差が、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、特に少なくとも30であること
のうちの少なくとも1つを満たす、項目15又は16に記載の方法。
【0027】
18.選択的に結合することが、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、又はマイクロ波プロセスを含む、項目14から17のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
19.少なくとも1つの異なる特性を有する前記n個の領域が、プロセスパラメータ、好ましくは印刷パラメータを調整することによって形成され、より好ましくは、前記印刷パラメータが、レーザー出力密度、スキャン数、印刷温度、及びそれらの組み合わせから選択される、項目15から18のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
20.前記n個の領域が異なる密度を有し、印刷パラメータが以下の条件:
(iv)より高い密度を有する領域を形成するためのレーザー出力密度が、より低い密度を有する領域を形成するためのレーザー出力密度よりも高いこと
を満たし、
及び/又は
前記n個の領域が異なる反発弾性を有し、印刷パラメータが以下の条件:
(v)より高い反発弾性を有する領域を形成するためのレーザー出力密度が、より低い反発弾性を有する領域を形成するためのレーザー出力密度よりも高いこと
を満たす、項目19に記載の方法。
【0030】
21.少なくとも1つの異なる特性を有する前記n個の領域が、同じ材料から形成される、項目15から20のいずれか一項に記載の方法。
【0031】
22.項目1から6のいずれか一項に記載のTPE粉末から、又は項目14から21のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、3D成形品。
【0032】
23.前記3D成形品が、靴底、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋及びシールを含む、項目22に記載の3D成形品。
【0033】
本発明によれば、本発明による粉末及び方法によって、低い密度、高い反発弾性及び良好な機械的特性を有する3D成形品、特に、異なる特性を有する複数の領域を含む3D成形品を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、膨張したTPUペレット及びTPU粉末の写真を示しており、ここで、
図1(a)は膨張したTPUペレットを示し、
図1(b)はTPU粉末を示している。
【
図3】
図3は、実施例3の3D印刷部品の写真を示す。
【
図4】
図4は、実施例3の3D印刷部品のSEM画像を示す。
【
図5】
図5(a)は、実施例4の3D印刷部品の写真を示す。
図5(b)は、
図5(a)に描かれた印刷部品の切断線A-Aに沿った断面の一部の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
未定義の冠詞「a」、「an」、「the」は、当該冠詞に続く用語によって指定される1つ以上の種を意味する。
【0036】
本開示の文脈では、特徴について言及された任意の具体的な値(端点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して、新たな範囲を形成することができる。
【0037】
本発明の一態様は、熱可塑性エラストマー(TPE)粉末に向けられており、ここで、TPE粉末の平均粒径D50が10μm~1mmの範囲であり、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方、好ましくは両方が0.6以下である。
【0038】
TPE粉末
本発明によれば、TPE粉末の平均粒径D50は、10μm~1mmの範囲、例えば、10μm、20μm、50μm、80μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm又は1mm、好ましくは10~800μm、10~600μm、10~400μm、10μm~250μm、又は20~800μm、20~600μm、20~400μm、20~250μm、又は30~800μm、30~600μm、30~400μm、30~250μm、又は40~800μm、40~600μm、40~400μm、40~250μm、又は50~800μm、50~600μm、50~400μm、50~250μmであることができる。
【0039】
平均粒径D50は、ISO 13320-1に従って試験することができる。
【0040】
本発明によれば、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方、好ましくは両方が0.6以下である。球形度A及び球形度Bの計算は、以下の式に従う:
式1:球形度A=粉末の体積相当球体の表面積/粉末の表面積、
式2:球形度B=粉末の体積相当球体の半径/粉末の外接球体の半径。
【0041】
本発明によれば、本開示で使用される「平均球形度」という用語は、数平均球形度を意味する。
【0042】
本発明によれば、粉末の体積相当球体の半径は、TPE粉末の実際の体積に等しい体積を有する球体の半径である。
【0043】
粉末の体積相当球体の表面積は、以下のように計算できる:4×π×(粉末の体積相当球体の半径)2。
【0044】
粉末の外接球体に関して、粉末の外接球体の直径は、粉末の最長寸法、すなわち粉末の最も遠い2点間の直線距離である。
【0045】
実施形態において、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方、好ましくは両方が0.55以下、例えば0.5、0.45、0.4、0.35又は0.3、好ましくは0.5以下である。
【0046】
実施形態において、TPE粉末の平均球形度Aは0.55以下、好ましくは0.5以下、0.45以下、又は0.4以下であり、及び/又はTPE粉末の平均球形度Bは0.5以下、好ましくは0.4以下、0.35以下、又は0.3以下である。
【0047】
通常、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方、好ましくは両方は、0.05超、0.08超、又は0.1超である。好ましい実施形態において、TPE粉末の平均球形度A及び平均球形度Bの少なくとも一方、好ましくは両方は、0.6~0.05、好ましくは0.55~0.08、又は0.5~0.1、又は0.45~0.1の範囲である。
【0048】
粉末の球形度はZeiss Xradia 610 Micro CTで測定することができる。X線源:50.13(kV)、4W。具体的には、Micro CTスキャンにより、0.7μm3のボクセルサイズを有するサンプルのスライスを約1000枚作成する。機械学習モデル(ランダムフォレストモデル)を学習させて、スライスをポリマー相と空気相にセグメント化した。ポリマー相のセグメント化結果に3D局所厚み計算を適用した。局所厚み計算の結果に10ボクセルの閾値を設定して、粒子体積のセグメント化を生成した。各粒子の3D体積(すなわち、粉末の実際の体積)、粉末の表面積、境界(すなわち、粉末の外接球体の直径)は、オープンソースのPorespyパッケージによって計算された。粉末の球形度Aと球形度Bは、以下の式に基づいて計算した:
式1:球形度A=粉末の体積相当球体の表面積/粉末の表面積、
式2:球形度B=粉末の体積相当球体の半径/粉末の外接球体の半径。
【0049】
実施形態において、TPE粉末の嵩密度は1g/cm3以下、例えば0.01g/cm3、0.05g/cm3、0.1g/cm3、0.15g/cm3、0.2g/cm3、0.3g/cm3、0.4g/cm3、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3、0.8g/cm3、0.9g/cm3、又は1g/cm3、好ましくは0.8g/cm3以下、又は0.6g/cm3以下、又は0.5g/cm3以下である。実施形態において、TPE粉末の嵩密度は、0.01g/cm3~1g/cm3、0.05g/cm3~0.9g/cm3、0.05g/cm3~0.7g/cm3、0.05g/cm3~0.65g/cm3、又は0.1g/cm3~0.6g/cm3の範囲であることができる。
【0050】
TPE粉末の嵩密度は、ISO1068に従って試験することができる。
【0051】
本明細書で使用される熱可塑性エラストマー(TPE)はよく知られている。一般に使用されるTPEは、(i)ポリマーブロック(通常、「硬質」ブロック又はAブロックと呼ばれる)及び(ii)非晶質ポリマーブロック(通常、「軟質」ブロック又はBブロックと呼ばれる)を含有する。各軟質ブロックは、少なくとも2つの硬質ブロックと連結している。硬質ブロックの溶融又は軟化は、ポリマー鎖の粘性流動を可能にし、熱可塑性挙動をもたらす。
【0052】
TPEは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(TPC)、熱可塑性スチレンエラストマー(TPS)、ポリエーテルブロックアミド(PBA)、熱可塑性バルカネート(TPV)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、及びこれらの組み合わせから選択され、好ましくは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、ポリエーテルブロックアミド(PBA)、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0053】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU):
TPU及びその製造方法はよく知られている。例えば、TPUは、(d)触媒及び/又は(e)従来の助剤及び/又は従来の添加剤の存在下で、(a)イソシアネートを、(b)イソシアネートに対して反応性であり、500~10000のモル質量を有する化合物、及び必要に応じて、5(c)0~499のモル質量を有する鎖延長剤と反応させることによって製造することができる。
【0054】
成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の化合物、(c)鎖延長剤は、個別に又は集合的に形成成分と呼ばれる。触媒及び/又は慣用の助剤及び/又は添加剤を含む形成成分は、出発材料とも呼ばれる。
【0055】
TPUの硬化及びメルトインデックスを調整するために、使用される形成成分(b)及び(c)の量のモル比を変えることができる。
【0056】
より軟質の熱可塑性ポリウレタン、例えば95未満、好ましくは70~95のショアA硬度を有するポリウレタンを製造するためには、ポリヒドロキシル化合物(b)とも呼ばれる本質的に二官能性のポリオール(b)と鎖延長剤(c)を、有利に1:1~1:5、好ましくは1:1.5~1:4.5のモル比で使用し、その結果、得られる形成成分(b)と(c)の混合物が200超、特に230~450のヒドロキシル当量を有することが好ましい。一方、より硬いTPU、例えば98超、好ましくは55ショアD~75ショアDのショアA硬度を有するTPUを製造するためには、(b):(c)のモル比は1:5.5~1:15、好ましくは1:6~1:12の範囲であり、その結果、得られる(b)と(c)の混合物は110~200、好ましくは120~180のヒドロキシル当量を有する。
【0057】
TPUを調製するために、形成成分(a)、(b)及び好ましい実施形態では(c)は、好ましくは触媒(d)及び任意に助剤及び/又は添加剤(e)の存在下で、ジイソシアネート(a)のNCO基と成分(b)及び(c)のイソシアネート反応性基の合計との当量比が0.95~1.10:1、好ましくは0.98~1.08:1、特に1.0~1.05:1であるような量で反応される。
【0058】
本発明によれば、少なくとも0.1×106g/mol、好ましくは少なくとも0.4×106g/mol、特に0.6×106g/molを超える質量平均分子量を有するTPUを調製することが好ましい。TPUの質量平均分子量の上限は、一般に、加工性及び所望の特性スペクトルによって決定される。TPUの数平均分子量は、好ましくは0.8×106g/mol以下である。TPU及び形成成分(a)及び(b)について上に示した平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定することができる。
【0059】
有機イソシアネート(a)としては、好ましくは脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネート、より好ましくはトリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び/又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、パラフェニレン2,4-ジイソシアネート(PPDI)、テトラメチレンキシレン2,4-ジイソシアネート(TMXDI)、ジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート(H12 MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-及び/又は2,6-ジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタン1,2-ジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートを使用する。
【0060】
イソシアネートとして、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)及びジシクロヘキシルメタン4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート(H12 MDI)を使用することが好ましく、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)が特に好ましい。
【0061】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)としては、500g/mol~8×103g/mol、好ましくは0.7×103g/mol~6.0×103g/mol、特に0.8×103g/mol~4.0×103g/molの範囲の分子量を有するものが好ましい。
【0062】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)は、統計平均で少なくとも1.8個、かつ3.0個以下のZerewitinoff活性水素原子を有し;この数は、イソシアネートに対して反応性である化合物(b)の官能価とも呼ばれ、分子のイソシアネート反応性基の、1個の分子について計算した理論モル量を与える。官能価は、好ましくは1.8~2.6の範囲、より好ましくは1.9~2.2の範囲、特に2である。
【0063】
イソシアネートに対して反応性である化合物は、実質的に直鎖状であり、イソシアネートに対して反応性である1つの物質、又は様々な物質の混合物であり、その混合物は前述の要件を満たす。
【0064】
これらの長鎖化合物は、ポリイソシアネートのイソシアネート基含有量に基づいて、1当量モル%~80当量モル%のモル割合で使用される。
【0065】
イソシアネートに対して反応性である化合物(b)は、好ましくは、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプト基又はカルボキシル基から選択される反応性基を有する。ヒドロキシル基が好ましい。イソシアネートに対して反応性である化合物(b)は、特に好ましくは、「ポリオール」という用語にまとめられる、ポリエステルオール、ポリエーテルオール及びポリカーボネートジオールからなる群から選択される。
【0066】
ポリエステルジオール、好ましくはポリカプロラクトン、及び/又はポリエーテルポリオール、好ましくはポリエーテルジオール、より好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドをベースとするもの、好ましくはポリプロピレングリコールも好ましい。特に好ましいポリエーテルの1つは、ポリテトラヒドロフラン(PTHF)、特にポリエーテルオールである。
【0067】
以下の群:アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸又はそれらの混合物、及び1,2-エタンジオールと1,4-ブタンジオールの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸又はそれらの混合物、及び1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールの混合物をベースとするコポリエステル、アジピン酸、コハク酸、ペンタン二酸、セバシン酸又はそれらの混合物、及び3-メチルペンタン-1,5-ジオール及び/又はポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン、PTHF)をベースとするポリエステルから選択されるポリオールが特に好ましい。
【0068】
特に好ましくは、アジピン酸、及び1,2-エタンジオールと1,4-ブタンジオールの混合物をベースとするコポリエステル、又はアジピン酸、及び1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールをベースとするコポリエステル、又はアジピン酸及びポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン、PTHF)をベースとするポリエステル、又はそれらの混合物を使用する。
【0069】
非常に特に好ましくは、アジピン酸とポリテトラメチレングリコール(PTHF)をベースとするポリエステル、又はそれらの混合物をポリオールとして使用する。
【0070】
好ましい実施形態において、鎖延長剤(c)が使用され;鎖延長剤(c)は、好ましくは、50g/mol~499g/molの分子量を有し、好ましくは2個のイソシアネート反応性基(官能基とも呼ばれる)を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族及び/又は脂環式化合物である。
【0071】
鎖延長剤(c)は、好ましくは、1,2-エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメタノールシクロヘキサン及びネオペンチルグリコールからなる群から選択される少なくとも1種の鎖延長剤である。1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される鎖延長剤が特に好適である。
【0072】
非常に特に好ましい鎖延長剤は、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及びエタンジオールである。
【0073】
好ましい実施形態において、触媒(d)は、形成成分と共に使用される。これらは、特に、イソシアネート(a)のNCO基と、イソシアネート及び使用される場合には鎖延長剤(c)に対して反応性である化合物(b)のヒドロキシル基との間の反応を促進する触媒である。好ましい触媒は、三級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。別の好ましい実施形態において、触媒は、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは鉄(III)アセチルアセトナート、スズ化合物、好ましくはカルボン酸のもの、特に好ましくはスズジアセテート、スズジオクトエート、スズジラウレート又はジアルキルスズ塩、より好ましくはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、又はカルボン酸のビスマス塩、好ましくはビスマスデカノエートである。
【0074】
特に好ましい触媒は、スズジオクトエート、ビスマスデカノエート、チタン酸エステルである。触媒(d)は、好ましくはイソシアネート反応性化合物(b)の100質量部に対して0.0001~0.1質量部、0.001~0.05質量部の量で使用される。
【0075】
触媒(d)とは別に、慣用の助剤(e)を形成成分(a)~(c)に添加することもできる。例として、表面活性物質、フィラー、難燃剤、核剤、酸化防止剤、滑剤及び離型剤、染料及び顔料、任意に、好ましくは加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、無機及び/又は有機フィラー、強化剤及び/又は可塑剤を挙げることができる。
【0076】
熱可塑性ポリエステルエラストマー:
TPEは代わりに、TPCとしても知られる熱可塑性ポリエステルエラストマーであってもよい。熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリエステルセグメント及びポリエーテルセグメントを含む。ポリエステルセグメントは、ジカルボン酸及びその誘導体(例えばテレフタレート)とジオール(例えばブタンジオール)との反応によって製造することができる。ポリエーテルセグメントは、ポリアルキレン(エーテル)グリコール又はポリオールを含むことができる。
【0077】
ポリエステルセグメントは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を含むことができる。実施形態において、ポリエステルセグメントは、3000ダルトン~9000ダルトンのセグメント分子量を有する。実施形態において、ポリエステルセグメントは、5000ダルトン~7000ダルトンのセグメント分子量を有する。
【0078】
ポリエーテルセグメントは、長鎖ポリオールを含む。実施形態において、ポリエーテルセグメントは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリプロピレンエーテルグリコール(PPEG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG又はPTHF)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びそれらの組み合わせを含む。実施形態において、ポリエーテルセグメントは、200ダルトン~4000ダルトンのセグメント分子量を有する。実施形態において、ポリエーテルセグメントは、1000ダルトン~3000ダルトンのセグメント分子量を有する。
【0079】
実施形態において、熱可塑性ポリエステルエラストマーは、ポリテトラメチレンエーテルテレフタレートの軟質セグメント及びポリブチレンテレフタレートの硬質セグメントを含む。熱可塑性ポリエステルエラストマーは市販されており、非限定的な例としては、HYTREL(DuPont Company、Wilmington、Del.)、ARNITEL(DSM Engineering Plastics、Evansville、Ind.)、及びPELPRENE(Toyobo Co.,大阪,日本)という商品名で入手可能である。
【0080】
熱可塑性ポリスチレンエラストマー:
TPEは代わりに、TPSとしても知られる熱可塑性ポリスチレンエラストマーであってもよい。熱可塑性ポリスチレンエラストマーは通常、A-B-Aタイプのブロック構造(ここで、Aは硬質相であり、Bはエラストマーである)をベースとするものである。通常、熱可塑性ポリスチレンエラストマーは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン単位又はそれらの組み合わせを含む。実施形態において、熱可塑性ポリスチレンエラストマーは、スチレンエチレンブチレンスチレンブロックコポリマーである。実施形態において、熱可塑性ポリスチレンエラストマーは、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-エチレン-コ-ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)、それらの任意のコポリマー、及びそれらの任意のブレンドである。熱可塑性ポリスチレンエラストマーの非限定的な例としては、Kraton D及びKraton Gが挙げられる。
【0081】
熱可塑性加硫エラストマー:
TPEは代わりに、TPVとしても知られる熱可塑性バルカネートエラストマーであってもよい。熱可塑性バルカネートエラストマーの非限定的な例としては、ExxonMobilからのSantopreneが挙げられる。
【0082】
ポリエーテルブロックアミド
熱可塑性エラストマーは代わりに、PBAとしても知られるポリエーテルブロックアミドであってもよい。好適なPBAは、環状ラクタムをジカルボン酸及びジアミンと共重合してカルボン酸官能性ポリアミドブロックを調製し、次いでポリエーテルジオール(ポリオキシアルキレングリコール)と反応させることによって得られる。
【0083】
環状ラクタムは、ε-カプロラクタム、ピロリドン、ω-ラウロラクタム、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0084】
ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はそのエステル;脂肪族ジカルボン酸、例えば、飽和ジカルボン酸としてシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及びデカンジカルボン酸、並びに不飽和脂肪族ジカルボン酸としてマレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸及びテトラヒドロテレフタル酸を含むことができる。
【0085】
ジアミンは、一般式H2N-R”-NH2(式中、R”は芳香族及び脂肪族のものである)を有することができる。R”は2~30個、好ましくは2~20個又は2~16個の炭素原子を有してもよい。ジアミンは、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、又はデカメチレンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、m-キシリレンジアミン、及びそれらの組み合わせを含むことができる。
【0086】
ポリエーテルジオールは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)又はポリプロピレンエーテルグリコール(PPEG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG又はPTHF)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びそれらの組み合わせを含むことができる。重合は、例えば180℃~300℃の温度で行うことができる。ポリエーテルブロックアミドの非限定的な例としては、EvonikからのVestamid Eが挙げられる。
【0087】
熱可塑性ポリオレフィンエラストマー:
熱可塑性エラストマーは代わりに、TPOとしても知られる熱可塑性ポリオレフィンエラストマーであってもよい。熱可塑性ポリオレフィンエラストマーの非限定的な例としては、DowからのEngageが挙げられる。
【0088】
TPE粉末の調製方法
さらなる態様において、本発明は、本発明によるTPE粉末を調製する方法に関し、この方法は、発泡したTPE材料を粉砕することを含む。
【0089】
好ましい実施形態によれば、粉砕中の発泡したTPE材料の温度は、TPE材料のTgより少なくとも20℃(例えば20℃、40℃、60℃、80℃、又は100℃)、好ましくは少なくとも40℃又は少なくとも60℃低い。
【0090】
実施形態において、発泡したTPE材料は、粉砕前又は粉砕中に液体窒素で処理される。当業者は、発泡したTPE材料が十分に冷却される限り、液体窒素によって発泡したTPE材料を処理する時間を決定することができる。
【0091】
本発明によれば、方法は、粉砕した材料をふるい分けることをさらに含むことができる。目標の粒径を有するTPE粉末は、ふるい分けによって得ることができる。
【0092】
本発明によれば、発泡したTPE材料を粉砕前に破砕して、10cm未満、好ましくは5cm未満の平均粒径を有する小粒子を得ることができる。
【0093】
本発明によれば、TPE粉末は発泡したTPE材料に由来する。TPEは上記のようなものである。
【0094】
発泡させるためには、発泡剤を使用することが可能である。好適な発泡剤は、例えば低沸点液体である。有機ポリイソシアネートに対して不活性であり、好ましくは200℃未満の沸点を有する液体が好適である。
【0095】
好ましくは使用されるそのような液体の例としては、ハロゲン化、好ましくはフッ素化炭化水素、例えばメチレンクロリド及びジクロロモノフルオロメタン、過フッ素化又は部分フッ素化炭化水素、好ましくはトリフルオロメタン、ジフルオロメタン、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン及びヘプタフルオロプロパン、炭化水素、好ましくはn-ブタン及びイソブタン、n-ペンタン及びイソペンタン、及びこれらの炭化水素の工業的混合物、プロパン、プロピレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロブタン、シクロペンタン及びシクロヘキサン、ジアルキルエーテル、好ましくはジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びフラン、カルボン酸エステル、好ましくはギ酸メチル及びエチル、ケトン、好ましくはアセトン、及び/又はフッ素化及び/又は過フッ素化の、三級アルキルアミン、好ましくはペルフルオロジメチルイソプロピルアミンが挙げられる。これらの低沸点液体同士の混合物及び/又は他の置換又は非置換炭化水素との混合物も使用できる。
【0096】
発泡剤の量は、TPEの総質量に基づいて、一般に1質量%~15質量%、好ましくは2質量%~11質量%の範囲であることができる。
【0097】
液体発泡剤は、出発材料に対する不活性度に応じて、TPE、特にTPUの調製のできるだけ早い段階で組み込むことができる。しかし、TPEをすぐに膨張させないためには、TPEが固化して発泡剤を保持するまで、反圧を加えなければならない。
【0098】
別の好ましい実施形態では、完成したTPEを発泡剤と接触させる。
【0099】
原則として、発泡したTPE材料は、膨張可能なTPE材料と蒸気又は熱風を用いた圧力予備発泡機での発泡によって、直接又は間接的に懸濁プロセス又は押出プロセスで製造することができる。
【0100】
懸濁プロセスでは、ペレット状のTPEを水、懸濁剤、及び発泡剤とともに密閉反応器内でペレットの軟化点を超える温度に加熱する。これにより、ポリマーペレットは発泡剤によって含浸される。その後、熱い懸濁液を冷却し、発泡剤を含有させて粒子を固化させるか、反応器を減圧することが可能である。このようにして得られた発泡剤を含む(膨張可能な)微小球は、加熱により発泡し、膨張微小球が得られる。別の方法として、冷却せずに熱い懸濁液を突然減圧すること(爆発-膨張プロセス)も可能であり、この場合、発泡剤を含む軟化した微小球は直ちに発泡して膨張した微小球が得られる。
【0101】
押出プロセスでは、TPEを押出機内で溶融させながら、押出機に導入される発泡剤と混合する。あるいは、発泡剤を含む混合物を押出し、TPEペレットが発泡(膨張)しないような圧力と温度の条件下でペレット化し、この目的のために使用される方法の例は、2バール超の水圧で操作される水中ペレット化である。これにより、発泡剤を含む膨張可能な微小球が得られ、その後の加熱により発泡して膨張微小球が得られる。あるいは、混合物を大気圧で押出し、ペレット化することもできる。このプロセスでは、溶融押出物は発泡し、ペレット化によって得られる生成物は膨張した微小球である。
【0102】
TPEは、市販のペレット、粉末、顆粒の形態、又はその他の任意の形態で使用することができる。ペレットを使用するのが有利である。好適な形態の例としては、好ましい平均直径が0.2~10mm、特に0.5~5mmのミニペレットが知られている。これらの主に円筒形又は円形のミニペレットは、TPE及び必要に応じて他の添加剤を押出し、押出機から排出し、必要に応じて冷却し、ペレット化することによって製造される。円筒形のミニペレットの場合、長さは好ましくは0.2~10mm、特に0.5~5mmである。ペレットはラメラ形状を有することもできる。発泡剤を含む熱可塑性ポリウレタンの平均直径は、好ましくは0.2~10mmである。
【0103】
使用されるプロセスの機能として、好ましい発泡剤は、適切であれば変えることができる。懸濁プロセスの場合、使用される発泡剤は、好ましくは有機液体又は無機ガス、又はそれらの混合物を含む。使用できる液体はハロゲン化炭化水素を含むが、飽和脂肪族炭化水素、特に3~8個の炭素原子を有するものが好ましい。好適な無機ガスは、窒素、空気、アンモニア、又は二酸化炭素である。
【0104】
押出プロセスによる製造において、使用される発泡剤は、好ましくは、1013ミリバールの大気圧における沸点が-25~150℃、特に-10~125℃である揮発性有機化合物を含む。炭化水素(好ましくはハロゲンを含まない)、特にC4~10-アルカン、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンの異性体、特に好ましくはsec-ペンタンが良好な適合性を有する。他の好適な発泡剤は、より嵩高い化合物であり、その例としては、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、有機カーボネートが挙げられる。
【0105】
ハロゲン化炭化水素を使用することも可能であるが、発泡剤は好ましくはハロゲンを含まない。しかし、発泡剤混合物中の非常に少量のハロゲンを含有する発泡剤を排除するものではない。もちろん、前述の発泡剤の混合物を使用することも可能である。
【0106】
発泡剤の量は、使用するTPEの100質量部に基づいて、好ましくは0.1~40質量部、特に好ましくは0.5~35質量部、特に好ましくは1~30質量部である。
【0107】
膨張可能なTPE微小球が得られる場合、これを公知の方法で発泡させて膨張したTPE微小球を得ることができる。発泡は、一般に、従来の発泡装置、例えば、通常、熱風又は過熱水蒸気による、発泡性ポリスチレン(EPS)の処理に使用されるタイプの圧力予備発泡機として知られるもので、膨張可能な微小球の加熱によって行われる。微小球が軟化する温度(軟化範囲)、特に好ましくは100~140℃の温度で発泡させることが好ましい。
【0108】
膨張したTPE微小球の平均直径は、通常0.2~20mm、好ましくは0.5~15mm、特に1~12mmの範囲である。非球状、例えば細長い又は円筒状の微小球の場合、直径は最長寸法を意味する。
【0109】
実施形態において、発泡したTPE材料は、膨張したTPE微小球又はペレットである。
【0110】
実施形態において、TPE材料は超臨界流体で発泡される。超臨界流体による発泡は、以下の工程によって行うことができる:
(i)発泡温度でTPE材料を超臨界流体で処理する工程、及び
(ii)工程(i)で得られた処理したTPE材料を発泡させて、発泡したTPE材料を製造する工程。
【0111】
超臨界流体は、二酸化炭素、水、C1~C6-アルカン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、窒素、又はそれらの組み合わせから選択することができ、好ましくは二酸化炭素である。
【0112】
実施形態において、発泡したTPE材料の平均孔径は、20~800μm(例えば、20μm、30μm、50μm、80μm、100μm、150μm、200μm、300μm、500μm、600μm、又は800μm)、好ましくは30~600μm又は40~500μmの範囲である。
【0113】
3D成形品の製造方法
さらなる態様において、本発明は、レイヤーバイレイヤープロセスによって3D成形品を製造する方法に関し、この方法は、本発明のTPE粉末を選択的に結合することを含む。
【0114】
好ましい実施形態において、3D成形品は、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、ここで、nは2以上、例えば2、3、4、5、6、8、10、20、30又は50、好ましくは2~50、2~30、2~10又は2~5の範囲である。本発明による方法により、少なくとも1つの異なる特性を有する複数の領域を含む3D成形品を調製することができる。
【0115】
実施形態において、特性は、密度、ヤング率、引張強度、破断伸び、反発弾性、ショアA硬度及びそれらの組み合わせから選択されるか、又は密度、ショアA硬度、反発弾性及びそれらの組み合わせから選択される。
【0116】
引張強度、破断伸び、ヤング率はISO527-21/A15 2012に従って測定することができる。
【0117】
密度はASTM D792に従って試験することができる。
【0118】
実施形態において、3D成形品は、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、それらのうちの2個の領域が、以下の条件:
(i)前記2個の領域の密度が、少なくとも0.05g/cm3(例えば、0.1g/cm3、0.15g/cm3、0.2g/cm3、0.3g/cm3、0.4g/cm3、0.5g/cm3、0.6g/cm3、0.7g/cm3、又は0.8g/cm3)、好ましくは少なくとも0.1g/cm3、より好ましくは少なくとも0.15g/cm3、特に少なくとも0.2g/cm3異なること;
(ii)前記2個の領域の反発弾性が、少なくとも0.5%(例えば0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%)、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%、特に少なくとも3%異なること;
(iii)前記2個の領域間のショアA硬度の差が、少なくとも5(例えば10、15、20、30、40、50、60、70)、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、特に少なくとも30であること
のうちの少なくとも1つを満たす。
【0119】
実施形態において、前記2個の領域の密度(条件i)は、0.05~0.8g/cm3、好ましくは0.1~0.7g/cm3、より好ましくは0.15~0.6g/cm3、又は0.15~0.5g/cm3異なる。
【0120】
実施形態において、前記2個の領域の反発弾性(条件ii)は、0.5%~10%、好ましくは1%~9%、より好ましくは1.5%~8%、又は2%~7%異なる。本発明によれば、反発弾性はASTM D2632に従って試験することができる。
【0121】
実施形態において、前記2個の領域間のショアA硬度の差は、5~70、好ましくは10~60又は15~50である。本発明によれば、硬度(ショアA)はASTM D2240-15に従って試験することができる。
【0122】
実施形態において、前記2個の領域は、条件(ii)、好ましくは条件(ii)及び(i)、より好ましくは条件(ii)、(i)及び(iii)を満たす。
【0123】
実施形態において、3D成形品は異なる密度を有するn個の領域を含み、n個の領域の密度は順次増加される。実施形態において、密度は、最初の領域から第n個の領域まで、少なくとも0.05g/cm3、好ましくは少なくとも0.08g/cm3、より好ましくは少なくとも0.1g/cm3ずつ順次増加する。
【0124】
本発明の方法において、選択的に結合することは、選択的レーザー焼結、粉末の結合の選択的阻害、マルチジェット融合、高速焼結、3D印刷、又はマイクロ波プロセス、好ましくは3D印刷を含む。
【0125】
実施形態において、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域は、プロセスパラメータ、好ましくは3D印刷におけるような印刷パラメータを調整することによって形成され、より好ましくは、印刷パラメータは、レーザー出力密度、スキャン数、印刷温度、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0126】
実施形態において、3D成形品のn個の領域は異なる密度を有し、印刷パラメータが以下の条件:
(iv)より高い密度を有する領域を形成するためのレーザー出力密度が、より低い密度を有する領域を形成するためのレーザー出力密度よりも高いこと
を満たす。
【0127】
実施形態において、3D成形品のn個の領域は異なる反発弾性を有し、印刷パラメータが以下の条件:
(v)より高い反発弾性を有する領域を形成するためのレーザー出力密度が、より低い反発弾性を有する領域を形成するためのレーザー出力密度よりも高いこと
を満たす。
【0128】
実施形態において、3D成形品のn個の領域は異なる密度を有し、印刷パラメータが条件(iv)を満たし;及び/又は、3D成形品のn個の領域は異なる反発弾性を有し、印刷パラメータが条件(v)を満たす。
【0129】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域は、同じ材料から形成される、すなわち、n個の領域を形成するために使用される材料の組成は同じである。本発明による方法によれば、低い密度、高い反発弾性及び良好な機械的特性を有する3D成形品、特に、同じ材料を使用することにより異なる特性を有する複数の領域を含む3D成形品を調製することができる。
【0130】
実施形態において、TPE粉末は少なくとも1種の助剤とともに使用される。助剤は、フィラー、流動化剤、強化添加剤及び顔料から選択することができる。助剤の詳細は以下に記載する通りである。
【0131】
粉末組成物
本発明のさらなる態様は、本発明によるTPE粉末と少なくとも1つの助剤とを含む粉末組成物に関する。助剤は、フィラー、流動化剤、強化添加剤及び顔料から選択することができる。
【0132】
本発明のさらなる態様は、本発明による粉末組成物を調製する方法に関し、この方法は、発泡したTPE材料の粉砕前、粉砕中、及び/又は粉砕後に、少なくとも1つの助剤を添加することを含む。
【0133】
流動化剤は、シリカ、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、コロイダルシリカ、疎水性シリカ及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0134】
疎水性シリカは、好ましくは、シリカを疎水化剤と反応させることにより得られる。疎水化は、好ましくは、シリカの沈殿又は熱分解の後、シリカの遊離OH基と、例えば、シラン、シラザン又はシロキサンとの実質的な反応によって行われる。好ましい疎水化剤は、ヘキサデシルシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリジメチルシロキサン又はメタクリルシランである。
【0135】
本発明の流動化剤は、5nm~200μmのメジアン粒径を有する。流動化剤の好ましいメジアン粒径は10nm~150μm、特に好ましくは100nm~100μmである。
【0136】
流動化剤は、20~600m2/gの比表面積を有する。好ましくは、流動化剤は、40~550m2/g、特に好ましくは60~500m2/g、より好ましくは60~450m2/gの比表面積を有する。
【0137】
組成物中の流動化剤の量は、組成物の総質量に基づいて、0~5質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.01~2質量%、0.05~5質量%、0.05~3質量%、0.05~2質量%、0.1~5質量%、0.1~3質量%、又は0.1~2質量%であることができる。
【0138】
フィラー及び強化添加剤の例には、ガラス微小球、ガラス繊維、炭素繊維を含むことができる。
【0139】
他の助剤として、好ましい例としては、表面活性物質、核剤、潤滑ワックス、染料、触媒、UV吸収剤及び安定剤、例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤を挙げることができる。加水分解防止剤としては、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。本発明の3D印刷物体を老化及び有害な環境影響に対して安定化させるために、好ましい実施形態では、安定剤がシステムに添加される。
【0140】
本発明の組成物が使用中に熱酸化損傷に曝される場合、好ましい実施形態では酸化防止剤が添加される。フェノール酸化防止剤が好ましい。BASF SEからのIrganox(登録商標)1010のようなフェノール酸化防止剤は、Plastics Additive Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001年,98-107頁,116頁及び121頁に記載されている。
【0141】
本発明の組成物がUV光に曝される場合、好ましくはUV吸収剤でさらに安定化される。UV吸収剤は、一般に、高エネルギーのUV光を吸収してエネルギーを放散する分子として知られている。工業的に採用されている慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001年,116-122頁に見出すことができる。
【0142】
上記の助剤に関する更なる詳細は、専門文献、例えば、Plastics Additive Handbook,第5版,H.Zweifel編,Hanser Publishers,Munich,2001年に見出すことができる。
【0143】
少なくとも1種の助剤の総量は、組成物の総質量に基づいて、0~60質量%、好ましくは0~40質量%、0~20質量%、0~10質量%、0~5質量%、又は0.01~60質量%、0.05~40質量%、0.1~20質量%の範囲とすることができる。
【0144】
3D成形品
さらなる態様において、本発明は、本発明のTPE粉末から、又は本発明の方法によって得られる3D成形品に関する。
【0145】
実施形態によれば、3D成形品には、靴底、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋及びシールが含まれる。
【0146】
本発明の3D成形品は、低い密度、高い反発弾性、及び良好な機械的特性を有する。
【0147】
好ましい実施形態において、3D成形品は、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域を含み、ここで、nは2以上である。このような3D成形品の詳細は、3D成形品の調製方法に関する上記の説明を参照することができる。
【0148】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの異なる特性を有するn個の領域は、同じ材料から形成される。
【実施例】
【0149】
材料
- BASFからの膨張したTPU 130Uペレット:BASFの市販品:Infinergy X1125-130 U、ペレットの嵩密度は0.12~0.14g/cm3であり、ペレットの平均質量は26mgであり、平均孔径は130μmである。
【0150】
- TPU 88A:BASFからの3D印刷のためのUltrasint TPU 88A粉末。TPU 88A粉末は、TPUペレットを粉砕することにより調製した。TPU 88Aの嵩密度:0.6g/cm3、TPU 88Aの平均粒径D50:80μm。Ultrasint TPU 88A粉末の平均球形度Aは0.67であり、Ultrasint TPU 88A粉末の平均球形度Bは0.68である。
【0151】
- 流動化剤:WackerからのHDKN20非晶質スシリカ(BET:175~225m2/g)。
【0152】
方法
- すべてのサンプル(印刷した部品)はFarsoon HT251 SLS 3Dプリンターで印刷した。
【0153】
- 引張強度及び破断伸びは、Zwick Z050を用い、6mm/分の速度で測定した(ISO527-21/A15 2012に準拠)。
【0154】
- 反発弾性はASTM D2632に従って試験した。
【0155】
- 硬度はASTM D2240-15に従って、ASKER DUROMETER(タイプA)を用いて決定した。
【0156】
- TPU粉末の嵩密度はISO1068に従って試験した。
【0157】
- 密度はASTM D792に従って調査した。
【0158】
- 粉末の平均粒径D50は、ISO 13320-1に従って、Beckerman Coulter LS 13 320レーザー回折式粒径分析装置で試験した。
【0159】
- 粉末の3D形態情報は、Zeiss Xradia 610 Micro CTで測定した。X線源:50.13(kV)、4W。具体的には、Micro CTスキャンにより、0.7μm3のボクセルサイズを有するサンプルのスライスを約1000枚作成する。機械学習モデル(ランダムフォレストモデル)を学習させて、スライスをポリマー相と空気相にセグメント化した。ポリマー相のセグメント化結果に3D局所厚み計算を適用した。局所厚み計算の結果に10ボクセルの閾値を設定して、粒子体積のセグメント化を生成した。各粒子の3D体積(すなわち、粉末の実際の体積)、粉末の表面積、境界(すなわち、粉末の外接球体の直径)は、オープンソースのPorespyパッケージによって計算した。粉末の球形度Aと球形度Bは、以下の式に基づいて計算した:
式1:球形度A=粉末の体積相当球体の表面積/粉末の表面積、
式2:球形度B=粉末の体積相当球体の半径/粉末の外接球体の半径。
【0160】
実施例1:TPU粉末の調製
膨張したTPU 130Uペレットを粉砕することにより、TPU粉末を調製した。-196℃及び100m/sの粉砕速度(線速度)の条件下で極低温粉砕して所要のサイズにふるいにかけることにより、TPU粉末を調製した。粉末の平均粒径D50は160μmであり、嵩密度は0.18g/cm3であった。
【0161】
膨張したTPUペレットと得られたTPU粉末の写真をそれぞれ
図1(a)と
図1(b)に示している。TPU粉末のSEM画像を
図2に示している。SEM画像からわかるように、TPU粉末は表面に凹凸があった。TPU粉末の平均球形度Aは0.33であった。TPU粉末の平均球形度Bは0.17であった。
【0162】
実施例2a、2b、2c、2d
実施例1で得られたTPU粉末を実施例2a、2b、2c及び2dで使用した。実施例2a~2dにおける粉末組成物は、表1に示す成分の粉末をブレンドすることにより調製した。ブレンド実験は、Dongguan Huanxin Machinery Co.,Ltd.からのHTS-5高速ミキサーで行った。粉末を1400rpmで60秒間混合し、粉末組成物を得た。
【0163】
得られた粉末組成物を、Farsoon社製のHT251選択的レーザー焼結3Dプリンターで印刷した。典型的な印刷プロセスでは、粉末組成物をプリンターの供給チャンバーに装填した。詳細な印刷パラメータを表2に示している。
【0164】
後処理プロセス:印刷プロセスが完了し、印刷された部品を冷却すると、ビルドチャンバーをプリンターから取り外して、洗浄ステーションに移し、印刷された部品を余分な粉末から分離して、最終的な3D印刷部品を得た。
【0165】
印刷部品の引張強度、破断伸び、硬度、反発弾性及び密度も表1にまとめた。
【0166】
【0167】
このように、本発明による粉末は、低い密度、高い反発弾性及び良好な機械的特性を有する3D印刷部品を調製することを可能にする。さらに、3D印刷部品の特性は、以下の表2に示すように、印刷パラメータを変更することによって容易に調整することができる。
【0168】
【0169】
実施例3:複数の領域を有する3D印刷部品
実施例3では、複数の領域、すなわち上層と下層を有する3D印刷部品を調製した。実施例3では、実施例1で得られたTPU粉末を使用した。実施例3における粉末組成物は、表3に示す成分の粉末をブレンドすることにより調製した。ブレンド実験は、Dongguan Huanxin Machinery Co.,Ltd.からのHTS-5高速ミキサーで行った。粉末を1400rpmで60秒間混合し、粉末組成物を得た。
【0170】
得られた粉末組成物をHT251選択的レーザー焼結3Dプリンターで印刷し、上層と下層を有する3D印刷部品を調製した。典型的な印刷プロセスでは、粉末組成物をプリンターの供給チャンバーに装填した。詳細な印刷パラメータを表3に示している。
【0171】
後処理プロセス:印刷プロセスが完了し、印刷された部品を冷却すると、ビルドチャンバーをプリンターから取り外して、洗浄ステーションに移し、印刷された部品を余分な粉末から分離して、最終的な3D印刷部品を得た。
【0172】
3D印刷部品の上層と下層の硬度と反発弾性を表3にまとめた。実施例3の3D印刷部品の写真を
図3に示す。実施例3の3D印刷部品のSEM画像を
図4に示す。
【0173】
【0174】
このように、同じ材料を用いても、異なる特性を有する複数の領域を含む3D印刷の調製に成功している。
【0175】
実施例4:複数の領域を有する3D印刷部品
実施例4では、複数の領域、すなわち
図5(b)に示すように明色領域と暗色領域を有する3D印刷部品を調製した。実施例4では、実施例1で得られたTPU粉末を使用した。実施例4における粉末組成物は、表4に示す成分の粉末をブレンドすることにより調製した。ブレンド実験は、Dongguan Huanxin Machinery Co.,Ltd.からのHTS-5高速ミキサーで行った。粉末を1400rpmで60秒間混合し、粉末組成物を得た。
【0176】
得られた粉末組成物をHT251選択的レーザー焼結3Dプリンターで印刷し、異なる領域を有する3D印刷部品を調製した。典型的な印刷プロセスでは、粉末組成物をプリンターの供給チャンバーに装填した。詳細な印刷パラメータを表4に示している。
【0177】
後処理プロセス:印刷プロセスが完了し、印刷された部品を冷却すると、ビルドチャンバーをプリンターから取り外して、洗浄ステーションに移し、印刷された部品を余分な粉末から分離して、最終的な3D印刷部品を得た。
【0178】
実施例4の3D印刷部品の写真を
図5(a)に示している。
図5(b)は、
図5(a)に描かれた印刷部品の切断線A-Aに沿った断面の一部の顕微鏡写真を示している。
【0179】
【0180】
このように、同じ材料を用いても、複数の領域を含む3D印刷部品の調製に成功している。
【国際調査報告】