(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス用の測定システム、そのような測定システムを有する薬物送達デバイス、並びに薬物送達デバイスの吐出用量及び/又は設定用量を測定する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20241008BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20241008BHJP
G01F 13/00 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
A61M5/315 550P
A61M5/24
G01F13/00 331R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518315
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022076299
(87)【国際公開番号】W WO2023046804
(87)【国際公開日】2023-03-30
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ヘスター・ジェーン・コーン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・リチャード・ドレイパー
(72)【発明者】
【氏名】アントニー・ポール・モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・スミス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066FF05
4C066QQ54
4C066QQ82
(57)【要約】
薬物送達デバイス用の測定システム、そのような測定システムを有する薬物送達デバイス、並びに薬物送達デバイスの吐出用量及び/又は設定用量を測定する方法。薬物送達デバイス用の測定システム、そのようなシステムを含む薬物送達デバイス、及び関連する方法を提案し、測定システムは、- 用量吐出操作及び/又は用量設定操作に従い、例えば、薬物送達デバイスのハウジングに対して移動するように構成された用量制御部材と、- 用量制御部材の位置を断続的に観察し、それぞれ少なくとも4つの異なるデータ値のうちの1つに対応する信号を、用量制御部材の位置及び/又は向きに応じて生成するように構成されたセンサユニットと、- センサユニットの信号を受信し、受信した信号に応じて用量関連カウントを適合させ、受信した信号のうちの連続する2つが、異なるデータ値の所定の繰り返しシーケンスにおいて隣接するデータ値に対応するかどうかを決定するように構成された電子処理ユニットと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(20)用の測定システムであって、
- 用量吐出操作及び/又は用量設定操作に従い、例えば、前記薬物送達デバイス(20)のハウジング(22)に対して移動するように構成された用量制御部材(11)と、
- 前記用量制御部材(11)の位置を断続的に観察するためのセンサユニット(14)であって、前記センサユニットは、信号を生成するように構成されており、各信号は、前記用量制御部材(11)の位置に応じて、少なくとも4つの異なるデータ値(A、B、C又はD)のうちの1つに対応する、センサユニット(14)と、
- 前記センサユニット(14)の前記信号を受信し、前記受信した信号に応じて用量関連カウントを適合させ、前記受信した信号のうちの連続する2つが、前記異なるデータ値(A、B、C及びD)の所定の繰り返しシーケンスにおいて隣接するデータ値に対応するかどうかを決定するように構成された電子処理ユニット(12)と、
を含む、測定システム。
【請求項2】
前記用量制御部材(11)及び前記センサユニット(14)は、前記センサユニット(14)が前記用量制御部材(11)を連続的に観察し、前記用量制御部材(11)が、前記送達又は設定用量を増加させるために方向(R)に一方向に移動すると、前記所定の繰り返しシーケンスが生成されるように構成されている、請求項1に記載の測定システム。
【請求項3】
前記電子処理ユニット(12)は、前記2つの連続する信号及び前記所定の繰り返しシーケンスに基づいて、前記用量制御部材(11)の移動方向を決定するように構成されている、請求項1又は2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記電子処理ユニット(12)は、前記2つの連続する信号が、異なる信号の前記繰り返しシーケンスにおいて隣接するデータ値に対応しない場合、前記センサユニット(14)のサンプルレートを増加させるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項5】
前記2つの連続する信号は、第1のデータ値(A、B、C、D)に対応する先行信号と、第2のデータ値(A、B、C、D)に対応する後行信号とを含み、前記2つの連続する信号が、前記繰り返しシーケンスにおいて隣接するものに対応しない場合、前記電子処理ユニット(12)は、前記繰り返しシーケンスに沿った順方向における前記第1のデータ値(A、B、C、D)から前記第2のデータ値(A、B、C、D)までの第1の距離を決定し、前記繰り返しシーケンスに沿った逆方向における前記第1のデータ値(A、B、C、D)から前記第2のデータ値(A、B、C、D)までの第2の距離を決定するように構成されており、前記電子処理ユニット(12)は、前記第2の距離が特定の値よりも大きい、例えば1よりも大きい場合、前記第1の距離に関連する前記用量関連カウントを増加させるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項6】
前記送達又は設定用量を増加させるための、前記方向(R)とは反対の、前記ハウジング(22)に対する前記用量制御部材(11)の移動は、少なくとも妨げられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項7】
前記用量制御部材(11)は、回転するように構成されており、前記センサユニット(14)は、前記用量制御部材(11)の角度位置に応じて、前記異なるデータ値(A、B、C又はD)に対応する前記信号を生成するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項8】
前記所定の繰り返しシーケンスは、グレイコード、例えば2ビットのグレイコードに関連付けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項9】
前記用量制御部材(11)は、一連のセンシング領域(L、H)を含み、隣接するセンシング領域(L、H)は、異なる物理的特性を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項10】
前記センサユニットは、前記用量制御部材(11)を観察する少なくとも2つのセンサ要素(16、18)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の測定システム。
【請求項11】
前記センサ要素(16、18)の少なくとも2つは、少なくともある時には異なるセンシング領域(L、H)を観察し、少なくとも異なる時には同じセンシング領域(L、H)を観察するように配置されている、請求項9又は10に記載の測定システム。
【請求項12】
前記用量制御部材(11)は、リング状部分を含み、前記センシング領域(L、H)は、前記リング状部分の周囲に沿って配置されており、前記センサ要素(16、18)は、前記センサ要素(16、18)の一方が、2つのセンシング領域(L、H)の間の遷移部に向けられているとき、他方のセンサ要素(16、18)は、2つのセンシング領域(L、H)の間の遷移部に向けられず、例えば、別のセンシング領域(L、H)の中央に向けられるように配置されている、請求項11に記載の測定システム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の測定システム(10)を含む、又はそのような測定システムと結合されるように、例えば、取り外し可能に結合されるように構成された薬物送達デバイス。
【請求項14】
薬剤が充填された少なくとも1つの容器(25)、又はそのような容器(25)を受け入れるためのレセプタクル(26)を含む、請求項13に記載の薬物送達デバイス。
【請求項15】
薬物送達デバイス、例えば、請求項13又は14に記載の前記薬物送達デバイス(20)の吐出用量及び/又は設定用量を測定する方法であって、
- 用量吐出操作及び/又は用量設定操作に従い移動する用量制御部材(11)の位置及び/又は向きを断続的に観察することと、
- それぞれ少なくとも4つの異なるデータ値(A、B、C又はD)のうちの1つに対応する信号を、前記用量制御部材(11)の位置及び/又は向きに応じて生成することと、
- 前記生成された信号に応じて用量関連カウントを適合させることと、
- 前記生成された信号のうちの連続する2つが、前記異なるデータ値の所定の繰り返しシーケンスにおいて隣接するデータ値に対応するかどうかを決定することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薬物送達デバイス、特に針ベースの注入デバイス及び/又はペン型注入デバイスは、デバイスから吐出される薬物又は薬剤の量を測定するための機構を有することが知られている。
【0002】
国際公開第2019/101962(A1)号パンフレットは、ロータリーエンコーダを有する薬剤注入デバイスに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、改良された測定システム、例えば、測定、特に薬物送達デバイスの吐出操作において吐出される用量のサイズの測定の信頼性及び/又は精度が向上した測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立請求項の対象によって達成される。有利な実施形態及び改良は、従属請求項の対象である。
【0005】
本開示では、用量吐出操作及び/又は用量設定操作に従い、例えば、薬物送達デバイスのハウジングに対して移動するように構成された用量制御部材を含む、薬物送達デバイス用の測定システム(電子測定システム)が提案される。測定システムは、ハウジングに対する用量制御部材の位置を断続的に観察し、それぞれ少なくとも4つの異なるデータ値のうちの1つに対応する信号を、用量制御部材の位置及び/又は向きに応じて生成するように構成されたセンサユニットを更に含み、測定システムは、センサユニットの信号を受信し、受信した信号に応じて用量関連カウントを適合させ、受信した信号のうちの連続する2つが、異なるデータ値の所定の繰り返しシーケンスにおいて隣接するデータ値に対応するかどうかを決定するように構成された電子処理ユニットを更に含む。
【0006】
本明細書において、用量制御部材が「用量吐出操作に従い移動する」とは、用量制御部材の移動量、例えば直線運動の長さ及び/又は回転角が、薬物吐出操作中に吐出される薬物の量に比例することを意味し得る。薬物送達デバイスは、コンバータユニットを含む駆動ユニットを含み得る。駆動ユニットは、例えば吐出操作を駆動するためのエネルギー貯蔵部を含み得、又はユーザ駆動若しくは手動駆動式であり得る。コンバータユニットは、ユーザによって及び/又はエネルギー貯蔵部から提供されるエネルギーを、薬物送達デバイス内の薬剤及び/又は薬剤容器に作用する圧力に変換し、薬剤を薬物送達デバイスから強制的に出す(薬剤を吐出する)ように構成され得る。コンバータユニットは、シリンジに作用するプランジャを含み得る。或いは、コンバータユニットは、例えば、薬剤チューブ又はバッグに作用するスクイーザを含み得る。用量制御部材は、例えば、用量吐出操作の機能に必須の、駆動ユニットの一体部分であってもよい。或いは、用量制御部材は、少なくとも用量吐出操作中に、駆動ユニットの少なくとも1つの可動部に例えば機械的及び/又は磁気的に結合されてもよい。
【0007】
本明細書において、用量制御部材が「用量設定操作に従い移動する」とは、用量制御部材の移動量、例えば直線運動の長さ及び/又は回転角が、用量設定のサイズに比例することを意味し得る。薬物送達デバイスは、用量設定操作において薬剤の量を選択するための用量ダイヤルユニットを含み得る。駆動ユニットは、用量設定操作において選択された薬剤の量を、用量吐出操作において吐出するように構成され得る。用量制御部材は、例えば、用量設定操作の機能に必須の、用量ダイヤルユニットの一体部分であってもよい。或いは、用量ダイヤル部材は、少なくとも用量吐出操作中に、駆動ユニットの少なくとも1つの可動部に例えば機械的及び/又は磁気的に結合されてもよい。
【0008】
実施形態によっては、測定システムは、単一の用量制御部材と、用量設定操作中又は用量吐出操作中のいずれかにおける用量制御部材の移動を観察するために、その用量制御部材を観察するための単一のセンサユニットとを含み得る。或いは、同じ用量制御部材が、少なくとも用量設定操作中に、例えばクラッチ機構を介してダイヤルユニットに結合されてもよく、少なくとも用量吐出操作中に、例えばクラッチ機構を介して駆動ユニットに結合されてもよい。更なる代替例として、測定システムは、1つが用量設定操作に従って移動し、1つが用量吐出操作に従って移動する2つの用量制御部材を含み得る。両方の操作が観察される場合、設定用量と吐出用量との間の差が検出され得る。
【0009】
用量制御部材の「位置」は、用量制御部材の角度位置及び/又は場所を指す場合がある。薬物送達デバイスは、ハウジングを含み得、ハウジングに対して、用量制御部材の位置が観察される。ハウジングは、薬剤容器を含んでもよく、又は薬剤容器をハウジングに対して所定の位置に保持するように構成され得る。したがって、「ハウジングに対する」位置とは、薬物送達デバイス内の薬剤容器が所定の位置にある(取り付けられている)場合の、そのような容器に対する位置を指すことがある。
【0010】
特定のタスクを実施するように「構成されている」デバイスの部材とは、デバイスの少なくとも1つの動作状態においてそのタスクを実施する部材を指す場合がある。部材は、タスクの実施を可能にするように特別に形成、プログラム及び/又は配置され得る。
【0011】
本明細書における、センサユニットが「断続的に」観察するとは、例えば消費電力を低減するために、センサユニットが連続的に観察しないことを意味する場合がある。センサユニットは、特定の時にのみ起動するように構成され得る。センサユニットは、全く観察しない第1の状態と、センサユニットが既定の間隔、例えば規則的な間隔で観察する第2の状態との間で切り替わるように構成され得る。センサユニットは、例えば少なくとも第2の状態において、特定のサンプルレートで観察するように構成されてもよい。電子処理ユニットは、センサユニットを特定の時に起動及び/又は停止させるように構成されてもよい。電子処理ユニットは、センサユニットが観察する特定のサンプルレートを設定するように構成されてもよい。本明細書において、非アクティブ(アクティブでない)センサユニットとは、センサユニットの少なくとも1つの必須構成要素、例えば増幅器回路及び/若しくはプローブ回路が給電されていないこと、並びに/又はセンサユニット若しくは電子処理ユニットの評価回路が停止されている若しくはセンサ要素からの信号を無視する(評価しない)ことを意味し得る。
【0012】
センサユニットは、被観察要素(用量制御部材)の特定の物理的特性、例えば、反射率、磁化、電気分極(例えば、強誘電性)、距離、色、導電率、又は物理的特性の組み合わせを観察するように構成された少なくとも1つのセンサ要素を含み得る。センサ要素は、電子センサ要素であってもよい。センサ要素は、観察された物理的特性の値に応じて、少なくとも1つの電気的特性、例えば電流、電気抵抗及び/又は電圧を変化させるように構成されてもよい。センサの要素は、デジタルセンサであってもアナログセンサであってもよい。デジタルセンサは、区別され得る2つの状態(即ち、バイナリ1及びバイナリ0、又は白色及び黒色、又はそれ以外の2つの状態の組み合わせ)を有し得る。センサ要素は、加速度計、光センサ、音響センサ、圧力センサ、温度センサ、近接センサ、赤外線センサ、超音波センサ、色センサ、湿度センサ、傾斜センサ、フローセンサ、磁気/ホール効果センサ、放射線センサ、ライダーセンサ、電流センサ、光学センサ、力/トルクセンサ、ひずみゲージ、メカニカルスイッチ等であってもよい。
【0013】
生成される信号は、デジタル信号であってもアナログ信号であってもよい。センサユニットの信号は、センサユニットの1つ以上のセンサ要素の読取り値(信号値)を含み得る。データ値に「対応する」信号とは、例えば、測定誤差及び/又は製造上の不正確さに起因する測定プロセスにおける偏差に適応するために、可能な信号値の範囲が、そのデータ値に関連付けられることを意味し得る。信号は、それらを特定のデータ値と関連付けるために、固有に識別可能であってもよい。単一のセンサ要素の読取り値は、信号値が特定の値を下回る場合は0に、上回る場合は1に関連付けられてもよく、又はその逆もまた然りである。或いは、単一のセンサ要素の可能な読取り値は、2つを超える範囲、例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上の範囲に分割されてもよい。信号値の異なる範囲は、異なるデータ値に関連付けられてもよい。特定のデータ値に関連付けられる範囲は、静的、即ち、予め決定若しくは予めプログラムされてもよく、又は例えばセンサユニット及び/又はセンサユニットに給電するエネルギー源の劣化に対応するために、動的、例えば1つ以上の先行測定に依存してもよい。センサユニットが異なるデータ値に対応する信号を生成するためには、用量制御部材による特定の又は最小量の移動が必要な場合がある。センサユニット及び用量制御部材は、センサユニットによって生成された信号に対応するデータ値が、用量制御部材の等距離の移動(位置の変化)間隔で変化するように構成され得る。
【0014】
電子処理ユニットは、特定の機械可読コード及び/又は特定用途向け集積回路(ASIC)を実行するように構成されたプロセッサユニットを含み得る。電子処理ユニットは、少なくとも用量関連カウントを格納するためのメモリユニットを含み得る。電子処理ユニットは、クロックユニット、例えばリアルタイムクロックを更に含み得る。電子処理ユニットは、センサユニットと電気的に接続され得る。電子処理ユニットは、センサユニットから受信した信号の信号値を対応するデータ値に関連付けるように構成され得る。或いは、センサユニットは、受信した信号の信号値の代わりに、対応するデータ値を直接提供するように構成されてもよい。センサユニットと電子処理ユニットは、共通の集積回路(IC)を共有してもよい。センサユニットは、観察した信号に対応するデータ値を電子処理ユニットのメモリに直接格納するように構成されてもよい。電子処理ユニットは、センサユニットから信号を受信するとスリープ状態になるように構成されてもよく、スリープ状態から復帰した後に、受信した信号を評価するように構成されてもよい。電子処理ユニットは、少なくとも最新データ値をメモリユニットに格納するように構成されてもよい。電子処理ユニットは、スリープ状態から復帰した後に評価された第1のデータ値と、スリープ状態に入る前に評価された最後のデータ値とを比較するように構成されてもよい。電子処理ユニットは、現在の用量設定操作及び/又は用量吐出操作において生成された第1のデータ値と、直前の用量設定操作及び/又は用量吐出操作において生成された最後のデータ値とを比較するように構成されてもよい。
【0015】
電子処理ユニットは、対応するデータ値が同じである場合、連続信号の対を無視するように構成されてもよい。
【0016】
電子処理ユニットは、受信した信号に応じて用量関連カウントを増加及び/又は減少させるように構成されてもよい。用量関連カウントは、現在の用量吐出操作中に吐出される薬剤の量、現在取り付けられている薬剤容器から吐出される薬剤の総量、又は薬物送達デバイス及び/若しくは測定システムの寿命中に吐出される薬剤の総量を表すデータ値であってもよい。電子処理ユニットは、受信した信号に応じて1つより多い用量カウントを適合させるように構成されてもよい。或いは、用量関連カウントは、ユーザが次の用量吐出操作で吐出しようとする、用量設定操作において選択された薬剤の量を表すデータ値であってもよい。更なる代替例として、用量関連カウントは、薬剤容器内に残る薬剤の量を表すものであってもよい。
【0017】
データ値の「繰り返しシーケンス」は、シーケンスのM番目の要素がシーケンスの(M-N)番目の要素と同一であるように、特定の要素数Nの後に繰り返されるシーケンスであり得る。特定の要素数Nは、異なるデータ値の数と同一であってもよい。繰り返しシーケンスは、異なるデータ値のそれぞれを、少なくとも1回、例えば厳密に1回含んでもよい。2つのデータ値は、2つのデータ値のうちの一方が繰り返しシーケンスのn番目のデータ値に等しく、2つのデータ値の他方がn番目+1のデータ値に等しい場合、繰り返しシーケンスにおいて「隣接するもの」である。繰り返しシーケンスは、複数回、例えば少なくとも4回、例えば少なくとも10回、例えば少なくとも20回、例えば無期限に繰り返される基本シーケンスからなってもよい。
【0018】
用量制御部材及びセンサユニットは、センサユニットが例えば非常に高いサンプルレートで用量制御部材を連続的に観察し、用量制御部材が送達若しくは設定用量を増加させるために一方向に移動した場合、又は送達若しくは設定用量の増加に関連付けられた方向に一方向に移動した場合、例えば電子処理ユニットにおいて所定の繰り返しシーケンスが生成されるように構成されてもよい。本明細書では、同じデータ値に対応する連続する信号は、同じ信号と見なされてもよい及び/又は無視されてもよい。
【0019】
更なる実施形態によれば、電子処理ユニットは、少なくとも2つの連続する信号が関連する場合に、2つの連続する信号及び所定の繰り返しシーケンスに基づいて、用量制御部材の移動方向を決定するように構成され得る。2つの連続する信号は、先行信号及び後行信号を含み得る。後行信号は、先行信号の後に生成され得る。先行信号は、第1のデータ値(異なるデータ値の1つ)に対応し得る。後行信号は、第2のデータ値(異なるデータ値の1つ)に対応し得る。電子処理ユニットは、繰り返しシーケンスにおいて第2のデータ値が第1のデータ値の直後に続く場合、2つの信号を、設定用量又は吐出用量を増加させる方向(順方向)に関連付けるように構成され得る。電子処理ユニットは、2つの信号が隣接する信号に対応し、且つ順方向が決定された場合に、用量関連カウントを例えば1だけ増加させるように構成され得る。電子処理ユニットは、繰り返しシーケンスにおいて第1のデータ値が第2のデータ値の直後に続く場合、2つの信号を、設定用量又は吐出用量を減少させる方向(逆方向)に関連付けるように構成され得る。電子処理ユニットは、2つの信号が隣接する信号に対応し、且つ逆方向が決定された場合に、用量関連カウントを例えば1だけ減少させるように構成され得る。更なる実施形態によれば、繰り返しシーケンスは、方向との関連付けも反転されるように、反転させてもよい。例えば、デバイスが逆回転を検出することができ、したがって、それに応じて用量カウントの変化に対応することができるため、用量測定の精度の向上を達成することができる。
【0020】
他の実施形態では、電子処理ユニットは、2つの連続する信号が異なる信号の繰り返しシーケンスにおいて隣接するものに対応しない場合、センサユニットのサンプルレートを増加させるように構成され得る。第1の動作モードでは、用量制御部材の移動が開始したかどうかを検出するだけのために、低いサンプルレートが選択され得る。電子処理ユニットは、用量制御部材が動いていると決定された場合に、第2の動作モードにおいてセンサユニットを高いサンプルレートに切り替えるように構成され得る。高いサンプルレートは、センサユニットが、予想される及び/又は典型的な最大移動レートを下回る少なくとも任意の移動レート(速度及び/又は回転速度)に関する繰り返し配列を再現する対応するデータ信号を取得し得るサンプルレートに関連付けられ得る。好ましい実施形態では、低いサンプルレートは、センサユニットが、予想される及び/又は典型的な最大移動レートを下回る少なくとも任意の移動レート(速度及び/又は回転速度)に関する繰り返し配列の少なくとも毎秒を再現する対応するデータ信号を取得し得るサンプルレートに関連付けられ得る。したがって、電子処理ユニットは、用量制御部材の移動が開始するとすぐにサンプルレートを増加させるように構成され得る。代替的又は追加的に、電子処理ユニットは、第3の動作モードにおいて、センサユニットをより高いサンプルレートに設定するように構成され得る。より高いサンプルレートは、センサユニットが、拡張移動レートを下回る少なくとも任意の移動レート(速度及び/又は回転速度)に関する繰り返し配列を再現する対応するデータ信号を取得し得るサンプルレートに関連付けられ得る。拡張移動レートは、予想される及び/又は典型的な最大移動レートと少なくとも同程度、例えば少なくとも1.3倍、例えば少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも2倍であってもよい。これにより、特に、システムが、加速する移動により、システムが単一の遷移と繰り返し配列の全長の遷移に1つの遷移を加えたものとの間を認識することができない曖昧な状況を防止することができるため、用量検出の精度が向上する可能性がある。
【0021】
繰り返しシーケンスの部分シーケンスは、繰り返しシーケンスにおける第2のデータ値の第1の(初の第1の)発生から、繰り返しシーケンスにおける第2のデータ値の第2の(初の第2の)発生までにわたってもよい。
【0022】
他の実施形態によれば、2つの連続する信号が繰り返しシーケンスにおいて隣接するものでない場合、電子処理ユニットは、部分シーケンスに沿った第2のデータ値の第1の発生から第1のデータ値までの第2の距離が特定の値よりも大きい、例えば1よりも大きい場合、部分シーケンスに沿った第1のデータ値から第2のデータ値の第2の発生までの第1の距離に関連して(例えば、比例して)用量関連カウントを増加させるように構成され得る。電子処理ユニットは、第1のデータ値から第2のデータ値までの繰り返しシーケンスを逆にしたものに沿った第2の距離が特定の値よりも大きい、例えば1よりも大きい場合、繰り返しシーケンスに沿った第1のデータ値から第2のデータ値までの第1の距離に関連する用量データを増加させるように構成され得る。電子処理ユニットは、第2の距離が第1の距離よりも大きくない場合、第1の距離に関連して用量関連カウントを増加させるように構成され得る。電子処理ユニットは、用量関連カウントを第1の距離だけ増加させるように構成され得る。用量増加方向における用量制御部材の移動が逆方向における移動よりも可能性が高いと仮定すると、エラー状態の低減を達成することができ、用量測定精度を向上させることができる。シーケンスに沿った「距離」は、シーケンスに沿った値の変化(遷移)のカウントであり得る。距離は、シーケンスの指数の差であり得る。シーケンスのN番目の要素からシーケンスの(N+m)番目の要素までの距離は、mであり得る。
【0023】
換言すれば、電子処理ユニットは、繰り返しシーケンスに沿った順方向における第1のデータ値と第2の値との間の第1の距離を決定(計算)し、繰り返しシーケンスに沿った逆方向における第1のデータ値から第2のデータ値との第2の距離を決定(計算)するように構成され得る。電子処理ユニットは、第2の距離が特定の値よりも大きい、例えば1よりも大きい場合、第1の距離に関連(例えば、比例)して用量関連カウントを増加させるように構成され得る。処理ユニットは、繰り返しシーケンスに沿った2つの連続する信号の第1の信号から2つの連続する信号の第2の信号までの最小距離を仮定し、且つ最も可能性の高い用量制御部材の回転の方向が、送達される用量を増加させる方向であると仮定し、繰り返しシーケンスの見逃しデータ値の暗示数に関連(例えば、比例)して用量関連カウントを増加させるように構成され得る。そのような手段により、用量測定誤差の低減を達成することができ、用量測定精度を向上させることができる。
【0024】
送達又は設定用量を増加させるために必要な方向とは反対の、ハウジングに対する用量制御部材の移動は、少なくとも妨げられ得る。薬物送達デバイスの駆動機構は、吐出される薬剤の増加につながる移動のみ可能にする少なくとも1つのブロック部材、例えばラチェットを含み得る。ブロック部材は、用量増加方向に反する移動に対してある量の余裕分を提供することができ、余裕分の超過は、過剰量の力を用いることによってのみ可能である及び/又は薬物送達デバイスの(部分的)破壊につながる。これにより、電子処理ユニットが、検出位置の特定の変化(センサユニットの受信信号に対応するデータ値の変化)を順方向における移動と関連付けることを可能にする。
【0025】
更に、用量制御部材は、例えば、用量設定及び/又は送達用量に関連及び/又は比例して回転するように構成されてもよく、センサユニットは、用量制御部材の角度位置に応じて、異なるデータ値に対応する信号を生成するように構成されている。センサユニット、例えば、センサユニットの少なくともセンサ要素は、ハウジングに対して及び/又はハウジング上に移動不能に配置され得る。或いは、センサユニット、例えば、センサユニットの少なくともセンサ要素は、用量制御部材上に又は用量制御部材に対して移動不能に配置され得る。これにより、既存の設計への容易な統合を可能にする。或いは、用量制御部材は、直線的又は螺旋状に移動するように構成及び/又は配置され得る。
【0026】
所定の繰り返しシーケンスは、グレイコードシーケンス、例えば、2ビットのグレイコードシーケンスに関連付けられ得る。「グレイコードシーケンス」とは、シーケンスの連続する要素がバイナリコードの1ビットのみ異なる、特定の長さのバイナリコードのシーケンスであり得る。グレイコードシーケンスは、所与のバイナリコード長の可能なあらゆるバイナリビットの組み合わせを含み得る。2ビットのグレイコードシーケンスは、シーケンス[00;01;11;10]からなってもよい。或いは、繰り返しシーケンスは、3ビットグレイコードシーケンスに関連付けられ得る。例示的に、3ビットグレイコードシーケンスは、シーケンス[000;001;011;111;110;100]又はシーケンス[000;001;011;010;110;111;101;100]からなってもよい。同様に、繰り返し配列は、より高いビット長のグレイコードに関連付けられ得る。これにより、誤り検出及び誤り訂正を可能にする。
【0027】
更なる実施形態によれば、例えば、センサユニットがハウジングに対して(移動不能に)固定されている場合、用量制御部材は、一連のセンシング領域を含み、隣接するセンシング領域は、異なる物理的特性を有する。代替的な実施形態によれば、例えば、センサユニットが用量制御部材に対して固定されている場合、一連のセンシング領域は、ハウジング上、又はハウジングに対して固定された要素上に配置され得る。本明細書において、「異なる物理的特性を有する」とは、センシング領域が、センサユニットの少なくとも1つのセンサ要素によって観察される少なくとも1つの物理的特性の値において異なることを意味し得る。センシング領域の物理的特性の値及び/又は各々のセンシング領域を観察するときにセンサユニットの各々のセンサ要素によって生成されるセンサの応答(例えば、センサの電圧又はセンサの電流)は、本明細書中では、任意の2つの隣接する領域の間で少なくとも10%、例えば少なくとも11%、例えば少なくとも100%異なり得る。その表面に沿って連続的に変化する物理的特性を有するセンシング領域と比較すると、これは、センサ感度に高分解能を必要としない。一連のセンシング領域は、少なくとも2個、例えば少なくとも4個、例えば少なくとも6個、例えば少なくとも8個、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも12個のセンシング領域からなってもよい。
【0028】
センサユニットは、用量制御部材を観察する少なくとも2つのセンサ要素を含み得る。2つのセンサ要素は、同じ種類のものであってもよく、例えば、同じ物理的特性を観察(測定)するように構成され得る。或いは、センサ要素は、例えば同じセンシング領域の異なる物理的特性を観察するように構成されてもよい。複数のセンサ領域は、同じ物理的特性を有してもよく、例えば、10%未満、例えば5%未満異なる値を有してもよい。センシング領域、例えば、少なくとも、同じ物理的特性を有するセンシング領域は、同じ大きさ又は異なる大きさを有してもよい。本明細書において、センシング領域の「大きさ」とは、例えばセンサユニットに対する移動方向に従ったセンシング領域の伸展を指す場合がある。センサ要素の少なくとも2つは、異なるセンシング領域を同時に観察するように配置されてもよい。センサ要素の2つは、少なくともある時には異なるセンシング領域を観察し、少なくとも異なる時には同じセンシング領域を観察するように配置されてもよい。センサ要素の少なくとも2つ、例えば同じ2つのセンサ要素は、同じセンシング領域を異なる時に観察するように構成されてもよい。センサ要素は、用量制御部材を同期的に観察するように構成されてもよい。センサ要素は、同時にサンプリングしてもよく、同じサンプルレートを有してもよい。センサ要素は、用量制御部材を位相外れで観察するように配置されてもよい。代替的な実施形態によれば、2つのセンサ要素は、同じセンシング領域を決して観察しないように構成されてもよい。センシング領域は、第1のセンサ要素によって観察される第1の一連のセンシング領域と、第2のセンサ要素によって観察される第2の一連のセンシング領域とを形成してもよい。第2の一連のセンシング要素は、第1の一連のセンシング要素よりも大きくてもよく、例えば、2倍の大きさであってもよい。
【0029】
用量制御部材の全回転(360°)は、繰り返しシーケンスの基本シーケンスの倍数に対応し得る。これは、例えば、基本シーケンスの1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、又は8回の繰り返しに対応し得るが、他の構成も可能である。
【0030】
他の実施形態によれば、用量制御部材は、リング状部分を含み、センシング領域は、その周囲に沿って配置されている。センサ要素の少なくとも2つ、例えば、センサ要素(のサブセット)の任意の2つは、センサ要素の一方が、2つのセンシング領域の間の遷移部に向けられているとき、他方のセンサ要素は、2つのセンシング領域の間の遷移部に向けられず、例えば、別のセンシング領域の中央に向けられるように配置されてもよい。これにより、繰り返しシーケンスの容易な実施を可能にする。
【0031】
更に、前述の請求項のいずれか1つに記載の測定システムを含む、又はそのような測定システムと結合されるように、例えば、取り外し可能に結合されるように構成された薬物送達デバイスが提案される。薬物送達デバイスのハウジングは、電子的及び/又は機械的インタフェースを含んでもよい。測定システムは、ハウジングのインタフェースと接続されるように構成された電子的及び/又は機械的インタフェースを含む別個のハウジングを含んでもよい。インタフェースは、測定システムを薬物送達デバイスに解放可能にロックするための手段を含んでもよい。薬物送達デバイスは、注入デバイスであってもよい。薬物送達デバイスは、針ベースの注入デバイスであってもよい。薬物送達デバイスは、ペン型デバイスであってもよい。ペン型デバイスは、ペン、例えば万年筆に類似する形態を含み、それにより自己投与のためなど、ユーザによる医療デバイスの簡単な取り扱いを可能にする。薬物送達デバイスは、手持型デバイスであってもよい。
【0032】
薬物送達デバイスは、薬剤が充填された少なくとも1つの容器、又はそのような容器を受け入れるためのレセプタクルを含み得る。容器は、デバイスによって吐出される複数の用量に十分な量の薬剤を含み得る。
【0033】
測定システムがデバイスに組み込まれている場合、且つデバイスが薬物送達デバイスである場合、デバイスは、複数の容器と共に使用できることが好ましい。換言すれば、デバイスは、再利用可能デバイスであってもよい。当然のことながら、測定システムはまた、アドオンモジュールとして、再利用可能医療デバイスと共に使用され得る。ユーザは、レセプタクル内の空の容器を新しい容器と交換し、レセプタクルをデバイスの駆動機構に再接続するだけでよい場合がある。
【0034】
薬物送達デバイスは、送達されるべき用量のサイズをデバイスの機構によって定義される範囲内で設定することができる可変用量デバイスであってもよい。
【0035】
本明細書において、用語「薬物」又は「薬剤」は、同義的に使用され、1種以上の医薬品有効成分又は薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物及び任意選択的に薬学的に許容可能な担体を含有する医薬製剤を表す。医薬品有効成分(「API」)は、最も広義には、ヒト又は動物に対して生物学的効果を有する化学構造である。薬理学において、薬物又は薬剤は、疾病の治療、治癒、予防、若しくは診断に使用される、又はそうでなければ身体的若しくは精神的快適さを高めるために使用される。薬物又は薬剤は、限られた期間、又は慢性疾患に対しては定期的に使用され得る。
【0036】
以下で説明するように、薬物又は薬剤は、1つ以上の疾病の治療のために、少なくとも1種のAPI、又はこれらの組み合わせを、様々なタイプの製剤で含むことができる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子;ポリペプチド、ペプチド、及びタンパク質(例えば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、及び酵素);炭水化物及び多糖類;及び核酸、二本鎖又は一本鎖DNA(ネイキッドDNA及びcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNA及びRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、及びオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、又はリポソームなどの分子送達システムに組み込まれ得る。1つ以上の薬物の混合物も企図される。
【0037】
薬物又は薬剤は、薬物送達デバイスと共に使用するように適合された一次パッケージ又は「薬物容器」に収容され得る。薬物容器は、例えば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、又は1つ以上の薬物の保存(例えば、短期又は長期の保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の頑丈な若しくは可撓性の器であってもよい。例えば、いくつかの例では、チャンバは、薬物を少なくとも1日(例えば、1日から少なくとも11日)間保存するように設計され得る。いくつかの例では、チャンバは、薬物を約1か月から約2年間保存するように設計され得る。保存は、室温(例えば約20℃)又は冷蔵温度(例えば、約-4℃~約4℃)で行われ得る。いくつかの例では、薬物容器は、投与されるべき医薬製剤の2つ以上の成分(例えば、API及び希釈剤又は2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ別々に保存するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであってもよく、又はそれを含んでもよい。そのような例では、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒト又は動物の体内に吐出される前及び/又は吐出中に、2種以上の成分間の混合を可能にするように構成され得る。例えば、2つのチャンバは、それらが(例えば、2つのチャンバの間の導管を介して)互いに流体連通し、吐出前にユーザが望むときに2つの成分の混合を可能にするように構成され得る。或いは又は加えて、2つのチャンバは、成分がヒト又は動物の体内に吐出される際に混合を可能にするように構成されてもよい。
【0038】
本明細書に記載する薬物送達デバイスに収容される薬物又は薬剤は、多くの異なる種類の医療疾患の治療及び/又は予防に使用され得る。疾患の例としては、例えば、糖尿病又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症、深部静脈血栓塞栓症又は肺動脈血栓塞栓症などの血栓塞栓症が挙げられる。疾患の更なる例は、急性冠動脈症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、花粉症、アテローム性動脈硬化症及び/又はリウマチ様関節炎である。API及び薬物の例は、Rote Liste2014などのハンドブック、例えば、主要グループ12(抗糖尿病薬)又は86(腫瘍薬)、及びMerck Index第15版に記載されているようなものであるが、これらに限定されない。
【0039】
1型若しくは2型糖尿病又は1型若しくは2型糖尿病に関連する合併症の治療及び/又は予防用のAPIの例としては、インスリン、例えば、ヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体若しくはGLP-1受容体作動薬又はその類似体若しくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、又は薬学的に許容可能な塩若しくはその溶媒和物、又はそれらの任意の混合物が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「類似体」及び「誘導体」は、天然に発生するペプチド中に天然に発生する少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失及び/若しくは置換すること並びに/又は少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することにより、天然に発生するペプチドの構造、例えばヒトインスリンの構造から形式的に誘導することができる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加及び/又は置換されるアミノ酸残基は、コード化アミノ酸残基又は他の天然に発生する残基又は純粋合成アミノ酸残基のいずれかであり得る。インスリン類似体は、「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つ以上の有機置換基(例えば、脂肪酸)がアミノ酸の1つ以上に結合している、天然に発生するペプチドの構造、例えば、ヒトインスリンの構造から形式的に誘導することができる分子構造を有するポリペプチドを指す。任意選択的に、天然に発生するペプチド中に発生する1つ以上のアミノ酸は、欠失及び/若しくは非コード化アミノ酸を含む他のアミノ酸で置換されている可能性がある、又は非コード化アミノ酸を含むアミノ酸は、天然に発生するペプチドに付加されている可能性がある。
【0040】
インスリン類似体の例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリシン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位のプロリンがAsp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換され、B29位のLysがProで置換され得るヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B11)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン及びDes(B11)ヒトインスリンである。
【0041】
インスリン誘導体の例は、例えば、B29-N-ミリストイル-des(B11)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B11)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B11)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B11-N-ミリストイル-ThrB29LysB11ヒトインスリン;B11-N-パルミトイル-ThrB29LysB11ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B11)ヒトインスリン、B29-N-ω-カルボキシペンタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B11)ヒトインスリン(インスリンデグル、トレシーバ(登録商標));B29-N-(N-リトコリル(lithocholyl)-γ-グルタミル)-des(B11)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B11)ヒトインスリン及びB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0042】
GLP-1、GLP-1類似体、及びGLP-1受容体作動薬の例は、例えば、リキシセナチド(リキスミア(登録商標))、エキセナチド(Exendin-4、バイエッタ(登録商標)、ビデュリオン(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸のペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(登録商標))、rExendin-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-1191、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-1122、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6011、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTEN及びグルカゴン-Xtenである。
【0043】
オリゴヌクレオチドの例は、例えば、家族性高コレステロール血症治療用のコレステロール低下アンチセンス治療薬であるミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))、又はアルポート症候群の治療用のRG012である。
【0044】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0045】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、及びゴセレリンなどの、下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらの拮抗物が挙げられる。
【0046】
多糖類の例としては、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、へパリン、低分子量へパリン若しくは超低分子量へパリン又はそれらの誘導体、又は硫酸化多糖類、例えば上記の多糖類のポリ硫酸化形態、及び/又はそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量へパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の一例は、ヒアルロン酸ナトリウムであるHylan G-F20(Synvisc(登録商標))である。
【0047】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子又はその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原に結合する能力を保持するF(ab)及びF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リコンビナント抗体、キメラ抗体、脱免疫若しくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト抗体(例えば、マウス抗体)、又は一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体に結合する能力が低下している又はそのような能力がない。例えば、抗体は、アイソタイプ又はサブタイプ、抗体フラグメント又は変異体であり得、Fc受容体への結合を支持せず、例えば、突然変異又は欠失したFc受容体結合領域を有する。抗体という用語は、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)に基づく抗原結合分子及び/又は交差結合領域の配向性(CODV)を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質も含む。
【0048】
用語「フラグメント」又は「抗体フラグメント」とは、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原に結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(例えば、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド)から誘導されたポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断部分を含むことができるが、この用語は、そのような切断フラグメントに限定されるものではない。本発明で有用な抗体フラグメントとしては、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的又は多重特異的な抗体フラグメント、例えば、二重特異的、三重特異的、四重特異的及び多重特異的な抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、一価又は多価抗体フラグメント、例えば、二価、三価、四価及び多価抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディ又はバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小型モジュラー免疫医薬品(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、及びVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は、当該技術分野で周知である。
【0049】
用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、抗原結合を可能にするためにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、抗原結合に直接関与しないが、当該技術分野で周知のように、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基は、抗原結合に直接関与し得る、又はCDR内の1つ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を及ぼし得る。
【0050】
抗体の例は、抗PCSK-9mAb(例えば、アリロクマブ)、抗IL-6mAb(例えば、サリルマブ)、及び抗IL-4mAb(例えば、デュピルマブ)である。
【0051】
本明細書に記載されるいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイス内の薬物又は薬剤での使用が企図される。薬学的に許容可能な塩は、例えば、酸添加塩及び塩基性塩である。
【0052】
当業者であれば、本明細書に記載のAPI、製剤、装置、方法、システム、及び実施形態の各種構成要素の変更(追加及び/又は除去)が、そのような変更及びそのあらゆる均等物を包含する本発明の全範囲及び趣旨から逸脱することなく行われ得ることを理解するであろう。
【0053】
例示的な薬物送達デバイスは、ISO11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されるような針ベースの注入システムを含む可能性がある。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注入システムは、複数回用量容器システムと単回用量(部分的又は完全な排出を伴う)容器システムとに大別され得る。容器は、交換可能な容器であってもよく、又は一体型の交換不能な容器であってもよい。
【0054】
ISO11608-1:2014(E)に更に記載されているように、複数回用量容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回分の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変(ユーザによって事前設定される)であり得る。別の複数用量容器システムは、一体型の交換不能な容器を有する針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムでは、各容器は、複数回分の用量を保持し、そのサイズは、固定又は可変(ユーザによって事前設定される)であり得る。
【0055】
ISO11608-1:2014(E)に更に記載されているように、単回用量容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、1回分の用量を保持し、送達可能体積全体が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、1回分の用量を保持し、送達可能体積の一部が排出される(部分排出)。また、ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回用量容器システムは、一体型の交換不能な容器を有する針ベースの注入デバイスを含み得る。そのようなシステムの一例では、各容器は、1回分の用量を保持し、送達可能体積全体が排出される(完全排出)。更なる例では、各容器は、1回分の用量を保持し、送達可能体積の一部が排出される(部分排出)。
【0056】
本明細書において、「遠位」は、薬物送達デバイス又はその構成要素の吐出端に面する若しくは向くように配置された若しくは配置されることになる及び/又は近位端とは反対に向く、反対に面するように配置されることになる、若しくは反対に面する方向、端部、又は表面を指定するために使用される。他方で、「近位」は、吐出端及び/又は薬物送達デバイス若しくはその構成要素の遠位端とは反対に面する若しくは反対に向くように配置された若しくは配置されることになる方向、端部、又は表面を指定するために使用される。遠位端は、吐出端に最も近い及び/又は近位端から最も遠い端部であり得、近位端は、吐出端から最も遠い端部であり得る。近位表面は、遠位端とは反対に及び/又は近位端に向かって面し得る。遠位表面は、遠位端に向かって及び/又は近位端とは反対に面し得る。吐出端は、例えば、針ユニットが存在する又はデバイスに取り付けられることになる針端部であり得る。
【0057】
更に、薬物送達デバイスの吐出用量及び/又は設定用量を測定する方法であって、用量吐出操作及び/又は用量設定操作に従い移動する用量制御部材の位置及び/又は向きを断続的に観察することと、それぞれ少なくとも4つの異なるデータ値のうちの1つに対応する信号を、用量制御部材の位置及び/又は向きに応じて生成することと、生成された信号に応じて用量関連カウントを適合させることと、生成された信号のうちの連続する2つが、異なるデータ値の所定の繰り返しシーケンスにおいて隣接するデータ値に対応するかどうかを決定することと、を含む方法が提案される。
【0058】
用量関連カウントを適合させることは、用量制御部材の移動方向を決定することを含み得る。用量関連カウントを適合させることは、用量増加方向(順方向)における用量制御部材の移動が決定された場合に用量関連カウントを増加させることを含み得る。用量関連カウントを適合させることは、用量減少方向(逆方向)における用量制御部材の移動が決定された場合に用量関連カウントを減少させることを含み得る。2つの連続する信号が繰り返しシーケンスにおいて隣接するものでない場合、用量関連カウントは、部分シーケンスに沿った第2のデータ値の前の発生から第1のデータ値までの距離が特定の値よりも大きい、例えば1よりも大きい場合、部分シーケンスに沿った生成された信号の第1の信号に対応する第1のデータ値から、生成された信号の第2の信号に対応する第2のデータ値の後の発生までの距離に関連して増加され得る。換言すれば、用量関連カウントは、繰り返しシーケンスに沿った2つの連続する信号の第1の信号から2つの連続する信号の第2の信号までの最小距離を仮定し、最も可能性の高い用量制御部材の回転の方向が、送達される用量を増加させる方向であると仮定し、繰り返しシーケンスの見逃しデータ値の暗示数に関連して増加され得る。
【0059】
本方法は、例えば、薬物送達デバイスの測定システムのメモリユニットに用量関連カウントを格納することを更に含み得る。
【0060】
一実施形態では、本開示の実施形態の1つによる薬物送達デバイスによって吐出用量及び/又は設定用量を測定する方法が提供される。
【0061】
更に、測定システムの電子処理ユニットにおいて実行されると、システムを前述の測定システムのように振る舞い、動作させる機械可読コードが提案される。機械可読コードは、測定システムに存在する既存の機械可読コードに対する更新の形態で提供されてもよい。
【0062】
更に、前述の機械可読コード又は測定システムの前述の機械可読コードを再現する機械可読コード(アップデート)を含む、データ記録媒体、例えば、コンパクトディスク、フラッシュドライブ、メモリカード、クラウドストレージ、又はデータストリームが提案される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】測定システムを含む薬物送達デバイスの概略図を示す。
【
図3】グレイコードシーケンスによる繰り返しシーケンスの部分シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図中、同一の要素、同一に機能する要素、又は同種の要素に、同じ参照番号が付されている場合がある。
【0065】
図1は、薬物送達デバイス20を示す。薬物送達デバイス20は、薬物送達デバイス20用の電子測定システム(測定システム)10を含む。測定システム10は、電子処理ユニット12を含む。測定システム10は、センサユニット14を含む。測定システム10は、薬物送達デバイス20から吐出される薬物の量を測定するように構成されている。
【0066】
電子処理ユニット12は、吐出される薬物の測定量を記憶するためのメモリユニットを含み得る。電子処理ユニット12は更に、薬物の測定量及び薬物が投与された時刻などの他のデータを外部デバイスに送信するための通信ユニット14を含んでもよい。
【0067】
薬物送達デバイス20は、針ベースの注入デバイス(NIS-針ベースの注入システムとも呼ばれる)である。薬物送達デバイス20は、ペン型デバイスである。薬物送達デバイス20は、細長いハウジング22を含む。薬物送達デバイス20は、容器25を受け入れるためのレセプタクル26を含む。容器25には、薬剤が充填されている。容器25は、薬物送達デバイス20を部分的に分解することによって異なるものに交換されてもよく、例えば、空の容器は、満杯のものに交換されてもよい。薬物送達デバイス20は、第1の端部に、容器25と流体接続された針27を含む。薬物送達デバイス20は、キャップ24を含み、キャップ24は、ハウジング22に機械的に接続され得、ハウジング22と接続されているときに針27を覆っている。薬物送達デバイス20は、針27とは反対側の第2の端部においてハウジング22に回転可能に接続された用量ダイヤル23を含む。用量ダイヤル23を回転させることにより、薬物送達デバイス20から排出される(及び人体に注入される)薬剤の用量が選択され得る。用量ダイヤル23は、シリンダ軸線に沿って押されると薬剤の吐出を開始するための放出機構としても機能する。或いは、その機能を果たすために、ユーザが手で押す別個のボタン、又は人体への針27の挿入時に後退し、それによって放出をトリガーする針シールドが設けられてもよい。薬物送達デバイス20は、駆動ユニット29及びプランジャ28を含む。駆動ユニット29は、プランジャ28を、設定用量に固有の距離だけ容器25内に駆動する。
【0068】
電子測定システム10は、用量制御部材11を含む。用量制御部材11は、用量吐出操作に従い、薬物送達デバイス20のハウジング22に対して移動するように構成されている。他の実施形態によれば、用量制御部材は、用量設定操作又は両操作に従って移動するように構成されている。
【0069】
電子測定システム10は、センサユニット14を含む。センサユニット14は、電子処理ユニット12に電気的に接続されている。センサユニット14は、用量制御部材11の位置を断続的に観察するように構成されている。センサユニット14は、それぞれ、4つの異なるデータ値A、B、C又はDのうちの1つに対応する信号を、用量制御部材11の位置に応じて生成するように構成されている。電子測定システム10は、電子処理ユニット12及びセンサユニット14に給電するためのエネルギー源、例えば電池を更に含む。
【0070】
プランジャ28を駆動するために、駆動ユニット29は、プランジャ28の直線運動に変換される回転運動を作り出す。用量制御部材11は、プランジャ28の直線運動の量に比例する量だけ回転するように構成されている。
【0071】
電子処理ユニット12は、センサユニット14の信号を受信し、受信した信号に応じて用量関連カウントを適合させるように構成されている。電子処理ユニット12は、受信した信号の2つの連続するデータ値が、4つの異なるデータ値A、B、C及びDの所定の繰り返しシーケンス[...A,B,C,D,A,B,C,D,...]において隣接するかどうかを決定するように構成されている。
【0072】
センサユニット14は、用量制御部材11を観察する2つのセンサ要素16、18を含む(
図2で比較)。センサ要素16、18は、光学センサである。センサ要素16、18は、用量制御部材11の反射率を観察するように構成されている。センサ要素16、18は、用量制御部材11に向かって光(この場合、赤外光)を放射し、どれほどの光がセンサ要素16、18で受信されたかを検出するように構成されている。
【0073】
用量制御部材11は、一連のセンシング領域L、Gを含み、隣接するセンシング領域L、Hは、異なる物理的特性を有する。この一連のセンシング領域は、12個のセンシング領域L、Hを含む。センシング領域L、Hはそれぞれ、用量制御部材の30°を占める。半数のセンシング領域Lは、(IR光に対して)低反射率を有する。もう半数のセンシング領域Hは、(IR光に対して)高反射率を有する。低反射率を有するセンシング領域Lと高反射率を有するセンシング領域Hは、交互に配置されている。他の実施形態は、より多数又はより少数のセンシング領域を使用し得る。より多数のセンシング領域を使用すると、より高い分解能を可能にし、より少数のセンシング領域は、より低いサンプルレート及びより低いエネルギー消費を可能にする。より低い物理的特性値を有するセンシング領域Lは、より高い物理的特性値を有するセンシング領域Hと異なる材料から作成される。低反射率を有するセンシング領域Lは、センサと低反射率を有するセンシング領域Lとの間の距離を増加させるために凹設されており、それによって低反射率領域を観察するときに、センサによる信号出力を更に減少させる。これにより、2つの領域を観察するときの、領域間のコントラスト、及び対応する、センサからの信号出力の差が向上する。第1の種類のセンシング領域H(この場合、高い物理的特性値を有するもの)は、用量制御部材11の基材によって構成され得る。他のセンシング領域Lは、例えば第1の種類のセンシング領域Hの間の基材に材料を付加することによる付加プロセスによって、例えば、射出成形によって、又は1つ以上の追加部品をフォームフィット及び/若しくは接着することによって形成され得る。
【0074】
用量制御部材11は、駆動ユニット29の必須部品であり、プランジャ28にエネルギーを伝達する。用量制御部材11は、リング状部分を含む。リング状部分は、用量制御部材11の近位端に配置されている。センシング領域L、Hは、リング状部分の周囲に沿って配置されている。センシング領域は、リング状部分の半径方向外側表面上に配置されている。センサ要素16、18は、用量制御部材11から半径方向外向き方向にリング状部分から距離を置いて配置されている。センサ要素16、18は、ハウジング22に対して固定されている。センサ要素16、18は、センサ要素16、18のうちの一方が、2つのセンシング領域L、Hの間の遷移部に向けられているとき、他方のセンサ要素16、18は、2つのセンシング領域(L、H)の間の遷移部に向けられないように配置されている。他方のセンサ要素16、18は、別のセンシング領域L、Hの中央に向けられる。センサ要素16、18は、異なるセンシング領域L、Hを同時に(任意の時に)観察するように、及び同じセンシング領域L、Hを異なる時に観察するように配置されている。センシング領域L、Hはそれぞれ、用量制御部材の同じ空間量(この場合、30°)を占める。センサ要素16、18は、用量制御部材のリング状部分の中心に対して角度αだけ角度的に離れている。角度αは、135°である。
【0075】
デバイスの動作中、吐出する(又は他の実施形態によればダイヤルを合わせる)とき、一対のセンサは、符号化部品(エンコーダリング)に機械的に結合される。
【0076】
センサユニット12は、異なるデータ値A、B、C又はDに対応する信号を、用量制御部材11の角度位置に応じて生成するように構成されている。所定の繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]は、2ビットのグレイコードと関連付けられる(
図3で比較)。各々観察されたセンシング領域L、Hの物理的特性によれば、第1のセンサ要素16は、値0(低い物理的特性値)又は1(高い物理的特性値)を有する第1のセンサ信号S1を生成する。各々観察されたセンシング領域L、Hの物理的特性によれば、第2のセンサ要素18は、値0(低い物理的特性値)又は1(高い物理的特性値)を有する第2のセンサ信号S2を生成する。用量制御部材11及びセンサユニット14は、センサユニット14が用量制御部材11を連続的に観察し、用量制御部材11が、送達又は設定用量を増加させるために方向Rに一方向に移動すると、所定の繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]が生成されるように構成されている。
【0077】
光学センサの場合、最後に吐出された用量に応じて、各センサは、黒色領域又は白色領域のいずれかを指している可能性がある。名目上、各センサの中心は、遷移エッジからある角度離れて配置されている。センサの応答は、白色領域を指しているときはバイナリ1と定義され、黒色領域を指しているときはバイナリ0と定義される。センサが、名目上、2つの状態の一方を指し、これらの状態間で遷移が発生する構成は、上記のように他のセンサ技術にも適用可能である。
【0078】
両センサ要素16、18が、低い物理的特性値(IR反射率)を有するセンシング領域Lに向けられている用量制御部材11の位置において、センサユニット14は、センサユニット14から、異なるデータ値Aの第1のデータ値に関連付けられた信号「00」を生成する。第1のセンサ要素16が、高い物理的特性値を有するセンシング領域Hに向けられ、第2のセンサ要素18が、低い物理的特性値を有するセンシング領域Lに向けられている用量制御部材11の位置において、センサユニット14は、センサユニット14から、異なるデータ値Bの第2のデータ値に関連付けられた信号「10」を生成する。両センサ要素16、18が、高い物理的特性値を有するセンシング領域Hに向けられている用量制御部材11の位置において、センサユニット14は、センサユニット14から、異なるデータ値Cの第3のデータ値に関連付けられた信号「11」を生成する。第1のセンサ要素16が、低い物理的特性値を有するセンシング領域Lに向けられ、第2のセンサ要素18が、高い物理的特性値を有するセンシング領域Hに向けられている用量制御部材11の位置において、センサユニット14は、センサユニット14から、異なるデータ値Dの第4のデータ値に関連付けられた信号「10」を生成する。繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]において、データ値Aの第1のデータ値に、データ値Bの第2のデータ値が続く。繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]において、データ値Bの第2のデータ値に、データ値Cの第3のデータ値が続く。繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]において、データ値Cの第3のデータ値に、データ値Dの第4のデータ値が続く。繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]において、データ値Dの第4のデータ値に、データ値Aの第1のデータ値が続く。本明細書の
図2に記載されている位置は、センサユニット14からの信号「10」に関連し、異なるデータ値Bの第2のデータ値に対応する。異なるデータ値A、B、C及びDは、センサユニット14の各々の信号と同一である。
【0079】
薬物送達デバイス20のユーザは、設定用量操作において吐出される用量(薬物の量)を選択するための用量ダイヤル23を使用することにより、デバイスの使用を開始してもよい。設定用量操作中、センサユニット14は、動作停止されており、用量制御部材11の位置を表すデータ値を決定するための信号を提供しない。電子制御12ユニットは、この段階では、動作停止され得る又はスリープモードにあり得る。
【0080】
ユーザが、第1の段階において、用量ダイヤル23を押すことによって、又は異なる機構によって、例えば用量ダイヤル23の第1の押し込み深さに達すると接点を閉じることによって、用量吐出操作を開始すると、センサユニット14は、起動され、第1のサンプルレートに設定される。電子処理ユニット12も、センサユニットの信号を評価するために起動され得る。用量関連カウントは、ゼロに設定される。電子処理ユニット12は、新たに生成された信号との比較を可能にするために、以前の用量吐出操作のセンサユニット14の最後の受信信号に対応する保存データ値をメモリから読み込むように構成されている。或いは、比較用の第1のデータ値は、工場出荷時のプリセット値であってもよい。また、センサユニットは、薬剤容器交換時に、リセット位置を確立及び取得するために起動されてもよい。
【0081】
駆動ユニット29は、(駆動ユニット29の可能な部品の中でも)プランジャ28及び用量制御部材11の移動を防止するためのロック機構を含む。第2の段階では、例えば、用量ダイヤルの第2の押し込み深さ(第1の押し込み深さよりも後/深い)に達した後、駆動ユニット29は、ロック機構を少なくとも方向Rに関して解除することによって、薬物を吐出するためにロック解除され、送達される用量を増加させる。送達される用量を増加させるための方向Rとは反対の、ハウジングに対する用量制御部材11の移動は、いかなる段階においても、ロック機構によって少なくとも妨げられる。
【0082】
センサ要素のいずれか1つが0から1に又は1から0に変化した場合、即ち、遷移が発生した場合、1単位が吐出されたと解釈されるが、システムの構成に応じて、複数の単一単位又は単一単位の一部と解釈されることもある。グレイコーディングの実装により、その単位が全体的な用量カウントを増加させるのか減少させるのかを決定することが可能である。更に、この機構は、用量が通常操作においてのみ増加するように設計されている。全体的な用量カウントの減少を示すいかなる連続的な遷移も、機械的及び/又は電気的故障、又は逆方向の瞬間的な振動、いわゆる「ジッタ」を示唆する。
【0083】
電子処理ユニット12は、2つの連続する信号が、異なる信号A、B、C又はDの繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]において隣接するものに対応しない場合、センサユニット14のサンプルレートを増加させるように構成されている。電子処理ユニット12は、用量制御部材11の第1の移動(センサユニット14から受信した信号に対応するデータ値A、B、C又はDの任意の変化)が検出された少なくとも後に、センサユニット14のサンプルレートを増加させるように構成されている。特に、用量ダイヤル23が非常に強く押された場合、繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]における異なるデータ値A、B、C又はDの遷移の最初のいくつかは、センサユニット14の起動の遅れにより見逃されることがある。
【0084】
設定用量に従った薬剤の量が吐出されると、駆動機構は、方向Rにおける順方向移動がロック機構によって再び阻止される終了位置に達する。特に、用量吐出操作の終了時、駆動ユニット29及び/又は用量制御部材11の部品の瞬間的な振動(ジッタ運動)が、例えば部品及び機構の可撓性に起因して発生し、センサユニット14が、2つのデータ値の間で繰り返し切り替わる信号を提供することになる可能性がある。電子処理ユニット12は、用量制御部材11の移動方向を、2つの連続する信号及び所定の繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]に基づいて決定するように構成されている。電子処理ユニット12が、連続する信号が、順方向Rの2つの隣接するデータ値(A,B)、(B,C)、(C,D)、(D,A)に関連すると決定した場合、電子処理ユニット12は、用量関連カウントを1つだけ増加させる。電子処理ユニット12が、連続する信号が、順方向Rとは反対の2つの隣接するデータ値(B,A)、(C,B)、(D,C)、(A,D)に関連すると決定した場合、電子処理ユニット12は、用量関連カウントを1つだけ減少させる。電子処理ユニット12が、連続する信号が、順方向Rとは反対の2つの隣接するデータ値(B,A)、(C,B)、(D,C)、(A,D)に繰り返し関係すると決定した場合、電子処理ユニット12は、そのような移動が、重大なデバイスの故障なくして薬物送達デバイス20の制限の範囲内で可能であるはずがないため、エラーを発生させる。エラーメッセージ又は警告が、ユーザに音響的及び/又は視覚的に提供され得る。
【0085】
測定システム(エンコーダシステム)のサンプリングレートに近く且つこれを超えるより高いレートで吐出する場合、連続的に測定される遷移が連続的なグレイコード遷移に対応しない可能性がある。光学センサシステムの例では、予想される遷移セットは、「11」→「01」→「00」→「10」である。しかしながら、システムが「11」から「00」に進む場合、遷移が、順方向であるか逆方向であるか、即ち、「11」→「01」→「00」(順方向)であるか「11」→「10」→「00」(逆方向)であるかは明確ではない。これは、二重遷移と呼ばれ、「01」又は「10」のいずれかの位置が事実上飛ばされるため、方向を決定することができない可能性がある。
【0086】
2つの連続する信号は、第1のデータ値A、B、C又はDに対応する先行信号と、第2のデータ値C、D、A又はBに対応する後行信号とを含む。部分シーケンスは、繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]における第2のデータ値C、D、A又はBの第1の発生から、繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]における第2のデータ値C、D、A又はBの第2の発生までにわたる。例えば、第2のデータ値がCである場合、部分シーケンスは、[C,D,A,B,C]である。
【0087】
電子処理ユニットは、繰り返しシーケンスに沿った順方向における第1のデータ値から第2のデータ値までの第1の距離を決定するように構成されている。これは、部分シーケンスに沿って、第1のデータ値A、B、C、Dから第2のデータ値C、D、A又はBの第2の発生までの距離(第1の距離)を決定することであると解釈することができる。電子処理ユニットは、更に、繰り返しシーケンスに沿った逆方向における第1のデータ値から第2のデータ値までの第2の距離を決定するように構成されている。これは、部分シーケンスに沿って、第2のデータ値C、D、A又はBの第1の発生から第1のデータ値A、B、C又はDまでの距離(第2の距離)を決定することであると解釈することができる。
【0088】
2つの連続する信号が、繰り返しシーケンス[...,A,B,C,D,A,B,C,D,...]において隣接するものに対応しない場合、電子処理ユニット12は、第2の距離が特定の値よりも大きい、この場合1よりも大きい場合、第1の距離に関連して用量関連カウントを(4つの異なるデータ値のみの場合、常に2だけ)増加させるように構成されている。
【0089】
二重遷移は、常に、順方向、即ち全体的な用量カウント(用量関連カウント)を増加させる、と解釈される。これは、何らかの不具合又は誤用状態がなければ、機構を逆方向に1つより多い遷移だけ駆動することは物理的に不可能だからである。事実上、組み込みソフトウェアは、システム全体の物理的特性を考慮に入れて書かれる。これにより、二重遷移が不必要な不具合条件を引き起こさない一方で、用量記録精度を向上させることを確実にする。
【0090】
例えば、システムは、素早く吐出され、二重遷移が検出される。前の用量カウントは20単位であったが、本明細書中に記載されるシステム構造を使用して、二重遷移により、用量カウントに2単位が加算され、その結果、22単位の用量になる。次の遷移は予想通りであり、用量カウントを1増加させて23単位にする。
【0091】
電子処理ユニットは、用量ボタンが離されたときに、用量吐出操作が終了したと決定してもよい。或いは、電子処理ユニットは、電子処理ユニット12が、センサユニット14の信号に対応するデータ値の変化がないために駆動ユニット29が停止したと決定したときに、用量吐出操作が終了したと決定してもよい。電子処理ユニット12は、測定された用量関連カウントを、例えばタイムスタンプと共にメモリに格納するように構成されている。更に、センサユニット14の最新の信号に対応するデータ値A、B、C又はDが、メモリにコミットされる。
【0092】
この手順により、一対のセンサを用いてペン型注入システムにより検出された非連続的なグレイコード遷移を識別し、対処するアプローチが達成される。この方法は、システムの物理的特性を考慮に入れ、用量記録精度を向上させ、不必要な不具合条件の特定を低減する。
【0093】
本実施形態は、任意の遷移(二重遷移を含む)が検出された場合により高速のサンプルレートに切り替わるため、遅いサンプルレートがアクティブであるときに、物理的に可能な加速のほとんどが遷移の見逃しにつながることのないように構成されている(即ち、三重以上の遷移イベント)。更に、高速のサンプルレートがアクティブであるときに三重以上の遷移が存在するためには、システムの機械的速度は、高速のサンプルレートの2倍を超える必要がある。サンプルレートは、センサシステムが高速注入イベント下でカウントを失うことに対して堅牢であるように構成されるように、そのような速度が機構において物理的に不可能であるように選択される。
【0094】
他の実施形態では、例えば、8つの異なるデータ値があり得る。したがって、電子処理ユニットは、計算された見逃し遷移数(1、2、3、4又は5)に関連して用量関連カウントを増加させ、用量カウントを(2、3、4、5又は6)だけ増加させるように構成され得る。したがって、計算された6番目の見逃し遷移は、1回の逆遷移と解釈され、用量カウントを1だけ減少させる。更に、電子処理ユニットは、見逃し遷移数が設定閾値(例えば、2、3、4、又は5)を上回る場合、エラーを記録するように構成され得る。
【0095】
代替的な実施形態では、センサユニットは、単一のセンサ要素のみを有し得るが、センシング領域は、観察される物理的特性におけるいくつかの異なる値又は値範囲を有し、センサ要素は、これらの異なる値又は値範囲を、それぞれ異なるデータ値に対応するように個々に区別するように構成されている。
【0096】
更なる実施形態では、センサユニットは、提案される2つの代わりに、3ビットグレイコード(又は少なくともグレイのようなコード)を生成するために0°、130°、及び260°に配置された3つのセンサ要素を含み得る。
【0097】
また、代替的な実施形態では、センシング領域は、例えば針から離れたリングの軸方向面上に、及び/又は用量制御部材の近位端上に配置され得、センサ要素は、例えば針から離れた、用量制御部材に対して軸方向遠位に、又は近位に配置され得る。
【符号の説明】
【0098】
10 測定システム
11 用量制御部材
12 電子処理ユニット
14 センサユニット
16 センサ要素
18 センサ要素
20 薬物送達デバイス
22 ハウジング
23 用量ダイヤル
24 キャップ
25 容器
26 レセプタクル
27 針
28 プランジャ
29 駆動ユニット
A データ値
B データ値
C データ値
D データ値
H センシング領域
L センシング領域
R 方向
S1 センサ信号
S2 センサ信号
【国際調査報告】