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特表2024-537843エチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-16
(54)【発明の名称】エチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/12 20060101AFI20241008BHJP
   C08F 216/06 20060101ALI20241008BHJP
   C08F 6/28 20060101ALI20241008BHJP
【FI】
C08F8/12
C08F216/06
C08F6/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520041
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 KR2022021154
(87)【国際公開番号】W WO2023121379
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185641
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0182255
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ボンジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウォン・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ヒョジン・ベ
(72)【発明者】
【氏名】スンジン・ソン
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AG04P
4J100CA04
4J100HA09
4J100HB35
4J100HB39
4J100HC09
4J100HE08
4J100HE14
4J100HE35
(57)【要約】
本発明はアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体をけん化反応させた後に超臨界抽出工程を行って、多段蒸留塔やパイプミキサと水槽などの複雑な装置設備がなくとも廃液発生を最小化して触媒残余物などの副産物を効果的に除去することによって、エチレン-ビニルアルコール共重合体を効率的に収得できるエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させてエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させるけん化反応段階;および
超臨界二酸化炭素の条件下で前記けん化反応生成物に含まれたアルコール溶媒を抽出する段階;
を含み、
前記超臨界二酸化炭素の条件は、COの圧力80bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上60℃以下である、エチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記けん化反応工程は、アルコール溶媒中に分散したエチレン-酢酸ビニル共重合体に、アルカリ触媒溶液を滴加しながら反応させることにより行われる、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記アルコール溶媒はメタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群より選ばれる1種以上である、請求項2に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ触媒は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムである、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ触媒の総使用量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して0.01モル以上0.03モル未満である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項6】
前記けん化反応工程の温度は40℃以上120℃以下である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項7】
前記けん化反応工程の圧力は1bar以上5bar以下である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記けん化反応混合物から、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むけん化反応生成物をゲル化または固化する段階;をさらに含む、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記超臨界二酸化炭素の条件は、COの圧力100bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上50℃以下である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記抽出段階を行った後に得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む生成物は、前記生成物の総重量に対してアルコール溶媒の含有量が15重量%以下である、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記抽出工程を行った後に、エチレン-ビニルアルコール共重合体をカルボン酸含有水溶液に浸漬させた後に水を乾燥させる段階;をさらに含む、請求項1に記載のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2021年12月23日付韓国の特許出願第10-2021-0185641号および2022年12月22日付韓国の特許出願第10-2022-0182255号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国の特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明はエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(Ethylene-Vinyl Alcohol,EVOH)は、酸素など気体遮断性、透明性、耐油性、非帯電性、機械強度などに優れ、フィルム、シート、容器などの材料として広く使用されている。
【0003】
前記EVOHはエチレンと酢酸ビニルの共重合によって製造されるエチレン-酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate,EVAc)のけん化反応により製造されることができる。EVAcのけん化反応の触媒としては主に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラートなどのアルカリ触媒が使用される。
【0004】
EVOHはけん化度が高いほど優れた気体遮断性を示すので、食品包装用途などに使用されるEVOHは99%以上の高いけん化度を有することが好ましい。従来にはこのように高いけん化度を達成するためにけん化反応をより高い温度で行うか、あるいはアルカリ触媒の使用量を増やす方法が用いられた。
【0005】
しかし、高温反応の場合、副反応が起こりやすく、多量のアルカリ触媒を使用する場合はけん化物中の触媒副産物の量が増加する問題がある。触媒副産物はEVOHの変色を起こすので、けん化反応後にこれを除去するための洗浄工程が伴うが、触媒副産物の含有量が高い場合、過度な洗浄工程を必要とするので工程効率性が低下し、過量の廃水が発生する。
【0006】
特に、エチレン-酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate,EVAc)のけん化反応後、EVOH溶液からEVOHの他に触媒副産物(Na成分など)、反応副産物(Methyl acetate,MeAcなど)、残余アルコール溶媒(メタノール/MeOHなど)を除去する工程として従来には脱アルコール工程後にEVOHを水洗した後、乾燥してEVOH固形分を取得する工程が知られている。ここで、脱アルコール工程は多段の蒸留塔において水蒸気を用いてアルコール溶媒(MeOHなど)を除去することであり、過量の水蒸気を必要とし、アルコールと水が含まれた廃液が過量発生する。また、EVOH水洗時に水で混合工程を用いてEVOH内の残余物を除去することであり、過量の水を必要として過剰な廃液が発生する。この過程で多段蒸留塔が必要であり、水洗にはパイプミキサと水槽などが必要となり、全体工程が複雑になる問題が生じる。
【0007】
さらに、このように脱アルコール工程により回収したアルコール溶媒をけん化反応などに再利用する際には脱アルコール工程で使用した水をさらに分離または除去する工程を行わなければならない困難性がある。
【0008】
そのため、前記洗浄過程において多段蒸留塔が必要であり、また水洗時のパイプミキサと水槽などが必要であるため、工程が複雑化してエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造する全体工程効率が大幅に低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記問題を解決するためのものであり、多段蒸留塔や水洗時のパイプミキサと水槽などの複雑な工程がなくとも高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体を効率的に収得できるエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の一実施形態によれば、アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させてエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させるけん化反応段階;および
超臨界二酸化炭素の条件下で前記けん化反応生成物に含まれたアルコール溶媒を抽出する段階;を含み、
前記超臨界二酸化炭素の条件は、COの圧力80bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上60℃以下である、
エチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体をけん化反応させた後に超臨界抽出工程を最適化された条件下で行い、エチレン-酢酸ビニル共重合体の物性を低下させることなく、多段蒸留塔やパイプミキサと水槽などの複雑な装置設備がなくとも廃液発生を最小化し、かつ高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体を効率的に得ることができる。
【0012】
そのため、本発明によれば、エチレン-酢酸ビニル共重合体の物性を低下させることなく、けん化工程後にエチレン-ビニルアルコール共重合体に含まれる触媒副産物を除去するための洗浄工程の効率性を増大させることができ、洗浄工程で発生する廃水量を最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解しなければならない。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有し得るため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法は、アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させてエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させるけん化反応段階;および
超臨界二酸化炭素の条件下で前記けん化反応生成物に含まれたアルコール溶媒を抽出する段階;を含む。
【0016】
具体的には、前記超臨界二酸化炭素の条件は、COの圧力80bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上60℃以下である。
【0017】
特に、本発明はアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体をけん化反応させた後に超臨界二酸化炭素の条件下でアルコール溶媒を抽出する超臨界抽出工程を最適化された条件下で行い、エチレン-酢酸ビニル共重合体の物性を低下させることなく、多段蒸留塔やパイプミキサと水槽などの複雑な装置設備がなくとも廃液発生を最小化し、触媒残余物などの副産物を効果的に除去することによって、エチレン-ビニルアルコール共重合体を効率的に得ることができる。
【0018】
一般に、エチレン-ビニルアルコール共重合体の製造工程は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を重合し(工程1)、アルカリ触媒を用いてけん化反応でEVOHを生成させて(工程2)、EVOH溶液(EVOH+MeOH)の脱アルコールおよび洗浄工程を行い(工程3)、それをペレット化して乾燥する工程(工程4)を経る。
【0019】
ここで、前記脱アルコールおよび洗浄工程(工程3)が完了すると、EVOHのアルコール成分(MeOH)の大部分が除去されて水に置換され、「含水EVOH」となる。このような含水EVOH状態でカルボン酸などの添加剤を投入する工程を行う。すなわち、前記脱アルコールおよび洗浄工程(工程3)の途中にカルボン酸などの添加剤を投入するか、前記脱アルコールおよび洗浄工程(工程3)を終えて得られた「含水EVOH」をペレット化して乾燥する工程(工程4)の前の段階に、別途カルボン酸などの添加剤を投入する工程を導入してもよい。従来のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造工程のうち、乾燥工程とは、前述したように「含水EVOH」で水分量を減らす工程を指す。
【0020】
本発明では、上述したアルカリ触媒を用いてけん化反応(工程2)後に得られたEVOH溶液に対して従来の脱アルコールおよび洗浄工程(工程3)の代わりに、超臨界二酸化炭素の条件下で抽出工程によりけん化反応生成物からアルコール溶媒を除去する脱アルコール工程を行うことを特徴とする。
【0021】
これによる本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法において、具体的なけん化反応工程および超臨界抽出工程は以下で詳細に説明する。
【0022】
けん化反応工程
先に、本発明ではアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させるけん化反応によりエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させる。
【0023】
具体的には、前記けん化反応工程は、アルコール溶媒中に分散したエチレン-酢酸ビニル共重合体に、アルカリ触媒溶液を滴加しながら反応させることにより行われる。好ましくは、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)のけん化反応を二段階に分けて行い、アルカリ触媒を一度に投入せず、それぞれの段階で連続的に滴加する方式で投入してもよい。この時「滴加」とは、溶液を点滴式で投入することを意味する。
【0024】
このようにアルカリ触媒を連続的に滴加すると、触媒を一度に投入する場合に比べて少量の触媒でも高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体を得ることができ、そのため、けん化反応後に製造されたエチレン-ビニルアルコール共重合体中に含まれたアルカリ触媒副産物を除去するための洗浄工程が簡素化され、工程の効率性および経済性が向上して廃水発生量を最小化することができる。
【0025】
本発明で、反応物質であるエチレン-酢酸ビニル共重合体は、市販品を使用するか、またはエチレンおよび酢酸ビニル単量体を共重合して製造することができる。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニルの他に、これらと共重合できる単量体をさらに含んで共重合されたものであり得る。このような単量体の例としてはプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセンなどのα-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸、その塩、その無水物またはモノもしくはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド類;エチレンスルホン酸、アリールスルホン酸、メタアリールスルホン酸などのオレフィンスルホン酸またはその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのビニル系単量体;などが挙げられる。
【0026】
エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は、目的とするエチレン-ビニルアルコール共重合体の物性によって適宜調節することができる。一実施形態で、エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量は、20モル%以上、25モル%以上、または30モル%以上であり、かつ40モル%以下、35モル%以下、または33モル%以下であり得る。エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン含有量が前記範囲を満たす場合、製造されるエチレン-ビニルアルコールが高い加工性を示しながらも優れた気体遮断性を有することができる。なお、前記エチレン含有量はエチレン-酢酸ビニル共重合体のH-NMRデータのピーク積分比から計算される。
【0027】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、一例として8,000g/mol以上、10,000g/mol以上、または12,000g/mol以上、または20,000g/mol以上、または50,000g/mol以上、または100,000g/mol以上、または150,000g/mol以上、または180,000g/mol以上、200,000g/mol以上、または220,000g/mol以上であり、かつ290,000g/mol以下、270,000g/mol以下、または260,000g/mol以下、または240,000g/mol以下、または200,000g/mol以下、または150,000g/mol以下、または100,000g/mol以下、または80,000g/mol以下、50,000g/mol以下、または30,000g/mol以下、または25,000g/mol以下、20,000g/mol以下、または18,000g/mol以下であり得る。前記重量平均分子量を満たすエチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化反応により得られるエチレン-ビニルアルコール共重合体は、重量平均分子量が120,000g/mol以上、130,000g/mol以上、または140,000g/mol以上であり、かつ180,000g/mol以下、170,000g/mol以下、または160,000g/mol以下の範囲を満たす。前記エチレン-酢酸ビニル共重合体およびエチレン-ビニルアルコール共重合体の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によりスチレン換算法で測定することができる。
【0028】
前記アルコール溶媒としては通常エチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化反応に使用される溶媒を制限なく使用できる。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはブタノールなどの低級アルコール溶媒を使用でき、好ましくはメタノールを使用できる。
【0029】
前記アルカリ触媒は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラートなどのアルカリ金属水酸化物やアルコラートのようなアルカリ触媒からなる群より選ばれた1種以上を使用でき、触媒の保管および取り扱いの容易さの側面(ナトリウムメトキシドの場合は空気接触を遮断するが必要があり、取り扱いの際にグローブボックスなどが必要であり、空気に露出すると触媒変性する)から、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを使用することが好ましい。
【0030】
具体的には、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)のけん化反応を二段階に分けて行い、アルカリ触媒溶液を一度に投入せず、それぞれの段階で連続的に滴加する方式で投入することができる。
【0031】
一例として、前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)のけん化反応は、アルコール溶媒中に分散したエチレン-酢酸ビニル共重合体に、第1アルカリ触媒を滴加しながら反応させる第1けん化反応段階;および前記第1けん化反応混合物に第2アルカリ触媒を滴加しながら反応させる第2けん化反応段階;を含むことができる。
【0032】
前記第1けん化反応段階と第2けん化反応段階は連続して行われ得る。すなわち、第1けん化反応段階の終了直後に反応混合物に第2アルカリ触媒溶液を滴加して第2けん化反応を行い得る。
【0033】
また、前記第1アルカリ触媒と第2アルカリ触媒は互いに同一または異なってもよく、第1アルカリ触媒と第2アルカリ触媒として同じ物質を使用することが好ましい。
前記アルカリ触媒の総使用量は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して0.01モル以上、または0.015モル以上であり、かつ0.03モル未満、または0.02モル以下であり得る。
【0034】
従来の方法により高いけん化度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造するためには、酢酸ビニル単位1モルに対して0.03モル以上のアルコール触媒が必要であったが、本発明の製造方法によれば、アルコール触媒の使用量を低減しながらも高いけん化度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造することができる。しかし、アルカリ触媒の総使用量が0.01モル未満で少なすぎる場合はけん化反応が過度に遅くなるので、前記触媒使用量を満たすことが好ましい。
【0035】
また、前記総使用量を満たす範囲で、第1アルカリ触媒および第2アルカリ触媒は、それぞれエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して0.0025モル以上、または0.005モル以上であり、かつ0.02モル以下、または0.01モル以下で使用できる。
【0036】
前記第1アルカリ触媒および第2アルカリ触媒は、1:1~1:4のモル比、または1:1~1:2のモル比で使用できる。このように第2アルカリ触媒の使用量を第1アルカリ触媒使用量と同じかそれ以上にして、より高いけん化度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造することができる。
【0037】
なお、前記アルカリ触媒、例えば、前記第1アルカリ触媒および第2アルカリ触媒は、溶液の形態で前記エチレン-酢酸ビニル共重合体分散液に滴加される。この時、溶媒としては上述したアルコール溶媒を使用でき、エチレン-酢酸ビニル共重合体分散液を製造する際に使用されたものと同じものを使用することが好ましい。各アルカリ触媒溶液の濃度は互いに同一または異なってもよく、エチレン-酢酸ビニル共重合体分散液の濃度および目的とするアルカリ触媒溶液の滴加速度に応じて調節することができる。
【0038】
一例として、第1けん化反応段階では先にアルコール溶媒中にエチレン-酢酸ビニル共重合体を分散させて分散液を製造し、ここに第1アルカリ触媒を滴加してけん化反応を行う。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体分散液を製造するためのアルコール溶媒の使用量は、アルコール溶媒の種類およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の種類と、アルカリ触媒溶液の濃度などに応じて適宜調節することができる。例えばアルコール溶媒は、エチレン-酢酸ビニル共重合体100重量部に対して、100重量部~1000重量部の範囲で使用でき、または200重量部以上、または300重量部以上であり、かつ800重量部、または700重量部、または500重量部以下の範囲で使用できるが、これに制限されない。
【0039】
一方、前記けん化反応工程で前記アルカリ触媒溶液の滴加速度は、反応時間に応じて調節でき、一例としてアルカリ触媒溶液の滴加は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して分当たりアルカリ触媒の投入量が1.0*10-5モル~13*10-5モルになるように行われる。前記滴加速度範囲を満たす場合、けん化反応時間が過度に長くならず、かつ反応効率を上げてけん化度が高いエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造することができる。
【0040】
このような観点から、前記アルカリ触媒溶液の滴加は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して分当たりアルカリ触媒の投入量が2.0*10-5モル以上、または3.0*10-5モル以上、または4.0*10-5モル以上であり、かつ11.0*10-5モル以下、または10.0*10-5モル以下、または9.0*10-5モル以下になるように行われることが好ましい。
【0041】
一例として、前記第1アルカリ触媒溶液の滴加は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して分当たり第1アルカリ触媒の投入量が1.0*10-5モル以上、または2.0*10-5モル以上、または3.0*10-5モル以上、または4.0*10-5モル以上であり、かつ13*10-5モル以下、11.0*10-5モル以下、または10.0*10-5モル以下、または9.0*10-5モル以下であるようにすることが好ましい。
【0042】
また、前記第2アルカリ触媒溶液の滴加は、エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル単位1モルに対して分当たり第2アルカリ触媒の投入量が2.0*10-5モル以上、または3.0*10-5モル以上、または4.0*10-5モル以上であり、かつ8.0*10-5モル以下、または7.0*10-5モル以下、6.0*10-5モル以下であるようにすることが好ましい。
【0043】
前記範囲を満たす限り、前記第2アルカリ触媒溶液の滴加速度は、前記第1アルカリ触媒溶液の滴加速度と同じかまたはそれより速くてもよい。この場合、反応効率が増加して高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体が得られるため好ましい。
【0044】
なお、前記けん化反応工程の温度は、40℃以上、または50℃以上、または60℃以上であり、かつ120℃以下、または110℃以下、または100℃以下であり得る。反応温度が40℃未満である場合、けん化反応速度が過度に遅くなり、120℃を超える場合は副反応が発生しやすいので、前記範囲を満たすことが好ましい。
【0045】
一例として、前記第1けん化反応段階の温度は、40℃以上、または50℃以上、または60℃以上であり、かつ120℃以下、または110℃以下、または100℃以下であることが好ましい。
【0046】
また、前記第2けん化反応段階の温度は、60℃以上、または70℃以上、または80℃以上であり、かつ120℃以下、または110℃以下、または100℃以下であることが好ましい。
【0047】
前記範囲を満たす限り、前記第2けん化反応段階の温度は、第1けん化反応段階の温度と同じかまたはそれより高くてもよい。この場合、反応効率が増加して高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体が得られるため好ましい。
【0048】
一方、前記けん化反応工程の圧力は、1bar以上であり、かつ5bar以下、または4.5bar以下、または4bar以下、または3.5bar以下、または3.2bar以下、または3bar以下であり得る。反応圧力が1bar未満の場合はけん化反応速度が過度に遅くなり、実際工程を具現する際の装置コストの削減および工程安全性の確保の側面から5bar以下で行う。
【0049】
一例として、前記第1けん化反応段階の圧力は、1bar以上であり、かつ2.5bar以下、または2bar以下、または1.8bar以下、または1.5bar以下、または1.2bar以下であり得る。
【0050】
また、前記第2けん化反応段階の圧力は、1bar以上、または1.2bar以上、または1.5bar以上、または2bar以上、または2.8bar以上、または2.5bar以上であり、かつ5bar以下、または4.5bar以下、または4bar以下、または3.2bar以下、または3bar以下であり得る。
また、前記第2けん化反応段階の温度は、60℃以上、70℃以上、または80℃以上であり、かつ120℃以下、110℃以下、または100℃以下であることが好ましい。
【0051】
前記範囲を満たす限り、前記第2けん化反応段階の圧力は、第1けん化反応段階の圧力と同じかまたはそれより高くてもよい。この場合、反応効率が増加して高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体が得られるため好ましい。
なお、前記けん化反応は不活性気体雰囲気下で行われ、転換率を高めるために副生する酢酸メチルを持続的に系外に排出させながら反応を行い得る。
【0052】
一例として、前記第1けん化反応段階の終了は第1アルカリ溶液の滴加が完了する時点で行われ得る。換言すれば、前記第1アルカリ溶液の滴加は第1けん化反応の開始から終了まで連続的に行われ得る。このように反応時間全般にわたって第1アルカリ溶液を滴加することによって、副反応を最小化しながらEVAcのEVOHへの転換率を高めることができる。
【0053】
前記第1けん化反応終了後に、反応混合物に別に準備した第2アルカリ触媒溶液を滴加して第2けん化反応を行う。
前記第1けん化反応段階と第2けん化反応段階は連続して行われ得る。すなわち、第1けん化反応段階の終了直後に反応混合物に第2アルカリ触媒溶液を滴加して第2けん化反応を行い得る。
【0054】
第1けん化反応段階と同様に、前記第2けん化反応段階の終了は第2アルカリ溶液の滴加が完了する時点で行われ得る。すなわち、前記第2アルカリ溶液の滴加は第2けん化反応の開始から終了まで連続的に行われ得る。このように反応時間全般にわたって第2アルカリ溶液を滴加することによって、副反応を最小化しながらEVAcのEVOHへの転換率を高めることができる
【0055】
以上の製造方法によれば、従来のエチレン-酢酸ビニル共重合体の回分式けん化工程に比べて少量のアルカリ触媒を使用して99%以上の高いけん化度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を得ることができる。前記エチレン-ビニルアルコール共重合体はけん化度が高いため優れた気体遮断性を示すので、食品包装用途などに有用に用いることができる。
【0056】
具体的には、前記製造方法により製造されるエチレン-ビニルアルコール共重合体は、けん化度が99%以上、または99%~99.9%であり;エチレン含有量が20モル%以上、または25モル%以上、または27モル%以上、または30モル%以上であり、かつ60モル%以下、または50モル%以下、または48モル%以下、または35モル%以下であり;重量平均分子量が120,000g/mol以上、または130,000g/mol以上、または140,000g/mol以上であり、かつ180,000g/mol以下、または170,000g/mol以下、または160,000g/mol以下であり得る。このようなエチレン-ビニルアルコール共重合体は優れた成形性および気体遮断性を示すことができる。
【0057】
一例として、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体のけん化度は、H-NMRデータのピーク積分比(integral number ratio)により算測することができる。具体的な測定方法は試験例に示すとおりである。
【0058】
また、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体は、黄色度(YI,Yellowness Index)が13以下、または12以下、または11以下、または10以下、または9.8以下、または9.5以下、または9以下、または8.9以下、または8.5以下、または8.2以下、または8以下、または7.9以下を満たして優れた色相特性を示すことができる。
【0059】
一例として、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体の黄色度は色差計(UltraScan VIS,hunterlab社)を用いて測定することができる。具体的な測定方法は試験例に示すとおりである。
【0060】
超臨界抽出工程
本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法は、上述したけん化反応により得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体に対して超臨界抽出工程を最適化した条件下で行い、アルコール溶媒などの副産物を効果的に除去して追加の洗浄工程を行うことなく後処理工程、例えば、カルボン酸含有水溶液を用いた浸漬工程をすぐに行うことができる。
【0061】
特に、本発明は上述したアルカリ触媒を用いてけん化反応により得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体に対して、従来の方式の脱アルコールおよび洗浄工程を行う代わりに、超臨界二酸化炭素の条件下で抽出工程を行ってけん化反応生成物に含まれたアルコール溶媒に抽出工程を行うことを特徴とする。
【0062】
具体的には、本発明では上述したけん化反応を行った後に、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むけん化反応生成物を超臨界抽出器(extractor)に投入してCOを注入してアルコールを抽出することができる。
【0063】
このような超臨界抽出工程は含水状態の高分子あるいは水(HO)を過量含む化合物から水を除去するために用いるものではないので、従来より知られているエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造工程での「含水EVOH」を乾燥する工程に適用することは難しい。特に、超臨界CO流体が超臨界抽出器(extractor)を経た後に最終的に再凝縮および冷却されて液化状態に戻るが、水が過剰な場合はセパレータで100%凝縮しなかった水がCO超臨界設備のラインに流れ込み、冷却されたCOによって凍結し、これによりラインが詰まり異常な高圧が発生し、これによる高圧爆発の危険性および設備故障をもたらすので、「含水EVOH」の水分量を減らす乾燥工程での使用は困難である。
【0064】
本発明の抽出段階での前記超臨界二酸化炭素の条件は、COが超臨界状態になる臨界温度および圧力であり、具体的にはエチレン-ビニルアルコール共重合体の物性を低下させることなく、けん化工程後にエチレン-ビニルアルコール共重合体に含有された触媒副産物を効果的に除去し、アルコール溶媒の回収率を高められるようにするという側面から、COの圧力80bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上60℃以下である。
【0065】
具体的には、前記超臨界抽出器に注入されるCOの圧力は、アルコール溶媒の抽出効率を高める側面から、80bar以上であり、より具体的には85bar以上、または90bar以上、または95bar以上、または98bar以上、または100bar以上、または105bar以上、または110bar以上、または115bar以上、または120bar以上であり得る。ただし、エチレン-ビニルアルコール共重合体の物性低下防止の側面から、150bar以下であり、より具体的には148bar以下、または145bar以下、または143bar以下、または140bar以下であり得る。また、前記超臨界抽出工程の温度は、アルコール溶媒の抽出効率を高める側面から、40℃以上であり、より具体的には42℃以上、または43℃以上、または45℃以上であり得る。ただし、エチレン-ビニルアルコール共重合体の物性低下防止の側面から、60℃以下であり、より具体的には55℃以下、または53℃以下、または52℃以下であり得る。ここで、前記COの圧力および温度が過度に高いと、その分抽出器後部のCO流量が増加し、セパレータ(separator)などの装置容量とそれによる冷暖房エネルギーの増加などの問題が発生し得る。
【0066】
具体的には、前記超臨界抽出段階の前に、前記けん化反応混合物から、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むけん化反応生成物をゲル化または固化する段階;をさらに含むことができる。
【0067】
一例として、本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法は、アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させてエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させるけん化反応段階;
【0068】
前記けん化反応混合物から、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むけん化反応生成物をゲル化または固化する段階;および
前記ゲル化または固化した、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むけん化反応生成物を超臨界抽出器(extractor)に投入してCOを注入してアルコールを抽出する超臨界抽出段階;を含むことができる。
【0069】
この時、前記超臨界二酸化炭素の条件は、COの圧力80bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上60℃以下であり、具体的な超臨界二酸化炭素の条件は前述したとおりである。
【0070】
この時、前記ゲル化または固化方法として、けん化反応生成物を回収する過程や回収した後に約5℃以下または約-10℃以上約5℃以下に冷却することにより行われる。例えば、前記けん化反応生成物の回収中に移送管で約5℃以下または約-10℃以上約5℃以下にライン冷却してストランド(strand)状に吐出する方法を適用するか、前記けん化反応生成物を回収した後に約5℃以下または約-10℃以上約5℃以下で約3時間以上12時間以下で冷却してケーキ(cake)状にゲル化または固化させる方法を適用することができる。一例として、前記ストランド(strand)は円柱状になり、前記ケーキ(cake)は直方体状になる。ただし、アルコール溶媒の抽出効率を高める側面から、けん化反応生成物を約-10℃以上約5℃以下に冷却してストランド(strand)状にゲル化または固化した後に、超臨界二酸化炭素の条件下でアルコール溶媒を抽出することが好ましい。
【0071】
具体的には、前記超臨界抽出段階を行うことにおいて、前記けん化反応生成物は体積当たり外部表面積が約5cm/cm以上または約5cm/cm以上約50cm/cm以下であり得る。より具体的には、前記けん化反応生成物の体積当たり外部表面積は、約5cm/cm以上、または約6cm/cm以上、または約8cm/cm以上、または約9cm/cm以上、または約10cm/cm以上、または約11cm/cm以上、または約12cm/cm以上、または約13cm/cm以上であり得る。ただし、前記けん化反応生成物をゲル化または固化する実際の工程効率を勘案すると、約45cm/cm以下、または約40cm/cm以下、または約35cm/cm以下、または約30cm/cm以下、または約28cm/cm以下、または約25cm/cm以下、または約22cm/cm以下、または約20cm/cm以下、または約18cm/cm以下、または約16cm/cm以下、または約15cm/cm以下であり得る。一例として、前記けん化反応生成物の体積当たり外部表面積は、約9cm/cm~約20cm/cm、または約10cm/cm~約18cm/cm、または約10cm/cm~約15cm/cm、または約10cm/cm~約12cm/cmであり得る。前記けん化反応生成物の体積当たり外部表面積は、ポリマーの体積および外部表面積を測定できると知られている多様な方法により測定することができ、格別な制限なく適用することができる。一例として、前記けん化反応生成物がストランド(strand)状やケーキ(cake)状である場合、いずれも外観で測定される長さ、直径、幅、高さなどを測定し、これにより体積および表面積を計算することができる。
【0072】
一方、本発明で上述したけん化反応により得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体に対して超臨界抽出工程でCOが注入される超臨界抽出器から排出される抽出液を、濾過装置を用いて固状のエチレン-ビニルアルコール共重合体を濾過する工程をさらに含むことができる。前記濾過装置は固状のエチレン-ビニルアルコール共重合体を濾過できる装置であれば制限されず、例えばフィルタであり得る。前記フィルタの規格は特に制限されない。
【0073】
また、本発明の一例において、前記濾過装置により濾過された抽出液に対して追加でセパレータを用いて気液分離する工程をさらに含むことができる。
前記セパレータは超臨界抽出器から排出される抽出液から二酸化炭素とアルコール溶媒などを分離するための装置であり、例えばフラッシュセパレータ(flash separator)または多段蒸留器などを含む気液分離器であり得る。
【0074】
前記セパレータは、例えばセパレータ装置の上部を介して気状の二酸化炭素を分離排出し、装置の下部を介して液状のアルコール溶媒およびその他成分を分離排出することもできる。上部に分離排出された二酸化炭素は後の工程で液状に凝縮して超臨界抽出器に再循環され得、液状として排出されたアルコール溶媒などは精製過程などを経た後にけん化過程の原料として再利用されることができる。また、前記精製過程の前に追加的な気液分離過程が行われてもよい。
【0075】
一方、前記超臨界抽出工程により、アルコール溶媒の回収率が88重量%以上で高く示され得、好ましくは90重量%以上、または92重量%以上、または93重量%以上、または95重量%以上、または96重量%以上、または97重量%以上、または98重量%以上、または98.5重量%以上、または99重量%以上、または99.5重量%以上、または99.9重量%以上であり得る。
【0076】
具体的には、前記アルコール溶媒の回収率は、上述したアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体をけん化反応させた後に超臨界抽出工程における、超臨界抽出前のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の重量(A)、超臨界抽出した後のEVOHの重量(B)、超臨界抽出工程により回収アルコール溶媒の重量(C)をグラム(g)単位でそれぞれ測定し、下記式1のようにけん化反応後の超臨界抽出工程におけるアルコール溶媒の回収率(%)を測定した。
【0077】
[式1]
超臨界抽出工程におけるアルコール溶媒の回収率(%)=C/(A-B)×100
前記式1において、
Aは、超臨界抽出工程を行う前のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の重量(g)であり、
Bは、超臨界抽出工程を行った後のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)の重量(g)であり、
Cは、超臨界抽出工程により回収されたアルコール溶媒の重量(g)である。
【0078】
また、前記超臨界抽出工程を行った後に得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む生成物は、前記生成物の総重量に対してアルコール溶媒の含有量が12重量%以下であり得、好ましくは10重量%以下、または8重量%以下、または10重量%以下、または8重量%以下、または7重量%以下、または5重量%以下、または4重量%以下、または3重量%以下、または2重量%以下、または1.5重量%以下、または1重量%以下、または0.5重量%以下、または0.1重量%以下であり得る。より好ましくは、抽出段階後に得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体およびそれを含む生成物ではアルコール溶媒が実質的に検測されないこともある。
【0079】
一方、前記超臨界抽出工程によって、前記けん化反応に使用した触媒に含まれたアルカリ成分の除去率が25%以上であり得、好ましくは26%以上、または27%以上、または28%以上、または29%以上、または30%以上、または31%以上、または33%以上、または35%以上、または40%以上、または45%以上、または50%以上であり得る。具体的には、前記アルカリ成分の除去率は、超臨界抽出前のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)のアルカリ成分の含有量(a)、抽出後のEVOHのアルカリ成分の含有量(b)をそれぞれ測定し、下記式2ようにアルカリ成分の除去率(%)を測定する。
【0080】
[式2]
アルカリ成分の除去率(%)=100×(1-b/a)
前記式2において、
aは、超臨界抽出工程を行う前のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)に含まれた触媒アルカリ成分の残留量(ppm)であり、
bは、超臨界抽出工程を行った後のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)に含まれた触媒アルカリ成分の残留量(ppm)である。
【0081】
前記超臨界抽出工程により、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)に含まれた触媒アルカリ成分の残留量(ppm)、すなわち、前記けん化反応に使用した触媒に含まれたアルカリ成分の残留量(ppm)は誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)を用いて測定することができ、具体的には次のような条件で測定することができる。
- 前処理:microwave digestion、250℃,30min昇温、250℃,15min維持(90bar)
- ICP-OES分析条件:
RF power(W):1300
Plasma Gas Flow(L/min):15
Aux.Gas flow (L/min):0.20
Neb.Gas flow (L/min):0.80
Internal Standard:Sc
【0082】
また、前記超臨界抽出工程を行った後に得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体を含む生成物中のアルカリ成分の残留量は、すなわち、前記生成物の総重量に対して前記けん化反応に使用した触媒に含まれたアルカリ成分の残留量が100,000ppm以下であり得、好ましくは9000ppm以下、または8700ppm以下、または7000ppm以下、または5000ppm以下、または3000ppm以下、または2500ppm以下、または2200ppm以下、または2100ppm以下、または2000ppm以下、または1500ppm以下、または1000ppm以下、または800ppm以下、または500ppm以下、または300ppm以下、または100ppm以下であり得る。より好ましくは、抽出段階後に得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体およびそれを含む生成物ではけん化反応に使用した触媒に含まれたアルカリ成分が実質的に検側されないこともある。
【0083】
一例として、本発明では上述したけん化反応により得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体に対して超臨界抽出器(extractor)に投入し、COを注入して抽出器の内部を50℃、150barに制御した後、20分間定常(Steady)段階として追加のCOを流さず温度と圧力を維持し、その後再び20分間循環段階としてCOを50℃、150barで6.5L/minの速度で連続して注入し、これを3回以上繰り返して合計120分間超臨界抽出工程を行い得る。
【0084】
本発明による超臨界抽出工程は、水蒸気や水を使用せず、メタノールなどのアルコール溶媒を効果的に回収するため、アルコール溶媒の再利用の際に水とアルコール溶媒を分離する追加の工程を必要とせずにけん化反応に再利用することができる点で、全体の工程効率を大きく改善することができる。
【0085】
特に、本発明によれば、前述したように圧力および温度範囲の条件下で超臨界抽出工程を行うことによって、前記けん化反応により製造されるエチレン-ビニルアルコール共重合体の物性低下を最小化することができる。
【0086】
そのため、本発明による超臨界抽出工程を行った後に得られたエチレン-ビニルアルコール共重合体は、けん化度が99%以上、または99%~99.9%であり;エチレン含有量が20モル%以上、または25モル%以上、または27モル%以上、または30モル%以上であり、かつ60モル%以下、または50モル%以下、または48モル%以下、または35モル%以下であり;重量平均分子量が120,000g/mol以上、または130,000g/mol以上、または140,000g/mol以上であり、かつ180,000g/mol以下、または170,000g/mol以下、または160,000g/mol以下であり得る。また、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体は、黄色度(YI,Yellowness Index)が13以下、または12以下、または11以下、または10以下、または9.8以下、または9.5以下、または9以下、または8.9以下、または8.5以下、または8.2以下、または8以下、または7.9以下を満たして優れた色相特性を示すことができる。ここで、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体のけん化度および黄色度は、前記けん化反応段階で記載した方法で測定することができ、具体的な測定方法は試験例に示したとおりである。
【0087】
後処理段階
一方、本発明によるエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法で、上述したけん化反応工程および超臨界抽出工程を行った後に、添加剤含有水溶液に浸漬して乾燥する後処理段階を追加で行うことができる。
具体的には、前記超臨界抽出工程を行った後に、エチレン-ビニルアルコール共重合体をカルボン酸含有水溶液に浸漬させた後に水を乾燥させる段階;をさらに含むことができる。
【0088】
一例として、本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法は、アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させてエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させるけん化反応段階;
超臨界二酸化炭素の条件下で前記けん化反応生成物に含まれたアルコール溶媒を抽出する段階;および
前記超臨界抽出工程を行った後に、エチレン-ビニルアルコール共重合体をカルボン酸含有水溶液に浸漬させた後に水を乾燥させる段階;を含むことができる。
【0089】
他の一例として、本発明のエチレン-ビニルアルコール共重合体の製造方法は、アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体を反応させてエチレン-ビニルアルコール共重合体を生成させるけん化反応段階;
前記けん化反応混合物から、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体を含むけん化反応生成物をゲル化または固化する段階;
前記ゲル化または固化した、超臨界二酸化炭素の条件下で前記けん化反応生成物に含まれたアルコール溶媒を抽出する段階;および
前記超臨界抽出工程を行った後に、エチレン-ビニルアルコール共重合体をカルボン酸含有水溶液に浸漬させた後に水を乾燥させる段階;を含むことができる。
【0090】
この時、前記超臨界二酸化炭素の条件は、COの圧力80bar以上150bar以下であり、温度は40℃以上60℃以下であり、具体的な超臨界二酸化炭素の条件は前述したとおりである。
具体的には、前記カルボン酸水溶液は酢酸を含み得る。
また、カルボン酸含有水溶液の濃度は0.01重量%~1重量%であり得る。
【0091】
前記浸漬工程は20℃~50℃条件下で1回~5回、各回当たり10分~60分時間の間行う。
一例として、前記超臨界抽出工程を行った後に、エチレン-ビニルアルコール共重合体を0.01重量%~1重量%のカルボン酸含有水溶液でエチレン-ビニルアルコール共重合体を1~5回、各回当たり10~60分間浸漬し、攪拌した後に乾燥させることができる。
【0092】
また、上述したカルボン酸含有水溶液に浸漬させた後に水を乾燥させる段階は、40℃~100℃条件下で3時間~50時間の間行い、一回あるいは複数回乾燥し得る。
前記水分乾燥工程は、含水率5%未満または1%未満、より好ましくは0.5%未満になるように行い得る。
【0093】
以下、本発明の理解を深めるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって明白なことであり、このような変更および修正が添付された特許請求の範囲に属するのは言うまでもない。
【0094】
実施例1
1-1.けん化反応工程
エチレン含有率32モル%のエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)100重量部およびメタノール(MeOH)400重量部を含む混合液(総固形分含有量20%)をけん化反応器に入れて、EVAc固形分に対して0.27wt%のNaOHをMeOHに1%希釈状態で水酸化ナトリウムのメタノール溶液(16g/L)20重量部(水酸化ナトリウム/酢酸ビニル単位=0.01/1,モル比)をけん化反応器に60℃の常圧(約1bar)で2.5時間の間連続的に滴加しながらけん化反応を行った。この時、滴加速度は、EVAcの酢酸ビニル単位当たり水酸化ナトリウムの投入モル数が秒当たり1.4×10-6モルになるようにした。上記のように水酸化ナトリウムメタノール溶液(NaOH/MeOH溶液)を反応器内に連続して投入しながら、反応器内に窒素ガスを吹き込んで、副生する酢酸メチルをメタノールと共に系外に除去しながら、第1けん化反応(反応器温度:60℃、反応器圧力:常圧、反応時間:2.5時間)を行った。
【0095】
そして、前記反応物にEVAc固形分に対して0.53wt%のNaOHをMeOHに1%希釈状態で別途準備した水酸化ナトリウムのメタノール溶液(16g/L)20重量部(水酸化ナトリウム/酢酸ビニル単位=0.01/1,モル比)をけん化反応器に3時間の間連続的に滴加しながら第2けん化反応を行った。この時、滴加速度は、EVAcの酢酸ビニル単位当たり水酸化ナトリウムの投入モル数が秒当たり9.3×10-7モルになるようにした。上記のように水酸化ナトリウムのメタノール溶液を反応器内に連続して投入しながら反応器内に窒素ガスを吹き込んで、副生する酢酸メチルをメタノールと共に系外に除去しながら第2けん化反応(反応器温度:90℃、反応器圧力:3bar、反応時間:3時間)を行った。
【0096】
このようにNaOHの投入を終了した後、上述した条件(反応器温度:90℃、反応器圧力:3bar)下で1時間の間さらに反応させた。
【0097】
その後、反応混合物にNaOHに対して同じモル当量になる酢酸水溶液(9g/L)120重量部(酢酸/水酸化ナトリウム=1/1,モル比)を投入して30分間攪拌して中和して反応を停止させ、反応溶液を60~70℃で総固形分含有量(TSC,total solid contents)15~20%になるまで濃縮した。この時、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)60重量部、メタノール120重量部および水120重量部からなるEVOHメタノール/水溶液を得た。前記EVOH溶液をライン移送中に5℃に冷却して固化させて約直径2mmの円柱状のエチレン-ビニルアルコールストランド(EVOH strand)として吐出した。この時、前記エチレン-ビニルアルコールストランド(EVOH strand)の体積当たりの外部表面積は10~12cm/cmであった。
【0098】
1-2.超臨界抽出工程
それから、前記EVOH Strand 64g(けん化反応後の抽出工程後のEVOHの重量、A)を70L超臨界抽出器(extractor)に投入しCOを注入して抽出器の内部を50℃、150barに制御した後、20分間定常(Steady)段階として追加のCOを流さず温度と圧力を維持した(定常(Steady)段階:抽出器へのCO投入なし、抽出器からセパレータへのCO流出なし)。その後再び20分間循環段階としてCOを50℃、150barで6.5L/minの速度で連続して注入した(循環段階:COリザーバ→抽出器→セパレータ→COリザーバにCOが流れる)。これを3回繰り返して合計120分間超臨界抽出工程を行った。その後、前記超臨界抽出器に連結されたセパレータ(Separator)により二酸化炭素と抽出液を50bar、40℃で気液分離し、これによりガス状のCOおよび液状のメタノールを回収した。このように超臨界抽出工程により回収したメタノールは51.939g(抽出工程後に回収されたMeOH重量、C)であった。その後、前記超臨界抽出器(extractor)を常圧常温(約20~23℃、約1bar)に変更した後に脱アルコール抽出を完了したエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を回収した。この時、EVOHは11.8g(抽出工程後のEVOHの重量、B)であった。
【0099】
1-3.後処理段階(浸漬、乾燥)
このように得られたEVOHを0.5%濃度の酢酸(acetic acid)水溶液に1回、1時間の間浸漬し、これを脱イオン水(DIW,deionized water)に1回、1時間の間浸漬した後、そして90℃、120rpm条件下で押出機で押出した後(含水率約25重量%)、80℃で16時間の間減圧乾燥して含水率0.01重量%のEVOHを製造した。
【0100】
実施例2
実施例1と同様の方法でけん化反応工程と超臨界抽出工程、後処理段階として浸漬乾燥工程を行い、超臨界抽出工程における超臨界二酸化炭素の条件としてCOの温度と圧力を40℃、100barで行って、実施例2のEVOHを製造した。
【0101】
実施例3
実施例1と同様の方法でけん化反応工程と超臨界抽出工程、後処理段階として浸漬乾燥工程を行い、けん化反応から中和および濃縮まで完了した後、EVOH溶液を容器あるいはプレート(Plate)にドレーン(Drain)した後に-5℃、6h冷却して固化させて体積当たり外部表面積6~8cm/cmの立方体状を有するEVOH Cakeを得た後に超臨界抽出工程を行って、実施例3のEVOHを製造した。
【0102】
比較例1
実施例1と同様の方法でけん化反応工程と超臨界抽出工程、後処理段階として浸漬乾燥工程を行い、超臨界抽出工程における超臨界二酸化炭素の条件としてCOの温度と圧力を35℃、80barで行って、比較例1のEVOHを製造した。
【0103】
比較例2
実施例1と同様の方法でけん化反応工程と超臨界抽出工程、後処理段階として浸漬乾燥工程を行い、超臨界抽出工程における超臨界二酸化炭素の条件としてCOの温度と圧力を80℃、160barで行って、比較例1のEVOHを製造した。
【0104】
<試験例>
前記実施例および比較例によるエチレン-ビニルアルコール共重合体について下記のような方法で各物性を測定し、その測定結果を下記表1に示した。
(1)けん化反応後の脱アルコール抽出工程によるMeOHの除去率
実施例および比較例によりアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVOH)をけん化反応させた後に脱アルコール抽出工程において、超臨界抽出工程前に測定したEVOHの重量(A)、超臨界抽出工程後に測定したEVOHの重量(B)、超臨界抽出工程により回収されたアルコール溶媒(MeOH)の重量(C)をグラム(g)単位でそれぞれ測定し、下記式3のようにけん化反応後の脱アルコール抽出工程におけるMeOH回収率(%)を測定した。
[式3]
脱アルコール超臨界抽出工程におけるMeOH回収率(%)=C/(A-B)×100
【0105】
(2)けん化反応後の脱アルコール抽出工程による残余アルカリ成分の除去率
実施例および比較例によりアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVOH)をけん化反応させた後、脱アルコール抽出工程を行った後に、次のような条件でNaなどの残余アルカリ成分の除去率を測定した。
【0106】
具体的には、超臨界抽出工程前に測定したエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)のアルカリ成分の含有量(a)、超臨界抽出工程後に測定したEVOHのアルカリ成分の含有量(b)をppm単位でそれぞれ測定し、下記式4のようにアルカリ成分の除去率(%)を測定した
[式4]
アルカリ成分の除去率(%)=100×(1-b/a)
【0107】
また、上述したアルカリ成分の含有量(ppm)は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-OES)を用いて測定し、具体的には次のような条件で測定した。
- 前処理:microwave digestion、250℃、30min昇温、250℃、15min維持(90bar)
- ICP-OES分析条件:
RF power(W):1300
Plasma Gas Flow(L/min):15
Aux. Gas flow(L/min):0.20
Neb. Gas flow(L/min):0.80
Internal Standard:Sc
【0108】
(3)エチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化度
EVOHのH-NMRデータのピーク積分比(integral number ratio)により製造されたEVOHのけん化度(%)を計算した。
具体的には、H-NMRデータのビニルアルコール単位から由来する-OHピーク(δ4.05-4.72)の積分値と酢酸ビニル単位から由来する-CHCOO-ピーク(δ1.99)の積分値を導き出して、ビニルアルコール単位と酢酸ビニル単位の合計に対するビニルアルコール単位のパーセンテージ(%)を計算してけん化度を導き出した。
【0109】
(4)エチレン-酢酸ビニル共重合体の黄色度(YI)
実施例および比較例で製造したEVOHをペレタイザで切断してEVOHペレットを得た後に、前記ペレットを測定用セル(Cell)に入れて色差計(UltraScan VIS,hunterlab社)を用いて黄色度(YI,Yellowness Index)を測定した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記表1に示すように、本発明により塩アルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体をけん化反応させた後に、超臨界抽出工程を、圧力および温度を最適の範囲にして行い、多段蒸留塔やパイプミキサと水槽などの複雑な装置設備を設けることなく廃液発生を最小化し、触媒残余物などの副産物を効果的に除去することによって、高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を劣化(黄変)することなく効率よく得ることができることを確認した。
【0112】
そして、実施例1、2および3を比較すると、けん化反応生成物をストランドのように表面積が広い形状を適用すると、同じ超臨界二酸化炭素の条件下でもより高いMeOH回収率を達成できることがわかる。
【0113】
一方、比較例1および2の結果から、COの圧力および温度を80barおよび35℃を適用すると、MeOHの回収率が83%で大幅に低下することが確認され、また、COの圧力および温度を160barおよび80℃を適用する場合はエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が劣化して黄色度(YI)が15.2に大きく増加することが確認された。
【0114】
このように、本発明ではエチレン-ビニルアルコール共重合体に最適化された条件下で超臨界抽出を行うことによって、エチレン-ビニルアルコール共重合体の物性を低下させることなく、水蒸気や水を使用せず、メタノールなどのアルコール溶媒を効果的に回収し、アルコール溶媒の再利用の際に水とアルコール溶媒を分離する工程を追加することなく、けん化反応に再利用できる点で全体の工程効率を大きく改善できる優れた効果がある。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
本発明で、反応物質であるエチレン-酢酸ビニル共重合体は、市販品を使用するか、またはエチレンおよび酢酸ビニル単量体を共重合して製造することができる。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニルの他に、これらと共重合できる単量体をさらに含んで共重合されたものであり得る。このような単量体の例としてはプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセンなどのα-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸、その塩、その無水物または単一またはジアルキルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸メタアリルスルホン酸などのオレフィンスルホン酸またはその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのビニル系単量体;などが挙げられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
従来の方法により高いけん化度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造するためには、酢酸ビニル単位1モルに対して0.03モル以上のアルカリ触媒が必要であったが、本発明の製造方法によれば、アルカリ触媒の使用量を低減しながらも高いけん化度を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体を製造することができる。しかし、アルカリ触媒の総使用量が0.01モル未満で少なすぎる場合はけん化反応が過度に遅くなるので、前記触媒使用量を満たすことが好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
1-2.超臨界抽出工程
それから、前記EVOH Strand 64g(けん化反応後の抽出工程のEVOHの重量、A)を70L超臨界抽出器(extractor)に投入しCOを注入して抽出器の内部を50℃、150barに制御した後、20分間定常(Steady)段階として追加のCOを流さず温度と圧力を維持した(定常(Steady)段階:抽出器へのCO投入なし、抽出器からセパレータへのCO流出なし)。その後再び20分間循環段階としてCOを50℃、150barで6.5L/minの速度で連続して注入した(循環段階:COリザーバ→抽出器→セパレータ→COリザーバにCOが流れる)。これを3回繰り返して合計120分間超臨界抽出工程を行った。その後、前記超臨界抽出器に連結されたセパレータ(Separator)により二酸化炭素と抽出液を50bar、40℃で気液分離し、これによりガス状のCOおよび液状のメタノールを回収した。このように超臨界抽出工程により回収したメタノールは51.939g(抽出工程後に回収されたMeOH重量、C)であった。その後、前記超臨界抽出器(extractor)を常圧常温(約20~23℃、約1bar)に変更した後に脱アルコール抽出を完了したエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を回収した。この時、EVOHは11.8g(抽出工程後のEVOHの重量、B)であった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
比較例2
実施例1と同様の方法でけん化反応工程と超臨界抽出工程、後処理段階として浸漬乾燥工程を行い、超臨界抽出工程における超臨界二酸化炭素の条件としてCOの温度と圧力を80℃、160barで行って、比較例のEVOHを製造した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
<試験例>
前記実施例および比較例によるエチレン-ビニルアルコール共重合体について下記のような方法で各物性を測定し、その測定結果を下記表1に示した。
(1)けん化反応後の脱アルコール抽出工程によるMeOHの除去率
実施例および比較例によりアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)をけん化反応させた後に脱アルコール抽出工程において、超臨界抽出工程前に測定したEVOHの重量(A)、超臨界抽出工程後に測定したEVOHの重量(B)、超臨界抽出工程により回収されたアルコール溶媒(MeOH)の重量(C)をグラム(g)単位でそれぞれ測定し、下記式3のようにけん化反応後の脱アルコール抽出工程におけるMeOH回収率(%)を測定した。
[式3]
脱アルコール超臨界抽出工程におけるMeOH回収率(%)=C/(A-B)×100
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
(2)けん化反応後の脱アルコール抽出工程による残余アルカリ成分の除去率
実施例および比較例によりアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVAc)をけん化反応させた後、脱アルコール抽出工程を行った後に、次のような条件でNaなどの残余アルカリ成分の除去率を測定した。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
前記表1に示すように、本発明によりアルカリ触媒の存在下でエチレン-酢酸ビニル共重合体をけん化反応させた後に超臨界抽出工程を圧力および温度を最適の範囲にして行い、多段蒸留塔やパイプミキサと水槽などの複雑な装置設備を設けることなく廃液発生を最小化し、触媒残余物などの副産物を効果的に除去することによって、高いけん化度のエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を劣化(黄変)することなく効率よく得ることができることを確認した。
【国際調査報告】