(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ合成装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/162 20170101AFI20241010BHJP
B01J 27/043 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C01B32/162
B01J27/043 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522105
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 KR2022015959
(87)【国際公開番号】W WO2023068806
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0139496
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】503389611
【氏名又は名称】テクナ・プラズマ・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ドン・シク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジアイン・グオ
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・ジン・イ
(72)【発明者】
【氏名】グン・ギ・ミン
(72)【発明者】
【氏名】ド・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】イェ・ビョル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヒュン・イ
【テーマコード(参考)】
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G146AA11
4G146AB06
4G146AD20
4G146AD22
4G146AD25
4G146BA12
4G146BB22
4G146BC09
4G146BC44
4G169AA02
4G169AA08
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC66C
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169BD08C
4G169FA01
4G169FB58
(57)【要約】
本発明は、直列連結されたプラズマ装置およびCVD反応器を含むカーボンナノチューブ製造装置に関し、プラズマ装置により製造されたエアロゾル状態のナノ粒子触媒をCVD反応器の内部に移送してカーボンナノチューブを合成することで、優れた物性のカーボンナノチューブを連続的に合成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ装置(1)と、
CVD反応器(2)と、
を含み、
前記プラズマ装置は、触媒原料が投入される原料投入部(11)、投入された触媒原料を気化させて触媒蒸気を形成するプラズマトーチ(12)、および前記触媒蒸気が凝縮してナノ粒子触媒が生成される急冷ゾーン(13)を含み、
前記CVD反応器は、前記急冷ゾーンで生成された触媒が投入される触媒投入部(21)、原料ガスを投入するガス投入部(22)、およびカーボンナノチューブの合成反応が行われるマッフル(23)を備える、カーボンナノチューブ製造装置。
【請求項2】
前記急冷ゾーンは、
前記プラズマトーチと隣接する第1急冷ゾーン(131)と、
前記第1急冷ゾーンと隣接する第2急冷ゾーン(132)と、を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項3】
前記急冷ゾーンは、急冷ガスを投入する冷却ガス投入部(130)を備える、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項4】
前記冷却ガス投入部は、流量制御手段を備える、請求項3に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項5】
前記第1急冷ゾーンおよび第2急冷ゾーンは、それぞれ急冷ガスを投入する冷却ガス投入部(130)を備え、
前記第2急冷ゾーンは、水素ガスを投入する水素ガス投入部(133)をさらに備える、請求項2に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項6】
前記CVD反応器は、内部を加熱するための加熱手段、および内部の均一な気流の流れのための分散板をさらに含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項7】
前記ガス投入部は、投入される原料ガスを予熱するための予熱手段(221)を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項8】
前記CVD反応器と連結され、合成された粉末状のカーボンナノチューブを回収するための回収装置(3)をさらに含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項9】
前記回収装置は、サイクロンおよびフィルタのうち少なくとも1つを含む、請求項8に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項10】
前記装置が連続運転される、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項11】
合成されたカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはその混合物である、請求項1に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【請求項12】
合成されたカーボンナノチューブが粉末状である、請求項1~11のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ装置とCVD反応器を連結して用いることで高品質のカーボンナノチューブを合成することができるカーボンナノチューブ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、1層の炭素原子厚さを有するグラフェンが円柱状に丸まった形態のナノ構造であり、囲まれたシェルの層数に応じて単層および多層カーボンナノチューブに分類される。一般的に、カーボンナノチューブは、直径が数nmから数十nmであり、長さが直径の数十倍から数千倍以上長いものを指す。そして、カイラル指数(チューブの直径および丸まる角度を(n、m)の整数で表した値)に応じて金属(metallic)になることもあれば、半導体(semiconducting)になることもある。また、単層カーボンナノチューブは、ファンデルワールス力(Van der Waals Force)により、複数本が束ねられた「バンドル」状に整列する場合が多い。一方、多層カーボンナノチューブは、多層のシェルで構成され、各層の直径とカイラル指数が異なる。そして、多層カーボンナノチューブは、結晶構造に欠陥(sp3 C、空孔(vacancy)など)が多く、機械的物性が弱いという特徴がある。
【0003】
カーボンナノチューブは、従来の材料よりも高い導電性と熱伝導性、優れた強度などの特性を示すため、エネルギー、ナノテクノロジー、光学、および材料工学などの様々な分野で有用に用いることができる。例えば、カーボンナノチューブは、機械的に数千GPa程度の高弾性と数十GPa程度の高強度特性を有する。
【0004】
応用の面で、カーボンナノチューブは、新しい電極材料であるリチウムイオン電池用の正・負極の導電材として活用可能である。カーボンナノチューブの優れた強度、伝導性、および低密度により、従来のカーボンブラック導電材に比べて充/放電時の電池の寿命および容量の改善が可能である。特に、単層カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブに比べて使用量が1/10レベルであるにもかかわらず、シリコン負極に適用時に明らかな寿命改善効果がある。
【0005】
カーボンナノチューブを産業的に利用するための製造方法の面でも様々な研究が進められている。従来、カーボンナノチューブを合成できる方法としては、アーク放電法、レーザー蒸着法、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition)などが知られている。アーク放電法は、大気圧よりも低い圧力のアルゴンまたは水素雰囲気で、炭素棒間のアーク放電を誘導することでカーボンナノチューブを製造する方法である。例えば、Ni・Y触媒を用いて、高純度および高結晶であるとともに直径が均一な単層カーボンナノチューブを製造することができる。アーク放電法の場合、欠陥の少ない高品質のカーボンナノチューブを得ることができるという利点があるが、非晶質炭素が同時に生成され、大量合成に適さないという欠点がある。
【0006】
レーザー蒸着法は、900℃以上の高温雰囲気で、ニッケルやコバルトのような金属触媒を混合したカーボンターゲットにレーザーのような強いパルス光を照射してカーボンナノチューブを製造する方法である。レーザー蒸着法の場合、高純度のカーボンナノチューブを製造することができ、照射されるパルス光の条件などを変更することでカーボンナノチューブの直径をある程度調節することができるという利点があるが、これも生産規模の競争力を考慮すると、大量生産には限界がある。
【0007】
化学気相成長法は、大量合成が可能であるという点で、産業分野で最も多く用いられる方法である。化学気相成長法の種類としては、流動床化学気相成長法(Fluidized Bed Chemical Vapor Deposition;FBCVD)と浮遊触媒化学気相成長法(Floating Catalyst Chemical Vapor Deposition;FCCVD)などが挙げられる。化学気相成長法は、原料ガス、還元ガス、およびキャリアガスを含む反応ガスと触媒を高温で反応させ、気相でカーボンナノチューブを製造する方法である。すなわち、炭素原料ガスがナノ粒子触媒により分解されることで、液相(liquid)のナノ粒子触媒の表面で固相(solid)のカーボンナノチューブが形成される。具体的な一例として、シリカに担持されたFe:Mo触媒とメタン(CH4)を原料とし、500℃~900℃の範囲で単層カーボンナノチューブを合成することができる。しかし、担持触媒や触媒前駆体を用いて単層カーボンナノチューブを大量合成するには、生産性と収率の面で限界がある。
【0008】
そこで、上述した従来のカーボンナノチューブの合成方法の問題を解決できるとともに、経済的かつ一貫性のある高品質のカーボンナノチューブを大量合成するための新規な製造方法および製造装置に関する研究が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US8048396B2
【特許文献2】KR10-2012-0112918A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高品質のカーボンナノチューブを合成することができるカーボンナノチューブ製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、カーボンナノチューブ製造装置を提供する。
具体的に、(1)本発明は、プラズマ装置1と、CVD反応器2と、を含み、前記プラズマ装置は、触媒原料が投入される原料投入部11、投入された触媒原料を気化させて触媒蒸気を形成するプラズマトーチ12、および前記触媒蒸気が凝縮してナノ粒子触媒が生成される急冷ゾーン13を含み、前記CVD反応器は、前記急冷ゾーンで生成された触媒が投入される触媒投入部21、原料ガスを投入するガス投入部22、およびカーボンナノチューブの合成反応が行われるマッフル23を備える、カーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0012】
(2)本発明において、前記急冷ゾーンは、前記プラズマトーチと隣接する第1急冷ゾーン131と、前記第1急冷ゾーンと隣接する第2急冷ゾーン132と、を含む、前記(1)に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0013】
(3)本発明において、前記急冷ゾーンは、急冷ガスを投入する冷却ガス投入部130を備える、前記(1)または(2)に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0014】
(4)本発明において、前記冷却ガス投入部は、流量制御手段を備える、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0015】
(5)本発明において、前記第1急冷ゾーンおよび第2急冷ゾーンは、それぞれ急冷ガスを投入する冷却ガス投入部130を備え、前記第2急冷ゾーンは、水素ガスを投入する水素ガス投入部133をさらに備える、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0016】
(6)本発明において、前記CVD反応器は、内部を加熱するための加熱手段、および内部の均一な気流の流れのための分散板をさらに含む、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0017】
(7)本発明において、前記ガス投入部は、投入される原料ガスを予熱するための予熱手段221を含む、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0018】
(8)本発明は、前記CVD反応器と連結され、合成された粉末状のカーボンナノチューブを回収するための回収装置3をさらに含む、前記(1)~(7)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0019】
(9)本発明において、前記回収装置は、サイクロンおよびフィルタのうち少なくとも1つを含む、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0020】
(10)本発明は、前記装置が連続運転される、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0021】
(11)本発明において、合成されたカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはその混合物である、前記(1)~(10)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0022】
(12)本発明は、合成されたカーボンナノチューブが粉末状である、前記(1)~(11)のいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカーボンナノチューブ製造装置を用いる場合、従来の担持触媒および流動床反応器を用いたカーボンナノチューブの製造方法に比べて、短時間で高品質のカーボンナノチューブを製造することができる。
【0024】
また、本発明のカーボンナノチューブ製造装置は、連続運転が可能であるため、効率的にカーボンナノチューブを製造することができ、プラズマ装置を介して製造されるナノ粒子触媒の粒度を適した範囲に制御することで、優れた物性を有するカーボンナノチューブを製造することができる。さらに、本発明のカーボンナノチューブ製造装置は、触媒が製造されるプラズマ装置と、カーボンナノチューブが合成されるCVD反応器が物理的に区別されており、触媒の製造過程における工程変数の制御と、カーボンナノチューブの合成過程における工程変数の制御が独立に行われることができる。これにより、本発明のカーボンナノチューブ製造装置を用いる場合、全体的なカーボンナノチューブの合成過程の最適化が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置のダイヤグラムを示したものである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブ製造装置のプロセスフロー図を示したものである。
【
図3】本発明の実施例3で製造されたカーボンナノチューブを倍率100KのSEMイメージで観測したものである。
【
図4】本発明の実施例3で製造されたカーボンナノチューブを倍率50KのSEMイメージで観測したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本明細書および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0027】
カーボンナノチューブ製造装置
産業分野で多量のカーボンナノチューブを製造するために多く用いられる方法は、流動床反応器を用いることである。具体的に、上記の方法では、金属触媒を含む担持体を流動床反応器に充填した後、原料ガスを投入し、反応器を加熱し、触媒粒子の表面でカーボンナノチューブを成長させる方式でカーボンナノチューブを製造する。このような流動床化学気相成長法(Fluidized Bed Chemical Vapor Deposition;FBCVD)は、多量のカーボンナノチューブを製造できるとともに、安定したカーボンナノチューブの合成が可能であるという利点があるが、次のような欠点もある。
【0028】
1)流動床反応器を用いてカーボンナノチューブを合成する場合、カーボンナノチューブの品質の改善に限界がある。流動床反応器に適用される触媒は金属触媒前駆体を焼成する方式で製造されるが、このような方式で製造される触媒は粒度分布が相対的に広いため、これにより製造されるカーボンナノチューブの直径の均一性がやや劣り、均一なカーボンナノチューブ製品を得ることが難しい。また、流動床反応器の特性上、反応器の内部に既に合成されたカーボンナノチューブを充填して用いるため、個々のカーボンナノチューブ別の成長時間が一定ではなく、このような現象も最終的に製造されるカーボンナノチューブの均一性を悪化させ得る。さらに、800℃以下の温度で合成される多層カーボンナノチューブの場合、結晶性(IG/ID比)が1レベルと低く、機械的物性が弱いという欠点もある。
【0029】
2)流動床反応器を用いてカーボンナノチューブを合成する場合、製造工程の効率性の改善に限界がある。流動床反応器を用いる場合、反応器の運転に先立ってベッド(bed)を予め反応器の内部空間に充填する操作が必要であり、反応終了後にも成長したカーボンナノチューブを得る操作が必要であるため、連続的な製造工程の実現が難しい。また、反応開始後にも反応器を加熱する時間が必要であるため、全体的な工程運転時間に対して実際の反応に消費される時間が少なく、時間の面で製造工程の効率性を改善するには限界がある。
【0030】
したがって、本発明は、カーボンナノチューブの製造工程の効率を時間の面で改善できるとともに、合成されたカーボンナノチューブの均一性および品質を確保できる製造装置を提案しようとする。
【0031】
具体的に、本発明は、プラズマ装置1と、CVD反応器2と、を含み、前記プラズマ装置は、触媒原料が投入される原料投入部11、投入された触媒原料を気化させて触媒蒸気を形成するプラズマトーチ12、および前記触媒蒸気が凝縮してナノ粒子触媒が生成される急冷ゾーン13を含み、前記CVD反応器は、前記急冷ゾーンで生成された触媒が投入される触媒投入部21、原料ガスを投入するガス投入部22、およびカーボンナノチューブの合成反応が行われるマッフル23を備える、カーボンナノチューブ製造装置を提供する。
【0032】
図1および2に示すように、本発明のカーボンナノチューブ製造装置は、大きくプラズマ装置およびCVD反応器を含み、以下、本発明の各装置を分けて説明する。
【0033】
プラズマ装置
カーボンナノチューブを合成する触媒の観点から、プラズマ装置を用いてエアロゾル状態のナノ粒子触媒を製造する場合、触媒粒子の平均粒径が低く、かつ、その粒度分布が狭いため、均一なカーボンナノチューブを高速で製造することができる。そこで、本発明のカーボンナノチューブ製造装置は、プラズマ装置、より具体的には誘導結合(inductively coupled)RF(radio frequency)プラズマ装置を用いてエアロゾル状態のナノ粒子触媒を製造し、製造された触媒を原料ガスとともに高温のCVD反応器に投入してカーボンナノチューブを合成する。
【0034】
具体的に、前記誘導結合プラズマ装置は、触媒原料が投入される原料投入部11、投入された触媒原料を気化させて触媒蒸気を形成するプラズマトーチ12、および前記触媒蒸気が凝縮してナノ粒子触媒が生成される急冷ゾーン13を含む。
【0035】
前記原料投入部(feeder)は、触媒原料をプラズマ装置の内部に投入するためのものである。原料投入部の形態や種類は、投入される金属原料の状態および形態に応じて異なり得、通常の技術者であれば、触媒原料の状態および形態に応じて適した原料投入部を選択して適用することができる。前記触媒原料は、液状または固体状であってもよく、より具体的には、前記触媒原料の前駆体を液体に溶解させた溶液、粉末状の触媒原料前駆体、または金属自体であってもよく、特に、触媒原料が粉末状である場合、プラズマ装置への投入を容易にするために粉末の流動性が良くなければならない。したがって、前記触媒原料が粉末である場合、原料投入部は、粉末の流動性に優れることができる形態、例えば、傾斜構造を有する形態であってもよい。
【0036】
一方、前記プラズマ装置は、プラズマトーチを含むことができる。前記プラズマトーチは、プラズマを形成し、投入された触媒原料を気化するためのものであり、通常の技術者に周知のものであれば、本発明のプラズマトーチとして特に限定なく使用可能である。前記プラズマトーチは、作動ガスとしてアルゴン、水素、窒素などの気体を単独または組み合わせて用いてもよい。
【0037】
より具体的に、前記プラズマトーチは、誘導結合RFプラズマトーチであってもよい。誘導結合RFプラズマトーチから形成される高エネルギー密度のRF熱プラズマは、超高温で触媒原料を気化させるのに十分な温度を有し、この際の気化率は99%レベルである。触媒原料が気化して形成された触媒蒸気は、対流および拡散により急冷ゾーンに移送され、蒸気濃度(vapor concentration)プロファイルを形成することになる。触媒蒸気は、その後、凝縮することでエアロゾル状態のナノ粒子触媒を生成するが、移送過程における対流および拡散により触媒蒸気中の均一性が改善されることができ、これにより、効果的にナノ粒子触媒を生成することができる。
【0038】
より具体的に、触媒蒸気が対流および拡散を経て移送される場合、ナノ粒子触媒は、その粒度分布が対数正規の形態で得られ、その分布が狭くなることができる。これに対し、触媒蒸気の形成後、対流および拡散を経ずに直ちに凝縮する場合には、凝縮の過程中に完全に気化できなかった触媒原料粉末の一部とナノ粒子が混合されて存在することができ、より効果的な触媒蒸気の凝縮が難しく、その後に得られるナノ粒子触媒の粒度分布がバイモーダル(bimodal)の形態で得られ、その分布が広くなることができる。
【0039】
一方、前記急冷ゾーンを含むプラズマ装置の内部空間は黒鉛のような高温耐火材質の反応器であってもよく、反応器の内部中心線の温度が少なくとも3000K以上であるべきであるという点で、高温耐火性を有する他の適した反応器構造と材料を選択して適用してもよい。
【0040】
前記移送された触媒蒸気を急冷することで凝縮させ、エアロゾル状態のナノ粒子触媒を形成することができる。例えば、鉄蒸気は、約1820Kで凝縮し、ナノ粒子の核成長を経ることが知られている。急冷過程中で、冷却速度が速いほど、固体粒子の成長時間が短く、粒度分布が狭く、平均粒度が小さいナノ粒子触媒を製造することができる。
【0041】
前記急冷は、急冷ゾーンの内部に急冷ガスを投入して行われてもよく、このために、前記急冷ゾーンは、急冷ガス投入部を備えてもよい。前記急冷ガスとしては、冷却に用いられるものとして知られている冷却ガスのうち好適なものを選択して本発明に適用してもよく、例えば、アルゴンまたは窒素ガスを前記冷却ガスとして適用してもよい。
【0042】
一方、具体的に、前記急冷ガス投入部は、急冷ゾーン内に気体を投入するためのものであれば特に限定されず、急冷ゾーンと直接連結されたラインなどの形態を有してもよく、特に好ましくは、急冷ゾーン全般にわたって均一な冷却が行われるように急冷ゾーン壁面に設けられた気孔の形態であってもよい。前記気孔の大きさや形状は特に限定されず、通常の技術者であれば、冷却に用いられる気体の種類や、冷却気体の温度、プラズマの温度などの要因を考慮して適した気孔の大きさおよび形状を選択することができる。
【0043】
また、前記冷却ガス投入部は、流量制御手段を備えてもよい。急冷に用いられるガスの流量を制御することで、ナノ粒子触媒の平均粒径を制御することができる。
【0044】
一方、
図2に示すように、前記急冷ゾーンは、前記プラズマトーチと隣接する第1急冷ゾーン131と、前記第1急冷ゾーンと隣接する第2急冷ゾーン132と、を含んでもよく、前記第1急冷ゾーンおよび第2急冷ゾーンは、それぞれ急冷ガスを投入するための冷却ガス投入部130を備え、前記第2急冷ゾーンは、水素ガスを投入するための水素ガス投入部133をさらに備えてもよい。
【0045】
上述したように、急冷ゾーンを2つのゾーンに分け、各ゾーンに投入されるガスの種類を異にする場合、ナノ粒子触媒のサイズの制御面で有利な技術的利点がある。
【0046】
CVD反応器
以前のプラズマ装置により製造されたエアロゾル状態のナノ粒子触媒を用い、その後、CVD反応器2にてカーボンナノチューブを合成することができる。具体的に、前記CVD反応器は、前記急冷ゾーンで生成された触媒が投入される触媒投入部21、原料ガスを投入するガス投入部22、およびカーボンナノチューブの合成反応が行われるマッフル23を備えてもよい。また、この他に、前記CVD反応器は、反応器の内部を加熱するための加熱手段をさらに含んでもよく、均一な気流の流れを可能にする分散板を備えてもよい。前記浮遊反応器は、通常の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition、CVD)、触媒化学気相成長法(Catalytic Chemical Vapor Deposition、CCVD)、浮遊触媒化学気相成長法(Floating Catalyst Chemical Vapor Deposition、FCCVD)に用いられる反応器であってもよい。
【0047】
前記触媒投入部は、上述したプラズマ装置により形成されたエアロゾル状態のナノ粒子触媒をCVD反応器の内部に投入させるためのものであり、最終的にエアロゾル状態のナノ粒子触媒が形成されるプラズマ装置の急冷ゾーンの出口と連結されてもよい。前記触媒投入部は、エアロゾル状態のナノ粒子触媒を円滑に投入できる形態でなければならず、CVD反応器の内部で触媒が均一に分布し、浮遊しつつカーボンナノチューブが合成できるようにCVD反応器の下部に位置することが特に好ましい。
【0048】
前記ガス投入部は、CVD反応器の内部にカーボンナノチューブの原料となる原料ガスを投入するためのものである。前記ガス投入部は、ガスを反応器内に投入するための手段であれば特に限定されず、プラズマ装置から投入されるナノ粒子触媒と原料ガスの混合が円滑に行われるために、CVD反応器の入口側に設けられことが好ましい。また、前記ガス投入部を通して投入される原料ガスは、CVD反応器に投入される前に200℃以上の温度に加熱されて投入されてもよく、このために、前記ガス注入部は、予熱手段221をさらに含んでもよい。
【0049】
一方、前記原料ガスは、ナノ粒子触媒により分解され、液相(liquid)のナノ粒子触媒の表面に固相(solid)のカーボンナノチューブを生成できる炭素源ガスであり、具体例として脂肪族アルカン、脂肪族アルケン、脂肪族アルキン、芳香族化合物などの様々な炭素含有化合物が使用可能であり、より具体的には、一酸化炭素、天然ガス、C1-10脂肪族炭化水素、C6-20芳香族炭化水素、C1-6アルコール、およびアセトンからなる群から選択される1種以上を含んでもよく、さらに具体的には、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、メチルアセチレン、ビニルアセチレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、プロピレン、一酸化炭素、天然ガス、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトンなどの化合物が使用可能である。経済性と効率性の面でメタンを用いることが特に好ましい。
【0050】
一方、本発明のカーボンナノチューブ製造装置は、前記CVD反応器と連結され、CVD反応器により合成されたカーボンナノチューブを回収するための回収装置3をさらに含んでもよく、前記回収装置は、サイクロンおよびフィルタのうち少なくとも1つを含んでもよい。CVD反応器により合成されたカーボンナノチューブは、ナノ粒子触媒で成長した状態で得られてもよく、これにより、固体粉末のみを選別的に分離するための回収装置が必要であり、気体-固体混合物から固体を分離するために多く適用されるサイクロンやフィルタが本発明の回収装置として適用されてもよい。
【0051】
本発明のカーボンナノチューブ製造装置が連続運転されてもよい。本発明のカーボンナノチューブ製造装置では、触媒原料の投入によりナノ粒子触媒の製造が連続的に行われてもよく、ガス投入部による原料ガスも連続的に投入されてもよい。これにより、全般的な装置の運転が連続的に行われることができる。従来の担持触媒と流動床反応器を用いたカーボンナノチューブ製造システムの場合、反応開始前に反応器の内部に担持体を充填し、最終的に製造されたカーボンナノチューブを反応器から得るステップが必要であるため、バッチ式で運転されるのが一般的であるが、本発明の製造装置を用いる場合、連続的な製造が可能であるため、従来に比べて効率的にカーボンナノチューブを製造することができる。
【0052】
本発明の製造装置により製造されるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、またはその混合物であってもよい。また、本発明の製造装置により製造されるカーボンナノチューブが粉末状であってもよい。
【0053】
本発明の製造装置により製造されるカーボンナノチューブはバンドル化していてもよい。カーボンナノチューブが「バンドル化」したとは、複数のカーボンナノチューブが一定の方向に並んで配列または整列してバンドル(bundle)状もしくはロープ(rope)状の二次構造を形成したことを意味し、バンドル化したカーボンナノチューブは、バンドル化することで導電材などとして用いられるのに特に好適である。
【0054】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例および実験例を挙げてより詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例および実験例により限定されるものではない。本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形されてもよく、本発明の範囲が後述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより具体的に説明するために提供されるものである。
【0055】
材料
触媒原料として粒度が10~50μmのFe粉末とFeS粉末を混合して用い、フィーダ(feeder)に投入する前に触媒原料を真空オーブンで乾燥させて水分を予め除去した。
【0056】
実施例1
図2に示されたカーボンナノチューブ製造装置を用いてカーボンナノチューブを合成した。真空状態でプラズマを点火するために、プラズマトーチにシースガス(sheath gas)としてAr(32 lpm)およびH
2(1.4 lpm)を注入し、センターガス(central gas)としてAr(12 lpm)を注入した。点火の完了後、プラズマ装置内の圧力は常圧(14.7psi)であり、前記材料の触媒原料(FeSの含量16重量%)をRF熱プラズマ装置のフィーダ(キャリアガス:Ar、流量:5 lpm)に供給し、プラズマトーチで触媒原料を気化させた。形成された触媒蒸気は、対流および拡散により急冷ゾーンに移送され、第1急冷ゾーンおよび第2急冷ゾーンに急冷ガスであるArをそれぞれ75 lpmおよび175 lpm注入し、触媒蒸気を急冷および凝縮させた。一方、第2急冷ゾーンには、ArとともにH
2ガスを30 lpmの流量で注入した。第1急冷ゾーンおよび第2急冷ゾーンを全て経た触媒蒸気が凝縮してエアロゾル状態のナノ粒子触媒を形成し、次いで、予め1350℃に加熱されたCVD反応器に投入された。
【0057】
また、前記ナノ粒子触媒とは別に、原料ガスであるメタンガスを4 lpmの流量でCVD反応器に注入し、注入前に500℃に加熱された予熱装置を通過させた。
【0058】
前記ナノ粒子触媒と原料ガスがCVD反応器に投入されるとともにカーボンナノチューブの合成を開始し、合成工程を20分間行った。工程の完了後にガス注入を中断し、CVD反応器を冷却させ、カーボンナノチューブを得た。
【0059】
実施例2
前記実施例1において、触媒原料としてFeSの含量が20重量%となるように混合されたものを用い、CVD反応器の温度を1400℃に加熱し、CVD反応器の内部に、メタンガスを3 lpmの流量、水素ガスを9.5 lpmの流量で注入したことを除いては同様に行い、カーボンナノチューブを得た。
【0060】
実施例3
前記実施例2において、CVD反応器の内部に、メタンガスを3 lpmの流量、水素ガスを50 lpmの流量で注入したことを除いては同様に行い、カーボンナノチューブを得た。
【0061】
比較例1
前記実施例2において、メタンガス4 lpmと水素ガス9.5 lpmをCVD反応器に注入する前に、小型チャンバーを用いてエアロゾル状態のナノ粒子触媒と予め混合した後にCVD反応器に注入し、CVD反応器の温度が1300℃となるように加熱したことを除いては同様に行い、カーボンナノチューブを得た。
前記実施例および比較例における製造条件を下記表1にまとめた。
【0062】
【0063】
実験例1.製造されたカーボンナノチューブの結晶性の確認
ラマンスペクトルを用いて前記実施例および比較例で製造されたカーボンナノチューブのIGおよびID値を測定し、平均結晶性および最大結晶性を計算して下記表2に示した。
【0064】
【0065】
前記表2から確認できるように、本発明の実施例で製造されたカーボンナノチューブは、最大結晶性が40以上と高い結晶性を示したのに対し、比較例1で製造されたカーボンナノチューブは、1未満の結晶性を示した。すなわち、比較例1で製造されたカーボンナノチューブの結晶性が実施例に比べて大幅に劣ることを意味し、本発明のカーボンナノチューブの製造方法を用いる場合、高品質のカーボンナノチューブの製造が可能であることを意味する。
【0066】
実験例2.実施例で製造されたカーボンナノチューブのSEMイメージの確認
前記実施例3で製造されたカーボンナノチューブをSEMイメージにより観察した。倍率100Kおよび50Kで確認し、その結果を
図3および4に示した。
【0067】
図3および4から確認できるように、本発明のカーボンナノチューブの製造方法を用いる場合、細くて柔軟な複数本のカーボンナノチューブがバンドル化した形態に製造されていることを確認した。
【符号の説明】
【0068】
1:プラズマ装置
11:原料投入部
12:プラズマトーチ
13:急冷ゾーン
130:冷却ガス投入部
131:第1急冷ゾーン
132:第2急冷ゾーン
133:水素ガス投入部
2:CVD反応器
21:触媒投入部
22:ガス投入部
221:予熱手段
23:マッフル
3:回収装置
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】