(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】船舶用燃料からのアスファルテンの低減
(51)【国際特許分類】
C10L 1/222 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C10L1/222
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522322
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078244
(87)【国際公開番号】W WO2023062004
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,シルビア
(72)【発明者】
【氏名】ゴットシュリング,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ハンシュ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バウムゲルトナー,ティモ
(57)【要約】
本発明は、ある種の船舶用燃料中に第四級アンモニウム化合物を使用する船舶用燃料からのアスファルテンの低減方法、そのような第四級アンモニウム化合物の使用、及びそのような第四級アンモニウム化合物を含むある種の船舶用燃料を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和化合物、芳香族化合物、及びアスファルテンの合計が100重量%未満であるという条件で、
(TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)5~70重量%、好ましくは5~60、より好ましくは10~50重量%の飽和化合物と、
(TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)10~85重量%、好ましくは20~80、より好ましくは30~70重量%の芳香族化合物と、
(ASTM D3279に従って測定される)1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%のアスファルテンと
を含む船舶用燃料
であって、
飽和化合物対アスファルテンの重量比は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、更により好ましくは少なくとも4.75、とりわけ少なくとも5.0である、
船舶用燃料中のアスファルテンを溶解させるか又は分散させるための、少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物の使用。
【請求項2】
(TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)5~70重量%、好ましくは5~60、より好ましくは10~50重量%の飽和化合物と、
(TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)10~85重量%、好ましくは20~80、より好ましくは30~70重量%の芳香族化合物と、
(ASTM D3279に従って測定される)1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%のアスファルテンと、
50~2000重量ppm、好ましくは60~1500、より好ましくは70~1000重量ppmの少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物と
を含む、船舶用燃料組成物
であって、
飽和化合物対アスファルテンの重量比は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、更により好ましくは少なくとも4.75、とりわけ少なくとも5.0である、
船舶用燃料組成物。
【請求項3】
(TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)5~70重量%、好ましくは5~60、より好ましくは10~50重量%の飽和化合物と、
(TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)10~85重量%、好ましくは20~80、より好ましくは30~70重量%の芳香族化合物と、
(ASTM D3279に従って測定される)1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%のアスファルテンと
を含む船舶用燃料であって、
飽和化合物対アスファルテンの重量比は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、更により好ましくは少なくとも4.75、とりわけ少なくとも5.0である
船舶用燃料中の、アスファルテンによって引き起こされるファウリングを、
50~2000重量ppm、好ましくは60~1500、より好ましくは70~1000重量ppmの少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物を前記船舶用燃料に添加することにより、低減する又は防止するための方法。
【請求項4】
未添加船舶用燃料の、ISO 10307-2:2009(E)、手順Aに従って測定される潜在トータルセジメント(TSP)値は、前記船舶用燃料に指示量の少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物を添加することによって、少なくとも25%だけ、好ましくは少なくとも30%だけ、より好ましくは少なくとも35%だけ、更には少なくとも40%だけ低減される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記船舶用燃料が、DIN ISO 8217によるISO-F-DMX、DMA、DFA、DMZ、DFZ、若しくはDFB、又はISO-F RMA、RMB、RMD、RME、RMG、及びRMKからなる群から選択される、請求項1に記載の使用、請求項2に記載の船舶用燃料、又は請求項3若しくは4に記載の方法。
【請求項6】
前記船舶用燃料が、MGO(船舶用ガスオイル)、MDO(船舶用ディーゼル油)、IFO(中間燃料油)、MFO(船舶用燃料油)、HFO(重油)、IFO 380(<3.5%硫黄))、IFO 180(<3.5%硫黄))、LS 380(<1.0%硫黄)、LS 180(<1.0%硫黄)、LSMGO(<0.1%硫黄、及びULSMGO(硫黄0.0015%最大)、とりわけ0.5%以下の硫黄含有量の極低硫黄燃料油からなる群から選択される、請求項1に記載の使用、請求項2に記載の船舶用燃料、又は請求項3若しくは4に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式:
+NR
1R
2R
3R
4 A
-
(式中、
A
-は、アニオン、好ましくはカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-を表し、
R
1、R
2、R
3、R
4、及びR
5は、互いに独立して、1~100個の炭素原子を有する有機残基、1~100個、より好ましくは1~75個、更により好ましくは1~30個、最も好ましくは1~25個、とりわけ1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換の、線状又は分岐のアルキル、アルケニル又はヒドロキシアルキル残基であり、
R
5は、更に、5~20個、好ましくは5~12個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル又はアリール残基であり得る)
のものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式
【化1】
(この式中、
PIBは、550~2300、好ましくは650~1500、より好ましくは750~1300g/モルの数平均分子量M
nを有するポリイソブテニル残基を表し、
Rは、C
1~C
4アルキル又はヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくはメチル又は2-ヒドロキシプロピルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはアセテート、サリチレート又はメチルオキサレートを表す)
のものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式
【化2】
(この式中、
PIBは、550~2300、好ましくは650~1500、より好ましくは750~1300g/モルの数平均分子量M
nを有するポリイソブテニル残基を表し、
Rは、ヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくは2-ヒドロキシプロピルを表す)
のものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式
【化3】
(この式中、
PIBは、550~2300、好ましくは650~1500、より好ましくは750~1300g/モルの数平均分子量M
nを有するポリイソブテニル残基を表し、
Rは、C
1~C
4アルキル又はヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくはメチルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはサリチレート又はメチルオキサレートを表す)
のものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式
【化4】
(この式中、
R
aは、C
1~C
20アルキル、好ましくはC
9~C
17アルキル、より好ましくはウンデシル、トリデシル、ペンタデシル又はヘプタデシルを表し、
R
bは、ヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくは2-ヒドロキシプロピル又は2-ヒドロキシブチルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたような、カルボキシレートR
5COO
-、より好ましくは脂肪酸のカルボキシレートであるR
5COO
-を表し、とりわけA
-は、アセテート、2-エチルヘキサノエート、オレエート又はポリイソブテニルスクシネート又はポリイソブテニルスクシネートのモノエステルを表す)
のものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式
【化5】
(この式中、
i=1~n及び1~mについてのX
iは、互いに独立して、-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-及び-CH(CH
3)-CH(CH
3)-O-からなる群から選択され、好ましくは-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-及び-CH(CH
3)-CH(CH
3)-O-からなる群から選択され、より好ましくは-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-及び-CH(C
2H
5)-CH
2-O-からなる群から選択され、最も好ましくは-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-及び-CH(CH
3)-CH
2-O-からなる群から選択され、とりわけ-CH
2-CH(CH
3)-O-及び-CH(CH
3)-CH
2-O-からなる群から選択され、
m及びnは、互いに独立して、正の整数であり、但し、合計(m+n)は、2~50、好ましくは5~40、より好ましくは10~30、とりわけ15~25であることを条件とし、
Rは、C
1~C
4アルキル、好ましくはメチルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはサリチレート又はメチルオキサレートを表す)
のものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、式
【化6】
(この式中、
R
a及びR
bは、互いに独立して、C
1~C
20アルキル又はヒドロキシ-C
1~C
4アルキルを表し、好ましくはR
aは、C
1~C
20アルキル、好ましくはエチル、n-ブチル、n-オクチル、n-ドデシル、テトラデシル又はヘキサデシルを表し、R
bは、ヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくは2-ヒドロキシプロピルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはC
12~C
100アルキル-及びアルケニルコハク酸、とりわけドデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸、及びポリイソブテニルコハク酸を表す)
のものである、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【請求項14】
少なくとも15、好ましくは少なくとも20重量%のIP 469に従った飽和化合物の含有量を有する船舶用燃料中での、請求項7~13のいずれか一項に記載の第四級アンモニウム化合物の使用。
【請求項15】
前記少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物が、20~5000重量ppm、好ましくは30~4000、より好ましくは40~3000重量ppmの量で船舶用燃料中に使用される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用、船舶用燃料、及び方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の船舶用燃料中に第四級アンモニウム化合物を使用する船舶用燃料からのアスファルテンの低減方法、そのような第四級アンモニウム化合物の使用、及びそのような第四級アンモニウム化合物を含むある種の船舶用燃料を開示する。
【背景技術】
【0002】
アスファルテンは、原油及びそれらの精製装置流れの幅広い構成成分である。ある種の組成の燃料において、そのようなアスファルテンは、溶解させられるか又は分散させられない限り、燃料から沈澱し、燃料と接触する装置のファウリングを引き起こす傾向がある。
【0003】
アスファルテンの特質、化学的、及び物理的特性は、米国特許第5214224号明細書に記載されており、更に米国特許第5214224号明細書は、アスファルテンの分散のためのある種のコポリマーを開示している。それらの化学組成及び構成に関係なく、本発明との関連でアスファルテンは、ASTM D3279に従って測定され、この方法に従って測定される船舶用燃料の当該部分として定義される。
【0004】
国際公開第2014/193692 A1号パンフレットは、ある種の第四級アンモニウム化合物を使用する炭化水素流体におけるアスファルテン制御の方法を開示している。とりわけ、炭化水素流体として船舶用燃料油が挙げられており、そのような油の組成は、明確に開示されておらず、そのような油は、脂肪族又は液体芳香族油を含むと述べられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
船舶用燃料においてアスファルテンによって引き起こされるファウリングの更なる低減方法を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、飽和化合物、芳香族化合物、及びアスファルテンの合計が100重量%未満であるという条件で、
- (TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)5~70重量%、好ましくは5~60、より好ましくは10~50重量%の飽和化合物と、
- (TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)10~85重量%、好ましくは20~80、より好ましくは30~70重量%の芳香族化合物と、
- (ASTM D3279に従って測定される)1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%のアスファルテンと
を含む船舶用燃料
であって、
飽和化合物対アスファルテンの重量比は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、更により好ましくは少なくとも4.75、とりわけ少なくとも5.0である、
船舶用燃料においてアスファルテンを溶解させるか又は分散させるための少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物の使用によって達成された。
【0007】
本発明の別の目的は、
- (TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)5~70重量%、好ましくは5~60、より好ましくは10~50重量%の飽和化合物と、
- (TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)10~85重量%、好ましくは20~80、より好ましくは30~70重量%の芳香族化合物と、
- (ASTM D3279に従って測定される)1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%のアスファルテンと、
- 50~2000重量ppm、好ましくは60~1500、より好ましくは70~1000重量ppmの少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物と
を含む、船舶用燃料組成物
であって、
飽和化合物対アスファルテンの重量比は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、更により好ましくは少なくとも4.75、とりわけ少なくとも5.0である、
船舶用燃料組成物である。
【0008】
本発明の別の目的は、
- (TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)5~70重量%、好ましくは5~60、より好ましくは10~50重量%の飽和化合物と、
- (TLC-FID、IP 469を使用するSARA分析に従って測定される)10~85重量%、好ましくは20~80、より好ましくは30~70重量%の芳香族化合物と、
- (ASTM D3279に従って測定される)1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%のアスファルテンと
を含む船舶用燃料
であって、
飽和化合物対アスファルテンの重量比は、少なくとも4.0、好ましくは少なくとも4.2、より好ましくは少なくとも4.5、更により好ましくは少なくとも4.75、とりわけ少なくとも5.0である
船舶用燃料中のアスファルテンによって引き起こされるファウリングを、
50~2000重量ppm、好ましくは60~1500、より好ましくは70~1000重量ppmの少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物を前記船舶用燃料に添加することにより低減又は防止するための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるこの方法の好ましい実施形態において、前記船舶用燃料に指示量の少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物を添加することによって少なくとも25%だけ、好ましくは少なくとも30%だけ、より好ましくは少なくとも35%だけ、少なくとも40%だけさえの未添加船舶用燃料の、ISO 10307-2:2009(E)、手順Aに従って測定される、潜在トータルセジメント(TSP)値を低減することが可能である。
【0010】
本発明の基礎となる原理は、第四級アンモニウム化合物が、より低い含有量を有する船舶用燃料中によりも、より高い含有量の飽和化合物を有する船舶用燃料中にアスファルテンを溶解させるか又は分散させるのに、より有効であるという観察である。
【0011】
それ故に、第四級アンモニウム化合物の使用は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20重量%のIP 469に従った飽和化合物の含有率を有する船舶用燃料において好ましい。
【0012】
この本文内では簡単さのために、IP 469に従った芳香族化合物及び多環芳香族化合物は、まとめて、「芳香族化合物」と言われ、多環芳香族化合物は、たとえ明確に述べられていないとしても、含まれていると見なされる。
【0013】
船舶用燃料に関して、飽和化合物、芳香族化合物、及びアスファルテンは、それぞれの基準、すなわち、飽和化合物及び芳香酸化合物の場合にはSARA分析、又はアスファルテンについてはASTM D3279に従って決定されるそれらの化合物を言う。
【0014】
アスファルテンの含有量は、船舶用燃料中の(ASTM D3279に従って測定される)アスファルテンの量が、飽和化合物、芳香族化合物、及び/又は樹脂の含有量に関係なく1~30重量%、好ましくは3~25、より好ましくは5~20重量%アスファルテンであるように、船舶用燃料中の飽和化合物、芳香族化合物、及び樹脂の含有量から独立していることが言及されるべきである。
【0015】
本発明を、以下の通りに更に詳細に説明する。
【0016】
船舶用燃料
燃料は、MGO(船舶用ガスオイル)、MDO(船舶用ディーゼル油)、IFO(中間燃料油)、MFO(船舶用燃料油)、又はHFO(重油)などの、船舶用燃料である。船舶用燃料の更なる例は、IFO 380(50℃で380センチストークスの最大粘度を有する中間燃料油(<3.5%硫黄))、IFO 180(180センチストークスの最大粘度を有する中間燃料油(<3.5%硫黄))、LS 380(380センチストークスの最大粘度を有する低硫黄(<1.0%)中間燃料油)、LS 180(180センチストークスの最大粘度を有する低硫黄(<1.0%)中間燃料油)、LSMGO(EU硫黄指令書2005/33/ECに従って欧州の港及び錨泊地でしばしば使用されている、低硫黄(<1.0%)船舶用ガスオイル)、又はULSMGO(超低硫黄ディーゼル(硫黄0.0015%最大)とも言われる、超低硫黄船舶用ガスオイル)である。更に好適な船舶用燃料は、DIN ISO 8217のカテゴリー ISO-F-DMX、DMA、DFA、DMZ、DFZ、若しくはDFB、又はISO-F RMA、RMB、RMD、RME、RMG、若しくはRMKに従ったものである。更に好適な船舶用燃料は、留出物船舶用ディーゼル又は残留船舶用ディーゼルである。
【0017】
船舶用燃料などの、燃料の粘度は、40℃で1~10,000mm2/秒(ISO 3104)又は50℃で1~1000mm2/秒(ISO 3104)の範囲でなどの、広い範囲で変動することができる。特に言及しない限り、粘度は、この本文の全体にわたって50℃で常に測定される。
【0018】
好ましい実施形態において、船舶用燃料は、0.5%以下の硫黄含有量の極低硫黄燃料油(VLSFO)である。
【0019】
船舶用燃料の硫黄含有量は、原油起源及び精油プロセスに依存する。燃料が燃えるときに、硫黄は、硫黄酸化物へ変換される。これらの酸化物は、ブローバイガスによって潤滑油に達し、及びエンジンピストンライナーに対して腐食性である(2012年6月にChevron Global Marine Productsによって出版された、Monique B.Vermeire,「Everything You Need to Know About Marine Fuels」を参照されたい)。
【0020】
技術的及び環境保護の理由から、低硫黄燃料に関心が高まっている。好適な低硫黄燃料は、1、0.5、0.2、又は0.1重量%未満の硫黄を含有し得る。例は、0.1重量%未満の硫黄を有するShell(登録商標)ULSFOである。
【0021】
第四級アンモニウム化合物
少なくとも1種の第四級窒素成分は、本発明との関連で、酸の存在下で又は酸を含まないやり方で第四級化された窒素化合物であって、好ましくは、酸無水物と反応性の少なくとも1つの酸素-又は窒素含有基及び更に少なくとも1つの第四級化可能なアミノ基を含む化合物のポリカルボン酸無水物化合物への付加、及びそれに続く第四級化によって得られる窒素化合物を言う。
【0022】
ほとんどの場合に、第四級窒素成分は、アンモニウム化合物であるが、本公文書との関連でモルホリニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウム又はピリジニウムカチオンも、語句「第四級窒素成分」によって包含される。
【0023】
第四級アンモニウム化合物は、好ましくは、式
+NR1R2R3R4A-
(式中、
A-は、アニオン、好ましくはカルボキシレートR5COO-又はカーボネートR5O-COO-を表し、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、互いに独立して、1~100個の炭素原子を有する有機残基、1~100個、より好ましくは1~75個、更に好ましくは1~30個、最も好ましくは1~25個、とりわけ1~20個の炭素原子を有する置換又は非置換の、線状又は分岐のアルキル、アルケニル又はヒドロキシアルキル残基であり、
R5は、更に、5~20個、好ましくは5~12個の炭素原子を有する置換又は非置換のシクロアルキル又はアリール残基であり得る)
のものである。
【0024】
有機残基R1~R5は、互いに独立して、好ましくは非置換である。
【0025】
アニオンが負に帯電した多価であることも可能であり、例えば二塩基酸のアニオンが使用される場合、アニオンに対するアンモニウムイオンの化学量論比は、正電荷と負電荷との比に対応する。
【0026】
カチオンが2個以上のアンモニウムイオンを有する塩、例えば置換基が2個以上のアンモニウムイオンを連結する塩についても同様である。
【0027】
有機残基において、炭素原子は、1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子並びに/又は1個以上の置換若しくは非置換イミノ基によって割り込まれていてもよく、C6~C12アリール、C5~C12シクロアルキル又は5員若しくは6員の、酸素-、窒素-及び/又は硫黄含有複素環によって置換されていてもよく、又はそれらの2つが一緒になって不飽和、飽和又は芳香環を形成し、その環は、1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子及び/又は1個以上の置換若しくは非置換イミノ基によって割り込まれていてもよく、ここで、言及される基は、それぞれ、官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてもよい。
【0028】
残基R1~R4のうちの2個は、一緒になって不飽和、飽和又は芳香環、好ましくは5員、6員又は7員環(アンモニウムイオンの窒素原子を含む)を形成してもよい。
【0029】
この場合に、アンモニウムカチオンは、モルホリニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリニウム又はピリジニウムカチオンであり得る。
【0030】
これらの定義において、
官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてもよいC1~C20アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、1,1-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、α,α-ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p-トリルメチル、1-(p-ブチルフェニル)エチル、p-クロロベンジル、2,4-ジクロロベンジル、p-メトキシベンジル、m-エトキシベンジル、2-シアノエチル、2-シアンプロピル、2-メトキシカルボニレチル、2-エトキシカルボニレキル、2-ブトキシカルボニルプロピル、1,2-ジ-(メトキシカルボニル)エチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-ブトキシエチル、ジエトキシメチル、ジエトキシエチル、1,3-ジオキソラン-2-イル、1,3-ジオキソラン-2-イル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-イル、2-イソプロポキシエチル、2-ブトキシプロピル、2-オクチルオキシエチル、クロロメチル、2-クロロエチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、1,1-ジメチル-2-クロロエチル、2-メトキシイソプロピル、2-エトキシエチル、ブチルチオメチル、2-ドデシルチオエチル、2-フェニルチオエテル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、6-ヒドロキシヘキシル、2-アミノエチル、2-アミノプロピル、3-アミノプロピル、4-アミノブチル、6-アミノヘキシル、2-メチルアミノエチル、2-メチルアミノプロピル、3-メチルアミノプロピル、4-メチルアミノブチル、6-メチルアミノヘキシル、2-ジメチルアミノエチル、2-ジメチルアミノプロピル、3-ジメチルアミノプロピル、4-ジメチルアミノブチル、6-ジメチルアミノヘキシル、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルエチル、2-フェノキシエテル、2-フェノキシプロピル、3-フェノキシプロピル、4-フェノキシブチル、6-フェノキシヘキシル、2-メトキシエチル、2-メトキシプロピル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、6-メトキシヘキシル、2-エトキシエチル、2-エトキシプロピル、3-エトキシプロピル、4-エトキシブチル又は6エトキシへキシルであり、
1個以上の酸素及び/若しくは硫黄原子並びに/又は1個以上の置換若しくは非置換イミノ基によって割り込まれたC2~C20アルキルは、例えば、5-ヒドロキシ-3-オキサ-ペンチル、8-ヒドロキシ-3,6-ジオキサオクチル、11-ヒドロキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル、7-ヒドロキシ-4-オキサヘプチル、11-ヒドロキシ-4,8-ジオキサウンデシル、15-ヒドロキシ-4,8,12-トリオキサペンタデシル、9-ヒドロキシ-5-オキサノニル、14-ヒドロキシ-5,10-オキサテトラデシル、5-メトキシ-3-オキサペンチル、8-メトキシ-3,6-ジオキサオクチル、11-メトキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル、7-メトキシ-4-オキサヘプチル、11-メトキシ-4,8-ジオキサ-ウンデシル、15-メトキシ-4,8,12-トリオキサペンタデシル、9-メトキシ-5-オキサノニル、14-メトキシ-5,10-オキサテトラデシル、5-エトキシ-3-オキサペンチル、8-エトキシ-3,6-ジオキサオクチル、11-エトキシ-3,6,9-トリオキサウンデシル、7-エトキシ-4-オキサヘプチル、11-エトキシ-4,8-ジオキサウンデシル、15-エトキシ-4,8,12-トリオキサペンタデシル、9-エトキシ-5-オキサノニル又は14-エトキシ-5,10-オキサテトラデシルである。
【0031】
2つの基が環を形成する場合、それらは一緒になって、1,3-プロピレン、1,4-ブチレン、1,5-ペンチレン、2-オキサ-1,3-プロピレン、1-オキサ-1,3-プロピレン、2-オキサ-1,3-プロピレン、1-オキサ-1,3-プロペニレン、1-アザ-1,3-プロペニレン、1-C1~C4アルキル-1-アザ-1,3-プロペニレン、1,4-ブタ-1,3-ジエニレン、1-アザ-1,4-ブタ-1,3-ジエニレン又は2-アザ-1,4-ブタ-1,3-ジエニレンであることができる。
【0032】
酸素子及び/若しくは硫黄原子並びに/又はイミノ基の数は、いかなる制限も受けない。一般に、基中に5個以下、好ましくは4個以下、非常に特に好ましくは3個以下が存在するであろう。
【0033】
更に、一般に、任意の2個のヘテロ原子の間には、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは少なくとも2個の炭素原子が存在する。
【0034】
置換及び非置換イミノ基は、例えば、イミノ、メチルイミノ、イソプロピルイミノ、n-ブチルイミノ又はtert-ブチルイミノであることができる。
【0035】
更に、
官能基は、カルボキシ、カルボキサミド、ヒドロキシ、ジ(C1~C4アルキル)アミノ、C1~C4アルキルオキシカルボニル、シアノ又はC1~C4アルキルオキシであることができ、
官能基、アリール、アルキル、アリールオキシ、アルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてもよいC6~C12アリールは、例えば、フェニル、トリル、キシリル、α-ナフチル、β-ナフチル、4-ジフェニリル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、トリクロロフェニル、ジフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、ジエチルフェニル、イソプロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ドデシルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、エトキシフェニル、ヘキシルオキシフェニル、メチルナフチル、イソプロピルナフチル、クロロナフチル、エトキシナフチル、2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェチル、2,6-ジメトキシフェニル、2,6-ジクロロフェニル、4-ブロモフェニル、2-若しくは4-ニトロフェニル、2,4-若しくは2,6-ジニトロフェニル、4-ジメチルアミノフェニル、4-アセチルフェニル、メトキシエチルフェニル又はエトキシメチルフェニルであり、
官能基、アリール、アルキル、アリールオキシアルキルオキシ、ハロゲン、ヘテロ原子及び/又は複素環によって置換されていてもよいC5~C12シクロアルキルは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、シクロドデシル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、ジエチルシクロヘキシル、ブチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、ジメトキシシクロヘキシル、ジエトキシシクロヘキシル、ブチルチオシクロヘキシル、クロロシクロヘキシル、ジクロロシクロヘキシル、ジクロロシクロペンチル、又はノルボルニル若しくはノルボルネニルなどの飽和若しくは不飽和二環系であり、
5員又は6員の、酸素-、窒素-及び/又は硫黄含有複素環は、例えば、フリル、チエニル、ピリル、ピリジル、インドリル、ベンゾキサゾリル、ジオキソリル、ジオキシル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ジメチルピリジル、メチルキノリル、ジメチルピリル、メトキシフリル、ジメトキシピリジル、ジフルオロピリジル、メチルチエニル、イソプロピルチエニル又はtert-ブチルチエニルであり、
C1~C4アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルである。
【0036】
残基R1~R5は、好ましくはC2~C18アルキル又はC6~C12アリール、より好ましくはC4~C16アルキル又はC6~C12アリール、更に好ましくはC4~C16アルキル又はC6アリールである。
【0037】
残基R1~R5は、飽和又は不飽和、好ましくは飽和であってもよい。
【0038】
好ましい残基R1~R5は、炭素又は水素以外のいかなるヘテロ原子も有さない。
【0039】
R1~R4の好ましい例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチルペンチル、2-プロピルヘプチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、エイコシル、1,1-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、α,α-ジメチルベンジル、ベンズヒドリル、p-トリルメチル又は1-(p-ブチルフェニル)エチルである。
【0040】
好ましい実施形態において、残基R1~R4の少なくとも1つは、2-ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロパ-1-イル、ヒドロキシプロパ-2-イル、2-ヒドロキシブチル又は2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルからなる群から選択される。
【0041】
一実施形態において、R5は、85~20000、例えば113~10000、又は200~10000、又は350~5000、例えば350~3000、500~2500、700~2500、又は800~1500の数平均分子量(Mn)を有する、ポリオレフィン-ホモポリマー又はコポリマー、好ましくはポリプロピレン、ポリブテン又はポリイソブテン残基である。例えば3500~5000、350~3000、500~2500、700~2500及び800~1500g/モルの数平均分子量Mnを有する、ポリプロペニル、ポリブテニル及びポリイソブテニル基が好ましい。
【0042】
アニオンA-の好ましい例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2-エチルヘキサン酸、トリメチルヘキサン酸、2-プロピルヘプタン酸、イソノナン酸、バーサティック酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、12~24個の炭素原子を有する飽和若しくは不飽和脂肪酸、又はそれらの混合物、サリチル酸、シュウ酸モノ-C1~C4アルキルエステル、フタル酸モノ-C1~C4アルキルエステル、C12~C100アルキル-及びアルケニルコハク酸、とりわけドデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸、及びポリイソブテニルコハク酸のアニオンである。更なる例は、炭酸メチル、炭酸エチル、炭酸n-ブチル、炭酸2-ヒドロキシエチル、及び炭酸2-ヒドロキシプロピルである。
【0043】
1つの好ましい実施形態において、酸の存在下で又は酸を含まないやり方で第四級化された窒素化合物は、酸無水物と反応性の少なくとも1つの酸素-又は窒素含有基及び更に少なくとも1つの第四級化可能なアミノ基を含む化合物のポリカルボン酸無水物化合物への付加、及びそれに続く、国際公開第2012/004300号パンフレットに記載されているように、遊離酸の不在下に、とりわけエポキシド、例えばスチレン若しくはプロピレンオキシドでの、又はカルボン酸エステル、例えばシュウ酸ジメチル又はサリチル酸メチルでの第四級化によって得られる。酸無水物と反応性の少なくとも1つの酸素-又は窒素含有基及び更に少なくとも1つの第四級化可能なアミノ基を有する好適な化合物は、とりわけ少なくとも1つの第1級又は第2級アミノ基及び少なくとも1つの第3級アミノ基を有するポリアミン、とりわけN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,2-エタンジアミン又はN,N,N’-トリメチル-1,2-エタンジアミンである。有用なポリカルボン酸無水物は、とりわけ、比較的長鎖のヒドロカルビル置換基を有する、好ましくは200~10,000の、特に350~5000のヒドロカルビルについての数平均分子量Mnを有する、コハク酸などのジカルボン酸である。そのような第四級化窒素化合物は、例えば、ポリイソブテニル基が典型的には1000のMnを有するポリイソブテニルコハク酸無水物と、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミンとの、40℃で得られる、反応生成物であり、それは、ポリイソブテニルコハク酸モノアミドを構成し、それは、その後、遊離酸の不在下でシュウ酸ジメチル若しくはサリチル酸メチルで、又は酸化スチレン若しくは酸化プロピレンで第四級化される。
【0044】
化合物として好適な更なる第四級化窒素化合物は、
国際公開第2006/135881 A1号パンフレット、5頁、13行目~12頁、14行目;
国際公開第10/132259 A1号パンフレット、3頁、28行目~10頁、25行目;
国際公開第2008/060888 A2号パンフレット、6頁、15行目~14頁、29行目;
国際公開第2011/095819 A1号パンフレット、4頁、5行目~9頁、29行目;
英国特許出願公開第2496514 A号明細書、段落[00012]~段落[00041];
国際公開第2013/117616 A1号パンフレット、3頁、34行目~11頁、2行目;
国際公開第14/202425 A2号パンフレット、3頁、14行目~5頁、9行目;
国際公開第14/195464 A1号パンフレット、15頁、31行目~45頁、26行目及び75頁、1行目~4行目;
国際公開第15/040147 A1号パンフレット、4頁、34行目~5頁、18行目及び19頁、11行目~50頁、10行目;
国際公開第14/064151 A1号パンフレット、5頁、14行目~6頁、17行目及び16頁、10行目~18頁、12行目;
国際公開第2013/064689 A1号パンフレット、18頁、16行目~29頁、8行目;並びに
国際公開第2013/087701 A1号パンフレット、13頁、25行目~19頁、30行目、
国際公開第13/000997 A1号パンフレット、17頁、4行目~25頁、3行目、
国際公開第12/004300号パンフレット、5頁、20行目~30行目、8頁、1行目~10頁、10行目、及び19頁、29行目~28頁、3行目
に記載されており、
それらのそれぞれは、参照により本明細書に援用される。
【0045】
一実施形態において、第四級化アンモニウム化合物は、式
【化1】
(この式中、
PIBは、550~2300、好ましくは650~1500、より好ましくは750~1300g/モルの数平均分子量M
nを有するポリイソブテニル残基を表し、
Rは、C
1~C
4アルキル又はヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくはメチル又は2-ヒドロキシプロピルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはアセテート、サリチレート又はメチルオキサレートを表す)
のものである。
【0046】
別の好ましい実施形態において、第四級化アンモニウム化合物は、式
【化2】
(この式中、
PIBは、550~2300、好ましくは650~1500、より好ましくは750~1300g/モルの数平均分子量M
nを有するポリイソブテニル残基を表し、
Rは、ヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくは2-ヒドロキシプロピルを表す)
のものである。
【0047】
別の実施形態において、第四級化アンモニウム化合物は、式
【化3】
(この式中、
PIBは、550~2300、好ましくは650~1500、より好ましくは750~1300g/モルの数平均分子量M
nを有するポリイソブテニル残基を表し、
Rは、C
1~C
4アルキル又はヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくはメチルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはサリチレート又はメチルオキサレートを表す)
のものである。
【0048】
別の実施形態において、第四級化アンモニウム化合物は、式
【化4】
(この式中、
R
aは、C
1~C
20アルキル、好ましくはC
9~C
17アルキルを、より好ましくはウンデシル、トリデシル、ペンタデシル又はヘプタデシルを表し、
R
bは、ヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくは2-ヒドロキシプロピル又は2-ヒドロキシブチルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたような、カルボキシレートR
5COO
-、より好ましくは脂肪酸のカルボキシレートであるR
5COO
-を表し、とりわけA
-は、アセテート、2-エチルヘキサノエート、オレエート、ポリイソブテニルスクシネート又はポリイソブテニルスクシネートのモノエステルである)
のものである。
【0049】
一実施形態において、第四級化アンモニウム化合物は、式
【化5】
(この式中、
i=1~n及び1~mについてのX
iは、互いに独立して、-CH
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-及び-CH(CH
3)-CH(CH
3)-O-からなる群から選択され、好ましくは、-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-及び-CH(CH
3)-CH(CH
3)-O-からなる群から選択され、より好ましくは、-CH
2-CH(CH
3)-O-、-CH(CH
3)-CH
2-O-、-CH
2-C(CH
3)
2-O-、-C(CH
3)
2-CH
2-O-、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-及び-CH(C
2H
5)-CH
2-O-からなる群から選択され、最も好ましくは、-CH
2-CH(C
2H
5)-O-、-CH(C
2H
5)-CH
2-O-、-CH
2-CH(CH
3)-O-及び-CH(CH
3)-CH
2-O-からなる群から選択され、とりわけ-CH
2-CH(CH
3)-O-及び-CH(CH
3)-CH
2-O-からなる群から選択され、
m及びnは、互いに独立して、正の整数であり、但し、合計(m+n)は、2~50、好ましくは5~40、より好ましくは10~30、とりわけ15~25であることを条件とし、
Rは、C
1~C
4アルキル、好ましくはメチルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはサリチレート又はメチルオキサレートを表す)
のものである。
【0050】
別の好ましい実施形態において、第四級化アンモニウム化合物は、式
【化6】
(この式中、
R
a及びR
bは、互いに独立して、C
1~C
20アルキル又はヒドロキシ-C
1~C
4アルキルを表し、好ましくは、R
aは、C
1~C
20アルキル、好ましくはエチル、n-ブチル、n-オクチル、n-ドデシル、テトラデシル又はヘキサデシルを表し、R
bは、ヒドロキシ-C
1~C
4アルキル、好ましくは2-ヒドロキシプロピルを表し、
A
-は、アニオン、好ましくは上で定義されたようなカルボキシレートR
5COO
-又はカーボネートR
5O-COO
-、より好ましくはC
12~C
100アルキル-及びアルケニルコハク酸、とりわけドデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸、及びポリイソブテニルコハク酸を表す)
のものである。
【0051】
好ましい第四級アンモニウム化合物は、
- 式
【化7】
の第四級アンモニウム化合物、及び
- 式
【化8】
の第四級アンモニウム化合物
からなる群から選択され、
式
【化9】
の第四級アンモニウム化合物が非常に好ましい。
【0052】
通常、少なくとも1種、例えば1~3種、好ましくは1又は2種、とりわけ1種の第四級アンモニウム化合物が、船舶用燃料中に使用される。
【0053】
少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物は、50~2000重量ppm、好ましくは60~1500、より好ましくは70~1000重量ppmの量で船舶用燃料中に使用される。
【0054】
例外的な場合に、とりわけ試験目的のために、少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物は、20~5000重量ppm、好ましくは30~4000、より好ましくは40~3000重量ppmの量で船舶用燃料中に使用される。
【0055】
一般に、少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物は、少なくとも1種の溶媒、例えば、非極性有機溶媒、例えば芳香族及び脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ホワイト・スピリット並びに商品名SHELLSOL(Royal Dutch/Shell Group)及びEXXSOL(ExxonMobil)で販売されている製品など、並びにまた極性有機溶媒、例えば、アルコール、例えば2-エチルヘキサノール、デカノール及びイソトリデカノールなど中の溶液として船舶用燃料中へ計量供給される。
【0056】
燃料と少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物との混合は、例えば撹拌容器又はタンク中での、機械的剪断エネルギーの適用、振盪、回転子固定子混合、ポンプにより又は重力により搬送されるパイプを通しての乱流、静的ミキサー及び向流ミキサーによって達成され得る。混合はまた、燃料を、ループを通して循環させることによって、例えばそれらをタンクの底部からタンクの上部にポンプで送り、タンクの上部でそれらがタンク内容物の表面上に放出されることによって達成され得る。燃料及び水の循環の前に予備撹拌が可能であるが、必要ではない。好ましい実施形態において、少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物は、循環中のループ中へ計量供給され得る。
【0057】
別の実施形態において、当該少なくとも1種の第四級アンモニウム化合物は、燃料が燃焼室中へ搬送される前に、燃料パイプ中へ計量供給されてもよい。
【0058】
第四級アンモニウム化合物は、第四級アンモニウム化合物に付け加えて曇り除去剤(dehazer)、酸化防止剤、金属不活性化剤、及び溶媒からなる群から選択される1種以上を含み得る、添加剤パッケージの一部であり得る。
【0059】
曇り除去剤
好適な曇り除去剤は、例えば、アルキル置換フェノール及びナフタレンスルホネートのアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩並びに脂肪酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、並びにまた中性化合物、例えばアルコールアルコキシレート、例えばアルコールエトキシレート、フェノールエトキシレート、例えばtert-ブチルフェノールエトキシレート又はtert-ペンチルフェノールエトキシレート、脂肪酸、アルキルフェノール、例えばEO/POブロックコポリマーの形態でなどの、エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)との縮合生成物、ポリエチレンイミン或いはポリシロキサンである。
【0060】
更なる好適な曇り除去剤は、アルキルフェノール-ホルムアルデヒド縮合物(Novolac、レゾール又はカリックスアレーン型)のEO/PO-ベースのアルコキシレート、ジオール(例えばプロパンジオール、エチレングリコール)、トリオール(例えばグリセロール又はトリメチロールプロパン)、エチレンジアミン、又はポリエチレンイミンのEO/POベースのアルコキシレートである。更なる好適な曇り防止剤は、アルキルベンゼンスルホン酸、ジアルキルスルホスクシネート又はそれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩である。好適な曇り除去剤は、国際公開第96/22343号パンフレットに記載されている。ジグリシジルエーテルをベースとする更なる好適な曇り防止剤は、米国特許第3383326号明細書及び米国特許第3511882号明細書に記載されている。
【0061】
他の好適な曇り除去剤は、例えば、アルコキシル化フェノール-ホルムアルデヒド縮合物、例えば、商品名NALCO 7D07(Nalco)及びTOLAD 2683(Petrolite)で入手可能な製品である。
【0062】
酸化防止剤
好適な酸化防止剤は、例えば、置換フェノール、例えば2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェノールなど、好ましくはパラ位にエステル基を有する基を持ったヒンダードフェノール、例えば3-[3,5-ビス-(ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン酸C6~C20アルキルエステル、例えば2-エチルヘキシル又はステラリルエステルなど、及びまたフェニレンジアミン類、例えばN,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミンなどである。
【0063】
金属不活性化剤
好適な金属不活性化剤は、例えば、サリチル酸誘導体、例えばN,N’-ジサリチリデン-1,2-プロパンジアミンなどである。
【0064】
溶媒
好適な溶媒は、例えば、非極性有機溶媒、例えば芳香族及び脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ホワイト・スピリット並びに商品名SHELLSOL(Royal Dutch/Shell Group)及びEXXSOL(ExxonMobil)で販売されている製品など、並びにまた極性有機溶媒、例えば、アルコール、例えば2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘキサノール、デカノール、イソトリデカノール及びイソヘプタデカノールなどである。そのような溶媒は、通常、前述の添加剤及び共添加剤と一緒に燃料に添加され、溶媒は、より良好なハンドリングのためにそれらを溶解させる又は希釈することを意図する。
【0065】
上述の第四級アンモニウム化合物は、船舶用燃料中のアスファルテンを溶解させ又は分散させ、飽和化合物対アスファルテンの高い重量比を有する船舶用燃料においてとりわけ有効である。したがって、第四級アンモニウム化合物は、とりわけ、船舶用燃料から沈澱するアスファルテンのファウリングに対して有効である。
【0066】
それらは、とりわけ、タンク、ノズル、フランジ、ポンプ、燃料パイプライン、燃料フィルター、及び/又はセパレーターにおける船舶用燃料からの沈澱物を除去する及び/又は防ぐのに有用である。
【0067】
この本文の全体にわたって示される量は、特に明記しない限り、例えば溶媒を排除した純成分について言及する。
【実施例】
【0068】
分析方法
SARA分析は、NTS America,Inc.社製のLatroscan(登録商標)MK 6を使用するTLC-FIDによるIP 469に従って、成分に関して行った。
【0069】
加えて、ASTM D3279によるアスファルテン含有量及びEN ISO 8754:2003-12による硫黄含有量を測定した。値は、特に明記しない限り、重量%で示す。
【0070】
トータルセジメント(TSE)は、ISO 10307-1:2009(E)に従って測定した。
【0071】
潜在トータルセジメント(TSP)は、ISO 10307-2:2009(E)、手順Aに従って測定した。促進トータルセジメント(TSA)は、ISO 10307-2:2009(E)、手順Bに従って測定した。
【0072】
原材料
4-ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、CAS 121-65-3)は、Aldrichから入手した。
【0073】
N-ビニルピロリドン-ヘキサデセンコポリマーGanexTM V-216(国際公開第2012/039900号パンフレットを参照されたい)は、Ashland社から入手した。
【0074】
本発明の第四級アンモニウム化合物Quat1は、スチレンオキシドをPOで置き換えることによって国際公開第2012/004300号パンフレットの調製例1と同様に(1000の分子量のポリイソブテンからの)ポリイソブテン置換コハク酸無水物と、3-ジメチルアミノ-プロパン-1-アミンとプロピレンオキシド(PO)とから調製した。
【0075】
燃料成分1~4を、船舶用燃料のブレンディングのために使用した。
【0076】
【0077】
船舶用燃料1~3を、以下の表(重量%)に従ってブレンドした。
【0078】
【0079】
船舶用燃料1~3について、それらの組成から以下の特性を計算した。
【0080】
【0081】
成分を、2、4、1、3の順にブレンドした。分散剤添加の場合には、それぞれの添加剤を成分2に溶解させ、次いで他の成分にブレンドし、4、1、3の順に添加した。
【0082】
【0083】
潜在トータルセジメント(TSP値、熟成トータルセジメント)は、外部からの影響を排除した、標準貯蔵条件下で形成することができるセジメントの総量である。重油の熟成潜在トータルセジメントが、全てのグレードの中間(IFO)及び重油(HFO)の仕様値(0.10%m/m最大)を著しく超える場合、燃料クリーニングシステムに関連する問題が起こり得、燃料フィルターが閉塞され得、燃焼が一貫性のないものになり得る。
【0084】
【0085】
本発明による第四級化合物が、先行技術から公知の化合物よりも多く潜在トータルセジメントを低減することを容易に理解することができる。この効果は、飽和化合物対アスファルテンの重量比が高ければ高いほど、より顕著になる。
【0086】
船舶用燃料4及び5は、次の通りの組成で市販されているものであった。
【0087】
【0088】
【国際調査報告】