(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】シラノール及びシランジオール
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241010BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20241010BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C07F7/18 B CSP
C23C16/42
C23C16/455
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523641
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 US2022078325
(87)【国際公開番号】W WO2023069965
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル モーザー
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
4H049VU24
4H049VW02
4K030AA09
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA29
4K030BA35
4K030BA41
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030LA15
(57)【要約】
原子層堆積(ALD)又は化学気相堆積(CVD)プロセスにより、半導体デバイスの高アスペクト比の、ギャップ、トレンチ、ビア、及び他の表面特徴に、低誘電率(低k)絶縁材料を堆積させるのに有益な組成物が開示される。第1の組成物は、アルコキシシランジオールを含んでもよい。シランジオールのアルコキシベース置換基は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよい。別の例において、組成物はアルコキシシラノールを含んでもよい。シラノールのアルコキシベース置換基は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基であってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
により示されるアルコキシシランジオール化合物であって;
R
1は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキルであり;及び
R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキルである、
アルコキシシランジオール化合物。
【請求項2】
前記化合物は、
【化2】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
以下の式により示されるヒドロキシル基を含有するアルコキシシリル化合物であって、
【化3】
Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル、又は6~12個の炭素原子を有するアリールであり;及び
R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキルである、
アルコキシシリル化合物。
【請求項4】
前記化合物は、
【化4】
からなる群から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
ケイ素含有膜を形成する方法であって:
ALD又はCVDツールの堆積チャンバ内側に基板を配置すること;
前記堆積チャンバに、ケイ素及び酸素含有化合物並びに共反応体を注入すること;
前記堆積チャンバ内にあるときに前記ケイ素及び酸素含有化合物並びに前記共反応体をインサイチュ発生プラズマに曝し、それにより、ケイ素及び酸素含有化合物-共反応体反応生成物を形成すること;及び
前記ケイ素及び酸素含有化合物-共反応体反応生成物を前記基板上に堆積させ、それにより、前記ケイ素含有膜を形成すること;
を含む方法。
【請求項6】
前記基板は、パターン化されていても、パターン化されていなくてもよい、請求項5に記載のケイ素含有膜を形成する方法。
【請求項7】
前記ケイ素及び酸素含有化合物は以下の式により示されるアルコキシシランジオール化合物であり、
【化5】
R
1は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキルであり;及び
R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキルである、
請求項5又は6に記載のケイ素含有膜を形成する方法。
【請求項8】
前記アルコキシシランジオールは、
【化6】
からなる群から選択される、請求項7に記載のケイ素含有膜を形成する方法。
【請求項9】
前記ケイ素及び酸素含有化合物は、以下の式により示されるアルコキシシラノールであり、
【化7】
Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル、又は6~12個の炭素原子を有するアリールであり;及び
R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキルである、
請求項5又は6に記載のケイ素含有膜を形成する方法。
【請求項10】
前記アルコキシシラノールは、
【化8】
からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記共反応体は、窒素(N
2)、アンモニア(NH
3)、酸素(O
2)、オゾン(O
3)及び水(H
2O)からなる群から選択される、請求項5又は6に記載のケイ素含有膜を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月21日に出願された米国特許仮出願第63/270,379号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般にはシラノール、及びシランジオールに関し、より詳細にはアルコキシシラノール、及びアルコキシシランジオールに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイス形状は、サイズが縮小し続けているため、パターン化された基板上でこれらのデバイスの表面密度は増加し続けている。この密度増加に伴い、そのようなパターン化された基板上に隣接するデバイス間の、クロストーク及び寄生容量を含む電気的干渉の機会が増加し続ける。この電気的干渉の可能性を低減するために、低誘電率(低k)絶縁材料が、そのようなパターン化された基板上に隣接するデバイス間の、ギャップ、トレンチ、ビア、及び他の表面特徴に配置されることがよくある。
【0004】
シラノール、及びシランジオールは、パターン化された基板上に隣接するデバイス間の、ギャップ、トレンチ、ビア、及び他の表面特徴に使用される材料として、関心を集めている。しかしながら、シラノール、及びシランジオールに問題がないわけではない。幾つかのシラノール、及びシランジオールは、シラノール又はシランジオールの分子が相互作用し、親分子に由来するシロキサン、又はポリシロキサンを形成する自己縮合反応を受ける。例えば、第1のシラノール分子は、第2のシラノール分子と縮合反応を受けて、第1のシロキサンを形成し得る。続いて、第1のシロキサンは、別の縮合反応において、第3のシラノール分子、又は第2のシロキサンと相互作用し、ポリシロキサンを形成し得る。良くも悪くも、このようなシロキサン、及びポリシロキサンは、容易に気化せず、したがって、親分子と比較して、原子層堆積(ALD)又は化学気相堆積(CVD)ツールの堆積チャンバに容易に輸送されないことがある。したがって、シロキサン、又はポリシロキサンを形成することがより少ない傾向を示すシラノール及びシランジオールの前駆体材料が必要とされている。
【0005】
本開示は、上述した1つ以上の問題、及び/又は先行技術に関する他の問題を克服することに向けられている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様によれば、ALD及びCVDプロセス中で有益なアルコキシシランジオール組成物が開示される。より詳細には、組成物は式
【化1】
により表された化合物を含み得る。上記に表された各シランジオール化合物において、R
1は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。上記に表された各化合物において、R
2は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。
【0007】
本発明のこの態様における好ましい実施形態によれば、アルコキシシランジオールは、
【化2】
からなる群から選択され得る。
【0008】
本発明の追加の態様によれば、ALD及びCVDプロセス中で有益なアルコキシシラノール組成物が開示される。本明細書に開示されるアルコキシシラノールは、式
【化3】
により示され得る。上記に表された各化合物において、Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル、又は6~12個の炭素原子を有するアリールである。上記に表された各化合物において、R
2は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。
【0009】
本発明のこの態様における好ましい実施形態における、アルコキシシラノールは、
【化4】
からなる群から選択され得る。
【0010】
本明細書に開示される本発明の第3の態様によれば、ケイ素含有膜を形成する方法が開示される。この方法は、ALD又はCVDツールの堆積チャンバ内側に、基板を配置する工程を含んでもよい。ALD又はCVDツールの堆積チャンバに、ケイ素及び酸素含有化合物並びに共反応体が注入され得る。堆積チャンバ内にあるときにケイ素及び酸素含有化合物並びに共反応体をインサイチュ発生プラズマに曝し、それにより、ケイ素及び酸素含有化合物-共反応体反応生成物が形成し得る。別の工程は、ケイ素及び酸素含有化合物-共反応体反応生成物を基板上に堆積させることで、それにより、ケイ素含有膜を形成することを含み得る。
【0011】
本方法における基板は、パターン化されていても、パターン化されていなくてもよく、ケイ素及び酸素含有化合物は式
【化5】
により示されるアルコキシシランジオール化合物であってもよい。この場合、R
1は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基であり、R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。本方法の好ましい実施形態において、アルコキシシランジオールは:
【化6】
からなる群から選択され得る。
【0012】
本方法の別の例において、ケイ素及び酸素含有化合物は式
【化7】
により示されるアルコキシシラノールであってもよい。この場合、Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又は6~12個の炭素原子を有するアリールであり、R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。本方法の好ましい実施形態において、アルコキシシラノールは:
【化8】
からなる群から選択され得る。
【0013】
最後に、本方法において利用される共反応体は、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、酸素(O2)、オゾン(O3)及び水(H2O)からなる群から選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示に従い製造されたtert-ブチル-tertブトキシシランジオール化合物の熱重量分析(TGA)である。
【
図2】
図2は、本開示に従い製造されたtert-ブチル-tertペントキシシランジオール化合物のTGAである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の様々な態様は、ここで、適用可能である場合、特に明記しない限り、同様の要素を参照する同様の参照番号を用いて、本明細書に開示される図及び表を参照して説明される。上述のように、幾つかのシラノール、及びシランジオールは、シラノール又はシランジオールの分子が相互作用して親分子に由来するシロキサン、又はポリシロキサンを形成する自己縮合反応を受ける。このようなシロキサン、及びポリシロキサンは、容易に気化せず、したがって、親分子と比較して、ALD又はCVDツールの堆積チャンバに容易に輸送されないことがある。そのため、本出願人は、薄膜技術分野に適用可能なシラノール、及びシランジオールが、ALD又はCVDツールの堆積チャンバに輸送され得る前に、シロキサン、又はポリシロキサンを形成する可能性を低減する手段を研究した。
【0016】
以上を念頭において、本出願人は、第1のシラノール分子が第2のシラノール分子との縮合反応を受けて、第1のシロキサンを形成し得ることを理解する。出願人はまた、このような第1のシロキサンが、縮合反応において第3のシラノール分子、又は第2のシロキサンと相互作用して、続いてポリシロキサンを形成し得ることを理解する。さらに、本出願人は、シランジオール化学で類似の反応経路が生じることを理解する。そのため、本出願人は、シラノール、及びシランジオールを、立体障害置換基、例えば、分岐鎖又は環状アルキル基で置換することで、縮合反応経路を阻害し、それにより、親材料に由来するシロキサン及びポリシロキサンの形成がより少なくなると理論付けた。
【0017】
この目的のために、本出願人は、tert-ブチル-tertブトキシシランジオールを合成し、得られた物質の安定性研究を実施した。より具体的には、以下に詳細に記載されるように、本出願人は、合成したtert-ブチル-tertブトキシシランジオール物質を110℃の高温に4週間曝した。次に、出願人は、高温に曝された物質のサンプルを4週間採取し、核磁気共鳴(NMR)によって分析した。NMRスペクトルにより、シロキサン、又はポリシロキサンが形成されなかったことを含み、物質の分解は観測されなかった。
【0018】
したがって、本発明の第1の態様において、本明細書に開示されるのは、ALD及びCVDプロセスに前駆体として有益なアルコキシシランジオール化合物を含む、新規であり、自明ではない組成物である。本明細書に開示される化合物は、以下の式により示される化合物を含む。
【化9】
上記に表される各化合物において、R
1は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。上記に表される各化合物において、R
2は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状のアルキル基である。
【0019】
本発明の第1の態様におけるより好ましい実施形態において、アルコキシシランジオールが、
【化10】
からなる群から選択される組成物が開示される。
【0020】
アルコキシシランジオールの合成
【0021】
実施例1:アルコキシシランジオールの一般的な合成。
【0022】
1当量のアルキルトリクロロシラン、R1SiCl3及び1当量のアルカリアルコキシドの両方をテトラヒドロフランに溶解する。アルキルトリクロロシランの撹拌フラスコに、アルカリアルコキシド溶液を室温でゆっくりと添加する。反応は室温よりわずかに高い発熱性である。反応混合物を冷却し、過剰の水に溶解した1当量のピリジンを用いてクエンチした。これによりジオールが生成する。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、有機層を水で抽出して残留塩を除去した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過した。溶媒を真空中で除去し、アルコキシシランジオール生成物を得た。化合物を溶媒に溶解し、GC及びNMRを実行した。
【0023】
アルコキシシランジオールの一般的な合成は以下に示される。
【化11】
上記に表される各化合物において、R
1は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基である。上記に表される各化合物において、R
2は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基である。最後にM=Li、Na又はKである。
【0024】
実施例2:tert-ブチル-tertブトキシシランジオールの合成。
【0025】
tert-ブチルトリクロロシラン、18.7g(0.1mol)を100mLのTHFに溶解し、カリウムtert-ブトキシド、11g(0.1mol)を50mLのTHFに溶解した。tert-ブチルトリクロロシランの撹拌フラスコに、カリウムt-ブトキシドを室温でゆっくりと添加した。反応は発熱性であり、温度は40℃まで上昇した。いったん冷却した後、水80gと混合したピリジン、15g(0.2mol)を用いて、反応をクエンチした。これによりジオールが生成する。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、有機層を水で抽出して残留塩を除去した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過した。溶媒を真空中で除去し、16g(75%)の白色固体を得た。その固体を溶媒に溶解し、GC及びNMRを実行した。物質は、GC及びGCMSにより99%確認された生成物であった。本用途においてTGAは、加熱後に0.5%の残留物を含んだ。C8H20O3Siの融点は、149℃から152℃である。1H NMR(500MHz、298K、C6D6) δ:2.13(s、2H、OH)、1.28(s、9H、OC(CH3)3)、1.08(s、9H、C(CH3)3)。MS、m/z 192.0(M+)、177.1(M+-CH3)。
【0026】
実施例3:tert-ブチル-tertブトキシシランジオールの安定試験。
【0027】
tert-ブチル-tertブトキシシランジオール5gをステンレス製のアンプルに入れ、110℃まで加熱した。加熱から4週間後、物質にNMRを実行し、初期物質と比較した。NMRにより分解物は観測されなかった。物質は高温で安定である。
【0028】
実施例4:tert-ブチル-tertペントキシシランジオールの合成。
【0029】
tert-ブチルトリクロロシラン、80g(0.41mol)を300mLのTHFに溶解し、カリウムtert-ペントキシド、51g(0.44mol)を300mLのTHFに溶解した。tert-ブチルトリクロロシランの撹拌フラスコに、カリウムt-ペントキシドを室温でゆっくりと添加した。反応は発熱性であり、温度は40℃まで上昇した。いったん冷却し、水400gと混合したピリジン、82g(1.0mol)を用いて、反応をクエンチした。これによりジオールが生成する。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、有機層を水で抽出して残留塩を除去した。有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過した。溶媒を真空中で除去し、77g(88%)の白色固体を得た。その固体を溶媒に溶解し、GC及びNMRを実行した。材料は、GC及びGCMSにより99%確認された生成物であった。C9H22O3Siの融点は、128℃から131℃である。本用途においてTGAは、加熱後に0.4%の残留物を含んだ。1H NMR(500MHz、298K、C6D6) δ:3.38(s、2H、OH)、1.54(q、2H、CH2CH3)、1.31(s、6H、C(CH3)2)、1.13(s、9H、C(CH3)3)、0.95(t、3H、CH2CH3)。MS、m/z 206.0(M+)、191(M+-CH3)。
【0030】
本発明の第2の態様において、ALD又はCVDプロセス中に前駆体として有益なアルコキシシラノール化合物を含む、新規であり、自明ではない組成物が開示される。本明細書に開示される化合物は以下の式により示される化合物を含む。
【化12】
上記に表される各化合物において、Rは2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状のアルキル基、又は6~12個の炭素原子を有するアリールである。上記に表される各化合物において、R
2は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基である。
【0031】
本発明の第2の態様におけるより好ましい実施形態において、アルコキシシラノールが、
【化13】
からなる群から選択される組成物が開示される。
【0032】
アルコキシシラノールの合成。
【0033】
実施例5:RSi(OR2)2OHアルコキシシラノールの一般的な合成。
【0034】
アルキル置換アルコキシシラノールについて、1当量のアルキルトリクロロシラン、RSiCl3及び2当量のアルカリアルコキシドの両方をテトラヒドロフランに溶解する。アルキルトリクロロシランの撹拌フラスコに、アルカリアルコキシド溶液を室温でゆっくりと添加する。反応は室温よりわずかに高い発熱性である。反応混合物を冷却し、過剰の水に溶解した2当量のピリジンを用いてクエンチした。これによりシラノールが生成する。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、有機層を水で抽出して残留塩を除去した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過した。溶媒を真空中で除去し、アルキルビス(アルコキシ)シラノール生成物を得た。化合物を溶媒に溶解し、GC及びNMRを実行した。
【0035】
アリール置換アルコキシシラノールについて、1当量のアリールトリクロロシラン、RSiCl3及び2当量のアルカリアルコキシドの両方をテトラヒドロフランに溶解する。アルキルトリクロロシランの撹拌フラスコに、アルカリアルコキシド溶液を室温でゆっくりと添加する。反応は室温よりわずかに高い発熱性である。反応混合物を冷却し、過剰の水に溶解した2当量のピリジンを用いてクエンチした。これによりシラノールが生成する。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、有機層を水で抽出して残留塩を除去した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過した。溶媒を真空中で除去し、アリールビス(アルコキシ)シラノール生成物を得た。化合物を溶媒に溶解して、GC及びNMRを実行した。
【0036】
アルコキシシラノールの一般的な合成は、以下に示される。
【化14】
上記に表される各化合物において、Rは2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル、又は6~12個の炭素原子を有するアリール基である。上記に表される各化合物において、R
2は3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基である。最後にM=Li、Na又はKである。
【0037】
実施例6:t-ブチルビス(t-ブトキシ)シラノールの合成
【0038】
tert-ブチルトリクロロシラン、9.6g(0.05mol)を60mLのTHFに溶解し、カリウムtert-ブトキシド、11.25g(0.10mol)を 60mLのTHFに溶解した。tert-ブチルトリクロロシランの撹拌フラスコに、カリウムt-ブトキシドを室温でゆっくりと添加した。反応は発熱性であり、温度は50℃まで上昇した。いったん冷却し、水50gと混合したピリジン、4.1g(0.05mol)を用いて反応をクエンチした。これによりシラノールが生成する。混合物を分液漏斗に移し、層を分離し、有機層を水で抽出して残留塩を除去した。有機層をMgSO4上で乾燥し、濾過した。溶媒を真空中で除去し、9g(70%)の白色固体を得た。その固体を溶媒に溶解し、GC及びNMRを実行した。物質は、GC及びNMRにより99%確認された生成物であった。C12H28O3Siの融点は、52℃から54℃である。1H NMR(500MHz、298K、C6D6) δ:1.61(s、1H、OH)、1.31(s、18H、OC(CH3)3)、1.11(s、9H、C(CH3)3)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
実施において、上記で説明され、示されたアルコキシシラノール、及びアルコキシシランジオールは、パターン化された基板上に隣接する半導体デバイス間の、ギャップ、トレンチ、ビア、及び他の表面特徴に堆積される絶縁材料としての使用を含むが、これに限定されない多くの産業用途において、利用可能性があることがわかる。したがって、本明細書に開示される発明の第3の態様において、上記で説明され、示されるアルコキシシラノール、及びアルコキシシランジオールを用いて、ケイ素含有膜を堆積させる方法が開示される。本方法の第1の工程において、基板をALD又はCVDツールの堆積チャンバ内側に配置してもよい。基板はパターン化されていても、パターン化されていなくてもよい。パターン化された基板は、基板上の隣接するデバイス間にギャップ、トレンチ、ビア、及び他の表面特徴を含み得る。パターン化されていない基板は、例えば、ギャップ、トレンチ、ビア、又は他の表面特徴を有しないケイ素基板である。
【0040】
適切な基板材料は、半導体材料、例えば、ヒ化ガリウム(「GaAs」)、ケイ素、並びにシリコン含有組成物、例えば、結晶性シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(「SiO2」)、シリコンガラス、窒化ケイ素、溶融シリカ、ガラス、石英、ホウケイ酸塩ガラス、及びそれらの組み合わせを含み得る。他の適切な材料は、クロム、モリブデン、並びに半導体、集積回路、フラットパネルディスプレイ、及びフレキシブルディスプレイ用途で一般的に用いられる他の金属を含む。基板は、追加の層、例えば、ケイ素、SiO2、有機ケイ酸ガラス(OSG)、フッ素化ケイ酸塩ガラス(FSG)、炭窒化ホウ素、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、有機-無機複合材料、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔性有機及び無機材料並びに複合体、金属酸化物、例えば、酸化アルミニウム及び酸化ゲルマニウムを有し得る。また、更なる層は、ゲルマノシリケート、アルミノシリケート、銅及びアルミニウム、並びに拡散バリア材料、例えば、限定されないが、TiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNであることもできる。
【0041】
別の工程において、ALD又はCVDツールの堆積チャンバは、ケイ素及び酸素含有化合物並びに共反応体を注入され得る。堆積チャンバ内にあるときにケイ素及び酸素含有化合物並びに共反応体を、インサイチュプラズマ発生器に曝し、それにより、ケイ素及び酸素含有化合物-共反応体反応生成物が形成し得る。別の工程は、ケイ素及び酸素含有化合物-共反応体反応生成物を基板上に堆積させることで、それにより、ケイ素含有膜を形成することを含み得る。
【0042】
本方法における基板は、パターン化されていても、パターン化されていなくもよく、ケイ素及び酸素含有化合物は式
【化15】
により示されるアルコキシシランジオール化合物であってもよい。この場合、R
1は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基であり、ここで、R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基である。本方法の好ましい実施形態において、アルコキシシランジオールは:
【化16】
からなる群から選択され得る。
【0043】
本方法の別の例において、ケイ素及び酸素含有化合物は式
【化17】
により示されるアルコキシシラノールであってもよい。この場合、Rは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル、3~6個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル、又は6~12個の炭素原子を有するアリールであり、ここで、R
2は、3~10個の炭素原子を有する分岐鎖、又は環状のアルキル基である。本方法の好ましい実施形態において、アルコキシシラノールは:
【化18】
からなる群から選択され得る。
【0044】
最後に、本方法において利用される共反応体は、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、酸素(O2)、オゾン(O3)及び水(H2O)からなる群から選択され得る。
【0045】
ケイ素含有膜の形成。
【0046】
実施例7:インサイチュプラズマを用いるtert-ブチル-tertブトキシシランジオールを使用した炭化窒素ケイ素膜の堆積(予言的)。
【0047】
流動性CVD堆積を、実験計画法(DOE)手段を使用して行った。実験計画法は:溶媒中のtert-ブチル-tert-ブトキシシランジオールが100mg/分から5000mg/分、好ましくは1000mg/分から2000mg/分の流速で、CVDチャンバへ導入される;100sccmから3000sccm、好ましくは500sccmから1500sccmのNH3流速;0.75Torrから12Torr、好ましくは4Torrから8Torrのチャンバ圧力;100Wから1000W、好ましくは150Wから300Wのインサイチュプラズマ電力;及び0℃から550℃、好ましくは0℃から150℃の堆積温度範囲を含んでいた。
【0048】
多くのSiOCN膜は、前駆体としてtert-ブチル-tert-ブトキシシランジオールを使用して、8インチケイ素基板上及びパターン化された基板上に堆積され、流動性、膜密度、及びウエットエッチ速度を比較する。
【0049】
実施例8:インサイチュプラズマを伴うtert-ブチル-tertブトキシシランジオールを使用した酸化ケイ素膜の堆積(予言的)。
【0050】
多くの酸化ケイ素膜は、前駆体としてtert-ブチル-tert-ブトキシシランジオールを使用して、8インチケイ素基板上及びパターン化された基板上に堆積され、流動性、膜密度、及びウエットエッチ速度を比較する。
【0051】
最も好ましい堆積条件は、以下のとおりである:溶媒中のtert-ブチル-tertブトキシシランジオールが、100mg/分から5000mg/分、好ましくは1000mg/分から2000mg/分の流速;O2フロー=1500~4500sccm、Heキャリアフロー=50sccm、圧力=0.5~2Torr、リモートプラズマ電力=3000W、及び温度=10~20℃で、CVDチャンバへ導入される。ウエット及びソフト膜がブランケットウエハ上に堆積される。堆積した膜は、300℃で5分間熱アニールされ、400℃で10分間UV硬化される。流動性SiOC膜により、パターン化されたウエハ上で、ボトムアップで、シームレスな空隙のないギャップ充填が達成される。
【0052】
さらに、新規アルコキシシラノール、及びアルコキシシランジオールは、固体トランジスタ、キャパシタ、ビア、及び回路の電子デバイス製造における誘電体層のような基板上に、金属又はメタロイドケイ酸塩を形成するための方法において、有利に使用され得る。一般に、金属又はメタロイド含有化合物をアルコキシシラノール、アルコキシシランジオール及びそれらの混合物と接触させ、金属又はメタロイド含有化合物をアルコキシシラノール又はアルコキシシランジオールと反応させて、基板上に金属又はメタロイドケイ酸塩を形成する。好ましくは、アルコキシシラノール又はアルコキシシランジオール及び金属又はメタロイド含有化合物は、それぞれ液体状態で利用可能なため、直接液体注入法を介してCVD/ALDチャンバに輸送される。典型的には、金属又はメタロイドは、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、ランタン、スカンジウム、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。金属又はメタロイド化合物を製作するために使用される配位子は、アミド、アルキル、アルコキシド、ハロゲン化物、及びそれらの混合物であり得る。
【0053】
上記の説明は、代表的なものに過ぎず、したがって、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態を変更してもよい。したがって、これらの変更は、本開示の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
【国際調査報告】