(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】XPSを使用したマルチ測定による小ボックス内の特性評価および測定
(51)【国際特許分類】
G01B 15/02 20060101AFI20241010BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20241010BHJP
G01N 23/2273 20180101ALN20241010BHJP
【FI】
G01B15/02 A
H01L21/66 N
H01L21/66 P
G01N23/2273
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524420
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 IB2022060178
(87)【国際公開番号】W WO2023067580
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518014357
【氏名又は名称】ノヴァ メジャリング インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】弁理士法人東京UIT国際特許
(72)【発明者】
【氏名】ポイス・ヒース
(72)【発明者】
【氏名】リー・ウェイ・チ
(72)【発明者】
【氏名】ワラッド・ラックスミ
(72)【発明者】
【氏名】キスリトシン・ドミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ルント・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】セン・ベニー
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】シン・サウラブ
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
4M106
【Fターム(参考)】
2F067AA27
2F067CC08
2F067EE04
2F067HH04
2F067JJ05
2F067KK05
2F067RR21
2G001AA01
2G001BA08
2G001CA03
2G001EA04
2G001FA08
2G001KA01
2G001KA11
2G001LA11
4M106AA01
4M106AA02
4M106CA48
4M106CB21
4M106DH24
4M106DH34
4M106DJ18
4M106DJ19
4M106DJ20
(57)【要約】
測定ボックス内のフィルム層を特性評価するシステムを開示する。上記システムは,第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を取得し,上記混合割合がウェハサンプルの測定ボックス内の第1のX線ビームの割合を表すものであり,上記測定ボックスが基板上に配置されたボア構造を表すものであり,ボア構造内に配置されたフィルム層を持つ。上記システムは,第1のX線ビームに対応する測定ボックスの寄与値を取得し,寄与値が測定ボックス内の同じ種信号に寄与する測定ボックス外の種信号を表す。上記システムは,第1のX線ビームを用いた測定ボックスの測定に対応する第1の測定検出信号を取得する。上記システムは,第1の測定検出信号,寄与値,および第1の混合割合に基づいてフィルム層の測定値を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの第1のフィルム層を特性評価するシステムであって,
電子光学系およびプロセッサを備え,
電子光学系が,
第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を備える第1のサンプル領域にX線スポットを照射し,ここで上記第1のフィルム層が第1のフィルム層材料から作られており,かつ基板材料から作られた基板の上に配置されたものであり,
上記第1のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供するように構成されており,
プロセッサが,
上記検出信号に基づいて種信号を決定し,上記種信号が(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含むものであり,
(i)上記種信号,(ii)上記第1のフィルム層に入射するX線スポットの割合を示す混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する上記第1のフィルム層材料の有効寄与を表す第1のフィルム層材料寄与値に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定するように構成されている,
システム。
【請求項2】
上記検出信号がX線光電子分光法(XPS)検出信号である,請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記検出信号がX線光電子分光法(XPS)検出信号である,請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記測定値が上記フィルム層の厚さである,請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記プロセッサが,メリット関数の値に基づいて上記フィルム層の厚さを決定するように構成されており,上記メリット関数の値が,上記フィルム層の実際の減衰と上記フィルム層のモデル化減衰との間の差に基づいて決定される,請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
上記プロセッサが,メリット関数の値に基づいて上記フィルム層の厚さを決定するように構成されており,上記メリット関数の値が,(i)上記第1のフィルム層材料種信号,(ii)上記基板材料種信号,(iii)モデル化第1フィルム層材料種信号,および(iv)モデル化基板材料種信号に基づいて決定される,請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
上記モデル化第1フィルム層材料種信号が,上記混合情報,上記第1のフィルム層内で生成された光電子に関連する第1のフィルム層減衰パラメータ,上記フィルム層の厚さ,および上記第1のフィルム層材料寄与値に基づいて計算される,請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
上記基板材料種信号が,上記混合情報,上記フィルム層の厚さ,上記基板内で生成された光電子に関連する第1のフィルム層減衰パラメータ,および上記種信号の少なくとも一つについての上記基板材料の有効寄与を表す基板材料寄与値に基づいて計算される,請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
上記混合情報が,一または複数のフィルム層に対するビーム強度分布を示すものである,請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
上記混合情報が,一または複数のビーム・ガウス・パラメータを含む,請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
上記フィルム層が,上記追加サンプルサブ領域の上面の上に配置されている,請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
上記フィルム層が,上記追加サンプルサブ領域の上面の下に配置されている,請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
上記サンプル領域が,第2のフィルム層材料から作られ,上記第1のサンプルサブ領域の外側に位置する第2のフィルム層を備え,
上記プロセッサが,
上記検出信号に基づいて,上記第2のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域における第2のフィルム層材料種信号を決定し,
(i)上記種信号,(ii)上記混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つについての上記第2のフィルム層材料の有効寄与を表す第2のフィルム層材料寄与値に基づいて,上記第2のフィルム層の測定値を決定するようにさらに構成されている,
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
上記電子光学系が,
上記第2のフィルム層および第2のサンプルサブ領域を備える第2のサンプル領域に上記X線スポットを照射し,
上記第2のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供するようにさらに構成されている,
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
サンプルの第1のフィルム層を特性評価する方法であって,
X線スポットを用いて,第1のフィルム層および第2のサンプルサブ領域を含む第1のサンプル領域を照射し,ここで上記第1のフィルム層が第1のフィルム層材料から作られており,かつ基板材料から作られた基板の上に配置されたものであり,
上記第1のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供し,
プロセッサによって,上記検出信号に基づいて種信号を決定し,上記種信号が(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)上記基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含むものであり,
プロセッサによって,(i)上記種信号,(ii)上記第1のフィルム層に入射する上記X線スポットの割合を示す混合情報,および(iii)上記種信号の少なくとも一つについての上記第1のフィルム層材料の有効寄与を示す第1のフィルム層材料寄与値に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定する,
方法。
【請求項16】
サンプルの第1のフィルム層を特性評価するための非一時的コンピュータ読取り可能媒体であって,
上記非一時的コンピュータ読取り可能媒体は,コンピュータ化システムによって実行されることで,
X線スポットによって,第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を含む第1のサンプル領域を照射し,ここで上記第1のフィルム層が第1のフィルム層材料から作られており,かつ基板材料から作られた基板の上に配置されたものであり,
上記第1のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供し,
プロセッサによって,上記検出信号に基づいて種信号を決定し,上記種信号が(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含むものであり,
プロセッサによって,(i)上記種信号,(ii)上記第1のフィルム層に入射するX線スポットの割合を示す混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する上記第1のフィルム層材料の有効寄与を表す第1のフィルム層材料寄与値に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定する,
処理を上記コンピュータ化システムに実行させる命令を格納している,
媒体。
【請求項17】
サンプルの第1のフィルム層を特性評価する方法であって,
X線スポットを用いた,第1のサンプル領域の照射の結果,第1のサンプル領域から放出される電子を示す検出信号を取得し,ここで上記第1のサンプル領域は第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を含み,上記第1のフィルム層が第1のフィルム層材料から作られており,かつ基板材料から作られた基板の上に配置されたものであり,
プロセッサによって,上記検出信号に基づいて種信号を決定し,上記種信号が(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含むものであり,
上記プロセッサによって,(i)上記種信号,(ii)上記第1のフィルム層に入射する上記X線スポットの割合を示す混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つについての上記第1のフィルム層材料の有効寄与を示す第1のフィルム層材料寄与値に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定する,
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は,概略的には,半導体構造の特性評価(characterizing)および測定(measuring)のための技術に関するもので,具体的には,X線光電子分光法(XPS)(X-ray photoelectron spectroscopy)を使用したマルチ(複数の)測定による小ボックス内の材料層(layers of material in small boxes)を特性評価しかつ測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(IC)(Integrated circuits)は,通常,シリコン基板上に形成された複数層から構成される。集積回路が小型化し,集積回路を構成する層の厚さが薄くなるほど,このような複数層から形成されるデバイスの動作は特定層の厚さに依存することが多くなる。たとえば,シリコン基板上に形成されるトランジスタはトランジスタのゲートの厚さに依存して異なる特性を持つことがある。
【0003】
IC上の層は堆積技術によって基板上に堆積され,この堆積技術では層上にパターンがエッチングされて様々なICコンポーネント(部品)が形成される。このようなパターンにはトレンチまたはパディング(ボックス)(trenches or paddings(boxes))が含まれる。トレンチやボックスが材料の追加層によってコーティングされるときにトレンチやボックスが小さいと,適切な層厚を確認し,トレンチやボックス内に堆積したコーティング材料を確認することが困難になることがある。したがって,小ボックス領域内のフィルム層の厚さを決定することが有用なことがある。
【0004】
基板上に堆積したフィルム層の厚さはいくつかの手法のいずれかを用いて決定することができる。その一つはX線光電子分光法(XPS)である。XPSでは,X線ビームを基板に照射するとともに,同時に基板の最上層から出る(escape)電子の運動エネルギーおよび数を測定することで,XPSスペクトルが得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ICコンポーネントの小型化が進んでいるので,XPS測定用X線ビームがボックス領域内に収まらない(not fit inside a box region)ことがある。ボックス領域よりも大きなビームサイズのX線ビームを使用すると,ボックス内領域およびボックス周囲領域にX線ビームが照射されるので,収集されるXPS信号はボックス内材料およびボックス周囲材料から発せられることになる。そのため,XPS信号のどの部分がボックス内材料だけに対応しているかを確認することが難しい。小ボックス領域に対するXPS測定の分析精度を向上させる必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に示すこの開示の要約は,この開示のいくつかの態様および特徴の基本的な理解を提供するために含めている。この要約は,この開示の広範な概要ではなく,そのため,この開示のキーまたは重要な要素を特に特定すること,またはこの開示の範囲を画定することを意図していない。その唯一の目的は,以下に提示される,より詳細な説明の前段階として,簡略化された形態でこの開示のいくつかの概念を提示することである。
【0007】
開示される実施形態は,XPSを使用する複数の測定を用いて,小ボックス内のフィルム(薄膜)層の特性評価および測定を可能にする。開示されるいくつかの実施形態では,XPS測定は,小ボックス内のフィルム層の厚さまたは組成といった,フィルム層の特定のプロパティ(特性)を分析するために使用され,ここでXPS信号は小ボックスの外側にいくらか漏出する(こぼれる)(XPS signal has some spillage outside the small boxes)ものである。
【0008】
この開示の他の態様および特徴は,以下の図面を参照した詳細な説明から明らかであろう。詳細な説明および図面は,添付の特許請求の範囲によって定義されるこの開示の様々な実施形態の様々な非限定的な例を提供することを理解されたい。
【0009】
この明細書に組み込まれ,この明細書の一部を構成する添付の図面は,この開示の実施形態を例示するものであり,この明細書の説明と一緒にこの開示の原理を説明し,例示するのに役立つ。図面は,例示的な実施形態の主要な特徴を図式的に説明することを意図している。図面は,実際の実施形態の全ての特徴や描かれた要素の相対的な寸法を描写することを意図していず,縮尺通りには描かれていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1はいくつかの実施形態による測定を示すウェハサンプルの部分断面図であり,
図1Aはボックス構造の外側のフィルムスタックの層厚の決定の一例を示す概略図であり,
図1Bは,ボックス構造の内側のフィルムスタックの層厚の決定の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3Aは公称ビーム1を用いた基準ウェハサンプルの測定例を示し,
図3Bはスポット径の大きいビーム2を用いた基準ウェハサンプルの測定例を示している。
【
図4】
図4Aは公称ビーム1を用いた測定用ウェハサンプルの測定例を示し,
図4Bはスポット径の大きいビーム2を使用した測定用ウェハサンプルの測定例を示している。
【
図5】公称ビーム1を用いた測定用ウェハサンプルの測定例を示している。
【
図7】2つのフィルム層を示すボックスを有するウェハサンプルの一例の部分断面図である。
【
図8】
図8AはXラインスキャンを用いた基準ウェハサンプルの測定例を示し,
図8BはYラインスキャンを用いた基準ウェハサンプルの測定例を示している。
【
図9】X線ビームのビームパラメータのシミュレーションの一例を示している。
【
図10】
図10AはY方向における中心断面積に対する混合割合のシミュレーション例と測定例を示しており,
図10BはX方向における中心断面に対する混合割合のシミュレーションと測定例を示しており,
図10CはXラインスキャンにおけるボックス中心に対するビーム位置に対する混合割合の例を示している。
【
図11】
図11AはXラインスキャンを用いた測定用ウェハサンプルの測定例を示しており,
図11BはYラインスキャンを用いた測定用ウェハサンプルの測定の一例を示している。
【
図16】基板の上方に配置されたパッドの一例である。
【
図18】材料の厚さのシミュレーションの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して特性評価および測定方法/システムの実施形態を説明する。異なる実施形態またはそれらの組み合わせを,異なる用途に,または異なる利点を達成するために使用することができる。この明細書に開示される様々な特徴は,達成しようとする結果に応じて,利点と要件および制約とのバランスを取りながら,単独で,または他の特徴と組み合わせて,部分的にまたは最大限に利用することができる。したがって,様々な実施形態を参照して特定の利点を強調するが,開示された実施形態に限定されるものではない。すなわち,この明細書で開示される特徴は,それらが記載される実施形態に限定されるものではなく,他の特徴と「混合かつ適合」させて他の実施形態に組み込んでもよい。
【0012】
以下の詳細な説明では,この発明を十分に理解するために,多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら,この発明は,これらの具体的な詳細がなくても実施できることが当業者には理解されるであろう。他の例では,周知の方法,手順,および構成要素は,この発明を不明瞭にしないように詳細には記載されていない。
【0013】
この発明とみなされる主題は,明細書の結論部分において特に指摘され,明確に特許請求されている。しかしながら,この発明は,その目的,特徴および利点とともに,組織および操作方法の両方に関して,添付の図面とともに読まれる場合,以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【0014】
図解を簡略化し明瞭にするために,図に示された要素は必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解されよう。たとえば,いくつかの要素の寸法は,明確にするために他の要素に対して誇張されている場合がある。さらに,適切と考えられる場合には,符号が,対応するまたは類似する要素を示すために図面間で繰り返されることがある。
【0015】
この明細書において,システム,方法,および非一時的コンピュータ読み取り可能媒体のいずれか一つに対する言及は,システム,方法,および非一時的コンピュータ可読媒体のいずれか他のものに対して準用されるべきである。たとえば,システムに対するあらゆる言及は,システムによって実行可能な方法,およびシステムによって実行可能な命令を格納することができる非一時的コンピュータ可読媒体に対して準用されるべきである。
【0016】
この発明の図示する少なくとも一つの実施形態は,その大部分において,当業者に公知の電子部品および回路を使用して実施することができるので,この発明の基礎となる概念の理解および認識のために,またこの発明の教示を難解にしたり,この発明の教示から逸脱させたりしないために,詳細は,上述したように必要と考えられる範囲を超えては説明されない。
【0017】
以下に例示する数値は非限定的な例とみなされるべきである。
【0018】
様々な例においてSiO2製のフィルム層(薄膜層),およびSi製の基板について言及している。これらは単に材料の非限定的な例にすぎず,フィルム層はSiO2と異なる材料によって作ることができ,および/または基板はSi以外の材料によって作ることができることに留意すべきである。SiO2およびSiに対する言及は,それぞれ,任意のフィルム層材料および基板材料に準用されるべきである。
【0019】
図1は,特性評価または測定プロセス,たとえばサンプル上の薄いフィルム層(たとえば厚さ約0~10nm)の種(species)および/または種の厚さを決定するプロセスを示す,半導体ウェハサンプル100の一部の断面を示している。ベース層101,たとえばウェハ基板はシリコン製であり,ベース層101上に絶縁体層105が形成されている。この例では,シリコン基板ベース層上に二酸化シリコン層(a silicon-dioxide layer)が形成されている。二酸化シリコン層105は正方形または円形のボックス110の形状のボア(bore)(孔)をエッチングすることによってパターニングされ,特定の例では30μmの長さまたは直径の辺長を持つ。実際の製造ではこのようなボアが絶縁層105に多数形成されるが,実施形態を理解するために,このようなボアの一つのみに関して説明を進めることにする。この例のボアは基板に達していず,二酸化シリコンの薄いフィルム115がベース層101上のボア底部に残っている。この
図1の例では,二酸化シリコン105の層がシリコン基板101上に形成され,エッチングされてボックス110が形成されているが,ボックス110を形成するために任意の他の材料(窒化シリコン,他の酸化物または窒化物など)または製造プロセス(たとえば,選択蒸着など)を使用することができる。ボックス110は,長方形状,円形状,トレンチ形状等とすることができる。また,ボアが形成される基板101と誘電体層105との間に異なる材料の介在層(中間層)(intervening layer)が存在してもよい。
【0020】
一実施形態では,ボックス110を特徴づけるために,すなわちボックス110内(またはボックス110下)におけるフィルム層の存在,上記フィルム層の組成および厚さを決定するために,XPSが使用される。
図1の例を参照すると,この実施形態では,XPSは,二酸化シリコンフィルム層がボックス110に(またはボックス下に)残っているかどうか,残っている場合にはそのフィルム層の厚さを決定するために使用される。
【0021】
一実施形態では,
図1に示すサンプルにX線が照射され,その結果として生じるサンプルからの光電子放出(矢印によって示す)が調べられる。上記X線ビームが30μmのボックス110内に収まるスポット120を生成した場合,SiO2層115の厚さを,この明細書においてSi信号と呼ぶSi基板101からの放射(発光)のSiO2層115による減衰を使用して,計算することができる。しかし,特定の例では,発生したX線ビームが30μmの寸法よりも大きい直径のスポット120を有するので,XPS信号はボックス110の外部に流出する。この場合,SiO2からの放射の減衰は,ボックス内の信号成分とボックス外の信号成分(たとえば,流出)とを有する。一実施形態では,基準ボックス110に対して複数の測定が実行され,ビームの混合割合(混合分率)(a mixing fraction of the beam)(ボックス内のビーム割合)(fraction of beam that is inside the box)が決定される。上記混合割合を使用して,ボックス110について複数の測定が実行され,ボックス内の同じ信号種に寄与するボックス外の信号種の寄与値(contribution value for species signal outside the box that contribute to a same species signal inside the box)が決定される。その後,上記混合割合および寄与値を用いてSiO2層115の厚さを計算することができる。
【0022】
図2は,この明細書において開示する様々な実施形態のための,特性評価または測定プロセス用のX線システム200の一例を示している。上記システムの動作およびこの明細書に記載する分析は,一または複数のコンピュータ205によって実行することができる。一実施形態では,コンピュータ205は顧客の場所にあるスタンドアロンコンピュータであってもよい。コンピュータ205は,適切な不揮発性コンピュータ読取り可能記憶媒体にソフトウェアに使用される命令を記憶し,一または複数のプロセッサを使用してハードウェアに命令を実行させ,この明細書の技術を実装することができる。
【0023】
電子銃210が電子ビームを放出し,このビームは,ここではアルミニウム製である陽極215に照射される。その結果,陽極においてX線が発生し,モノクロメータ220に向かう。X線は次にモノクロメーターにおいて回折される。この実施例ではモノクロメータ220は水晶石英製であり,AlKαX線のみをウェハ225上に集光するように構成されている。少量のAlKαがフラックス検出器230にも集められる。フラックス検出器230の信号はX線数(X-ray count)からフラックス数(flux number)に変換することができる。上記フラックス数はウェハに当たったX線の参照指標として使用することができる。
【0024】
一次AlKαX線ビームがウェハ225に当たるように方向づけられる。X線がウェハ225の層(layers)を通過すると,電子および二次X線がウェハの各層から放出される。XPSエネルギーアナライザ240は放出された電子を収集してそれをXPS検出器245に向かわせる。XPSエネルギーアナライザ240は,概略的には,白色光を光子周波数ごとに分離するプリズムのように,放出された電子をそのエネルギーに応じて分離する。その結果,XPS検出器245によって生成される信号を使用して,特定エネルギーそれぞれにおける電子の数(すなわち強度)を測定することができる。コンピュータ205によって生成される,強度(電子数)対結合エネルギーをプロットしたサンプルグラフがモニター250に表示される。
【0025】
モニター250に例示されるプロットは,サンプル内の材料がどのように識別され得るかを示す。この特定の例では,ウェハ225はシリコン製であり,二酸化シリコン105の第1層または一酸化シリコン115のフィルム層を有している。プロット中の様々なピークを,被検査対象のサンプル,ここではウェハ225に存在する材料を特定するために使用することができる。
【0026】
一実施形態では,ある層からのXPS信号の減衰が,その上に異なる材料の層が存在することを推測するために用いられる。さらに,減衰の量をX線ビームがボックス110内に収容されている場合に上層の厚さを定量化するために用いることができる。ボックス110の外側の信号種(species signal)の流出を有するX線ビームについては,混合割合(mixing fraction)fを使用して,ボックス内側のビームの割合(たとえば,f)と,信号種の流出を計算するために使用することができるボックスの外側のビームの割合(たとえば,1-f)とを定量化することができる。
【0027】
図1の具体例に着目すると,
図1Bに例示するように,混合割合f=1,厚さt
0のオーバーレイヤーSiO2について,種S(
図1B)の信号は,Isi=Isi’e
(-t0/λsi,SiO)によって減衰する。ここでIsi’(参照強度(reference intensity)または参照電子数(reference electron count)と呼ばれることもある)は,層SiO2を通過する前の種Siからの光電子の強度であり,λsi,sioは材料パラメータである(材料SiO2を通過する種Siからの特定タイプの光電子についての有効減衰長(EAL,effective attenuation length)である。たとえばシリコンから放出されてSiO2を通過するシリコン2p光電子(silicon 2p photoelectrons)である。本書では,材料B中の材料Aについて略記EALが使用されることがあるが,上記材料から放出される特定の光電子を指すと理解されるべきである)。他の種(SiO2の薄層以外,および/またはSi基板以外)が存在する場合には,強度の指標(Isiの場合はsi,および/またはIsioの場合はSiO),ならびに他の定数および変数の指標(たとえばKsi,Ksio,λsi,SiO,および/またはλsio)は,異なる種(異なる材料)を反映するように変更される。
【0028】
図1Bに例示するように,上記の式に基づいて,混合割合が1未満のX線のビームの場合,種Si信号減衰は,Isi
Model=fe
(-t0/λsi,SiO)/Ksiのようにモデル化することができる。ここでfは混合割合であり,Ksiは信号の強度に対するSiの有効寄与(effective contribution)を表す定数である。したがって,SiO2オーバーレイヤーを介したシリコンの減衰信号は,SiO2を介したシリコンの有効減衰長に対するオーバーレイヤーの厚さの比の指数として表され,シリコンスケーリングファクターKsiによってスケーリングされ,さらに混合割合fによってスケーリングされる。
【0029】
種SiO2の信号生成は,同様に,IsioModel =f(1-e(-t0/λsi,SiO))/Ksioによってモデル化することができる。ここでKsioは信号の強度に対するSiO2の有効寄与を表す定数であり,λsioは材料パラメータ(材料SiO2を通過する種SiO2からの特定タイプの光電子に対する有効減衰長(EAL))である。したがって,SiO2オーバーレイヤーから生成されるSiO2の信号は,SiO2を通過するシリコンの有効減衰長に対するオーバーレイヤーの厚さの比の関数として表され,シリコンスケーリングファクターKsioでスケーリングされ,さらに混合割合fでスケーリングされる。
【0030】
図1Aに着目して,厚いオーバーレイヤー105(約100nm)の場合,種Si信号の減衰はゼロと近似できる。すなわち,オーバーレイヤー105は,Isiがボックスの外側で生成されないように十分に厚いと仮定される。種SiO2信号はIsio
Model =(1-f)/Ksioによってモデル化することができる。すなわち,SiO2信号は,SiO2スケーリング係数Ksioとして表すことができ,さらに流出係数(1-f)によってスケーリングされる。
【0031】
再び
図1を参照して,特性評価されるウェハサンプルは材料Bの基板であって,その上にボックスを形成する厚さt
thick(たとえば,
図1では約lOOnm)の材料Aの第1の層と,ボックス内の厚さt
thin(たとえば,
図1では約2nm)の材料Aの残余フィルム層とを含む。強度I
AおよびI
Bを有するボックス110内の種AおよびBからの光放射は,層Aの存在によって独立に減衰し,ボックス内の種AおよびBに向けられたX線ビームの割合を表す混合割合によって減少し,強度はボックスの外部に流出するX線ビームを表す寄与値によって修正される。以降の図面では,基板を材料B,オーバーレイヤーを材料Aと呼ぶことがある。
【0032】
一実施形態では,各測定によるフラックスのばらつきや,工具ごとのばらつきを考慮する必要があるため,生(オリジナル,未加工)強度数(the raw intensity numbers)は直接には使用されない。すなわち,X線フラックス数を使用して生強度を正規化することができる。一実施形態では,生強度数が種信号として直接に使用される。一実施形態では,Isi'または1/Ksiの値が既知であり,要件または経験に基づいて種信号をスケーリングするための定数として使用することができる。たとえば,Isi'の値は最上層を堆積する前にウェハ基板のXPS測定を実施することによって得ることができ,それは入射X線フラックスのなんらかの単位あたりの光電子の強度であってもよく,またはなんらかの公称フラックス(nominal flux)における光電子の強度などであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では,XPS測定からの測定強度の比(Isio/Isi)を,全モデル強度比(Isio
M/Isi
M)と比較して,
図1のサンプルをさらに特徴付けることができる。たとえば,残差関数(residual function)(またはメリット関数(M))は,以下のように決定することができる。
【0034】
【0035】
ここでMはメリット関数を表し,Isio/Isiは測定された強度比を表し,IsioM/IsiMはモデル化種強度比(modeled ratio of species intensity)を表し,IsiはSiについて測定された種強度を表し,IsioはSiO2について測定された種強度を表し,t0はボックス110内のSiO2フィルム層115の厚さを表し,Ksiは種信号の強度に対するSiの有効寄与を表す定数を示し,Ksioは種信号の強度に対するSiO2の有効寄与を表す定数を示し,fはボックス内の入射ビームの割合を表す混合割合を示すなどである。
【0036】
Isiがボックス110の外部で生成されていないと仮定すると,Ksiの寄与はないことになり,IsioMおよびIsiMは以下のように近似することができる。
【0037】
【0038】
M関数はλ/(λに斜め線が重ねられた記号)であることがある。この例では,強度比の数よりも多くの未知数がある。したがってボックス110を特徴付けるために追加のデータポイントが必要である。
【0039】
以下の開示では,
図3~
図6でさらに説明するように,複数の測定値(第1のビームおよび第2のビーム)を基準(参照)ウェハサンプルとともに使用して,
図1のボックス110を特徴付けて複数の未知数を解く。
【0040】
図3Aは公称ビーム(nominal Beam)1を使用して基準サンプル300を特徴付ける測定を示しており,
図3Bは,一実施形態によるスポット径の大きいビーム2を使用して基準サンプル300を特徴付ける測定を示している。基準サンプル300は,一辺の長さが30μmのボックス310を有する
図1のサンプル100を表す。基準サンプル300は,材料Siが既知である基板(図示略)と材料SiO2が既知であるオーバーレイ305を有している。ここで,データ点数を増やすために,ビーム1とビーム2が用いられて基準サンプル300が特徴付けられる。ビーム1は第1の混合割合f
1を提供する直径40μmのスポットを持ち,ビーム2は第2の混合割合f
2を提供する直径50μmのスポットを持つ。さらに,未知数の数を減らすために,基準ウエハは,既知の種および種の厚さを有する同一寸法30μmのもので,たとえば,厚さ2nmのSiO2フィルム層315である。
【0041】
一実施形態では,既知の厚さを有するサンプル300を作製するために,ウエハサンプル300を200μmの辺長(図示略)を有する同様のボックス(ボア構造)でエッチングすることができ,40μmビームを使用して200μmボックスを特性評価することによって既知の厚さが得られる。ここでは,200μボックスが30μmボックスと同様のプロセスでエッチングされ,200μmボックスと30μmボックスの両方が,これらのボックス内に同じフィルム層厚を有すると仮定する。200μmのボックスに与えられる40μmビームはボックス内のすべての種の信号を有するはずである(たとえば漏れはない)ので,厚さは,上述したように,減衰式Isi=Isi’e(-t0/λsi,SiO)によって決定することができる。
【0042】
既知の材料(SiO2)および既知の厚さ(2nm)のフィルム層を有する30μmボックスを有するとすると,ビーム1を用いてサンプル300を特性評価するメリット関数は以下のようになる。
【0043】
【0044】
ここで,M1はビーム1のメリット関数を表し,Isio1/Isi1はビーム1の測定強度比を表し,Isio1M/Isi1Mはビーム1のモデル化種強度比を示し,測定されるIsi1はビーム1を用いたSiの測定種強度を示し,Isio1はビーム1を用いたSiO2の測定種強度を示し,tはボックス310内のSiO2フィルム層315の厚さを示し,Ksioは種信号の強度に対するSiO2の有効寄与を表す定数を示し,f1は第1の混合割合を示す。
【0045】
ビーム2を用いてサンプル300を特性評価するメリット関数は,以下のようになる。
【0046】
【0047】
ここで,M2はビーム2のメリット関数を表し,Isio2/Isi2はビーム2の測定強度比を表し,Isio2M/Isi2Mはビーム2のモデル化種強度比を示し,Isi2はビーム2を用いたSiの測定種強度を示し,Isio2はビーム2を用いたSiO2の測定種強度を示し,tはボックス310内のSiO2フィルム層315の厚さを示し,Ksioは種信号の強度に対するSiO2の有効寄与を表す定数を示し,f2は第2の混合割合を示す。(メリット関数において,SiO1およびSiO2という表記は,一酸化シリコンおよび二酸化シリコンではなく,ビーム1およびビーム2から得られる二酸化シリコン信号を示すことに留意されたい)。
【0048】
第1および第2のメリット関数(M1,M2)を参照して,既知の値は,種信号Isi1,Isio1(ビーム1を用いた第1測定),種信号Isi2,Isio2(ビーム2を用いた第2測定),t,およびKsioである。未知の値は混合割合f1およびf2である。2つの未知数を持つ2つの方程式があるので,混合割合f1およびf2は,メリット関数M1,M2を用いて独立に計算することができる。別の実施形態では,混合割合は,回帰技法によってメリット関数を使用して計算することができる。
【0049】
ビーム1およびビーム2についての混合割合が分かれば,特性評価プロセスは,ボックスのサイズが基準サンプルと同じままである限り,
図4A~4Bに示すように,同じビーム1およびビーム2のそれぞれを使用して,未知の材料および未知の厚さを有する測定サンプル400に対して追加測定を実行することができる。
【0050】
図4Aは,公称ビーム1を使用した測定サンプル400の測定を示しており,
図4Bは,一実施形態によるビーム2を使用した基準サンプル400を特徴付ける測定を示している。測定サンプル400は
図1のサンプル100を表すものとすることができる。測定サンプル400は顧客から提供されることがあるもので,
図3A~
図3Bの基準サンプル300と同様,ボックス410が既知の30μm×30μmのボックス寸法を有している。
【0051】
上述したように,ビーム1は第1の混合割合f
1を提供する直径40μmのスポットを持ち,ビーム2は第2の混合割合f
2を提供する直径50μmのスポットを持つ。さらに,測定サンプル400は基準サンプル300と同じ30μmのボックス寸法を持つので,混合割合f
1およびf
2は,
図3A~
図3Bの基準サンプル300について上述のように計算されたものと同じになる。ここで,測定サンプル400は,未知の材料Bの基材(図示略)と未知の材料Aのオーバーレイヤー405を有している。ボックス410内には,材料Bの基板の表面に材料Aのフィルム層415がある。
【0052】
測定サンプル400は,複数の測定,たとえば測定1におけるビーム1(40μmスポット)を使用して特徴付けることができ,測定1の生強度データが収集されて保存される。次に,測定2において測定サンプル400を特徴付けるためにビーム2(50μmよりも大きいスポット)を提供するようにX線のビームを調整することができ,生強度データが測定2について収集されて保存される。
【0053】
上記測定の後,ビーム1およびビーム2を特徴付けるメリット関数は以下のようになる。
【0054】
【0055】
ここでIA1,2
Mは,ビーム1またはビーム2についての種信号Aのモデル化強度を表し,IB1,2
Mは,ビーム1またはビーム2について種信号Bのモデル化強度を表し,Mはメリット関数を示し,IA1 はビーム1を使用した材料Aについて測定された種強度を示し,IB1 はビーム1を使用した材料Bについて測定された種強度を示し,IA2 はビーム2を使用した材料Aについて測定された種強度を示し,IB2 はビーム2を使用した材料Bについて測定された種強度を示し,f1は第1の混合割合を示し,f2は第2の混合割合を表し,tはボックス410内の材料Aのフィルム層415の厚さを表し,KAは種信号の強度に対するAの有効な寄与を表す定数を表し,λ1,2は材料Aを通過する種A,Bからの特定タイプの光電子の材料パラメータ(有効減衰長(EAL))である。λは,ルックアップテーブルまたはNISTのデータベースから,種信号の結合エネルギーに基づいて,推定することができる。
【0056】
このケースでは,メリット関数Mに2つの測定信号比と2つの未知数(tおよびKA)が存在する。メリット関数Mは数値的手法によって解かれ,未知数(tおよびKA)を求めることができる。一実施形態では,回帰を使用して,上記式によって得られるように,測定された生スペクトル比(たとえば,IA1/IB1およびIA2/IB2)と,モデル化または推定される光放出強度比(たとえば,IA1
M/IB1
MおよびIA2
M/IB2
M)との間のメリット関数を同時に最小化するtおよびKAの値を求めることができる。
【0057】
たとえば,様々なt値およびKA値を上記式において反復的に使用してモデル化強度比IA1
M/IB1
Mについて様々な値を生成することができ,その結果得られる値が,メリット関数M1の値を最小化するtおよびKAが決定されるまで,メリット関数M1に差し込まれる。同時に,t値およびKA値を上記式において反復的に使用してモデル化強度IA2
MおよびIB2
Mについて様々な値を生成することができ,その結果得られた値が,次いで,M1およびM2の値を最小化するtおよびKAが同時に決定されるまで,メリット関数M2に差し込まれる。ここで,オーバーレイヤー材料Aによって生成される信号(1-f1,2)/KAの部分は,ボックスの外側からボックスの内側への種信号に寄与する。
【0058】
図5は,一実施形態による公称ビーム1(40μmスポット)を使用した,既知のオーバーレイヤー材料(K
A)505および上記既知の材料K
A のフィルム層515の未知の厚さ(t)を有するサンプル500の測定を示している。測定サンプル500は一辺の長さが30μmのボックス510を有する
図4A-4Bのサンプル400を表すことができる。一実施形態では,サンプル500は,バッチ処理において
図4A-4Bのサンプル400と同じオーバーレイヤー材料で作製することができる。混合割合およびオーバーレイヤー材料505が事前の測定から既知であるので,フィルム層の厚さの計測値を計算することができる。
【0059】
たとえば,ビーム1を使用した測定サンプル500についてのメリット関数は以下のようになる。
【0060】
【0061】
測定された種信号I
A1/I
B1 の比は,測定サンプル500のXPS測定から得ることができる。K
Aおよびf
1は,事前の測定(
図4A-4Bの測定)から既知であるので,tはメリット関数M
1から計算することができる。
【0062】
図6は,一実施形態による,ボックス110を特徴付ける方法を示すフロー図である。工程600は,ソフトウェア,ハードウェア,またはそれらの組み合わせを含むことができる処理ロジックによって実行することができる。たとえば,工程600は,
図2のコンピュータ205によって実行することができる。
【0063】
図6を参照して,ブロック601において,処理ロジックは第1のX線ビーム(ビーム1)に対応する第1の混合割合f
1を取得する。上記混合割合は測定ウェハサンプル(サンプル500)の測定ボックス(ボックス510)内の第1のX線ビームの割合(分率)を表し,上記測定ボックスは,基板上に配置され,かつボア構造内に配置されたフィルム層を有するボア構造を表す。
【0064】
たとえば,
図3Aで説明したように,既知の厚さおよび既知の材料Ksioを持つ基準サンプル300を使用して,第1のX線ビーム(ビーム1)に対応する第1の混合割合f
1を求めることができる。上記混合割合は,上述したようにメリット関数M
1を用いて計算することができる。上記混合割合f
1は,X線ビームがボックスに向けられているボックス内側のX線ビームの部分を表すことができ,流出分(the spillage)(1-f
1)は,ボックス外側のX線ビームの部分を表す。
【0065】
測定ボックス(ボックス510)は,
図5のサンプル500によって表すことができる。ここで,サンプル500は顧客によって提供されるもので,サンプル500は,基準サンプル300と同様に30μm×30μmの既知の寸法を持つ少なくとも一つのボアを有し,オーバーレイ材料Aは既知であり,ボア底部におけるフィルム層の厚さは未知である。
【0066】
一実施形態では,第1のX線ビーム(ビーム1)に対応する第1の混合割合f1の取得では,基準サンプル(基準サンプル300を有するサンプルウェハ)に対する第1の基準検出信号(ビーム1を用いた基準サンプル300の測定用XPS信号)を取得し,第1の基準検出信号(XPS信号)の種信号(SiO2およびSiの結合エネルギーを調べてXPS信号ピーク値を決めることで決定される)から第1の基準測定比(ISiO1/ISi1)を取得し,上記第1の基準測定比(ISiO1/ISi1)に基づいて第1の混合割合f1を決定する。
【0067】
一実施形態では,第1の基準検出信号(XPS信号)の取得は,照射される基準ボックス310を備える基準サンプル(基準サンプル300)を用意(提供)することを含み,ここで上記基準ボックスは既知の厚さ(たとえば2nm)および既知の寄与係数(Ksio)を有するフィルム層(SiO2)であり,第1の条件(直径40μmのスポットサイズ)で第1のX線ビーム(ビーム1)を発生させ,上記第1のX線ビーム(ビーム1)を基準サンプル(基準サンプル300)に向け,測定値を収集して第1の基準検出信号(XPS信号)を得るものである。ここで,上記寄与係数Ksioは,XPS信号中の種の強度に対するSiO2電子の有効寄与分(the effective contribution of SiO2 electrons to the intensity of the species in the XPS signal)を表す。
【0068】
一実施形態では,上記第1の基準測定比(ISiO1/ISi1)に基づく第1の混合割合f1の決定は,第1の混合割合f1を有しかつ第1のX線ビーム(ビーム1)に対応する第1の残差関数(residual error function)(M1)を決定し,上記第1の基準測定比(ISiO1/ISi1)および第1のモデル化強度比(ISiO1
M/ISi1
M)を計算し,上記第1の基準測定比および上記第1のモデル化強度比に基づいて第1の混合割合f1を計算することを含む。
【0069】
ブロック603において,処理ロジックは,第1のX線ビームに対応する測定ボックス(ボックス510)についての寄与値(1-f1)/KAを取得し,上記寄与値は,上記測定ボックス内の同じ種信号に寄与する測定ボックス外の種信号を表すものである。
【0070】
たとえば,
図4A-
図4Bに記載されているように,種信号寄与値(1-f
1)/K
Aは,K
A値およびf
1値を用いて計算することができる。上述したように,測定サンプル400は,K
Aを計算するために顧客によって提供され,ここで,サンプル400は,基準サンプル300と同じ,30μm×30μmの既知の寸法を有するボア構造(ボックス410)を少なくとも有している。さらに,サンプル400のオーバーレイヤー材料405は未知であり,ボア構造410内のフィルム層415は未知の材料の未知の厚さを有する。
【0071】
直径40μmのスポットを持つビーム1を使用して,測定を実行してビーム1の測定種強度比(a measured species intensities ratio)を収集することができる。直径50μmのスポット(たとえばより大きなスポット)を持つビーム2を使用して,測定を実行してビーム2の測定種強度比を収集することができる。測定された種強度比と計算された混合割合f1およびf2を用いて,厚さtおよびKAを回帰を使って同時に計算することができる。上記KAおよびf1を用いると,種信号寄与値(species signal contribution)は(1-f1)/KAとして計算することができる。
【0072】
一実施形態では,処理ロジックはさらに第2の混合割合f2を計算し,これは,基準サンプルについての第2の基準検出信号(基準サンプル300についてビーム2を用いたXPS測定)を取得し,上記第2の基準検出信号の種信号から第2の基準測定比(ISiO2/ISi2)を取得し,上記第2の基準測定比(ISiO2/ISi2)に基づいて第2の混合割合f2を決定することを含む。
【0073】
一実施形態では,第2の基準検出信号(XPS信号)の取得は,照射される基準ボックス310を備える基準サンプル(サンプル300を備える基準サンプル)を用意することを含み,ここで上記基準ボックス310は,既知の厚さ(2nm)および既知の寄与係数(Ksio)を備えるフィルム層を有し,第2の条件(スポット径=50μm)を有する第2のX線ビーム(ビーム2)を発生させ,上記第2のX線ビーム(ビーム2)を上記基準サンプルに向け,測定を収集して上記第2の基準検出信号(XPS信号)を得るものである。
【0074】
一実施形態では,上記第2の基準測定比(ISiO1/ISi1)に基づく第2の混合割合f2の決定は,第2の混合割合f2を有しかつ第2のX線ビーム(ビーム2)に対応する第2の残差関数(M2)を決定し,上記第2の基準測定比(ISiO2/ISi2)および第2のモデル化強度比(ISiO2
M/ISi2
M)を計算し,および第2の基準測定比(ISiO2/ISi2)および第2のモデル化強度比(ISiO2
M/ISi2
M)に基づいて第2の混合割合f2決定することとをさらに含む。
【0075】
一実施形態では,上記第1のX線ビームに対応する測定ボックスについての寄与値の取得は,測定サンプル(サンプル400)についての第2の測定検出信号(ビーム1を使用するサンプル400についてのXPS信号)および第3の測定検出信号(ビーム2を使用するサンプル400についてのXPS信号)を取得し,上記第2および第3の測定検出信号の種信号から第1の測定比(IA1/IB1)および第2の測定比(IA2/IB2)を取得し,上記第1および第2の測定比に基づいて寄与値(1-f1)/KAを決定することを含む。
【0076】
図4A-
図4Bに示すように,種信号寄与値(1-f
1)/K
Aは,K
A値およびf
1値を用いて計算することができ,ここで,厚さtおよびK
Aは,K
Aを得るために,サンプル400についてビーム1による測定およびビーム2による測定によって同時に計算することができる。
【0077】
一実施形態では,上記第2および第3の測定検出信号の取得は,照射される測定ボックス410を備える第1の測定サンプル(
図4A-
図4Bのウェハサンプル400)を用意することを含み,ここで上記測定ボックス410内は未知の厚さおよび未知の寄与係数(K
A)のフィルム層を有し,第1の条件(40μmスポット)の第1のX線ビーム(ビーム1)を発生させ,上記第1のX線ビーム(ビーム1)を上記測定サンプルに向け,測定を収集して上記第2の測定検出信号(XPS信号)を得,第2の条件(50μmスポット)の第2のX線ビーム(ビーム2)を発生させ,上記第2のX線ビーム(ビーム2)を測定サンプルに向け,測定を収集して第3の測定検出信号(XPS信号)を得るものである。
【0078】
一実施形態では,第1の測定比(IA1/IB1)および第2の測定比(IA2/IB2)に基づく寄与値(1-f1)/KAの決定は,上記第1のX線ビーム(ビーム1)に対応する上記第1の混合割合f1を有する第1の残差関数(M1)を決定し,第2のX線ビーム(ビーム2)に対応する第2の混合割合f2を有する第2の残差関数(M2)を決定し,回帰を実行して,第1の測定比(IA1/IB1)および第2の測定比(IA2/IB2)と,第1,第2の残差関数(M1,M2)に対応する第1(IA1
M/IB1
M)および第2(IA2
M/IB2
M)のモデル化強度比の差を最小化して,寄与値(KAまたは(1-f1)/KA)およびフィルム層の厚さ値tを同時に決定する。
【0079】
ブロック605において,処理ロジックは,第1のX線ビーム(ビーム1)を使用して測定ボックス(ボックス510)の測定に対応する第1の測定検出信号(XPS信号)を取得する。
【0080】
たとえば,
図5に記載されているように,顧客は,測定すべきサンプル500を有するウェハサンプルを提供することができ,サンプル500は,未知のフィルム厚を備える既知のオーバーレイヤ材料Aを有している。サンプル500に対してXPS測定を実施し,測定サンプル500についてXPS信号/生強度(たとえば,第1の測定検出信号)を得ることができる。
【0081】
ブロック607において,処理ロジックは,第1の測定検出信号(ビーム1を用いて
図5のサンプル500を測定するXPS信号),寄与値(1-f
1)/K
Aおよび第1の混合割合f
1に基づいて,上記フィルム層の測定値を決定する。
【0082】
たとえば,既知のオーバーレイヤー材料Aを有する
図5のサンプル500について収集されたXPS信号強度/生強度強度から,処理ロジックは,XPS信号からの強度の測定比(たとえば,I
A/I
B)を得ることができる。上記測定強度比(I
A/I
B),K
A,およびf
1を使用して,処理ロジックは,モデル化強度比(I
A
M/I
B
M)を使用してメリット関数M
1から厚さ値tを計算することができる。
【0083】
一実施形態において,上記寄与値(1-f1)/KAおよび第1の混合割合f1に基づくフィルム層の測定値(たとえば,厚さt)の決定は,上記第1の測定検出信号(ビーム1を使用してサンプル500を測定するXPS信号)の種信号に基づいて第3の測定比(IA/IB)を決定し,上記第1のX線ビーム(ビーム1)に対応する上記第1の混合割合f1を有する第1の残差関数M1を決定し,第3の測定比(IA/IB)と第1の残差関数M1についてのモデル化強度比(IA
M/IB
M)との間の差を最小化することによって,フィルム層の測定値(厚さt)を計算する。
【0084】
このように,
図3~
図6は,30μmの小さなボックス(ボア)内のフィルム層の材料組成およびフィルム層の厚さを特徴付けるXPS特性評価技術を説明する。40μmおよび50μmのビームを例示するが,それぞれの混合割合を計算するためにはどのようなスポットサイズのX線ビームであってもよい。さらに,この特性評価技術は,
図7においてさらに説明するように,ボックス内の複数のフィルム層に拡張することができる。
【0085】
図7は,一実施形態による2つのフィルム層(715,735)を示すウェハサンプル700の一部の部分断面図である。サンプル700は,一辺の長さが30μmのボックス710を有する
図1のサンプル100を表し,かつボックス710内に2つのフィルム層を有するものとして表すことができる。
図7に示すように,ボックス710は,材料Bの基板上に堆積した材料Aのオーバーレイ705中に形成されている。材料Cの薄いフィルム層725がオーバーレイ705上に堆積されている。ボックス内700において,材料Cのフィルム層735(厚さ=t
2)上に材料Aのフィルム層715(厚さ=t
1)があり,これらが材料Bの基板700上にある。
【0086】
ボックス700を特徴付けるために,メリット関数は以下のようにすることができる。
【0087】
【0088】
ここで,Mはメリット関数を表し,Miは第i番目のビームについてのメリット関数を表し,IAi
Mは第i番目のビームについての種信号Aのモデル化強度を表し,IBi
Mは第i番目のビームについての種信号Bのモデル化強度を表し,ICi
Mは第i番目のビームについての種信号Cについてのモデル化強度を表し,IAiは第i番目のビームについての材料Aの測定種強度を表し,IBiは第i番目のビームについての材料Bの測定種強度を表し,ICi は第i番目のビームについての材料Cの測定種強度を表し,fiは第i番目の混合割合を表し,t1はボックス110内の材料Aのフィルム層の厚さを表し,KAは種信号の強度に対するAの有効寄与を表す定数を表し,t2はボックス110内の材料Cのフィルム層の厚さを表し,KCは種信号の強度に対するCの有効寄与を表す定数を表し,λ1,2,3,4,5は,材料AまたはC中を通過する種A,BまたはCからの特定タイプの光電子についての材料パラメータ(実効減衰長(EAL))である。ここでλはルックアップテーブルによって,または種信号の結合エネルギーに基づくNISTデータベースから推測できることに留意されたい。
【0089】
上記のメリット関数にはt1,t2,KA,KC の4つの未知の値がある。この4つの未知数を解くために,サイズの異なる2つのビームが用いられて,4つの別個の測定比IB1/IA1,IC1/IA1,IB2/IA2,およびIC2/IA2が提供される。4つの測定比および4つの未知数を用いて,未知数を解くためにメリット関数に回帰法を適用することができる。
【0090】
上述したように,メリット関数を解くために,異なるビーム条件によって異なる混合割合が提供され,たとえば,条件1はスポット径40μmのビームを提供し,条件2はスポット径50μmのビームを提供する。いくつかの実施形態では,
図8A-
図10においてさらに説明するように,異なるビーム位置(xまたはyフセット)がメリット関数を解くために異なる混合割合を提供する。
【0091】
図8Aは,一実施形態による,Xラインスキャンを使用する基準サンプル800の測定を示しており,
図8Bは,Yラインスキャンを使用する基準サンプル800の測定を示している。基準サンプル800は,たとえば,30μmボックスであって,ボックス810内に,既知のフィルム層材料SiO2を備え,未知の厚さのフィルム層を持つ
図3A-
図3Bのサンプル300を表すことができる。
図8A-
図8Bに示すように,40μmのスポット径を有するビーム1による複数の測定を,xおよび/またはyオフセットを有する測定サンプル800に対して実施することができる。xオフセットおよびyオフセットは,サンプル800を含むステージのx方向またはy方向の移動を意味する。Xスキャンの場合,一例として,時刻1において(x
1,y
1)=(0,0)でスキャンを実行し,時刻2において(x
2,y
2)=(10μm,0)でスキャンを実行し,時刻3において(x
2,y
2)=(20μm,0)でスキャンを実行するなど,同じステージ設定を使用してスキャンを実行することができる。
【0092】
一実施形態では,ウェハサンプルに向けられたX線ビームはガウス状であると仮定して,上記混合割合をガウス方程式として表すことができる。ビーム1の特性を
図9-
図10Cに示す。たとえば,ビームは,ボックス810の中心に対する中心座標(xc,yc)によって表すことができる。(σx,σy)はx方向およびy方向におけるガウス状ビーム1のの1標準偏差(the one standard deviation)である。
図10A-
図10Cを参照して,y,x中心断面における測定混合割合とガウス上のモデル化混合割合がプロット1000-1003に示されている。ビーム位置に対するモデル化混合割合(the modeled mixing fraction versus beam location)がプロット1005に示されており,以下にさらに説明するように,混合割合をモデル化するのにガウス方程式が適していることを示している。ビームの中心はボックスの中心と常に一致するとは限らない(ステージ設定のわずかな変位誤差に起因)ので,X/Yスキャンにはわずかなオフセットがある。これらのオフセットは未知であるので,(xc,yc)を用いて,モデルデータと測定データのアライメント(揃い具合)を最適化することができる,さらに(σx,σy)を,サンプルに照射される想定ガウス状X線ビームの1標準偏差として最適化することができる。
【0093】
図8A-
図10を参照して,混合割合は,ステージ位置たとえば(xi,yi),およびビームの測定オフセットたとえば(xc,yc,σx,σy)を用いて,ガウス方程式によって表すことができる。スキャンそれぞれの混合割合は以下のようになる。
【0094】
【0095】
ここで,fiは第i番目のビーム走査についての第i番目の混合割合を表し,(xi,yi)はボックス810の中心に対するステージのx,y位置を表し,(xc,yc)はボックス810の中心に対するビームの最適化中心座標を表し,(σx,σy)はガウス状X線ビームの1標準偏差のx,y方向の長さである。
【0096】
次に,各X/y測定スキャンを,メリット関数を用いて記述することができる。サンプル800についてのメリット関数は以下のようになる。
【0097】
【0098】
ここで,Mはメリット関数を表し,Miは第i番目のスキャンのメリット関数を表し,fiは第i番目のスキャンの混合割合を表し(fiはステージ位置(xi,yi)およびビーム測定オフセット(xc,yc,σx,σx)として表すことができる),(xi,yi)は第i番目のスキャンのボックス810の中心に対するステージのxおよびy位置を表し,nはスキャンの総数を示し,Isiiは第i番目のスキャンの種Siの測定強度を表し,Isioiは第i番目のスキャンについての種SiO2の測定強度を表し,Ksioは種信号の強度に対するSiO2の有効寄与を表す定数を表し,(xc,yc)はボックス810の中心に対するビームの最適化中心座標を表し,tはボックス810内の材料SiO2のフィルム層815の厚さを表し,(σx,σy)はx方向またはy方向の1標準偏差値を表す。
【0099】
複数のX/Yスキャンが実行されると,第i番目のスキャンのそれぞれにおいて,xi,yi,Isi
i,Isio
i値が得られる。Ksio値は,サンプル800が既知のSiO2層805およびボックス810内のSiO2フィルムを有するので既知である。この場合の未知の変数はxc,yc,t,σx,σyである。すなわち,5回の測定スキャンによって,5つの未知の変数xc,yc,t,σx,σyを解くための5つの種の強度比を提供することができ,メリット関数Mに回帰技術を適用することによって未知数を解くことができる。ビームのオフセットを特徴付けた後,たとえば,(xc,yc,t,σx,σy)を決定した後,
図11A-
図11Bに示すように,未知の材料Aの未知のフィルム厚の新しい測定サンプル1100を特徴付けることができる。
【0100】
図11Aは,一実施形態による,Xラインスキャンを用いた測定サンプル1100の測定を示しており,
図11Bは,一実施形態による,Yラインスキャンを用いた測定サンプル1100の測定を示している。サンプル1100は,30μmの辺長を持つボックス1110を備え,材料Aのオーバーレイヤ1105を備える
図8Aおよび
図8Bの基準サンプル800を表すことができる。測定スキャンはメリット関数によって記述することができる。上記メリット関数は以下のようにすることができる。
【0101】
【0102】
ここで,Mはメリット関数を表し,Miは第i番目のスキャンのメリット関数を表し,IAi/IBiは第i番目のスキャンについての測定種強度比を表し,IAi
M/IBi
Mは第i番目のスキャンについてのモデル化種強度比を表し,(xi,yi)は第i番目のスキャンのボックス1110の中心に対するステージのxおよびy位置を表し,IAiは第i番目のスキャンの種Aの測定強度を表し,IBiは第i番目のスキャンについての種Bの測定強度を表し,(σx,σy)はxまたはy方向における1標準偏差値であり,(xc,yc)はボックス1110の中心に対するビームの最適化中心座標を表し,tはボックス1110内の材料Aのフィルム層1115の厚さを表し,KA,Bは種信号の強度に対するA,Bの有効寄与を表す定数を表す。
【0103】
この場合の未知の変数は,xc,yc,t,K
A,Bである。したがって,回帰技法を用いて4つの未知の変数xc,yc,t,K
A,Bを解くために,4つの測定スキャンによって4つの種強度比を提供することができる。
図11では,未知の厚さを有する未知の材料の一つのフィルム層のみが特性評価されているが,X/Yラインスキャン特性評価技法は,一または複数の未知の材料を有する複数のフィルム層を備えるボックスサンプルに対して適用することができ,そこでは,追加のスキャンを行なって,追加の未知のパラメータを特性評価することができる。これに代えて,追加の測定スキャンから追加測定データを提供することによって,K
Bのような他のパラメータを特性評価することができる。
【0104】
図12は,一実施形態による方法を示すフロー図である。プロセス1200は,ソフトウェア,ハードウェア,またはそれらの組合せを含むことができる処理ロジックによって実行することができる。たとえば,プロセス1200は
図2のコンピュータ205によって実行することができる。
【0105】
図12を参照して,ブロック1201において,処理ロジックは,ビーム・ガウス・パラメータ(beam Gaussian parameters)(xc,yc,σx,σy)を取得し,ここで上記ビーム・ガウス・パラメータは,サンプル(たとえば,ボックス1110)のボックス(たとえば,ボックス1110)の中心に対するX線ビームのオフセット座標(xc,yc)を少なくとも含む。ここで,上記測定ボックス(たとえば,ボックス1110)は,ボア構造の内部に配置されたフィルム層1115を有するボア構造を表し,上記ボア構造は,上記ボア構造の内部の基板上に作製された層1105上に形成される。
【0106】
たとえば,
図8A-
図8Bに示すように,X/Yラインスキャンを用いた特性評価のためにウェハ・サンプル800が提供され,ビーム・ガウス・パラメータ(xc,yc,σx,σy)が得られる。サンプル800のメリット関数が用いられて,X/Yラインスキャン(X/Y line scans)から得られる種強度比(species intensities ratios)を使用して,未知のパラメータ,たとえば(xc,yc,σx,σy)ビーム・ガウス・パラメータが解かれる。一実施形態では,ビーム・ガウス・パラメータは,ボックスの中心に対するX線ビームのオフセット座標(xc,yc)を含む。
【0107】
一実施形態では,ビーム・ガウス・パラメータは,最適化標準偏差値(σx,σy)を含む。
【0108】
一実施形態では,未知のものが,フィルム層815の厚さtの測定値を含む。この場合,追加のX/Yラインスキャンを実行して追加の測定強度比を得ることができ,これによって既知の測定強度比の数が,解かれるべき未知の変数と等しいか,またはそれより多くなるようにする。その後,厚さtの測定値およびビーム・ガウス・パラメータを,回帰を用いて同時に決定することができる。
【0109】
ブロック1203において,処理ロジックは,X線ビーム(ビーム1)を用いて測定ボックス(たとえば,ボックス1110)の測定に対応する測定検出信号(XPS信号)を取得する。
【0110】
ブロック1205において,処理ロジックは,測定検出信号(XPS信号)およびスキャンパラメータ(xc,yc)に基づいて上記フィルム層の測定値(厚さ)を決定する。
【0111】
一実施形態では,処理ロジックは,測定ボックスのステージ座標を調整するステージ調整用の追加スキャンパラメータを取得し,各ステージ調整における測定に対応する追加の測定検出信号を取得し,測定追加検出信号,寄与値,およびスキャンパラメータに基づいて,測定ボックスの追加測定値(KB)を取得する。
【0112】
一実施形態では,処理ロジックは,X方向またはY方向にステージ調整を行い,ステージ調整後に測定スキャンを実行して追加の測定検出信号を取得する。
【0113】
したがって,電子分光法を使用して測定ボックス内のフィルム層を特性評価する方法が提供され,この方法は,第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を取得し,ここで上記混合割合は,測定ウェハサンプルの測定ボックス内の第1のX線ビームの割合を表すものであり,上記測定ボックスは,基板上に配置されたボア構造を表し,かつ上記ボア構造内に配置されたフィルム層を有するものであり,第1のX線ビームに対応する測定ボックスの寄与値を取得し,上記寄与値が,上記測定ボックス内部の同じ種信号に寄与する上記測定ボックス外部の種信号を表すものであり,上記第1のX線ビームを用いて上記測定ボックスの測定に対応する第1の測定検出信号を取得し,上記第1の測定検出信号,寄与値,および第1の混合割合に基づいて,上記フィルム層の測定値を決定することを含む。
【0114】
上記第1のX線ビームに対応する第1の混合割合の取得は,基準ウェハサンプルについて第1の基準検出信号を取得し,第1の基準検出信号の種信号から第1の基準測定比を取得し,上記第1の基準測定比に基づいて上記第1の混合割合を決定することを含む。
【0115】
上記第1の基準検出信号の取得は,照射される基準ボックスを備える基準ウェハ・サンプルを用意し,上記基準ボックスが,既知の厚さおよび既知の寄与係数(contribution factor)を有するフィルム層を備えるものであり,第1の条件を有する第1のX線ビームを生成し,第1のX線ビームを基準ウェハ・サンプルに向け,測定値を収集して第1の基準検出信号を取得することを含む。
【0116】
上記第1の基準測定比に基づく第1の混合割合の決定は,上記第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を有する第1の残差関数(first residual error function)を決定し,第1の基準測定比および第1のモデル化強度比を計算し,上記第1の基準測定比および第1のモデル化強度比に基づいて第1の混合割合を計算することを含む。
【0117】
また,第2の混合割合の計算は,基準ウェハサンプルについて第2の基準検出信号を取得し,上記第2の基準検出信号の種信号から第2の基準測定比を取得し,上記第2の基準測定比に基づいて第2の混合割合を決定することを含む。
【0118】
上記第2の基準検出信号の取得は,照射される基準ボックスを備える基準ウェハサンプルを用意し,上記基準ボックスが既知の厚さおよび既知の寄与係数を備えるフィルム層を有するものであり,第2の条件を有する第2のX線ビームを生成し,上記第2のX線ビームを基準ウェハ・サンプルに向け,測定値を収集して第2の基準検出信号を得ることを含む。
【0119】
上記第2の基準測定比に基づく第2の混合割合の決定は,第2のX線ビームに対応する第2の混合割合を有する第2の残差関数を決定し,第2の基準測定比および第2のモデル化強度比を計算し,上記第2の基準測定比および第2のモデル化強度比に基づいて第2の混合割合を計算することをさらに含む。
【0120】
第1のX線ビームに対応する測定ボックスについての寄与値の取得は,測定ウェハサンプルについて第2および第3の測定検出信号を取得し,上記第2および第3の測定検出信号の種信号から第1および第2の測定比を取得し,上記第1および第2の測定比に基づいて寄与値を決定することを含む。
【0121】
上記第2および第3の測定検出信号の取得は,照射される測定ボックスを備える測定ウェハサンプルを用意し,上記測定ボックスが未知の厚さおよび未知の寄与係数のフィルム層を有するものであり,第1の条件を有する第1のX線ビームを生成し,上記第1のX線ビームを上記測定ウェハサンプルに向け,測定値を収集して第2の測定検出信号を得,第2の条件を有する第2のX線ビームを生成し,上記第2のX線ビームを上記測定ウェハサンプルに向け,測定値を収集して第3の測定検出信号を得ることを含む。
【0122】
上記第1および第2の測定比に基づく寄与値の決定は,第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を有する第1の残差関数を決定し,第2のX線ビームに対応する第2の混合割合を有する第2の残差関数を決定し,上記第1および第2の残差関数に対して上記第1および第2の測定比とモデル化強度比との間の差を最小化する回帰を実行して,上記寄与値および上記フィルム層の厚さの値を同時に決することを含む。
【0123】
上記寄与値および上記第1の混合割合に基づく上記フィルム層の測定値の決定は,上記第1の測定検出信号の種信号に基づいて第3の測定比を決定し,上記第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を有する第1の残差関数を決定し,上記第1の残差関数について第3の測定比とモデル化強度比との間の差を最小化することによって上記フィルム層の測定値を計算することを含む。
【0124】
いくつかの態様では,測定ボックス内のフィルム層を特徴付けるシステムが提供され,このシステムは,測定ウェハサンプルを支持するステージ,第1のX線ビームを生成して測定ボックスを有する上記測定ウェハサンプルの少なくとも一領域にわたって上記測定ウェハサンプルを放射するX線源を備え,上記測定ウェハサンプルが基板材料から作られた基板上に配置された第1の材料の第1の層を含むものであり,上記第1の層が第1の層中に形成されたボア構造を有し,これによって上記測定ボックスの壁が形成され,かつ第1の材料の第1のフィルム層が上記ボア構造内部に配置されており,上記測定ウェハサンプルから放出される電子を異なる電子エネルギーにしたがって分割する電子分析器(electron analyzer),上記電子分析器を通過した後の電子を検出して検出信号を出力する電子検出器(electron detector),および上記検出信号を受信して,上記検出信号に基づいて,第1の材料および基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の種信号を決定するプロセッサを備え,上記プロセッサが,第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を取得し,上記混合割合は上記測定ウェハサンプルの測定ボックス内の第1のX線ビームの割合を表すものであり,上記第1のX線ビームに対応する上記測定ボックスについての寄与値を取得し,上記寄与値は上記測定ボックス内の同じ種信号に寄与する上記測定ボックス外の種信号を表すものであり,上記第1のX線ビームを用いて上記測定ボックスの測定に対応する第1の測定検出信号を取得し,上記第1の測定検出信号,上記寄与値,および上記第1の混合割合に基づいて,上記フィルム層の測定値を決定する動作をさらに実行する。
【0125】
上記第1のX線ビームに対応する第1の混合割合の取得は,基準ウェハサンプルについて第1の基準検出信号を取得し,上記第1の基準検出信号の種信号から第1の基準測定比を取得し,上記第1の基準測定比に基づいて上記第1の混合割合を決定することを含む。
【0126】
上記第1の基準検出信号の取得は,照射される基準ボックスを備える基準ウェハサンプルを用意し,上記基準ボックスが既知の厚さおよび既知の寄与係数を備えるフィルム層を有するものであり,第1の条件を有する第1のX線ビームを生成し,上記第1のX線ビームを基準ウェハサンプルに向け,測定値を収集して第1の基準検出信号を取得することを含む。
【0127】
上記第1の基準測定比に基づく第1の混合割合の決定は,第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を有する第1の残差関数を決定し,第1の基準測定比および第1のモデル化強度比を計算し,上記第1の基準測定比および第1のモデル化強度比に基づいて上記第1の混合割合を計算することを含む。
【0128】
上記動作はさらに第2の混合割合を計算することを含み,この計算は,基準ウェハサンプルについて第2の基準検出信号を取得し,上記第2の基準検出信号の種信号から第2の基準測定比を取得し,上記第2の基準測定比に基づいて第2の混合割合を決定することを含む。
【0129】
上記第2の基準検出信号の取得は,照射されるべき基準ボックスを備える基準ウェハ・サンプルを用意し,上記基準ボックスが既知の厚さおよび既知の寄与係数を備えるフィルム層を有するものであり,第2の条件を有する第2のX線ビームを生成し,上記第2のX線ビームを上記基準ウェハ・サンプルに向け,測定値を収集して上記第2の基準検出信号を取得することを含む。
【0130】
また,電子分光法を用いて測定ボックス内のフィルム層を特性評価する方法が提供され,この方法は,X線ビームに対応するビーム・ガウス・パラメータを取得し,上記ビーム・ガウス・パラメータは測定ウェハサンプルの測定ボックスの中心に対する上記X線ビームのオフセット座標を少なくとも含むものであり,上記測定ボックスは基板上に配置されたボア構造を表すもので,上記ボア構造の内部に配置されたフィルム層を有するものであり,上記X線ビームを用いて上記測定ボックスの測定に対応する測定検出信号を取得し,上記測定検出信号および上記ビーム・ガウス・パラメータに基づいて上記フィルム層の測定値を決定するものである。
【0131】
さらに,上記測定ボックスについてのステージ座標を調整するステージ調整用の追加スキャンパラメータを取得し,ステージ調整のそれぞれにおける測定に対応する追加測定検出信号を取得し,上記測定追加検出信号,上記寄与値,および上記スキャンパラメータに基づいて上記測定ボックスの追加測定値を決定する。
【0132】
また,X方向またはY方向にステージ調整を実行し,上記ステージ調整後に測定スキャンを実行して追加の測定検出信号を取得する。
【0133】
この開示の態様は,電子分光法を使用して測定ボックス(小さいボックス)内のフィルム層を特徴付ける方法を含むものであり,この方法は,第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を取得し,上記混合割合はサンプルの測定ボックス内の第1のX線ビームの割合を表すものであり,上記測定ボックスはボア構造および基板上に配置されるフィルム層を表すものであり,上記第1のX線ビームに対応する上記測定ボックスについての寄与値を取得し,上記寄与値は測定ボックス内の同じ種信号に寄与する測定ボックス外の種信号を表すものであり,上記第1のX線ビームを用いて上記測定ボックスの測定に対応する第1の測定検出信号を取得し,上記第1の測定検出信号,上記寄与値,および上記第1の混合割合に基づいて,上記フィルム層の測定値を決定する。上記フィルム層はボア構造とボア構造との間に配置されてもよいし,上記ボア構造の内部に配置されてもよい。ボア構造内のフィルム層に対する言及はボア構造の下に位置するフィルム層にも準用されるべきである。
【0134】
さらなる態様では,電子分光法を用いて測定ボックス内のフィルム層を特徴付けるシステムが提供される。上記システムは,ウェハサンプルを支持するステージ,測定ボックスを有するウェハサンプルの少なくとも一領域にわたってウェハサンプルを放射するX線ビームを発生するX線源を備え,上記ウェハサンプルが,基板材料から作られた基板上に配置された第1の材料の第1の層を含み,上記第1の層が第1の層中に形成されたボア構造を有し,これによって上記測定ボックスの壁が形成され,かつ第1の材料の第1のフィルム層が上記ボア構造内部に配置されており,上記ウェハサンプルから放出される電子を異なる電子エネルギーにしたがって分割する電子分析器,上記電子分析器を通過した後の電子を検出して検出信号を出力する電子検出器,および上記検出信号を受信して,上記検出信号に基づいて,第1の材料および基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の種信号を決定するプロセッサを備え,上記プロセッサがさらに,上記第1のX線ビームに対応する第1の混合割合を取得し,上記混合割合は上記ウェハサンプルの測定ボックス内の第1のX線ビームの割合を表すものであり,上記第1のX線ビームに対応する上記測定ボックスの寄与値を取得し,上記寄与値は上記測定ボックス内の同じ種信号に寄与する上記測定ボックス外の種信号を表すものであり,上記第1のX線ビームを用いて上記測定ボックスの測定に対応する第1の測定検出信号を取得し,上記第1の測定検出信号,上記寄与値,および上記第1の混合割合に基づいて,上記フィルム層の測定値を決定する動作を実行する。
【0135】
さらなる態様では,電子分光法を用いて測定ボックス内のフィルム層を特徴付ける方法が提供され,この方法は,X線ビームに対応するビーム・ガウス・パラメータを取得し,上記ビーム・ガウス・パラメータはサンプルの測定ボックスの中心に対するX線ビームのオフセット座標を少なくとも含み,上記測定ボックスは,その中にフィルム層が配置されたボア構造を表すものであり,X線ビームを用いて上記測定ボックスの測定に対応する測定検出信号を取得し,上記測定検出信号および上記ビーム・ガウス・パラメータに基づいて上記フィルム層の測定値を決定する。
【0136】
電子光学系(electron optics)およびプロセッサを含む,サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるためのシステムが提供される。
図2は上記システムの非限定的な例を示すもので,上記プロセッサはコンピュータ205であってもよいし,コンピュータ205に含まれていてもよく,電子光学系は,たとえば電子銃210,陽極215,モノクロメータ220,フラックス検出器230,XPSエネルギー分析器240およびXPS検出器245の少なくともいくつかを含むことができる。
【0137】
電子光学系は,X線スポットを,第1のフィルム層を含む第1のサンプル領域(たとえば,
図1の測定ボックス110)および第1のサンプルサブ領域(照射はされるが測定ボックスのサイド(the sides)に位置する)に照射するように構成されている。上記第1のフィルム層は第1のフィルム層材料製であり,基板材料製の基板の上に配置されている。
【0138】
電子光学系はまた,上記第1のサンプル領域から放出された電子を検出して検出信号を提供するように構成されている。
【0139】
上記プロセッサは上記検出信号に基づいて種信号(species signals)を決定するように構成することができ,上記種信号は,(i)上記第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)上記基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含む。
【0140】
プロセッサはまた,(i)種信号と,(ii)第1のフィルム層に入射するX線スポットの割合を示す混合情報(mixing information)(たとえば,f)と,(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する上記第1のフィルム層材料の有効寄与を表す第1のフィルム層材料寄与値(たとえば,Ksio)とに基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定するように構成することもできる。
【0141】
上記検出信号はX線光電子分光法(XPS)(X-ray photoelectron spectroscopy)検出信号であってもよい。
【0142】
上記測定値はフィルム層の厚さであってもよい。上記フィルム層の材料(material(s))は種信号の周波数帯域(frequency band(s) of the species signals)に基づいて決定することができる。
【0143】
上記プロセッサは,メリット関数(たとえばM)の値に基づいてフィルム層の厚さを決定するように構成され,上記メリット関数の値は,上記フィルム層の実際の減衰(actual attenuation)と上記フィルム層のモデル化減衰(modeled attenuation)との間の差に基づいて決定される。上記フィルム層の実際の減衰はIsio/Isiによって表すことができ,他方,上記フィルム層のモデル化減衰はIsioM/IsiMによって表すことができる。メリット関数の様々な例が上述されている。
【0144】
上記プロセッサはメリット関数の値に基づいてフィルム層の厚さを決定するように構成することができ,上記メリット関数の値は,(i)第1のフィルム層材料種信号(たとえばIsio),(ii)基板材料種信号(たとえばIsi),(iii)モデル化第1フィルム層材料種信号(たとえば,IsioM)および(iv)モデル化基板材料種信号(たとえばIsiM)に基づいて決定される。
【0145】
モデル化第1フィルム層材料種信号は,混合情報,第1のフィルム層内で生成される光電子に関連する第1フィルム層減衰パラメータ(たとえばλsio),フィルム層の厚さ,および第1フィルム層材料寄与値に基づいて計算することができる。
【0146】
基板材料種信号は,混合情報,フィルム層の厚さ,基板内で生成される光電子に関連する第1フィルム層減衰パラメータ(たとえばλsi,sio),および種信号の少なくとも一つに対する上記基板材料の有効寄与を表す基板材料寄与値(Ksi)に基づいて計算される。
【0147】
混合情報は一または複数のフィルム層に関連するビーム強度分布を示すことがある。したがって,混合情報は一または複数のフィルム層の上方のビーム強度分布,たとえば全放射線に対する上記測定ボックスに入射する放射の割合を示すことができる。
【0148】
混合情報は一または複数のビーム・ガウス・パラメータを含むことができる。ビーム・ガウス・パラメータの例は上述のとおりである。
【0149】
上記フィルム層は,付加的なサンプルサブ領域の上面の上方に配置されてもよく,たとえば,
図16における基板1620の上方に配置される関心パッド(pad of interest)1610を参照。X線スポット1620は,関心パッド1610と,検出器によって感知される信号に流出信号をもたらす,無関係領域(irrelevant region)または汚染領域(contaminating region)とも呼ばれる第1のサンプルサブ領域とを照射している。
【0150】
上記フィルム層は,追加サンプルサブ領域の上面の下に位置してもよい。たとえば,
図1および
図7を参照。
【0151】
サンプル領域は,第2のフィルム層材料から作られた,上記第1のサンプルサブ領域の外側に位置する第2のフィルム層を含んでもよい。たとえば
図7を参照して,2つのフィルム層715および735が示されており,ここでは上記第2のフィルム層は符号715で示されているものとする。
【0152】
この場合,上記プロセッサはさらに,検出信号に基づいて,上記第2のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第2のフィルム層材料種信号を決定するように構成される。上記プロセッサはまた,(i)種信号,(ii)混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する上記第2フィルム層材料の有効寄与を表す第2フィルム層材料寄与値に基づいて,上記第2のフィルム層の測定値を決定するように構成される。
【0153】
2つのフィルム層がある場合,2つのフィルム層に関連する未知の変数が多くなるので,より多くの情報を収集する必要があることがある。この場合,電子光学系は,X線スポットを用いて,第2のフィルム層および第2のサンプルサブ領域を含む第2のサンプル領域を照射し,上記第2のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供することを含む,一または複数の追加の測定を実行する必要がある場合がある。追加の測定例は
図8Aおよび
図8Bに示されている。
【0154】
図13は一実施形態による方法を示すフロー図である。方法1300は,ソフトウェア,ハードウェア,またはそれらの組み合わせを含むことができる処理ロジックによって実行される。たとえば方法1300は,
図2のコンピュータ205によって実行することができる。
【0155】
方法1300はステップ1310においてスタートし,電子光学系によって,X線スポットを用いて,第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を含む第1のサンプル領域を照射する。第1のフィルム層は第1のフィルム層材料から作られ,基板材料から作られた基板の上に配置される。
【0156】
ステップ1310に続くステップ1320では,電子光学系によって,上記第1のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供する。
【0157】
ステップ1320に続くステップ1330では,プロセッサによって,上記検出信号に基づいて種信号を決定し,上記種信号は(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)上記基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含む。
【0158】
ステップ1330に続くステップ1340では,プロセッサによって,(i)種信号,(ii)第1のフィルム層に入射するX線スポットの割合を示す混合情報(たとえばf),および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する第1のフィルム層材料の有効寄与を表す第1のフィルム層材料寄与値(たとえばKsio)に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定する。
【0159】
上記検出信号はX線光電子分光法(XPS)検出信号であってもよい。
【0160】
上記測定値はフィルム層の厚さであってもよい。上記フィルム層の材料は上記種信号の周波数帯域に基づいて決定することができる。
【0161】
ステップ1340は,以下のうちの少なくとも一つを含むことができる。
a.メリット関数(たとえばM)の値に基づいて上記フィルム層の厚さを決定する。上記メリット関数の値は上記フィルム層の実際の減衰と上記フィルム層のモデル化減衰との間の差に基づいて決定される。上記フィルム層の実際の減衰はIsio/Isiによって表すことができ,他方,上記フィルム層のモデル化減衰はIsioM/IsiMによって表すことができる。メリット関数の様々な例が上述されている。
b.メリット関数の値に基づいて上記フィルム層の厚さを決定する。メリット関数の値は,(i)第1フィルム層材料種信号(たとえばIsio),(ii)基板材料種信号(たとえばIsi),(iii)モデル化第1フィルム層材料種信号(たとえば,IsioM)および(iv)モデル化基板材料種信号(たとえばIsiM)に基づいて決定される。
c.混合情報,第1のフィルム層内で生成される光電子に関連する第1フィルム層減衰パラメータ(たとえばλsio),フィルム層の厚さ,および第1フィルム層材料寄与値に基づいて上記モデル化第1フィルム層材料種信号を計算する。
d.混合情報,フィルム層の厚さ,基板内で生成される光電子に関連する第1フィルム層減衰パラメータ(たとえばλsi,sio),および種信号の少なくとも一つに対する上記基板材料の有効寄与を表す基板材料寄与値(たとえばKsi)に基づいて,上記基板材料種信号を計算する。
【0162】
上記サンプル領域は,第2のフィルム層材料から作られ,上記第1のサンプルサブ領域の外側に位置する第2のフィルム層を含んでもよい。たとえば
図7を参照して,2つのフィルム層715および735が示されており,ここでは上記第2のフィルム層は符号715で示されているものとする。
【0163】
この場合,ステップ1340は,検出信号に基づいて,上記第2のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第2のフィルム層材料種信号を決定することを含むことができる。プロセッサはまた,(i)種信号,(ii)混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する上記第2フィルム層材料の有効寄与を表す第2フィルム層材料寄与値に基づいて,上記第2のフィルム層の測定値を決定するように構成される。
【0164】
2つのフィルム層がある場合,2つのフィルム層に関連する未知の変数が多くなるので,より多くの情報を収集する必要があることがある。この場合,一または複数の追加測定の実行が必要とされることがある。ステップ1310は繰り返されてもよく,電子光学系によって,X線スポットを用いて,上記第2のフィルム層および上記第2のサンプルサブ領域を含む第2のサンプル領域を照射することを含むことができる。ステップ1320は繰り返されてもよく,第2のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供することを含んでもよい。
【0165】
図14は一実施形態による方法1400を示すフロー図である。方法1400は,ソフトウェア,ハードウェア,またはそれらの組み合わせを含み処理ロジックによって実行することができる。たとえば,方法1400は
図2のコンピュータ205によって実行することができる。
【0166】
方法1300は,ステップ1410においてスタートし,X線スポットによる照射の結果として,第1のサンプル領域から放出される電子を示す検出信号を取得する。上記第1のサンプル領域は第1のフィルム層と第1のサンプルサブ領域とから構成される。第1のフィルム層は第1のフィルム層材料製であり,基板材料製の基板の上に配置される。
【0167】
ステップ1410にステップ1320が続き,電子光学系によって,第1のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供する。
【0168】
ステップ1320に続くステップ1330では,プロセッサによって,上記検出信号に基づいて種信号を決定し,上記種信号は(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)上記基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含む。
【0169】
ステップ1330に続くステップ1340では,プロセッサによって,(i)種信号,(ii)第1のフィルム層に入射するX線スポットの割合を示す混合情報(たとえばf),および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する第1のフィルム層材料の有効寄与を表す第1のフィルム層材料寄与値(たとえばKsio)に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定する。
【0170】
上記検出信号はX線光電子分光法(XPS)検出信号であってもよい。
【0171】
上記測定値はフィルム層の厚さであってもよい。上記フィルム層の材料は上記種信号の周波数帯域に基づいて決定することができる。
【0172】
上記サンプル領域は,第2のフィルム層材料から作られ,上記第1のサンプルサブ領域の外側に位置する第2のフィルム層を含んでもよい。たとえば
図7を参照して,2つのフィルム層715および735が示されており,ここでは上記第2のフィルム層は符号715で示されているものとする。
【0173】
この場合,ステップ1340は,検出信号に基づいて,上記第2のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第2のフィルム層材料種信号を決定することを含むことができる。プロセッサはまた,(i)種信号,(ii)混合情報,および(ii)上記種信号の少なくとも一つに対する上記第2フィルム層材料の有効寄与を表す第2フィルム層材料寄与値に基づいて,上記第2のフィルム層の測定値を決定するように構成される。
【0174】
2つのフィルム層がある場合,2つのフィルム層に関連する未知の変数が多くなるので,より多くの情報を収集する必要があることがある。
【0175】
ステップ1410は繰り返されてもよく,X線スポットを用いた第1のサンプル領域への照射の結果として,第2のサンプル領域から放出された電子を示す検出信号を得ることを含み,第2のサンプル領域は,第2のフィルム層および第2のサンプルサブ領域から構成される。第2のフィルム層は第2のフィルム層材料から作られ,基板材料から作られた基板の上方に配置される。
【0176】
ステップ1320は繰り返されてもよく,上記第2のサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供することを含んでもよい。
【0177】
検出信号は,注目する(関心のある)一または複数のフィルム層からの注目信号(S)と,流出領域(X線ビームによって照射される領域であるが,一または複数のフィルム層の外側の領域)からの信号(C)(流出信号(spillage signal)とも呼ばれる)との重み付き和であるとみなすことができる。信号Sに割り当てられる重みがf,信号Cに割り当てられる重みが1-fである。
【0178】
fとCの値またはfとSの値を決定する必要がある。
【0179】
上記流出信号は,製造業者から提供された半導体プロセスに関する知識,またはダイのパターン化されていない部分が位置することがある,XPSスポットサイズよりも大きな領域を測定することによって決定することができる。流出信号を決定する他の一つの方法は,既知の流出量が測定データにおいて変化することを可能にする,体系的な方法において測定領域をスキャンすることである。たとえば
図8Aおよび
図8を参照。スポットが汚染領域をより多くカバーすればするほど流出信号は増加し,他方において関心信号は減少する。測定パッドの中心から異なるオフセットで複数の点を取ることによって,この情報を使用して汚染信号を決定することができる。流出信号を決定する追加的な方法の一つは,スキャンデータを外挿して流出ゼロの場合の信号を決定することである。
【0180】
上記した係数を決定する方法はいくつかある。その一つは回帰ルーチンにおいて係数を浮動させる(float)方法である。他の一つの方法はXPSスポット全体のパワー密度を完全に特徴付けることであるが,これは時間的に安定しない可能性がある。
【0181】
他の一つの方法は,十分に特性化された基準ウェハサンプルを用いて流出量を決定することである。たとえば
図5を参照。
【0182】
重みを決定するさらに別の態様はフィードフォワードを含むことができ,そこでは,フィルム層の形成前およびフィルム層の形成後において構造要素が測定され,形成後の検出信号が形成後の検出信号と比較され,これによって検出信号上のフィルム層の影響の示唆(indication)が提供され,他方において上記影響はフィルム層の測定値についての示唆を提供することができる。Cが形成前と形成後で同じであるとすると,それを決定して検出信号から除去することができる。
【0183】
形成前の検出信号は上記フィルム層の下の層に関する情報を含むので,形成前の検出信号を用いて形成後の検出信号を正規化してもよい。
【0184】
形成前および形成後の測定の実行は,測定値の非常に高い精度の評価を提供することができ,構造要素の形成における不正確さ,評価システム間の相違,さらには測定値の経時的な偏差を克服することができる。
【0185】
図15はサンプルの第1のフィルム層を特徴付ける方法1500の例を示している。
【0186】
方法1500はステップ1510でスタートし,X線スポットを用いて,予備的な(preliminary)第1のサンプル領域(これは,第1のサンプル領域内に第1のフィルム層を形成する前の第1のサンプル領域である)を照射する。予備的第1サンプル領域は基板および付加的構造要素を含んでもよい。基板は基板材料から作られる。
【0187】
ステップ1510にステップ1520が続き,上記予備的第1サンプル領域から放出される電子を検出して予備的検出信号を提供する。
【0188】
ステップ1520にステップ1530が続き,プロセッサによって,上記検出信号に基づいて予備的種信号を決定する。予備的種信号は上記基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の予備的基板材料種信号を含んでもよい。
【0189】
この方法は,フィルム層を含む第1のサンプル領域の形成後に再開することができる(ステップ1540)。
【0190】
ステップ1540は,X線スポットを用いて,第1のサンプル領域(ここでは,第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を含む)を照射することを含む。第1のフィルム層は第1のフィルム層材料から作られ,基板の上に配置される。
【0191】
ステップ1540にステップ1550が続き,第1ののサンプル領域から放出される電子を検出して検出信号を提供する。
【0192】
ステップ1550にステップ1560が続き,プロセッサによって,上記検出信号に基づいて,種信号を決定する。上記種信号は,(i)上記第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含む。
【0193】
プロセッサによって,ステップ1530の予備的種信号およびステップ1560の種信号に基づいて,第1のフィルム層の測定値を決定する。上記決定は,上記予備的種信号と上記種信号との間の差に基づいてフィルム層の影響を決定し,上記差に基づいて測定値を決定することを含む。これは,たとえば,第1のフィルム層の材料寄与値などの変数を使用すること,および/または上述の任意のモデルを使用することを含んでもよい。たとえば,式I=1/k(1-e-t/σ)を用いて厚さを決定する。ここで,Kは特定の材料からの所与の種の光電子を生成するための標準k因子(standard k factor),tは層の厚さ,σは材料の有効減衰長である。kおよびσは既知であるとする。
【0194】
別の実施形態では,フィルム層の測定値は有効材料モデル(effective material model)を用いて決定することができ,ここで,上記流出信号は有効基板材料(effective substrate model)としてモデル化される。この有効基板材料はモデル化強度方程式(modeled intensity equation)の変数として用いられ,上記方法はモデル化強度方程式を解くことを含む。モデル化強度方程式の例は以下に示す。
【0195】
標準的なXPSフィルム分析では,サンプルの厚さはI=1/k(1-e-t/σ)によって決定され,ここでKは特定の材料からの所与の種の光電子を生成するための標準k因子,tは層の厚さ,σは上記材料についての有効減衰長である。
【0196】
上記モデル化強度方程式はI=1/k’としてもよく,関心ある種のそれぞれについてのk’因子(the k’ factor for each species of interest)は,代わりにバルク基板から生じると仮定され,回帰中に浮動する(assumed to arise from a bulk substrate instead, and would be floated during a regression)。
【0197】
k'の値は,異なる半径のX線スポットを用いて関心ある構造要素を照射することによって決定することができる。異なる半径のX線スポットはフィルム層の全体をカバーするが,異なる領域の流出領域をカバーする必要がある。
図4Aおよび
図4Bは,半径の異なる2つのX線スポットを示しているが,k'の決定においては,第1および第2のX線スポットのそれぞれがフィルム層全体をカバーすることが有益であり得る。
【0198】
図17はサンプルの第1のフィルム層を特徴付ける方法1700の例を示している。
【0199】
方法1700はステップ1710でスタートし,電子光学系によって,第1の半径の第1のX線スポットを用いて,第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を含む第1のサンプル領域を照射する。第1のフィルム層は第1のフィルム層材料から作られ,基板材料から作られた基板の上に配置される。
【0200】
ステップ1710にステップ1720が続き,電子光学系によって上記第1のサンプル領域から放出される電子を検出して第1の検出信号を提供する。
【0201】
ステップ1720にステップ1730が続き,プロセッサによって,上記第1の検出信号に基づいて第1の種信号を決定する。上記第1の種信号は,(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含む。
【0202】
ステップ1730にステップ1740が続き,電子光学系によって,上記第1の半径と異なる第2の半径の第2のX線スポットを用いて,第1のフィルム層および第1のサンプルサブ領域を含む第1のサンプル領域を照射する。
【0203】
ステップ1740にステップ1750が続き,電子光学系によって,第1のサンプル領域から放出される電子を検出して第2の検出信号を提供する。
【0204】
ステップ1750にステップ1760が続き,プロセッサによって,上記第2の検出信号に基づいて第2の種信号を決定する。第1の種信号は,(i)第1のフィルム層材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の第1のフィルム層材料種信号,および(ii)基板材料から放出される電子に対応するエネルギー帯域の基板材料種信号を含む。
【0205】
ステップ1760にステップ1770が続き,プロセッサによって,上記第1の種信号および第2の種信号に基づいて,上記第1のフィルム層の測定値を決定する。
【0206】
図18は,複数のサイズのビームおよびパッドサイズに対するk'因子の関数としての材料(フィルム層)の厚さのシミュレーションを示している。3つのXPS測定についてのSiOフィルム厚のシミュレーションが1/k'の関数として提供されている。
【0207】
標準的なフィルム分析では,1/k'は~0.7であることが知られており,これがSiOフィルム厚を決定するための入力として用いられる。kの変化が許容されているとすれば,解は未解決(決定不足)(underdetermined)となる。
【0208】
VFIV,f=0.57(線1801)およびVFIII,f=7.05(線1802)のカーブは,それぞれ,50μmおよび40μmのスポットを使った30μmの測定パッドにおける効果を示しおり,fは測定パッド中のビームの割合である。有効材料モデルでは,異なる汚染(コンタミネーション)量を持つ2つのビームサイズを用いて解を一意に定義する。これらのカーブの交点がkのユニークな解(一意解)となり,ひいては厚みとなる。VFIII,f=0.97(線1803)のカーブは,50μm測定パッドに50μmビームを当てた場合のkとフィルム厚の関係を示しており,流出量が少なければ少ないほど,k’に対する感度は低くなる。これらのカーブは単に記述的なツールとして使用するものであり,それは,アルゴリズムが回帰法を使用して注目する種のそれぞれのk値を決定するからである。
【0209】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるための非一時的コンピュータ読取り可能な媒体が提供することができ,この非一時的コンピュータ読取り可能媒体は,コンピュータ化ステムによって実行されることで上記コンピュータ化システムに方法1700のステップを実行させる命令を記憶する。
【0210】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるための非一時的コンピュータ読取り可能な媒体が提供することができ,この非一時的コンピュータ読取り可能媒体は,コンピュータ化ステムによって実行されることで上記コンピュータ化システムに方法1500のステップを実行させる命令を記憶する。
【0211】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるための非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体が提供することができ,この非一時的なコンピュータ読取り可能媒体は,コンピュータ化ステムによって実行されることで上記コンピュータ化システムに方法1400のステップを実行させる命令を記憶する。
【0212】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるための非一時的コンピュータ読取り可能な媒体が提供することができ,この非一時的コンピュータ読取り可能媒体は,コンピュータ化ステムによって実行されることで上記コンピュータ化システムに方法1300のステップを実行させる命令を記憶する。
【0213】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるシステムは,方法1300を実行するように構成することができる。
【0214】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるシステムは,方法1400を実行するように構成することができる。
【0215】
サンプルの第1のフィルム層を特性評価するシステムは,方法1500を実行するように構成することができる。
【0216】
サンプルの第1のフィルム層を特徴付けるシステムは,方法1700を実行するように構成することができる。
【0217】
同じ機能性を達成するための構成要素の任意の配置(arrangement)は,所望の機能性が達成されるように,実質的に「関連付けられる」。したがって,この明細書において,特定の機能性を達成するために組み合わされる任意の2つの構成要素は,アーキテクチャまたは介在する構成要素に関係なく,所望の機能性が達成されるように互いに「関連」しているとみなすことができる。同様に,そのように関連付けられた任意の2つの構成要素は,所望の機能性を達成するために,互いに「動作可能に接続される」,または「動作可能に結合される」とみなすこともできる。
【0218】
さらに,当業者であれば,上述したオペレーション間の境界は単に例示に過ぎないことを認識しよう。複数のオペレーションが単一のオペレーションに組み合わされてもよいし,単一のオペレーションが追加のオペレーションに分散されてもよいし,オペレーションが時間的に少なくとも部分的に重複して実行されてもよい。さらに,代替の実施形態においては,オペレーションの複数のインスタンスを含んでもよく,オペレーションの順序は,他の様々な実施形態において変更されてもよい。
【0219】
また,たとえば,一実施形態では,例示された実施例は,単一の集積回路上または同じデバイス内に配置された回路として実装されてもよい。あるいは,例示された実施例は,適切な方法で互いに相互接続された任意の数の別個の集積回路または別個のデバイスとして実装されてもよい。
【0220】
また,たとえば,実施例またはその一部は,任意の適切なタイプのハードウェア記述言語などにおいて,物理的回路のソフト表現またはコード表現,または物理的回路に変換可能な論理表現として実装することができる。
【0221】
しかしながら,他の修正,変形および代替も可能である。したがって,この明細書および図面は,限定的なものではなく例示的なものとみなされる。
【0222】
特許請求の範囲において,括弧の間に置かれた参照符号は,特許請求の範囲を限定するものと解釈してはならない。「備える」という語は,特許請求の範囲に記載されたものの他の要素またはステップの存在を排除するものではない。さらに,この明細書で使用される単数の用語(「a」または「an」)は一つまたは複数として定義される。また,特許請求の範囲における 「少なくとも一つの」および「一または複数の」といった導入句の使用は,不定冠詞(「a」または「an」による別の特許請求の範囲の要素の導入が,そのような導入された特許請求の範囲の要素を含む特定の特許請求の範囲を,同じ特許請求の範囲が導入句「一または複数の」または「少なくとも一つの」および「a」または「an」のような不定冠詞を含む場合であっても,そのような要素を一つだけ含む発明に限定することを意味するものと解釈されるべきではない。定冠詞の使用についても同様である。別段の記載がない限り,「第1」および「第2」といった用語は,このような用語が説明する要素を任意に区別するために使用される。したがって,これらの用語は,そのような要素の時間的またはその他の優先順位を示すことを必ずしも意図していない。ある手段が相互に異なる請求項に記載されているという単なる事実は,これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【0223】
この明細書では,この発明の特定の特徴を図示しかつ説明したが,多くの修正,置換,変更,および等価物が,当業者にはこれから生じるであろう。したがって,添付の特許請求の範囲は,この発明の真の精神に該当するようなすべての修正および変更をカバーすることが意図されていることを理解されたい。
【0224】
「含む」(including),「備える」(comprising),「有する」(having)のいずれかの用語への言及は,「からなる」(consisting)および/またた「から本質的になる」(consisting essentially of)の用語に準用することができる。
【0225】
この明細書に記載されるプロセスおよび技法は,本質的に特定の装置に関連するものではなく,任意の適切な構成要素の組み合わせによって実施することができることを理解されたい。さらに,様々なタイプの汎用装置を,この明細書に記載される教示にしたがって使用することができる。この開示は,特定の実施例に関連して説明されてきたが,これらの実施例は,あらゆる点で,限定的ではなく例示的であることが意図されている。当業者は,多くの異なる組み合わせがこの開示の実施に適することを理解するであろう。
【0226】
さらに,この開示の他の実施態様は,この明細書に開示されたこの開示の明細書および実施態様を考慮することから当業者には明らかであろう。注目すべきことに,この明細書に開示された表現は,開示された実施例に示されるようなパターン化された層の特定のジオメトリについての例として提供される。記載された実施形態の様々な態様および/または構成要素は,単独でまたは任意の組み合わせで使用することができる。この明細書および実施例は,例示的なものとしてのみ考慮されることが意図され,この開示の真の範囲および精神は,以下の特許請求の範囲によって示される。
【国際調査報告】