(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】単結晶シリコンの製造時の石英粒子のアレイの使用
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
C30B29/06 502D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526894
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022078477
(87)【国際公開番号】W WO2023081583
(87)【国際公開日】2023-05-11
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,リチャード ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,カリシマ マリー
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EG30
4G077HA12
4G077PF42
4G077PF43
(57)【要約】
インゴット成長前に石英粒子のアレイがるつぼアセンブリに追加される、単結晶シリコンインゴットを製造する方法が開示される。アレイは、連続チョクラルスキー(CCz)プロセスのように、るつぼアセンブリの外側融液ゾーンに配置されてもよい。アレイは、連結部材によって相互に連結された石英粒子製であってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンインゴットを形成する方法であって、
固相の多結晶シリコンをるつぼアセンブリに加えること、
前記るつぼアセンブリに石英粒子のアレイを追加すること、ここで、前記アレイは、複数の石英粒子と、前記石英粒子を相互に連結する複数の連結部材とを含んでおり、
前記多結晶シリコンを加熱してシリコン融液を形成すること、
前記シリコン融液を種結晶に接触させること、
前記シリコン融液から前記種結晶を引き出して、シリコンインゴットを形成すること
を含む方法。
【請求項2】
前記多結晶シリコンを加熱して前記シリコン融液を形成する前に、前記アレイが前記るつぼアセンブリに添加される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アレイが約50mmから約75mmの間の幅と、6mmから100mmの間の深さを有する、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記連結部材は石英製である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記石英粒子が、棒状、管状、球状、または不規則な形状を有する、
請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記アレイが3D印刷によって作成される、
請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記アレイが3D足場を有する、
請求項1から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記石英粒子が、少なくとも0.1cm
2石英/石英のグラムの質量に対する表面関の比を有する、
請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記石英粒子が、少なくとも0.5cm
2石英/石英のグラムの質量に対する表面積の比を有する、
請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記石英粒子が、0.1cm
2石英/石英のグラムから10cm
2石英/石英のグラムの、質量に対する表面積の比を有する、
請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記石英粒子が、少なくとも10cm
2の石英/シリコンのkgのシリコン装入物に対する表面積の比を有する、
請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記石英粒子が、少なくとも50cm
2の石英/シリコンのkgのシリコン装入物に対する表面積の比を有する、
請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記石英粒子が、10cm
2の石英/シリコンのkgから250cm
2の石英/シリコンのkgの、シリコン装入物に対する表面積の比を有する、
請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記るつぼアセンブリが、堰と、前記堰と側壁との間に外側融液ゾーンを画定する前記側壁とを備え、前記アレイが前記外側融液ゾーンに追加される、
請求項1から13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記堰が第1堰であり、前記るつぼアセンブリが、前記第1堰に対して径方向内側に第2堰を含んでおり、前記第1堰および前記第2堰が前記第1堰と前記第2堰との間に中間融液ゾーンを画定しており、前記第2堰が前記第2堰内に内側溶融ゾーンを画定する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記るつぼアセンブリが、第1堰と、前記第1堰に対して径方向内側の第2堰と、側壁とを備え、前記第1堰および前記側壁が前記第1堰と前記側壁との間の外側融液ゾーンを画定しており、前記第1堰および前記第2堰が前記第1堰と前記第2堰との間の中間融液ゾーンを画定しており、前記第2堰が前記第2堰内の内側融液ゾーンを画定しており、前記アレイが前記中間融液ゾーンに追加される、
請求項1から13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記シリコンインゴットが、インゴット成長中に多結晶シリコンが前記融液に追加される連続チョクラルスキープロセスで成長させられる、
請求項1から16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
インゴット成長中に石英が前記融液に追加されない、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年11月08日に出願された米国仮特許出願第63/276,969号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野は、連続チョクラルスキー(CCz)による単結晶シリコンインゴットの製造方法、特に、インゴット成長前に石英粒子のアレイをるつぼアセンブリに追加する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
連続チョクラルスキー(CCz)は、ヒ素またはリンが相対的に多くドープされたインゴットなど、直径300mmや200mmの単結晶シリコンインゴットの形成に適している。連続チョクラルスキー法は、シリコンの融液から単結晶シリコンインゴットを形成する一方、インゴットを成長させる間、融液に固体の多結晶シリコンを連続的または間欠的に追加して融液を補充する。この方法は、ホットゾーンが温度を維持したまま(すなわち、複数のインゴットが成長する間、るつぼアセンブリ内に融液が連続的に存在した状態で)、同じ融液から複数のインゴットを形成することを含む場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顧客は、連続式チョクラルスキーで成長させたウエハが、標準的なバッチ式チョクラルスキーで成長させたウエハと同じように、ボイド数が比較的少ないことを期待するようになっている。連続チョクラルスキー法は、物理的な障壁によって分離された少なくとも2つ、多くの場合3つの融液ゾーン(固体の多結晶シリコンが供給される外側融液ゾーン、融液が安定化する中間融液ゾーン、およびシリコンインゴットが引き抜かれる内側融液ゾーン)を含むるつぼアセンブリを含むことがある。固体の多結晶シリコンを融液に追加すると、融液中に不活性ガスの気泡(アルゴンの気泡など)が発生し、ボイド数に影響を与える。
【0005】
インゴットからスライスされたシリコンウエハの欠陥数を減少させ、および/または不活性ガスの気泡の消散を促進する、シリコンインゴットの形成方法に対する必要性が存在する。
【0006】
本セクションは、以下に説明および/または特許請求される本開示の様々な側面に関連し得る技術の様々な側面を読者に紹介することを意図している。この考察は、本開示の様々な側面をよりよく理解するための背景情報を読者に提供する上で有用であると考えられる。したがって、これらの記述はこのような観点から読まれるべきであり、先行技術を自認するものとして理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、単結晶シリコンインゴットを形成する方法に向けられている。固相の多結晶シリコンが、るつぼアセンブリに加えられる。石英粒子のアレイが、るつぼアセンブリに加えられる。アレイは、複数の石英粒子と、石英粒子を相互に連結する複数の連結部材とを含む。多結晶シリコンは加熱されてシリコン融液を形成する。シリコン融液は、種結晶に接触させられる。種結晶はシリコン融液から引き出されてシリコンインゴットを形成する。
【0008】
本開示の上述の側面に関連して言及された特徴の、様々な改良が存在する。本開示の上述の側面には、さらなる特徴も同様に組み込まれてもよい。これらの改良点および追加の特徴は、個々に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述される様々な特徴は、単独でまたは任意の組み合わせで、本開示の上述の態様のいずれかに組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、固体多結晶シリコン装入物が配置されたインゴット引き抜き装置の一例の断面図である。
【0010】
【
図2】
図2は、多結晶シリコン装入物の表面に配置された石英粒子のアレイを有するインゴット引き抜き装置の断面図である。
【0011】
【
図3】
図3は、アレイが融液内に配置されている状態の、るつぼアセンブリ内に配置された融液を有するインゴット引き抜き装置の断面図である。
【0012】
【
図4】
図4は、シリコン融液から引き抜かれるシリコンインゴットを示すインゴット引き抜き装置の断面図である。
【0013】
【
図5】
図5は、外側溶融ゾーンに配置された石英粒子のアレイを有するインゴット引き抜き装置のるつぼアセンブリの上面図である。
【0014】
【
図6】
図6は、石英粒子のアレイを形成するプロセスの概略図である。
【0015】
【
図7】
図7は、アレイに組み込むことができる石英構造の概略図である。
【0016】
【
図8】
図8は、アレイの石英粒子の一実施形態である。
【0017】
【
図9】
図9は、アレイの石英粒子の他の実施形態である。
【0018】
【0019】
【
図11】
図11は、シリコン融液中の石英カレットの概略図である。
【0020】
【
図12】
図12は、部分溶解後の石英カレットの概略図である。
【0021】
【0022】
【
図14】
図14は、
図11~13のそれぞれに示されたカレット間隔について、シリコン融液中に溶解したSiOの相対濃度のグラフである。
【0023】
【
図15】
図15は、石英棒の長さと直径が異なる4つのケースについて、シリコン融液への浸漬時間の関数として生成されたSiO(g)のモル数の増加を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
対応する参照文字は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【0025】
本開示の提供は、連続チョクラルスキー(CCz)プロセスで単結晶シリコンインゴットを成長させる方法に関する。石英粒子のアレイがるつぼアセンブリに加えられる。アレイは、連結部材によってアレイ内で連結された石英粒子製であってもよい。アレイは、溶解の前に、固体の多結晶シリコンと共にるつぼアセンブリに置かれてもよい。
【0026】
連続チョクラルスキープロセスによってインゴット60を製造するインゴット引き抜き装置5の一例が
図4に示されている。インゴット引き抜き装置5は、半導体またはソーラグレードのシリコン材料の融液6を収容するるつぼアセンブリ10を含む。サセプタ13がるつぼアセンブリ10を支持する。るつぼアセンブリ10は、側壁40と、融液を異なる融液ゾーンに分離する1つ以上の流体障壁20、30または「堰」とを有する。図示の実施形態では、るつぼアセンブリ10は、第1堰20を含む。第1堰20と側壁40は、シリコン融液6の外側融液ゾーン42と、るつぼアセンブリ10とを画定する。るつぼアセンブリ10は、シリコン融液の内側融液ゾーン22とるつぼアセンブリ10とを画定する、第1堰20に対して径方向内側の第2堰30を含む。内側融液ゾーン22は、単結晶シリコンインゴット60が成長する成長領域である。第1堰20と第2堰30は、るつぼアセンブリ10及びシリコン融液の中間融液ゾーン32を画定しており、中間融液ゾーン32では、融液6が内側融液ゾーン22に向かって移動する際に安定してもよい。第1堰20および第2堰30はそれぞれ、溶融したシリコンが内側融液ゾーン22の成長領域に向かって径方向内側に流れるのを許容するように、そこに画定された少なくとも1つの開口部を有する。
【0027】
図示された実施形態では、第1堰20、第2堰30、および側壁40はそれぞれ、概ね環状の形状を有する。第1堰20、第2堰30、および側壁40は、るつぼアセンブリ10の底または床45で接合される3つの入れ子式るつぼの一部であってもよい(すなわち、第1堰20および第2堰30は、より大きなるつぼ内に入れ子式に配置された2つのるつぼの側壁である)。
図1~4に図示されているるつぼアセンブリの構成は例示的なものである。他の実施形態では、るつぼアセンブリ10は、堰が床45から上方に延びている単層の床を有する(すなわち、入れ子式るつぼを有さない)。任意で、床45は湾曲というよりもむしろ平坦であってもよく、および/または堰20、30および/または側壁40は直線状の側面を有してもよい。さらに、図示のるつぼアセンブリ10は、2つの堰を有する状態で示されているが、他の実施形態では、るつぼアセンブリは1つの堰を有するか、または堰を有さないことさえあってもよい。
【0028】
供給管46は、例えば、粒状、塊状、チップ状、またはそれらの組合せであってもよい多結晶シリコンを、インゴット60の成長中に実質的に一定の溶融高さレベルおよび体積を維持するのに十分な速度で外側融液ゾーン42に供給する。
【0029】
概して、インゴット60が引き出される融液6は、多結晶シリコンをるつぼに装填して初期シリコン装入物27(
図1)を形成することによって形成される。一般に、初期装入物は、約10キログラムから約200キログラムの多結晶シリコンであり、粒状、塊状、チップ状、またはそれらの組み合わせである。初期装入物の質量は、所望の結晶直径とホットゾーンの設計に依存する。多結晶シリコンは結晶成長中に連続的に供給されるため、初期装入物はインゴット結晶の長さを反映しない。
【0030】
多結晶シリコンの供給源としては、例えば、流動床リアクタにおけるシランまたはハロシランの熱分解によって製造された粒状多結晶シリコンや、シーメンスリアクタで製造された多結晶シリコンなど、様々なものを使用できる。以下に説明されるように、石英粒子(すなわち、本明細書では石英粒子またはガラス粒子と称することがあり、溶融石英粒子を含むことを意味する)のアレイは、るつぼアセンブリ10の外側融液ゾーン42または内側融液ゾーン32において、固相多結晶シリコンの初期装入物27に、多結晶シリコンの初期装入物27を溶融する前に(または、より大きなシリコンの塊を供給できるシステムなどで、より小さなアレイが追加された場合、その後に)、追加されてもよい。
【0031】
多結晶シリコン(および石英粒子のアレイ)がるつぼアセンブリ10に追加されて装入物27を形成すると、装入物27はシリコンの溶融温度(例えば、約1412℃)あたりを超える温度に加熱されて装入物を溶融させ、それによって溶融シリコンを有するシリコン融液6(
図3)を形成する。シリコン融液6は、溶融シリコンの初期体積を有し、初期融液高さレベルを有し、これらのパラメータは、初期装入物27のサイズによって決定される。いくつかの実施形態では、シリコン融液6を有するるつぼアセンブリ10は、少なくとも約1425℃、少なくとも約1450℃、あるいは少なくとも約1500℃の温度に加熱される。
【0032】
インゴット引き抜き装置5は、内部融液ゾーン22内の融液からインゴット60を成長させて引き抜くための引き抜き機構114(
図4)を含む。引き抜き機構114は、引き抜きケーブル118と、引き抜きケーブル118の一端に結合された種ホルダまたは種チャック120と、種ホルダまたは種チャック120に結合された、結晶成長を開始させるための、種結晶122とを含む。引き抜きケーブル118の一端は持ち上げ機構(例えば、従動プーリまたはドラム、あるいは他の適切なタイプの持ち上げ機構)に接続されており、他端は種結晶122を保持するチャック120に接続されている。作動中、種結晶122は、内側融液ゾーン22内の融液6に接触するように下降させられる。引き抜き機構114を作動させることにより、種結晶122を引き抜き軸Aに沿って上昇させる。これによって単結晶インゴット60が融液6から引き抜かれる。
【0033】
多結晶シリコンの装入物27(
図1)が液化されて溶融シリコンを有するシリコン融液6(
図3)を形成すると、シリコン種結晶122(
図4)は、内側融液ゾーン22内で融液6に接触するように下降させられる。その後、シリコン種結晶122は、シリコンが付着した状態で融液6から引き出されて、ネック52を形成し、それによって融液6の表面近傍または表面に融液-固体界面を形成する。
【0034】
引き抜き機構114は、種結晶122とそれに接続されたインゴット60を回転させてもよい。るつぼ駆動ユニット44は、サセプタ13およびるつぼアセンブリ10を回転させてもよい。いくつかの実施形態では、シリコン種結晶122とるつぼアセンブリ10は反対方向に回転、すなわち逆回転させられる。逆回転はシリコン融液6の対流を実現する。種結晶122の回転は主に、対称的な温度プロファイルを提供し、不純物の角度バラつきを抑制し、結晶融液界面形状を制御するために使用される。
【0035】
ネック52の形成後、ネック52に隣り合う外側に膨らんだシードコーン部54(または「クラウン」)が成長する。一般に、引き抜き速度は、ネック部の引き取り速度から、外側に膨らんだシードコーン部54を成長させるのに適した速度まで低下させられる。シードコーン部分が目標直径に達すると、インゴット60の本体56または「一定径部分」が成長する。いくつかの実施形態では、インゴット60の本体56は、約150mm、少なくとも約150mm、約200mm、少なくとも約200mm、約300mm、少なくとも約300mm、約450mm、またはさらに少なくとも約450mmの直径を有する。
【0036】
インゴット60が融液6から引き抜かれる間、固体のポリシリコンの供給原料が、管46または他のチャネルを通して外側融液ゾーン42に加えられ、インゴット成長装置5内の融液6を補充する。固体多結晶シリコンは、多結晶シリコン供給システム66から追加されてもよく、融液レベルを維持するようにインゴット引き抜き装置5に連続的または間欠的に追加されてもよい。一般に、多結晶シリコンは、当業者に利用可能な任意の方法でインゴット引き抜き装置5に計量して供給されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、ドーパントもインゴット成長中に融液6に追加される。ドーパントは、ドーパント供給システム72から導入されてもよい。ドーパントは気体または固体として追加されてもよく、外側融液ゾーン42に追加されてもよい。
【0038】
装置5は、成長するインゴット60がその凝固潜熱および融液6からの熱流束を放射することを可能にするために、インゴット60の周囲に配置された熱シールド116を含んでもよい。熱シールド116は、少なくとも部分的に円錐形状であってもよく、インゴット60が配置される環状の開口を形成するように斜め下方に角度を付けてもよい。アルゴンなどの不活性ガスの流れは、通常、成長する結晶の長さに沿って供給される。インゴット60は、周囲の大気から密閉された成長チャンバ78を通して引き抜かれる。
【0039】
独立して制御される複数の環状底ヒータ70が、るつぼアセンブリ10の下方に放射状パターンで配置されてもよい。環状底ヒータ70は、るつぼアセンブリ10のベース表面全体にわたって、相対的に制御された分布で熱を加える。環状底ヒータ70は、個別に制御された平面抵抗発熱要素であってもよい。装置5は、融液6を通る温度分布を制御するために、るつぼアセンブリ10の径方向外側に配置された1つ以上の側部ヒータ74を含んでもよい。
【0040】
図1~4に示されており本明細書に記載されているインゴット成長装置5は例示的なものであり、一般に、特に記述のない限り、連続チョクラルスキー法によって結晶インゴットが調製される任意のシステムが使用されてもよい。
【0041】
本開示の実施形態によれば、インゴット60が成長する前に、石英粒子のアレイ31(
図2)がるつぼアセンブリ10に取り付けられる。アレイ31は、多結晶シリコン27を加熱してシリコン融液6を形成する前に、るつぼアセンブリ10に加えられてもよい。アレイ31は、多結晶シリコン27の初期装入物27上に位置してもよく、又は装入物27内に配置されてもよい(例えば、装入物の上下に多結晶シリコンが配置された状態)。
【0042】
外側融液ゾーン42に配置される石英粒子のアレイ31の例が
図5に示されている。アレイ31は、複数の石英粒子33と、隣り合う石英粒子33を連結する複数の連結部材37とを含む。連結部材37は石英製であってもよい。アレイ31は、3D印刷または他の適切な方法により作成されてもよい。3D印刷を伴う方法では、アレイはベースから上方に構築され、層ごとに構造が連結または融合される。3D印刷法では、成膜ヘッドまたは融解物源は、アレイの最終状態または「グリーン」状態への連結を効果的に行うために、x-y平面内で並進する能力があってもよい。使用され得る好適な3D印刷法の例としては、von Witzendorff他著「Additive Manufacturing of Glass:CO2-Laser Glass Deposition Printing」、Procedia CIRP 74(2018)、272-275と、Luo他著「Additive Manufacturing of Glass」、Journal of Manufacturing Science and Engineering、136巻、061024:1-6(2014)が挙げられており、これらの両方は、全ての関連する一貫した目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、3D印刷は、複合材料である、および/またはドープされた材料を組み込んだ、アレイを形成するために使用される。例えば、アレイ31は、溶融シリカの表面結晶化を抑えるためにシリコンでドープした石英製であってもよい。
【0044】
アレイ31の別の実施形態が
図6に示されている。アレイ31は、足場(櫓、骨格、スカフォード)として構築される連結部材37を含む。アレイ31の連結部材37は、積み重ねられて連結して3D足場を形成してもよい、単位セル49(例えば、平行六面体)製であってもよい。各足場は、石英の表面積を有する(例えば、多孔性または別の構造による)第2構造を組み込んでもよい。単位セル49の連結部材37は、連結部材内に(すなわち、中実棒ではなく)構造を含んでもよい。例えば、そこに形成された石英粒子33を有する
図7に示す構造体41は連結部材37内に組み込まれてもよい。
【0045】
アレイ31の他の実施形態は、石英粒子を組み込んだモノリシックディスクを含む。アレイ31は、「バスケット織り」パターン又は「鳥の巣」パターン(
図5)などの多孔質パターンを組み込んでもよい。
【0046】
一般に、アレイ31に組み込まれる石英粒子33は、アレイ31が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切なサイズおよび形状を有してもよい。例えば、石英粒子33は、棒状、管状、球状、または不規則な形状に形作られてもよい。いくつかの実施形態では、粒子は10μm500mmの間のサイズ(すなわち、最大寸法)を有する。粒子は、融液による浸食と融液の所望のコンディショニングに依存する足場の残存可能性に基づく大きさとされてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、アレイ31の石英粒子33は比較的高い表面積を有する。例えば、石英粒子は、少なくとも0.1cm2石英/石英のグラムまたは少なくとも0.5cm2石英/石英のグラム(例えば、0.1cm2石英/グラムから10cm2石英/石英のグラム)の質量に対する表面積比を有してもよい。いくつかの実施形態では、アレイ31の石英粒子33は、少なくとも10cm2石英/シリコンのkgまたは少なくとも50cm2石英/シリコンのkg(例えば、10cm2石英/シリコンのkgから250cm2石英/シリコンのkg)など、るつぼ内のシリコン量に対して比較的高い表面積を有する。
【0048】
アレイ31は、本明細書で説明されるようにアレイを機能させることを可能とする任意のサイズおよび形状であってよい。本開示のいくつかの実施形態によれば、石英粒子のアレイ31は、アレイ31が、るつぼアセンブリ10の側壁40から第1堰20まで連続的に延びるような十分な幅を有してもよい。他の実施形態では、アレイ31は、るつぼアセンブリ10の側壁40と第1堰20との間の距離よりも小さい幅を有する。いくつかの実施形態では、アレイ31は、約50mmから約75mmの間の幅、および/または6mmから100mmの間の高さ(すなわち、深さ)を有する。
【0049】
アレイ31に使用する石英粒子33の一実施形態が
図7に示されている。石英粒子33は、その中に開口部51が形成された中空の球体として形状付けされている。
図8に示される実施形態では、石英粒子33は、構造体のコアから延びる尖頭を含む。
図9に示される実施形態では、石英粒子は、粒子33の表面積を増大させるディンプルを含む。
【0050】
アレイ31はより低い密度その後融液6であってもよく、それにより、アレイ31の一部が融液6の上方に配置された状態でアレイ31が融液上に浮くことを可能にする。他の実施形態では、アレイ31は、アレイ31が融液6に浸漬される(または部分的に浸漬される)ように、融液により類似した密度を有してもよい。
【0051】
いくつかの連続チョクラルスキープロセスでは、ホットゾーン(すなわち、るつぼアセンブリ10およびサセプタ13などの装置5の下部)が、るつぼアセンブリ10内でシリコン融液6が連続的である状態で加熱されたままである間に、複数のインゴットが成長される。このような方法では、第1インゴットを目標長さまで成長させ、成長が終了し、インゴットがインゴット引き抜き装置から取り出され、次に種結晶が融液中に降下させられて第2単結晶シリコンインゴットの成長を開始させる(すなわち、第1インゴットが引き出されたのと同じ融液を使用する)。後続するインゴットが、ホットゾーンがそのままの状態で、かつ、るつぼアセンブリ10内にシリコンの連続した融液が存在する温度で(例えば、るつぼアセンブリの冷却および劣化した構成要素の交換を必要とするなど、ホットゾーンの1つ以上の構成要素が劣化するまで)成長させられてもよい。例えば、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、10個、または20個以上のインゴットが成長さえられてもよい。インゴット粒子33のアレイ31は、後続して成長するインゴットの1つ以上(またはホットゾーンが損なわれていない状態である間に後続して成長するすべてのインゴット)の成長の間に、るつぼアセンブリ10内に存在してもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、アレイ31がるつぼアセンブリ内に位置する後、さらなる石英(例えば、石英粒子の第2アレイまたは自由浮遊石英)が、るつぼアセンブリ10に追加されない。例えば、ホットゾーンが損なわれていない全期間中(例えば、後続するインゴットの成長中)、さらなる石英は追加されない。他の実施形態では、インゴット成長中(例えば、最初のインゴットが成長した後)に追加量の石英が追加される。
【0053】
単結晶シリコンインゴットを形成する従来の方法と比較して、本開示の方法にはいくつかの利点がある。如何なる特定の理論に束縛されることなく、るつぼアセンブリの外側融液ゾーンに多結晶シリコンを添加することは、不活性ガス(例えば、アルゴン)の比較的小さな気泡(例えば、10μm未満)を生じさせ、この気泡が各堰内の開口部を通って融液によって運ばれ、気泡がシリコン-融液界面に到達できると考えられる。石英粒子のアレイは、不活性ガスの気泡が凝集するための表面積と核生成点を提供し、それによって気泡のサイズを増大させて、気泡の浮力を大きくすることを可能とする。アレイまたは粒子は、融液の表面に石英のモノリシックな層を提供する(例えば、アレイ化されていない石英カレットに比べて隙間が少ない)。アレイは融液形成後に一定量溶解し、溶解した石英は融液から不活性ガスを除去するのに役立つ。アレイは、ホットゾーンが温度上昇する前に、比較的容易にるつぼアセンブリ内に配置されてもよい(例えば、多結晶シリコンの初期装入物上に配置される)。アレイを使用することによって、石英粒子を分散させ、融液にさらされる表面積が増大し、それによってアルゴンの融液を取り去る。石英粒子は、石英カレットと比較して比較的高い表面積を有するように構成されてもよい。相互に接続された小さな特徴のサイズは、(表面積の増加により)SiO2溶解の増加を可能にするが、融合は限定的である。
【0054】
アレイが3D印刷によって作成される実施形態では、石英粒子の表面積が増大してもよく、粒子がアレイ内で相互接続されてもよい。3D印刷によって、ガラス製造に使用されるバインダを除去することが可能になる。3D印刷により、融液の自由表面に近接しているために溶解が速いアレイの領域が、構造の完全性とSiOの発生量に関して最適化できるように、アレイの厚みに沿って調整することを可能とし、一方で、融液によって浸される部分は、融液による溶解が構造を不安定にさせないように、間隔と断面を有するようにも調整されてもよい。断面のテーパは、シリカの生産を最適化するのに十分な表面を提供するために、構造体の連結性を維持するように調整され得る(例えば、接合点ではより厚く、周辺部ではより薄くして、それによってアレイをそのまま維持しアレイの間隔を維持する)。3D印刷によって、より大きな壁構造を製造でき、この場合、壁の実際の構造はSiO(g)発生装置および粒子フィルタとして機能し得る。逆に、より小さなマクロ寸法の球体が製造され得、それえによってSiO(g)を高速で生成する空隙率を維持できる。3D印刷は、多孔質構造(例えば、結晶成長中のアレイの進化に応じて、多孔質の内核を持つ完全に高密度の外殻、または逆に、多孔質の外殻を持つ完全に高密度の内殻)と統合される可能性のある、完全に高密度の材料を得るために使用される可能性がある。
【実施例】
【0055】
本開示のプロセスは、以下の実施例によってさらに説明される。これらの例は、限定的な意味で捉えられるべきではない。
実施例1:従来法における石英粒子間隔の増大
【0056】
図11~13は、シリコン融液(例えば、るつぼアセンブリの外側融液ゾーン)への追加後の従来の円柱状石英粒子を概略的に示している。
図11では、カレットの追加後、表面の自然な詰まり(パッキング)による開口した多孔性を有する石英の深部がある。結晶の引き抜き成長が進むと(
図12)、石英表面の断面が小さくなり、石英片間の距離が広がる。石英の融液への溶解が進むと(
図13)、カレットが融合し始める。融合によって、シリコン融液の通り道がより開かれることになる。
【0057】
石英(SiO
2)は溶解して溶解SiOを生成し、それがSiO気泡の核となり得るため、
図11と
図12の石英形状の間のハイライトされた領域に示されているように、相互作用体積が画定され得る。いわゆる相互作用体積は、アルゴンを捕捉し、融液の自由表面で消滅するSiOの気泡を十分に生成することを可能にする。形状が溶解するにつれて断面積が減少し、形状が十分に小さくなって移動可能になると、形状が融合することがわかる(
図13)。これにより、形状間の間隔が開き、クラスタが生じる。溶融と融合という物理的現象は、相互作用体積で表される融液中の溶解SiOの濃度に変化をもたらし、気泡核生成によるアルゴン除去の効果を変化させる。
【0058】
図11-13の3つのケース(それぞれ「a」、「b」、「c」)と一致する、仮説プロファイルの概略図が
図14に示される。
図14は、石英形状の間隔を変えた場合の、シリコン融液中に溶解したSiOの相対濃度を示している。気泡が核生成、成長、アルゴンガスの収集、空隙における成長の減少を行うことができない、臨界濃度([SiO]*臨界)が存在する。
図14に示されるように、溶解する石英形状の空間レイアウトは、ボイド減少のための作動可能なメカニズムを維持する粒子の能力に影響を与える。
【0059】
SiOの生成は、石英の形状とシリコン液体との間の以下の反応によって進行する。
Si(l) + SiO2(s) => 2SiO(g)
【0060】
シリコン融液に溶解するSiO
2の質量は、生成するSiO(g)の量に比例する。シリコン液体中へのSiO
2の溶解の文献平均値10μm/hrを用いて、全浸漬経過時間におけるモル生成増加速度を、追加した石英形材の総質量および形材の表面積の関数として計算した。
図15のシミュレーションでは、総質量5kgの石英形材を使用し、棒の直径及び長さについての特徴のサイズが、それぞれDとLで示されている。LとDについて、2cm、1.2cm、0.6cm、0.3cmの4つのケースが示されている。SiO(g)の生成率は、特徴のサイズが小さいほど高くなる。しかしながら、妥協的な状況として、SiO(g)のコンディショニング作用をバイパスして大面積のボイド欠陥を減らすことができる、シリコン融液における領域を可能とする融合効果がある。
【0061】
本明細書において、寸法、濃度、温度または他の物理的もしくは化学的性質もしくは特性の範囲と共に使用される場合、用語「約」、「実質的に」、「本質的に」および「おおよそ」は、例えば、丸め、測定方法または他の統計的変動に起因する変動を含む、性質または特性の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動をカバーすることを意味する。
【0062】
本開示の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、要素が1つ以上あることを意味することを意図している。用語「comprising」、「including」、「containing」、「having」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加要素が存在する可能性があることを意味する。特定の方向を示す用語の使用(例:「頂部」、「底部」、「側部」など)は、説明の便宜のためであり、説明された物品の特定の方向を要求しない。
【0063】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構成および方法において様々な変更がなされ得るので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味において解釈されないことが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
多結晶シリコンの供給源としては、例えば、流動床リアクタにおけるシランまたはハロシランの熱分解によって製造された粒状多結晶シリコンや、シーメンスリアクタで製造された多結晶シリコンなど、様々なものを使用できる。以下に説明されるように、石英粒子(すなわち、本明細書では石英粒子またはガラス粒子と称することがあり、溶融石英粒子を含むことを意味する)のアレイは、るつぼアセンブリ10の外側融液ゾーン42または中間融液ゾーン32において、固相多結晶シリコンの初期装入物27に、多結晶シリコンの初期装入物27を溶融する前に(または、より大きなシリコンの塊を供給できるシステムなどで、より小さなアレイが追加された場合、その後に)、追加されてもよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
一般に、アレイ31に組み込まれる石英粒子33は、アレイ31が本明細書に記載されるように機能することを可能にする任意の適切なサイズおよび形状を有してもよい。例えば、石英粒子33は、棒状、管状、球状、または不規則な形状に形作られてもよい。いくつかの実施形態では、粒子は10μmと500mmとの間のサイズ(すなわち、最大寸法)を有する。粒子は、融液による浸食と融液の所望のコンディショニングに依存する足場の残存可能性に基づく大きさとされてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
アレイ31は融液6よりも密度が低くてもよく、それにより、アレイ31の一部が融液6の上方に配置された状態でアレイ31が融液上に浮くことを可能にする。他の実施形態では、アレイ31は、アレイ31が融液6に浸漬される(または部分的に浸漬される)ように、融液により類似した密度を有してもよい。
【国際調査報告】