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特表2024-538397処置のためのマリバビルの使用及びその処置レジメン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】処置のためのマリバビルの使用及びその処置レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7056 20060101AFI20241010BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20241010BHJP
   A61K 31/515 20060101ALI20241010BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A61K31/7056
A61K31/496
A61K31/55
A61P31/20
A61K45/00
A61K31/4166
A61K31/515
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529470
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 US2022050341
(87)【国際公開番号】W WO2023091625
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,206
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ヘン
(72)【発明者】
【氏名】サン,ケフェン
(72)【発明者】
【氏名】クロウシャメル,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,グレイス
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,アンディー ゼット.エックス.
(72)【発明者】
【氏名】ミチョン,イングリッド ニコル
(72)【発明者】
【氏名】バート,ハワード ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】バーター,ゾーイ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ノイホーフ,シビラ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA02
4C084MA52
4C084NA06
4C084ZB332
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC32
4C086BC38
4C086BC44
4C086CB22
4C086EA11
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
マリバビルの薬物間相互作用特性及び薬理学的特性の特性評価は、併用薬と併用する場合の潜在的な薬物間相互作用及び投与方策の通知に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法であって、
初回治療的有効量のマリバビルを前記患者に投与する工程であって、前記患者が、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与中である、工程、および、
前記患者に投与されるマリバビルの量を増加させる工程を含み、
前記患者が、移植レシピエントであり、経口で1日2回のマリバビル約400mgのCYP3A4誘導薬(「初回治療的有効量」)を投与される前に、治療的有効量のマリバビルを投与されていた、前記方法。
【請求項2】
前記CYP3A4誘導薬が、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CYP3A4誘導薬が、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピン、フェニトイン、及びフェノバルビタールからなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
マリバビルの量を、経口で1日2回のマリバビル約800mgまたは約1200mgに増加させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピンであり、マリバビルの量を、経口で1日2回マリバビル約800mgに増加させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記CYP3A4誘導薬が、フェニトインまたはフェノバルビタールであり、マリバビルの量を、経口で1日2回マリバビル約1200mgに増加させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法であって、
前記患者にマリバビル約400mgを1日2回経口投与する工程であって、前記患者が、マリバビルの投与前に、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与中か、または投与されている、工程、および
マリバビルの投与前に、前記CYP3A4誘導薬の投与を中止する工程、を含み、
前記患者が、移植レシピエントである、前記方法。
【請求項9】
前記CYP3A4誘導薬が、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記CYP3A4誘導薬が、強力なCYP3A4誘導薬である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記CYP3A4誘導薬が、リファンピン、リファブチン、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、請求項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
マリバビルを食事の有無にかかわらず前記患者に投与する工程を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法であって、
前記患者にマリバビル約800mgまたは約1200mgを1日2回経口投与する工程であって、前記患者が、マリバビルの投与前にシトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与されている、工程を含み、
前記患者が、移植レシピエントである、前記方法。
【請求項14】
前記CYP3A4誘導薬が、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CYP3A4誘導薬が、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピン、フェニトイン、及びフェノバルビタールからなる群より選択される、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピンであり、投与されるマリバビルの量が、経口で1日2回の約800mgである、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記CYP3A4誘導薬が、フェニトインまたはフェノバルビタールであり、投与されるマリバビルの量が、経口で1日2回の約1200mgである、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記CYP3A4誘導薬が、マリバビルの曝露を減少させる、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、CMV感染症を処置する1つ以上の他の薬物による処置に抵抗性である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビル、またはホスカルネットのうちの1つ以上による処置に対し抵抗性である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が、処置に対し、遺伝子型耐性を伴う抵抗性である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が、処置に対し、遺伝子型耐性を伴わない抵抗性である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
食事の有無にかかわらず、前記患者にマリバビルを投与する工程を含む、請求項1~7または13~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が、造血幹細胞移植レシピエントである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が、固形臓器移植レシピエントである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、成人または12歳超且つ35kg超である小児である、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月19日に出願された米国仮出願第63/281,206号に対する優先権を主張し、これは、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
サイトメガロウイルス(CMV)感染症及び疾患は、移植後の重大な合併症であり、移植レシピエントで実質的な罹患率及び長期生存率の低減を伴う。現在、移植レシピエントのCMV感染症の処置に承認された治療法はない。
【0003】
移植患者は、多くの場合、併存疾患を管理するために、多くの併用薬を服用する。マリバビルの薬物間相互作用特性及び薬理学的特性の特性評価は、併用薬と併用する場合の潜在的な薬物間相互作用及び投与方策の通知に有用である。
【発明の概要】
【0004】
マリバビルは、ベンズイミダゾールリボシドであり、サイトメガロウイルス(CMV)に対する経口投与可能な抗ウイルス薬である。マリバビルは、LIVTENCITY(商標)という商標名でも知られている。通常、患者(例えば、成人及び/または12歳以上で体重が35kg以上の小児)は、マリバビル400mgを1日2回経口投与される。しかし、いくつかの態様では、本開示は、特定の薬物(例えば、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬(inducer)(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、またはフェノバルビタール)、p-糖タンパク質誘導薬(P-gp)、免疫抑制薬、抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビル))と併用する場合、マリバビル及び/または併用薬の投与を監視、変更(例えば、増加もしくは減少)、または中止されなければならないことを認識する。
【0005】
いくつかの態様では、本開示は、とりわけ、マリバビルとの潜在的な薬物間相互作用、ならびに、マリバビル及び/またはCYP3A4誘導薬への曝露がどのように影響を受けるかを示す。いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前にCYP3A4誘導薬を投与中か、または投与されている);及び
マリバビルの投与前に、CYP3A4誘導薬の投与を中止すること。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
患者に初回の治療的有効量のマリバビルを投与すること(患者は、CYP3A4誘導薬を投与中である);及び
患者に投与されるマリバビルの量を増加させること。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前にCYP3A4誘導薬を投与されている)。
【0008】
いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウ(St. John’s wort)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬が、マリバビルの曝露を減少させる。いくつかの実施形態では、マリバビルの初回治療的有効量が患者に投与され、CYP3A4誘導薬を同時投与される場合、マリバビルの量を増加させる。いくつかの実施形態では、マリバビルの初回治療的有効量は、約400mg(経口で1日2回)である。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約800mg~約1200mg(経口で1日2回)の量に増加させる。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、マリバビル及び/またはCYP3A4誘導薬の患者の血中(例えば、全血中または血漿中)濃度を監視するステップを含む。
【0009】
いくつかの態様では、本開示は、とりわけ、マリバビルとの潜在的な薬物間相互作用、ならびに、マリバビル及び/または免疫抑制薬への曝露がどのように影響を受けるかを示す。いくつかの実施形態では、本開示は、サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含み、患者が免疫抑制薬を投与中か、または投与されている。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、シロリムス、プレドニゾン、及びミコフェノラートからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、及びシロリムスからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムスである。いくつかの実施形態では、マリバビルの投与を中止した後、さらに、免疫抑制薬のレベル(例えば、参照レベルまたは標準レベルとの比較)を監視するステップを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらに、患者に投与される免疫抑制薬の量(例えば、マリバビルの投与を開始する前に投与された免疫抑制薬の量)を増加させるステップを含む方法が提供される。
【0010】
いくつかの実施形態では、タクロリムスが初回用量で投与され、全血中トラフ濃度が監視される。いくつかの実施形態では、投与されるタクロリムスの初回用量(例えば、マリバビルの投与前またはマリバビルの同時投与時)は、約0.075mg/kg/日~約0.3mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、それぞれ、0.5mg、1.0mg、または5.0mgのカプセルで経口投与される。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、5.0mg/mLの濃度で注射により投与される。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、1mg単位用量の顆粒パケットで経口懸濁液で投与される。いくつかの実施形態では、観察されるタクロリムスの全血中トラフ濃度は、タクロリムスの初回投与から約0ヶ月~約12ヶ月の期間にわたって監視される。いくつかの実施形態では、観察されるタクロリムスの全血中トラフ濃度は、マリバビルの投与開始時、同時投与中、及び投与中止時に監視される。いくつかの実施形態では、観察されるタクロリムスの全血中トラフ濃度は、約4~約20ng/mLである。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、軟膏1グラム当たり約0.03%~約0.1%(w/w)の初回用量で投与される。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、鉱油、パラフィン、プロピレンカーボネート、白色ワセリン、及び白色ワックスからなる群より選択される基剤で局所投与される。
【0011】
いくつかの実施形態では、マリバビルと同時投与される場合、タクロリムスの用量が調整される。いくつかの実施形態では、マリバビルは、400mg、800mg、または1200mgの濃度で同時投与され、1日2回投与される。いくつかの実施形態では、マリバビルの同時投与が、タクロリムスへの曝露を約50%増加させる。
【0012】
いくつかの態様において、本開示は、とりわけ、マリバビルとの潜在的な薬物間相互作用、ならびに、マリバビル及び/または抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン)への曝露がどのように影響を受けるかを示す。いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、患者に治療的有効量のマリバビルを投与することを含み、患者は、抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン)を投与中か、または投与されている。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、患者の血清中のジゴキシンのレベルを監視することを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、患者に投与されるジゴキシンの量(例えば、マリバビルの投与を開始する前に投与された抗不整脈薬の量)を低減させるステップを含む。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、とりわけ、マリバビルとの潜在的な薬物間相互作用、ならびに、マリバビル及び/またはガンシクロビルもしくはバルガンシクロビルへの曝露がどのように影響を受けるかを示す。いくつかの実施形態では、本開示は、サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前に、ガンシクロビルまたはバルガンシクロビルを投与中か、または投与されている)、及び
マリバビルの投与前にガンシクロビルまたはバルガンシクロビルの投与を中止すること。
【0014】
いくつかの実施形態では、マリバビル及び/または同時投与される他の薬剤(例えば、CYP3A4誘導薬(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、またはフェノバルビタール)、p-糖タンパク質誘導薬(P-gp)、免疫抑制薬、抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビル))の濃度は、初回投与時、同時投与中、及びマリバビル投与の中止時に監視される。
【0015】
いくつかの実施形態では、患者は、CMV感染症を処置する1つ以上の他の薬物(例えば、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビル、またはホスカルネット)による処置に抵抗性である。いくつかの実施形態では、マリバビルは、食事の有無にかかわらず投与される。いくつかの実施形態では、患者は、移植レシピエント(例えば、造血幹細胞移植レシピエントまたは固形臓器移植レシピエント)である。いくつかの実施形態では、患者は、成人または12歳超且つ35kg超である小児である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ミダゾラム(A)、または、テストステロン(B)をプローブ基質として使用したCYP3AのHLMとの濃度依存アッセイにおけるマリバビルのIC50シフト。CYP、シトクロムP450、HLM、ヒト肝臓ミクロトーム、IC50、半最大阻害濃度、NADPH、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸。
図2】プローブ基質としての(A)ミダゾラム、または、(B)テストステロン、と併用したマリバビルによる、CYP3AのTDIに対する、観察された酵素不活化速度定数 対 阻害薬濃度の関係。CYP、シトクロムP450;K、半最大酵素不活化時の阻害薬濃度;k不活化、最大酵素不活化速度定数;k観察、観測された酵素不活化速度定数;TDI、時間依存性阻害。
図3】3人のヒト肝細胞ドナーから得られたデータの非線形回帰によるマリバビルによるCYP3A4 mRNA発現の誘導E最大及びEC50の推定。ドナー3の場合、nは、曲線の形状に対応するシグモイド係数であり;EC50は、半最大有効濃度であり;E最大は、最大効果である。
図4】培養Caco-2細胞におけるジゴキシンのP-gp排出に対するマリバビルのIC50の推定値(補正排出比で決定)。IC50、半最大阻害濃度、P-gp、P-糖タンパク質。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
マリバビル((2S,3S,4R,5S)-2-(5,6-ジクロロ-2-(イソプロピルアミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-1-イル)-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール)、化学構造を有する化合物:
【化1】

移植レシピエントにおけるサイトメガロウイルス(CMV)感染症及び疾患の処置に強力で経口投与可能な抗ウイルス薬である。移植レシピエントは、CMV感染症の重大なリスクにさらされており、さらには、多くの場合、併存疾患を管理するために多くの併用薬を投与される。従って、マリバビル及び将来の治療法間の薬物間相互作用の可能性の評価は有用である。さらに、マリバビルの臨床薬理の理解は、多くの場合、複数の合併症を有し、複雑な併用投薬レジメンを必要とする移植レシピエントに最適な投与方策を定義するために必要とされる。
【0018】
1.定義
本明細書で使用される場合、数値に関して使用される「約」という用語は、その値の±10%を意味する。例えば、「約100mg」のマリバビルを含む用量は、90mg~110mgの範囲内の任意の量のマリバビルを包含する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「参照」という用語は、比較が行われる標準または対照について記載する。例えば、いくつかの実施形態では、目的の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値が、参照または対照物質、動物、個体、集団、試料、配列、または値と比較される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、目的の試験または判定と実質的に同時に試験及び/または測定される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、場合により明確な媒体に具現化された、歴史的参照または対照である。通常、当業者により理解されるように、参照または対照は、これらの評価中に、同等の条件または状況にて測定または特性決定される。当業者らは、特定の可能な参照または対照への依存及び/または比較を正当化するのに十分な類似点が存在する場合を理解するであろう。
【0020】
本明細書で使用される「処置する」または「処置すること」という用語は、障害もしくは状態、または障害もしくは状態の1つ以上の症状を部分的または完全に緩和、抑制、改善、及び/または軽減することを指す。本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」、及び「処置すること」という用語は、本明細書に記載されているように、障害もしくは状態、または障害もしくは状態の1つ以上の症状を部分的もしくは完全に緩和、阻害、改善、及び/もしくは軽減することを指す。いくつかの実施形態では、1つ以上の症状が現れた後に、処置が投与され得る。いくつかの実施形態では、「処置すること」という用語は、疾患または障害の進行を止めることを含む。症状が治癒された後も、例えば、再発を予防するか、または遅延させるために、処置を継続することもある。従って、いくつかの実施形態では、「処置すること」という用語は、疾患または障害の再発または再発を防ぐことを含む。
【0021】
2.投与レジメン
いくつかの態様では、本開示は、特定の薬物(例えば、CYP3A4誘導薬(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、またはフェノバルビタール)、p-糖タンパク質誘導薬(P-gp)、免疫抑制薬、抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビル))と併用する場合、マリバビル及び/または併用薬の投与を監視、変更(例えば、増加もしくは減少)、または中止されなければならないことを認識する。
【0022】
いくつかの実施形態では、マリバビルは、患者に約400mgを経口で1日2回投与される(「標準用量」)。いくつかの実施形態では、患者は、例えば、追加の併用薬を投与される前に、マリバビルの初回治療的有効量を投与されている。いくつかの実施形態では、マリバビルの初回治療的有効量は、標準用量(400mg、経口で1日2回)である。いくつかの実施形態では、マリバビルは、錠剤として投与される。いくつかの実施形態では、マリバビルは、200mgのマリバビルを含む錠剤として投与される。いくつかの実施形態では、提供される方法は、食物の有無にかかわらず、マリバビルを患者に投与することを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、特定の薬物(例えば、CYP3A4誘導薬(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、またはフェノバルビタール)、p-糖タンパク質誘導薬(P-gp)、免疫抑制薬、抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビル))と同時投与される場合、マリバビルの用量は、標準用量(400mg、経口で1日2回)から変更される(例えば、増加または減少する)。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約800mgまたは約1200mg(経口で1日2回)に増加させる。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約800mg(経口で1日2回)に増加させる。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約1200mg(経口で1日2回)に増加させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、特定の薬物(例えば、CYP3A4誘導薬(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、またはフェノバルビタール)、p-糖タンパク質誘導薬(P-gp)、免疫抑制薬、抗不整脈剤(例えば、ジゴキシン、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビル))と併用される場合、併用薬の投与量は、ラベルで提供される推奨量から変更される(例えば、増加するか、または減少する)。いくつかの実施形態では、併用薬の用量は、その標準投与レジメンと比較して減少する。いくつかの実施形態では、さらに、マリバビルの投与を中止した後に、併用薬のレベル(例えば、参照レベルまたは標準レベルとの比較)を監視するステップを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、さらに、患者に投与される併用薬の量(例えば、マリバビルの投与を開始する前に投与された併用薬の量)を増加させるステップを含む方法が提供される。
【0025】
a.マリバビル及びCYP3A4誘導薬
いくつかの実施形態では、本開示は、マリバビルが、主に、CYP3A4により代謝されるという認識を提供する。追加的または代替的に、本開示は、CYP3A4誘導薬である薬物がマリバビルの血漿中濃度を減少させ、ウイルス学的反応を低減させ得るという認識を提供する。いくつかの実施形態では、マリバビルの特定のCYP3A4誘導薬との同時投与は、推奨されず、及び/または一方または両方の薬物の投与レジメンが変更されるべきである。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含み、患者が、マリバビルの投与前に、CYP3A4誘導薬を投与中か、または投与されている。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、マリバビルの投与前に、CYP3A4誘導薬の投与を中止することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、患者に投与されるマリバビルの量を増加させることを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、リファンピン、リファブチン、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、カルバマゼピン、フェニトイン、及びフェノバルビタールからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、強力なCYP3A4誘導薬である。強力なCYP3A4誘導薬は、例えば、リファンピン、リファブチン、及びセイヨウオトギリソウを含む。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、処置されるべき患者に対して承認された投与レジメン(例えば、所与の適応症に対する米国FDA承認の投薬量)に従って投与され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、p-Gp誘導薬でもある。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬は、マリバビルの曝露も減少させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
治療的有効量のマリバビル(例えば、400mg、経口で1日2回)を患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前に、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与中か、または投与されている)、及び
マリバビルの投与前に、CYP3A4誘導薬の投与を中止すること。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
マリバビルの初回治療的有効量(例えば、400mg、経口で1日2回)を患者に投与すること(患者が、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与中である)、及び
患者に投与されるマリバビルの量を増加させること。
【0031】
いくつかの実施形態では、マリバビルの初回治療的有効量は、標準用量(400mg、経口で1日2回)である。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約800mgまたは約1200mg(経口で1日2回)に増加させる。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約800mg(経口で1日2回)に増加させる。いくつかの実施形態では、マリバビルの量を、約1200mg(経口で1日2回)に増加させる。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬がカルバマゼピンである場合、マリバビルの量を、マリバビル約800mg(経口で1日2回)に増加させる。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬がフェニトインまたはフェノバルビタールである場合、マリバビルの量を、マリバビル約1200mg(経口で1日2回)に増加させる。
【0032】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、以下を含む:
治療的有効量のマリバビル(例えば、800mgまたは約1200mg、経口で1日2回)を患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前に、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与されている)。
【0033】
いくつかの実施形態では、患者が、マリバビルの投与前に、CYP3A4誘導薬を投与されている場合、治療的有効量のマリバビルは、約800mgまたは約1200mg(経口で1日2回)である。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬がカルバマゼピンである場合、投与されるマリバビルの量は、約800mg(経口で1日2回)である。いくつかの実施形態では、CYP3A4誘導薬がフェニトインまたはフェノバルビタールである場合、投与されるマリバビルの量は、約1200mg(経口で1日2回)である。
【0034】
マリバビルのシトクロムP450酵素及びP糖タンパク質(P-gp)との薬物間相互作用の可能性を完全に特性評価した。マリバビルの存在下でヒト細胞またはヒト由来細胞株を使用して、CYPの可逆的阻害、時間依存的阻害、及び誘導を評価した。P-gpの阻害も評価した。
【0035】
マリバビルは、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2D6、CYP2E1、またはCYP3A4の可逆的な阻害薬ではなかったが、CYP1A2、CYP2C9、及びCYP2C19の弱い阻害薬であった(半最大阻害濃度、またはIC50は、それぞれ、40、18、及び35μMであった)。
【0036】
マリバビルは、CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、またはCYP2D6の時間依存的阻害薬ではなかった。しかし、それは、CYP3A4の時間依存的阻害薬であり、図1に提示されるIC50シフト値から明らかであった。ミダゾラム及びテストステロンをプローブ基質として用いて、マリバビルのIC50値は、それぞれ、1.9μM及び3.2μMを超えた。図2に示されるように、CYP3Aの、半最大酵素不活化時のマリバビルの濃度、またはKは、ミダゾラム及びテストステロンを用いて、それぞれ、41.2μM及び167μMであった。
【0037】
マリバビルは、CYP1A2またはCYP2B6 mRNAの誘導薬ではなかったが、CYP3A4 mRNAの弱いin vitro誘導薬であった。これは、mRNA誘導における14倍以上の増加、及び陽性対照レベルにおける30%以上の増加を示す。しかし、図3に示すように、効果は、ドナー毎に異なった。マリバビルの半最大有効濃度またはEC50は、全てのドナーについて、5μMを超えた。
【0038】
図4に示されるように、マリバビルは、P-gp媒介性ジゴキシン排出を濃度依存的阻害を示した。この場合のマリバビルのIC50は、33.8μMであった。
【0039】
本明細書で、具体的には、実施例1で提示されるデータは、P-gp及び/またはいくつかのCYPのin vitro阻害または誘導の観察されたレベルに必要なマリバビルの濃度を示す。
【0040】
b.マリバビル及び免疫抑制薬
いくつかの実施形態では、本開示は、マリバビルが、CYP3A4及び/またはP-gp基質である特定の免疫抑制薬の薬物濃度を増加させる可能性を有することを認識し、最小限の濃度変化が、重篤な有害事象につながり得ることを認識する。追加的または代替的に、マリバビルによる処置中、特に、マリバビルの開始後及び中止後に、免疫抑制薬レベルが頻繁に監視され、必要に応じて、免疫抑制薬の用量を調整すべきである。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示は、CMV感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、治療的有効量のマリバビル(例えば、400mg、経口で1日2回)を患者に投与することを含み、患者が免疫抑制薬を投与中か、または投与されている。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、免疫抑制薬のレベル(例えば、全血中または血漿中)を監視することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、さらに、患者に投与される免疫抑制薬の量を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、マリバビルは、免疫抑制薬の曝露も増加させる。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、マリバビルの投与を中止した後に免疫抑制薬のレベル(例えば、参照レベルまたは標準レベルとの比較)を監視するステップを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、患者に投与される免疫抑制薬の量(例えば、マリバビルの投与を開始する前に投与された免疫抑制薬の量に)を増加させるステップを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、シロリムス、プレドニゾン、及びミコフェノラートからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、及びシロリムスからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムスである。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、プレドニゾン、及びミコフェノラートからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、タクロリムスである。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、エベロリムスである。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、シクロスポリンである。いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、シロリムスである。
【0043】
いくつかの実施形態では、免疫抑制薬は、処置されるべき患者に対して承認された投与レジメン(例えば、米国FDA承認のタクロリムスの投与量)に従って投与され得る。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、安定用量として1日2回投与され、全1日用量の総投与量が約0.5mg~約16mgである。
【0044】
いくつかの実施形態では、タクロリムスが初回用量で投与され、全血中トラフ濃度が監視される。いくつかの実施形態では、投与されるタクロリムスの初回用量(例えば、マリバビルの投与前またはマリバビルの同時投与時)は、約0.075mg/kg/日~約0.3mg/kg/日である。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、それぞれ、0.5mg、1.0mg、または5.0mgのカプセルで経口投与される。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、5.0mg/mLの濃度で注射により投与される。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、1mg単位用量の顆粒パケットで経口懸濁液で投与される。いくつかの実施形態では、観察されるタクロリムスの全血中トラフ濃度は、タクロリムスの初回投与から約0ヶ月~約12ヶ月の期間にわたって監視される。いくつかの実施形態では、観察されるタクロリムスの全血中トラフ濃度は、マリバビルの投与開始時、同時投与中、及び投与中止時に監視される。いくつかの実施形態では、観察されるタクロリムスの全血中トラフ濃度は、約4~約20ng/mLである。いくつかの実施形態では、投与されるタクロリムスの初回用量は、軟膏1グラム当たり約0.03%~約0.1%(w/w)である。いくつかの実施形態では、タクロリムスは、鉱油、パラフィン、プロピレンカーボネート、白色ワセリン、及び白色ワックスからなる群より選択される基剤で局所投与される。いくつかの実施形態では、マリバビルの同時投与が、タクロリムスへの曝露を約50%増加させる。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示は、臓器拒絶反応及び/または移植片対宿主病の予防または処置のために、治療的有効量の免疫抑制薬を、それを必要とする患者に投与する方法を提供し、改良は、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、改良は、さらに、投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含む。いくつかの実施形態では、改良は、さらに、投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含み、免疫抑制薬は、タクロリムスである。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、臓器拒絶反応及び/または移植片対宿主病の予防または処置のための方法を、それを必要とする患者に提供し、患者は、治療的有効量の免疫抑制薬を投与中か、または投与されており、改良は、患者に治療的有効量のマリバビルを投与することを含む。いくつかの実施形態では、改良は、さらに、投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含む。いくつかの実施形態では、改良は、さらに、投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含み、免疫抑制薬は、タクロリムスである。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示は、臓器拒絶反応及び/または移植片対宿主病の予防または処置のための方法を、それを必要とする患者に提供する方法を提供し、患者は、治療的有効量のマリバビルを投与中か、または投与されており、改良は、患者に治療的有効量の免疫抑制薬を投与することを含む。いくつかの実施形態では、改良は、さらに、投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含む。いくつかの実施形態では、改良は、さらに、投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含み、免疫抑制薬は、タクロリムスである。
【0048】
c.マリバビル及びジゴキシン
ジゴキシンは、心房細動、心房粗動、及び心不全に最もよく使用される抗不整脈薬である。いくつかの実施形態では、本開示は、マリバビルが、P-gp基質であるジゴキシンの薬物濃度を増加させる可能性があり、最小限の濃度変化が、重篤な有害事象につながり得ることを認識する。追加的または代替的に、マリバビルによる処置中、特に、マリバビルの開始後及び中止後に、ジゴキシンレベルが頻繁に監視され、必要に応じて、免疫抑制薬の用量を調整すべきである。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示は、サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含み、患者がジゴキシンを投与中か、または投与されている。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、ジゴキシンのレベル(例えば、全血中または血漿中)を監視することを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、例えば、マリバビルを同時投与する前の量、例えば、米国FDA承認投薬量と比較して、患者に投与されるジゴキシンの量を低減させることを含む。いくつかの実施形態では、ジゴキシンは、0.5mgで1日1回投与される。
【0050】
d.マリバビル及びガンシクロビルまたはバルガンシクロビル
いくつかの実施形態では、本開示は、マリバビルが、ガンシクロビル及びバルガンシクロビルの活性化/リン酸化に必要とされるヒトCMV pUL97キナーゼを阻害することにより、ガンシクロビル及び/またはバルガンシクロビルの抗ウイルス活性に拮抗し得ることを認識する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示は、サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法を提供し、方法は、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含み、患者がガンシクロビル及び/またはバルガンシクロビルを投与中か、または投与されている。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、マリバビルの投与前に、ガンシクロビル及び/またはバルガンシクロビルの投与を中止することを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、マリバビルの投与を中止した後、(例えば、全血中または血漿中の)ガンシクロビル及び/またはバルガンシクロビルのレベル(例えば、参照レベルまたは標準レベルと比較)を監視するステップを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法は、さらに、患者に投与されるガンシクロビル及び/またはバルガンシクロビルの量を(例えば、マリバビルの投与を開始する前に投与されたガンシクロビル及び/またはバルガンシクロビルの量に)増加させるステップを含む。
【0052】
3.患者
上で及び本明細書で記載されるように、本方法は、マリバビル及び併用薬(例えば、CYP3A4誘導薬(例えば、カルバマゼピン、フェニトイン、またはフェノバルビタール)、p-糖タンパク質誘導薬(P-gp)、免疫抑制薬、抗不整脈薬(例えば、ジゴキシン、ガンシクロビル、またはバルガンシクロビル))を、それを必要とする患者に投与することを提供する。いくつかの実施形態では、患者は、CMV感染症に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は、移植後CMV感染症に罹患している。いくつかの実施形態では、患者は、移植レシピエントである。いくつかの実施形態では、患者は、造血幹細胞移植レシピエントである。いくつかの実施形態では、患者は、固形臓器移植レシピエント(例えば、肝臓、腎臓、肺、心臓、膵臓、腸)である。
【0053】
いくつかの実施形態では、患者は、CMV感染症を処置するための1つ以上の他の薬物による処置に抵抗性である。いくつかの実施形態では、患者は、CMV感染症を処置するための1つ以上の他の薬物による処置に対し、遺伝子型耐性を伴う抵抗性である。いくつかの実施形態では、患者は、CMV感染症を処置するための1つ以上の他の薬物による処置に対し、遺伝子型耐性を伴わない抵抗性である。いくつかの実施形態では、患者は、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビル、またはホスカルネットのうちの1つ以上による処置に対し抵抗性である。いくつかの実施形態では、患者は、ガンシクロビルまたはバルガンシクロビルによる処置に対し抵抗性である。いくつかの実施形態では、患者は、ガンシクロビルによる処置に対し抵抗性である。いくつかの実施形態では、患者は、バルガンシクロビルによる処置に対し抵抗性である。
【0054】
いくつかの実施形態では、患者は、成人または12歳超且つ35kg超である小児である。いくつかの実施形態では、患者は、成人である。いくつかの実施形態では、患者は、小児である。いくつかの実施形態では、患者は、12歳以上の小児である。いくつかの実施形態では、患者は、35kgを超える小児である。いくつかの実施形態では、患者は、12歳以上且つ35kg以上の小児である。
【0055】
4.第1相臨床試験及び非臨床in vitro試験のデータを使用したマリバビルの薬物間相互作用の可能性の評価
マリバビルの薬物間相互作用の可能性は、例3に記載されている。
【0056】
マリバビルが、主に肝臓で代謝され、腎クリアランスが、非主要経路(5パーセント未満を占める)であることを、蓄積データは示している。VP44469(N-脱アルキル化マリバビル)は、尿及び糞便の両方におけるマリバビルの主な代謝物であった。血漿中では、不変マリバビル及びVP44469は、それぞれ、総放射能の約69%及び9.8%を占めていた。マリバビルの肝臓代謝は、主にシトクロムP450により促進された。CYP3A4及びCYP1A2は、それぞれ、CYP駆動経路の70~85%及び15~30%に関与していた。グルクロン酸抱合は、代謝の20%未満を占めた。
【0057】
臨床的に重要な薬物相互作用は、実施例3の表1-Aにまとめられる。CYP34A及びP-gpの強力な誘導薬は、マリバビルの曝露を減少させ、マリバビルの用量増加が必要になる。CYP3A4及び/またはP-gpの阻害薬は、マリバビルの曝露を増加させ得る。しかし、CYP3A4及び/またはP-gp阻害薬では、用量低減の必要がないことを、以前の安全性及び忍容性のデータは示す。マリバビルは、免疫抑制薬への曝露を増加させ得るので、併用免疫抑制薬の監視を考慮されるべきである。
【0058】
5.マリバビルの臨床薬理学
経口投与後、マリバビルは、迅速且つ良好に吸収され、ピーク濃度は、通常、1~3時間以内に達成され;曝露は、食物に影響を受けず;生物学的利用能は、錠剤を砕くことにより、または、制酸剤と一緒に服用された場合に、影響を受けなかった。
【0059】
マリバビルは、シトクロムP450 3A4及び1A2経路を介して肝臓で代謝された。マリバビルの5%未満が、腎臓から排出された。マリバビルは、約5~7時間の半減期を示した。
【0060】
マリバビルは、薬物間相互作用のリスクが低いことが判明した。強力なCYP3A4誘導薬の同時投与は、マリバビルの曝露を減少させ、マリバビルの用量増加を必要とすることが判明した。タクロリムスなどのいくつかの免疫抑制薬は、マリバビルの影響を受け得、これは、タクロリムスの曝露を51%増加させた。
【0061】
結論として、マリバビルは、幅広い移植レシピエントのCMV感染症に好適な処置である。それは、食事の有無にかかわらず接種することができ、軽度~中等度の肝障害または腎機能障害のある患者では、用量調整する必要はない。マリバビルは、薬物相互作用の可能性が低く、必要な用量調整は最小限であり(例えば、CYP3A4誘導薬または特定の免疫抑制薬と同時に服用する場合のみ)、QT間隔に影響はない。
【0062】
例示的な実施形態
以下の番号付きの実施形態は、限定的ではないが、本開示の特定の態様の例である。
1.サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症の処置する方法であって、
治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前に、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与中か、または投与されている)、及び
マリバビルの投与前に、CYP3A4誘導薬の投与を中止すること
を含む、方法。
2.CYP3A4誘導薬が、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、実施形態1に記載の方法。
3.CYP3A4誘導薬が、強力なCYP3A4誘導薬である、実施形態1または2に記載の方法。
4.CYP3A4誘導薬が、リファンピン、リファブチン、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.患者にマリバビル約400mgを1日2回経口投与することを含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.マリバビルを食事の有無にかかわらず患者に投与することを含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症の処置する方法であって、
初回治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与中である)、及び
患者に投与されるマリバビルの量を増加させること
を含む、方法。
8.CYP3A4誘導薬が、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、実施形態7に記載の方法。
9.CYP3A4誘導薬が、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、実施形態7または8に記載の方法。
10.CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピン、フェニトイン、及びフェノバルビタールからなる群より選択される、実施形態7~9のいずれか1つに記載の方法。
11.マリバビル約400mg(経口で1日2回)のCYP3A4誘導薬(「初回治療的有効量」)の投与前に、患者が、マリバビルの治療的有効量を投与されていた、実施形態7~10のいずれか1つの方法。
12.マリバビルの量を、マリバビル約800mgまたは約1200mg(経口で1日2回)に増加させる、実施形態7~11のいずれか1つに記載の方法。
13.CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピンであり、マリバビルの量を、マリバビル約800mg(経口で1日2回)に増加させる、実施形態7~12のいずれか1つに記載の方法。
14.CYP3A4誘導薬が、フェニトインまたはフェノバルビタールであり、マリバビルの量を、マリバビル約1200mg(経口で1日2回)に増加させる、実施形態7~12のいずれか1つに記載の方法。
15.サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症の処置する方法であって、
治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前に、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)誘導薬を投与されている)
を含む、方法。
16.CYP3A4誘導薬が、リファンピン、アバシミブ、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、実施形態15に記載の方法。
17.CYP3A4誘導薬が、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、リファブチン、フェノバルビタール、及びセイヨウオトギリソウからなる群より選択される、実施形態15または16に記載の方法。
18.CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピン、フェニトイン、及びフェノバルビタールからなる群より選択される、実施形態15~17のいずれか1つに記載の方法。
19.投与されるマリバビルの量は、約800または約1200mg(経口で1日2回)である、実施形態15~18のいずれか1つに記載の方法。
20.CYP3A4誘導薬が、カルバマゼピンであり、投与されるマリバビルの量が、約800mg(経口で1日2回)である、実施形態15~19のいずれか1つに記載の方法。
21.CYP3A4誘導薬が、フェニトインまたはフェノバルビタールであり、投与されるマリバビルの量が、約1200mg(経口で1日2回)である、実施形態15~19のいずれか1つに記載の方法。
22.CYP3A4誘導薬が、マリバビルの曝露を減少させる、実施形態1~21のいずれか1つの方法。
23.サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症を処置する方法であって、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含み、患者が、免疫抑制薬を投与中か、または投与されている、方法。
24.さらに、マリバビルの投与を開始した後に、免疫抑制薬のレベルを監視するステップ(例えば、参照レベルまたは標準レベルとの比較)を含む、実施形態23に記載の方法。
25.さらに、患者に投与される免疫抑制薬の量を低減させるステップを含む、実施形態23または24に記載の方法。
26.さらに、マリバビルの投与を中止した後に、免疫抑制薬のレベル(例えば、参照レベルまたは標準レベルとの比較)を監視するステップを含む、実施形態23~25のいずれか1つに記載の方法。
27.さらに、患者に投与される免疫抑制薬の量(例えば、マリバビルの投与を開始する前に投与された免疫抑制薬の量)を増加させるステップを含む、実施形態26に記載の方法。
28.免疫抑制薬が、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、シロリムス、プレドニゾン、及びミコフェノラートからなる群より選択される、実施形態23~27のいずれか1つに記載の方法。
29.免疫抑制薬が、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムス、及びシロリムスからなる群より選択される、実施形態23~28のいずれか1つに記載の方法。
30.サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症の処置する方法であって、治療的有効量のマリバビルを患者に投与することを含み、患者が、ジゴキシンを投与中か、または投与されている、方法。
31.さらに、ジゴキシンのレベルを監視するステップを含む、実施形態30に記載の方法。
32.さらに、患者に投与されるジゴキシンの量を低減させるステップを含む、実施形態30または31に記載の方法。
33.患者が、CMV感染症を処置する1つ以上の他の薬物による処置に抵抗性である、実施形態1~32のいずれかに記載の方法。
34.患者が、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、シドフォビル、またはホスカルネットのうちの1つ以上による処置に対し抵抗性である、実施形態1~33のいずれかに記載の方法。
35.患者が、遺伝子型耐性のある処置に対して、抵抗性である、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
36.患者が、遺伝子型耐性のない処置に対して、抵抗性である、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
37.サイトメガロウイルス(CMV)感染症に罹患している患者のCMV感染症の処置する方法であって、
治療的有効量のマリバビルを患者に投与すること(患者は、マリバビルの投与前に、ガンシクロビルまたはバルガンシクロビルを投与中か、または投与されている)、及び
マリバビルの投与前にガンシクロビルまたはバルガンシクロビルの投与を中止すること
を含む、方法。
38.マリバビルを食事の有無にかかわらず患者に投与することを含む、実施形態7~37のいずれか1つに記載の方法。
39.患者が、移植レシピエントである、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
40.患者が、造血幹細胞移植レシピエントである、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
41.患者が、固形臓器移植レシピエントである、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
42.患者が、成人または12歳超且つ35kg超である小児である、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0063】
実施例1-マリバビルによる潜在的なシトクロムP450薬物間相互作用のin vitroプロファイリング
シトクロムP450酵素(CYP)の阻害または誘導は、薬物間相互作用の最も一般に観察される機序のうちの1つである。
【0064】
in vitroシステム、例えば、ヒト肝ミクロソーム(HLM)、組み換え酵素、ヒト肝細胞、及び他のヒト由来細胞株は、臨床試験の前に潜在的な薬物間相互作用の特性評価するための検証システムとして長い間使用されている。
【0065】
可逆的CYP阻害
HLMは、9つのCYPアイソフォームの活性阻害に対するマリバビルの半最大阻害濃度(IC50)を評価するために使用された。プローブ基質は、フェナセチン(CYP1A2)、クマリン(CYP2A6)、ブプロピオン(CYP2B6)、パクリタキセル(CYP2C8)、トルブタミド(CYP2C9)、(S)-メフェニトイン(CYP2C19)、デキストロメトルファン(CYP2D6)、クロルゾキサゾン(CYP2E1)、ならびにミダゾラム及びテストステロン(CYP3A4)であった。
【0066】
マリバビル0、0.1、0.3、1、3、10、30、及び100μMの濃度でのCYP活性を評価した。
【0067】
マリバビルをHLM中で最大100μMまでインキュベートしても、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2D6、CYP2E1、及びCYP3A4の有意な阻害はもたらされなかった。マリバビルは、CYP1A2、CYP2C9、及びCYP2C19の弱い阻害薬であり、IC50は、それぞれ、40、18、及び35μMである。
【0068】
時間依存的なCYP阻害
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド二リン酸(NADPH)の存在下及び非存在下で、マリバビルをHLMと共に30分間プレインキュベートし、その後、CYP酵素活性アッセイを行うことにより、様々なCYP酵素に対する時間依存性阻害(TDI)の可能性を評価した。
【0069】
6つの異なるプレインキュベーション時間枠で、NADPHを含む様々な濃度のマリバビルと共にHLMをプレインキュベーションすることにより、ミダゾラム及びテストステロンをプローブ基質として用いた、CYP3AのTDIに対するマリバビルの酵素不活化動態を評価した。CYP3Aプローブ代謝物の形成を決定することにより、CYP3A活性を測定した。非線形最小二乗回帰を使用して、半最大酵素不活化時の阻害薬濃度(K)及び最大酵素不活化速度定数(k不活化)を推定した。
【0070】
マリバビルのIC50シフト値は、HLMにおけるCYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、及びCYP2D6に対して1μM未満であった。マリバビルのCYP3Aに対するIC50シフト値は、ミダゾラム及びテストステロンをプローブ基質として用いて、それぞれ、1.9μM及び3.2μMを超えていた(図1)。従って、最大100μMの濃度のマリバビルは、CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、またはCYP2D6のTDIの可能性が低いが、CYP3AのTDIの可能性が高い。
【0071】
ミダゾラムを基質としたCYP3AのTDIに対するマリバビルのK及びk不活化図2A)は、それぞれ、41.2μM及び0.0117分-1であった。テストステロンを基質とするCYP3AのTDIに対するマリバビルのK及びk不活化図2B)は、それぞれ、167μM及び0.0357分-1であった。
【0072】
CYP誘導
新しいヒト肝細胞を、マリバビル濃度36μM、144μM、及び480μMの培養培地で処置した。
【0073】
陽性対照は、50μMのオメプラゾール(CYP1A2)、1mMのフェノバルビタール(CYP2B6)、及び50μMのリファンピシン(CYP3A)であった。
【0074】
インキュベーションを37℃で72時間行い、化合物を含む培地を毎日交換した。全RNAを分離し、最大1μgの全分離RNAから、cDNAを合成した。CYP特異的プローブを用いるqPCRを使用して、CYP発現の解析を実施した。
【0075】
さらに、0~100μMの濃度のマリバビルを用いて、3人のドナーにおける濃度反応曲線により、CYP3A4 mRNA誘導に対する半最大有効濃度(EC50)及び最大効果(E最大(max))値を決定した。
【0076】
マリバビルは、ヒト肝細胞において様々な程度のCYP1A2及びCYP2B6 mRNA誘導を示した。mRNAの増加倍数は、濃度依存的ではなく、ドナー間で変動し、陽性対照のレベルの11%を超えなかった。従って、マリバビルは、臨床的に関連する濃度では、CYP1A2またはCYP2B6 mRNAの誘導薬ではない可能性がある。
【0077】
マリバビルは、36μMで、CYP3A4 mRNA誘導における14倍以上の増加及び陽性対照(リファンピシン)レベルの30%以上を示した。次に、3人のドナーにおける濃度反応曲線により、CYP3A4誘導のEC50値及びE最大値を、さらに決定した。
【0078】
マリバビルは、誘導E最大及びEC50特性の測定時に、CYP3A4 mRNAのドナー依存的誘導も示した(図3)。
【0079】
実施例2-過去のin vitro及びin vivoデータを使用したマリバビルの曝露の定量的予測
マリバビルの血漿中濃度-時間プロファイルを予測するために、及び健常対象におけるマリバビルの動態に対するCYP3A4阻害薬及び誘導薬の同時投与の可能な影響を評価するために、マリバビルの代謝及び動態に関する以前のin vitro及びin vivo情報に基づく生理学的薬物動態(PBPK)モデルを構築した。
【0080】
モデル開発
マリバビル400mgを単回投与した後に得られたin vitroデータ及び臨床薬物動態データの組み合わせを、PBPKモデルの開発に使用した。仮想集団全体(n=100)の平均濃度が、表示され、関連平均C最大(max)及びAUC(0-∞)値が、表2Aで比較される。加えて、予測平均マリバビルAUC値は、観測データの1.25倍以内であった。C最大は、わずかに予測値を下回り、C12時間の良好な予測のために、PBPKモデルを最適化したので、これを予想することができる。
【表1】
【0081】
マリバビル50~1600mgを単回用量を経口投与した後に、腎クリアランス0.051L/Hを得た。2つの試験(n=46人の個体、Ma et al.,2006)から報告された経口クリアランス値と組み合わされたin vitroヒト肝臓ミクロソーム及び組み換えCYPデータを使用して、マリバビルのクリアランスに対するCYP3A4の相対的寄与を割り当てた。評価された分布モデルは、完全なPBPKモデル及び最小限のPBPKモデルを含んでいた。これら双方が、肝臓及び腸の代謝を考慮する。[14C]ADME試験の質量バランスデータは、マリバビル400mgの用量を経口投与した後に、0.83以上の吸収率を示した。評価された吸収モデルは、単純な1次吸収モデルと、より機序的な「高度な溶解吸収及び代謝」(ADAM)モデルを含んでいた。マリバビルが、in vitroでP-gp基質であることが示されているが、目的の用量範囲(400mg~1600mg)にわたって比較的線形の薬物動態は、このPBPK試験で使用される、より単純な1次吸収モデルの選択を通知した。
【0082】
モデル検証
健常患者にマリバビル800mg及び1600mgを単回経口投与した後の、マリバビルの観察血漿中濃度及び予測血漿中濃度の比較である。仮想集団全体(n=100)の平均濃度が表示され、関連平均C最大値及びAUC(0-∞)値が、表3A及び4Aで比較される。シミュレーションマリバビル濃度及び観察マリバビル濃度は、かなり一致していた。加えて、予測平均マリバビルAUC値は、観測データの1.25倍以内であった。
【表2】

【表3】
【0083】
マリバビル400mgを1日2回経口投与した後のマリバビルの血漿中濃度の実測値及び予測値の比較を行った。仮想集団全体(n=150)の平均濃度が、表示され、関連平均C最大及びAUC(0-∞)値が、表5Aで比較されている。シミュレーションマリバビル濃度及び観察マリバビル濃度は、かなり一致していた。加えて、予測平均マリバビルAUC値は、観測データの1.25倍以内であった。
【表4】
【0084】
ケトコナゾール(CYP3A4阻害薬)の非存在下で投与された400mgを経口単回用量後の、及び健常対象にケトコナゾール400mgの単回投与した1時間後の、マリバビルの実測血漿中濃度及び予測血漿中濃度の比較を実施した。平均シミュレーション血漿中マリバビル濃度及び平均観測血漿中マリバビル濃度を比較し、ケトコナゾールの存在下及び非存在下での、マリバビルの関連する幾何平均C最大値及びAUC(0-∞)値が、表6Aに示され、観測データの1.25倍以内である。
【表5】
【0085】
リファンピシンの非存在下で、及びリファンピシンとの併用処置中に投与された複数回経口投与後のマリバビル400mgの観察血漿中濃度及び予測血漿中濃度の比較を実施した。対象は、1~3日目にマリバビル400mgを(1日2回、5回投与)、次に、4~12日目にリファンピシン600mg(1日1回)、続いて、13及び14日目にマリバビル400mg(1日2回)及びリファンピシン600mg(1日1回)の両方、15日目の朝にマリバビル及びリファンピシンの最終投与を行った。リファンピシンの存在下または非存在下でのマリバビルの関連する幾何平均C12時間値、C最大値、及びAUC(0-12時間)値が表7Aに示される。C最大及びAUCの予測値は、観測パラメータ値の1.25倍以内である。
【表6】
【0086】
モデル検証
リファンピシン600mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル800mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、リファンピシン600mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、800mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、20人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が、表8Aに示される。この相互作用の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)及びC12時間)が、表9Aのマリバビル400mg(1日2回)用量のPKパラメータと比較する。
【0087】
リファンピシン600mg(1日1回)の存在下でのマリバビル800mg(1日2回)のC最大は、マリバビル400mg(1日2回)単独と同等であったが、AUC(0-12)は、23%低く、C12時間は、75%低くなった。これは、マリバビルの用量を400mg(1日2回)から800mg(1日2回)に増加させると、マリバビルの治療上の曝露の低減に対するリファンピシンの影響を打ち消すことができないことを示す。
【表7】

【表8】
【0088】
リファンピシン600mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル1200mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、リファンピシン600mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、1200mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、20人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が表10Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較した、リファンピシン600mg(1日1回)の存在下でのマリバビル1200mg(1日2回)の予測PKパラメータが、表11Aに提示される。
【0089】
リファンピシン600mg(1日1回)の存在下でのマリバビル1200mg(1日2回)のAUCは、マリバビル400mg(1日2回)単独と同様であったが、C最大は、わずかに高かった。しかし、幾何平均C12時間は、86%低かった。これは、マリバビルの用量を400mg(1日2回)から1200mg(1日2回)に増加させても、(主にC12時間による)有効性の観点からリファンピシンの効果を打ち消すことはできないことを示す。マリバビルの用量を1600mg(1日2回)に増加させても、幾何平均C12時間に最小の影響しかなく、これは、マリバビルの用量を400mg(1日2回)に増加させる場合よりも81%低かった。
【表9】

【表10】
【0090】
フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル400mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、フェノバルビタール100mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、400mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、20人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)及びC12時間)が表12Aに示される。フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導により、AUC(0-12時間)、C最大、及びC12時間は、それぞれ、平均39%、27%、及び63%減少した。
【表11】
【0091】
フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル800mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、フェノバルビタール100mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、800mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団に対する予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が表13Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較した、フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下での、マリバビル800mg(1日2回)の予測PKパラメータは、表14Aに提示される。
【0092】
フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下での、マリバビル800mg(1日2回)のAUC及びC最大は、マリバビル800mg(1日2回)単独よりもわずかに低かった。しかし、C最小は、マリバビル800mg単独の場合、63%低かった。フェノバルビタールと併用したマリバビルの用量を400mg(1日2回)から800mg(1日2回)に増加させると、マリバビル400mg(1日2回)単独よりも15%低い平均C最小がもたらされる。従って、マリバビルの用量を800mg(1日2回)に増加させることにより、相互作用は、大幅に打ち消される。
【表12】

【表13】
【0093】
フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル1200mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、フェノバルビタール100mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、1200mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が、表15Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較した、フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下での、マリバビル1200mg(1日2回)の予測PKパラメータは、表16Aに提示される。
【0094】
フェノバルビタール100mg(1日1回)の存在下でのマリバビル1200mg(1日2回)のAUC及びC最大は、マリバビル400mg(1日2回)単独よりも約2倍高いが、C最小は、約28%高い。マリバビルの用量を400mg(1日2回)から1200mg(1日2回)に増加させると、フェノバルビタールの効果を打ち消し得る。(AUC及びC最大で見られるような)より高い曝露が処置に有害でない場合、フェノバリタールとの同時投与が必要とされる時に、マリバビルの用量を400mg(1日2回)から1200mg(1日2回)に調整すべきであると結論付けることができる。
【表14】

【表15】
【0095】
フェニトイン300mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル400mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、フェニトイン300mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、400mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が、表17Aに示される。
【0096】
フェノバルビタールによるCYP3A4の誘導により、AUC(0-12)の平均減少が42%、C最大の平均減少が31%、C12時間の平均減少が64%になった。
【表16】
【0097】
フェニトイン300mg(1日1回)の存在下及び非存在下で、マリバビル800mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、フェニトイン300mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、800mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が、表18Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較した、フェニトイン300mg(1日1回)の存在下でのマリバビル800mg(1日2回)の予測PKパラメータは、表19Aに提示される。
【0098】
フェニトイン300mg(1日1回)の存在下でのマリバビル800mg(1日2回)のAUC及びC最大は、マリバビル400mg(1日2回)単独よりもわずかに高かったが、C最小は、26%低かった。マリバビルの用量を400mg(1日2回)から800mg(1日2回)に増加させても、(主に、C最小による)有効性の観点からフェニトインの効果を打ち消すことができない。
【表17】

【表18】
【0099】
フェニトイン300mg(1日1回)の存在下及び非存在下での、マリバビル1200mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1~12日目で、フェニトイン300mg(1日1回)の非存在下及び存在下での、1200mg(1日2回)で、3日間の投与(5回投与)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団に対する予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-24時間)、及びC12時間)が表20Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較した、フェニトイン300mg(1日1回)の存在下での、マリバビル1200mg(1日2回)の予測PKパラメータが、表21Aに提示される。
【0100】
フェニトイン300mg(1日1回)の存在下でのマリバビル1200mg(1日2回)のAUC及びC最大は、マリバビル400mg(1日2回)単独よりも約2倍高かったが、C最小は、マリバビル400mg単独と同等であった。これは、マリバビルの用量を400mg(1日2回)から1200mg(1日2回)に増加させると、(主に、C最小による)有効性の観点からフェニトインの効果を打ち消し得ることを示唆する。より高い曝露(AUC及びC最大)の影響が評価されなければならないであろう。
【表19】

【表20】
【0101】
カルバマゼピンの存在下及び不在下での、マリバビル400mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1日1回のカルバマゼピン(1及び2日目に200mg、3日目~17日目に400mg)の非存在下及び存在下での、400mg(1日2回)で、3日の投与(5回投与、15日目から開始)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が、表22Aに示される。
【0102】
カルバマゼピンによるCYP3A4誘導のために、マリバビル400mg(1日2回)がカルバマゼピンと組み合わされる場合、マリバビルのC12時間(有効性マーカー)の平均減少46%、AUCの平均減少29%、C最大の平均減少23%と予測される。
【表21】
【0103】
カルバマゼピンの存在下及び非存在下での、マリバビル800mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1日1回のカルバマゼピン(1及び2日目に200mg、3日目~17日目に800mg)の非存在下及び存在下での、400mg(1日2回)で、3日の投与(5回投与、15日目から開始)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団の予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が、表23Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較された、カルバマゼピン存在下でのマリバビル800mg(1日2回)の予測PKパラメータが表24Aに提示される。
【0104】
カルバマゼピン400mg(1日1回)の存在下でのマリバビル800mg(1日2回)のAUC及びC最大は、マリバビル400mg(1日2回)単独よりもわずかに高かったが、C最小は、マリバビル400mg単独と同様であった。これは、マリバビルの用量を400mg(1日2回)から800mg(1日2回)に増加させると、(主に、C最小による)有効性の観点からカルバマゼピンの効果を打ち消し得ることを示唆する。
【表22】

【表23】
【0105】
カルバマゼピンの存在下及び不在下で、マリバビル1200mg(1日2回)の血漿中濃度-時間プロファイルのシミュレーション
1日1回のカルバマゼピン(1及び2日目に200mg、3日目~17日目に1200mg)の非存在下及び存在下での、400mg(1日2回)で、3日の投与(5回投与、15日目から開始)中のマリバビルの予測血漿中濃度-時間プロファイルを生成した。各シミュレーションでは、10人の対象(合計200人の仮想集団)の各治験の平均濃度-時間プロファイルを使用した。集団に対する予測PKパラメータ(C最大、AUC(0-12時間)、及びC12時間)が表25Aに示される。マリバビル400mg(1日2回)のPKパラメータと比較された、カルバマゼピン存在下でのマリバビル1200mg(1日2回)の予測PKパラメータが表26Aに提示される。
【0106】
カルバマゼピン400mg(1日1回)の存在下でのマリバビル1200mg(1日2回)のAUC及びC最大は、マリバビル400mg(1日2回)単独よりも有意に(約2倍)高かった。C最小は、マリバビル400mg単独よりも約50%高かった。これは、有効性の観点からカルバマゼピンの効果を打ち消すために、マリバビルの用量を400mg(1日2回)から800mg(1日2回)に増加させることは、マリバビルの用量を1200mg(1日2回)に増加させることよりも好ましいことがあることを示唆する。
【表24】

【表25】
【0107】
考察
リファンピシン(マリバビル800mg及び1200mg(1日2回))、フェノバルビタール(マリバビル400mg、800mg、及び1200mg(1日2回))、フェニトイン(マリバビル400mg、800mg、及び1200mg(1日2回))、ならびに、カルバマゼピン(マリバビル400mg、800mg、及び1200mg(1日2回))との相互作用の可能性のある結果を予測するためにモデルを予測的に使用すると、マリバビルに対し、それぞれ、0.54(0.56)、0.72(0.73)、0.68(0.69)、及び0.77(0.77)の幾何平均(算術平均)C最大比が示された。対応する予測幾何平均(算術平均)AUC0-12時間比は、それぞれ、0.35(0.37)、0.60(0.61)、0.57(0.58)、及び0.70(0.71)であった。対応する予測幾何平均(算術平均)C12時間比は、それぞれ、0.04(0.10)、0.31(0.37)、0.30(0.36)、及び0.53(0.54)であった。マリバビルのPBPKモデルには非線形性がなかったので、主体によるCYP3A4媒介性誘導の結果としての曝露量の変化は、マリバビルの投与量に依存しなかった。
【0108】
マリバビルの有効性は、薬物のトラフ濃度(C12時間)と相関している。マリバビル400mg(1日2回)の標準用量を、CYP3A4誘導薬、例えば、リファンピシン、フェノバルビタール、フェニトイン、及びカルバマゼピンと組み合わせた場合、C12時間の有意な低減が予測された。マリバビルの高用量(すなわち、800mg(1日2回)、1200mg(1日2回)、及び1600mg(1日2回))を用いるシミュレーションを実施して、C12時間の低減(従って、マリバビルの有効性の低減)が用量増加により克服することができるかどうかを判定した。リファンピシンによるCYP3A4誘導によるC12時間の低減は、マリバビルを最大1600mg(1日2回)の使用で修正することができない。フェノバルビタールと共にマリバビル800mg(1日2回)の用量を使用すると、マリバビル400mg(1日2回)単独よりも15%低下したC12時間がもたらされるが、1200mg(1日2回)で、C12時間において1.28倍の増加がもたらされた。フェニトインと共にマリバビル1200mg(1日2回)を投与は、また、CYP3A4誘導による、C12時間の低減を克服すると予測された。カルバマゼピンによるC12時間の低減を克服するために、マリバビルの用量の800または1200mg(1日2回)への増加を使用することができる。マリバビルは、CMV感染症/疾患の処置のための第2相試験において、最大1200mg(1日2回)の用量で制限毒性がない、許容可能な安全性/忍容性プロファイルを示した。1200mg(1日2回)のマリバビル投与に対し、予測平均AUC(0~12時間)及びC最大値は、それぞれ、292mg/L×時間及び43.4mg/Lである。上述のように、誘導薬の存在下で、マリバビルの用量を増加させた場合に見られる予測AUC(0-12時間)及びC最大値は、マリバビル単独1200mg(1日2回)で予測される曝露量を下回り、それ故、誘導薬の存在下で、マリバビルの用量を400mg~800mg、または1200mgに増加させても安全性上の懸念はない。全体的に、CYP3A4誘導薬は、マリバビルの全身曝露を大幅に低減させ、それ故、CYP3A4誘導薬との同時投与が必要とされる場合、マリバビルの用量の増加が必要とされる。カルバマゼピンまたはフェノバルビタールとの同時投与が必要とされる場合、マリバビルの用量の800または1200mg(1日2回)への増加が推奨される。フェニトインとの同時投与が必要とされる場合、マリバビルの用量を、1200mg(1日2回)(推奨)に増加させる。リファンピシンは、マリバビルの曝露量を大幅に低減させた。これは、マリバビルの用量を1600mg(1日2回)まで増加させても克服することができず、それ故、リファンピシンとの同時投与は、禁止されるべきか、または、CYP3A4誘導の可能性が低い代替抗菌療法が検討されるべきである。
【0109】
一般的注記:誘導薬の推奨用量は、同時投与による幾何平均推定値の偏りにより、算術平均比に基づいていた。しかし、阻害薬の推奨用量に幾何平均比が使用された。
【0110】
実施例3-マリバビルの他の薬物との同時投与
薬物相互作用試験は、例2及び他の入手可能なデータ(例えば、in vitro及び臨床データ)に基づいて要約された。各併用薬に関する考慮事項は、表1-Aに提示され、マリバビルの薬物動態への他の薬物の同時投与の効果が、表1-B及び1-Cにまとめられている。
【表26】

【表27】

【表28】
【0111】
本発明者らが、本発明の多数の実施形態について記載しているが、本発明者らの基本的な実施例が、本発明の化合物及び方法を利用する他の実施形態を提供するために変更され得ることが明らかである。それ故、本発明の範囲が、例として表されている特定の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲により定義されるものであることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】