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特表2024-538419ピラゾール型酸化防止剤を含むスズ又はスズ合金電気めっき用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(54)【発明の名称】ピラゾール型酸化防止剤を含むスズ又はスズ合金電気めっき用組成物
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/32 20060101AFI20241010BHJP
   C25D 3/60 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C25D3/32
C25D3/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530485
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022081571
(87)【国際公開番号】W WO2023088795
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】21209548.3
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フリシュート,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルゲス,ヤン ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】渡部 惣一
(72)【発明者】
【氏名】アルノルト,マルコ
【テーマコード(参考)】
4K023
【Fターム(参考)】
4K023AA17
4K023AB34
4K023BA29
4K023CA09
4K023CB11
4K023CB28
4K023DA02
4K023DA08
(57)【要約】
本発明は、スズイオン、任意に合金金属イオン、及び式X1a
【化1】
又は式X1b
【化2】
又は式X1c
【化3】
又は式X1d
【化4】
又は式X1e
【化5】
又は式X1a、X1b、X1c、X1d及びX1eの互変異性体のうちの少なくとも1種の酸化防止剤
(式中、RX1、RX1aは、独立して、
(a)H、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、ただし、酸化防止剤が式X1aのものである場合、RX1はC~C12アリール又はC~C15アルキルアリールではなく、
X2は、
(a)H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、式X1aにおいて少なくとも1つのRX2がOHであり、式X1aにおいてRX1がt-ブチルである場合、RX2 がC~C12アリール又は-CO-RX3ではなく、
X3はH又はC~Cアルキルであり、
nは基RX2の数である)
を含む水性組成物を提供し、
ここで、スズイオン、及び銀イオン、インジウムイオン及びビスマスイオンのうちの少なくとも1つ以外に、さらなる金属イオンが組成物中に存在しなく;
組成物が、式X1a~X1eの化合物以外に還元剤を含まない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ又はスズ合金を電着するための水性組成物であって、スズイオン、任意に銀、インジウム及びビスマスから選択される合金金属イオン、及び式X1a
【化1】
又は式X1b
【化2】
又は式X1c
【化3】
又は式X1d
【化4】
又は式X1e
【化5】
又は式X1a、X1b、X1c、X1d及びX1eの互変異性体のうちの少なくとも1種の酸化防止剤、を含み、
(式中、RX1、RX1aは、独立して、
(a)H、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、ただし、酸化防止剤が式X1bのものである場合、RX1はC~C12アリール又はC~C15アルキルアリールではなく、
X2は、
(a)H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、式X1aにおいて少なくとも1つのRX2がOHであり、式X1aにおいてRX1がt-ブチルである場合、RX2 がC~C12アリール又は-CO-RX3ではなく、
X3はH又はC~Cアルキルであり、
nは基RX2の数である)
スズイオン、及び銀イオン、インジウムイオン及びビスマスイオンのうちの少なくとも1つ以外に、さらなる金属イオンが組成物中に存在しなく;
前記組成物が、式X1a~X1eの化合物以外に還元剤を含まない、組成物。
【請求項2】
X1が、(a)H、及び(b)すべて非置換であるか、又は-CO-ORX3又は-SO-ORX3で置換されている、C~Cアルキル、フェニル、C~Cアルキルフェニルから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
X2が、H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、及びすべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、又は-SO-ORX3で置換されている、C~Cアルキル、フェニル、C~Cアルキルフェニルから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
X2が、非置換であるか、又はOHで置換されている、H、OH、-CO-RX3、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、t-ブチル、及びフェニル、好ましくはH、OH、メチル及びエチルから選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの酸化防止剤が式X1aの化合物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
X1が、C~Cアルキルから選択され、RX2 又はRX2 のいずれかがOHであり、他のRX2 、RX2 、及びRX2 がH、メチルエチル、プロピル又はブチル、又は-CO-RX3である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸化防止剤が、アンチピリン、5-ピラゾロン、1,3-ジメチル-1H-ピラゾール-5-オール、1-フェニルピラゾリジン-3,5-ジオン、2-tert-ブチル-4,5-ジメチル-ピラゾール-3-オール、1-(4-ヒドロキシ-1,5-ジメチル-ピラゾール-3-イル)-エタノン、1,5-ジメチル-3-フェニル-ピラゾール-4-オール、3-エチル-1,5-ジメチル-ピラゾール-4-オール、1-tert-ブチル-3-エチル-5-メチル-ピラゾール-4-オールから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
銀イオンを含む合金金属イオンを含み、好ましくは唯一の合金金属が銀イオンからなる、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物のpHが、4未満、好ましくは3未満、最も好ましくは2未満である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項10】
1種以上の界面活性剤、1種以上のレベラー、及び1種以上の結晶微細化剤から選択されるさらなる添加剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
スズ又はスズ合金含有層を堆積させるための浴における、式X1a、X1b、X1c、X1d、又はX1e、又は式X1a、X1b、X1c、X1d、及びX1eの互変異性体の酸化防止剤の使用方法であって、
【化6】
(式中、RX1、RX1aは、独立して、
(a)H、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、ただし、酸化防止剤が式X1aのものである場合、RX1はC~C12アリール又はC~C15アルキルアリールではなく、
X2は、
(a)H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、式X1aにおいて少なくとも1つのRX2がOHであり、式X1aにおいてRX1がt-ブチルである場合、RX2 がC~C12アリール又は-CO-RX3ではなく、
X3はH又はC~Cアルキルであり、
nは基RX2の数である)
前記スズ合金含有層が0.01~10質量%の量の合金金属を含み、
スズイオン、及び銀イオン、インジウムイオン及びビスマスイオンのうちの少なくとも1つ以外に、さらなる金属イオンが組成物中に存在しなく;
前記組成物が、式X1a~X1eの化合物以外に還元剤を含まない、使用方法。
【請求項12】
堆積したスズ合金層が0.1~5質量%の合金金属含有量を有する、請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
a)請求項1又は2に記載の組成物を含むスズ合金電気めっき浴を基板と接触させること、及び
b)前記基板上にスズ又はスズ合金層を堆積させるのに十分な時間で、前記基板に電流密度を印加すること
によって基板上にスズ又はスズ合金層を堆積させる方法。
【請求項14】
スズ合金が堆積され、堆積したスズ合金の合金金属含有量が0.01~10質量%である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、1~1000マイクロメートル、好ましくは1~200マイクロメートル、最も好ましくは3~100マイクロメートルの開口サイズを有する陥凹フィーチャを含み、堆積が、マイクロメートルサイズの陥凹フィーチャを少なくとも部分的に充填するように行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止剤を含むスズ又はスズ合金電気めっき組成物、その使用方法、及びスズ又はスズ合金電気めっきの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属及び金属合金は商業的に重要であり、特に電気接点、最終仕上げ及びはんだとして使用されることの多いエレクトロニクス産業において重要である。
【0003】
鉛を含まないはんだ、例えばスズ、スズ-銀、スズ-銅、スズ-ビスマス、スズ-銀-銅などは、はんだに使用される一般的な金属である。これらのはんだは、多くの場合、金属電気めっきのめっき浴によって半導体基板上に堆積される。
【0004】
典型的なスズめっき溶液は、溶解したスズイオン、水、浴に導電性を付与するのに十分な量のメタンスルホン酸などの酸電解質、酸化防止剤、及びめっきの均一性と表面粗さ及びボイド形成に関する金属堆積物の品質を向上させるための独自の添加剤を含む。このような添加剤には、通常、界面活性剤及び結晶微細化剤などが含まれる。
【0005】
鉛を含まないはんだめっきのある種の用途は、エレクトロニクス産業で課題となっている。例えば、銅ピラーのキャッピング層として使用される場合、比較的少量の鉛を含まないはんだ、例えばスズ又はスズ-銀はんだが銅ピラーの上に堆積される。
【0006】
スズは、2+の酸化状態でめっき組成物に使用される。溶解したSn2+からSn4+への酸化、及びSn4+の加水分解により、電気めっき中、特にめっき浴の保管中に不溶性のSnO2が形成されることがある。不溶性スズの生成は、貴重なスズ金属を浪費し、操業コストを増加させるだけでなく、めっき液中の過剰なスズ泥は、電気めっきプロセスに悪影響を及ぼす可能性がある。スズめっき液中の不溶性スズ酸化物の生成を低減するために、通常、酸化防止成分がめっき浴に添加される。
【0007】
US 4 871 429は、スズ又はスズ-鉛合金を電気めっきするための電解質を開示しており、この電解質は、可溶性二価スズ化合物、約3未満のpHを有する溶液を提供するのに十分な量の可溶性アルキル又はアルキロールスルホン酸、少なくとも1種の湿潤剤、及び四価スズ及び酸化スズスラッジの形成を低減又は防止するのに十分な量のヒドロキシフェニル化合物を含む。好ましいヒドロキシフェニル化合物としては、ピロカテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、フロログルシノール、ピロガロール、3-アミノフェノール、又はヒドロキノン硫酸エステルが挙げられる。
【0008】
WO2019/201753 A1は、スズ及びスズ合金電気めっき用の組成物を開示しており、この組成物は、1種以上の酸化防止剤、例えばヒドロキノン、及びヒドロキシル化及び/又はアルコキシル化芳香族化合物を含有することができ、この芳香族化合物は、当該芳香族化合物のスルホン酸誘導体を含み、好ましくは以下のものである:ヒドロキノン;メチルヒドロキノン;レゾルシノール;カテコール;1,2,3-トリヒドロキシベンゼン;1,2-ジヒドロキシベンゼン-4-スルホン酸;1,2-ジヒドロキシベンゼン-3,5-ジスルホン酸;1,4-ジヒドロキシベンゼン-2-スルホン酸;1,4-ジヒドロキシベンゼン-2,5-ジスルホン酸;2,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、及びp-メトキシフェノール。
【0009】
CN 107502927 Aは、フェノール、o-ジフェノール、m-ジフェノール、p-ジフェノール、及びカルボキシル基、アミノ基、ニトロ基及びスルホン基で置換された誘導体から選択される1種以上を主酸化防止剤、及び補助酸化防止剤として(2R,3S)-2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾピラン-3,5,7-トリオールを含むメタンスルホン酸スズ電気めっき浴を開示している。
【0010】
KR 10 1175062 B1は、2価のスズイオン、1価の銀イオン、導電性塩、銀イオン錯化剤、平滑剤、及び酸化防止剤を含む、鉛を含まないはんだスズ-銀めっき浴を開示している。酸化防止剤としては特に、カテコール、ヒドロキノン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及び2-フェニレンジアミンが挙げられる。
【0011】
CN102732918 Aは、スズイオン及びピラゾロンなどの酸化防止剤を含むスズ電気めっき浴を開示している。スズ浴は、金イオン及び光沢剤をさらに含む。
【0012】
JP2001262391 Aは、スズイオン及び1,3-ジメチルピラゾロンを含むスズ電気めっき浴を開示している。スズ浴は、銅イオン、銀イオン、及び添加剤、例えば界面活性剤をさらに含む。
【0013】
WO 2017/061443 A1は、スズ又はスズ合金でコーティングされた銅粉末を含有する導電性ペーストを調製するためのスズ又はスズ合金でコーティングされた銅粉末に関する。このようなスズでコーティングされた銅粉末を製造するために、スズイオン、及びリン酸化合物、水素化ホウ素化合物、ヒドラジン誘導体などの還元剤を含むスズ無電解浴が開示されている。ヒドラジン誘導体としては、3-メチル-5-ピラゾロンが例示されている。しかし、スズ(II)を無電解で元素状スズに還元できる還元剤は、電気めっきプロセスに悪影響を及ぼすので、避ける必要がある。
【0014】
US 2021/025070 A1は、エレクトロニクス産業における接点及びはんだとして使用するために、金属堆積物内に実質的にボイドを形成することなく、マイクロメートルの凹部を充填するためのスズ電気めっき浴及びその方法を開示している。
【0015】
優れた長期間の酸化防止効果及び安定性を有し、水性媒体中で良好又はさらに優れた溶解性を示し、毒性が低く、電気めっきプロセスを阻害しない酸化防止剤が依然として強く求められている。電気めっき組成物はまた、使用中にほとんど変色を示さないことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】US 4 871 429
【特許文献2】WO2019/201753 A1
【特許文献3】CN 107502927 A
【特許文献4】KR 10 1175062 B1
【特許文献5】CN102732918 A
【特許文献6】JP2001262391 A
【特許文献7】WO 2017/061443 A1
【特許文献8】US 2021/025070 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、優れた長期間の酸化防止効果及び安定性を有し、変色が少ないスズ又はスズ合金電気めっき酸化防止剤を提供することである。本発明の別の目的は、水性媒体中で良好又はさらに優れた溶解性を示す酸化防止剤を提供することである。本発明のさらに別の目的は、毒性の少ない酸化防止剤を提供することである。本発明のさらに別の目的は、電気めっきプロセスを妨げず、特に、スズ又はスズ合金の電気めっき浴を用いて、実質的に平坦なスズ又はスズ合金層を堆積させ、ボイドに限定されないが、ボイドのような欠陥を実質的に形成することなく、ミクロンスケールでフィーチャを充填することを可能にする酸化防止剤を提供するである。また、スズ又はスズ合金イオンをそれぞれの元素金属に無電解還元することによって、電気めっきプロセスを妨害してはならない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明は、スズイオン、任意に合金金属イオン、及び式X1a
【化1】
又は式X1b
【化2】
又は式X1c
【化3】
又は式X1d
【化4】
又は式X1e
【化5】
又は式X1a、X1b、X1c、X1d及びX1eの互変異性体のうちの少なくとも1種の酸化防止剤
(式中、RX1、RX1aは、独立して、
(a)H、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、ただし、酸化防止剤が式X1bのものである場合、RX1はC~C12アリール又はC~C15アルキルアリールではなく、
X2は、
(a)H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、及び
(b)すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキル、
から選択され、式X1aにおいて少なくとも1つのRX2がOHであり、式X1aにおいてRX1がt-ブチルである場合、RX2 がC~C12アリール又は-CO-RX3ではなく、
X3はH又はC~Cアルキルであり、
nは基RX2の数である)
を含む水性組成物を提供する。
【0019】
本発明のさらなる実施形態は、スズ又はスズ合金含有層を堆積するための浴における、本明細書に記載の酸化防止剤の使用方法であり、ここで、スズ合金含有層が、0.01~10質量%の量の合金金属を含む。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、
a)本明細書に記載の組成物を含むスズ合金電気めっき浴を基板と接触させること、及び
b)基板上にスズ合金層を堆積させるのに十分な時間で、基板に電流密度を印加すること
によって基板上にスズ又はスズ合金層を堆積させる方法である。
【0021】
本発明による酸化防止剤は、接合技術、例えばバンプ形成プロセスにおいて、典型的には1~200、好ましくは3~100、最も好ましくは5~50マイクロメートルの高さ及び幅のスズ又はスズ合金バンプの製造(これら限定されない)、回路基板技術又は電子回路のパッケージングプロセスにおいて有利に使用することができる。1つの特定の実施形態において、基板はマイクロメートルサイズのフィーチャを有し、堆積を行ってこのマイクロメートルサイズのフィーチャを充填し、ここで、マイクロメートルサイズのフィーチャが1~200マイクロメートル、好ましくは3~100マイクロメートルのサイズを有する。
【0022】
本発明によるめっき組成物に使用される酸化防止剤は、カテコールのような通常使用される酸化防止剤と比較して毒性が低い。この酸化防止剤は、優れた長期間の酸化防止効果及び安定性を有し、変色も少ない。この酸化防止剤は、水性媒体中で、従来の酸化防止剤と比較して、良好な溶解性又はさらに優れた溶解性を示す。さらに、この酸化防止剤は、電気めっきプロセスを妨げず、特に、スズ又はスズ合金の電気めっき浴を用いて、実質的に平坦なスズ又はスズ合金層を堆積させ、ボイドに限定されないが、ボイドのような欠陥を実質的に形成することなく、ミクロンスケールでフィーチャを充填することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
酸化防止剤
本発明によるスズ又はスズ合金電気めっき組成物は、式X1a~X1eによる酸化防止剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
【化6】
【0025】
一実施形態において、RX1及びRX1aはHであってもよい。別の実施形態において、RX1及びRX1aは、すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルから選択されてもよい。酸化防止剤が式X1bのものである場合、RX1はC~C15アルキルアリール又はC~C15アリールアルキルではないことに注意する必要があり、それはそうでないと酸化防止剤として適切に機能しないからである。好ましくは、RX1は、(a)H、及び(b)すべて非置換であるか、又は-CO-ORX3又は-SO-ORX3で置換されている、C~Cアルキル、フェニル、C~Cアルキルフェニルから選択される。より好ましくは、RX1は、メチル、エチル、又はブチル、特にt-ブチルから選択される。
【0026】
一実施形態において、RX2は、H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、及び-SO-ORX3から選択されてもよい。別の実施形態において、RX2は、すべて非置換であるか、又はOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、-SO-ORX3、CN、ハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルから選択されてもよい。式X1aにおいて、少なくとも1つのRX2がOHでなければならない。式X1aにおいて、RX1がt-ブチルである場合、RX2 がC~C12アリール又は-CO-RX3でなければならなく、それは、そうでないと酸化防止剤として適切に機能しないからである。複数の置換基RX2が存在する場合、それぞれのRX2は、独立して選択することができる。好ましくは、RX2は、H、OH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、及び-SO-ORX3;及びOH、ORX3、-CO-RX3、-CO-ORX3、又は-SO-ORX3で置換されている、C~Cアルキル、フェニル、C~Cアルキルフェニルから選択される。より好ましくは、RX2は、H、OH、-CO-RX3、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、t-ブチル、及びフェニル、好ましくはH、OH、メチル及びエチルから選択されてもよく、これらは非置換であってもOHで置換されていてもよい。
【0027】
一般的には、RX3は、H又はC~Cアルキル、好ましくはH又はC~Cアルキル、より好ましくはH又はC~Cアルキル、最も好ましくはH、メチル又はエチルであってもよい。
【0028】
nは、基RX2の数であり、式X1a及びX1bにおいて3であり、式X1cにおいて2である。式X1bでは、1位に2個の置換基RX2が存在することに留意すべきである。
【0029】
本明細書で使用される「アルキル」及び「アルカンジイル」は、それぞれ直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又はアルカンジイル基を意味する。本明細書で使用される「芳香族」又は「アリール」は、単環式又は二環式の、炭素環式芳香族基を意味する。本明細書で使用される「アルケニル」及び「アルケンジイル」は、それぞれ直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基又はアルケンジイル基を意味する。本明細書で使用される「アリールアルキル」とは、1個以上のアリール基、特に1個以上のフェニル基、最も特に1個のフェニル基で置換されているアルキル基を意味する。本明細書で使用される「アルキルアリール」とは、1個以上のC~Cアルキル基、特に1個以上のC~Cアルキル基、より特に1個以上のメチル基、エチル基又はプロピル基、最も特に1個又は2個のメチル基又はエチル基で置換されているアリール基を意味する。
【0030】
式X1a、X1b、X1c及びX1dのラクタム化合物の一部は、例えば以下のように、互変異性ラクチム形態と平衡状態にあることに注意する必要がある。
【0031】
【化7】
【0032】
本出願ではラクタム形態のみに言及している場合も、それらの互変異性ラクタム形態も包含されるものとする。
【0033】
置換基RX2 の位置は以下のように番号付けされている。
【0034】
【化8】
【0035】
好ましい実施形態において、酸化防止剤は式X1aのものであり、式中、RX1は、C~Cアルキルから選択され、RX2 又はRX2 のいずれかはOHであり、他のRX2 、RX2 、及びRX2 はH、メチルエチル、プロピル又はブチル、又は-CO-RX3である。
【0036】
好ましい式X1aの酸化防止剤は以下のものである。
【0037】
【表1】
【0038】
特に好ましい式X1aの酸化防止剤は以下のものである。
【0039】
【化9】
【0040】
別の好ましい実施形態において、酸化防止剤は式X1bのものであり、ここで、RX1は、H及びC~Cアルキルから選択され;第1のRX2 はHであり、第2のRX2 は、H、C~Cアルキル、-SOH、COOH及びCOCHから選択され;そしてRX2 は、H及びC~Cアルキルから選択される。
【0041】
好ましい式X1bの酸化防止剤は以下のものである。
【0042】
【表2】
【0043】
特に好ましい式X1bの酸化防止剤は以下のものである。
【0044】
【化10】
【0045】
別の好ましい実施形態において、酸化防止剤は式X1cのものであり、式中、RX1は、H、C~Cアルキル及びフェニルから選択され;RX1aは、H及びC~Cアルキルから選択され;第1のRX2 はHであり、第2のRX2 は、H、C~Cアルキル、-SOH、COOH及びCOCHから選択され;そしてRX2 は、H及びC~Cアルキルから選択される。
【0046】
好ましい式X1cの酸化防止剤は以下のものである。
【0047】
【表3】
【0048】
特に好ましい式X1cの酸化防止剤は以下のものである。
【0049】
【化11】
【0050】
別の好ましい実施形態において、酸化防止剤は式X1dのものであり、式中、RX1は、H及びC~Cアルキルから選択され;そしてRX2は、H、C~Cアルキル、-SOH、COOH及びCOCHから選択される。
【0051】
好ましい式X1dの酸化防止剤は以下のものである。
【0052】
【表4】
【0053】
別の好ましい実施形態において、酸化防止剤は式X1eのものであり、式中、RX1は、H、C~Cアルキル及びフェニルから選択され;RX1aは、H及びC~Cアルキルから選択され;第1のRX2 はHであり、第2のRX2 は、H及びC~Cアルキルから選択され;第1のRX2 はHであり、第2のRX2 は第1のRX2 はHであり、第2のRX2 は、H、C~Cアルキル、-SOH、COOH及びCOCHから選択され;そしてRX2 は、H及びC~Cアルキルから選択される。
【0054】
好ましい式X1eの酸化防止剤は以下のものである。
【0055】
【表5】
【0056】
特に好ましい式X1eの酸化防止剤は以下のものである。
【0057】
【化12】
【0058】
2種以上の酸化防止剤を使用してもよいが、電気めっき組成物には1種の酸化防止剤のみを使用することが好ましいことは、当業者には理解されよう。
【0059】
めっきされたスズ又はスズ合金バンプに所望の表面仕上げを施すために、浴中には通常、多種多様な他の添加剤を使用することができる。通常、2種以上の添加剤が使用され、各添加剤が所望の機能を形成する。有利には、電気めっき浴は、レベリング剤、界面活性剤、結晶微細化剤、合金堆積の場合は錯化剤、酸化防止剤、及びそれらの混合物の1つ以上を含有することができる。最も好ましくは、電気めっき浴は、本発明によるレベリング剤に加えて、界面活性剤及び任意に結晶微細化剤を含む。他の添加剤も本発明の電気めっき浴に好適に使用することができる。
【0060】
レベリング剤
電気めっき組成物は、レベリング剤をさらに含んでもよい。2種以上のレベリング剤を使用してもよいが、1種のレベリング剤のみを使用することが好ましいことは、当業者には理解されるであろう。
【0061】
好適なレベリング剤としては、ポリアミノアミド及びその誘導体、ポリアルカノールアミン及びその誘導体、ポリエチレンイミン及びその誘導体、四級化ポリエチレンイミン、ポリグリシン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン、ポリウレア、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-コ-ホルムアルデヒド)、アミンとエピクロルヒドリンとの反応生成物、アミンとエピクロルヒドリンとポリアルキレンオキシドとの反応生成物、アミンとポリエポキシドとの反応生成物、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、又はそれらのコポリマー、ニグロシン、ペンタメチル-パラ-ロサニリンヒドロハライド、ヘキサメチル-パラロサニリンヒドロハライド、又は式N-R-S(式中、Rは、置換されたアルキル、非置換アルキル、置換されたアリール又は非置換アリールである)の官能基を含有する化合物が挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、アルキル基はC~Cアルキル、好ましくはC~Cアルキルである。一般的には、アリール基は、C~C20アリール、好ましくはC~C12アリールを含む。このようなアリール基は、硫黄、窒素、酸素などのヘテロ原子をさらに含んでもよい。アリール基がフェニル又はナフチルであることが好ましい。式N-R-Sの官能基を含有する化合物は一般に知られており、一般に市販されており、さらに精製することなく使用することができる。
【0062】
このようなN-R-S官能基を含有する化合物において、硫黄(「S」)及び/又は窒素(「N」)は、単結合又は二重結合でこのような化合物に結合してもよい。硫黄が単結合でこのような化合物に結合している場合、硫黄は、水素、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C20アリール、C~C12アルキルチオ、C~C12アルケニルチオ、C~C20アリールチオなど(これらに限定されない)の別の置換基を有する。同様に、窒素は、1つ以上の置換基、例えば水素、C~C12アルキル、C~C12アルケニル、C~C10アリールなど(これらに限定されない)を有する。N-R-S官能基は、非環式又は環式であってもよい。環式N-R-S官能基を含有する化合物には、環システム内に窒素又は硫黄のいずれか一方、又は窒素及び硫黄の両方を有するものが含まれる。
【0063】
さらなるレベリング剤は、WO 2010/069810などに記載されているようなトリアルカノールアミン縮合物である。
【0064】
好ましい実施形態において、式L1aのフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物をレベリング剤として使用することができる:
【0065】
【化13】
【0066】
(式中、RL1は、各基RL1 において独立して、-F、直鎖又は分岐状のC又はCフッ素化C~Cアルキルから選択され;
L2は、すべてCN、OH、C~Cアルコキシ、又はハロゲン、特にFで置換されている、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~C12アリール、C~C15アルキルアリール、C~C15アリールアルキルであり;
L3は、H、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルコキシ、又はハロゲン、Cl、CN、及びOH、好ましくはRL1又はHから選択され;
L1は、
(a)以下のもの、
(i)C~Cアルカンジイル、
(ii)C~Cアルケンジイル、
から選択される2価の基であるか、又は
(b)隣接するC=C二重結合と一緒に、C~C12芳香族環システムを形成し;
nは、基RL1の数であり、1、2又は3、好ましくは1又は2から選択され、最も好ましくは1である)。
【0067】
本明細書で使用すされる「C又はC位でフッ素化」とは、アルキル基のC又はC位で少なくとも1つ、好ましくは2つのF置換があることを意味する。
【0068】
好ましくは、RL1は、-F、-CRL3 F、-CRL3F、-CF、-CFRL3-CRL3 、-CF-CRL3 、-CF-CFRL3 、-CF-CF2RL3、及びCF-CFから選択されてよく、ここで、RL3は、H及びC~Cアルキルから選択される。特に好ましい基RL1は、-F、又は過フッ素化C~Cアルキル、特に-CFであってもよい。2つ以上のRL1が存在する場合、異なる基RL1は、それぞれの具体的な置換基RL1 、すなわちRL1 、RL1 、及びRL1 に使用することができる。
【0069】
式L1aのさらなる特定のフッ素化α,β-不飽和カルボニル化合物は、参照により本明細書に組み込まれている、未公開の欧州特許出願番号に記載されている。
【0070】
一般に、電気めっき浴中のレベリング剤の総量は、めっき浴の総質量に基づいて0.5ppm~10000ppmである。本発明によるレベリング剤は典型的に、めっき浴の総質量に基づいて約100ppm~約10000ppmの総量で使用されるが、より多い量又はより少ない量を使用してもよい。
【0071】
界面活性剤
本発明の組成物には、1種以上の非イオン性界面活性剤を使用することができる。典型的には、非イオン性界面活性剤は、200~100,000、好ましくは500~50,000、より好ましくは500~25,000、さらにより好ましくは750~15,000の平均分子量を有する。このような非イオン性界面活性剤は、典型的には、組成物の質量に基づいて、1~10,000ppm、好ましくは5~10,000ppmの濃度で電解質組成物中に存在する。好ましいアルキレンオキシド化合物としては、ポリアルキレングリコール、例えば、少なくとも1つのヒドロキシ基及び20個以下の炭素原子を有する有機化合物のアルキレンオキシド付加生成物、及び低分子量ポリアミン化合物への異なるアルキレンオキシドの付加に由来する四官能性ポリエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
好ましいポリアルキレングリコールは、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。このようなポリアルキレングリコールは、一般に様々な供給源から市販されており、さらに精製することなく使用することができる。1つ以上の末端水素がヒドロカルビル基に置換された場合のキャップされたポリアルキレングリコールも好適に使用できる。好適なポリアルキレングリコールの例は、式R-O-(CXYCX’Y’O)R’のものであり、ここで、R及びR’は独立して、H、C~C20アルキル基及びC~C20アリール基から選択され;X、Y、X’及びY’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、例えばメチル、エチル又はプロピル、アリール、例えばフェニル、又はアラルキル、例えばベンジルから選択され;そしてnは5~100,000の整数である。典型的には、X、Y、X’及びY’の1つ以上は水素である。
【0073】
好適なEO/POコポリマーは、一般に10:90~90:10、好ましくは10:90~80:20のEO:POの質量比を有する。このようなEO/POコポリマーは、好ましくは750~15,000の平均分子量を有する。このようなEO/POコポリマーは、種々の供給源から入手可能であり、例えば、BASF社から「PLURONIC」(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0074】
少なくとも1つのヒドロキシ基及び20個以下の炭素原子を有する有機化合物の好適なアルキレンオキシド縮合生成物としては、1~7個の炭素原子の脂肪族炭化水素を有するもの、非置換の芳香族化合物、又はアルキル部分に6個以下の炭素を有するアルキル化芳香族化合物、例えばUS 5 174 887に開示されているものが挙げられる。脂肪族アルコールは飽和でも不飽和でもよい。好適な芳香族化合物は、2個以下の芳香環を有するものである。芳香族アルコールは、エチレンオキシドで誘導される前は20個以下の炭素原子を有する。このような脂肪族アルコール及び芳香族アルコールは、硫酸基又はスルホン酸基などでさらに置換されてもよい。
【0075】
結晶微細化剤
スズ又はスズ合金電気めっき浴は、本発明によるレベラーとは異なる結晶微細化剤をさらに含有してもよい。結晶微細化剤は、式G1又はG2の化合物から選択することができる、
【化14】
(式中、それぞれのRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、ヒドロキシ、又はハロゲンであり;R及びRは、独立して、H及びC~Cアルキルから選択され;Rは、H、OH、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシであり;mは0~2の整数であり;それぞれのRは、独立してC~Cアルキルであり;それぞれのRは、独立して、H、OH、C~Cアルキル、又はC~Cアルコキシから選択され;nは1又は2であり;そしてpは0、1又は2である)。
【0076】
好ましくは、それぞれのRは、独立して、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はヒドロキシであり、より好ましくは、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、又はヒドロキシである。R及びRは、独立して、好ましくはH及びC~Cアルキル、より好ましくはH及びメチルから選択される。好ましくは、Rは、H、OH、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、より好ましくはH、OH又はC~Cアルキルである。Rは、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキルである。それぞれのRは、好ましくはH、OH、又はC~Cアルキル、より好ましくはH、OH、又はC~Cアルキル、さらにより好ましくはH又はOHから選択される。mは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは、mは0である。好ましくは、nは1である。pは、好ましくは0又は1であり、より好ましくは、pは0である。第1結晶微細化剤の混合物、例えば式1の2つの異なる結晶微細化剤、式2の2つの異なる結晶微細化剤、又は式1の結晶微細化剤と式2の結晶微細化剤との混合物を使用してもよい。
【0077】
このような結晶微細化剤として有用な例示的化合物としては、桂皮酸、シンナムアルデヒド、ベンジリデンアセトン、ピコリン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジンカルボキシアルデヒド、ピリジンジカルボキシアルデヒド、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい結晶微細化剤には、ベンザルアセトン、4-メトキシベンズアルデヒド、ベンジルピリジン-3-カルボキシレート、及び1,10-フェナントロリンが含まれる。
【0078】
さらなる結晶微細化剤は、α,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物から選択することができる。好適なα,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物としては、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸エステル、α,β-不飽和アミド、及びα,β-不飽和アルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、そのような結晶微細化剤は、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸エステル、及びα,β-不飽和アルデヒド、より好ましくは、α,β-不飽和カルボン酸、及びα,β-不飽和アルデヒドから選択される。例示的なα,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、C~Cアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、C~Cアルキルクロトネート、クロトンアミド、クロトンアルデヒド、(メタ)アクロレイン、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいα,β-不飽和脂肪族カルボニル化合物は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、クロトンアルデヒド、(メタ)アクリルアルデヒド又はそれらの混合物である。
【0079】
結晶微細化剤は、本発明のめっき浴中に0.0001~0.045g/lの量で存在することができる。好ましくは、結晶微細化剤は0.0001~0.04g/lの量、より好ましくは0.0001~0.035g/lの量、さらにより好ましくは0.0001~0.03g/lの量で存在する。第1結晶微細化剤として有用な化合物は、一般に様々な供給源から市販されており、そのまま使用してもよいし、さらに精製してもよい。
【0080】
本発明の組成物は、任意に、さらなる添加剤、例えば酸化防止剤、有機溶媒、錯化剤、及びそれらの混合物を含むことができる。本発明のめっき浴には、さらなるレベラーを使用することができるが、めっき浴が本発明によるレベラーのみを含むことが好ましい。
【0081】
さらなる酸化防止剤
スズを可溶性の2価の状態に保つのを補助するために、本発明の組成物には任意にさらなる酸化防止剤を添加することができる。しかしながら、上記の酸化防止剤以外の酸化防止剤は使用しないことが好ましい。したがって、好ましい実施形態において、電気めっき組成物は、式X1a~X1eのもの以外に、いかなる酸化防止剤又は還元剤も含まない。使用される場合、例示的なさらなる酸化防止剤としては、ヒドロキノン、及びヒドロキシル化及び/又はアルコキシル化芳香族化合物(このような芳香族化合物のスルホン酸誘導体を含む)が挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは以下のものが挙げられる:ヒドロキノン;メチルヒドロキノン;レゾルシノール;カテコール;1,2,3-トリヒドロキシベンゼン;1,2-ジヒドロキシベンゼン-4-スルホン酸;1,2-ジヒドロキシベンゼン-3,5-ジスルホン酸;1,4-ジヒドロキシベンゼン-2-スルホン酸;1,4-ジヒドロキシベンゼン-2,5-ジスルホン酸;2,4-ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、及びp-メトキシフェノール。このような酸化防止剤はUS 4 871 429に開示されている。他の好適な酸化防止剤としては、バナジウム化合物、例えばバナジルアセチルアセトナート、バナジウムトリアセチルアセトナート、バナジウムハライド、バナジウムオキシハライド、バナジウムアルコキシド、及びバナジルアルコキシドが挙げられるが、これらに限定されない。このような還元剤の濃度は当業者には周知であるが、典型的には0.1~10g/l、好ましくは1~5g/lの範囲である。このような酸化防止剤は、一般に様々な供給源から市販されている。所定の酸化防止剤を純スズ電気めっき組成物に使用することが特に好ましい。
【0082】
錯化剤
スズ又はスズ合金電気めっき浴は、組成物中に存在するスズ及び/又は他の金属を錯体化するための錯化剤をさらに含有することができる。典型的な錯化剤は、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオールである。さらなる有用な錯化剤は、WO 2019/185 468及び未公開国際特許出願第PCT/EP2020/075 080号に記載されている。
【0083】
典型的な錯化剤は、ポリオキシモノカルボン酸、ポリカルボン酸、アミノカルボン酸、ラクトン化合物、及びそれらの塩である。
【0084】
他の錯化剤は、US 7628903、JP 4296358 B2、EP 0854206 A及びUS 8980077 B2に開示されている、チオウレア、チオール又はチオエーテルのような有機チオ化合物である。
【0085】
電解質
組成物は、スズ、及び任意に合金金属イオンを含む。
【0086】
一般的には、本明細書で使用される「水性」とは、本発明の電気めっき組成物が、少なくとも50%の水を含む溶媒を含むことを意味する。好ましくは、「水性」とは、組成物の大部分が水であり、より好ましくは、溶媒の90%が水であり、最も好ましくは、溶媒が本質的に水からなることを意味する。あらゆる種類の水、例えば蒸留水、脱イオン水又は水道水を使用することができる。
【0087】
スズ
スズイオン源は、十分な量の電気めっき浴中に堆積させる金属イオンを放出することができる化合物、すなわち電気めっき浴に少なくとも部分的に可溶性である化合物であり得る。金属イオン源はめっき浴に可溶性であることが好ましい。好適な金属イオン源は、金属塩であり、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物、金属酢酸塩、金属硝酸塩、金属フルオロホウ酸塩、金属アルキルスルホン酸塩、金属アリールスルホン酸塩、金属スルファミン酸塩、金属グルコン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
金属イオン源は、基材への電気めっきに十分な金属イオンを提供する任意の量で本発明に使用することができる。金属がスズのみである場合、スズ塩は典型的に、めっき液の約1~約300g/lの範囲の量で存在する。一実施形態において、スズ以外のさらなる金属は存在しない。
【0089】
合金金属
任意に、本発明によるめっき浴は、1種以上の合金金属イオンを含有することができる。好適な合金金属としては、銀、金、銅、ビスマス、インジウム、亜鉛、アンチモン、マンガン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい合金金属は、銀、銅、ビスマス、インジウム、及びそれらの混合物であり、より好ましくは銀、ビスマス、及びインジウムであり、最も好ましくは銀である。本発明の組成物は鉛を含まないことが好ましい。一実施形態において、スズ、及び銀とインジウムとビスマスのうちの少なくとも1つ以外にさらなる金属は存在せず、好ましくは、組成物中に存在する金属は、スズ、及び銀とインジウムとビスマスのうちの少なくとも1つのみである。最も好ましくは、合金金属は銀イオンからなり、すなわち組成物中に存在する金属はスズ及び銀のみである。
【0090】
合金化金属イオンの源として、合金化金属の任意の浴への可溶性の塩を好適に使用することができる。このような合金金属塩の例としては、金属酸化物;金属ハロゲン化物;金属フルオロホウ酸塩;金属硫酸塩;金属アルカンスルホン酸塩、例えば金属メタンスルホン酸塩、金属エタンスルホン酸塩及び金属プロパンスルホン酸塩;金属アリールスルホン酸塩、例えば金属フェニルスルホン酸塩、金属トルエンスルホン酸塩、及び金属フェノールスルホン酸塩;金属カルボン酸塩、例えば金属グルコン酸塩、及び金属酢酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい合金金属塩は、金属硫酸塩;金属アルカンスルホン酸塩;及び金属アリールスルホン酸塩である。本発明の組成物に1種の合金金属を添加する場合、2元合金堆積物が得られる。本発明組成物に2種、3種又はそれ以上の異なる合金金属を添加する場合、3元、4元又は高次の合金堆積物が得られる。本発明の組成物に使用されるそのような合金金属の量は、所望される特定のスズ合金に依存する。そのような量の合金金属の選択は、当業者の能力の範囲内である。銀のような特定の合金金属を使用する場合、追加の錯化剤が必要となる場合があることは、当業者には理解されよう。このような錯化剤(又は錯化物質)は当業者によく知られており、任意の好適な量で使用することができる。
【0091】
本発明の電気めっき組成物は、純スズ層又はスズ合金層であり得るスズ含有層を堆積させるのに適している。例示的なスズ合金層としては、限定されていないが、スズ-銀、スズ-銅、スズ-インジウム、スズ-ビスマス、スズ-銀-銅、スズ-銀-銅-アンチモン、スズ-銀-銅-マンガン、スズ-銀-ビスマス、スズ-銀-インジウム、スズ-銀-亜鉛-銅、及びスズ-銀-インジウム-ビスマスが挙げられる。好ましくは、本発明の電気めっき組成物は、純スズ、スズ-銀、スズ-銀-銅、スズ-銀-ビスマス、スズ-銀-インジウム、及びスズ-銀-インジウム-ビスマス、より好ましくは純スズ、スズ-銀、又はスズ-銅を堆積させる。
【0092】
本発明の電気めっき浴から堆積した合金は、原子吸着分光法(AAS)、蛍光X線(XRF)、誘導結合プラズマ(ICP)又は示差走査熱量測定法(DSC)のいずれかによって測定されるように、合金の質量に基づいて、0.01~99.99質量%の範囲の量のスズ、及び99.99~0.01質量%の範囲の量の1種以上の合金金属を含有する。好ましくは、本発明を用いて堆積されたスズ-銀合金は、90~99.99質量%のスズ、及び0.01~10質量%の銀及びその他の合金金属を含有する。より好ましくは、スズ-銀合金堆積物は、95~99.9質量%のスズ、及び0.1~5質量%の銀およびその他の合金金属を含有する。スズ-銀合金は、好ましいスズ合金堆積物であり、好ましくは90~99.99質量%のスズ、及び10~0.1質量%の銀を含有する。より好ましくは、スズ-銀合金堆積物は95~99.9質量%のスズ、及び5~0.1質量%の銀を含有する。くの用途では、合金の共晶組成を使用することができる。本発明に従って堆積された合金は、実質的に鉛を含まない、すなわち、を1質量%、より好ましくは0.5質量%未満、さらにより好ましくは0.2質量%未満の鉛を含有し、またさらに好ましくは鉛を含まない。
【0093】

一般的には、本発明による金属イオン源及び少なくとも1種のレベリング剤に加えて、本発明の金属電気めっき組成物は、好ましくは電解質、すなわち酸性又はアルカリ性電解質、1種以上の金属イオン源、任意にハロゲン化物イオン、及び任意に界面活性剤及び結晶微細化剤のような他の添加剤を含む。このような浴は典型的には水性である。水は幅広い量で存在してもよい。あらゆる種類の水、例えば蒸留水、脱イオン水又は水道水を使用してもよい。
【0094】
好ましくは、本発明のめっき浴は酸性であり、すなわち7未満のpHを有する。典型的には、スズ又はスズ合金電気めっき組成物のpHは4未満、好ましくは3未満、最も好ましくは2未満である。
【0095】
本発明の電気めっき浴は、成分を任意の順序で組み合わせることにより調製することができる。金属塩、水、電解質及び任意のハロゲン化物イオン源のような無機成分を最初に浴容器に添加し、次いで界面活性剤、結晶微細化剤、レベラーなどのような有機成分を添加することが好ましい。
【0096】
典型的には、本発明のめっき浴は、10~65℃又はそれ以上の任意の温度で使用することができる。めっき浴の温度は、10℃~35℃であることが好ましく、より好ましくは15℃~30℃である。
【0097】
好適な電解質としては、硫酸、酢酸、フルオロホウ酸、アルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸、アリールスルホン酸、例えばフェニルスルホン酸及びトルエンスルホン酸、スルファミン酸、塩酸、リン酸、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、好ましくはテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。酸は、典型的に、約1~約300g/lの範囲の量で存在する。
【0098】
一実施形態において、少なくとも1つの添加剤は、塩化物、硫酸塩又は酢酸塩から選択される対イオンYo-を含む。oは正の整数である。
【0099】
このような電解質は任意に、塩化スズ又は塩酸のような塩化物イオンのようなハロゲン化物イオン源を含有することができる。本発明では、幅広い範囲のハロゲン化物イオン濃度、例えば約0~約500ppmを使用することができる。典型的には、ハロゲン化物イオン濃度は、めっき浴に基づいて約10~約100ppmの範囲である。電解質は、硫酸又はメタンスルホン酸であることが好ましく、硫酸又はメタンスルホン酸と塩化物イオン源との混合物であることがより好ましい。本発明で有用な酸及びハロゲン化物イオン源は、一般に市販されており、さらに精製することなく使用することができる。
【0100】
応用
本発明のめっき組成物は、スズ含有層が所望される種々のめっき方法において有用であり、特に、複数の導電性接合フィーチャを含む半導体ウェハー上にスズ含有はんだ層を堆積させるのに有用である。めっき方法としては、水平又は垂直ウェハーめっき、バレルめっき、ラックめっき、高速めっき、例えばリールツーリールめっき及びジェットめっき、ラックレスめっきが挙げられるが、これらに限定されなく、好ましくは水平又は垂直ウェハーめっきである。多種多様な基板を、本発明によるスズ含有堆積でめっきすることができる。めっきされる基板は、導電性であり、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ニッケル-鉄含有材料を含んでもよい。このような基板は、電子部品、例えば(a)リードフレーム、コネクター、チップコンデンサー、チップ抵抗器、及び半導体パッケージ、(b)プラスチック、例えば回路基板、及び(c)半導体ウェハーの形態であってもよい。好ましくは、基板は半導体ウェハーである。したがって、本発明はまた、以下の工程:複数の導電性接合フィーチャを含む半導体ウェハーを提供する工程と;半導体ウェハーを上述の組成物と接触させる工程と;十分な電流密度を印加して導電性接合フィーチャにスズ含有層を堆積させる工程とを含む、半導体ウェハーにスズ含有層を堆積させる方法を提供する。好ましくは、接合フィーチャは、銅を含み、純銅層、銅合金層、又は銅を含む任意の相互接続構造の形態であってもよい。銅ピラーは、1つの好ましい導電性接合フィーチャである。任意に、銅ピラーは、ニッケル層などのトップ金属層を含んでもよい。導電性接合フィーチャがトップ金属層を有する場合、スズ又はスズ合金はんだ層は接合フィーチャのトップ金属層に堆積される。接合パッド、銅ピラーなどの導電性接合フィーチャは、US 7,781,325、US 2008/0054459 A、US 2008/0296761 A、及びUS 2006/0094226 Aに記載されているように、当技術分野でよく知られている。
【0101】
方法
本発明の一実施形態は、スズ又はスズ合金含有層を堆積させるための浴における、式X1a、X1b、X1c、X1d、又はX1eの酸化防止剤の使用方法であり、ここで、このスズ合金含有層が、銀、銅、インジウム、及びビスマスから選択される合金金属を0.01~10質量%の量で含む。好ましくは、堆積されたスズ合金層は、0.1~5質量%の合金金属含有量を有する。
【0102】
本発明の別の実施形態は、
a)本明細書に記載の組成物を含むスズ合金電気めっき浴を基板と接触させること、及び
b)基板上にスズ合金層を堆積させるのに十分な時間で、基板に電流密度を印加すること
によって基板上にスズ又はスズ合金層を堆積させる方法である。
【0103】
本明細書で使用する「陥凹フィーチャ」とは、ビア、トレンチ、又は基板上のその他の開口部、特にはんだバンプを堆積させるための開口部を意味する。本明細書で使用する「開口サイズ」とは、陥凹フィーチャの開口部における最短距離を意味する。
【0104】
好ましくは、基板は、1~1000マイクロメートルの開口サイズを有する陥凹フィーチャを含み、堆積は、マイクロメートルサイズの陥凹フィーチャを少なくとも部分的に充填するように行われる。最も好ましくは、陥凹フィーチャは1~200マイクロメートル、好ましくは3~100マイクロメートルの開口サイズを有する。
【0105】
一般に、本発明を使用して基板上にスズ又はスズ合金を堆積させる場合、めっき浴は使用中に撹拌される。好ましくはスズ合金が堆積し、堆積したスズ合金の合金金属含有量は0.01~10質量%である。本発明では、あらゆる好適な撹拌方法を使用することができ、そのような方法は当技術分野で周知である。好適な撹拌方法には、不活性ガス又は空気のスパージング、ワークピースの撹拌、衝突などが含まれるが、これらに限定されない。このような方法は当業者に公知である。本発明を使用してウェハーのような集積回路基板をめっきする場合、ウェハーは1~150RPMで回転され、めっき液は、ポンピング又はスプレーによって、回転するウェハーに接触させる。別の方法として、めっき浴の流れが所望の金属堆積を提供するのに十分である場合、ウェハーを回転させる必要はない。
【0106】
スズ又はスズ合金は、金属堆積物内に実質的にボイドを形成することなく、本発明に従って陥凹部に堆積される。「実質的にボイドを形成することなく」という用語は、金属堆積物中に1000nm、好ましくは500nm、最も好ましくは100nmより大きいボイドが存在しないことを意味する。
【0107】
半導体基板をめっきするためのめっき装置は周知である。めっき装置は、スズ又はスズ合金の電解液を保持し、プラスチック又は電解めっき液に不活性な他の材料などの適切な材料で作られた電気めっきタンクを含む。タンクは、特にウェハーめっきの場合、円筒形であってもよい。カソードは、タンクの上部に水平に配置され、開口部を有するシリコンウェハーのような任意のタイプの基板であってもよい。
【0108】
これらの添加剤は、カソード液とアノード液を分離する膜の有無にかかわらず、可溶性及び不溶性のアノードに使用できる。
【0109】
カソード基板とアノードは、配線によって電気的に接続され、それぞれ電源に接続されている。直流又はパルス電流のためのカソード基板は、溶液中の金属イオンがカソード基板で還元され、カソードの表面にめっき金属が形成されるように、正味の負電荷を持つ。アノードでは酸化反応が起こる。アノードとカソードはタンク内で水平又は垂直に配置される。
【0110】
一般に、スズ又はスズ合金バンプを作製する場合、フォトレジスト層を半導体ウェハーに適用し、続いて標準的なフォトリソグラフィ露光及び現像技術により、そこに開口部又はビアを有するパターン化されたフォトレジスト層(又はめっきマスク)を形成する。めっきマスクの寸法(めっきマスクの厚さとパターンの開口部のサイズ)は、I/OパッドとUBMの上に堆積されるスズ又はスズ合金層のサイズと位置を定義する。
【0111】
パーセンテージ、ppm、又は同等の値はすべて、特に明記されていない限り、それぞれの組成物の総質量に対する質量に関するものである。すべての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
以下の実施例は、本発明の範囲を制限することなく、本発明をさらに説明するものである。
【実施例
【0113】
9つの酸化防止剤をテストした。酸化防止剤1~6は市販のものである。酸化防止剤7は、Organic and Bio-Organic Chemistry(1985),(1),81-6に従って合成した。
【0114】
酸化防止剤8及び9の合成:
【化15】
1-(4-ヒドロキシ-1,5-ジメチル-ピラゾール-3-イル)エテノン(1a)
文献[1,2]の手順と同様に、水(100mL)中のメチルヒドラジン(24g、0.511モル)及び酢酸(44g、0.734モル)の溶液に、冷却下(8~12℃)でメチルグリオキサール(40%の水溶液、529g、2.94モル)を添加した。添加終了後、反応混合物を加熱して4時間還流させた。混合物を室温まで冷却し、1.5Lのエチルアセテートで4回抽出した。組み合わせた有機層を乾燥させ(Na2SO4)、溶媒を真空で除去した。カラムクロマトグラフィー(シリカカラム、シクロヘキサン/エチルアセテート勾配)お用いて、粗生成物を精製した。生成物は淡黄色固体として分離した(21g、0.133モル、収率26%)。
【0115】
1-(1-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-ピラゾール-3-イル)エテノン(1b)
水(220mL)中のtert-ブチルヒドラジン塩酸塩(24g、0.189モル)の溶液に、メチルグリオキサール(40%の水溶液、136g、0.754モル)及び酢酸(17g、0.283モル)を続けて添加した。反応混合物を加熱して6時間還流させた。室温まで冷却した後、混合物を500mLのエチルアセテートで3回抽出した。組み合わせた有機層を500mLのブラインで洗浄し、乾燥させた(Na2SO4)。真空で溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(シリカカラム、シクロヘキサン/エチルアセテート勾配)お用いて、粗生成物を精製した。生成物は淡黄色結晶として分離した(20.6g、0.106モル、収率56%)。
【0116】
酸化防止剤8:3-エチル-1,5-ジメチル-ピラゾール-4-オール(2a)
60mLの1,4-ジオキサン中の1-(4-ヒドロキシ-1,5-ジメチル-ピラゾール-3-イル)エテノン(1a)(7.5g、48.6mmol)とRaney nickel H0-50(1.99g)の混合物を水素ガスで66バールまで加圧した。170℃(100バールの圧力)まで加熱した後、攪拌を3時間続けた。減圧後、反応混合物を濾過し、濾液を真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカカラム、シクロヘキサン/エチルアセテート勾配)お用いて、粗生成物を精製した。生成物は淡黄色固体として分離した(4.0g、28.5mmol、59%収率)。
【0117】
酸化防止剤9:1-tert-ブチル-3-エチル-5-メチル-ピラゾール-4-オール(2b)
2.5g(12.8mmol)のわずかに黄色がかった固体、0.8gのRaney nickel、及び60mlのジオキサンを水素ガスで61バールまで加圧した。170℃に加熱した後、撹拌を3時間続けた。減圧後、反応混合物を濾過し、濾液を真空中で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカカラム、シクロヘキサン/エチルアセテート勾配)お用いて、粗生成物を精製した。生成物は淡黄色固体として分離した(1.5g、8.2mmol)。
【0118】
文献
[1]「Reactions of Glyoxals with Hydrazones:A new Route to 4-Hydroxypyrazoles」,M.Begtrup,H.P.Nytoft,J.Chem.Soc.Perkin Trans.1985,81-86。
【0119】
[2]「Maximizing Lipophilic Efficiency:The use of Free-Wilson Analysis in the Designitors of Acetyl-CoA Carboxylase」,K.D.Freeman-Cookら,J.Med.Chem.2012,55,935-942。
【0120】
安定性テスト
錯化剤を含む銀とスズのメタンスルホン酸溶液を調製した。この溶液に0.3g/lの酸化防止剤を添加した。溶液を濁度測定用のキュベットに入れた。密封したキュベットを50℃で保存した。濁度を一定の時間間隔で測定し、酸素の拡散を可能にするために定期的に蓋を開けた。濁度測定はHach TL2350(Hach Lange GmbH)を用いてr.t.で行った。酸化防止剤を含まない銀とスズのメタンスルホン酸溶液を対照として使用した。
【0121】
濁度が4NTU(NTU=ネフェロメトリック濁度単位)を超えると判断された場合、溶液は不安定であると考えられた。酸化防止剤を添加したスズ銀メタンスルホン酸溶液が、酸化防止剤を添加しない参照溶液よりも長い時間安定していた場合、これは良好な酸化防止剤であること(「+」)を示している。酸化防止剤を添加したスズ銀メタンスルホン酸溶液が、酸化防止剤を添加しない参照溶液と同程度に安定していた場合、これは酸化防止剤がそのように作用していないこと(「o」)を示している。酸化防止剤を添加したスズ銀メタンスルホン酸溶液が、酸化防止剤を添加しない参照溶液と比較して安定性が低い場合、これは酸化防止剤が不安定化剤として作用したこと(「-」)を示している。
【0122】
実施例1の酸化防止剤を、上述のテスト手順に供した。結果を表1に示す。
【0123】
【表6】
【国際調査報告】