(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に基づく2成分(2K)組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/56 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
C08G59/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519740
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022073286
(87)【国際公開番号】W WO2023052002
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュンフー
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AD08
4J036DC01
4J036DC02
4J036DD02
4J036EA04
4J036FB12
4J036JA01
4J036JA05
4J036JA06
4J036JA13
(57)【要約】
本発明は、室温でスナップ硬化可能な2成分(2K)組成物であって、前記組成物は第1成分の重量に基づいて、60~100重量%のa)少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物、前記化合物は少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する;0~20重量%のb)(メタ)アクリレート官能性を有さない少なくとも1つのエポキシド化合物、;及び0~20重量%のc)エポキシド官能性を有さない少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー;を含む第1成分、d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン;及びd)ii)少なくとも1つのポリチオールを含む第2成分を含み、ここで、前記組成物は、前記第2成分によって提供される活性水素原子と前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計とのモル比が、0.75:1~1:1であることを特徴とする、組成物を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温でスナップ硬化可能な2成分(2K)組成物であって、前記組成物は以下:
第1成分の重量に基づいて、
a)少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物、60~100重量%、前記化合物は少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する;
b)(メタ)アクリレート官能性を有さない少なくとも1つのエポキシド化合物、0~20重量%;及び
c)エポキシド官能性を有さない少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー、0~20重量%;
を含む第1成分、
d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン;及び
d)ii)少なくとも1つのポリチオール
を含む第2成分
を含み、
ここで、前記組成物は、前記第2成分によって提供される活性水素原子と前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計とのモル比が、0.75:1~1:1であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
第1成分の重量に基づいて、
a)前記少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物、70~100重量%、好ましくは80~100重量%、前記化合物は少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する;
b)(メタ)アクリレート官能性を有さない前記少なくとも1つのエポキシド化合物、0~15重量%、好ましくは0~10重量%;及び
c)エポキシド官能性を有さない前記少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー、0~15重量%、好ましくは0~10重量%;
を含む第1成分、
d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン;及び
d)ii)少なくとも1つのポリチオール、
を含む第2成分
を含み、
ここで、前記組成物は、前記第2成分によって提供される活性水素原子と前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計とのモル比が、0.8:1~1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の2成分(2K)組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物a)は、100~700g/eq、好ましくは120~320g/eqの前記エポキシド基及び前記(メタ)アクリレート基の合計の当量を特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の2成分(2K)組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリル酸とポリエポキシド化合物との付加物である、請求項1~3のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項5】
前記ポリエポキシド化合物は、多価アルコールのポリグリシジルエーテル;多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;及び、エポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素からなる群から選択される、請求項4に記載の2成分(2K)組成物。
【請求項6】
前記ポリエポキシドは、脂肪族及び脂環式ジオールのジグリシジルエーテル;ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ポリアルキレングリコール系ジグリシジルエーテル;及び、ポリカーボネートジオール系グリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテルである、請求項4又は5に記載の2成分(2K)組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリアミンd)i)は、組成物中の活性水素原子の総数の5~80%を提供する;及び
前記少なくとも1つのポリチオールd)ii)は、組成物中の活性水素原子の総数の20~95%を提供する、
請求項1~6のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項8】
前記第2成分は、前記成分の重量に基づいて、以下:
d)i)前記少なくとも1つのポリアミン化合物、1~50重量%、好ましくは1~40重量%、より好ましくは2~20重量%;
d)ii)前記少なくとも1つのポリチオール、50~99重量%、好ましくは60~99重量%、より好ましくは80~98重量%
を含む、請求項7に記載の2成分(2K)組成物。
【請求項9】
d)i)前記少なくとも1つのポリアミンは、第1級アミン基及び/又は第2級アミン基を含み、150g/eq以下のアミン水素当量(AHEW)を有する、請求項1~8のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項10】
d)ii)前記少なくとも1つのポリチオールは、2~5個のチオール基を有する、請求項1~9のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項11】
d)ii)前記少なくとも1つのポリチオールは、100~700g/eq、好ましくは100~250g/eqのチオール当量を有する、請求項1~10のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項12】
d)ii)前記少なくとも1つのポリチオールは、チオカルボン酸のポリエステル又はチオール(SH)末端ポリオキシアルキレンエーテルから選択される、請求項1~11のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項13】
フリーラジカル光開始剤を実質的に含まない、請求項1~12のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項14】
熱フリーラジカル開始剤を実質的に含まない、請求項1~13のいずれかに記載の2成分(2K)組成物。
【請求項15】
コーティング、接着剤又はシーラントとしての請求項1~14のいずれかに記載の2成分(2K)組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に基づく2成分(2K)組成物を対象とする。より詳細には、本発明は、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を含む、又はからなる第1成分;及び、エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミンと少なくとも1つのポリチオールとを含む第2成分を含む、2成分(2K)組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、主に、樹脂、改質剤及び架橋剤(又は硬化剤)の特定の選択により、硬化したエポキシ樹脂の特性を調整して特定の性能特性を達成できることに基づき、幅広い用途が見出されている。
【0003】
その多用途性が認められているため、適当に硬化したエポキシ樹脂は、とりわけ以下:特にアルカリ環境に対する優れた耐薬品性;高い引張強度及び圧縮強度;高い疲労強度;硬化時の低収縮;及び電気絶縁特性及び経年時又は環境暴露時のそれらの保持を含む複数の他の属性も備えている。しかしながら、硬化したエポキシ樹脂系は、耐破壊性及び衝撃強度の低下、低い熱安定性、低い顔料保持能、乏しい柔軟性及び乏しい疎水性によって不利にも特徴付けられ得る。
【0004】
本開示は、「2成分(2K)組成物」を対象とし、これは、(本明細書ではエポキシド化合物に基づく)バインダー成分(1)及び硬化剤成分(2)が、それらの反応性のために別々の容器に貯蔵される組成物であると理解されるべきである。2つの成分は、塗布の直前にのみ混合され、その後結合を形成して反応し、それによりポリマーネットワークが形成される。
【0005】
エポキシド化合物に基づく2成分(2K)組成物は、時には迅速な初期硬化が可能であるが、そのような迅速な硬化は、通常、組成物と接触し得る全ての基材に対して適切でなく又は実用的でない可能性のある高温の使用によって達成される。更に、速い硬化速度を促進するために高温を使用することは、他の問題も引き起こし得る。第一に、ある種のコーティング用途、接着用途又はシーラント用途において、適切なレベリングを妨げ得る。第二に、材料の呼吸を制限する可能性がある:高温硬化の際、コーティング、接着剤又はシーラント組成物の表面下に閉じ込められた水分が蒸発し、硬化した組成物中に気泡又は座屈、又は、少なくともナノスケールの材料破壊を引き起こす可能性がある。もちろん、材料破壊はナノスケールから始まり、マイクロスケール、そしてマクロスケールへと拡大し:研磨条件にさらされると、この一連の破壊が加速され得る。
【0006】
問題としては、室温では、2成分(2K)エポキシ組成物は多くの場合、時間の経過とともにゆっくりと硬化する傾向があり、取り扱い前に6~8時間の硬化を必要とすることがあり、完全硬化は1、2日、又は7日もの日数で達成されることである。このような長い処理時間は、多くの工業用途にとって不利となり得る。そして実際に、遅い硬化速度は、このような2成分エポキシ組成物が、室温、組立ライン加工、又は高い処理能力が要求される他の低温用途で使用されることを妨げ得る。
【0007】
多くの著者が、強度の迅速なビルドアップを提供できるが、室温で硬化可能であり、したがって組成物及び/又は組成物が適用される基材の加熱のエネルギーコストを負う必要がない、2成分(2K)エポキシ組成物を開発する必要に対処しようとしてきた。一般的なアプローチは、特定の低分子量添加剤(硬化促進剤)を、従来的に2Kエポキシ組成物の硬化剤成分に添加することによって、硬化時間を速めることである。しかし、このような添加剤は、硬化した組成物の脆さを増大させ、動的強度性能を低下させるという点で有害である。更に、ポリマーマトリックス内に組み込まれない低分子量添加剤は、状況によっては硬化性組成物の過剰可塑化を促進し得る。これらの影響の結果として、硬化促進剤の使用は通常、脆さを低減するための強化剤の添加によって補われなければならない。
【0008】
米国特許第4,668 736号(3M社)には、以下:(a)第1成分において、75~100重量部(pbw)の少なくとも1つの硬化性グリシジルエーテルエポキシド基含有化合物;(b)第2成分において、少なくとも1つのアミノ末端脂肪族ポリエーテル硬化剤;(c)前記成分の少なくとも一方において、8~40pbwの、ゴム状相及び熱可塑性相の両方を提供する少なくとも1つの高分子強靭化剤;及び、(d)前記成分の少なくとも一方において、硝酸カルシウム、硝酸ランタン、又は、カルシウムカチオン、ストロンチウムカチオンもしくはバリウムカチオン及び過塩素酸塩アニオンもしくはトリフルオロメタンスルホン酸アニオンを有する金属塩から選択される少なくとも1つの金属塩触媒を1~10pbw含む2成分組成物が記載されている。
【0009】
WO2009/025991 A1(Dow Global Technologies LLC)は、ほぼ室温で硬化され得る2成分(2K)エポキシ系構造接着剤を開示する。該接着剤は、エポキシ樹脂と反応性強化剤とを含む第1成分;並びに、15~50重量%のアミン末端ポリエーテル、4~40重量%の-40℃以下のガラス転移温度を有するアミン末端ゴム、及び10~30重量%の50℃以下の融点を有するアミン末端ポリアミドを含む硬化剤成分を含む。
【0010】
US 2017/0335147 A1(ダウ・グローバル・テクノロジーズLLC)は、50分以下のセット時間を達成する2成分(2K)接着剤組成物を開示し、前記組成物は:成分(A)の重量に基づいて、5~50重量%の第1反応性強化剤と、20~65重量%の液状エポキシ樹脂とを含む第1成分(A);及び成分(B)の重量に基づいて、10~35重量%の第2反応性強化剤、20~50重量%の、200~6000ダルトンの分子量を有するポリエーテルジアミン又はポリエーテルトリアミンを含む第2硬化剤成分(B);硬化促進剤;並びに10~25重量%の、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン及びエチレンジアミンの少なくとも1つを含む。第1及び第2反応性強化剤はそれぞれ、1以上のフェノール性-OH基を含むキャッピング基で末端化されたポリウレタン、ポリウレア又はポリウレア-ウレタンプレポリマーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,668 736号
【特許文献2】国際公開第2009/025991号
【特許文献3】米国特許出願公開2017/0335147号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、硬化促進剤又は強化剤の存在を必要とせずに室温で迅速に硬化させることができるエポキシ樹脂に基づく2(2K)組成物を開発する必要性が当技術分野に存在すると考えている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様によれば、
第1成分の重量に基づいて、
a)少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物、60~100重量%、前記化合物は少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する;
b)(メタ)アクリレート官能性を有さない少なくとも1つのエポキシド化合物、0~20重量%;及び
c)エポキシド官能性を有さない少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー、0~20重量%;
を含む第1成分、
d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン;及び
d)ii)少なくとも1つのポリチオール
を含む第2成分
を含み、
ここで、前記組成物は、前記第2成分によって提供される活性水素原子と前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計とのモル比が、0.75:1~1:1であることを特徴とする、室温でスナップ硬化可能な2成分(2K)組成物が提供される。
【0014】
重要な実施態様において、スナップ硬化可能な2成分(2K)組成物は、
第1成分の重量に基づいて、
a)前記少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物、70~100重量%、好ましくは80~100重量%、前記化合物は少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する;
b)(メタ)アクリレート官能性を有さない前記少なくとも1つのエポキシド化合物、0~15重量%、好ましくは0~10重量%;及び
c)エポキシド官能性を有さない前記少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー、0~15重量%、好ましくは0~10重量%;
を含む第1成分、
d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン;及び
d)ii)少なくとも1つのポリチオール、
を含む第2成分
を含み、
ここで、前記組成物は、前記第2成分によって提供される活性水素原子と前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計とのモル比が、0.8:1~1:1であることを特徴とする。
【0015】
本明細書で用いられる場合、用語「スナップ硬化可能“snap curable”」は、記載される温度条件への曝露から60秒以内に硬化する能力を意味する。完全を期すために、スナップ硬化する能力は、本発明の組成物が、高温又は意図的な光照射に曝された場合に、なおより短い時間(例えば50秒未満又は40秒未満)内に硬化する能力を排除しないことに留意されたい。
【0016】
第1成分に関しては、前記又は各エポキシ(メタ)アクリレート化合物a)は、100~700g/eq、好ましくは120~320g/eqの、前記エポキシド基及び前記(メタ)アクリレート基の合計の当量によって特徴づけられることが好ましい。
【0017】
第2成分又は硬化剤成分に関しては、前記少なくとも1つのポリアミンd)i)は、組成物における5~80%の活性水素原子の総数を提供すること;及び、前記少なくとも1つのポリチオール化合物d)ii)は、組成物における20~95%の活性水素原子の総数を提供することが好ましい。
【0018】
その特徴とは独立して、又はその特徴に加えて、以下の条件の少なくとも1つ、望ましくは全てが第2成分によって満たされることが好ましい:
1)前記成分に含まれる前記又は各ポリアミンd)i)は、第1級アミン基及び/又は第2級アミン基を含み、150g/eq以下のアミン水素当量(AHEW)を有する;
2)前記成分に含まれる前記又は各ポリチオールd)ii)は、2~5個のチオール基を有する;及び
3)前記成分に含まれる前記又は各ポリチオールd)ii)は、100~700g/eq、好ましくは100~250g/eqのチオール当量を有する。
【0019】
2成分(2K)組成物は、フリーラジカル光開始剤及び/又は熱フリーラジカル開始剤を実質的に含まないことが望ましい。実際、熱フリーラジカル開始剤及びフリーラジカル光開始剤の両方を含まない本開示による有効な組成物は、室温、又は、独立して、加熱及び光照射下で効果的に硬化することが示されている。完全を期するために、重要な実施形態において、本発明の組成物は、実質的にフリーラジカル開始剤を含まなくてよい。
【0020】
本発明の第2の態様によると、本明細書中及び添付の特許請求の範囲において定義されるような2成分(2K)組成物の、コーティング、接着剤又はシーラントとしての使用が提供される。複合材料における2成分(2K)組成物の使用も想定される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<定義>
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0022】
本明細書で用いられる用語「含む」(「comprising」、「comprises」及び「comprised of」)は、「含む」(「including」、「includes」、「containing」又は「contains」)と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、引用されていない部材(members)、要素又は方法工程を除外しない。
【0023】
本明細書で用いられる場合、用語「からなる」(「consisting of」)は、特定されていない要素、成分、部材又は方法工程を除外する。
【0024】
量、濃度、寸法及びその他のパラメーターが、範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、又は好ましい上限値及び制限値の形で表現されている場合、得られた範囲が文脈上明確に言及されているかどうかにかかわらず、任意の上限値又は好ましい値と任意の下限値又は好ましい値との組み合わせにより得られる任意の範囲も具体的に開示されていると理解されるべきである。
【0025】
更に、標準的な理解に従って、「0~x」であると表される重量範囲は、具体的には0重量%を含む。前記範囲により定義される成分は、組成物に存在しなくてもよく、又は組成物中に最大x重量%の量で存在してもよい。
【0026】
用語「好ましい」、「好ましくは」、「望ましい」及び「特に」は、特定の状況下で、特定の利点を与え得る本開示の実施形態を言及するために、本明細書で頻繁に使用されている。しかしながら、1つ以上の好ましい、好ましい、望ましい、又は特定の実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0027】
本出願において、「may」という単語は、義務的な意味ではなく、許容的な意味(つまり、可能性があるという意味)で使われる。
【0028】
本明細書で使用される室温は、23℃±2℃である。
【0029】
(硬化性組成物の高分子、オリゴマー及びポリマー成分について説明するために)本明細書で言及される分子量は、ASTM 3536に従って行われるように、ポリスチレン校正標準を使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0030】
本明細書に記載された組成物の粘度は、特に規定がない限り、20℃及び50%の相対湿度(RH)の標準条件において、Brookfield粘度計を使用して測定される。Brookfield粘度計の校正方法、スピンドル種類、及び回転速度は、測定する組成に適するように製造業者の指示に従って選択される。
【0031】
広義には、「ゲル時間」は、混合物が実質的に流動できなくなる時間を表す。分子用語では、ゲル時間は、無限ネットワークが形成される時点を指す。以下では、定量化された「ゲル時間」とは、75000センチポアズの粘度が達成される時間を意味し、組成物の前記ゲル時間は、温度25℃、相対湿度(RH)50%で、ガードナー標準モデルゲルタイマーによって決定される。
【0032】
本明細書で用いられる場合、用語「モノマー」は、重合反応を受けてポリマーの化学構造に構成単位を付与することができる物質を意味する。本明細書で用いられる場合、用語「単官能性」は、1つの重合可能な部位を有することを意味する。本明細書で使用する「多官能性(polyfunctional)」という用語は、2つ以上の重合可能な部位を有することを意味する。
【0033】
本明細書で用いられる場合、用語「当量(eq.)」は、化学表記において通常であるように、反応中に存在する反応性基の相対数に関する。
【0034】
本明細書で用いられる「当量」という用語は、分子量を当該官能基数で割ったものを指す。そのため、「エポキシ当量」(EEW)とは、1当量のエポキシを含む樹脂のグラム単位での重量を意味する。同様に、「アミン水素当量」(AHEW)は、アミン化合物の分子量をアミン水素官能価(AHF)で割ったものとして定義される。
【0035】
本明細書で使用する用語「エポキシド」は、少なくとも1つの環状エーテル基の存在によって特徴付けられる化合物、すなわち、エーテル酸素原子が2つの隣接する炭素原子に結合し、それによって環状構造を形成する化合物を意味する。この用語は、モノエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物(2つ以上のエポキシド基を有する)及びエポキシド末端プレポリマーを包含することを意図している。「モノエポキシド化合物」という用語は、1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ポリエポキシド化合物」という用語は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ジエポキシド化合物」という用語は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。
【0036】
エポキシドは非置換であってよいが、不活性に置換されていてもよい。不活性置換基の例としては、塩素、臭素、フッ素及びフェニルが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用する用語「ポリチオール」は、1分子当たり少なくとも2つのペンダント又は末端チオール基(-SH)を有する単純又は複雑な有機化合物を指す。このようなポリチオールは、一般に、式Rt-(SH)cで表され得り、式中、cは、少なくとも2の値を有する整数であり、Rtは、原子価cの多価有機部位である。
【0038】
本明細書において、用語「活性水素原子」とは、Zerewitinoff反応に従って反応することができる水素原子を意味する。
【0039】
本明細書において、「フリーラジカル開始剤」という用語は、十分なエネルギー(例えば光や熱の形態)に曝されると、電荷を帯びていないが、それぞれが少なくとも1つの不対電子を有する2つの部分に分解する化学種を指す。このように、熱フリーラジカル開始剤は、熱にさらされると遊離する。熱フリーラジカル開始剤としては、限定されるものではないが、過酸化物化合物、アゾ化合物、過硫酸塩化合物などが知られている。
【0040】
本明細書で使用される「光開始剤」という用語は、エネルギーを有する活性化ビーム(例えば、電磁放射線)を照射することにより活性化され得る化合物を示す。具体的には、本明細書において「フリーラジカル光開始剤」とは、フリーラジカルを生成する光活性化合物を指し、このラジカルは、本明細書において、組成物中に存在するC=C二重結合への付加によって重合又は反応を開始し得る。このようなフリーラジカル光重合開始剤は、従来、ノルリッシュI型光重合開始剤とノルリッシュII型光重合開始剤とに分類される。ノルリッシュI型ラジカル光重合開始剤は、活性放射線に曝されるとノルリッシュI型反応を起こす:この反応は、(非環状カルボニル化合物から)アシル-アルキルラジカル対、又は(環状カルボニル化合物から)アシル-アルキルビラジカルを一次光生成物として生じる、励起カルボニル化合物のα開裂としてIUPACにより定義される。ノルリッシュII型ラジカル光重合開始剤は、アクチニック放射線を照射する際ノルリッシュII型反応を起こす:この反応は、一次光生成物として1,4-ビラジカルを生成する、励起カルボニル化合物によるγ-水素の光化学的脱離としてIUPACによって定義される。
【0041】
本明細書で使用される「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を指す略語である。したがって、用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド及びメタクリルアミドを集合的に指す。
【0042】
本明細書で使用される「C1-Cnアルキル」基は、1~n個の炭素原子を含む一価の基を指す、すなわちアルカンの基であり、直鎖及び分岐有機基を含む。したがって、「C1-C18アルキル」基は、1~18個の炭素原子を含む一価の基を指す、すなわちアルカンの基であり、直鎖及び分岐有機基を含む。アルキル基の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;及び2-エチルヘキシル。本発明において、そのようなアルキル基は、置換されていなくてもよく、又は1以上のハロゲンで置換されていてもよい。所定の部位(R)に適用可能な場合、アルキル基内の1以上の非ハロゲン置換基の許容が明細書に記載される。
【0043】
本明細書で使用される「C1-C18ヒドロキシアルキル」という用語は、1~18個の炭素原子を有するHO-(アルキル)基を指し、置換基の結合点は酸素原子を介しており、アルキル基は上記で定義した通りである。
【0044】
「アルコキシ基」は、-OAで表される一価の基を指し、Aはアルキル基である:その非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基及びイソ-プロピルオキシ基である。本明細書で使用される「C1-C18アルコキシアルキル」という用語は、上で定義したアルコキシ置換基を有するアルキル基を指し、ここで、部分(アルキル-O-アルキル)は、合計で1~18個の炭素原子を含む:このような基には、メトキシメチル(-CH2OCH3)、2-メトキシエチル(-CH2CH2OCH3)及び2-エトキシエチルが含まれる。同様に、本明細書で使用される用語「C7-C18アルコキシアリール」は、上記で定義されるアルコキシ置換基を有するアリール基を指し、ここで部分(アリール-O-アルキル)は合計で7~18個の炭素原子を含む。
【0045】
本明細書で使用される用語「C2-C4アルキレン」は、2~4個の炭素原子を有する飽和二価炭化水素基として定義される。
【0046】
「C3-C18シクロアルキル」という用語は、3~18個の炭素原子を有する、飽和の単環式、二環式又は三環式炭化水素基を意味すると理解される。本発明において、このようなシクロアルキル基は、非置換であってもよいし、1以上のハロゲンで置換されていてもよい。所与の部分(R)について適用可能な場合、シクロアルキル基内の1以上の非ハロゲン置換基の許容は、本明細書中に記載される。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;及びノルボルナンが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される、単独で、又はより大きな部分の一部として(「アラルキル基」のように)使用される「C6-C18アリール」基は、単環式環系が芳香族又は二環式又は三環式環系の環の少なくとも1つが芳香族である、任意に置換された単環式、二環式又は三環式環系を指す。二環式及び三環式環系には、ベンゾ縮合2~3員炭素環が含まれる。本発明において、このようなアリール基は非置換であってもよいし、1以上のハロゲンで置換されてもよい。所定の部分(R)について適用可能な場合、アリール基内の1以上の非ハロゲン置換基の許容が、本明細書中に記載される。例示的なアリール基には以下が含まれる:フェニル;(C1-C4)アルキルフェニル、例えばトリル及びエチルフェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;及びアントラセニル。また、フェニル基が好ましいことが言及され得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「アルキルアリール」は、アルキル置換アリール基を意味し、両基は上記で定義された通りである。更に、本明細書で使用する「アラルキル」とは、上記で定義したアリールラジカルで置換されたアルキル基を意味する。
【0049】
本明細書において、「金属」とは、任意のタイプの金属、金属合金、又はそれらの混合物を意味する。
【0050】
本明細書において、本発明の組成物は、特定の化合物、元素、イオン又は他の同種の成分を「実質的に含まない」と定義することができる。「実質的に含まない」という用語は、化合物、元素、イオン又は他の同種の成分が、組成物に意図的に添加されず、組成物の所望の特性に(有害な)影響を及ぼさない、せいぜい微量しか存在しないことを意味することが意図される。例示的な微量は、組成物の重量に対して1000ppm未満である。「実質的に含まない」という用語は、特定の化合物、元素、イオン、又は他の同様の成分が、組成物に完全に存在しないか、又は当該技術分野で一般的に使用される技術によって測定可能ないかなる量でも存在しない、それらの実施形態を明示的に包含する。
【0051】
[発明の詳細な説明]
<第1成分>
上記で定義したように、組成物の第1成分は、a)少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物を含む、又はからなる。これは、第1成分中に(メタ)アクリレート官能性を有さない少なくとも1つのエポキシド官能性化合物;及び、エポキシド官能性を有さないエチレン性不飽和非イオン性モノマー;の一方又は両方が存在することを排除するものではない。
【0052】
<1a)エポキシ(メタ)アクリレート化合物>
組成物の第1成分は、前記成分の重量に基づいて、60~100重量%の、a)少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物を含み、前記化合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する。第1成分が、前記成分の重量に基づいて、70~100重量%、好ましくは80~100重量%の、a)前記少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0053】
第1成分に含まれる前記又は各エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、100~700g/eq、特に120~320g/eqの前記エポキシド基と前記(メタ)アクリレート基との合計の当量によって好ましくは特徴づけられる。
【0054】
エポキシ(メタ)アクリレート化合物は、アクリル酸又はメタクリル酸と、ポリエポキシド化合物とを、得られる付加物中に少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基が保持されるような化学量論比で反応させることにより得ることができる。反応させるポリエポキシド化合物及び(メタ)アクリル酸の量を好適に変更することにより、所望の(メタ)アクリル化率を有するエポキシ化合物を得ることができる。例えば、エポキシド基1当量あたり反応させる(メタ)アクリル酸の量は、0.1~0.7当量であることが望ましい。
【0055】
本発明を限定する意図はないが、適当な反応体ポリエポキシド化合物は、液体、固体、又は溶媒中の溶液であってもよい。上記の特徴に基づいて、そのような反応体ポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば120~320g/eqのエポキシド当量を有することが望ましい。そして一般に、500g/eq未満、又は更には400g/eq未満のエポキシド当量を有するジエポキシド化合物が好ましい:これは主にコストの観点からであり、その製造において、低分子量のエポキシ樹脂は精製においてより限定された処理を必要とするからである。
【0056】
(メタ)アクリル酸と反応させてよいポリエポキシド化合物のタイプ又は群の例として、多価アルコール及び多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;及びエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素が言及されてよい。
【0057】
ジエポキシド化合物の使用が好ましい。例えば、適当なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族又は脂環式であってよく、したがって、二価フェノール及び二価アルコールから誘導できる。そして、そのようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは以下である:脂肪族及び脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオール及びシクロヘキサンジオール;ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ジグリシジルO-フタレート、ジグリシジルイソフタレート及びジグリシジルテレフタレート;ポリアルキレングリコール系ジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;及びポリカーボネートジオール系グリシジルエーテル。言及されてよいその他の適当なジエポキシドとしては、二重不飽和脂肪酸C1-C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;及びリモネンジエポキシドが挙げられる。
【0058】
更に例示的なポリエポキシド化合物としては、以下に限定されるものではないが、グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;及びソルビトールポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0059】
そして、非常に好ましい反応物ポリエポキシド化合物の例として、以下が挙げられる:ビスフェノールAエポキシ樹脂;ビスフェノールFエポキシ樹脂;ビスフェノールA/F型エポキシ樹脂ブレンド;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)732;エポキシノボラック樹脂、例えばDEN(登録商標)438;臭素化エポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)542;ヒマシ油トリグリシジルエーテル例えばERISYS(登録商標)GE-35H;ポリグリセリン-3-ポリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-38;及びソルビトールグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-60。
【0060】
エポキシアクリレート付加物を形成するのに有用なポリエポキシド化合物は、モノマー又はオリゴマーであってよいことに留意されたい。本発明の組成物におけるモノマーエポキシ(メタ)アクリレート化合物の含有は、一般に、硬質で耐摩耗性の特性を有する硬化物をもたらすと考えられる。逆に、オリゴマー多官能性(メタ)アクリレートの含有は、一般に、やや柔らかいが、より柔軟な硬化物をもたらす。もちろん、モノマー及びオリゴマー両方のエポキシ(メタ)アクリレート化合物を使用することで、硬化物の所望の特性のバランスをとることができる。
【0061】
当業者に認識されるように、反応体ポリエポキシドのエポキシド官能基の部分(メタ)アクリル化は、典型的には塩基性触媒の存在下で行われ、該塩基性触媒としては、トリフェニルホスフィン(PPh3)、N,N’-ジメチルトルイジン、ピリジン、イミダゾール、トリエチルアミン及びトリブチルアミンが挙げられる。しかしながら、部分的にアクリル化された最終生成物中のこのような触媒の保持は、その生成物の貯蔵安定性に対して有害であり得、本開示に関しては、第1成分が、例えば反応性希釈剤として、さらなるエポキシド化合物及びエチレン性不飽和化合物を含むことを妨げる可能性がある。貯蔵中の架橋反応(及びそれに伴う生成物の増粘及びゲル化)を防止するために、触媒残留物は、本発明の組成物の第1成分に使用される前に、エポキシ(メタ)アリレート化合物から望ましくは除去されるべきである。残留触媒を除去するための例示的な方法は、特に以下:WO2011/078113;特開平5-332031;特開平11-012345;特開2002-145984A;特開2004-244543;特開2013-103950;及び特開2019-052273Aに開示されている。
【0062】
代替的な実施形態では、重合禁止剤(例えばキノン又はキノンメチド)を、部分的に(メタ)アクリル化された反応生成物に、その貯蔵前に添加されてよい。しかしながら、このような禁止剤は第1成分中に存在するであろう不純物を構成するので、必ずしも好ましくはない。
【0063】
上記はさておき、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有する適当なエポキシ(メタ)アリレート化合物は、市販の供給源から入手されてよい。代表的な市販のエポキシ(メタ)アリレート化合物としては、以下に限定されるものではないが、グリシジルメタクリレート(GMA)(Sigma Aldrich社製);Uvacure(登録商標)1561及びUvacure(登録商標)1562(Daicel-Allnex Ltd.社製);及び、HCT-1(Henkel Corporation社製)が挙げられる。
【0064】
<1b)エポキシド化合物>
本開示の組成物の第1成分は、前記成分の重量に基づいて、0~20重量%の、b)(メタ)アクリレート官能性を有さない少なくとも1つのエポキシド化合物を含んでよい。例えば、組成物の第1成分は、前記成分の重量に基づいて、0~15重量%又は0~10重量%のb)前記少なくとも1つのエポキシド化合物を含んでよい。
【0065】
エポキシド化合物は、モノエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物及びそれらの組み合わせを含んでよい。従って、エポキシド化合物は、純粋な化合物であってもよいが、同様に、1分子当たり異なる数のエポキシ基を有する化合物の混合物を含む、混合エポキシ官能性化合物であってよい。エポキシド化合物は、飽和又は不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式であってよく、置換されていてよい。更に、エポキシド化合物は、単量体であっても重合体であってもよい。
【0066】
本発明を限定する意図はないが、例示的なモノエポキシド化合物には以下が含まれる:アルキレンオキシド;シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノキシド、(+)-cis-リモネンオキシド、(+)-cis,trans-リモネンオキシド、(-)-cis,trans-リモネンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド及びα-ピネンオキシドなどのエポキシ置換脂環式炭化水素;エポキシ置換芳香族炭化水素;脂肪族、脂環式及び芳香族アルコールのグリシジルエーテルなどの一価アルコール又はフェノールのモノエポキシ置換アルキルエーテル;脂肪族、脂環式及び芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステルなどのモノカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;他のカルボキシ基がアルカノールでエステル化されているポリカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;エポキシ置換モノカルボン酸のアルキル及びアルケニルエステル;他のOH基がカルボン酸又はアルコールでエステル化又はエーテル化された多価アルコールのエポキシアルキルエーテル;及び他のOH基がカルボン酸又はアルコールでエステル化又はエーテル化された多価アルコールとエポキシモノカルボン酸とのモノエステル。
【0067】
例として、以下のグリシジルエーテルは、本明細書で使用するのに特に適したモノエポキシド化合物として挙げられ得る:メチルグリシジルエーテル;エチルグリシジルエーテル;プロピルグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル;ペンチルグリシジルエーテル;ヘキシルグリシジルエーテル;シクロヘキシルグリシジルエーテル;オクチルグリシジルエーテル;2-エチルヘキシルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;ベンジルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル;1-ナフチルグリシジルエーテル;2-ナフチルグリシジルエーテル;2-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-ブロモフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリクロロフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリブロモフェニルグリシジルエーテル;ペンタフルオロフェニルグリシジルエーテル;o-クレシルグリシジルエーテル;m-クレシルグリシジルエーテル;及びp-クレシルグリシジルエーテル。
【0068】
重要な実施態様において、前記モノエポキシド化合物は、以下の式(BI):
【化1】
[式中、R
w、R
x、R
y及びR
zは、同一又は異なっていてよく、水素、ハロゲン原子、C
1-C
8アルキル基、C
3-C
10シクロアルキル基、C
2-C
12アルケニル、C
6-C
18アリール基又はC
7-C
18アラルキル基から独立して選択される(ただし、R
y及びR
zの少なくとも1つは水素ではないことを条件とする)]
に一致する。
R
w、R
x及びR
yは水素であり、R
zはフェニル基又はC
1-C
8アルキル基のいずれか、より好ましくはC
1-C
4アルキル基であることが好ましい。
【0069】
この実施態様に関して、例示的なモノエポキシドには以下が含まれる:エチレンオキシド;1,2-プロピレンオキシド(プロピレンオキシド);1,2-ブチレンオキシド;cis-2,3-エポキシブタン;trans-2,3-エポキシブタン;1,2-エポキシペンタン;1,2-エポキシヘキサン;1,2-ヘプチレンオキシド;デセンオキシド;ブタジエンオキシド;イソプレンオキシド;及びスチレンオキシド。
【0070】
本発明において、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノエポキシド化合物を使用することが言及される:エチレンオキシド;プロピレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;(+)-cis-リモネンオキシド;(+)-cis,trans-リモネンオキシド;(-)-cis,trans-リモネンオキシド;シクロオクテンオキシド;及びシクロドデセンオキシド。
【0071】
再度本発明を限定することを意図するものではないが、適当なポリエポキシド化合物は、液体、固体であっても溶媒中の溶液であってもよい。更に、そのようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば120~320g/eqのエポキシド当量を有することが望ましい。一般に、500g/eq未満、又は400g/eq未満のエポキシド当量を有するジエポキシド化合物が好ましい:これは主にコストの観点からであり、その製造において、より低分子量のエポキシ樹脂は精製においてより限定されたプロセスを必要とするためである。
【0072】
組成物に含まれてよいポリエポキシド化合物のタイプ又は群の例として、以下のものが挙げられ得る:多価アルコール及び多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;及びエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素、エステル、エーテル及びアミド。
【0073】
適当なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族又は脂環式であってよく、したがって、二価フェノール及び二価アルコールから誘導できる。このようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは以下である:脂肪族及び脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、例えば1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオール及びシクロヘキサンジオール;ビスフェノールA系ジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ポリアルキレングリコール系ジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;及びポリカーボネートジオール系グリシジルエーテル。
【0074】
更に例示的なポリエポキシド化合物には以下が含まれるが、これらに限定されない:グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;及びソルビトールポリグリシジルエーテル。
【0075】
本発明において有用なポリカルボン酸のグリシジルエステルは、少なくとも2つのカルボン酸基を含み、エポキシド基と反応する他の基を含まないポリカルボン酸から誘導される。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族及び複素環式であり得る。好ましいポリカルボン酸は、カルボン酸基当たり18個以下の炭素原子を含有するものであり、その適当な例には以下が含まれるが、これらに限定されない:シュウ酸;セバシン酸;アジピン酸;コハク酸;ピメリン酸;スベリン酸;グルタル酸;不飽和脂肪酸の二量体及び三量体酸、例えばアマニ脂肪酸(linseed fatty acids)の二量体及び三量体酸;フタル酸;イソフタル酸;テレフタル酸;トリメリット酸;トリメシン酸;フェニレン二酢酸;クロレンド酸;ヘキサヒドロフタル酸、特にヘキサヒドロオルトフタル酸(1,2-シクロヘキサンジカルボン酸);ジフェン酸;ナフタル酸;二塩基酸及び脂肪族ポリオールの多酸末端エステル;(メタ)アクリル酸のポリマー及びコポリマー;及びクロトン酸。
【0076】
挙げられ得る他の適当なジエポキシドには以下が含まれる:二重不飽和脂肪酸C1-C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;及びリモネンジエポキシド。
【0077】
非常に好ましいポリエポキシド化合物の例には以下が含まれる:ビスフェノールAエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)331、DER(登録商標)332、DER(登録商標)383、JER(登録商標)828及びEpotec YD 128;ビスフェノールFエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)354;ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂ブレンド、例えばDER(登録商標)353;脂肪族グリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)736;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、例えばDER(登録商標)732;固体ビスフェノールAエポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)661及びDER(登録商標)664 UE;ビスフェノールA固体エポキシ樹脂の溶液、例えばDER(登録商標)671-X75;エポキシノボラック樹脂、例えばDEN(登録商標)438;臭素化エポキシ樹脂、例えばDER(登録商標)542;ヒマシ油トリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-35H;ポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-38;ソルビトールグリシジルエーテル、例えばERISYS(登録商標)GE-60;及び、Lapox Arch-11として入手可能なビス(2,3-エポキシプロピル)シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート。
【0078】
上記はさておき、組成物の第1成分は、特定の実施形態において、式(BII)を有するグリシドキシアルキルアルコキシシランを含み得る:
【化2】
こ[式中、各Rは、独立して、メチル又はエチルから選択され;
nは1~10である]
【0079】
例示的なシランとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;及び8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン。存在する場合、エポキシド官能性シランは、第1成分(a)、b))中のエポキシド官能性化合物の総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満又は5重量%未満を構成するのが望ましい。
【0080】
好ましい実施形態を示すものではないが、本発明は、硬化性組成物の第1成分が、以下:オキセタン類;環状カーボネート類;環状無水物類;及びラクトン類からなる群から選択される1以上の環状モノマーを更に含むことを排除するものではない。以下の引用文献の開示は、適当な環状カーボネート官能性化合物を開示する上で有益であり得る:米国特許第3,535,342号;米国特許第4,835,289号;米国特許第4,892,954号;英国特許GB-A-1,485,925号;及びEP-A-0 119 840号。しかしながら、このような環状コモノマーは、第1成分(a)、b))中のエポキシド官能性化合物の総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満又は5重量%未満を構成することが好ましい。
【0081】
<1c)エチレン性不飽和非イオン性モノマー>
本開示の組成物の第1成分は、前記成分の重量に基づいて、0~20重量%の、c)エポキシド官能性を有さない少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含む。組成物の第1成分が、前記成分の重量に基づいて、0~15重量%、例えば0~10重量%の前記少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含むことが好ましい。このようなモノマーは、原則として、任意のエチレン性不飽和非イオン性モノマーであり得る。しかしながら、本発明は、(メタ)アクリレートモノマーが、組成物中に存在するエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総量の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%を構成する組成物に特に適用可能である。
【0082】
<1c)-1 脂肪族及び脂環式(メタ)アクリレートモノマー>
組成物の第1成分は、c1)式CI:
【化3】
[式中、
Gは、水素、ハロゲン又はC
1アルキル基であり;
R
1は、以下:C
1-C
30アルキル;C
1-C
18ヒドロキシアルキル;C
1-C
18アルコキシアルキル;C
2-C
30ヘテロアルキル;C
3-C
30シクロアルキル;C
2-C
8ヘテロシクロアルキル;C
2-C
20アルケニル;及びC
2-C
12アルキニルから選択される]
で表される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。
例えば、R
1は、以下:C
1-C
18アルキル、C
1-C
12ヒドロキシアルキル;C
2-C
18ヘテロアルキル、C
3-C
18シクロアルキル;C
2-C
8ヘテロシクロアルキル;C
2-C
8アルケニル、及びC
2-C
8アルキニルから選択されてよい。
【0083】
望ましくは、前記モノマーc1)は、R1がC1-C18アルキル、C1-C6ヒドロキシアルキル及びC3-C18シクロアルキルから選択されることを特徴とする。
【0084】
式(CI)に従う(メタ)アクリレートモノマーc1)の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;ヘキシル(メタ)アクリレート;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ドデシル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA);2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノドデシルエーテル(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート;及びパーフルオロオクチル(メタ)アクリレート。
【0085】
<1c)-2 芳香族(メタ)アクリレートモノマー>
組成物の第1成分は、c2)式CII:
[式中、
Qは、水素、ハロゲン又はC
1アルキル基であり;
R
2は、C
6-C
18アリール、C
1-C
9ヘテロアリール、C
7-C
18アルコキシアリール、C
7-C
18アルカリル及びC
7-C
18アラルキルから選択される]
で表される少なくとも1つの(メタ)アクリレートモノマーを含んでよい。
【0086】
式(CII)に従う例示的な(メタ)アクリレートモノマーc2)-これらは単独で又は組み合わせて使用され得る-としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンジル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート;及びフェノキシプロピル(メタ)アクリレート。
【0087】
<1c)-3 (メタ)アクリレート官能化オリゴマー>
組成物の第1成分は、(メタ)アクリレート官能化ポリウレタン、(メタ)アクリレート官能化ポリブタジエン、(メタ)アクリルポリオール(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリアミド(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーからなる群から選択されるc3)少なくとも1つの(メタ)アクリレート官能化オリゴマーを含んでよい。
【0088】
前記オリゴマーc3)は、オリゴマー骨格に結合した1以上のアクリレート基及び/又はメタクリレート基を有してよく、これらの(メタ)アクリレート官能基は、オリゴマー上の末端位置にあってもよく、及び/又はオリゴマー骨格に沿って分布していてもよい。組成物に含まれる、又は各(メタ)アクリレート官能化オリゴマーc3)は、i)1分子当たり2個以上の(メタ)アクリレート官能基を有し;及び/又は、ii)300~1000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。
【0089】
<1c)-4 さらなるエチレン性不飽和非イオン性モノマー>
本発明は、本明細書に示したc1)~c3)の定義に適合しない、さらなるエチレン性不飽和非イオン性モノマーの存在を排除しない。しかしながら、そのようなさらなるモノマーの添加は、前記さらなるモノマーc4)がエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総量の30重量%を超えないという条件によって制約されることが望ましい。
【0090】
本発明を限定する意図はないが、そのようなさらなるエチレン性不飽和非イオン性モノマーは、以下を含んでよい:α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸;α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸;α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸のC1-C6アルキル半エステル;α,β-モノエチレン性不飽和トリカルボン酸;少なくとも1つの遊離カルボン酸基を有するα,β-モノエチレン性不飽和トリカルボン酸のC1-C6アルキルエステル;エチレン性不飽和スルホン酸、例えばビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸;マレイミドモノマー、例えばマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、及びシクロヘキシルマレイミド;ニトリル基含有ビニルモノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル;アミド基含有ビニルモノマー、例えば(メタ)アクリルアミド;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、及びVEOVA(登録商標)シリーズのモノマー(Shell Chemical Company製);ビニル及びハロゲン化ビニリデン;ビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル;アルキルビニルケトン、シクロアルキルビニルケトン、アリールビニルケトン、アリールアルキルビニルケトン、及びアリールシクロアルキルビニルケトンを含むビニルケトン;芳香族又は複素環脂肪族ビニル化合物;アルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;オキシアルカンポリオールのポリ(メタ)アクリレート、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;及びビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、例えばエトキシル化ビスフェノールA(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)。
【0091】
他のエチレン性不飽和重合性非イオン性モノマーc4)の代表例としては、特に限定されないが、以下が挙げられる:エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA);メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール等のC1-C4アルコールとのフマル酸、マレイン酸、及びイタコン酸の無水物、モノエステル及びジエステル。ビニルモノマーの代表例としては、特に限定されないが、以下が挙げられる:酢酸ビニル;プロピオン酸ビニル;ビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル;及びビニルエチルケトン等の化合物が挙げられる。芳香族又は複素環式脂肪族ビニル化合物の代表例としては、特に限定されないが、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブチルスチレン、2-ビニルピロリドン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、及び1-、3-及び4-ビニルシクロヘキセン等の化合物。
【0092】
完全を期すために、上述した共重合可能な酸モノマーは、典型的には遊離酸の形態で使用されることが望ましいが、共重合への参加を損なわない限り、モノマーの構成酸基を適当な塩基で部分的又は完全に中和することを排除するものではない。
【0093】
<第2成分>
組成物の第2成分(実質的に第1成分の樹脂のための硬化剤)は、d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン、及び、d)ii)少なくとも1つのポリチオールを必然的に含む。
【0094】
本開示の組成物は、前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計に対する前記第2の成分によって提供される活性水素原子のモル比が、0.75:1~1:1、例えば0.8:1~1:1であることを特徴とする。完全を期すために、エポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計は、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(a)に導入されたエポキシド基及び(メタ)アクリレート基、前記任意のエポキシド官能性化合物(b)に導入された任意のエポキシド基、並びに前記任意のモノマー(c)によって導入された任意のエチレン性不飽和基を含む。
【0095】
上記のモル比の用語は、硬化物中に存在する未反応のチオール官能性化合物及びアミン官能性化合物の量をできる限り制限することを確実にすることを意図している:そのような未反応化合物は、その製品の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。望ましくは、硬化物はチオール官能性化合物及びアミン官能性化合物を本質的に含まないべきである。
【0096】
<d)i)ポリアミン化合物>
本組成物は、d)i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン化合物を含む。ここで、前記少なくとも1つのポリアミンd)i)は、組成物中の活性水素原子の総数の5~80%を提供する。
【0097】
その活性水素条件の制約内で、前記少なくとも1つのポリアミン化合物d)i)は、前記第2硬化剤成分の1~50重量%、好ましくは1~40重量%又は1~30重量%を構成することが望ましい。例えば、前記硬化剤成分は、2~20重量%の前記少なくとも1つのポリアミンd)i)を含んでよい。
【0098】
エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンd)i)は、特に、第1級アミン基及び/又は第2級アミン基を含み、150g/eq以下、好ましくは125g/eq以下のアミン水素当量(AHEW)を有することが望ましい。
【0099】
単独又は組み合わせて使用することができる適切なポリアミンとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
i)以下の例が言及され得る、脂肪族一級ジアミン、脂環式一級ジアミン又はアリール脂肪族一級ジアミン:2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン;1,3-ペンタンジアミン(DAMP);1,5-ペンタンジアミン;1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD);2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン);1,6-ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミン、HMDA);2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン;2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン;1,7-ヘプタンジアミン;1,8-オクタンジアミン;1,9-ノナンジアミン;1,10-デカンジアミン;1,11-ウンデカンジアミン;1,12-ドデカンジアミン;1,2-,1,3-及び1,4-ジアミノシクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA);2-及び/又は4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボランジアミン、NBDA);3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカン(TCD-ジアミン);1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA);1,8-メンタンジアミン;3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;及び、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(MXDA)。
ii)以下の具体例が言及され得る、2つ又は3つの第1級脂肪族アミン基を有する第3級アミン基含有ポリアミン:N,N’-ビス(アミノプロピル)-ピペラジン;N,N’’-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン;N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチルアミン;N,N’-ビス(3-アミノプロピル)プロピルアミン;N,N’-ビス(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン;N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-2-エチルヘキシルアミン;トリス(2-アミノエチル)アミン;トリス(2-アミノプロピル)アミン;トリス(3-アミノプロピル)アミン;及び、天然脂肪酸由来の脂肪アミンのダブルシアノエチル化及びその後の還元からの生成物、例えば、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)ドデシルアミン及びN,N’-ビス(3-アミノプロピル)獣脂アルキルアミンなど、Triameen Y12D及びTriameen YT(Akzo Nobel社製)として市販されている。
iii)以下の具体例が言及され得る、エーテル基含有脂肪族一級ポリアミン:ビス(2-アミノエチル)エーテル;3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン;4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン;4,7-ジオキサデカン-2,9-ジアミン;4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン;5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミン;4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン及びこれらのジアミンの高級オリゴマー;ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフラン及びその他のポリテトラヒドロフランジアミン;1,4-ジメチロールシクロヘキサンのプロポキシル化及びその後のアミノ化から得られる脂環式エーテル基含有ジアミン、例えばJeffamine RFD-270(Huntsman社製)として市販されている材料;ポリオキシアルキレンジオール及びポリオキシアルキレントリオールのアミノ化からの生成物として得られるポリオキシアルキレンジアミン又はポリオキシアルキレントリアミン、これはJeffamine(Huntsman社製)の名称、ポリエーテルアミン(BASF社製)の名称又はPC Amines(Nitroil社製)の名称で商業的に入手可能である。Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine D-600、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、Jeffamine T-403、Jeffamine T-3000、Jeffamine T-5000、Jeffamine EDR-104、Jeffamine EDR-148及びJeffamine EDR-176、並びにBASF社又はNitroil社からの対応するアミンの使用が特に好ましいとして言及され得る。
iv)以下の例が言及され得る、第二級アミン基を有する第一級ジアミン:3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(BHMT);ジエチレントリアミン(DETA);トリエチレンテトラミン(TETA);テトラエチレンペンタミン(TEPA);ペンタエチレンヘキサミン(PEHA);5~7のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(いわゆる「高級エチレンポリアミン」HEPA)などの線状ポリエチレンアミンの高級同族体;ジプロピレントリアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N3-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(N4-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、N-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N-(3-アミノペンチル)-1,3-ペンタンジアミン、N-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン又はN,N’-ビス(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミンなどの、少なくとも二つの第一級アミン基を有する第一級ジアミン及び第一級ポリアミンの多重シアノエチル化又はシアノブチル化及びその後の水素化から得られる生成物。
v)以下の例が言及され得る、1つの第一級及び少なくとも1つの第二級アミノ基を有するポリアミン:N-ブチル-1,2-エタンジアミン;N-ヘキシル-1,2-エタンジアミン;N-(2-エチルヘキシル)-1,2-エタンジアミン;N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン;4-アミノメチル-ピペリジン;N-(2-アミノエチル)ピペラジン;N-メチル-1,3-プロパンジアミン;N-ブチル-1,3-プロパンジアミン;N-(2-エチルヘキシル)-1,3-プロパンジアミン;N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン;3-メチルアミノ-1-ペンチルアミン;3-エチルアミノ-1-ペンチルアミン;3-シクロヘキシルアミノ-1-ペンチルアミン;N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミンなどの脂肪族ジアミン;第一級脂肪族ジアミンとアクリロニトリル、マレイン酸ジエステル又はフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、アクリル酸アミド及びメタクリル酸アミド、並びにイタコン酸ジエステルとを1:1のモル比で反応させたMichaelタイプ付加反応からの生成物;アルデヒド又はケトンによる第一級ポリアミンの部分還元アルキル化による生成物、特に2つの第一級アミン基を有する前基記ポリアミン、特に1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、BHMT、DETA、TETA、TEPA、DPTA、N3-アミン及びN4-アミンのN-モノアルキル化生成物、ここで好ましいアルキル基はベンジル、イソブチル、ヘキシル及び2-エチルヘキシルである;及び、Gaskamine(登録商標)240(三菱ガス化学社製)として市販されているような、部分スチレン化ポリアミン。
vi)第二級ジアミン及び、特に、2つの第一級アミン基を有する前記ポリアミン、特に1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、BHMT、DETA、TETA、TEPA、DPTA、N3-アミン又はN4-アミンのN,N’-ジアルキル化生成物、ここで好ましいアルキル基は2-フェニルエチル基、ベンジル基、イソブチル基、ヘキシル基及び2-エチルヘキシル基である。
vii)以下の言及され得る、芳香族ポリアミン:m-及びp-フェニレンジアミン;4,4’-、2,4’及び2,2’-ジアミノジフェニルメタン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA);2,4-及び2,6-トリレンジアミン;3,5-ジメチルチオ-2,4-トリレンジアミン及び3,5-ジメチルチオ-2,6-トリレンジアミンの混合物(Albermarle社からEthacure(登録商標)300として入手可能);3,5-ジエチル-2,4-トリレンジアミン及び3,5-ジエチル-2,6-トリレンジアミンの混合物(DETDA);3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-DEA);3,3’,5,5’-テトラエチル-2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-CDEA);3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-MIPA);3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-DIPA);4,4’-ジアミノジフェニル-スルホン(DDS);4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンゼンスルホンアミド;5,5’-メチレンジアンスラニル酸;ジメチル-(5,5’-メチレンジアンスラニレート);1,3-プロピレン-ビス(4-アミノベンゾエート);1,4-ブチレン-ビス(4-アミノベンゾエート);ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-アミノベンゾエート)(Air Products社からVersalink(登録商標)として入手可能);1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、2-メチルプロピル-(4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート);並びに、Tert.ブチル-(4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート)。
viii)表示する構成(indicative members)が一価又は多価のカルボン酸もしくはそのエステル又は無水物、(特に二量体脂肪酸)と脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン又は芳香族ポリアミン、例えばDETA又はTETAなどのポリアルキレンアミンとの反応生成物を含む、ポリアミドアミン。市販のポリアミドアミンは、(Cognis社から)Versamid(登録商標)100、125、140及び150;(Huntsman社から)Aradur(登録商標)223、250及び848;(Huntsman社から)Euretek(登録商標)3607及び530;並びに、(Cytec社から)Beckopox(登録商標)EH651、EH654、EH655、EH661及びEH663を含む。
ix)マンニッヒ塩基、例えばフェナルカミン、特に、カルダノール(CAS番号:37330-39-5)、アルデヒド及びアミンの縮合から得られるフェナルカミン。このような縮合反応における反応体アミンは、望ましくはエチレンジアミン又はジエチルトリアミンである。マンニッヒ塩基及びフェナルカミンは当該技術分野で知られており、適用な例としては、市販されているフェナルカミンCardolite(登録商標)NC-541、NC-557、NC-558、NC-566、Lite 2001及びLite 2002(Cardolite社製)、Aradur(登録商標)3440、3441、3442及び3460(Huntsman社製)、及びBeckopox(登録商標)EH 614、EH 621、EH 624、EH 628及びEH 629(Cytec社製)が挙げられる。
【0100】
前記ポリアミンの中で好ましいものは以下である:Ancamine 2678、Ancamine 1767、Ancamine 2636及びAncamine 2641(Evonik Corporation製);NX-5607、NC-557、NC-566及びNX-5608(Cardolite Corporation製);並びに、DETA、TETA、TEPA及びAEP(Tosoh Corporation製)。
【0101】
<d)ii)ポリチオール>
本発明の組成物は、d)ii)少なくとも1つのポリチオールを含む。ここで、前記少なくとも1つのポリチオールd)ii)は、組成物中の活性水素原子の総数の20~95%を提供する。
【0102】
その活性水素条件の制約内で、d)ii)前記少なくとも1つのポリチオールは、前記硬化剤成分b)の50~99重量%、好ましくは60~99重量%又は70~99重量%を構成すべきである。例えば、硬化剤成分は、80~98重量%のd)ii)前記少なくとも1つのポリチオールを含んでよい。
【0103】
好ましい実施形態において、組成物に含まれる前記又は各ポリチオールは、2~5個のチオール基、例えば2~4個のチオール基を有することが望ましい。その官能性条件とは独立して、又はその官能性条件に加えて、組成物に含まれる前記又は各ポリチオールは、100~700g/eq、例えば100~250g/eqのチオール当量を有することが望ましい。
【0104】
単独で又は組み合わせて使用することができる好適なチオール基含有化合物としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
- 液状チオール(SH)末端ポリスルフィドポリマーの市販例としては、以下のものが挙げられる:Thiokol(登録商標)ポリマー(Morton Thiokol社から入手可能)、特にそのタイプLP-3、LP-33、LP-980、LP-23、LP-55、LP-56、LP-12、LP-31、LP-32及びLP-2;並びにThioplast(登録商標)ポリマー(Akzo Nobel社から入手可能)、特にそのタイプG10、G112、G131、G1、G12、G21、G22、G44及びG4。
- チオール(SH)末端ポリオキシアルキレンエーテル:ポリオキシアルキレンジオール及びトリオールをエピクロルヒドリン又はアルキレンオキシドと反応させ、次いで硫化水素ナトリウムを反応させることにより得られる。
- ポリオキシアルキレン誘導体の形態のチオール(SH)-末端化合物は、GPM-800(登録商標)(Gabriel Performance Products社製)及びCapcure(登録商標)(Cognis社製)の商品名で知られており、特にそのタイプはWR-8、LOF及び3-800である。
- チオール(SH)末端ポリチオエーテル。
- チオカルボン酸のポリエステル、例えばメルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸、及びメルカプトコハク酸。このようなポリエステルの具体例としては、以下が挙げられる:エチレングリコールビスチオグリコレート;1,4-ブタンジオールビス(チオグリコレート);1,6-ヘキサンジオールビス(チオグリコレート);トリメチロールプロパントリスチオグリコレート;ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート;ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート;ペンタエリスリトールテラキス(3-メルカプトプロピオネート);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);グリコールジメルカプトアセテート;及び、ポリオキシアルキレンジオール及びトリオール、エトキシ化トリメチロールプロパン及びポリエステルジオールと、チオカルボン酸、例えばメルカプト酢酸(チオグリコール酸)及び2-又は3-メルカプトプロピオン酸とのエステル化生成物。
- 1,3,5-トリメルカプトメチルベンゼン、4,4’-チオジベンゼンチオール、1,3,5-トリメルカプトメチル-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4、6-ジメルカプト-s-トリアジン、2,2′-(エチレンジオキシ)-ジエタンチオール(トリエチレングリコールジメルカプタン)、エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール及び/又は1,4-ブタンジチオール。
- トリス(2-(メルカプトプロピオニルオキシ)エチル)イソシアネート。
【0105】
本明細書において有用な市販のポリチオール化合物の更なる例としては、以下が挙げられる:ポリチオールQE-340M(東レファインケミカル株式会社製);THIOCURE(登録商標)ETTMP(Bruno Bock Chemische Fabrik GmbH & Co. KG製);JER Mate QX11、QX12、JERCure QX30、QX40、QX60及びQX900(ジャパンエポキシレジンから製);及びKF-2001、KF-2004、X-22-167B(信越産業製)。
【0106】
チオール(SH)末端ポリオキシアルキレンエーテル及びチオカルボン酸のポリエステルの使用が好ましいことが認められる。ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)、トリス(2-(メルカプトプロピオニルオキシ)エチル)イソシアネート及びグリコールジメルカプトアセテートの少なくとも1つの使用が好ましいことが言及される。
【0107】
<添加剤及び補助成分>
本発明で得られる前記組成物は、典型的には、これらの組成物に向上した特性を付与することができる助剤及び添加剤を更に含むであろう。例えば、助剤及び添加剤は、向上した弾性特性;向上した弾性回復;より長い有効処理時間;より速い硬化時間;及び、より低い残留タックの1つ以上を付与してよい。互いに独立して、2(2K)成分組成物の一方の成分又は両成分に含まれてよい、このような助剤及び添加剤に含まれるものは:触媒、可塑剤、紫外線安定剤を含む安定剤、抗酸化剤、強化剤、フィラー、乾燥剤、接着促進剤、殺菌剤、難燃剤、レオロジー助剤、着色顔料又は着色ペースト、溶剤及び非反応性希釈剤である。
【0108】
完全を期すため、一般に、エポキシド反応性基又は(メタ)アクリレート反応性基を含む補助材料及び添加剤は、2(2K)成分組成物の硬化剤成分に配合されることに留意されたい。エポキシド基、(メタ)アクリレート基、又は硬化剤と反応する材料は、一般に2(2K)成分組成物の第1成分に配合される。非反応性の材料は、第1成分及び第2成分のいずれか一方又は両方に配合されてよい。
【0109】
このような助剤及び添加剤は、組成物の性質及び本質的な特性に悪影響を及ぼさない限り、所望の組み合わせ及び割合で使用され得る。場合によっては例外も存在するが、これらの助剤及び添加剤は、全体で組成物全体の50重量%を超えるべきでなく、好ましくは組成物の20重量%を超えて含まれるべきではない。
【0110】
本発明の組成物は、任意にマイケル付加触媒を含んでよく、本明細書において、マイケル付加触媒とは、ポリチオール化合物と(メタ)アクリル基含有化合物との間のマイケル付加反応を促進することができる化合物をいう。従来、マイケル付加触媒としては、アミン系触媒、塩基触媒及び有機金属触媒が挙げられ、これらのタイプは単独で又は組み合わせて使用されてよい。例示的なアミン系触媒としては、プロリン;トリアザビシクロデセン(TBD);ジアザビシクロウンデセン(DBU);ヘキサヒドロメチルピリミドピリジン(MTBD);ジアザビシクロノナン(DBN);テトラメチルグアニジン(TMG);及びトリエチレンジアミン(TED、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)が挙げられる。塩基触媒の例としては、ナトリウムメトキシド;ナトリウムエトキシド;カリウムt-ブトキシド;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;金属ナトリウム;リチウムジイソプロピルアミド(LDA);及びブチルリチウムが挙げられる。例示的な有機金属触媒としては、ルテニウム触媒、例えば、(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)ルテニウム及び水素化ルテニウム;鉄触媒、例えば、塩化鉄(III)及びアセチルアセトナート鉄;ニッケル触媒、例えば、アセチルアセトナートニッケル、酢酸ニッケル及びサリチルアルデヒドニッケル;銅触媒;パラジウム触媒;スカンジウム触媒;ランタン触媒;イッテルビウム触媒;及びスズ触媒が挙げられる。
【0111】
マイケル付加触媒は、本明細書において、組成物の重量に基づいて、0~5重量%、例えば0~2重量%の量で採用されてよい。しかしながら、そのようなマイケル付加触媒が組成物中に存在する必要はないことが繰り返され、実際、好ましい実施形態において、組成物は実質的にマイケル付加触媒を含まない。
【0112】
本発明の目的のための「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、したがってその加工性を容易にする物質である。ここで、可塑剤は、組成物の全重量に基づいて、最大5重量%を構成することができ、好ましくは、ポリジメチルシロキサン(PDMS);ジウレタン;単官能、直鎖又は分岐のC4-C16アルコールのエーテル、例えばCetiol OE(Cognis Deutschland GmbH社、Duesseldorf製);アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸エステル及びクエン酸のエステル;ニトロセルロース及びポリ酢酸ビニルに基づくエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基含有脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリエーテル可塑剤、例えば末端キャップポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール;ポリスチレン;炭化水素可塑剤;塩化パラフィン;及び、これらの混合物からなる群から選択される。原則として、フタル酸エステルを可塑剤として使用することができるが、これらはその毒物学的な潜在性のために好ましくないことが留意される。可塑剤は、1以上のポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む、又はからなることが好ましい。
【0113】
本発明の目的のための「安定剤」は、酸化防止剤、紫外線安定剤、又は加水分解安定剤と理解される。ここで安定剤は、組成物の全重量に基づいて、全体で最大10重量%又は最大5重量%を構成することができる。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な市販例としては、立体障害フェノール;チオエーテル;ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノン;ベンゾエート;シアノアクリレート;アクリレート;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン;リン;硫黄;及び、それらの混合物、が挙げられる。
【0114】
本発明のそれらの組成物は、任意に、エポキシ樹脂マトリックス中に分散されたコアシェル粒子の形態の強化ゴムを含んでよい。「コアシェルゴム」又はCSRという用語は、エラストマー又はゴム状ポリマーを主成分として含むポリマーによって形成されるゴム粒子コア及び、該コアにグラフト重合されるポリマーによって形成されるシェル層とを示すものとして、当技術分野におけるその標準的意味に従って用いられるものである。シェル層は、グラフト重合工程において、ゴム粒子コアの表面を部分的又は全体的に覆う。重量で、コアは、コアシェルゴム粒子の少なくとも50重量%を構成することが望ましい。
【0115】
コアの高分子材料は、0℃以下のガラス転移温度(Tg)を有することが望ましく、好ましくは、-20℃以下、より好ましくは-40℃以下、更により好ましくは、-60℃以下のガラス転移温度(Tg)である。シェルのポリマーは、室温より上、好ましくは30℃より上、より好ましくは50℃より上のガラス転移温度(Tg)を有する非エラストマー、熱可塑性又は熱硬化性ポリマーである。
【0116】
本発明を限定する意図はないが、コアは、ジエンホモポリマー、例えばブタジエン又はイソプレンのホモポリマー;ジエンコポリマー、例えばブタジエン又はイソプレンと1以上のエチレン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル又は(メタ)アクリレートなどとのコポリマー;(メタ)アクリル酸エステルモノマーに基づくポリマー、例えばポリブチルアクリレートなど;及びポリシロキサンエラストマー、例えば、ポリジメチルシロキサン及び架橋ポリジメチルシロキサンなどを含んでよい。
【0117】
同様に本発明を限定する意図はないが、シェルは、(メタ)アクリレート、例えばメチルメタクリレートなど;ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンなど;シアン化ビニル、例えばアクリロニトリルなど;不飽和酸及び無水物、例えばアクリル酸など;及び、(メタ)アクリルアミドから選択される1以上のモノマーのポリマー又はコポリマーで構成されてよい。シェルに使用されるポリマー又はコポリマーは、金属カルボキシレート形成、特に2価の金属カチオンの塩を形成することでイオン的に架橋された酸基を有していてよい。また、シェルポリマー又はコポリマーは、1分子あたり2つ以上の二重結合を有するモノマーによって共有結合的に架橋されてもよい。
【0118】
いくつかの含まれるコアシェルゴム粒子が、10nm~300nm、例えば50nm~200nmの平均粒子径(d50)を有することが好ましい。前記粒子径は、粒子の分布における粒子の直径又は最大寸法を表し、動的光散乱を介して測定される。
【0119】
本発明は、せん断強度、剥離強度及び樹脂破壊靭性を含む、得られる硬化生成物の主要特性のバランスを提供するために、組成物中に粒径の異なる2種類のコアシェルゴム(CSR)粒子が存在することを排除するものではない。本実施形態において、より小さい含有粒子(第1CSRタイプ)は、10~100nmの平均粒径を有してよく、より大きい含有粒子(第2CSRタイプ)は、120nm~300nm、例えば150~300nmの平均粒径を有してよい。より小さいコアシェルゴム粒子は、典型的には、重量基準でより大きい粒子よりも過剰に採用されることが望ましい:例えば、3:1~5:1のより小さいCSR粒子対より大きいCSR粒子の重量比が採用されてよい。
【0120】
コアシェルゴムは、市販品から選択されてよく、その例としては、以下が挙げられる:Paraloid EXL2650A、EXL2655及びEXL2691A(ダウ ケミカル社製);Kane Ace(登録商標)MXシリーズ(カネカ社製)、特にMX120、MX125、MX130、MX136、MX551、MX553;及びメタブレンSX-006(三菱レイヨン社製)。
【0121】
コアシェルゴム粒子は、組成物の総重量に基づいて0~10重量%、例えば0~5重量%の量で組成物中に含まれることが望ましい。
【0122】
前述のように、本発明による組成物は、追加的に充填剤を含むことができる。ここで適しているものは、例えば、白亜、石灰粉末、沈降及び/又は焼成ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、アルミナ、クレイ、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、ガラス粉及びその他の粉砕された鉱物物質である。有機充填剤、特にカーボンブラック、グラファイト、木材繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木材チップ、刻んだわら、もみがら、すりつぶしたクルミの殻、及び他の刻んだ繊維も使用できる。ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維又はポリエチレン繊維などの短繊維も添加できる。アルミニウム粉末も同様に充填剤として適している。
【0123】
焼成及び/又は沈殿ケイ酸は、有利には、10~90m2/gのBET表面積を有する。使用する場合、それらは本発明による組成物の粘度を更に増加させないが、硬化した組成物の強化に寄与する。
【0124】
ここから
同様に、より大きいBET表面積、有利には100~250m2/g、特に110~170m2/gを有する焼成及び/又は沈降ケイ酸を充填剤として使用することが考えられる:これは、より大きいBET表面積であれば、硬化組成物を強化する効果がケイ酸のより少ない重量割合で達成されるからである。
【0125】
充填剤として同様に適しているものは、鉱物シェル又はプラスチックシェルを有する中空球である。これらは、例えばGlass Bubbles(登録商標)の商品名で市販されている中空ガラス球であり得る。Expancel(登録商標)又はDualite(登録商標)などのプラスチック系中空球を使用してよく、それらは欧州特許第 0 520 426 B1に記載されている:それらは無機又は有機物質で構成され、それぞれ1mm以下、好ましくは500μm以下の直径を有する。
【0126】
組成物にチキソトロピーを付与する充填剤は、多くの用途に好ましい場合がある:このような充填剤はレオロジー補助剤としても記載され、例えば水素化ヒマシ油、脂肪酸アミド又はPVCなどの膨潤性プラスチックである。
【0127】
本発明の組成物中に存在する充填剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0~20重量%である。硬化性組成物の所望の粘度は、典型的には、添加される充填剤の総量によって決定され、適切なディスペンス装置-例えばチューブ-から容易に押し出し可能であるために、硬化性組成物は、3000~150,000mPasの粘度を有するべきであることが提示される。
【0128】
硬化性接着剤の基材表面への接着性を高めるために、本発明の組成物において金属キレート特性を有する化合物が使用され得ることに留意されたい。更に、接着促進剤としての使用にも適しているのは、King Industries社からK-FLEX XM-B301の商品名で販売されているアセトアセテート官能基化改質樹脂である。
【0129】
適当な顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、又はカーボンブラックである。
【0130】
保存性を更に高めるために、乾燥剤を使用することによって、水分浸透に関して、本発明の組成物を更に安定化させることがしばしば望ましい。
【0131】
本発明の組成物中の溶媒及び非反応性希釈剤の存在も、これがそれらの粘度を有用に調節し得る場合には、排除されない。例えば、例示のためにすぎないが、組成物は、以下の1以上を含んでよい:アルカン及びハロゲン化アルカン溶媒;シクロアルカン溶媒、例えばシクロペンタン及びシクロヘキサン;芳香族溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンジフェニルメタン、及びジイソプロピルナフタレン;エーテル溶媒、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル及びエチレングリコールジフェニルエーテル;N-メチルピロリドン;石油留分、例えばSolvesso(登録商標)製品(Exxon社製);エステル系溶剤、例えばアジピン酸エステル、セバシン酸エステル、フタル酸エステル、及び安息香酸エステル;有機リン酸エステル又はスルホン酸エステル;及びスルホンアミド。
【0132】
上記はさておき、前記溶媒及び非反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、合計で10重量%未満、特に5重量%未満又は2重量%未満であることが好ましい。
【0133】
<2成分組成物の例示的な実施形態>
本発明を限定することを意図しない例示的な一実施形態において、スナップ硬化可能な2成分(2K)組成物は、以下:
第1成分の重量に基づいて、
70~100重量%、好ましくは80~100重量%のa)少なくとも1つのエポキシ(メタ)アクリレート化合物、ここで、前記化合物は、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのエポキシド基を有し、(メタ)アクリル酸と、多価アルコールのポリグリシジルエーテル;多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;及びエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素からなる群から選択されるポリエポキシド化合物との付加物として入手可能である;
0~15重量%、好ましくは0~10重量%のb)(メタ)アクリレート官能性を有さない少なくとも1つのエポキシド化合物;及び、
0~15重量%、好ましくは0~10重量%のc)エポキシド官能性を有さない少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマー;
を含む第1成分;
d)i)エポキシド基に対して反応性である少なくとも2つのアミン水素原子を有する少なくとも1つのポリアミン、前記少なくとも1つのポリアミンは、第1級及び/又は第2級アミン基を含み、150g/eq以下のアミン水素当量(AHEW)を有する;及び
d)ii)少なくとも1つのポリチオール化合物、前記少なくとも1つのポリチオール化合物は、100~250g/eqのチオール当量を有し、チオカルボン酸のポリエステル又はチオール(SH)末端ポリオキシアルキレンエーテルから選択される、
を含む第2成分を含み、
ここで、前記組成物は:
前記第2成分によって提供される活性水素原子と前記第1成分によって提供されるエポキシド基及びエチレン性不飽和基の合計とのモル比は、0.8:1~1:1であり;
前記少なくとも1つのポリアミンd)i)は、組成物中の活性水素原子の総数の5~80%を提供し;かつ
前記少なくとも1つのポリチオールd)ii)は、組成物中の活性水素原子の総数の20~95%を提供する。
【0134】
<方法及び用途>
2成分(2K)硬化性組成物では、その硬化を誘発するような方法で反応性成分を一緒にして、混合する。反応性化合物は、均一な混合物を得るために十分なせん断力の下で混合されるのが望ましい。これは、特別な条件や特別な装置なしに達成できると考えられている。そうではあるが、適切な混合装置としては、静的混合装置;磁気撹拌棒装置;ワイヤーウィスク装置;オーガー(augers);バッチミキサー;プラネタリーミキサー;C.W.Brabender又はBanburry(登録商標)スタイルのミキサー;及び高せん断ミキサー、例えばブレードスタイルブレンダー及び回転インペラなどが挙げられ得る。
【0135】
一般に2リットル未満の容量が使用される小規模用途の場合、2成分(2K)組成物の好ましい包装は、サイドバイサイドのダブルカートリッジ又は同軸カートリッジであり、このカートリッジでは、2つの管状チャンバ-が互いに並んで又は互いに内部に配置されて、ピストンによって密封される。これらのピストンの駆動は、カートリッジから成分を押し出すことを可能にし、有利には密接して取り付けられた静的又は動的ミキサーを通して押し出すことができる。大容量用途の場合、組成物の2成分は、有利にドラム又はペール缶に保存される。この場合、2成分は油圧プレス、特にフォロワープレートによって押し出され、パイプラインを介して、硬化剤成分及びバインダー成分の微細かつ高度に均質な混合を保証できる混合装置へ供給される。いずれにせよ、どのようなパッケージであっても、バインダー成分が気密及び湿気のない密閉状態で配置されることが重要であり、それによって両成分が長期間、理想的には12カ月以上保存できる。
【0136】
本発明に適し得る2成分ディスペンシング装置及び方法の非限定的な例としては、米国特許第6,129,244号及び米国特許第8,313,006号に記載されているものが挙げられる。
【0137】
2(2K)成分硬化性組成物は、広義には、25℃で50000mPa・s未満の初期粘度(混合直後、例えば混合後最大2分内に決定される)を示すように配合されることが望ましい。前記粘度特性とは独立して、又は前記粘度特性に加えて、2(2K)成分組成物は、混合及びその後の硬化時に気泡(泡)を含まないように配合されることが望ましい。
【0138】
上述のように、本開示の2成分(2K)組成物は、室温スナップ硬化性である。とはいえ、本発明の組成物の硬化は、-10℃~120℃、例えば0℃~70℃、特に20℃~60℃の範囲の温度で起こり得る。適当な温度は、存在する特定の化合物及び所望の硬化速度に依存し、必要に応じて簡単な予備試験を用いて、当業者によって個々の場合に決定され得る。もちろん、10℃~35℃又は20℃~30℃の温度での硬化は、混合物を通常一般的な周囲温度から実質的に加熱又は冷却する必要がなくなるので、特に有利である。しかしながら、適用可能な場合には、2(2K)成分組成物の各成分から形成される混合物の温度は、マイクロ波誘導を含む従来の手段を使用した混合温度及び/又は塗布温度よりも上昇されてよい。
【0139】
前述のように、本発明の組成物は室温でスナップ硬化性を示す。加えて、本発明の組成物は、熱硬化条件への曝露が意図的に遅延される特定の用途(後述するフィルム接着剤の調製など)において何らかの有用性を有してよい光照射下での部分硬化を示す。適用される組成物の部分的な光硬化を促進するために使用されるエネルギー源は、紫外線(UV)放射、赤外線(IR)放射、可視光線、X線、ガンマ線、又は電子ビーム(e-beam)の少なくとも1つを放出する。
【0140】
照射紫外線は、通常、150~600nm、好ましくは200~450nmの波長を有することが望ましい。有用な紫外線光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低輝度蛍光灯、メタルハライドランプ、マイクロ波パワーランプ、キセノンランプ、UV-LEDランプ、及びエキシマレーザー及びアルゴンイオンレーザーなどのレーザービーム光源が挙げられる。
【0141】
適用される組成物を硬化するために電子ビームを使用する場合、操作装置の標準的なパラメーターは、0.1~100keVの加速電圧;10~10-3Paの真空;0.0001~1アンペアの電子電流;及び0.1ワット~1キロワットの電力である。
【0142】
個々の組成物の部分的硬化を誘発するのに必要な放射線の量は、放射線の照射角度及び適用される組成物の厚さを含む様々な要因に依存する。しかしながら、大まかに、5~5000mJ/cm2の硬化投与量が典型的なものとして挙げられる:50~500mJ/cm2、例えば50~400mJ/cm2の硬化投与量は、非常に効果的であると考えてよい。
【0143】
本発明による硬化性組成物は、特に以下の用途に有用であり得る:注型樹脂;ワニス;繊維及び/又は粒子の結合剤;ガラスのコーティング;鉱物建材のコーティング、例えば石灰(及び/又はセメント)結合プラスター、石膏含有表面、繊維セメント建材及びコンクリート;木材及び木質材料のコーティング及びシーリング、例えばチップボード、繊維ボード及び紙;金属表面のコーティング;アスファルト及びビチューメン含有の舗装のコーティング;種々のプラスチック表面のコーティング及びシーリング;並びに皮革及び織物のコーティング。
【0144】
第一の好ましい実施形態では、本発明の組成物を基材に塗布して、粘着性の、高い耐摩耗性コーティングを製造する。コーティング操作は、多くの場合、室温で実施され得り、硬化後に効果的な耐摩耗性を達成することができる。更に、機械構造物又は床もしくは舗装の表面をコーティングする場合、本組成物は、表面に腐食保護を提供することができ、特定の構造物の操作又は効率に有害な化合物に表面が接触するのを防止することができる。
【0145】
特に好ましい実施形態において、本発明の組成物は、第1及び第2基材の接着に使用される:組成物は、2つの基材の間に塗布され、任意に、熱及び/又は圧力の適用下で、硬化することが許容される。一実施形態では、組成物は、第1基材の少なくとも1つの表面(S1)及び第2基材の少なくとも1つの表面(S2)に塗布されてよく、第1及び第2基材の各表面(S1、S2)は、組成物を介在させて接触される。代替的な実施形態では、組成物は、第1基材の表面にのみ塗布されてよく、その表面は、その後、第2基材と接触させられる。
【0146】
第1及び第2基材は、同一であっても異なっていてもよいが、いずれの場合も特に制限されない。接合されてよい基板は、例えば、以下を含む、又はからなる:鉄系金属材料、例えば鉄、ステンレス鋼、冷間圧延鋼、及び電気亜鉛めっき鋼;非鉄金属材料、例えばアルミニウム、亜鉛、及びそれらの合金;シリコン材料、例えばガラス、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン又は酸化シリコン;エンジニアリングプラスチック;熱可塑性プラスチック、例えば、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)などが挙げられるポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)及びアクリロニトリル ブタジエン スチレン(ABS);並びに炭素材料、例えば炭素繊維。
【0147】
完全を期すために、第1及び第2基材の形状も、基材が接着され得る形状を有する限り、特に制限されない。望ましくは、接着される第1基材は、第2基材の表面と相補的な形状を有する表面を有し、第1及び第2基材が、その間に配置された組成物と嵌合することを可能にする。
【0148】
上述の各用途において、組成物は、以下のような従来の塗布方法によって塗布されてよい:はけ塗り(brushing);例えば、組成物が無溶媒である場合は4塗布ロール装置又は溶媒含有組成物用の2塗布ロール装置を使用するロールコーティング;ドクターブレードアプリケーション;プリンティング法;及び空気噴霧スプレー、空気補助スプレー、エアレススプレー及び大容量低圧スプレーが含まれるがこれらに限定されないスプレー法。コーティング及び接着剤の用途では、組成物を10~500μmの湿潤膜厚で塗布することが推奨される。この範囲内でより薄い層を適用することはより経済的であり、コーティング用途では研磨が必要となり得る厚い硬化領域の可能性が低くなる。しかしながら、不連続な硬化フィルムの形成を回避するために、より薄いコーティング又は層を塗布する際には、十分な制御が行われなければならない。
【0149】
完全を期すために、本発明は「フィルム接着剤」の形態で組成物を調製することを排除しないことに留意されたい。a)前記エポキシド官能性樹脂、硬化剤、及び他の所望の成分のプレポリマー混合物を、ポリマーフィルム基材上にコーティングとして塗布し、巻き取り、成分間の化学反応を抑制するために十分に低い温度で保存する。必要に応じて、フィルム接着剤を低温環境から取り出し、金属又は複合部品などの基材に適用し、高分子バッキングフィルムを剥がし、アセンブリを完成させ、任意にオーブン又はオートクレーブの高温で硬化させる。
【0150】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0151】
【0152】
<実施例1~4及び比較例5~6>
以下の表1に従い組成物を調製した。2成分を一緒にして、スピードミキサー(1200rpm;1分間)で混合し、均一な混合物の形成を確保した。
【0153】
【0154】
混合後、1g重量の各組成物のゲルタイムを、Gardner Standard Model Gel Timerを用いて、25℃、相対湿度50%(RH)で測定した。結果を以下の表2に示す。
【0155】
【0156】
前述の説明及び実施例に鑑みて、当業者には特許請求の範囲から逸脱することなく、それらの同等の修正を行うことができることが明らかであろう。
【国際調査報告】