(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】センサ信号用のオフセット補償のための方法、オフセット補償装置及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
G01P 21/02 20060101AFI20241016BHJP
B60T 8/173 20060101ALI20241016BHJP
G01P 3/46 20060101ALI20241016BHJP
B60T 8/171 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
G01P21/02
B60T8/173
G01P3/46 E
B60T8/171 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520909
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 DE2022200080
(87)【国際公開番号】W WO2023057013
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021211337.0
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522296653
【氏名又は名称】コンチネンタル・オートモーティヴ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1, 30175 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】クノーブロホ・アンゼルム
(72)【発明者】
【氏名】ミヒェル・フランク
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246GA25
3D246HA64C
3D246HC05
3D246KA02
3D246KA04
(57)【要約】
本発明は、オフセット補償装置(15)によるセンサ信号用のオフセット補償のための方法に関し、オフセット補償装置は、N個の素子を含むシフトレジスタ(17)、平均化ユニット(19)及びローパスフィルタ(21)を備え、この方法は、以下の、
- センサ値を前記シフトレジスタ(17)に格納するステップと、
- シフトレジスタ(17)の最初の素子とシフトレジスタ(17)の最後の素子の差を計算するステップと、
- 複数の平均値を決定するステップであって、以下の、
a)差が閾値Sよりも大きい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を開始するステップと、
b)差が閾値-Sよりも小さい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を停止するステップと、
が実行されるステップと、
- 平均値に基づいて前記ローパスフィルタ(21)を使用して最低信号レベルを決定するステップと、
- 最低信号レベルと基準電流値の差を計算することによってオフセットを決定するステップと、
- 決定されたオフセットを使用してセンサ値を補正するステップと、
が実行されることを含む。
本発明は更に、オフセット補償装置及びセンサ装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット補償装置(15)によるセンサ信号用のオフセット補償のための方法であって、前記オフセット補償装置は、N個の素子を含むシフトレジスタ(17)、平均化ユニット(19)、及びローパスフィルタ(21)を備え、前記方法は、以下の、
- センサ値を前記シフトレジスタ(17)に格納するステップと、
- 前記シフトレジスタ(17)の最初の素子と前記シフトレジスタ(17)の最後の素子の差を計算するステップと、
- 複数の平均値を決定するステップであって、以下の、
a)前記差が閾値Sよりも大きい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を開始するステップと、
b)前記差が閾値-Sよりも小さい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を停止するステップと、
が実行されるステップと、
- 前記平均値に基づいて前記ローパスフィルタ(21)を使用して最低信号レベルを決定するステップと、
- 最低信号レベルと基準電流値の差を計算することによってオフセットを決定するステップと、
- 前記決定されたオフセットを使用して前記センサ値を補正するステップと、
が実行されることを含む、方法。
【請求項2】
前記シフトレジスタ(17)の数Nは、エッジの少なくともすべてのサンプルを格納できるように選択され、Nが2より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均化ユニット(19)のウィンドウが、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも長くなるように選択され、その結果、前記平均化が前記プロトコルの後にのみ行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記平均化ユニット(19)の前記ウィンドウは、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも短くなるように選択され、その結果、前記平均化がプロトコル中に複数回完了する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下の、
- 評価回路(3)によって少なくとも1つのセンサ(1)に電圧を供給するステップと、
- 前記センサ(1)によってセンサ電流を変調するステップと、
- 前記評価回路(3)によって前記センサ電流を測定及び評価するステップと、
が実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記評価回路(3)がハイサイドパス(5)及びローサイドパス(7)を有し、以下の、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)を並行して使用するステップと、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)の現在のオフセット値を決定するステップと、
が実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下の、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)の前記決定されたオフセット値を構成的にオーバーレイし、ベクトルを形成するステップ
が実行される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
センサ信号のオフセットを補償するためのオフセット補償装置(15)であって、
前記オフセット補償装置(15)はシフトレジスタ(17)及び平均化ユニット(19)を有し、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計されていることを特徴とする、オフセット補償装置(15)。
【請求項9】
請求項8に記載のオフセット補償装置(15)と、評価装置(13)と、少なくとも1つのセンサ(1)とを備えるセンサ装置であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実行するように設計されているセンサ装置。
【請求項10】
前記センサ(1)が電気ブレーキシステム用の車輪速度センサである、請求項9に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文に従ったセンサ信号用のオフセット補償のための方法、請求項7に従ったオフセット補償装置、及び請求項8に従ったセンサ装置に関する。
【0002】
本発明は、センサ、特に電子ブレーキシステムの車輪速度センサ(RDS)からの不正確な信号の分析及び修正に関する。RDSからの信号は、電流レベル遷移又は定義された電流パルスの形で、RDSの電源の正及び負の端子上で変調される。
【背景技術】
【0003】
RDS信号は基本的に、誤差の原因として2つのカテゴリに分類される。内部センサ誤差(センサ素子自体の誤差)は、通常、センサ素子に対する電気的又は機械的な影響によって引き起こされる。センサ素子に欠陥があると、直ちに不正確なRDS信号が発生する可能性がある。RDS信号の伝送チャネルの誤差(特に、環境の影響、経年劣化、機械的外乱など、及びチャネルの絶縁によって引き起こされる)も、直ちに不正確なRDS信号を引き起こす可能性がある。
【0004】
RDS信号は通常、RDSとマイクロコントローラ(MCU)の間の電気リンクであるアナログ信号インタフェースによって調整(取得及び処理)される。この信号インタフェースは、RDSとMCU間の信号伝送の完全性を保証する役割を果たす。この目的のために、RDS伝送チャネルの状態を測定するための特別な手段がアナログ信号インタフェース内に導入される。
【0005】
この場合、RDS伝送チャネルをチェックするための既知の技術は、2つの根本的に異なる測定方法に分類できる。侵襲的な測定方法は、測定プロセス中に、RDSとアナログ信号インタフェース間の伝送チャネルを、可能な限り干渉のない定義された状態に変換する。これには、RDSと信号インタフェース間の信号伝送を分離する必要がある。したがって、伝送チャネルの電気パラメータは、既知の外部電気条件下で測定される。非侵襲的な測定方法は、RDS信号自体を分析することによって実行される。これにより、信号チャネルの状態又はRDS自体の状態について結論を引き出すことができる。
【0006】
誤差パターンは、元のRDS波形のシフト(オフセット)及び/又は圧縮(減衰)によって現れる。不正確な状態を早期に検出するために、信号インタフェースには、信号誤差の原因について信号搬送ノードを検査する測定装置が備わっている必要がある。測定技術によっては、測定期間中にセンサを動作させることができないため、測定は安全性が重要な期間外に行われる。車両の場合、これは通常、イグニッションが操作された直後、車両が停止しているときに測定プロセスが行われることを意味する。
【0007】
侵襲的な測定方法の場合、特にRDSとアナログ信号インタフェース間の信号伝送の中断は悪影響を及ぼす。RDS信号チェーンには安全性が求められるため、これにより走行中の誤差検出が防止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、センサとアナログ信号インタフェースとの間の信号伝送チェーンにおける信号誤差を中断することなく検出し、補償できる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は独立請求項によって達成される。本発明によれば、オフセット補償装置によるセンサ信号用のオフセット補償のための方法が提供され、オフセット補償装置は、N個の素子を含むシフトレジスタ、平均化ユニット、及びローパスフィルタを備え、この方法は、以下の、
- センサ値をシフトレジスタに格納するステップと、
- シフトレジスタの最初の素子とシフトレジスタの最後の素子の差を計算するステップと、
- 複数の平均値を決定するステップであって、以下の、
a)差が閾値Sよりも大きい場合、平均化ユニットによる平均化を開始するステップと、
b)差が閾値-Sよりも小さい場合、平均化ユニットによる平均化を停止するステップと、
が実行されるステップと、
- 平均値に基づいてローパスフィルタを使用して最低信号レベルを決定するステップと、
- 最低信号レベルと基準電流値の差を計算することによってオフセットを決定するステップと、
- 決定されたオフセットを使用してセンサ値を補正するステップと、
が実行されることを含む。
【0010】
したがって、次の利点を持つ非侵襲的な測定方法が提供される:
1. 純粋にデジタルの実装の結果、この方法は非常に堅牢で、予測可能な応答を示す。
2. テクノロジーが進歩するにつれて、実装はより安価になる(スケーリング効果)。
3. デジタルテストが自動化されるため、製造中の高いテストカバレッジの結果として品質が向上する。
4. アナログ回路部品の公差補償。
【0011】
信号とサンプリング時間に相関がない場合でも、サンプリングレートを適切に選択すると、計算された振幅がシフトレジスタの使用後の信号振幅に対応することが保証される。計算される振幅は、シフトレジスタの最初の素子と最後の素子の差を計算することによって決定される。
【0012】
使用されるローパスフィルタは、単一の平均化の影響を軽減するために使用すると有利である。平均化が複数回正常に実行された場合、ローパスフィルタの出力は最低信号レベルの値を提供する。
【0013】
本発明の好ましい発展形態では、検査される信号の基準電流値は7mAに設定される。これは、基本レベル(パルス又は3レベルセンサの場合)又は低レベル(標準2レベルセンサの場合)として7mAの電流が流れる商業的に使用されるRDSのバリアントに特に関係する。測定値と基準電流値との間の差異から、決定されたオフセットが得られる。
【0014】
本発明の好ましい発展形態では、シフトレジスタの数Nは、エッジの少なくともすべてのサンプルを格納できるように選択され、Nは2より大きい。
【0015】
本発明の別の更なる発展形態では、平均化ユニットのウィンドウは、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも長くなるように選択され、その結果、平均化はプロトコルの後に行われる。プロトコルには、各磁極がセンサパルスの完全なシーケンスをトリガーすることが含まれる。これらのパルスには定義された長さがあり、センサのステータスに関する更なる情報が含まれている。したがって、プロトコルセンサは定義されたパルスシーケンスを送信する。プロトコル間の一時停止は車輪速度によって決まる。
【0016】
本発明の好ましい発展形態では、平均化ユニットのウィンドウは、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも短くなるように選択され、その結果、平均化はプロトコル中に複数回完了する。これにより、より堅牢で正確な結果が得られる。補正値がより早く現れる可能性があるため、失われる送信プロトコルはできる限り少なくなる。
【0017】
本発明の好ましい発展形態では、以下の、
- 評価回路によって少なくとも1つのセンサに電圧を供給するステップと、
- センサによってセンサ電流を変調するステップと、
- 評価回路によってセンサ電流を測定及び評価するステップと、
が実行される。
【0018】
本発明の好ましい発展形態では、評価回路はハイサイドパス及びローサイドパスを有し、以下の、
- ハイサイドパスとローサイドパスを並行して使用するステップと、
- ハイサイドパスとローサイドパスの現在のオフセット値を決定するステップと、
が実行される。
【0019】
ハイサイドパスとローサイドパスを並行して使用し、現在のオフセット値を決定することにより、誤差のタイプを決定し、且つ/又は誤差の位置を特定することができる。アナログデジタルコンバータ(ADC)によるRDS信号の取得と変換は、非侵襲的測定法の特徴である。RDS信号が適切に調整(例えば、ローパスフィルタリング)された後、それはADC(回路アーキテクチャに応じて、正電源=ハイサイド又は負電源=ローサイドに接続)を使用して、又はオプションで2つのADC(ハイサイドとローサイドに接続)を使用して、十分に正確な分解能を備えたデジタル波形に変換されることが好ましい。信号特性は、デジタル化されたRDS信号値を処理することによって検査される。
【0020】
本発明の好ましい発展形態では、ハイサイドパスとローサイドパスについて決定されたオフセット値が構成的にオーバーレイされ、それによって改善されたベクトルが形成される。LVL_HS[x]及びLVL_LS[x]からの同じインデックスをそれぞれ有する2つのビットが、このオーバーレイに関して考慮されることが好ましい。LVL_HS[x]又はLVL_LS[x]が立ち上がり信号エッジを示す場合、出力ビットLVL[x]は1に設定される。LVL_HS[x]又はLVL_LS[x]が立ち下がり信号エッジを示す場合、出力ビットLVL[x]は0に設定される。
【0021】
これにより、最初に信号エッジを検出する評価パスが誤差発生時の信号検出に十分であることが保証される。
【0022】
特に好ましくは、オフセット補償は、最初にハイサイドパスとローサイドパスに対して別々に実行され、その後、2つの部分的な結果がオーバーレイされる。
【0023】
本発明の好ましい発展形態では、個々の検出閾値にヒステリシスが追加的に実装され、これによりロバスト性が更に有利に改善される。
【0024】
本発明の好ましい更なる発展形態では、閾値は、センサの特定の信号レベル間で可能な限り理想的に定義される。
【0025】
この目的は、センサ信号におけるオフセットを補償するためのオフセット補償装置によっても達成され、オフセット補償装置はシフトレジスタ及び平均化ユニットを有する。好ましくは、オフセット補償装置は、前述の方法の少なくとも一部を実行する。
【0026】
更に、この目的は、オフセット補償装置、評価装置、及び少なくとも1つのセンサを備えるセンサ装置によって達成される。好ましい発展形態では、センサは電気ブレーキシステム用の車輪速度センサである。センサ装置は、前述の方法を実行するように設計されている。
【0027】
更に好ましい実施形態は、従属請求項及び以下の図面に基づく例示的な実施形態の説明から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】車両の車輪速度センサと評価回路との接続を示す(従来技術)。
【
図2】3つの異なる電流レベルを有するプロトコルによる車輪センサの電流曲線を示す(従来技術)。
【
図4】
図2と同様の車輪センサの電流曲線を示すが、オフセット誤差がある(従来技術)。
【
図5】
図3と同様の評価回路を示すが、本発明によるオフセット補償のための追加ブロックを備えている。
【
図6】本発明による、ADCのサンプリングレートと立ち下がりエッジのシフトレジスタ長Nの影響についての研究例を示す図である。
【
図7】本発明によるHSパスとLSパスを並列使用する場合の評価回路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、非侵襲的測定方法の文脈内で、RDS信号のオフセットを決定し、較正するためのアルゴリズムを説明する。
【0030】
自動車内の多くのセンサは、ワイヤリングハーネスを介して評価用電子機器に接続されている。
図1は基本的に、車両の車輪速度センサ1と、評価ロジック4を有する評価回路3との接続を示す。センサ1には、電源KL30への接続により、評価回路(評価IC)3によって電圧が供給される。センサ電流は、評価ASIC3のハイサイドドライバ(HS)5とローサイドドライバ(LS)7の両方を通って流れる。動作中、センサ1はセンサ電流を変調する。この電流は、ハイサイドアナログデジタルコンバータ(HS ADC)9及び/又はローサイドアナログデジタルコンバータ(LS ADC)11を使用して、集積回路(評価回路3)内で測定及び評価することができる(
図3及び5を参照)。
【0031】
自動車の車輪センサには様々なデータプロトコルが使用される。これらのデータは、車両の電流インタフェースを介して車輪から電子制御ユニットに送信される。
図2は、3つの異なる電流レベルを有するプロトコルによる車輪センサ1の電流曲線を示す。更に、
図2には4つの閾値S0、S1、S2、S3が示されている。
【0032】
図3は、評価回路3の概略図を示す。車輪センサ信号は、まず、アナログデジタルコンバータ(ADC)9、11を使用してデジタル変換され、その結果が異なる閾値S0~S3と比較される。閾値S0からS3は、センサ1の指定された信号レベルの間にできるだけ理想的に収まるように選択される。各比較器13は、ADC9、11の値が検査された閾値S0~S3より大きくなるとすぐにデジタル出力を1に設定する。これらの比較器のすべての出力信号がデジタル信号ベクトルに結合されると、ベクトルLVL[3:0]が得られ、これは更なる信号検出に使用される。これに関しては、ベクトルも示されている
図1及び
図2も参照されたい。
【0033】
しかしながら、車両の運転中に一連のセンサ誤差が発生する可能性がある:
- 正方向と負方向のオフセット誤差
- 振幅誤差(センサ振幅が高すぎる、又は低すぎる)
【0034】
図4は、すべての電流レベルが固定の絶対値付近で提供される場合のセンサ1の信号曲線を示す。この誤差はオフセット誤差と呼ばれる。
【0035】
センサ信号がもはや閾値S1を下回っていないため、ベクトルLVL[3:0]を形成するための信号検出は失敗する。加えて、閾値S3を超えているが、これはセンサ1の正しいプロトコル検出を目的としたものではない。この場合、車両内のセンサ信号が失われ、安全性が重要な制御ユニットの制御機能には、もはや利用できなくなる。しかしながら、
図4では、センサ情報が依然として受信信号に完全に保持されていることがわかり、検出範囲のみがシフトされている。
【0036】
その後の検出方法であるオフセット補償により、センサ誤差が存在する場合でも信号検出が可能になり、車両内の車輪センサ信号の可用性が向上する。まず、2つの検出パスのうちの1つだけ、例えばハイサイドパス5のみが考慮される。
【0037】
図5に示すように、オフセット補償のための追加ブロック15が評価回路3に導入されている。長さNのシフトレジスタ17は、ADコンバータの値を格納する。シフトレジスタ17の長さNは、エッジの少なくともすべてのサンプルが格納されることができ、N>2となるように選択される。
【0038】
差ΔSは、シフトレジスタ17の最初と最後の素子から計算される。シフトレジスタ17の出力における差が正であり、エッジ急峻値(閾値)Sより大きい場合、これは立ち上がりエッジを示し、その差が負であり、エッジ急峻値(閾値)-Sより小さい場合、立ち下がりエッジが検出される。
【0039】
シフトレジスタ17の長さNの定義は、
図6a~
図6cを参照して説明される。
図6a~
図6cでは、ADCのサンプリングレートとシフトレジスタの長さNの影響が立ち下がりエッジについて検査されている。
【0040】
図6aでは、N=2であり、エッジの急峻さに対するサンプリングレートは高くなる。サンプリング時間は信号曲線内の矢印で示される。この場合、ΔSの値は、ADC9、11のサンプリングレートが高くなるほど小さくなる。サンプリングレートが高くなるほど、シフトレジスタ17は長くなるように選択されるべきである。
【0041】
図6bでは、より低いサンプリングレートが使用されている。しかしながら、センサ信号とサンプリング時間の間の時間的相関は未知であるか、ランダムである。この場合、信号はエッジの中央で正確にサンプリングすることができる。これにより、ΔSは最大でも信号振幅の大きさの半分になる。
【0042】
図6cはここで、N=3の場合を示している。サンプリングレートは、エッジ全体が2つのサンプリング値の間に発生できるように選択される。信号時間とサンプリング時間には依然として相関関係がないが、これにより、振幅ΔSが信号振幅に対応することが保証される。これが可能な最良の結果であり、シフトレジスタ17を導入する理由である。
【0043】
シフトレジスタ17に加えて、ADコンバータ値に対して平均化ユニット19が実装される(
図5を参照)。この平均化ユニット19は連続的に動作するのではなく、シフトレジスタ出力によって制御される。出力差が閾値Sより大きい場合、平均化が開始される。出力差が閾値-Sより小さい場合、平均化は停止される。正確にM個の入力素子の後で平均化が正常に終了した場合、結果は次のローパスフィルタ21に転送され、その出力は信号曲線において最低レベルを生成する。
【0044】
シフトレジスタと組み合わせると、システム内で次の反応が得られる:ADCからの入力信号が一定であれば、シフトレジスタ17はほぼ同一の値で満たされる、出力における差分計算の結果、2つの閾値S又は-Sのいずれも超えたり下回ったりすることはなく、平均化ユニット19の状態は変化しない。
【0045】
入力信号が立ち下がりエッジを有する場合、シフトレジスタ17は最初により大きな値で満たされ、次により小さな値で満たされる。エッジ全体がシフトレジスタ17に格納されるとすぐに、出力における差は最大になる。立ち下がりエッジ中に、閾値Sを複数回超える可能性がある。この場合、平均化ユニット19は毎回再起動され、以前の部分的結果はすべて破棄される。立ち下がりエッジの終わりでのみ、もはた閾値Sを超えなくなり、平均化が続行される。これにより、平均化が立ち下がりエッジの終わりにのみ開始されることが保証される。この方法の利点は、エッジがいつ開始又は終了するかを知る必要がないことである。平均化ユニット19はもはや中断されないので、エッジの終わりは自動的に検出される。
【0046】
平均化中に更なるエッジ(立ち下がり又は立ち上がり)が検出されない場合、M個の値の平均化は終了し、結果は次のローパスフィルタ21に転送される。しかしながら、動作中に立ち上がりエッジが発生すると、シフトレジスタ17は最初により低い値で満たされ、次により高い値で満たされる。この場合、閾値-Sを下回っているため、平均化は直ちに終了する。すべての中間結果は破棄され、ローパスフィルタ21には何も転送されない。
【0047】
この方法では、入力信号がその後再び変化しない限り、平均化が開始され、立ち下がりエッジの終わりに正確に実行されることが保証される。次のローパスフィルタ21は、単一の平均化の影響を軽減するために実装される。平均化が複数回正常に実行された場合、ローパスフィルタ21の出力は最低信号レベルの値を提供する。
【0048】
センサ1の最低閾値の期待レベルを用いて差分を計算すると、この期待値からのセンサ信号の差異が得られる。この差異は、センサ評価用のADコンバータの値を補正するために使用される。したがって、センサ評価はオフセット誤差が存在する場合にも機能する。
【0049】
発見されたオフセット誤差は、ソフトウェアの監視パラメータとして更に使用される。値が大きくなりすぎると、システムソフトウェアがそれに反応してドライバ又は整備工場に誤差を通知することがある。
【0050】
平均化ユニットを設計するときは、次の一般条件に従う必要がある。
【0051】
平均化ユニット19の値Mが長く選択されるほど、決定された結果はより堅牢で正確になる。しかしその一方で、利用可能な波形も考慮する必要がある。
図2のセンサプロトコルの場合、プロトコル中に平均化が複数回完了もするほど短い平均化ユニット19が選択されるかどうかを決定することが可能である。この場合、補正値がより早く現れる可能性があるため、失われる送信プロトコルはできる限り少なくなる。
【0052】
平均化がプロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも長くなるように選択された場合、平均化はプロトコルの後でのみ実行できる。この場合、正しい補正値が算出されるまでに時間がかかる。どちらの実装も可能である。
【0053】
図7に示すように、ハイサイド及びローサイドのパス5、7が評価用IC3内で並列に使用される場合、現在決定されているハイサイド又はローサイドのパス5、7のオフセット値は、動作中に継続的に取得される。これらの値を使用して、誤差の種類と位置を特定できる。加えて、決定されたデータLVL_HS及びLVL_LSを構成的にオーバーレイすることが可能であり、その結果、改善されたベクトルLVLが形成される。オーバーレイはオーバーレイユニット23で実行できる。
【0054】
LVL_HS[x]及びLVL_LS[x]からの同じインデックスをそれぞれ有する2つのビットが、このオーバーレイに関して考慮される。LVL_HS[x]又はLVL_LS[x]が立ち上がり信号エッジを示す場合、出力ビットLVL[x]は1に設定される。LVL_HS[x]又はLVL_LS[x]が立ち下がり信号エッジを示す場合、出力ビットLVL[x]は0に設定される。
【0055】
これにより、最初に信号エッジを検出する評価パスが誤差発生時の信号検出に十分であることが保証される。個々の検出閾値での追加のヒステリシスにより、堅牢性が更に向上する。
【符号の説明】
【0056】
1 車輪速度センサ
3 評価回路
4 評価ロジック
5 ハイサイドドライバ
7 ローサイドドライバ
9 ハイサイドアナログデジタルコンバータ(HS ADC)
11 ローサイドアナログデジタルコンバータ(LS ADC)
13 比較器
15 オフセット補償用ブロック(オフセット補償装置)
17 シフトレジスタ
19 平均化ユニット
21 ローパスフィルタ
23 オーバーレイユニット
S0,S1,S2,S3 閾値
KL30 電源への接続
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
これにより、最初に信号エッジを検出する評価パスが誤差発生時の信号検出に十分であることが保証される。個々の検出閾値での追加のヒステリシスにより、堅牢性が更に向上する。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下も含む。
1.
オフセット補償装置(15)によるセンサ信号用のオフセット補償のための方法であって、前記オフセット補償装置は、N個の素子を含むシフトレジスタ(17)、平均化ユニット(19)、及びローパスフィルタ(21)を備え、前記方法は、以下の、
- センサ値を前記シフトレジスタ(17)に格納するステップと、
- 前記シフトレジスタ(17)の最初の素子と前記シフトレジスタ(17)の最後の素子の差を計算するステップと、
- 複数の平均値を決定するステップであって、以下の、
a)前記差が閾値Sよりも大きい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を開始するステップと、
b)前記差が閾値-Sよりも小さい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を停止するステップと、
が実行されるステップと、
- 前記平均値に基づいて前記ローパスフィルタ(21)を使用して最低信号レベルを決定するステップと、
- 最低信号レベルと基準電流値の差を計算することによってオフセットを決定するステップと、
- 前記決定されたオフセットを使用して前記センサ値を補正するステップと、
が実行されることを含む、方法。
2.
前記シフトレジスタ(17)の数Nは、エッジの少なくともすべてのサンプルを格納できるように選択され、Nが2より大きい、上記1に記載の方法。
3.
前記平均化ユニット(19)のウィンドウが、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも長くなるように選択され、その結果、前記平均化が前記プロトコルの後にのみ行われる、上記1又は2に記載の方法。
4.
前記平均化ユニット(19)の前記ウィンドウは、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも短くなるように選択され、その結果、前記平均化がプロトコル中に複数回完了する、上記1~3のいずれか一つに記載の方法。
5.
以下の、
- 評価回路(3)によって少なくとも1つのセンサ(1)に電圧を供給するステップと、
- 前記センサ(1)によってセンサ電流を変調するステップと、
- 前記評価回路(3)によって前記センサ電流を測定及び評価するステップと、
が実行される、上記1~4のいずれか一つに記載の方法。
6.
前記評価回路(3)がハイサイドパス(5)及びローサイドパス(7)を有し、以下の、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)を並行して使用するステップと、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)の現在のオフセット値を決定するステップと、
が実行される、上記5に記載の方法。
7.
以下の、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)の前記決定されたオフセット値を構成的にオーバーレイし、ベクトルを形成するステップ
が実行される、上記1~6のいずれか一つに記載の方法。
8.
センサ信号のオフセットを補償するためのオフセット補償装置(15)であって、
前記オフセット補償装置(15)はシフトレジスタ(17)及び平均化ユニット(19)を有し、上記1~4のいずれか一つに記載の方法を実行するように設計されていることを特徴とする、オフセット補償装置(15)。
9.
上記8に記載のオフセット補償装置(15)と、評価装置(13)と、少なくとも1つのセンサ(1)とを備えるセンサ装置であって、上記1~7のいずれか一つに記載の方法を実行するように設計されているセンサ装置。
10.
前記センサ(1)が電気ブレーキシステム用の車輪速度センサである、上記9に記載のセンサ装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット補償装置(15)によるセンサ信号用のオフセット補償のための方法であって、前記オフセット補償装置は、N個の素子を含むシフトレジスタ(17)、平均化ユニット(19)、及びローパスフィルタ(21)を備え、前記方法は、以下の、
- センサ値を前記シフトレジスタ(17)に格納するステップと、
- 前記シフトレジスタ(17)の最初の素子と前記シフトレジスタ(17)の最後の素子の差を計算するステップと、
- 複数の平均値を決定するステップであって、以下の、
a)前記差が閾値Sよりも大きい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を開始するステップと、
b)前記差が閾値-Sよりも小さい場合、前記平均化ユニット(19)による平均化を停止するステップと、
が実行されるステップと、
- 前記平均値に基づいて前記ローパスフィルタ(21)を使用して最低信号レベルを決定するステップと、
- 最低信号レベルと基準電流値の差を計算することによってオフセットを決定するステップと、
- 前記決定されたオフセットを使用して前記センサ値を補正するステップと、
が実行されることを含む、方法。
【請求項2】
前記シフトレジスタ(17)の数Nは、エッジの少なくともすべてのサンプルを格納できるように選択され、Nが2より大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均化ユニット(19)のウィンドウが、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも長くなるように選択され、その結果、前記平均化が前記プロトコルの後にのみ行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記平均化ユニット(19)の前記ウィンドウは、プロトコル内の最低レベルを有するフェーズよりも短くなるように選択され、その結果、前記平均化がプロトコル中に複数回完了する、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項5】
以下の、
- 評価回路(3)によって少なくとも1つのセンサ(1)に電圧を供給するステップと、
- 前記センサ(1)によってセンサ電流を変調するステップと、
- 前記評価回路(3)によって前記センサ電流を測定及び評価するステップと、
が実行される、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記評価回路(3)がハイサイドパス(5)及びローサイドパス(7)を有し、以下の、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)を並行して使用するステップと、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)の現在のオフセット値を決定するステップと、
が実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
以下の、
- 前記ハイサイドパス(5)と前記ローサイドパス(7)の前記決定されたオフセット値を構成的にオーバーレイし、ベクトルを形成するステップ
が実行される、請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項8】
センサ信号のオフセットを補償するためのオフセット補償装置(15)であって、
前記オフセット補償装置(15)はシフトレジスタ(17)及び平均化ユニット(19)を有し、請求項
1又は2に記載の方法を実行するように設計されていることを特徴とする、オフセット補償装置(15)。
【請求項9】
請求項8に記載のオフセット補償装置(15)と、評価装置(13)と、少なくとも1つのセンサ(1)とを備えるセンサ装置であって、請求項
1に記載の方法を実行するように設計されているセンサ装置。
【請求項10】
前記センサ(1)が電気ブレーキシステム用の車輪速度センサである、請求項9に記載のセンサ装置。
【国際調査報告】