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特表2024-538871リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-24
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241017BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241017BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20241017BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241017BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
H01M50/42
H01M50/417
H01M50/403 D
H01M50/449
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520042
(86)(22)【出願日】2023-04-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 KR2023004533
(87)【国際公開番号】W WO2023195743
(87)【国際公開日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041893
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0044078
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ブン・コ
(72)【発明者】
【氏名】ドユン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジョ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヒ・ハン
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021AA06
5H021BB01
5H021EE02
5H021EE06
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA28
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本発明の目的は、水系コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体ラテックス(latex)の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えば、N-メチル-ピロリドン)に置換することにより、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを遂行できるリチウム二次電池用絶縁層組成物を提供することにある。
本発明は、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体と、分散溶媒として非水系有機溶媒と、を含み、前記コンジュゲートジエン共重合体はTgが-10℃以上40℃以下である、リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池に関する。本発明の一実施形態によれば、柔軟性、絶縁特性、耐電解液特性を同時に満足する絶縁層を正極のタブ部に形成することにより、リチウム二次電池においてセパレーター収縮および電極折り畳みなどの不良発生時の正極と負極の物理的短絡を防止し、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを遂行することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体と、
分散溶媒として非水系有機溶媒と、を含み、
前記コンジュゲートジエン共重合体は、Tgが-10℃以上40℃以下である、リチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項2】
平均粒径が50nm以上500nm以下のコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体粒子が独立した相として存在する、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項3】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体と、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーと、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーと、からなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーの重合体を含む、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項4】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであり、
前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される2種以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体、またはこれらの重合体が部分的にエポキシ化または臭素化された重合体、またはこれらの混合物である、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項5】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メタクリロキシエチルエチレンウレア、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項6】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項7】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項8】
前記不飽和カルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項10】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、全重量を基準に、前記(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体20~45重量%、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマー50~70重量%、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%の重合体を含む、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項11】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項12】
前記コンジュゲートジエン共重合体はスチレン-ブタジエン共重合体であり、
前記非水系有機溶媒はNMP(N-メチル-ピロリドン)である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項13】
水分含有量が10,000ppm以下である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項14】
水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスを製造する段階と、
前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を加え、加温および減圧して絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階と、
正極集電体の片面または両面に正極活物質、導電材および非水系バインダーを含む正極合剤層用スラリーを塗布する段階と、
正極集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部領域をカバーするように前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する段階と、
正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階と、を備える、
リチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項15】
前記絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階は、コンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換する段階を含む、
請求項14に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項16】
前記コンジュゲートジエンラテックス粒子は、分散溶媒が非水系有機溶媒に置換された後も粒子形状を維持する、
請求項15に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項17】
前記コンジュゲートジエンラテックスはスチレン-ブタジエンラテックス粒子であり、
前記非水系有機溶媒はNMP(N-メチル-ピロリドン)である、
請求項14に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項18】
正極集電体と、
前記正極集電体から突出した正極タブと、
前記正極タブ上に絶縁性物質でコーティングされた絶縁層と、を備え、
前記絶縁性物質は、請求項1に記載の組成物を含む、
リチウム二次電池用正極。
【請求項19】
請求項18に記載のリチウム二次電池用正極を含む、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、それに応じて多様なニーズに応えることができる電池に関する多くの研究が行われている。
【0003】
代表的には、電池の形状面では薄い厚さで携帯電話などの製品に適用されうる角型電池やパウチ型電池に対する需要が高く、材料面ではエネルギー密度、放電電圧、安全性に優れたリチウムコバルトポリマー(重合体)電池などのリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0004】
このような二次電池の主な研究課題の1つは安全性を向上させることである。電池の安全性関連事故の主な原因は、正極と負極との間の短絡による異常な高温状態の到達に起因する。すなわち、正常な状況では、正極と負極との間にセパレーターが位置して電気的絶縁を維持しているが、電池が過充電または過放電されたり、電極材料の樹枝状成長(dendritic growth)または異物によって内部短絡されたり、釘やねじなどの鋭い物体によって貫通されたり、外力によって無理な変形を受けたりするなどの異常な乱用状況においては、従来のセパレーターだけでは限界を見せることになる。
【0005】
一般に、セパレーターはポリオレフィン樹脂からなる微細多孔膜が主に用いられているが、その耐熱温度が120~160℃程度で耐熱性が不十分である。したがって、内部短絡が発生すると、短絡反応熱によってセパレーターが収縮して短絡部が拡大され、より大きくかつ多くの反応熱が発生する熱暴走(thermal runaway)状態に至るという問題があった。したがって、セル変形、外部衝撃または正極と負極の物理的短絡の可能性を低減するための多様な方法が研究されてきた。
【0006】
例えば、電池を完成した状態で電極組立体が移動することにより、電極タブ(tab)が電極組立体の上端に接触されて短絡が発生することを防止するために、集電体の上端に隣接する電極タブ上に所定の大きさで絶縁テープを貼り付ける方法がある。しかしながら、このような絶縁テープの巻き取り作業は非常に煩雑であり、集電体の上端から下方にわずかに延長された長さまで絶縁テープを巻き取る場合には、そのような部位が電極組立体の厚さの増加を引き起こす可能性がある。さらに、電極タブの折り曲げのとき、緩みやすい問題点がある。
【0007】
また、正極のタブ部分に非水系バインダー(PVDFなど)や水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)で絶縁層を形成する方法がある。しかしながら、非水系バインダー(PVDFなど)を使用する場合、湿潤接着力が低下し、電極のオーバーレイ領域にリチウムイオンの移動を防ぐことができず、容量が発現する問題があった。特に、電極のオーバーレイ領域において容量が発現するとき、リチウムイオンが析出されることがあり、これは電池セルの安定性の低下をもたらすことができる。また、水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)バインダーを使用する場合、正極合剤層用スラリーと同時にコーティングするときに、正極バインダーとして使用する有機系バインダーであるPVDFのゲル化、正極スラリーの絶縁液境界浸透および水分による副反応に起因する電池性能の低下が生じ、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーの同時コーティングが不可能であるという問題がある。
【0008】
したがって、柔軟性、絶縁特性、耐電解液特性を同時に満足しながら、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーとの同時コーティングが可能となる絶縁液開発に対する必要性が高いのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1586530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、水系コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体ラテックス(latex)の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えば、N-メチル-ピロリドン)に置換することにより、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを遂行できるリチウム二次電池用絶縁層組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明のもう一つの目的は、前述したリチウム二次電池用絶縁層組成物を用いるリチウム二次電池用正極の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明のもう一つの目的は、前述したリチウム二次電池用絶縁層組成物から形成されるリチウム二次電池用正極を提供することにある。
【0013】
また、本発明のもう一つの目的は、前述したリチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的および利点は、下記の発明の詳細な説明および特許請求の範囲によってより明確に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した技術的課題を達成するために、本発明は、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体、および分散溶媒として非水系有機溶媒を含む。前記コンジュゲートジエン共重合体は、Tgが-10℃以上40℃以下である、リチウム二次電池用絶縁層組成物を提供する。
【0016】
なお、本発明は、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスを製造する段階と、前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を加え、加温および減圧して絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階と、正極集電体の片面または両面に正極活物質、導電材および非水系バインダーを含む正極合剤層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体の無地部の一部の領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部領域をカバーするように、前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階と、を備えるリチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、正極集電体と、前記正極集電体から突出した正極タブと、前記正極タブ上に絶縁性物質でコーティングされた絶縁層と、を備える。前記絶縁性物質は、本発明によるリチウム二次電池用絶縁層組成物を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、柔軟性、絶縁特性、耐電解液特性を同時に満足する絶縁層を正極のタブ部分に形成することにより、リチウム二次電池においてセパレーター収縮および電極折れなどの不良発生時に、正極と負極の物理的短絡を防ぐことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、絶縁層形成に用いられるコンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えば、N-メチル-ピロリドン)に置換した絶縁コーティング層用スラリーを提供することにより、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを行うことができる。
【0021】
本発明による効果は、以上で例示された内容によって限定されず、より多様な効果が本明細書に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実験例4に従って脆性を評価した結果を示す図である。
図2】実験例7に従って水分影響を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明を詳しく説明する。
【0024】
本明細書において使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、別の意味で定義されていない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に共通に理解される意味で使用され得る。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、明らかにかつ特別に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0025】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)として理解されなければならない。
【0026】
本明細書において、「好ましい」および「好ましく」は、所定の環境下で所定の利点を提供することができる本発明の実施形態を指す。しかしながら、同じ環境または異なる環境下では、他の実施形態がまた好ましい可能性がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態に対する言及は、他の実施形態が有用ではないことを意味せず、本発明の範囲から他の実施形態を排除しようとするのではない。
【0027】
本発明において、「絶縁コーティング層」とは、電極集電体の無地部のうち少なくとも一部から電極合剤層の少なくとも一部まで塗布および乾燥して形成される絶縁部材を意味する。
【0028】
本発明において「湿潤接着力」とは、電解液に含浸された状態で測定した絶縁コーティング層の接着力を意味する。絶縁コーティング層が電解液に含浸された状態でスウェリング(swelling)または脱離されて湿潤接着力が低下する場合、電極の絶縁特性を維持しにくく、これは電極試片(電極試験片)上に絶縁コーティング層をコーティングして絶縁特性を測定することにより確認することができる。
【0029】
本発明において、「金属試験片(金属試片)」とは、絶縁コーティング層が形成される空間であり、電極製造時に用いられる金属集電体を意味することができ、所定の幅と所定の長さを有するように打ち抜いた金属集電体であり得る。例えば、前記金属試験片は、アルミニウム、銅またはアルミニウム合金であり得る。
【0030】
<リチウム二次電池用絶縁層組成物>
【0031】
本発明の一例は、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体、および分散溶媒として非水系有機溶媒を含み、前記コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体は、Tgが-10℃以上40℃以下である、リチウム二次電池用絶縁層組成物である。
【0032】
本発明によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、平均粒径が50nm以上500nm以下のコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体粒子が独立した相で存在し、前記コンジュゲートジエン共重合体は組成物の全体の固形分質量を基準にして20重量%以上100重量%以下で含有され得る。前記コンジュゲートジエン共重合体の含有量が20重量%以上100重量%以下である場合には、コンジュゲートジエン共重合体粒子が絶縁効果を発揮しながら電解液内でも接着性能を維持して一定の絶縁効果を付与することができる。
【0033】
前記絶縁層組成物は、絶縁特性を損なわない範囲で無機粒子または染料をさらに含み得る。
【0034】
本発明の一実施例では、前記無機粒子はアルミナ、ベーマイト、シリカ、二酸化チタンなどであり得る。
【0035】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1または2以上のモノマー、並びに(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマーの重合体を含み得る。
【0036】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであり得る。
【0037】
前記共役ジエン系重合体は、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、およびピペリレンからなるグループから選択される2つ以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体、またはこれらの重合体が部分的にエポキシ化または臭素化された重合体もしくはこれらの混合物であり得る。
【0038】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メチルメタクリレート、メタクリロキシエチルエチレン尿素、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0039】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0040】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0041】
前記不飽和カルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得るが、これらに限定されない。
【0042】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得るが、これらに限定されない。
【0043】
前記コンジュゲートジエン共重合体粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法などにより行われ得る。共重合体粒子を製造するためのモノマーの混合物は、重合開始剤、架橋剤、カップリング剤、緩衝液(buffer solution)、分子量調節剤、乳化剤などの他の成分を1つまたは2つ以上含み得る。具体的には、前記共重合体粒子は、乳化重合法により製造されることがあり、この場合、前記共重合体粒子の平均粒径は、乳化剤の量によって調節されてもよく、一般に乳化剤の量が増加するほど粒子のサイズは小さくなり、乳化剤の量が減少するほど粒子のサイズは大きくなる傾向を示す。所望の粒子のサイズ、反応時間、反応安定性などを考慮して、乳化剤使用量を調節して所望の平均粒径を実現することができる。重合温度および重合時間は、重合方法、重合開始剤の種類などに応じて適切に決定されることがあり、例えば、重合温度は10℃~150℃であり得るし、重合時間は1~20時間であり得る。
【0044】
前記重合開始剤としては、無機または有機過酸化物が用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを含む水溶性開始剤と、クメンハイドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどを含む油溶性開始剤と、を使用することができる。また、前記重合開始剤と共に過酸化物の開始反応を促進させるために活性化剤をさらに含むことができ、前記活性化剤としてはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第1鉄およびデキストロースからなるグループから1種以上選択されるものであり得る。
【0045】
前記架橋剤は、バインダーの架橋を促進させる物質として、例えば、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylene tetramine)、ジエチルアミノプロピルアミン(diethylamino propylamine)、キシレンジアミン(xylene diamine)、イソホロンジアミンなどのアミン類、ドデシルスクシニックアンヒドリド(dodecyl succinic anhydride)、フタリックアンヒドリド(phthalic anhydride)などの酸無水物、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、フェノール樹脂、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが使用され、グラフト剤はアリールメタクリレート(AMA)、トリアリールイソシアヌレート(TAIC)、トリアリールアミン(TAA)、ジアリールアミン(DAA)などが使用される。
【0046】
前記カップリング剤は、活物質とバインダーとの間の接着力を増加させるための物質であって、2つ以上の機能性基を有することを特徴とし、1つの機能性基は、シリコン、スズまたは黒鉛系活物質表面のヒドロキシル基やカルボキシ基と反応して化学的結合を形成し、他の機能性基は、本発明によるナノ複合体との反応を通じて化学結合を形成する材料であれば特に限定されるものではない。例えば、トリエトキシシルプロピルテトラスルフィド(triethoxysilylpropyl tetrasulfide)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(mercaptopropyl triethoxysilane)、アミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyl triethoxysilane)、クロロプロピルトリエトキシシラン(chloropropyl triethoxysilane)、ビニルトリエトキシシラン(vinyltriethoxysilane)、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(methacryloxypropyl triethoxysilane)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(glycidoxypropyl triethoxysilane)、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(isocyanatopropyl triethoxysilane)、シアナートプロピルトリエトキシシラン(cyanatopropyl triethoxysilane)などのシラン系カップリング剤が使用され得る。
【0047】
前記バッファー(緩衝剤)は、例えば、NaHCO、NaCO、KHPO、KHPO、NaHPO、NaOHおよびNHOHからなるグループから選択される1つであり得る。
【0048】
前記分子量調節剤としては、例えば、メルカプタン類またはテルピノレン、ジペンテン、t-テルピエンなどのテルフィン類やクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。
【0049】
前記乳化剤は、親水性(hydrophilic)基と疎水性(hydrophobic)基を同時に有する物質である。1つの具体的な例では、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなるグループから選択される少なくとも1つであり得る。
【0050】
非イオン性乳化剤をアニオン乳化剤と共に使用すると、粒子サイズおよび分布制御に役立ち、イオン性乳化剤の静電気的安定化に加えて、高分子粒子のファンデルワールス力によるコロイド状のさらなる安定化を提供することができる。非イオン性乳化剤を単独で使用することは多くないが、これはアニオン性乳化剤よりも安定性の低い粒子が生成されるからである。
【0051】
アニオン性乳化剤は、ホスフェート系、カルボキシレート系、スルフェート系、コハク酸塩系、スルホサクシネート系、スルホネート系およびジスルホネート系からなるグループから選択されるものであり得る。例えば、ナトリウムアルキル硫酸塩、ナトリウムポリオキシエチレン硫酸塩、ナトリウムラウリルエーテル硫酸塩、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(Sodium polyoxyethylene lauryl ether sulfate)、ナトリウムラウリル硫酸塩(Sodium lauryl sulfate)、ナトリウムアルキルスルホネート、ナトリウムアルキルエーテルスルホネート、ナトリウムアルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムリニアアルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムアルファオレフィンスルホネート、ナトリウムアルコールポリオキシエチレンエーテルスルホネート、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(Sodium dioctyl sulfosuccinate)、ナトリウムパーフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムパーフルオロブタンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(Alkyl diphenyloxide disulfonate)、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(Sodium dioctyl sulfosuccinate、DOSS)、ナトリウムアルキル-アリールホスフェート、アルキルエーテルホステートおよびナトリウムラウオリルサルコシネートからなるグループから選択されるものであり得る。 ただし、これらに限定されるものではなく、公知のアニオン性乳化剤は全て本発明の内容に含まれ得る。
【0052】
前記非イオン性乳化剤は、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型などであり得る。例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノール-Aエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルなどであり得る。ただし、これらに限定されるものではなく、公知の非イオン性乳化剤は全て本発明の内容に含まれ得る。
【0053】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、全重量を基準に、前記(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体20~45重量%、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー50~70重量%、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%の重合体を含み得る。前記乳化剤、緩衝剤(バッファ)、架橋剤などの他の成分は、任意に0.1~10重量%の範囲内に含まれてもよい。
【0054】
コンジュゲートジエン共重合体を構成する各モノマー間の含有量比率が、前述した範囲に該当する場合、Tgが-10℃以上40℃以下であり得る。
【0055】
なお、コンジュゲートジエン共重合体を構成する各モノマー間の含有量比率が、前述した範囲に該当する場合、絶縁層の柔軟性、絶縁特性、耐電解液特性が有意に向上され得る。
【0056】
本発明の実験例において、コンジュゲートジエン共重合体を構成する各モノマー間の含有量比率が、前述した範囲に該当する場合、初期粘着力、脆性、絶縁特性にいずれも優れていることを確認した。
【0057】
一方、前記共重合体の平均粒径は、50nm~500nm以下であり得る。ここで、平均粒径が50nm未満の場合または500nmを超える場合、分散安定性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0058】
一方、本発明による組成物で共重合体粒子は、独立した相として存在するとき、接着力の向上効果が向上するため、前記粒子間凝集(agglomeration)が起こらないようにすることが非常に重要である。したがって、本発明の組成物は、共重合体粒子を分散させるための分散溶媒を含む。本発明では、分散溶媒として非水系有機溶媒を使用する。
【0059】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上であり得る。
【0060】
好ましくは、前記非水系有機溶媒としてN-メチル-ピロリドン(NMP)を使用することができるが、これに限定されない。
【0061】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物の水分含有量は、10,000ppm以下に、好ましくは5,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下であり得、前記範囲のとき、電極合剤層と分離されてコーティングされ、電極の物性低下が発生しない。
【0062】
<リチウム二次電池用正極の製造方法>
【0063】
本発明のもう一つの一例は、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスを製造する段階と、前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を加え、加温および減圧して絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階と、正極集電体の片面または両面に正極活物質、導電材および非水系バインダーを含む正極合剤層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部領域をカバーするように前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーおよび絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階と、を備えるリチウム二次電池用正極の製造方法である。
【0064】
前記絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階は、コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換する段階を含み得る。
【0065】
本発明の一実施例では、前記絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階は、前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を加え、40℃~100℃以下の温度に加温し、1時間~20時間の間に200トール(torr)未満に減圧する段階であり得る。
【0066】
本発明の一実施例では、前記コンジュゲートジエンラテックスは、スチレン-ブタジエンラテックス粒子であり、前記非水系有機溶媒はNMP(N-メチル-ピロリドン)であり得る。
【0067】
前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)ラテックスに非水系有機溶媒を加え、加温および減圧して、コンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換する。
【0068】
好ましい実施例では、水系スチレン-ブタジエンラテックス(SBL)とNMP(N-メチル-ピロリドン)を混合し、40℃~100℃以下の設定温度に昇温した後、200torr未満に減圧して水系スチレン-ブタジエンラテックス(SBL)の溶媒をNMP(N-メチル-ピロリドン)に置換することができる。
【0069】
分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換したコンジュゲートジエンラテックス粒子は、非水系有機溶媒に置換された後も粒子形状を維持する。粒子形状の維持可否は粒径測定により確認することができる。粒子のサイズは、DLS粒度分析器、レーザー回折粒度分析器または電子透過顕微鏡で確認することができるが、これらに限定されない。
【0070】
前記正極集電体は、本発明によるリチウム二次電池用正極は集電体として当該電池に化学的変化を誘発しないながら、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレス鋼の場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。例えば、集電体はアルミニウムであり得る。
【0071】
なお、前記正極合剤層用スラリーにおいて、正極活物質は、正極で通常使用される正極活物質がすべて使用可能であり、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物などが使用されることがあり、これらに限定されない。
【0072】
前記正極活物質用スラリーに含まれる非水系バインダーは、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなるグループから選択される1種以上の樹脂を含み得る。一例として、前記バインダーは、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0073】
このとき、前記導電材は、正極の電気導電性などの性能を向上させるために用いられ、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなるグループから選択される1種以上を使用することができる。例えば、導電材料はアセチレンブラックを含み得る。
【0074】
さらに、正極合剤層用スラリーに用いられる溶媒は、非水系有機溶媒で、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上であり得、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0075】
前記絶縁コーティング層用スラリーを集電体に塗布する段階は、正極合剤層用スラリーが未乾燥の状態で絶縁層用スラリーを塗布することができ、または正極合剤層用スラリーと絶縁層用スラリーを同時に塗布することができる。
【0076】
前記正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階は、当該分野で通常知られている乾燥方法で前記正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを完全に乾燥して溶媒を除去することができる。具体的な例において、乾燥は、溶媒が全て揮発する程度の温度で熱風方式、直接加熱方式、誘導加熱方式などを変更して適用することができ、これらに限定されるものではない。例えば、前記絶縁コーティング液を乾燥する段階は、熱風方式で遂行され得る。
【0077】
このとき、乾燥温度は50℃~300℃の温度範囲であってもよく、60~200℃または70~150℃であってもよい。一方、前記絶縁コーティング液の乾燥温度が50℃未満の場合、温度が低すぎて絶縁コーティング液を完全に乾燥しにくい可能性があり、300℃を超える場合、乾燥温度が高すぎて電極の変形が発生することができる。
【0078】
前記集電体上に正極合剤層と絶縁コーティング層を形成させ、前記集電体を圧延してリチウム二次電池用正極を製造することができる。
【0079】
<リチウム二次電池用正極>
【0080】
本発明の他の一例は、正極集電体と、前記正極集電体から突出した正極タブと、正極タブ上に絶縁性物質でコーティングされた絶縁層と、を備え、絶縁性物質は、本発明によるリチウム二次電池用絶縁層組成物を含むリチウム二次電池用正極である。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記正極タブ上に絶縁層を含む正極は、電池の製造工程を大幅に短縮することができることから、最終的に電池の製造コストを低減することができ、絶縁部位をより広くして電池の安全性をさらに向上させ得る。それだけではなく、従来の絶縁性フィルムまたはテープを使用するにあたって発生されうる問題、すなわち、その部位への取り付けのための正極タブの折り曲げ時に脱離する可能性が非常に低く、電極組立体の厚さの増加を引き起こさない効果を有する。また、非水系バインダー(PVDFなど)を使用する場合、湿潤接着力が低下する問題と、水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)バインダーを使用する場合、正極合剤層用スラリーと同時コーティング時に正極バインダーとして使用する有機系バインダーであるPVDFのゲル化が発生して、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーの同時コーティングが不可能な問題を解決することができる。
【0082】
<リチウム二次電池>
【0083】
本発明のもう1つの一例は、リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池である。
【0084】
前記リチウム二次電池は、一般に、電極の他にも、分離膜およびリチウム塩含有非水電解質をさらに含んでいる。
【0085】
前記分離膜は正極と負極との間に介在し、高いイオン透過性と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が使用される。分離膜の気孔径は一般に0.01~10μmであり、厚さは一般に5~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐化学性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系重合体、ガラス繊維またはポリエチレンなどでできているシートや不織布などが使用される。電解質として重合体などの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0086】
前記リチウム含有非水系電解液は、非水系電解液とリチウム塩からなる。
【0087】
前記非水系電解液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(franc)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非量子性有機溶媒が使用され得る。
【0088】
前記リチウム塩は、前記非水系電解液に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSO)NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどが用いられる。
【0089】
場合によっては、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されることもある。
【0090】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステル重合体、ポリアジテーションリジン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合体などが使用され得る。
【0091】
前記無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSなどのLiの窒化物、ハロゲン化合物、硫酸塩などが使用され得る。
【0092】
また、非水系電解液には充放電特性、難燃性などの改善を目的に、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることもある。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むこともでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含むこともでき、FEC(Fluoro-Ethylene carbonate)カーボネート)、PRS(Propenesultone)などをさらに含み得る。
【0093】
本発明による二次電池は、小型装置の電源として使用される電池セルに用いられているだけではなく、中・大型装置の電源として使用される多数の電池セルを含む中・大型電池モジュールに単位電池としても好ましく用いられる。
【0094】
前記中・大型の装置の好ましい例は、電池モータによって動力を受けて動くパワーツールと、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)などを含む電気自動車と、電気自転車(E-bike)、電動スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車と、電気ゴルフカート(electric golf cart)と、エネルギーストレージシステム(Energy Storage System)とが挙げられるものの、これらに限定されるものではない。
【0095】
以下では、本発明を実施例によって詳しく説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例として示すものだけであり、本発明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0096】
[実施例1]
【0097】
55nm粒径のスチレン-ブタジエンシードラテックス5重量部を反応器に入れて80℃まで昇温させた後、モノマーとして1,3-ブタジエン38g、スチレン59g、アクリル酸3g、バッファ(buffer)としてNaHCO0.5g、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート1g、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン1g、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを4時間反応器に投与し、さらに4時間80℃を維持しながら反応させて固形分50%スチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。このとき、水酸化ナトリウムを使用してpHを中性(7)に調節した。重合後、Submicron particle sizer(Nicomp TM 380)を用いて共重合体粒子のサイズを分析したところ、重合された共重合体粒子の平均粒径は150nmであった。
【0098】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)600gを加えてから混合し、90℃まで昇温させた後、1~4時間のうちに15torrに減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換して、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。このとき、最終の水分含有量が10,000ppm以下になるようにしており、NMPをさらに補正して最終固形分8%になるようにした。最終製品の水分含有量はカールフィッシャー水分計で測定した。
【0099】
[実施例2]
【0100】
モノマーとして1,3-ブタジエン30g、スチレン60g、メチルメタクリレート5g、アクリロニトリル2g、ヒドロキシアクリレート1g、イタコン酸3gを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0101】
[実施例3]
【0102】
モノマーとして1,3-ブタジエン45g、スチレン50g、アクリル酸5g、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン0.2gを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0103】
[実施例4]
【0104】
モノマーとして1,3-ブタジエン22g、スチレン68g、メチルメタクリレート5g、ヒドロキシアクリレート2g、イタコン酸3gを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0105】
[比較例1]
【0106】
モノマーとして1,3-ブタジエン48g、スチレン47g、メチルメタクリレート1g、ヒドロキシアクリレート2g、アクリル酸2gを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0107】
[比較例2]
【0108】
モノマーとして1,3-ブタジエン20g、スチレン75g、メチルメタクリレート2g、アクリル酸3gを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0109】
[比較例3]
【0110】
実施例2と同様にして固形分50%スチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。
【0111】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)530gを加えてから混合し、85℃まで昇温させた後、1時間のうちに180torrに減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換して、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。最終固形分が8%となるようにNMPを追加しており、このとき最終水分含有量が50,010ppmであった。最終製品の水分含有量はカールフィッシャー水分計で測定した。
【0112】
[比較例4]
【0113】
実施例2と同様にして固形分50%スチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。
【0114】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)530gを加えてから混合し、90℃まで昇温させた後、7時間のうちに100torrまで減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換して、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。このとき、NMPを加えて最終固形分が8%となるようにしており、最終水分含有量が12,201ppmであった。最終製品の水分含有量はカールフィッシャー水分計で測定した。
【0115】
[比較例5]
分散溶媒置換を行わないスチレンブタジエンラテックスを含む組成物の製造
【0116】
分散溶媒置換を行わないスチレンブタジエンラテックスを含む組成物と比較するために、実施例4で製造したスチレンブタジエンラテックスを溶媒置換を別途に行わない状態でカルボキシメチルセルロースと9:1の重量比で混合して組成物を製造した。カルボキシメチルセルロースは、増粘剤として分散溶媒置換を別途に行わないスチレンブタジエンラテックスのコーティング性を向上させるために使用される。
【0117】
実施例1~4および比較例1~5で用いたモノマーの種類および使用量をまとめると下記の表1の通りである。使用量は、モノマーの総重量を基準にした重量%で表した。
【0118】
【表1】
【0119】
前記実施例1~4および比較例1~5で製造したNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物に対して、下記の実験例1、2および5に記載された方法に従って水分含有量、粘度、Tg測定評価を遂行してその結果を下記の表2に示した。
【0120】
前記実施例1~4で製造したNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物の優れた物性を確認するために、比較例1~2で製造したNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物、PVDFを含む組成物(比較例6)、水素化ニトリルゴムをNMPに溶解させた組成物(比較例7)、およびスチレンブタジエン系ゴムをNMPに溶解させた組成物(比較例8)に対して下記の実験例3および4に記載された方法に従って初期粘着力(Tackiness)および脆性(Brittleness)評価を行い、その結果を下記の表2に示した。比較例8の場合、スチレンブタジエン系ゴムは、NMPに完全に溶けず、部分的に溶け、8%固形分ではゲル化した。以下の実験例では、ゲル化した部分は除去し、溶けた部分のみを取得して実験を行った結果を表記した。
【0121】
実施例1~4、および比較例1~2で製造したNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物、PVDFを含む組成物(比較例6)に対して、下記の実験例6および7に記載の方法によって絶縁特性評価および水分影響評価を行い、その結果を下記の表2に示した。比較例3~4で製造した組成物は、水分含有量を除いた残りは実施例2と同じ組成であるため、水分含有量が影響を及ぼし得る水分影響評価のみを進行した。スチレンブタジエンラテックスの分散溶媒を非水系有機溶媒に置換していない状態と置換している状態の特性を比較するために、比較例8で製造した分散溶媒置換を行わないスチレンブタジエンラテックスを含む組成物に対して脆性および水分影響評価を行った。
【0122】
[実験例1]水分含有量
【0123】
前記実施例1~4および比較例1~8において製造した組成物に対して、860KF Thermoprep(オーブン)が連結されたMetrohm(メトローム)社の899Coulometerを用いてオーブンの温度を220℃に合わせ、0.1~0.4gの試料を秤量して水分含有量を測定した。比較例5の場合、分散溶媒を置換せず、水溶液上で製造した製品で水分含有量が大きいため機器で測定が不可能であり、固形分を測定して残りの含有量を水分として計算して表記した。
【0124】
[実験例2]Tg測定
【0125】
前記実施例1~4および比較例1~8で製造した組成物に対して、DSCを用いて-80℃から80℃まで5℃/minで2サイクルを進行した後、2回目のサイクルで変異区間の中間値でガラス転移温度を計算した。TA Instruments社のDSC25を使用しており、3~20mgの試料を秤量してTgを測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0126】
[実験例3]初期粘着力(Tackiness)評価
【0127】
前記実施例1~4、比較例1~2および比較例5~8で製造した組成物をアルミニウム金属箔にコーティングし、130℃で乾燥させて約10μm厚さの絶縁コーティング層が形成された金属試料を準備した。前記金属試料を2cm×12cmのサイズに切断した後、SUS板(サス板)にラミネートさせた後、90°接着力を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0128】
[実験例4]脆性(Brittleness)測定
【0129】
前記実施例1~4、比較例1~2および比較例5~8で製造した組成物を基材に最終厚みが20μmとなるようコーティングして130℃で乾燥した後、2cm幅に切断した後、脆性を測定した。常温で試料を半分に折りたたんだ後、1kgローラー(roller)で一回押してから広げた後、コーティングフィルムが割れるか、または割れの有無を肉眼で確認した後、その結果を下記の表2に示した。
【0130】
[実験例5]粘度測定
【0131】
前記実施例1~4および比較例1~8で製造した組成物に対して粘度を測定した。粘度測定は、25℃の温度でブルックフィールド(Brookfield)社のLV型粘度計の63番スピンドルを用いて12rpmで回してから1分後に測定した。粘度が測定範囲から外れた場合、rpm値を下げて測定し、その結果を下記の表2に示した。下記の表2において、8%粘度は固形分8%の粘度を意味する。
【0132】
[実験例6]絶縁特性測定
【0133】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2Mn0.296重量部、バインダーとしてPVdF 2重量部、導電材としてカーボンブラック 2重量部を秤量してN-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極合剤層用スラリーを製造した。アルミニウム箔に前記合剤層用スラリーを塗布して乾燥した後、圧延して厚さ60μmの正極合剤層を備える正極を製造した。
【0134】
その後、前記実施例1~4で製造したスチレンブタジエン共重合体を含む組成物である絶縁液、比較例1~2で製造したスチレンブタジエン共重合体を含む組成物である絶縁液、PVDFを含む絶縁液(比較例6)を正極合剤層上に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの正極絶縁層を形成した。
【0135】
前記正極を用いて負極としてはリチウム箔を、EC:EMC=3:7の溶媒に1M LiPFが含有された電解液を用いてコイン型ハーフセルを製造した。コイン型ハーフセルを60℃のオーブンで15日保管した後、ハーフセルの放電容量を測定して絶縁層の絶縁効果を確認した。比較のために絶縁コイン層を形成しない正極でハーフセルを製造して0.1C放電容量を100とし、実施例1~4、比較例1および2、比較例6の絶縁液で絶縁コーティング層を形成した正極の放電容量比を計算し、その結果を下記の表2に示した
【0136】
【表2】
【0137】
前記表2に示すように、実施例1~実施例4の場合、初期粘着力、脆性、絶縁特性がいずれも優れた。
【0138】
一方、Tgが-10℃未満である比較例1、比較例7および比較例8の場合、初期粘着力が高いためコーティング後に電極同士が互いに付着し、巻取工程で電極と電極が付着して工程を遂行しにくい。
【0139】
また、図1に示すように、Tgが40℃を超える比較例2の場合、初期粘着力は低いが割れ現象が現れた。比較例5の場合も割れ現象が現れたが、これは増粘剤であるカルボキシメチルセルロースを少量添加しても脆性が高く絶縁液に影響を与えるためである。同時コーティングを行わずに、スチレンブタジエンラテックスを別にコーティングする場合にも、このような理由から、巻き取りおよびスリッティング工程で絶縁層が割れたり脱離されたりすることがある。
【0140】
また、PVDFを用いた比較例6の場合、初期粘着力は低いが、高温放電容量比が高かった。
【0141】
特に、比較例1、2および6~8の絶縁液で絶縁コーティング層を形成した正極は、実施例1~4の絶縁液で絶縁コーティング層を形成した正極に比べて放電率が高く示された。電解液内でのウェット(wet)接着力が低い場合、高温保存時に絶縁液の脱離およびスウェリングとなり正極の容量が発現されることがあり、高温放電容量比が高いほど絶縁効果は低いと見られる。比較例1、2および6~8の絶縁液は、電解液内でのウェット接着力が低く、高温保存時に絶縁液の脱離およびスウェリングが進行されて正極の容量発現が現れることが分かる。
【0142】
[実験例7]水分影響評価
【0143】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2Mn0.2 96重量部、バインダーとしてPVdF 2重量部、導電材としてカーボンブラック 2重量部を秤量してN-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極合剤層用スラリーを製造した。
【0144】
そして、前記正極合剤層用スラリーと、それぞれの実施例1~実施例4および比較例3~比較例5において製造した絶縁コーティング層用スラリーと、がオーバーレイされるようにドクターブレードを用いて集電体に同時に塗布して、塗布直後と塗布してから1分後を比較し、その結果を表2および図2に示した。図2に示すように、実施例1~実施例4は、塗布直後と塗布してから1分後の両方ともオーバーレイ部分の浸透なしに最初のコーティングされた状態を維持したが、水分含有量が10000ppm以上である比較例3~比較例5の場合、電極スラリーが絶縁層の方に浸透してコーティング境界を確実に維持することができなくなった。特に分散溶媒を置換していない比較例5の場合、塗布直後から正極スラリーと絶縁液が接する部分が水分によって凝集されることから、溶媒置換されていない水系絶縁液は、正極スラリーと同時にコーティングが不可能であることを確認できる。
【0145】
正極絶縁コーティング層用スラリーの水分含有量が高いほど、正極合剤層用スラリーと絶縁層用スラリーを同時にコーティングする場合、正極合剤層用スラリーが正極絶縁コーティング層用スラリーの方に浸透して期待する絶縁効果を発現することが難しい。
図1
図2
【国際調査報告】