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特表2024-538953ハロゲン化に基づくルテニウムCMP化学物質
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  • 特表-ハロゲン化に基づくルテニウムCMP化学物質 図1
  • 特表-ハロゲン化に基づくルテニウムCMP化学物質 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ハロゲン化に基づくルテニウムCMP化学物質
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519970
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022041873
(87)【国際公開番号】W WO2023069198
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,214
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/674,579
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/674,593
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ケイト
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA08
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB26
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA03
5F057EA07
5F057EA08
5F057EA09
5F057EA24
5F057EA29
(57)【要約】
本開示は、ルテニウム(Ru)の化学的機械的研磨(CMP)プロセスにおいて使用する新規な腐食制御化学物質を提供する。より具体的には、本開示は、ルテニウム表面を平坦化するための改善されたCMPスラリー化学物質及びCMPプロセスを提供する。本明細書で開示されるCMPプロセスでは、ルテニウム表面と反応してハロゲン化ルテニウム表面を形成するハロゲン化試薬と、ハロゲン化ルテニウム表面のリガンド支援反応性溶解のためのリガンドと、を含有するCMPスラリーに、ルテニウム表面(例えば、エッチング後のルテニウム表面)が曝される。高い材料除去速度を提供しながら、ポスエッチ表面形態を改善する、拡散律速エッチングプロセスを提供するように、CMPスラリー中でのハロゲン化剤及びリガンドの相対量が制御され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
化学的機械的研磨(CMP)スラリーを有し、
前記CMPスラリーは、
溶媒と、
ルテニウム表面をハロゲン化してハロゲン化されたルテニウム表面を形成するハロゲン化剤と、
前記ハロゲン化されたルテニウム表面と反応して前記ハロゲン化されたルテニウム表面を溶解するリガンドと、
前記ハロゲン化されたルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を高める触媒と、
を有する、組成物。
【請求項2】
前記CMPスラリーは、非水性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記CMPスラリーは、研磨材粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記CMPスラリー中の前記ハロゲン化剤と前記リガンドとの相対量により、前記ハロゲン化されたルテニウム表面の溶解の速度よりも大きな、前記ルテニウム表面のハロゲン化の速度が提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記CMPスラリーは、酸化物形成酸化剤を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記CMPスラリーは、所定量の水または溶存酸素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ハロゲン化剤は、前記ルテニウム表面と反応して、自己制限的な三塩化ルテニウム(RuCl)パシベーション層を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ハロゲン化剤は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル、またはN-クロロスクシンイミドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ハロゲン化剤は、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、またはクロロカーボン中で溶解される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記ハロゲン化剤は、塩素化剤であり、
該塩素化剤は、前記ルテニウム表面と反応して塩素化ルテニウム表面を形成し、
前記リガンドは、前記塩素化ルテニウム表面に対して反応性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ハロゲン化剤は、フッ素化剤であり、
該フッ素化剤は、前記ルテニウム表面と反応してフッ素化ルテニウム表面を形成し、
前記リガンドは、前記フッ素化ルテニウム表面に対して反応性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ハロゲン化剤は、臭素化剤であり、
該臭素化剤は、前記ルテニウム表面と反応して臭素化ルテニウム表面を形成し、
前記リガンドは、前記臭素化ルテニウム表面に対して反応性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記リガンドは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アセチルアセトン(ACAC)、イミノ二酢酸(IDA)、またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記触媒は、塩基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記塩基は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、または水酸化テトラメチルアンモニウム((CHNOH)を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
ルテニウムを除去する方法であって、当該方法は、
基板を化学的機械的研磨(CMP)システム内に配置するステップであって、前記CMPシステムは、回転可能なプラテンに取り付けられた研磨パッドを有し、前記研磨パッドは、回転可能であり、前記基板の表面を横断して移動することができ、前記基板は、ルテニウム表面を含む、ステップと、
前記研磨パッド上にスラリーを分配するステップであって、前記スラリーは、
溶媒と、
前記ルテニウム表面をハロゲン化してハロゲン化されたルテニウム表面を形成するハロゲン化剤と、
前記ハロゲン化されたルテニウム表面と反応して前記ハロゲン化されたルテニウム表面を溶解するリガンドと、
前記ハロゲン化されたルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を高める触媒と、
を有する、ステップと、
ルテニウムの所定量が除去されるまで、前記スラリーを用いて前記ルテニウム表面を研磨するステップと、
を有する、方法。
【請求項17】
さらに、前記スラリー中の前記ハロゲン化剤と前記リガンドとの相対量を制御するステップを有し、
前記ルテニウム表面のハロゲン化の速度は、前記ハロゲン化されたルテニウム表面の溶解の速度よりも大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記研磨パッド上にスラリーを分配するステップは、酸化物形成酸化剤を含まないスラリーを分配するステップを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ハロゲン化剤は、前記ルテニウム表面と反応して塩素化ルテニウム表面を形成する塩素化剤を含み、
前記リガンドは、前記塩素化ルテニウム表面と反応して前記塩素化ルテニウム表面を溶解する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒は塩基である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月19日に出願された“RUTHENIUM CMP CHEMISTRY BASED ON HALOGENATION”と題する米国仮特許出願第63/257,214号明細書の優先権を主張し、2022年2月17日に出願された“RUTHENIUM CMP CHEMISTRY BASED ON HALOGENATION”と題する米国特許出願第17/674,593号明細書の優先権を主張し、及び2022年2月17日に出願された“METHOD FOR WET ATOMIC LAYER ETCHING OF RUTHENIUM”と題する米国特許出願第17/674,579号明細書の優先権を主張し、それら開示が参照として本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、半導体デバイスの製造に関し、具体的には、金属などの多結晶材料の除去及びエッチングに関する。通常の半導体製作の間、基板上に形成された様々な金属が、パターン化されたエッチング、化学的機械的研磨(CMP)、並びに他の技術により除去される場合がある。(ドライエッチングと呼ばれる)プラズマベース又は気相エッチング及び(ウェットエッチングと呼ばれる)液体ベースエッチングを含む、基板上の層をエッチングするための様々な技術が知られている。
【0003】
化学的機械的研磨(CMP)は、半導体製造において平坦化のための欠かせないツールになっている。CMPは、研磨されている表面を侵食するように設計された溶媒、砥粒及び反応性化学物質を含有するスラリーを使用する。表面反応と砥粒の作用との組み合わせが、表面上の高い位置での材料除去を強化し、したがって表面を平坦化する。
【0004】
化学的機械的研磨に関する課題の1つは、表面腐食である。表面腐食は、ピッティング、基板表面上での腐食生成物の蓄積、及び不溶性生成物の機械的除去による表面損傷を防止するために、十分に制御されなければならない。しかしながら、表面腐食制御は、スループットを犠牲にして行うべきではない。すなわち、大量製造との互換性を有する材料除去速度をサポートするため、腐食速度は高くなければならない。
【0005】
ルテニウム(Ru)は、バックエンドオブライン(BEOL)メタライゼーションにおける銅の代替として、並びに埋込み電力レール(能動デバイスの下方に配置される電力レール)などのフロントエンドオブライン(FEOL)フィーチャとして、現在考慮されている貴金属である。しかしながら、ルテニウムの貴金属特性が、Ruをエッチング及び平坦化することを困難にする。
【0006】
例えば、同時係属中の2022年1月21日に出願された“Dynamically Adjusted Purge Timing in Wet Atomic Layer Etching”と題する米国特許出願第17/580,936号明細書が、ルテニウムを含む様々な遷移金属をエッチングするためのウェットALEプロセスについて説明している。同時係属中の出願では、Ru金属の表面を酸化剤に曝すことにより改質された表面層が形成され、酸化剤は、曝された表面上に金属酸化物を形成する。溶存酸素又は別の酸化剤を含有する化学溶液を使用して二酸化ルテニウム(RuO)表面層を形成することは容易であるが、この表面酸化物の安定性及び不溶性をエッチングプロセスにおいて取り扱うことは困難である。したがって、可溶性又は揮発性のルテニウム-酸化物化合物を形成するために、典型的には、従来のエッチングプロセスにおいて強酸化剤が使用される。
【0007】
いくつかの市販のルテニウムエッチャントは、次亜塩素酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、及び過ヨウ素酸などの強酸化剤を含有し、酸化剤は、ルテニウム表面を酸化して四酸化ルテニウム(RuO)を形成する。これら化学物質のうち、最も有効なエッチャントである硝酸セリウムアンモニウム及び次亜塩素酸ナトリウムは、その後に形成されるデバイスにおいて金属汚染の危険をもたらすので問題がある。例えば、フロントエンドオブラインにおける微量のナトリウム及びセリウムの取り込みは、トランジスタ性能を著しく劣化させ得る。一方で、過ヨウ素酸は高価であり、ルテニウム用に費用効果の高いエッチングプロセスを提供するために使用することはできない。
【0008】
ルテニウムをエッチングするために使用する従来のエッチングプロセスに関する別の課題は、エッチング後の表面が粗くなる傾向があるということである。これは、ルテニウム粒界が粒子表面と比較して遥かに反応性が高い傾向があるからであり、これが、粒子表面と比較して粒子境界での選択性エッチングにつながる。このように、エッチング後のルテニウム表面を滑らかにするために、従来のプロセスにおいて化学的機械的研磨が多くの場合に使用される。
【0009】
ルテニウムエッチング化学物質のように、従来のルテニウムCMPスラリーは、一般に、ルテニウム表面を腐食させるために強酸化剤に依存する。エッチングと同様に、これら酸化剤は粒子境界に選択的に反応する傾向があり、これがCMP中にRu表面のピッティングをもたらす。ピッティングを減らすために侵襲性が弱い酸化剤を使用することができるが、そのような酸化剤をCMPスラリー中で使用すると、材料除去速度が大幅に低くなる。腐食生成物がもはや可溶性ではないので、材料除去速度が大幅に減少し、したがって材料除去のためには機械的研磨が唯一のプロセスになる。
【0010】
高い材料除去速度を提供しながらエッチング後の表面の滑らかさを改善する新規なルテニウムCMPスラリー化学物質への必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、ルテニウム(Ru)CMPプロセス用の新規な腐食制御化学物質を提供する。より具体的には、本開示は、ハロゲン化ルテニウム又はルテニウムオキシハロゲン化物表面中間体を形成するルテニウム表面のハロゲン化と、ハロゲン化ルテニウム又はルテニウムオキシハロゲン化物表面中間体を化学的に除去する反応性溶解とを使用する、新規なルテニウムCMPスラリー化学物質を提供する。ルテニウム表面のハロゲン化は、化学ハロゲン化剤のラジカルハロゲン化を使用して達成できる。ハロゲン化は、それ自体で自己制限的であり、反応性溶解の速度論は温度に依存する。ハロゲン化の自己制限的性質は、ルテニウム表面のピッティングを制限する。機械的研磨プロセスは、表面上の高い位置の周辺の局所的温度を上昇させるので、溶解の温度依存性速度論は、ルテニウム表面の平坦化に更に役立つ。
【0012】
一実施形態によれば、ルテニウム表面を平坦化するために、改善された化学的機械的研磨(CMP)プロセスが本明細書で提供される。本明細書で開示されるCMPプロセスでは、ルテニウム表面と反応してハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物表面を形成するハロゲン化試薬と、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物表面のリガンド支援反応性溶解のためのリガンドと、を含有するCMPスラリーに、ルテニウム表面(例えば、エッチング後のルテニウム表面)が曝されてもよい。高い材料除去速度を提供しながら、エッチング後の表面形態を改善する、拡散律速エッチングプロセスを提供するように、CMPスラリー中でのハロゲン化剤及びリガンドの相対量が制御され得る。
【0013】
このプロセスのために、非水溶媒(例えば、酢酸エチル(EA)など)中で多種多様なハロゲン化試薬(例えば、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)など)を使用することができる。ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物表面は非水溶媒に不溶性であるので、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物表面の化学的除去を促進するためリガンド支援反応性溶解が使用される。ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物表面の反応性溶解のため、多種多様なリガンド(例えば、アセチルアセトン(ACAC)又はアミノポリカルボン酸など)を使用することができる。
【0014】
他の実施形態によれば、新規なCMPスラリーを含む組成物が本明細書で提供される。新規なCMPスラリーは、溶媒と、ルテニウム表面をハロゲン化してハロゲン化ルテニウム表面を形成するハロゲン化剤と、ハロゲン化ルテニウム表面と反応してハロゲン化ルテニウム表面を溶解するリガンドと、ハロゲン化ルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を増加させる触媒とを一般に含み得る。いくつかの実施形態では、ハロゲン化ルテニウム表面の溶解速度よりも大きい、ルテニウム表面のハロゲン化速度をもたらすように、CMPスラリー中のハロゲン化剤とリガンドとの相対量が選択され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるCMPスラリーは、ハロゲン化剤を含むが、酸化物形成酸化剤を含まない。本明細書で使用する場合、酸化物形成酸化剤は、ルテニウム表面と反応してルテニウム表面上にルテニウム-酸化物層を形成する酸化剤である。ハロゲン化剤がルテニウム表面をハロゲン化し、化学的に酸化できるが、それは、ルテニウム表面上にルテニウム-酸化物層を形成するために、ルテニウム表面と反応しない。
【0016】
他の実施形態では、本明細書で説明されるCMPスラリーは、ハロゲン化剤及び酸化物形成酸化剤を含んでもよい。例えば、CMPスラリーは、所定量の水又は溶存酸素を更に含有してもよい。水又は溶存酸素などの酸化物形成酸化剤の存在下でハロゲン化が実施される場合、ルテニウム表面上に、ルテニウム-酸化物-ハロゲン種を含有するハロゲン化ルテニウム表面が形成される。ルテニウム-酸化物-ハロゲン種は一般に、ハロゲン化ルテニウム表面層よりも可溶性であるので、ルテニウム-酸化物-ハロゲン種の存在はCMPプロセスにおいて材料除去速度を増加させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、CMPスラリー中に含まれるハロゲン化剤は塩素化剤であってもよい。このような実施形態では、塩素化剤はルテニウム表面と反応して塩素化ルテニウム表面を形成する場合があり、リガンドは塩素化ルテニウム表面に対する反応性を有する場合がある。
【0018】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化剤は、溶媒中に溶解された塩素化剤を含んでもよい。例えば、塩素化剤は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドであってよく、溶媒は、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンであってもよい。そのような実施形態では、ハロゲン化剤はルテニウム表面と反応して、自己制限的なRuClパシベーション層を形成することができる。
【0019】
本明細書で開示されるハロゲン化剤は、塩素化剤に厳密に限定されるわけではないことに留意されたい。いくつかの実施形態では、例えば、ハロゲン化剤はフッ素化剤であってもよい。このような実施形態では、フッ素化剤はルテニウム表面と反応してフッ素化ルテニウム表面を形成する場合があり、リガンドはフッ素化ルテニウム表面に対する反応性を有する場合がある。他の実施形態では、ハロゲン化剤は臭素化剤であってもよい。このような実施形態では、臭素化剤はルテニウム表面と反応して臭素化ルテニウム表面を形成する場合があり、リガンドは臭素化ルテニウム表面に対する反応性を有する場合がある。
【0020】
いくつかの実施形態では、CMPスラリー中に含まれるリガンドは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アセチルアセトン(ACAC)、イミノ二酢酸(IDA)、又はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含んでもよく、触媒は塩基であってもよい。ハロゲン化ルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を増加させるためにCMPスラリー中に含まれてもよい塩基の例は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、及び水酸化テトラメチルアンモニウム(CHNOH)を含むが、これらに限定されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、CMPスラリーは非水性であってもよく、研磨粒子を含んでもよい。1つの例示的実現形態では、本明細書で開示されるCMPスラリーは溶媒としてEAを使用してもよく、ナノ粒子研磨材(例えば、二酸化ケイ素(SiO))、ハロゲン化試薬(例えば、TCCA)、リガンド(例えば、アミノポリカルボン酸)、及びリガンド支援反応性溶解に触媒作用を引き起こす塩基を更に含有してもよい。
【0022】
したがって、本明細書で開示される技術は、主にハロゲン化を使用してルテニウム表面上にルテニウム-ハロゲン化合物を形成し、ルテニウム-ハロゲン化合物の化学的除去のためのリガンド支援反応性溶解を使用する、ルテニウムCMPプロセス及びルテニウムCMPスラリーを提供する。異なるリガンドが異なる速度でハロゲン化表面と反応するので、所与のCMPプロセス中に実現される化学的エッチング速度を調整するために様々な異なるリガンドを使用することができる。本明細書で説明されるCMPプロセス及びCMPスラリーの1つの利点は、ルテニウム-ハロゲン化合物の化学的及び機械的特性がCMPプロセスに、より適していることである。このように、本明細書で説明されるCMPプロセス及びCMPスラリーは、高い材料除去速度を提供しながら、エッチング後のルテニウム表面の平滑化を改善する。
【0023】
本明細書で更に説明されるように、本開示は、ルテニウム表面を平坦化するために本明細書で開示される新規なCMP化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。当然のことながら、本明細書で説明される様々なステップの考察の順序は、明確にするために提示したものである。一般に、これらのステップは、任意の適切な順序で実施することができる。加えて、本明細書における様々な特徴、技術、構成等の各々が本開示の様々な箇所で説明されている場合があるが、それらの概念の各々は、互いに独立して又は互いに組み合わされて実行され得ることが意図される。したがって、本発明は、多くの異なる方法で具現化及び考察することができる。
【0024】
一実施形態によれば、本明細書ではルテニウムを除去する方法が提供される。方法は一般に、化学的機械的研磨(CMP)システム内に基板を配置することから始まり、CMPシステムは回転可能なプラテン上に取り付けられた研磨パッドを含み、それにより研磨パッドを回転させて基板の表面を横切って移動させることができ、基板はルテニウム表面を含む。次に、本方法は、研磨パッド上にスラリーを分配することを含むことができる。スラリーは一般に、溶媒と、ルテニウム表面をハロゲン化してハロゲン化ルテニウム表面を形成するハロゲン化剤と、ハロゲン化ルテニウム表面と反応してハロゲン化ルテニウム表面を溶解するリガンドと、ハロゲン化ルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を増加させる触媒とを含むことができる。次に、本方法は、所定量のルテニウムが除去されるまで、スラリーを使用してルテニウム表面を研磨することを含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、本方法は、ルテニウム表面のハロゲン化速度がハロゲン化ルテニウム表面の溶解速度よりも大きくなるように、スラリー中のハロゲン化剤とリガンドとの相対量を制御することを更に含むことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、研磨パッド上にスラリーを分配することは、酸化物形成酸化剤を含まないスラリーを分配することを含むことができる。他の実施形態では、研磨パッド上にスラリーを分配することは、ハロゲン化剤及び酸化物形成酸化剤を含むスラリーを分配することを含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、ハロゲン化剤は塩素化剤を含んでもよく、ハロゲン化剤はルテニウム表面と反応して塩素化ルテニウム表面を形成する。そのような実施形態では、リガンドは塩素化ルテニウム表面と反応して、塩素化ルテニウム表面を溶解することができる。いくつかの実施形態では、塩素化ルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を増加させる触媒は塩基であり得る。
【0028】
この概要のセクションは、本開示又は特許請求の範囲に記載される本発明の全ての実施形態及び/又は段階的に新規な態様を明記するものではないことに留意されたい。代わりに、この概要は、様々な実施形態及び従来の技術に対する新規性に対応する点についての予備的な考察のみを提供する。本発明及び実施形態の更なる詳細及び/又は可能な観点については、以下に詳述する本開示の詳細な説明のセクション及び対応する図面を参照されたい。
【0029】
本発明及びその利点は、同一参照番号で同一の特徴を示す添付図面と合わせて以下の説明を参照することでより完全に理解されよう。しかしながら、添付図面は、開示する概念の例示的な実施形態を示すに過ぎず、したがって開示する概念は、他の同等に有効な実施形態も包含し得るため、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】化学的機械的研磨(CMP)システムのブロック図である。
図2】本明細書で説明される技術を利用する方法の一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ルテニウムを液体(ウェット)化学物質でエッチングすることは、従来、可溶性のルテニウム種を形成するために強酸化剤を使用している。現在利用可能なRuエッチャントは、RuO又は関連する水和種として、金属RuをRu8+に酸化するために、硝酸セリウムアンモニウム、過ヨウ素酸、及び次亜塩素酸塩イオンを使用する。しかしながら、これらの酸化は、粒界におけるルテニウムの増加した反応性ゆえに、エッチング後に粗い表面をもたらす。従来のルテニウムウェットエッチングプロセスの別の弱点は、反応生成物が非常に可溶性であるということである。この可溶性は、酸化律速エッチングに至り、これはエッチング中に粗さの形成を悪化させるだけである。Ru CMPスラリーの一部として同じ酸化剤が使用される場合、これら弱点は増幅される。したがって、より良好なルテニウム除去のため、Ru CMPにおいて使用する新規なエッチング化学物質が必要である。
【0032】
本開示は、ルテニウム(Ru)表面を平坦化するための新規なCMPスラリー化学物質を提供する。以下でより詳細に説明するように、本明細書で説明されるRu CMPスラリーは、ルテニウム表面を化学的に改質して、ルテニウム表面上にハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物のパシベーション層を形成するハロゲン化剤と、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物のパシベーション層の反応性溶解のためのリガンドと、リガンド反応速度を増加させるための強塩基又は他の触媒と、非水溶媒中の研磨研削媒体とを含む。これら成分の全てをCMPスラリー中に溶解又は懸濁させたままにすることを手助けするために、界面活性剤又は他の安定剤も使用できる。
【0033】
ルテニウムを平坦化するために使用される従来のCMPスラリー化学物質とは異なり、本明細書で開示されるCMPスラリー化学物質は、従来のRuCMPスラリーで実現されるより高い酸化状態よりもむしろ、RuをRu3+に酸化することに重点を置いている。より低い酸化状態を使用することは、可溶性及び不溶性のルテニウム生成物を形成するための選択肢を提供する利点を有する。本明細書で開示されるCMPスラリー化学物質は、主にルテニウム表面の酸化というよりも、むしろハロゲン化を使用して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物のパシベーション層を形成することにより、より低い酸化状態を実現する。金属Ruの直接ハロゲン化が、Ru3+(Xはハロゲン)の形成に至る。いくつかの実施形態では、ハロゲン化は、塩素化剤、フッ素化剤、又は臭素化剤を含むCMPスラリーにルテニウム表面を曝すことにより実現できる。
【0034】
ルテニウム表面の塩素化は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル、及びN-クロロスクシンイミドなどの多種多様な塩素化試薬を使用して達成できる。ルテニウム表面をこれら塩素化剤に曝すことにより、ルテニウム表面が化学的に改質されて、三塩化ルテニウム(RuCl)などであるがこれに限定されない、塩化ルテニウムパシベーション層が形成される。これが、塩化ルテニウムパシベーション層を形成するために使用できる全ての可能な塩素化剤の網羅的なリストではないことに留意されたい。他のハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化物パシベーション層を形成するために、ルテニウム表面を他のハロゲン化剤に曝すことができることに更に留意されたい。例えば、ルテニウム表面のフッ素化又は臭素化は、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N-フルオロベンゼンスルホンイミド、N-ブロモスクシンイミド、又はジブロモイソシアヌル酸などのフッ素化剤又は臭素化剤を使用して達成できる。これらハロゲン化剤に曝されると、ルテニウム表面上にルテニウムフッ素化物又はルテニウム臭素化物パシベーション層が形成される。ハロゲン化剤は一般に、水で加水分解される。したがって、使用されるハロゲン化剤に関係なく、ハロゲン化は、加水分解が発生しない溶媒又は溶媒ブレンド中で生じなければならない。
【0035】
1つの例示的な実施形態では、本開示に従うCMPスラリーは、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル、又はクロロカーボンなどの非水溶媒中に溶解されたTCCAを含むことができる。酢酸エチルなどの非水溶媒中のTCCAに曝されると、Ruは急速に反応して、自己制限的な塩化ルテニウム(RuCl)パシベーション層が形成される。塩素化反応中に水又は溶存酸素などの酸化物形成酸化剤が存在する場合、自己制限的塩化ルテニウムパシベーション層は、RuOCl種を含有することもできる。「自己制限的」は、所与のエッチング溶液がルテニウム表面にどれほどの長さにわたって接触しているかに関係なく、ルテニウム表面の制限された厚さだけが改質又は除去されることを意味する。自己制限的反応は、反応の1層以上の単分子層又は反応の部分的な単分子層により制限され得る。塩化ルテニウムパシベーション層は、いったん形成されると、リガンド交換反応を介して可溶化され得る。非水性TCCA溶液への反応性リガンドの添加により、本明細書で説明されるCMPスラリー化学物質は、自己制限的表面パシベーションから連続エッチングプロセスに転換される。
【0036】
塩化ルテニウムパシベーション層をリガンド支援反応性溶解を介して化学的に除去するために、CMPスラリー中で多種多様なリガンドが使用されてもよい。例えば、アセチルアセトン(ACAC)又はアミノポリカルボン酸リガンドなどのリガンドが、不溶性RuClのリガンド支援溶解のために良好に機能する。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、RuClと反応してルテニウムアミノポリカルボキシレートを形成する例示的なアミノポリカルボン酸である。不溶性のRuClの反応性溶解のための代替のリガンドは、イミノ二酢酸(IDA)及びジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含むが、これらに限定されない。EDTA、IDA及びDTPAが、水溶液中で使用できる一方で、ACACが、水溶液、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、又は他の有機溶媒中で使用できる。いくつかの実施形態では、所与のCMPプロセス中に実現される化学エッチング速度を調整するために、CMPスラリー中に含まれるリガンドを使用することができる。例えば、異なるリガンドが、異なる速度で塩化ルテニウムパシベーション層(又は他のハロゲン化ルテニウム表面層)と反応する。反応の速度論は使用するリガンドの反応性に強く依存するので、所与のCMPプロセス中に実現される化学エッチングレートを調整するために異なるリガンドを選択し使用することができる。
【0037】
リガンド交換反応(例えば、EDTAをClリガンドと置換する)は、塩基触媒性である。したがって、EDTA(又はACAC)を非プロトン化してリガンドの反応性陰イオン形態を形成するために、CMPスラリー中に塩基が必要である。リガンドを非プロトン化するために、CMPスラリー中で、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム((CHNOH)、及び他の強塩基などの、多種多様な塩基を使用することができる。非水性塩基(例えば、水酸化第四級アンモニウム、トリアルキルアミン)又は塩基性溶媒(例えば、アミノアルコール)を使用することもできる。
【0038】
したがって、一実施形態では、本明細書で説明されるCMPスラリーは、ルテニウム表面との塩素化反応を促進してルテニウム表面上に塩化ルテニウム(例えば、RuCl)パシベーション層を形成するためのTCCAと、塩化ルテニウムパシベーション層のリガンド支援反応性溶解のための、ACAC又はEDTAなどのリガンドと、リガンド反応の速度を増加させルテニウム表面を連続的にエッチングするための塩基又は他の触媒とを含有してもよい。スラリー溶液中のTCCA及びリガンドの濃度を変化させることにより、塩素化反応及びリガンド支援溶解反応の相対的な動態学的速度を調整できる。
【0039】
上述したように、従来のルテニウムウェットエッチング化学物質及びCMPスラリーは酸化制限的エッチングに依存し、これはエッチング及び平坦化中に表面粗さを増加させる。対照的に、本明細書で説明される技術は、エッチング反応の全体が溶解制限的であることを確実にすることにより(すなわち、ハロゲン化速度がリガンド支援溶解速度よりも遥かに速いことを確実にすることにより)、エッチング後の表面形態を改善する。これは、本明細書で説明される技術により実現できる。なぜなら、ルテニウム表面のハロゲン化速度が、ハロゲン化ルテニウム表面の溶解速度よりも大きくなるように、CMPスラリー中に含まれるハロゲン化剤及びリガンドの相対量を調整することにより、ハロゲン化の速度論及び溶解の速度論を独立して制御できるからである。現在利用可能な酸化剤ベースのエッチング化学物質は、この独立制御が欠如している。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるCMPスラリーは、ハロゲン化剤を含むが、水又は溶存酸素などの酸化物形成酸化剤を含まない。他の実施形態では、CMPスラリーは、ハロゲン化剤及び酸化物形成酸化剤の両方を含有してもよい。1つの例示的な実施形態では、上述したCMPスラリーは、所定量の水又は溶存酸素を更に含んでもよい。塩素化が水又は溶存酸素などの酸化物形成酸化剤の存在下で実施される場合、RuOCl種を含有する塩化ルテニウム(例えば、RuCl)パシベーション層がルテニウム表面上に形成される。RuOCl種は一般に、塩化ルテニウムパシベーション層よりも可溶性であるので、ルテニウム表面上でのRuOCl種の存在は、CMPプロセスにおいて実現される材料除去速度を増加させる。
【0041】
本明細書で説明されるCMPスラリーは、前述した液体成分に加えて、ルテニウム表面を機械的に研磨するための研磨媒体、例えば、シリカ、アルミナ、セリア、又は他のナノ粒子を含有することもできる。この機械的研磨は、ウェハー表面上の高い位置における局所的温度を上昇させる。この局所的加熱は、エッチング速度論を増加させる役割を担い、それがウェハーの平坦化を手助けする。RuClを可溶化するために使用されるリガンド交換反応は温度に非常に敏感なので、高い位置で生じる局所的加熱は、それら領域において局所的エッチング速度を増加させるのに非常に効果的である。
【0042】
本開示は、新規なCMPスラリーに加えて、改善されたCMPプロセスを提供し、このプロセスでは、本明細書で開示されるCMPスラリー化学物質を利用してルテニウム表面を平坦化する。本明細書で開示されるCMPプロセスは、多種多様なCMPツール及びシステムで使用することができる。図1は、回転可能なプラテン110の上部に取り付けられた研磨パッド105と、研磨パッド105の上部にスラリー120を分配するためのスラリーディスペンサ115とを含むCMPシステム100の一実施例を示す。プラテン110が回転するにつれて、プラテン110の運動がスラリー120を研磨パッド105の表面上に分配する。ウェハーキャリア125が、ウェハー130(例えば、半導体基板)を保持し位置決めし、ウェハー表面と研磨パッド105との間に下向きの力を印加する。ウェハーキャリア125は、プラテン110に沿って回転し、半径方向に移動できる。パッド平坦性及び表面品質を維持するために、パッドコンディショナ135が使用される。本明細書で説明される技術は、化学的機械的材料除去の化学的反応性部分の一部としての改善されたスラリー化学物質を含む。言及したように、図1は1つの例示的なCMPシステムを示す。本明細書で説明される技術、方法、プロセス及びスラリー化学物質が、多種多様なCMPツール及びシステムで使用されてもよく、図1に示されるものに限定されないことが、当業者によって認識されるであろう。
【0043】
最後に、本開示は、本明細書で開示される新規なCMPスラリー化学物質及びCMPプロセスを利用する様々な方法を提供する。図2は、基板の表面を平坦化する又は基板の表面からルテニウムを除去するための本明細書で説明される技術を利用する方法の一実施形態を示す。図2の実施形態は単なる例示であり、追加の方法が、本明細書に記載される技術を利用してもよいことが理解されるであろう。更に、記載されたステップは排他的であることを意図していないので、図2に示す方法に、追加の処理ステップを追加することができる。更に、ステップの順序は、異なる順序が生じる場合があり、及び/又は様々なステップが組み合わされて若しくは同時に実施されてもよいので、図に示す順序には限定されない。
【0044】
図2は、ルテニウムを除去する方法200の一実施形態を示す。方法200は一般に、化学的機械的研磨(CMP)システム内に基板を配置することから開始することができる(ステップ210において)。図1は、ステップ210において基板が配置され得るCMPシステム(又はCMPツール)の一実施形態を示す。上述し、図1に示すように、CMPシステム100は一般に、回転可能なプラテン110上に取り付けられた研磨パッド105を含んでもよく、研磨パッド105は回転し、基板表面を横切って移動することができる。いくつかの実施形態では、基板は、ルテニウム表面を含んでもよい。
【0045】
次に、方法200は、研磨パッドの上にスラリーを分配することを含んでもよい(ステップ220において)。上述したように、スラリーは一般に、溶媒と、ルテニウム表面をハロゲン化してハロゲン化ルテニウム表面を形成するハロゲン化剤と、ハロゲン化ルテニウム表面と反応してハロゲン化ルテニウム表面を溶解するリガンドと、ハロゲン化ルテニウム表面とのリガンド交換反応の速度を増加させる触媒とを含み得る。いくつかの実施形態では、方法200は、ルテニウム表面のハロゲン化速度がハロゲン化ルテニウム表面の溶解速度よりも大きくなるように、スラリー中に含まれるハロゲン化剤とリガンドとの相対量を制御することを含んでもよい。
【0046】
次に、方法200は、所定量のルテニウムが除去されるまで、スラリーを使用してルテニウム表面を研磨することを含んでもよい(ステップ230において)。
【0047】
本明細書全体を通して「1個の実施形態」又は「一実施形態」の表現は、当該実施形態に関して記述される特定の特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するが、これらが全ての実施形態に存在することを示唆する訳ではないことに留意されたい。したがって、本明細書を通じて様々な箇所で「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」との表記の出現は必ずしも本発明の同一実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は1つ以上の実施形態において任意の適当な仕方で組み合わされていてもよい。他の複数の実施形態において、様々な追加的な層及び/又は構造が含まれていても、及び/又は記述する特徴が省略されていてもよい。
【0048】
本明細書で使用する場合、用語「基板」は、その上部に材料が形成されるベース材料又は構造を意味すると共にこれらを含む。基板は、単一の材料、異なる材料の複数の層、異なる材料又は異なる構造の領域等を内部に有する単一の層又は複数の層を含んでいてよいことが理解されるであろう。これらの材料は、半導体、絶縁体、導体、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。例えば、基板は、1つ以上の層、構造又は領域が上に形成された半導体基板、支持構造上のベース半導体層、金属電極、又は半導体基板であってよい。基板は、従来のシリコン基板であっても、又は半導電材料の層を含む他のバルク基板であってもよい。本明細書で使用する場合、用語「バルク基板」は、シリコンウェハーだけでなく、シリコンオンサファイア(「SOS」)基板及びシリコンオンガラス(「SOG」)基板等のシリコンオンインシュレータ(「SOI」)基板、ベース半導体基盤上のシリコンのエピタキシャル層、及びシリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、並びにリン化インジウム等の他の半導体又は光電子材料をも意味すると共にこれらを含む。基板はドープされていてもドープされていなくてもよい。
【0049】
基板の表面を平坦化するためのシステム及び方法が、様々な実施形態で説明される。基板は、デバイス、特に半導体又は他の電子デバイスの、任意の材料部分又は構造を含んでもよく、例えば、半導体基板などのベース基板構造であってもよく、又は薄膜などの、ベース基板構造上の層若しくはベース基板構造を覆う層であってもよい。したがって、基板は、パターン形成された又はパターン形成されていない、任意の特定のベース構造、下地層又は上地層に限定することは意図しておらず、むしろ、任意のこのような層又はベース構造、並びに層及び/又はベース構造の任意の組み合わせを含むことが意図されている。
【0050】
当業者であれば、様々な実施形態が、具体的詳細のうちの1つ以上を伴わずに、或いは、他の代替的及び/若しくは追加的方法、材料、又は構成要素を伴って実施されてよいことを理解するであろう。他の例において、本発明の様々な実施形態の態様が不明瞭にならないよう、公知の構造、材料、又は動作の詳細については図示又は記述していない。同様に、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために特定の個数、材料、及び構成が記述されている。それでもやはり、本発明は具体的な詳細なしに実施されてよい。更に、図に示す様々な実施形態は例示的表現であり、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【0051】
本明細書を考慮すれば、説明されるシステム及び方法の更なる変形及び代替的実施形態が当業者には明らかになるであろう。したがって、説明されるシステム及び方法はこれらの例示的構成によって限定されないことが認識されるであろう。本明細書に図示及び記述したシステム及び方法の形態は、例示的な実施形態として見なされるべきであることを理解されたい。実現形態に様々な変更が加えられてよい。したがって、ルテニウムCMP技術は、具体的な実施形態を参照して本明細書で説明されるが、本開示の範囲から逸脱することなく様々な修正及び変更を実施することができる。したがって、本明細書及び図面は、限定的意味というよりも、むしろ例示的意味で見なされるべきであり、このような修正形態が本開示の範囲に含まれることが意図されている。更に、特定の実施形態に関して本明細書で説明されるいかなる利益、利点、又は課題に対する解決策も、特許請求の範囲のいずれかの又は全ての重要な、必要な、又は必須の特徴又は要素として解釈されることは意図されていない。
【0052】
当業者には、本発明と同じ目的を実現しながら、上で説明した技術の動作に多くの変形を行い得ることも理解されるであろう。このような変形形態は、本開示の範囲に包含されることが意図されている。したがって、本発明の実施形態の前述した説明は、限定することを意図したものではない。むしろ、本発明の実施形態に対するいかなる限定も以下の特許請求の範囲に提示される。
図1
図2
【国際調査報告】