(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ネオペンチルグリコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/141 20060101AFI20241018BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20241018BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C07C29/141
C07C31/20 Z
C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520934
(86)(22)【出願日】2023-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2023013050
(87)【国際公開番号】W WO2024053937
(87)【国際公開日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0114486
(32)【優先日】2022-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0111976
(32)【優先日】2023-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン キュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ナ ロ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、セウン シク
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC41
4H006AD11
4H006AD13
4H006BA05
4H006BA06
4H006BA30
4H006BC10
4H006BD33
4H006BD52
4H006FE11
4H006FG29
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
【要約】
本発明は、第1水添反応器で水添反応して、ネオペンチルグリコールを含む第1反応生成物を得るステップと、前記第1反応生成物をフラッシュドラムに供給し、水素と前記水素が脱気された第1脱気溶液ストリームを得るステップと、前記水素を第2水添反応器に供給するステップと、前記第1脱気溶液ストリームを第1熱交換器に供給し、減温させるステップと、前記減温された第1脱気溶液ストリームの一部を第2分岐ストリームとして前記第2水添反応器に供給するステップと、前記第2水添反応器で水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製工程に導入させて、ネオペンチルグリコールを取得するステップとを含むネオペンチルグリコールの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシピバルデヒドを含むフィードストリームおよび水素供給ストリームを第1水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第1反応生成物を得るステップと、
前記第1反応生成物をフラッシュドラムに供給し、水素を含む上部排出ストリームと前記水素が脱気された第1脱気溶液ストリームを得るステップと、
前記フラッシュドラムの上部排出ストリームを第2水添反応器に供給するステップと、
前記第1脱気溶液ストリームを第1熱交換器に供給し、減温させるステップと、
前記減温された第1脱気溶液ストリームの一部を第1分岐ストリームとして第1水添反応器に循環させ、残りを第2分岐ストリームとして前記第2水添反応器に供給するステップと、
前記第2水添反応器で前記フラッシュドラムの上部排出ストリームに含まれた水素と前記第2分岐ストリームに含まれたヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、
前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製工程に導入させて、ネオペンチルグリコールを取得するステップとを含む、ネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項2】
前記第2反応生成物を脱気部に供給し、水素が脱気された第2脱気溶液ストリームを前記ネオペンチルグリコール精製工程に導入させるステップをさらに含む、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項3】
前記第1分岐ストリームは、前記フィードストリームと混合されて混合ストリームをなし、前記混合ストリームが第2熱交換器を経て第1水添反応器に供給される、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項4】
前記第1分岐ストリームの温度は、110℃~140℃である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項5】
前記第1脱気溶液ストリームは、第1熱交換器を介して低温のスチームと熱交換されるか、アルドール精製塔の下部排出ストリームと熱交換される、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項6】
前記第1脱気溶液ストリーム内の液相の水素の含量は、30ppm以下である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項7】
前記第1分岐ストリームの流量および第2分岐ストリームの流量の流量比は、3:1~7:1である、請求項2に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項8】
前記ヒドロキシピバルデヒドを含むフィードストリームは、
触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドのアルドール縮合反応により縮合反応生成物を得るアルドール反応工程と、
前記縮合反応生成物を抽出剤と接触させて、抽出液および抽残液を得るアルドール抽出工程と、
前記抽残液を触媒に還元させる鹸化反応工程と、
前記触媒および前記抽出液を蒸留して、ヒドロキシピバルデヒドを含む分画をフィードストリームとして分離するアルドール精製工程とを含んで行われるフィードストリーム製造工程から取得する、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項9】
前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含む、請求項8に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項10】
前記抽出剤は、2-エチルヘキサノール(2-Ethyl Hexanol;2-EH)を含む、請求項8に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項11】
前記第1熱交換器は、スチーム発生器(steam generator)である、請求項1に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【請求項12】
前記ネオペンチルグリコール精製工程は、前記第2脱気溶液ストリームを蒸留して、ネオペンチルグリコールを取得する工程である、請求項2に記載のネオペンチルグリコールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年9月8日付けの韓国特許出願第10-2022-0114486号および2023年8月25日付けの韓国特許出願第10-2023-0111976号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ネオペンチルグリコールを製造する方法に関し、より詳細には、水添反応で除熱(heat control)を安定的に行うための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ネオペンチルグリコールは、一般的に、触媒の存在下で、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒドをアルドール縮合反応させてヒドロキシピバルデヒドを形成し、前記ヒドロキシピバルデヒド(hydroxypivaldehyde)に対して水添反応を行って製造することができる。
【0004】
しかし、前記水添反応は、発熱反応であるため、前記水添反応が行われる水添反応器の内部の温度が過剰に増加することから安全上の問題が発生した。また、温度の上昇に伴う副反応によって副生成物が多量生成され、取得しようとする生成物であるネオペンチルグリコールへの転化率が減少する問題があった。
【0005】
したがって、前記水添反応によって増加した温度を安定的に減温することができる工程が導入されなければならない状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、高純度のネオペンチルグリコールを高い回収率で取得することができ、且つ水添反応によって増加した温度をより安定的に減温することができるネオペンチルグリコールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、ヒドロキシピバルデヒドを含むフィードストリームおよび水素供給ストリームを第1水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第1反応生成物を得るステップと、前記第1反応生成物をフラッシュドラムに供給し、水素を含む上部排出ストリームと前記水素が脱気された第1脱気溶液ストリームを得るステップと、前記フラッシュドラムの上部排出ストリームを第2水添反応器に供給するステップと、前記第1脱気溶液ストリームを第1熱交換器に供給し、減温させるステップと、前記減温された第1脱気溶液ストリームの一部を第1分岐ストリームとして第1水添反応器に循環させ、残りを第2分岐ストリームとして前記第2水添反応器に供給するステップと、前記第2水添反応器で前記フラッシュドラムの上部排出ストリームに含まれた水素と前記第2分岐ストリームに含まれたヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製工程に導入させて、ネオペンチルグリコールを取得するステップとを含むネオペンチルグリコールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のネオペンチルグリコールの製造方法によると、フラッシュドラムによって気相の水素が分離された第1反応生成物を第1熱交換器に供給することにより、前記フラッシュドラムの前段に別のクーラーを備える場合に比べて、熱交換効率を増加させることができる。このように、前記フラッシュドラムを介して気相の水素を含む気相成分を先に除去することにより、前記気相成分が除去された脱気溶液を第1熱交換器に供給したときに、前記第1熱交換器での温度の制御が安定的に行われることができる。すなわち、水添反応時に発熱反応によって増加した温度を減温する際に、気相の水素を先に分離した脱気溶液を第1熱交換器に投入することにより、前記第1熱交換器での熱交換効率を向上させ、安定的な除熱を行うことができる。
【0009】
さらに、前記第1熱交換器の廃熱を低温のスチームと熱交換させるか、アルドール精製工程において行われるアルドール精製塔の下部排出ストリームと熱交換させることにより、エネルギーをさらに効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法のうち水添反応を示す工程フローチャートである。
【
図2】本発明の比較例によるネオペンチルグリコールの製造方法のうち水添反応を示す工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0012】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内に流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内に流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)および液体(liquid)のうち一つ以上を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0013】
一方、本発明において、抽出塔、精製塔、蒸留塔、反応器、フラッシュドラムおよび回収塔などの装置において、前記装置の「下部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方へ95%~100%の高さの地点を意味し、具体的には、最下端(塔底)を意味し得る。同様に、前記装置の「上部」とは、特に断りのない限り、前記装置の最上部から下方へ0%~5%の高さの地点を意味し、具体的には最上部(塔頂)を意味し得る。
【0014】
一方、本発明において、抽出塔、精製塔、蒸留塔、および回収塔などの装置において、前記装置の運転温度とは、特に断りのない限り、前記装置の下部温度を示すことができる。同様に、前記装置の運転圧力とは、特に断りのない限り、前記装置の上部圧力を示すことができる。
【0015】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明を
図1を参照して、より詳細に説明する。
【0016】
本発明の一実施形態によると、ヒドロキシピバルデヒドを含むフィードストリームおよび水素供給ストリームを第1水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第1反応生成物を得るステップと、前記第1反応生成物をフラッシュドラムに供給し、水素を含む上部排出ストリームと前記水素が脱気された第1脱気溶液ストリームを得るステップと、前記フラッシュドラムの上部排出ストリームを第2水添反応器に供給するステップと、前記第1脱気溶液ストリームを第1熱交換器に供給し、減温させるステップと、前記減温された第1脱気溶液ストリームの一部を第1分岐ストリームとして第1水添反応器に循環させ、残りを第2分岐ストリームとして前記第2水添反応器に供給するステップと、前記第2水添反応器で前記フラッシュドラムの上部排出ストリームに含まれた水素と前記第2分岐ストリームに含まれたヒドロキシピバルデヒドを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得るステップと、前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製工程に導入させて、ネオペンチルグリコールを取得するステップとを含んで行われるネオペンチルグリコールの製造方法が提供される。
【0017】
まず、本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、ヒドロキシピバルデヒドを含むフィードストリームおよび水素を含む水素供給ストリームを第1水添反応器に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第1反応生成物を得るステップを含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記ヒドロキシピバルデヒドを含むフィードストリームは、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド水溶液とイソブチルアルデヒドのアルドール縮合反応により縮合反応生成物を得るアルドール反応工程と、前記縮合反応生成物を抽出剤と接触させて、抽出液および抽残液を得るアルドール抽出工程と、前記抽残液を触媒に還元させる鹸化反応工程と、前記触媒および前記抽出液を蒸留して、ヒドロキシピバルデヒドを含む分画をフィードストリームとして分離するアルドール精製工程とを含んで行われるフィードストリーム製造工程から取得することができる。
【0019】
前記フィードストリーム製造工程は、前記第1水添反応器に供給するためのフィードストリームを製造するために行われる一連の工程であることができる。前記フィードストリーム製造工程は、アルドール反応工程、アルドール抽出工程、鹸化反応工程およびアルドール精製工程を含んで行われることができる。
【0020】
具体的には、前記アルドール反応工程で行われるアルドール縮合反応において、アルドール縮合反応温度は、70℃~100℃であることができ、前記アルドール縮合反応時間は、0.1時間~3時間であることができる。このようなアルドール縮合反応の条件内で、触媒の存在下で、ホルムアルデヒド(Formaldehyde;FA)水溶液とイソブチルアルデヒド(Isobutylaldehyde;IBAL)のアルドール縮合反応が行われて、触媒塩およびヒドロキシピバルデヒド(Hydroxypivaldehyde;HPA)が生成されることができる。
【0021】
ここで、前記ホルムアルデヒド水溶液は、ホルマリンを使用することができ、ここで、前記ホルムアルデヒドとして濃度が35~45重量%であるものを使用することが、廃水低減の面で効果が良いことができる。このようなホルムアルデヒド水溶液は、全体のホルムアルデヒド水溶液の重量に対して、40~64重量%、より具体的には45~55重量%の水を含むことができ、ホルムアルデヒドの重合を防止するために、メタノールを含むことができる。この場合、全体のホルムアルデヒド水溶液の重量に対して、前記メタノールの含量は、0.1~15重量%、より具体的には0.1~5重量%であることができる。
【0022】
前記触媒は、アミン系化合物であることができる。具体的には、トリアルキルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンのような第三級アミン化合物が適することができる。より具体的には、前記触媒は、トリエチルアミン(Triethyl amine;TEA)を含むことができる。本発明では、TEAがアルドール縮合反応において効率が最も優れており、触媒として使用されることができる。
【0023】
一方、前記触媒塩は、アルドール縮合反応で発生するカニッツァーロ(Cannizzaro)副反応から生成されたギ酸が触媒と反応して生成されることができる。
【0024】
また、前記アルドール縮合反応のさらに他の副反応であるティシチェンコ(Tishchenko)反応により、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル(HydroxyPivalic acid-Neopentylglycol Ester;HPNE)がさらに生成されることができる。したがって、前記アルドール反応工程で、前記触媒塩、HPNEおよびHPAを含む縮合反応生成物を得ることができる。
【0025】
次いで、前記縮合反応生成物を抽出剤と接触させてアルドール抽出工程が行われることができ、触媒、未反応IBAL、抽出剤とHPAを含む有機相の抽出液、および触媒塩を含む液相の抽残液を得ることができる。ここで、前記未反応IBALは、アルドール反応工程でアルドール縮合反応していないIBALであることができる。前記触媒塩は、水に解離された状態で存在することができ、前記水は、ギ酸水溶液から由来することができる。
【0026】
ここで、前記抽出剤は、脂肪族アルコール(aliphatic alcohols)であることができ、好ましくは、2-エチルヘキサノール(2-EthylHexanol;2-EH)を含むことができる。前記縮合反応生成物に含まれたHPAは、前記2-EHに対して可溶性であることから、液-液接触方式による抽出装置を使用するアルドール抽出工程において好ましく使用されることができる。
【0027】
一方、前記アルドール抽出工程で行われる1機または2機以上のアルドール抽出塔の運転温度は、40℃~90℃であることができる。前記範囲内の温度でアルドール抽出塔が運転されることから有機相と液相に相分離することが容易であることができる。
【0028】
一方、前記触媒塩を含む抽残液を鹸化反応させて、前記触媒塩を触媒に還元させる鹸化反応工程が行われることができる。前記鹸化反応工程では、別に投入される水酸化ナトリウム(NaOH)のような無機強塩基と前記触媒塩の反応による鹸化反応が行われることができる。これにより、前記触媒塩を触媒に還元させることができる。
【0029】
一方、アルドール精製工程は、鹸化反応工程から得られた前記還元された触媒およびアルドール抽出工程から分離した抽出液を蒸留し、未反応IBALと触媒、およびHPAと抽出剤に分離させる工程であることができる。前記分離した前記未反応IBALと触媒は、アルドール反応工程に循環されてアルドール縮合反応の原料として再使用することができる。一方、未反応IBALと触媒と分離された前記HPAと抽出剤が、本発明のフィードストリーム1として第1水添反応器100に供給されることができる。
【0030】
具体的には、前記アルドール精製工程は、1機または2機以上のアルドール精製塔により行われることができる。先ず、前記アルドール精製工程が1機のアルドール精製塔により行われる場合、前記1機のアルドール精製塔の上部から未反応IBALと触媒が、下部からHPAと抽出剤がそれぞれ分離されることができる。一方、アルドール精製工程が2機以上のアルドール精製塔で行われる場合、未反応IBALを上部に分離する1機以上のアルドール精製塔と前記触媒を上部に分離する1機以上のアルドール精製塔を介して行われることができる。前記2機以上のアルドール精製塔の下部にはHPAまたは抽出剤を含むストリームが分離されて排出されることができ、これは、上述のように、本発明のフィードストリーム1として第1水添反応器100に供給されることができる。
【0031】
前記第1水添反応器100に供給されるストリームは、前記フィードストリーム1および水素供給ストリーム3であることができる。ここで、前記水素供給ストリーム3は、圧縮された水素を含むことができ、前記圧縮された水素は、水素投入ストリーム2を介して投入された新たな(fresh)水素が圧縮機60を経て圧縮された水素であることができる。前記第1水添反応器100では、フィードストリーム1に含まれたHPAおよび水素供給ストリーム3に含まれた圧縮された水素の水添反応が行われて、ネオペンチルグリコール(Neopentyl glycol;NPG)が生成されることができる。ここで、前記水添反応は、水添反応触媒の存在下で行われることができる。
【0032】
前記水添反応触媒としては、銅系触媒またはニッケル触媒が使用されることができる。前記銅系触媒としては、一例として、CuO/BaO/SiO触媒であることができ、前記CuO/BaO/SiO触媒は(CuO)x(BaO)y(SiO)z(x、y、zは、重量%であり、x:y:z=10~50:0~10:40~90、10~50:1~10:40~89または29~50:1~10:40~70)である触媒であることができる。前記xとyの和は、好ましくは、x、yおよびzの総和(100重量%)を基準に、20~50(重量%)、または30~50(重量%)であり、この範囲内で、水添反応触媒の性能に優れ、寿命が長い効果がある。
【0033】
一方、基本的に、前記水添反応は、発熱反応であり、水添反応が行われる水添反応器の内部の温度を制御する際に不都合があり得る。したがって、前記水添反応が行われるにつれて、水添反応器の内部の温度が過剰に増加して、安全上の問題が発生し得る。また、温度の上昇による副反応によって副生成物、例えば、トリメチルペンタンジオール(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;TMPD)が生成されて、本発明で取得しようとするNPGへの転化率が低くなり得る。したがって、前記水添反応によって増加した温度を減温する除熱が行われる必要がある。
【0034】
一方、前記第1水添反応器100の運転温度は、100℃~200℃、具体的には130℃~180℃、150℃~170℃であることができ、運転圧力は、20kg/cm2~50kg/cm2、具体的には30kg/cm2~45kg/cm2、35kg/cm2~45kg/cm2であることができる。前記範囲内で、第1水添反応器100を運転して行うことにより、HPAと水素が反応する水添反応がスムーズに行われて、高い転化率でNPGを取得することができる。
【0035】
前記第1水添反応器100で行われる水添反応により、NPGを含む第1反応生成物を得ることができる。これに加え、前記第1反応生成物には、水添反応中に未反応の水素も含まれることができる。ここで、工程の運転状況に応じて第1水添反応器100内の水素の分率が高い場合には、前記第1反応生成物に含まれた水素の粉率も増加することができ、このように、前記第1反応生成物内の水素の分率が高い場合には、前記水素が液相の水素だけでなく、気相の水素としても存在することができる。
【0036】
次いで、本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記第1反応生成物を第1水添反応器排出ストリーム110としてフラッシュドラム300に供給し、水素を含む上部排出ストリーム320と前記水素が脱気された第1脱気溶液ストリーム310を得るステップを含むことができる。
【0037】
具体的には、前記フラッシュドラム300で第1反応生成物を蒸留し、気相成分を含むフラッシュドラムの上部分画と、第1脱気溶液を含むフラッシュドラムの下部分画とに分離することができる。ここで、前記気相成分は、具体的には、気相の水素を含むことができる。前記第1脱気溶液は、第1反応生成物から前記気相成分が除去された残りのものであることができ、具体的には、液相の水素、未反応のHPAおよびNPGを含むことができる。
【0038】
ここで、前記フラッシュドラム300の運転温度は、100℃~200℃、具体的には130℃~180℃、150℃~170℃であることができる。前記フラッシュドラム300の運転圧力は、20kg/cm2~60kg/cm2、具体的には25kg/cm2~55kg/cm2、20kg/cm2~40kg/cm2であることができる。フラッシュドラム300の温度および圧力を前記範囲内で運転することにより、前記フラッシュドラム300に流入された第1反応生成物内の気相の水素を分離することが容易になることができる。
【0039】
一方、本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記フラッシュドラムの上部排出ストリーム320を第2水添反応器200に供給するステップと、前記第1脱気溶液ストリーム310を第1熱交換器10に供給し、減温するステップとを含むことができる。
【0040】
具体的には、前記フラッシュドラム300の気相の上部分画をフラッシュドラムの上部排出ストリーム320として第2水添反応器200に供給し、前記フラッシュドラム300の液相の下部分画を第1脱気溶液ストリーム310として第1熱交換器10に供給することができる。
【0041】
前記第1脱気溶液ストリーム310内の液相の水素の含量は、30ppm以下、25ppm以下または20ppm以下であることができる。前記第1脱気溶液ストリーム310内の水素を前記範囲内に含むことにより、後述する第1熱交換器10に供給される前記第1脱気溶液ストリーム310の温度を適正範囲内に制御することが容易であることができる。ここで、前記第1脱気溶液ストリーム310に含まれた水素は、液相で存在することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記第1脱気溶液ストリーム310を第1熱交換器10に供給し、減温することができる。具体的には、上述のフラッシュドラム300を介して気相の水素が除去された第1脱気溶液ストリーム310を第1熱交換器10で減温することができるから第1熱交換器10の熱交換効率を増加させることができる。例えば、水素分率が高いストリームがフラッシュドラムを経ることなく、熱交換器にすぐ投入される場合、前記水素分率が高いストリーム内の比較的ライト(lights)な成分の含量が高くて、熱交換器の対数平均温度差(Logarithmic mean temperature difference;LMTD)の減少の原因になり得、これによって、熱交換器の性能が下落し、除熱が難しい可能性がある。
【0043】
したがって、本発明の第1熱交換器10では、前記フラッシュドラム300によって気相の水素が脱気された第1脱気溶液ストリーム310を減温させることから、除熱が安定的に行われることができる。上述のように、発熱反応による工程内の安全上の問題、不安定な工程の流れの問題およびNPGへの転化率低下の問題において、前記除熱が行われる必要がある。ここで、前記除熱は、本発明の熱交換器で行われることができ、発熱反応によって上昇した温度を最適の温度範囲内に減温させることであり得る。
【0044】
一方、前記第1脱気溶液ストリーム310は、相対的に高温のストリームであり、前記第1熱交換器10で冷却される場合、廃熱を再使用してエネルギーをより効率的に使用することができる。
【0045】
本発明によると、前記第1熱交換器10は、スチーム発生器(steam generator)であることができ、前記スチーム発生器を介して安定的に熱を回収することができる。一例として、前記第1脱気溶液ストリーム310は、スチーム発生器である前記第1熱交換器10を介して低温のスチームと熱交換されることで、低圧のスチームの生産に活用されることができる。さらに他の例として、前記第1脱気溶液ストリーム310は、アルドール精製工程が行われるアルドール精製塔の下部排出ストリームと熱交換され、前記アルドール精製塔の下部排出ストリームの一部が前記アルドール精製塔に還流されることで、前記アルドール精製塔の温度を昇温させることに活用されることができる。この場合、前記第1熱交換器10は、前記アルドール精製工程が行われる1以上のアルドール精製塔の再沸器(reboiler)であることができる。
【0046】
一方、本発明のように、フラッシュドラム300の下流(downstream)に熱交換器を備えず、前記フラッシュドラム300の前段、すなわち、第1水添反応器100の下流(downstream)に熱交換器を備える場合、前記熱交換器に供給されるストリーム内の水素分率が高い場合には、安定的な工程の流れのために、前記熱交換器での温度をさらに下げなければならないため、前記熱交換器としてクーラーを使用することができる。このような場合、前記熱交換器としてクーラーを使用することから、クーラーから廃熱を再使用することが不可能であり得る。
【0047】
一方、本発明のネオペンチルグリコールの製造方法は、前記減温された第1脱気溶液ストリームの一部を第1分岐ストリームとして第1水添反応器に循環させ、残りを第2分岐ストリームとして前記第2水添反応器に供給するステップを含むことができる。
【0048】
具体的には、前記第1熱交換器10で安定的に減温された第1脱気溶液ストリーム310の一部を第1分岐ストリーム11に、残りを第2分岐ストリーム12に分岐させ、前記第1分岐ストリーム11は、第1水添反応器に循環させ、前記第2分岐ストリーム12は、第2水添反応器200に導入させることができる。
【0049】
ここで、前記第1分岐ストリーム11の流量および第2分岐ストリーム12の流量の質量流量比は、3:1~7:1であることができ、具体的には、4:1~6:1であることができる。前記範囲内に質量流量比を制御することにより、第1熱交換器10を経て分岐される二つのストリーム、すなわち、第1分岐ストリーム11および第2分岐ストリーム12を適切な比率で、それぞれ第1水添反応器100および第2水添反応器200に供給させることができる。これにより、工程内の水添反応によって上昇した温度を熱交換器で安定的に減温することができる。
【0050】
より具体的には、前記質量流量比が3:1未満である場合、第2分岐ストリーム12の流量が相対的に高くなって前記第2分岐ストリーム12が供給される第2水添反応器200で水添反応時に温度が過剰に増加して、第4熱交換器40での減温が難しくなり得る。一方、前記質量流量比が7:1を超える場合、第1分岐ストリーム11の流量が過剰に増加して、第1水添反応器100で水添反応の後、フラッシュドラム300で気相および液相を分離し、第1熱交換器10で温度を下げる際に、エネルギーが過剰に使用されることができる。
【0051】
また、前記第1分岐ストリーム11の温度は、110℃~140℃であることができる。具体的には、前記第1分岐ストリーム11の温度は、120℃~135℃または125℃~135℃であることができる。前記第1分岐ストリーム11が前記範囲内の温度で、第2熱交換器20を経て第1水添反応器100に供給されることにより、水添反応によって温度が増加しても、減温した状態でまた第1水添反応器100に導入されたため、第1反応生成物の温度が過剰に増加しないことができる。したがって、前記温度を下げることができない場合、暴走反応による火災爆発といった事故が発生することを予防することができる。
【0052】
また、前記第1分岐ストリーム11は、前記フィードストリーム1と混合されて混合ストリーム4をなし、前記混合ストリーム4が第2熱交換器20を経て第1水添反応器100に供給されることができる。具体的には、前記第2熱交換器20で前記混合ストリーム4を再度減温させることで前記第1水添反応器100で行われる水添反応によって第1水添反応器の下部排出ストリーム110が過剰に高い温度で排出されないことができる。
【0053】
一方、第1熱交換器10によって減温された第1脱気溶液ストリームを含む第2分岐ストリーム12は、第3熱交換器30を経て再度減温された状態で前記第2水添反応器200に供給されることができる。
【0054】
本発明の一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記第2水添反応器200で前記フラッシュドラムの上部排出ストリーム320に含まれた水素と前記第2分岐ストリーム12に含まれたHPAを水添反応させて、NPGを含む第2反応生成物を得るステップを含むことができる。ここで、前記第2分岐ストリーム12は、第1水添反応器100で生成されたNPGをさらに含むことができる。
【0055】
一方、前記第2水添反応器200の運転温度は、100℃~200℃、具体的には130℃~180℃、150℃~170℃であることができ、運転圧力は、20kg/cm2~50kg/cm2、具体的には30kg/cm2~45kg/cm2、35kg/cm2~45kg/cm2であることができる。このような前記第2水添反応器200の運転条件は、第1水添反応器100の運転条件と同一であることができる。
【0056】
一方、上述の第1水添反応器100での水添反応のように、第2水添反応器200でも前記HPAと水素の水添反応によって、さらにNPGが生成されることができる。このように生成された前記NPGを含む第2反応生成物を得ることができ、前記第2反応生成物は、第2水添反応器の下部排出ストリーム210として第4熱交換器40を経て脱気部400に供給されることができる。前記第4熱交換器40で前記第2反応生成物を減温することにより、後述する脱気部400の脱気塔内の圧力を下げて脱気がよりスムーズに行われることができる。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記第2反応生成物を脱気部400に供給して、水素が脱気された第2脱気溶液ストリーム410を前記ネオペンチルグリコール精製工程に導入させることができる。ここで、前記水素は、第2水添反応器200でHPAと水添反応していない水素であることができ、前記脱気部400でさらに前記水素を脱気させることができる。前記脱気部400では、脱気が行われて、前記水素を含む脱気部の上部排出ストリーム420、およびNPGを含む第2脱気溶液ストリーム410を得ることができる。前記脱気部の上部排出ストリーム420は、圧縮機60に供給されることができ、前記第2脱気溶液ストリーム410は、後述するNPG精製工程に導入させることができる。
【0058】
ここで、前記脱気部400は、1以上の脱気塔を含んで脱気が行われることができる。例えば、前記第2反応生成物は、第1脱気塔で先ず脱気されることができ、前記第1脱気塔の上部に排出されるストリームに対して再度脱気することができる。このように、再度脱気されたストリームは、圧縮機60を経て第1水添反応器100に供給されることができる。そして、前記圧縮機60を介して排出されるストリームの一部は、分岐されて、熱交換器を経て減温された後、前記圧縮機60の前段に循環することができる。一方、前記第1脱気塔の下部に排出されるストリームも再度脱気されることができ、このように、水素が脱気されたストリームは、NPG精製工程を経ることができる。
【0059】
次いで、一実施形態によるネオペンチルグリコールの製造方法は、前記第2反応生成物をネオペンチルグリコール精製工程に導入させて、ネオペンチルグリコールを取得するステップを含むことができる。
【0060】
具体的には、NPGを含む第2脱気溶液ストリーム410から前記NPGを取得するためのNPG精製工程が行われることができる。これに加え、前記第2脱気溶液ストリーム410は、HPNE、触媒および抽出剤をさらに含むことができる。
【0061】
本発明の前記ネオペンチルグリコール精製工程は、前記第2脱気溶液ストリーム410を蒸留して、ネオペンチルグリコールを取得する工程であることができる。具体的には、前記NPG精製工程は、前記第2脱気溶液ストリーム410を蒸留して、触媒と抽出剤、HPNE、およびNPGに分離し、このように分離したNPGを、目的とする生成物として取得することができる。
【0062】
一方、上述のように、前記NPG精製工程で分離されたHPNEは、目的とする生成物であるNPGに対しては副生成物であり、前記NPG精製工程で分離されたHPNEを含むストリームがHPNE精製工程を経ることにより、NPG精製工程で回収されなかったNPGをさらに取得するだけでなく、それ自体で高付加価値製品である前記HPNEを回収し、製品として活用することができる。
【0063】
一例として、前記HPNE精製工程では、前記NPG精製工程で分離されたHPNEを含むストリームを蒸留することにより、HPNEおよび一部のNPGが分離されることができる。すなわち、前記NPG精製工程で取得することができず分離された前記一部のNPGをHPNE精製工程から回収することができ、NPG回収率をより高めることができる。なお、前記HPNEは、他の工程において、原料として、例えば、ポリエステルの合成およびコーティングの主原料として使用されることができ、本発明によるHPNE精製工程によって原料活用の面で経済性が向上することができる。
【0064】
一方、本発明の一実施形態によると、前記NPG精製工程で分離された触媒および抽出剤は、抽出剤精製工程を経ることができる。前記抽出剤精製工程で行われる蒸留により、触媒を含む分画および抽出剤を含む分画を分離することができる。ここで、前記触媒は、上述のアルドール精製工程で分離されていない一部の少量の触媒であることができる。前記抽出剤精製工程で触媒を分離して、アルドール精製工程に循環させることにより、系内の触媒、例えば、TEAが回収されることができる。
【0065】
一方、前記抽出剤精製工程で分離された抽出剤は、アルドール抽出工程で未反応の抽出剤であることができ、これをアルドール抽出工程にまた循環させることができる。これにより、前記抽出剤、例えば、2-EHが分離および回収されて、再使用されることができる。
【0066】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0067】
実施例
【0068】
実施例1
図1に図示されている工程の流れにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0069】
ヒドロキシピバルデヒド(HPA)を含むフィードストリーム1および圧縮された水素を含む水素供給ストリーム3をそれぞれ第1水添反応器100に供給し、水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第1反応生成物を得た。ここで、前記第1水添反応器100の運転温度は160℃であり、運転圧力は40kg/cm2であった。前記第1反応生成物の全重量に対して、前記第1反応生成物に含まれた水素の分率(第1反応生成物内の水素分率)は、17ppmであった。
【0070】
前記第1反応生成物をフラッシュドラム300に供給して、水素を含むフラッシュドラムの上部排出ストリーム320と前記水素が脱気された第1脱気溶液ストリーム310を得た。ここで、前記第1脱気溶液ストリーム310に含まれた水素の含量は(熱交換器inlet水素分率)17ppmであった。
【0071】
次いで、前記フラッシュドラムの上部排出ストリーム320を第2水添反応器200に供給し、前記第1脱気溶液ストリーム310を第1熱交換器10に供給して、130℃に減温させた。前記第1熱交換器10は、スチーム発生器であった。前記減温された第1脱気溶液ストリームの一部を第1分岐ストリーム11として第1水添反応器100に循環させ、残りを第2分岐ストリーム12として前記第2水添反応器200に供給した。
【0072】
具体的には、前記第1分岐ストリーム11は、前記フィードストリーム1と混合されて混合ストリーム4をなし、前記混合ストリーム4を第2熱交換器20を経て第1水添反応器100に供給した。一方、前記第2分岐ストリーム12は、第3熱交換器30を経てまた減温された状態で、前記第2水添反応器200に供給された。
【0073】
前記第2水添反応器200で前記フラッシュドラムの上部排出ストリーム320に含まれた水素と前記第2分岐ストリーム12に含まれたHPAを水添反応させて、ネオペンチルグリコールを含む第2反応生成物を得た。
【0074】
前記第2反応生成物は、第2水添反応器の下部排出ストリーム210として第4熱交換器40を経て脱気部400に供給した。ここで、前記第4熱交換器40を経たストリームの温度は40℃であった。前記脱気部400でさらに水素が脱気された第2脱気溶液ストリーム410をネオペンチルグリコール精製工程に導入させて、ネオペンチルグリコールを取得した。
【0075】
実施例2
実施例2は、実施例1に対し、第1水添反応器内の反応性を制御し、第1反応生成物の全重量に対する前記第1反応生成物に含まれた水素の分率(第1反応生成物内の水素分率)を1%に調節した。また、第1脱気溶液ストリーム310に含まれた水素の含量(熱交換器inlet水素分率)は、17ppmであった。
【0076】
比較例
比較例1
図2に図示されている工程の流れにしたがって、Aspen社製のAspen Plusシミューレータを用いて、ネオペンチルグリコール(NPG)の製造工程をシミュレーションした。
【0077】
比較例1は、第1反応生成物を含む第1水添反応器の下部排出ストリーム110を冷却器(cooler)50に供給し、160℃から130℃に減温させ、フラッシュドラム300に供給した。
【0078】
前記フラッシュドラムで気相の水素が除去された第1脱気溶液ストリーム310を取得し、前記第1脱気溶液ストリーム310の一部を第1分岐ストリーム11としてフィードストリームと混合した混合ストリーム4を熱交換器20を経て第1水添反応器100に循環させた以外は、実施例1と同じ工程の流れでNPGを製造した。
【0079】
結果、前記第1反応生成物の全重量に対して、前記第1反応生成物に含まれた水素の分率(第1反応生成物内の水素分率)は17ppmであった。前記第1反応生成物をクーラー50に供給することから、熱交換器(クーラー)inlet水素分率も17ppmであった。
【0080】
比較例2
比較例2は、比較例1に対し、第1水添反応器内の反応性を制御して、第1反応生成物の全重量に対する前記第1反応生成物に含まれた水素の分率(第1反応生成物内の水素分率)を1%に調節した。前記第1反応生成物をクーラー50に供給することから、熱交換器(クーラー)inlet水素分率も1%であった。
【0081】
下記表1は、前記実施例および比較例の第1反応生成物内の水素分率、熱交換器inlet水素分率、熱交換器inlet水素分率(vapor fraction)、体積増加の比率および熱回収量を示している。
【0082】
前記熱交換器inlet水素分率(vapor fraction)は、熱交換器に供給されるストリームの全体の質量流量に対する前記熱交換器に供給されるストリームに含まれた気相成分の質量流量の比率を示したものである。ここで、前記熱交換器は、実施例の場合には第1熱交換器であり、比較例の場合にはクーラーであることができる。
【0083】
【0084】
表1を参照すると、実施例は、第1反応生成物をフラッシュドラムに供給して気相の水素を除去し、第1熱交換器に供給する場合であり、前記第1熱交換器に投入されるストリーム内の気相分率(vapor fraction)がないことを確認することができた。また、実施例は、第1熱交換器(スチーム生成器;steam generator)を使用することにより廃熱を回収することができることを確認することができた。
【0085】
前記実施例1は、第1反応生成物に含まれた水素の分率が17ppmであり、非常に少量である場合であり、ここで、前記水素は、液相で存在するため、フラッシュドラムを経て熱交換器に投入されるストリーム内の水素の分率が前記第1反応生成物に含まれた水素の分率と同一であることを確認することができた。
【0086】
前記実施例2は、第1反応生成物に含まれた水素の分率が1%であり、実施例1に比べて水素分率が高い場合であり、このように相対的に水素の分率が高い場合には、液相および気相の水素がともに存在することができる。したがって、前記第1反応生成物をフラッシュドラムに供給して気相の水素を除去することにより、第1熱交換器に投入されるストリーム内の気相分率(vapor fraction)がないことを確認することができた。また、前記第1熱交換器に投入される水素は液相であり、前記第1熱交換器に投入されるストリーム内の水素の分率は17ppmであることを確認することができた。
【0087】
一方、比較例は、第1反応生成物をクーラーに先に供給して減温させた後、フラッシュドラムに供給する場合であり、比較例1は、実施例1のように、前記第1反応生成物内の水素の分率が非常に少ないため、気相の水素が存在しないが、第1反応生成物を減温させるためのクーラーを備えることで廃熱を回収することができなかった。
【0088】
比較例2は、実施例2のように、第1反応生成物内の水素分率が高い場合であり、上述のように、液相および気相の水素がともに存在することができる。このような前記第1反応生成物をクーラーに供給したため、前記クーラーに投入されるストリーム(第1反応生成物)内の気相分率(vapor fraction)が0.32であることを確認することができ、体積増加の比率は、4.5であることを確認した。前記体積増加の比率は、熱交換器inlet水素分率が17ppmである場合(実施例および比較例1)に、前記熱交換器に供給されるストリームの体積に対して熱交換器inlet水素分率が1%である場合(比較例3)に、前記熱交換器(クーラー)に供給されるストリームの体積の比率を示したものである。すなわち、前記比較例2でクーラーに供給されるストリーム内の気相分率が存在することから気相の水素が増加し、前記クーラーに供給されるストリームの体積が、実施例および比較例1に対して増加することを確認することができた。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
また、前記第1分岐ストリーム11の温度は、110℃~140℃であることができる。具体的には、前記第1分岐ストリーム11の温度は、120℃~135℃または125℃~135℃であることができる。前記第1分岐ストリーム11が前記範囲内の温度で、第2熱交換器20を経て第1水添反応器100に供給されることにより、水添反応によって温度が増加しても、減温した状態でまた第1水添反応器100に導入されたため、第1反応生成物の温度が過剰に増加しないことができる。したがって、前記温度を下げることができる場合、暴走反応による火災爆発といった事故が発生することを予防することができる。
【国際調査報告】