(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】導波路ディスプレイのための多層伝送構造
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20241018BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20241018BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B1/11
G02B27/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521267
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022044791
(87)【国際公開番号】W WO2023064094
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, チエンチー
(72)【発明者】
【氏名】バルガヴァ, サマース
(72)【発明者】
【氏名】セル, デーヴィッド アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】メッサー, ケヴィン
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
2K009
【Fターム(参考)】
2H199CA12
2H199CA53
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA82
2H199CA85
2H199CA86
2H249AA03
2H249AA13
2H249AA37
2H249AA43
2H249AA44
2H249AA50
2H249AA51
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA66
2K009AA02
2K009AA05
2K009BB01
2K009BB06
2K009CC01
2K009CC03
2K009DD02
2K009DD04
2K009DD12
(57)【要約】
本開示の実施形態は、複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路と、複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路を形成する方法について説明する。複数のデバイス構造は、2つ以上の部分を有して形成される。複数の部分の材料は、光学デバイスからの光の反射を低減するために、部分間のインピーダンス整合が可能になるように選択される。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイス基板と、
前記光学デバイス基板上方に配置された少なくとも1つの格子であって、前記少なくとも1つの格子が複数のデバイス構造を有し、前記複数のデバイス構造の隣接するデバイス構造がその間に間隙を画定し、前記複数のデバイス構造が、
約1.9~約4.0の第1の屈折率を有するデバイス材料を含むデバイス部分、及び
約1.4~約2.0の第2の屈折率を有するインピーダンス整合部分であって、前記インピーダンス整合部分がハードマスク層である、インピーダンス整合部分
を有している、少なくとも1つの格子と
を備える、導波路。
【請求項2】
前記複数のデバイス構造が、入力結合格子又は出力結合格子に対応する、請求項1に記載の導波路。
【請求項3】
前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との差が約0.45~約1.15である、請求項1に記載の導波路。
【請求項4】
前記複数のデバイス構造が、約10度と約170度との間のデバイス角度θで配置される、請求項1に記載の導波路。
【請求項5】
前記デバイス材料が、ゲルマニウム、ケイ素、酸化チタン、酸化ニオブ、窒化ケイ素、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化スカンジウム、又はこれらの組み合わせを含む材料を含む、請求項1に記載の導波路。
【請求項6】
前記インピーダンス整合部分が、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含むインピーダンス整合材料を含む、請求項1に記載の導波路。
【請求項7】
前記複数のデバイス構造が、前記デバイス部分と前記光学デバイス基板との間に配置された反射防止部分を更に含み、前記反射防止部分がエッチング停止層である、請求項1に記載の導波路。
【請求項8】
前記第2の屈折率が、インピーダンス整合式によって生成される範囲内にあり、前記インピーダンス整合式がN2
≒(N1×N3)
0.5であり、ここで、N2は前記第2の屈折率であり、N1は前記第1の屈折率であり、N3は空気又は周囲媒体の屈折率である、請求項1に記載の導波路。
【請求項9】
光学デバイス基板と、
前記光学デバイス基板上方に配置された少なくとも1つの格子であって、前記少なくとも1つの格子が複数のデバイス構造を有し、前記複数のデバイス構造の隣接するデバイス構造がその間に間隙を画定し、前記複数のデバイス構造が、
約1.9~約4.0の第1の屈折率を有するデバイス材料を含むデバイス部分、
約1.4~約2.0の第2の屈折率を有するインピーダンス整合部分であって、前記インピーダンス整合部分がハードマスク層である、インピーダンス整合部分、及び
約1.4~約2.0の反射防止屈折率を有する反射防止部分であって、前記第1の屈折率と、前記第2の屈折率又は前記反射防止屈折率の少なくとも一方と、の差が約0.45~約1.15である、反射防止部分
を有している、少なくとも1つの格子と
を備える、導波路。
【請求項10】
前記複数のデバイス構造が、個別の光学デバイス構造である、請求項9に記載の導波路。
【請求項11】
前記隣接するデバイス構造が、第1の方向及び第2の方向の両方において他のデバイス構造に隣接しており、前記第1の方向が前記第2の方向に対して直角であり、よって、前記複数のデバイス構造が各々前記第1の方向及び前記第2の方向に沿ってのみ配置される、請求項9に記載の導波路。
【請求項12】
前記複数のデバイス構造がフィン構造であり、前記フィン構造が平行な列に配置されている、請求項9に記載の導波路。
【請求項13】
前記反射防止部分がエッチング停止層である、請求項9に記載の導波路。
【請求項14】
前記第2の屈折率が、インピーダンス整合式によって生成される範囲内にあり、前記インピーダンス整合式がN2
≒(N1×N3)
0.5であり、ここで、N2は前記第2の屈折率であり、N1は前記第1の屈折率であり、N3は空気又は周囲媒体の屈折率である、請求項9に記載の導波路。
【請求項15】
前記複数のデバイス構造が、約10度と約170度との間のデバイス角度θで配置される、請求項9に記載の導波路。
【請求項16】
基板の表面上に2層以上の材料を配置することと、
2つ以上の部分を有する複数のデバイス構造を形成するために、前記2層以上の材料を通してエッチングすることであって、前記2つ以上の部分が、
約1.9と約4.0との間の第1の屈折率を有するデバイス部分、及び
インピーダンス整合部分又は反射防止部分の少なくとも一方であって、前記インピーダンス整合部分又は前記反射防止部分が約1.4~約2.0の第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率と前記第2の屈折率との差が約0.45~約1.15であり、前記インピーダンス整合部分がハードマスク層である、インピーダンス整合部分又は反射防止部分の少なくとも一方
を含む、前記2層以上の材料を通してエッチングすることと
を含む、方法。
【請求項17】
前記2層以上の材料が、PVDプロセス又はCVDプロセスで配置される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数のデバイス構造が、イオンビームエッチング、反応性イオンエッチング、若しくは電子ビームエッチングのうちの1つ以上、又はこれらの組み合わせで形成される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の実施形態は、概して、拡張現実、仮想現実、及び複合現実のための光学デバイスに関する。より具体的には、本明細書に記載の実施形態は、複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路、及び複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路を形成する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
[0002]仮想現実は、概して、ユーザが見かけ上の物理的存在を有する、コンピュータが生成した模擬環境であると考えられている。仮想現実体験は、3Dで生成され、ヘッドマウントディスプレイ(head-mounted display:HMD)(例えば、実際の環境に取って代わる仮想現実環境を表示するためのレンズとしてのニアアイディスプレイパネルを有する眼鏡又は他のウェアラブルディスプレイデバイス)で見ることができる。
【0003】
[0003]しかしながら、拡張現実によって、ユーザが眼鏡又は他のHMDデバイスのディスプレイレンズを通して周囲環境を見ることができるが、環境の一部として現れるように生成される仮想物体の画像も見ることができる体験が可能になる。拡張現実には、任意の種類の入力(例えば、音声入力及び触覚入力)や、ユーザが体験する環境を強化又は拡張する仮想画像、グラフィックス、及びビデオが含まれる場合がある。新たな技術として、拡張現実には多くの課題と設計上の制約がある。
【0004】
[0004]そのような課題の1つは、周囲環境に重ね合わされた仮想画像を表示することである。拡張現実導波路結合器などの導波路結合器を含む光学デバイスは、画像の重ね合わせを補助するために使用される。生成された光は、光が光学デバイスを出て周囲環境に重なるまで、光学デバイスを伝搬する。しかし、既存の光学デバイスは、望ましいレベルの結合効率を欠いている。したがって、当技術分野で必要とされているのは、結合効率を改善した光学デバイスである。
【発明の概要】
【0005】
[0005]1つの実施形態では、導波路が提供される。導波路は、光学デバイス基板と、光学デバイス基板上方に配置された少なくとも1つの格子とを含む。少なくとも1つの格子は、複数のデバイス構造を含む。複数のデバイス構造の隣接するデバイス構造は、その間に間隙を画定する。複数のデバイス構造は、デバイス部分を含む。デバイス部分は、約1.9~約4.0の第1の屈折率を有するデバイス材料を含む。複数のデバイス構造は、インピーダンス整合部分を含む。インピーダンス整合部分は、約1.4~約2.0の第2の屈折率を含む。
【0006】
[0006]別の実施形態では、導波路が提供される。導波路は、光学デバイス基板と、光学デバイス基板上方に配置された少なくとも1つの格子とを含む。少なくとも1つの格子は、複数のデバイス構造を含む。複数のデバイス構造の隣接するデバイス構造は、その間に間隙を画定する。複数のデバイス構造は、デバイス部分を含む。デバイス部分は、約1.9~約4.0の第1の屈折率を有するデバイス材料を含む。複数のデバイス構造は、インピーダンス整合部分を含む。インピーダンス整合部分は、約1.4~約2.0の第2の屈折率を含む。複数のデバイス構造は、反射防止部分を含む。反射防止部分は、約1.4~約2.0の反射防止屈折率を含む。第1の屈折率と、第2の屈折率又は反射防止屈折率の少なくとも一方と、の差は、約0.45~約1.15である。
【0007】
[0007]更に別の実施形態では、方法が提供される。この方法は、基板の表面上に2層以上の材料を配置することを含む。この方法は、2つ以上の部分を有する複数のデバイス構造を形成するために、2層以上の材料を通してエッチングすることを更に含む。2つ以上の部分は、約1.9と約4.0との間の第1の屈折率を有するデバイス部分と、インピーダンス整合部分又は反射防止部分の少なくとも一方とを含む。インピーダンス整合部分又は反射防止部分は、約1.4~約2.0の第2の屈折率を含む。第1の屈折率と第2の屈折率との差は、約0.45~約1.15である。
【0008】
[0008]先ほど記載した本開示の特徴を詳しく理解できるように、上記で簡単に要約した本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、いくつかの実施形態が添付図面に示されている。しかし、添付図面は例示的な実施形態のみを示すものであり、したがって、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容され得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]本明細書に記載の実施形態による導波路の概略上面図である。
【
図2A】[0010]本明細書に記載の実施形態による導波路の一部の概略断面図である。
【
図2B】本明細書に記載の実施形態による導波路の一部の概略断面図である。
【
図2C】本明細書に記載の実施形態による導波路の一部の概略断面図である。
【
図3A】[0011]本明細書に記載の実施形態による導波路の一部の概略上面図である。
【
図3B】本明細書に記載の実施形態による導波路の一部の概略上面図である。
【
図3C】本明細書に記載の実施形態による導波路の一部の概略上面図である。
【
図4】[0012]本明細書に記載の実施形態による、複数の材料部分を有するデバイス構造を形成するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0013]理解を容易にするため、可能な場合、図に共通する同一の要素を指し示すために同一の参照番号が使用された。1つの実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくても、他の実施形態に有益に組み込むことができると考えられる。
【0011】
[0014]本開示の実施形態は、概して、拡張現実、仮想現実、及び複合現実のための光学デバイスに関する。より具体的には、本明細書に記載の実施形態は、複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路、及び複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路を形成する方法を提供する。
【0012】
[0015]1つの実施形態では、導波路が提供される。導波路は、光学デバイス基板と、光学デバイス基板上方に配置された少なくとも1つの格子とを含む。少なくとも1つの格子は、複数のデバイス構造を含む。複数のデバイス構造の隣接するデバイス構造は、その間に間隙を画定する。複数のデバイス構造は、デバイス部分を含む。デバイス部分は、約1.9~約4.0の第1の屈折率を有するデバイス材料を含む。複数のデバイス構造は、インピーダンス整合部分を含む。インピーダンス整合部分は、約1.4~約2.0の第2の屈折率を含む。複数のデバイス構造は、反射防止部分を含む。反射防止部分は、約1.4~約2.0の反射防止屈折率を含む。第1の屈折率と、第2の屈折率又は反射防止屈折率の少なくとも一方と、の差は、約0.45~約1.15である。
【0013】
[0016]別の実施形態では、方法が提供される。この方法は、基板の表面上に2層以上の材料を配置することを含む。この方法は、2つ以上の部分を有する複数のデバイス構造を形成するために、2層以上の材料を通してエッチングすることを更に含む。2つ以上の部分は、約1.9と約4.0との間の第1の屈折率を有するデバイス部分と、インピーダンス整合部分又は反射防止部分の少なくとも一方とを含む。インピーダンス整合部分又は反射防止部分は、約1.4~約2.0の第2の屈折率を含む。第1の屈折率と第2の屈折率との差は、約0.45~約1.15である。
【0014】
[0017]
図1は、導波路100の概略上面図である。以下に説明する導波路100は例示的な光学デバイスであることを理解されたい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、導波路100は、拡張現実導波路結合器などの導波路結合器である。導波路100は更に、光学感知(例えば、視線追跡能力)に利用される導波路でありうる。
【0015】
[0018]導波路100は、基板101の上面103上に配置された複数のデバイス構造102を含む。複数のデバイス構造102の一部105を
図1に示す。デバイス構造102は、サブミクロンの寸法(例えば、ナノサイズの寸法)を有するナノ構造でありうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、デバイス構造102の領域は、第1の格子104A、第2の格子104B、及び第3の格子104Cなどの1つ以上の格子104に対応する。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、導波路100は、少なくとも、入力結合格子に対応する第1の格子104Aと、出力結合格子に対応する第3の格子104Cとを含む導波路結合器である。導波路結合器は、本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができ、中間格子に対応する第2の格子104Bを含む。基板101は、所望の波長又は波長範囲の光を適切に透過し、本明細書に記載の導波路100の適切な支持体として機能することができれば、任意の適切な材料から形成されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、波長範囲は、約400nmと約2000nmとの間である。基板の選択は、ケイ素(Si)、二酸化ケイ素(SiO
2)、ドープされたSiO
2、溶融シリカ、石英、炭化ケイ素(SiC)、ゲルマニウム(Ge)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、リン化インジウム(InP)、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド、又はサファイアを含有する材料を含むがこれらに限定されない、任意の適切な材料の基板を含みうる。
【0016】
[0019]
図2A~2Cは、導波路100の格子104の一部105の概略断面図である。格子104は、複数のデバイス構造102を含む。
図2A及び
図2Cは、格子104の部分105が導波路100の第1の格子104A、例えば入力結合格子に対応するように、
図1の断面ライン1-1に沿って切り取られている。
図2Bは、部分105が第3の格子104C(すなわち出力結合格子)に対応するように、
図1の断面ライン2-2に沿って切り取られている。なお、
図2A及び
図2Cは第1の格子104aに対応する部分105を示しており、
図2Bは第3の格子104cに対応する部分105を示しているが、
図2A~
図2Cの部分105は、格子104に限定されるものではなく、第1の格子104a、第2の格子104b、第3の格子104cのいずれかに対応しうる。複数のデバイス構造102は、基板101の上面103上に配置される。デバイス構造102の各々は、上面210を含む。複数のデバイス構造102は、複数の間隙220を画定する。複数の間隙220の各間隙は、隣接するデバイス構造102間に画定される。
【0017】
[0020]複数のデバイス構造102の各デバイス構造102は、構造幅202を有する。構造幅202は、基板101の上面103に最も近いデバイス構造102の幅として定義される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、少なくとも1つの構造幅202は、別の構造幅202と異なっていてもよい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、複数のデバイス構造102の各構造幅202は、他の各構造幅202と実質的に等しい。複数のデバイス構造102の各デバイス構造102は、空間幅204を有する。空間幅204は、基板101の上面103に最も近い隣接するデバイス構造102間の距離として定義される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、少なくとも1つの空間幅204は、別の空間幅204と異なっていてもよい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、複数のデバイス構造102の各空間幅204は、他の各空間幅204と実質的に等しい。導波路100のデューティサイクルは、空間幅204対構造幅202の比として定義される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、デューティサイクルは、基板101全体で一定である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、デューティサイクルは、基板101全体で変化する。デューティサイクルは、約5%と約95%との間である。
【0018】
[0021]ピッチ206は、各デバイス構造102の空間幅204と構造幅202の和として定義される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、ピッチ206は、基板101全体で一定である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、ピッチ206は、基板101全体にわたって変化する。ピッチ206は、約150nmと約1500nmとの間である。深さ208は、各デバイス構造102の上面210と基板101の上面103との間の距離として定義される。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、深さ208は、基板101全体で一定である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、深さ208は、基板101全体にわたって変化する。各デバイス構造102の深さ208は、約10nmと約2000nmとの間である。
【0019】
[0022]複数のデバイス構造102は、デバイス角度θで形成される。デバイス角度θは、基板101の表面103とデバイス構造102の側壁212との間の角度である。
図2A及び
図2Cに示すように、複数のデバイス構造102は、基板101の上面103に対して角度が付けられている。デバイス角度θは、約10度と約170度の間(例えば約40度から約140度)である。例えば、デバイス角度θは約70度から約110度である。
図2Bに示すように、複数のデバイス構造102は垂直である(すなわち、デバイス角度θは90度である)。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、各デバイス構造102のそれぞれのデバイス角度θは実質的に等しい。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、複数のデバイス構造102の少なくとも1つのそれぞれのデバイス角度θは、複数のデバイス構造102の別のデバイス角度θとは異なる。
【0020】
[0023]
図2A~2Cに示す複数のデバイス構造102は、
図1に示す導波路100の第1の格子104A、第2の格子104B、又は第3の格子104Cのいずれか1つに対応しうる。
図2Bに示すように、複数のデバイス構造102は、基板101の上面103及び基板101の底面214の両方に配置されうる。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、複数のデバイス構造102は、光を基板101内に結合するように動作可能である。本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせることができる別の実施形態では、複数のデバイス構造102は、基板101からの光をユーザに結合するように動作可能である。光は、基板101の上面103及び/又は底面214から結合されうる。
【0021】
[0024]
図2A及び
図2Cでは、複数のデバイス構造102が基板101の上面103上に示されているが、複数のデバイス構造102は、上面103及び底面214上に配置されてもよい。
図2Bでは、複数のデバイス構造102が上面103及び底面214上に示されているが、複数のデバイス構造102は、上面103又は底面214の一方にのみ配置されてもよい。
【0022】
[0025]複数のデバイス構造102の各々は、複数の部分216(すなわち、部分216A~216C)を含む。例えば、各デバイス構造102は、2つ以上の部分216を有しうる。複数の部分216の各々は、厚さ218を含む。複数の部分216の厚さ218は、複数のデバイス構造102の回折効率を向上させるように決定される。例えば、複数の部分216の各々の厚さ218は、導波路100に結合された特定の波長に対する導波路100の効率を向上又は低下させるように決定されうる。導波路100内に結合される特定の波長の光の効率を向上又は低下させる能力(すなわち、カラーバランシング(color balancing))は、複数の波長の光を結合するように動作可能な導波路100にとって有益である。複数の部分216の各部分216は、隣接する部分216と異なる厚さ218又は同じ厚さ218を有しうる。
【0023】
[0026]複数の部分216を有する複数のデバイス構造102は、部分216の材料間のインピーダンス整合により、導波路100の光結合効率及び画質を向上させる。複数の部分216により、導波路100からの光の反射を調整するために部分216間のインピーダンス整合が可能になる。例えば、部分216のインピーダンス整合は、ある波長の光の光反射を減少させうるが、別の波長の光の光反射を意図的に増加させるだろう。複数の部分216は、単一の導波路100における異なる波長の光(例えば、光の色)の結合効率を高める(RGBの色が同一の導波路100から放出される)。
【0024】
[0027]インピーダンス整合により、デバイス構造102は、基板101から周囲に光を結合することができ、又は入射光をより効率的に基板101に結合させることができる。よって、入射光が角度的に均一に及び/又はスペクトル的に均一になる。部分216間のインピーダンス整合により、反射及び入射に対し逆方向の回折光(back-diffracted light)が低減される。過剰な反射及び逆方向の回折がある場合、反射光の一部が導波路100内に結合され、ゴーストイメージングの原因となりうる。このように、部分216間のインピーダンス整合により、ゴーストイメージング及び迷光の発生が低減されるだろう。更に、複数の部分216は、視野FOVが拡大されうるように、大きな入射角に対する光学効率を高めることができる。また、複数の部分216が複数のデバイス構造102間の複数の間隙220内に配置されないので、より高い屈折率コントラストが発生しうる。デバイス構造102と複数の間隙220との間の屈折率コントラストは、屈折率コントラストを提供する。導波路100の光学性能を向上させるために、複数のデバイス構造102の構造材料の屈折率と、複数のデバイス構造102周囲の材料の屈折率と、の間に大きなコントラストを有することが望ましい。
【0025】
[0028]複数の部分216を有するデバイス構造102が第3の格子104C上に配置される実施形態では、複数の部分216とのインピーダンス整合の結果として、シースルー透過(又は外界からの光)が高められうる。複数の導波路100が積層されると、複数の部分216が各導波路での反射の発生を低下させるので、ユーザは、導波路100の外側からの光をより多く見ることができる。シースルー透過を高める利点に加えて、積層導波路100の各導波路100上のデバイス構造102は、迷光を最小限に抑え、導波路100の全体的な光学効率を向上させるために、隣接する導波路100からのより高い光伝送を許容しうる。
【0026】
[0029]本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、複数のデバイス構造102は、2つの部分216を含む。例えば、複数のデバイス構造102は、
図2A~2Cに示すように、デバイス部分216Aと、デバイス部分216Aの上方に配置されたインピーダンス整合部分216Bとを含む。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる他の実施形態では、複数のデバイス構造102は、
図2Bに示すように、デバイス部分216Aの下方に配置された反射防止部分216Cを含む。
図2Bには3つの部分216のみが示されているが、複数の部分216は、4つ以上の部分216を含んでいてもよい。
【0027】
[0030]デバイス部分216Aは、高屈折率材料である。デバイス部分216Aの屈折率は、約1.9~約4.0の間である。デバイス部分216Aは、ゲルマニウム、ケイ素、酸化チタン、酸化ニオブ、窒化ケイ素、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化スカンジウム、又はこれらの組み合わせなどの材料を含むが、これらに限定されない。インピーダンス整合部分216Bは、低屈折率材料である。インピーダンス整合部分216Bの屈折率は、約1.4と約2.0との間である。インピーダンス整合部分216Bは、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む材料を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができる1つの実施形態では、デバイス部分216Aが窒化ケイ素であり、インピーダンス整合部分216Bが酸化ケイ素である。いくつかの実施形態では、インピーダンス整合部分216Bは、導波路製造に利用されるハードマスク層に対応する。ハードマスク層の材料は、パターニングされたハードマスク層がインピーダンス整合部分216Bとして残るように選択される。異なる材料及び材料の組み合わせがデバイス構造内で実現されうるため、導波路100の異なる設計が達成できる。
【0028】
[0031]本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、反射防止部分216Cは、エッチング停止層である。反射防止部分216Cは、複数のデバイス構造102の形成後に残るエッチング停止層である。反射防止部分216Cが完全にエッチングされるか又は全くエッチングされない場合には、反射防止部分216Cは、エッチング停止層となる。反射防止部分216Cの屈折率は、約1.4と約2.0との間である。反射防止部分216Cは、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はこれらの組み合わせを含む材料を含むが、これらに限定されない。
【0029】
[0032]インピーダンス整合部分216Bをデバイス部分216Aにインピーダンス整合させるだけでなく、デバイス構造102の追加部分をインピーダンス整合させることができるため、複数のデバイス構造102の反射防止能力が向上する。いくつかの実施形態では、インピーダンス整合部分216Bの屈折率を決定するために、第1のインピーダンス整合式が使用されうる。第1のインピーダンス整合式は、
N2≒(N1×N3)0.5
ここで、N1はデバイス部分216Aの屈折率、N2はインピーダンス整合部分216Bの屈折率、N3は空気(又は導波路100を取り囲む他の媒体)の屈折率である。本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、反射防止部分216Cの屈折率は、第2のインピーダンス整合式で決定される。第2のインピーダンス整合式は、
Nanti-reflective≒(Nsubstrate×N1)0.5
ここで、N1はデバイス部分216Aの屈折率であり、Nanti-reflectiveは反射防止部分216Cの屈折率であり、Nsubstrateは基板の屈折率である。インピーダンス整合式に基づいて、導波路100内のインピーダンス整合を改善するように複数の部分216の材料が選択されうる。
【0030】
[0033]
図3A~3Cは、導波路100の格子104の一部105の概略上面図である。格子104は、複数のデバイス構造102を含む。複数のデバイス構造102は、基板101の上面103上に配置される。デバイス構造102の各々は、上面210を含む。複数のデバイス構造102の各々は、複数の部分216(
図2A~2Cに示す)を有する。
【0031】
[0034]
図3Aに示すように、複数のデバイス構造102は、フィン構造である。フィン構造は、平行な列302に配置されている。
図3Aの複数のデバイス構造102は矩形の断面を描いているが、デバイス構造102の断面形状は限定されない。
図3Bに示すように、複数のデバイス構造102は、個別のデバイス構造102であってもよい。各デバイス構造102は、第1の方向及び第2の方向の両方において他のデバイス構造102に隣接しており、第1の方向は第2の方向に対して直角である。例えば、複数のデバイス構造102がそれぞれ第1の方向及び第2の方向に沿ってのみ配置されるように、複数のデバイス構造102は、
図3Bに示されるように、x方向及びy方向に沿って配置される。
図3Bの複数のデバイス構造102は楕円形の断面を描いているが、デバイス構造102の断面形状は限定されない。
図3Cに示すように、複数のデバイス構造102は、個別のデバイス構造102であってもよい。各デバイス構造102は、第1の方向及び第2の方向の両方において他のデバイス構造102に隣接しており、第1の方向は第2の方向に対して直角である。
図3Cの複数のデバイス構造102は、
図3Cに示す断面に限定されない。例えば、複数のデバイス構造102の断面は、その上に形成された導波路100の複数の層を支持体するように動作可能な任意の形状でありうる。
【0032】
[0035]
図4は、本明細書に記載の実施形態による、複数の材料部分を有する導波路を形成するための方法のフロー図である。説明を容易にするために、方法400は、
図2A~2Cに示される複数のデバイス構造102を参照して説明されるが、方法400は、任意の形状のデバイス構造102を形成するために実行されうることが企図される。
【0033】
[0036]工程401において、複数の材料の層が基板101上方に配置される。材料の複数の部分216の各々は、液体材料注入キャスティングプロセス、スピンオンコーティングプロセス、液体スプレーコーティングプロセス、ドライパウダーコーティングプロセス、スクリーン印刷プロセス、ドクターブレーディングプロセス、PVDプロセス、CVDプロセス、FCVDプロセス、PECVDプロセス、マグネトロンスパッタリング、イオンビームスパッタリング、電子ビーム蒸発、又はALDプロセスを使用して配置される。材料の各層は、形成されるデバイス構造102の反射防止特性を向上させるために、材料の層間でインピーダンス整合(例えば、反射防止)が発生するように選択される。材料の層は、デバイス材料とインピーダンス整合材料を含む。
【0034】
[0037]層の各々が、形成される導波路100の回折効率を向上させるように選択された厚さ218を有する。各層の材料と各層の厚さ218は、回折効率を高め、反射防止機能を向上させるために、光学シミュレーションを介して決定される。光学シミュレーションは、有限差分時間領域(FDTD)、有限差分周波数領域(FDFD)、厳密結合波解析(RCWA)、又は有限要素解析(FEM)を含むがこれらに限定されない電磁シミュレーション手法に基づいて実行することができる。光学シミュレーションでは、導波路100の性能を向上させるために、複数のデバイス構造102のサイズ及び位置、並びに各部分216の屈折率が変更されうる。
【0035】
[0038]動作402において、複数のデバイス構造102が形成される。複数の層の1つ以上をエッチングすることにより、層の複数の部分216を有する複数のデバイス構造102が形成される。複数のデバイス構造102は、ナノインプリントリソグラフィ、光リソグラフィ、イオンビームエッチング、反応性イオンエッチング、電子ビームエッチング、若しくは湿式エッチングプロセスのうちの1つ以上、又はこれらの組み合わせで形成される。デバイス材料のデバイス部分216A及びインピーダンス整合材料のインピーダンス整合部分216Bが形成されうる。
【0036】
[0039]本明細書に記載の他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態では、複数の部分216のインピーダンス整合部分216Bは、ハードマスク層である。例えば、工程402は、インピーダンス整合部分を部分的にエッチングしてハードマスク層を形成することを含みうる。部分的にエッチングされたインピーダンス整合部分216Bは、デバイス部分216A及びインピーダンス整合部分216Bに形成される複数のデバイス構造102を規定しうる。インピーダンス整合部分216Bは、複数の部分216の1つのままである。
【0037】
[0040]他の実施形態では、反射防止部分216Cが、基板101とデバイス部分216Aとの間に配置される。反射防止部分216Cは、エッチング停止層である。例えば、工程402は、デバイス部分をエッチングした後、デバイス部分に形成された開口部を通してエッチング停止層をエッチングすることを含みうる。反射防止部分216Cは、複数の部分216のう1つのままである。
【0038】
[0041]複数のデバイス構造102が単一のエッチング工程で形成される際に、部分216の1つ以上が反射防止層又はハードマスク層として機能しうるので、反射防止層又はハードマスク層を堆積するような追加の工程を完了する必要はない。したがって、製造コストが削減されうる。
【0039】
[0042]要するに、本明細書では、複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路と、複数の部分を備えたデバイス構造を有する導波路を形成する方法について記載されている。複数のデバイス構造は、2つ以上の部分を有して形成される。複数の部分の材料は、光学デバイスからの光の反射を低減するために、部分間のインピーダンス整合が可能になるように選択される。インピーダンス整合により、デバイス構造はより効率的に光を結合させることができる。複数の部分の材料は、複数のデバイス構造間の間隙内に配置されないので、デバイス構造の材料と周囲の空気との間の屈折率コントラストは影響を受けない。単一のエッチング段階で複数の部分を備えたデバイス構造を形成することで、製造コストが削減されるだろう。
【0040】
[0043]以上の記述は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてもよく、本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】