(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】回転ペデスタルに対して傾斜したPVD源
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20241018BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C23C14/35 B
C23C14/34 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522454
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022041405
(87)【国際公開番号】W WO2023069190
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ペンメサ, ハリシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ホン エス.
(72)【発明者】
【氏名】パラニサミー, スレシュ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029CA05
4K029DA08
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC12
4K029DC16
4K029DC25
4K029DC33
4K029DC34
4K029DC46
4K029FA04
4K029FA05
4K029JA02
4K029JA05
4K029KA09
(57)【要約】
本書では、物理気相堆積(PVD)プロセスにおいて膜均一性を向上させるための装置及び方法が提示される。一部の実施形態では、PVDチャンバは、PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、ペデスタルに連結された第1モータと、第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、第1の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータと、第2の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第2アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータに同時に第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された、システムコントローラと、を含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理気相堆積(PVD)チャンバであって、
前記PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、
前記ペデスタルに連結された第1モータであって、前記ペデスタルの前記上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心に前記ペデスタルを回転させるよう構成された、第1モータと、
第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、を備え、
前記第1ターゲットの表面は、前記処理領域の一部分を画定し、かつ第1ターゲット材料を含み、
前記ペデスタルの前記上面の表面積は、前記第1ターゲットの前記表面の表面積よりも大きく、
前記第1ターゲットの前記表面は、前記ペデスタルの前記上面の平面に対して第1の角度に傾斜しており、
前記PVDチャンバが更に、
前記リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、前記第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、
第1の方向に前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータであって、前記第1アクチュエータによって前記第1マグネトロンを平行移動させることが、第2の軸を中心に前記第1マグネトロンを回転させることを含む、第1アクチュエータと、
第2の方向に前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータに同時に前記第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された、システムコントローラと、
を備える、PVDチャンバ。
【請求項2】
前記第1マグネトロン及び前記第1ターゲットがデルタ形状である、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項3】
前記ペデスタルに連結された回転ユニオンであって、前記ペデスタルが前記第1の軸を中心に回転している間に前記ペデスタルに流体連結を提供するよう構成された、回転ユニオンを更に備える、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項4】
前記ペデスタルの前記上面は、約500mm以上の長さの辺を有する正方形又は長方形の基板を受容するよう構成される、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項5】
前記第1ターゲットのエッジが3つの角部を備え、前記3つの角部のうちの1つの角部が、2つの他の角部よりも径方向で前記第1の軸の近くに位置付けられる、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項6】
前記第1ターゲットの前記3つの角部のうちの前記1つの角部が、前記2つの他の角部の各々と比較して、前記ペデスタルの前記上面から遠い、請求項5に記載のPVDチャンバ。
【請求項7】
前記第1ターゲットは、一又は複数の冷却チャネルであって、前記第1ターゲットを冷却するためにそこを通る冷却剤を受容するよう構成された、一又は複数の冷却チャネルを備え、
前記PVDチャンバが更に、
第2ターゲットを備え、
前記第2ターゲットの表面は、前記処理領域の別の部分を画定し、かつ第2ターゲット材料を含み、
前記ペデスタルの前記上面の前記表面積は、前記第2ターゲットの前記表面の表面積よりも大きく、
前記第2ターゲットの前記表面は、前記ペデスタルの前記上面の前記平面に対して第2の角度に傾斜しており、
前記第2ターゲットは、一又は複数の冷却チャネルであって、前記第2ターゲットを冷却するためにそこを通る冷却剤を受容するよう構成された、一又は複数の冷却チャネルを備え、前記PVDチャンバが更に、
前記リッドアセンブリの大気圧に維持される前記領域内の、前記第2ターゲットの一部分の上に配置された、第2マグネトロンを備える、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項8】
前記第1ターゲット材料と前記第2ターゲット材料とが同じ材料を含む、請求項7に記載のPVDチャンバ。
【請求項9】
前記第1ターゲット材料と前記第2ターゲット材料とが異なる材料を含む、請求項7に記載のPVDチャンバ。
【請求項10】
前記第1ターゲット及び前記第2ターゲットが、基板の別々のエリアの上に同時に同じ材料を堆積させるよう構成される、請求項7に記載のPVDチャンバ。
【請求項11】
前記第1の方向が径方向であり、前記第2の方向が周縁方向である、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項12】
前記第2の軸が前記第1の軸に対して傾斜しており、
前記第2の軸が、前記第1ターゲットの前記表面に対して垂直な方向に延在している、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項13】
前記システムコントローラは、前記第1経路に沿った前記第1マグネトロンの平行移動を維持するために、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータとを同期させるよう構成される、請求項1に記載のPVDチャンバ。
【請求項14】
物理気相堆積(PVD)チャンバであって、
前記PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、
前記ペデスタルに連結された第1モータであって、前記ペデスタルの前記上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心に前記ペデスタルを回転させるよう構成された、第1モータと、
第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、を備え、
前記第1ターゲットの表面は、前記処理領域の一部分を画定し、かつ第1ターゲット材料を含み、
前記第1ターゲットの前記表面は、前記ペデスタルの前記上面の平面に対して第1の角度に傾斜しており、
前記PVDチャンバが更に、
前記リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、前記第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、
第1の方向に前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータと、
命令を記憶しているコンピュータ可読媒体と、
を備え、前記命令は、システムのプロセッサによって実行されると、前記システムに、
前記第1モータに、前記第1の軸を中心に前記ペデスタルを回転させることと、
前記第1アクチュエータに、前記第1の方向に前記第1マグネトロンを平行移動させることと、
を同時に実行させる、
PVDチャンバ。
【請求項15】
第2アクチュエータに前記第1マグネトロンを平行移動させること、を同時に行わせるよう更に構成された、実行可能命令を含み、
前記第1マグネトロンを平行移動させることが、第2の軸を中心に前記第1マグネトロンを回転させることを含み、前記第2の軸は、前記第2の軸に対して垂直な平面に対して測定した場合に、前記第1マグネトロンからある距離に配置される、請求項14に記載のPVDチャンバ。
【請求項16】
前記第1の方向が、前記PVDチャンバの中心軸から延在する径方向である、請求項15に記載のPVDチャンバ。
【請求項17】
前記第1アクチュエータ及び前記第2アクチュエータは、前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータに同時に前記第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成される、請求項15に記載のPVDチャンバ。
【請求項18】
前記第1ターゲットのエッジが3つの角部を備え、前記3つの角部のうちの1つの角部が、2つの他の角部よりも径方向で前記第1の軸の近くに位置付けられる、請求項14に記載のPVDチャンバ。
【請求項19】
前記第1ターゲットは、一又は複数の冷却チャネルであって、前記第1ターゲットを冷却するためにそこを通る冷却剤を受容するよう構成された、一又は複数の冷却チャネルを備える、請求項18に記載のPVDチャンバ。
【請求項20】
処理システムであって、
移送チャンバと、
前記移送チャンバに連結された物理気相堆積(PVD)チャンバと、を備え、前記PVDチャンバが、
前記PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、
前記ペデスタルに連結された第1モータであって、前記ペデスタルの前記上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心に前記ペデスタルを回転させるよう構成された、第1モータと、
第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、を備え、
前記第1ターゲットの表面は、前記処理領域の一部分を画定し、かつ第1ターゲット材料を含み、
前記ペデスタルの前記上面の表面積は、前記第1ターゲットの前記表面の表面積よりも大きく、
前記第1ターゲットの前記表面は、前記ペデスタルの前記上面の平面に対して第1の角度に傾斜しており、
前記第1ターゲットは、一又は複数の冷却チャネルであって、前記第1ターゲットを冷却するためにそこを通る冷却剤を受容するよう構成された、一又は複数の冷却チャネルを備え、前記PVDチャンバは更に、
前記リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、前記第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、
第1の方向に前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータと、
前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第2アクチュエータであって、前記第2アクチュエータによって前記第1マグネトロンを平行移動させることが、第2の軸を中心に前記第1マグネトロンを回転させることを含む、第2アクチュエータと、
前記第1アクチュエータと前記第2アクチュエータに同時に前記第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って前記第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された、システムコントローラと、を備える、
処理システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
技術分野
[0001]本開示の実施形態は、概して電子デバイス製造プロセスにおける基板上での物理気相堆積(PVD)膜形成に関し、より詳細には、小型カソード設計を用いつつ膜均一性を向上させるための装置及び方法に関する。
【0002】
関連技術の説明
[0002]近年の電子デバイス製造プロセスは、専用のPVDチャンバにおける物理気相堆積(PVD)プロセス又はスパッタリングプロセスの使用を伴うことが多い。スパッタリングされる材料源は、純金属、合金、又はセラミックの材料から形成された、平面の又は回転式のスパッタリングターゲットでありうる。ターゲットの近傍に磁場を発生させるために、マグネットアレイ(典型的には、アセンブリ内に配置され、マグネトロンと称されることが多い)が使用される。処理中に、プラズマを生成し、スパッタリングプロセスを可能にするために、ターゲットに高電圧が印加される。電圧源は負にバイアスされるので、ターゲットは「カソード(cathode)」とも称されうる。高電圧がPVDチャンバ内部に電場を発生させる。この電場は、ターゲット材料のスパッタリングを可能にすると共に、ターゲットから、ターゲットの下側付近でプラズマを生成し、保持するために使用される電子を発生させ、放出するために使用される。マグネットアレイは外部磁場を印加し、この外部磁場は、電子を捕捉し、ターゲットの近くにプラズマを閉じ込める。捕捉された電子は次いで、PVDチャンバの処理領域内にあるガス原子と衝突し、これらのガス原子をイオン化しうる。捕捉された電子とガス原子とが衝突することによって、ガス原子は電子を放出し、この電子が、PVDチャンバの処理領域内のプラズマ密度を保持し、更に上昇させるために使用される。プラズマは、アルゴン原子、正電荷を帯びたアルゴンイオン、自由電子、及び、ターゲットからスパッタリングされた電離した金属原子並びに中性金属原子を含みうる。アルゴンイオンは、負バイアスによってターゲットに向かって加速され、ターゲットの表面と衝突することにより、ターゲット材料の原子をターゲット表面から射出(eject)させる。射出されたターゲット材料の原子は次いで、基板及びチャンバのシールドに向かって進み、これらの表面上の成長薄膜に取り込まれる。
【0003】
[0003]PVDスパッタリングを行いつつ膜均一性を制御することは、大面積基板(パネルなど)を処理する場合には、特に困難である。本書で使用される場合、「パネル(panel)」という語は、大きな表面積を有する大面積基板を指すことがある。例えば、一般的なパネルサイズは600mm×600mmでありうる。一部のパッケージング応用では、一般的なパネル材料は、ポリマー材料(例えば、味の素ビルドアップフィルム(ABF)、銅張積層板(CCL)、ポリマーが上に載ったパネル、ガラス、又はその他の類似の材料を含みうる。
【0004】
[0004]大面積基板上でのPVD膜形成は、上述したように、平面の又は回転式のターゲットのいずれかを使用して実行されうる。いずれの場合においても、ターゲットサイズの長さは800mmを上回ることがあり、場合によっては1,000mmを超える。換言すると、ターゲットサイズは、処理される基板のサイズを、約20%~約40%上回りうる。かかる大面積ターゲットの必要性は、PVDスパッタリングプロセスに特別な困難をもたらす。例えば、貴金属であれば、かかる大面積ターゲットの製造に必要な量の原材料は非常に高価になる。一方、比較的脆い材料(シリコンなど)から形成される大面積のモノリシックなターゲットは、亀裂や破損が生じやすいため、製造が困難かつコスト高になる。加えて、大面積ターゲットは比較的低い電力密度を有する。したがって、好適な堆積速度を実現するためには、非常に高い消費電力が必要になる。加えて、従来型のPVDチャンバは、一度に1つの大面積ターゲットしか入らないようサイズ設定されており、これにより、スループットが、複数のターゲットをプロセスチャンバ内に配置した場合に実現可能なスループットと比較して低下する。チャンバ内に複数のターゲットが存在することで、純度が高く組成の異なる、複数の材料の形成が可能になりうる。しかし、処理チャンバ内に複数のターゲットが存在することにより、多くの場合、各ターゲットが基板の表面全体に同様の膜形成能力を有するように、ターゲットの各々を基板表面の一部分だけの上に配置することが必要になるため、堆積が不均一になるという問題が生じる。
【0005】
[0005]したがって、当該技術分野においては、小型のカソード及びチャンバの設計を使用しつつ膜堆積の均一性を向上させるための、装置及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本書に記載の実施形態は概して、電子デバイス製造プロセスにおける基板上での物理気相堆積(PVD)膜形成に関する。より詳細には、本書に記載の実施形態は、小型カソード設計を用いつつ膜均一性を向上させるための装置及び方法を提供する。
【0007】
[0007]一実施形態では、PVDチャンバは、PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、ペデスタルに連結された第1モータであって、ペデスタルの上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心にペデスタルを回転させるよう構成された、第1モータと、第1ターゲットを収納するリッドアセンブリと、を含む。第1ターゲットの表面は、処理領域の一部分を画定し、第1ターゲット材料を含む。ペデスタルの上面の表面積は、第1ターゲットの表面の表面積よりも大きい。第1ターゲットの表面は、ペデスタルの上面の平面に対して第1の角度に傾斜している。第1ターゲットは、一又は複数の冷却チャネルであって、第1ターゲットを冷却するためにそこを通る冷却剤を受容するよう構成された、一又は複数の冷却チャネルを備える。PVDチャンバは、リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、第1の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータと、第1の方向に対してほぼ垂直な第2の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第2アクチュエータであって、第2アクチュエータにより第1マグネトロンを平行移動させるプロセスが、第2の軸を中心に第1マグネトロンを回転させることを含む、第2アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータに同時に第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された、システムコントローラと、を含む。
【0008】
[0008]本開示の実施形態は、物理気相堆積(PVD)チャンバを含んでよく、このPVDチャンバは、PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、ペデスタルに連結された第1モータと、第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、第1の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータであって、第1アクチュエータによって第1マグネトロンを平行移動させることが、第2の軸を中心に第1マグネトロンを回転させることを含む、第1アクチュエータと、第2の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第2アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータに同時に第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された、システムコントローラと、を含む。第1モータは、ペデスタルの上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心にペデスタルを回転させるよう構成される。リッドアセンブリは第1ターゲットを備え、第1ターゲットの表面は、処理領域の一部分を画定し、かつ第1ターゲット材料を含み、ペデスタルの上面の表面積は、第1ターゲットの表面の表面積よりも大きく、第1ターゲットの表面は、ペデスタルの上面の平面に対して第1の角度に傾斜している。
【0009】
[0009]本開示の実施形態は、物理気相堆積(PVD)チャンバを更に含んでよく、このPVDチャンバは、PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、ペデスタルに連結された第1モータであって、ペデスタルの上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心にペデスタルを回転させるよう構成された、第1モータと、第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、第1の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータと、命令を記憶しているコンピュータ可読媒体と、を含み、命令は、システムのプロセッサによって実行されると、システムに、第1モータに第1の軸を中心にペデスタルを回転させることと、第1アクチュエータに第1の方向に第1マグネトロンを平行移動させることとを同時に実行させる。第1ターゲットの表面は処理領域の一部分を画定する。第1ターゲットは第1ターゲット材料を含む。第1ターゲットの表面は、ペデスタルの上面の平面に対して第1の角度に傾斜している。
【0010】
[0010]本開示の実施形態は処理システムを更に含んでよく、この処理システムは、移送チャンバと、移送チャンバに連結された物理気相堆積(PVD)チャンバとを含む。PVDチャンバは、PVDチャンバの処理領域内に配置されたペデスタルであって、上に基板を支持するよう構成された上面を有する、ペデスタルと、ペデスタルに連結された第1モータであって、ペデスタルの上面の少なくとも一部分に対して垂直な第1の軸を中心にペデスタルを回転させるよう構成された、第1モータと、第1ターゲットを備えるリッドアセンブリと、リッドアセンブリの大気圧に維持される領域内の、第1ターゲットの一部分の上に配置された、第1マグネトロンと、第1の方向に第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第1アクチュエータと、第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された第2アクチュエータであって、第2アクチュエータによって第1マグネトロンを平行移動させることが、第2の軸を中心に第1マグネトロンを回転させることを含む、第2アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータに同時に第1マグネトロンを平行移動させることによって、第1経路の少なくとも一部分に沿って第1マグネトロンを平行移動させるよう構成された、システムコントローラと、を含む。リッドアセンブリは、第1ターゲットを含み、第1ターゲットの表面は、処理領域の一部分を画定し、かつ第1ターゲット材料を含み、ペデスタルの上面の表面積は、第1ターゲットの表面の表面積よりも大きく、第1ターゲットの表面は、ペデスタルの上面の平面に対して第1の角度に傾斜しており、第1ターゲットは、一又は複数の冷却チャネルであって、第1ターゲットを冷却するためにそこを通る冷却剤を受容するよう構成された、一又は複数の冷却チャネルを備える。
【0011】
[0011]本開示の上述の特徴が詳しく理解されうるように、上記では簡単に要約した本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られる。一部の実施形態は、付随する図面に示されている。しかし、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることから、付随する図面は、この開示の典型的な実施形態を例示しているにすぎず、したがって本開示の範囲を限定すると見なすべきではないことに、留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ある種の実施形態による、例示的な基板処理システムの概略上面図である。
【
図2A】ある種の実施形態による、
図1の基板処理システムにおいて使用されうるPVDチャンバの側断面図である。
【
図2B】ある種の実施形態による、
図2AのPVDチャンバの一部分の拡大断面図である。
【
図2C】ある種の実施形態による、
図2Aの一部分の上面図であり、ターゲットと基板とを重ね合わせて図示している。
【
図2D】ある種の実施形態による、
図2Aの一部分の上面図であり、マグネトロンとターゲットとを重ね合わせて図示している。
【
図3A】ある種の実施形態による、
図1の基板処理システムにおいて使用されうる別のPVDチャンバの側断面図である。
【
図3B】ある種の実施形態による、
図3AのPVDチャンバの概略上面図である。
【
図4】ある種の実施形態による、PVDチャンバを使用して基板を処理する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0020]理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。一実施形態の要素及び特徴は、更なる記載がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうると想定される。
【0014】
[0021]本書で提示している本開示の実施形態は、概して、電子デバイス製造プロセスにおける基板上での薄膜の物理気相堆積(PVD)に関する。より詳細には、本書に記載の実施形態は、小型ターゲット(又は、本書では小型カソード、カソード、若しくはターゲットとも称されうる)を使用したときに膜堆積の均一性を向上させるための、装置及び方法を提供する。一部の実施形態では、装置は、小型ターゲットを使用しながら膜均一性を向上させるために処理中に基板を回転させるよう構成された、基板支持要素を含んでよく、小型ターゲットにより、上述の大面積ターゲットと比較して、ターゲットのコストが削減される。本書で提示している本開示の実施形態は、膜均一性を向上させるために、処理される基板に対して傾斜しているターゲットを提供しうる。本書で提示している本開示の実施形態は更に、2つ以上のカソードを同時に使用することにより、共スパッタリングを可能にしうる。2つ以上のカソードを同時に使用することで、単一のカソード使用する場合よりもスループットが向上し、堆積される膜の組成の調整が可能になりうる。本書で提示している本開示の実施形態は更に、全面浸食を行うために、ターゲットのスパッタリング作用エリア全体に磁場を拡張するよう、ほぼ垂直な2つの方向にマグネトロンを振動させることを可能にしうる。通常、振動は、不具合(粒子やアーク発生など)の管理に役立ち、また、ターゲットの特定のエリアのみが浸食される固定式磁石と比較して、ターゲットの寿命を延ばす。本書で提示している本開示の実施形態は更に、ターゲットの裏面全体で一又は複数の経路に沿ってマグネトロンをスキャンすることを可能にし、これにより、堆積される膜の均一性が制御されうる。例えば、マグネトロンのスキャンは、堆積プロセス中に、基板の種々のエリアにわたって膜厚の変動があればそれを相殺するよう、調整されうる。
【0015】
例示的な基板処理システム
[0022]
図1は、ある種の実施形態による、例示的な基板処理システム100(「処理プラットフォーム」とも称される)の概略上面図である。ある種の実施形態では、基板処理システム100は、大面積基板(上述のパネルなど)を処理するように特に構成される。詳しくは後述するように、基板処理システム100は一般に、基板を処理システム100内にローディングするための機器フロントエンドモジュール(EFEM)102と、EFEM102に連結された第1ロードロックチャンバ104と、第1ロードロックチャンバ104に連結された移送チャンバ106と、移送チャンバ106に連結された複数の他のチャンバと、を含む。EFEM102は一般に、一又は複数のロボット105を含む。一又は複数のロボット105は、FOUP103から、第1ロードロックロードロック104又は第2ロードロックチャンバ120の少なくとも一方に、基板を移送するよう構成される。処理システム100は、移送チャンバ106の周りを第1ロードロックチャンバ104から反時計回りに、第1ガス抜き専用チャンバ108、第1予洗浄チャンバ110、第1堆積チャンバ112、第2予洗浄チャンバ114、第2堆積チャンバ116、第2ガス抜き専用チャンバ118、及び第2ロードロックチャンバ120を含む。ある種の実施形態では、移送チャンバ106及び移送チャンバ106に連結された各チャンバは、真空状態に維持される。本書で使用される場合、「真空(vacuum)」という語は、760Torr未満の圧力のことであってよく、チャンバは、典型的には、10
-5Torr(すなわち~10
-3Pa)付近の圧力に維持されることになる。しかし、高真空システムの一部は、10
-7Torr(すなわち~10
-5Pa)付近を下回る圧力で動作しうる。ある種の実施形態では、移送チャンバ106及び一又は複数のプロセスチャンバ(プロセスチャンバ108~118など)の各々に連結されたラフポンプ及び/又はターボ分子ポンプを使用して、真空状態が生成される。しかし、別種の真空ポンプも想定される。
【0016】
[0023]ある種の実施形態では、基板は、第1ロードロックチャンバ104のドア(「アクセスポート」とも称される)を通って処理システム100内にローディングされ、第2ロードロックチャンバ120のドアを通って処理システム100からアンローディングされる。ある種の実施形態では、複数の基板のスタックが、FOUP内に配置されたカセット内に支持され、ロボット105によって、FOUPから第1ロードロックチャンバ104に移送される。第1ロードロックチャンバ104中で真空引きが行われると、移送チャンバ106内にあるロボット107を使用して、第1ロードロックチャンバ104から、一度に1つの基板が取り出される。ある種の実施形態では、カセットが第1ロードロックチャンバ104及び/又は第2ロードロックチャンバ120内に配置されることで、複数の基板が、移送チャンバ106内のロボット107又はEFEM102内のロボット105によって受容される前に、カセット内に積み重ねられて保持されることを可能になる。しかし、別のローディング・アンローディング構成も想定される。
【0017】
[0024]基板の予洗浄は、堆積チャンバ内で堆積される膜(金属膜など)が、不純物の層によって基板の導電性金属表面エリアから電気絶縁されないように、基板表面から不純物(酸化物など)を除去するために重要である。第1及び第2の予洗浄チャンバ110、114(第1及び第2の堆積チャンバ112、116と同様の真空環境を共有している)において予洗浄を実行することにより、基板は、大気に曝露されることなく、洗浄チャンバから堆積チャンバへと移送されうる。これにより、移送中の基板上での不純物の形成が防止される。加えて、基板処理システム100内では、洗浄済みの基板を堆積チャンバに移送している間にも真空が維持されることから、真空ポンプダウンサイクルが低減される。一部の実施形態では、処理システム100は、第1ロードロックチャンバ104又は第2ロードロックチャンバ120内のカセットが空又は満杯であるときに、これらのロードロックチャンバのいずれかで真空を解除することにより、そのロードロックチャンバにおける一又は複数の基板の追加又は取り出しを可能にしうる。
【0018】
[0025]ある種の実施形態では、予洗浄チャンバ及び堆積チャンバの各々の中で、一度に1つの基板のみが処理される。あるいは、一度に複数の基板(例えば4~6の基板)が処理されることもある。かかる実施形態では、基板は、対応するチャンバ内の回転可能なパレット上に配置されうる。ある種の実施形態では、第1及び第2の予洗浄チャンバ110、114は、基板表面をエッチングするための誘導結合プラズマ(ICP)チャンバである。しかし、別種の予洗浄チャンバも想定される。ある種の実施形態では、予洗浄チャンバの一方又は両方が、PVD、化学気相堆積(CVD)、又は原子層堆積(ALD)のプロセス(窒化ケイ素の堆積など)を実行するよう構成された、膜堆積チャンバで置き換えられる。
【0019】
[0026]ICP源を含む予洗浄チャンバ内では、外部RF源によりチャンバの上部にあるコイルが通電され、チャンバ内に励起場が生成される。予洗浄ガス(アラゴンやヘリウムなど)が、外部ガス源からチャンバを通るように流される。チャンバ内の予洗浄ガス原子は、RFエネルギーの供給によってイオン化される(帯電する)。一部の実施形態では、基板は、RFバイアス源によってバイアスされる。帯電した原子は基板に引き寄せられ、これにより、基板表面のボンバード及び/又はエッチングが生じる。望ましいエッチング速度及びエッチングされる材料に応じて、アルゴン以外のガスが使用されることもある。
【0020】
[0027]ある種の実施形態では、第1と第2の堆積チャンバ112、116はPVDチャンバである。かかる実施形態では、PVDチャンバは、銅、チタン、アルミニウム、金、及び/又はタンタルを堆積させるよう構成されうる。しかし、別種の堆積プロセス及び堆積材料も想定される。
【0021】
例示的なPVDチャンバ及び使用方法
[0028]
図2Aは、ある種の実施形態による、
図1の基板処理システム100において使用されうるPVDチャンバ200の側断面図である。例えば、PVDチャンバ200は、
図1に示されている第1と第2の堆積チャンバ112、116のいずれかを表しうる。あるいは、PVDチャンバ200は、追加の堆積チャンバを表すこともある。
図2Bは、ある種の実施形態による、
図2AのPVDチャンバ200の一部分の拡大断面図である。したがって、本書では、
図2A~
図2Bについて、分かりやすくするためにまとめて説明する。
【0022】
[0029]PVDチャンバ200は、一般に、チャンバ本体202と、チャンバ本体202に連結されたリッドアセンブリ204と、リッドアセンブリ204に連結されたマグネトロン208と、チャンバ本体202内に配置されたペデスタル210と、マグネトロン208とペデスタル210との間に配置されたターゲット212と、を含む。処理中、PVDチャンバ200又は処理領域237の内部は、真空圧に維持される。処理領域237は、一般に、チャンバ本体202及びリッドアセンブリ204によって画定されることにより、主として、ターゲット212とペデスタル210の基板支持面との間に配置されることになる。
【0023】
[0030]ターゲット212に負バイアス電圧を印加するために、電源206が、ターゲット212に電気的に接続される。ある種の実施形態では、電源206は、直流DCモード電源又はパルスDCモード電源のいずれかである。しかし、別種の電源(無線周波数(RF)源など)も想定される。
【0024】
[0031]ターゲット212は、ターゲット材料212M及びバッキング板218を含み、かつ、リッドアセンブリ204の一部である。ターゲット212のターゲット材料212Mのおもて面が、処理領域237の一部分を画定する。バッキング板218は、マグネトロン208とターゲット212のターゲット材料212Mとの間に配置され(
図2B参照)、一部の実施形態では、ターゲット材料212Mがバッキング板218に接合される。典型的には、バッキング板218は、ターゲット212の一体化された一部であり、ゆえに、これらの対は、説明を分かりやすくするために、集合的に「ターゲット」と称されうる。バッキング板218と接地されたリッドアセンブリ204の支持プレート213との間での電気ショートの発生を防止するために、バッキング板218は、電気絶縁体215を使用することにより、リッドアセンブリ204の支持プレート213から電気絶縁される。
図2Aに示しているように、バッキング板218は複数の冷却チャネル233を有する。複数の冷却チャネル233は、ターゲット212を冷却するか又はターゲット212の温度を制御するためにそこを通る冷却剤(脱イオンした純水など)を受容するよう構成されている。ある種の実施形態では、バッキング板218は一又は複数の冷却チャネルを有しうる。一部の例では、複数の冷却チャネル233は、バッキング板218の本体を通って、相互接続され、かつ/又は蛇行経路を形成しうる。シールド223が、支持プレート213に連結される。シールド223は、ターゲット212からスパッタリングされた材料が、支持プレート213上に膜を堆積させることを防止する。一部の実施形態では、マグネトロン208及びターゲット212(ターゲット材料212Mとバッキング板218とを含む)は各々、三角形又はデルタ形状を有し、これにより、ターゲット212の側部エッジは3つの角部(例えば、
図2C~
図2Dに示している3つの丸い角部)を含む。
図2Cに示しているように、ターゲット212は、三角形又はデルタ形状のターゲットの一角部の先端が、中心軸291のところに来るか、又はその近隣に来るように配向される。
図2Cに示しているように、平面方向から見ると、ターゲット212の表面積は基板216の表面積を下回る。一部の実施形態では、ペデスタルの上面の表面積は、ターゲット212のおもて面の表面積を上回る。一部の実施形態では、ターゲット212のおもて面の表面積の、基板216の堆積面(例えば基板の上面)に対する比率は、約0.1と約0.4の間である。
【0025】
[0032]
図2Aに示しているように、マグネトロン208は、リッドアセンブリ204の大気圧に維持される領域内の、ターゲット212の一部分の上方に配置される。マグネトロン208は、磁石プレート209(又はヨーク)と、シャントプレートに取り付けられた複数の永久磁石211とを含む。磁石プレート209は、3つの角部を伴う三角形又はデルタ形状を有する(
図2C参照)。永久磁石211は、一又は複数の閉ループに配置される。一又は複数の閉ループの各々は複数の磁石を含んでよく、これらの磁石は、磁場が1つのループから次のループまで、又はループの種々の部分の間にわたるように、磁石の極(すなわち北(N)と南(S)の極)に対して配置され、配向される。個々の永久磁石211のサイズ、形状、磁場強度、及び分布は、一般に、後述するマグネトロン208の振動と組み合わせて使用された場合にターゲット212の表面全体に望ましい浸食パターンを生じさせるよう選択される。ある種の実施形態では、マグネトロン208は、永久磁石211の代わりに複数の電磁石を含みうる。
【0026】
[0033]ペデスタル210は、基板216を支持する上面214を有する。上面214上に基板216を保持するために、クランプ224が使用される。ある種の実施形態では、クランプ224は機械的に動作する。例えば、クランプ224の重量により、基板216が定位置に保持されうる。ある種の実施形態では、クランプ224はピンによって持ち上げられる。ピンは、クランプ224の下側と接触するよう、ペデスタル210に対して可動である。
【0027】
[0034]この例では、基板216の裏側は、ペデスタル210の上面214と接触している。一部の例では、基板216の裏側全体が、ペデスタル210の上面214と、電気的及び熱的に接触していることがある。基板216の温度は、温度制御システム232を使用して、制御されうる。ある種の実施形態では、温度制御システム232は、ペデスタル210に冷却剤を供給する外部冷却源を有する。一部の実施形態では、外部冷却源は、基板の温度を20℃未満(例えば0℃未満、例としては約-20℃以下)の温度に制御するために、極低温冷却流体(例えばGalden(登録商標))を、ペデスタル210の上面214に隣接した基板支持部分内部の熱交換素子(例えば冷却剤流路)に供給するよう構成される。ある種の実施形態では、温度制御システム232は、ペデスタル210内に、熱交換器及び/又は裏側ガス流を含む。一部の例では、冷却源は、スパッタリングプロセス中に発生する熱とは別に被加工物の温度を上昇させるための、加熱源で置き換えられうるか、又は増強されうる。スパッタリングプロセス中に基板216の温度を制御することは、予想可能でありかつ信用性の高い薄膜を取得するために重要である。ある種の実施形態では、RFバイアス源234が、スパッタリングプロセス中に基板216をバイアスするために、ペデスタル210に電気的に連結されている。あるいは、ペデスタル210は、接地され、フローティングされ、又はDC電圧源によってのみバイアスされうる。基板216をバイアスすることで、基板表面上の膜密度、接着性、材料反応性が改善されうる。
【0028】
[0035]ペデスタルシャフト221が、ペデスタル210の下側に連結される。回転ユニオン219がペデスタルシャフト221の下端部に連結されて、温度制御システム232との回転式流体連結を提供し、更にRFバイアス源234との回転式電気連結を提供する。ある種の実施形態では、ペデスタル210との流体連結と電気的連結の両方のために、ペデスタルシャフト221を通るように銅チューブが配置される。回転ユニオン219は、真空回転フィードスルーとして、磁性流体回転密封機構(「Ferrofluidic(登録商標)密封」とも称される)を含む。
【0029】
[0036]この例では、基板216はパネルである。ある種の実施形態では、ペデスタル210の上面214は、500mm以上の辺を有する(例えば510mm×515mm、又は600mm×600mmの)単一の正方形又は長方形のパネル基板に適合する。しかし、本開示の装置及び方法は、多数の異なる種類及びサイズの基板と共に実装されうる。
【0030】
[0037]ある種の実施形態では、ペデスタル210は、ペデスタル210の上面214の少なくとも一部分に対して垂直な中心軸291を中心に回転可能である。この例では、ペデスタル210は、垂直軸(z軸に対応する)を中心に回転可能である。ある種の実施形態では、ペデスタル210の回転は、途切れることなく連続する。換言すると、ペデスタル210の回転を駆動するモータ231は、基板216を特定の決まった回転位置へと回転させるための、プログラミングされた停止点を有さない。その代わりに、ペデスタル210は、膜均一性を向上させるために、ターゲット212に対して連続的に回転する。ある種の実施形態では、モータ231は電動サーボモータである。モータ231は、別個のモータ235によって、上昇及び下降しうる。モータ235は、電力駆動のリニアアクチュエータでありうる。ベローズ217が、ペデスタルシャフトを取り囲み、ペデスタル210が上昇し、下降している間、チャンバ本体202とモータ231との間に密封を形成する。
【0031】
[0038]ターゲット材料212Mの表面によって画定されたターゲット212の下側面は、ペデスタル210の上面214及び基板216の表側の方を向いている。ターゲット212の下側面はバッキング板218とは反対側に向いており、バッキング板218はPVDチャンバの大気領域又は外部領域の方を向いている。ある種の実施形態では、ターゲット212のターゲット材料212Mは、対応する膜組成物を基板216上にスパッタリングするための金属から形成される。一例では、ターゲット材料212Mは、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、及びケイ素(Si)、という群から選択された元素を含有する、純材料又は合金を含みうる。本書に記載の方法によって基板216上に堆積される材料は、上述の元素を含有する純金属、ドープされた金属、金属合金、金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物、更に、ケイ素を含有する酸化物、窒化物、又は炭化物、を含みうる。
【0032】
[0039]例示している実施形態では、ターゲット212の下側に平行な平面は、支持平面213の上面に対して、ある角度282だけ傾斜している(
図2B参照)。換言すると、ターゲット212の平面は、ペデスタル210の上面214の平面に対して、ゆえに基板216の表側に対して、傾斜している。ペデスタル210及びターゲット212の各々の本体はそれぞれ概して平面であるので、ターゲット212がペデスタル210に対して傾斜しているとも、またその逆であるとも言える。ある種の実施形態では、角度282は、約2°から約10°(例えば約3°から約5°)である。
図2Bでは、角度282は約4°である。
図2Aに示しているように、ターゲット212は、ターゲット212の径方向内側エッジ212Cからターゲット212の径方向外側エッジ212Aへと向かう方向に、下向きに傾斜している。径方向内側エッジ212Cは、径方向外側エッジ212Aと比較して、ペデスタル210の上面214から(例えば垂直方向に)遠い。一例では、ターゲット212はエッジを含み、このエッジは3つの角部を含み、3つの角部のうちの径方向内側エッジ212Cと一致している1つの角部は、形成された傾斜角度により、他の2つの角部の各々と比較して、ペデスタル210の上面から遠くに位置付けられる。傾斜角度が本書で提示している範囲を上回ることで、径方向内側エッジ212Cから径方向外側エッジ212Aまでのターゲット-基板間の間隔の変動が大きくなりすぎることがあり、その結果、望ましくない膜品質の変動がもたらされうることが分かっている。一例では、望ましくない膜品質の変動は、膜の粗さ若しくは粒径、又は基板の中心-エッジ間均一性の、望ましくない変動を含む。別の例では、望ましくない膜品質の変動は、PVDプロセスにおける、基板の表面に提供されるスパッタリング材料の量と、基板を取り囲むシールドに提供されるスパッタリング材料の量との、望ましくない比率を含みうる。傾斜角度が本書で提示している範囲を下回ると、望ましくない膜の不均一性が生じる。したがって、本書で提示している傾斜角度ウインドウにより、従来型の他の設計を凌駕するように改善された、膜堆積結果の実現が可能になる。
【0033】
[0040]この例では、ペデスタル210は実質的に水平であり、すなわちx-y平面に平行である一方、ターゲット212は非水平であり、すなわちx-y平面に対して傾斜している。しかし、ペデスタル210の別の非水平配向も想定される。
【0034】
[0041]第1アクチュエータ220は、リッドアセンブリ204に連結され、更に、第1アクチュエータ220の回転軸293を中心としてマグネトロン208を周縁方向B(
図2C参照)に振動させるためにマグネトロン208に連結される。回転軸293は、中心軸291に対して角度283及びそれに近い角度に位置付けられる。一部の実施形態では、回転軸293は、ターゲット212の表面に対して垂直である。一部の実施形態では、
図2Bに示しているように、回転軸293は、回転軸293に対して垂直な平面に対して測定した場合に、マグネトロン208(例えば、マグネトロン208の一番近いエッジ208C)から、ある距離に配置される。第1アクチュエータ220は、ロータ225及びステータ227を有する。ステータ227は支持ポスト290に連結され、支持ポスト290は、リッドアセンブリ204の支持プレート213に連結される。ロータ225は取付板229に連結され、取付板229は、ヒンジ228を通じてマグネトロン208に連結される(以下に詳述する)。一部の構成では、支持ポスト290の中心軸291は、チャンバ本体202及びリッドアセンブリ204に対して中心にある。ある種の実施形態では、第1アクチュエータ220は電動モータである。あるいは、空気圧モータが使用されることもある。一部の例では、第1アクチュエータ220は、サーボモータ又はステッピングモータでありうる。一部の例では、第1アクチュエータ220は、直接駆動モータ、ベルト駆動モータ、又はギア駆動モータでありうる。ある種の実施形態では、第1アクチュエータ220は、周縁方向の振動角度に対応するプログラム停止点を有する。ある種の実施形態では、第1アクチュエータ220は、周縁方向の振動角度に対応する、電動又は空気圧の回転アクチュエータである。しかし、別種のモータ/アクチュエータも想定される。
【0035】
[0042]例示している実施形態では、マグネトロン208の支持体230を第1アクチュエータ220に連結するために、ヒンジ228が使用される。ヒンジ228により、マグネトロン208を、バッキング板218と干渉することなく、上昇させ、回転させることが可能になる。これにより、マグネトロン208の下側及びバッキング板218の上側に、メンテナンス(ターゲット212の交換など)を行うための容易なアクセスが提供される。
【0036】
[0043]上述したように、一部の実施形態では、第1アクチュエータ220はリッドアセンブリ204に対して傾斜している。
図2Bに示しているように、第1アクチュエータ220の回転軸293は、支持ポスト290の中心軸291に対して、角度283だけ傾斜している。中心軸291と回転軸293とは、ピボット点295で交差する。この例では、第1アクチュエータ220の回転軸293は取付板229に対して垂直であり、取付板229は、支持プレート213の上面に対して角度281だけ傾斜している。角度281、283は等しく、これにより、処理中に、第1アクチュエータ220及び第2アクチュエータ222を使用してマグネトロン208をバッキング板218の表面の上を通るように平行移動させる際に、マグネトロン208の下面とバッキング板218の上面との間の距離が一定に保たれることが認識される。この例では、第1アクチュエータ220が、ターゲット212のバッキング板218に平行であることにより、ターゲット212の角度282は、第1アクチュエータ220の角度281と等しくなる。他の一部の例では、第1アクチュエータ220は、傾斜している(
図2A~
図2B参照)のではなく、垂直に(
図3A参照)、例えば中心軸291に平行に又は同一直線上に、配向されうる。
【0037】
[0044]
図2A-
図2Bを再度参照するに、第2アクチュエータ222は、マグネトロン208と第1アクチュエータ220との間に連結されて、マグネトロン208がターゲット212及びPVDチャンバ200に対して径方向「A」(
図2C参照)に振動することを可能にする。第2アクチュエータ222は、望ましい径方向振動距離に対応するストローク距離を有する、電動リニアアクチュエータである。あるいは、空気圧リニアアクチュエータが使用されることもある。ある種の実施形態では、第2アクチュエータ222は、径方向振動距離に対応するプログラム停止点を有する、電動の又は空気圧の回転モータである。一部の例では、第2アクチュエータ222は、直接駆動モータ、ベルト駆動モータ、又は主ねじアセンブリに連結されたギア駆動モータであってよく、この主ねじアセンブリは、望ましい径方向へのマグネトロン208の運動をガイドするために使用されるスライドを含みうる。しかし、別種のモータ/アクチュエータも想定される。
【0038】
[0045]バッキング板218の表面の上でのマグネトロン208の平行移動は、ターゲット212の下側の全面浸食を実現するために使用され、不具合管理に役立つ。加えて、これは、ターゲット212の特定のエリアのみが浸食される固定式磁石と比較して、ターゲット212の寿命を延ばすことにも役立つ。ある種の実施形態では、
図2Dに関連して以下に詳述するように、第1と第2のアクチュエータ220、222は、バッキング板218の裏側の両端間で一又は複数の方向にマグネトロン208のスキャン経路を制御するために、同期される。
【0039】
[0046]PVDチャンバ200又はその構成要素を制御するために、システムコントローラ250(プログラマブルコンピュータなど)がPVDチャンバ200に連結される。例えば、システムコントローラ250は、電源206、マグネトロン208、ペデスタル210、バッキング板218の冷却、第1アクチュエータ220、第2アクチュエータ222、温度制御システム232、及び/若しくはRFバイアス源234の直接制御を使用して、又は、これらに関連付けられた別のコントローラの間接制御を使用して、PVDチャンバ200の動作を制御しうる。稼働中、システムコントローラ250は、PVDチャンバ200内での処理を調整するために、構成要素それぞれからのデータ取得及びフィードバックを可能にする。
【0040】
[0047]システムコントローラ250は、プログラマブル中央処理装置(CPU)252を含み、プログラマブルCPU252は、メモリ254(例えば不揮発性メモリ)及びサポート回路256と共に動作可能である。サポート回路256(例えば、キャッシュ、クロック回路、入出力サブシステム、電源など、及びこれら組み合わせ)は、従来的に、CPU252に連結され、かつ、PVDチャンバ200の様々な構成要素に連結される。
【0041】
[0048]一部の実施形態では、CPU252は、様々なモニタリングシステム構成要素及びサブプロセッサを制御するための、産業用設定で使用される任意の形態の汎用コンピュータプロセッサのうちの1つ(プログラマブルロジックコントローラ(PLC)など)である。CPU252に連結されたメモリ254は、非一過性であり、典型的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取専用メモリ(ROM)、フロッピーディスクドライブ、ハードディスク、又は他の任意の形態のローカル若しくはリモートのデジタル記憶装置といった、容易に入手可能なメモリのうちの一又は複数である。
【0042】
[0049]本書では、メモリ254は、命令を包含するコンピュータ可読記憶媒体(例えば不揮発性メモリ)の形態のものであり、この命令は、CPU252によって実行されると、PVDチャンバ200の動作を促進する。メモリ254内の命令は、プログラム製品(例えば、ミドルウェアアプリケーション、機器ソフトウェアアプリケーションなどといった、本開示の方法を実装するプログラム)の形態nのものである。プログラムコードは、いくつかの異なるプログラミング言語のうちのいずれかに適合しうる。一例では、本開示は、コンピュータシステムと共に使用される、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたプログラム製品として実装されうる。プログラム製品のプログラム(複数可)が、(本書に記載の方法を含む)実施形態の機能を定義する。
【0043】
[0050]例示的なコンピュータ可読記憶媒体は、(i)情報を恒久的に記憶する、書込不能記憶媒体(例えば、CD-ROMドライブによって可読なCD-ROMディスク、フラッシュメモリ、ROMチップ、又は、任意の種類のソリッドステート不揮発性半導体メモリといった、コンピュータ内の読取専用メモリデバイス)、及び、(ii)記憶された情報が変更可能な、書込可能記憶媒体(例えば、ディスケットドライブ若しくはハードディスクドライブ内のフロッピーディスク、又は任意の種類のソリッドステートランダムアクセス半導体メモリ)
を含むが、これらに限定されるわけではない。かかるコンピュータ可読記憶媒体は、本書に記載の方法の機能を指示するコンピュータ可読命令を保持している場合には、本開示の実施形態となる。
【0044】
[0051]稼働中、PVDチャンバ200は、排気され、アルゴンガスで再充填される。電源206が、ターゲット212に負バイアス電圧を印加して、チャンバ本体202の内部に電場を生成する。この電場は、ガスイオンを引き寄せるよう作用し、ガスイオンとターゲット212の露出面との衝突により電子が生成される。かかる電子は、ターゲット212の下側付近での高密度プラズマの生成及び維持を可能にする。プラズマは、マグネトロン208によって発生する磁場により、ターゲット材料212Mの表面の付近に集中する。磁場は、電子トラップとして作用する閉ループ環状経路を形成する。この電子トラップは、ターゲット材料212Mから射出された二次電子の軌道をサイクロイド経路に再形成し、閉じ込めゾーン内のスパッタリングガスのイオン化の確率を大幅に高める。ターゲット212の下側付近に閉じ込められたプラズマは、アルゴン原子、正電荷を帯びたアルゴンイオン、自由電子、及びターゲット材料212Mからスパッタリングされた中性原子(すなわち非イオン化原子)を含有する。プラズマ中のアルゴンイオンがターゲット表面に当たり、ターゲット材料の原子を射出させる。これらの原子は基板216に向かって加速され、基板表面に薄膜を堆積させる。
【0045】
[0052]通常、不活性ガス(アルゴンなど)がスパッタリングガスとして用いられる。なぜなら、不活性ガスは、ターゲット材料と反応しない又はどのようなプロセスガスとも結合しない傾向があるから、また、分子量が比較的高いのでスパッタリング及び堆積の速度を高めるからである。
【0046】
[0053]
図2Cは、ある種の実施形態による、
図2Aのチャンバ本体202に対する重なったターゲット212と基板216との上面図である。ある種の実施形態では、ターゲット212の径方向外側エッジ212Aは、基板216の角部を約1インチから約3インチ(例えば約1.5インチ)の距離越えたところに延在する。ある種の実施形態では、ターゲット212の径方向内側エッジ212Cは、支持ポスト290の中心軸291(チャンバ本体202の径方向中心と一致していることがある)から、約0.25インチから約0.75インチ(例えば約0.5インチ)の距離のところに離間している。
【0047】
[0054]
図2Dは、ある種の実施形態による、
図2Aの重なったマグネトロン208とターゲット212との上面図である。
図2Dのターゲット212の周縁を取り囲んでいる構造物はバッキング板218の一部であることに留意されたい。
図2C~
図2Dに示しているように、ターゲット材料212M、バッキング板218、及びマグネトロン208は各々、3つの丸い角部を有する三角形又はデルタ形状を有し、3つの丸い角部のうちの1つは、中心軸291の付近に又は中心軸291に実質的に隣接して位置付けられる。
図2Dに示しているように、ターゲット212及びマグネトロン208は、マグネトロン208がターゲット212の実質的に全ての活性領域(例えばターゲットのターゲット材料212Mの部分)の上で平行移動することが可能になるように、成型され、配向される。一部の実施形態では、ターゲット212とマグネトロン208とは、以下で詳述するように、実質的に同じ形状を有する。
図2Dに示しているように、マグネトロン208の半径R1はターゲット212の対応する半径R2よりも小さく、これにより、マグネトロン208が、上述のように、径方向に平行移動することが可能になる。
図2Dに示しているように、マグネトロン208の径方向外側エッジ208Aは、ターゲット212の対応する径方向外側エッジ212Aを下回るか、それと等しい曲率半径を有する。一部の実施形態では、これらの曲率半径は、約40%以下(例えば20%以下)異なっている。マグネトロン208の径方向外側エッジ208Aの弧長は、ターゲット212の径方向外側エッジ212Aの対応する弧長よりも小さく、これにより、マグネトロン208が、上述のように、周縁方向に平行移動することが可能になる。
図2Dに示しているように、マグネトロン208の両側のエッジ208B及び208Dのそれぞれと、対応するターゲット212の両側のエッジ212B及び212Dとは、それぞれ、互いにほぼ平行に配向される。一部の実施形態では、エッジ208Bと212B、及びエッジ208Dと212Dの、それぞれの間の角度は、約5°以下の範囲内(例えば約0°~約5°、例としては約0°、すなわち互いに平行)である。
【0048】
[0055]
図2Dに示しているように、第1と第2のアクチュエータ220、222は、スキャン経路226に沿ってマグネトロン208をスキャンするために同期されうる。第1と第2のアクチュエータ220、222は、マグネトロン208がスキャン経路226に沿って進むようにマグネトロン208の平行移動を制御するために、(例えばシステムコントローラ250によって)同期されうる。スキャン経路226は、例示のためだけに、時計回り方向に一度に1段階ずつ進むように図示されていることに留意されたい。しかし、スキャン経路226は、本書で提示している本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、スキャン経路226の任意の部分(すなわちスキャン経路セグメント)に沿った、任意の望ましい方向への、一又は複数の往復運動を含みうる。一部の実施形態では、スキャン経路226は、上述したように、マグネトロン208を径方向と周縁方向の少なくとも一方に平行移動させるプロセスを含み、ゆえに、例えば
図2Dに示しているスキャン経路のようなスキャン経路226(本書では多くの場合ループ状経路と称される)を含む。一部の実施形態では、マグネトロン208の平行移動は、マグネトロン208の回転運動(例えば、従来型の円形ターゲットを含むPVDチャンバ設計において一般的な、マグネトロン208の範囲内に位置付けられた回転軸を中心とした処理中のマグネトロン208の回転運動又はねじれ運動)を含まない。スキャン経路226は、円弧状の周縁成分「B」(
図2C参照)であって、第1アクチュエータ220の作動により提供される周縁方向運動によって、主に
図2Cのy軸方向と概して位置合わせされた、周縁成分「B」を含む。加えて、スキャン経路226は、径方向成分「A」(
図2C参照)を含む。
図2Cでは、スキャン経路226進行中のある時点において第2アクチュエータ222がx軸と位置合わせされることによって、径方向成分「A」がx軸方向に位置合わせされて図示されている。
図2Dに示している例では、スキャン経路226は、一連のスキャン経路セグメント(一連の連なった矢印で示されている)として図示されている、複雑なループ状のスキャン経路226を形成している。スキャン経路226は、一部の実施形態では、2つのセグメント(例えば1つの往復運動)を含むが、典型的には、2つ以上のセグメントを含む。これらのセグメントは、処理中に、ターゲット212の両端間でマグネトロン208が平行移動することにより、ターゲット面の全エリアからターゲット材料212Mが除去されることで、粒子発生の低減と、ターゲット材料の利用の向上とを確保するために、使用される。スキャン経路226は、正確に制御され、それぞれのモータの振動数及びストローク長に基づいて多種多様な異なる形状のセグメントに合わせて適応することが可能である。ある種の例では、マグネトロン208のスキャンは、ターゲット212の下側の総浸食エリアを増大させるよう制御されうる。ある種の例では、マグネトロン208のスキャンは、基板表面に堆積される膜の均一性を制御するようプログラムされうる。ある種の例では、マグネトロン208のスキャン経路は、基板表面上の堆積膜の厚さに変動があればそれを相殺するよう調整されうる。
【0049】
[0056]ある種の実施形態では、第1と第2のアクチュエータ220、222は、互いに同期されることに加えて、基板表面上に堆積される膜の均一性を更に制御するために、ペデスタル210の回転とも同期される。
【0050】
代替的なPVDチャンバ及び使用方法
[0057]
図3Aは、
図3Bに示しているPVDチャンバ300の上面図に記載の切断線を適用することによって形成された、PVDチャンバ300の断面図である。PVDチャンバ300は、ある種の実施形態により、
図1の基板処理システム100で使用されうる。例えば、PVDチャンバ300は、
図1に示されている第1と第2の堆積チャンバ112、116のいずれかを表しうる。あるいは、PVDチャンバ300は、追加の堆積チャンバを表すこともある。
図3Bは、ある種の実施形態による、
図3AのPVDチャンバ300の概略上面図である。したがって、本書では、
図3A~
図3Bについて、分かりやすくするためにまとめて説明する。
【0051】
[0058]PVDチャンバ300は、単一ターゲットスパッタリングだけが可能なPVDチャンバ200(
図2A参照)とは対照的に、一又は複数の異なるターゲットから同時に共スパッタリングを行うことを可能にする。PVDチャンバ300は、リッドアセンブリ204に連結された第2マグネトロン308、及び、第2マグネトロン308とペデスタル210の上面214との間に配置された第2ターゲット312を含む。第2マグネトロン308の支持体330を第1アクチュエータ320に連結するために、ヒンジ328が使用される。第2ターゲット312は、上述の第1ターゲット212と同様に傾斜している。ある種の実施形態では、第1と第2のターゲット212、312は同じ材料から形成される。ある種の実施形態では、第1と第2のターゲット212、312は別々の材料から形成される。ある種の実施形態では、第1と第2のターゲット212、312は、基板の別々のエリアに同じスパッタ材料を同時に提供することが可能である。
図2Aには1つのターゲットのみを示し、
図3Aには2つのターゲットを示しているが、本開示の実施形態は、図示している実施形態に特に限定されるわけではない。他の一部の実施形態では、PVDチャンバは2を上回る数のターゲットを含む。かかる実施形態では、PVDチャンバは、1つのターゲットの上に少なくとも1つのマグネトロンが位置付けられるようにターゲットの上に位置付けられたマグネトロンを含む。ある種の実施形態では、各ターゲットは、上述の第1と第2のターゲット212、312と同様に、中心軸291、393に向かって径方向に傾斜している。
【0052】
[0059]PVDチャンバ300では、第1アクチュエータ320は、リッドアセンブリ204に連結され、更に、対応するターゲット212、312に対して、中心軸291、393を中心とした周縁方向「B」、「B’」にマグネトロン208、308の両方を振動させるように、マグネトロン208、308の両方に連結される。マグネトロン208、308は、ロータ225と同じ方向(例えば時計回り又は反時計回り)に回転する。
図3Aに示しているように、第1アクチュエータ320はリッドアセンブリ204と位置合わせされ、マグネトロン208、308は各々、第1アクチュエータ320に対して角度282だけ傾斜することで、対応するターゲット212、312のバッキング板218、318に平行に位置合わせされている。この例では、第1アクチュエータ320の中心軸393は、支持ポスト290の中心軸291と一致している。これは、一部の実施形態では、第1アクチュエータ220が角度283だけリッドアセンブリ204に対して傾斜している、PVDチャンバ200(
図2A~
図2B参照)とは対照的である。
【0053】
[0060]PVDチャンバ300では、第2アクチュエータ322は、マグネトロン308と第1アクチュエータ320との間に連結されて、マグネトロン308が、ターゲット312及びPVDチャンバ300に対して径方向A’(
図3B参照)に振動することを可能にする。第2アクチュエータ322は、上述の第2アクチュエータ222の作動と同様に、第1アクチュエータ320とは個別に作動する。一部の実施形態では、各マグネトロン208、308は、上述のように、径方向と周縁方向の少なくとも一方に平行移動する。各マグネトロン208、308のスキャン経路は、円弧状の周縁成分「B」、「B’」であって、第1アクチュエータ320の作動によって提供される周縁方向運動により、主に
図3Bのy軸方向と概して位置合わせされた、周縁成分「B」、「B’」を含む。加えて、各マグネトロン208、308のスキャン経路は、対応する第2アクチュエータ222、322の作動によりx軸方向に位置合わせされた、径方向成分「A」、「A’」を含む。スキャン経路は、マグネトロンが、それぞれのモータの振動数及びストローク長の調整に基づいて、多種多様な異なる形状を有しうる一又は複数の経路に沿って平行移動しうるように、正確に制御される。マグネトロン208の径方向成分「A」と、マグネトロン308の径方向成分「A’」とは、互いとは個別に制御される。しかし、マグネトロン208の周縁方向成分「B」と、マグネトロン308の周縁方向成分「B’」とは、上述のように、第1アクチュエータ320に連結されることによってつながっている。
【0054】
[0061]
図4は、ある種の実施形態による、PVDチャンバを使用して基板を処理する方法400を示す図である。PVDチャンバ200は、以下の例では、例示としてのみ説明されていることに留意されたい。工程402において、ペデスタル210の上面214上に配置された基板216が、モータ231を使用することにより、一又は複数のターゲット(例えばターゲット212又はターゲット212及び312)に対して、回転軸を中心に回転する。一部の実施形態では、ペデスタル210は、膜均一性を向上させるために、一又は複数のターゲットに対して連続的に回転する。
【0055】
[0062]工程404において、第1ターゲット212から材料がスパッタリングされて、回転している基板216上に膜を堆積させる。第1ターゲット212は、ペデスタル210に対して、角度282だけ傾いている(
図2B参照)。PVDチャンバ300の構成が使用される場合、基板の回転中に、第2ターゲット312からの材料も、基板216上にスパッタリングされうる。第1と第2のターゲット212、312の各々からの材料は、基板216の別々のエリアの上に同時にスパッタリングされうる。
【0056】
[0063]工程406において、第1マグネトロン208は、ヒンジ228及び支持体230を介してマグネトロン208に連結された第1アクチュエータ220を使用することにより、第1ターゲット212に対して周縁方向Bに平行移動する。PVDチャンバ300の構成が使用される場合、第1マグネトロン208と第2マグネトロン308の両方が、ヒンジ228、328及び支持体230、330によって第1マグネトロン208及び第2マグネトロン308に連結された第1アクチュエータ320を使用することにより、周縁方向Bに同時に平行移動する。
【0057】
[0064]工程408において、第1マグネトロン208は、支持体230を介してマグネトロン208に連結された第1アクチュエータ220を使用することにより、第1ターゲット212に対して径方向Aに平行移動する。PVDチャンバ300の構成が使用される場合、第1マグネトロン208と第2マグネトロン308の両方が、システムコントローラ250、支持体230を介して第1マグネトロン208に連結された第2アクチュエータ222、及び支持体330を介して第2マグネトロン308に連結された第2アクチュエータ322を使用することにより、径方向Aに同時に平行移動しうる。一又は複数のマグネトロンの平行移動の周縁方向B成分と径方向A成分とは、システムコントローラ250を使用することによって、互いとは個別に制御されうる。方法400の一部の実施形態では、工程406と工程408とは、実質的に同時に実行される。
【0058】
[0065]加えて、方法400の一部の実施形態では、工程402、404、406、及び408が、実質的に同時に実行される。方法400の一部の実施形態では、工程402、406、及び408は、工程404の開始の前に開始される。方法400の一部の実施形態では、工程402、404、406、及び408は連続して開始される。方法400の一部の実施形態では、工程402、404、406、及び408は、不連続に開始される。
【0059】
[0066]以上の記述は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱せずに本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】