(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20241018BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20241018BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20241018BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241018BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20241018BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08L67/02 ZAB
C08L67/04 ZBP
C08K5/1515
C08K3/013
C08L101/16
C08J5/00 CFD
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522575
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 KR2022020034
(87)【国際公開番号】W WO2023106887
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0176953
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0032856
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウソン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ピョン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、セ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、スンイン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ムン-コン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F071AA43
4F071AA45
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4F071AA84
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4J002CF03W
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4J200DA18
4J200DA22
4J200EA11
4J200EA21
4J200EA22
(57)【要約】
本発明は、樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品に関するものである。本発明の樹脂組成物は生分解性ポリエステルを使用して、生分解性に優れながらも、ホットシーリング時低い温度でも高いシーリング強度を実現することができるホットシーリングフィルム、ホットシーリングバック(bag)などの樹脂製品を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、
ポリ乳酸0.5~60重量部、および
エポキシ化カルダノール0.1~15重量部を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、
前記ポリ乳酸1~45重量部を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT):ポリ乳酸の重量比率が6.5:3.5以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT):ポリ乳酸の重量比率が9.5:0.5以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、
前記エポキシ化カルダノール0.2~10重量部を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記エポキシ化カルダノールは分子内に下記化学式1で表されるグループを一つ以上含む、請求項1に記載の樹脂組成物:
【化7】
上記化学式1中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、*は上記化学式1のグループがベンゼン環の炭素原子で連結された1価ラジカルであることを意味する。
【請求項7】
前記エポキシ化カルダノールは分子内に下記化学式1で表されるグループを二つ含む、請求項1に記載の樹脂組成物:
【化8】
上記化学式1中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、*は上記化学式1のグループがベンゼン環の炭素原子で連結された1価ラジカルであることを意味する。
【請求項8】
前記エポキシ化カルダノールは、下記化学式2で表される化合物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物:
【化9】
上記化学式2中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、nは0~10の整数であり、mは0~10の整数であり、Rは水素またはメチル基である。
【請求項9】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、前記エポキシ化カルダノール0.01~10重量部を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、無機充填材1~50重量部を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のうちのいずれか一項による樹脂組成物を含む、生分解性樹脂成形品。
【請求項12】
ISO 527基準によって測定した引張強度値が250~500kgf/cm
2である、請求項11に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項13】
ISO 527基準によって測定した伸び率値が300%以上である、請求項11に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項14】
ASTM F1921基準によって2N条件で測定したホットシーリング開始温度値が80℃~120℃である、請求項11に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項15】
生分解性フィルムである、請求項11に記載の生分解性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性高分子樹脂は機械的特性および化学的特性に優れて飲用水容器、医療用、食品包装紙、食品容器、自動車成形品、農業用ビニルなど多様な分野で使用されている。
【0003】
熱可塑性高分子樹脂は、その中でもポリエチレンフィルムなどは機械的物性に優れ、人体に無害でありながらも、熱を加えれば持続的に変形が可能であるため、食品包装用ホットシーリングバックや、農業用マルチングフィルムなどとして多く用いられる。
【0004】
食品包装用ホットシーリングバックは、食品などを真空包装するのに多く用いられ、低いシーリング温度でも優れた接合強度を達成することができる、ポリエチレンフィルムなどが多く使用されている。
【0005】
前記農業用フィルムはマルチング農法に多く使用される。マルチングとは、農作物を栽培する時、土壌の表面を覆う資材をいう。多様な種類の資材で土壌の上面を被覆すれば、雑草の生育を遮断することができ、病虫害を予防することができ、これにより農薬使用を節減することができる。また、土壌の温度を容易に調節することができ、土壌内有益なバクテリアを増殖させることもでき、土壌浸食を防止し土壌水分を維持することができる。
【0006】
このようなマルチング資材としては例えば、わら、牧草など作物の葉や、ポリオレフィン系フィルムなどが挙げられ、一般にはポリエチレンフィルムなどの合成樹脂が多く使用される。
【0007】
しかし、前記のように食品包装用ホットシーリングバックやマルチング材料として多く使用されるポリエチレンフィルムは自然環境で分解されず、再利用にも限界がある。特に、最近は捨てられたポリエチレンフィルムなどのプラスチックなどが海に流入し、海で還流および太陽光によって大きさが非常に小さい微細プラスチックに破砕される現象が知られている。
【0008】
現在、このような微細プラスチックは、数十億~数百億以上の数えられない量が海に浮遊していると知られており、これは海の生物の体内に流入し、生態系内で蓄積されて、食物連鎖全体に影響を与えることになる。
【0009】
したがって、従来使用されていた熱可塑性プラスチックの代替材に対する研究が必要である。
【0010】
これを解決するために、最近、光分解性または生分解性高分子からなるマルチングフィルムの開発が活発に試みられているが、まだ生分解度が充分でなく、機械的物性が既存のポリエチレンフィルムに至らないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書は、ホットシーリング時低い温度でも高いシーリング強度を実現することができる樹脂製品のための生分解性樹脂組成物を提供しようとする。
【0012】
また、本明細書は、前記樹脂組成物を含む、生分解性樹脂成形品を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、ポリ乳酸0.5~60重量部、およびエポキシ化カルダノール0.1~15重量部を含む、樹脂組成物を提供する。
【0014】
前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記ポリ乳酸約1~約45重量部を含むことができる。
【0015】
前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT):ポリ乳酸の重量比率が約6.5:3.5以上であってもよい。
【0016】
前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT):ポリ乳酸の重量比率が約9.5:0.5以下であってもよい。
【0017】
前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記エポキシ化カルダノール0.2~10重量部を含むことができる。
【0018】
前記エポキシ化カルダノールは分子内下記化学式1で表されるグループを一つ以上含むことができる。
【0019】
【0020】
上記化学式1中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、*は上記化学式1のグループがベンゼン環の炭素原子で連結された1価ラジカルであることを意味する。
【0021】
前記エポキシ化カルダノールは分子内下記化学式1で表されるグループを二つ含むことができる。
【0022】
【0023】
上記化学式1中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、*は上記化学式1のグループがベンゼン環の炭素原子で連結された1価ラジカルであることを意味する。
【0024】
前記エポキシ化カルダノールは、下記化学式2で表される化合物を含むことができる。
【0025】
【0026】
上記化学式2中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、nは0~10の整数であり、mは0~10の整数であり、Rは水素またはメチル基である。
【0027】
前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、前記エポキシ化カルダノール0.01~10重量部を含むことができる。
【0028】
前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、無機充填材約1~約50重量部を含むことができる。
【0029】
また、本明細書は、前述の樹脂組成物を含む生分解性樹脂成形品を提供する。
【0030】
前記生分解性樹脂成形品は、ISO 527基準によって測定した引張強度値が約250~約500kgf/cm2または約250kgf/cm2~約400kgf/cm2であってもよい。
【0031】
発明の一実施形態によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ISO 527基準によって測定した伸び率値が約300%以上であってもよい。
【0032】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、生分解性フィルムであってもよい。
【0033】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、ホットシーリングフィルムであってもよい。
【0034】
前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921基準によって2N条件で測定したホットシーリング開始温度値が約80℃~約120℃、または約100℃~約120℃、または約105℃~約116℃、または約105℃~約115℃であってもよい。
【0035】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0036】
単数の表現は、文脈上明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【0037】
本明細書で、"含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらの組み合わせを説明するためのものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、これらの組み合わせまたは付加可能性を予め排除するのではない。
【0038】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の“上に”または“の上に”形成されると言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できることを意味する。
【0039】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有することができるところ、特定実施形態を例示し下記で詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0040】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0041】
本発明の発明者らは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸(PLA)をブレンディングしたブレンディング樹脂で、エポキシ化カルダノールを共に使用する場合、伸び率、引張強度などの機械的物性が非常に優れ、ホットシーリング時に低い温度でも高い接合強度を実現することができるという点を発見して、本発明を完成することになった。
【0042】
本発明の一側面による樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、ポリ乳酸0.5~60重量部、およびエポキシ化カルダノール0.1~15重量部を含む。
【0043】
前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記ポリ乳酸約1~約45重量部を含むことができ、約1重量部以上、または約5重量部以上、または約10重量部以上、または約45重量部以下、または約43重量部以下を含むことができる。
【0044】
前記樹脂組成物内でポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT):ポリ乳酸の重量比率が約6.5:3.5以上、または約6.9:3.1以上、または約7.5:2.5以上であってもよい。
【0045】
前記樹脂組成物内で、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT):ポリ乳酸の重量比率が約9.5:0.5以下、または約9.1:0.9以下であってもよい。
【0046】
ポリ乳酸が過度に少なく含まれる場合、PBATの機械的物性を向上させるための効果が示されないことがあり、ポリ乳酸が過度に多く含まれる場合、硬性が高まって、樹脂組成物の伸び率が低下するという問題点が発生することがあり、特に、前記樹脂組成物を生分解性フィルムなどに加工する場合に加工性などが低下することがあり、マルチングフィルム、ホットシーリングフィルムなどの用途として使用する時要求される物性を実現し難いという問題点が発生することがある。
【0047】
ポリエステル系樹脂は機械的特性および化学的特性に優れて多様な産業分野で使用されている。その中でも、ポリブチレンアジペートテレフタレート(Polybutylene Adipate Terephthalate、PBAT)は軟質のポリエステルで生分解が可能であるため、包装材、農業用フィルムに主に使用されるポリオレフィン(polyolefin)系高分子代替材として脚光を浴びている。
【0048】
しかし、当該用途として軟質のPBATを単独で使用するのにはPBATの機械的物性が多少不足するため、主に硬質のポリ乳酸(Polylactic acid、PLA)とブレンディング(blending)して使用するか;PBATを単独で使用しカーボンブラック(carbon black)のような有機充填材(filler)をコンパウンディングして使用している。
【0049】
但し、PBATとPLAは相溶性が非常に低いため、ブレンディング時相溶化剤を必ず使用しなければならない。
【0050】
よって、本発明の一側面による樹脂組成物は相溶化剤成分として、エポキシ化カルダノールを含む。
【0051】
エポキシ化カルダノールは、その分子構造的特徴によって、高分子鎖の柔軟性を増加させることができ、PBATとPLAの相溶性を高めることができ、このような組成物を用いてフィルムを製造した時、フィルム界面間の鎖拡散およびもつれを増加させることができる。
【0052】
これにより、本発明の一側面による樹脂組成物は非常に高い伸び率および引張強度などを達成することができると同時に、ホットシーリング時に低い温度でも高い接合強度を実現することができる。
【0053】
前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記エポキシ化カルダノール約0.1~約15重量部、または約0.1重量部以上、または約0.2重量部以上、または約0.3重量部以上、または約0.4重量部以上、または約15重量部以下、または約10重量部以下、または約5重量部以下、または約4.5重量部以下に含むことができる。
【0054】
前記エポキシ化カルダノールは、分子内に下記化学式1で表されるグループを一つ以上含むことができる。
【0055】
【0056】
上記化学式1中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、*は上記化学式1のグループがベンゼン環の炭素原子で連結された1価ラジカルであることを意味する。
【0057】
前記化学式1で表されるグループを一つ以上含むエポキシ化カルダノールは、エポキシグループおよびベンゼン環を含むその分子構造的特徴によって、高分子鎖の柔軟性を増加させることができ、PBATとPLAの相溶性を高めることができ、このような組成物を用いてフィルムを製造した時、フィルム界面間の鎖拡散およびもつれを増加させることができる。
【0058】
前記エポキシ化カルダノールは、分子内に下記化学式1で表されるグループを二つ含むことができる。
【0059】
【0060】
上記化学式1中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、*は上記化学式1のグループがベンゼン環の炭素原子で連結された1価ラジカルであることを意味する。
【0061】
前記化学式1で表されるグループを二つ含むエポキシ化カルダノールは、エポキシグループの反応性によって、二つのエポキシグループとPBATあるいはPLAの反応が行われ、これにより、鎖拡散およびもつれをさらに大きく増加させることができる。
【0062】
前記エポキシ化カルダノールは、下記化学式2で表される化合物を含むことができる。
【0063】
【0064】
上記化学式2中、EAは炭素数2~5のエポキシ化アルコキシであり、nは0~10の整数、または1以上、または3以上、または10以下、または8以下の整数であり、mは0~10の整数、または1以上、または3以上、または10以下、または8以下の整数であり、Rは水素またはメチル基である。
【0065】
前記のような化学式2で表される化合物は、2つのエポキシグループを含み、分子内にアルキルグループとベンゼン環を全て含んで、高分子鎖の柔軟性と剛性を適切に増加させることができ、PBATとPLAの相溶性を高めることができる。
【0066】
前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、前記エポキシ化カルダノール約0.01重量部~約10重量部、または約0.1重量部~約5重量部、または約0.1~約1重量部を含むことができる。
【0067】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸に対比してエポキシ化カルダノールが過度に少なく含まれる場合、PBATとPLAの相溶性が低下して、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸間にブレンディングがよく行われないという問題点が発生することがあり、過度に多く含まれる場合、むしろ機械的物性が低下するという問題点が発生することがある。
【0068】
そして、前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記エポキシ化カルダノールと表示される化合物約0.01重量部~約10重量部、または約0.1重量部~5重量部を含むことができる。
【0069】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)に対比してエポキシ化カルダノールが過度に少なく含まれる場合、PBATとPLAの相溶性が低下して、ブレンディングが行われないという問題点が発生することがあり、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)に対比してエポキシ化カルダノールが過度に多く含まれる場合、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)主鎖の平均的な長さが過度に長くなる可能性が高まって、樹脂組成物の加工性が悪化してブローンフィルム成形が難しくなることがあり、伸び率など樹脂組成物の機械的物性が低下するという問題点が発生することがある。
【0070】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)に対比してエポキシ化カルダノールが前記範囲内に含まれる場合、適切な分子量増加効果と共にPBATとPLAの相溶性が増加することになって、加工性および機械的物性に優れることになり、特に無機添加剤などを添加した時にも、優れた加工性および高い伸び率値などの特性を維持することができるようになる。
【0071】
その他、発明の一実施形態による樹脂組成物は、その他の添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、本発明の属する技術分野で、即ち、熱可塑性高分子分野で樹脂組成物の成形時に使用する一般的な添加剤を特別な制限なく使用することができる。
【0072】
添加剤は、熱安定剤、UV安定剤などを含むことができる。
【0073】
そして、前記添加剤は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、約1~約30重量部で含まれてもよい。
【0074】
そして、前記樹脂組成物は、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の合計100重量部に対して、無機充填材約1~約50重量部、または約10~約30重量部、または約15~約25重量部を含むことができる。
【0075】
無機充填材は、樹脂組成物の機械的物性および加工性を向上させることができる。無機充填材が過度に少なく含まれる場合、前述の有利な効果が示されないという問題点が発生することがあり、無機充填材が過度に多く含まれる場合、樹脂組成物の機械的物性と加工性がむしろ低下するという問題点が発生することがある。
【0076】
また、本明細書は前述の明細書全体で説明した樹脂組成物のうちのいずれか一つ以上を含む生分解性樹脂成形品を提供する。
【0077】
そして、前記生分解性樹脂成形品は生分解性フィルムであってもよく、具体的には、ブローン工程によって形成された、生分解性ブローンフィルムであってもよい。
【0078】
前記生分解性樹脂成形品は、ISO 527基準によって測定した引張強度値が約250kg/cm2~約500kg/cm2、または約250kg/cm2~約400kg/cm2で、非常に優れた引張強度値を有することができる。
【0079】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、ISO 527基準によって測定した伸び率値が約300%以上、または約350%以上であってもよい。
【0080】
このような優れた機械的物性によって、農業用マルチングフィルムや、包装材などの用途として使用することができる。
【0081】
そして、他の一例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ホットシーリングフィルム、さらに具体的には、ブローン工程によって形成された、ホットシーリングフィルムであってもよい。
【0082】
発明の一実施形態によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921基準によって2N条件で測定したホットシーリング開始温度値が約80℃~約120℃、または約100℃~約120℃、または約105℃~約115℃であってもよい。
【0083】
接合強度2Nは、ホットシーリングを評価するための最小接合強度値であって、接合強度が2N以上である場合、ホットシーリングが特別な問題なく実現されたと見ることができる。本発明の一例による生分解性樹脂成形品は、従来に比べて非常に低い温度でもホットシーリングを実現することができる。
【0084】
発明の一実施形態によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921基準によって約112℃条件で測定したシーリング強度値が約2N以上、または約2N~約4Nであってもよい。
【0085】
発明の他の一実施形態によれば、前記生分解性樹脂成形品はASTM F1921基準によって約114℃条件で測定したシーリング強度値が約2N以上、または約2N~約4Nであってもよい。
【0086】
前記のように、本発明の一例による生分解性樹脂成形品は、従来に比べて非常に低い温度でも高いシーリング強度値を実現することができる。
【発明の効果】
【0087】
本発明の樹脂組成物は、生分解性に優れながらも、機械的物性に優れ、またホットシーリング時低い温度でも高いシーリング強度を実現することができるホットシーリングフィルム、ホットシーリングバック(bag)などの樹脂製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳しく述べることにする。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決定されるのではない。
【実施例】
【0089】
<実施例>
[使用した試料の情報]
ポリブチレンアジペート-コ-テレフタレートとしては、Tunhe社のTH801T製品を準備した。
融点:119℃、溶融指数(190℃ 2.16Kg):2.7g/10min
【0090】
ポリ乳酸としては、ESUN社(AI-1001)製品を準備した。
密度:1.24g/cm3、溶融指数(190℃ 2.16Kg):3.82g/10min
【0091】
エポキシ化カルダノールとしては、Cardolite社のNC-541Sを使用した。
【0092】
エポキシ化大豆油としては、松原産業のSONGSTABE-700を使用した。
【0093】
無機添加剤:
無機添加剤としては、炭酸カルシウムを使用した。
炭酸カルシウム:オミア(Omya)製品、Hydrocarb95T
【0094】
[樹脂組成物(ペレット)の製造]
下記表1の組成によって樹脂組成物を製造した。具体的には、二軸押出機(32mm)に前記PBAT、PLA、およびエポキシ化カルダノール化合物を下記表の組成によって投入し、バレル温度:200℃、フィード:30kg/hr、300rpmの条件で押出を行って、樹脂組成物をペレット形態に製造した。
【0095】
【0096】
上記表1で、相溶化剤成分として、比較例の場合、エポキシ化大豆油を使用し、実施例の場合、エポキシ化カルダノールを使用した。
【0097】
[ブローンフィルム製造]
前記で製造されたペレットに対して単軸押出機(Single Screw Extruder、Blown Film M/C、19パイ、L/D=25)を用いて、押出温度約160℃~約170℃で0.05mmの厚さになるように成形してブローンフィルムを製造した。膨張比(Blown-Up Ratio)は約1.8、線束は約5m/minで行った。
【0098】
[物性測定]
(引張強度、弾性係数、および伸び率測定)
万能試験機(製造社:GALDABINI、モデル名:QUASUR50)を用いて、ISO527基準によって前記フィルムの引張強度値を測定した。
試片は、Bar形態、横×縦(10mm×150mm)で製造した。
【0099】
(ホットシーリング開始温度、シーリング強度測定、および評価)
前記で製造されたブローンフィルムに対して、ホットタック試験機(製造社:Swiss Management、モデル名:Model 4000)を用いて、ASTM F1921基準によって、シーリング温度によるシーリング強度値を測定し、2Nになる温度値をホットシーリング開始温度値に決定した。
そして、シーリング温度115℃を基準にして、シーリング強度値が2N以上を満足する場合、良好、満足しない場合、不良と表記した。
【0100】
前記測定の結果を下記表2に整理した。
【0101】
【0102】
上記表2を参照すれば、本発明の一実施形態による樹脂組成物は、引張強度および伸び率などの物性値が比較例より大体優れながらも、シーリング特性と関連して、低い温度でもホットシーリングが可能であるという点を明確に確認することができる。
【0103】
比較例の場合、実施例より機械的物性も大体劣位にあり、シーリング強度特性と関連しても、ホットシーリング開始温度が相対的に高くて、シーリングのためにより多くのエネルギーが必要であるということを確認することができた。
【0104】
[樹脂組成物(ペレット)の製造]
PBATおよびPLA組成比率による差異点を確認するために、下記表3の組成によって樹脂組成物を製造した。具体的に、二軸押出機(32mm)に前記PBAT、PLA、およびエポキシ化カルダノール化合物を下記表の組成によって投入し、バレル温度:200℃、フィード:30kg/hr、300rpmの条件で押出を行って、樹脂組成物をペレット形態に製造した。
【0105】
【0106】
[物性測定]
(引張強度、弾性係数、および伸び率測定)
万能試験機(製造社:GALDABINI、モデル名:QUASUR50を)用いて、ISO 527基準によって前記フィルムの引張強度値を測定した。
試片は、Bar形態、横×縦(10mm×150mm)で製造した。
【0107】
[ブローンフィルム製造]
前記で製造されたペレットに対して単軸押出機(Single Screw Extruder、Blown Film M/C、19パイ、L/D=25)を用いて、押出温度約160℃~約170℃で0.05mmの厚さになるように成形してブローンフィルムを製造した。
ブローンフィルムに製造する時、加工性を評価するために、線束を約10m/minで固定し、当該線束で最大膨張比を評価した。
【0108】
(シーリング強度測定および評価)
前記で製造されたブローンフィルムに対して、ホットタック試験機(製造社:Swiss Management、モデル名:Model 4000)を用いて、ASTM F1921基準によって、シーリング温度115℃を基準にして、シーリング強度値が2N以上を満足する場合、良好、満足しない場合、不良と表記した。
【0109】
(外観特性評価)
実施例および比較例で製造されたブローンフィルムを肉眼で観察して、フィルムに凸凹の屈曲やたるみ、などの欠陥が発生した場合、不良、特別な欠陥が観察されない場合、良好と評価した。
【0110】
測定結果を下記表4に整理した。
【0111】
【0112】
前記表を参照すれば、本発明の一実施形態による樹脂組成物は非常に高い伸び率および引張強度などを達成することができると同時に、ホットシーリング時に相対的に低い温度でも高い接合強度を実現することができるという点を明確に確認することができる。
【国際調査報告】