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特表2024-539061ルテニウムの湿式原子層エッチング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ルテニウムの湿式原子層エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20241018BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20241018BHJP
   C23F 1/40 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/306 F
H01L21/308 F
C23F1/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523151
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022077672
(87)【国際公開番号】W WO2023069834
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,226
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/674,593
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/674,579
(32)【優先日】2022-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ケイト
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA04
4K057WB01
4K057WD05
4K057WE11
4K057WE12
4K057WG06
4K057WN01
5F043AA26
5F043BB18
5F043DD07
5F043DD13
5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE28
5F043GG02
5F043GG10
(57)【要約】
本開示は、ルテニウムをエッチングするための新しい湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを提供する。より具体的には、本開示は、湿式ALEプロセスでルテニウムをエッチングするための新しいエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。ルテニウムの従来のエッチングプロセスと異なり、ルテニウムをエッチングするための本明細書に記載の湿式ALEプロセスは、金属を含まず、費用効率が高く、且つエッチング中の表面粗さを改善する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングの方法であって、前記方法は、
基板であって、その上に形成されたルテニウムを有する基板を受け取る工程であって、ルテニウム表面は、前記基板の表面において曝露される、工程と、
第1のエッチング溶液が前記ルテニウム表面と接触するように、前記基板の前記表面を前記第1のエッチング溶液に曝露する工程であって、前記第1のエッチング溶液は、前記ルテニウム表面に不動態化層を形成させる1つ以上の化学種を含み、前記不動態化層は、自己制限的であり、且つ前記第1のエッチング溶液に不溶性である、工程と、
前記不動態化層の形成に続いて、前記基板の前記表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
反応剤及び溶媒を含む第2のエッチング溶液に前記基板の前記表面を曝露する工程であって、前記反応剤は、前記不動態化層と反応し、且つ前記溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する、工程と、
前記第2のエッチング溶液及び前記可溶性化学種を前記基板から除去する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のエッチング溶液中の前記1つ以上の化学種は、第1の溶媒に溶解されたハロゲン化剤を含み、前記ハロゲン化剤は、前記ルテニウム表面を化学的に改質してハロゲン化ルテニウム不動態化層を形成し、前記第2のエッチング溶液の前記反応剤は、前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層と反応する配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化剤は、塩素化剤、フッ素化剤又は臭素化剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のエッチング溶液は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドを含む塩素化剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層は、三塩化ルテニウム(RuCl)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のエッチング溶液中の前記反応剤は、前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層と反応及び結合して、前記溶媒によって溶解される前記可溶性化学種を形成する配位子種である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記配位子種は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み、前記第2のエッチング溶液中の前記溶媒は、塩基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のエッチング溶液中の前記1つ以上の化学種は、前記ルテニウムと反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記不動態化層は、ルテニウム酸塩又は過ルテニウム酸塩を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塩素源は、塩酸を含み、前記不動態化層の酸化量は、前記第1のエッチング溶液中の前記塩酸の濃度によって制御される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
所定量の前記ルテニウムが前記基板から除去されるまで、いくつかのサイクルにわたり、前記基板の前記表面を前記第1のエッチング溶液に曝露する前記工程と、前記第1のエッチング溶液を除去する前記工程と、前記基板の前記表面を前記第2のエッチング溶液に曝露する前記工程と、前記第2のエッチング溶液を除去する前記工程とを繰り返す工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングする方法であって、
a)前記基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する前記基板を受け取る工程と、
b)ハロゲン化剤を含有する第1のエッチング溶液に前記Ru層を曝露して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウムを含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程と、
c)前記基板を第1のパージ溶液でリンスして、前記基板の表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
d)前記化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、前記化学改質されたRu表面層を溶解する工程と、
e)前記基板を第2のパージ溶液でリンスして、前記基板の前記表面から前記第2のエッチング溶液を除去する工程と、
f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
前記第1のエッチング溶液は、第1の溶媒に溶解された塩素化剤を含み、前記塩素化剤は、前記Ru層と反応して塩化ルテニウムを形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記塩素化剤は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドを含み、前記第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2のエッチング溶液は、第2の溶媒に溶解された配位子を含み、前記配位子は、前記化学改質されたRu表面層と反応及び結合して、前記第2の溶媒内で溶解する可溶性化学種を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記配位子は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み、前記第2の溶媒は、塩基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングする方法であって、
a)前記基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する前記基板を受け取る工程と、
b)前記Ru層と反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含有する第1のエッチング溶液に前記Ru層を曝露して、ルテニウム塩を含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程と、
c)前記基板を第1のパージ溶液でリンスして、前記基板の表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
d)前記化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、前記化学改質されたRu表面層を溶解する工程と、
e)前記基板を第2のパージ溶液でリンスして、前記基板の前記表面から前記第2のエッチング溶液を除去する工程と、
f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
前記第1のエッチング溶液内の前記塩素源は、塩酸(HCl)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のエッチング溶液内の前記酸化剤は、過硫酸アンモニウム(APS)又はテトラブチルアンモニウムペルオキシモノスルフェート(TBAPMS)を含み、前記第1のエッチング溶液内の前記カチオンは、テトラメチルアンモニウム(TMA+)、テトラアルキルアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はスルホニウムイオンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のエッチング溶液は、塩を更に含み、前記塩は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記化学改質されたRu表面層は、前記第1のエッチング溶液に不溶性であり、且つ前記第2のエッチング溶液に可溶性である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のエッチング溶液は、トリクロロベンゼンを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化学改質されたRu表面層は、前記第1のエッチング溶液に不溶性であり、前記方法は、イオン交換を使用して、前記化学改質されたRu表面層の溶解性を向上させる工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のエッチング溶液は、塩化カリウム(KCl)及び水酸化カリウム(KOH)を含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月19日に出願された「METHOD FOR WET ATOMIC LAYER ETCHING OF RUTHENIUM」という名称の米国仮特許出願第63/257,226号明細書、2022年2月17日に出願された「METHOD FOR WET ATOMIC LAYER ETCHING OF RUTHENIUM」という名称の米国非仮特許出願第17/674,579号明細書及び2022年2月17日に出願された「RUTHENIUM CMP CHEMISTRY BASED ON HALOGENATION」という名称の米国非仮特許出願第17/674,593号明細書に対する優先権を主張し、これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、半導体デバイスの製造に関し、特に、金属などの多結晶材料の除去及びエッチングに関する。通常の半導体製造中、基板に形成された様々な金属は、パターン化されたエッチング、化学的機械研磨及び他の技術によって除去され得る。プラズマ系又は気相エッチング(乾燥エッチングとも呼ばれる)及び液体系エッチング(湿式エッチングとも呼ばれる)を含む、基板における層をエッチングするための様々な技術が知られている。湿式エッチングは、一般に、基板の表面にわたって化学溶液を分配するか又は基板を化学溶液に浸漬することを伴う。化学溶液は、多くの場合、溶媒、基板表面の材料と反応するように設計された化学物質及び反応生成物の溶解を促進する化学物質を含む。基板表面がエッチング液に曝露されると、材料が基板から除去される。エッチング液の組成及び温度を制御して、エッチング速度、特異性及びエッチング後の基板表面の残留材料を制御することができる。
【背景技術】
【0003】
熱力学及び動力学は、両方ともエッチング液の調製において役割を果たす。エッチングを成功させるために、所望の反応は、熱力学的にも動力学的にも好適である必要がある。多結晶材料をエッチングするには、成功の要件がはるかに厳しくなる。これらの材料の場合、結晶子の形態又は環境に関わりなく、それぞれの個別の結晶子面及び粒界の幾何形状に対する除去速度は、実質的に同様であることが望ましい。ナノスケールのフィーチャの界面品質及び電気特性において、表面粗さは、重要な役割を果たす。ナノスケールの多結晶材料をエッチングする場合、異なる結晶面と比較して粒界でのエッチング速度が異なると、エッチングにおいて表面の粗化を引き起こす。更に、材料の除去速度は、巨視的レベル及び微視的レベルで均一であるべきであり、大量生産にも適合する速度で生じることが望ましい。巨視的な均一性は、慎重な操作により対処することができるが、微視的な均一性は、エッチング自体の化学現象に依存する。
【0004】
基板構造の幾何形状が縮小し続け、構造の種類が進化するにつれて、基板のエッチングの課題が増大している。これらの課題に対処するために利用されてきた1つの技術は、原子層エッチング(ALE)である。ALEは、1つ以上の自己制限反応を通して薄層を連続的に除去するプロセスである。例えば、ALEは、典型的には、原子精度でエッチングできる技術、即ち一度に材料の1つ又は数個の単分子層を除去する技術を指す。一般に、ALEプロセスは、エッチング対象の表面の化学的改質及びその後の改質された層の選択的除去に依存する。従って、ALEプロセスは、エッチングプロセスを表面改質及び改質表面の除去の連続した工程に分離することにより、向上した性能を提供する。いくつかの実施形態では、ALEプロセスは、複数の循環式の一連の層改質及びエッチング工程を含み得、層改質工程は、曝露された表面を改質し、エッチング工程は、改質された層を選択的に除去する。このようなプロセスでは、一連の自己制限反応が発生し得、所望の又は指定されたエッチング量が達成されるまでサイクルが繰り返し実行され得る。他の実施形態では、ALEプロセスは、1つのサイクルのみを使用し得る。
【0005】
プラズマALE技術、熱ALE技術及び湿式ALE技術を含む様々なALEプロセスが知られている。全てのALEプロセスと同様に、湿式ALEは、典型的には、連続的な自己制限反応を使用して表面から材料を選択的に除去する循環式のプロセスである。しかしながら、熱ALE及びプラズマALEと異なり、湿式ALEで使用される反応は、主に液相で起こる。他のALEプロセスと比較して、湿式ALEは、室温(又はそれに近い温度)及び大気圧で実行できるため、多くの場合に望ましい。加えて、湿式ALEプロセスの自己制限的な性質により、他のエッチングプロセス中でよく見られる表面の粗さではなく、エッチング中に表面が滑らかになる。
【0006】
湿式ALEプロセスは、典型的には、材料を第1の溶液に曝露して、自己制限的な改質された表面層を生成する表面改質工程から始まる。改質された表面層は、酸化、還元、配位子結合又は配位子交換によって生成され得る。理想的には、改質された表面層は、材料の上部の単層に限定され、改質反応がそれ以上進行することを防ぐ不動態化層として機能する。改質された表面層が形成された後、湿式ALEプロセスは、改質された表面層を第2の溶液に曝露して、後続の溶解工程で改質された表面層を選択的に溶解することができる。溶解工程では、下にある未改質の材料を除去することなく、改質された表面層を選択的に溶解する必要がある。この選択性は、表面改質工程で使用したものと異なる溶媒を溶解工程で使用するか、pHを変更するか又は第1の溶媒中の他の成分の濃度を変更することによって達成され得る。湿式ALEサイクルは、所望の又は指定されたエッチング量が達成されるまで繰り返され得る。
【0007】
ルテニウム(Ru)は、現在、埋め込まれた電源レール(アクティブデバイスの下に配置される電源レール)などのフロントエンド機能だけでなく、バックエンドの金属化において銅の代替品として検討されている貴金属である。しかしながら、ルテニウムは、高貴であるため、Ruのエッチングは、困難である。ルテニウムをエッチングするために、様々なエッチングプロセスを使用することができる。例えば、2022年1月21日に出願された「Dynamically Adjusted Purge Timing in Wet Atomic Layer Etching」という名称の同時係属中の米国特許出願公開第17/580,936号明細書は、ルテニウムを含む様々な遷移金属をエッチングするための湿式ALEプロセスを記載している。この同時係属中の出願では、改質された表面層は、Ru金属の表面を酸化剤に曝露することによって形成される。二酸化ルテニウム(RuO)表面層は、溶解した酸素又は別の酸化剤を含む化学溶液を使用して容易に形成され得るが、この表面酸化物の安定性及び不溶性により、エッチングプロセスでの処理が困難になる。そのため、従来のエッチングプロセスでは、可溶性又は揮発性のルテニウム化合物を生成するために、典型的には強力な酸化剤が使用される。
【0008】
一部の市販のルテニウムエッチング液には、次亜塩素酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム及び過ヨウ素酸などの強力な酸化剤が含まれており、これらがルテニウムを酸化して四酸化ルテニウム(RuO)を生成する。これらの化学物質のうち、最も効果的なエッチング液である硝酸セリウムアンモニウム及び次亜塩素酸ナトリウムは、その後、形成されるデバイスに金属汚染の危険をもたらすため、問題を抱えている。例えば、フロントエンドに微量のナトリウム又はセリウムが組み込まれると、トランジスタの性能が大幅に低下する可能性がある。一方、過ヨウ素酸は、高価であり、ルテニウムの費用効率の高いエッチングプロセスを提供するために使用することができない。加えて、従来のエッチングプロセスでは、多くの場合、エッチング後のルテニウム表面が粗くなる。これは、ルテニウムの粒界が粒子表面に比べて反応性が非常に高い傾向があり、これにより粒子表面に比べて粒界でのエッチングが優先されるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
エッチング後の表面形態の不良、金属汚染のリスク及び化学物質費用の組み合わせにより、より優れたルテニウムエッチング化学物質の開発の必要性が示されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、ルテニウムをエッチングするための新しい湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを提供する。より具体的には、本開示は、湿式ALEプロセスでルテニウムをエッチングするための新しいエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。ルテニウムの従来のエッチングプロセスと異なり、ルテニウムをエッチングするための本明細書に記載の湿式ALEプロセスは、金属を含まず、費用効率が高く、且つエッチング中の表面の粗さを改善する。
【0011】
半導体デバイスの汚染のリスクを回避するために、ルテニウムのエッチングには、新しい金属を含まないエッチング液が望まれている。表面形態は、セルフアラインビア)におけるエッチバックなど、一部のエッチング用途にとっても重要である。ルテニウムの多結晶である特質により、エッチング液が粒界を優先的に攻撃すると、孔食が発生しやすくなる。エッチング液の化学的性質は、少なくとも表面を当初より粗くせず、理想的にはエッチング中の表面の粗さを改善する必要がある。許容可能な表面形態は、循環式の湿式ALEプロセスで選択的に除去される自己制限的な不動態化層の形成を通して達成され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、金属表面に不溶性のハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウム層を形成することから始まる循環式の湿式ALEプロセスを提供する。例えば、ルテニウム金属は、自己制限的表面改質工程においてハロゲン化剤に曝露されて、ルテニウム金属の曝露された表面を化学的に改質し、改質された表面層を形成し得る。改質された表面層は、これらに限定されないが、塩化ルテニウム、フッ化ルテニウム又は臭化ルテニウムなどのハロゲン化ルテニウムであり得る。改質された表面層は、これらに限定されないが、オキシ塩化ルテニウム又はオキシフッ化ルテニウムなどのオキシハロゲン化ルテニウムでもあり得る。次いで、溶解工程を実行して、改質された表面層を選択的に除去することができる。例えば、改質された表面層を溶解溶液に曝露して、改質された表面層の下にあるルテニウム金属を除去することなく、改質された表面層を選択的に溶解することができる。溶解工程は、ルテニウム金属にわたる改質された層に対して選択的であり、配位子支援溶解を使用して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウムの改質された層を溶液中に引き寄せる。
【0013】
従って、金属を含まず、エッチング後のルテニウム表面を、受け取った表面より滑らかにし、市販の化学物質を使用して達成され得る、ルテニウムをエッチングするための湿式ALEプロセスが本明細書に開示される。上述のエッチング化学物質は、溶解溶液に可溶なルテニウム表面にルテニウム種を形成することに基づいて、酸化ではなく、主にハロゲン化を使用する点で従来の湿式ルテニウムエッチング化学物質と異なる。本明細書に記載の技術を使用すると、従来の湿式ALE化学物質を使用する場合に典型的に形成される金属酸化物層とは対照的に、表面改質工程中に不溶性金属ハロゲン化物又はオキシハロゲン化物の不動態化層が形成される。
【0014】
他の実施形態では、本開示は、ルテニウム塩の不動態化層の形成から始まる循環式の湿式ALEプロセスを提供する。例えば、ルテニウム金属の曝露された表面を、塩酸(HCl)を含む酸化溶液に曝露して、ルテニウム金属にわたって不溶性の自己制限的なルテニウム塩の不動態化層を形成し得る。ルテニウム金属の曝露された表面に形成されるルテニウム種は、HClの濃度によって制御され得、その後、形成されるルテニウム塩の溶解性は、HCl濃度及び酸化溶液中に存在するカチオン種によって制御され得る。次いで、ルテニウム塩の不動態化層は、2つの方法のいずれかで除去され得る:(a)ルテニウム塩の不動態化層を異なる溶媒に溶解することにより、又は(b)イオン交換を使用して第1の溶媒におけるルテニウム塩の不動態化層の溶解性を向上させることにより。前に開示した実施形態と同様に、本実施形態は、エッチング中のルテニウムの表面粗さを低減する、汎用の化学物質を使用した金属を含まないルテニウムのエッチングプロセスを提供する。加えて、本実施形態で説明される湿式ALEプロセスは、表面改質工程で使用される酸化剤を変更することにより、等方性又は異方性エッチングを可能にするという更なる利点を提供し得る。
【0015】
上で述べられ、本明細書で更に記載されるように、本開示は、湿式ALEプロセスでルテニウムをエッチングするための新しいエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。当然のことながら、本明細書に記載される異なる工程の説明の順序は、説明を分かり易くするために提示されたものである。概して、これらの工程は、任意の適切な順序で実行され得る。加えて、本明細書における異なる特徴、技術、構成等のそれぞれに本開示の異なる箇所で言及する場合があるが、それぞれの概念は、互いに独立して又は互いに組み合わせて実行され得ることが意図される。従って、本発明は、多くの異なる方法で具現化及び検討され得る。
【0016】
一実施形態によれば、ルテニウムをエッチングするためのエッチング方法が本明細書で提供される。この方法は、一般に、基板であって、その上に形成されたルテニウムを有する基板を受け取る工程であって、ルテニウム表面は、基板の表面において曝露される、工程と、第1のエッチング溶液がルテニウム表面と接触するように、基板の表面を第1のエッチング溶液に曝露する工程とを含み得る。第1のエッチング溶液は、ルテニウム表面に不動態化層を形成させる1つ以上の化学種を含み得、不動態化層は、自己制限的であり、且つ第1のエッチング溶液に不溶性である。次に、この方法は、不動態化層の形成に続いて、基板の表面から第1のエッチング溶液を除去する工程と、反応剤及び溶媒を含む第2のエッチング溶液に基板の表面を曝露する工程であって、反応剤は、不動態化層と反応して、溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する工程とを含み得る。次に、この方法は、第2のエッチング溶液及び可溶性化学種を基板から除去することを含み得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、所定量のルテニウムが基板から除去されるまで、いくつかのサイクルにわたり、基板の表面を第1のエッチング溶液に曝露する工程と、第1のエッチング溶液を除去する工程と、基板の表面を第2のエッチング溶液に曝露する工程と、第2のエッチング溶液を除去する工程とを繰り返す工程を更に含み得る。
【0018】
様々な異なるエッチング化学物質を第1のエッチング溶液及び第2のエッチング溶液に使用することができる。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液中の1つ以上の化学種は、第1の溶媒に溶解されたハロゲン化剤を含み得る。例えば、ハロゲン化剤は、塩素化剤、フッ素化剤又は臭素化剤を含み得る。ハロゲン化剤は、ルテニウム表面を化学的に改質してハロゲン化ルテニウム不動態化層を形成する。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドなどの塩素化剤を含み得、第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含み得る。いくつかの実施形態では、ハロゲン化ルテニウム不動態化層は、三塩化ルテニウム(RuCl)を含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、第2のエッチング溶液中の反応剤は、ハロゲン化ルテニウム不動態化層と反応及び結合して、溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する配位子種であり得る。いくつかの実施形態では、配位子種は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み得、第2のエッチング溶液中の溶媒は、塩基を含み得る。
【0020】
他の実施形態では、第1のエッチング溶液中の1つ以上の化学種は、ルテニウムと反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含み得る。このような実施形態では、ルテニウム表面に形成される不動態化層は、ルテニウム酸塩又は過ルテニウム酸塩を含み得る。一実施形態では、塩素源は、塩酸(HCl)を含み得る。このような実施形態では、不動態化層の酸化量は、第1のエッチング溶液中の塩酸の濃度によって制御され得る。
【0021】
別の実施形態によれば、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングする方法が本明細書で提供される。この方法には、一般に、a)基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する基板を受け取る工程と、b)ハロゲン化剤を含有する第1のエッチング溶液にRu層を曝露して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウムを含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程と、c)基板を第1のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第1のエッチング溶液を除去する工程と、d)化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、化学改質されたRu表面層を溶解する工程と、e)基板を第2のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第2のエッチング溶液を除去する工程と、f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程とを含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、工程b)で使用される第1のエッチング溶液は、第1の溶媒に溶解された塩素化剤を含み得る。例えば、塩素化剤は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドを含み得、第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含み得る。このような実施形態では、塩素化剤は、Ru層と反応して塩化ルテニウムを形成し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、工程d)で使用される第2のエッチング溶液は、第2の溶媒に溶解された配位子を含み得る。例えば、配位子は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み得、第2の溶媒は、塩基を含み得る。このような実施形態では、配位子は、化学改質されたRu表面層と反応及び結合して、第2の溶媒内で溶解する可溶性化学種を形成し得る。
【0024】
更に別の実施形態によれば、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングする別の方法が本明細書で提供される。この方法は、一般に、a)基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する基板を受け取る工程と、b)Ru層と反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含有する第1のエッチング溶液にRu層を曝露して、ルテニウム塩を含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程と、c)基板を第1のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第1のエッチング溶液を除去する工程と、d)化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、化学改質されたRu表面層を溶解する工程と、e)基板を第2のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第2のエッチング溶液を除去する工程と、f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程とを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液内の塩素源は、塩酸(HCl)を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液内の酸化剤は、過硫酸アンモニウム(APS)又はテトラブチルアンモニウムペルオキシモノスルフェート(TBAPMS)を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液内のカチオンは、テトラメチルアンモニウム(TMA+)、テトラアルキルアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はスルホニウムイオンを含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液は、塩を更に含み得、塩は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、化学改質されたRu表面層は、第1のエッチング溶液に不溶性であり得、且つ第2のエッチング溶液に可溶性であり得る。このような実施形態では、第2のエッチング溶液は、トリクロロベンゼンを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、化学改質されたRu表面層は、第1のエッチング溶液に不溶性であり得、及び本方法は、イオン交換を使用して、化学改質されたRu表面層の溶解性を向上させる工程を更に含み得る。このような実施形態では、第2のエッチング溶液は、塩化カリウム(KCl)及び水酸化カリウム(KOH)を含み得る。
【0028】
この概要の章は、本開示又は特許請求の範囲に記載される本発明の全ての実施形態及び/又は段階的に新規な態様を指定するわけではないことに留意されたい。代わりに、この概要は、様々な実施形態及び従来の技術に対する新規性に対応する点についての予備的な考察のみを提供する。本発明及び実施形態の追加の詳細及び/又は予想される観点について、読者は、以下で更に議論されるような本開示の詳細な説明のセクション及び対応する図を参照されたい。
【0029】
以下の記載を、類似の参照番号で類似の特徴を示す添付の図面と合わせて参照することにより、本発明及びその利点がより詳細に理解されるであろう。しかしながら、添付の図面は、開示する概念の複数の例示的な実施形態を示すに過ぎず、開示する概念は、同じく有効な他の複数の実施形態も包含し得るため、本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本開示に従ってルテニウムをエッチングするために使用することができる循環式の湿式原子層エッチング(ALE)プロセスの一例を示す。
図2】様々なエッチング条件を使用してルテニウム(Ru)をエッチングしようとする場合、サイクル数の関数として達成され得る例示的なエッチング量(ナノメートル、nmで表される)を示すグラフである。
図3A】表面改質溶液の浸漬時間(秒で表される)の関数として達成され得る例示的なエッチング速度(nm/サイクルで表される)を示すグラフである。
図3B】溶解溶液の浸漬時間(秒で表される)の関数として達成され得る例示的なエッチング速度(nm/サイクルで表される)を示すグラフである。
図4】様々なエッチング条件における、堆積したままのルテニウム及びエッチング後のルテニウムの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図5】本開示に従ってルテニウムをエッチングするために使用され得る塩媒介湿式ALEプロセスの一例を示す。
図6A】塩媒介湿式ALEプロセス実験から得られた水晶微量天秤(QCM)データのグラフであり、このデータは、様々な酸化剤濃度に対するルテニウムのエッチング動作を示す。
図6B】塩媒介湿式ALEプロセス実験から得られたQCMデータのグラフであり、このデータは、塩化物塩(例えば、TBAC)を使用した場合と使用しない場合のルテニウムのエッチング動作を示す。
図6C】塩媒介湿式ALEプロセス実験から得られたQCMデータのグラフであり、このデータは、様々なHCl濃度に対するルテニウムのエッチング動作を示す。
図6D】塩媒介湿式ALEプロセス実験から得られたQCMデータのグラフであり、このデータは、ルテニウムのエッチング動作に対するカチオン種の影響を示す。
図7】塩媒介湿式ALEプロセス実験から得られたQCMデータのグラフであり、このデータは、様々な溶解溶液組成を使用したルテニウムのエッチング動作を示す。
図8】本明細書に記載の技術を使用してルテニウムなどの多結晶材料をエッチングすることができる例示的な処理システムのブロック図である。
図9】本明細書で説明される技術を利用する方法の一実施形態を示すフローチャート図である。
図10】本明細書で説明される技術を利用する方法の別の実施形態を示すフローチャート図である。
図11】本明細書で説明される技術を利用する方法の更に別の実施形態を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、ルテニウムをエッチングするための新しい湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを提供する。より具体的には、本開示は、湿式ALEプロセスでルテニウムをエッチングするための新しいエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される湿式ALEプロセスは、酸化ではなく、ハロゲン化を使用して、湿式ALEプロセスの表面改質工程で未改質のルテニウム金属にわたって不溶性ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウム不動態化層を形成し得る。次いで、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウム不動態化層を溶解溶液に溶解することができ、これは、配位子支援溶解を使用して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウム不動態化層を溶液中に引き寄せる。他の実施形態では、本明細書に記載の湿式ALEプロセスは、濃塩酸(HCl)を含む酸化溶液にルテニウム金属を曝露することにより、未改質のルテニウム金属にわたって不溶性ルテニウム塩不動態化層を形成し得る。次いで、ルテニウム塩不動態化層は、(a)ルテニウム塩不動態化層を異なる溶媒に溶解すること、又は(b)イオン交換を使用して第1の溶媒におけるルテニウム塩不動態化層の溶解性を向上させることによって除去され得る。
【0032】
本明細書に記載の技術は、一般に、多結晶貴金属であるルテニウムをエッチングするために使用することができる。ルテニウムのエッチングには、多くの化学物質が使用され得るが、ルテニウムの多結晶である特性により、エッチング液が粒界を優先的に攻撃すると孔食が発生しやすくなる。エッチング液の化学的性質は、少なくとも表面を当初より粗くせず、理想的にはエッチング中の表面粗さを改善する必要がある。許容可能な表面形態は、循環式の湿式ALEプロセスで選択的に除去される自己制限的な不動態化層の形成を通して達成され得る。
【0033】
上で述べたように、ルテニウムをエッチングする従来の方法では、多くの場合、酸化剤(又は酸化体)を使用して、ルテニウム表面にルテニウム金属酸化物不動態化層を形成する。このルテニウム金属酸化物不動態化層は、ルテニウムの曝露された表面の不溶性二酸化ルテニウム(RuO)表面層又は可溶性四酸化ルテニウム(RuO)表面層であり得る。これらの方法で使用される酸化剤は、(a)エッチングプロセスでの処理が難しい不溶性の改質された表面層(RuOなど)をもたらすか、又は(b)費用がかかり、且つ/若しくは金属汚染のリスクを引き起こす。
【0034】
本明細書に記載の技術は、ルテニウムのエッチングに使用される他の従来の方法に比べて複数の利点をもたらす。例えば、本明細書に記載の湿式ALEプロセスは、金属を含まず、費用効率が高く、且つエッチング中の表面粗さを改善するエッチング化学物質を利用する。本明細書に開示される新しいエッチング化学物質によってもたらされる利点に加えて、本明細書に記載される技術は、ALEの利点(例えば、総エッチング量の正確な制御、表面粗さの制御及びウェハスケールの均一性の改善など)及び湿式エッチングの利点(例えば、エッチングチャンバーの単純さ、大気温度及び圧力エッチング条件など)をもたらす。従って、本明細書に記載の技術は、ルテニウムをエッチングするための独自の方法をもたらす。
【0035】
一般に、本明細書に記載の湿式ALEプロセスは、湿式ALEサイクルの1つ以上のサイクルを実行することによってルテニウムをエッチングするために使用され得、各サイクルは、表面改質工程及び溶解工程を含む。表面改質工程では、ルテニウムの曝露された表面を表面改質溶液に曝露して、ルテニウムの曝露された表面を化学的に改質し、改質された表面層(例えば、ハロゲン化ルテニウム、オキシハロゲン化ルテニウム又はルテニウム塩不動態化層)を形成し得る。溶解工程では、改質された表面層を溶解溶液に曝露して、改質された表面層を溶解することにより、改質された表面層を選択的に除去することができる。表面改質及び溶解溶液が混合することを防ぐために、表面改質と溶解工程との間でパージ工程を実行することができ、所望の量のエッチングが達成されるまでプロセスを循環的に繰り返すことができる。
【0036】
図1は、本開示による湿式ALEプロセスの一例を示す。より具体的には、図1は、湿式ALEプロセスの1サイクル中に実行される例示的な工程を示す。図1に示されるプロセスでは、誘電体材料110によって囲まれた多結晶材料105は、表面改質工程100中に表面改質溶液115と接触され、多結晶材料105の曝露された表面を改質する。一実施形態では、エッチングされる多結晶材料105は、ルテニウム(Ru)などの貴金属であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、表面改質溶液115は、ハロゲン化剤120を含み得る。例えば、表面改質溶液115は、塩素化剤、フッ素化剤又は臭素化剤を含む第1の溶媒を含み得る。他の実施形態では、表面改質溶液115は、酸化剤及び濃塩酸(HCl)中の塩化物塩を含み得る。
【0037】
図1に示すように、表面改質工程100において、多結晶材料105の曝露された表面で化学反応が起こり、改質された表面層125(例えば、ハロゲン化ルテニウム、オキシハロゲン化ルテニウム又はルテニウム塩で改質された表面層)を形成する。場合により、改質された表面層125を形成するための化学反応は、速く且つ自己制限的であり得る。換言すれば、反応生成物は、多結晶材料105の曝露された表面の1つ以上の単層を改質することができるが、表面改質溶液115とその下にある表面との間の更なる反応を妨げる場合がある。当然のことながら、エッチングされる多結晶材料105も改質された表面層125も表面改質溶液115に可溶でない場合がある。場合により、図1に示される表面改質工程100は、表面反応が飽和するまで継続し得る。
【0038】
改質された表面層125が形成された後、基板は、第1のパージ工程130において基板の表面から過剰な反応物を除去するために、第1のパージ溶液135でリンスされ得る。パージ溶液135は、改質された表面層125又は表面改質溶液115中に存在する試薬と反応してはならない。いくつかの実施形態では、第1のパージ工程130で使用される第1のパージ溶液135は、表面改質工程100で前に使用されたものと同じ溶媒を使用することができる。他の実施形態では、異なる溶媒が第1のパージ溶液135に使用され得る。いくつかの実施形態では、第1のパージ工程130は、基板表面から全ての過剰な反応物を完全に除去するのに十分な長さであり得る。
【0039】
リンスした後、溶解工程140を実行して、改質された表面層125を選択的に除去する。溶解工程140では、改質された表面層125を溶解溶液145に曝露して、改質された表面層125の下にある未改質の多結晶材料105を除去することなく、改質された表面層125を選択的に除去又は溶解する。改質された表面層125は、溶解溶液145に可溶でなければならないが、改質された表面層125の下にある未改質の多結晶材料105は、不溶性でなければならない。改質された表面層125が可溶であることにより、バルク溶解溶液145に溶解することを通して、改質された表面層125を除去することができる。いくつかの実施形態では、溶解工程140は、改質された表面層125が完全に溶解するまで継続し得る。
【0040】
表面改質工程100中に使用される表面改質溶液115及び/又は形成される改質された表面層125に応じて、様々な異なる溶解溶液145が溶解工程で使用され得る。いくつかの実施形態では、例えば、溶解溶液145は、溶解プロセスを支援する配位子150を含む水溶液であり得る。例えば、配位子150は、改質された表面層125と反応又は結合して、溶解溶液145内で溶解する可溶性化学種を形成し得る。他の実施形態では、溶解溶液145は、表面改質溶液115で使用される第1の溶媒と異なる第2の溶媒であり得る。他の実施形態では、溶解溶液145は、塩基性溶液中にアルカリ金属イオンを含み得る。このような実施形態では、イオン交換を使用して、水溶液中の改質された表面層125の溶解性を向上させることができる。
【0041】
改質された表面層125が溶解すると、図1に示されるALEエッチングサイクルは、第2のパージ工程160を実行することによって完了し得る。第2のパージ工程160は、第1のパージ溶液135と同一であり得るか又は異なり得る第2のパージ溶液165で基板の表面をリンスすることによって実行され得る。いくつかの実施形態では、第2のパージ溶液165は、溶解溶液145で使用されたものと同じ溶媒を使用することができる。第2のパージ工程160は、一般に、溶解溶液145及び/又は溶解溶液145に含まれる反応物が基板の表面から完全に除去されるまで継続し得る。
【0042】
上述したように、図1に示される循環式の湿式ALEプロセスは、a)多結晶材料105の曝露された表面を表面改質溶液115に曝露することにより、多結晶材料105の曝露された表面を化学的に改質して、改質された表面層125を形成する第1の表面改質工程100と、b)第1のパージ溶液135で基板をリンスして表面から過剰な反応物を除去する第1のパージ工程130と、c)改質された表面層を溶解溶液145に曝露することにより、改質された表面層125を選択的に除去又は溶解して、改質された表面層を選択的に除去する溶解工程140と、d)第2のパージ溶液165で基板をリンスして、基板の表面から溶解溶液145を置き換える第2のパージ工程160とを含む。いくつかの実施形態では、工程a)~d)は、所望の量の多結晶材料105が除去されるまで1回以上のALEサイクルで繰り返され得る。図1に示される循環式の湿式ALEプロセスは、ルテニウムなどの多結晶材料105をエッチングするために使用され得るエッチングプロセスの一例に過ぎない。
【0043】
ルテニウムの湿式ALEでは、ルテニウム表面に自己制限的な不動態化層を形成する必要がある。この不動態化層の形成は、溶液中の化学種とルテニウム表面との間の化学反応を可能にするか又は引き起こす第1のエッチング溶液(即ち表面改質溶液115)にルテニウム表面を曝露することによって達成される。この不動態化層は、その形成に使用される溶液に不溶性でなければならないが、その溶解に使用される第2のエッチング溶液(即ち溶解溶液145)に自由に溶解されなければならない。
【0044】
本開示は、図1に示される湿式ALEプロセスを使用してルテニウムをエッチングする際、表面改質溶液115及び溶解溶液145に使用され得る広範な種類のエッチング化学物質を企図する。エッチング化学物質の例について以下で更に詳細に説明する。これらの溶液を混合すると、連続的なエッチングプロセスにつながり、エッチングの制御が失われ、エッチング後の表面が粗くなり、これらの全てが湿式ALEの利点を損なう。従って、パージ工程130及び160は、基板表面における表面改質溶液115と溶解溶液145との間の直接的な接触を防止するために、図1に示される湿式ALEプロセスで実行される。
【0045】
一実施形態によれば、ルテニウム表面は、ルテニウム表面を化学的に改質して塩化ルテニウム不動態化層を形成する塩素化剤を含む第1の溶媒を含む表面改質溶液115に曝露され得る。実施形態の一例では、三塩化ルテニウム(RuCl)を不動態化層として使用することができる。例えば、RuCl不動態化層は、ルテニウム表面を、酢酸エチル(EA)に溶解したトリクロロイソシアヌル酸(TCCA)の溶液に曝露されると形成され得る。この実施形態では、TCCAは、反応において酸化剤と塩素源との両方として作用し得る。TCCAは、化学的にルテニウム表面を酸化してルテニウム表面に三塩化ルテニウム(RuCl)不動態化層を形成するが、この反応では金属酸化物が形成されない。これは、酸化剤(又は酸化体)を利用してルテニウム金属酸化物不動態化層を形成する従来のルテニウムエッチング化学物質と異なる。
【0046】
ルテニウムの塩素化学は、非常に複雑である。RuClには、2つの異なる結晶相が存在する。α-RuClは、ほぼ完全に不溶性であるが、β-RuClは、吸湿性があり、水、アルコール及び多くの有機溶媒に自由に溶解する。加えて、塩素化中に酸素又は水が存在すると、混在したオキシ塩化物が形成される可能性がある。これらのオキシ塩化物は、溶解性が高い傾向がある。この化学的性質に基づいて、いくつかの実施形態では、RuClのα相は、本明細書で好ましい不動態化層とみなされる。しかしながら、相の形成は、反応条件によって制御される。
【0047】
表面改質工程100中に形成された自己制限的不動態化層は、その形成後にサイクルごとに除去されなければならない。この改質された層を選択的に溶解するために、溶解工程140で第2の溶液が使用される。EAに溶解したTCCAを表面改質溶液115に使用してルテニウム表面にα-RuClを形成する場合、α-RuClを溶解するのが難しいため、純粋な溶媒は、溶解工程140で良好に機能しない。しかしながら、反応性溶解を使用すると、塩化ルテニウム層を効果的に除去し得る。反応性溶解では、第2の溶媒に溶解された配位子は、表面と反応して溶解溶液145内で溶解する可溶性化学種を形成する。RuCl不動態化層の反応性溶解には、多くの異なる配位子種を使用し得る。一実施形態では、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を反応性溶解のための配位子種として使用することができる。EDTAは、RuClと反応して、水溶液に可溶なRu-EDTA複合体を形成する。この反応は、塩基触媒によるものであるため、溶解溶液がEDTA及び強塩基を含む必要がある。TCCA含有表面改質溶液115とEDTA含有溶解溶液145との混合は、連続的なエッチングプロセス、エッチングの制御の喪失及び表面の粗化につながる。従って、Ru金属表面の2つのエッチング溶液間の直接的な接触を防ぐために、溶媒リンス工程(即ちパージ工程130及び160)が必要である。
【0048】
上述のエッチング化学物質では、ルテニウム表面の塩素化に使用される反応物質は、TCCAであるが、多くの塩素化剤がこの工程で機能する。代替の塩素化剤としては、厳密には限定されないが、塩化オキサリル、塩化チオニル及びN-クロロスクシンイミドが挙げられる。これは、表面改質工程100で使用され得る全ての可能な塩素化剤の完全なリストではない。加えて、他のハロゲン化ルテニウムも不動態化層として使用され得る。例えば、RuClに加えて、フッ化ルテニウム及び臭化ルテニウムをそれぞれ使用することができる。これらのハロゲン化ルテニウムは、これらに限定されないが、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N-フルオロベンゼンスルホンイミド、N-ブロモスクシンイミド又はジブロモイソシアヌル酸などのフッ素化剤又は臭素化剤を使用して形成され得る。
【0049】
上述のエッチング化学物質では、塩素化反応に使用される第1の溶媒は、EAであるが、アセトン、アセトニトリル及びクロロカーボンなどの他の溶媒も使用され得る。繰り返すが、これは、表面改質工程100で使用され得る溶媒の完全なリストではない。
【0050】
上述のエッチング化学物質において、溶解溶液145は、配位子150としてのEDTA及び塩基としての水酸化テトラメチルアンモニウム((CHNOH)の水溶液である。溶解のための代替配位子には、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)及びアセチルアセトン(ACAC)が含まれるが、これらに限定されない。EDTA、IDA及びDTPAは、水溶液で使用され得、ACACは、水溶液、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)又は他の有機溶媒で使用され得る。任意の強塩基を溶解溶液145で使用し得る。配位子150を脱プロトン化して、ルテニウム表面との結合を可能にするために必要であるに過ぎないため、例えば水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化アンモニウム(NHOH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(CHNOH)などの塩基又は他の任意の強塩基を溶解溶液145に使用することができる。
【0051】
エッチング実験は、片側に様々な厚さの化学蒸着(CVD)ルテニウムを堆積させた300mmのシリコンウェーハから切り取ったクーポンで実施された。ルテニウムのエッチングに使用されるエッチングレシピは、複数の湿式ALEサイクルを含み、各サイクルは、EAに溶解した5%TCCへの1分間の浸漬、その後のEAのリンス、HO(又は脱イオン水)における50mM EDTAと1M KOH水溶液への30秒の浸漬、1M KOHのリンス(又は脱イオン水のリンス)及びイソプロピルアルコール(IPA)のリンス並びにブロー乾燥を含む。湿式ALEプロセスは、異なるプロセス条件下でいくつかのALEサイクルにわたって繰り返される:熱水溶解、室温(RT)反応性溶解及び熱反応性溶解。熱溶解は、100℃で実施した。
【0052】
上述の様々なエッチング条件についてのサイクル数の関数としての総エッチング量(nm)は、図2に示されるグラフ200に示されている。室温(RT)での反応性溶解により、0.07nm/サイクルのエッチング速度が得られる。これは、ルテニウムの完全な単層よりもはるかに小さく、室温で溶解速度が遅い可能性があることを示している。溶解溶液が加熱されると、1サイクル当たりのエッチング量が大幅に増加し(例えば、0.26nm/サイクル)、溶解が速度論的に制限されることが確認される。エッチング速度は、サイクル数とともに減少し、EDTA及びKOHの溶液ではなく、溶解に脱イオン水を使用して実験を実行すると最終的に停止した。この動作は、不動態化層にα-RuCl、β-RuCl及び様々なオキシ塩化ルテニウム(RuOCl)の混合物が含まれる場合に説明され得る。β-RuCl及びRuOClは、水溶性であるが、α-RuClは、表面に残る。表面全体が不溶性α-RuClで不動態化されるまで、表面のα-RuClの量は、サイクルを重ねるごとに増加し、エッチングを継続できなくなる。この動作は、溶解溶液145中の配位子150が問題のないエッチング動作に有益であることを示している。
【0053】
上で説明した湿式ALEプロセスは、表面改質と溶解反応との両方が自己制限的であることに依存する。自己制限とは、所定のエッチング溶液がルテニウム表面と接触している時間の長さに関係なく、表面の限られた厚さのルテニウムのみが変更又は除去されることを意味する。自己制限反応は、反応の1つ以上の単層又は反応の部分的な単層に限定され得る。上述のルテニウムエッチング化学物質及びエッチングレシピの自己制限的動作は、図3A及び3Bに示されるグラフ300及び350に示されている。図3Aでは、CVDルテニウムを有するクーポンは、EAに溶解した5%TCCAにクーポンをX秒間浸漬し、クーポンをEA中でリンスし、100℃で10秒間、クーポンを200mM(NHEDTA及び1M KOH水溶液に浸漬し、クーポンを脱イオン水中でリンスし、続いてIPAでリンスしブロー乾燥することによってエッチングされる。図3Bでは、EAに溶解した5%TCCAにクーポンを10秒間浸漬し、100℃でX秒間、クーポンを200mM(NHEDTA及び1M KOH水溶液に浸漬することによってエッチングレシピが変更される。
【0054】
図3Aのグラフ300は、TCCA浸漬時間が5秒から10秒に2倍になった場合、塩素化反応が自己制限的であること - 1サイクル当たりのエッチング量が変更されないことを示す。図3Bでのグラフ350、溶解反応も自己制限的であることを示す。溶解時間が10秒から20秒に2倍になった場合、1サイクル当たりのエッチング量は、変更されない。図3A及び図3Bでは、1サイクル当たりのエッチング量が図2に示されたものよりも多いが、これは、実験条件が異なるためである。例えば、図3A及び図3Bの溶解溶液に使用する配位子濃度を高くし、EDTAの代わりにEDTAのジアンモニウム塩を使用する。これらの実験では、各エッチングサイクルでルテニウムのおよそ2つの単層が除去される。
【0055】
上述の湿式ALEプロセスにより、エッチングされた表面が滑らかになる。エッチングされた表面を観察するために、堆積したままのルテニウム(400)及びエッチング後のルテニウム(410、420)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を様々なエッチング条件で取得した。図4に示すSEM画像は、エッチングプロセス中にルテニウム金属表面が平滑化されることを示す。図4には、エッチング後のSEM画像が2セット示されている。エッチング後のSEM画像410の第1のセットでは、溶解溶液中の50mMのEDTAを使用してクーポンがエッチングされる。このエッチング溶液を使用すると、20サイクル後におよそ4nmのエッチングが行われた。エッチング後のSEM画像420の第2のセットは、溶解溶液中の100mMのジアンモニウムEDTAを使用してエッチングされたクーポンを示す。このクーポンは、25サイクル後にほぼ9nmエッチングされた。いずれの場合にも、ルテニウム膜の4点探針比抵抗測定から計算したエッチング量及びSEM断面から測定したエッチング量は、よく一致している。エッチング後のSEM画像410及び420の上面図及び傾斜図は、ルテニウム表面の粗さがエッチングプロセス中に減少したように見えることを示す。
【0056】
上で説明され、図1図4に示されるルテニウム湿式ALEプロセスは、様々な技術を使用して実現され得る。例えば、上で開示されたルテニウム湿式ALEプロセスは、ルテニウム試料を各エッチング溶液のビーカーに浸漬することによって行われ得る。この場合、パージは、試料をリンスするか又は適切な溶媒浴に浸すことによって実行され得る。ルテニウム湿式ALEプロセスは、スピナーでも実行され得る。例えば、ルテニウム試料は、試料の上に配置されたノズルからエッチング溶液が分配される間、回転され得る。試料の回転運動により、溶液が表面にわたって分配される。設定された曝露時間後、ノズルは、エッチングレシピで次の溶液の分配を開始する。このプロセスは、エッチングサイクル全体を通して継続され、所望の量の金属を除去するために必要なだけサイクルが繰り返される。大量生産の場合、湿式エッチングツール及びリンスツールなどの従来のツールを使用して、エッチング溶液及びリンス液の分配を実行し得る。
【0057】
塩化ルテニウム(RuCl)並びに他のハロゲン化ルテニウム及びオキシハロゲン化ルテニウムは、ルテニウム湿式ALEに対して適切に動作する自己制限的な改質された表面層をもたらすが、ルテニウム表面の自己制限的な不動態化層を生成するために利用可能な唯一の選択肢ではない。ルテニウム湿式ALEの代替化学物質を使用して、ルテニウム酸塩又は過ルテニウム酸塩から構成される自己制限的な改質された表面層(又は不動態化層)を形成し得る。いくつかの実施形態では、ルテニウム酸塩又は過ルテニウム酸塩は、酸化剤、適切なカチオン及び濃縮塩酸(HCl)などのルテニウムと反応する塩素源を含む酸化溶液にルテニウム表面を曝露することにより、表面改質工程100中に形成され得る。HCl溶液中でのルテニウムの酸化により、RuOCl z-ポリアニオンを含むルテニウム塩不動態化層が形成される。HClは、穏やかな還元剤として作用し、ルテニウムの最終的な酸化状態を制限する。従って、表面に形成されるルテニウム種は、酸化溶液中のHClの濃度によって制御され得る。加えて、ルテニウム塩の溶解性は、塩中のルテニウムポリアニオンに配位する対イオンによって制御され得る。従って、ルテニウム塩不動態化層の溶解性は、HCl濃度及び酸化溶液中に存在するカチオンによって制御され得る。
【0058】
不溶性ルテニウム塩不動態化層がルテニウム表面に形成された後、その後、実行される溶解工程140において、2つの方法の1つ、例えば溶媒交換又はイオン交換を介してそれを除去することができる。例えば、不溶性の塩は、溶媒交換を利用する溶解工程で純粋な溶媒に溶解され得るか、又は不溶性の塩は、カチオンを交換して水溶液中のルテニウム塩の溶解性を向上させる塩メタセシス反応を通して除去され得る(例えば、イオン交換法)。この塩媒介湿式ALEプロセスの図を図5に示す。
【0059】
図5に示される塩媒介湿式ALEプロセス500の例では、ルテニウム表面は、濃HCl溶液中の酸化剤として過硫酸アンモニウム(APS)又はテトラブチルアンモニウムペルオキシモノスルフェート(TBAPMS)を含む水溶液に曝露される。加えて、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドなどの塩が水溶液中に存在し、ルテニウム塩の形成に必要なカチオンをもたらす。ルテニウム塩不動態化層の安定性は、一般に、HCl濃度及びカチオン種に依存する。実験の一例では、塩種としてTMACを使用し、6MのHCl濃度で安定した不動態化層が形成された。
【0060】
不溶性ルテニウム塩不動態化層がルテニウム表面に形成された後、溶媒交換又はイオン交換によってそれを除去することができる。溶媒交換溶解法では、不溶性のルテニウム塩不動態化層を純粋な溶媒に溶解することができる。図5に示されるプロセス500の例では、不溶性の塩がトリクロロベンゼンに溶解される。他の溶媒も使用され得る。イオン交換溶解法では、ルテニウム塩不動態化層を形成するために使用される水溶液におけるルテニウム塩不動態化層の溶解性を向上させるために、イオン交換を使用することにより、不溶性のルテニウム塩不動態化層を除去することができる。図5に示されるプロセス500の例では、例えば、ルテニウム塩不動態化層は、MeN+カチオンをK+カチオンと交換することによってルテニウム表面から除去することができる。このイオン交換により、ルテニウム塩不動態化層の溶解性が向上し、水溶液内で溶解できるようになる。
【0061】
図6A~6Dは、ルテニウム湿式ALE実験から得られた水晶微量天秤(QCM)データを示し、APS、HCl及び塩化物塩(例えば、塩化テトラブチルアンモニウム、TBAC)の水溶液を使用してルテニウム表面が酸化されて、ルテニウム塩不動態化層が形成され、次いで、これは、KOH及びKClの水溶液に溶解される。図6A~6Dに示されるグラフは、エッチングプロセス中の様々な酸化剤濃度、HCl濃度及びカチオン種に対するルテニウムのエッチング動作を示す。
【0062】
図6Aに示すグラフ600は、様々なAPS濃度(例えば、0.1%APS、0.5%APS、1%APS及び2%APS)におけるエッチング動作を示す。エッチングサイクルには、APS、6M HCl及び200mM TBACを含む水溶液における酸化、その後の6M HCl及び200mM TBACでのパージ、1M KCl及び100mM KOHにおける溶解並びに6M HCl及び200mM TBAC溶液での2回目のパージにおける1工程当たり1分が含まれる。グラフ600に示されるように、エッチングは、0.1%のAPSでは比較的遅く、2%のAPSでは自己制限的ではなくなるが、中間のAPS濃度では適度に自己制限的なエッチング動作を示す。
【0063】
図6Bに示されるグラフ610は、TBACを含む効果及びエッチング溶液からTBACを除去する効果を示す。グラフ610に示されるように、テトラブチルアンモニウムカチオン(TBA+)がなければ、酸化は、自己制限的ではない。これは、おそらくアンモニウム塩と比較して酸種の溶解性が高いためであろう。
【0064】
図6Cに示されるグラフ620は、様々なHCl濃度(例えば、1M、6M及び9M HCl)におけるエッチング動作を示す。グラフ620に示されるように、1M HClではエッチングが起こらず、6M HClでは適切に動作する循環式のエッチングが起こり、9M HClでは連続酸化が起こる。ルテニウムの塩素化化学物質に関する文献は、RuOが1M HClでRuOCl 2-に還元され、6M HClでRuCl 2-に還元され、9M HClでRuCl 3-に還元されることを示している。HCl濃度によるエッチング動作の違いは、おそらくこれらのルテニウムポリアニオンの溶解特性の違いによるものであろう。
【0065】
図6Dに示されるグラフ630は、ルテニウム塩不動態化層を形成するために水溶液中に異なるカチオン種を使用した場合のエッチング動作に対するカチオン種の影響を示す。グラフ630に示されるように、TBA+が水溶液中で使用される場合、酸化は、準自己制限的であるのみであるが、テトラメチルアンモニウム(TMA+)を使用すると、酸化は、完全に自己制限的になる。1-ブチル-3-エチルイミダゾリウム(BMIM+)を水溶液中で使用すると、酸化により連続的なエッチングにつながる。これらの3つのカチオンで形成されるルテニウム塩の溶解性の違いにより、観察されたエッチング動作の違いが説明され得る。TMA+は、自己制限的であることが判明したが、TMA+は、このプロセスで使用され得る唯一の可能な有機カチオンではない。他のテトラアルキルアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はスルホニウムイオンなどの他のカチオンも使用することができる。
【0066】
APS酸化によって形成されたルテニウム塩を水溶液(例えば、6M HClと200mM TMACを含む)に溶解するには、塩基性溶液中でのK+イオン交換が必要である。異なる溶解溶液組成物(例えば、KClとHClとの溶解、KClの溶解、KClとKOHとの溶解及びNHOHの溶解)を用いたエッチング動作の検討を図7に示す。図7に示されるグラフ700に示されるように、KClとHClとを含む溶液は、K+イオンを含むが、pHが低いため、エッチングされない。KCl溶液は、K+イオンを含むが、pHが中性であり、エッチングも行われない。水酸化アンモニウム(NHOH)溶液は、pHが高いが、K+イオンを含まないため、エッチングされない。グラフ700に示されるように、エッチングをもたらした唯一の溶解溶液には、KClとKOHとの両方が含まれた。この溶液は、高いpHでK+イオンを含み、酸化工程中に形成されたルテニウム塩を可溶化するには、これらの特性の両方が必要であることを示している。K+イオンに加えて、Li+、Na+又はRb+などの他のアルカリ金属イオンも溶解溶液に使用され得る。
【0067】
上で説明したエッチング化学物質は、ルテニウム結晶格子のC面に吸着する硫酸イオンにより異方性エッチングを引き起こす。硫酸塩は、この結晶面に強く吸着するが、ルテニウムのm面に吸着しない。吸着された硫酸イオンは、C軸に沿った更なるエッチングを阻止する。TBAPMSは、OXONEという商標名で販売されており、高濃度の硫酸塩を含む酸化剤である。APSは、反応生成物として硫酸塩を形成する別の酸化剤である。これらの酸化剤は、両方ともルテニウム表面の異方性エッチングを引き起こす。いくつかの実施形態では、このエッチング化学物質で使用されるAPS又はTBAPMSを、硫酸塩を含まない酸化剤に置き換えることができ、これによりルテニウム表面の等方性エッチングが可能になるはずである。しかしながら、酸化剤は、濃HClと適合する必要がある。
【0068】
上で説明され、図5、6A~6D及び7に示されたルテニウムエッチング化学物質のデータは、QCMフローセルを用いて収集された。しかしながら、エッチング化学物質は、スピナーにおいてエッチング溶液を分配するか又はエッチング対象の試料をエッチング溶液に順次浸漬するなど、いくつかの異なる技術を使用して実行され得る。このエッチング化学物質を実施する際の唯一の重要な考慮事項は、化学物質への曝露を時間的に分離することである。即ち、酸化溶液と溶解溶液とは、分離された状態に保たれ、ウェーハ表面で混合することを防ぐ必要がある。これらの2つの溶液を混合すると、連続エッチングプロセスにつながり、表面粗さが増大する可能性がある。
【0069】
湿式ALEプロセスでルテニウムをエッチングするための新しいエッチング化学物質について上で説明した。上で述べたように、本明細書に開示されるルテニウムエッチング化学物質は、(a)主にハロゲン化を使用して不溶性のハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウム不動態化層を形成し、これは、配位子支援溶解によって選択的に除去されるか、又は(b)塩化物塩を含む濃HCl溶液中での酸化を使用して、不溶性ルテニウム塩不動態化層を形成し、これは、溶媒又はイオン交換によって選択的に除去される。従来のエッチング化学物質と異なり、ルテニウムをエッチングするための本明細書に記載のエッチング化学物質は、金属を含まず、費用効率が高く、且つエッチング中の表面粗さを改善する。
【0070】
本明細書に記載のルテニウム湿式ALEプロセスは、様々な半導体処理システム内で実行され得る。本明細書に記載されるルテニウム湿式ALEプロセスは、多くの異なるプロセスチャンバー、ツール及び装置を使用して達成され得るが、ルテニウム湿式ALEプロセスを実行するために使用される処理装置は、室温(又はそれに近い温度)及び大気圧(又はそれに近い大気圧)で実行され得ることが好ましい。実施の一例では、本明細書に記載のルテニウム湿式ALEプロセスは、スピンチャンバー内で実行され得る。スピンチャンバーが利用される場合、エッチング溶液は、基板にわたって配置されたノズルから分配され、基板は、配置されるスピンチャックの回転運動によって分配される。
【0071】
図8は、本明細書に記載の技術を使用して、基板830の表面にルテニウムなどの多結晶材料をエッチングすることができる処理システム800の一実施形態を示す。図8に示されるように、処理システム800は、プロセスチャンバー810を含み、いくつかの実施形態では圧力制御チャンバーであり得る。図8に示される実施形態では、プロセスチャンバー810は、ある回転速度でスピン又は回転するように構成されたスピナー820(又はスピンチャック)を有するスピンチャンバーである。基板830は、例えば、静電気力又は真空圧によってスピナー820上に保持される。一例では、基板830は、基板830上又は基板830内に形成されたルテニウムなどの多結晶材料を有する半導体ウェーハであり得る。
【0072】
図8に示される処理システム800は、基板830の表面に様々なエッチング溶液842を分配するために基板830にわたって配置される液体ノズル840を更に含む。基板830の表面に分配されるエッチング溶液842は、一般に、ルテニウム表面を化学的に改質し、改質された表面層(例えば、ハロゲン化ルテニウム、オキシハロゲン化ルテニウム又はルテニウム塩不動態化層)を形成するための表面改質溶液及びルテニウム表面から改質された表面層を選択的に除去するための溶解溶液を含み得る。表面改質溶液と溶解溶液とを分離するために、パージ溶液を表面改質工程と溶解工程との間で基板830の表面に分配することもできる。表面改質、溶解及びパージ溶液の例は、上で説明されている。
【0073】
図8に示されるように、エッチング溶液842は、様々なエッチング溶液842を保持するための1つ以上のリザーバ及び液体供給ライン844を介してプロセスチャンバー810に流体的に結合される化学物質注入マニホールドを含み得る化学物質供給システム846内に貯蔵され得る。操作において、化学物質供給システム846は、プロセスチャンバー810内に配置された液体供給ライン844及び液体ノズル840を介して、所望の化学物質をプロセスチャンバー810に選択的に適用することができる。従って、化学物質供給システム846を使用して、基板830の表面にエッチング溶液842を分配することができる。プロセスチャンバー810は、プロセスチャンバー810からエッチング溶液842を除去するためのドレイン850を更に含み得る。
【0074】
処理システム800の構成要素は、従って、対応するメモリ記憶ユニット及びユーザインターフェース(図示せず)に結合され得るコントローラ860と結合して、コントローラ860により制御され得る。ユーザインターフェースを介して様々な処理操作を実行することができ、様々な処理レシピ及び操作をメモリ記憶ユニットに保存することができる。従って、所与の基板830は、特定のレシピに従ってプロセスチャンバー810内で処理され得る。いくつかの実施形態では、所与の基板830は、ルテニウムをエッチングするために、本明細書に記載される湿式ALE技術を利用するエッチングレシピに従ってプロセスチャンバー810内で処理され得る。
【0075】
図8にブロック図形式で示されるコントローラ860は、様々な方法で実施され得る。一例では、コントローラ860は、コンピュータであり得る。別の例では、コントローラ860は、本明細書で説明される機能を提供するようにプログラムされた1つ以上のプログラマブル集積回路を含み得る。例えば、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理ユニットなど)、プログラマブルロジックデバイス(例えば、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など)及び/又は他のプログラマブル集積回路を、ソフトウェア又は他のプログラミング命令でプログラムして、所定のプラズマプロセスレシピの機能を実施し得る。ソフトウェア又は他のプログラミング命令は、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、メモリ記憶デバイス、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、再プログラム可能な記憶デバイス、ハードドライブ、フロッピーディスク、DVD、CD-ROMなど)に記憶され得ることと、ソフトウェア又は他のプログラミング命令は、プログラム可能集積回路によって実行されると、本明細書に記載される処理、機能及び/又は能力をプログラム可能集積回路に実行させることとに更に留意されたい。他の変形形態も実装され得る。
【0076】
図8に示されるように、コントローラ860は、処理システム800の様々な構成要素に結合されて、構成要素から入力を受信し、構成要素に出力を提供することができる。例えば、コントローラ860は、プロセスチャンバー810内の温度及び/又は圧力を制御するプロセスチャンバー810、スピナー820の回転速度を制御するスピナー820並びに基板830に分配される様々なエッチング溶液842を制御するための化学物質供給システム846に接続され得る。コントローラ860は、当技術分野で知られているように、図8に示されていない他の処理システム構成要素を制御することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、コントローラ860は、ルテニウムをエッチングするために、本明細書に記載される湿式ALE技術を利用するエッチングレシピに従って処理システム800の様々な構成要素を制御することができる。例えば、コントローラ860は、化学物質供給システム846に様々な制御信号を供給することができ、これにより化学物質供給システム846に以下を行わせる:a)表面改質溶液を基板830の表面に分配して、ルテニウムの曝露された表面を化学的に改質し、基板830に改質された表面層(例えば、ハロゲン化ルテニウム、オキシハロゲン化ルテニウム又はルテニウム塩不動態化層)を生成すること、b)基板830を第1のパージ溶液でリンスして、表面から過剰な反応物を除去すること、c)溶解溶液を基板830の表面に分配して、改質された表面層を選択的に除去又は溶解すること、及びd)第2のパージ溶液で基板をリンスして、基板830の表面から溶解溶液を除去すること。いくつかの実施形態では、コントローラ860は、所望の量のルテニウムが除去されるまで工程a)~d)が1つ以上のALEサイクルで繰り返されるように、化学物質供給システム846に循環的に制御信号を供給することができる。
【0078】
コントローラ860は、他の処理システム構成要素にも制御信号を供給することができる。いくつかの実施形態では、例えば、コントローラ860は、第2のパージ工程が実行された後、基板830を乾燥させるためにスピナー820及び/又は化学物質供給システム846に制御信号を供給することができる。一例では、コントローラ860は、スピン乾燥工程において基板830を乾燥するように、スピナー820の回転速度を制御し得る。別の例では、コントローラ860から化学物質供給システム846に供給される制御信号は、スピン乾燥工程を実行する前に基板を乾燥することを更に支援するために、乾燥剤(例えば、イソプロピルアルコールなど)を基板830の表面に分配させ得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、コントローラ860は、プロセスチャンバー810内の温度及び/又は圧力を制御することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のルテニウム湿式ALEプロセスの表面改質、溶解及びパージ工程は、概ね同じ温度及び圧力で実行され得る。実施の一例では、表面改質、溶解及びパージ工程は、それぞれ大気圧(又はそれに近い大気圧)及び室温で実行され得る。処理工程を同じプロセスチャンバー内で概ね同じ温度及び圧力で実行することは、不必要なチャンバー移行及び温度/圧力変化を回避することにより、本明細書で説明される湿式ALEプロセスのサイクル時間を短縮し、処理能力を改善する。
【0080】
しかしながら、本明細書で説明される実施形態は、大気圧及び室温のみに厳密に限定されず、特定のプロセスチャンバーにも限定されないことに留意されたい。他の実施形態では、表面改質、溶解及びパージ工程の1つ以上は、圧力容器内で大気圧を超える圧力において又は真空チャンバー内で減圧において実行され得る。液体の蒸気圧がチャンバー圧力よりも低い限り、エッチング溶液は、これらの環境でも分配され得る。これらの実施では、液体分配ノズルを備えたスピナーが圧力容器又は真空チャンバー内に配置される。分配される液体の温度は、プロセスの圧力における沸点未満の任意の温度まで上昇され得る。実施の一例では、溶解工程は、図3A及び3Bに示されるように100℃で実行され得る。上で述べたように、液体温度が高いと、溶解速度が速くなる可能性がある。
【0081】
図9~11は、湿式ALEプロセスでルテニウムをエッチングするために、本明細書に記載のルテニウムエッチング化学物質を利用する例示的な方法を示す。図9図11の実施形態は、単なる例示であり、追加の方法は、本明細書で説明される技術を利用し得ることを理解されたい。更に、説明された処理工程は、排他的であることを意図しないため、図9図11に示される方法に追加の処理工程を追加することができる。更に、工程の順序は、異なる順序が生じ得、及び/又は様々な工程が組み合わせで若しくは同時に実施され得るため、図に示される順序に限定されない。
【0082】
図9は、エッチング方法900の一実施形態を示す。図9に示される方法900は、一般に、基板であって、その上に形成されたルテニウムを有する基板を受け取る工程であって、ルテニウム表面は、基板の表面において曝露される、工程(工程910において)と、第1のエッチング溶液がルテニウム表面と接触するように、基板の表面を第1のエッチング溶液に曝露する工程(工程920において)とを含み得る。第1のエッチング溶液は、一般に、工程920においてルテニウム表面に不動態化層を形成させる1つ以上の化学種を含み得る。不動態化層は、自己制限的であり、且つ第1のエッチング溶液に不溶性である。次に、方法900は、不動態化層の形成に続いて、基板の表面から第1のエッチング溶液を除去する工程(工程930において)と、反応剤及び溶媒を含む第2のエッチング溶液に基板の表面を曝露する工程(工程940において)とを含み得る。反応剤は、不動態化層と反応し、且つ工程940において溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する。次に、方法900は、第2のエッチング溶液及び可溶性化学種を基板から除去する工程を含み得る(工程950において)。
【0083】
いくつかの実施形態では、方法900は、所定量のルテニウムが基板から除去されるまで、いくつかのサイクルにわたり、基板の表面を第1のエッチング溶液に曝露する工程(工程920において)と、第1のエッチング溶液を除去する工程(工程930において)と、基板の表面を第2のエッチング溶液に曝露する工程(工程940において)と、第2のエッチング溶液を除去する工程(工程950において)とを繰り返す工程を更に含み得る。
【0084】
様々な異なるエッチング化学物質を第1のエッチング溶液及び第2のエッチング溶液に使用することができる。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液中の1つ以上の化学種は、第1の溶媒に溶解されたハロゲン化剤を含み得る。例えば、ハロゲン化剤は、塩素化剤、フッ素化剤又は臭素化剤を含み得る。ハロゲン化剤は、ルテニウム表面を化学的に改質してハロゲン化ルテニウム不動態化層を形成する。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドなどの塩素化剤を含み得、第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含み得る。いくつかの実施形態では、ハロゲン化ルテニウム不動態化層は、三塩化ルテニウム(RuCl)を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、第2のエッチング溶液中の反応剤は、ハロゲン化ルテニウム不動態化層と反応及び結合して、溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する配位子種であり得る。いくつかの実施形態では、配位子種は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み得、第2のエッチング溶液中の溶媒は、塩基を含み得る。
【0086】
他の実施形態では、第1のエッチング溶液中の1つ以上の化学種は、ルテニウムと反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含み得る。このような実施形態では、工程920でルテニウム表面に形成された不動態化層は、ルテニウム酸塩又は過ルテニウム酸塩を含み得る。一実施形態では、塩素源は、塩酸(HCl)を含み得る。このような実施形態では、工程920で形成された不動態化層の酸化量は、第1のエッチング溶液中の塩酸の濃度によって制御され得る。
【0087】
図10は、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングするために使用され得る方法1000の一実施形態を示す。図10に示される方法1000は、一般に、a)基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する基板を受け取る工程(工程1010において)と、b)ハロゲン化剤を含有する第1のエッチング溶液にRu層を曝露して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウムを含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程(工程1020において)と、c)基板を第1のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第1のエッチング溶液を除去する工程(工程1030において)と、d)化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、化学改質されたRu表面層を溶解する工程(工程1040において)と、e)基板を第2のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第2のエッチング溶液を除去する工程(工程1050において)と、f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程(工程1060において)とを含み得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、工程1020で使用される第1のエッチング溶液は、第1の溶媒に溶解された塩素化剤を含み得る。例えば、塩素化剤は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドを含み得、第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含み得る。このような実施形態では、塩素化剤は、Ru層と反応して塩化ルテニウムを形成し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、工程1040で使用される第2のエッチング溶液は、第2の溶媒に溶解された配位子を含み得る。例えば、配位子は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み得、第2の溶媒は、塩基を含み得る。このような実施形態では、配位子は、化学改質されたRu表面層と反応及び結合して、第2の溶媒内で溶解する可溶性化学種を形成し得る。
【0090】
図11は、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングするために使用され得る方法1100の一実施形態を示す。図11に示される方法1100は、一般に、a)基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する基板を受け取る工程(工程1110において)と、b)Ru層と反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含有する第1のエッチング溶液にRu層を曝露して、ルテニウム塩を含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程(工程1120において)と、c)基板を第1のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第1のエッチング溶液を除去する工程(工程1130において)と、d)化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、化学改質されたRu表面層を溶解する工程(工程1140において)と、e)基板を第2のパージ溶液でリンスして、基板の表面から第2のエッチング溶液を除去する工程(工程1150において)と、f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程(工程1160において)とを含み得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液内の塩素源は、塩酸(HCl)を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液内の酸化剤は、過硫酸アンモニウム(APS)又はテトラブチルアンモニウムペルオキシモノスルフェート(TBAPMS)を含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液内のカチオンは、テトラメチルアンモニウム(TMA+)、テトラアルキルアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はスルホニウムイオンを含み得る。いくつかの実施形態では、第1のエッチング溶液は、塩を更に含み得、この塩は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、化学改質されたRu表面層は、第1のエッチング溶液に不溶性であり得、且つ第2のエッチング溶液に可溶性であり得る。このような実施形態では、第2のエッチング溶液は、トリクロロベンゼンを含み得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、化学改質されたRu表面層は、第1のエッチング溶液に不溶性であり得、及び方法1100は、イオン交換を使用して、化学改質されたRu表面層の溶解性を向上させる工程を更に含み得る。このような実施形態では、第2のエッチング溶液は、塩化カリウム(KCl)及び水酸化カリウム(KOH)を含み得る。
【0094】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」又は「一実施形態」という表記は、その実施形態との関連で記述される特定の特徴、構造、材料又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するが、これらが全ての実施形態に存在することを意味するものではないことに留意されたい。従って、本明細書全体を通して、様々な箇所における「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」という表記の出現は、必ずしも本発明の同一実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の適当な方法で組み合わされ得る。他の複数の実施形態では、様々な追加的な層及び/若しくは構造が含まれ得、且つ/又は記述する特徴が省略され得る。
【0095】
本明細書で用いる用語「基板」は、上部に材料が形成される基本材料又は構造体を意味し、且つこれらを含む。基板は、単一材料、異なる材料の複数の層、異なる材料又は異なる構造体の領域を内部に有する1つ以上の層を含み得ることが理解されるであろう。これらの材料は、半導体、絶縁体、導体又はこれらの組み合わせを含み得る。例えば、基板は、半導体基板、支持構造体上の基本半導体層、金属電極又はこれらの上に形成された1つ以上の層、構造体又は領域を有する半導体基板であり得る。基板は、従来のシリコン基板又は半導電材料の層を含む他のバルク基板であり得る。本明細書で用いる用語「バルク基板」は、シリコンウェーハだけでなく、シリコンオンサファイア(「SOS」)基板及びシリコンオンガラス(「SOG」)基板等のシリコンオンインシュレータ(「SOI」)基板、基本半導体基盤上のシリコンのエピタキシャル層及びシリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウム並びにリン化インジウム等の他の半導体又は光電子材料をも意味し、且つこれらを含む。基板は、ドープされても又はされなくてもよい。
【0096】
基板を処理するためのシステム及び方法が様々な実施形態で説明されている。基板は、デバイス、特に半導体又は他の電子デバイスの任意の材料部分又は構造体を含み得、例えば半導体基板などの基本基板構造体であり得るか、又は薄膜などの基本基板構造体上の若しくはその上を覆う層であり得る。従って、基板は、パターン化された又はパターン化されていない任意の特定の基本構造体、下地層又は上地層に限定されることを意図されず、むしろ任意のこのような層又は基本構造体並びに層及び/又は基本構造体の任意の組み合わせを含むことが企図される。
【0097】
当業者であれば、様々な実施形態が、具体的な詳細の1つ以上を伴わずに又は他の代替的及び/若しくは追加的方法、材料若しくは構成要素を伴って実施され得ることを認識するであろう。他の例では、本発明の様々な実施形態の態様が分かりにくくなることを避けるため、公知の構造体、材料又は動作を詳細に図示又は記述していない。同様に、説明目的のため、本発明の十分な理解を提供するために特定の番号、材料及び構成を開示している。それにもかかわらず、本発明は、特定の詳細なしに実施され得る。更に、図に示される様々な実施形態は、例示的表現であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。
【0098】
上述のシステム及び方法の更なる変形形態及び代替的実施形態は、本明細書から当業者に明らかであろう。従って、上述のシステム及び方法は、これらの構成例に限定されないことが認識されるであろう。本明細書に図示及び記述したシステム及び方法の形式は、実施形態の例として解釈すべきであることを理解されたい。実施に際して様々な変更形態がなされ得る。従って、本明細書では、特定の実施形態を参照してルテニウム湿式ALE技術を説明しているが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正形態及び変更形態がなされ得る。従って、本明細書及び図は、限定的な意味ではなく、むしろ例示的な意味でみなされるべきであり、このような修正形態が本開示の範囲に含まれることが意図される。更に、特定の実施形態に関して本明細書で説明されるいかなる利益、利点又は課題に対する解決策も、特許請求の範囲のいずれか又は全ての重要な、必要な又は必須の特徴又は要素として解釈されることを意図されない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングの方法であって、前記方法は、
基板であって、その上に形成されたルテニウムを有する基板を受け取る工程であって、ルテニウム表面は、前記基板の表面において曝露される、工程と、
第1のエッチング溶液が前記ルテニウム表面と接触するように、前記基板の前記表面を前記第1のエッチング溶液に曝露する工程であって、前記第1のエッチング溶液は、第1の溶媒に溶解されたハロゲン化剤を含み、前記ハロゲン化剤は、前記ルテニウム表面を化学的に改質して前記ルテニウム表面にハロゲン化ルテニウム不動態化層を形成、前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層は、自己制限的であり、且つ前記第1のエッチング溶液に不溶性である、工程と、
前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層の形成に続いて、前記基板の前記表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
反応剤及び第2の溶媒を含む第2のエッチング溶液に前記基板の前記表面を曝露する工程であって、前記反応剤は、配位子種であり、前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層と反応及び結合して、前記第2の溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する、工程と、
前記第2のエッチング溶液及び前記可溶性化学種を前記基板から除去する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記ハロゲン化剤は、塩素化剤、フッ素化剤又は臭素化剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のエッチング溶液は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドを含む塩素化剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化ルテニウム不動態化層は、三塩化ルテニウム(RuCl)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のエッチング溶液中の前記第2の溶媒は、塩基を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記配位子種は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み、前記第2のエッチング溶液中の前記第2の溶媒は、塩基を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
エッチングの方法であって、前記方法は、
基板であって、その上に形成されたルテニウムを有する基板を受け取る工程であって、ルテニウム表面は、前記基板の表面において曝露される、工程と、
第1のエッチング溶液が前記ルテニウム表面と接触するように、前記基板の前記表面を前記第1のエッチング溶液に曝露する工程であって、前記第1のエッチング溶液は、前記ルテニウム表面に不動態化層を形成させる1つ以上の化学種を含み、前記不動態化層は、自己制限的であり、且つ前記第1のエッチング溶液に不溶性であり、前記第1のエッチング溶液中の前記1つ以上の化学種は、前記ルテニウムと反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含む、工程と、
前記不動態化層の形成に続いて、前記基板の前記表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
反応剤及び溶媒を含む第2のエッチング溶液に前記基板の前記表面を曝露する工程であって、前記反応剤は、前記不動態化層と反応し、且つ前記溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成する、工程と、
前記第2のエッチング溶液及び前記可溶性化学種を前記基板から除去する工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
前記不動態化層は、ルテニウム酸塩又は過ルテニウム酸塩を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記塩素源は、塩酸を含み、前記不動態化層の酸化量は、前記第1のエッチング溶液中の前記塩酸の濃度によって制御される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
所定量の前記ルテニウムが前記基板から除去されるまで、いくつかのサイクルにわたり、前記基板の前記表面を前記第1のエッチング溶液に曝露する前記工程と、前記第1のエッチング溶液を除去する前記工程と、前記基板の前記表面を前記第2のエッチング溶液に曝露する前記工程と、前記第2のエッチング溶液を除去する前記工程とを繰り返す工程を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングする方法であって、
a)前記基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する前記基板を受け取る工程と、
b)ハロゲン化剤を含有する第1のエッチング溶液に前記Ru層を曝露して、ハロゲン化ルテニウム又はオキシハロゲン化ルテニウムを含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程と、
c)前記基板を第1のパージ溶液でリンスして、前記基板の表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
d)前記化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、前記化学改質されたRu表面層を溶解する工程であって、前記第2のエッチング溶液は、第2の溶媒に溶解された配位子を含み、前記配位子は、前記化学改質されたRu表面層と反応及び結合して、前記第2の溶媒内で溶解する可溶性化学種を形成する、工程と、
e)前記基板を第2のパージ溶液でリンスして、前記基板の前記表面から前記第2のエッチング溶液を除去する工程と、
f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程と、
を含む、方法。
【請求項13】
前記第1のエッチング溶液は、第1の溶媒に溶解された塩素化剤を含み、前記塩素化剤は、前記Ru層と反応して塩化ルテニウムを形成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩素化剤は、トリクロロイソシアヌル酸(TCCA)、塩化オキサリル、塩化チオニル又はN-クロロスクシンイミドを含み、前記第1の溶媒は、酢酸エチル(EA)、アセトン、アセトニトリル又はクロロカーボンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記配位子は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はアセチルアセトン(ACAC)を含み、前記第2の溶媒は、塩基を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して基板をエッチングする方法であって、
a)前記基板であって、その上にルテニウム(Ru)層を有する前記基板を受け取る工程と、
b)前記Ru層と反応する酸化剤、カチオン及び塩素源を含有する第1のエッチング溶液に前記Ru層を曝露して、ルテニウム塩を含有する化学改質されたRu表面層を形成する工程と、
c)前記基板を第1のパージ溶液でリンスして、前記基板の表面から前記第1のエッチング溶液を除去する工程と、
d)前記化学改質されたRu表面層を第2のエッチング溶液に曝露して、前記化学改質されたRu表面層を溶解する工程と、
e)前記基板を第2のパージ溶液でリンスして、前記基板の前記表面から前記第2のエッチング溶液を除去する工程と、
f)工程b)~e)を1サイクル以上にわたって繰り返す工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記第1のエッチング溶液内の前記塩素源は、塩酸(HCl)を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のエッチング溶液内の前記酸化剤は、過硫酸アンモニウム(APS)又はテトラブチルアンモニウムペルオキシモノスルフェート(TBAPMS)を含み、前記第1のエッチング溶液内の前記カチオンは、テトラメチルアンモニウム(TMA+)、テトラアルキルアンモニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はスルホニウムイオンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のエッチング溶液は、塩を更に含み、前記塩は、塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)又は1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記化学改質されたRu表面層は、前記第1のエッチング溶液に不溶性であり、且つ前記第2のエッチング溶液に可溶性である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第2のエッチング溶液は、トリクロロベンゼンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記化学改質されたRu表面層は、前記第1のエッチング溶液に不溶性であり、前記方法は、イオン交換を使用して、前記化学改質されたRu表面層の溶解性を向上させる工程を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のエッチング溶液は、塩化カリウム(KCl)及び水酸化カリウム(KOH)を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
所定量の前記ルテニウムが前記基板から除去されるまで、いくつかのサイクルにわたり、前記基板の前記表面を前記第1のエッチング溶液に曝露する前記工程と、前記第1のエッチング溶液を除去する前記工程と、前記基板の前記表面を前記第2のエッチング溶液に曝露する前記工程と、前記第2のエッチング溶液を除去する前記工程とを繰り返す工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】