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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】デプスフィルタおよび関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/02 20060101AFI20241018BHJP
   B01D 39/04 20060101ALI20241018BHJP
   B01D 39/06 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20241018BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20241018BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20241018BHJP
【FI】
B01D23/10 A
B01D39/04
B01D39/06
C12N1/02
B32B5/02 A
B32B27/42 102
C12N5/071
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523180
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022046772
(87)【国際公開番号】W WO2023069327
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/256,945
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, メイベル
(72)【発明者】
【氏名】タウンリー, ジェフリー イー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4D019
4D116
4F100
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BC01
4B065BD18
4B065CA46
4B065CA60
4D019AA03
4D019BA03
4D019BA06
4D019BA13
4D019BA18
4D019BB03
4D019BB12
4D019BB13
4D019BB18
4D019CB06
4D116AA27
4D116BA01
4D116DD01
4D116EE04
4D116EE06
4D116EE10
4D116FF02A
4D116FF03A
4D116FF15B
4D116GG04
4D116GG08
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4D116KK01
4D116QA44A
4D116VV30
4F100AA03
4F100AA03A
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK32
4F100AK32A
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG15
4F100DG15D
4F100GB56
(57)【要約】
「デプスフィルタ」として一般に知られている種類の多層フィルタならびに関連する装置および方法が記載されており、フィルタは、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含む層を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デプスフィルタであって、
直列の2つ以上の層を備えており、
少なくとも1つの層が、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含む、デプスフィルタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの層が、
絡み合ったポリアラミド繊維を含む繊維マトリックス、
前記繊維マトリックス全体に分配された合成フィルタ助剤粒子、および
前記ポリアラミド繊維と前記合成フィルタ助剤粒子とを互いに結合するポリマー結合剤、を含む、請求項1に記載のデプスフィルタ。
【請求項3】
20~99.5重量パーセントのポリアラミド繊維と、
0.5~80重量パーセントの合成フィルタ助剤と、
繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づき、
0.5~5重量パーセントの結合剤と、
をさらに含む、請求項1または2に記載のデプスフィルタ。
【請求項4】
前記ポリアラミド繊維の少なくとも一部がフィブリル化されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のデプスフィルタ。
【請求項5】
前記合成フィルタ助剤が、金属ケイ酸塩、活性炭、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のデプスフィルタ。
【請求項6】
前記合成フィルタ助剤が、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のデプスフィルタ。
【請求項7】
前記ポリマー結合剤が、尿素ポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、ポリアミノポリアミド-エピクロロヒドリンポリマー、グリオキサレート化ポリアクリルアミドポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーを、場合によりエポキシド架橋剤と組み合わせて含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のデプスフィルタ。
【請求項8】
3つの積層された層:
ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤とを含む第1の層、
ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤と合成フィルタ助剤とを含む第2の層、
ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤と合成フィルタ助剤とを含む第3の層、をさらに備え、
ここで、
前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層との間に位置し、
前記第2の層は、ある量(重量パーセント)の合成フィルタ助剤(重量パーセント)を含有し、
前記第3の層は、ある量(重量パーセント)の合成フィルタ助剤を含有し、
前記第3の層における合成フィルタ助剤の前記量(重量パーセント)は、前記第2の層における合成フィルタ助剤の前記量(重量パーセント)よりも大きい、
請求項1~7のいずれか一項に記載のデプスフィルタ。
【請求項9】
第4の層をさらに含み、前記第4の層が合成不織布材料を含む、請求項8に記載のデプスフィルタ。
【請求項10】
前記合成不織布材料が、ポリアラミド、コーティングされたポリアラミド、ポリエステル、またはコーティングされたポリエステルを含む、請求項9に記載のデプスフィルタ。
【請求項11】
フィルタハウジングの内部に組み立てられた直列の前記2つ以上の層をさらに備え、前記層および前記フィルタハウジングが、ガンマ照射への曝露によって滅菌される、請求項1~10のいずれか一項に記載のデプスフィルタ。
【請求項12】
流体から異なるサイズの粒子を除去する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載のデプスフィルタに前記流体を通過させることを含む、方法。
【請求項13】
前記流体が、0.2ミクロン~25ミクロンのサイズ範囲を有する粒子を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体から細胞破片を除去するために前記流体を前記デプスフィルタに通過させることをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
湿式フィルタ材料を形成する方法であって、
水性液体、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、および結合剤を含んでおり、前記水性液体全体に懸濁されたスラリーを形成することと、
前記スラリーから湿潤スラリー層を形成することと、
前記水性液体を前記湿潤スラリー層から除去して、脱水された湿式フィルタ材料を形成することと、を含む方法。
【請求項16】
前記結合剤が、水溶性熱硬化性結合剤であり、前記方法が、前記スラリーに塩基を添加し、前記湿式フィルタ層を加熱して前記結合剤を重合させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スラリーが、
スラリーの総重量に基づいて95~99.9重量パーセントの水と、
0.1~5重量パーセントの固形分とを含み、前記固形分が、
20~100重量パーセントのポリアラミド繊維と、
0~80重量パーセントのフィルタ助剤粒子と、
繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づき、
0.5~5重量パーセントの結合剤と、を含む、
請求項15または16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本説明は、「デプスフィルタ」として一般に知られている種類の多層フィルタならびに関連する装置および方法に関し、フィルタは、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含む層を含有する。
【背景技術】
【0002】
「デプスフィルタ」と呼ばれる種類のフィルタは、液体が様々なサイズの固体を含有する場合に、液体から固体を除去するための濾過方法に有用である。一用途では、液体に懸濁された異なるサイズの固体材料を含有する細胞培養物を清澄化して、細胞培養物にも含有される高価値の「標的」分子を単離する方法について、デプスフィルタが知られている。
【0003】
デプスフィルタの一般的なバリエーションは、複数の別個に準備されたフィルタ層のスタックを含み、各層は、ある厚さまたは「深さ」を有する。液体、例えば液体細胞培養物は、フィルタ層のスタックを直列に通過する。フィルタは、液体に懸濁された固体材料を保持し、これらの材料を液体から分離する。液体の濾過は、サイズ排除に基づくふるい分け機構と、液体内の粒子または溶解分子をデプスフィルタの成分に引きつける疎水性、イオン性、または別の化学的もしくは静電的相互作用に基づく非ふるい分け(吸着)機構の両方を含むと考えられる。
【0004】
サイズ排除機構に関して、フィルタスタックは複数の層を含有し、層はスタック内に構成されて、スタックの深さ方向に漸進的な濾過効果を有する。より大きな孔径を含有する層は、フィルタスタックの上部に「上流」層として配置され、これはスタックを通過する液体に最初に接触する層を意味する。より小さい孔径を含有する層は、スタックを通って流れる液体が上流層に接触した後に「下流」層に接触するように下流位置に配置される。デプスフィルタは、より大きな粒子を上流層に保持し、より小さな粒子をフィルタスタックの下流層に保持することによって、様々なより大きな粒径およびより小さな粒径を有する固体材料を保持する。
【0005】
デプスフィルタの有効な用途の1つは、細胞培養物を清澄化するためである。細胞培養物を清澄化する工程は、細胞培養物から固体または溶解した材料を除去する効果を有し、溶解した高価値材料も含有する。細胞培養物は、液体に懸濁または溶解した細胞材料を含有する液体であり、液体に溶解した商業的に価値のある非固体材料を含む。所望の溶解材料は、「標的分子」、「高価値標的分子」などと呼ばれることがある。デプスフィルタは、細胞培養物の固体材料を、標的分子を含有する細胞培養物の液体溶液から分離するのに有効であり、その結果、液体溶液をさらに処理して標的分子を単離および精製することができる。デプスフィルタはまた、吸着によって、非標的分子、DNAおよび宿主細胞タンパク質などの望ましくない溶解した材料を除去することができる。
【0006】
細胞培養物の固体材料は、様々な粒径を有する細胞、細胞破片、および細胞成分を含む。デプスフィルタは、液体および溶解した非固体材料、特に高い値の標的分子がデプスフィルタを通過することを可能にしながら、液体から高い割合の固体材料を除去する。
【0007】
市販のデプスフィルタの層は、繊維(天然由来のセルロース繊維など)、フィルタ助剤(珪藻土(DE)などの天然に存在する材料の粒子など)、およびデプスフィルタの層として繊維および粒子を一緒に保持するように作用するポリマー樹脂を含む。
【0008】
多くのデプスフィルタの既知の欠点は、デプスフィルタの材料内に存在し、濾過のためにフィルタを通過する液体中の夾雑物になり得る不純物の存在である。デプスフィルタの材料として用いられる天然(非合成)の材料としては、セルロース繊維、珪藻土フィルタ助剤などの材料が挙げられる。デプスフィルタに使用されるこれらおよび他の天然材料は、微量の不純物を含有する。デプスフィルタに非常に一般的に使用される天然セルロース繊維は、ベータグルカンを含有する。珪藻土は、抽出可能な金属を含有する。
【0009】
デプスフィルタ(例えば、天然繊維または天然フィルタ助剤)の材料中に存在する任意の不純物は、フィルタを通過する液体によって、フィルタの使用中に材料から抽出され得る。不純物は、抽出されて液体に溶解した夾雑物として、デプスフィルタを通過した液体(「濾液」または「濾液溶液」)へと抽出されてもよく、それによって運ばれてもよい。バイオテクノロジー用途では、濾液溶液中のそのような夾雑物は当然望ましくない。濾液中のいかなる夾雑物も、濾液中の高価値標的分子を単離して精製するための濾液溶液のその後の処理(例えば、精製)に干渉し得る。
【0010】
異なる欠点として、珪藻土および他の天然フィルタ助剤(例えば、パーライト)などの天然材料は、天然に存在する材料であり、様々な組成を有する。変動性は重大であり得る。
【発明の概要】
【0011】
デプスフィルタならびに関連する装置および方法が説明される。デプスフィルタは、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含有する1つまたは複数の層を含む。一般に、液体細胞培養物を濾過するためにデプスフィルタを使用する特定の用途では、抽出され、濾過プロセスで生成された液体濾液中の夾雑物になり得る抽出可能な不純物の量が減少したフィルタ材料が必要とされている。別個にまたは組み合わせて、改善された組成一様性およびより低い程度の組成変動性を有するフィルタ媒体、例えばデプスフィルタの材料が必要とされている。
【0012】
抽出可能な不純物およびデプスフィルタの成分の変動性を回避する1つの方法は、天然由来の成分を回避し、合成的に調製された成分を代わりに使用することである。米国特許公開2020/0129901は、ポリアクリル系繊維およびシリカフィルタ助剤を含むデプスフィルタを記載している。繊維は合成であり、ベータ-グルカンを含有しないが、シリカは(合成であるが)、フィルタを通って流れるプロセス流体に浸出することが知られており、これは望ましくない。
【0013】
さらに、濾過業界は、密閉されたフィルタカートリッジに予め含有されたフィルタ媒体(デプスフィルタのスタック)を含む密閉濾過システムの使用に向かって動いている。望ましくは、カートリッジは予め滅菌されている。デプスフィルタの成分を滅菌する従来の方法には、湿熱(蒸気)、乾熱、酸化エチレンガス、および照射が含まれる。カートリッジ形態(デプスフィルタの複数の積層された層を含有するハウジングの形態)の多くのデプスフィルタ製品は、フィルタ媒体またはプラスチックフィルタハウジングが十分に温度安定ではないため、高温を使用して滅菌することができない。酸化エチレンガスは、デプスフィルタ含有カートリッジを通る流路が複雑であるため、フィルタカートリッジの滅菌に必ずしも効果的ではなく、酸化エチレンガスが容易に透過して滅菌用フィルタのすべての部分に到達することを防ぐことができる。照射、特にガンマ照射は、実装が最も簡単であるが、セルロースおよびポリアクリル材料は、ガンマ照射に対して安定ではない。
【0014】
以下の説明では、デプスフィルタ層のスタックの形態のフィルタ媒体を含有するデプスフィルタ製品が提示され、フィルタ媒体およびその層は、合成ポリアラミド繊維および合成フィルタ助剤を含有する。合成繊維および合成フィルタ助剤はそれぞれ、低レベルの抽出可能物を含有し、それぞれ比較的一貫した組成を有する。
【0015】
ポリアラミド繊維、ならびにデプスフィルタの他の成分は、ガンマ安定性である。ある技術では、デプスフィルタまたはデプスフィルタ成分は、典型的には25~40kGyの線量でガンマ照射を当てることによって滅菌される。記載されているようなデプスフィルタの材料は、この線量範囲の量のガンマ照射量に曝露され、依然としてデプスフィルタの一部として有効であり得る場合、「ガンマ安定性」と見なされる。ガンマ安定材料は、物理的特性を保持し、ガンマ照射への曝露から負の性能属性を有さない。密閉されたカートリッジに含有された上述のフィルタ層を含むデプスフィルタは、カートリッジを製造する工程として、カートリッジの形態で滅菌され得る。すなわち、(フィルタ媒体を有する)カートリッジを滅菌量のガンマ照射、例えば25~40kGyに曝露することによって、カートリッジを滅菌または「予備滅菌」してもよい。
【0016】
一態様では、本開示は、直列の2つ以上のフィルタ層を含むデプスフィルタに関する。少なくとも1つの層は、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含む。
【0017】
別の態様では、本開示は、湿式フィルタ材料を形成する方法に関する。本方法は、水性液体、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、および結合剤を含み、水性液体全体に懸濁されたスラリーを形成することと;スラリーから湿潤スラリー層を形成することと;水性液体を湿潤スラリー層から除去して、脱水された湿式フィルタ材料を形成し、続いてこれを乾燥させることと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】説明したデプスフィルタの一例を概略的に示す。
図2】先行技術のフィルタと比較した、本明細書のフィルタの濾過性能データを示す。
図3】先行技術のフィルタと比較した、本明細書のフィルタの濾過性能データを示す。
図4】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図5】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図6】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図7】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図8】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図9】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図10】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
図11】本明細書の例示的なフィルタおよび同等の市販のフィルタの濾過性能データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、「デプスフィルタ」と呼ばれる種類の多層フィルタ、ならびに関連する装置および方法について説明する。記載されたフィルタは、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含有する1つまたは複数の層を含む複数の層を含む。
【0020】
デプスフィルタは、繊維系濾過材料の多層構成を特徴とするフィルタ製品である。多層構成は、異なる濾過特性、特に異なる孔径を有する複数のフィルタ層のスタックを含み、スタックは、より大きな孔径を有するフィルタ層を、デプスフィルタを通過する液体が最初に接触する「上流」層として位置決めするように構成される。より小さい孔径を含有する層は、液体がスタックを通って流れるときに液体が最初に上流層に接触し、上流層に接触した後に下流層に接触するように、下流位置に配置される。液体がデプスフィルタを通過するとき、異なる粒径を有する液体中の固体材料は、スタック内の異なる深さ位置において、スタックの異なる層によって除去される。スタックは、一般に、上流層でより大きな粒子を保持し、下流層でより小さな粒子を保持する。
【0021】
言い換えれば、デプスフィルタの層は、次第に高密度になり、上流フィルタ層から下流フィルタ層に向かうより小さい孔を有する。スタックを通って流れる液体に懸濁された固体粒子材料は、固体粒子の粒径に応じてスタック内の様々な深さに浸透する。これにより、液体から除去されてフィルタによって保持された粒子がフィルタ層のスタックの深さ全体に分配されるようになり、使用中のフィルタにわたる圧力降下の蓄積を低減することが可能になり、デプスフィルタの耐用年数が延びる。
【0022】
複数の層は、通常、層を所定の位置に保持し積層されたフィルタ層を通る液体流体の流れを直列すなわち次々に導くハウジング内に含有され、液体は最初に上流層を通過し、続いて下流層を通過する。各層は、2つの対向する表面を有する。各層(第1の層以外)の上流の表面は、先の層の下流の表面と対向する。「積層された」層は、互いに接触してもよく、または隣接する層の上流と下流の表面の間に小さな空間(または「エアギャップ」)を残すように層を積層されて配置してもよい。ハウジングはまた、流体が複数の層を一様に通過することを可能にするために、第1の層の上流に十分なヘッドスペースを含有する。例示的なハウジングは、カートリッジ、カプセル、ボックス、カセット、カラムなどと呼ばれることもある。
【0023】
ハウジングは、再使用可能であってもよいし、使い捨てであってもよい。使い捨てハウジングでは、フィルタ層のスタックは、ハウジングを濾過される液体の流れの位置に設置することによって便利に使用するために密閉されたハウジング内に含有される。ハウジングおよび含有されるフィルタ層は、液体の流れから材料を除去するために1回使用することができ、1回の使用期間後、ハウジングおよび含有されるフィルタ層は一緒に廃棄される。フィルタ層もハウジングも再び使用されない。
【0024】
ハウジングは、金属(例えば、ステンレス鋼またはアルミニウム)、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどのポリマー、またはガラスもしくはセラミックなどの別の材料などの任意の有用な材料で作製され得る。ハウジングは、フィルタ層の上流にある流体入口と、フィルタ層の下流にある流体出口とを含むか、またはそれらに接続可能である。
【0025】
デプスフィルタは、液体を濾過するために使用される前に滅菌されることが望ましい。フィルタ層は、照射への曝露(ガンマ照射)、酸化エチレンへの曝露、および蒸気への曝露を含む様々な滅菌技術によって滅菌され得る。しかしながら、多くのハウジング材料は、蒸気滅菌に必要な高温で安定ではない。また、デプスフィルタに使用される特定の種類の繊維材料は、ガンマ照射に対して安定ではない。酸化エチレンは、ハウジングの内部に組み立てられたフィルタ層のスタックを含有するデプスフィルタのカートリッジの内部のすべての部分に接触できるとは限らない。
【0026】
ガンマ照射安定性であるポリアラミド繊維を含む本明細書のデプスフィルタの場合、好ましい滅菌技術は、フィルタ層をフィルタハウジング内でスタックとして組み立て、スタックおよびハウジングを滅菌量のガンマ照射に曝露することによって、組み立てられたスタックおよびハウジングを一緒に滅菌することである。ハウジングおよびフィルタ層のスタックの両方がガンマ照射に対して安定であるため、ハウジングおよびフィルタ層スタックを完成した収容されたデプスフィルタ製品に組み立てることができ、組み立てられた製品を単一のガンマ照射工程によって滅菌することができる。組み立てられたデプスフィルタに、不織布層、ガスケットなどの他の層または材料が存在する場合、他の層または材料もまた、好ましくはガンマ照射に対して安定である。
【0027】
懸濁粒子と溶解した化学材料との組み合わせを含む液体材料を濾過するためのデプスフィルタが知られており、粒子は様々な異なるサイズを有する。特定の使用において、デプスフィルタは、様々なサイズを有する懸濁粒子を含有する細胞培養物などの生物学的(例えば、生物医薬品)流体を清澄化するのに有効である。本明細書で使用される場合、「細胞培養物」という語句は、細胞、細胞破片、少なくとも1つの目的の生体分子(「標的分子」)、ならびに宿主細胞タンパク質(HCP)およびDNAなどの他の望ましくない生体分子を含有する液体である。
【0028】
「清澄化する」または「清澄化」という用語は、細胞培養物から標的分子を単離するために最初に使用される1つまたは複数の工程を指す。清澄化工程は、一般に、遠心分離および深層濾過、タンジェント流濾過、微量濾過、沈殿、凝集および沈降を含み得る1つまたは複数の工程を使用して、細胞培養物から細胞、細胞破片またはその両方を除去することを含む。清澄化プロセスは、2つの別個の清澄化工程、すなわち、「二次」デプスフィルタを使用する二次清澄化工程の上流に、「一次」デプスフィルタを使用する一次清澄化工程を含んでもよい。
【0029】
清澄化工程は、清澄化工程によって除去された細胞培養物中に最初に存在する細胞および細胞破片の多くを有する、標的分子を含有する液体「濾液」または「濾液溶液」を生成する。濾液をさらに処理して、任意の有用な技術によって標的分子を単離し濃縮することができる。有用な技術の一例は、標的分子をクロマトグラフィー樹脂と結合させるために使用される方法を指す「捕捉工程」と呼ばれてもよく、標的分子および樹脂の沈殿物を含有する固体相をもたらす。典型的には、標的分子はその後、固体相から標的分子を除去する溶出工程を用いて回収され、それにより、元の細胞培養物から標的分子が分離される。
【0030】
細胞培養物は、宿主細胞、例えば哺乳動物細胞型、大腸菌、酵母細胞、昆虫または植物に由来する液体および固体材料の組み合わせである。細胞培養物の標的分子は、細胞培養物中に存在する1つまたは複数の望ましくない材料から精製または分離されることが望ましい目的のポリペプチドまたは他の材料であり得る。細胞培養物はまた、「夾雑物」または「デブリ」と呼ばれることもある固体を含有し、その一部は細胞にも由来し、例としては、DNA、RNA、1つまたは複数の宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、ウイルス、脂質、および目的のタンパク質またはポリペプチド(例えば、抗体)を含有する試料中に存在し得る1つまたは複数の添加剤などの生物学的高分子が挙げられる。「宿主細胞タンパク質」は、宿主細胞の溶解物および細胞培養物中に見られる、標的タンパク質以外のタンパク質である。宿主細胞タンパク質は、一般に、細胞培養培地または溶解物(例えば、目的のタンパク質またはポリペプチド(例えば、宿主細胞において発現される抗体または免疫接着)を含有する収集細胞培養液)中に可溶型または不溶性材料として存在する。細胞培養物の種類の具体例は、チャイニーズハムスター卵巣細胞由来の溶液である。
【0031】
デプスフィルタは、一般に、繊維、フィルタ助剤、および水可溶型熱硬化性結合剤を使用して作られたフィルタ層を含む。繊維は、フィルタ助剤を支持するためのネットワークを提供する。フィルタ助剤は、多孔質構造および不純物の吸着のための高い表面積を提供する。結合剤は、所望の機械的強度で材料を結合するように機能する。結合剤はまた、フィルタの構造に負電荷を付与してもよく、これにより、イオン帯電した不純物を吸着するフィルタの能力を高めることができる。
【0032】
記載される有用なデプスフィルタの例は、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含むように作製された1つまたは複数の層を含む。
【0033】
ポリアラミド繊維は合成であり、天然繊維およびデプスフィルタに以前使用されていた他の合成繊維とは異なる。ポリアラミドは、デプスフィルタに一般的に使用されるセルロースなどの天然繊維とは異なるが、ベータ-グルカンなどの抽出可能な材料を含有する。ポリアラミド繊維は、ガンマ照射に対して安定であるため、ポリアクリル繊維などの他の合成繊維とも異なる。ガンマ照射に対して安定であるため、ポリアラミド繊維は、繊維を滅菌量のガンマ照射に曝露する滅菌プロセスによって処理することができる。
【0034】
ポリアラミド繊維の2つの種類の例は、パラアラミド(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)から作製された繊維、およびメタアラミド(ポリメタフェニレンイソフタルアミド)から作製された繊維である。パラアラミドには、Kevlar(登録商標)(DuPontの商標)およびTwaron(登録商標)(帝人株式会社(大阪、日本)の商標)の商品名で販売されているものが含まれる。メタアラミドは、一般に、商品名Nomex(登録商標)(DuPont)およびTeijinconex(登録商標)(帝人株式会社、しばしばConex(登録商標)と呼ばれる)によって呼ばれる。
【0035】
ポリアラミド繊維は、ポリアラミドを含んでもよく、それからなってもよく、または本質的にそれからなってもよい。いくつかの繊維は、ポリアラミドとは異なる材料で表面をコーティングされてもよく、または処理されてもよい。他のものは、ポリアラミドからなるか、または本質的にポリアラミドからなる。本明細書によれば、1つまたは複数の特定の材料から本質的になる材料、成分、または構造(例えば、繊維)は、1つまたは複数の材料と、わずかな量以下の任意の他の材料、例えば、5、1、または0.1%重量以下の任意の他の材料とを含有する。ポリアラミドから本質的になるポリアラミド繊維は、ポリアラミドと、5、1、または0.1%重量以下の他の材料とを含有する。
【0036】
個々のポリアラミド繊維(本明細書では「繊維ストランド」と呼ばれることもある)は、繊維が層内の多数の繊維ストランドの集合体として使用される場合、デプスフィルタの層での使用に有効なサイズ特徴および物理的特性を有する。デプスフィルタの層に有用な個々の繊維ストランドの有用な物理的サイズおよび形状特性が理解されている。一般に、デプスフィルタに有用な繊維は、長さ、長さに沿った直径を有する細長いストランドであり、場合によりフィブリル化されていてもよい。長さは、任意の有用な長さ、例えば、約0.01mm~約1.7mm、例えば、約0.05mm~約1.2mmの範囲の長さであってもよい。
【0037】
ポリアラミド繊維は、場合によりフィブリル化されていてもよい。記載されるフィルタ層は、フィブリル化された繊維、フィブリル化されていない繊維、またはフィブリル化繊維と非フィブリル化繊維との組み合わせを含んでもよい。
【0038】
フィブリル化繊維およびフィブリル化繊維をフィルタ層の材料として使用することが知られている。「フィブリル化繊維」は、その長さに沿ってほつれているかまたは分割されている繊維、または端部が分割されて広げられ、より大きなコア繊維から延びる複数のフィブリルをもたらす繊維である。ほつれまたは分割によってコア繊維上に形成される、より小さくて細い繊維またはフィブリルは、「フィブリル(fibrillae)」として知られている。フィブリル化繊維は、フィブリル分岐の根元でコア繊維体に取り付けられた、別個であるがより小さいフィブリル分岐(または「アーム」または「リム」)を有する主(「コア」)繊維体を含む。
【0039】
フィブリル分岐は、フィルタ助剤粒子をフィルタ層に保持する繊維マトリックスの能力に影響を及ぼし得る。繊維マトリックスのフィブリルが微細であるほど、湿潤敷設プロセス中にマトリックスがより小さいフィルタ助剤粒子をより良好に保持することが可能になる。フィブリル分岐はまた、フィルタ層の孔径を小さくすることによってフィルタ層の濾過特性に影響を及ぼすことができ、これはフィルタ層を通るふるい分け濾過(サイズ排除)流量に基づく濾過特性に影響を及ぼし得る。フィブリル分岐はまた、繊維の非ふるい分け濾過効果(例えば、イオン性または疎水性吸着機構)を高めることによってフィルタ層の濾過特性に影響を及ぼし得る。
【0040】
繊維のフィブリル化度は、Canadian Standard Freeness(CSF)または繊維の希薄懸濁液の排水速度によって測定することができる。より高度にフィブリル化した繊維は、より低いCSFを有する傾向がある。好ましいCSFは10mL~800mLの範囲である。いくつかの実施形態では、600mL~750mLの範囲が使用される。他の実施形態では、200mL~600mLの範囲が好ましい。さらに他の実施形態では、50mL~300mLの範囲が好ましい。さらに他の実施形態では、異なるCSFを有するフィブリル化繊維を組み合わせて、10mL~800mLの範囲の平均CSFを生成することができる。
【0041】
フィルタ層内の繊維の量は、デプスフィルタの層のスタックの深さに沿った層の位置に基づいて所望のフィルタ効果を提供するために所望される量であり得る。繊維は、繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて20~100重量パーセントの繊維、例えば繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて30~80または99.5重量パーセントの繊維の範囲の量でフィルタ層中に存在し得る。
【0042】
これらの量は、フィルタ層が一次フィルタの一部であるか二次フィルタの一部であるかに応じて、またフィルタ層がデプスフィルタの上流にあるか下流にあるかに応じて異なる。一次フィルタの層は、繊維およびフィルタ助剤の総量あたりの繊維の量がより多い。例えば、一次フィルタの層は、層内の繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて、40~100重量パーセントの繊維を有し得る。一次デプスフィルタのスタック内の上流に位置する層は、より大量の繊維を有し、スタック内の下流に位置する層は、より少量の繊維を有する。
【0043】
二次フィルタの層は、繊維およびフィルタ助剤の総量あたりの繊維の量がより少ない。例えば、二次フィルタの層は、層内の繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて、20~60重量パーセントの繊維を有し得る。二次フィルタのスタック内の上流に位置する層は、より大量の繊維を有し、スタック内の下流に位置する層は、より少量の繊維を有する。
【0044】
合成フィルタ助剤は、フィルタ層を通過する液体の材料を保持するためにフィルタ層に含まれる合成粒子である。フィルタ助剤は、例えばふるい分けまたは非ふるい分け機構によって、機械的または非機械的に(吸着的に)液体の材料を引きつけて保持し、その後、材料との接触を維持して材料がフィルタ層を通過するのを防ぎ得る。
【0045】
合成のフィルタ助剤は、天然由来のフィルタ助剤とは対照的に、合成的に製造された材料で作られる。合成フィルタ助剤は、より少ない量の「浸出可能な」または「抽出可能な」不純物を含有し、フィルタ助剤からデプスフィルタを通過する液体に移動することができるフィルタ助剤中の不純物を意味するので、本明細書のデプスフィルタにおいて好ましい。珪藻土およびパーライトなどのフィルタ助剤は、フィルタ材料と接触する液体に移動し得る浸出可能な(抽出可能な)金属などの不純物を含有する。シリカは、合成ではあるが、シリカフィルタ助剤粒子からフィルタを通過する流体に浸出する可能性があるため、フィルタ助剤としてあまり好ましくない場合もある。
【0046】
合成フィルタ助剤の例としては、シリカ、アルミナ、ガラス、他の金属酸化物または混合金属酸化物、イオン交換樹脂、ケイ酸塩、および炭素が挙げられる。本明細書のデプスフィルタのための現在好ましい合成フィルタ助剤には、ケイ酸マグネシウムおよびケイ酸カルシウムなどの金属ケイ酸塩、ならびに活性炭が含まれる。
【0047】
合成フィルタ助剤は、様々な有用な形状およびサイズのいずれかを示す粒子の形態であり得る。例示的なフィルタ助剤粒子は、球形、繊維状、板状、または不規則であり得る。粒子は、ミル、粉砕、ブレンド、ふるい分けを含む工程によって、または所望のサイズまたは規則的もしくは不規則な形状の粒子を生成するのに有効な他の技術によって調製され得る。
【0048】
合成フィルタ助剤粒子は、平均サイズ、サイズ分布、またはその両方などの所望のサイズ特性を有することができる。デプスフィルタの層に使用されるフィルタ助剤粒子の典型的なサイズは、約5μm~約300μmの範囲であり得る。より大きなサイズの粒子は上流に位置するフィルタ層に含まれ、より小さなサイズの粒子は下流に位置するフィルタ層に含まれる。例えば、一次デプスフィルタの第1の上流層は、10、50、または100から300μmまでの範囲の平均サイズを有するフィルタ助剤粒子を有し得る。一次デプスフィルタまたは二次デプスフィルタの最終下流層は、5~50μmの範囲の平均サイズを有するフィルタ助剤粒子を有し得る。第1の上流層と最終下流層との間の層は、連続的により小さい平均粒径の粒子を有する。
【0049】
フィルタ助剤粒子は、相互接続された多孔性または独立気泡多孔性を有する多孔性であってもよく、または非多孔性であってもよい。
【0050】
フィルタ層内のフィルタ助剤の量は、なしであってもよく、またはデプスフィルタの層のスタックの深さに沿った位置に基づいて所望のフィルタ効果を提供するために所望される量であり得る。フィルタ助剤は、繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて0または0.5から80重量パーセントのフィルタ助剤、例えば繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて15または25から80重量パーセントのフィルタ助剤の範囲の量でフィルタ層中に存在し得る。繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づくフィルタ助剤の量は、フィルタ層スタック内の下流位置に位置するフィルタ層ではより多くすることができ、フィルタ層スタック内の上流位置に位置するフィルタ層ではより少なくすることができる。
【0051】
これらの量は、フィルタ層が一次フィルタの一部であるか二次フィルタの一部であるかに応じて、フィルタ層がデプスフィルタの上流にあるか下流にあるかに応じて異なり得る。一次フィルタの層は、繊維およびフィルタ助剤の総量あたりのフィルタ助剤の量がより少ない。例えば、一次フィルタの層は、層内の繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて、0~60重量パーセントのフィルタ助剤を有し得る。一次デプスフィルタのスタック内の上流に位置する層は、より少量のフィルタ助剤を有し、スタック内の下流に位置する層は、より大量のフィルタ助剤を有する。
【0052】
フィルタ構成の、ある特定の例によれば、二次フィルタの層は、一次フィルタの層と比較して、繊維およびリ二助剤の総量当たりのフィルタ助剤の量がより多くてもよい。例えば、二次フィルタの層は、層内の繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて、40~80重量パーセントのフィルタ助剤を有し得る。これらおよび他の例によれば、二次フィルタのスタック内の上流に位置するフィルタの層は、より少量のフィルタ助剤を有してもよく、スタック内の下流に位置する層は、より大量のフィルタ助剤を有してもよい。代替の例では、フィルタの下流層は、上流層と比較してより多量のフィルタ助剤を有してよい。
【0053】
ポリマー結合剤(または略して「結合剤」)は、繊維およびフィルタ助剤を機械的に安定な多孔質フィルタ層に結合するためにデプスフィルタの層に使用される。好ましい結合剤は、水に溶解し、デプスフィルタの層の他の成分(繊維、フィルタ助剤)と組み合わせることができ、続いて化学的に硬化させて(例えば、重合)、繊維およびフィルタ助剤を有用なフィルタ層の形態で一緒に結合するポリマーを形成し得る水可溶型熱硬化性ポリマーである。ポリマー結合剤は、「架橋剤」と呼ばれる場合により存在する反応性成分を含む、複数の異なる分子ポリマー成分を含むことができる。架橋剤は、結合剤のより大きなポリマー分子と反応して、より大きなポリマー分子の分子間または分子内結合のレベルを増加させることができる2つ以上の反応基を含む。
【0054】
ポリマー結合剤は、水と組み合わせて、水中に溶解または分散したポリマーを含有する水性液体を形成することによって、フィルタ層の他の成分に添加するために調製することができる。水性液体は、任意の方法で繊維およびフィルタ助剤と組み合わせることができ、記載のようにデプスフィルタの層に形成することができる。
【0055】
記載されるような結合剤として有用なポリマー樹脂の例としては、フィルタ層に強度を付与するポリマー網目を形成するために反応させることができるアニオン性またはカチオン性基を有する水可溶型合成ポリマーが挙げられる。適切な樹脂としては、尿素またはメラミン-ホルムアルデヒド系ポリマー、ポリアミノポリアミド-エピクロロヒドリン(PAE)ポリマーおよびグリオキサレート化ポリアクリルアミド(GPAM)樹脂が挙げられる。市販の樹脂は、Ashland,Inc.(旧Hercules Inc.)、The Dow Chemical Company、BASF Corporation、Solenis、Nittobo Medical、およびGeorgia-Pacific Chemicals LLCから容易に入手可能である。記載されるような様々なポリマー樹脂と共に有用であり得る架橋剤の例としては、エポキシド架橋剤が挙げられる。
【0056】
フィルタ層中の結合剤の量は、繊維、フィルタ助剤、またはその両方を含むデプスフィルタの他の材料を一緒に保持するのに有用な量であり得る。結合剤は、繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて0.1、0.2、または0.5から10重量パーセントまでの範囲の結合剤、例えば繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づいて1~5重量パーセントの結合剤の量でフィルタ層中に存在し得る。
【0057】
デプスフィルタは、複数の層、例えば2、3、4、5、またはそれよりも多くの層を含有することができ、各層は、異なる(しかし、場合によっては重なり合う)フィルタ特性、特にフィルタ層の孔径を有する。層は、デプスフィルタの深さ方向に孔径勾配をもたらす順序でスタックに構成される。
【0058】
本明細書のデプスフィルタは、ポリアラミド、合成フィルタ助剤、および結合剤を含有する少なくとも1つの層を含有する。例示的なデプスフィルタは、ポリアラミド、合成フィルタ助剤、および結合剤を含有する2つまたは3つの層を含有してもよく、2つまたは3つの異なる層の各々は、異なる平均孔径、異なる孔径分布、またはその両方などの異なる孔径特徴を有する。例示的なデプスフィルタは、ポリアラミド、結合剤を含有するが合成フィルタ助剤を含有しない層をさらに含有してもよい。
【0059】
例示的なデプスフィルタはまた、フィルタ助剤を含まない不織布繊維材料を含有する「不織布」層である層を含んでもよい。不織布材料は、繊維またはフィラメントを絡み合わせて(またはフィルムを穿孔することによって)機械的、熱的、または化学的に作製されたシートまたはウェブ構造として広く定義される。不織布材料は、別個のポリマー繊維または溶融プラスチックもしくはプラスチックフィルムからの平坦で柔軟な多孔質シートである。不織布材料は、製織や編物ではなく、繊維を糸に変換する工程を必要としない。
【0060】
異なる材料、繊維サイズ(直径)の範囲、坪量の範囲、厚さ、および孔径定格から作製された様々な不織布製品が市販されている。不織布材料は、メルトブロー、エアレイド、スパンボンド、スパンレース、サーマルボンド、エレクトロスピニングおよびウェットレイド(湿式)などの様々な技術によって製造することができる。不織布は、ポリマー、無機材料、金属材料、または天然繊維から作製することができる。適切な材料としては、ポリエステル、コーティングされたポリエステル、ポリエチレン、ポリアラミド、コーティングされたポリアラミド、ポリアクリロニトリル、炭素、およびガラスが挙げられる。所望の特性に応じて、繊維径は、約1ナノメートル(nm)~約1ミリメートル(mm)の範囲であり得る。典型的な繊維径は、約10nm~30ミクロン(μm)の範囲内であり得る。
【0061】
不織布材料の坪量は、所与の面積あたりの材料の重量として定義される。有用な坪量の例は、5~800g/mの範囲、例えば200~600g/mの範囲であり得る。不織布メンブレンは、50μm~約1センチメートル(cm)、例えば0.1~0.5cmの範囲などの任意の有用な厚さを有し得る。
【0062】
有用な例によれば、デプスフィルタの層は、各層の孔径がデプスフィルタの深さに沿って下流方向に徐々に減少するように、すなわち、各層の平均孔径が第1の上流層で最大であり、下流方向の各層がより小さい孔径を有し、下流方向の最終層がデプスフィルタの層の最小の孔径を有するように構成される。
【0063】
図1は、上述の多層デプスフィルタの一例を示す。デプスフィルタ100は、入口120および出口122を有するハウジング110を含む。液体124は、一連のフィルタ層102、104、106、および108の上流にある入口120に入る。液体は、最初に第1の(最上流)層102を通過し、次いで層104を通過し、次いで層106を通過し、次いで最終(最下流)層108を通過することによって一連のフィルタ層を通過する。フィルタ層108を通過した後、液体は、濾液126として出口122を通過することによってハウジング110を出る。
【0064】
この例では、層102(「層0」)は、好ましくはポリエステルなどのガンマ照射安定性材料で作られた不織布フィルタ層である。第2の層104(「層1」)は、ポリアラミド繊維および結合剤を含有し、フィルタ助剤を必要としない。この層1(104)は、層0(102)の平均孔径よりも小さい平均孔径の孔を有する。第3の層106(「層2」)は、ポリアラミド繊維、フィルタ助剤、および結合剤を含有する。この層2(106)は、層1(104)の平均孔径よりも小さい平均孔径の孔を有する。第4のフィルタ層108(「層3」)は、ポリアラミド繊維、フィルタ助剤、および結合剤を含有する。この層3(108)は、層2(106)のフィルタ助剤の量よりも多くのフィルタ助剤を含有し、層2(106)の平均孔径よりも小さい平均孔径の孔を有する。
【0065】
場合により、追加の吸着能力を提供するために、フィルタ層0(102)の不織布材料は、浸漬コーティングまたはスプレーなどの既知のコーティング方法を使用して、ポリマー樹脂、例えば本明細書で前述した「結合剤」ポリマーでコーティングされてもよい。
【0066】
いくつかの例示的なデプスフィルタは、上流位置に配置された一次フィルタと、一次フィルタの下流に配置された二次フィルタとを含む。一次フィルタは、不織布層を含む2つ、3つ、または4つのフィルタ層を含んでもよい。二次フィルタは、一次フィルタの下流に配置されたフィルタであり、繊維、フィルタ助剤、および結合剤を含む1つ、2つ、もしくは3つまたはそれよりも多くのフィルタ層を含んでもよく、一次フィルタの層の孔径よりも小さい孔径を有する。
【0067】
図1を参照すると、層0、1、2、および3を含有する図1のデプスフィルタ100は、一次デプスフィルタと考えられ得る。図1はまた、ハウジング136内に2つの追加のフィルタ層132、134を含む二次デプスフィルタ130を示す。ハウジング136は、入口140および出口142を含む。フィルタ層132および134はそれぞれ、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、および結合剤を含むフィルタ層とすることができる。二次フィルタ130の層132は、一次デプスフィルタ100の層3(108)のフィルタ助剤の量よりも多くのフィルタ助剤を含有し、層3(108)の平均孔径よりも小さい平均孔径の孔を有する。二次フィルタ130の層134は、二次デプスフィルタ130の層132のフィルタ助剤の量よりも多くのフィルタ助剤を含有し、層132の平均孔径よりも小さい平均孔径の孔を有する。
【0068】
二次フィルタ130は、フィルタ100を通して液体124を濾過する工程の生成物である液体濾液126から不要な材料を除去するための濾過工程として使用することができる。濾液126の液体は、二次フィルタ130の入口140に入る。入口140は、フィルタ層132および134の上流にある。濾液126は、フィルタ層132を通過し、次いでフィルタ層134を通過し、次いで二次濾液128として出口142を通過することによってハウジング136を出る。
【0069】
ポリアラミド繊維、結合剤およびフィルタ助剤を含有する層は、「湿式(wet-laid)」法によって調製することができる。この技術により、繊維、フィルタ助剤、および結合剤を水に分散させて、平坦な表面に「湿式」で置くことができる実質的に均一なスラリーを形成し、次いで一様なフィルタ層を生成するように乾燥させることによって、水性スラリーが調製される。スラリーを形成するために、繊維、フィルタ助剤、および結合剤を合わせ、次いでブレンダーの使用などの任意の有用な方法によって固体を水性液体中に一様に分散または懸濁させて均一なスラリーを形成する。次いで、スラリーを濾過メッシュ支持体上に置き、重力排水によってスラリーからかなりの量の水を除去して、メッシュ支持体の上面に固体の均一な層を形成することができる。次いで、真空濾過によって残留量の水を除去し、有用な(例えば、上昇した)温度で必要な時間乾燥させることができる。
【0070】
湿式技術によってフィルタ層を調製するために、成分は、スラリーを調製し、次いでメッシュ支持体に塗布することを可能にするのに十分な時間にわたって均一かつ安定なままである実質的に均一な懸濁液を形成することができなければならず、塗布されたスラリーは、スラリーの水を除去すると均一な湿式フィルタ層を生成する。
【0071】
本出願人は、ポリアラミド繊維が、フィルタ助剤粒子と共に、スラリーが湿潤敷設工程によって処理され、実質的に一様な湿式フィルタ層を生成することを可能にするのに十分に均一で安定な水性スラリーを形成することができると判断した。本出願人は、特定の他のポリマー繊維とは異なり、ポリアラミド繊維が、湿潤敷設技術によって記載されるように、フィルタ助剤粒子と共に、繊維を、フィルタ層に形成することができる均一なスラリーに形成することを可能にする物理的特性、特に密度を有すると判断した。
【0072】
有用なスラリーは、実質的に一様な懸濁液中に多数の繊維およびフィルタ助剤粒子の集合体を含有し、フィルタ助剤粒子および繊維はスラリー全体にわたって比較的一様に分配されている。対照的に、一様または均一ではない、または湿式層を形成するのに有効ではないと考えられるスラリーは、懸濁液内に何らかの形態の不均一性を含む。不均一性は、繊維とフィルタ助剤粒子との間の密度の差に基づく繊維とフィルタ助剤粒子との目に見える分離であり得る。不均一な懸濁液では、例えば、より低密度のポリマー繊維が懸濁液の上部に集まるかまたは浮遊し得る一方で、より高密度のフィルタ助剤粒子が懸濁液の下部に集まるかまたは沈降する。スラリー内でのこの分離は、スラリーが湿潤敷設工程で使用されてスラリーから一様なフィルタ層が形成されるのを防ぐ。
【0073】
有用なスラリーは、任意の有用な量の繊維、フィルタ助剤粒子、結合剤および水を含有することができる。例示的なスラリーは、95~99.9重量パーセントの水および0.1~5重量パーセントの固形分を含有することができる。固形分は、固形分の総量に基づいて、またはポリアラミド繊維および合成フィルタ助剤の総量に基づいて、20~100重量パーセントのポリアラミド繊維、0~80重量パーセントの合成フィルタ助剤粒子、および0.5~5重量パーセントの結合剤を含有することができる。
【0074】
例示的な方法では、繊維およびフィルタ助剤(使用される場合)は、水と共にブレンダーに添加される。混合物を一様になるまでブレンドし、次いで、液体が重力によって排出されて湿式パッドを形成するメッシュスクリーン上に注ぐ。別途、結合剤は、パッドを完全に浸漬させるのに十分な量の水に分散され、水酸化ナトリウムが結合剤溶液に添加されて硬化を活性化する。結合剤を含む溶液を(まだ湿っている)パッド上に注ぎ、重力排水させてもよい。真空を適用して残留液体を除去し、次いでパッドを乾燥(および結合剤の設置)のためにオーブンに移す。あるいは、結合剤は、ブレンド中にスラリーに添加することができ、または湿式パッドに注ぐ代わりに、まだ濡れている湿式パッドに噴霧され得る。
【0075】
所望であれば、乾燥したフィルタを予備洗浄して残留材料を除去してもよい。例えば、使用前に、フィルタを600リットル/平方メートル/時間で10分間、脱イオン水で洗い流し、濾液の試料を指定の間隔で収集して全有機炭素を分析する。あるいは、必要とされる水洗の量を最小限に抑えるために、フィルタを、いくらかの低い流束で脱イオン水で5分間洗い流し、次いで濾液を入口に15分間再循環させ、最後に新鮮な脱イオン水で5分間洗い流し、最終的な5分間の濾液を全有機炭素分析のために画分で収集してもよい。
【0076】
本出願人は、繊維およびフィルタ助剤粒子がスラリー内で分離、例えば層状化するのを防ぐのに十分に類似している、すなわち、スラリーが湿式でフィルタ層を形成することを可能にする時間にわたって繊維およびフィルタ助剤粒子がスラリー内に均一に分散および懸濁したままであることを可能にするのに十分に類似している粒子密度を有する繊維およびフィルタ助剤粒子を使用して、記載されたような湿潤敷設工程のための有用または好ましいスラリーを形成することができると判断した。例えば、スラリー内の繊維またはフィルタ助剤粒子の目に見える分離または層状化を示すことなく、スラリーが湿潤敷設のために実質的に均一なままであり得る有用または好ましい期間は、少なくとも5、10、30、60、または120分の期間であり得る。
【0077】
有用または好ましい繊維は、少なくとも1.2、1.3または1.4グラム/立方センチメートルの粒子密度(すなわち、粒子、例えばポリアラミドを形成するために使用される材料の密度)を有し得る。ポリアラミドおよびポリアラミド粒子は、およそ1.44グラム/立方センチメートルの密度(ポリアラミド粒子の「粒子密度」)を有する。記載された範囲内の密度を有する繊維は、2.0グラム/立方センチメートルを超える粒子密度を有する様々なフィルタ助剤粒子と組み合わせて安定なスラリーを形成することが分かった(例えば、ケイ酸カルシウムはおよそ2.3グラム/立方センチメートルの粒子密度を有し、シリカはおよそ2.4グラム/立方センチメートルの粒子密度を有する)。
【0078】
対照的に、低密度(1.2グラム/立方センチメートル未満)の繊維は、説明したように安定なスラリーを形成することがより困難であるか、または形成することができない。ポリエチレン粒子は、およそ0.96グラム/立方センチメートルの粒子密度を有する。水およびフィルタ助剤(例えばシリカ)と組み合わせた場合、ポリエチレン繊維粒子は安定した均一なスラリーを形成しなかったが、フィルタ粒子およびフィルタ助剤粒子の濃度勾配を含む層状懸濁液を生成した。
【実施例1】
【0079】
例示的なデプスフィルタは、ポリアラミド繊維およびケイ酸カルシウムフィルタ助剤を含有する一連のフィルタ層を結合剤と共に積層することによって、記載のように調製した。層が積層されて、徐々に大量のフィルタ助剤を示し、層を通る流れの上流から下流方向により大きな孔からより小さな孔への勾配孔径分布を提供した。
【0080】
各層を調製するために、ポリアラミド繊維を水、ケイ酸カルシウム、およびPAE結合剤(「PAE1」ポリアミノポリアミド-エピクロルヒドリンポリマー)とエポキシド架橋剤(「EC」)の組み合わせとブレンドした。数滴の濃縮水酸化ナトリウムを添加して結合剤を活性化した。スラリーを直径4インチのメッシュスクリーンを有するチューブに排出し、形成されたパッドを排気して過剰な液体を除去し、次いで90℃で2時間乾燥させた。一次デプスフィルタは4つのフィルタ層を使用して作られ、二次フィルタは2つのフィルタ層を含んでいた(以下を参照)。チャレンジ試験のために、47mmのディスクをパッドから打ち抜き、再使用可能な装置ホルダーに密封した。
【0081】
先に凍結したCHO-S細胞培養物(311NTU)を一次フィルタに100L/m2/hで負荷し、濁度測定のために濾液を15分間隔で収集した。濾液の濁度を測定する方法、およびフィルタにわたる圧力降下を測定する方法は公知である。濁度は、Oakton T-100濁度計で測定した。
【0082】
500L/mスループット後、濾液プールの濁度(「プール濁度」)は15NTUであり、圧力降下は3.5psiであった。これを図2に示す。比較のために、市販のデプスフィルタ(Millpore Millistak+(登録商標)HC Pro D0SP)は、同じ試験フローの後、55NTUのプール濁度および3.5psiの圧力降下を有した。本発明のフィルタは、より清澄化された濾液を生成した。
【0083】
上記の一次濾過実験からの濾液をプールし(64NTU)、二次フィルタのチャレンジとして使用した。250L/mでは、本発明のフィルタのプール濁度は0.7NTUであり、圧力降下は2psiであったが、競合フィルタ(Millipore Millistak+(登録商標)HC X0HC)のプール濁度は10.6NTUであり、圧力降下は22psiであった。これを図3に示す。本発明のフィルタは、より清澄化された濾液を生成した。
一次フィルタは4つの層から構成される。
1. PET不織布(400gsm、厚さ2mm)。
2. 2.73gのHP100(Kolon製のポリアラミド繊維)、0.12のPAE1(第1の結合剤)、0.21gのEC(第2の結合剤)。
3. 1.96gのHP100、0.17gのPAE1、0.30gのEC、1.96gのケイ酸カルシウムD。
4. 2.45gのHP300(Kolon製のポリアラミド繊維)、0.14gのPAE1、0.24gのEC、0.82gのケイ酸カルシウムT。
二次フィルタは2つの層から構成される。
1. 2.65gのHP300、0.18gのPAE1、0.31gのEC、1.42gのケイ酸カルシウムT。
2. 0.97gのK544(Kevlar(登録商標)ポリアラミド繊維)、1.94gのHP300、0.15gのPAE1、0.26gのEC、0.51gのケイ酸カルシウムT。
【実施例2】
【0084】
一次および二次デプスフィルタの様々な例を以下のように調製した。
試料2Aは、2種類の熱硬化性ポリアミノポリアミド-エピクロロヒドリンポリマー(「PAE2」および「PAE3」)でコーティングされたポリアラミド(Kevlar(登録商標))からなる第1の(上流)層(これらの種類のポリマーは「PAE」という名称で示されている);ポリエステル不織布材料からなる第2層;湿式ポリアラミド(Twaron(登録商標)1092)、PAEポリマー(「PAE1」)およびエポキシド架橋剤(「EC」)で作製された第3の層;および、湿式ポリアラミド(2種類)、ポリアミノポリアミド-エピクロルヒドリンポリマー(「PAE1」)およびエポキシド架橋剤(「EC」)、ならびにケイ酸カルシウム(Micro-Cel(商標)T-38)からそれぞれ作製された第4および第5の層を有する、5層デプスフィルタの一例である。
試料2Bは、ポリエステル不織布材料から作製された第1の(上流)層;湿式ポリアラミド(Twaron 1092)およびPAEポリマーとエポキシド架橋剤(EC)との組み合わせで作製された第2の層;ならびに、湿式ポリアラミド、PAEポリマー、エポキシド架橋剤(EC)、およびケイ酸カルシウム合成フィルタ助剤(例えば、Florite R(登録商標)、またはMicro-Cel T-38)からそれぞれ作製された第3および第4の層を有する、4層デプスフィルタの一例である。
試料2Cは、湿式ポリアラミド、PAEポリマーおよびエポキシド架橋剤(EC)、ならびに合成フィルタ助剤(活性炭、またはMicro-Cel T38、またはZeopharm(登録商標)250)から作製された各層を有する、3層デプスフィルタの一例である。
試料2Dは、湿式ポリアラミド(2種類)、PAEポリマー、エポキシド架橋剤(EC)、および合成フィルタ助剤から作製された各層を有する、2層デプスフィルタの一例である。
CHO-S細胞培養物(36×10細胞/mL、64.4%生存率、2158NTU)を125L/m/hで一次フィルタに負荷し、濁度測定のために10分間隔で濾液を収集した。図4および図5は、2つの実施例の一次フィルタ2Aおよび2Bの圧力および濁度プロファイルを、比較のための市販の一次デプスフィルタ(MilliporeのMillistak+(登録商標)HC Pro D0SP)の圧力および濁度プロファイルと共に示す。フィルタ2Aは、最も高いスループット、最も低い濁度、および最も低い圧力降下を有し、市販のフィルタよりもはるかに良好な全体的性能を示した。フィルタ2Bは、市販のフィルタよりもわずかに高い圧力降下、わずかに低いスループットを有したが、濁度は有意に低かった。
次いで、一次フィルタ2Aおよび2Bからの濾液を組み合わせて、実施例の二次フィルタ2Cおよび2Dのチャレンジとして使用した。出発濁度は128NTUであった。図6および図7は、比較のために市販の(MilliporeのMillistak+(登録商標)HC Pro X0SP)二次デプスフィルタと共に二次フィルタの圧力および濁度プロファイルを示す。同様のスループットで、実施例の二次フィルタ2Cおよび2Dは、同様またはより低い圧力降下、および著しくより良好な濁度を示した。
【実施例3】
【0085】
試料3Aは、ポリエステル不織布材料で作製された第1の(上流)層;湿式ポリアラミド(Twaron 1092)およびPAEポリマー(「PAE1」)ならびにエポキシド架橋剤(「EC」)で作製された第2の層;湿式ポリアラミドポリアミノポリアミド-エピクロルヒドリンポリマー(「PAE1」)およびエポキシド架橋剤(「EC」)、ならびにケイ酸カルシウム(Micro-Cel T-38)からそれぞれ作製された第3および第4の層を有する、4層一次デプスフィルタの一例である。
試料3Bは、ポリエステル不織布材料で作製された第1の(上流)層;湿式ポリアラミド(Twaron 1092)ならびにPAEおよびECで作製された第2の層;湿式ポリアラミド(Twaron 1092およびTwaron 1094)、PAEおよびEC、ならびにケイ酸カルシウムでそれぞれ作製された第3、第4、および第5の層を有する、5層一次デプスフィルタの一例である。
試料3Cは、湿式ポリアラミド(2種類)、PAEおよびEC、ならびに合成フィルタ助剤としてのケイ酸カルシウムから作製された各層を有する2層二次デプスフィルタの一例である。
試料3Dは、湿式ポリアラミド(2種類)、PAEおよびECポリマー、ならびに合成フィルタ助剤としてのケイ酸カルシウムから作製された各層を有する2層二次デプスフィルタの一例である。
CHO-S細胞培養物(8×10細胞/mL)をMillipore Pellicon 30kDaメンブレンを通して処理して、溶液を88%の生存率で22.4×10細胞/mLに濃縮し、次いでこれを140L/m/hで一次フィルタに負荷した。濾液を収集し、濁度について試験した。図8および図9は、比較のために市販の一次デプスフィルタと共に一次フィルタの圧力および濁度プロファイルを示す。約100L/mでは、3つすべてのフィルタが同様の圧力降下を示したが、フィルタ3Aおよびフィルタ3Bは、市販のフィルタ(MilliporeのMillistak+(登録商標)HC Pro D0SP)よりも濁度がはるかに低かった。
次いで、一次フィルタからの濾液をプールし、二次フィルタのチャレンジとして使用した。出発濁度は307NTUであった。図10および図11は、比較のために市販の二次デプスフィルタと共に二次フィルタの圧力および濁度プロファイルを示す。本発明のフィルタ3Cおよびフィルタ3Dは、市販のフィルタ(MilliporeのMillistak+(登録商標)HC Pro X0SP)よりも高いスループット、低い圧力降下、および低い濁度を有し、はるかにより良好な全体的性能を示した。
【実施例
【0086】
第1の態様では、デプスフィルタは、直列の2つ以上の層を備えており、少なくとも1つの層は、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含む。
【0087】
少なくとも1つの層が、絡み合ったポリアラミド繊維を含む繊維マトリックス、繊維マトリックス全体に分配された合成フィルタ助剤粒子、およびポリアラミド繊維と合成フィルタ助剤粒子とを互いに結合する結合剤、を含む、第1の態様に記載の第2の態様。
【0088】
20~99.5重量パーセントのポリアラミド繊維と、15~80重量パーセントの合成フィルタ助剤と、繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づき、0.5~5重量パーセントの結合剤とを含む、先行する態様のいずれかに記載の第3の態様。
【0089】
ポリアラミド繊維の少なくとも一部がフィブリル化されている、先行する態様のいずれかに記載の第4の態様。
【0090】
合成フィルタ助剤が、金属ケイ酸塩、活性炭、またはそれらの組み合わせを含む、先行する態様のいずれかに記載の第5の態様。
【0091】
合成フィルタ助剤が、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、またはそれらの組み合わせを含む、先行する態様のいずれかに記載の第6の態様。
【0092】
ポリマー結合剤が、尿素ポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、ポリアミノポリアミド-エピクロロヒドリンポリマー、グリオキサレート化ポリアクリルアミドポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーを、場合によりエポキシド架橋剤と共に含む、先行する態様のいずれかに記載の第7の態様。
【0093】
3つの積層された層:ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤とを含む第1の層、ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤と合成フィルタ助剤とを含む第2の層、ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤と合成フィルタ助剤とを含む第3の層、をさらに備え、ここで、第2の層は、第1の層と第3の層との間に位置し、第2の層は、ある量(重量パーセント)の合成フィルタ助剤(重量パーセント)を含有し、第3の層は、ある量(重量パーセント)の合成フィルタ助剤を含有し、第3の層における合成フィルタ助剤の量(重量パーセント)は、第2の層における合成フィルタ助剤の量(重量パーセント)よりも大きい、先行する態様のいずれかに記載の第8の態様。
【0094】
合成不織布材料を含む第4の層をさらに含む、第8に記載の第9の態様。
【0095】
合成不織布材料が、ポリアラミド、コーティングされたポリアラミド、ポリエステル、またはコーティングされたポリエステルを含む、第9の態様に記載の第10の態様。
【0096】
フィルタハウジングの内部に組み立てられた直列の2つ以上の層をさらに備え、層およびフィルタハウジングが、ガンマ照射への曝露によって滅菌される、先行する態様のいずれかに記載の第11の態様。
【0097】
第12の態様は、流体から異なるサイズの粒子を除去する方法に関し、この方法は、先行する態様のいずれかのデプスフィルタに流体を通過させることを含む。
【0098】
流体が、0.2ミクロン~25ミクロンのサイズ範囲を有する粒子を含有する、第12の態様に記載の第13の態様。
【0099】
流体から細胞破片を除去するために流体をデプスフィルタに通過させることをさらに含む、第12または第13の態様に記載の第14の態様。
【0100】
第15の態様は、湿式フィルタ材料を形成する方法であって、水性液体、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、および結合剤を含み、水性液体全体に懸濁されたスラリーを形成することと、スラリーから湿潤スラリー層を形成することと、水性液体を湿潤スラリー層から除去して、脱水された湿式フィルタ材料を形成することと、を含む方法に関する。
【0101】
結合剤が、水溶性熱硬化性結合剤であり、方法が、スラリーに塩基を添加し、湿式フィルタ層を加熱して結合剤を重合させることを含む、第15の態様に記載の第16の態様。
【0102】
スラリーが、スラリーの総重量に基づいて95~99.9重量パーセントの水と0.1~5重量パーセントの固形分とを含み、固形分が、20~100重量パーセントのポリアラミド繊維と、0~80重量パーセントのフィルタ助剤粒子と、繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づき、0.5~5重量パーセントの結合剤とを含む、第15または第16の態様に記載の第17の態様。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デプスフィルタであって、
直列の2つ以上の層を備えており、
少なくとも1つの層が、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、およびポリマー結合剤を含む、デプスフィルタ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの層が、
絡み合ったポリアラミド繊維を含む繊維マトリックス、
前記繊維マトリックス全体に分配された合成フィルタ助剤粒子、および
前記ポリアラミド繊維と前記合成フィルタ助剤粒子とを互いに結合するポリマー結合剤、を含む、請求項1に記載のデプスフィルタ。
【請求項3】
20~99.5重量パーセントのポリアラミド繊維と、
0.5~80重量パーセントの合成フィルタ助剤と、
繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づき、
0.5~5重量パーセントの結合剤と、
をさらに含む、請求項1に記載のデプスフィルタ。
【請求項4】
前記ポリアラミド繊維の少なくとも一部がフィブリル化されている、請求項に記載のデプスフィルタ。
【請求項5】
前記合成フィルタ助剤が、金属ケイ酸塩、活性炭、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載のデプスフィルタ。
【請求項6】
前記合成フィルタ助剤が、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載のデプスフィルタ。
【請求項7】
前記ポリマー結合剤が、尿素ポリマー、メラミン-ホルムアルデヒドポリマー、ポリアミノポリアミド-エピクロロヒドリンポリマー、グリオキサレート化ポリアクリルアミドポリマー、またはそれらの組み合わせから選択されるポリマーを、場合によりエポキシド架橋剤と組み合わせて含む、請求項に記載のデプスフィルタ。
【請求項8】
3つの積層された層:
ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤とを含む第1の層、
ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤と合成フィルタ助剤とを含む第2の層、
ポリアラミド繊維と熱硬化性ポリマー結合剤と合成フィルタ助剤とを含む第3の層、をさらに備え、
ここで、
前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層との間に位置し、
前記第2の層は、ある量(重量パーセント)の合成フィルタ助剤(重量パーセント)を含有し、
前記第3の層は、ある量(重量パーセント)の合成フィルタ助剤を含有し、
前記第3の層における合成フィルタ助剤の前記量(重量パーセント)は、前記第2の層における合成フィルタ助剤の前記量(重量パーセント)よりも大きい、
請求項に記載のデプスフィルタ。
【請求項9】
第4の層をさらに含み、前記第4の層が合成不織布材料を含む、請求項8に記載のデプスフィルタ。
【請求項10】
前記合成不織布材料が、ポリアラミド、コーティングされたポリアラミド、ポリエステル、またはコーティングされたポリエステルを含む、請求項9に記載のデプスフィルタ。
【請求項11】
フィルタハウジングの内部に組み立てられた直列の前記2つ以上の層をさらに備え、前記層および前記フィルタハウジングが、ガンマ照射への曝露によって滅菌される、請求項に記載のデプスフィルタ。
【請求項12】
流体から異なるサイズの粒子を除去する方法であって、請求項に記載のデプスフィルタに前記流体を通過させることを含む、方法。
【請求項13】
前記流体が、0.2ミクロン~25ミクロンのサイズ範囲を有する粒子を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体から細胞破片を除去するために前記流体を前記デプスフィルタに通過させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
湿式フィルタ材料を形成する方法であって、
水性液体、ポリアラミド繊維、合成フィルタ助剤、および結合剤を含んでおり、前記水性液体全体に懸濁されたスラリーを形成することと、
前記スラリーから湿潤スラリー層を形成することと、
前記水性液体を前記湿潤スラリー層から除去して、脱水された湿式フィルタ材料を形成することと、を含む方法。
【請求項16】
前記結合剤が、水溶性熱硬化性結合剤であり、前記方法が、前記スラリーに塩基を添加し、前記湿式フィルタ層を加熱して前記結合剤を重合させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記スラリーが、
スラリーの総重量に基づいて95~99.9重量パーセントの水と、
0.1~5重量パーセントの固形分とを含み、前記固形分が、
20~100重量パーセントのポリアラミド繊維と、
0~80重量パーセントのフィルタ助剤粒子と、
繊維およびフィルタ助剤の総重量に基づき、
0.5~5重量パーセントの結合剤と、を含む、
請求項15に記載の方法。
【国際調査報告】