(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】生分解性組成物および生分解性フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20241018BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20241018BHJP
C08L 3/02 20060101ALI20241018BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C08L67/02 ZBP
C08L67/04
C08L3/02
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523507
(86)(22)【出願日】2023-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2023007911
(87)【国際公開番号】W WO2023239192
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0070912
(32)【優先日】2022-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0073708
(32)【優先日】2023-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンウ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ホン・シク・シム
(72)【発明者】
【氏名】クワン・ソン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デヒョン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ミンスン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ファホン・ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB04X
4J002CF06W
4J002CF19Y
4J002GA01
4J200AA04
4J200AA06
4J200BA07
4J200BA14
4J200BA15
4J200CA01
4J200DA01
4J200EA07
4J200EA08
4J200EA16
(57)【要約】
本発明では、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)および末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む生分解性組成物および生分解性フィルムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);および
末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);を含む、生分解性組成物。
【請求項2】
前記末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、下記の化学式1または2で表される、請求項1に記載の生分解性組成物:
【化1】
前記化学式1および2中、
a~dは、それぞれ独立して、1~500の整数である。
【請求項3】
ポリヒドロキシアルカノエートをさらに含む、請求項1または2に記載の生分解性組成物。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)である、請求項3に記載の生分解性組成物。
【請求項5】
ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体をさらに含む、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体は、3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体である、請求項5に記載の生分解性組成物。
【請求項7】
前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、ポリ乳酸プレポリマーおよびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーが重合されたブロック共重合体である、請求項6に記載の生分解性組成物。
【請求項8】
前記ポリ乳酸プレポリマーおよびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーの少なくとも1つは、重量平均分子量が20,000g/mol超50,000g/mol以下である、請求項7に記載の生分解性組成物。
【請求項9】
前記ポリ乳酸プレポリマーとポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーとの重量比は、95:5~50:50である、請求項7に記載の生分解性組成物。
【請求項10】
前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、下記の数式1および2により算出されるポリ乳酸ブロックの結晶化度とポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化度との総計が20~100である、請求項7に記載の生分解性組成物:
[数式1]
ポリ乳酸ブロックの結晶化度(X
c_PLA)=[(PLA Tm面積)-(PLA Tcc面積)]/93.7
(前記数式1中、PLA Tm面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ乳酸(PLA)ブロックの溶融温度(Tm)でのピークに対する積分値であり、PLA Tcc面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ乳酸ブロックの結晶化温度(Tcc)でのピークに対する積分値である)
[数式2]
ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化度(X
c_P(3HP))=[(P(3HP)Tm面積)-(P(3HP)Tcc面積)]/64
(前記数式2中、P(3HP)Tm面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)(P(3HP))ブロックの溶融温度(Tm)でのピークに対する積分値であり、P(3HP)Tcc面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化温度(Tcc)でのピークに対する積分値である)
【請求項11】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体は、重量平均分子量が50,000~300,000である、請求項5に記載の生分解性組成物。
【請求項12】
熱可塑性デンプンをさらに含む、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性デンプンは、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、およびこれらの変性デンプンからなる群より選択された1つ以上を含む、請求項12に記載の生分解性組成物。
【請求項14】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体およびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の重量比は、5:95~50:50である、請求項5に記載の生分解性組成物。
【請求項15】
前記熱可塑性デンプンおよびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の重量比は、5:95~50:50である、請求項12に記載の生分解性組成物。
【請求項16】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);および
末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);を含む、生分解性フィルム。
【請求項17】
前記生分解性フィルム100重量部に対して、前記末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を0.1~10重量部含む、請求項16に記載の生分解性フィルム。
【請求項18】
前記生分解性フィルムは、ASTM D882-07により測定された最大引張強度が5MPa以上である、請求項16に記載の生分解性フィルム。
【請求項19】
前記生分解性フィルムは、ASTM D882-07により測定された破断伸び率が300%以上である、請求項16に記載の生分解性フィルム。
【請求項20】
前記生分解性フィルムは、ASTM D882-07により測定されたヤング率が50MPa以上である、請求項16に記載の生分解性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年6月10日付の韓国特許出願第10-2022-0070912号および2023年6月8日付の韓国特許出願第10-2023-0073708号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、生分解性組成物および生分解性フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
最近、環境保護とやさしい環境への関心が急増するに伴い、環境にやさしい農産物を栽培する方法の必要性が増大している。このような環境にやさしい農法の一つとしてマルチング農法が知られているが、農作物を栽培する時、土壌の表面をマルチングフィルムなどで覆うことで雑草の生育を防止し、病虫害を予防し、土壌の水分を維持または地温を調節し、雨天時の雨水によって土壌が侵食されるのを防止し、農薬の使用を減らす方法である。
【0004】
このようなマルチング農法に使用されるマルチングフィルムは、農産物の生産性に大きく寄与するが、使用後回収および再利用による困難がある。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂を使用し、生分解性成分を添加剤として添加して生分解性を付与するとはいえ、合成樹脂自体の生分解は不可能なのが現状である。また、生分解されずに残された合成樹脂は土壌を汚染させる問題がある。
【0005】
そこで、生分解性プラスチックであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を用いてマルチングフィルムを製造しようとする試みがあるが、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の伸び率が高いのに対し、ヤング率などの機械的物性が既存のポリエチレンなどのフィルムに比べて低い問題がある。また、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、100%石油ベースの素材であるので、バイオ原料の含有量が低い。
【0006】
このため、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)に多様な生分解性素材をコンパウンディングして物性を向上させ、バイオ原料の含有量を増加させようとする試みがあったが、ポリブチレンアジペートテレフタレートと他の生分解性素材との間に相溶性が少なくて引張特性が低くなる問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、引裂強度、最大引張強度、破断伸び率およびヤング率などの引張特性に優れ、バイオ原料の含有量が増加した生分解性組成物および生分解性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);および末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む生分解性組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の一実施形態によれば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);および末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む生分解性フィルムが提供される。
【0010】
以下、発明の具体的な実施形態による生分解性組成物および生分解性フィルムに関してより詳細に説明する。
【0011】
本明細書全体において、特別な言及がない限り、「含む」または「含有する」というのは、ある構成要素(または構成成分)を特別な制限なく含むことを称し、他の構成要素(または構成成分)の付加を除くと解釈されない。
【0012】
本明細書全体において、「ポリ乳酸プレポリマー」は、乳酸をオリゴマー化させた重量平均分子量1,000~50,000g/molのポリ乳酸を意味する。
【0013】
本明細書全体において、「ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマー」は、3-ヒドロキシプロピオネートをオリゴマー化させた重量平均分子量1,000~50,000g/molのポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)を意味する。
【0014】
また、本明細書において、別途の言及がない限り、ポリ乳酸プレポリマー、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマー、および共重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。具体的には、前記プレポリマーまたは共重合体を2mg/mlの濃度となるようにクロロホルムに溶解させた後、GPCに20μlを注入し、40℃でGPC分析を行う。この時、GPCの移動相はクロロホルムを使用し、1.0mL/分の流速で流入し、カラムはAgilent Mixed-B2個を直列に連結して使用し、検出器としてはRI Detectorを使用する。ポリスチレン標準試験片を用いて形成された検定曲線を利用してMw値を誘導する。ポリスチレン標準試験片の重量平均分子量は、2,000g/mol、10,000g/mol、30,000g/mol、70,000g/mol、200,000g/mol、700,000g/mol、2,000,000g/mol、4,000,000g/mol、および10,000,000g/molの9種を使用した。
【0015】
また、本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示した置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換もしくは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈される。
【0016】
生分解性フィルム製造用組成物を製造するために、ポリブチレンアジペートテレフタレートに他の生分解性素材、例えば、熱可塑性デンプンをコンパウンディングすることができるが、ポリブチレンアジペートテレフタレートは疎水性(hydrophobic)であるのに対し、熱可塑性デンプンは親水性(hydrophilic)であるので、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとがよく混ざらず、相溶性が低下する問題点がある。
【0017】
これに対し、本発明者らは、ポリブチレンアジペートテレフタレートを含む生分解性組成物に相溶化剤として「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」を使用する場合、相溶性が向上して、このような組成物で製造される生分解性フィルムの引張強度などの機械的特性が向上するという点を見出して、本発明を完成した。
【0018】
また、前記ポリブチレンアジペートテレフタレートを含む生分解性組成物に熱可塑性デンプンの含有量が多くなるほど、価格が安価で経済的であり、生分解性が向上し、バイオベースの炭素の含有量が増加するというメリットがあるが、前記生分解性組成物に「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」を相溶化剤として用いることによって、前記熱可塑性デンプンを多量に含み、上述した効果を示すことができる。
【0019】
発明の一実施形態によれば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);および末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む生分解性組成物が提供される。
【0020】
前記「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」は、生分解性組成物の相溶性を向上させる相溶化剤として使用できる。また、「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」は、鎖延長剤として作用して分子量を増加させることができ、溶融粘度を高め、延伸性などの成形性も向上させることができる。
【0021】
前記「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」は、ポリブチレンアジペートテレフタレートの末端のヒドロキシ基にマレイン酸および/または無水マレイン酸がエステル反応して製造できる。この時、前記無水マレイン酸は、前記マレイン酸に比べてポリブチレンアジペートテレフタレートとのエステル反応の反応性が高い。
【0022】
例えば、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートは、下記の化学式1または2で表される。
【0023】
【0024】
前記化学式1および2中、
a~dは、それぞれ独立して、1~500、5~450、10~400または20~300の整数であってもよい。
【0025】
前記化学式1で表される「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」は、マレイン酸に含まれている1個のカルボキシル基がポリブチレンアジペートテレフタレート末端のヒドロキシ基とエステル反応してエステル結合したものであってもよい。また、前記化学式2で表される「末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」は、マレイン酸に含まれている2個のカルボキシル基それぞれが他のポリブチレンアジペートテレフタレート末端のヒドロキシ基とエステル反応してエステル結合したものであってもよい。
【0026】
前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートは、上述のように、マレイン酸および/または無水マレイン酸とポリブチレンアジペートテレフタレートとをエステル反応させて製造できるが、マレイン酸および/または無水マレイン酸の含有量、ポリブチレンアジペートテレフタレートの含有量、反応温度、反応時間、添加剤の種類および含有量などを調節して、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートを製造することができ、このような末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートの重量平均分子量、構造、粘度などを制御することができる。
【0027】
一方、従来は、ポリブチレンアジペートテレフタレートに無水マレイン酸がグラフト結合した相溶化剤を使用する場合があったが、ポリブチレンアジペートテレフタレート鎖の中間にラジカルが生じにくかったり、立体障害(steric hinderance)によってグラフティング反応効率が低いのに対し、前記マレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートは、反応効率が顕著に高いというメリットがある。これによって、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートを相溶化剤として生分解性組成物およびフィルムに含む場合、従来の無水マレイン酸がグラフト結合した相溶化剤を使用する場合に比べて、引裂強度、最大引張強度、破断伸び率およびヤング率などの引張特性に優れることができる。
【0028】
前記一実施形態による生分解性組成物において、前記生分解性組成物の固形分合計100重量%に対して、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートを0.5重量%以上10.0重量%以下で含むことができる。例えば、前記生分解性組成物の固形分合計100重量%に対して、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートを0.7重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、2.0重量%以上含むことができ、9.0重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、5.0重量%以下で含むことができる。前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートが過度に少なく含まれる場合、相溶性の向上効果が現れず、組成物で製造されたフィルムの引張強度などの機械的物性が低下することがあり、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートが過度に多く含まれる場合、溶融粘度が過度に高くなって成形性が低下することがある。
【0029】
また、前記一実施形態による生分解性組成物は、ポリヒドロキシアルカノエートをさらに含むことができる。前記ポリヒドロキシアルカノエートはこれによって限定するものではないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(2-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシバレート)、ポリ(4-ヒドロキシバレート)またはポリ(5-ヒドロキシバレート)であってもよいが、前記生分解性組成物を用いたフィルムの引張特性向上のために、前記ポリヒドロキシアルカノエートは、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)であることが好ましい。
【0030】
また、前記ポリヒドロキシアルカノエートは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が50,000~300,000g/molであり、より具体的には、50,000g/mol以上、70,000g/mol以上、または100,000g/mol以上かつ、300,000g/mol以下、または200,000g/mol以下、または150,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。前記ポリヒドロキシアルカノエートの重量平均分子量が過度に小さければ、全般的な機械的物性が顕著に低下することがあり、重量平均分子量が過度に大きければ、工程過程が難しく、加工性および伸び率が低くなりうる。
【0031】
また、前記生分解性組成物は、生分解性組成物の固形分合計100重量%に対して、前記ポリヒドロキシアルカノエートが3~40重量%で含まれ、より具体的には、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上であるか、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下で含まれる。前記ポリヒドロキシアルカノエートが生分解性組成物に過度に少なく含まれる場合、これによって製造されたフィルムのヤング率および降伏引張強度などの引張特性が低下することがあり、前記ポリヒドロキシアルカノエートが生分解性組成物に過度に多く含まれる場合、これによって製造されたフィルムの伸び率が低くなりうる。
【0032】
また、前記一実施形態による生分解性組成物は、ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体をさらに含むことができる。
【0033】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体は、1個以上のポリヒドロキシアルカノエート(PHA;polyhydroxyalkanoate)ブロックおよび1個以上のポリ乳酸ブロックを含むブロック共重合体であってもよい。前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体が上述したブロックを含むことによって、ポリヒドロキシアルカノエートおよびポリ乳酸が有する環境配慮性および生分解性を示すことができる。
【0034】
前記ヒドロキシアルカノエートは、3-ヒドロキシブチレート、4-ヒドロキシブチレート、2-ヒドロキシプロピオネート、3-ヒドロキシプロピオネート、炭素数が6~14個の中間鎖長の(D)-3-ヒドロキシカルボキシレート、3-ヒドロキシバレート、4-ヒドロキシバレートまたは5-ヒドロキシバレートであってもよい。したがって、前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体は、3-ヒドロキシブチレート-ラクチド共重合体、4-ヒドロキシブチレート-ラクチド共重合体、2-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体、3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体、4-ヒドロキシバレート-ラクチド共重合体または5-ヒドロキシバレート-ラクチド共重合体であってもよいし、例えば、前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体は、柔軟性および機械的物性などを改善するために、3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体であってもよい。
【0035】
前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、ポリ乳酸プレポリマーおよびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーが重合されたブロック共重合体であってもよい。
【0036】
前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、前記ポリ乳酸プレポリマーが有する引張強度および弾性率に優れた特徴を示しながらも、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーがガラス転移温度(Tg)を下げて柔軟性を増加させ、衝撃強度などの機械的物性を改善することによって、ポリ乳酸が有する伸び率が悪くて脆い特性(Brittleness)を防止することができる。
【0037】
前記ポリ乳酸プレポリマーは、乳酸を発酵または重縮合(Polycondensation)して製造されたものであってもよい。
【0038】
前記ポリ乳酸プレポリマーは、重量平均分子量が1,000g/mol以上または5,000g/mol以上、または6,000g/mol以上、または8,000g/mol以上であり、50,000g/mol以下、または30,000g/mol以下であってもよく、最終製造されるブロック共重合体中のポリ乳酸プレポリマー由来の繰り返し単位を含むブロックの結晶性を高めようとする場合、前記ポリ乳酸プレポリマーが20,000g/mol超、または22,000g/mol以上、または23,000g/mol以上、または25,000g/mol以上かつ、50,000g/mol以下、または30,000g/mol以下、または28,000g/mol以下、または26,000g/mol以下の高い重量平均分子量を有することが好ましい。
【0039】
ポリ乳酸プレポリマーの重量平均分子量が20,000g/mol以下であれば、高分子の結晶が小さくて、最終製造されたブロック共重合体において高分子の結晶性を維持しにくく、ポリ乳酸プレポリマーの重量平均分子量が50,000g/molを超えると、重合時、ポリ乳酸プレポリマー間の反応速度よりプレポリマー鎖の内部で起こる副反応速度が速くなる。
【0040】
一方、本発明で使用する「乳酸」は、L-乳酸、D-乳酸、またはその混合物を称する。
【0041】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーは、3-ヒドロキシプロピオネートを発酵または重縮合して製造されたものであってもよい。
【0042】
前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーの重量平均分子量は、1,000g/mol以上または5,000g/mol以上、または8,000g/mol以上、または8,500g/mol以上であり、50,000g/mol以下、または30,000g/mol以下であってもよく、最終製造されるブロック共重合体中のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマー由来の繰り返し単位の結晶性を高めようとする場合、前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーが20,000g/mol超、または22,000g/mol以上、または25,000g/mol以上かつ、50,000g/mol以下、または30,000g/mol以下、または28,000g/mol以下の高い重量平均分子量を有することが好ましい。
【0043】
前記ポリ乳酸プレポリマーで説明したように、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーの重量平均分子量が20,000g/mol以下であれば、高分子の結晶が小さくて、最終製造されたブロック共重合体において高分子の結晶性を維持しにくく、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーの重量平均分子量が50,000g/molを超えると、重合時、ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマー間の反応速度よりプレポリマー鎖の内部で起こる副反応速度が速くなる。
【0044】
つまり、前記ポリ乳酸プレポリマーおよびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーの少なくとも1つは、重量平均分子量が20,000g/mol超50,000g/mol以下であってもよい。
【0045】
一方、前記乳酸および3-ヒドロキシプロピオネートは、微生物の発酵によって再生可能な供給源から製造される可塑性および生分解性化合物であってもよいし、これを重合して形成されたポリ乳酸プレポリマーおよびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーを含む前記ブロック共重合体も、環境配慮性および生分解性を示すことができる。これによって前記ブロック共重合体を含む生分解性組成物および生分解性フィルムは、環境配慮性および生分解性を示しながらも多量のバイオ原料を含むことができる。
【0046】
前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、ポリ乳酸プレポリマーおよびポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーが重合されたブロック共重合体であり、前記ブロック共重合体において前記ポリ乳酸プレポリマーとポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーとの重量比は、95:5~50:50、90:10~55:45、90:10~60:40、90:10~70:30または90:10~80:20であってもよい。前記ポリ乳酸プレポリマーに対して前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーが過度に少なく含まれると、脆い特性(Brittleness)が大きくなり、前記ポリ乳酸プレポリマーに対して前記ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)プレポリマーが過度に多く含まれると、分子量が低くなって加工性および耐熱安定性が低下することがある。
【0047】
前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、上述のように、1個以上のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックと、1個以上のポリ乳酸ブロックとを含み、高い結晶性を示すことができる。
【0048】
例えば、前記3-ヒドロキシプロピオネート-ラクチド共重合体は、示差走査熱量分析により測定した結晶化温度および溶融温度を用いて下記の数式1および2により算出した、前記共重合体中のポリ乳酸ブロックの結晶化度(Xc_PLA)が0超50以下であるか、またはポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化度(Xc_P(3HP))が0~50、または0超50以下であってもよい。
【0049】
また、前記共重合体中のポリ乳酸ブロックの結晶化度とポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化度との総計が、20~100、より具体的には、20以上、または30以上、または32以上であり、100以下、または70以下、または50以下、または48以下であってもよい。
【0050】
前記共重合体は、上述した結晶化度を満足することによって、柔軟性と機械的物性がバランス良く改善され、ポリ乳酸の優れた強度特性とポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)の優れた伸び率特性を同時に示すことができる。
【0051】
一方、前記結晶化度の総計が過度に高ければ、生分解性および加工性が低下することがあり、前記結晶化度の総計が過度に低ければ、強度が低下することがある。
【0052】
[数式1]
ポリ乳酸ブロックの結晶化度(Xc_PLA)=[(PLA Tm面積)-(PLA Tcc面積)]/93.7
【0053】
前記数式1中、PLA Tm面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ乳酸(PLA)ブロックの溶融温度(Tm)でのピークに対する積分値であり、PLA Tcc面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ乳酸ブロックの結晶化温度(Tcc)でのピークに対する積分値であってもよい。
【0054】
[数式2]
ポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化度(Xc_P(3HP))=[(P(3HP)Tm面積)-(P(3HP)Tcc面積)]/64
【0055】
前記数式2中、P(3HP)Tm面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)(P(3HP))ブロックの溶融温度(Tm)でのピークに対する積分値であり、P(3HP)Tcc面積は、示差走査熱量分析により測定したブロック共重合体中のポリ(3-ヒドロキシプロピオネート)ブロックの結晶化温度(Tcc)でのピークに対する積分値であってもよい。
【0056】
また、前記TmおよびTccでのピークに対する積分値とは、TmおよびTccを示すピークの下部面積をそれぞれ積分して求めた値を意味する。
【0057】
この時、前記各ブロックのTmおよびTcc測定のための示差走査熱量分析は、PerkinElmer DSC800装置を用いて行うことができる。また、分析対象試料を窒素雰囲気下で25℃から250℃まで1分あたり10℃の速度で昇温し、再び、250℃から-50℃まで1分あたり-10℃の速度で冷却させ、再び、-50℃から250℃まで1分あたり10℃の速度で昇温させて吸熱カーブを求めて、TmおよびTccを確認できる。
【0058】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)が50,000~300,000g/molであり、より具体的には、50,000g/mol以上、70,000g/mol以上、または100,000g/mol以上かつ、300,000g/mol以下、または200,000g/mol以下、または150,000g/mol以下の重量平均分子量を有する。前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体の重量平均分子量が過度に小さければ、全般的な機械的物性が顕著に低下することがあり、重量平均分子量が過度に大きければ、工程過程が難しく、加工性および伸び率が低くなりうる。
【0059】
前記一実施形態による生分解性組成物は、前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体を含み、例えば、生分解性組成物の固形分合計100重量%に対して3~40重量%含まれ、より具体的には、3重量%以上、5重量%以上、7重量%以上であるか、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下で含まれる。
【0060】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体が生分解性組成物に過度に少なく含まれる場合、これによって製造されたフィルムのヤング率および降伏引張強度などの引張特性が低下することがあり、前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体が生分解性組成物に過度に多く含まれる場合、これによって製造されたフィルムの伸び率が低くなりうる。
【0061】
前記一実施形態による生分解性組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む。
【0062】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)は、生分解性樹脂として生分解性組成物の固形分合計100重量%に対して30~80重量%含まれ、より具体的には、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上であるか、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下で含まれる。
【0063】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が生分解性組成物に過度に少なく含まれる場合、これを用いて製造されたフィルムの伸び率が低くなり、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)が生分解性組成物に過度に多く含まれる場合、これを用いて製造されたフィルムのヤング率および降伏引張強度などの引張特性が低下することがある。
【0064】
前記一実施形態による生分解性組成物に含まれる前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体およびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の重量比は、5:95~50:50、5:95~40:60、10:90~30:70であってもよい。
【0065】
前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体に比べて前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を過度に少なく含むと、伸び率が低くなり、前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体に比べて前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を過度に多く含むと、ヤング率および降伏引張強度などの引張特性が低下することがある。
【0066】
前記一実施形態による生分解性組成物は、熱可塑性デンプンを含むことができる。
【0067】
前記生分解性組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレートの加工性を高め、生分解速度を速くするために、熱可塑性デンプンをさらに含むことができる。
【0068】
前記熱可塑性デンプンは、天然高分子であるデンプンに可塑剤を添加して、既存の汎用樹脂であるポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンなどのように、一定の温度以上でも炭化せず形態が自在に変化可能な熱可塑性を付与したデンプンであってもよい。
【0069】
前記熱可塑性デンプンには、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、キャッサバデンプン、およびこれらの変性デンプンからなる群より選択された1つ以上を含むことができる。
【0070】
また、天然高分子であるデンプンに含まれる前記可塑剤は、イソソルビド、グリセロール、ソルビトール、フルクトース、ホルムアミド、キシリトール、トウモロコシ油および食用油から構成された群より選択された1つ以上であってもよい。
【0071】
前記可塑剤は、前記熱可塑性デンプン合計100重量%に対して5重量%以上50重量%以下、10重量%以上45重量%以下、または15重量%以上、35重量%以下で含まれる。
【0072】
前記熱可塑性デンプンは、生分解性組成物の固形分合計100重量%に対して10~70重量%含まれ、より具体的には、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上であるか、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下で含まれる。
【0073】
前記熱可塑性デンプンが生分解性組成物に過度に少なく含まれる場合、生分解速度が遅くなり、これを用いたフィルムのヤング率および降伏引張強度などの引張特性が低下することがあり、前記熱可塑性デンプンが生分解性組成物に過度に多く含まれる場合、これを用いたフィルムの伸び率が低くなりうる。
【0074】
前記一実施形態による生分解性組成物に含まれる前記熱可塑性デンプンおよびポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の重量比は、5:95~50:50、5:95~40:60、10:90~30:70であってもよい。
【0075】
前記熱可塑性デンプンに比べて前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を過度に少なく含むと、伸び率が低くなり、前記熱可塑性デンプンに比べて前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を過度に多く含むと、生分解速度が遅くなり、ヤング率および降伏引張強度などの引張特性が低下することがある。
【0076】
前記一実施形態による生分解性組成物には、疎水性(hydrophobic)のポリブチレンアジペートテレフタレートおよび親水性(hydrophilic)の熱可塑性デンプンなどが含まれるが、これらの相溶性が向上するか否かは、ポリブチレンアジペートテレフタレートマトリックス(matrix)上で熱可塑性デンプンの分散相が分散している時、前記熱可塑性デンプンの分散相が密で均一に分布するほど、相溶性が向上していると考えられる。また、相溶性が向上するか否かは、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの間の界面で接着力が強くなるほど、これらの相溶性が向上していると考えられる。つまり、ポリブチレンアジペートテレフタレートマトリックス上で熱可塑性デンプンの分散相が密で均一に分布するほど、相溶性が向上しており、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの間の界面で接着力が強いほど、相溶性が向上しているといえる。
【0077】
また、相溶性が向上しているか否かは、高分子粘弾性分析器(DMA;Dynamic Mechanical Analyzer)装置を用いた分析により数値的に確認できるが、例えば、熱可塑性デンプンおよびポリブチレンアジペートテレフタレートのガラス転移温度(Tg)を高分子粘弾性分析器(DMA;Dynamic Mechanical Analyzer)装置を用いて測定して、相溶性が向上するか否かを確認できる。
【0078】
具体的には、ポリブチレンアジペートテレフタレートマトリックス(matrix)上で熱可塑性デンプンの分散相が密で均一に分布するほど、熱可塑性デンプンのガラス転移温度(Tg)は低くなるが、このような熱可塑性デンプンのガラス転移温度を高分子粘弾性分析器により分析して、相溶性が向上するか否かを確認できる。また、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの間の界面で接着力が強いほど、熱可塑性デンプンの分散相が応力をポリブチレンアジペートテレフタレートに効果的に伝達して、ポリブチレンアジペートテレフタレートのガラス転移温度(Tg)、特にソフトセグメント(soft segment)であるブチレン-アジペート繰り返し単位のガラス転移温度(Tg)が増加するが、このようなポリブチレンアジペートテレフタレートのガラス転移温度を高分子粘弾性分析器により分析して、相溶性が向上するか否かを確認できる。
【0079】
したがって、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの間の相溶性に優れているほど、熱可塑性デンプンのガラス転移温度(Tg)は減少するが、例えば、熱可塑性デンプンは、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上140℃以下、15℃以上120℃以下、20℃以上100℃以下、25℃以上80℃以下、25℃以上50℃以下、または25℃以上40℃以下であってもよい。
【0080】
また、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの間の相溶性に優れているほど、ポリブチレンアジペートテレフタレートのガラス転移温度(Tg)は増加するが、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレートのガラス転移温度(Tg)は、-23.0℃以上-10.0℃以下、または-22.5℃以上-15.0℃以下であってもよい。
【0081】
さらに、前記熱可塑性デンプンおよびポリブチレンアジペートテレフタレートのガラス転移温度(Tg)の差の絶対値は、20℃以上70℃以下、25℃以上65℃以下、30℃以上60℃以下、または35℃以上59℃以下であってもよい。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT);および末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を含む生分解性フィルムが提供される。
【0083】
前記生分解性フィルムの製造方法は特に限定されないが、前記一実施形態による生分解性組成物を用いて、公知のインフレーション法、チューブラー法、Tダイキャスティング法などの既存のフィルムの製造法によって得ることができる。例えば、前記組成物をペレット化し、ペレットを60~100℃で6時間以上乾燥して、水分量を1,200ppm以下、500ppm以下、または200ppm以下に制御することができる。以後、ペレット化された複合体を離型フィルムに塗布した後、熱圧着機に入れて圧力を加えてフィルムを製造することができる。この時、温度は、130℃~250℃、150℃~220℃、または160℃~200℃であり、圧力は、5MPa~20MPa、8MPa~17MPa、または10MPa~15MPaであってもよい。
【0084】
したがって、前記生分解性フィルムは、前記生分解性組成物において上述した構成を同一に含むことができる。例えば、前記生分解性フィルムは、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート、前記熱可塑性デンプン、ポリヒドロキシプロピオネートおよび前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体などを含むことができる。また、前記ポリブチレンアジペートテレフタレート、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート、前記熱可塑性デンプン、ポリヒドロキシプロピオネートおよび前記ヒドロキシアルカノエート-ラクチド共重合体の分子量、含有量、構造などは、上述した通りである。例えば、前記生分解性フィルムは、前記生分解性フィルム合計100重量%に対して、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートを0.5重量%以上10.0重量%以下で含むことができる。例えば、前記生分解性フィルム合計100重量%に対して、前記末端のヒドロキシ基にマレイン酸がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートを0.7重量%以上、0.9重量%以上、1.0重量%以上、2.0重量%以上含むことができ、9.0重量%以下、7.0重量%以下、6.0重量%以下、5.0重量%以下で含むことができる。
【0085】
前記生分解性フィルム100重量%に対して、前記熱可塑性デンプンを10重量%以上50重量%以下で含むことができる。例えば、前記生分解性フィルム合計100重量%に対して、前記熱可塑性デンプンを10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上で含むことができ、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下で含むことができる。
【0086】
前記一実施形態による生分解性フィルムの厚さは、10~300μmであってもよく、より具体的には、10μm以上、13μm以上、15μm以上、20μm以上、20μm以上、25μm以上であるか、300μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、50μm以下であってもよい。前記フィルムの厚さが上述した範囲であることによって、弾力が強くなり、取扱性に優れ、ロールの巻取状態や巻出性が良好になる。前記フィルムの厚さが過度に薄い場合、引張強度、引裂強度および伸び率が悪くなって、使用時、フィルムに穴ができたり破れることがあり、前記フィルムの厚さが過度に厚い場合、単価競争力が低くなりうる。前記生分解性フィルムは、農業用マルチングフィルム、使い捨て手袋、医療用個別包装紙、食品包装紙、ゴミ袋または各種工業製品の袋などとして使用することができる。
【0087】
前記一実施形態による生分解性フィルムは、ASTM D882-07により測定された最大引張強度が5MPa以上、7MPa以上、8MPa以上、または5MPa~30MPaであってもよい。
【0088】
前記一実施形態による生分解性フィルムは、ASTM D882-07により測定された破断伸び率が300%以上、350%以上、400%以上、420%以上、430%以上、または300%~700%であってもよい。
【0089】
また、前記生分解性フィルムは、ASTM D882-07により測定されたヤング率(Young’s Modulus)が50MPa以上、70MPa以上、74MPa以上、80MPa以上、50MPa~800MPaであってもよい。
【0090】
前記生分解性フィルムの最大引張強度、破断伸び率およびヤング率は、MD(Machine Direction)およびTD(Transverse Direction)方向で測定された数値がそれぞれ上述した数値範囲を満足することができる。
【発明の効果】
【0091】
本発明によれば、環境配慮性および生分解性を維持しながらも、引裂強度、最大引張強度、破断伸び率およびヤング率などの引張特性に優れ、バイオ原料を含む生分解性組成物および生分解性フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0092】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0093】
製造例1:熱可塑性デンプンの製造
乾燥重量ベースでトウモロコシデンプン225g、グリセロール75gを混合器でミキシングした後、押出機に投入してコンパウンディングした。押出機の温度範囲は80~150℃であり、スクリュー(screw)速度は150rpmに設定し、押出したストランド(strand)をペレタイザー(pelletizer)で切断して熱可塑性デンプンペレットを製造した。
【0094】
製造例2:末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレートの製造
インターナルミキサー(Internal mixer)に、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT、Solpol 1000N、SOLTECH社)100gおよびマレイン酸10gを入れて、160℃で50rpmで30分間反応させて「末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート」を製造した。
【0095】
<実施例および比較例>
実施例1:生分解性フィルムの製造
乾燥重量ベースでポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT、Solpol 1000N、SOLTECH社)750g、前記製造例1で製造された熱可塑性デンプン250g、および前記製造例2で製造された末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート50gをハンドミキシングした後、押出機に投入してコンパウンディングした。押出機の温度範囲は120~150℃であり、スクリュー(screw)速度は150rpmに設定し、押出したストランド(strand)をペレタイザー(pelletizer)で切断して複合体ペレットを製造した。製造された複合体ペレットを、Collin社のFilm blown unit(BL50T)を用いて180℃で厚さ15μmのフィルムを製造した。
【0096】
比較例1:生分解性フィルムの製造
前記製造例2で製造された末端のヒドロキシ基(-OH)にマレイン酸(Maleic acid)がエステル結合したポリブチレンアジペートテレフタレート50gを使用しなかったことを除き、実施例1と同様の方法でフィルムを製造した。
【0097】
評価
1.引張特性評価
実施例および比較例のフィルムに対して、ASTM D882-07で引張特性を評価した。引張特性はMD(Machine Direction)およびTD(Transverse Direction)での引裂強度、最大引張強度および破断伸び率を含み、その結果は下記表1に示した。
【0098】
【0099】
前記表1によれば、実施例1は、比較例1に比べて、引裂強度、最大引張強度および破断伸び率がすべて顕著に優れていることを確認した。
【国際調査報告】