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特表2024-539219硫酸ニッケル生成物の製造方法及びシステム
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  • 特表-硫酸ニッケル生成物の製造方法及びシステム 図1a
  • 特表-硫酸ニッケル生成物の製造方法及びシステム 図1b
  • 特表-硫酸ニッケル生成物の製造方法及びシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】硫酸ニッケル生成物の製造方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/10 20060101AFI20241018BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20241018BHJP
   B01D 29/33 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C01G53/10
B01D29/04 510A
B01D29/04 530A
B01D29/32 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523897
(86)(22)【出願日】2022-10-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022077572
(87)【国際公開番号】W WO2023066656
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/262,927
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21205128.8
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】フリシュート,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ホーフィンガー,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】ベーリンク,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピヒマイヤー,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4D116
4G048
【Fターム(参考)】
4D116AA24
4D116BB01
4D116BC01
4D116BC27
4D116BC47
4D116DD01
4D116DD07
4D116FF17B
4D116FF18B
4D116KK06
4D116QA26B
4D116QA26G
4D116QA42B
4D116QA42G
4D116VV11
4D116VV30
4G048AA07
4G048AB02
4G048AB08
4G048AD03
4G048AE05
(57)【要約】
本開示は、元素状ニッケル粒子を硫酸及び過酸化水素水溶液と反応させて、硫酸ニッケル生成物、例えば電池材料に適した硫酸ニッケル生成物を製造する方法及びシステムに関する。
図1a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル粒子をハンドリング装置(1、20)から、分離装置(4、23)を内部に含む容器(2、21)に導入する工程であって、前記分離装置(4、23)が前記容器(2、21)を通るニッケル粒子の流れを制御し、前記ニッケル粒子が前記分離装置(4、23)上に固定床(3、22)を形成する工程と;
不活性化ガス(8)を1つ以上のガス入口によって前記容器(2、21)に導入する工程と;
硫酸溶液(9、28)を1つ以上の液体入口によって前記容器(2、21)に導入する工程と;
過酸化水素溶液(10、29)を1つ以上の液体入口によって前記容器(2、21)に導入する工程であって、前記硫酸溶液(9、28)、前記過酸化水素溶液(10、29)、及び前記ニッケル粒子を反応させて、前記ニッケル粒子のサイズを縮小して硫酸ニッケルスラリーを形成するか、ニッケル粒子を溶解して硫酸ニッケル溶液を形成するか、又はそれらの組み合わせ(11、24)を行い;硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ(11、24)を前記分離装置(4、23)を通過させる工程と;
硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ(11、24)を、硫酸ニッケル生成物が回収できるようになるまで連続的に、一端で前記容器(2、21)から外部循環ループ(6、25)に移送し、前記外部循環ループ(6、25)によって反対側の端部で前記容器(2、21)に戻す工程と
を含む、硫酸ニッケル生成物を調製する方法。
【請求項2】
前記方法は、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ(11、24)を、1つ以上のポンプ(5、26)を用いて前記外部循環ループ(6、25)を通して圧送することをさらに含み、前記ポンプ(5、26)が前記容器(2、21)の外部にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、1つ以上の温度プローブを用いて、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ(11、24)の温度を測定することをさらに含み、任意に、前記方法が、1つ以上の熱交換装置(7、27)を用いて、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ(11、24)の温度を調節することをさらに含み、前記熱交換装置(7、27)が容器の外部にある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の熱交換装置(7、27)が冷却装置を含み、及び/又は前記1つ以上の熱交換装置(7、27)が加熱装置を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性化ガス(8)が、水蒸気、窒素、アルゴン、及びそれらの組み合わせから選択され、及び/又は前記ニッケル粒子が、ペレット、ラウンド、カソード、ブリケット、粉末、及びそれらの組み合わせから選択される形態である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記硫酸溶液(9、28)及び過酸化水素溶液(10、29)が、前記容器(2、21)に導入される前に予め混合され、及び/又は前記方法が、濾過装置(4、23)を用いて、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ(11、24)を濾過して、硫酸ニッケル生成物を回収する準備ができたときに、硫酸ニッケル生成物を回収することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、硫酸ニッケル生成物を活性炭上に通過させて、残留の過酸化水素を除去することをさらに含むか、又は前記方法が、硫酸ニッケル生成物を加熱して残留の過酸化水素を除去することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
イオン交換によってFe3+イオンを除去することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
40℃~200℃の範囲の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
硫酸ニッケル生成物が、70g/l~200g/lの範囲のNi2+濃度及び0~4の範囲のpHを有するか、又は硫酸ニッケル生成物がさらに精製することなく使用するのに適している、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
その中にニッケル粒子の流れを制御するための分離装置(23)を有する第1反応容器(21)であって、前記分離装置(23)上にニッケル粒子の固定床(22)を形成するように構成される、第1反応容器(21);
ニッケル粒子を前記第1反応容器(21)に導入するための第1ハンドリング装置(20);
第1外部ループ(25);
硫酸溶液(28)、過酸化水素溶液(29)及び水(30)をそれぞれ前記第1反応容器(21)に導入するために、前記第1外部ループ(25)の上部に配置された液体入口
を含む、硫酸ニッケル生成物を調製するためのシステムであって、
前記分離装置(23)が、微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液(24)を通過させ、底部で容器(21)を出て、前記第1外部ループ(25)に入るように構成され;
前記第1外部ループ(25)が、微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液(24)を、前記第1反応容器(21)の上部で前記第1反応容器(21)に戻すように構成され;
前記システムが、微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液(24)を前記第1外部循環ループ(25)を通して圧送するための1つ以上のポンプ(26)をさらに含み、前記ポンプ(26)が前記第1反応容器(21)の外部にあり;
前記システムが、微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液(24)の温度を調整するための1つ以上の熱交換装置(27)をさらに含み、前記熱交換装置(27)が前記第1反応容器(21)の外部にあり;
前記システムが、第2反応容器(31)、第2反応容器(31)に追加のニッケル粉末を装入するための第2ハンドリング装置(20)、硫酸(28)及び過酸化水素(29)を第2反応容器(31)に装入するための液体入口、及び第2外部ループ(35)をさらに含み;
前記第1外部ループ(25)が、微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液(24)の一部を前記第1反応容器(21)から前記第2反応容器(31)に排出するように構成され;
前記第2外部ループ(35)が、硫酸ニッケル溶液を、分離装置及び熱交換器(33)を通り、ポンプを介して前記第2反応容器(31)の一端から前記第2反応容器(31)の他端に再循環するように構成され;
前記第2外部ループ(35)が、前記第2反応容器(31)からニッケル生成物溶液を排出するための出口(34)を含む、システム。
【請求項12】
前記第2反応容器(31)が多段攪拌機(32)を含有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1外部ループ(25)が、微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液(24)を前記第1反応容器(21)から前記第2反応容器(31)の底部に排出するように構成され、前記第2外部ループ(35)が硫酸ニッケル溶液を前記第2反応容器(31)の上部から前記第2反応容器(31)の底部に再循環するように構成されている、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
硫酸ニッケル生成物を濾過し、残存する微粒子を除去するための濾過装置をさらに含む、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項15】
前記濾過装置がメンブレンフィルターである、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、元素状ニッケル粒子を硫酸及び過酸化水素水溶液と反応させて、硫酸ニッケル生成物、例えば電池材料に適した硫酸ニッケル生成物を製造する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
硫酸ニッケルは、多くの用途において、例えばニッケル水素電池及びリチウムイオン電池の電極材料の源として有用である。これらのタイプの電池は、ハイブリッド電気自動車、携帯電話、パソコンなどに使用されている。そのため、特に過去10年間はますます需要が高まっており、このニーズは高い率で成長し続けている。
【0003】
硫酸ニッケルを製造する方法のひとつは、元素状ニッケル粒子を硫酸に溶解することである。このプロセスでは、揮発性の水素ガスが発生し、危険な環境になるため、安全な環境が必要である。さらに、酸の水溶液に元素状ニッケル粒子を溶解させるプロセスは、ほとんどの非酸化性の酸、特定の条件下では一部の酸化性の酸でさえ、実用的でないほど時間がかかることが多い。
【0004】
CN 111 439 791 Aは、気液乳化による硫酸ニッケルの製造方法を開示している。空気酸化法を適用することにより金属ニッケルを硫酸で溶解して、硫酸ニッケルを製造する。固定床反応器に脱脂及び活性化した金属ニッケルブロックを充填し、適量の脱塩水を補充し;気液混合ポンプを開いて、底部溶液から溶液を吸引し、純酸素と混合して乳化気液混合溶液を調製し、乳化気液混合溶液を固定床下部から反応器内に圧送し;その間、反応器内のpH値が1.0未満に制御されることが保証されるため、硫酸をゆっくり添加し;酸の添加が完了し、pH値が一定の値に達すると、反応を停止し、反応液を濾過して純粋な硫酸ニッケル溶液を得る。
【0005】
GB 2 104 053 Aは、ニッケル及びコバルトの硫酸塩及び塩化物の製造方法を開示している。ニッケル又はコバルトの硫酸塩又は塩化物は、0.5m/kg以下の表面積を有するそれぞれの金属の片を高温の硫酸又は塩酸に溶解し、塩溶液を30℃未満に冷却して塩を結晶化させることにより調製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】CN 111 439 791 A
【特許文献2】GB 2 104 053 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
硫酸ニッケル生成物、特に電池製造の原料として使用するのに適した硫酸ニッケル生成物をコスト効率よく安全な方法で製造するための代替な方法及びシステムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、元素状ニッケル粒子を硫酸及び過酸化水素水溶液と反応させて、硫酸ニッケル生成物、例えば電池材料に適した硫酸ニッケル生成物を製造する方法及びシステムに関する。本開示において、複雑な機械的攪拌装置を使用することなく、硫酸ニッケル生成物を製造できることが驚くべきことに見出された。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1a図1aは、硫酸ニッケル生成物を製造するための本開示の実施形態を図式化したものである。
図1b図1bは、硫酸ニッケル生成物を製造するための本開示の別の実施形態を図式化したものである。
図2図2は、硫酸ニッケル生成物を製造するための本開示のさらなる実施形態を図式化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、硫酸ニッケル生成物を調製する方法を提供する。この方法は、ハンドリング装置から容器にニッケル粒子を導入することを含む。本開示の容器は、分離装置を内部に含み、この分離装置は、ニッケル粒子が分離装置を通過するのに適した大きさである場合に、容器を通るニッケル粒子の流れを制御する。この方法はまた、反応混合物を容器の一端から循環させ、容器の反対側の端部に戻すための外部循環ループを使用することも含む。
【0011】
この方法は硫酸溶液及び過酸化水素溶液を含む。この方法は、約40℃~約200℃の範囲の温度で行われてもよい。この方法では、ペレット、ラウンド(円形、round)、カソード、ブリケット、粉末、及びそれらの組み合わせから選択される形態であってもよい元素状ニッケル粒子が使用される。
【0012】
本開示の方法は、周囲圧力を超える圧力、及び不活性雰囲気下で行うことができる。不活性雰囲気は、水素、水蒸気、窒素、アルゴン、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。方法はまた、周囲圧力で行われてもよい。この方法は、反応容器内で製造した硫酸ニッケル溶液をさらに処理するための第2容器をさらに含むことができる。
【0013】
硫酸ニッケル生成物は、70g/l~200g/lの範囲のNi2+濃度及び0~2の範囲のpHを有してもよい。硫酸ニッケル生成物は2~4の範囲のpHを有してもよい。硫酸ニッケル溶液を濾過して硫酸ニッケル生成物を製造してもよく、この硫酸ニッケル生成物は、さらに精製することなく使用するのに適している。硫酸ニッケル生成物を活性炭の上に通すか、又は加熱して残留の過酸化水素を除去し、及び/又は、例えばイミノ二酢酸、アミノホスホン酸、又はアミノメチルホスホン酸をベースとするイオン交換による選択的イオン交換に供して、Fe3+イオンを除去することができる。
【0014】
本開示は、硫酸ニッケル生成物を調製するためのシステムも提供する。このシステムはまた、ニッケル粒子を容器に導入するためのハンドリング装置;不活性化ガスを導入するためのガス入口;及び硫酸及び/又は過酸化水素溶液を容器に導入するための液体入口を含む。システムは、分離装置を内部に備えた容器を含む。分離装置は、ニッケル粒子が適切な大きさである場合に、そこを通過するニッケル粒子の流れを制御する。システムはまた、反応混合物を容器の一端から反対側の一端に循環させるための外部循環ループを含む。
【0015】
本明細書で使用される「a」又は「an」エンティティは、特に明記しない限り、そのエンティティの1つ以上を指し、例えば、「容器」は、1つ以上の容器又は少なくとも1つの容器を指す。このように、「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「周囲圧力」という用語は、本開示のシステム及び/又はプロセスが実施される周囲の空気及び外部環境の圧力を意味する。周囲圧力は、典型的には大気圧である。
【0017】
本明細書で使用される「不活性雰囲気」という用語は、本開示のシステム及び方法において非反応性である気体環境を意味する。例えば、不活性雰囲気は、主に非反応性ガスからなる実質的に酸素を含まない環境である。例示的な非反応性ガスとしては、例えば、窒素及びアルゴンが挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される「容器」という用語は、気体、液体、固体、及びそれらの混合物を含む、1つ以上のプロセス成分を含有するのに適した容積を規定する構造を意味する。本開示の容器は、任意の好適な材料で構築されてもよく、そのような材料の非限定的な例としては、ガラス、元素金属、金属合金、プラスチック、ラミネート、セラミック、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。容器は、環境に対して開放されていてもよいし、圧力下で作動するように閉鎖されていてもよい。本明細書に記載の容器は、本開示の方法の成分を受容及び/又は放出するための1つ以上の入口及び出口を含むようにさらに構成される。
【0019】
本開示では、添付した図面(図1a、1b、及び2)に描かれているように、硫酸ニッケル生成物を製造するためのニッケル浸出は、カラムなどの容器内で行われる。容器にニッケル粒子を導入するには、ハンドリング装置が使用される。ニッケル粒子は、固定床構成として反応器に充填され、硫酸及び過酸化水素溶液は、別々に(例えば、順次又は連続的に)又は予備混合物として容器に導入され、ニッケル金属粒子の床を通って流れ、粒子を浸出させて硫酸ニッケルスラリー及び硫酸ニッケル溶液を形成させる。
【0020】
より大きなニッケル粒子をせき止め、一方でより小さなニッケル粒子を通過させるための、本開示の容器における分離装置は、例えば、オリフィスを有するプレート、グリッド、ふるい、濾過装置、固体の充填床、フィルターキャンドル、堰、ラメラセパレータ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。より大きなニッケル粒子は、硫酸及び過酸化水素水溶液とさらに反応し、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液を形成し、最終的に分離装置を通過するようにサイズを縮小することができる。
【0021】
硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液は、容器の一端から外部循環ループを通り、1つ以上のポンプを使用して、容器の反対側の端まで連続的に循環される。この操作は、例えば、硫酸ニッケル溶液中のニッケル粒子の分散の維持、反応混合物の混合の補助、熱制御の補助、又はそれらの任意の組み合わせを助けることができる。硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせは、硫酸ニッケル生成物を回収する前に、さらなる処理のために第2容器に移すことができる。
【0022】
最後に、硫酸ニッケル溶液を、例えば熱交換器(空気冷却器)を用いて約50℃まで冷却し、その後、クロスフローフィルターなどのフィルターに通して残存する微粒子を除去する。濾過された溶液は、その後、活性炭に通すか、又は加熱して未反応の過酸化水素を除去することができる。硫酸ニッケル生成物をイオン交換に供して、Fe3+イオンを除去することもできる。その後、硫酸ニッケル生成物は、貯蔵タンクに入れ、貯蔵することができる。本開示の硫酸ニッケル生成物は、所定のニッケル濃度及びpH仕様を有するように製造することができる。
【0023】
方法は、不活性雰囲気下、周囲圧力下、40℃~200℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、方法は50℃~120℃の温度で行われる。
【0024】
以下の説明は、元素状ニッケル粒子を硫酸及び過酸化水素水溶液と反応させて硫酸ニッケル生成物、例えば電池材料の製造に適した硫酸ニッケル生成物を提供するための、開示された方法及びシステムの異なる態様の様々な実施形態を提供する。
【0025】
方法
本開示は、硫酸ニッケル生成物を調製する方法を提供し、ここで、この方法が、ニッケル粒子をハンドリング装置から、分離装置を内部に含む容器に導入することと、ニッケル粒子を硫酸、過酸化水素、水、及びそれらの任意の組み合わせと反応させて硫酸ニッケル生成物を形成することとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、ハンドリング装置は容器へのニッケル粒子の導入を制御する。いくつかの実施形態では、ハンドリング装置はロータリーフィーダーである。いくつかの実施形態では、ハンドリング装置は振動フィーダーである。いくつかの実施形態では、ハンドリング装置は機械式フィーダーである。いくつかの実施形態では、ハンドリング装置は遠心フィーダーである。いくつかの実施形態では、ハンドリング装置はホッパーである。
【0027】
いくつかの実施形態では、分離装置は、より大きなサイズのニッケル粒子を保持しながら、より小さなニッケル粒子及び硫酸ニッケル溶液を通過させるためのオリフィスを有するプレートを含む。いくつかの実施形態では、分離装置はグリッドである。いくつかの実施形態では、分離装置はフィルター(濾過)装置である。いくつかの実施形態では、分離装置は固体の充填床である。いくつかの実施形態において、分離装置は、1つ以上のフィルターキャンドルである。いくつかの実施形態において、分離装置は堰である。いくつかの実施形態において、分離装置は、ラメラセパレータである。いくつかの実施形態において、分離装置はプラスチック製である。いくつかの実施形態において、分離装置はふるいである。
【0028】
いくつかの実施形態において、硫酸溶液は、プロトン化又は非プロトン化される水を含む。いくつかの実施形態において、硫酸の含水率は、硫酸に基づいて2質量%~95質量%の範囲である。いくつかの実施形態において、硫酸の含水率は、硫酸に基づいて15質量%~30質量%の範囲である。いくつかの実施形態では、選択される硫酸の濃度は、対象となる硫酸ニッケル溶液の濃度に依存する。
【0029】
いくつかの実施形態において、過酸化水素溶液は、プロトン化又は非プロトン化される水を含む。いくつかの実施形態において、過酸化水素水溶液の含水率は、過酸化水素に基づいて5質量%~95質量%の範囲内である。いくつかの実施形態において、過酸化水素の含水率は、過酸化水素に基づいて15質量%~30質量%の範囲である。いくつかの実施形態において、過酸化水素溶液は30質量%の溶液である。いくつかの実施形態において、選択される過酸化水素の濃度は、対象となる硫酸ニッケル溶液の濃度に依存する。
【0030】
いくつかの実施形態では、硫酸溶液及び過酸化水素溶液は、容器に導入される前に予め混合される。いくつかの実施形態では、硫酸溶液及び過酸化水素溶液は別々に容器に導入される。
【0031】
いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は不規則な形状及びサイズのものである。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は均一な形状及びサイズを有する。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は塊状である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は削りくずの形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子はペレットの形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子はラウンドの形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子はカソードの形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は電極片の形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子はブリケットの形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は粉末の形態である。いくつかの実施形態では、元素状ニッケル粒子は、ペレット、ラウンド、カソード、ブリケット、及び粉末のうちの1つ以上の組み合わせの形態である。いくつかの実施形態では、ブリケットは、粉末及び/又は断片をバインダーと組み合わせてブリケットを形成したものである。いくつかの実施形態では、ニッケル粒子は液体状で導入される。いくつかの実施形態では、ニッケル粒子は、ニッケル粒子を含有する液体として導入される。いくつかの実施形態では、ニッケル粒子は、ニッケル/酸化ニッケル(Ni/NiO)粒子を含有する液体として導入される。
【0032】
いくつかの実施形態では、ニッケルの塊は、5mm~10cmの範囲の長さ、幅及び高さを有する。いくつかの実施形態において、ニッケルの削りくずは、0.1mm~1mmの範囲の厚さ、1mm~5mmの範囲の幅、及び1cm~20cmの範囲の長さを有する。いくつかの実施形態において、ニッケルのブリケットは、2cm~4cmの範囲の長さ、及び15mm~25mmの範囲の高さを有する。いくつかの実施形態において、ニッケルの電極片は、0.5mm~7mmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態において、ニッケルの電極片は、1mm~10mmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態において、切断されていないニッケルの電極片は、1mm~3mmの範囲の厚さ、及び不規則な断面を有し、最も広い場所での直径は40mmを超えず、平均直径は10mm~30mmの範囲である。いくつかの実施形態では、切断されたニッケルの電極は、0.5mm~7mmの範囲の厚さを有する。いくつかの実施形態において、ニッケル電極のサイズは10cm×10cm×1cmである。いくつかの実施形態において、ニッケルの粉末は、10μm~150μmのd50を有する。本明細書においてd50は、メジアン粒径又はメジアン粒子サイズを意味する。
【0033】
いくつかの実施形態では、ニッケル粒子は、硫酸ニッケルスラリーを形成するために粒径が縮小される。いくつかの実施形態では、ニッケル粒子は硫酸溶液及び過酸化水素溶液と反応して硫酸ニッケル溶液を形成する。いくつかの実施形態では、ニッケル粒子は、硫酸ニッケルスラリーを形成するためにサイズを縮小し、硫酸溶液及び過酸化水素溶液と反応して硫酸ニッケル溶液を形成する。
【0034】
硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液は、一方の端部で容器から外部循環ループに移送され、外部循環ループを通って反対側の端部で容器に戻される。いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液は、下端で容器から外部循環ループに移送され、外部循環ループを通って上端で容器に戻される。いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液は、上端の容器から外部循環ループに移送され、外部循環ループを通って下端の容器に戻される。
【0035】
いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液は、硫酸ニッケル生成物が回収の準備が整うまで、容器及び外部循環ループを通して連続的に循環される。いくつかの実施形態において、方法は、濾過装置を用いて、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせを濾過し、硫酸ニッケル生成物を回収の準備ができたときに回収することをさらに含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、方法は、1つ以上のポンプを用いて、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液を、外部循環ループを通して吸い出すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、ポンプは容器の外部にある。いくつかの実施形態では、ポンプは容器の内部にある。
【0037】
いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はこれらの組み合わせは、外部ループの出口を介して容器から、さらなる処理のための第2反応容器に移送される。いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はこれらの組み合わせは、第2容器の上部セクションに移送される。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はこれらの組み合わせは、第2容器の底部に移送される。いくつかの実施形態では、第2容器は多段攪拌機を備える。いくつかの実施形態では、第2容器は、任意に、追加のニッケル粒子、硫酸溶液、及び/又は過酸化水素溶液で充填される。いくつかの実施形態では、第2容器内の硫酸ニッケル溶液は、ポンプを介して第2容器の上部から下部へ再循環(リサイクル)される。いくつかの実施形態において、第2容器内の硫酸ニッケル溶液は、ポンプを介して第2容器の下部から上部へ再循環される。いくつかの実施形態において、第2容器は、第2外部ループを備える。いくつかの実施形態では、第2外部ループは、回収される硫酸ニッケル生成物を排出するための第2出口を備える。
【0038】
いくつかの実施形態において、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせは、第2容器の多段攪拌機を用いて第2容器内でさらに混合される。いくつかの実施形態では、第2容器は、追加の硫酸、追加の過酸化水素、又はそれらの組み合わせでさらに充填される。
【0039】
いくつかの実施形態において、方法は、反応中に硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせをサンプリングすることを含む。いくつかの実施形態において、サンプリングは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせの濃度を測定することを含む。いくつかの実施形態において、サンプリングは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせのpHを測定することを含む。いくつかの実施形態において、サンプリングは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ中のニッケル粒子の平均粒径を測定することを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液の温度は、1つ以上の温度プローブ又はその等価物を用いて測定される。いくつかの実施形態では、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液の温度は、1つ以上の熱交換装置を用いて調整される。いくつかの実施形態では、熱交換装置は冷却装置である。いくつかの実施形態では、熱交換装置は加熱装置である。いくつかの実施形態では、熱交換装置は加熱装置と冷却装置を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、方法は40℃~200℃の範囲の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は50℃~180℃の範囲の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は、60℃~160℃の範囲の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は、70℃~140℃の範囲の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は、80℃~120℃の範囲の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は80℃の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は90℃の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は100℃の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は110℃の温度で実施される。いくつかの実施形態において、方法は120℃の温度で実施される。
【0042】
いくつかの実施形態において、方法は周囲圧力で実施される。いくつかの実施形態において、方法は、周囲圧力を超える圧力で実施される。いくつかの実施形態において、本方法は、不活性化ガスを用いて不活性雰囲気下で実施される。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは、水蒸気、窒素、アルゴン、及びそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは水蒸気である。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは窒素である。いくつかの実施形態において、不活性化ガスはアルゴンである。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは容器のヘッドスペースに導入される。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは反応混合物に導入される。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは、分離装置の下の領域に導入される。いくつかの実施形態において、不活性化ガスは、分離装置の上方の領域に導入される。
【0043】
いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、70g/l~200g/lの範囲のNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、90g/l~150g/lの範囲のNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、100g/l~140g/lの範囲のNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、110g/lのNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、118g/lのNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、120g/lのNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、130g/lのNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、140g/lのNi2+濃度を有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は、120g/lのNi2+濃度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は0~4の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は0.5~3.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は1.0~3.0の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は1.5~2.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は1のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は3のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は4のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2~4の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.2~3.8の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.4~3.6の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.5~3.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.5のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.6のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.7のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.8のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は2.9のpHを有する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物は3.0のpHを有する。いくつかの実施形態において、pHは、投与された硫酸の濃度に依存する。いくつかの実施形態において、pHはガラス電極を用いて測定される。いくつかの実施形態において、pHは組合せ電極を用いて測定される。
【0045】
いくつかの実施形態では、硫酸ニッケル生成物を活性炭上で濾過し、有機化合物を除去する。いくつかの実施形態では、硫酸ニッケル生成物を活性炭上で濾過し、過剰の過酸化水素を除去する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物をイミノ二酢酸ベースのイオン交換に供して、Fe3+イオンを除去する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物をアミノホスホン酸ベースのイオン交換に供して、Fe3+イオンを除去する。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物を、アミノメチルホスホン酸ベースのイオン交換に供して、Fe3+イオンを除去する。いくつかの実施形態において、有機化合物はニッケルブリケットからのバインダーである。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル溶液を濾過して硫酸ニッケル生成物を生成した後、さらなる精製は必要ない。硫酸ニッケル生成物の精製又は精製の程度は、いくつかの要因に依存する。例えば、出発材料、すなわち元素状ニッケル、硫酸、過酸化水素及び水の純度、及びこれらの原料の1種以上がプロセスに流入し続けることである。硫酸ニッケル生成物の純度は50%~100%の範囲である。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物の純度は95%~100%である。いくつかの実施形態において、硫酸ニッケル生成物の純度は98%~100%の範囲である。
【0046】
いくつかの実施形態において、本開示の硫酸ニッケル生成物は、さらに精製することなく使用するのに適している。
【0047】
システム
本開示は、硫酸ニッケル生成物を調製するためのシステムも提供し、このシステムは、その中を通るニッケル粒子の流れを制御するための分離装置を内部に有する第1反応容器;ニッケル粒子を容器に導入するためのハンドリング装置;不活性化ガスを導入するためのガス入口、硫酸及び過酸化水素溶液を容器に導入するための液体入口;及び反応混合物を循環させるための第1外部循環ループ含む。このシステムは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はこの2つの組み合わせをさらに処理するための第2反応容器をさらに含む。
【0048】
システムは、第1反応容器及び第2反応容器へのニッケル粒子の導入をそれぞれ制御するハンドリング装置を含む。いくつかの実施形態において、ハンドリング装置はロータリーフィーダーである。いくつかの実施形態において、ハンドリング装置は振動フィーダーである。いくつかの実施形態において、ハンドリング装置は機械式フィーダーである。いくつかの実施形態において、ハンドリング装置は、遠心フィーダーである。いくつかの実施形態において、ハンドリング装置はホッパーである。
【0049】
第1反応容器における分離装置は、より大きなニッケル粒子をせき止める一方、より小さなニッケル粒子を通過させるように構成されている。より大きなニッケル粒子は、硫酸及び過酸化水素水溶液とさらに反応し、硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液を形成し、最終的に分離装置を通過するようにサイズを縮小することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、第1反応容器における分離装置は、オリフィスを有するプレートを含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、グリッドを含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、ふるいを含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、濾過装置を含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、固体の充填床を含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、1つ以上のフィルターキャンドルを含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、堰を含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、ラメラセパレータを含む。いくつかの実施形態において、容器における分離装置は、前述の装置の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、分離装置はプラスチック製である。
【0051】
第1反応容器は、ニッケル粒子を受け入れて、分離装置とニッケル粒子の固定床を形成するように構成されている。いくつかの実施形態において、ニッケル金属粒子は容器内で1つの単一床として構成される。いくつかの実施形態において、ニッケル金属粒子は、容器内でそれぞれのシェル内の複数の床として構成される。いくつかの実施形態において、ニッケル金属粒子は複数の水平床として構成される。いくつかの実施形態において、ニッケル金属粒子は、複数の平行充填チューブとして構成される。
【0052】
いくつかの実施形態において、容器は、未充填又はガラス繊維で充填されたエポキシ樹脂で作られる。いくつかの実施形態において、容器はエポキシ-ガラス繊維の積層材料である。いくつかの実施形態において、容器は、プラスチック、例えばポリプロピレン、PVC又はPVDF、及びまたスチールアウターに導入されたプラスチックチューブである。いくつかの実施形態において、容器は鉛又は鉛合金製である。いくつかの実施形態において、容器は鋼などの金属容器である。いくつかの実施形態において、鋼製容器は上記の材料でライニングされている。
【0053】
システムは、硫酸ニッケルスラリー及び硫酸ニッケル溶液を第1外部循環ループを通して圧送するための1つ以上のポンプをさらに含む。いくつかの実施形態において、ポンプは容器の外部にある。
【0054】
いくつかの実施形態において、システムは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせの温度を測定するための1つ以上の温度プローブをさらに含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、システムは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせの温度を調整するための1つ以上の熱交換装置をさらに含む。いくつかの実施形態において、熱交換装置は容器の外部にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の熱交換装置は冷却装置を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の熱交換装置は加熱装置を含む。
【0056】
システムは、硫酸ニッケル生成物が回収される前に、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせを回収して、さらに処理するための第2反応容器をさらに含む。いくつかの実施形態において、第2反応容器は、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせをさらに混合するための多段攪拌機をさらに含む。第2反応容器は、追加の硫酸、追加の過酸化水素、水、又はそれらの組み合わせで第2容器をさらに充填するための液体入口を備えている。
【0057】
第2反応容器は、追加のニッケル粉末、硫酸溶液、及び/又は過酸化水素溶液が充填されるように構成されている。第2反応容器は、硫酸ニッケル溶液を第2反応容器の一端から反対側の端部へ再循環するように構成される。いくつかの実施形態において、第2反応容器は、硫酸ニッケル溶液を、ポンプを介して第2反応容器の上部から下部に再循環するように構成される。いくつかの実施形態において、第2反応容器は、ポンプを介して第2反応容器の下部から上部へ硫酸ニッケル溶液を再循環するように構成される。第2反応容器は、第2外部ループを備える。第2外部ループは、回収される硫酸ニッケル生成物を排出するための第2出口を備える。
【0058】
いくつかの実施形態において、システムは、反応中に硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせをサンプリングするための1つ以上のサンプリングポートをさらに含む。いくつかの実施形態において、サンプリングは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせの濃度を測定することを含む。いくつかの実施形態において、サンプリングは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせのpHを測定することを含む。いくつかの実施形態において、サンプリングは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせ中のニッケル粒子の平均粒径を測定することを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、システムは、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はそれらの組み合わせを濾過し、硫酸ニッケル生成物を回収する準備ができたときに回収するための濾過装置をさらに含む。いくつかの実施形態において、システムは、硫酸ニッケル溶液を濾過して硫酸ニッケル生成物を製造し、残存する微粒子を除去するためのフィルターを含む。いくつかの実施形態において、フィルターはクロスフローフィルターである。いくつかの実施形態において、フィルターはメンブレンフィルターである。
【0060】
本開示の例示的な実施形態を説明する前に、本開示は、以下の実施例に記載される構造又はプロセス工程の詳細に限定されず、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施される又は行われることが可能であることを理解されたい。
【実施例
【0061】
以下の実施例は例示を意図したものであり、本開示の範囲を限定するものでは決してない。
【0062】
硫酸ニッケル生成物を製造するための1段階セットアップ:
図1a及び図1bに示すように、1段階プロセスでは、1つ以上の形状及びサイズのニッケル粒子を含有するハンドリング装置(1)を使用して、反応容器(2)にニッケル粒子を装入し、グリッド(4)などの分離装置上に固定床(3)を形成することができる。固定床(3)は、粒径勾配に配列された粒子を含み、すなわち、床の一端にあるより大きな粒子が、反対側の端部に向かって徐々に粒径を縮小し、より小さな粒子が反対側の端部にある。その後、ポンプ(5)を用いて、外部ループ(6)及び熱交換器(7)を介して、容器(2)の一端から容器の反対側の端部へ循環される水などの液体媒体で、容器(2)を充填する。
【0063】
不活性化ガス(8)、例えば窒素、アルゴン、又は蒸気を使用して、容器の上部を充填する。周囲圧力で混合物を75℃に加熱した。硫酸(9)及び過酸化水素(10)を、所定のニッケル濃度を有する硫酸ニッケル溶液を達成する方法で、容器(2)の1箇所以上にある1つ以上の入口を介して連続的に投与することができる。ハンドリング装置(1)からニッケル原料を反応器(2)に連続的に装入する。
【0064】
一実施形態では、図1aに示すように、反応混合物を容器(2)の上部から下部へ循環する。ニッケル金属、硫酸及び過酸化水素が反応すると、ニッケル粒子は、サイズが縮小し、ニッケル床勾配(3)に沿って移動し、最終的には硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はその2つの組み合わせ(11)の形態で、分離装置(4)を通過できるほど縮小する。硫酸ニッケル生成物を、外部ループ(6)の排出口(12)によって容器から排出し、回収する。
【0065】
別の実施形態では、図1bに示すように、反応混合物を容器(2)の下部から上部へ循環する。ニッケル金属、硫酸、過酸化水素がニッケル床勾配(3)に沿って移動し、液体分配器(13)によって硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又は両者の組み合わせ(11)の形態でニッケル床(3)の上部に圧送する。回収のために、硫酸ニッケル生成物を、外部ループ(6)の排出口(12)によって容器から排出する。
【0066】
硫酸ニッケル生成物を製造するための2段階セットアップ:
図2に示すように、2段階プロセスでは、第1段階で、1つ以上の形状及びサイズのニッケル粒子を含有するハンドリング装置(20)を使用して、第1反応容器(21)にニッケル粒子を装入し、キャンドルフィルター(23)などの分離装置上に固定床(22)を形成することができる。微粉を含有する、硫酸ニッケルスラリー、硫酸ニッケル溶液、又はこれらの組み合わせ(24)を、第1反応容器(21)の下部から、ポンプ(26)を介して第1外部ループ(25)を通り、熱交換器(27)を介して第1反応容器(21)の上部まで再循環する。混合物を75℃に加熱する。硫酸(28)、過酸化水素(29)及び水(30)を、外部ループ(25)の上部に配置された3つの別個の入口によって第1反応容器(21)に連続的に注入する。スラリーの一部を、外部ループ(25)を介して第1反応容器(21)から多段攪拌機(32)を含有する第2反応容器(31)の底部に排出する。第2反応容器(31)には、任意に、ハンドリング装置(20)を介して追加のニッケル粉末を装入することができる。硫酸(28)及び過酸化水素(29)は、任意に、別個の入口を介して第2反応容器(31)に直接投入することができる。硫酸ニッケル溶液を、分離装置(図示せず)及び熱交換器(33)を通り、ポンプを介して容器(31)の上部から下部に再循環する。ニッケル生成物溶液を、第2外部ループ(35)内の出口(34)を介して、第2反応容器(31)から排出して、回収する。
【符号の説明】
【0067】
1 ハンドリング装置
2 反応容器
3 固定床
4 グリッド
5 ポンプ
6 外部ループ
7 熱交換器
8 不活性化ガス
9 硫酸
10 過酸化水素
11 硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液
12 出口
13 液体分配器
20 ハンドリング装置
21 第1反応容器
22 固定床
23 キャンドルフィルター
24 微粉を含有する硫酸ニッケルスラリー及び/又は硫酸ニッケル溶液
25 第1外部ループ
26 ポンプ
27 熱交換器
28 硫酸
29 過酸化水素
30 水
31 第2反応容器
32 多段攪拌機
33 熱交換器
34 出口
35 第2外部ループ
図1a
図1b
図2
【国際調査報告】