(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】銅の湿式原子層エッチングの方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20241018BHJP
C23F 1/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01L21/306 F
C23F1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524368
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 US2022043508
(87)【国際公開番号】W WO2023086156
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514028776
【氏名又は名称】トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ネッツバンド,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アベル,ケイト
(72)【発明者】
【氏名】ファゲ,ジャックス
(72)【発明者】
【氏名】シタラム,アルカルグドゥ
【テーマコード(参考)】
4K057
5F043
【Fターム(参考)】
4K057WA13
4K057WB04
4K057WD05
4K057WE11
4K057WE13
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4K057WN01
5F043AA26
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5F043DD30
5F043EE07
5F043EE08
5F043GG02
5F043GG10
(57)【要約】
本開示は、銅をエッチングするための新規な湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを提供する。より具体的には、本開示は、銅を湿式ALEプロセスでエッチングするための新規なエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。本明細書で開示される新規なエッチング化学物質を湿式ALEプロセスで利用することにより、本開示は、銅の高選択性エッチングを単分子層精度で提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングの方法であって、当該方法は、
銅金属層が形成された基板を受容するステップであって、前記基板の表面には、前記銅金属層の酸化された銅表面層が露出される、ステップと、
有機溶剤中に溶解されたカルボン酸を含む錯化溶液に、前記基板の前記表面を暴露するステップであって、前記カルボン酸は、前記酸化された銅表面層と反応してカルボン酸銅層を形成し、該カルボン酸銅層は前記有機溶剤中で不溶性である、ステップと、
前記カルボン酸銅層の形成に続いて、前記基板の前記表面から前記錯化溶液を除去するステップと、
前記基板の前記表面を溶解液に暴露し、前記カルボン酸銅層を選択的に除去し、前記カルボン酸銅層の下側にある前記銅金属層を露出させるステップであって、前記溶解液は、反応剤および水性溶媒を含み、前記反応剤は、前記カルボン酸銅層と反応して、前記水性溶媒により溶解される可溶性化学種を形成する、ステップと、
前記基板の前記表面から前記溶解液および前記可溶性化学種を除去し、前記銅金属層をエッチングするステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
さらに、
前記基板の前記表面を前記錯化溶液に暴露するステップと、
前記錯化溶液を除去するステップと、
前記基板の前記表面を前記溶解液に暴露するステップと、
前記基板から所定量の前記銅金属層が除去されるまで、前記溶解液を除去するステップを複数サイクルにわたって繰り返すステップと、
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カルボン酸は、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、またはフマル酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)もしくは別のアルコール、ジエチルエーテル((C
2H
5)
2O)、アセトニトリル(C
2H
3N)、ジメチルスルホキシド(C
2H
6OS)、ケトン、または酢酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸はシュウ酸であり、前記有機溶剤はイソプロピルアルコール(IPA)であり、前記シュウ酸は、前記酸化された銅表面層と反応してシュウ酸銅層を形成し、
該シュウ酸銅層は、IPA中で不溶性であるが、前記溶解液に含まれる水性溶媒には可溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記表面を前記錯化溶液に暴露するステップは、前記下側にある銅金属層上に前記カルボン酸銅層の少なくとも1つの単分子層を形成するために必要な一定期間にわたって、前記基板の前記表面に前記錯化溶液を供給するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボン酸はシュウ酸であり、前記錯化溶液は、前記基板の前記表面に少なくとも5秒間供給され、前記下側にある銅金属層上にシュウ酸銅の少なくとも1つの単分子層が形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記溶解液中の前記反応剤は塩基である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記溶解液中の前記反応剤は、水酸化アンモニウム(NH
4OH)である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記カルボン酸銅層を選択的に除去し、前記下側にある銅金属層を露出させた後、前記溶解液は、前記下側にある銅金属層の露出表面を再酸化し、新たな酸化された銅表面層を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶解液は、前記下側にある銅金属層または前記新たな酸化された銅表面層をエッチングしない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶解液は、水性の水酸化アンモニウム(NH
4OH)を含み、
前記カルボン酸銅層を選択的に除去するステップの後、前記溶解液中の前記水酸化アンモニウムの濃度は、前記下側にある銅金属層または前記新たな酸化された銅表面層をエッチングするレベルを下回るように維持される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記錯化溶液を除去するステップおよび前記溶解液を除去するステップは、各々、前記基板の前記表面をパージ溶液でリンスし、前記基板の前記表面から過剰な反応物を除去するステップを有し、前記錯化溶液および前記溶解液が混合することが防止される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して銅をエッチングする方法であって、当該方法は、
a)上部に酸化された銅(Cu)表面層が形成されたCu金属層を有する基板を受容するステップと、
b)前記酸化されたCu表面層を、錯化剤を含む錯化溶液に暴露して、前記酸化されたCu表面層に前記錯化剤を結合させ、前記Cu金属層に、錯体結合した酸化されたCu表面層を形成するステップと、
c)前記基板を第1のパージ溶液でリンスして、前記基板の表面から前記錯化溶液を除去するステップと、
d)前記錯体結合した酸化されたCu表面層を溶解液に暴露することにより、前記錯体結合した酸化されたCu表面層を前記Cu金属層から選択的に除去するステップであって、前記溶解液は、前記錯体結合した酸化されたCu表面層を溶解し、前記Cu金属層上に新たな酸化された前記Cu表面層を形成する、ステップと、
e)前記基板を第2のパージ溶液でリンスして、前記基板の前記表面から前記溶解液を除去し、前記Cu金属層をエッチングするステップと、
を有する、方法。
【請求項15】
ステップa)およびb)は、時間的な重なりを有しない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、ステップb)~e)を少なくとも1回繰り返して、前記Cu金属層をさらにエッチングするステップを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記溶解液は、水性水酸化アンモニウム(NH
4OH)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記溶解液は、前記Cu金属層または前記新たな酸化されたCu表面層をエッチングしない、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記溶解液は、水酸化アンモニウム(NH
4OH)を含み、
前記錯体結合した酸化されたCu表面層を選択的に除去するステップの後、前記溶解液中の前記水酸化アンモニウムの濃度は、前記Cu金属層または前記新たな酸化されたCu表面層をエッチングするレベルを下回るように維持される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記錯化剤は、有機溶剤中に溶解されている、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記錯化剤は、イソプロピルアルコール(IPA)中に溶解されたシュウ酸を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記基板は、さらに、露出した誘電体層を有し、該誘電体層は、ステップb)~e)によりエッチングされない、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月9日に出願された「Method for Wet Atomic Layer Etching of Copper」と題する米国仮特許出願第63/277,443号、および2022年4月20日に出願された「Method for Wet Atomic Layer Etching of Copper」と題する米国非仮特許出願第17/725,072号の優先権を主張するものであり、これら開示内容は、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本出願は、同時係属の同一所有者による2022年2月17日に出願された「Methods for Wet Atomic Layer Etching of Ruthenium」と題する米国特許出願第17/674,579号に関連し、その開示の全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本開示は、半導体装置製造に関し、具体的には、例えば銅(Cu)金属であるがこれに限定されない、金属のエッチングおよび除去に関する。通常の半導体製作の間、基板上に形成された様々な金属が、パターン化されたエッチング、化学的機械的研磨、並びに他の技術により除去される場合がある。プラズマベース、または気相(乾式エッチング、または液体ベース(湿式エッチング)を含む、基板上の層をエッチングする様々な技術が知られている。
【0004】
湿式エッチングは、基板の表面上に化学溶液を分配すること、または基板を化学溶液中に浸漬することを含む。多くの場合、化学溶液は、溶媒と、基板表面上の材料と反応するように設計された化学物質と、反応生成物の溶解を促進する化学物質とを含む。基板表面をエッチャントに曝した結果、基板から材料が除去される。エッチャントの組成および温度により、エッチング速度、選択性(specificity)、およびエッチング後の基板表面上の残留材料を制御することができる。
【0005】
基板構造の幾何形状が縮小し続け、構造の種類が進化するにつれて、基板のエッチングの課題が増大している。これらの課題に対処するために利用されてきた1つの技術が、原子層エッチング(ALE)である。ALEプロセスは、一般に、1回以上の自己律速型反応(self-limiting reaction)を通じて薄層を連続して除去するプロセスを含むことが知られている。例えば、ALEは典型的には、原子の精度でエッチングできる技術、すなわち、材料を材料の1層のまたは複数層の単分子層だけ除去することによる技術を指す。一般に、ALE方式は、エッチング対象である表面の化学的改質(chemical modification)、およびその後の、改質された層の選択的除去に依存する。したがって、ALEプロセスは、エッチングプロセスを、表面の改質(surface modification)と改質された表面の除去という連続した工程に分離することにより、性能を向上させる。そのようなプロセスは、多くの場合、層改質工程およびエッチング工程の複数の周期的な連続工程を含む。改質工程は露出表面を改質でき、エッチング工程は改質層を選択的に除去できる。
【0006】
プラズマALE技術、熱ALE技術、および湿式ALE技術を含む、様々なALEプロセスが知られている。全てのALEプロセスのように、湿式ALEは、典型的には、連続的な自己律速型反応(self-limiting reaction)を使用して、表面から材料を選択的に除去する周期的プロセスである。しかしながら、熱およびプラズマALEとは異なり、湿式ALEにおいて使用される反応は主に液相で起こる。他のALEプロセスと比較して、湿式ALEは、室温(または室温の近く)および大気圧にて実施できるので多くの場合に望ましい。加えて、湿式ALEプロセスの自己律速型の性質は、他のエッチングプロセス中に一般に見られる荒れよりもむしろ、エッチング中に表面を平滑化することにつながる。
【0007】
湿式ALEプロセスは典型的には表面改質工程で始まる。この工程は、材料を第1の溶液に曝して、自己律速式に改質された表面層を形成する。改質表面層は、酸化、還元、配位子結合、または配位子交換により形成できる。理想的には、改質表面層は材料の一番上の単分子層に限られ、改質反応がこれ以上進行することを防止する不動態化層として機能する。改質表面層が形成された後、湿式ALEプロセスは、その後に続く溶解工程において、改質表面層を第2の溶液に曝して改質表面層を選択的に溶解することができる。溶解工程は、下にある改質されていない材料を少しも除去することなく、改質表面層を選択的に溶解しなければならない。この選択性は、表面改質工程で使用したものとは異なる溶媒を溶解工程において使用すること、pHを変更すること、または第2の溶液中の他の成分の濃度を変更することによって実現できる。湿式ALEサイクルは、所望のまたは指定されたエッチング量が実現されるまで繰り返され得る。
【0008】
銅(Cu)金属は、集積回路の相互接続金属として一般に使用されている。3次元相互接続(3DI)および完全整合ビア(FAV)のための銅/銅ハイブリッド接合は、例えば誘電材料によって取り囲まれ得る、電気的接触部を形成するために、銅パッドリセスのナノメートル以下の制御に依存している。いくつかの従来のプロセスでは、銅パッドリセスは化学機械平坦化(CMP)で実現される。しかしながら、フィーチャサイズが縮小するにつれて、基板表面上で露出された銅および誘電材料が同じ速度で研磨される傾向があり、その結果、コンタクトパッドの近くで平坦領域が生じてプロセスウィンドウが厳しく制限される。いくつかのハイブリッド接合およびFAVプロセスノードは、CMPにとって小さ過ぎる。例えば、CMPは、FAVまたはサブ100nmのCuボンドパッド用のサブ32nmバックエンドオブライン(BEOL)Cuラインに対して、良好な銅の均一性を伴うサブnm銅リセス制御を提供することができない。
【0009】
銅などの金属をエッチングするために、連続エッチング技術も利用されてきた。金属をエッチングするための既知の連続エッチング技術は、多くの場合、自己律速型酸化工程において酸化剤(例えば、酸素プラズマ、オゾン、または過酸化水素)を使用して、金属の露出表面上に酸化物を形成し、酸湿式エッチングを行って酸化物を選択的に除去する。これらの既知の技術が連続ハイブリッドまたは湿式エッチングプロセスを提供する一方、自己律速型酸化工程において酸化物を形成するのに必要な強力な酸化剤に起因して、原子層の制御が欠如している。したがって、原子レベルでのエッチング制御を提供しながら、エッチングプロセス中に露出された他の材料に対する高いエッチング選択性も実現する、Cu金属をエッチングするための改善された湿式エッチング方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、銅(Cu)金属をエッチングするための新規な湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを提供する。より具体的には、本開示は、銅を湿式ALEプロセスでエッチングするための新規なエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。本明細書で開示される新規なエッチング化学物質を繰り返し湿式ALEプロセスで利用することにより、本開示は、銅の高選択性エッチングを単分子層精度で提供する。
【0011】
本開示では、基板上に形成された銅金属層をエッチングするための湿式ALEプロセスが提供され、銅金属層の露出表面は、酸化された銅表面層(例えば、酸化銅層)を含む。湿式ALEプロセスは、1回以上のALEサイクルを含む周期的プロセスであり、各ALEサイクルは、錯体化工程および溶解工程を含む。錯体化工程では、基板の表面は、第1の溶媒中に溶解させた錯化剤(例えば、カルボン酸塩ベースの配位子)を含む錯化溶液に曝される。錯化剤は酸化された銅表面層と反応して配位子-金属錯体(例えば、錯体結合した酸化された銅表面層)を形成し、これは第1の溶媒に不溶性である。
【0012】
配位子-金属錯体が形成された後、溶解工程を実施して、下にある銅金属層を除去することなく配位子-金属錯体を選択的に溶解し除去することができる。溶解工程では、基板の表面は、反応剤および水性溶媒を含む溶解液に曝される。反応剤は、錯体化工程中に形成された配位子-金属錯体と反応して、可溶性化学種を形成し、可溶性化学種は水性溶媒中に溶解される。溶解工程において配位子-金属錯体を除去することにより、下にある銅金属層が露出し、これが溶解液中の水性溶媒と反応して、下にある銅金属層を再酸化して新規な酸化された銅表面層(例えば、銅水酸化物層)を形成し、これを使用して、次のALEサイクルにおいて新規な配位子-金属錯体を形成することができる。錯体化工程および溶解工程は、所望量の銅金属が除去されるまで1回以上のALEサイクルにわたって繰り返されてもよい。錯体化工程と溶解工程の間にパージ工程を実施して、基板表面から錯化溶液および溶解液を、そこに含まれる過剰な反応物および可溶性化学種と共に、除去してもよい。
【0013】
本開示では、錯化溶液は、第1の溶媒(例えば、イソプロピルアルコール、IPA、などの有機溶剤)中に溶解させたカルボン酸または他の配位子を含み、溶解液は、水溶液(例えば、脱イオン水中の水酸化アンモニウムなど)中に溶解させた塩基を含む。錯化溶液中でカルボン酸が利用される場合、錯体化工程中に形成される配位子-金属錯体はカルボン酸銅層であり、これは錯化溶液中で使用される第1の溶媒中で不溶性であるが、水性溶解液中で可溶性である。一実施形態では、改質されていない銅金属層上にシュウ酸銅層を形成するため、錯化溶液中でシュウ酸が利用されてもよい。しかしながら、錯化溶液中で他のカルボン酸を利用して、酸化された銅表面層と結合させて、第1の溶媒中で不溶性であるが水性溶解液中で可溶性である他のカルボン酸銅層を形成することもできる。
【0014】
錯化溶液中でシュウ酸が利用される場合、シュウ酸は酸化された銅表面層と反応して、下にある銅金属層上にシュウ酸銅層を形成する。本開示では、錯化溶液は、下にある銅金属層上にシュウ酸銅の少なくとも1つの単分子層が形成されるのに必要な一定期間にわたって基板表面に供給されてもよい。シュウ酸銅は、大部分の溶媒に不溶性であるが、配位子交換メカニズムにより水酸化アンモニウム溶液に可溶性である。したがって、いくつかの実施形態では、溶解液は、水性水酸化アンモニウム溶液を含んでもよい。溶解液に含まれる水酸化アンモニウムは、シュウ酸銅層を選択的に除去して、シュウ酸銅層の下にある銅金属層を露出させる。シュウ酸銅層がいったん選択的に除去されると、溶解液に含まれる水性溶媒は、下にある銅金属層の露出表面を再酸化して下にある銅金属層上に新規な酸化された銅表面層(例えば、銅ヒドロオキシ層)を形成する。金属銅は水酸化アンモニウムによってもエッチングされるので、溶解液中で使用される水酸化アンモニウムの濃度が、シュウ酸銅層と下にある銅金属層との間の選択性が良好になるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、下にある銅金属層、およびその上に形成された酸化された銅表面層のエッチングを回避するため、溶解液中で比較的低い濃度(例えば、10mM未満)の水酸化アンモニウムが利用されてもよい。
【0015】
錯化溶液および溶解液の相互汚染が連続エッチングプロセスをもたらし、表面ラフネスの増加および均一性の劣化につながる可能性がある。相互汚染を回避するため、錯体化工程と溶解工程の間にパージ工程を実施して、基板表面から過剰な反応物を除去し、溶解工程中の連続エッチングを防止してもよい。いくつかの実施形態では、錯体化工程および溶解工程のそれぞれの後にパージ溶液を基板表面に供給して、基板表面から過剰な反応物および可溶性化学種を除去してもよい。
【0016】
上述したように、そして本明細書で更に説明されるように、本開示は、銅を湿式ALEプロセスでエッチングするための本明細書で開示される新規なエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。当然のことながら、本明細書に記述する異なる工程の説明の順序は、説明を分かり易くするために提示されたものである。一般に、これらの工程は、任意の適切な順序で実施することができる。加えて、本明細書に記載される異なる特徴、技術、構成等のそれぞれに関して本開示の異なる箇所で言及する場合があるが、概念のそれぞれが、互いに独立してまたは互いに組み合わせて実行できることが意図される。したがって、本発明は、多くの異なる方法で具現化および検討することができる。
【0017】
一実施形態によれば、本開示に従って銅をエッチングするためのエッチング方法が本明細書に提供される。本方法は、一般に、銅金属層が上に形成された基板を受け取ることにより始めることができ、基板表面上には銅金属層の酸化された銅表面層が露出している。次に、本方法は、有機溶剤中に溶解されたカルボン酸を含む錯化溶液に基板表面を曝すことを含んでもよい。カルボン酸は酸化された銅表面層と反応してカルボン酸銅層を形成する場合があり、これは有機溶剤中で不溶性である。次に、本方法は、カルボン酸銅層の形成に続いて、基板表面から錯化溶液を除去することと、基板表面を溶解液に曝して、カルボン酸銅層を選択的に除去してカルボン酸銅層の下にある銅金属層を露出させることと、を含んでもよい。溶解液は、一般に、反応剤および水性溶媒を含むことができる。反応剤はカルボン酸銅層と反応して、水性溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成し得る。次に、本方法は、基板表面から溶解液および可溶性化学種を除去して、銅金属層をエッチングすることを含んでもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、本方法は、基板表面を錯化溶液に曝す工程と、錯化溶液を除去する工程と、基板表面を溶解液に曝す工程と、溶解液を除去する工程とを、基板から所定量の銅金属が除去されるまで複数サイクルにわたって繰り返すことを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、錯化溶液を除去することおよび溶解液を除去することはそれぞれ、基板表面をパージ溶液でリンスして基板表面から過剰な反応物を除去し、錯化溶液および溶解液が混合することを防止することを含んでもよい。
【0019】
錯化溶液および溶解液中では多種多様なエッチング化学物質が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、錯化溶液は以下を含んでもよい:(a)カルボン酸、例えば、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、またはフマル酸、および(b)有機溶剤、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)若しくは他のアルコール、ジエチルエーテル((C2H5)2O)、アセトニトリル(C2H3N)、ジメチルスルホキシド(C2H6OS)、ケトン、または酢酸塩。錯化溶液中で、他のカルボン酸塩酸および有機溶剤も使用されてよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、溶解液は、塩基性水溶液を含んでもよい。溶解液に含まれる反応剤は、実質的にいかなる弱塩基でもあってもよい。例えば、反応剤は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(CH3)4NOH)、炭酸カリウム(K2CO3)、または炭酸アンモニウム(NH4)2CO3)であってもよい。溶解液に他の弱塩基が含まれてもよい。
【0021】
1つの例示的実施形態では、錯化溶液に含まれるカルボン酸は、シュウ酸であってもよく、錯化溶液に含まれる有機溶剤は、イソプロピルアルコール(IPA)であってもよい。このような一実施形態では、シュウ酸は酸化された銅表面層と反応してシュウ酸銅層を形成する場合があり、シュウ酸銅層は、IPA中で不溶性であるが、溶解液に含まれる水性溶媒に可溶性である。
【0022】
いくつかの実施形態では、基板表面を錯化溶液に曝すことは、下にある銅金属層上にカルボン酸銅層の少なくとも1層の単分子層を形成するのに必要な一定期間にわたって、基板表面に錯化溶液を供給することを含んでもよい。カルボン酸がシュウ酸である場合、錯化溶液は、基板表面に少なくとも5秒間にわたって供給されて、下にある銅金属層上にシュウ酸銅の少なくとも1層の単分子層が形成されてもよい。
【0023】
基板表面を溶解液に曝して、カルボン酸銅層を選択的に除去して、下にある銅金属層を露出させた後、溶解液は下にある銅金属層の露出表面を再酸化して新規な酸化された銅表面層を形成することができる。しかしながら、溶解液は、下にある銅金属層または新規な酸化された銅表面層をエッチングしない。
【0024】
1つの例示的実施形態では、溶解液は、水性水酸化アンモニウム(NH4OH)を含んでもよい。水性水酸化アンモニウムが利用される場合、カルボン酸銅層を選択的に除去した後、溶解液中の水酸化アンモニウムの濃度が、下にある銅金属層または新規な酸化された銅表面層をエッチングするレベルを下回るように維持されてもよい。
【0025】
別の実施形態によれば、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して銅をエッチングする方法が、本開示に従って本明細書に提供される。本方法は一般に、a)酸化されたCu表面層が上に形成された銅(Cu)金属層を有する基板を受け取ることと、b)酸化されたCu表面層を、錯化剤を含む錯化溶液に曝して、錯化剤を酸化されたCu表面層に結合させ、Cu金属層上に錯体結合された酸化されたCu表面層を形成することと、c)基板を第1のパージ溶液でリンスして基板の表面から錯化溶液を除去することと、d)錯体結合した酸化されたCu表面層を、錯体結合した酸化されたCu表面層を溶解しCu金属層上に新規な酸化されたCu表面層を形成する溶解液に曝すことにより、錯体結合した酸化されたCu表面層をCu金属層から選択的に除去することと、e)基板を第2のパージ溶液でリンスして基板の表面から溶解液を除去して、Cu金属層をエッチングすることと、を含んでもよい。
【0026】
一実施形態では、本方法は、工程b)~e)を少なくとも1回繰り返して、Cu金属層を更にエッチングすることを更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、工程b)およびd)は時間的な重なりを有しない。いくつかの実施形態では、基板はその上に、工程b)~e)によってエッチングされない露出した誘電体層を有してもよい。
【0027】
上述したように、錯化溶液および溶解液中では多種多様なエッチング化学物質が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、錯化溶液は、有機溶剤中に溶解された錯化剤を含んでもよい。1つの例示的実施形態では、錯化剤は、イソプロピルアルコール(IPA)中に溶解されたシュウ酸を含んでもよい。錯化溶液中で、他のカルボン酸塩酸および有機溶剤も使用されてよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、溶解液は、塩基性水溶液を含んでもよい。1つの例示的実施形態では、溶解液は、水性溶媒中に溶解された水酸化アンモニウム(NH4OH)を含んでもよい。溶解液に他の塩基が含まれてもよい。しかしながら、溶解液はCu金属層または新規な酸化されたCu表面層をエッチングしないことが重要である。溶解液は水酸化アンモニウム(NH4OH)を含み、錯体結合した酸化されたCu表面層を選択的に除去した後、溶解液中の水酸化アンモニウムの濃度が、Cu金属層または新規な酸化されたCu表面層をエッチングするレベルを下回るように選択され維持されてもよい。
【0029】
この「発明の概要」は、本開示または特許請求の範囲に記載される本発明の全ての実施形態および/または段階的に新規な態様を指定するわけではないことに留意されたい。代わりに、この「発明の概要」は、様々な実施形態および従来の技術に対する新規性に対応する点についての予備的な考察のみを提供する。本発明および実施形態の追加の詳細および/または予想される観点については、読者は、以下で更に議論されるような、本開示の「発明を実施するための形態」セクションおよび対応する図面を参照されたい。
【0030】
本発明およびその利点のより詳細な理解は、添付図面と併用される以下の説明を参照することによって得ることができ、図面では、同様の参照番号が同様の特徴を示す。しかしながら、添付図面は、開示する概念の例示的な実施形態を示すに過ぎず、したがって開示する概念は、他の同等に有効な実施形態も包含し得るため、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示による、銅をエッチングするために使用できる繰り返し湿式原子層エッチング(ALE)プロセスの一例を示す。
【
図2】様々なパターン化されたクーポン上の銅金属層をエッチングするために
図1に示す湿式ALEプロセスを使用したときに実現され得る、例示的な(ナノメートル(nm)単位で表現した)エッチング量を、湿式ALEサイクル数の関数として示す実験結果のグラフである。
【
図3】
図1に示す湿式ALEプロセスを使用して1μmのピッチを有する0.5μm Cuパッドを含むパターン化されたクーポンをエッチングしたときの、(nm/サイクルで表現した)銅エッチング速度に対する溶解液の(℃で表現した)温度の変化の影響を示す実験結果のグラフである。
【
図4】誘電体膜の中の銅が充填された窪んだフィーチャの概略的断面図であり、除去された材料の量、および銅が充填された窪んだフィーチャの凸面度を示す。
【
図5】
図1に示す湿式ALEプロセスを使用して1μmのピッチを有する0.5μm Cuパッドを含むパターン化されたクーポンをエッチングしたときに実現された銅の(ナノメートル(nm)で表現した)凸面度を、湿式ALEサイクルの関数として示す実験結果のグラフである。
【
図6】
図1に示す湿式ALEプロセスを使用して1μmのピッチを有する0.5μm Cuパッドを含むパターン化されたクーポンをエッチングしたときに実現された銅のラフネス(R
q(nm)で表現)を、湿式ALEサイクルの関数として示す実験結果のグラフである。
【
図7】
図1に示す湿式ALEプロセスを使用して1μmのピッチを有する0.5μm Cuパッドを含むパターン化されたクーポンをエッチングしたときに実現された誘電体(例えば、TEOS)のラフネスを、湿式ALEサイクルの関数として示す実験結果のグラフである。
【
図8】5回のエッチングサイクル後に除去された(nmで表現した)材料の例示的な量を、溶解液(例えば、NH
4OH)の(秒(s)で表現した)浸漬時間の関数として示す実験結果のグラフである。
【
図9】5回のエッチングサイクル後に除去された(nmで表現した)材料の例示的な量を、錯化溶液(例えば、シュウ酸)の(秒(s)で表現した)浸漬時間の関数として示す実験結果のグラフである。
【
図10】酸化された銅表面層に化学吸着されたシュウ酸の単分子層の形成を示す概略図である。
【
図11A】従来のエッチング技術を使用して誘電体層中に銅(Cu)金属フィーチャを窪ませたときに、3次元相互接続(3DI)ハイブリッド接合プロセスにおいて遭遇する一般的課題(例えば、接合されたウェハーのシームおよびキーホール)を示す。
【
図11B】従来のエッチング技術を使用して誘電体層中に銅(Cu)金属フィーチャを窪ませたときに、3次元相互接続(3DI)ハイブリッド接合プロセスにおいて遭遇する一般的課題(例えば、接合されたウェハーのシームおよびキーホール)を示す。
【
図12A】銅をエッチングするための、本明細書で説明される湿式ALEプロセスが、3DIハイブリッド接合プロセスにどのように適用され、接合されたウェハーにおけるシームおよびキーホールを排除するためにどのように利用され得るかを示す。
【
図12B】銅をエッチングするための、本明細書で説明される湿式ALEプロセスが、3DIハイブリッド接合プロセスにどのように適用され、接合されたウェハーにおけるシームおよびキーホールを排除するためにどのように利用され得るかを示す。
【
図13A】完全自己整合ビア(FSAV)プロセスにおいて遭遇する共通課題を示す。
【
図13B】完全自己整合ビア(FSAV)プロセスにおいて遭遇する共通課題を示す。
【
図13C】銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALEプロセスが、完全自己整合ビア(FSAV)プロセスにどのように適用され得るかを示す。
【
図14】銅金属層をエッチングするために本明細書で説明される技術を使用できる例示的な処理システムのブロック図である。
【
図15】本明細書で説明される技術を利用する方法の一実施形態を示すフロー図である。
【
図16】本明細書で説明される技術を利用する方法の別の実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、銅(Cu)金属をエッチングするための新規な湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを提供する。より具体的には、本開示は、銅を繰り返し湿式ALEプロセスでエッチングするための新規なエッチング化学物質を利用する方法の様々な実施形態を提供する。本明細書で開示される新規なエッチング化学物質を繰り返し湿式ALEプロセスで利用することにより、本開示は、銅の高選択性エッチングを単分子層精度で提供する。
【0033】
本明細書で説明される繰り返し湿式ALEプロセスは一般に1回以上のALEサイクルを含み、各ALEサイクルは、錯体化工程および溶解工程を含み得る。錯体化工程では、酸化された銅表面層を有する銅金属層が錯化溶液に曝され、錯化溶液は第1の溶媒中に溶解された錯化剤を含む。いくつかの実施形態では、錯化溶液は、有機溶剤中に溶解されたカルボン酸を含んでもよい。カルボン酸は、酸化された銅表面層と反応し、それに結合して、改質されていない銅金属層の上に不溶性カルボン酸銅層を形成する。カルボン酸銅層が形成された後、溶解工程が実施されて、下にある銅金属層からカルボン酸銅層が選択的に除去される。例えば、カルボン酸銅層は溶解液中に溶解させることができ、溶解液は水性溶媒中に溶解させた反応剤を含む。溶解液は、カルボン酸銅層の下にある改質されていない銅金属層を除去することなく、カルボン酸銅層を選択的に除去する。カルボン酸銅層を除去することにより、下にある銅金属層は露出し、これが次いで、溶解液中の水性溶媒と反応して、下にある銅金属層を再酸化して新規な酸化された銅表面層を形成し、これを使用して、次のALEサイクルにおいて新規なカルボン酸銅層を形成できる。錯体化工程および溶解工程は、所望量の銅金属層が除去されるまで1回以上のALEサイクルにわたって繰り返されてもよい。錯体化工程と溶解工程との間にパージ工程が実施されて、基板表面から過剰な反応物が除去され、錯化溶液と溶解液との混合が防止され、したがって溶解工程中の連続的なエッチングが防止される。
【0034】
銅をエッチングするための本明細書で説明される技術は、多種多様な用途で利用できる。いくつかの実施形態では、例えば、銅パッドリセスをエッチングするために、本明細書で開示される湿式ALEプロセスおよび方法を使用して、3次元相互接続(3DI)ハイブリッド接合および完全整合ビア(FAV)の用途において電気的接触を形成することができる。開示されるプロセスおよび方法は、銅をエッチングするために一般に使用される従来の方法に勝る複数の利点を提供する。例えば、銅パッドを平坦化するために使用される従来のCMP技術とは異なり、本明細書で開示される湿式ALEプロセスおよび方法は、銅パッドを取り囲む誘電材料(例えば、シリコン酸化物)に対する高い選択性を伴って銅パッドリセスのサブナノメートル制御を提供する。これにより、本明細書で開示される湿式ALEプロセスおよび方法は、特に小さいパッドサイズにおいて、CMPに対する補助として非常に好適となる。
【0035】
銅などの金属をエッチングするために一般に使用される従来のハイブリッドおよび湿式エッチングプロセスとは異なり、本明細書で開示される湿式ALEプロセスおよび方法は、自己律速型酸化工程において、銅金属層の露出表面上に酸化物を形成するための強力な酸化剤を使用しない。代わりに、本明細書で開示される湿式ALEプロセスおよび方法は、酸化された銅表面層上にカルボン酸の少なくとも1層の単分子層を形成するのに必要な所定時間にわたって基板表面上に錯化溶液を分配する。カルボン酸の単分子層は、下にある銅金属層上の酸化された銅表面層と反応し、それに結合して、カルボン酸銅の単分子層を形成する。次いで、カルボン酸銅の単分子層は、その後に実施される溶解工程において、カルボン酸銅の単分子層の下にある改質されていない銅金属層または銅金属層を取り囲んでいる誘電材料を除去することなく、選択的に除去される。その結果、本明細書で開示される湿式ALEプロセスおよび方法は、カルボン酸銅層の原子レベルでのエッチング制御を提供する一方で、エッチングプロセス中に露出する他の材料(例えば、誘電材料、改質されていない銅金属層、および酸化された銅表面層)に対する高いエッチング選択性も実現する。
【0036】
図1は、本開示に従って銅をエッチングするために使用されてもよい湿式ALEプロセスの一実施例を示す。より具体的には、
図1は、湿式ALEプロセスの1回のサイクル中に実施される例示的な工程を示し、これは本開示に従って銅金属層をエッチングするために利用されてもよい。
図1に示し、より詳細に後述するように、本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、1つ以上のALEサイクルからなる周期的プロセスであり、各ALEサイクルは、錯体化工程100、第1のパージ工程140、溶解工程150、および第2のパージ工程160を含む。
【0037】
図1に示すプロセスでは、錯体化工程100中に、誘電材料110によって取り囲まれた銅金属層105が錯化溶液125に接触して、銅金属層105の酸化された銅表面層115(例えば、酸化銅表面層)と反応して、それと結合する。錯体化工程100において使用される錯化溶液125は一般に、第1の溶媒中に溶解された錯化剤120を含み得る。いくつかの実施形態では、錯化剤120はカルボン酸であってもよく、第1の溶媒は有機溶剤であってよい。1つの例示的実施形態では、錯化剤120はシュウ酸であってもよく、第1の溶媒はイソプロピルアルコール(IPA)であってもよい。しかしながら、以下で詳述するように、他の錯化剤および溶媒も利用されてよい。
【0038】
図1に示す錯体化工程100中に、錯化剤120は、酸化された銅表面層115と反応し、それに結合して、配位子-金属錯体130を形成する。いくつかの実施形態では、錯化剤120は、カルボン酸塩ベースの配位子(例えば、カルボン酸であって、例えばシュウ酸であるがこれに限定されない)を含んでもよく、この配位子は、酸化された銅表面層115に選択的に結合して、酸化された銅表面層115をカルボン酸塩ベースの配位子と反応させて、不溶性の配位子-金属錯体130を形成させる。カルボン酸塩ベースの配位子が使用される場合、錯体化工程100中に形成される配位子-金属錯体130はカルボン酸銅層であり、これは、第1の溶媒中では不溶性であるが、その後に実施される溶解工程150においては可溶性である。
【0039】
いくつかの実施形態では、錯化溶液125は、酸化された銅表面層115上にカルボン酸の少なくとも1層の単分子層を形成するのに必要な所定時間にわたって基板表面上に分配されてもよい。錯化溶液125中にシュウ酸が含まれる場合、一定時間後に、酸化された銅表面層115上にシュウ酸の複数の単分子層が形成され得る。これは、シュウ酸が高い充填密度を有し、水素結合(例えば
図10を参照)を介して、酸化された銅表面層115上に複数の単分子層を形成できるからである。錯体化工程100の後に基板表面がリンスされる場合、酸化された銅表面層115からシュウ酸の余分の単分子層が除去され、それにより、リンス後に、酸化された銅表面層115上にシュウ酸の単一の単分子層が残ってもよい。
【0040】
錯体化工程100を実施して配位子-金属錯体130(例えば、カルボン酸銅層)を形成させた後に、第1のパージ工程140を実施して、基板表面から錯化溶液125を除去する。第1のパージ工程140では、基板が第1のパージ溶液135でリンスされて、基板表面から過剰な反応物が除去され、および/または酸化された銅表面層115からシュウ酸の余分な単分子層が除去される。第1のパージ溶液135は、錯体化工程100中に形成される配位子-金属錯体130と、または錯化溶液125中に存在する試薬と反応してはならない。いくつかの実施形態では、第1のパージ工程140中に使用される第1のパージ溶液135は、錯化溶液125中で使用されるものと同じ溶媒(例えば、IPA)を使用してもよい。しかしながら、以下で詳述するように、他の溶媒も利用されてよい。いくつかの実施形態では、第1のパージ工程140は、基板表面から全ての過剰な反応物を完全に除去するのに十分な長さであり得る。
【0041】
基板がリンスされた後、溶解工程150が実施されて、錯体化工程100中に形成された配位子-金属錯体130(例えば、カルボン酸銅層)が選択的に除去される。溶解工程150では、基板は溶解液145に曝されて、配位子-金属錯体130の下にある改質されていない銅金属層105、または銅金属層105を取り囲んでいる誘電材料110を除去することなく、配位子-金属錯体130は選択的に除去または溶解される。溶解液145は一般に、水性溶媒(例えば、脱イオン水など)中に溶解された反応剤を含み得る。いくつかの実施形態では、反応剤は水酸化アンモニウム(NH4OH)などの塩基であってもよく、水性溶媒は脱イオン水(DI H2O)であってもよい。以下で詳述するように、他の反応剤および溶媒も利用されてよい。配位子-金属錯体130を選択的に除去するため、配位子-金属錯体130は可溶性でなければならず、配位子-金属錯体130の下にある改質されていない銅金属層105は、溶解液145中で不溶性でなければならない。配位子-金属錯体130が可溶性であることにより、それをバルク溶解液145中に溶解させることにより除去することができる。いくつかの実施形態では、配位子-金属錯体130が完全に溶解されるまで溶解工程150を続けてもよい。
【0042】
図1に示す湿式ALEプロセスは、配位子結合を利用した後に、配位子-金属錯体130の下にある改質されていない銅金属層105を除去することなく、配位子-金属錯体130を選択的に除去するための溶解方法が続く。配位子結合の後に溶解が続く方法では、配位子結合工程と溶解工程とは時間的な重なりを有しない。代わりに、配位子は、配位子-金属錯体130が不溶性である液体溶媒(例えば、錯化溶液125中で使用される有機溶剤、例えばIPA)中で溶解される。錯体化工程100中に、液体溶媒中で溶解された配位子は酸化された銅表面層115と反応して配位子-金属錯体130の不溶性層を形成する。この不溶性層は、その後の溶解工程150に、配位子-金属錯体130が可溶性である異なる液体溶媒(例えば、溶解液145中で使用される水性溶媒、例えばDI H
2O)に基板表面が曝されたときに溶解される。配位子結合の後に溶解が続く方法では、配位子-金属錯体130(例えば、カルボン酸銅層)の除去は、表面上の配位子の配位子充填密度によって制限される。錯体化工程100における配位子結合、したがって溶解工程150における配位子-金属錯体130の溶解は、自己律速型である。
【0043】
溶解工程150において配位子-金属錯体130(例えば、カルボン酸銅層)を除去することにより、下にある銅金属層105は溶解液145に曝される。下にある銅金属層105の露出表面は、溶解液145中で水性溶媒(例えば、DI H2O)と反応して、銅金属層105が再酸化されて、下にある銅金属層105上に新規な酸化された銅表面層115が形成される。
【0044】
配位子-金属錯体130(例えば、カルボン酸銅層)が溶解液145中でいったん溶解され、新規な酸化された銅表面層115が形成されると、第2のパージ工程160を実施して基板表面から溶解液145を除去することにより、
図1に示す湿式ALEエッチングサイクルが完了し得る。第2のパージ工程160では、基板は第2のパージ溶液165でリンスされ、第2のパージ溶液165は第1のパージ溶液135と同じであっても、異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第2のパージ溶液165は、錯化溶液125(例えば、IPA)中で使用されるものと同じ溶媒を使用してもよい。しかしながら、以下で詳述するように、他の溶媒も利用されてよい。第2のパージ工程160は一般に、溶解液145、および/または溶解液145中に含まれる反応物および可溶性化学種が、基板表面から完全に除去されるまで続いてもよい。
【0045】
本開示の実施形態は、基板上の銅(Cu)金属層の湿式ALEについて説明する。本明細書で説明される湿式ALEプロセスは非常に均一な周期的エッチングプロセスであり、これは原子レベルでのCuエッチング制御を提供する一方で、例えばシリコン酸化物および他の誘電材料など、他の材料に対する高いエッチング選択性も達成する。上述したように、
図1に示す周期的湿式ALEプロセスは一般に、a)酸化された銅表面層115が上に形成された銅金属層105を有する基板を受け取ることと、b)酸化された銅表面層115を、錯化剤120を含む錯化溶液125に曝して、錯化剤120を酸化された銅表面層115に結合させ、銅金属層105上に錯体結合された酸化された銅表面層(例えば、配位子-金属錯体130)を形成することと、c)基板を第1のパージ溶液135でリンスして基板の表面から錯化溶液125を除去することと、d)錯体結合した酸化された銅表面層を、錯体結合した酸化された銅表面層を溶解し銅金属層105上に新規な酸化された銅表面層115を形成する溶解液145に曝すことにより、錯体結合した酸化された銅表面層を銅金属層105から選択的に除去することと、e)基板を第2のパージ溶液165でリンスして基板の表面から溶解液145を除去して、銅金属層105をエッチングすることと、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、工程b)~e)は、所望量の銅金属層105が除去されるまで1回以上のALEサイクルにわたって繰り返されてもよい。
図1に示す繰り返し湿式ALEプロセスは、本開示に従って銅をエッチングするために使用され得るエッチングプロセスの一例に過ぎないことを認識されたい。
【0046】
銅金属の湿式ALEは、銅金属表面上に自己律速型パシベーション層の形成を必要とする。このパシベーション層の形成は、溶液中の化学種と酸化された銅金属表面層との間の化学反応を可能にするかまたは生じさせる第1のエッチング溶液(すなわち、錯化溶液125)に、酸化された銅金属表面層を曝すことにより実現される。このパシベーション層は、その形成のために使用される溶液には不溶性でなければならないが、その溶解のために使用される第2のエッチング溶液(すなわち、溶解液145)には明らかに可溶性でなければならない。自己律速型パシベーション層は、あらゆるサイクルにおいて、その形成後に除去されなければならない。第2エッチング溶液は、下にある改質されていない銅金属層をエッチングすることなくパシベーション層を選択的に溶解するために使用される。
【0047】
湿式ALEは、他のエッチング技術に勝る多数の利点を提供する。湿式ALEの1つの利点は、それが室温付近でおよび大気圧で実行できることである。加えて、湿式ALEプロセスの自己律速型の性質は、他のエッチング技術が使用される場合に典型見られる荒れよりもむしろ、エッチング中に表面を平滑化することにつながる。銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、本明細書で更に説明するような追加の利点を提供する。
【0048】
一実施形態によれば、本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、イソプロピルアルコール(IPA)中のシュウ酸(C
2H
2O
4)、および脱イオン水(DI H
2O)中の水酸化アンモニウム(NH
4OH)の溶液を交互に使用して、銅(Cu)金属層をエッチングする。
図1に示し、上述したように、湿式ALEプロセスの各エッチングサイクルは、錯体化工程100、第1のパージ工程140、溶解工程150、および第2のパージ工程160を含み得る。一実装例では、銅金属層をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALEプロセスの各エッチングサイクルは、シュウ酸を含む錯化溶液125の5秒間の分配、5秒間のIPAリンス、水酸化アンモニウムを含む溶解液145の5秒間の分配、および5秒間のIPAリンス、を含み得る。エッチングサイクルは、Cu金属の所望のエッチング量が達成されるまで、少なくとも一回繰り返され得る。いくつかの実施形態では、錯体化工程と溶解工程間とのパージ時間は、例えば3秒に短縮されてもよい。
【0049】
図1を参照して上述したように、湿式ALEプロセスは、一般に、銅金属層105が上に形成された基板を受け取ることにより始めることができ、基板表面上には銅金属層105の酸化された銅表面層115が露出している。次に、湿式ALEプロセスは、有機溶剤中に溶解されたカルボン酸を含む錯化溶液125に基板表面を曝してもよい。1つの例示的実施形態では、錯化溶液125は、イソプロピルアルコール(IPA)中溶解された約50mMのシュウ酸(C
2H
2O
4)を含んでもよい。錯化溶液125中のシュウ酸は、酸化された銅表面層115を錯体化し、それが、酸化銅/水酸化物として銅金属層105上に存在して、シュウ酸銅の単分子層を形成する。
図9に示し、以下で詳述するように、この錯体化反応は、約5秒後にシュウ酸銅の単分子層を急速に形成する。したがって、一実施形態では、本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、シュウ酸銅の少なくとも1つの単分子層が、下にある銅金属層105上に形成されることを確実にするために、約5秒間にわたって錯化溶液125を基板表面に供給してもよい。
【0050】
シュウ酸銅層を形成した後に、基板表面を希釈された含水水酸化アンモニウム(NH4OH)溶解液145に曝す前に、基板は約5秒間にわたってIPAでリンスされて、基板表面から錯化溶液125が除去される。シュウ酸銅層の溶解が自己律速式であることを確実にするために、NH4OH濃度は、下にある銅金属層105をエッチングしないように十分に低くなければならない(例えば、10mM未満)が、シュウ酸銅層を効率的に溶解するように十分に高くなければならない。1つの例示的実施形態では、溶解液145は、脱イオン水(DI H2O)中に溶解された約5mMの水酸化アンモニウム(NH4OH)を含んでもよい。シュウ酸銅層を溶解させた後に、基板は約5秒間にわたってIPAで再びリンスされて、基板表面から溶解液145が除去されてもよい。次いで、エッチングサイクルは、所望量の銅金属層105が除去されるまで複数回にわたって繰り返されてもよい。
【0051】
本明細書で説明される湿式ALEプロセスを使用してエッチングされたパターン化された基板/ウェハーに関するサイクル当たりのエッチング速度を原子間力顕微鏡(AFM)測定値から計算すると、概ね1つの銅(Cu)原子の金属直径に対応し、したがってサイクル当たり、銅の約1つの単分子層がエッチングされる。更に、本明細書で説明される繰り返し湿式ALEプロセスを使用して、エッチングされた銅フィーチャの凸面度を増加させることなく、または誘電材料110若しくは銅金属層105自体のラフネスに悪影響を及ぼすことなく、銅の約2~4nmを迅速に除去することができる。これを、
図5~
図7で提示されるグラフに示し、以下で詳述する。
【0052】
本開示は、
図1に示す錯化溶液125および溶解液145中で使用され得る多種多様なエッチング化学物質を企図している。本明細書で開示される湿式ALEプロセスを使用して銅をエッチングするための例示的なエッチング化学物質について以下で詳述する。これら溶液を混合することにより、連続的エッチングプロセス、エッチング制御の喪失、およびエッチング後の表面の粗さにつながり、これらは全て湿式ALEの利益を損なう。したがって、基板表面上での錯化溶液125と溶解液145との間の直接接触を防止するために、
図1に示す湿式ALEプロセスにおいてパージ工程140および160が実施される。
【0053】
本開示の一実施形態によれば、錯体化工程100において、酸化された銅表面層115は、IPA中に溶解させたシュウ酸の錯化溶液125に曝されて、改質されていない銅金属層105上にシュウ酸銅層が形成される。他の実施形態によれば、錯体化工程100において、シュウ酸が他のカルボン酸と置換されてもよい。カルボン酸が第1の溶媒(例えば、IPA)中で可溶性であり、カルボン酸銅層が第1の溶媒中で不溶性である限り、酸化された銅表面層115と反応して対応するカルボン酸銅層を形成する任意のカルボン酸が使用されてもよい。例えば、錯化溶液125中で、マンデル酸、リンゴ酸、マレイン酸、またはフマル酸などの他のカルボン酸を利用して、対応するカルボン酸銅層を形成することができる。
【0054】
IPAは、半導体産業において広く使用され入手可能なため、錯化溶液125中で使用され得る第1の溶媒の一例であるが、多くの他の溶媒がこのプロセスに関して機能する。錯化溶液125中で使用され得る他の有機溶剤の例は、ジエチルエーテル((C2H5)2O)、アセトニトリル(C2H3N)、ジメチルスルホキシド(C2H6OS)、並びに各種アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、アミルアルコール、およびポリオール)、ケトン類(例えば、アセトン、およびメチルエチルケトン)、および酢酸塩、を含む。このリストは例示的であるが網羅的ではない。第1の溶媒に関する唯一の必要条件は、(a)第1の溶媒中でシュウ酸が可溶性である、(b)錯体化工程100中に形成されるシュウ酸銅層が第1の溶媒中で不溶性である、および(c)第1の溶媒と金属銅との間に反応がない、である。
【0055】
本開示の一実施形態によれば、錯体化工程100中に形成されたシュウ酸銅層(または別のカルボン酸銅層)は、脱イオン水(DI H2O)中に溶解された水酸化アンモニウム(NH4OH)の溶解液145に基板表面を曝すことによって選択的に除去される。他の実施形態によれば、水酸化アンモニウムは、シュウ酸銅層(または別のカルボン酸銅層)と反応して可溶性化学種を形成する別の反応剤と置換されてもよい。例えば、塩基、例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド((CH3)4NOH)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、または任意の他の弱塩基が、溶解液145中で使用可能である。
【0056】
脱イオン水(DI H2O)が、溶解液145中で使用され得る水性溶媒の一例であるが、他の溶媒が使用されてもよい。例えば、いくつかの金属カルボン酸塩が、溶媒として高純度の酢酸に可溶性である。溶解液145中で使用される溶媒に関する唯一の必要条件が、(a)シュウ酸銅層(または別のカルボン酸銅層)は溶媒に可溶性である、および(b)溶媒は金属銅と反応して、金属銅の露出表面を再酸化して新規な酸化された銅表面層115が形成される。
【0057】
シュウ酸を含む錯化溶液125と水酸化アンモニウムを含む溶解液145とを混合することにより、連続的エッチングプロセス、エッチング制御の喪失、および表面の粗さにつながる。したがって、銅表面上での2種類のエッチング溶液の直接接触を防止するために、錯体化工程と溶解工程との間に溶媒リンス工程(すなわち、パージ工程140および160)が実施される。これは、パターン化された基板上に形成され得る小さいフィーチャから2種類の溶液を完全にリンスすることを含む。本開示の一実施形態によれば、基板表面はIPA内でリンスされてもよい。しかしながら、この目的のために他の溶媒が使用されてもよい。例えば、他の実施形態では、基板表面は、代わりに、他のアルコール類(例えば、メタノール、エタノール、またはアミルアルコール)、酢酸塩(例えば、酢酸エチル、または酢酸アミル)、アセトン、またはアセトニトリルでリンスされてもよい。
【0058】
一方の面に堆積された銅(Cu)金属層を含む300mmシリコンウェハーから切り出したクーポン上に、上で開示した好ましいエッチング化学物質を使用して、エッチング実験を行った。異なるクーポンは、露出した銅金属の異なるパターン化された領域を含んでいる。具体的には、エッチング実験で使用したクーポンは、パターン化されていないブランケットクーポン、3μmピッチを有する2μm銅パッドを含む第1のパターン化されたクーポン、1μmピッチを有する0.5μm銅パッドを含む第2のパターン化されたクーポン、および1μmピッチを有する0.5μm銅パッドを含む完全にパターン化されたウェハーからの第3のパターン化されたクーポンを含む。クーポンをエッチングするために使用するエッチングレシピは、複数の湿式ALEサイクルを含み、各サイクルが、シュウ酸を含む錯化溶液125の5秒間の分配、5秒間のIPAリンス、希釈水酸化アンモニウムを含む溶解液145の5秒間の分配、および5秒間のIPAリンス、を含む。
【0059】
上述した異なるクーポンのための湿式ALEサイクル数の関数としての総エッチング量(nm)が
図2に示すグラフ200に図示される。
図2で観察される線形のエッチング量の挙動はALEの特性を示し、2~10サイクルの間で約0.28nm/サイクルのエッチング速度であることが確認され、これは、1つの銅原子の直径(0.26nm)およびALEサイクル当たりの銅の1つの単分子層に概ね対応する。これらの結果は、50回のALEサイクルに達するまで、より大きいパッドサイズおよびより小さいパッドサイズ(2μmおよび0.5μm)の両方に対して保持されている。完全にパターン化されたウェハーに関する0.46nm/サイクルという比較的高いエッチング速度は、露出間の短いパージ時間(例えば、3秒)に起因することが確認された。より長いパージ時間(例えば、5秒)を用いた他の実験の結果は、完全にパターン化された回転盤に関して約0.25nm/サイクルとなった。
【0060】
図3のグラフ300は、銅のエッチング速度(nm/サイクル)に対する、水酸化アンモニウム溶解液の温度(℃)の変化の影響を示す。
図3に示すように、エッチング溶液が25℃から70℃まで加熱されたとき、エッチング速度は約0.004nm/サイクル/℃で増加した。
【0061】
二酸化ケイ素(SiO
2)中に銅が充填された窪んだフィーチャを含む基板に更なるエッチング実験を行った。
図4は、誘電体膜410(例えば、TEOSなどのSiO
2膜)中に、銅が充填された窪んだフィーチャ405を有する試験サンプル400の概略的断面図であり、エッチング実験中に除去された材料の量、並びにエッチングの結果として形成された、銅が充填された窪んだフィーチャ405の凸面度を示す。凸面度は、銅が充填された窪んだフィーチャ405の厚さをフィーチャの中央と縁部とで測定した値の差である。
図4に示すように、エッチングサイクルは窪んだフィーチャから銅金属を除去したが、除去された銅の量は、窪んだフィーチャにおいて中央から縁部まで変化し、その結果、窪んだフィーチャは凸状になっている。
【0062】
図5~
図7は、1μmのピッチを有する0.5μm銅パッドを含むパターン化されたクーポンについて、本明細書で説明される湿式ALEプロセスの複数のサイクル(例えば、10回)を実施した後に得られた実験結果を示す。
図5に示すグラフ500は、湿式ALEサイクルの関数として実現された銅の凸面度(ナノメートル(nm)で表現)を示す。
図6に示すグラフ600は、湿式ALEサイクルの関数として実現された銅のラフネス(R
q(nm)で表現)の結果を示す。
図7に示すグラフ700は、湿式ALEサイクルの関数として実現された誘電体(例えば、TEOSなどのSiO
2膜)のラフネスの結果を示す。
図5~
図7に示すように、実験結果は、少なくとも10回の湿式ALEサイクルに対して、銅の凸面度(
図5)、銅のラフネス(
図6)、および誘電体のラフネス(
図7)への顕著な影響は示さなかった。本明細書に記載され実験結果を生成するために使用されたエッチング化学物質は、表面ラフネスを防止することに加えて、誘電体膜を除去しなかった。
【0063】
シュウ酸銅層と下にある銅金属層との間のエッチング選択性に対する、DI H2O中のNH4OH濃度の影響を決定するため、追加のエッチング実験を行った。エッチング実験中、5mMのNH4OH濃度においてシュウ酸銅の選択的な除去が観察され、50mMのNH4OH濃度において銅の制御されないエッチングが観察された。10mMの濃度のNH4OHを使用した更なる実験が、銅金属層の幾分のピッティングを示した。したがって、一実施形態によれば、ピッティングを回避するため、NH4OH濃度は約10mMまたはそれを下回り得る。実験結果は、NH4OHがシュウ酸銅層をエッチングし溶解するが、シュウ酸銅層が除去されたとき、溶解工程中に、銅金属層上に形成された金属銅または新規な酸化された銅表面層をエッチングしないことを確実にするために、NH4OHを比較的低い濃度(例えば、10mM以下)で使用しなければならないことを示している。これは、エッチング速度に対する良好な制御を伴って銅のALEを維持するための必要条件である。
【0064】
5回のエッチングサイクル後に除去された(nmで表現した)材料の例示的な量を、溶解液(例えば、NH
4OH)の浸漬時間(秒で表現)の関数として表すグラフ800が
図8に提供される。
図8に示すように、低いNH
4OH濃度(例えば、10mM以下)の場合、約5秒を超えるNH
4OH浸漬時間ではエッチング速度は実質的に増加しなかった。これは、このように低いNH
4OH濃度では、NH
4OHがシュウ酸銅を選択的にエッチングすることを示す。
【0065】
5回のエッチングサイクル後に除去された(nmで表現した)材料の例示的な量を、錯化溶液(例えば、シュウ酸)の浸漬時間(秒で表現)の関数として表すグラフ900が
図9に提供される。
図9に示すように、基板上にシュウ酸の単分子層を形成するために、錯化溶液の少なくとも5秒の浸漬が必要であった。より長い浸漬時間が使用される場合、水素結合により基板上に多層のシュウ酸が形成され得る。これは、シュウ酸の高い配位子充填密度に起因し、
図10に概略的に示される。一実施形態によれば、
図10に示すように、シュウ酸への曝露の後にIPAリンス工程を実施して、基板表面からあらゆるシュウ酸の多層を除去し、それによりシュウ酸の化学吸着された単分子層だけが基板表面上に形成される。
【0066】
図11A~
図11Bは、従来のエッチング技術を使用して誘電体層中に銅(Cu)金属フィーチャを窪ませた後に、3次元相互接続(3DI)ハイブリッド接合プロセスにおいて遭遇する一般的課題を示す。より具体的には、
図11Aは、従来の湿式エッチング技術を使用して誘電体層1110中に窪ませた銅金属フィーチャ1105の断面
図1100を示す。
図11Bは、エッチングされた銅金属表面を有する上部ウェハー1130とエッチングされた銅金属表面を有する底部ウェハー1140とを、エッチングされた銅金属表面が互いに面するように一緒に接合させた、3DIハイブリッド接合プロセス1120を示す。
図11Aおよび
図11Bに示すように、従来のエッチング方法は、誘電体層1110(例えば、二酸化ケイ素、SiO
2)と銅金属フィーチャ1105との間の劣ったエッチング選択性に起因して、非理想的なエッチングプロファイル1115(例えば、粗く、丸みを帯びた角)をもたらす。2枚のウェハーが熱処理を使用して一緒に結合された場合、非理想的なエッチプロファイル1115の結果、結合界面にシームおよびキーホール1150が生じる。これらの課題を回避するため、約2~5nmの銅金属の正確な除去が必要であり、銅金属の除去は、銅金属を取り囲んでいる誘電材料(例えば、SiO
2など)に対して選択的である。
【0067】
図12A~12Bは、銅金属をエッチングするための、本明細書で説明される湿式ALEプロセスが、3DIハイブリッド接合プロセスにどのように適用され、接合されたウェハーにおけるシームおよびキーホールを排除するためにどのように利用され得るかを示す。より具体的には、
図12Aは、本明細書で説明される湿式ALE技術を使用して誘電体層1210中に窪ませた銅金属フィーチャ1205の断面
図1200を示す。
図12Bは、エッチングされた銅金属表面を有する上部ウェハー1230とエッチングされた銅金属表面を有する底部ウェハー1240とを、エッチングされた銅金属表面が互いに面するように一緒に接合させた、3DIハイブリッド接合プロセス1220を示す。
図12Aでは、銅金属フィーチャ1205を誘電体層1210の上面から下方に窪ませるための、銅の選択的エッチングプロセスが使用されている。上述した湿式ALEプロセスを使用して、
図12Aに示す選択的なCuエッチングが提供され得る。
図12Bでは、窪ませた銅金属フィーチャ1205を有する2枚のウェハーが、銅金属をリフローさせる熱処理を使用して一緒に結合される。
図12A~12Bに示すように、本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、誘電体層1210(例えば、二酸化ケイ素、SiO2)と銅金属フィーチャ1205との間に良好なエッチング選択性を提供し、したがって2枚のウェハーが一緒に結合されたときに、結合された界面においてシームおよびキーホールを排除する理想的なエッチングプロファイル1215を提供する。
【0068】
上述したように、本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、銅金属を原子層精度で除去することを可能にする。一実施形態では、本明細書で説明される湿式ALEプロセスを使用して、約2~5nmの銅金属を正確に除去することができる。銅金属の2~5nmの正確な除去により、結合された相互接続の大量の半導体製造のために必要な、要求されるウェハー間のエッチング均一性が可能になる。本明細書で説明される湿式ALEプロセスはまた、ウェハー内でのエッチング銅金属の正確な窪み深さおよび窪み深さ均一性をもたらし、3DIハイブリッド接合プロセスの熱処理部分の最中に低サーマルバジェットを使用する良好なCu/Cu接触を形成することを可能にする。3DIハイブリッド接合プロセスの他の必要条件が、ウェハー接合プロセスの後にボイドの形成を回避するための、誘電体の表面への最小の損傷、誘電体表面ラフネスの最小の増加、および誘電体の最小のコーナーラウンディングを含む。更に、接合プロセスで使用される銅金属除去プロセスは、好ましくは耐腐食性化学物質を使用し、揮発性の銅含有反応生成物によるプロセスチャンバの汚染を最小限に抑えなければならない。銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、これら必要条件の全てを満たす。
【0069】
図13Aおよび
図13Bは、完全自己整合ビア(FSAV)プロセスにおいて遭遇する共通課題を示す。より具体的には、
図13Aは、FSAV1300の概略的断面図を示し、銅金属のエッチバックプロセスが実施されない場合、銅金属フィーチャ1305(例えば、銅充填ビア)と銅金属ライン1315との間の再配置誤差が、ビア-配線間の距離の劣化をもたらしている。
図13Bは、従来のエッチング技術を使用して誘電体層1310中の銅金属フィーチャ1305をエッチバックしたまたは窪ませた、FSAV 1320の概略的断面図を示し、エッチストップ材料1325が形成されている。
図13Bに示すように、従来のエッチング技術が利用される場合、エッチングされた銅金属フィーチャ1305が凸面性が強いため、ライン縁部にエッチストップ材料1325が存在している。
【0070】
図13Cは、銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALEプロセスが、完全自己整合ビア(FSAV)プロセスにどのように適用され得るかを示す。より具体的には、
図13Cは、本開示の実施形態による選択的銅エッチングプロセスを使用して、誘電体層1310中の銅金属フィーチャ1305をエッチバックしたまたは窪ませた後の、理想的なビア-ライン距離および表面プロファイルを有するFSAV 1330の概略的断面図を示す。誘電体層1310の上面よりも下方に位置するように銅金属フィーチャ1305を窪ませるための、
図13Cに示す選択的銅エッチングプロセスを提供するために、上述した湿式ALEプロセスを使用することができる。一実施形態では、本明細書で説明される湿式ALEプロセスを使用して約7~10nmの銅金属を正確に除去することができ、そのような除去は低k誘電体に対して選択的である。(
図13Aに示すような)この窪みは再配置誤差の効果を減らすために必要であり、大きなビアのパターン化を可能にする。上述したように、本明細書で説明される選択的銅エッチングプロセスは、誘電体または銅表面のラフネスおよび形状への損傷を最小化し、(銅金属ライン間の距離を短縮し得る)誘電材料のコーナーラウンディングを回避し、(その後のエッチング不均一性および信頼性上の懸念につながり得る)銅表面の凸面度の増加を回避する。
【0071】
銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALEプロセスは、様々な技術を使用して実現できる。例えば、上で開示した湿式ALEプロセスは、銅金属フィーチャが上に形成された基板を各エッチング溶液のビーカー内に浸漬することにより実施されてもよい。この場合、パージは適切な溶剤浴中で基板をリンスすることまたは浸漬することのいずれかにより実現できる。上記で開示した湿式ALEプロセスは、多種多様な半導体処理システム内でも実施することができる。湿式ALEプロセスは、多くの異なるプロセスチャンバ、ツール、および装置を使用して実現され得るが、湿式ALEプロセスを実施するために使用される処理装置は、室温(またはその付近)且つ大気圧(またはその付近)で動作できることが好ましい。
【0072】
一実装例では、本明細書で説明される湿式ALEプロセスはスピンチャンバ内で実施され得る。スピンチャンバが利用される場合、エッチング溶液は基板の上方に配置されたノズルから分配され、基板が配置されているスピンチャックの回転運動によって分散される。設定された露出時間の後、ノズルは、エッチングレシピにおける次の溶液を分配し始める。このプロセスは、エッチングサイクル全体にわたって継続され、所望量の金属を除去するのに必要な回数のサイクルだけ繰り返される。大量製造のために、エッチング溶液およびリンスの分配は、湿式エッチングツールおよびリンスツールなどの従来のツールを使用して実行できる。
【0073】
図14は、本明細書で説明されるハイブリッドALE技術を使用して基板1430の表面上の銅金属層をエッチングし得る処理システム1400の一実施形態を示す。
図14に示すように、処理システム1400はプロセスチャンバ1410を備え、プロセスチャンバ1410は、いくつかの実施形態では圧力制御チャンバであり得る。
図14に示す実施形態では、プロセスチャンバ1410は、スピナ1420(またはスピンチャック)を有するスピンチャンバであり、スピナ1420(またはスピンチャック)は一定の回転速度でスピンまたは回転するように構成されている。基板1430が、例えば静電気力または真空圧によってスピナ1420上に保持される。一例では、基板1430は、基板1430上または基板1430内に銅金属層が形成された半導体ウェハーであってもよい。
【0074】
図14に示す処理システム1400は液体ノズル1440を更に含み、液体ノズル1440は、基板表面1430上に各種エッチング溶液1442を分配するために、基板1430の上方に配置される。基板830の表面上に分配されるエッチング溶液1442は、一般に、酸化された銅金属表面層に結合して配位子-金属錯体(例えば、カルボン酸銅層)を形成する錯化剤(例えば、カルボン酸ベースの配位子)を含む錯化溶液と、配位子-金属錯体を選択的に除去する溶解液と、を含み得る。パージ溶液は、錯体化工程と溶解工程との間にも基板1430の表面上に分配されて、錯化溶液と溶解液とを分離することができる。錯化溶液、溶解液、およびパージ溶液の例は前述している。
【0075】
図14に示すように、エッチング溶液1442は、化学物質供給システム1446内に貯蔵されてもよく、化学物質供給システム1446は、様々なエッチング溶液1442を保持するための1つ以上のリザーバと、液体供給ライン1444を介してプロセスチャンバ1410に流体的に連結された化学物質注入マニホルードとを含んでもよい。動作の際、化学物質供給システム1446は、液体供給ライン1444と、プロセスチャンバ1410内に配置された液体ノズル1440とを介して、所望の化学物質をプロセスチャンバ1410に選択的に施し得る。したがって、化学物質供給システム1446を使用して、基板1430の表面上にエッチング溶液1442を分配することができる。プロセスチャンバ1410は、プロセスチャンバ1410からエッチング溶液1442を除去するためのドレイン1450を更に含んでもよい。
【0076】
処理システム1400の構成要素は、コントローラ1460に結合できるまたはコントローラ1460により制御でき、コントローラ1460は、次いで、対応するメモリストレージユニットおよびユーザインターフェース(図示せず)に結合できる。様々な処理動作がユーザインターフェースを介して実行でき、様々な処理レシピおよび動作がメモリストレージユニット内に保存できる。したがって、所与の基板1430が、特定のレシピに従ってプロセスチャンバ1410内で処理され得る。いくつかの実施形態では、所与の基板1430が、銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALE技術を利用するエッチングレシピに従ってプロセスチャンバ1410内で処理され得る。
【0077】
図14ではブロック図形式で示すコントローラ1460は、多種多様な仕方で実施され得る。一例では、コントローラ1460はコンピュータであり得る。別の例では、コントローラ1460は、本明細書で説明される機能を提供するようにプログラムされた1つ以上のプログラマブル集積回路を含み得る。例えば、1つ以上のプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理ユニットなど)、プログラマブルロジックデバイス(例えば、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)など)、および/または他のプログラマブル集積回路を、ソフトウェアまたは他のプログラミング命令でプログラムして、処方されたプラズマプロセスレシピの機能を実現できる。ソフトウェアまたは他のプログラミング命令は、1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、メモリ記憶デバイス、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、再プログラム可能な記憶デバイス、ハードドライブ、フロッピーディスク、DVD、CD-ROMなど)に記憶され得ることと、ソフトウェアまたは他のプログラミング命令は、プログラム可能集積回路により実行されると、本明細書に記載される処理、機能、および/または能力をプログラム可能集積回路に実行させることとに更に留意されたい。他の変形形態も実装され得る。
【0078】
図14に示すように、コントローラ1460は、処理システム1400の様々な構成要素に結合されて、構成要素から入力を受け取り、構成要素に出力を供給し得る。例えば、コントローラ1460は、プロセスチャンバ1410に結合されてプロセスチャンバ1410内の温度および/または圧力を制御してもよく、スピナ1420に結合されてスピナ1420の回転速度を制御してもよく、化学物質供給システム1446に結合されて基板1430上に分配される様々なエッチング溶液1442を制御してもよい。コントローラ1460は、当技術分野で既知の通り、
図14に示されない他の処理システム構成要素を制御してもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、コントローラ1460は、銅をエッチングするための本明細書で説明される湿式ALE技術を利用するエッチングレシピに従って処理システム1400の様々な構成要素を制御し得る。例えば、コントローラ1460は、化学供給システム1446に様々な制御信号を供給してもよく、制御信号は、化学供給システム1446に、a)酸化された基板1430の表面上に錯化溶液を分配させて、酸化された銅表面層に錯化剤を結合させ、銅金属層上に、錯体結合した酸化された銅表面層(例えば、配位子-金属錯体)を形成させ、b)基板1430の表面を第1のパージ溶液でリンスさせて、基板1430の表面から錯化溶液125およびあらゆる過剰な反応物を除去させ、c)基板1430の表面上に溶解液を分配させて、錯体結合した酸化された銅表面層を銅金属層から選択的に除去または溶解させて、銅金属層上に新規な酸化された銅表面層を形成させ、d)基板を第2のパージ溶液でリンスさせて、基板1430の表面から溶解液を除去させる。いくつかの実施形態では、コントローラ1460は、銅金属の所望量が除去されるまで工程a)~d)が1回以上のALEサイクルにわたって繰り返されるように、周期的な形で化学供給システム1446に制御信号を供給してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、コントローラ1460は、プロセスチャンバ1410内の温度および/または圧力を制御してもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で説明される湿式ALEプロセスの錯体化工程、溶解工程、およびパージ工程は、概ね同じ温度および圧力で実施されてもよい。一実装例では、錯体化工程、溶解工程、およびパージ工程はそれぞれ、大気圧および室温で(またはその付近で)実施されてもよい。処理工程を同じプロセスチャンバ内で概ね同じ温度および圧力で実施することは、不必要なチャンバ移行および温度/圧力変化を回避することにより、本明細書で説明される湿式ALEプロセスのサイクル時間を短縮し、スループットを改善する。
【0081】
しかしながら、本明細書で説明される実施形態は、大気圧および室温のみに厳密に限定されるものではなく、特定のプロセスチャンバに限定されるものでもないことに留意されたい。他の実施形態では、本明細書で説明される錯体化工程、溶解工程、およびパージ工程のうちの1つ以上が、圧力容器内で上述した大気圧を超えて、または真空チャンバ内で減圧されて実行され得る。エッチング溶液は、液体の蒸気圧がチャンバ圧力よりも低い限り、これらの環境で分配され得る。これら実装では、圧力容器または真空チャンバ内に、液体分配ノズルを有するスピナが配置される。分配される液体の温度は、プロセスの圧力における沸点未満の任意の温度まで上昇させ得る。一実装例では、溶解工程は、
図3に示すように25℃~70℃の温度で実施されてもよい。図示するように、エッチング速度を増加させるために、より高い液体温度が使用され得る。
【0082】
図15~
図16は、湿式ALEプロセスにおいて銅をエッチングするための、本明細書で説明される新規なエッチング化学物質を利用する例示的な方法を示す。
図15~
図16の実施形態は単なる例示であり、追加の方法が、本明細書で説明される技術を利用してもよいことが理解されるであろう。更に、説明された処理工程は排他的であることを意図していないため、
図15~
図16に示す方法に、追加の工程を追加することができる。更には、工程の順序は、異なる順序が生じる場合があり、且つ/または様々な工程が組み合わされてもよいため、若しくは同時に実施されてもよいため、図面に示す順序には限定されない。
【0083】
図15は、エッチングの方法1500の一実施形態を示す。
図15に示す方法1500は、一般に、銅金属層が上に形成された基板を受け取ることにより(工程1510において)始まってもよく、銅金属層の酸化された銅表面層が基板表面上で露出している。次に、方法1500は、(工程1520において)有機溶剤中に溶解されたカルボン酸を含む錯化溶液に基板表面を曝すことを含んでもよい。カルボン酸は酸化された銅表面層と反応してカルボン酸銅層を形成する場合があり、これは有機溶剤中で不溶性である。次に、方法1500は、(工程1530において)カルボン酸銅層の形成に続いて、基板表面から錯化溶液を除去することと、(工程1540において)基板表面を溶解液に曝して、カルボン酸銅層を選択的に除去してカルボン酸銅層の下にある銅金属層を露出させることと、を含んでもよい。溶解液は、一般に、反応剤および水性溶媒を含むことができる。反応剤はカルボン酸銅層と反応して、水性溶媒によって溶解される可溶性化学種を形成してもよい。次に、方法1500は、(工程1550において)基板表面から溶解液および可溶性化学種を除去して、銅金属層をエッチングすることを含んでもよい。いくつかの実施形態では、方法1500は、基板表面を錯化溶液に曝す工程と、錯化溶液を除去する工程と、基板表面を溶解液に曝す工程と、溶解液を除去する工程とを、基板から所定量の銅金属が除去されるまで複数サイクルにわたって繰り返すことを更に含んでもよい。
【0084】
図16は、湿式原子層エッチング(ALE)プロセスを使用して銅をエッチングするために使用され得る方法1600の一実施形態を示す。
図16に示す方法1600は一般に、a)(工程1610において)酸化されたCu表面層が上に形成された銅(Cu)金属層を有する基板を受け取ることと、b)(工程1620において)酸化されたCu表面層を、錯化剤を含む錯化溶液に曝して、酸化されたCu表面層に錯化剤を結合させ、錯体結合された酸化されたCu表面層をCu金属層上に形成することと、c)(工程1630において)基板を第1のパージ溶液でリンスして基板の表面から錯化溶液を除去することと、d)(工程1640において)錯体結合した酸化されたCu表面層を、錯体結合した酸化されたCu表面層を溶解しCu金属層上に新規な酸化されたCu表面層を形成する溶解液に曝すことにより、錯体結合した酸化されたCu表面層をCu金属層から選択的に除去することと、e)(工程1650において)基板を第2のパージ溶液でリンスして基板の表面から溶解液を除去し、Cu金属層をエッチングすることと、を含んでもよい。一実施形態では、本方法は、工程b)~e)を少なくとも1回繰り返して、Cu金属層を更にエッチングすることを更に含んでもよい。一実施例では、錯化剤はシュウ酸を含んでもよく、溶解液は水性溶媒中に溶解された水酸化アンモニウムを含んでもよい。
【0085】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態」または「一実施形態」への参照は、この実施形態との関連で記述される特定の特徴、構造、材料、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するが、これらが全ての実施形態に存在すること意味するものではないことに留意されたい。従って、本明細書を通じて様々な箇所で「1つの実施形態では」または「一実施形態では」との表記の出現は必ずしも本発明の同一実施形態を指すわけではない。更に、特定の特徴、構造、材料、または特性は1つ以上の実施形態において任意の適切な形で組み合わされてもよい。他の実施形態では、様々な追加的な層および/または構造が含まれてよく、および/または記載される特徴が省略されてもよい。
【0086】
本明細書で使用する場合、用語「基板」は、その上部に材料が形成されるベース材料または構造を意味すると共にこれらを含む。基板は、単一材料、異なる材料の複数の層、異なる材料または異なる構造の領域を内部に有する1つ以上の層を含んでよいことが理解されるであろう。これら材料は、半導体、絶縁体、導体、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。例えば、基板は、半導体基板、支持構造上のベース半導体層、金属電極、またはこれらの上に形成された1つ以上の層、構造若しくは領域を有する半導体基板であってよい。基板は、半導電材料の層を含む、従来のシリコン基板または他のバルク基板であってもよい。本明細書で用いる用語「バルク基板」はシリコンウェハーだけでなく、シリコンオンサファイア(「SOS」)基板およびシリコンオンガラス(「SOG」)基板等のシリコンオンインシュレータ(「SOI」)基板、ベース半導体基盤上のシリコンのエピタキシャル層、およびシリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、並びにリン化インジウム等の他の半導体または光電子材料をも意味すると共にこれらを含む。基板はドープされていてもドープされていなくてもよい。
【0087】
基板を処理するためのシステムおよび方法が、様々な実施形態で説明されている。基板は、デバイス、特に半導体または他の電子デバイスの任意の材料部分または構造を含んでもよく、例えば、半導体基板などのベース基板構造であってもよく、または薄膜などのベース基板構造上の若しくはその上を覆う層であってもよい。したがって、基板は、パターン化されたまたはパターン化されていない、任意の特定のベース構造、下地層、または上地層に限定されることは意図されておらず、むしろ、任意のこのような層またはベース構造、並びに層および/またはベース構造の任意の組み合わせを含むことが企図されている。
【0088】
様々な実施形態が、具体的詳細のうちの1つ以上を伴わずに、或いは、他の代替的および/または追加的な方法、材料若しくは構成要素を伴って実施されてよいことが、当業者は理解するであろう。その他の場合、本発明の様々な実施形態の態様が不明瞭になることを回避するために、公知の構造、材料、または動作の詳細については図示または記述していない。同様に、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために特定の個数、材料、および構成が記述されている。それでもやはり、本発明は具体的な詳細なしに実施されてもよい。更に、図に示す様々な実施形態は例示的表現であり、必ずしも縮尺通りには描かれていないことを理解されたい。
【0089】
本明細書を検討すれば、説明したシステムおよび方法の更なる修正形態および代替実施形態が当業者には明らかになるであろう。したがって、説明したシステムおよび方法は、これらの例示的な構成によって限定されるわけではないことが理解されるであろう。本明細書で図示および記述したシステムおよび方法の形式は例示的実施形態として解釈すべきであることを理解されたい。実装に際して様々な変更が加えられてよい。したがって、銅をエッチングするための湿式ALE技術は、具体的な実施形態を参照して本明細書で説明されるが、本開示の範囲から逸脱することなく様々な修正および変更を実施することができる。したがって、本明細書および図面は、限定的意味というよりも、むしろ例示的意味でみなされるべきであり、このような修正形態が本開示の範囲に含まれることが意図されている。更に、特定の実施形態に関して本明細書で説明されるいかなる利益、利点、または課題に対する解決策も、特許請求の範囲のいずれかのまたは全ての重要な、必要な、または必須の特徴または要素として解釈されることは意図されていない。
【国際調査報告】