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特表2024-539448リン酸二水素トリアルキルアンモニウムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】リン酸二水素トリアルキルアンモニウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/02 20060101AFI20241018BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07F9/02 B
C07C211/63
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529577
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 US2022049635
(87)【国際公開番号】W WO2023091356
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】63/281,110
(32)【優先日】2021-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベ, ジョナサン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】フイン, キース ハオ-キエット
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ヒテンドラ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC90
4H006AD15
4H006BB14
4H006BB16
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC31
4H006BC33
4H050AA02
4H050AC90
4H050BB14
4H050BB16
4H050BB31
4H050BC10
4H050BC31
4H050BC33
4H050WB13
4H050WB21
(57)【要約】
本開示により、固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウム、例えばリン酸二水素トリエチルアンモニウムを高収率で、また流動性のある粒子形態で製造する方法が提供される。この固体生成物は有利なことに、非プロトン性有機溶媒を約1500ppm未満、C~Cアルカノールを約1500ppm未満、及び水を約500ppm未満、含む(カール・フィッシャー滴定法で決定)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを製造する方法であって、
a.C~Cアルカノールを水性リン酸と合わせて、溶液をもたらすこと、
b.反応混合物の温度をその沸点未満に維持しながら、かつ反応混合物を攪拌しながら、前記溶液にトリ(C~Cアルキル)アミンを添加することにより、反応混合物をもたらすこと、
c.非プロトン性溶媒を、反応混合物に添加すること、及び
d.生成するリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを、固体として単離すること
を含む、方法。
【請求項2】
非プロトン性溶媒の添加後、反応混合物を約10℃~約30℃に冷却することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応混合物が視覚的に透明になるまで、反応混合物を攪拌する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
リン酸の、トリ(C~Cアルキル)アミンに対するモル比が、約0.8~約2.0である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
~Cアルカノールが、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、及びsec-ペンタノールから選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
~Cアルカノールがイソプロパノールである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
~Cアルカノールが、視覚的に透明なリン酸溶液をもたらすのに充分な量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
非プロトン性溶媒が、アセトン及び酢酸エチルから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
非プロトン性溶媒が、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムの理論収率10kgあたり、少なくとも約50~約350分の時間にわたって添加される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
生成する固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを沈降させることにより上澄み層を形成し、続いて上澄み層を除去し、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを非プロトン性溶媒で洗浄する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを乾燥させることをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムをろ過により単離し、乾燥させる、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムが、流動性のある粒子である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
流動性のある粒子が、非プロトン性有機溶媒を約1500ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1500ppm未満含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
流動性のある粒子が、非プロトン性有機溶媒を約1000ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1000ppm未満含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
流動性のある粒子が、カール・フィッシャー滴定で約500ppm未満の水を示す、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
流動性のある粒子が、リン酸二水素トリエチルアンモニウムである、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムの、流動性のある粒子形態。
【請求項19】
リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムが、リン酸二水素トリエチルアンモニウムである、請求項18に記載の、流動性のある粒子形態。
【請求項20】
リン酸二水素トリエチルアンモニウムが非晶質である、請求項18又は19に記載の、流動性のある粒子形態。
【請求項21】
非プロトン性有機溶媒を約1500ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1500ppm未満含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の、流動性のある粒子形態。
【請求項22】
非プロトン性有機溶媒を約1000ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1000ppm未満含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の、流動性のある粒子形態。
【請求項23】
非プロトン性有機溶媒を約500ppm未満、及びC~Cアルカノールを約500ppm未満含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の、流動性のある粒子形態。
【請求項24】
流動性のある粒子が、カール・フィッシャー滴定で約500ppm未満の水を示す、請求項18から23のいずれか一項に記載の、流動性のある粒子形態。
【請求項25】
流動性のある粒子が、カール・フィッシャー滴定で約250ppm未満の水を示す、請求項18から23のいずれか一項に記載の、流動性のある粒子形態。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、固体のリン酸二水素トリアルキルアンモニウムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸二水素トリエチルアンモニウム(CAS No. 35365-94-7)は、その吸湿性の高さにより一般的には加工不能な固体がすぐにもたらされる限りにおいて、時に液体として製造される。固体生成物を製造するように設計された合成方法には、このような化合物(周囲の湿気にさらされると、加工不能な塊及びゲルを形成する傾向がある)の極めて高い吸湿性を考慮すると、問題がある。
【0003】
発明の概要
要約すると、本開示により、固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウム、例えばリン酸二水素トリエチルアンモニウムを高収率で、また流動性のある粒子形態で製造する方法が提供される。この固体生成物は有利なことに、非プロトン性溶媒を約1500ppm未満、C~Cアルカノールを約1500ppm未満、及び水を約500ppm未満、含む(カール・フィッシャー滴定で決定)。
【0004】
詳細な説明
本明細書及び添付特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」には、内容として明示的に別段の定めがない限り、複数形が含まれる。本明細書及び添付特許請求の範囲で使用されるように、「又は(or)」という用語は一般的に、内容として明示的に別段の定めがない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で用いられる。
【0005】
「約(about)」という用語は一般的に、言及された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数値範囲をいう。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数字が含まれ得る。
【0006】
終点を用いて表現された数値範囲には、当該範囲内に包含されるすべての数字が含まれる(例えば1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5が含まれる)。
【0007】
第1の態様では、本開示により、固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを製造する方法が提供され、当該方法は、
a.C~Cアルカノールを水性リン酸と合わせて、溶液をもたらすこと、
b.反応混合物の温度をその沸点未満に維持しながら、かつ反応混合物を攪拌しながら、当該溶液にトリ(C~Cアルキル)アミンを添加することにより、反応混合物をもたらすこと、
c.非プロトン性溶媒を、反応混合物に添加すること、及び
d.生成するリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを、固体として単離すること
を含む。
【0008】
いくつかの実施態様において、本方法はさらに、非プロトン性溶媒の添加後、反応混合物を約10℃~約30℃に冷却することをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施態様において、本方法はさらに、工程bに続いて、反応混合物が視覚的に透明になるまで、反応混合物の攪拌を継続する。
【0010】
特定の実施態様では、リン酸の、トリ(C~Cアルキル)アミンに対するモル比が、約0.8~約2.0、約0.8~約1.8、約0.8~約1.6、約0.8~約1.4、約0.8~約1.2、約1.0~約2.0、約1.0~約1.8、約1.0~約1.6、約1.0~約1.4、1.0~約1.2、約1.2~約2.0、約1.2~約1.8、約1.4~約2.0、及びここに含まれるすべての範囲及び下位範囲である。ある実施態様では、リン酸の、トリ(C~Cアルキル)アミンに対するモル比が、約1~約1.05である。
【0011】
ここで使用するように、「リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウム」という用語には、C~Cアルキル部分が同じであるか又は異なる種が含まれる。その例には、リン酸二水素トリメチルアンモニウム、リン酸二水素トリエチルアンモニウム、リン酸二水素トリプロピルアンモニウム、及びリン酸二水素トリブチルアンモニウムが、またC~Cアルキル部分のそれぞれが異なる種、又は2つが同じで3つ目が異なる種も含まれる。
【0012】
適切なC~Cアルカノールには、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、及びsec-ペンタノールが含まれる。1つの実施態様では、C~Cアルカノールが、イソプロパノールである。1つの実施態様では、C~Cアルカノールが、視覚的に透明なリン酸溶液をもたらすのに充分な量で存在する。
【0013】
ここで使用するように、「水性リン酸」という用語には、トリ(C~Cアルキル)アミンと反応して所望の生成物を製造するために効果的な量の水性リン酸(例えば濃リン酸)が含まれる。「水性リン酸」という用語は、組成物の他の成分と混合又は合わせて組成物を形成する、組成物の成分をいう。「固体のリン酸」とは、水性リン酸の成分の非水性成分、又は水性リン酸成分から調製される組成物の非水性成分をいう。組成物中に含まれる固体のリン酸量は、組成物の総重量を基準として、少なくとも約50重量%の量であり得、例えば固体のリン酸は、水性リン酸組成物の総重量を基準として、少なくとも70重量%、又は少なくとも約80若しくは85重量%である。
【0014】
所望の量の固体リン酸塩をもたらすために、当該組成物は「濃」リン酸を、水と混合又は合わせて水性リン酸組成物を製造する成分として含有し得る。「濃」リン酸とは、少量又は最低量の水の存在下で、大量又は最大量の固体リン酸を含有する水性リン酸であって、その他の成分を実質的に含有しないもの(例えば非水又は非固体リン酸の材料が0.5又は0.1重量%未満)をいう。濃リン酸は通常、約15又は20重量%の水に、固体のリン酸を少なくとも約80又は85重量%有すると考えられる。あるいは、当該組成物は、水で希釈された濃リン酸量を含むと考えることもでき、これは例えば、水性リン酸組成物の他の成分と合わせる前、若しくはその後に、ある水量で希釈された濃リン酸、又は何らかのやり方で形成された等価物を意味する。1つの実施態様において、本方法で使用される水性リン酸は、濃リン酸である。
【0015】
適切な非プロトン性溶媒には、有機溶媒、例えばケトン、エステル、ニトリル、カーボネート、アミド、エーテル、及びグリコールエーテルが含まれる。例示的な非プロトン性溶媒には、グリコールエーテル、例えば酢酸エチル、N-メチルピロリジノン(NMP)、シクロヘキシルピロリジノン、N-オクチルピロリジノン、N-フェニルピロリジノン、ギ酸メチル、N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリル、アセトン、ブチリルラクトン、ブチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(すなわち、ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPGME)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(TPGME)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル(DPGPE)、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDE)、グリセリンカーボネート、N-ホルミルモルホリン、リン酸トリエチル、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限られない。1つの実施態様では、非プロトン性溶媒が、アセトンである。
【0016】
1つの実施態様では、非プロトン性溶媒が、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムの理論収率10kgあたり、少なくとも約50~約350分の時間にわたり、添加される。
【0017】
反応生成物、すなわち固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを、沈降させることができ、これによって上澄み層が形成され、続いて上澄み層を除去し、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを非プロトン性溶媒で洗浄する。その後、生成物を乾燥させて、所望の生成物が得られる。あるいは、生成物を遠心分離器に入れて、固体を上澄み液から分離することができ、これによって、所望の固体の単離が容易になる。さらに代替的には、所望の生成物をろ過により単離し、真空乾燥することができる。
【0018】
有利なことに、本方法の生成物、すなわちリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムはこうして、水、非プロトン性溶媒及びC~Cアルカノールが最小量しか存在しない、流動性のある固体としてもたらされる。通常の取り扱い条件において、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウム、特にリン酸二水素トリエチルアンモニウムは極めて吸湿性が高く、取り扱いが困難な凝塊及びゲルを形成する傾向があるため、この形態は、有利である。ここで使用するように、「流動性がある」とは、注がれるそれ自体の本来的な能力に起因して、ある容器から別の容器へと物理的に容易に移送可能な粉末、顆粒及び粒子をいう。言い換えれば、この形態では生成物が一般的に、非凝集状態である。
【0019】
よって、別の態様によれば本開示により、流動性のある形態のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムがもたらされる。1つの実施態様では、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムが、リン酸二水素トリエチルアンモニウムである。特定の実施態様において、本方法の生成物は、非プロトン性有機溶媒が約1500ppm未満、約1000ppm未満、若しくは約500ppm未満であり、かつ/又はC~Cアルカノールが約1500ppm未満、約1000ppm未満、若しくは約500ppm未満であり、かつ/又はカール・フィッシャー滴定で約500ppm未満、又は約250ppm未満の水を示す。
【実施例
【0020】
リン酸二水素トリエチルアンモニウムの合成
1Lのフラスコ中で、水中で85%のリン酸92.2g(0.8mol、1等量)を、イソプロパノール200mLと合わせた。この混合物に、トリエチルアミン80.9g(0.8mol、1等量)を、攪拌しながら添加した。この添加は20℃で開始し、反応は発熱性だった。添加を続けているうちに白色の固体が観察され、温度が50~55℃に達するとこの固体は消え、反応混合物は透明になり、反応は最終的に60℃に達した。この生成混合物に、アセトン400mLを添加し、ゆっくりと冷却しながら、攪拌しつつ最終的に-10℃にした。その後、固体の生成物を乾燥窒素下でろ過し、アセトン100mLで2回洗浄した。得られた固体を1時間、乾燥窒素に通すことにより乾燥させ、次に真空で1時間、乾燥を続けて、表題の化合物を得た(150g、93%)。
1H NMR (400MHz, DMSO-D6): 1.15 (t; 3J = 7.0Hz, 3H), 2.93 (q; 3J = 7.0Hz, 2H), 9-11 (br, 3H);痕跡量の溶媒:アセトン2.10 (s);イソプロパノール: 1.04 (d), 3.77 (sept); 13C{1H} (100.7 MHz, DMSO-D6): 9.3, 45.4; 31P{1H} NMR (162.0MHz, DMSO-D6): 1.05 ppm; 痕跡量の溶媒(1H NMR): 1060ppmアセトン、1450ppmイソプロパノール; KF滴定150ppm。
【0021】
実施例2:100Lの反応器におけるリン酸二水素トリエチルアンモニウムの合成
100Lの反応器中で、濃リン酸(85%)8.6kg(5.1L)(74.4mol、1等量)とイソプロパノール13.0kg(16.6L)とを合わせた。この混合物に、トリエチルアミン8.0kg(11.0L)(78.9mol、1.06等量)を3.5時間にわたり添加した。この反応は発熱性なので、この反応を、乾燥窒素ブランケット下で50℃未満の温度に維持した。トリエチルアミン1kgを最初に添加した後、反応器ジャケットを40℃に設定し、残りの添加の間、最低温度に維持した。トリエチルアミンの添加が完了した後、反応器を55℃に設定し、1時間攪拌した。その後、反応混合物を約30kg(38.2L)のアセトンで処理した(アセトンは生成する固体のリン酸二水素トリエチルアンモニウムのための逆溶媒(antisolvent)として用いた)。アセトンは、45℃の最低温度を維持しながら、4.5時間にわたりゆっくりと添加した。反応器の温度をゆっくりと5時間にわたり段階的に(by a ramp approach)20℃に下げ、生成物を沈殿させた。得られる生成物をろ過し、さらなるアセトンで洗浄し(2×10kg)、真空乾燥させて、表題の化合物を白色の固体として得た(13.2kg、89%)。NMRデータは、150gのスケールで報告されたものと一致している。
痕跡量の溶媒(1H NMR): 217ppmアセトン、933ppmイソプロパノール; KF滴定70ppm。
【0022】
実施例3:450Lの反応器におけるリン酸二水素トリエチルアンモニウムの合成
450Lの反応器中で、濃リン酸(85%)39.0kg(23.0L)(334.8mol、1等量)とイソプロパノール59.2kg(75.3L)とを、10℃に冷却した反応器ジャケットで合わせた。この混合物に、トリエチルアミン36.4kg(50.1L)(359.7、1.07等量)を5時間にわたり添加した。この反応は発熱性なので、この反応を、乾燥窒素ブランケット下で52℃未満の温度に維持した。トリエチルアミン1kgを最初に添加した後、反応器ジャケットを40℃に設定し、残りの添加の間、最低温度に維持した。トリエチルアミンの添加が完了した後、反応器を55℃に設定し、1時間攪拌した。その後、反応混合物を約137kg(174.7L)のアセトンで処理した(アセトンは生成する固体のリン酸二水素トリエチルアンモニウムのための逆溶媒として用いた)。アセトンは、45℃の最低温度を維持しながら、7時間にわたりゆっくりと添加した。反応器の温度をゆっくりと10時間にわたり段階的に20℃に下げ、生成物を沈殿させた。得られる生成物をろ過し、さらなるアセトンで洗浄し(2×45kg)、真空乾燥させて、表題の化合物を白色の固体として得た(61kg、91%)。NMRデータは、150gのスケールで報告されたものと一致している。
痕跡量の溶媒(1H NMR): 339ppmアセトン、902ppmイソプロパノール; KF滴定250ppm。
【0023】
態様
第1の態様では本開示により、固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを製造する方法が提供され、当該方法は、
a.C~Cアルカノールを水性リン酸と合わせて、溶液をもたらすこと、
b.反応混合物の温度をその沸点未満に維持しながら、かつ反応混合物を攪拌しながら、当該溶液にトリ(C~Cアルキル)アミンを添加することにより、反応混合物をもたらすこと、
c.非プロトン性溶媒を、反応混合物に添加すること、及び
d.生成するリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを、固体として単離すること
を含む。
【0024】
第2の態様では本開示により、非プロトン性溶媒の添加後、反応混合物を約10℃~約30℃に冷却することをさらに含むことが提供される。
【0025】
第3の態様では本開示により、反応混合物が視覚的に透明になるまで、反応混合物を攪拌する、第1又は第2の態様の方法が提供される。
【0026】
第4の態様では本開示により、リン酸の、トリ(C~Cアルキル)アミンに対するモル比が、約0.8~約2.0である、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0027】
第5の態様では本開示により、C~Cアルカノールが、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール、及びsec-ペンタノールから選択される、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0028】
第6の態様では本開示により、C~Cアルカノールがイソプロパノールである、前述のいずれかの態様による方法が提供される。
【0029】
第7の態様では本開示により、C~Cアルカノールが、視覚的に透明なリン酸溶液をもたらすのに充分な量で存在する、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0030】
第8の態様では本開示により、非プロトン性溶媒がアセトン及び酢酸エチルから選択される、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0031】
第9の態様では本開示により、非プロトン性溶媒が、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムの理論収率10kgあたり、少なくとも約50から約350分の時間にわたって添加される、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0032】
第10の態様では本開示により、生成する固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを沈降させることにより上澄み層を形成し、続いて上澄み層を除去し、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを非プロトン性溶媒で洗浄する、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0033】
第11の態様では本開示により、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムを乾燥させることをさらに含む、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0034】
第12の態様では本開示により、固体のリン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムをろ過により単離し、乾燥させる、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0035】
第13の態様では本開示により、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムが、流動性のある粒子である、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0036】
第14の態様では本開示により、流動性のある粒子が、非プロトン性有機溶媒を約1500ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1500ppm未満含む、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0037】
第15の態様では本開示により、流動性のある粒子が、非プロトン性有機溶媒を約1000ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1000ppm未満含む、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0038】
第16の態様では本開示により、流動性のある粒子が、カール・フィッシャー滴定で約500ppm未満の水を示す、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0039】
第17の態様では本開示により、流動性のある粒子が、リン酸二水素トリエチルアンモニウムである、前述の態様のいずれかによる方法が提供される。
【0040】
第18の態様では本開示により、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムの、流動性のある粒子形態が提供される。
【0041】
第19の態様では本開示により、リン酸二水素トリ(C~Cアルキル)アンモニウムが、リン酸二水素トリエチルアンモニウムである、第18の態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0042】
第20の態様では本開示により、リン酸二水素トリエチルアンモニウムが非晶質である、第19の態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0043】
第21の態様では本開示により、非プロトン性有機溶媒を約1500ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1500ppm未満含む、第18から第20のいずれかの態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0044】
第22の態様では本開示により、非プロトン性有機溶媒を約1000ppm未満、及びC~Cアルカノールを約1000ppm未満含む、第18から第20のいずれかの態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0045】
第23の態様では本開示により、非プロトン性有機溶媒を約500ppm未満、及びC~Cアルカノールを約500ppm未満含む、第18から第20のいずれかの態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0046】
第24の態様では本開示により、流動性のある粒子が、カール・フィッシャー滴定で約500ppm未満の水を示す、第18から第23のいずれかの態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0047】
第25の態様では本開示により、流動性のある粒子が、カール・フィッシャー滴定で約250ppm未満の水を示す、請求項18から23のいずれか一項に記載のいずれかの態様による、流動性のある粒子形態が提供される。
【0048】
このように、本開示についていくつかの例示的な実施態様を記載したので、当業者であれば直ちに、本明細書に添付された特許請求の範囲内でさらに別の実施態様を行うことができ、また使用可能なことを理解するであろう。本文書によりカバーされる開示の多くの利点については、先に説明したとおりである。しかしながら、本開示は多くの点で、例示に過ぎないことが理解されるだろう。本開示の範囲はもちろん、添付特許請求の範囲が表現される言語で規定される。
【国際調査報告】