(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】共振器、線形加速器構成、及び回転励磁器を有するイオン注入システム
(51)【国際特許分類】
H05H 7/18 20060101AFI20241022BHJP
H01J 37/317 20060101ALN20241022BHJP
H01J 37/30 20060101ALN20241022BHJP
【FI】
H05H7/18
H01J37/317 Z
H01J37/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522453
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022041686
(87)【国際公開番号】W WO2023069197
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロイウ, コステル
(72)【発明者】
【氏名】ブラニク, デーヴィッド ティー.
(72)【発明者】
【氏名】タム, ワイ-ミン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, チャールズ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シンクレア, フランク
【テーマコード(参考)】
2G085
5C101
【Fターム(参考)】
2G085AA03
2G085BA05
2G085BA08
5C101AA25
5C101EE25
5C101EE28
5C101EE63
(57)【要約】
高周波共振器のための励磁器.励磁器は、励磁器軸に沿って延在する励磁器コイル内側部分、及び励磁器コイル内側部分の遠位端に配置された励磁器コイルループを含み得る。励磁器は、励磁器軸の周りで励磁器コイルループを回転させるために、少なくとも回転構成要素を含む駆動機構をさらに含み得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波共振器のための励磁器であって、
励磁器軸に沿って延在する励磁器コイル内側部分、
前記励磁器コイル内側部分の遠位端に配置された励磁器コイルループ、及び
前記励磁器軸の周りで前記励磁器コイルループを回転させるために、少なくとも回転構成要素を備えた駆動機構
を備えている励磁器。
【請求項2】
前記駆動機構が、前記励磁器軸に平行な第1の方向に沿って前記励磁器コイルループを移動させる並進移動構成要素をさらに備えている、請求項1に記載の励磁器。
【請求項3】
前記励磁器コイルループが、円形形状を含む、請求項1に記載の励磁器。
【請求項4】
前記励磁器コイル内側部分の周りに配置された絶縁スリーブ、及び
前記絶縁スリーブの周りに配置された導電スリーブ
を備え、前記励磁器コイルループが、前記励磁器コイル内側部分の前記遠位端に接続された第1の端部と、導電スリーブに接続された第2の端部とを有する、請求項1に記載の励磁器。
【請求項5】
前記励磁器コイル内側部分が、RF信号を受信するように連結され、前記導電スリーブが接地に連結されている、請求項4に記載の励磁器。
【請求項6】
共振器に接続するための、前記導電スリーブを周方向に取り囲むように配置された導電リングをさらに備えている、請求項4に記載の励磁器。
【請求項7】
線形加速器のための共振器であって、
トロイダル形状を画定するトロイダル共振器コイル、及び
前記トロイダル共振器コイル内に少なくとも部分的に配置された励磁器であって、
励磁器軸に沿って延在する励磁器コイル内側部分と、
前記励磁器コイル内側部分の遠位端に配置された励磁器コイルループと、
前記励磁器軸の周りで前記励磁器コイルループを回転させるために、少なくとも回転構成要素をさらに備えた駆動機構と
を備えた励磁器
を備えている共振器。
【請求項8】
前記トロイダル共振器コイルが方位軸を画定し、前記励磁器コイルループが前記方位軸を中心としている、請求項7に記載の共振器。
【請求項9】
前記トロイダル共振器コイルが短半径を画定し、前記励磁器コイルループがループ半径を有し、前記ループ半径と前記短半径との比が0.2から0.3である、請求項7に記載の共振器。
【請求項10】
前記ループ半径と前記短半径との比が0.22から0.28である、請求項9に記載の共振器。
【請求項11】
前記トロイダル共振器コイルが中央平面を画定し、前記励磁器コイルループが前記中央平面内に配置されている、請求項7に記載の共振器。
【請求項12】
前記駆動機構が、前記励磁器軸に平行な第1の方向に沿って前記励磁器コイルループを移動させる並進移動構成要素をさらに備えている、請求項7に記載の共振器。
【請求項13】
前記励磁器が、
前記励磁器コイル内側部分の周りに配置された絶縁スリーブ、及び
前記絶縁スリーブの周りに配置された導電スリーブ
をさらに備え、前記励磁器コイルループが、前記励磁器コイル内側部分の前記遠位端に接続された第1の端部と、導電スリーブに接続された第2の端部とを有する、請求項7に記載の共振器。
【請求項14】
前記励磁器コイル内側部分が、RF信号を受信するように連結され、前記導電スリーブが接地に連結されている、請求項13に記載の共振器。
【請求項15】
前記トロイダル共振器コイルがトロイダルコイルポストを備え、
前記励磁器コイル内側部分、前記絶縁スリーブ、及び前記導電スリーブが、共に励磁器シャフトを画定し、かつ
前記励磁器シャフトが、前記トロイダルコイルポスト内に少なくとも部分的に配置されている、請求項13に記載の共振器。
【請求項16】
線形加速器を操作する方法であって、
前記線形加速器内のRF共振器の励磁器にRF電力を送ることであって、前記RF共振器が、トロイダル共振器コイル及び共振器缶を備え、前記励磁器が、前記トロイダル共振器コイル内に配置された励磁器ループを備えている、RF電力を送ることと、
前記線形加速器を通してイオンビームを伝導することと、
前記線形加速器を通して前記イオンビームが伝導される間、前記励磁器ループを回転させることであって、前記励磁器と前記トロイダル共振器コイルとの間の電力結合が調整される、前記励磁器ループを回転させることと
を含む方法。
【請求項17】
前記励磁器コイルが、励磁器軸に沿って延在し、かつ前記励磁器ループに接続された励磁器コイル内側部分を備え、前記励磁器コイル内側部分が、駆動機構に連結され、
前記励磁器ループを回転させることが、前記励磁器軸の周りで励磁器コイル内側部分を回転させるために、前記駆動機構を使用することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記線形加速器を通してイオンビームを伝導する前に、
前記トロイダル共振器コイルを収容する共振器チャンバ内に配置された調整可能なキャパシタンス構成要素を使用して、前記RF共振器の共振器回路条件を調節することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記トロイダル共振器コイルが短半径を画定し、前記励磁器ループがループ半径を有し、前記ループ半径と前記短半径との比が0.2から0.3である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月20日に出願された「RESONATOR, LINEAR ACCELERATOR CONFIGURATION AND ION IMPLANTATION SYSTEM HAVING ROTATING EXCITER」と題する米国非仮特許出願第17/506,185号から優先権を主張しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示は、概して、イオン注入装置に関し、より具体的には、高エネルギービームラインイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン注入は、イオン衝突を介して、ドーパント又は不純物を基板に導入するプロセスである。イオン注入システムは、イオン源、及び一連のビームライン構成要素を備え得る。イオン源は、イオンが生成されるチャンバを備え得る。イオン源は、チャンバに隣接して配置された電源及び抽出電極アセンブリをさらに備え得る。ビームライン構成要素は、例えば、質量分析器、第1の加速段又は減速段、コリメータ、及び第2の加速段又は減速段を含み得る。光ビームを操作するための一連の光学レンズと同じように、ビームライン構成要素は、特定の種、形状、エネルギー、及び/又は他の性質を有するイオン又はイオンビームをフィルタリングし、集束し、かつ操作することができる。イオンビームは、ビームライン構成要素を通過して、プラテン又はクランプ上に取り付けられた基板に向けて方向付けられ得る。
【0004】
約1MeV以上のイオンエネルギーを生成可能な注入装置は、高エネルギーイオン注入装置、又は高エネルギーイオン注入システムと呼ばれることが多い。あるタイプの高エネルギーイオン注入装置は、イオン加速段として、線形加速器、又はリニアック(LINAC)を使用する。線形加速器、又はリニアック(LINAC)では、チューブとして配置された一連の電極が、イオンビームを伝導し、一連のチューブに沿ってますます高いエネルギーまで加速させる。ここで、電極がRF電圧信号を受信する。既知の(RF)LINACは、13.56MHzから120MHzの周波数で印加されるRF電圧によって駆動される。
【0005】
既知のLINAC(簡潔に説明するため、本明細書で使用するLINACという用語は、イオンビームを加速させるためにRF信号を使用するRFリニアックを指し得る)では、目標最終エネルギー(例えば、1MeV、数MeV、又はそれ以上)に達するために、イオンビームを複数の加速段で加速させる場合がある。LINACの連続的な各段は、ますます高いエネルギーでイオンビームを受信し、そのイオンビームをさらに高いエネルギーまで加速させることができる。所与のLINACの加速段は、1つのRF駆動電極を備えたいわゆるダブルギャップ構成を採用する場合があり、又は2つのRF駆動電極を備えたいわゆるトリプルギャップ構成を採用する場合がある。
【0006】
所与の加速段は、選択されたRF周波数のRF電圧でRF電極を駆動するために、さらに共振器を含み得る。共振器の既知の構成例には、ソレノイド共振器が含まれている。ソレノイド共振器は、概して円形の円筒形状を画定するソレノイドコイルを有しており、このコイルは、電気的に接地された円筒形の共振器缶(RFエンクロージャ)によって囲まれている。電磁的な観点からいうと、共振器は、誘導性素子としてコイルを備え、かつ容量性素子として共振器缶を備えたRLC発振回路である。共振時、エネルギーは、駆動されたRF電極間の電圧差として、コイルに蓄積された磁気エネルギーから静電エネルギーへ周期的に変換される。このようなソレノイド構成では、共振器缶の内側には励磁コイルが設けられるが、外側には共振器コイルが設けられ、共振器コイルに磁気的に結合したRF信号を発生させる。具体的には、共振RF空洞では、RFエネルギーがRF発生器からRLC発振回路に伝達される。所与の入力RF電力について、共振器のシャントインピーダンス(Zsh)が高いほど、利用可能な加速電圧は高くなる。必要なRFエネルギーは、RF励磁器(励磁器)によって、RF発生器からRLC回路に伝達される。共振空洞の動作において、励磁器は、2つの役割を果たす。その2つの役割とは、i)RF発生器の出力インピーダンス(このインピーダンスは、50Ωであり得る)を整合させることと、ii)RF発生器からRLC回路への電力伝達を最大化することである。
【0007】
近年、加速段において使用するために、いわゆるトロイダル共振器が提案されている。トロイダル共振器では、共振器コイルがトロイダル形状を画定し、周囲の缶(空洞)が円筒形状を有する。この構成により、共振器内に閉磁場トポロジーを発生させることができる。この構成では、概して磁場が共振器コイルのループ内に収まるため、既知のソレノイド設計に比べて励磁器の配置を調整する必要があるかもしれない。
【0008】
本開示は、これらの検討事項及びその他の検討事項に関連して提供される。
【発明の概要】
【0009】
高周波共振器のための励磁器が提供される。励磁器は、励磁器軸に沿って延在する励磁器コイル内側部分、及び励磁器コイル内側部分の遠位端に配置された励磁器コイルループを含み得る。励磁器は、励磁器軸の周りで励磁器コイルループを回転させるために、少なくとも回転構成要素を含む駆動機構をさらに含み得る。
【0010】
別の実施形態では、線形加速器のための共振器が提供される。共振器は、トロイダル形状を画定するトロイダル共振器コイル、及びトロイダル共振器コイル内に少なくとも部分的に配置された励磁器を含み得る。励磁器は、励磁器軸に沿って延在する励磁器コイル内側部分、及び励磁器コイル内側部分の遠位端に配置された励磁器コイルループを含み得る。励磁器は、励磁器軸の周りで励磁器コイルループを回転させるために、少なくとも回転構成要素を含む駆動機構をさらに含み得る。
【0011】
さらなる実施形態では、線形加速器を操作する方法が提供される。当該方法は、線形加速器内のRF共振器の励磁器にRF電力を送ることを含み得、RF共振器は、トロイダル共振器コイル及び共振器缶を備え、励磁器は、トロイダル共振器コイル内に配置された励磁器ループを備えている。当該方法は、線形加速器を通してイオンビームを伝導することと、線形加速器を通してイオンビームが伝導される間、励磁器ループを回転させることとをさらに含み得、励磁器とトロイダル共振器コイルとの間の電力結合が調整される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A-F】本開示の実施形態に係る、例示的な装置を示す。
【
図2A】線形加速器のトロイダル加速段の一実施形態の詳細な正面図である。
【
図2B】励磁周波数へのVSWR(電圧定在波比)の依存性を示す。
【
図3A】本開示の一実施形態に係る共振器の側面図である。
【
図3B】本開示の一実施形態に係る共振器の端面図である。
【
図3C】本開示の別の実施形態に係る別の共振器の側面図である。
【
図4A-4B】励磁器ループ半径とトロイダル共振器コイルの短半径との比の関数としての共振器の電気的性能を示す。
【
図5A-5C】共振器の実施形態のための、本開示の実施形態に係る、励磁器ループの種々の回転配向で操作される共振器の端面図を示す。
【
図6A-6B】回転励磁器の一実施形態の構造の詳細を示す。
【
図7A-7B】本開示の実施形態に係る、励磁器ループの配向角の関数としての共振器の電気的挙動を示す。
【
図8】本開示の実施形態に係るイオン注入装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことが意図されているわけではない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことが意図されており、したがって、範囲を限定するものと見なすべきではない。図面では、同様の番号が同様の要素を表す。
【0014】
ここで、本開示に係る装置、システム、及び方法を、システム及び方法の実施形態が示された添付の図面を参照しながら、以下により十分に説明する。システム及び方法は、多くの異なる形態で具現化されてよく、ここで提示された実施形態に限定されると解釈されるべきではない。その代わりに、これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全となり、システム及び方法の範囲を当業者に十分に伝えるように提供されている。
【0015】
図面に見られるような半導体製造デバイスの構成要素の形状寸法及び配向に対する、これらの構成要素及びその構成部品の相対的な配置及び配向を説明するために、ここでは、「上部(top)」、「底部(bottom)」、「上方(upper)」、「下方(lower)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「横方向(lateral)」、及び「長手方向(longitudinal)」などの用語が使用され得る。用語には、具体的に言及された単語、その派生語、及び同様の趣旨の単語が含まれ得る。
【0016】
ここでは、単数形で記載された、「1つ」又は「ある」(a、an)という文言に続く要素又は操作は、複数の要素又は操作も潜在的に含むものとして理解される。さらに、本開示の「一実施形態(one embodiment)」への言及は、記載された特徴も組み込む追加的な実施形態の存在を除外するものと解釈されることを意図しない。
【0017】
ここでは、RF共振器、具体的には、線形加速器を用いたビームラインアーキテクチャに基づく、改善された高エネルギーイオン注入システム及び構成要素のためのアプローチが提供される。簡潔性のために、ここではイオン注入システムがさらに「イオン注入装置」と呼ばれ得る。様々な実施形態には、線形加速器の加速段の中で有効ドリフト長を柔軟に調整する能力を付与する新規なアプローチが伴っている。
【0018】
図1Aから
図1Fは、ここで励磁器10と呼ばれる例示的な装置を示す種々の図を示す。具体的には、後述する
図1A及び
図1Bに加えて、
図1Cは励磁器10の一部の詳細を示し、
図1Dは励磁器10の端面図を示し、
図1Eは励磁器10の斜視図を示すが、
図1Fは励磁器10の側面図を示す。励磁器10は、LINACのRF共振器などの高周波共振器(励磁周波数がMHz範囲に及び得る)における使用に適切であり得る。
図1Aに示すように、励磁器10は、励磁器シャフト17と同様に、高導電性金属又は金属合金などの適切な導体で形成された励磁器コイル12を含む。
図1Bに詳述されているように、励磁器シャフト17は、励磁器コイル内側部分14として示されている電力供給された脚、絶縁スリーブ18、及び導電スリーブ20として示されている接地脚を含む。
【0019】
励磁器シャフト17は、励磁器軸に沿って延在し得るが、この場合、図示のデカルト座標系のY軸に対して平行であると画定される。励磁器コイル12は、励磁器コイル内側部分14の遠位端に配置された励磁器ループ16をさらに含み得る。したがって、励磁器コイル12の一部が、励磁器コイル内側部分14及び導電スリーブ20を含むシャフト17において形成されるが、励磁器コイル(励磁器コイルループ16)の一部は、励磁器シャフト17を越えて延在する。
【0020】
励磁器コイルループ16は、所与の平面、例えば、X-Y面内にある円形形状を画定し得る。図示のように、励磁器コイルループ16の第1の端部には、励磁器コイル内側部分14の遠位端に接続されているが、第2の端部には、励磁器コイルループ16が導電スリーブ20に接続されている。この構成により、絶縁スリーブ18及び励磁器コイル内側部分が、チャンバ壁22を通過することができる。チャンバ壁22は、励磁器コイル12、及び共振器の関連ハードウェアを収容することができる。
【0021】
図1Aにさらに示すように、励磁器10は、段24を含み得る。この段には、駆動機構が組み込まれ得る。駆動機構は、励磁器軸(Y軸)の周りで励磁コイルループ16を回転させるために、少なくとも回転構成要素(別途図示せず)を含む。幾つかの実施例では、段24の駆動機構は、励磁器軸に平行な第1の方向に沿って、言い換えると、Y軸に沿って励磁器コイルループ16を移動させるために、並進移動構成要素(別途図示せず)をさらに含み得る。したがって、励磁器コイルループ16の配向及び位置は、励磁器コイルループ16を収容するハウジング内の共振器コイルに対して調整され得る。この調整可能性の利点については、さらに後述する。
【0022】
図2Aは、線形加速器の加速段100の一実施形態の詳細な正面図である。加速段100は、線形加速器においてイオンビーム104を加速させるために、ドリフトチューブアセンブリ102、及び共振器110として示される関連する共振器を含む。後述する
図8に示すように、共振器110は、イオン注入装置300においてイオンビーム306を加速させるための線形加速器314の複数の加速段に実装され得る。
【0023】
図2Aの実施形態では、ドリフトチューブアセンブリ102は、接地ドリフトチューブ電極102Bと同様に分類される、上流側の接地ドリフトチューブと下流側の接地ドリフトチューブを含む。ドリフトチューブアセンブリ102は、RFドリフトチューブ電極102Aとして示される、間隙で隔てられた一対のRFドリフトチューブ電極をさらに含む。RFドリフトチューブ電極102A及び接地ドリフトチューブ電極102Bは、集合的にトリプル間隙構成を画定する。
【0024】
RFドリフトチューブ電極102Aは、共振器110によって駆動される。共振器110は、トロイダルコイル114と呼ばれるトロイダル共振器コイルを収容するRFエンクロージャ112を含む。トロイダルコイル114及び同様の共振器コイルについては、後の実施形態で詳述する。簡単に説明すると、励磁コイル12は、RF発生器120及びインピーダンス素子122を含むRF回路124として示されるRF電力供給アセンブリの一部としてRF電力を受信するように配置され得る。図には示されていないが、共振器110又は後述の同様の共振器は、容量性チューナを含み得る。容量性チューナは、トロイダルコイル114の外部に位置付けされるが、共振器缶(RFエンクロージャ112)の内部に位置付けされる。様々な非限定的な実施形態では、容量性チューナは、トロイダルコイル114及び共振器缶(RFエンクロージャ112)によって形成されるRLC回路の総キャパシタンスを調整するような態様で可動であり得る。
【0025】
さらに、
図2A及び以下の図に示すように、様々な非限定的な実施形態によれば、共振器110及び同様の共振器は、トリプル間隙加速器構成に適用することができる。励磁器10の新規な構成の他に、これらの実施形態における公知のLINACと異なる点は、共振器110、共振器110A、及び共振器110B(これらの共振器は
図3A~Cに示す)が、公知のトリプル間隙加速器段のソレノイド(又はヘリカル)コイルとは対照的に、電圧をトロイダルコイル114を介してドリフトチューブアセンブリ102に供給する点である。
【0026】
励磁器コイル12及びトロイダルコイル114は、RFエンクロージャ112と共に、 RFドリフトチューブ電極102AでRF電圧を生成するように作動する。入力RF電源と加速電極(RFドリフトチューブ電極102A)で発生する電圧との関係を求めるため、励磁コイル12、トロイダルコイル114、RFエンクロージャ112を含む共振空胴が、集中素子回路としてモデル化される。テブナンの定理を用いれば、RF発生回路及び共振器回路を単一の回路に変換することができる。等価相互インピーダンスZ
Mは次のように書き出すことができる。
同様に、等価RF電圧V
Mは、以下のようになる。
ここで、i
2=-1であり、ω=2πfは角周波数、V
0及びZ
0はRF発生器の出力電圧とインピーダンス、Mは励磁コイル及び共振器コイルの相互インダクタンスである。式(2)を見るとわかるように、電力伝達効率(この効率は電圧の2乗に対応する)は、コイル間の結合に依存し、この結合は、コイルを取り巻く環境のサイズ、構造、物理的間隔、相対的位置、特性の関数である。最も単純な形では、2つの同心コイルの相互インダクタンスはマクスウェルの方程式で与えられる。
及び
ここで、A及びaは、円形コイルの半径であり、sは、それらの中心間の距離であり、F及びEは、それぞれ第1種及び第2種の完全楕円積分である。
【0027】
励磁コイルと共振器コイルと間の結合は、励磁コイルと共振器コイルと間の磁束リンケージの量に依存するため、共振器コイルの所定のサイズについては、結合の効果が最大となる励磁コイルの最適寸法が存在する。広範囲の周波数をカバーするため、励磁コイルは、操作の帯域幅が高い。したがって、本開示の実施形態によれば、励磁コイル12は、低Qファクタコイル、すなわち、低インダクタンスコイルとして設計される。したがって、
図1Aー1Fに示すように、励磁コイル12は、半径r0の1ループ円形コイルとして設計され得る。特に、励磁器コイルループ16は、直径dの銀メッキ銅線などの導電性金属で形成することができる。同軸ケーブルと同様に、導電スリーブ20は、接地へのリターン経路を確保し、さらにRF干渉から励磁器コイル内側部分14を遮断する。本開示の実施形態によれば、励磁コイル12の特性インピーダンスがRF発生器の出力インピーダンスと一致するように、励磁コイル内側部分14、絶縁スリーブ18、及び導電スリーブ20の直径が選択される。したがって、(最も一般的な)インピーダンス50ΩのRF発生器は、以下の式が当てはまる。
ここで、μ
0及びε
0は、自由空間の透磁率及び誘電率を表し、ε
rは、絶縁スリーブ材料の相対誘電率を表す。励磁器の形状寸法によって、適合する材料を絶縁体(空気(ε
r=1)、PTFE(ε
r=2)、石英(ε
r=3.7)、アルミナ(ε
r=9.8)、又はその他)として選択することができる。概して、RF電子工学では、発電機から負荷部への電力伝送の効率は、電圧定在波比(VSWR)によって特徴付けられる。このパラメータは、反射電圧波と順方向電圧波の振幅間の比である。
図2Bに示すように、VSWRは、周波数の鋭い関数であり、1(完全透過)から∞(ゼロ透過)の間の値であり得る。このパラメータは、電力伝送に関連する。
ここで、Pr及びPfは、それぞれ反射電力と順方向電力を表す。一実施形態では、励磁コイルを適切に設計することで、VSWRを1の値に近づくように最小化することができる。
図2Bの場合、式6によりVSWR=1.08となるが、反射電力の値は、順方向電力のわずか0.15%を表す。
【0028】
励磁器コイル12は、任意の形状の共振器コイルを駆動するように使用できるが、
図2Aなどの本実施形態では、共振器コイルはトロイダル共振器である。そのため、例えばトロイダルコイル114によって生成される磁束130は、共振器コイルによって完全に包囲される。言い換えれば、磁束はコイルループ内に閉じ込められる。したがって、本開示の実施形態によれば、励磁コイルによって生成された磁束と、トロイダル共振器コイルの磁束との間に必要な磁束リンケージをもたらすために、トロイダル共振器コイルのループ間に励磁コイルを挿入し、トロイダル共振器コイルに電力供給する必要がある。一方、トロイダル共振器構成は、トロイダルコイル114の内部に磁束が含まれるという事実に利点がある。この形状寸法により、トロイダルコイル114の外への磁場ラインの漏れが回避され、ひいては共振器のRF筐体112内の誘導渦電流が少なくなる。渦電流が少ないほどRLC回路の抵抗が小さくなり、潜在的にシャントインピーダンスが高くなる。
【0029】
共振器コイル内の励磁コイルの挿入形態例を示すために、
図3A、
図3B、及び
図3Cは、本開示の実施形態に係る、2つの異なる共振器の実施例を提供する。具体的には、
図3A及び
図3Bは、本開示の一実施形態に係る共振器110Aの側面図及び端面図をそれぞれ示し、
図3Cは、本開示の別の実施形態に係る別の共振器の側面図を示す。これらの共振器にはそれぞれトロイダルコイルが使われている。本明細書で使用される場合、「トロイダルコイル」という用語は、トロイダル形状を画定するように互いに配置された2つの別個のコイルを指す場合があり、ここで、個々のコイルは、トロイダル形状の一部(例えば、トロイダルの互いに類似する片側部分)を形成する場合がある。
図3Bでより明確に示されるように、トロイダルコイル114は、複数のループ又はターンを含む。トロイダルコイル114は、それぞれN巻きを有する2つの部分として配置された2つのコイルを含み、銀メッキ銅管などの適切な導体で構成されている。トロイダルコイル114の各片側部分の巻きは同じ方向に巻かれていることにより、電力供給されたドリフトチューブ上の電圧間の位相差が180°(逆位相)となる。トロイダルコイル114の上部では、トロイダルコイル114の両端が長さl
0だけ延長され、RF筐体の開口部(図示せず)を通り、上述した2つの別個の電力供給されたRFドリフトチューブ電極(RF電極102A)に個別に接続される。底部では、トロイダルコイル114のループが、接地された筐体壁(チャンバ壁22を参照)に接続され得る。
【0030】
最初に
図3を見ると、第1の挿入形態が示されている。励磁器コイル12が、トロイダルコイル114の底部に向かって挿入されており、ループの中心がトロイダルの方位軸上にあり、トロイダル脚から等間隔にある。別の言い方をすれば、励磁器コイル12の長軸が、X-Y平面に直交するZ軸に沿って延在している。トロイダルコイルの底部脚部が接地されているため、この構成は、励磁器コイル12とトロイダルコイル114との間のアーク放電の発生リスクを低減させる。さらに、励磁器コイルループ16が対称的に配置されることにより、トロイダルコイル114の2つの片側部分に対する電圧のバランスが保たれ得る。この構成の欠点は、導電スリーブ20をトロイダルコイル114のループに通し、接地されたチャンバ壁1に接続しなければならないということにある。この構成は機能的ではあるが、この構成では、励磁器コイル12(特に励磁器コイル内側部分14を指す)がチャンバ壁22に達するのに十分な長さを確保するために比較的長いため、励磁器コイル12に沿って電圧降下が生じ、ひいては電力伝送の効率が低下する。
【0031】
励磁器コイル12のより有利な挿入形態が
図3A及び
図3Bに示される。この場合、励磁器コイル12が、トロイダルコイル114の脚部間でシステムの底部に挿入される。励磁器コイルループ16の中心は、トロイダルの方位軸(トロイダルのOyz対称面上の円を意味し、トーラスの長半径(RMajor)に等しい半径を有する)に位置合わせされる。導電スリーブ20は、トロイダルコイル114の接地されたペデスタルに電気的に接続される。低いアーク放電リスクと平衡電圧を維持しながら、この構成では接地へのリターン経路が短くなる。その結果、励磁器10の電圧降下が減少し、この減少が電力伝達効率の向上につながる。
【0032】
理想的な場合(損失なし)では、磁気エネルギーが完全に静電エネルギーに変換されることが示されており、その結果、トロイダルコイル114(磁気エネルギー)から加速イオン(運動エネルギー)へのエネルギー変換が1:1となる。しかし、実際のシステムでは、このエネルギー変換を制限する損失がある。この場合、エネルギー伝達は、共振器のシャントインピーダンス(Zsh)によって定量化される。同じ入力電力量であれば、Z
shが高いほど加速電極に発生する電圧は高くなる。理論的な解析によると、Z
shは、コイルのインダクタンスに対応して~L
3/2の関係になり、この関係は、Lが大きくなるほどZ
shが大きくなることを意味する。一方、空洞はRLC回路を形成するため、回路は特定の周波数で発振する。共振における周波数は、
であり、ここで、Lはコイルのインダクタンスであり、Cはシステムのキャパシタンスである。
【0033】
したがって、コイル-缶(筐体)共振器システムは、可能な限り高いシャントインピーダンス(Z
sh)を有し、同時に、所望の操作RF周波数(例えば、13.56MHz及び27.12MHz)に可能な限り近い自然共振周波数(f
0)を有するように設計されている。上述のように、操作周波数からの共振周波数のわずかな逸脱が、容量性同調構成要素(ここでは、容量性同調構成要素140の1つの可能な位置が破線ラインで示されている)で補正され得る。式(3)~(4)で示されるように、相互結合はコイルのサイズと相対的な位置に依存する。したがって、所定の共振器コイル形状に対して、誘導性RF励磁器の最適なサイズ(励磁器コイルループ16の直径を意味する)が存在することになる。特性インピーダンス(Zch)が同一であるがループ半径が異なる励磁器コイルのセットによって引き起こされた電気的挙動が、同じ共振器コイルに対してモデリングされた。
図4A及び
図4Bに見られるように、HFSS(高周波シミュレーションソフトウェア)モデリング結果は、電力伝達が最大となる励磁ループ半径とトロイダル短半径との最適な比率が約0.25の値に相当することを示している。この比率では、VSWRは、約1.1(99.7%の伝達電力に相当)であり、励磁器10内の100W入力電力について電力供給されたスリットの電圧は、2.25kVである。前述したように、通常に作動し、通電されたスリットに対して、最大限の電力伝達を実現し、最大限の電圧に変換するためには、システムの共振周波数は、RF発生器の周波数と一致しなければならない。
【0034】
本開示の実施形態によれば、共振器は、最初に、イオンビームが存在しない状態で共振のために調整され得る。動作中、熱の影響により、共振器の周波数が設計値からずれることがあり、共振器を共振値に戻す操作が必要になる。この共振への戻りは、例えば、調整可能なキャパシタを含む同調システムを用いて達成することができる。しかしながら、ビームが存在すると、ビームによって導入される電気抵抗に起因して、共振器の負荷インピーダンスも変化する。このインピーダンスの変化は電力結合に影響し、励磁器ループの共振器コイルへの結合が最適でない状況につながる。本実施形態によれば、励磁器10のトロイダルコイル114への結合は、上述したように、励磁器10のための移動機構(例えば、段24の駆動機構)を設けることで調整することができる。言い換えれば、励磁器コイルループ16をOy軸の周りで回転させることにより、結合を容易に変化させ、ひいては、「有効」表面積をより多く又はより少なく露出させることができ、この変化により、励磁器10とトロイダルコイル114との間の磁束リンケージが最大となる。
【0035】
図5A、5B、及び5Cは、共振器の実施形態のための、本開示の実施形態に係る、励磁器ループの種々の回転配向で操作される共振器の端面図を示す。具体的には、
図5A、
図5B、及び
図5Cでは、励磁器ループ表面の法線とトロイダル方位軸に対する接線との間の角度が、それぞれ0°から15°、そして30°まで変化している。
【0036】
図6A及び6Bは、回転励磁器の一実施形態の構造の詳細を示す。トロイダルコイルポスト111は中空であり、導電スリーブ20の直径よりわずかに大きい直径の同心円状の円筒孔を有している。この同心円状の円筒孔は、トロイダルコイルの脚部からチャンバ壁まで及ぶ。励磁器シャフト17(導電スリーブ20、絶縁スリーブ18、及び励磁器コイル内側部分14)は、ポスト円筒孔の中に通され、自由に回転することができる。ポストの底部では、絶縁スリーブ18及び励磁器コイル12の給電脚(励磁器コイル内側部分14)が、チャンバ壁(別途図示せず)を通過し、さらに段24に至る。この構成は、ばね荷重電気接続を使用したRF発生器120との動的接続を確実なものとすることができる。導電スリーブ20とトロイダルコイルポスト111の間の接地接続は、接続リング116によって確保される。このリングは、側部ねじなどで導電スリーブ20に固定することができ、ポスト孔よりわずかに大きい直径を有する。このようにして、接続リング116は、トロイダルコイルポスト111の上部に位置し、接地への電気経路を確保する。そして、上述したように、励磁器コイル12の回転は、共振器チャンバの外部の回転段によって実行され得る。
【0037】
図7A及び
図7BのVSWR及び電圧挙動に示されているように、HFSSのモデリング結果は、モデルで選択された特定のr
0/r
min比について、最大電力伝達が達成される励磁器コイル配向の最適値が≒7°であることを示している。このモデルの場合、最大電力伝達は96.3%であり、100Wの入力電力に対する開発電圧は2.27kVである。したがって、段の駆動などにとって回転機能を設けることにより、本実施形態では、線形加速器の所定の加速段における励磁器と共振器コイルとの結合を維持するための容易な調節が促進される。
【0038】
理想的には、励磁器コイルループ16の中心は、トロイダルコイルによって形成されるトロイダルの方位軸と同心円状に整列する。しかし、トロイダルコイルの2つの片側部分の対称性から少しずれると、給電されたドリフトチューブにわずかな電圧不均衡が引き起こされる可能性がある。本開示の実施形態によれば、この不均衡は、励磁器コイル12の挿入の深さを調整することによって修正することができる。この調整は、励磁器コイルループ16をトロイダルコイル内に移動させるか、又は励磁器コイルループ16をトロイダルコイルから引き出して新しい位置へ移動させ、その後、新しい位置に固定することによって、実質的に達成することができる。
【0039】
図8は、本開示の実施形態に係る装置の概略図を示す。イオン注入装置300は、線形加速器314を含む。装置300は、ビームラインイオン注入装置を表し得る。幾つかの要素は、説明を明確にするために示されない。イオン注入装置300は、当該技術分野で知られているイオン源302、及びガスボックス307を含み得る。イオン源302は、第1のエネルギーでイオンビーム306を生成するために、抽出構成要素及びフィルタ(図示せず)を含む抽出システムを含み得る。第1のイオンエネルギーの適切なイオンエネルギーの範囲は、例えば、5keVから300keVであるが、実施形態はこれに限定されない。高エネルギーイオンビームを形成するために、イオン注入装置300は、イオンビーム306を加速させるための様々な追加の構成要素を含む。
【0040】
図示のように、イオン注入装置300は、イオンビーム306の軌道を変化させることによって、既知の装置と同様にイオンビーム306を分析するよう機能する分析器310を含み得る。イオン注入装置300は、バンチャ312、及びバンチャ312の下流に配置された線形加速器314(破線ラインで示す)をさらに含み得る。ここで、線形加速器314は、イオンビーム306を加速させ、線形加速器314に入る前にイオンビーム306のイオンエネルギーよりも大きい高エネルギーイオンビーム315を形成するよう構成されている。バンチャ312は、イオンビーム306を連続イオンビームとして受信し、イオンビーム306を束ねられたイオンビームとして線形加速器314へ出力することができる。線形加速器314は、図示されるように、直列に配置された、加速段110によって表される複数の加速段を含み得る。様々な実施形態では、高エネルギーイオンビーム315のイオンエネルギーは、イオンビーム306の最終イオンエネルギー、又はほぼ最終のイオンエネルギーを表し得る。様々な実施形態では、イオン注入装置300は、フィルタ磁石316、スキャナ318、コリメータ320などの追加の構成要素を含み得る。スキャナ318やコリメータ320の一般的な機能は周知であり、ここではさらに詳細に説明しない。このようにして、高エネルギーイオンビーム315によって表される高エネルギーイオンビームは、基板324を処理するための末端ステーション322に供給され得る。イオン種のイオン化の状態(シングル、ダブル、トリプル...イオン化)によって、高エネルギーイオンビーム315の非限定的なエネルギー範囲は、500keV-10MeVを含み、イオンビーム306のイオンエネルギーは、線形加速器314の種々の加速段を通して段階的に増加する。本開示の様々な実施形態に従って、線形加速器314の加速段は、共振器110によって給電され、共振器110の設計は、
図2Aから
図7Bの実施形態に沿ったものであり得る。
【0041】
図9は、例示的なプロセスフロー900を示す。ブロック902では、RF電力がビームラインイオン注入装置内のRF共振器の励磁器に送られる。RF電力は、励磁器に結合されたRF電源から送られ得る。様々な実施形態では、RF共振器は、トロイダル共振器コイルで構成され得る。幾つかの実施形態では、RF共振器は、ソレノイド共振器コイルで構成され得る。励磁器は、トロイダル共振器コイル内に配置された励磁器ループを含み得る。特定の実施形態では、励磁器ループは、トロイダル共振器コイルの方位軸を中心とし得る。
【0042】
ブロック904では、RF電源及び共振器によって形成された回路の共振周波数を調節するために、共振器条件が調整又は設定され得る。一例では、共振器条件は、VSWRを最小化にすることで設定することができる。特に、共振器コイル及び励磁器ループを収容する共振チャンバ内に配置されたキャパシタなどの調整可能なキャパシタンス構成要素を移動させることによって、調節を達成することができる。
【0043】
ブロック906では、ブロック904で確立された電流共振器回路条件を用いて、線形加速器を含むビームラインイオン注入装置でイオンビームが生成される。
【0044】
判定ブロック908では、共振器が調節を外れているか否かについての判定が行われる。例えば、反射電力やVSWRなどの関連パラメータをモニタリングし、関連パラメータが閾値未満に留まるかを確認することができる。この場合、フローはブロック910に進む。ここでは、励磁器の励磁器ループを回転させることによって、RF共振器への電力結合を調整する。次いで、フローはブロック912に進む。
【0045】
ブロック912では、現在の共振器回路条件を用いたビーム処理が継続し、現在の共振器回路条件は、ブロック910の操作に基づいて更新された条件を表す場合もあれば、表さない場合もある。
【0046】
判定ブロック908で共振器の調節がずれていなければ、フローはそのままブロック912に進む。ブロック912の後、ビーム処理が継続されるため、フローは決定ブロック908に戻ってもよい。決定ブロック908とブロック912との間のフローループは、ビーム処理が継続されている間、進行し得る。
【0047】
上記の観点から、本開示は、少なくとも以下の利点を提供する。1つの利点としては、本実施形態に係る励磁器及び共振器の構成は、既知の共振器と比較して、より高い磁気結合効率と潜在的に高い電力伝達を提供する。それと同時に、回転可能な励磁器構成は、共振器への電力伝達効率を調整するための、アクセス可能な別の調節「つまみ」のような利点を提供する。
【0048】
本開示の特定の実施形態がここに記載されてきたが、本開示は、当該技術分野が許容する限り範囲が広く、明細書も同様に読解できるため、本開示はこれらに限定されない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではない。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲及び思想の範囲内での他の変更を想定するであろう。
【国際調査報告】