IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特表2024-539673リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池
<>
  • 特表-リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池 図1
  • 特表-リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-29
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241022BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20241022BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241022BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M50/531
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M4/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523238
(86)(22)【出願日】2023-04-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 KR2023004544
(87)【国際公開番号】W WO2023195750
(87)【国際公開日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0041849
(32)【優先日】2022-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0044038
(32)【優先日】2023-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ア・カン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ブン・コ
(72)【発明者】
【氏名】イェ・ジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ジョ・リュ
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヒ・ハン
【テーマコード(参考)】
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H043AA04
5H043AA19
5H043BA19
5H043CB05
5H043EA06
5H043GA22
5H050AA15
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA28
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
本発明の目的は、絶縁特性、工程性に優れているだけでなく、保管安定性に優れているリチウム二次電池用絶縁層組成物を提供することにある。
本発明は、カルボキシメチルセルロースを含まず、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体、非水系有機溶媒および乳化剤を含み、ゲル含有量が前記コンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準にして70重量%以上であり、前記乳化剤の含有量が前記コンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準にして0.3重量%以上である、リチウム二次電池用絶縁層組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー高分子としてのコンジュゲートジエン共重合体(conjugated diens)と、
非水系有機溶媒と、
乳化剤と、を含み、
ゲル含有量が全固形分重量を基準にして70重量%以上であり、
前記乳化剤の含有量が全固形分重量を基準にして0.3重量%以上である、
リチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項2】
前記リチウム二次電池用絶縁層組成物は、カルボキシメチルセルロースを含んでいない、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項3】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体と、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーと、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシル基含有モノマーからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーと、の重合体を含む、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項4】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであり、
前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される2種以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体、またはこれらの重合体が部分的にエポキシ化または臭素化された重合体、またはこれらの混合物である、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項5】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メタクリロキシエチルエチレンウレア、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項6】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項7】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項8】
前記不飽和カルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーである、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項10】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、全重量を基準に、前記(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体20~45重量%と、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマー50~70重量%と、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%と、の重合体を含む、
請求項3に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項11】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される少なくとも1種である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項12】
平均粒径が50nm以上500nm以下のコンジュゲートジエン共重合体粒子が独立した相として存在する、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項13】
前記共重合体はスチレン-ブタジエン共重合体であり、前記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項14】
前記コンジュゲートジエン共重合体はスチレン-ブタジエン共重合体ラテックスであり、前記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項15】
水分含有量が10,000ppm以下である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用絶縁層組成物。
【請求項16】
水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体を製造する段階と、
前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体に非水系有機溶媒を混合し、加温および減圧して絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階と、
正極集電体の片面または両面に正極活物質、非水系バインダー、導電材および非水系有機溶媒を含む正極合剤層用スラリーを塗布する段階と、
正極集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部領域をカバーするように前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する段階と、
正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階と、を備え、
前記絶縁コーティング層用スラリーは乳化剤を含む、
リチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項17】
前記絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階は、コンジュゲートジエン共重合体粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換する段階を含む、
請求項16に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項18】
前記コンジュゲートジエン共重合体粒子は、分散溶媒が非水系有機溶媒に置換された後にも粒子形状を維持する、
請求項17に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項19】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、コンジュゲートジエンラテックスである、
請求項16~18のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項20】
前記コンジュゲートジエン共重合体はスチレン-ブタジエンラテックスであり、
前記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)である、
請求項16に記載のリチウム二次電池用正極の製造方法。
【請求項21】
正極集電体と、
前記正極集電体から突出した正極タブと、
前記正極タブ上に絶縁性物質でコーティングされた絶縁層と、を備え、
前記絶縁性物質は、請求項1に記載の組成物を含む、
リチウム二次電池用正極。
【請求項22】
請求項21に記載のリチウム二次電池用正極を備える、
リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用絶縁層組成物およびそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、それに応じて多様なニーズに応えることのできる電池に関する多くの研究が行われている。
【0003】
このような二次電池の主な研究課題の1つは安全性を向上させることである。電池の安全性関連事故の主な原因は、正極と負極との間の短絡による異常な高温状態の到達に起因する。すなわち、正常な状況では、正極と負極との間にセパレーターが位置して電気的絶縁を維持しているが、電池が過充電または過放電されたり、電極材料の樹枝状成長(dendritic growth)または異物によって内部短絡されたり、釘やねじなどの鋭い物体によって貫通されたり、外力によって無理な変形を受けたりするなどの異常な乱用状況では、従来のセパレーターだけでは限界を見せることになる。
【0004】
一般に、セパレーターはポリオレフィン樹脂からなる微細多孔膜が主に用いられているが、その耐熱温度は120~160℃程度で耐熱性が不十分である。したがって、内部短絡が発生すると、短絡反応熱によってセパレーターが収縮して短絡部が拡大され、より大きくかつ多くの反応熱が発生する熱暴走(thermal runaway)状態に至るという問題があった。したがって、セル変形、外部衝撃または正極と負極の物理的短絡の可能性を低減するための多様な方法が研究されてきた。
【0005】
例えば、電池を完成した状態で電極組立体が移動することにより、電極タブ(tab)が電極組立体の上端に接触されて短絡が発生することを防止するために、集電体の上端に隣接する電極タブ上に所定の大きさで絶縁テープを貼り付ける方法がある。しかしながら、このような絶縁テープの巻き取り作業は非常に煩雑であり、集電体の上端から下方にわずかに延長された長さまで絶縁テープを巻き取る場合には、そのような部位が電極組立体の厚さの増加を引き起こす可能性がある。さらに、電極タブの折り曲げ時、緩みやすい問題点がある。
【0006】
また、正極のタブ部分に非水系バインダー(PVDFなど)や水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)で絶縁層を形成する方法がある。しかしながら、非水系バインダー(PVDFなど)を使用する場合、湿潤接着力が低下し、電極のオーバーレイ領域にリチウムイオンの移動を防ぐことができず、容量が発現する問題があった。特に、電極のオーバーレイ領域において容量が発現するとき、リチウムイオンが析出されることがあり、これは電池セルの安定性の低下をもたらすことができる。また、水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)バインダーを使用する場合、正極合剤層用スラリーと同時にコーティングするときに正極バインダーとして使用する有機系バインダーであるPVDFのゲル化、正極スラリーの絶縁液境界浸透および水分による副反応に起因する電池性能の低下が生じ、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーの同時コーティングが不可能であるという工程上の問題がある。さらに、前記非水系バインダー(PVDFなど)や水系スチレンブタジエン共重合体(SBL)絶縁層は、保管時に相分離が発生して保管安定性が低下する問題がある。
【0007】
さらに、リチウム二次電池用絶縁層組成物には増粘剤としてカルボキシメチルセルロースが多く用いられるが、このようなカルボキシメチルセルロースは脆性(brittleness)があるため、巻取工程や、切断(カッティング)工程で工程性を低下させる問題がある。
【0008】
したがって、絶縁特性に優れているだけでなく、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーの同時コーティングが可能であり、脆性がなく工程性に優れ、保管安定性に優れている絶縁液開発に対する必要性が高いのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1586530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、絶縁特性、工程性に優れているだけでなく、保管安定性に優れているリチウム二次電池用絶縁層組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記リチウム二次電池用絶縁層組成物を利用するリチウム二次電池用正極の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のもう一つの目的は、前記リチウム二次電池用絶縁層組成物からなるリチウム二次電池用正極を提供することにある。
【0013】
本発明のもう一つの目的は、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池を提供することにある。
【0014】
ただし、本発明の目的は、以上で言及した目的に限定されず、言及されていない他の目的は、特許請求の範囲の記載から本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者(「通常の技術者」または「当業者」という)には明確に理解されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述した目的を達成するために、本発明の一実施例によれば、バインダー高分子としてのコンジュゲートジエン(conjugated diens、共役ジエン)共重合体と、非水系有機溶媒と、乳化剤と、を含む。ゲル含有量が前記コンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準にして70重量%以上であり、前記乳化剤の含有量が前記コンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準にして0.3重量%以上である、リチウム二次電池用絶縁層組成物を提供する。
【0016】
前記リチウム二次電池用絶縁層組成物は、カルボキシメチルセルロースを含んでいなくてもよい。
【0017】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、(a)コンジュゲートジエン系モノマーまたはコンジュゲートジエン系重合体と、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される少なくとも1つのモノマーと、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマーと、の重合体を含み得る。
【0018】
前記コンジュゲートジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであってもよく、前記コンジュゲートジエン系重合体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、およびピペリレンからなるグループから選択される2つ以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体またはこれらの重合体が、部分的にエポキシ化または臭素(Br)化された重合体、またはこれらの混合物であり得る。
【0019】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メタクリロキシエチルエチレンウレア、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレート、グリシジルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0020】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0021】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0022】
前記不飽和モノカルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0023】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0024】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、全重量を基準にして、前記(a)コンジュゲートジエン系モノマーまたはコンジュゲートジエン系重合体25~45重量%と、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー50~70重量%と、前記(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%と、の重合体を含み得る。
【0025】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上であり得る。
【0026】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、スチレン-ブタジエン共重合体であり得、前記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0027】
前記リチウム二次電池用絶縁層組成物は、水分含有量が10,000ppm以下であり得る。
【0028】
本発明の他の実施例によれば、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体を製造する段階と、前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体に非水系有機溶媒を加え、加温および減圧して絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階と、正極集電体の片面または両面に正極活物質、非水系バインダー、導電材および非水系有機溶媒を含む正極合剤層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体の無地部の一部の領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部の領域をカバーするように前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階と、を備えるリチウム二次電池用正極の製造方法が提供される。
【0029】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、コンジュゲートジエンラテックスであり得る。
【0030】
前記コンジュゲートジエンラテックスは、スチレン-ブタジエンラテックスであり得、前記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0031】
本発明のもう一つの実施例によれば、正極集電体と、前記正極集電体から突出した正極タブと、前記正極タブ上に絶縁物質でコーティングされた絶縁層と、を備え、前記絶縁物質は、前記リチウム二次電池用絶縁層組成物を含むリチウム二次電池用正極が提供される。
【0032】
本発明のもう一つの実施例によれば、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、カルボキシメチルセルロースを含んでいないことにより脆性(brittleness)がなく、巻取り工程や切断(カッティング)工程のとき、工程性に優れる。
【0034】
そして、本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、水系コンジュゲートジエン共重合体の分散溶媒である水を非水系有機溶媒(例えば、N-メチル-ピロリドン)に置換することで、正極コーティングと同時に絶縁液コーティングを行うことができ、リチウム二次電池用正極製造時の工程性に非常に優れている。
【0035】
また、本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、ゲル含有量が高く、乳化剤を含むことにより、保管安定性に優れる。
【0036】
ただし、本発明の効果は以上で言及した効果に限定されず、言及されていない他の効果は、特許請求の範囲の記載から本開示が属する技術分野における通常の知識を有する者(当業者)には明確に理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の実施例は、以下の添付の図面を参照して説明され、ここで類似の参照番号は類似の要素を示すが、これらに限定されるものではない。
【0038】
図1】実験例3による水分影響評価実験に従った様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、添付された図面を参照して本発明の実施例に対して本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように明確かつ詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が限定されるものではなく、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。
【0040】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語または単語は、通常の意味または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に基づいて、本発明の技術的思想に合致する意味や概念と解釈されなければならない。
【0041】
本明細書では、「含む」のような表現は、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)として理解されるべきである。
【0042】
本明細書において、「好ましい」および「好ましく」は、所定の環境下で所定の利点を提供することができる本発明の実施例を指す。しかしながら、同じ環境または異なる環境下で、他の実施例もまた好ましい可能性がある。さらに、1つ以上の好ましい実施形態に対する言及は、他の実施例が有用ではないことを意味せず、本発明の範囲から他の実施形態を排除しようとするのではない。
【0043】
本発明において、「絶縁コーティング層」とは、電極集電体の無地部のうち少なくとも一部から電極合剤層の少なくとも一部まで塗布および乾燥して形成される絶縁部材を意味する。
【0044】
本発明において、「金属試験片」とは、絶縁コーティング層が形成される空間であり、電極製造時に用いられる金属集電体を意味することができ、所定の幅と所定の長さを有するように打ち抜いた金属集電体であり得る。例えば、前記金属試験片はアルミニウム、銅またはアルミニウム合金であり得る。
【0045】
1.リチウム二次電池用絶縁層組成物
【0046】
本発明の一実施例によれば、バインダー高分子としてのコンジュゲートジエン共重合体と、非水系有機溶媒と、乳化剤と、を備え、ゲル含有量が前記コンジュゲートジエン共重合体の全重量(総重量)を基準にして70重量%以上であり、前記乳化剤の含有量が前記コンジュゲートジエン共重合体の総重量を基準にして0.3重量%以上であるリチウム二次電池用絶縁層組成物が提供される。
【0047】
以下では、前記リチウム二次電池用絶縁層組成物の各構成について詳しく説明する。
【0048】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、バインダー高分子としてコンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体を含む。
【0049】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体、(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1または2以上のモノマー、並びに(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマーの重合体を含み得る。
【0050】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびピペリレンからなるグループから選択される1つのモノマーであり得る。
【0051】
前記共役ジエン系重合体は、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、およびピペリレンからなるグループから選択される2つ以上のモノマーの重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン系重合体、これらの重合体が部分的にエポキシ化もしくは臭素化された重合体、またはこれらの混合物であり得る。
【0052】
前記アクリレート系モノマーは、メチルエタクリレート、メタクリロキシエチルエチレン尿素、β-カルボキシエチルアクリレート、アリファティックモノアクリレート、ジプロピレンジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリトリオールヘキサアクリレート、ペンタエリトリオールトリアクリレート、ペンタエリトリオールテトラアクリレートおよびグリシジルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0053】
前記ビニル系モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレンおよびジビニルベンゼンからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0054】
前記ニトリル系モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアリルシアニドからなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0055】
前記不飽和カルボン酸系モノマーは、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸、アクリル酸、グルタル酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、クロトン酸、イソクロトン酸およびナジック酸からなるグループから選択される少なくとも1種のモノマーであり得る。
【0056】
前記ヒドロキシ基含有モノマーは、ヒドロキシアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシブチルメタクリレートからなるグループから選択される1種以上のモノマーであり得る。
【0057】
本発明によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、平均粒径が50nm以上500nm以下であるコンジュゲートジエン(conjugated diens))共重合体粒子が独立した相として存在する。
【0058】
好ましくは、前記コンジュゲートジエン共重合体は、スチレン-ブタジエン共重合体であり得、より好ましくはスチレン-ブタジエンラテックスであり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記コンジュゲートジエン共重合体粒子の製造方法は、特に限定されず、公知の懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法などにより行われ得る。
【0060】
共重合体粒子を製造するためのモノマーの混合物は、重合開始剤、架橋剤、カップリング剤、緩衝液(buffer solution)、分子量調節剤、乳化剤などの他の成分を1つまたは2つ以上含み得る。
【0061】
具体的には、前記共重合体粒子は、乳化重合法により製造されることがあり、この場合、前記共重合体粒子の平均粒径は、乳化剤の量によって調節されてもよく、一般に乳化剤の量が増加するほど粒子のサイズは小さくなり、乳化剤の量が減少するほど粒子のサイズは大きくなる傾向を示す。所望の粒子のサイズ、反応時間、反応安定性などを考慮して、乳化剤使用量を調節して所望の平均粒径を実現することができる。重合温度および重合時間は、重合方法、重合開始剤の種類などに応じて適切に決定されることがあり、例えば、重合温度は10℃~150℃であり得、重合時間は1~20時間であり得る。
【0062】
前記重合開始剤としては、無機または有機過酸化物が用いられ、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどを含む水溶性開始剤と、クメンハイドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどを含む油溶性開始剤と、を使用することができる。また、前記重合開始剤と共に過酸化物の開始反応を促進させるために活性化剤をさらに含むことができ、前記活性化剤としてはナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ナトリウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第1鉄およびデキストロースからなるグループから1種以上選択されるものであり得る。
【0063】
前記架橋剤は、バインダーの架橋を促進させる物質として、例えば、ジエチレントリアミン(diethylene triamine)、トリエチレンテトラアミン(triethylene tetramine)、ジエチルアミノプロピルアミン(diethylamino propylamine)、キシレンジアミン(xylene diamine)、イソホロンジアミンなどのアミン類、ドデシルスクシニックアンヒドリド(dodecyl succinic anhydride)、フタリックアンヒドリド(phthalic anhydride)などの酸無水物、ポリアミド樹脂、ポリスルフィド樹脂、フェノール樹脂、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタントリアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが使用され、グラフト剤はアリールメタクリレート(AMA)、トリアリールイソシアヌレート(TAIC)、トリアリールアミン(TAA)、ジアリールアミン(DAA)などが使用される。
【0064】
前記カップリング剤は、活物質とバインダーとの間の接着力を増加させるための物質であって、2つ以上の機能性基を有することを特徴とし、1つの機能性基は、シリコン、スズまたは黒鉛系活物質表面のヒドロキシル基やカルボキシ基と反応して化学的結合を形成し、他の機能性基は、本発明によるナノ複合体との反応を通じて化学結合を形成する材料であれば特に限定されるものではない。例えば、トリエトキシシルプロピルテトラスルフィド(triethoxysilylpropyl tetrasulfide)、メルカプトプロピルトリエトキシシラン(mercaptopropyl triethoxysilane)、アミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyl triethoxysilane)、クロロプロピルトリエトキシシラン(chloropropyl triethoxysilane)、ビニルトリエトキシシラン(vinyltriethoxysilane)、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(methacryloxypropyl triethoxysilane)、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(glycidoxypropyl triethoxysilane)、イソシアナトプロピルトリエトキシシラン (isocyanatopropyl triethoxysilane)、シアナートプロピルトリエトキシシラン(cyanatopropyl triethoxysilane)などのシラン系カップリング剤が使用され得る。
【0065】
前記バッファー(緩衝剤)は、例えば、NaHCO、NaCO、KHPO、KHPO、NaHPO、NaOHおよびNHOHからなるグループから選択される1つであり得る。
【0066】
前記分子量調節剤としては、例えば、メルカプタン類またはテルピノレン、ジペンテン、t-テルピエンなどのテルフィン類やクロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などを用いることができる。
【0067】
前記コンジュゲートジエン共重合体は、全重量を基準に、前記(a)共役ジエン系モノマーまたは共役ジエン系重合体20~45重量%と、前記(b)アクリレート系モノマー、ビニル系モノマーおよびニトリル系モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー50~70重量%と、(c)不飽和カルボン酸系モノマーおよびヒドロキシ基含有モノマーからなるグループから選択される1つまたは2つ以上のモノマー1~20重量%と、の重合体を含み得る。前記乳化剤、緩衝剤(バッファ)、架橋剤などの他の成分は、任意に0.1~10重量%の範囲内に含まれてもよい。
【0068】
コンジュゲートジエン共重合体を構成する各モノマー間の含有量比率が、前述した範囲に該当する場合、Tgが-10℃以上40℃以下であり得る。
【0069】
なお、コンジュゲートジエン共重合体を構成する各モノマー間の含有量比率が、前述した範囲に該当する場合、絶縁層の柔軟性、絶縁特性、耐電解液特性が有意に向上され得る。
【0070】
本発明の実験例において、コンジュゲートジエン共重合体を構成する各モノマー間の含有量比率が、前述した範囲に該当する場合、初期粘着力、絶縁特性にいずれも優れていることを確認した
【0071】
一方、前記共重合体の平均粒径は、50nm~500nm以下であり得る。前記共重合体の平均粒径が50nm未満の場合または500nmを超える場合、分散安定性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0072】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、非水系有機溶媒を含む。
【0073】
一方、本発明による組成物で共重合体粒子は、独立した相として存在するとき、接着力の向上効果が向上するため、前記粒子間凝集(agglomeration)が起こらないようにすることが非常に重要である。したがって、本発明の組成物は、共重合体粒子を分散させるための分散溶媒を含む。本発明では、このような分散溶媒として非水系有機溶媒を使用する。
【0074】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上であり得る。
【0075】
好ましくは、前記非水系有機溶媒としてN-メチル-ピロリドン(NMP)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0076】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、乳化剤を含む。 乳化剤を含むことにより、リチウム二次電池用絶縁層組成物の保存安定性に優れることになる。
【0077】
前記乳化剤は、親水性(hydrophilic)基と疎水性(hydrophobic)基を同時に有する物質である。1つの具体的な例では、アニオン性乳化剤および非イオン性乳化剤からなるグループから選択される少なくとも1つであり得る。
【0078】
非イオン性乳化剤をアニオン乳化剤と共に使用すると、粒子サイズおよび分布制御に役立ち、イオン性乳化剤の静電気的安定化に加えて、高分子粒子のファンデルワールス力によるコロイド状のさらなる安定化を提供することができる。非イオン性乳化剤を単独で使用することは多くないが、これはアニオン性乳化剤よりも安定性の低い粒子が生成されるからである。
【0079】
アニオン性乳化剤は、ホスフェート系、カルボキシレート系、スルフェート系、コハク酸塩系、スルホサクシネート系、スルホネート系およびジスルホネート系からなるグループから選択されるものであり得る。例えば、ナトリウムアルキル硫酸塩、ナトリウムポリオキシエチレン硫酸塩、ナトリウムラウリルエーテル硫酸塩、ナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩(Sodium polyoxyethylene lauryl ether sulfate)、ナトリウムラウリル硫酸塩(Sodium lauryl sulfate)、ナトリウムアルキルスルホネート、ナトリウムアルキルエーテルスルホネート、ナトリウムアルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムリニアアルキルベンゼンスルホネート、ナトリウムアルファオレフィンスルホネート、ナトリウムアルコールポリオキシエチレンエーテルスルホネート、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(Sodium dioctyl sulfosuccinate)、ナトリウムパーフルオロオクタンスルホネート、ナトリウムパーフルオロブタンスルホネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(Alkyl diphenyloxide disulfonate)、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(Sodium dioctyl sulfosuccinate、DOSS)、ナトリウムアルキル-アリールホスフェート、アルキルエーテルホステートおよびナトリウムラウオリルサルコシネートからなるグループから選択されるものであり得る。ただし、これらに限定されるものではなく、公知のアニオン性乳化剤は全て本発明の内容に含まれ得る。
【0080】
前記非イオン性乳化剤は、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型などであり得る。例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノール-Aエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルケニルエーテルなどであり得る。ただし、これらに限定されるものではなく、公知の非イオン性乳化剤は全て本発明の内容に含まれ得る。
【0081】
一方、前記乳化剤の含有量は、コンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準にして0.3重量%以上である。好ましくは、前記乳化剤は、コンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準に0.3重量%以上5重量%以下であり得る。乳化剤の含有量が0.3重量%未満であれば、リチウム二次電池用絶縁層組成物の保管安定性が低下し、乳化剤の含有量が5重量%を超えれば、リチウム二次電池用絶縁層組成物の絶縁特性が劣化することがある。
【0082】
本発明の一実施例によるリチウム二次電池用組成物は、ゲル含有量がコンジュゲートジエン共重合体の全重量を基準にして70重量%以上である。
【0083】
70重量%以上の高いゲル含有量を含有することにより、リチウム二次電池用絶縁層組成物の保管安定性に優れることになり、初期粘着力が高すぎないように適切に調節して、巻取およびスリッティング工程で電極同士が付着して工程性が悪化することを防ぐことができる。
【0084】
一方、前記リチウム二次電池用絶縁層組成物の水分含有量は10,000ppm以下であり得、好ましくは5,000ppm以下、さらに好ましくは3,000ppm以下であり得る。リチウム二次電池用絶縁層組成物の水分含有量が前記範囲であるとき、電極(正極)合剤層と分離してコーティングされることがあり、電極(正極)合剤層用スラリーが絶縁コーティング層用スラリー側に浸透することを防止して、絶縁効果が発現しないなどの電極の物性低下を防ぐことができる。
【0085】
一方、本発明の一実施例によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、カルボキシメチルセルロースを含んでいない可能性がある。
【0086】
カルボキシメチルセルロースは増粘剤として絶縁層組成物に使用されたりすることがあるものの、これは脆性(brittleness)があるため、巻き取り工程や、カッティング(切断)工程で工程性を低下させる問題点がある。したがって、本発明によるリチウム二次電池用絶縁層組成物は、カルボキシメチルセルロースを含まないことにより、脆性がないため、巻取工程やカッティング工程における工程性を向上させ得る。
【0087】
2.リチウム二次電池用正極の製造方法
【0088】
本発明の他の一例は、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体を製造する段階と、前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体に非水系有機溶媒を加え、加温および減圧して絶縁コーティング層用スラリーを製造する段階と、正極集電体の片面または両面に正極活物質、導電材、非水系バインダーおよび非水系有機溶媒を含む正極合剤層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部領域をカバーするように前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する段階と、正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーおよび絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階と、を備え、前記絶縁コーティング層用スラリーは乳化剤を含む、リチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
【0089】
まず、水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体を製造する。その製造方法は、1.リチウム二次電池用絶縁層組成物で開示した通りであるため、その具体的な内容は省略する。
【0090】
次に、前記水分散コンジュゲートジエン(conjugated diens)共重合体に非水系有機溶媒を混合して加温および減圧する。
【0091】
このとき、コンジュゲートジエン共重合体粒子の分散溶媒である水は、非水系有機溶媒に置換される。
【0092】
本発明のリチウム二次電池用正極の製造方法は、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを集電体にそれぞれ塗布した後、一括乾燥して正極を製造することができるため、製造工程上の効率に非常に優れる。
【0093】
好ましくは、前記コンジュゲートジエン共重合体はコンジュゲートジエンラテックスであり得るが、これに限定されない。
【0094】
好ましくは、前記コンジュゲートジエンラテックスはスチレン-ブタジエンラテックスであり得るが、これに限定されない。
【0095】
好ましくは、前記非水系有機溶媒はN-メチル-ピロリドン(NMP)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0096】
好ましくは、前記加温時に40℃以上100℃以下のセッティング(設定)温度に昇温した後、200torr未満に減圧することができる。これによって、効率的に水分散コンジュゲートジエンラテックスの溶媒である水を非水系有機溶媒に置換することができる。
【0097】
コンジュゲートジエンラテックス粒子の分散溶媒である水を非水系有機溶媒に置換した後も、コンジュゲートジエンラテックス粒子は粒子形状を維持する。粒子形状の維持可否は粒径測定により確認することができる。粒子のサイズは、DLS粒度分析器、レーザー回折粒度分析器または電子透過顕微鏡で確認することができるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
また、前記絶縁コーティング層用スラリーは乳化剤を含む。絶縁コーティング層用スラリーが乳化剤を含むことにより、これを用いて製造されたリチウム二次電池用絶縁層組成物の保管安定性に優れることになる。
【0099】
次に、正極集電体の片面または両面に正極活物質、非水系バインダー、導電材および非水系有機溶媒を含む正極合剤層用スラリーを塗布する。
【0100】
前記正極集電体は、本発明によるリチウム二次電池用正極は集電体として当該電池に化学的変化を誘発しないながら、高い導電性を有するものを使用することができる。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用することができ、アルミニウムやステンレス鋼の場合、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。例えば、集電体はアルミニウムであり得る。
【0101】
なお、前記正極合剤層用スラリーにおいて、正極活物質は、正極で通常使用される正極活物質がすべて使用可能であり、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物などが使用されることがあり、これらに限定されない。
【0102】
前記非水系バインダーは、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体からなるグループから選択される1種以上の樹脂を含み得る。一例として、前記バインダーは、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0103】
前記導電材は、正極の電気導電性などの性能を向上させるために用いられ、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよび炭素繊維からなるグループから選択される1種以上を使用することができる。例えば、導電材はアセチレンブラックを含み得る。
【0104】
前記非水系有機溶媒は、N-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、アセトニトリル(Acetonitrile)、ジメトキシエタン(Dimethoxyethane)、テトラヒドロフラン(THF)、ガンマブチロラクトン(γ-butyrolactone)、メチルアルコール(methyl alcohol)、エチルアルコール(ethyl alcohol)およびイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)からなるグループから選択される1種以上であり得、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)であり得る。
【0105】
前記正極合剤層用スラリーを塗布する段階と同時にまたはその次に、正極集電体の無地部の一部領域から集電体に塗布された正極合剤層用スラリーの一部領域をカバーするように、前記絶縁コーティング層用スラリーを塗布する。
【0106】
具体的には、前記絶縁コーティング層用スラリーを集電体に塗布する段階は、正極合剤層用スラリーが未乾燥の状態で絶縁層用スラリーを塗布することができ、または正極合剤層用スラリーと絶縁層用スラリーを同時に塗布することができる。
【0107】
次に、正極集電体に塗布された正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる。
【0108】
前記正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを乾燥させる段階は、当該分野で通常知られている乾燥方法で、前記正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを完全に乾燥して溶媒を除去することができる。
【0109】
具体的な例において、乾燥は、溶媒が全て揮発する程度の温度で熱風方式、直接加熱方式、誘導加熱方式などを変更して適用することができ、これらに限定されるものではない。例えば、前記絶縁コーティング液を乾燥する段階は、熱風方式で遂行され得る。
【0110】
このとき、乾燥温度は50℃~300℃の温度範囲であってもよく、好ましくは60~200℃、さらに好ましくは70~150℃であってもよい。一方、前記絶縁コーティング液の乾燥温度が50℃未満の場合、温度が低すぎて絶縁コーティング液を完全に乾燥しにくい可能性があり、乾燥温度が300℃を超える場合、乾燥温度が高すぎて電極の変形が発生することができる。
【0111】
これにより、正極集電体上に正極合剤層と絶縁コーティング層が形成され、これを圧延してリチウム二次電池用正極を製造することができる。
【0112】
3.リチウム二次電池用正極
【0113】
本発明のもう一つの一例によると、正極集電体と、前記正極集電体から突出した正極タブと、前記正極タブ上に絶縁性物質でコーティングされた絶縁層と、を備え、前記絶縁性物質は、前記リチウム二次電池用絶縁層組成物を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0114】
本発明のもう一つの一実施例によるリチウム二次電池用正極は、前記正極タブ上に前記リチウム二次電池用絶縁層組成物を含む絶縁層を含むことにより、正極合剤層用スラリーと絶縁コーティング層用スラリーを同時に塗布して製造可能であり、これにより電池の製造工程を大幅に短縮することができ、最終的に電池の製造コストを低減でき、絶縁部位をより広くして電池の安全性をさらに向上させ得る。 それだけではなく、従来の絶縁性フィルムまたはテープを使用するにあたって発生される可能性がある問題、すなわち、該当する部位への取り付けのための正極タブの折り曲げ時に脱離する可能性が非常に低く、電極組立体の厚さの増加を引き起こさない効果を有する。
【0115】
4.リチウム二次電池
【0116】
本発明のもう一つの実施例によれば、前記リチウム二次電池用正極を含むリチウム二次電池が提供される。
【0117】
より具体的には、本発明のもう一つの実施例によるリチウム二次電池は、リチウム二次電池用正極、負極、分離膜および電解質を含み得る。
【0118】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含み得る。
【0119】
前記負極は、負極集電体、負極集電体上に位置する負極活物質層を含み得る。
【0120】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられる。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔(ホイル)、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの多様な形態で使用され得る。
【0121】
前記負極活物質層は、負極活物質と共に任意にバインダーおよび導電材を含み得る。
【0122】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物を使用することができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料と、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化可能な金属質化合物と、SiOβ(0<β<2)、SnO、酸化バナジウム、リチウム酸化バナジウムのようにリチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物と、Si-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物および炭素質材料を含む複合体、などが挙げられ、これらのうちいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用され得る。なお、前記負極活物質として金属リチウム薄膜を使用することもできる。また、炭素材料としては、低結晶炭素、高結晶性炭素などの両方を使用することができる。低結晶性炭素としてはソフトカーボン(soft carbon)およびハードカーボン(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解カーボン(pyrolytic carbon)、メソフェーズピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソカーボンマイクロビーズ(meso-carbon microbeads)、メソフェーズピッチ(Mesophase pitches)および石油または石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0123】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80重量部~99重量部で含まれる。
【0124】
前記バインダーは、導電材、活物質と集電体間の結合に助力する成分であり、通常、負極活物質層の全重量を基準にして0.1重量部~10重量部で添加される。このようなバインダーの例は、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエン重合体(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0125】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全重量を基準にして10重量部以下、好ましくは5重量部以下で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末と、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキーと、酸化チタンなどの導電性金属酸化物と、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材と、などが使用される。
【0126】
前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、選択的にバインダーおよび導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極活物質層形成用組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極活物質層形成用組成物を別途の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることによって製造されることもある。
【0127】
前記分離膜は負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば特別な限定なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗ながら電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用される。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点ガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などでできている不織布が使用されることもある。また、耐熱性または機械的強度の確保のため、セラミック成分または高分子物質を含むコーティングされた分離膜が使用されることもあり、任意に単層または多層構造で使用される。
【0128】
前記電解質は、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0129】
具体的には、前記有機系液体電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含み得る。
【0130】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学反応に関与するイオンが移動可能な媒質として機能できるものであれば、特別な限定なく使用される。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、酢酸エチル(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒と、ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒と、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒と、ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒と、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒と、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒と、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含み得る)などのニトリル類と、ジメチルホルムアミドなどのアミド類と、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類と、またはスルホラン類(sulfolane)と、などを使用することができる。その中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)との混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが電解液の性能に優れていることがある。
【0131】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な限定なく使用される。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO)、LiN(CSO)、LiN(CFSO)、LiCl、LiI、またはLiB(C)などが使用される。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用されるのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な電導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0132】
前記電解質には、前記電解質構成成分の外にも、電池の寿命特性向上、電池容量減少抑制、電池の放電容量向上などを目的にして、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどの添加剤がさらに1種以上含まれることもある。 このとき、前記添加剤は電解質の総重量に対して0.1~5重量部で含まれてもよい。
【0133】
以下では、実施例を通じて本発明の実施形態をより詳しく説明する。ただし、下記実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記実施例によって限定されるものではない。
【0134】
実施例1
【0135】
55nm粒径のスチレン-ブタジエンシードラテックス5重量部を反応器に入れて80℃まで昇温させた後、モノマーとして1,3-ブタジエン35g、スチレン62g、イタコン酸3g、バッファ(buffer)としてNaHCO0.5g、乳化剤としてナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェート1g、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン1g、重合開始剤として過硫酸カリウム1gを4時間の間に反応器に投与し、さらに4時間の間に80℃を維持しながら反応させて固形分50%スチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。このとき、水酸化ナトリウムを使用してpHを中性(7)に調節した。重合後、Submicron particle sizer(Nicomp TM 380)を用いて共重合体粒子のサイズを分析したところ、重合された共重合体粒子の平均粒径は150nmであり、ゲル含有量は85%であった。
【0136】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)700gを加えてから混合し、90℃まで昇温させた後、3時間のうちに15torrに減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換し、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。このとき、最終の水分含有量が10,000ppm以下であり、固形分を確認した後、最終の固形分が7.6%となるようにNMPを追加した。最終製品の水分含有量はカールフィッシャー水分測定器で測定した。
【0137】
実施例2
【0138】
実施例1において、モノマーとして1,3-ブタジエン30g、スチレン60g、メチルメタクリレート5g、アクリロニトリル2g、ヒドロキシアクリレート1g、イタコン酸3gを使用し、乳化剤としてナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルスルフェートの代わりにアルキルジフェニルオキシドジスルホネートを使用し、NMP置換前にさらにアルキルジフェニルオキシド1gを加えた後、実施例1と同様の方法でNMPに分散したスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0139】
実施例3
【0140】
実施例1において、分子量調節剤としてドデシルメルカプタンを使用せず、乳化剤としてナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートを0.4g使用し、NMPを450g使用したことを除いて実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0141】
実施例4
【0142】
実施例1において、NMPを入れる前に、乳化剤としてナトリウムラウリルサルフェート2gを追加したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0143】
実施例5
【0144】
実施例1において、NMPを入れる前に、乳化剤としてナトリウムラウリルナトリウムラウリルサルフェート5gを追加したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0145】
比較例1
【0146】
実施例1において、分子量調節剤としてドデシルメルカプタン2.3gを使用し、NMPを1000gに増やして使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0147】
比較例2
【0148】
実施例1において、乳化剤としてナトリウムポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートを0.1gに減らしたことを除いては、実施例1と同様の方法でNMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。
【0149】
比較例3
【0150】
PVDF(ポリフッ化ビニリデン)をNMPに溶かして固形分8%組成物を製造した。
【0151】
比較例4
【0152】
ゲル含有量0%の水素化ニトリルゴムをNMPに溶かして固形分8%組成物を製造した。
【0153】
比較例5
【0154】
ゲル含有量0%のスチレンブタジエン合成ゴムをNMPに溶かして固形分8%組成物を製造した。
【0155】
比較例6
【0156】
実施例2と同様の方法で固形分50%のスチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。
【0157】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)530gを加えてから混合して85℃まで昇温させた後、1時間の間に180torrまで減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換して、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。最終固形分が8%となるようにNMPを追加しており、このとき最終水分含量が50,010ppmであった。最終製品の水分含有量はカールフィッシャー水分計で測定した。
【0158】
比較例7
【0159】
実施例2と同様の方法で固形分50%のスチレンブタジエン共重合体ラテックスを製造した。
【0160】
製造されたスチレンブタジエン共重合体ラテックス100gを反応器に入れ、NMP(N-メチル-ピロリドン)530gを追加してから混合して90℃まで昇温させた後、7時間の間に100torrまで減圧することによりスチレンブタジエン共重合体粒子の分散溶媒である水をNMPに置換して、NMPに分散されたスチレンブタジエン共重合体を含む組成物を製造した。このとき、NMPを追加して最終固形分が8%となるようにし、最終水分含量が12,201ppmであった。最終製品の水分含有量はカールフィッシャー水分計で測定した。
【0161】
比較例8
【0162】
分散溶媒置換を行わないスチレンブタジエンラテックスを含む組成物と比較するために、実施例2で製造したスチレンブタジエンラテックスを溶媒置換を別途に行わない状態で、カルボキシメチルセルロースと9:1の重量比で混合して組成物を製造した。カルボキシメチルセルロースは、増粘剤として溶媒置換を別途に行わないスチレンブタジエンラテックスのコーティング性を向上させるために使用される。
【0163】
実験例1
【0164】
実施例1~5および比較例1~7によって製造された組成物に対して、水分含有量、粘度、ゲル含有量および総乳化剤量を下記実験例1-1、1-2、1-3および1-4に記載された方法に従って測定しており、その結果を下記表1に示した。下記総乳化剤量(%)は、組成物の総固体含有量基準である。
【0165】
【表1】
【0166】
実験例1-1:水分含有量の測定
【0167】
前記実施例1~5および比較例1~7で製造した組成物に対して、860KF Thermoprep(オーブン)が連結されたMetrohm(メトローム)社の899Coulometerを用いてオーブンの温度を220℃に合わせ、0.1~0.4gの試料を秤量して水分含有量を測定した。
【0168】
実験例1-2:粘度測定
【0169】
前記実施例1~5および比較例1~7で製造した組成物に対して、25℃の温度でブルックフィールド(Brookfield)社のLV型粘度計の63番スピンドルを用いて12rpmで回してから1分後に粘度を測定した。粘度が測定範囲から外れた場合、rpm値を下げて測定した。
【0170】
実験例1-3:ゲル含有量の測定
【0171】
前記実施例1~5および比較例1~7で製造した組成物に対して、ゲル含有量を測定した。収得したサンプル10gを135℃で30分間乾燥した後、薄いフィルムを作った後、2mm×2mmの幅に切断する。200メッシュ(mesh)でディッシュを作って精密天びんで計量し、重量をAと表記する。ディッシュに切断したフィルムを0.3~0.4gを入れ、フィルムの重量を測定してBと表記する。ディッシュを100mlガラス瓶に入れ、75mlテトラヒドロフランを入れ、ディッシュとガラス瓶を密封した後、水槽型超音波装置に入れて3時間ソニケーションしてから取り出した後、50mlテトラヒドロフランで洗浄してから135℃オーブンで30分間の乾燥後、精密天秤で重量を測定してCと表記する。ソニケーションするうちに、水槽の温度は50℃を超えないようにする。最終ゲル含量(%)は下記式のように算出する。
【0172】
ゲル含有量(%)=(C-A)/B*100
【0173】
実験例1-4:総乳化剤量測定
【0174】
前記実施例1~5および比較例1~7で製造した組成物に対して総乳化剤量を測定した。収得したサンプル0.5gに対してアセトニトリル/メタノールを適用して高分子成分を沈殿させた。1時間の攪拌後、遠心分離機を用いて高分子を沈殿させ、上清を濾過した後、HPLC/PDA/MSを用いて乳化剤量を測定した。総乳化剤量は、固形分全重量に対する乳化剤含有量の比率に換算して前記表1に示した。
【0175】
実験例2
【0176】
実施例1~5および比較例1~5により製造された組成物に対して初期粘着力、保管安定性および絶縁特性を評価する実験を、下記実験例2-1、2-2および2-3に記載された方法に従って遂行しており、その結果を下記表2に示した。
【0177】
【表2】
【0178】
実験例2-1:初期粘着力(Tackiness)評価
【0179】
前記実施例1~5および比較例1~5で製造した組成物をアルミニウム金属箔にコーティングし、130℃で乾燥させて約10μm厚さの絶縁コーティング層が形成された金属試料を準備した。前記金属試料を2cm×12cmのサイズに切断した後、SUS板(サス板)にラミネートさせた後、90°接着力を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0180】
表2から分かるように、実施例1~5の組成物は全て初期粘着力が低いことが確認できた。初期粘着力が低いと、巻き取りおよびスリッティング工程において電極または集電体と付着して工程性を悪化させる可能性が希薄である。一方、ゲル含有量が70重量%より低い比較例1、およびゲル含有量のない比較例4~5は、初期粘着力が高すぎて、巻き取りおよびスリット工程で電極同士が付着して工程性が悪化することができる。
【0181】
実験例2-2:保管安定性評価
【0182】
実施例1~5、および比較例1~5で製造した組成物をそれぞれ250mlガラス瓶に200mlを入れてから密封した後、100℃オーブンで7日間保管した後、取り出して常温で1日間保管した後、上層部の固形分を測定し、基本固形分に対する固形分の減少率を測定してその結果を前記表2に示した。
【0183】
ゲル含有量の低い比較例1の組成物と乳化剤含有量の低い比較例2の組成物は、実施例1~5の組成物に比べて固形分減少率が高いことから、時間に応じて相分離が発生して保管安定性が確実に低下すると見られる。
【0184】
実験例2-3:絶縁特性評価
【0185】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2Mn0.296重量部、バインダーとしてPVdF 2重量部、導電材としてカーボンブラック 2重量部を秤量してN-メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極合剤層用スラリーを製造した。アルミニウム箔に前記合剤層用スラリーを塗布して乾燥した後、圧延して厚さ60μmの正極合剤層を備える正極を製造した。
【0186】
その後、前記実施例1~5および比較例1~5で製造した組成物である絶縁液を正極合剤層上に塗布した後、乾燥して厚さ10μmの正極絶縁層を形成した。
【0187】
前記正極を用いて負極としてはリチウム箔を、EC:EMC=3:7の溶媒に1M LiPFが含有された電解液を用いてコイン型ハーフセルを製造した。コイン型ハーフセルを60℃のオーブンで15日間保管した後、ハーフセルの放電容量を測定して絶縁層の絶縁効果を確認した。比較のために絶縁コイン層を形成しない正極でハーフセルを製造して0.1C放電容量を100とし、実施例1~5および比較例1~5の組成物で絶縁コーティング層を形成した正極の放電容量比を計算し、その結果を下記表2に示した。
【0188】
表2から分かるように、比較例3~5の組成物は、実施例1~実施例5の組成物に比べて0.1C放電容量比が高いことが確認でき、これは絶縁層がスウェリングまたは脱離され、絶縁性能が低下して絶縁層下の正極容量が一部発現となったからである。乳化剤の含有量が5.39%で、実施例1~実施例4に比べてやや高い実施例5の場合、過剰の乳化剤が電解液中のWET接着力を僅かに低くして正極の容量を一部発現させることが確認できた。
【0189】
実験例3:水分影響評価
【0190】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.2Mn0.2 96重量部、バインダーとしてPVdF 2重量部、導電材としてカーボンブラック 2重量部を秤量し、N―メチルピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極合剤層用スラリーを製造した。
【0191】
そして、前記正極合剤層用スラリーとそれぞれの実施例2と比較例6~比較例8で製造した組成物である絶縁コーティング層用スラリーがオーバーレイされるようにドクターブレードを用いて集電体に同時に塗布した。そして、塗布直後と塗布後1分後の様子を観察しており、これを図1に示した。
【0192】
図1から分かるように、塗布直後と塗布後1分後を比較した結果、実施例2の組成物は、塗布直後と塗布後1分後ともにオーバーレイ部分の浸透なしに最初にコーティングされた状態を維持したが、実施例2に比べて水分含有量が高い比較例6~比較例8の組成物は、電極スラリーが絶縁層の方に浸透してコーティング境界を確実に維持することができなくなった。特に分散溶媒を置換していない比較例8の場合、塗布直後から正極スラリーと絶縁液が接する部分は、水分により凝集され、これにより溶媒置換していない水系絶縁液は、正極スラリーと同時コーティングが不可能であることが確認できる。
【0193】
これは、正極絶縁コーティング層用スラリーの水分含有量が10,000ppmを超えると、正極合剤層用スラリーと絶縁層用スラリーを同時コーティングする場合、正極合剤層用スラリーが正極絶縁コーティング層用スラリーの方に浸透して、期待する絶縁効果を発現しにくいと解釈され得る。
【0194】
実験例4:カルボキシメチルセルロース影響評価
【0195】
実施例2と比較例8で製造した組成物を基材に、最終厚みが20μmとなるようにコーティングして130℃で乾燥してから、2cm幅に切断した後、脆性を測定した。常温で試料を半分に折りたたんだ後、1kgローラー(roller)で一度押してから広げた後、コーティングフィルムが割れまたは裂けの有無を目視で確認された後、その結果を下記図2に示した。実施例1の場合、フィルムが割れたり裂けたりしなかったが、比較例8の場合、フィルムが裂ける現象が現れた。比較例8の組成物は、実施例2で製造したスチレンブタジエンラテックスを溶媒置換を別途に行っていない状態で、カルボキシメチルセルロースと9:1の重量比で混合した組成物である。これは増粘剤であるカルボキシメチルセルロースを少量添加しても脆性が高いことから、コーティングフィルムに影響を与えるため、同時コーティングを進行せずに、スチレンブタジエンラテックスを別にコーティングする場合にも、このような理由で巻き取りおよびスリッティング工程で絶縁層が壊れたり脱離されたりすることができる。
【0196】
以上では、本発明の好ましい実施例に対して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付の図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これもまた本発明の範囲に属することは当然である。
【0197】
したがって、本発明の実質的な権利範囲は、添付の特許請求の範囲とその均等物によって定義されるべきであろう。
図1
図2
【国際調査報告】