(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-30
(54)【発明の名称】有機金属化合物及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 11/00 20060101AFI20241023BHJP
C07C 13/15 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C07F11/00 C
C07C13/15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531483
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022049977
(87)【国際公開番号】W WO2023096782
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バラサンティラン, ヴァグレジャン
(72)【発明者】
【氏名】レインマン, スコット エー.
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC90
4H006BE23
4H050AA01
4H050AA02
4H050AB84
4H050AC90
4H050BE23
4H050WB11
4H050WB12
4H050WB21
(57)【要約】
本開示は、対応するマグネシウム化合物および六塩化タングステンを経由し、続いて水素化物試薬で処理することにより、ビス(モノアルキル置換シクロペンタジエン)タングステン水素化物化合物、例えばビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン二水素化物を製造する方法を提供する。また、ビス(モノアルキル置換シクロペンタジエン)金属ハロゲン化物化合物の製造方法も提供される。この後者の態様は、対応するマグネシウム化合物と金属ハロゲン化物との反応によって達成される。このプロセスで使用される代表的な金属は、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、タングステン、及びモリブデンを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物を調製するための方法であって、
式
の化合物をWCl
6と接触させることと、
水素化物試薬を添加することと
を含む方法。
【請求項2】
水素化物試薬が、NaBH
4、LiAlH
4、LiBH
4、LiBH(CH
3CH
2)
3、[(イソブチル)
2AlBH
4]、NaBH
3CN、Na[HB(OC(O)CH
3)]、BH
3-テトラヒドロフラン、BH
3-S(CH
3)
2、水素化ジイソブチルアルミニウム、又は水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R及びR
1が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、又はsec-オクチルである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R及びR
1がメチルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水素化物試薬がNaBH
4である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水素化物試薬がNaBH
4であり、R及びR
1のそれぞれがメチルである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式(I)の化合物が、約0.5重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物が、ジシクロペンタジエン種及び混合シクロペンタジエン種を欠いている、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
式(I):
[式中、R及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物であって、ガスクロマトグラフィによって決定される、約0.5重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する、式(I)の化合物。
【請求項10】
式(I)の化合物が、さらに、ジシクロペンタジエン種及び混合ジシクロペンタジエン種を欠いている、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式(I):
[式中、R及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物を調製するための方法であって、
式
の化合物をジアルキルマグネシウム化合物と接触させて、式
の化合物を提供することと、
WCl
6を添加することと、
水素化物試薬を添加することと
を含む方法。
【請求項12】
水素化物試薬が、NaBH
4、LiAlH
4、LiBH
4、LiBH(CH
3CH
2)
3、[(イソブチル)
2AlBH
4]、NaBH
3CN、Na[HB(OC(O)CH
3)]、BH
3-テトラヒドロフラン、BH
3-S(CH
3)
2、水素化ジイソブチルアルミニウム、又は水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素化物試薬がNaBH
4である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
R及びR
1が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、又はsec-オクチルである、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
R及びR
1がメチルである、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
水素化物試薬がNaBH
4である、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
水素化物試薬がNaBH
4であり、R及びR
1のそれぞれがメチルである、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ジアルキルマグネシウム化合物がジ(C
1~C
8アルキル)マグネシウム化合物である、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ジアルキルマグネシウム化合物が、Mg(CH
2CH
2CH
2CH
3)
2又はMg[(CH)(CH
3)(CH
2CH
3)][CH
2CH
2CH
2CH
3]である、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
式(II):
[式中、Mは、Hf、Zr、Ti、Ta、Nb、W、及びMoから選択され、
式中、R及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物を調製するための方法であって、
式
の化合物を、式MX
4の化合物[式中、Xは、クロロ、ブロモ、又はヨードである]と接触させることを含む方法。
【請求項21】
Mが、Hf、Zr、Ti、W、又はMoである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
R及びR
1が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、又はsec-オクチルである、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
R及びR
1がメチルである、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
式(II):
[式中、Mは、Hf、Zr、Ti、Ta、Nb、W、又はMoであり、
式中、Xは、クロロ、ブロモ、又はヨードである]の化合物であって、ガスクロマトグラフィによって決定される、約0.5重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する式(III)の化合物。
【請求項25】
Mが、Hf、Zr、Ti、W、又はMoである、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
式(III)の化合物が、さらに、ジシクロペンタジエン種及び混合ジシクロペンタジエン種を欠いている、請求項24又は25に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概して、様々な金属に配位したモノアルキルシクロペンタジエン化合物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]多くの有機金属化合物は、マイクロエレクトロニクスデバイスの製造に利用されている。例えば、US 2018/0166276 Aは、様々な金属前駆体を使用して、タングステン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、モリブデン、ニオブ、ルテニウム、オスミウム、レニウム、及びイリジウムなどの1つ又は複数の金属を含むマスク層を堆積させることを記載している。特に、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン二水素化物(CAS番号64561-25-7)は、このようなマスク層の原子層堆積に有用であるとして揚げられている。
【0003】
[0003]シクロペンタジエンの取り扱いにおける固有の難しさの一つは、ディールス・アルダー反応によって二量体化する傾向があることである。この二量化は室温で数時間かけて進行するが、加熱を利用することで逆転させることができ、場合によってはクラッキング手順が必要になる。さらに、シクロペンタジエンアニオン種を利用するアルキル化反応では、ジアルキル種及びトリアルキル種の生成が発生する可能性があり、これにより収率が低下し、さらなる分離と精製が必要になるため、合成体制がさらに複雑になる。
【0004】
[0004]したがって、そのような化合物を調製するための改善された方法論が望ましい。
【発明の概要】
【0005】
概して、本開示は、対応するマグネシウム化合物および六塩化タングステンを経由し、続いて水素化物試薬で処理することにより、ビス(モノアルキル置換シクロペンタジエン)タングステン水素化物化合物、例えばビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン二水素化物を製造する方法を提供する。ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン二水素化物(CAS番号64561-25-7)は、原子層堆積に有用である(例えば、US 2018/0166276 Aを参照)。
[0006]別の態様では、本開示は、ビス(モノアルキル置換シクロペンタジエン)金属ハロゲン化物化合物の製造方法を提供する。この後者の態様は、対応するマグネシウム化合物と金属ハロゲン化物との反応によって達成される。このプロセスで使用される代表的な金属は、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、タンタル、ニオブ、及びモリブデンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0007]本明細書及び添付の特許請求の範囲の記述で使用される場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」には、内容が明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「又は」という用語は、内容が明確に別のことを指示しない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0007】
[0008]「約」という用語は通常、記載された値と等価であると見なされる数値の範囲を指す(例えば、同じ機能又は結果を有する)。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に丸められた数値を含み得る。
【0008】
[0009]エンドポイントを使用して表現される数値範囲には、その範囲に含まれるすべての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5を含む)。
【0009】
[0010]第1の態様では、本開示は、式(I):
[式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物の調製方法であって、
式、
の化合物をWCl
6と接触させ、引き続き水素化物試薬による処理(例えば、添加)することを含む方法。
【0010】
[0011]上記の方法において、適切な水素化物試薬は、NaBH4、LiBH4、LiAlH4、LiBH(CH3CH2)3、[(イソブチル)2AlBH4]、NaBH3CN、Na[HB(OC(O)CH3)]、BH3-テトラヒドロフラン、BH3-S(CH3)2、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBALとも呼ばれる)、及び水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(NaAlH2(OCH2CH2OCH3)2を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、水素化物試薬はNaBH4である。
【0011】
[0012]したがって、本開示の方法は、原子層堆積によるタングステン酸化物及び硫化物膜の調製においてタングステン含有前駆体として有用なビス(モノアルキル)シクロペンタジエンタングステン化合物を調製するための容易な方法論を提供する。一実施形態では、R及びR1はメチルであり、すなわち、シクロペンタジエン環上のモノアルキル置換基はイソプロピルである。他の実施形態では、R1及びR1は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、及びsec-オクチルから選択される。
【0012】
[0013]上記のビス(モノアルキル置換シクロペンタジエン)マグネシウム化合物は、対応するフルベン化合物とジアルキルマグネシウム化合物を反応させることによって調製することができる。したがって、別の態様では、本開示は、式(I)、
[式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物の調製方法であって、該方法は、
式、
の化合物をジアルキルマグネシウム化合物と接触させて、式、
の化合物を提供し、引き続き、式WCl
6の化合物で処理(例えば、添加)し、引き続き、水素化物試薬による処理(例えば、添加)することを含む。
【0013】
この方法では、適切なジアルキルマグネシウム化合物は、β-水素化物脱離が可能なアルキル基を有する化合物を含み、例は、Mg(C2~C8アルキル)2、Mg(C3~C8アルキル)2、又はMg(C4~C8アルキル)2を含む。一実施形態では、ジアルキルマグネシウム化合物は、Mg(CH2CH2CH2CH3)2又はMg[(CH)(CH3)(CH2CH3)][CH2CH2CH2CH3]から選択される。
【0014】
[0015]式、
のフルベン出発物質は、対応する式R
1-C(O)-R
2のケトン又はアルデヒド及びピロリドンやアルカリ金属水酸化物などの塩基の存在下でシクロペンタジエンと反応させることによって調製することができる。
【0015】
[0015]上述のように、式(I)の化合物は、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上への原子層堆積における前駆体として有用である。例えば、US 2018/0166276 A、特にビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン二水素化物(CAS番号64561-25-7)を参照。有利なことに、式(I)の化合物は、そうしてリチウム及びビス(アルキル化)メタロセンなどの望ましくない汚染物質が実質的に含まれていない状態で提供される。
【0016】
[0016]さらなる態様では、本開示は、式(II):
[式中、Mは、Hf、Zr、Ti、Ta、Nb、W、及びMoから選択され、
[式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物の調製方法であって、該方法は、
式、
の化合物を、式MX
4の化合物[式中、Xは、クロロ、ブロモ、及びヨードから選択される]と接触させることを含む。
【0017】
[0017]この態様では、上記ビス(モノアルキルシクロペンタジエン)マグネシウム化合物を出発物質として利用し、その後、対応する金属四ハロゲン化物、例えばHfCl4との反応によって得られる、式(II)の様々な有機金属化合物を調製することができる。式(II)の化合物は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン触媒として広く使用されている。
【0018】
[0018]一実施形態では、MはHf、Zr、Ti、又はMoである。
【0019】
[0019]一実施形態では、RおよびR1はメチルであり、すなわちイソプロピル基を表す。他の実施形態では、R1及びR1は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、及びsec-オクチルである。
【0020】
[0020]本開示では、置換フルベン出発物質から始まるプロセスにより、通常のアルキル化反応アプローチで起こり得る多重アルキル化シクロペンタジエニル種の形成に対して、式(I)及び(II)のモノアルキル置換化合物のみの合成が可能となり、生成物は、例えばアルキル臭化物による第2アルキル化の前に、最初の金属-Cp錯体(すなわち、アニオン性シクロペンタジエン)によって脱プロトン化される可能性がある。後者の場合、多重アルキル化のレベルは0.5~5重量パーセントの範囲になり得る。有利なことに、本開示のプロセスは、ガスクロマトグラフィ(例えば、GC及びGC-MS)又はNMRによって検出可能なレベルの多重アルキル化種を含まないモノアルキル化種を提供する。したがって、さらなる実施形態では、本開示のプロセスは、ガスクロマトグラフィによって測定される、0.5重量パーセント未満、0.3重量パーセント未満、又は0.1重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する生成物を提供する。
【0021】
[0021]さらに、本明細書で概説した置換フルベンアプローチを考慮すると、本開示は、ジシクロペンタジエン種及び混合ジシクロペンタジエン種を欠いている式(I)及び(II)の生成物をさらに有利に提供する。
【0022】
[0022]実施例-
[0023](iPrCp)2Mgを用いた(iPrCp)2WH2の合成手順
不活性条件下で、WCl6(2.00g、5mmol)を、磁性体を含む250mLシュレンクフラスコに充填した。フラスコにヘキサン(10mL)とDME(20mL)を添加し、反応混合物を撹拌しながら0~5℃に冷却した。(iPrCp)2Mg(2.41g、10mmol)を添加し、得られた混合物を30分間撹拌した。0~5℃の温度を維持しながらTHF(20mL)を充填した。NaBH4(0.51g、13.4mmol)を窒素下で添加して、わずかな発熱(+3℃)が生じた。反応混合物は茶色から淡黄色に変化した。反応混合物を1.5時間かけてゆっくりと室温まで温めた。反応混合物は淡黄色になった。反応混合物を50~55℃に2時間加熱し、その後約30℃に冷却した。すべての溶媒を真空下で除去した。フラスコにヘキサン(50mL)を添加し、混合物を0℃まで冷却する。DI水(50mL)をゆっくりと撹拌しながら添加し、+2℃の発熱が観察された。15分間撹拌した後、水層を廃棄した。反応フラスコを0℃まで冷却し、撹拌しながら30%酢酸水溶液(20mL)を添加した。15分間撹拌した後、水層を分離し、有機層を廃棄した。ヘキサン(50mL)を水層に加え、0℃まで冷却した。水層を50%NaOH溶液で中和した。有機層を分離し、すべての揮発性物質を真空除去して、83%の収率で1.8gの茶色の粘性液体を生成した。NMRデータは以下の通りである。1H-NMR (C6D6, δ-ppm): 4.18 (d, 4H, CpH), 2.42 (m, 2H, CH(CH3)2), 1.1 (d, 6H, CH(CH3)2), and -11.85 (s, 2 H, W-H).
【0023】
[0024]態様
[0025]第1の態様では、本開示は、式(I):
[式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物の調製方法であって、該方法は、
式、
の化合物をWCl
6と接触させることと、水素化物試薬を添加することとを含む。
【0024】
[0026]第2の態様では、本開示は第1の態様の方法を提供し、ここで、水素化物試薬は、NaBH4、LiAlH4、LiBH4、LiBH(CH3CH2)3、[(イソブチル)2AlBH4]、NaBH3CN、Na[HB(OC(O)CH3)]、BH3-テトラヒドロフラン、BH3-S(CH3)2、水素化ジイソブチルアルミニウム、又は水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである。
【0025】
[0027]第3の態様では、本開示は第1又は第2の態様の方法を提供し、ここで、R及びR1が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、又はsec-オクチルである。
【0026】
[0028]第4の態様において、本開示は第1、第2、または第3の態様の方法を提供し、ここで、R及びR1はメチルである。
【0027】
[0029]第5の態様において、本開示は、第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、水素化物試薬は、NaBH4である。
【0028】
[0030]第6の態様において、本開示は第1~第5の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、式(I)の化合物は、約0.5重量%未満、約0.3重量%未満、又は約0.1重量%未満の多重アルキル化種を有する。
【0029】
[0031]第7の態様において、本開示は第1~第6の態様のいずれか1つの方法を提供し、式(I)の化合物は、シクロペンタジエン種及び混合ジシクロペンタジエン種を欠いている。
【0030】
[0032]第8の態様において、本開示は、式(I):
[式中、R及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物であって、ガスクロマトグラフィによって決定される、約0.5重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する式(I)の化合物を提供する。
【0031】
[0033]第9の態様において、本開示は、第8の態様の化合物、ガスクロマトグラフィによって測定される、約0.3重量パーセント未満又は約0.1重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する式(I)の化合物を提供する。
【0032】
[0034]第10の態様において、本開示は第9又は10の態様の方法を提供し、式(I)の化合物は、さらに、ジシクロペンタジエン種及び混合ジシクロペンタジエン種を欠いている。
【0033】
[0035]第11の態様では、本開示は、式(I):
[式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物の調製方法であって、該方法は、
式、
の化合物をジアルキルマグネシウム化合物と接触させて、式、
の化合物を提供することと、WCl
6を添加することと、水素化物試薬を添加することとを含む。
【0034】
[0036]第12の態様では、本開示は第11の態様の方法を提供し、ここで、水素化物試薬は、NaBH4、LiAlH4、LiBH4、LiBH(CH3CH2)3、[(イソブチル)2AlBH4]、NaBH3CN、Na[HB(OC(O)CH3)]、BH3-テトラヒドロフラン、BH3-S(CH3)2、水素化ジイソブチルアルミニウム、又は水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである。
【0035】
[0037]第13の態様において、本開示は、第11~第12の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、水素化物試薬は、NaBH4である。
【0036】
[0038]第14の態様では、本開示は第11~第13の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、R及びR1が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、又はsec-オクチルである。
【0037】
[0039]第15の態様において、本開示は第11~第14の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、R1及びR1はメチルである。
【0038】
[0040]第16の態様において、本開示は第11~第15の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、水素化物試薬は、NaBH4である。
【0039】
[0041]第17の態様において、本開示は第11~第16の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、ジアルキルマグネシウム化合物は、MgMg(C2~C8アルキル)2、Mg(C3~C8アルキル)2、又はMg(C4~C8アルキル)2である。
【0040】
[0042]第18の態様において、本開示は第11~第17の態様のいずれか1つの方法を提供し、ここで、ジアルキルマグネシウム化合物は、Mg(CH2CH2CH2CH3)2又はMg[(CH)(CH3)(CH2CH3)][CH2CH2CH2CH3]である。
【0041】
[0043]第19の態様では、本開示は、式(II):
[式中、Mは、Hf、Zr、Ti、Ta、Nb、W、及びMoから選択され、
式中、R
1及びR
1は、水素及びC
1~C
8アルキルから独立して選択される]の化合物の調製方法であって、該方法は、
式、
の化合物を、式MX
4の化合物[式中、Xは、クロロ、ブロモ、又はヨードである]と接触させることを含む。
【0042】
[0044]第20の態様において、本開示は第19の態様の方法を提供し、ここで、Mは、Hf、Zr、Ti、W、又はMoである。
【0043】
[0045]第21の態様では、本開示は第19又は第20の態様の方法を提供し、ここで、R及びR1が、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、イソヘプチル、sec-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、又はsec-オクチルである。
【0044】
[0046]第22の態様において、本開示は第19、第20、または第21の態様の方法を提供し、ここで、R及びR1はメチルである。
【0045】
[0047]第23の態様において、本開示は、式(II):
[式中、Mは、Hf、Zr、Ti、Ta、Nb、W、又はMoであり、Xは、クロロ、ブロモ、又はヨードである]の化合物であって、ガスクロマトグラフィによって測定される、約0.5重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する式(III)の化合物を提供する。
【0046】
[0048]第24の態様において、本開示は第23の態様の化合物を提供し、ここで、Mが、Hf、Zr、Ti、W、又はMoである。
【0047】
[0049]第25の態様において、本開示は第23又は第24の態様の化合物を提供し、ここで、式(I)の化合物は、約0.3重量パーセント未満又は約0.1重量パーセント未満の多重アルキル化種を有する。
【0048】
[0050]第26の態様において、本開示は第23、第24、又は第25の態様の化合物を提供し、ここで、式(III)の化合物は、ジシクロペンタジエン種及び混合ジシクロペンタジエン種をさらに欠いている。
【0049】
[0051]以上、本開示のいくつかの例示的な実施形態について説明したが、当業者であれば、本明細書に添付された特許請求の範囲内でさらに他の実施形態が作成及び使用され得ることは容易に理解されるであろう。この文書で取り上げられている開示の数多くの利点は、前述の説明で述べられている。しかしながら、この開示は、多くの点で、単なる例示に過ぎないことが理解されるであろう。当然ながら、開示の範囲は、添付の請求項が表現されている言語で定義される。
【国際調査報告】