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特表2024-539824熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20241024BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20241024BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L51/00
C08J3/215
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516510
(86)(22)【出願日】2023-07-17
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2023010154
(87)【国際公開番号】W WO2024085360
(87)【国際公開日】2024-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0135350
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】テ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユン・キョン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ホ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョンミン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョク・ジュン・ユン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA18
4F070AA30
4F070AB08
4F070AB11
4F070AB22
4F070AC43
4F070AE03
4F070AE09
4F070DA55
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4J002AE034
4J002BB034
4J002BB124
4J002BC061
4J002BC091
4J002BN122
4J002BN123
4J002EH036
4J002EH046
4J002EJ067
4J002EP016
4J002EP026
4J002EU077
4J002EU087
4J002EU187
4J002EU237
4J002EV037
4J002EV047
4J002EV067
4J002EV317
4J002EV347
4J002EW067
4J002EW087
4J002FD047
4J002FD077
4J002FD174
4J002FD176
4J002GC00
4J002GG01
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含み、熱可塑性樹脂組成物の合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
本発明によれば、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保される効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と、
(C)滑剤0.6~1.9重量部とを含み、
熱可塑性樹脂組成物の合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A-1)グラフト共重合体は、その総重量に対して、アルキルアクリレートゴム30~70重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%、及びビニルシアン化合物1~25重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A-2)グラフト共重合体は、その総重量に対して、アルキルアクリレートゴム30~70重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%、及びビニルシアン化合物1~25重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A-1)グラフト共重合体と(A-2)グラフト共重合体の重量比(A-1:A-2)は、1:1.5~1:7であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)共重合体は、重量平均分子量が50,000~180,000g/molであることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)共重合体は、その総重量に対して、芳香族ビニル化合物50~90重量%及びビニルシアン化合物10~50重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(C)滑剤は、脂肪族アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、モンタン系ワックス、及びオレフィン系ワックスからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤、UV安定剤、またはこれらの混合を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D785に準拠して測定した表面硬度が95以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D638に準拠して測定した引張強度が450kgf/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D638に準拠して測定した伸び率が28%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含んで、200~300℃及び100~300rpmの条件下で混練及び押出して押出物を製造するステップを含み、
製造された押出物は、その合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項14】
前記成形品はカレンダー加工品であることを特徴とする、請求項13に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2022年10月20日付の韓国特許出願第10-2022-0135350号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関し、より詳細には、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保される熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
カレンダーとは、複数個の加熱ローラを配列した圧延機械のことをいう。また、カレンダーを使用してフィルム、シートなどを成形すること、そして、布、紙などの表面にプラスチックを被覆することを、カレンダー加工またはカレンダリング(calendering)という。このようなカレンダリングは、押出工程に比べて高い設備投資を必要とするという欠点があるが、品質が押出工程に比べて優れるので、特に、PVCフィルムの製造時に多く使用されている。
【0004】
ポリ塩化ビニル樹脂(以下、「PVC樹脂」という)は、塩化ビニルの単独重合体、または塩化ビニルを50重量%以上含有した混成重合体であって、懸濁重合と乳化重合で製造される5大汎用熱可塑性プラスチック樹脂の一つである。その中で、懸濁重合で製造されるPVC樹脂は、可塑剤(Plasticizer)、安定剤(Stabilizer)、充填剤(Filler)、顔料(Pigment)、二酸化チタン(TiO)及び特殊な機能を有する副原料を混合し、様々な加工法を通じて、フィルム、シート、電線、パイプなどの製造に広範囲に使用される。PVC樹脂は、低廉なコスト、優れた物性及び高い加工性により、現在、家具用表面仕上げ素材として広く使用されているが、素材の特性上、再加工が難しく、燃焼時に塩素及び塩化水素ガスが発生するため、火災時に非常に有害であるだけでなく、柔軟性を付与するために使用される可塑剤であるフタレート系化合物により、人体に有害であり、製造及び廃棄時に有害物質が発生するという問題がある。そのため、市場では、これを脱却し、環境に優しい素材で代替するために努力している。
【0005】
Tダイ押出分野の市場では、ポリエチレンテレフタレート樹脂が、優れた物性及び高い着色性により注目を集めており、カレンダリング押出では、ポリプロピレン樹脂が、経済性が高いので一部使用されているが、低い着色性及び光沢などにより高級な外観の実現が難しいため、その用途が制限されており、カレンダリング押出が可能な環境に優しい素材に対する要求が増加している。
【0006】
このような問題を解決するために、PVC樹脂を代替できる素材に関する研究が活発に行われており、その中でアクリロニトリル-スチレン-アクリレート樹脂(以下、「ASA樹脂」という)は、耐候性、耐光性に優れるだけでなく、着色性、耐化学性及び耐衝撃性も優れるので、自動車、建築資材及び雑貨など多方面に使用されている。特にASA樹脂は、PVC樹脂に比べて加工安定性に優れ、重金属成分を含まないので環境に優しい素材として脚光を浴びている。
【0007】
しかし、既存のカレンダー用ASA樹脂は、延伸特性が不十分であるため、カレンダー加工性が劣り、成形後の耐久性などが不十分であるため、作製されたシートの品質が低下するという問題がある。
【0008】
したがって、カレンダー加工性及び耐久性に優れたカレンダー用ASA樹脂の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2006-0118820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、人体に有害な環境ホルモン物質であるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出しないながらも、引張強度及び伸び率に優れるので、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して加工性が同等以上であり、耐久性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本記載は、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含み、熱可塑性樹脂組成物の合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、本記載は、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含み、ASTM D785に準拠して測定した表面硬度が95以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0014】
前記(A-1)グラフト共重合体は、好ましくは、その総重量に対して、アルキルアクリレートゴム30~70重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%、及びビニルシアン化合物1~25重量%を含んでなってもよい。
【0015】
前記(A-2)グラフト共重合体は、好ましくは、その総重量に対して、アルキルアクリレートゴム30~70重量%、芳香族ビニル化合物20~50重量%、及びビニルシアン化合物1~25重量%を含んでなってもよい。
【0016】
前記(A-1)グラフト共重合体と(A-2)グラフト共重合体の重量比(A-1:A-2)は、好ましくは1:1.5~1:7であってもよい。
【0017】
前記(B)共重合体は、好ましくは、重量平均分子量が50,000~180,000g/molであってもよい。
【0018】
前記(B)共重合体は、好ましくは、その総重量に対して、芳香族ビニル化合物50~90重量%及びビニルシアン化合物10~50重量%を含んでなってもよい。
【0019】
前記(C)滑剤は、好ましくは、脂肪族アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、モンタン系ワックス、及びオレフィン系ワックスからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0020】
前記熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤、UV安定剤、またはこれらの混合を含んでもよい。
【0021】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D638に準拠して測定した引張強度が450kgf/cm以上であってもよい。
【0022】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D638に準拠して測定した伸び率が28%以上であってもよい。
【0023】
また、本記載は、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含んで、200~300℃及び100~300rpmの条件下で混練及び押出して押出物を製造するステップを含み、製造された押出物は、その合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0024】
また、本記載は、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含んで、200~300℃及び100~300rpmの条件下で混練及び押出して熱可塑性樹脂組成物を製造するステップを含み、製造された熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D785に準拠して測定した表面硬度が95以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0025】
また、本記載は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品を提供する。
【0026】
前記成形品は、好ましくは、カレンダー加工品であってもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保される熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を提供する効果がある。
【0028】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、カレンダー加工性に優れるので、PVC樹脂を代替してフィルムに製造し、表面仕上げ素材、特に家具用表面仕上げ素材として適用する効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれから製造された成形品を詳細に説明する。
【0030】
本発明者らは、平均粒径が異なる2種のアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とを所定の含量比で含むベース樹脂に対して、滑剤を所定の含量で含み、熱可塑性樹脂組成物中のゴムの含量を所定の範囲内に調整する場合、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保され、PVC素材を代替する効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含み、熱可塑性樹脂組成物の合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする。このような場合、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、引張強度及び伸び率に優れ、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して加工性が同等以上であり、かつ、耐スクラッチ性に優れるので耐久性が確保され、PVC素材を代替するという利点がある。
【0032】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成別に詳細に説明する。
【0033】
(A-1)平均粒径が50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記(A-1)グラフト共重合体のアルキルアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が50~200nm、好ましくは80~180nm、より好ましくは110~160nmであってもよく、この範囲内で、優れた機械的物性及び加工性を付与することができる。
【0034】
本記載において、平均粒径は、動的光散乱法(Dynamic light scattering)を用いて測定することができ、詳細には、粒子測定器(製品名:Nicomp380、製造社:PSS)を用いてガウス(Gaussian)モードでインテンシティ(intensity)値で測定する。このとき、具体的な測定例として、サンプルは、ラテックス(TSC35~50wt%)0.1gを脱イオン水又は蒸留水で1,000~5,000倍希釈し、すなわち、強度セットポイント(Intensity Setpoint)300kHzを大きく外れないように適切に希釈し、ガラス管(glass tube)に入れて準備し、測定方法は、自動希釈(Auto-dilution)してフローセル(flow cell)で測定し、測定モードは、動的光散乱法(dynamic light scattering)/強度(Intensity)300KHz/強度-荷重ガウス分析(Intensity-weight Gaussian Analysis)とし、設定(setting)値は、温度23℃、測定波長632.8nm、チャンネル幅(channel width)10μsecとして測定することができる。
【0035】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例として、ベース樹脂の総重量に対して3~22重量%、好ましくは3~17重量%、より好ましくは4~10重量%であってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率などの機械的物性、表面光沢度、表面硬度及び流動性に優れるという効果がある。
【0036】
前記(A-1)グラフト共重合体は、好ましくは、アルキルアクリレートゴム(コア)と、これを囲む、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含むシェルとを含んでなることができ、この場合、引張強度、伸び率、及び表面光沢度に優れるという効果がある。
【0037】
前記(A-1)グラフト共重合体は、その総重量に対して、一例として、アルキルアクリレートゴムを30~70重量%、好ましくは35~65重量%、より好ましくは40~60重量%含むことができ、この範囲内で、引張強度、伸び率及び加工性に優れるという効果がある。
【0038】
前記(A-1)グラフト共重合体は、その総重量に対して、一例として、芳香族ビニル化合物を20~50重量%、好ましくは25~45重量%、より好ましくは30~40重量%含むことができ、この範囲内で、表面光沢度、表面硬度及び加工性に優れるという効果がある。
【0039】
前記(A-1)グラフト共重合体は、その総重量に対して、一例として、ビニルシアン化合物を1~25重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは10~20重量%含むことができ、この範囲内で、表面光沢度、表面硬度及び加工性に優れるという効果がある。
【0040】
本記載のアルキルアクリレートゴムは、一例として、アルキル基の炭素数が1~10個であるアルキルアクリレートゴムからなる群から選択された1種以上、好ましくは、エチルアクリレートゴム、プロピルアクリレートゴム、ブチルアクリレートゴム、ヘキシルアクリレートゴム、オクチルアクリレートゴム、及び2-エチルヘキシルアクリレートゴムからなる群から選択された1種以上、より好ましくは、ブチルアクリレートゴム、2-エチルヘキシルアクリレートゴム、またはこれらの混合であってもよく、この場合、光沢性及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0041】
本記載において、芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、ο-ブロモスチレン、ρ-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、ο-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくはスチレンであってもよい。
【0042】
本記載のビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル及びα-クロロアクリロニトリルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはアクリロニトリルであってもよい。
【0043】
本記載において、ある化合物(単量体)を含んでなる重合体とは、その化合物(単量体)を含んで重合された重合体を意味するもので、重合された重合体内の単位体がその化合物に由来する。
【0044】
前記(A-1)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、表面光沢度及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0045】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合方法による場合、特に制限されず、一例として乳化グラフト重合方法であり得る。
【0046】
(A-2)平均粒径が200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体
前記(A-2)グラフト共重合体のアルキルアクリレートゴムは、一例として、平均粒径が200nm超~600nm以下、好ましくは250~570nm、より好ましくは300~550nm、さらに好ましくは400~550nmであってもよく、この範囲内で、優れた光沢性、引張強度及び表面硬度を付与することができる。
【0047】
前記(A-2)グラフト共重合体は、一例として、ベース樹脂の総重量に対して20~40重量%、好ましくは23~35重量%、より好ましくは23~30重量%であってもよく、この範囲内で、流動性及び引張強度に優れるという効果がある。
【0048】
前記(A-2)グラフト共重合体は、好ましくは、アルキルアクリレートゴムと、これを囲む、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物を含むシェルとを含んでなることができ、この場合、機械的物性、加工性及び表面光沢度に優れるという効果がある。
【0049】
前記(A-2)グラフト共重合体は、その総重量に対して、一例として、アルキルアクリレートゴムを30~70重量%、好ましくは35~65重量%、より好ましくは40~60重量%含むことができ、この範囲内で、引張強度、伸び率などの機械的物性、表面光沢度、表面硬度及び加工性に優れるという効果がある。
【0050】
前記(A-2)グラフト共重合体は、その総重量に対して、一例として、芳香族ビニル化合物を20~50重量%、好ましくは25~45重量%、より好ましくは30~40重量%含むことができ、この範囲内で、引張強度、伸び率及び加工性に優れるという効果がある。
【0051】
前記(A-2)グラフト共重合体は、その総重量に対して、一例として、ビニルシアン化合物を1~25重量%、好ましくは5~20重量%、より好ましくは10~20重量%含むことができ、この範囲内で、表面光沢度、表面硬度及び加工性に優れるという効果がある。
【0052】
前記(A-2)グラフト共重合体に含まれたアルキルアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類は、本記載の(A-1)グラフト共重合体に含まれるアルキルアクリレートゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0053】
前記(A-2)グラフト共重合体は、一例として乳化重合で製造されてもよく、この場合、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0054】
前記乳化重合は、本発明の属する技術分野で通常行われる乳化重合方法による場合、特に制限されず、一例として乳化グラフト重合方法であり得る。
【0055】
前記(A-1)グラフト共重合体と(A-2)グラフト共重合体の重量比(A-1:A-2)は、一例として1:1.5~1:7、好ましくは1:2.5~1:6、より好ましくは1:3~1:6、さらに好ましくは1:4~1:5.5であってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率、光沢性、表面硬度及び加工性がいずれも優れるという効果がある。
【0056】
前記(A-1)グラフト共重合体のアクリレートゴムの平均粒径と、前記(A-2)グラフト共重合体のアクリレートゴムの平均粒径との差が、一例として100~550nm、好ましくは150~500nm、より好ましくは200~450nm、さらに好ましくは250~450nmであってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度がさらに改善されるという効果がある。
【0057】
前記(A-1)グラフト共重合体と(A-2)グラフト共重合体の和は、一例として、ベース樹脂の合計100重量%に対して、25~50重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは30~40重量%であってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率、表面光沢度、表面硬度及び流動性がさらに優れるので、加工性が改善されるという利点がある。
【0058】
(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体
前記(B)共重合体は、一例として、ベース樹脂の総重量に対して50~72重量%、好ましくは55~70重量%、より好ましくは60~70重量%であってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率、表面硬度及び加工性に優れるという利点がある。
【0059】
前記(B)共重合体は、一例として、重量平均分子量が50,000~180,000g/mol、好ましくは60,000~180,000g/mol、より好ましくは70,000~180,000g/mol、さらに好ましくは80,000~180,000g/molであってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率などの機械的物性、表面光沢度及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0060】
本記載において、重量平均分子量は、別途に定義しない限り、GPC(Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を用いて測定することができ、具体例として、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用い、GPCを通じて、標準PS(standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。このとき、具体的な測定例として、溶媒:THF、カラム温度:40℃、流速:0.3ml/min、試料の濃度:20mg/ml、注入量:5μl、カラムモデル:1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B(250×4.6mm)+1×PLgel 10μm MiniMix-B Guard(50×4.6mm)、装備名:Agilent 1200シリーズシステム、屈折率(Refractive index)検出器(detector):Agilent G1362 RID、RI温度:35℃、データの処理:Agilent ChemStation S/W、試験方法(Mn、Mw及びPDI):OECD TG 118の条件で測定することができる。
【0061】
前記(B)共重合体は、一例として、その総重量に対して、芳香族ビニル化合物50~90重量%、好ましくは60~80重量%、より好ましくは65~75重量%を含んでなることができ、この範囲内で、引張強度、伸び率などの機械的物性、表面光沢度及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0062】
前記(B)共重合体は、一例として、その総重量に対して、ビニルシアン化合物10~50重量%、好ましくは20~40重量%、より好ましくは25~35重量%を含んでなることができ、この範囲内で、引張強度、伸び率などの機械的物性、表面光沢度及び表面硬度に優れるという効果がある。
【0063】
前記(B)共重合体に含まれた芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類は、本記載の(A-1)グラフト共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の種類と同じ範疇内のものであってもよい。
【0064】
前記(B)共重合体は、好ましくは、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体(耐熱SAN樹脂)、またはこれらの混合であり、より好ましくはスチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)であり、この場合、表面光沢度、表面硬度及び加工性がいずれも優れるという効果がある。
【0065】
前記(B)共重合体は、一例として、溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合で製造されてもよく、好ましくは塊状重合であってもよく、この場合、機械的物性などに優れるという効果がある。
【0066】
前記溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合は、それぞれ、本発明の属する技術分野で通常行われる溶液重合、塊状重合、乳化重合及び懸濁重合方法による場合、特に制限されない。
【0067】
(C)滑剤
前記(C)滑剤は、一例として、ベース樹脂100重量部を基準として0.6~1.9重量部、好ましくは0.8~1.8重量部、より好ましくは0.8~1.5重量部であってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度がいずれも優れ、カレンダー加工性に優れるので、カレンダー加工中にシートを変形又は損傷させず、ロールの上で着脱が可能であるので、PVC素材を代替するという効果がある。
【0068】
前記(C)滑剤は、一例として、脂肪族アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、モンタン系ワックス、及びオレフィン系ワックスからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、脂肪酸エステル系滑剤、より好ましくは、ペンタエリスリチルテトラステアレートであってもよく、この場合、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度がいずれも優れるので、PVC樹脂を代替してカレンダー加工が可能であり、カレンダー加工性に優れるという効果がある。
【0069】
前記脂肪族アミド系滑剤は、一例として、ステアルアミド(stearamide)、ベヘンアミド(behanamide)、エチレンビス(ステアルアミド)[ethylene bis(stearamide)]、N,N’-エチレンビス(12-ヒドロキシステアルアミド)[N,N’-ethylene bis(12-hydroxystearamide)]、エルカミド(erucamide)、オレアミド(oleamide)及びエチレンビスオレアミド(ethylene bisoleamide)からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度がいずれも優れるので、PVC樹脂を代替してカレンダー加工が可能であり、カレンダー加工性に優れるという効果がある。
【0070】
前記脂肪酸エステル系滑剤は、一例として、アルコール又は多価アルコールの脂肪酸エステル、硬化油、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリルステアレート、エステルワックス及びアルキルリン酸エステルからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはペンタエリスリトールテトラステアレートであってもよく、この場合、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度がいずれも優れるので、PVC樹脂を代替してカレンダー加工が可能であり、カレンダー加工性に優れるという効果がある。
【0071】
前記モンタン系ワックスは、一例として、モンタンワックス、またはモンタンエステルワックスであってもよく、この場合、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度がいずれも優れるので、PVC樹脂を代替してカレンダー加工が可能であり、カレンダー加工性に優れるという効果がある。
【0072】
前記オレフィン系ワックスは、一例として、ポリオレフィン系ワックスであってもよく、好ましくは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、またはこれらの混合であってもよく、より好ましくはポリエチレンワックス、さらに好ましくは、酸化した高密度ポリエチレンワックス(Oxidized high density polyethylene wax)であってもよく、この場合、引張強度、伸び率、光沢性及び表面硬度がいずれも優れるので、PVC樹脂を代替してカレンダー加工が可能であり、カレンダー加工性に優れるという効果がある。
【0073】
添加剤
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、酸化防止剤、UV安定剤、またはこれらの混合を含むことができ、この場合、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0074】
前記酸化防止剤は、一例として、ベース樹脂100重量部に対して0.1~2重量部、好ましくは0.2~1.5重量部、より好ましくは0.3~1重量部であってもよく、この範囲内で、耐熱度が改善されるという効果がある。
【0075】
前記酸化防止剤は、一例として、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、及びチオエーテル系酸化防止剤からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、フェノール系酸化防止剤及びホスファイト系酸化防止剤である。
【0076】
前記フェノール系酸化防止剤は、一例として、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリス-(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンゼン)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、及び1,3,5-トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0077】
前記ホスファイト系酸化防止剤は、一例として、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、またはこれらの混合であってもよい。
【0078】
前記チオエーテル系酸化防止剤は、一例として、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジメチルチオジプロピオネート、2-メルカプトベンゾイミダゾール、フェノチアジン、オクタデシルチオグリコレート、ブチルチオグリコレート、オクチルチオグリコレート及びチオクレゾールからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0079】
前記UV安定剤は、一例として、ベース樹脂100重量部に対して0.1~3重量部、好ましくは0.3~1.5重量部、より好ましくは0.5~1重量部であってもよく、この場合、耐候性が改善されるという効果がある。
【0080】
前記UV安定剤は、一例として、ヒンダードアミン系UV安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)であってもよく、好ましくは、1,1-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシナート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-N-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジ-クロロ-1,3,5-トリアジンとの線状又は環状縮合生成物、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)-ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4-モルホリノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンとの線状又は環状縮合生成物、7,7,9,9-テトラメチル-2-シクロウンデシル-1-オキサ-3,8-ジアザ-4-オキソスピロ-[4,5]デカンとエピクロロヒドリンとの反応生成物、及びポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]からなる群から選択された1種以上であり、より好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl)sebacate)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(2-(2H-benzotriazol-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)phenol)、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]、またはこれらの混合であってもよく、より一層好ましくは、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Bis(2,2,6,6-tetramethyl-4-piperidyl)、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]、またはこれらの混合であってもよく、このような場合、衝撃強度及び流動性を阻害しないと共に、耐候性を大きく改善させるという利点がある。
【0081】
前記熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて選択的に、染料、顔料、着色剤、帯電防止剤、抗菌剤、加工助剤、金属不活性化剤、難燃剤、煙抑制剤、滴下防止剤、耐摩擦剤及び耐摩耗剤からなる群から選択された1種以上を、ベース樹脂の総100重量部を基準として、それぞれ、0.01~5重量部、好ましくは0.05~3重量部、より好ましくは0.1~2重量部、さらに好ましくは0.5~1重量部さらに含むことができ、この範囲内で、本記載の熱可塑性樹脂組成物本来の物性を低下させないながらも、必要な物性が良好に実現されるという効果がある。
【0082】
熱可塑性樹脂組成物
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、その総重量に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%、より好ましくは15~20重量%、さらに好ましくは15~19重量%、より一層好ましくは15~18重量%であってもよく、この範囲内で、引張強度、伸び率、光沢性、及び表面硬度がいずれも優れ、カレンダー加工性に優れるので、PVC樹脂を代替するという利点がある。
【0083】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D638に準拠して、クロスヘッド速度(Cross head speed)50mm/minで引っ張った後、厚さ3mmの試験片が切断される地点を測定した引張強度が、450kgf/cm以上、より好ましくは470kgf/cm以上、さらに好ましくは500kgf/cm以上、より一層好ましくは500~650kgf/cmであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、加工性、特にカレンダー加工性に優れるので、PVC樹脂を代替するという利点がある。
【0084】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D638に準拠して、クロスヘッド速度(Cross head speed)50mm/min下で、厚さ3mmの試験片で測定した伸び率が、28%以上、より好ましくは28~60%、さらに好ましくは28~50%、より一層好ましくは28~45%であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、加工性、特にカレンダー加工性に優れるので、PVC樹脂を代替するという利点がある。
【0085】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D785に準拠して測定した表面硬度が95以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは100~115であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、耐久性に優れるという利点がある。
【0086】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D528に準拠して、厚さ1/4"の射出試験片で45°で測定した表面光沢度が90GU以上、より好ましくは90~100GUであってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、透明性に優れるので、外観が美麗であるという利点がある。
【0087】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ASTM D219に準拠して測定した鉛筆硬度がB以上、好ましくはHB以上であってもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、耐久性に優れるという利点がある。
【0088】
前記熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、ロール温度180~220℃、カレンダーロール速度8~12rpm、及びカレンダーロール間の間隔0.3mmとし、厚さ0.3mmのシートとして製造する際に、熱可塑性樹脂組成物がロールの表面で可塑化して塗布される時間が3分以内に安定化され、成形されたシートは、変形や損傷なしに、ロールの上で着脱が可能であり、カレンダー加工性に優れるという効果がある。
【0089】
以下では、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びその組成物を含む成形品に関して説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法及びその組成物を含む成形品を説明するにおいて、上述した熱可塑性樹脂組成物の内容を全て含む。
【0090】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含んで、200~300℃及び100~300rpmの条件下で混練及び押出して押出物を製造するステップを含み、製造された押出物は、その合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする。このような場合、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保され、カレンダー加工性に優れるので、PVC樹脂を代替するという利点がある。
【0091】
前記混練及び押出は、一例として、一軸押出機、二軸押出機、またはバンバリーミキサを通じて行われてもよく、この場合、組成物が均一に分散し、相溶性に優れるという効果がある。
【0092】
前記混練及び押出は、一例として、バレル温度が200~300℃、好ましくは210~280℃、より好ましくは220~270℃である範囲内で行われてもよく、この場合、単位時間当たりの処理量が適切であり、かつ十分な溶融混練が可能となり得、樹脂成分の熱分解などの問題を引き起こさないという効果がある。
【0093】
前記混練及び押出は、一例として、スクリュー回転数が100~500rpm、150~400rpm、100~350rpm、200~310rpm、好ましくは250~350rpmである条件下で行われてもよく、この範囲内で、単位時間当たりの処理量が高く、工程効率に優れるという効果がある。
【0094】
前記押出物は、好ましくは、ペレット状または板状の形態であってもよい。
【0095】
本記載において、板状の形態は、本発明の属する技術分野で通常の板状の形態として定義するものであれば、特に制限されず、一例として、平たい形状、シート状、フィルム状などを含むことができる。
【0096】
成形品
本記載の成形品は、一例として、本記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことができ、この場合、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保され、PVC樹脂を代替して高品質の仕上げ材として適用されるという利点がある。
【0097】
前記成形品は、一例としてカレンダー加工品であってもよく、好ましくは、建築用仕上げ材、屋根用仕上げ材、または家具用仕上げ材であってもよく、この場合、外観品質に優れ、耐久性に優れるので、市場で求められる品質以上の高品質で提供可能であるという利点がある。
【0098】
本記載の成形品の製造方法は、(A-1)平均粒径50~200nmであるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体3~22重量%、(A-2)平均粒径200nm超~600nm以下であるアルキルアクリレートゴムを含むアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体20~40重量%、及び(B)芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体50~72重量%を含む、ベース樹脂100重量部と;(C)滑剤0.6~1.9重量部と;を含んで、200~300℃及び100~300rpmの条件下で混練及び押出して押出物を製造するステップと;前記押出物を、成形温度120~300℃でカレンダー成形して成形品を製造するステップと;を含み、前記押出物は、その合計100重量%に対して、FT-IRで測定したゴムの総含量が15~21重量%であることを特徴とする。このような場合、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出しないながらも、引張強度及び伸び率に優れるので、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ表面光沢度及び耐スクラッチ性に優れるので、耐久性及び外観品質が確保され、PVC樹脂を代替して高品質の仕上げ材として適用されるという利点がある。
【0099】
前記カレンダー成形は、一例として、押出物を、カレンダーロールを含むカレンダリング工程によって圧延するもので、本発明の属する技術分野で通常用いる方法による場合、特に制限されないが、好ましくは、シートの原料を130~220℃にてミキサーで混合するステップと、混合された原料を170~240℃下でベースシートとして製造するステップと、ベースシートを140~220℃下でカレンダーロールを用いてシートとして製造するステップとを含むことができる。ここで、ベースシート製造ステップは、一例として、ミキシングロールを用いることができる。
【0100】
本記載の熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0101】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0102】
[実施例]
*(A-1)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造された、アルキルアクリレートゴムの平均粒径が150nmであるASAグラフト共重合体(ブチルアクリレートゴム50重量%、スチレン35重量%、アクリロニトリル15重量%を含んでなるグラフト共重合体)
*(A-2)ASAグラフト共重合体:乳化重合方式で製造された、アルキルアクリレートゴムの平均粒径が450nmであるASAグラフト共重合体(ブチルアクリレートゴム50重量%、スチレン35重量%、アクリロニトリル15重量%を含んでなるグラフト共重合体)
*(B)塊状重合方式のSAN共重合体:スチレン70重量%及びアクリロニトリル30重量%を含んでなる共重合体(重量平均分子量150,000g/mol)
*(C)滑剤:ペンタエリスリトールテトラステアレート
*(D)添加剤:
-酸化防止剤:Irganox 1076(BASF社)0.5重量部、Irgafox 168(BASF社)0.5重量部
-UV安定剤:Tinuvin 770(BASF社)0.5重量部、Sunsorb 329(SUNFINE GLOBAL社)0.5重量部
【0103】
実施例1~7及び比較例1~9
それぞれ、下記の表1及び表2に記載された成分及び含量と共に、添加剤総2重量部を、押出機(SM Twin screw extruder、25Φ)にて押出温度230℃、供給速度(Feed rate)20kg/hr、スクリュー回転数(Screw speed)300rpm下で混練及び押出してペレットを製造した。製造されたペレットを、射出機(ENGEL 120MT)を用いて、射出温度200~240℃、スクリュー速度100~200rpmで射出して、外観及び物性測定用試験片を作製した。また、直径30cmの2つのカレンダーロールが0.3mmの間隔を置いて設置されたロールミル(Roll mill)機器(MIRAE RPM(株)社のMR-LM0820)において、ロールを180~210℃に維持した状態で、押出されたペレット状の樹脂をカレンダー加工して、厚さ0.3mmのシートを製造した。
【0104】
[試験例]
前記実施例1~7及び比較例1~9で製造されたペレット及び射出試験片の特性を、下記の方法で測定し、その結果を下記の表1及び表2に示した。
*ゴムの含量(重量%):FT-IRを用いて定量的に測定した。
*引張強度(kgf/cm):ASTM D638に準拠して、クロスヘッド速度(Cross head speed)50mm/minで引っ張った後、厚さ3mmの試験片が切断される地点を測定した。
*伸び率(%):ASTM D638に準拠して、クロスヘッド速度(Cross head speed)50mm/min下で、厚さ3mmの試験片で伸び率を測定した。
*表面硬度:厚さ1/4"の試験片を用いて、ASTM D785に準拠してRスケールでロックウェル(Rockwell)硬度を測定した。
*表面光沢度(GU):ASTM D523に準拠して、入射角45°で厚さ3.2mmの射出試験片で光沢度測定器(Gloss Meter)を用いて測定した。45°での光沢度が高いほど、表面光沢に優れることを意味する。ここで、表面光沢度の単位はGU(Gloss Unit)である。
*鉛筆硬度:ASTM D219に準拠して鉛筆硬度を測定した。
*加工性:熱可塑性樹脂組成物ペレットを、ロール温度180~220℃、カレンダーロール速度8~12rpm、及びカレンダーロール間の間隔0.3mmとし、厚さ0.3mmのシートとしてロールミル押出する際に、熱可塑性樹脂組成物の可塑化、ロール塗布及びロール安定化時間を測定し、次のように評価した。このとき、ロール安定化時間が3分以内であれば、加工性に優れるものと評価した。
○:シートの成形時に、樹脂がロールの表面で安定的に塗布され、3分以内に安定化され、成形されたシートの変形や損傷なしにロールの上で着脱可能である。
×:シートの成形時に、樹脂がロールの表面で不安定に塗布され、安定化時間が3分を超え、成形されたシートをロールの上で着脱する際に変形や損傷が発生する。
【0105】
【表1】
【表2】
(前記表1及び表2において、(A-1)、(A-2)及び(B)の各含量は、これらの総重量を基準とした重量%であり、(C)及び(D)の各含量は、前記(A-1)、(A-2)及び(B)の総重量100重量部を基準とした重量部である。)
【0106】
前記表1及び表2に示したように、本発明に係る熱可塑性樹脂組成物(実施例1~7)は、比較例1~9と比較して、引張強度、伸び率、表面硬度、表面光沢度、鉛筆硬度及び加工性がいずれも優れるので、カレンダー成形品に高品質で適用できることが確認できた。
【0107】
具体的には、ゴムの含量が本発明の範囲外であり、かつ、(A-1)グラフト共重合体の含量又は(A-2)グラフト共重合体の含量が本発明の範囲外である比較例1及び2は、伸び率及び鉛筆硬度が低く、加工性が不良であった。
【0108】
また、ゴムの含量が本発明の範囲を超える比較例3は、引張強度及び表面硬度が低く、ゴムの含量が本発明の範囲を超え、かつ(B)共重合体の含量範囲を満たさないと共に、(A-1)グラフト共重合体又は(A-2)グラフト共重合体の含量範囲を満たさない比較例4及び5は、引張強度、表面硬度及び鉛筆硬度が劣悪であった。
【0109】
また、(C)滑剤の含量が本発明の範囲を外れた比較例6及び7は、加工性が不良であり、特に、比較例6は伸び率も低く、ゴムの含量が本発明の範囲を超える比較例8は、引張強度、表面硬度及び鉛筆硬度が劣悪であった。
【0110】
また、ゴムの含量は本発明の範囲内であるが、(A-1)グラフト共重合体及び(A-2)グラフト共重合体の含量が本発明の範囲を外れた比較例9は、シートの成形時に加工性が劣悪であるため、シートが損傷した。
【0111】
結論的に、本発明に係る平均粒径が異なる2種のアルキルアクリレート-芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物グラフト共重合体と、芳香族ビニル化合物-ビニルシアン化合物共重合体とを所定の含量比で含むベース樹脂に対して、滑剤を所定の含量で含み、熱可塑性樹脂組成物中のゴムの含量を所定の範囲内に調整した熱可塑性樹脂組成物は、人体に有害な環境ホルモンであるフタレート系化合物を含まず、火災時に有毒ガスを排出せず、従来のカレンダー用素材であるPVC樹脂と比較して、加工性が同等以上であり、かつ引張強度、伸び率、表面光沢度及び表面硬度に優れるので、外観品質及び耐久性が確保される効果が確認できた。
【国際調査報告】