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特表2024-539830織物被覆用シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム被覆織物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-31
(54)【発明の名称】織物被覆用シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム被覆織物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20241024BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/56 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20241024BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241024BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C08K5/3492
C08K5/20
C08K5/56
C08K5/5415
C08L83/04
B60R21/235
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518179
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022047844
(87)【国際公開番号】W WO2023076351
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】63/273,298
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】秋友 裕司
(72)【発明者】
【氏名】アン、ドンチャン
【テーマコード(参考)】
3D054
4J002
【Fターム(参考)】
3D054CC26
4J002CP033
4J002CP042
4J002CP121
4J002DJ016
4J002EA019
4J002EP018
4J002EU188
4J002EX017
4J002EX067
4J002EZ007
4J002FD016
4J002FD209
4J002FD347
4J002GK02
4J002GN00
(57)【要約】
織物被覆用シリコーンゴム組成物を提供する。組成物は、(A)1分子中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンと、(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、当該ケイ素原子結合水素原子の含有量が0.5質量%以下であるオルガノポリシロキサンと、(C)ヒドロシリル化触媒と、(D)補強性シリカ微粉末と、(E)接着促進剤と、(F)アミノ基含有トリアジン化合物、又はフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物であって、各化合物が120~700の分子量を有する、化合物と、を含む。組成物は、良好な硬化性を有し、かつ熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さい、高い伸びを有するシリコーンゴムを形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物被覆用シリコーンゴム組成物であって、
(A) 100質量部の、1分子中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンと、
(B) 1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンであって、前記ケイ素原子結合水素原子の含有量が0.5質量%以下であり、成分(A)中のアルケニル基1モルに対して前記ケイ素原子結合水素原子が0.5~20モルとなる量である、オルガノポリシロキサンと、
(C) 触媒量のヒドロシリル化触媒と、
(D) 0.1~50質量部の補強性シリカ微粉末と、
(E) 0.05~5質量部の接着促進剤と、
(F) 0.001~5質量部の、アミノ基含有トリアジン化合物、又はフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物であって、各化合物が120~700の分子量を有する、化合物と、を含む、織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
成分(E)が、(E-1)有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物、(E-2)エポキシ基含有アルコキシシラン及び/又はアクリル基若しくはメタクリル基含有アルコキシシラン、(E-3)分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノシロキサンオリゴマー、及び成分(E-2)と成分(E-3)との反応生成物、からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
成分(F)が、80℃以上かつ300℃以下の融点を有し、前記融点が示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される、請求項1に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
成分(F)のための前記アミノ基含有トリアジン化合物が、2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジンである、請求項1に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
成分(F)のためのフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物が、トリアゾール化合物、ジアミン化合物、又はヒドラジン化合物である、請求項1に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
(G) 100質量部の成分(A)に対して0.001~5質量部の量のヒドロシリル化遅延剤、を更に含む、請求項1に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物で織物を被覆した後、前記組成物を硬化させることによって形成される、シリコーンゴム被覆織物硬化物。
【請求項8】
前記織物がエアバッグ用の基布である、請求項7に記載のシリコーンゴム被覆織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年10月29日に出願された米国仮特許出願第63/273,298号の優先権及び全ての利点を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、織物被覆用シリコーンゴム組成物、及び織物を当該組成物で被覆することによって得られるシリコーンゴム被覆織物に関する。
【背景技術】
【0003】
織物をシリコーンゴム組成物で被覆することによって製造されるシリコーンゴム被覆織物は、車両用エアバッグ等に用いられている。このようなシリコーンゴムは、エアバッグの基布となる織物との良好な接着性と、エアバッグ展開時に示される柔軟性と、を有することが必要とされる。
【0004】
このようなシリコーンゴム組成物としては、ヒドロシリル化反応硬化型組成物が好ましい。例えば、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンと、オルガノポリシロキサンレジンと、比表面積50μm/g以上のシリカ微粉末と、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、接着性付与官能基を有する有機ケイ素化合物と、有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物と、を含む、シリコーンゴム組成物(特許文献1を参照のこと);1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、当該アルケニル基の含有量が2質量%未満であるオルガノポリシロキサンと、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、当該アルケニル基の含有量が5質量%以上であるオルガノポリシロキサンと、1分子中に平均して少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、1分子中に平均で2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、補強性シリカ微粉末と、を含む、シリコーンゴム組成物(特許文献2を参照のこと);1分子中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有し、少なくとも1個の水素原子が分子鎖中のケイ素原子に結合しているオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、分子鎖両末端のみにケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、補強性シリカ微粉末と、接着促進剤と、を含む、シリコーンゴム組成物(特許文献3を参照のこと);及び、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンと、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有する分岐鎖状オルガノポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒と、補強性シリカ微粉末と、有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物と、シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーと、を含む、シリコーンゴム組成物(特許文献4を参照のこと)、が提案されている。
【0005】
このようなシリコーンゴム組成物は、高い伸びを有するシリコーンゴムを形成するが、当該シリコーンゴム組成物は、熱老化を受けたときに、伸びの変化が著しく大きくなるという問題を有する。
【0006】
一方、特許文献5及び6のそれぞれには、組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムの圧縮永久歪を低減させかつ難燃性を向上させるために、トリアゾール化合物を含有するヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献5及び6に記載のシリコーンゴム組成物は、硬化性が悪いため、繊維被覆用シリコーンゴム組成物として用いるには適していないという問題を有している。
【0008】
更に、特許文献7には、二次熱処理を用いることなく圧縮永久歪の低いシリコーンゴムを形成するために、0.001~5質量%の、ジアシルヒドラジド化合物、アミノトリアゾール化合物、アミノトリアジン(aminotrizine)化合物等の金属不活性化剤と、0.001~5質量%の、C-C三重結合を有するアルコール誘導体、エニン化合物、アルケニル基含有低分子量オルガノシロキサン化合物、又はアルキン基含有シランから選択される硬化遅延剤と、を含有する、ヒドロシリル化反応硬化型シリコーンゴム組成物が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献7は、シリコーンゴムが熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さいシリコーンゴムをシリコーンゴム被覆織物上に形成する、良好な硬化性を有する織物被覆用シリコーンゴム組成物を提供するという課題に着目していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
特許文献1:米国特許出願公開第2006/0286390(A1)号
特許文献2:米国特許出願公開第2010/0190395(A1)号
特許文献3:米国特許出願公開第2013/0071591(A1)号
特許文献4:米国特許出願公開第2019/0092969(A1)号
特許文献5:米国特許第5,104,919(A)号
特許文献6:特開平04-033961(A)号
特許文献7:米国特許出願公開第2010/0144933(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高い伸びを有しかつ熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さいシリコーンゴムを形成する、硬化性が良好である織物被覆用シリコーンゴム組成物を提供することである。本発明の他の目的は、織物に被覆されたシリコーンゴムが高い伸びを有し、シリコーンゴムが熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さい、シリコーンゴム被覆織物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の織物被覆用シリコーンゴム組成物は、
(A) 100質量部の、1分子中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有し、25℃における粘度が100~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサンと、
(B) 1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素原子結合水素原子の含有量が0.5質量%以下であり、成分(A)中のアルケニル基1モルに対してケイ素原子結合水素原子が0.5~20モルとなる量である、オルガノポリシロキサンと、
(C) 触媒量のヒドロシリル化触媒と、
(D) 0.1~50質量部の補強性シリカ微粉末と、
(E) 0.05~5質量部の接着促進剤と、
(F) 0.001~5質量部の、アミノ基含有トリアジン化合物、又はフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物であって、各化合物が120~700の分子量を有する、化合物と、を含む。
【0013】
様々な実施形態において、成分(E)は、(E-1)有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物、(E-2)エポキシ基含有アルコキシシラン及び/又はアクリル基若しくはメタクリル基含有アルコキシシラン、(E-3)分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノシロキサンオリゴマー、及び成分(E-2)と成分(E-3)との反応生成物、からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0014】
様々な実施形態において、成分(F)は、80℃以上かつ300℃以下の融点を有し、融点は示差走査熱量測定法(DSC)によって測定される。様々な実施形態において、成分(F)のためのアミノ基含有トリアジン化合物は、典型的には、2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジンであるが、成分(F)のためのフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物は、典型的には、トリアゾール化合物、ジアミン化合物、又はヒドラジン化合物である。
【0015】
様々な実施形態において、織物被覆用シリコーンゴム組成物は、(G)100質量部の成分(A)に対して0.001~5質量部の量のヒドロシリル化遅延剤、を更に含む。
【0016】
本発明のシリコーンゴム被覆織物は、上記の織物被覆用シリコーンゴム組成物で織物を被覆した後、組成物を硬化させることによって形成される。様々な実施形態において、織物は、典型的にはエアバッグ用の基布である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の織物被覆用シリコーンゴム組成物は、硬化性が良好であり、かつ、高い伸びを有しかつ熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さいシリコーンゴムを形成する。その上、本発明のシリコーンゴム被覆織物は、織物に被覆されたシリコーンゴムが高い伸びを有し、シリコーンゴムが熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さいことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<定義>
本明細書で使用するとき、「粘度」という用語は、オルガノポリシロキサンについては、JISK7117-1:1999「Plastics-Resins in the liquid state or as emulsions or dispersions-Determination of apparent viscosity by the Brookfield Test method」に準拠して、B型回転粘度計を用いて25℃で測定した値を意味し、シリコーンゴム組成物については、JISK7117-2:1999「Plastics-Polymers/resins in the liquid state or as emulsions or dispersions-Determination of viscosity using a rotational viscometer with defined shear rate」に準拠して、回転レオメーター(TA Instrument社製の粘弾性測定装置AR2000)を用いて25℃で測定した値を意味する。
【0019】
本明細書で使用するとき、「伸び」という用語は、JIS K6251:2004「Rubber,vulcanized or thermoplastic-Determination of tensile stress-strain properties」に準拠した「破断伸び」を意味する。
【0020】
本明細書で使用するとき、「フェノール骨格」という用語は、化合物を構成するベンゼン環に水酸基が結合した分子構造を意味し、例えば、非置換若しくはアルキル基置換のフェノール基、又は非置換のヒドロキシフェニレン基を意味する。このような非置換又はアルキル基置換フェノール基は、典型的には次の一般式で表される。
【0021】
【化1】
【0022】
上記式中、Rは、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、nは0~4の整数である。
【0023】
「含む(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において最も広義に使用され、「含む(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」を意味し、それらの概念を包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example, but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as, but not limited to)」を意味し、他の類似した又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含又は説明する働きをする。かかる軽微な変動は、数値の±0~25%、±0~10%、±0~5%、又は±0~2.5%ほどであり得る。更に、「約(about)」という用語は、値の範囲に関連付けられている場合に、両方の数値に適用される。更に、「約(about)」という用語は、明確に記載されていない場合であっても、複数の数値に当てはまることがある。
【0024】
全般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又は波線「~」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開の各々は、個別の基準で、1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体が本明細書に組み込まれる。
【0025】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の詳細な特徴又は態様を説明するために、本明細書で依拠されたあらゆるマーカッシュ群に関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュ要素から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得ることができることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の実施形態に、個々に及び又は組み合わされて依拠され得、十分なサポートを提供する。
【0026】
本明細書において、本発明を例示的な方式で説明してきたが、使用されている専門用語は、限定ではなく説明の単語としての性質であることが意図されることを理解されたい。本発明の多くの修正形態及び変形形態が、上記教示を踏まえて可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲内に具体的に記載されているもの以外に、他の方法で実行してもよい。独立請求項及び従属請求項、単一及び複数の従属請求項の両方の、主題の全ての組み合わせが、本明細書において明確に想定されている。
【0027】
<織物被覆用シリコーンゴム組成物>
最初に、本発明の織物被覆用シリコーンゴム組成物について詳細に説明する。
【0028】
成分(A)は、1分子中に平均して少なくとも1個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。成分(A)におけるアルケニル基の例としては、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などが挙げられが、ビニル基が好ましい。更に、成分(A)中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合した基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及び1~12個の炭素原子を有する他のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、及び6~12個の炭素原子を有する他のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及び7~12個の炭素原子を有する他のアラルキル基;並びに3,3,3-トリフルオロプロピル基、及び3~12個の炭素原子を有する他のフルオロアルキル基、が挙げられる。メチル基が好ましい。更に、成分(A)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲内で、少量のヒドロキシル基;又はメトキシ基、エトキシ基、及び1~3個の炭素原子を有する他のアルコキシ基が結合していてもよい。
【0029】
成分(A)の分子構造は特に限定されず、例としては、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、環状構造、分岐鎖状構造、網目状構造、及び樹枝状構が挙げられる。直鎖状構造及び一部分岐を有する直鎖状構造が好ましい。成分(A)は、これらの分子構造の2種以上を有する混合物であってもよい。
【0030】
成分(A)の25℃における粘度は、100~1,000,000mPa・sの範囲内、及び任意選択で、300~100,000mPa・sの範囲内である。これは、成分(A)の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られるシリコーンゴムの機械的特性が向上するからである。一方、粘度が上記範囲の上限以下であると、本組成物の塗工性が向上する。
【0031】
このような成分(A)のためのオルガノポリシロキサンの例としては、以下のものが挙げられる:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン;分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体;式:(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:(CH=CH)(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:SiO4/2単位で表されるシロキサン単位と、からなるオルガノポリシロキサン;式:(CH=CH)(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:CHSiO3/2単位で表されるシロキサン単位と、からなるオルガノポリシロキサン;これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部又は全部が、エチル基、プロピル基等のメチル基以外のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;又は3,3,3-トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基、で置換されたオルガノポリシロキサン;これらのオルガノポリシロキサンのビニル基の一部又は全部が、アリル基、ブテニル基等のビニル基以外のアルケニル基で置換されたオルガノポリシロキサン;及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物。
【0032】
成分(B)は、1分子当たり少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。成分(B)中のケイ素原子に結合する基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、及び1~6個の炭素原子を有する他のアルキル基;フェニル基、トリル基、及び6~12個の炭素原子を有する他のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、及び7~12個の炭素原子を有する他のアラルキル基;又は3,3,3-トリフルオロプロピル基及び1~6個の炭素原子を有する他のフルオロアルキル基、が挙げられる。メチル基が好ましい。更に、成分(B)中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲内で、少量のヒドロキシル基;又はメトキシ基、エトキシ基、及び1~3個の炭素原子を有する他のアルコキシ基が結合していてもよい。
【0033】
成分(B)中のケイ素原子結合水素原子の含有量は、0.5質量%以下である。これは、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子の含有量が上記上限以下であると、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムの伸びが向上するからである。成分(B)中のケイ素原子結合水素原子の含有量に関しては、0.5質量%を超える含有量のオルガノポリシロキサンと、0.5質量%未満の含有量の他のオルガノポリシロキサンとを混合して、0.5質量%以下に調整してもよい。
【0034】
成分(B)の分子構造は特に限定されず、例としては、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、環状構造、分岐鎖状構造、網目状構造、及び樹枝状構が挙げられる。直鎖状構造及び一部分岐を有する直鎖状構造が好ましい。成分(B)は、これらの分子構造の2種以上を有する混合物であってもよい。
【0035】
成分(B)の25℃における粘度は、特に限定されないが、通常、1~1,000mPa・sの範囲内、又は1~500mPa・sの範囲内である。これは、成分(B)の粘度が上記範囲の下限値以上であると、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムの機械的特性が向上するからである。一方、粘度が上記範囲の上限以下であると、本組成物の塗工性が向上する。
【0036】
成分(B)のためのオルガノポリシロキサンの例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体;分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン;分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体;分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体;環式メチルハイドロジェンポリシロキサン;式:H(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:SiO4/2単位で表されるシロキサン単位と、からなるオルガノポリシロキサン;式:H(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:SiO4/2単位で表されるシロキサン単位と、からなるオルガノポリシロキサン;式:(CHSiO2/2で表されるシロキサン単位と、式:H(CH)SiO2/2で表されるシロキサン単位と、式:CHSiO3/2単位で表されるシロキサン単位と、からなるオルガノポリシロキサン;式:(CHSiO1/2で表されるシロキサン単位と、式:(CHSiO2/2で表されるシロキサン単位と、式:H(CH)SiO2/2で表されるシロキサン単位と、式:CHSiO3/2単位で表されるシロキサン単位と、からなるオルガノポリシロキサン;これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部又は全部が、エチル基、プロピル基等のメチル基以外のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;又は3,3,3-トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基で置換されたオルガノポリシロキサン;及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上の混合物、が挙げられる。
【0037】
成分(B)の量は、成分(A)中のアルケニル基1molに対して、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子が0.5~20molの範囲内、及び任意選択で、1~15molの範囲内となる量である。これは、成分(B)の量が上記範囲の下限値以上であれば、本組成物が十分に硬化して織物に付着するからである。しかしながら、これに対して、この量が上記範囲の上限以下であると、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムの伸び等の機械的特性が向上する。
【0038】
成分(C)は、本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化触媒である。成分(C)の例としては、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、及びパラジウム触媒等の白金金属系触媒が挙げられる。これらのうち、白金触媒が好ましい。白金系触媒の例としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸のアルケニルシロキサン錯体、白金のジケトン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のオレフィン錯体;シリカ、アルミニウム、炭素などに担持された金属白金;及びこれらの白金触媒を含有する熱可塑性樹脂粉末、が挙げられる。更に、白金触媒以外の白金金属系触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPh、及びPd(PPhが挙げられる。式中、Phはフェニル基であることに留意されたい。
【0039】
成分(C)の量は、含有量が本組成物の硬化を促進する量である限りにおいては限定されない。典型的には、成分(C)の量は、成分(A)~(C)の総質量に対する質量単位で、成分(C)中の触媒金属の0.1~1,000ppmの範囲内、0.1~500ppmの範囲内、又は5~500ppmの範囲内、又は0.1~300ppmの範囲内、又は5~300ppmの範囲内である。これは、成分(C)の量が上記範囲の下限以上である場合、本組成物の硬化性が良好であるのに対し、成分(C)の量が上記範囲の上限以下である場合、本組成物を硬化することによって得られるシリコーンゴムの着色が抑制されるという理由による。
【0040】
成分(D)は、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムに機械的強度を付与するための補強性シリカ微粉末である。このような成分(D)の例としては、乾式法シリカ、沈降法シリカ、及びこれらの補強性シリカ微粉末の表面をオルガノクロロシラン、オルガノシラザン、オルガノアルコキシシラン、又はオルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で処理することによって形成された疎水性シリカが挙げられる。特に、成分(D)は、概して、50m/g以上の比表面積を有する。
【0041】
成分(D)の量は、成分(A)100質量部に対して、0.1~50質量部の範囲内、及び任意選択で、5~40質量部の範囲内である。これは、成分(D)の量が上記範囲の下限以上である場合、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムの優れた機械的強度が得られ、成分(D)の量が上記範囲の上限以下である場合、本組成物の優れた塗工性が得られるという理由による。
【0042】
成分(E)は、本組成物に接着性を付与するための接着促進剤である。典型的には、成分(E)は、(E-1)有機チタン化合物及び/又は有機ジルコニウム化合物、(E-2)エポキシ基含有アルコキシシラン及び/又はアクリル基若しくはメタクリル基含有アルコキシシラン、(E-3)分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノシロキサンオリゴマー、及び成分(E-2)と成分(E-3)との反応生成物、からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0043】
成分(E-1)のための有機チタン化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等の有機チタン酸エステル;チタン酢酸塩等のチタン有機酸塩等;及びチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)等のチタンキレート化合物、が挙げられる。
【0044】
更に、成分(E-1)のための有機ジルコニウム化合物の例としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウムトリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンジオネート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、及びジルコニウムジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンジオネート)が挙げられる。
【0045】
更に、成分(E-2)のためのエポキシ基含有アルコキシシランの例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0046】
更に、成分(E-2)のためのアクリル基又はメタクリル基含有アルコキシシランの例としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0047】
成分(E-3)の25℃における粘度は、特に限定されないが、通常、100mPa・s未満、又は1~50mPa・sの範囲内である。成分(E-3)のための分子鎖両末端シラノール基封鎖ジオルガノシロキサンオリゴマーの例としては、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合オリゴマー;分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー;これらの有機オルガノシロキサンオリゴマーのメチル基の一部又は全部が、エチル基、プロピル基等のメチル基以外のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;又は3,3,3-トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基で置換されたオルガノシロキサンオリゴマー;これらのオルガノシロキサンオリゴマーのビニル基の一部又は全部が、アリル基、ブテニル基等のビニル基以外のアルケニル基で置換されたオルガノシロキサンオリゴマー;及びこれらのオルガノシロキサンオリゴマーの2種以上の混合物、が挙げられる。
【0048】
本組成物では、成分(E)の量は、成分(A)100質量部に対して、0.05~5質量部の範囲内、及び任意選択で、0.1~5質量部の範囲内である。これは、成分(E)の量が上記範囲の下限値以上であると、中空織布などの接着性に劣る織物に対して、優れた接着性を付与することができるからである。これに対して、量が上記の範囲の上限以下である場合、本組成物の貯蔵安定性が向上する。
【0049】
更に、成分(E-1)を、成分(E-2)及び/又は成分(E-3)、あるいは成分(E-2)と成分(E-3)との反応生成物と共に用いる場合、成分(E-1)の量は、成分(A)100質量部に対して、典型的には0.01~1質量部であり、また、成分(E-3)を成分(E-2)と共に用いる場合は更に、成分(E-3)の量は、典型的には0.01~1質量部である。
【0050】
成分(F)は、本組成物の硬化性を損なうことなく、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムの熱老化後の伸びの変化を抑制するための成分である。成分(F)は、120~700の分子量を有し、アミノ基含有トリアジン化合物又はフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物である。典型的には、成分(F)は、80℃以上かつ300℃以下の融点を有し、融点は、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定される。融点は、JIS K 7121-1978「Testing Methods for Transition Temperatures of Plastics」に準拠して、示差走査熱量測定法(DSC)によって測定することができる。この装置に、ポリエステル樹脂(A)試料を封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下、加熱速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した。10℃/分で温度低下を測定することにより、温度を30℃まで低下させる。昇温時の吸熱ピークの頂点の温度を「融点」と定義する。
【0051】
成分(F)のためのアミノ基含有トリアジン化合物の例としては、2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン、及び2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンが挙げられる。アミノ基含有トリアジン化合物は、ADEKA製のADK STAB ZS-27として入手可能である。
【0052】
成分(F)のためのフェノール骨格及びアミド結合を有する化合物の例としては、次の一般式で表される基:
【0053】
【化2】

又は次の一般式で表される基:
【0054】
【化3】

を有する化合物が挙げられる。
【0055】
上記の式において、Rは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状アルキル基である。Rのアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0056】
上記の式において、Rは、1~12個の炭素原子を有するアルキレン基である。Rのアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0057】
上記の式において、「n」は、0~4の整数、典型的には、0~2の整数である。
【0058】
このような成分(F)の例としては、トリアゾール化合物、ジアミン化合物、及びヒドラジン化合物が挙げられる。このようなトリアゾール化合物の例としては、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4トリアゾール、3-(N-サリチロイル)アミノ-5-メチル-1,2,4-トリアゾール、及び3-(N-アセチル)アミノ-1,2,4-トリアゾール-5-カルボン酸が挙げられる。トリアゾール化合物は、ADEKA社製のADK STAB CDA-1、及びADEKA社製のADK STAB CDA-1Mとして入手可能である。
【0059】
更に、そのようなジアミン化合物及びヒドラジン化合物の例としては、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジサリチロイルヒドラジン(disalicyloylhydrazine)、N-ホルミル-N’-サリチロイルヒドラジン、N-アセチル-N’-サリチロイルヒドラジン、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1-N,12-N-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、蓚酸-ジ-(N-サリチロイルヒドラジド)、アジピン酸-ジ-(N’-サリチロイルヒドラジド)、及びドデカンジオイル-ジ-(N’-サリチロイルヒドラジド)が挙げられる。ジアミン化合物及びヒドラジン化合物は、ADEKA社製のADK STAB CDA-6、ADEKA社製のADK STAB CDA-6S、ADEKA社製のADK STAB CDA-10、BASF社製のIRGANOX(登録商標)MD-1024、及び川口化学社製のANTAGE HP-300として入手可能である。
【0060】
本組成物では、成分(F)の量は、成分(A)100質量部に対して、0.001~5質量部の範囲、及び任意選択で、0.05~5質量部の範囲である。これは、成分(F)の量が上記範囲の下限値以上であると、本組成物を硬化させることによって得られるシリコーンゴムが、熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さいためである。これに対して、量が上記の範囲の上限以下である場合、本組成物は良好な硬化性を有する。
【0061】
特定の実施形態において、本組成物は、そのポットライフを制御するために、(G)ヒドロシリル化遅延剤を含有する。このような化合物(G)の例としては、1-エチニル-シクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、及び他のアセチレン化合物;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及び他のエニン化合物;メチル-トリス(1,1-ジメチル-2-プロピノキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチル-2-プロピノキシ)シラン、及び他のアルキンオキシシラン化合物;並びに他のホスフィン及びメルカプタン化合物、が挙げられる。このような成分(G)の量は限定されないが、一般的には、成分(A)100質量部に対して、0.001~5質量部、又は0.01~10質量部の範囲内である。
【0062】
更に、本組成物は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、成分(D)以外の無機充填剤を含有してもよい。このような無機充填剤の例としては、石英粉、珪藻土、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の増量充填剤;酸化セリウム、水酸化セリウム、及び酸化鉄等の耐熱剤;ベンガラ、酸化チタン、及びカーボンブラック等の顔料;並びに難燃剤、が挙げられる。
【0063】
本組成物の調製方法は限定されず、本組成物は、成分(A)~成分(F)と、必要に応じてその他の任意成分と、を混合することにより調製することができる。ただし、成分(A)の一部と成分(D)とを予め加熱混合して調製したシリカマスターバッチに、成分(A)の残部、成分(B)、成分(C)、成分(E)、及び成分(F)をブレンドする方法が好ましい。他の任意成分をブレンドする必要がある場合には、そのようなブレンドは、シリカマスターバッチの調製中に行われてもよいことに留意されたい。更に、加熱混合により他の任意成分を変化させる場合には、通常、成分(A)の残部、成分(B)、成分(C)、成分(E)、及び成分(F)をブレンドする際に、他の任意成分をブレンドする。更に、シリカマスターバッチを調製するとき、有機ケイ素化合物がブレンドされてもよく、成分(D)は、その場表面処理に供されてもよい。本組成物は、二本ロールミル、ニーダー/ミキサー、Rossミキサー、又は同様の既知の混練機を使用して調製されてもよい。
【0064】
更に、貯蔵安定性を向上させるために、本組成物は、典型的には、成分(A)、成分(C)、及び成分(D)を含有するが、成分(B)を含有しない組成物(I)と、成分(A)、成分(B)、及び成分(D)を含有するが、成分(C)を含有しない組成物(II)と、から形成される、2成分織物被覆用シリコーンゴム組成物である。成分(E)及び成分(F)は、組成物(I)及び組成物(II)の一方又は両方に含まれていてもよいことに留意されたい。
【0065】
本組成物の25℃における状態は限定されないが、概して液体である。組成物の25℃における粘度は限定されないが、概して、10~500Pa・sの範囲、又は50~500Pa・sの範囲である。このような粘度を有する本組成物は、粘度調整用の溶剤を含まない無溶剤組成物として繊維を被覆することができ、取り扱い性及び被覆作業性に優れ、シリコーンゴム被覆層に欠陥が生じにくい。
【0066】
<シリコーンゴム被覆織物>
次に、本発明のシリコーンゴム被覆織物について詳細に説明する。
【0067】
本発明のシリコーンゴム被覆織物は、上記織物被覆用シリコーンゴム組成物を織物の表面に被覆し、組成物を硬化させることによって形成される。本発明の被覆織物の織物の例としては、ナイロン6、ナイロン66、及びナイロン46等のポリアミド繊維織物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維織物;並びに、ポリアクリル繊維織物、ポリアクリロニトリル繊維織物、アラミド繊維織物、ポリエーテルイミド繊維織物、ポリスルホン系繊維織物、炭素繊維織物、レーヨン繊維織物、ポリプロピレン繊維織物、ポリエチレン繊維織物、及びこれらの繊維から形成された不織布、が挙げられる。特に、優れた耐熱性及び機械的特性の観点から言うと、エアバッグの基布としては、ポリアミド繊維織物又はポリエステル繊維織物が好ましい。
【0068】
本被覆織物の織物構造は限定されないが、生産性や厚みの観点から、典型的には平織である。更に、接着性に優れた塗膜を、接着性に乏しい中空織布上に形成することができるため、織物は、織物構造の中央部に袋状の空洞を有する中空織布であってもよい。
【0069】
本被覆織物の製造方法は限定されず、織物被覆用シリコーンゴム組成物は、吹付け、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフコーティング、パッティング、スクリーン印刷、又はディッピング等の公知の方法により織物に被覆することができる。このとき、繊維被覆用シリコーンゴム組成物の被覆量は、典型的には25~150g/mの範囲である。更に、シリコーンゴム組成物を被覆した後、組成物を150~200℃で1~2分間加熱することによって硬化させることができる。
【0070】
本被覆織物のシリコーンゴム被覆層は、1層であってもよいし、2層以上の多層であってもよい。更に、本被覆織物は、必要に応じて、任意の更なる被覆層を更に有していてもよい。典型的には、そのような追加の被覆層は、被覆された織物の表面の触感を向上させ、表面の摩耗特性を更に向上させ、被覆された織物の強度を向上させるための層である。このような追加の被覆層の具体例としては、プラスチックフィルム、織物、不織布、及びその他の弾性コーティング剤から形成される被覆層が挙げられる。
【実施例
【0071】
本発明の織物被覆用シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴム被覆織物について、実施例を用いて詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されないことを理解すべきである。シリコーンゴムの物理的特性は、JISに準拠して以下の測定方法により測定した。
【0072】
<オルガノポリシロキサンの粘度>
オルガノポリシロキサンの25℃における粘度(mPa・s)は、JIS K7117-1:1999「Plastics-Resins in the liquid state or as emulsions or dispersions-Determination of apparent viscosity by the Brookfield Test method」に準拠して、B型回転粘度計を用いて測定した。
【0073】
<シリコーンゴム組成物の粘度>
繊維被覆用シリコーンゴム組成物の25℃における粘度(Pa・s)は、JIS K7117-2:1999「Plastics-Polymers/resins in the liquid state or as emulsions or dispersions-Determination of viscosity using a rotational viscometer with defined shear rate」に準拠して、回転式レオメーター(TA Instrument社製の粘弾性測定装置AR2000)を用いて測定した。粘度は、直径20mm、コーン角2°、せん断速度10(1/s)のコーンプレートを用いて測定した。
【0074】
<シリコーンゴム組成物の硬化性>
シリコーンゴム組成物の硬化性は、レオメーターMDR2000(Alpha Technologies,Ltd.製)を用いて評価した。硬化温度は150℃であった。測定において、10%のトルク値が得られる時間(分)をT10で示し、90%のトルク値が得られる時間(分)をT90で示した。
【0075】
<シリコーンゴムの特性>
このシリコーンゴム組成物を150℃、圧力20MPaで5分間プレス加硫することにより、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを調製した。シリコーンゴムシートの硬度は、JIS K6253-1997「Hardness testing methods for rubber,vulcanized or thermoplastic」に規定されているタイプAデュロメータ、又は、日本ゴム協会規格SRIS0101-1968「Physical Testing Method for Expanded Rubber」に規定されているスプリングデュロメータ(アスカーC硬度)を用いて測定した。更に、シリコーンゴムの引張強度及び破断伸びは、JIS K6251:2004に規定された方法により測定した。
【0076】
<熱老化>
上記で作製したシリコーンゴムシートを、実施例1~12及び比較例1~4については120℃で168時間、実施例13~22及び比較例5~7については107℃で168時間、乾燥機に供した。次に、シリコーンゴムの硬度、引裂き強度、及び伸びを測定した。
【0077】
<シリコーンゴム被覆織物の製造>
ポリエチレンテレフタレートから形成されたカーテンシールドエアバッグ用の基布の片面に、ベーカー型アプリケータを使用して、被覆量が50~80g/mとなるようにシリコーンゴム組成物を被覆した。その後、被覆した布を、200℃のオーブンで90秒間加熱してシリコーンゴム組成物を硬化させた。同様に、他方の面もシリコーンゴム組成物で被覆し、シリコーンゴム被覆織物を作製した。
【0078】
<シリコーンゴム被覆織物の耐スクラブ摩耗試験>
上記で調製したシリコーンゴム被覆織物に対して、ISO5981に準拠して、耐スクラブ性測定装置(J&E Engineering製のTwi-head Scrub Tester)を用いて「耐スクラブ摩耗性試験」を行った。シリコーンゴム被覆織物を50mm×100mmに切断した。荷重は1kgfに調整した。600サイクル試験後、シリコーンゴム被覆織物の表面を観察した。ピンホールを含む層間剥離が観察されなかった場合を「合格」と評価した。
【0079】
<調製例1>
100質量部の、54000mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=約0.09質量%)と、40質量部の、BET比表面積300m/gを有するヒュームドシリカと、7質量部のヘキサメチルジシラザンと、2質量部の水とをRossミキサーに投入し、混合物が均一になるまで室温で混合した。その後、この混合物を減圧下、200℃で2時間熱処理して、流動性を有するシリカマスターバッチを調製した。
【0080】
<実施例1~22及び比較例1~7>
下記成分を表1~6に示す組成で25℃にて均一に混合して、織物被覆用シリコーンゴム組成物を調製した。シリコーンゴム組成物を150℃で5分間トランスファープレス加硫することによって、物理的特性測定用シリコーンゴムシートを調製した。得られた繊維被覆用シリコーンゴム組成物及び得られたシリコーンゴムの特性を表1~6に示す。表1~6中の各「SiH/Vi」は、成分(A)中のアルケニル基1モル当たりの、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子のモル数の比を示す。
【0081】
以下のオルガノポリシロキサンを成分(A)として使用した。
(a-1):54,000mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=約0.09質量%)
(a-2):a370mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量=約0.48質量%)
【0082】
以下のオルガノポリシロキサンを、成分(B)として使用した。
(b-1):次の平均式:
(CHSiO[(CHSiO]5.1[(CH)HSiO]2.9Si(CH
によって表されるオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.34質量%)。
(b-2):平均式:
(CHSiO[(CHSiO][(CH)HSiO]Si(CH
によって表されるオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.77質量%)。
(b-3):平均式:
(CHHSiO[(CHSiO]14Si(CH
によって表されるオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.13質量%)。
(b-4):平均式:
(CHSiO[(CHSiO]5.7[(CH)HSiO]3.6Si(CH
によって表されるオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.46質量%)。
【0083】
以下のヒドロシリル化触媒を、成分(C)として使用した。
(c-1):白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量=約6800ppm)。
【0084】
以下の成分を、成分(D)として使用した。
(d-1):調製例1で調製したシリカマスターバッチ
【0085】
以下の接着促進剤を、成分(E)として使用した。
(e-1):50質量部のジルコニウムテトラアセチルアセトネートと、50質量部の、370mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンとの混合物(ビニル基含有量=約0.14質量%)
(e-2):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(e-3):20mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合オリゴマー(ビニル基含有量=約10.9質量%)
【0086】
以下の化合物を、成分(F)として使用した。
(f-1):3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール(Mw=204;Mp=315-325℃)
(f-2):1-N,12-N-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド(Mw=498;Mp=211-217℃)
(f-3):N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]ヒドラジン(Mw=553;Mp=224-229℃)
(f-4):2,4,6-トリアミノ-1,3,5-トリアジン(Mw=126;Mp=約65℃)
(f-5):N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン(Mw=636;Mp=約156℃)
【0087】
以下の化合物を、成分(F)の比較として使用した。
(f-6):1,2,4-トリアゾール(Mw=69;Mp=120-121℃)
(f-7):1,2,3-ベンゾトリアゾール(Mw=119;Mp=99℃)
【0088】
以下の成分を、成分(G)として使用した。
(g-1):2質量部の1-エチニルシクロヘキサン-1-オールと、98質量部の、10,000mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンと、の混合物(ビニル基含有量=約0.14質量%)
(g-2):3質量部の1-エチニルシクロヘキサン-1-オールと、97質量部の、370mPa・sの粘度を有する分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンと、の混合物(ビニル基含有量=約0.48質量%)
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の織物被覆用シリコーンゴム組成物は、織物に強固に接着し、シリコーンゴムが熱老化を受けたときでさえも伸びの変化が小さいシリコーンゴムを形成する。そのため、織物被覆用シリコーンゴム組成物は、例えば、カーテンシールドエアバッグ、運転席エアバッグ、助手席エアバッグ、サイドエアバッグ、ニーエアバッグ、ITSヘッドエアバッグ等のエアバッグ;航空機用緊急脱出シート;及び拡張可能な救命ボートに使用される織物用被覆剤として好適である。
【国際調査報告】